防振装置
【課題】部品点数を多くすることなく、コンパクトでかつ十分な耐久性を得ることのできる防振装置の提供。
【解決手段】内筒4、外リング6及びゴム状弾性体8で防振ゴム10を構成する。外リング6を内筒4の外側に配置する。外リング6をフレーム側部材5に取り付ける。内筒4の外端部に端板7を設ける。内筒4、外リング6及び端板7間にゴム状弾性体8を配置する。防振ゴム10をフレーム側部材5の両面側に設ける。両内筒4間に案内部材9を介在させて一体化する。内筒4をエンジン側ブラケット3に取り付ける。案内部材9が外リング6と径方向に対向して内筒4を上下方向に案内する。エンジン2を弾性的に支持して振動を抑制しつつ、水平方向の変位によるゴム状弾性体8の損傷を防止する。
【解決手段】内筒4、外リング6及びゴム状弾性体8で防振ゴム10を構成する。外リング6を内筒4の外側に配置する。外リング6をフレーム側部材5に取り付ける。内筒4の外端部に端板7を設ける。内筒4、外リング6及び端板7間にゴム状弾性体8を配置する。防振ゴム10をフレーム側部材5の両面側に設ける。両内筒4間に案内部材9を介在させて一体化する。内筒4をエンジン側ブラケット3に取り付ける。案内部材9が外リング6と径方向に対向して内筒4を上下方向に案内する。エンジン2を弾性的に支持して振動を抑制しつつ、水平方向の変位によるゴム状弾性体8の損傷を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設機械に装備されたエンジンの振動を抑制するための防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械などに装備されるエンジンは、ゴム状弾性体を有する防振装置を介して弾性的に支持され、エンジン自体が発する振動や、凹凸面の走行や掘削作業時の車体の振動に起因するエンジンの振動を抑制している。
【0003】
防振装置は、エンジンを鉛直支持する一組の防振装置と、エンジンを傾斜支持する一組の防振装置とを組み合わせて、エンジンを4点支持することが多い。この防振装置は、鉛直支持用の防振装置が、振動する重量物であるエンジンを鉛直方向に効果的に弾性支持し、傾斜支持用の防振装置が、鉛直方向の力に加えて、エンジンの振動に伴う水平方向の力を受けるようになっている。
【0004】
ただ、鉛直支持用の防振装置は、水平方向の力を十分に受けることができず、傾斜支持用の防振装置の位置を中心にしてエンジン全体が水平に回動する方向に振動することにより、鉛直支持用の防振装置がせん断方向(水平方向)に大きく変位する。鉛直支持用の防振装置のせん断方向の変位は、ゴム状弾性体に亀裂を生じさせやすく、この亀裂を防止して耐久性を向上させるには、防振装置を大きくする必要がある。
【0005】
これに対して、図17に示すように、特許文献1は、鉛直支持用の一組の防振装置101と、傾斜支持用の二組の防振装置102、103とでエンジン104を支持し、さらに、鉛直支持用の防振装置101をエンジン104の重心位置の近傍に配置した防振装置を開示している。この特許文献1の防振装置は、エンジン104が重心位置を中心として水平に回動する方向に振動したとしても、鉛直支持用の防振装置101がせん断方向に大きく変形するのを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−59681号公報(段落番号0038、0047、0056、0063、図5〜図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された防振装置は、個々の防振装置をコンパクトに設定しつつ、その耐久性を高めることができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の防振装置は、エンジンを6点支持する分、4点支持する場合よりも部品点数が多くなり、組立工数が増加すると共に、全体としての取付スペースも大きくなる。
【0009】
本発明は、部品点数を多くすることなく、コンパクトでかつ十分な耐久性を得ることのできる防振装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る防振装置は、エンジン側部材に取り付けられる内筒と、この内筒の外側に配置されてフレーム側部材に取り付けられる外リングと、内筒の端部に設けられた端板と、内筒、外リング及び端板間に配置されたゴム状弾性体とを備えたものであり、内筒及び外リングのうちの一方に、他方と径方向に対向して内筒をその中心軸方向に案内する案内部材を設けたものである。
【0011】
上記構成によれば、内筒をその中心軸方向に案内する案内部材を設けるので、内筒の中心軸方向の変位を許容しつつ、内筒の中心軸と直交する方向の変位を規制することができる。これにより、エンジンを弾性的に支持してエンジンの振動を抑制しつつ、中心軸と直交する方向に変位することによるゴム状弾性体の損傷を防止することができ、部品点数を多くすることなく、防振装置の小型化を図り、かつ十分な耐久性を得ることができる。
【0012】
なお、案内部材を設けることにより、内筒の中心軸と直交する方向の変位が規制されるものの、エンジンを内筒の中心軸方向に弾性的に支持することによって、エンジン自体が発する振動を十分に抑制することができる。さらに、内筒の中心軸方向を例えば上下方向のように強い力が作用する方向に合わせることにより、走行時や掘削作業時に、車体の振動に起因するエンジンの振動のうちの大部分を抑制することができる。
【0013】
また、フレーム側部材の両面側に、内筒、外リング及びゴム状弾性体からなる二つの防振ゴムを設け、この二つの防振ゴムを、その内筒の外端部に端板を設けると共に、これらと別体に形成した案内部材を両内筒間に介在させて一体化した構成も採用することができる。
【0014】
この構成によれば、フレーム側部材の両面側に防振ゴムを設けるので、バウンド時及びリバウンド時のいずれにおいても、エンジンの振動を抑制することができる。さらに、案内部材を別体に形成するので、ゴム状弾性体の加硫成形などにおいて、製造上の制約を受けにくく、設計の自由度を高めることができる。
