説明

電動機駆動装置

【課題】リレーをオフする際に溶着などの不具合の発生を抑制する。
【解決手段】第2のバッテリ30の蓄電割合SOC2が閾値Sref未満のときには、モータMG1の逆起電圧Vm1が第1のバッテリ26の電圧と第2のバッテリ30の電圧のうち小さい方の参照電圧Vref以下となったときに第1のインバータ回路22をシャットダウンし、第1のインバータ回路22のシャットダウンとは独立にモータMG2の逆起電圧Vm2が参照電圧Vref以下となったときに第2のインバータ回路24とをシャットダウンし、第1のインバータ回路22と第2のインバータ回路24のいずれもがシャットダウンしているときに昇圧コンバータ28をシャットダウンし、その後に、第2のシステムメインリレーSMR2をオフとする。これにより、第2のシステムメインリレーSMR2に電流が流れていない状態で第2のシステムメインリレーSMR2をオフすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子のスイッチングにより第1の電動機を駆動する第1のインバータ回路と、第1のインバータ回路と共通の正負極母線に接続されスイッチング素子のスイッチングにより第2の電動機を駆動する第2のインバータ回路と、充放電可能な第1の蓄電池と、スイッチング素子のスイッチングにより第1の蓄電池の電圧を昇圧して正負極母線間に供給可能な昇圧回路と、充放電可能な第2の蓄電池と、昇圧回路に対して第1の蓄電池の接続と接続の切り離しとが可能な第1のリレーと、正負極母線間に対して第2の蓄電池の接続と接続の切り離しとが可能な第2のリレーと、を備え、第2の蓄電池の蓄電割合が所定割合未満のときに第2のリレーをオフする電動機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動機駆動装置としては、車両に搭載され、高電圧バッテリと、高電圧バッテリの直流を三相交流に変換して走行用モータを駆動するインバータ回路を含むパワードライブユニット(PDU)と、高圧バッテリとインバータ回路との間に介在するメインコンタクタ(リレー)とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、イグニッションオフされた場合、モータ回転数が閾値以下のときにPDUのスイッチングを停止し、その後、メインコンタクタを遮断している。これにより、走行中にイグニッションオフされたときに、走行用モータに生じている逆起電圧が比較的大きな状態でメインコンタクタが遮断されるのを回避し、メインコンタクタの劣化を防止するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−6438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動機の駆動回路として、二つの電動機をそれぞれ駆動するために共通の正負極母線に接続された二つのインバータ回路と、直流電力を昇圧回路を介して正負極母線間に供給する第1の蓄電池と、直流電力を昇圧回路を介さずに正負極母線間に供給する第2の蓄電池と、第1の蓄電池の昇圧回路への接続とその切り離しとが可能な第1のリレーと、第2の蓄電池の正負極母線間への接続とその切り離しとが可能な第2のリレーとを備えるタイプの駆動装置では、イグニッションオフされると、第1および第2のリレーをオフするが、第2のリレーのみをオフとし第2の蓄電池を正負極母線から切り離しても第1の蓄電池の充放電により電動機を駆動することもできる。したがって、こうしたタイプの駆動装置において第2のリレーのみをオフする場合でも、第2のリレーに劣化が生じないよう適切に行なうことが求められる。
【0005】
本発明の電動機駆動装置は、リレーをオフする際の劣化を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動機駆動装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電動機の駆動装置は、
スイッチング素子のスイッチングにより第1の電動機を駆動する第1のインバータ回路と、前記第1のインバータ回路と共通の正負極母線に接続されスイッチング素子のスイッチングにより第2の電動機を駆動する第2のインバータ回路と、充放電可能な第1の蓄電池と、スイッチング素子のスイッチングにより前記第1の蓄電池の電圧を昇圧して前記正負極母線間に供給可能な昇圧回路と、充放電可能な第2の蓄電池と、前記昇圧回路に対して前記第1の蓄電池の接続と該接続の切り離しとが可能な第1のリレーと、前記正負極母線間に対して前記第2の蓄電池の接続と該接続の切り離しとが可能な第2のリレーと、前記第2の蓄電池の全容量に対する蓄電量の割合としての蓄電割合を演算する蓄電割合演算手段と、前記演算された蓄電割合が所定割合未満のときに前記第2のリレーをオフするリレーオフ制御手段とを備える電動機駆動装置において、
