説明

鋼管の水圧試験機及び鋼管水圧試験後の管長計測方法

【課題】水圧試験機の一連の試験工程の中に検尺機能を付加することにより、次工程条件の最適化に反映させることを可能にする。
【解決手段】水圧試験時の両ヘッド部1,2の移動距離をパルスジェネレータ方式で計測可能とし、各ヘッド部に前記鋼管の管端位置を検出するためのレーザ式位置センサ4,4を設置し、鋼管3のセット前に各ヘッド部を移動させてそのレーザ式位置センサのレーザ光路を所定の原点に一致させ、その時点から、水圧試験を経て各ヘッド部を鋼管から離間させる際に各レーザ式位置センサが鋼管の管端位置を検出した時点まで、各ヘッド部の移動距離を計測し、この計測結果を用いて鋼管の管長を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の水圧試験機及び鋼管水圧試験後の管長計測方法に関し、詳しくは、鋼管製造プロセスの中で、管長計測専用の別工程を経ることによる製造時間増加を抑制する、鋼管の水圧試験機及び鋼管水圧試験後の管長計測方法に関するものである。得られた管長は鋼管の中間切断、面取等の次工程の操業条件最適化に活用される。
【背景技術】
【0002】
鋼管の水圧試験機では、水圧試験に供する鋼管(以下、単に管ともいう)を固定し、その両端を閉鎖蓋でシールした後、管内部に試験水を注入、圧力を付加することにより試験を行う。規格によっては、印加水圧を降伏点付近まで上げるため、管の真円度の変化に加えて、管長が変化する。そのため、工程順序に関わらず、水圧後の寸法変化は重要な品質管理項目である。
【0003】
鋼管の検尺(管長計測と同義)に関する従来技術として、例えば特許文献1ではパルス型メジャリング設備とレーザユニットを用いた移動中の鋼管等の被搬送材の長さ測定方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】