【0015】
別体に形成した案内部材は、両内筒間に介在させることにより、外リングの内側に配置して案内部材としての機能を発揮させることができる。しかも、案内部材の周囲を外リングが覆うので、防振装置を組み立てながら装着する際に、案内部材が落下するのを阻止して、防振装置の組立性を向上させることができる。
【0016】
また、案内部材を別体に形成する場合、案内部材の周縁部に、内筒の端部に係止される段差を形成した構成も採用することができる。
【0017】
この構成によれば、案内部材の周縁部に形成した段差を内筒の端部に係止することができるので、防振装置を組み立てる際に、案内部材がずれるのを阻止して、防振装置の組立性を向上させることができる。しかも、防振装置を組み立てた後は、案内部材が外リングから受ける反力によって内筒の端部から外れるのを阻止することができ、内筒を中心軸方向に確実に案内することができる。
【0018】
また、案内部材と外リングとの間に、内筒の中心軸と直交する方向の移動を許容する隙間を設けた構成も採用することができる。
【0019】
この構成によれば、案内部材と外リングとの間に隙間を設けるので、隙間の大きさの範囲で、内筒をその中心軸と直交する方向に移動させることができ、エンジン側部材とフレーム側部材の間に防振部材を容易に設置することができる。案内部材及び外リング間の隙間の大きさは、内筒の移動によってゴム状弾性体に損傷を生じさせない程度の範囲内で適宜設定することができ、各部品や部材の寸法誤差などを十分に吸収することができる。
【0020】
また、端板に、その周縁部からゴム状弾性体の外周側に突出する筒部を形成し、この筒部とゴム状弾性体との間に隙間を設けた構成も採用することができる。
【0021】
この構成によれば、端板から突出する筒部とゴム状弾性体との間に隙間を設けるので、ゴム状弾性体を中心軸方向に圧縮変形させる際、その一部を筒部及びゴム状弾性体間の隙間に逃がすことができ、防振装置の剛性を小さくすることができる。しかも、ゴム状弾性体の圧縮変形によって筒部及びゴム状弾性体間の隙間が閉じられた後は、さらに圧縮変形させたゴム状弾性体の逃げるスペースが閉じられている分、防振装置の剛性を大きくすることができる。したがって、筒部及びゴム状弾性体間の隙間の大きさを適宜調整して、防振装置を様々なばね特定に設定することができ、防振装置の設計の自由度を高めることができる。
【0022】
また、筒部を、その先端が内筒の径方向において外リングとラップする位置に設定し、外リングと当接して内筒の中心軸方向の移動を制限するストッパとした構成も採用することができる。
【0023】
この構成によれば、内筒が中心軸方向に過度に変位した際、内筒端部の端板から突出する筒部の先端を外リングに当接させて、内筒の中心軸方向の移動を制限することができる。しかも、筒部の先端を外リングと径方向にラップする位置に設定するので、筒部がフレーム側部材に直接に当接するのを阻止して、フレーム側部材の塗装剥げによる錆や構造的な損傷を防止することができる。
【0024】
また、上記の外リングとしては、円板状のものや筒状のものを例示することができ、さらに、外リングとして外筒を採用する場合、端板を省略することもできる。
【0025】
すなわち、本発明は、エンジン側部材に取り付けられる内筒と、該内筒の外側に配置されてフレーム側部材に取り付けられる外筒と、前記内筒及び外筒間に配置されたゴム状弾性体とを備え、前記内筒及び外筒のうちの一方に、他方と径方向に対向して前記内筒をその中心軸方向に案内する案内部材が設けられたことを特徴とする防振装置を提供する。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によると、内筒をその中心軸方向に案内する案内部材を設けるので、エンジンを弾性的に支持してエンジンの振動を抑制しつつ、中心軸と直交する方向に変位することによるゴム状弾性体の損傷を防止することができる。これにより、各防振装置をコンパクトかつ十分な耐久性に設定して、建設機械などのエンジンを支持する防振装置の個数を例えば4つ程度まで少なくすることができ、その部品点数の合計を少なくして組立工数を少なくすると共に、全体としての取付スペースを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る防振装置をブラケットに装着した状態を示す斜視図
【図2】防振装置の配置図で、(a)はエンジンの側面側から見た図、(b)はエンジンの正面側から見た図
【図3】防振装置の分解斜視図
【図4】防振装置の断面図
【図5】防振ゴムの斜視図
【図6】防振ゴムの側面図
【図7】防振ゴムの平面図
【図8】防振ゴムの断面図
【図9】案内部材の斜視図
【図10】案内部材の側面図
【図11】案内部材の平面図
【図12】案内部材の断面図
【図13】フレーム側ブラケットとエンジン側ブラケットとの間に防振装置を装着する手順を示す図
【図14】案内部材を配置する様子を示す図
【図15】内筒の中心軸と直交する方向における荷重と変位との関係を示す図
【図16】内筒の中心軸方向における荷重と変位との関係を示す図
【図17】従来の防振装置の配置を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る防振装置を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0029】
図1〜図4に示すように、防振装置1は、建設機械などに装備されるエンジン2を鉛直方向に弾性的に例えば4点支持して、その振動を抑制するためのものであり、エンジン側部材としてのエンジン側ブラケット3に取り付けられる内筒4と、内筒4の外側に配置されてフレーム側部材としてのフレーム側ブラケット5に取り付けられる外リング6と、内筒4の外端部に設けられた端板7と、内筒4、外リング6及び端板7間に配置されたゴム状弾性体8と、外リング6と径方向に対向して内筒4をその中心軸方向に案内する案内部材9とを備えている。
【0030】