前記リレーオフ制御手段は、前記第2の電動機の運転状態に拘わらず前記第1の電動機が所定の運転状態にあるときに前記第1のインバータ回路をシャットダウンし、前記第1の電動機の運転状態に拘わらず前記第2の電動機が所定の運転状態にあるときに前記第2のインバータ回路をシャットダウンし、前記第1のインバータ回路と前記第2のインバータ回路のいずれもがシャットダウンされたときに前記昇圧回路をシャットダウンし、前記昇圧回路がシャットダウンされたときに前記第2のリレーをオフする手段であることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電動機駆動装置では、第2の蓄電池の全容量に対する蓄電量の割合としての蓄電割合を演算し、演算された蓄電割合が所定割合未満の場合、第2の電動機の運転状態に拘わらず第1の電動機が所定の運転状態にあるときに第1のインバータ回路をシャットダウンし、第1の電動機の運転状態に拘わらず第2の電動機が所定の運転状態にあるときに第2のインバータ回路をシャットダウンし、第1のインバータ回路と第2のインバータ回路のいずれもがシャットダウンされたときに昇圧回路をシャットダウンし、昇圧回路がシャットダウンされたときに第2のリレーをオフする。これにより、二つのインバータ回路と二つの蓄電池とを備える装置であっても、第2のリレーに電流がほとんど流れない状態でオフすることができ、第2のリレーをオフする際の劣化を抑制することができる。
【0009】
こうした本発明の電動機駆動装置において、前記リレーオフ制御手段は、前記第1の電動機の前記所定の運転状態として該第1の電動機の回転数に基づいて該第1の電動機により生じる逆起電圧を算出すると共に該算出した逆起電圧が前記第1の蓄電池の電圧と前記第2の蓄電池の電圧のうちの小さい方の電圧以下のときに前記第1のインバータ回路をシャットダウンし、前記第2の電動機の前記所定の運転状態として該第2の電動機の回転数に基づいて該第2の電動機により生じる逆起電圧を算出すると共に該算出した逆起電圧が前記第1の蓄電池の電圧と前記第2の蓄電池の電圧のうちの小さい方の電圧以下のときに前記第2のインバータ回路をシャットダウンする手段であるものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例としての電動機駆動装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】電子制御ユニット40により実行されるリレーオフ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】電子制御ユニット40により実行されるMG1シャットダウン制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】電子制御ユニット40により実行されるMG2シャットダウン制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としての電動機駆動装置20の構成の概略を示す構成図である。実施例の駆動装置20は、永久磁石が貼り付けられた回転子と3相コイルが巻回された固定子とからなる同期発電電動機として構成された二つのモータMG1,MG2と、モータMG1を駆動する第1のインバータ回路22と、モータMG2を駆動する第2のインバータ回路24と、例えばリチウムイオン二次電池として構成され容量よりも出力を優先させた特性を有する第1のバッテリ26と、第1のバッテリ26が接続された低圧側とインバータ回路22,24が接続された高圧側との間で電圧を変換して電力のやり取りが可能な昇圧コンバータ28と、第1のバッテリ26と昇圧コンバータ28との接続と接続の解除とが可能な第1のシステムメインリレーSMR1と、例えばリチウムイオン二次電池として構成され出力よりも容量を優先させた特性を有する第2のバッテリ30と、第2のバッテリ30と第1および第2のインバータ回路22,24との接続と接続の解除とが可能な第2のシステムメインリレーSMR2と、装置全体をコントロールする電子制御ユニット40と、を備える。
【0013】
第1のインバータ回路22は、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT11〜T16と、トランジスタT11〜T16に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16とにより構成されている。トランジスタT11〜T16は、正極母線32と負極母線34とに対してソース側とシンク側になるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータMG1の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。第2のインバータ回路24は、第1のインバータ回路22と同様に、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT21〜T26と、トランジスタT21〜T26に逆方向に並列接続された6つのダイオードD21〜D26とにより構成されている。トランジスタT21〜T26は、第1のインバータ回路22と共通の正極母線32と負極母線34とに対してソース側とシンク側になるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータMG2の三相コイルの各々が接続されている。
【0014】
昇圧コンバータ28は、2つのトランジスタT31,T32とトランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32とリアクトルLとにより構成されている。2つのトランジスタT31,T32は、それぞれ正極母線32,負極母線34に接続されており、その接続点にリアクトルLが接続されている。また、リアクトルLと負極母線34には、それぞれ第1のバッテリ26の正極端子と負極端子が接続されている。