【特許文献1】特開平4−166704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では水圧試験機と管長計測機とが離れている場合、又は鋼管の切断精度向上が難しい場合、管長精度が悪いまま面取等の工程に入るため、最終管長が管長公差に入らない場合があるという課題があった。管長は目視での検査が困難なため、製品として仕上げた後の最終工程である管長計測工程が終わるまで管長不良が判明せず、判明時には不良品の再製造など大きな能率低下をもたらす。
【0006】
この問題の解決には管長計測機を増設し、管長計測工程を追加する案があるが、工程追加による製造に掛かる時間の増加や、設備コストの増加が避けられないというデメリットがあるのが課題であった。本発明は水圧試験機の一連の試験工程の中に検尺機能を付加することにより、上記課題を解決し、次工程条件の最適化に反映させることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
(1)互いに対向する方向に移動可能とした両ヘッド部で鋼管の両端部を抱持密閉して前記鋼管の管内に水圧を印加可能とした鋼管の水圧試験機において、各ヘッド部の移動距離をパルスジェネレータ方式で計測可能とし、かつ各ヘッド部に前記鋼管の管端位置を検出するためのレーザ式位置センサを設置したことを特徴とする鋼管の水圧試験機。
(2)前記(1)に記載された鋼管の水圧試験機を用い、鋼管のセット前に各ヘッド部を移動させてそのレーザ式位置センサのレーザ光路を所定の原点に一致させ、その時点から、水圧試験を経て各ヘッド部を鋼管から離間させる際に各レーザ式位置センサが鋼管の管端位置を検出した時点まで、各ヘッド部の移動距離を計測し、この計測結果を用いて鋼管の管長を算出することを特徴とする鋼管水圧試験後の管長測定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鋼管の精整工程の処理能率を低下させることなく、又、管長計測機を増設することなく、鋼管の水圧試験直後の管長計測が可能である。これにより、水圧試験後直ちに管長不良を発見できる為、次工程以降オンラインで操業条件の最適化が可能となり、工場全体の生産能率向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の1例を示す立体図
【図2】本発明の実施形態の1例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1、図2はそれぞれ本発明の実施形態の1例を示す立体図、側面図である。図示のように、水圧試験機は、互いに対向する方向に移動可能とされた2つのヘッド部1,2を有し、これらは鋼管3の一端部、他端部を夫々抱持密閉し、鋼管3の管内に水圧を印加することが可能である。
ヘッド部1,2には夫々、鋼管3の管端(一端、他端)の位置を検出するためのレーザ式位置センサ4,4が設置されている。レーザ式位置センサ4,4は夫々投光部Aから受光部Bへのレーザ光の送波経路(レーザ光路L1,L2)が設定してある。この例では、レーザ光路L1,L2はその位置を夫々ヘッド部1,2の鋼管端部装入口位置と一致させているが、これに限らず、適宜、ヘッド部の鋼管端部装入口位置よりヘッド部外方の位置にずらしてもよい。
【0011】
レーザ式位置センサ4,4は各々、これを設置した側のヘッド部1,2と共に移動する際、夫々のレーザ光路L1,L2が、鋼管3の管端を通過した瞬間に受光部Bの受光量が急増することで、鋼管3の管端位置を検出する。尚、レーザ光路L1,L2は、鋼管3の管軸との直交平面内で管中心を通る水平線に沿わせるのが好ましい。
そして、水圧試験機は、各ヘッド部の移動距離をパルスジェネレータ方式で計測できるようにしてある。
【0012】
ここで用いるパルスジェネレータ方式は、2つのヘッド部の個々について、それが所定単位距離だけ移動するごとに1つのパルスを発生するように設定したパルスジェネレータからのパルスを、パルスカウンタで所定のカウント開始時点(累積パルス数がゼロ)から所定のカウント終了時点まで逐次カウントし、カウントした累積パルス数を移動距離に変換する方式である。その変換式は、移動距離=累積パルス数×所定単位距離、である。所定単位距離は、鋼管の管長公差以内とする。尚、各ヘッド部について、その移動が、前進(対向相手に近づく向きの移動)である場合、パルスはマイナスにカウントされ、後退(対向相手から離れる向きの移動)である場合、パルスはプラスにカウントされる。
【0013】
本発明では、上記水圧試験機を用い、鋼管のセット前に各ヘッド部を移動させてそのレーザ式位置センサのレーザ光路を所定の原点に一致させ、その時点から、水圧試験を経て各ヘッド部を鋼管から離間させる際に各レーザ式位置センサが鋼管の端部位置を検出した時点まで、各ヘッド部の移動距離を計測し、この計測結果を用いて鋼管の管長を算出する。以下、具体的手順を説明する。
(1)まず、鋼管3のセット前に、各ヘッド部1,2を、そのレーザ光路L1,L2が所定の原点に一致するように、移動させる。この原点としては、特に限定されないが、例えばヘッド部1,2間の最大許容間隔(水圧試験機の設備仕様から定まる)の中点などとされる。レーザ光路L1,L2が前記原点に一致した時点で、パルスカウンタを初期化(累積パルス数をゼロクリア)する。尚、パルスジェネレータはパルスカウンタの初期化前に起動させておくが、常時動作させておいてもよい。
(2)通常通り、水圧試験機に鋼管3をセットし、水圧試験を行う。鋼管セットから水圧試験にかけての間、各ヘッド部の移動に即応してそのヘッド部側のパルスジェネレータが上述のとおりパルスを発し、これがパルスカウンタで逐次カウントされ、累積されて、累積パルス数が保存される。
(3)水圧試験後、ヘッド部1,2を鋼管3から離間させるにあたり、各ヘッド部1,2を後退させる直前の状態(図1(a)、図2(a))において、各ヘッド部1,2についての累積パルス数(これをn1,n2とする)を記録する。1パルスに対応させた所定単位距離をΔxで表すと、2つのレーザ光路L1,L2の間隔Cは、C=(n1+n2)×Δx、であるから、この式を演算してCを求める。
(4)パルスカウンタを再初期化し、通常通り、ヘッド部1,2を後退させる。このとき、水圧試験機は図1(a)、図2(a)の状態から図2(c)の状態まで移行するが、その途中で、図1(b)、図2(b)の状態をとる。すなわち、レーザ光路L1,L2が鋼管3の一端、他端を夫々通過し、レーザ式位置センサ4,4が鋼管3の管端位置を検出する。そこで、この管端位置検出時点における累積パルス数(これをm1、m2とする)を記録する。このとき、パルスカウンタの再初期化時点(ヘッド部後退開始時点)から前記管端位置検出時点までの間のヘッド部1,2の移動距離a,bは、夫々、a=m1×Δx、b=m2×Δx、である。そこで、この式を演算してa,bを求める。
(5)明らかに、管長はC+a+bで表わされるから、この式を演算して管長を求める。
【0014】
尚、上記手順において、(4)のパルスカウンタの再初期化を省略することもできる。その場合は、前記管端位置検出時点における累積パルス数(これをN1,N2とする)を用い、管長=(N1+N2)×Δx、を演算して管長を求めることができる。
又、上述の例では両ヘッド部に共通する1つの原点を設けたが、各ヘッド部ごとに前記最大許容間隔の中点との間に個別に原点を設けてもよい。その場合は、これら2つの原点間の距離を既知量L0とすると、上記手順で求めたC+a+b、或いは(N1+N2)×Δxの演算結果にL0を加算することで、管長を求めることができる。
【0015】
又、本発明のようにレーザ式位置センサで鋼管の管端位置を検出する場合、鋼管に管端傾き、管端バリなどの端部形状不整があると、管端位置を誤検出する可能性がある。かかる誤検出に起因する後工程への管長計測値の誤報によるトラブルの発生頻度を抑えるためには、接触式位置センサを、レーザ式位置センサのレーザ光路と同じ位置で鋼管外周線と接触するような配置形態で各ヘッド部に併設し、レーザ式と接触式の両センサで管端位置検出を行い、両センサ間での管端位置検出時点の時差が大きすぎた場合、管端検出異常のアラート(警報)を出すようにするとよい。
【符号の説明】
【0016】
1 両ヘッド部のうち一のヘッド部
2 両ヘッド部のうち他のヘッド部
3 鋼管
,4 レーザ式位置センサ
L1,L2 レーザ光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する方向に移動可能とした両ヘッド部で鋼管の両端部を抱持密閉して前記鋼管の管内に水圧を印加可能とした鋼管の水圧試験機において、各ヘッド部の移動距離をパルスジェネレータ方式で計測可能とし、かつ各ヘッド部に前記鋼管の管端位置を検出するためのレーザ式位置センサを設置したことを特徴とする鋼管の水圧試験機。
【請求項2】
請求項1に記載された鋼管の水圧試験機を用い、鋼管のセット前に各ヘッド部を移動させてそのレーザ式位置センサのレーザ光路を所定の原点に一致させ、その時点から、水圧試験を経て各ヘッド部を鋼管から離間させる際に各レーザ式位置センサが鋼管の端部位置を検出した時点まで、各ヘッド部の移動距離を計測し、この計測結果を用いて鋼管の管長を算出することを特徴とする鋼管水圧試験後の管長測定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−78308(P2012−78308A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226303(P2010−226303)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】