図1〜図8に示すように、この防振装置1は、フレーム側ブラケット5の両面側に、内筒4、外リング6及びゴム状弾性体8から構成した防振ゴム10を設けて、フレーム側ブラケット5を挟むように二つの防振ゴム10を一体化した構造とされる。二つの防振ゴム10は、両内筒4のそれぞれの外端部に端板7を設けると共に、これらと別体に形成した案内部材9を両内筒4間に介在させ、両内筒4の中央穴にボルト11を挿通して中心軸方向に締結することによって一体化される。
【0031】
フレーム側ブラケット5の両面側に防振ゴム10を設けることにより、バウンド時及びリバウンド時のいずれにおいても、上下の防振ゴム10のいずれかの圧縮を伴ってエンジン2を支持することができる。
【0032】
内筒4は、例えば金属製の直管状とされて、その中心軸方向を上下方向に合わせて配置され、エンジン2の振動に伴って、外端部に設けられた端板7と共に上下方向に移動するようになっている。
【0033】
外リング6は、例えば冷間圧延鋼板などの金属製で、その内周縁に筒部12を有する断面L字形のリング状とされ、その筒部12をフレーム側ブラケット5の取付穴に嵌合して、フレーム側ブラケット5の上下面に取り付けられる。
【0034】
端板7は、例えば金属製で、内筒4の中央穴4aと略同径の中央穴7aを有する円板状とされ、その周縁部に、ゴム状弾性体8の外周側に突出する筒部13が形成されている。筒部13は、その先端が内筒4の径方向において外リング6の外周部とラップする位置に設定され、外リング6と当接して内筒4の中心軸方向の移動を制限するストッパとして機能する。筒部13がストッパとして機能する際、その先端が外リング6と当接するので、筒部13がフレーム側ブラケット5に直接接触するのを阻止することができ、フレーム側ブラケット5の塗装剥げによる錆や構造的な損傷を生じることはない。
【0035】
ゴム状弾性体8は、例えば耐熱性のある天然ゴムからなるリング状とされ、内筒4及び端板7の移動に伴って、外リング6と端板7との間で中心軸方向に弾性変形するようになっている。ゴム状弾性体8は、その内周面が内筒4の外周面に加硫接着されると共に、内端側の端面が外リング6の表面に加硫接着され、内筒4及び外リング6と一体化されて防振ゴム10を構成する。なお、案内部材9を別体に形成するので、加硫型の組立についての制約を受けることなく、ゴム状弾性体8の形状を自由に設定することができる。
【0036】
このゴム状弾性体8は、自由状態において両端面が内筒4の両端よりも中心軸方向に突出する大きさに形成され(図5〜図8参照)、二つの防振ゴム10をボルト11で締結して一体化する際に、フレーム側ブラケット5と端板7との間で中心軸方向に予圧縮するようになっている。ゴム状弾性体8の両端面を内筒4よりも突出させるので、ゴム状弾性体8の予圧縮が両側に振り分けられ、中心軸方向のせん断ひずみを軽減しつつ、十分な予圧縮量が得られる。
【0037】
ゴム状弾性体8の両端面には、周方向に連続するスリット14が凹設され、このスリット14の形状を適宜設定して、ゴム状弾性体8を所望のばね特性や歪特性に設定するようになっている。スリット14の外径は、端板7の筒部13によって設定される案内部材9の移動範囲において、案内部材9の外径よりも大きく設定され、内筒4が案内部材9を伴って中心軸方向に移動する際にゴム状弾性体8と案内部材9とが接触するのを防止する。
【0038】
ゴム状弾性体8の外周面と端板7の筒部13との間には隙間15が設けられ、内筒4及び端板7の移動に伴って中心軸方向に圧縮されたゴム状弾性体8が径方向に膨らむのを許容する。隙間15は、ゴム状弾性体8が十分に圧縮されることによって閉じられ、内筒4及び端板7のさらなる移動に対するゴム状弾性体8の径方向の膨らみを規制して、防振装置1の剛性を高める。これにより、隙間15の大きさを適宜設定して防振装置1を様々なばね特性に設定することができ、防振装置1の設計の自由度を高めることができる。
【0039】
図1〜図12に示すように、案内部材9は、例えば炭素鋼などの金属製で、内筒4の中央穴4aと略同径の中央穴9aを有するリング状とされ、その周縁部に、内筒4の端部に係止される段差16が形成されている。段差16は、例えば1mm程度以上の大きさに設定され、この段差16を内筒4の端部に係止して、両端板7、両内筒4及び案内部材9の各中央穴7a、4a、9aにボルト11を挿通して締結することにより、案内部材9が二つの防振ゴム10の内筒4と一体化される。
【0040】
この案内部材9は、フレーム側ブラケット5の板厚よりも厚く設定され、外リング6の筒部12と径方向に対向して内筒4をその中心軸方向に案内する。これにより、案内部材9が、内筒4の中心軸方向の移動を阻害することなく、内筒4の水平方向の移動を制限し、ゴム状弾性体8が水平方向にせん断変形することによる損傷を防止して、防振装置1の耐久性を高める。
【0041】
案内部材9と外リング6との間に、内筒4の中心軸と直交する方向の移動を許容する隙間17が設けられ、防振装置1をフレーム側ブラケット5に組み付ける際に、各部材や部品の寸法誤差を吸収するようになっている。この隙間17の大きさ(I)は、外リング6の外周部と端板7の筒部13とのラップ長さ(L)よりも小さく設定され、筒部13の先端が外リング6とラップする位置から水平方向にずれてフレーム側ブラケット5に直接接触するのを阻止する。
【0042】
また、案内部材9は、外リング6と異なる材料から形成することにより、両者間の凝着や磨耗を防止する。さらに、案内部材9の周縁部にRまたは面取りを設けて、ゴム状弾性体8や外リング6の損傷を防止する。
【0043】
次に、フレーム側ブラケットとエンジン側ブラケットとの間に防振装置を装着する手順を説明する。
【0044】
図13に示すように、まず、外リング6の筒部12をフレーム側ブラケット5の取付穴に上面側から嵌合して、上側の防振ゴム10をフレーム側ブラケット5の上面側に取り付け、その防振ゴム10に端板7を被せる(図13(a)、(b)参照)。
【0045】
次いで、端板7の上にエンジン側ブラケット3を載置して、このエンジン側ブラケット3のボルト孔と、端板7及び内筒4の中央穴7a、4aとに、上側からボルト11を挿通する(図13(c)参照)。