【0015】
電子制御ユニット40は、CPU42を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU42の他に処理プログラムを記憶するROM44と、データを一時的に記憶するRAM46と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートと、を備える。この電子制御ユニット40には、モータMG1のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ51からの回転位置θm1やモータMG2のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ52からの回転位置θm2,モータMG1の三相コイルのV相,W相の各相に流れる相電流を検出する電流センサ53V,53Wからの相電流Iv1,Iw1,モータMG2の三相コイルのV相,W相の各相に流れる相電流を検出する電流センサ54V,54Wからの相電流Iv2,Iw2,第1のバッテリ26の出力端子に取り付けられた電流センサ55からの充放電電流Ib1,第1のバッテリ26の端子間に接続された電圧センサ56からの端子間電圧Vb1,第2のバッテリ30の出力端子に取り付けられた電流センサ57からの充放電電流Ib2,第2のバッテリ30の端子間に接続された電圧センサ58からの端子間電圧Vb2などが入力ポートを介して入力されている。また、電子制御ユニット40からは、第1のインバータ回路22のスイッチング素子T11〜T16へのスイッチング制御信号や第2のインバータ回路24のスイッチング素子T21〜T26へのスイッチング制御信号,昇圧コンバータ28のスイッチング素子T31,T32へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、電子制御ユニット40は、回転位置検出センサ51,52からの回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。さらに、電子制御ユニット40は、第1のバッテリ26と第2のバッテリ30とを管理するために、電流センサ55により検出された充放電電流Ib1の積算値に基づいて第1のバッテリ26から放電可能な蓄電量の全容量に対する割合としての蓄電割合SOC1を演算すると共に電流センサ57により検出された充放電電流Ib2の積算値に基づいて第2のバッテリ30から放電可能な蓄電量の全容量に対する割合としての蓄電割合SOC2を演算している。
【0016】
こうして構成された実施例の電動機駆動装置20は、モータMG1,MG2を走行用のモータとして備える電動車両に搭載されており、アクセル開度や車速などに基づいて走行に要求される要求トルクを設定し、設定した要求トルクにより走行するようモータMG1,MG2からそれぞれ出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*に応じたトルクがモータMG1,MG2から出力されるよう第1のインバータ回路22と第2のインバータ回路24と昇圧コンバータ28とをスイッチング制御する。
【0017】
上述した電動車両には、図示しないが、家庭用電源などの外部電源からの交流電力を直流電力に変換して第1のバッテリ26と第2のバッテリ30とを充電可能な充電器を備えており、外部電源が接続されたときに、充電器を制御することにより、外部電源の電力を用いて第1のバッテリ26と第2のバッテリ30とを満充電や満充電に近い充電状態とする。
【0018】
次に、こうして構成された実施例の電動機駆動装置20の動作、特に、第2のシステムメインリレーSMR2をオフして第2のバッテリ30を正負極母線32,34から切り離す際の動作について説明する。図2は、実施例の電子制御ユニット40により実行されるリレーオフ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、システム起動されてから第2のシステムメインリレーSMR2がオフされるまでに亘って所定時間毎に繰り返し実行される。
【0019】
リレーオフ制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット40のCPU42は、まず、電流センサ57からの第2のバッテリ30の充放電電流Ib2を入力し(ステップS100)、入力した充放電電流Ib2を積算して第2のバッテリ30の蓄電割合SOC2を演算し(ステップS110)、演算した蓄電割合SOC2が閾値Sref未満か否かを判定する(ステップS120)。ここで、閾値Srefは、第2のバッテリ30が完全放電に近い状態にあるか否かを判定するための閾値であり、例えば、20%や30%などのように予め設定されている。蓄電割合SOC2が閾値Sref未満でないときには、第2のリレー30を遮断する必要はないから、このまま本ルーチンを終了する。一方、蓄電割合SOC2が閾値Sref未満と判定されると、第1のインバータ回路22と第2のインバータ回路24に対してシャットダウンを要求するためのシャットダウン要求フラグFsdを値1に設定する(ステップS130)。ここで、シャットダウン要求フラグFsdは、システム起動されたときに値0に初期化され、ステップS130により値0から値1に設定される。また、第1のインバータ回路22のシャットダウン処理は図3のMG1シャットダウン制御ルーチンを所定時間毎に繰り返し実行することにより行なわれ、第2のインバータ回路24のシャットダウン処理は図4のMG2シャットダウン制御ルーチンを所定時間毎に繰り返し実行することにより行なわれる。以下、図3のMG1シャットダウン制御ルーチンと、図4のMG2シャットダウン制御ルーチンとを順に説明する。