【0046】
下側の端板7に防振ゴム10を重ね、さらに、防振ゴム10の内筒4に段差16を係止するよう案内部材9を重ねてセットする。案内部材9は、円形かつ上下対称の方向性のない構造であり、しかも、案内部材9の周囲を外リング6の筒部12が取り囲んで、案内部材9のずれ落ちを阻止するので、防振装置1の組立性を高めることができる(図14参照)。
【0047】
セットした端板7、内筒4及び案内部材9の中央穴7a、4a、9aに、フレーム側ブラケット5の下面側に突出するボルト11を挿通し、このボルト11にナットを締め付けて防振装置1の装着が完了する(図13(d)参照)。
【0048】
上記構成によれば、防振装置1に案内部材9を設けて、内筒4の上下方向の移動を阻害することなく、内筒4の水平方向の移動を制限するので、ゴム状弾性体8の水平方向のせん断変形による損傷を防止することができる。これにより、建設機械などに装備されるエンジン2を弾性的に支持して、そのエンジン2自体が発する振動や、凹凸面の走行や掘削作業時の車体の振動に起因するエンジン2の振動を抑制しつつ、防振装置1の耐久性を高めることができる。
【0049】
また、案内部材9と外リング6との間に隙間17を設けるので、各部材や部品の寸法誤差を吸収することができ、防振装置1のフレーム側ブラケット5への組み付けを容易にすることができる。
【0050】
図15は、内筒4に作用する水平方向の荷重と、内筒4の水平変位との関係を例示する図であり、縦軸は内筒4に作用する水平方向の荷重を示し、横軸は内筒4の水平変位を示す。この図15は、外リング6の内径を一定とし、案内部材9の外径が異なる3種類の関係を示したものであり、案内部材9の外径を、(A)、(B)、(C)の順に小さく設定している(φA<φB<φC)。
【0051】
図15に示すように、隙間17を設けることにより、水平変位が小さい範囲では、防振装置1の水平方向の剛性を小さくすることができ、内筒4を水平方向に容易に変位させて、各部材や部品の寸法誤差などを吸収することができる。また、水平変位が大きくなって隙間17が閉じられた後は、防振装置1の水平方向の剛性が大きくなって、水平方向のさらなる変位を規制する。隙間17の大きさは、各部品の干渉などを考慮して適宜設定することができる。
【0052】
また、ゴム状弾性体8の外周面と端板7の筒部13との間に隙間15を設けるので、その隙間15が残った状態と、ゴム状弾性体8の圧縮量が大きくて隙間15が閉じられた状態とで、防振装置1の剛性を変えることができる。これにより、防振装置1を様々なばね特性に設定することができ、防振装置1の設計の自由度を高めることができる。
【0053】
図16は、内筒4に作用する上下方向の荷重と、内筒4の上下変位との関係を例示する図であり、縦軸は内筒4に作用する上下方向の荷重を示し、横軸は内筒4の上下変位を示す。この図16は、筒部13の内径を一定とし、ゴム状弾性体8の外径が異なる3種類の関係を示したものであり、ゴム状弾性体8の外径を、(A)、(B)、(C)の順に大きく設定している(φA>φB>φC)。
【0054】
図16に示すように、隙間15を設けることにより、上下変位が小さい範囲では、防振装置1の上下方向の剛性を小さくすることができ、上下変位が大きくなって隙間15が閉じられた後は、防振装置1の上下方向の剛性が大きくすることができる。
【0055】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、ゴム状弾性体8を内筒4、外リング6及び端板7間に配置するだけでなく、断面L字形の外リング6に代えて外筒を設けると共に、端板7を省略し、内筒及び外筒間にゴム状弾性体を配置するようにしてもよい。この場合、内筒及び外筒間で、ゴム状弾性体が中心軸方向にせん断変形しながら力を伝達する。
【0056】
また、内筒4に案内部材9を設ける代わりに、外リングや外筒に案内部材を設けた構成も採用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 防振装置
2 エンジン
3 エンジン側ブラケット
4 内筒
4a 中央穴
5 フレーム側ブラケット
6 外リング
7 端板
7a 中央穴
8 ゴム状弾性体
9 案内部材
9a 中央穴
10 防振ゴム
11 ボルト
12 筒部
13 筒部
14 スリット
15 隙間
16 段差
17 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設機械に装備されたエンジンの振動を抑制するための防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械などに装備されるエンジンは、ゴム状弾性体を有する防振装置を介して弾性的に支持され、エンジン自体が発する振動や、凹凸面の走行や掘削作業時の車体の振動に起因するエンジンの振動を抑制している。
【0003】
防振装置は、エンジンを鉛直支持する一組の防振装置と、エンジンを傾斜支持する一組の防振装置とを組み合わせて、エンジンを4点支持することが多い。この防振装置は、鉛直支持用の防振装置が、振動する重量物であるエンジンを鉛直方向に効果的に弾性支持し、傾斜支持用の防振装置が、鉛直方向の力に加えて、エンジンの振動に伴う水平方向の力を受けるようになっている。
【0004】
ただ、鉛直支持用の防振装置は、水平方向の力を十分に受けることができず、傾斜支持用の防振装置の位置を中心にしてエンジン全体が水平に回動する方向に振動することにより、鉛直支持用の防振装置がせん断方向(水平方向)に大きく変位する。鉛直支持用の防振装置のせん断方向の変位は、ゴム状弾性体に亀裂を生じさせやすく、この亀裂を防止して耐久性を向上させるには、防振装置を大きくする必要がある。
【0005】
これに対して、図17に示すように、特許文献1は、鉛直支持用の一組の防振装置101と、傾斜支持用の二組の防振装置102、103とでエンジン104を支持し、さらに、鉛直支持用の防振装置101をエンジン104の重心位置の近傍に配置した防振装置を開示している。この特許文献1の防振装置は、エンジン104が重心位置を中心として水平に回動する方向に振動したとしても、鉛直支持用の防振装置101がせん断方向に大きく変形するのを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−59681号公報(段落番号0038、0047、0056、0063、図5〜図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された防振装置は、個々の防振装置をコンパクトに設定しつつ、その耐久性を高めることができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の防振装置は、エンジンを6点支持する分、4点支持する場合よりも部品点数が多くなり、組立工数が増加すると共に、全体としての取付スペースも大きくなる。
【0009】
本発明は、部品点数を多くすることなく、コンパクトでかつ十分な耐久性を得ることのできる防振装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る防振装置は、エンジン側部材に取り付けられる内筒と、この内筒の外側に配置されてフレーム側部材に取り付けられる外リングと、内筒の端部に設けられた端板と、内筒、外リング及び端板間に配置されたゴム状弾性体とを備えたものであり、内筒及び外リングのうちの一方に、他方と径方向に対向して内筒をその中心軸方向に案内する案内部材を設けたものである。
【0011】
上記構成によれば、内筒をその中心軸方向に案内する案内部材を設けるので、内筒の中心軸方向の変位を許容しつつ、内筒の中心軸と直交する方向の変位を規制することができる。これにより、エンジンを弾性的に支持してエンジンの振動を抑制しつつ、中心軸と直交する方向に変位することによるゴム状弾性体の損傷を防止することができ、部品点数を多くすることなく、防振装置の小型化を図り、かつ十分な耐久性を得ることができる。
【0012】
なお、案内部材を設けることにより、内筒の中心軸と直交する方向の変位が規制されるものの、エンジンを内筒の中心軸方向に弾性的に支持することによって、エンジン自体が発する振動を十分に抑制することができる。さらに、内筒の中心軸方向を例えば上下方向のように強い力が作用する方向に合わせることにより、走行時や掘削作業時に、車体の振動に起因するエンジンの振動のうちの大部分を抑制することができる。
【0013】
また、フレーム側部材の両面側に、内筒、外リング及びゴム状弾性体からなる二つの防振ゴムを設け、この二つの防振ゴムを、その内筒の外端部に端板を設けると共に、これらと別体に形成した案内部材を両内筒間に介在させて一体化した構成も採用することができる。
【0014】
この構成によれば、フレーム側部材の両面側に防振ゴムを設けるので、バウンド時及びリバウンド時のいずれにおいても、エンジンの振動を抑制することができる。さらに、案内部材を別体に形成するので、ゴム状弾性体の加硫成形などにおいて、製造上の制約を受けにくく、設計の自由度を高めることができる。
【0015】
別体に形成した案内部材は、両内筒間に介在させることにより、外リングの内側に配置して案内部材としての機能を発揮させることができる。しかも、案内部材の周囲を外リングが覆うので、防振装置を組み立てながら装着する際に、案内部材が落下するのを阻止して、防振装置の組立性を向上させることができる。
【0016】
また、案内部材を別体に形成する場合、案内部材の周縁部に、内筒の端部に係止される段差を形成した構成も採用することができる。
【0017】
この構成によれば、案内部材の周縁部に形成した段差を内筒の端部に係止することができるので、防振装置を組み立てる際に、案内部材がずれるのを阻止して、防振装置の組立性を向上させることができる。しかも、防振装置を組み立てた後は、案内部材が外リングから受ける反力によって内筒の端部から外れるのを阻止することができ、内筒を中心軸方向に確実に案内することができる。
【0018】
また、案内部材と外リングとの間に、内筒の中心軸と直交する方向の移動を許容する隙間を設けた構成も採用することができる。
【0019】
この構成によれば、案内部材と外リングとの間に隙間を設けるので、隙間の大きさの範囲で、内筒をその中心軸と直交する方向に移動させることができ、エンジン側部材とフレーム側部材の間に防振部材を容易に設置することができる。案内部材及び外リング間の隙間の大きさは、内筒の移動によってゴム状弾性体に損傷を生じさせない程度の範囲内で適宜設定することができ、各部品や部材の寸法誤差などを十分に吸収することができる。
【0020】
また、端板に、その周縁部からゴム状弾性体の外周側に突出する筒部を形成し、この筒部とゴム状弾性体との間に隙間を設けた構成も採用することができる。
【0021】
この構成によれば、端板から突出する筒部とゴム状弾性体との間に隙間を設けるので、ゴム状弾性体を中心軸方向に圧縮変形させる際、その一部を筒部及びゴム状弾性体間の隙間に逃がすことができ、防振装置の剛性を小さくすることができる。しかも、ゴム状弾性体の圧縮変形によって筒部及びゴム状弾性体間の隙間が閉じられた後は、さらに圧縮変形させたゴム状弾性体の逃げるスペースが閉じられている分、防振装置の剛性を大きくすることができる。したがって、筒部及びゴム状弾性体間の隙間の大きさを適宜調整して、防振装置を様々なばね特定に設定することができ、防振装置の設計の自由度を高めることができる。
【0022】
また、筒部を、その先端が内筒の径方向において外リングとラップする位置に設定し、外リングと当接して内筒の中心軸方向の移動を制限するストッパとした構成も採用することができる。
【0023】
この構成によれば、内筒が中心軸方向に過度に変位した際、内筒端部の端板から突出する筒部の先端を外リングに当接させて、内筒の中心軸方向の移動を制限することができる。しかも、筒部の先端を外リングと径方向にラップする位置に設定するので、筒部がフレーム側部材に直接に当接するのを阻止して、フレーム側部材の塗装剥げによる錆や構造的な損傷を防止することができる。
【0024】