【0020】
図3のMG1シャットダウン制御ルーチンでは、回転位置検出センサ51からの回転位置θm1に基づいて演算されるモータMG1の回転数Nm1と電圧センサ56からの第1のバッテリ26の端子間電圧Vb1と電圧センサ58からの第2のバッテリ30の端子間電圧Vb2とを入力する(ステップS200)。続いて、シャットダウン要求フラグFsdの値を調べ(ステップS210)、シャットダウン要求フラグFsdが値0のときには、シャットダウンは要求されていないから、そのまま本ルーチンを終了する。一方、シャットダウン要求フラグFsdが値1のときには、係数k1とモータMG1の回転数Nm1と逆起電力定数Ke1とを乗じて演算されるモータMG1の逆起電圧Vm1と第1のバッテリ26の端子間電圧Vb1と第2のバッテリ30の端子間電圧Vb2とのうち小さい方の電圧(参照電圧Vref)とを比較する(ステップS220)。なお、係数k1は安全係数であり、例えば1.1や1.2などの値が用いられる。逆起電圧Vm1が参照電圧Vrefよりも大きいときには、逆起電圧Vm1が過大で第1のインバータ回路22をシャットダウンするのは適切でないと判断し、そのまま本ルーチンを終了し、逆起電圧Vm1が参照電圧Vref以下のときには、第1のインバータ回路22をシャットダウン(ゲート遮断)して(ステップS230)、本ルーチンを終了する。
【0021】
図4のMG2シャットダウン制御ルーチンでは、回転位置検出センサ52からの回転位置θm2に基づいて演算されるモータMG1の回転数Nm2と電圧センサ56からの第1のバッテリ26の端子間電圧Vb1と電圧センサ58からの第2のバッテリ30の端子間電圧Vb2とを入力する(ステップS300)。続いて、シャットダウン要求フラグFsdの値を調べ(ステップS310)、シャットダウン要求フラグFsdが値0のときには、本ルーチンを終了し、シャットダウン要求フラグFsdが値1のときには、係数k2(係数k1と同様の安全係数)とモータMG2の回転数Nm2と逆起電力定数Ke2とを乗じて演算されるモータMG2の逆起電圧Vm2と前述した参照電圧Vrefとを比較する(ステップS320)。逆起電圧Vm2が参照電圧Vrefよりも大きいときには、逆起電圧Vm2が過大で第2のインバータ回路24をシャットダウンするのは適切でないと判断し、そのまま本ルーチンを終了し、逆起電圧Vm2が参照電圧Vref以下のときには、第2のインバータ回路24をシャットダウン(ゲート遮断)して(ステップS330)、本ルーチンを終了する。このように、第1のインバータ回路22と第2のインバータ回路24は、それぞれ独立してシャットダウンが可能か否かを判定してシャットダウン処理を行なう。
【0022】
図2のリレーオフ制御ルーチンに戻って、シャットダウン要求フラグFsdを値1に設定すると、第1のインバータ回路22がシャットダウンされているか否かを判定すると共に(ステップS140)、第2のインバータ回路24がシャットダウンされているか否かを判定し(ステップS150)、第1のインバータ回路22と第2のインバータ回路24のいずれか又は両方がシャットダウンされていないときには、第2のシステムメインリレーSMR2をオフするタイミングでないと判断し、本ルーチンを終了する。一方、第1のインバータ回路22と第2のインバータ回路24のいずれもがシャットダウンされているときには、次に、昇圧コンバータ28をシャットダウンし(ステップS160)、その後に、第2のシステムメインリレーSMR2をオフとして(ステップS170)、本ルーチンを終了する。これにより、第2のシステムメインリレーSMR2を流れる電流がゼロまたはゼロ付近にある状態で第2のシステムメインリレーSMR2をオフすることができるため、第2のシステムメインリレーSMR2に溶着などの不具合は生じない。
【0023】
なお、第2のシステムメインリレーSMR2がオフされると、昇圧コンバータ28のシャットダウンを解除し、トルク指令Tm1*,Tm2*が再度入力されたときに対応するモータMG1,MG2を駆動するインバータ回路22,24のシャットダウンが解除される。この場合、第1のバッテリ26の充放電を伴ってモータMG1,MG2が駆動されることになる。
【0024】
以上説明した実施例の電動機駆動装置20によれば、モータMG1の逆起電圧Vm1が第1のバッテリ26の電圧と第2のバッテリ30の電圧のうち小さい方の参照電圧Vref以下となったときに第1のインバータ回路22をシャットダウンし、第1のインバータ回路22のシャットダウンとは独立にモータMG2の逆起電圧Vm2が参照電圧Vref以下となったときに第2のインバータ回路24とをシャットダウンし、第1のインバータ回路22と第2のインバータ回路24のいずれもがシャットダウンしているときに昇圧コンバータ28をシャットダウンし、その後に、第2のシステムメインリレーSMR2をオフとするから、より確実に第2のシステムメインリレーSMR2を流れる電流がゼロまたはゼロ付近にある状態で第2のシステムメインリレーSMR2をオフすることができ、第2のシステムメインリレーSMR2に溶着などの不具合が生じるのを抑制することができる。