また、上記の外リングとしては、円板状のものや筒状のものを例示することができ、さらに、外リングとして外筒を採用する場合、端板を省略することもできる。
【0025】
すなわち、本発明は、エンジン側部材に取り付けられる内筒と、該内筒の外側に配置されてフレーム側部材に取り付けられる外筒と、前記内筒及び外筒間に配置されたゴム状弾性体とを備え、前記内筒及び外筒のうちの一方に、他方と径方向に対向して前記内筒をその中心軸方向に案内する案内部材が設けられたことを特徴とする防振装置を提供する。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によると、内筒をその中心軸方向に案内する案内部材を設けるので、エンジンを弾性的に支持してエンジンの振動を抑制しつつ、中心軸と直交する方向に変位することによるゴム状弾性体の損傷を防止することができる。これにより、各防振装置をコンパクトかつ十分な耐久性に設定して、建設機械などのエンジンを支持する防振装置の個数を例えば4つ程度まで少なくすることができ、その部品点数の合計を少なくして組立工数を少なくすると共に、全体としての取付スペースを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る防振装置をブラケットに装着した状態を示す斜視図
【図2】防振装置の配置図で、(a)はエンジンの側面側から見た図、(b)はエンジンの正面側から見た図
【図3】防振装置の分解斜視図
【図4】防振装置の断面図
【図5】防振ゴムの斜視図
【図6】防振ゴムの側面図
【図7】防振ゴムの平面図
【図8】防振ゴムの断面図
【図9】案内部材の斜視図
【図10】案内部材の側面図
【図11】案内部材の平面図
【図12】案内部材の断面図
【図13】フレーム側ブラケットとエンジン側ブラケットとの間に防振装置を装着する手順を示す図
【図14】案内部材を配置する様子を示す図
【図15】内筒の中心軸と直交する方向における荷重と変位との関係を示す図
【図16】内筒の中心軸方向における荷重と変位との関係を示す図
【図17】従来の防振装置の配置を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る防振装置を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0029】
図1〜図4に示すように、防振装置1は、建設機械などに装備されるエンジン2を鉛直方向に弾性的に例えば4点支持して、その振動を抑制するためのものであり、エンジン側部材としてのエンジン側ブラケット3に取り付けられる内筒4と、内筒4の外側に配置されてフレーム側部材としてのフレーム側ブラケット5に取り付けられる外リング6と、内筒4の外端部に設けられた端板7と、内筒4、外リング6及び端板7間に配置されたゴム状弾性体8と、外リング6と径方向に対向して内筒4をその中心軸方向に案内する案内部材9とを備えている。
【0030】
図1〜図8に示すように、この防振装置1は、フレーム側ブラケット5の両面側に、内筒4、外リング6及びゴム状弾性体8から構成した防振ゴム10を設けて、フレーム側ブラケット5を挟むように二つの防振ゴム10を一体化した構造とされる。二つの防振ゴム10は、両内筒4のそれぞれの外端部に端板7を設けると共に、これらと別体に形成した案内部材9を両内筒4間に介在させ、両内筒4の中央穴にボルト11を挿通して中心軸方向に締結することによって一体化される。
【0031】
フレーム側ブラケット5の両面側に防振ゴム10を設けることにより、バウンド時及びリバウンド時のいずれにおいても、上下の防振ゴム10のいずれかの圧縮を伴ってエンジン2を支持することができる。
【0032】
内筒4は、例えば金属製の直管状とされて、その中心軸方向を上下方向に合わせて配置され、エンジン2の振動に伴って、外端部に設けられた端板7と共に上下方向に移動するようになっている。
【0033】
外リング6は、例えば冷間圧延鋼板などの金属製で、その内周縁に筒部12を有する断面L字形のリング状とされ、その筒部12をフレーム側ブラケット5の取付穴に嵌合して、フレーム側ブラケット5の上下面に取り付けられる。
【0034】
端板7は、例えば金属製で、内筒4の中央穴4aと略同径の中央穴7aを有する円板状とされ、その周縁部に、ゴム状弾性体8の外周側に突出する筒部13が形成されている。筒部13は、その先端が内筒4の径方向において外リング6の外周部とラップする位置に設定され、外リング6と当接して内筒4の中心軸方向の移動を制限するストッパとして機能する。筒部13がストッパとして機能する際、その先端が外リング6と当接するので、筒部13がフレーム側ブラケット5に直接接触するのを阻止することができ、フレーム側ブラケット5の塗装剥げによる錆や構造的な損傷を生じることはない。
【0035】
ゴム状弾性体8は、例えば耐熱性のある天然ゴムからなるリング状とされ、内筒4及び端板7の移動に伴って、外リング6と端板7との間で中心軸方向に弾性変形するようになっている。ゴム状弾性体8は、その内周面が内筒4の外周面に加硫接着されると共に、内端側の端面が外リング6の表面に加硫接着され、内筒4及び外リング6と一体化されて防振ゴム10を構成する。なお、案内部材9を別体に形成するので、加硫型の組立についての制約を受けることなく、ゴム状弾性体8の形状を自由に設定することができる。
【0036】
このゴム状弾性体8は、自由状態において両端面が内筒4の両端よりも中心軸方向に突出する大きさに形成され(図5〜図8参照)、二つの防振ゴム10をボルト11で締結して一体化する際に、フレーム側ブラケット5と端板7との間で中心軸方向に予圧縮するようになっている。ゴム状弾性体8の両端面を内筒4よりも突出させるので、ゴム状弾性体8の予圧縮が両側に振り分けられ、中心軸方向のせん断ひずみを軽減しつつ、十分な予圧縮量が得られる。
【0037】
ゴム状弾性体8の両端面には、周方向に連続するスリット14が凹設され、このスリット14の形状を適宜設定して、ゴム状弾性体8を所望のばね特性や歪特性に設定するようになっている。スリット14の外径は、端板7の筒部13によって設定される案内部材9の移動範囲において、案内部材9の外径よりも大きく設定され、内筒4が案内部材9を伴って中心軸方向に移動する際にゴム状弾性体8と案内部材9とが接触するのを防止する。
【0038】
ゴム状弾性体8の外周面と端板7の筒部13との間には隙間15が設けられ、内筒4及び端板7の移動に伴って中心軸方向に圧縮されたゴム状弾性体8が径方向に膨らむのを許容する。隙間15は、ゴム状弾性体8が十分に圧縮されることによって閉じられ、内筒4及び端板7のさらなる移動に対するゴム状弾性体8の径方向の膨らみを規制して、防振装置1の剛性を高める。これにより、隙間15の大きさを適宜設定して防振装置1を様々なばね特性に設定することができ、防振装置1の設計の自由度を高めることができる。
【0039】
図1〜図12に示すように、案内部材9は、例えば炭素鋼などの金属製で、内筒4の中央穴4aと略同径の中央穴9aを有するリング状とされ、その周縁部に、内筒4の端部に係止される段差16が形成されている。段差16は、例えば1mm程度以上の大きさに設定され、この段差16を内筒4の端部に係止して、両端板7、両内筒4及び案内部材9の各中央穴7a、4a、9aにボルト11を挿通して締結することにより、案内部材9が二つの防振ゴム10の内筒4と一体化される。
【0040】
この案内部材9は、フレーム側ブラケット5の板厚よりも厚く設定され、外リング6の筒部12と径方向に対向して内筒4をその中心軸方向に案内する。これにより、案内部材9が、内筒4の中心軸方向の移動を阻害することなく、内筒4の水平方向の移動を制限し、ゴム状弾性体8が水平方向にせん断変形することによる損傷を防止して、防振装置1の耐久性を高める。
【0041】
案内部材9と外リング6との間に、内筒4の中心軸と直交する方向の移動を許容する隙間17が設けられ、防振装置1をフレーム側ブラケット5に組み付ける際に、各部材や部品の寸法誤差を吸収するようになっている。この隙間17の大きさ(I)は、外リング6の外周部と端板7の筒部13とのラップ長さ(L)よりも小さく設定され、筒部13の先端が外リング6とラップする位置から水平方向にずれてフレーム側ブラケット5に直接接触するのを阻止する。
【0042】
また、案内部材9は、外リング6と異なる材料から形成することにより、両者間の凝着や磨耗を防止する。さらに、案内部材9の周縁部にRまたは面取りを設けて、ゴム状弾性体8や外リング6の損傷を防止する。
【0043】
次に、フレーム側ブラケットとエンジン側ブラケットとの間に防振装置を装着する手順を説明する。
【0044】
図13に示すように、まず、外リング6の筒部12をフレーム側ブラケット5の取付穴に上面側から嵌合して、上側の防振ゴム10をフレーム側ブラケット5の上面側に取り付け、その防振ゴム10に端板7を被せる(図13(a)、(b)参照)。
【0045】
次いで、端板7の上にエンジン側ブラケット3を載置して、このエンジン側ブラケット3のボルト孔と、端板7及び内筒4の中央穴7a、4aとに、上側からボルト11を挿通する(図13(c)参照)。
【0046】
下側の端板7に防振ゴム10を重ね、さらに、防振ゴム10の内筒4に段差16を係止するよう案内部材9を重ねてセットする。案内部材9は、円形かつ上下対称の方向性のない構造であり、しかも、案内部材9の周囲を外リング6の筒部12が取り囲んで、案内部材9のずれ落ちを阻止するので、防振装置1の組立性を高めることができる(図14参照)。
【0047】
セットした端板7、内筒4及び案内部材9の中央穴7a、4a、9aに、フレーム側ブラケット5の下面側に突出するボルト11を挿通し、このボルト11にナットを締め付けて防振装置1の装着が完了する(図13(d)参照)。
【0048】
上記構成によれば、防振装置1に案内部材9を設けて、内筒4の上下方向の移動を阻害することなく、内筒4の水平方向の移動を制限するので、ゴム状弾性体8の水平方向のせん断変形による損傷を防止することができる。これにより、建設機械などに装備されるエンジン2を弾性的に支持して、そのエンジン2自体が発する振動や、凹凸面の走行や掘削作業時の車体の振動に起因するエンジン2の振動を抑制しつつ、防振装置1の耐久性を高めることができる。
【0049】
また、案内部材9と外リング6との間に隙間17を設けるので、各部材や部品の寸法誤差を吸収することができ、防振装置1のフレーム側ブラケット5への組み付けを容易にすることができる。
【0050】
図15は、内筒4に作用する水平方向の荷重と、内筒4の水平変位との関係を例示する図であり、縦軸は内筒4に作用する水平方向の荷重を示し、横軸は内筒4の水平変位を示す。この図15は、外リング6の内径を一定とし、案内部材9の外径が異なる3種類の関係を示したものであり、案内部材9の外径を、(A)、(B)、(C)の順に小さく設定している(φA<φB<φC)。
【0051】
図15に示すように、隙間17を設けることにより、水平変位が小さい範囲では、防振装置1の水平方向の剛性を小さくすることができ、内筒4を水平方向に容易に変位させて、各部材や部品の寸法誤差などを吸収することができる。また、水平変位が大きくなって隙間17が閉じられた後は、防振装置1の水平方向の剛性が大きくなって、水平方向のさらなる変位を規制する。隙間17の大きさは、各部品の干渉などを考慮して適宜設定することができる。
【0052】
また、ゴム状弾性体8の外周面と端板7の筒部13との間に隙間15を設けるので、その隙間15が残った状態と、ゴム状弾性体8の圧縮量が大きくて隙間15が閉じられた状態とで、防振装置1の剛性を変えることができる。これにより、防振装置1を様々なばね特性に設定することができ、防振装置1の設計の自由度を高めることができる。
【0053】
図16は、内筒4に作用する上下方向の荷重と、内筒4の上下変位との関係を例示する図であり、縦軸は内筒4に作用する上下方向の荷重を示し、横軸は内筒4の上下変位を示す。この図16は、筒部13の内径を一定とし、ゴム状弾性体8の外径が異なる3種類の関係を示したものであり、ゴム状弾性体8の外径を、(A)、(B)、(C)の順に大きく設定している(φA>φB>φC)。
【0054】