【0025】
実施例の電動機駆動装置20では、第1のインバータ回路22と第2のインバータ回路24のシャットダウン判定を、モータMG1,MG2の逆起電圧Vm1,Vm2が第1のバッテリ26の端子間電圧Vb1と第2のバッテリ30の端子間電圧Vb2とのうち小さい方の電圧(参照電圧Vref)以下か否かを判定することにより行なうものとしたが、モータMG1,MG2の逆起電圧Vm1,Vm2が第2のバッテリ30の端子間電圧Vb2以下か否かを判定することにより行なうものとしてもよい。
【0026】
実施例の電動機駆動装置20では、第1のバッテリ26と第2のバッテリ30をリチウムイオン二次電池として構成するものとしたが、これに限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など種々の蓄電池を用いることができる。また、第1のバッテリ26を高出力型の特性とすると共に第2のバッテリ30に高容量型の特性とするものに限られず、第1のバッテリ26と第2のバッテリ30に同一の特性のものを用いるものとしても構わない。
【0027】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、第1のインバータ回路22が「第1のインバータ回路」に相当し、第2のインバータ回路24が「第2のインバータ回路」に相当し、第1のバッテリ26が「第1の蓄電池」に相当し、昇圧コンバータ28が「昇圧回路」に相当し、第2のバッテリ30が「第2の蓄電池」に相当し、第1のシステムメインリレーSMR1が「第1のリレー」に相当し、第2のシステムメインリレーSMR2が「第2のリレー」に相当し、第2のバッテリ30の充放電電流Ib1に基づいて第2のバッテリ30の蓄電割合SOC2を演算する図2のリレーオフ制御ルーチンのステップS100,S110の処理を実行する電子制御ユニット40のCPU42が「蓄電割合演算手段」に相当し、図2のリレーオフ制御ルーチンのステップS120〜S170の処理と図3のMG1シャットダウン制御ルーチンと図4のMG2シャットダウン制御ルーチンとを実行する電子制御ユニット40のCPU42が「リレーオフ制御手段」に相当する。
【0028】
なお、実施例の要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、実施例の要素をもって課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明のついての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、自動車産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
20 駆動装置、22 第1のインバータ回路、24 第2のインバータ回路、26 第1のバッテリ、28 昇圧コンバータ、30 第2のバッテリ、32 正極母線、34 負極母線、40 電子制御ユニット、42 CPU、44 ROM、46 RAM、51,52 回転位置検出センサ、53V,53W,54V,54W 電流センサ、55 電流センサ、56 電圧センサ、57 電流センサ、58 電圧センサ、T11〜T16,T21〜T26,T31,32 トランジスタ、D11〜D16,D21〜D26,D31,32 ダイオード、L リアクトル、MG1,MG2 モータ、SMR1 第1のシステムメインリレー、SMR2 第2のシステムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子のスイッチングにより第1の電動機を駆動する第1のインバータ回路と、前記第1のインバータ回路と共通の正負極母線に接続されスイッチング素子のスイッチングにより第2の電動機を駆動する第2のインバータ回路と、充放電可能な第1の蓄電池と、スイッチング素子のスイッチングにより前記第1の蓄電池の電圧を昇圧して前記正負極母線間に供給可能な昇圧回路と、充放電可能な第2の蓄電池と、前記昇圧回路に対して前記第1の蓄電池の接続と該接続の切り離しとが可能な第1のリレーと、前記正負極母線間に対して前記第2の蓄電池の接続と該接続の切り離しとが可能な第2のリレーと、前記第2の蓄電池の全容量に対する蓄電量の割合としての蓄電割合を演算する蓄電割合演算手段と、前記演算された蓄電割合が所定割合未満のときに前記第2のリレーをオフするリレーオフ制御手段とを備える電動機駆動装置において、
前記リレーオフ制御手段は、前記第2の電動機の運転状態に拘わらず前記第1の電動機が所定の運転状態にあるときに前記第1のインバータ回路をシャットダウンし、前記第1の電動機の運転状態に拘わらず前記第2の電動機が所定の運転状態にあるときに前記第2のインバータ回路をシャットダウンし、前記第1のインバータ回路と前記第2のインバータ回路のいずれもがシャットダウンされたときに前記昇圧回路をシャットダウンし、前記昇圧回路がシャットダウンされたときに前記第2のリレーをオフする手段である
ことを特徴とする電動機駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−223053(P2012−223053A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89269(P2011−89269)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】