図16に示すように、隙間15を設けることにより、上下変位が小さい範囲では、防振装置1の上下方向の剛性を小さくすることができ、上下変位が大きくなって隙間15が閉じられた後は、防振装置1の上下方向の剛性が大きくすることができる。
【0055】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、ゴム状弾性体8を内筒4、外リング6及び端板7間に配置するだけでなく、断面L字形の外リング6に代えて外筒を設けると共に、端板7を省略し、内筒及び外筒間にゴム状弾性体を配置するようにしてもよい。この場合、内筒及び外筒間で、ゴム状弾性体が中心軸方向にせん断変形しながら力を伝達する。
【0056】
また、内筒4に案内部材9を設ける代わりに、外リングや外筒に案内部材を設けた構成も採用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 防振装置
2 エンジン
3 エンジン側ブラケット
4 内筒
4a 中央穴
5 フレーム側ブラケット
6 外リング
7 端板
7a 中央穴
8 ゴム状弾性体
9 案内部材
9a 中央穴
10 防振ゴム
11 ボルト
12 筒部
13 筒部
14 スリット
15 隙間
16 段差
17 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側部材に取り付けられる内筒と、該内筒の外側に配置されてフレーム側部材に取り付けられる外リングと、前記内筒の端部に設けられた端板と、前記内筒、外リング及び端板間に配置されたゴム状弾性体とを備え、前記内筒及び外リングのうちの一方に、他方と径方向に対向して前記内筒をその中心軸方向に案内する案内部材が設けられたことを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記フレーム側部材の両面側に、前記内筒、外リング及びゴム状弾性体からなる二つの防振ゴムが設けられ、該二つの防振ゴムが、その内筒の外端部に前記端板を設けると共に、これらと別体に形成された前記案内部材を両内筒間に介在させて一体化されたことを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記案内部材の周縁部に、内筒の端部に係止される段差が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記案内部材と外リングとの間に、前記内筒の中心軸と直交する方向の移動を許容する隙間が設けられたことを特徴とする請求項2又は3に記載の防振装置。
【請求項5】
前記端板に、その周縁部から前記ゴム状弾性体の外周側に突出する筒部が形成され、該筒部とゴム状弾性体との間に隙間が設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防振装置。
【請求項6】
前記筒部は、その先端が内筒の径方向において外リングとラップする位置に設定され、外リングと当接して内筒の中心軸方向の移動を制限するストッパとされたことを特徴とする請求項5に記載の防振装置。
【請求項7】
エンジン側部材に取り付けられる内筒と、該内筒の外側に配置されてフレーム側部材に取り付けられる外筒と、前記内筒及び外筒間に配置されたゴム状弾性体とを備え、前記内筒及び外筒のうちの一方に、他方と径方向に対向して前記内筒をその中心軸方向に案内する案内部材が設けられたことを特徴とする防振装置。
【請求項1】
エンジン側部材に取り付けられる内筒と、該内筒の外側に配置されてフレーム側部材に取り付けられる外リングと、前記内筒の端部に設けられた端板と、前記内筒、外リング及び端板間に配置されたゴム状弾性体とを備え、前記内筒及び外リングのうちの一方に、他方と径方向に対向して前記内筒をその中心軸方向に案内する案内部材が設けられたことを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記フレーム側部材の両面側に、前記内筒、外リング及びゴム状弾性体からなる二つの防振ゴムが設けられ、該二つの防振ゴムが、その内筒の外端部に前記端板を設けると共に、これらと別体に形成された前記案内部材を両内筒間に介在させて一体化されたことを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記案内部材の周縁部に、内筒の端部に係止される段差が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記案内部材と外リングとの間に、前記内筒の中心軸と直交する方向の移動を許容する隙間が設けられたことを特徴とする請求項2又は3に記載の防振装置。
【請求項5】
前記端板に、その周縁部から前記ゴム状弾性体の外周側に突出する筒部が形成され、該筒部とゴム状弾性体との間に隙間が設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防振装置。
【請求項6】
前記筒部は、その先端が内筒の径方向において外リングとラップする位置に設定され、外リングと当接して内筒の中心軸方向の移動を制限するストッパとされたことを特徴とする請求項5に記載の防振装置。
【請求項7】
エンジン側部材に取り付けられる内筒と、該内筒の外側に配置されてフレーム側部材に取り付けられる外筒と、前記内筒及び外筒間に配置されたゴム状弾性体とを備え、前記内筒及び外筒のうちの一方に、他方と径方向に対向して前記内筒をその中心軸方向に案内する案内部材が設けられたことを特徴とする防振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−141041(P2012−141041A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−947(P2011−947)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
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