説明

電動車両用駆動モータ

【課題】低速回転域で所定のトルクを確保し高速回転域で逆起電力の発生を低減すると共に、低速回転域および高速回転域で電流の流れるタイミングを適正に設定できるようなシンプルな構成の電動車両用駆動モータを提供する。
【解決手段】電動車両用駆動モータは、2n個の磁極を有するマグネットを備えるロータ、ロータの各磁極に対向し周面に6m個の突起部が有するステータコア24、回転検出部、電流制御部、駆動回路を含む。ステータコア24は周方向に等間隔で形成される3m個の第1突起部群と3m個の第2突起部群とを含み、第1突起部群を構成する第1突起部36と第2突起部群を構成する第2突起部38とが交互に配置される。第1突起部36には第1コイルが巻回され、第2突起部38には第2コイルが巻回される。第2突起部群と第1突起部群とは、第2突起部38が当該第2突起部38を挟む2つの第1突起部36のうち一方に偏って配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用駆動モータ、特に広範囲の回転数域に適用可能な電動車両用駆動モータの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エコロジーの観点から車両の駆動源として電動モータが多く利用されるようになってきている。車両の場合、停止状態から発進してスムーズに加速して高速走行を実現することが望まれる。一方、電動モータの場合、発進時に必要な低速トルクを確保しようとして、例えばモータコイルの巻回数を多くするとモータの単位回転数当たりに発生する逆起電力の大きさの比率(逆起電力定数)が大きくなる。逆起電力定数が大きくなると回転数の上限が低下して高速回転ができなくなる。つまりモータコイルの巻回数を多くすると運転可能な上限回転速度が低く制限される。逆に、高速回転での逆起電力の発生を抑制するために、モータコイルの巻回数を少なくして高速領域での回転駆動性能を重視すると、低速トルクの確保が困難になり発進時等の低速領域特性が損なわれる。そのため、他の分野、例えばエレベーターや工作機械の分野では、低速用巻線と高速用巻線を備え、巻線を切り替えることにより低速と高速で利用できる電動機駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−33067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように巻き線切り替えによる制御の場合でも、モータの駆動電流はコイルのインダクタンスにより通電のタイミングが遅れるので、高速回転域では電流の流れるタイミング(位相)が相対的に遅れ気味になり、発生するトルクが低下してしまうという不都合が生じやすい。また、このトルクの低下を改善するために、高速回転域で電流の通電のタイミングの遅れを補うように進角して通電するように設定すると、低速回転域で効率ロスが生じて好ましくない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、低速回転域で所定のトルクを確保し高速回転域で逆起電力の発生を低減すると共に、シンプルな構成で低速回転域および高速回転域で電流の通電のタイミングを適正に切替えることができるような電動車両用駆動モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電動車両用駆動モータは、2n個(nは自然数)の磁極を円周方向に配列するマグネットを備える回転自在なロータと、ロータの各磁極に対向して配置されると共に、周面に6m個(mは自然数)の突起部が配列されるステータコアであって、突起部として周方向に等間隔で形成される3m個の第1突起部群と、突起部として周方向に等間隔で形成される3m個の第2突起部群とを含み、第1突起部群を構成する第1突起部と第2突起部群を構成する第2突起部とが交互に配置されてなるステータコアと、第1突起部にそれぞれ巻回される第1コイルと、第2突起部にそれぞれ巻回される第2コイルと、ロータの回転状態を検出する回転検出手段と、回転検出手段の検出した結果にしたがって、第1コイルと第2コイルに流れる電流量を制御する電流制御手段と、を含む。第2突起部群と第1突起部群とは、第2突起部が当該第2突起部を挟む2つの第1突起部のうち一方に偏って配置されるように形成されている。
【0007】
この態様によると、第1突起部群に巻回される第1コイルに流れる電流と第2突起部群に巻回される第2コイルに流れる電流を別々に制御して回転駆動を制御できる。例えば、第1コイルと第2コイルの両方に電流を流せば、両方のコイルの巻回数に対応する駆動トルクを得ることができる。つまり、低速回転域で高トルクを発生するモードとなる。また、第1コイルと第2コイルのいずれか一方に電流を流せば、高トルクを発生するモードに比べて実質的に巻回数の少ないコイルに電流を流したときと同等になる。その結果、回転数が増加してもそれに伴う逆起電力の発生が低減され、高速回転域で逆起電力の影響が小さい駆動が可能になる。さらに、第2突起部群と第1突起部群とは、第2突起部がこの第2突起部を挟む2つの第1突起部のうち一方に偏って配置されるので、片方のコイルに電流を流さないようにするだけで、電流の通電のタイミングの切替えが可能なる。つまり、高速回転域において設定したい電流の通電のタイミングに応じて第2突起部群の偏り量を設定することだけで、通電タイミングのズレを矯正して高速回転域におけるトルクの低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低速回転域で所定のトルクを確保し高速回転域で逆起電力の発生を低減すると共に、シンプルな構成で低速回転域および高速回転域で電流の通電のタイミングを適正に切替えることができる電動車両用駆動モータが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の電動車両用駆動モータのシステム構成を説明するブロック図である。
【図2】本実施形態のステータコアの第1突起部群と第2突起部群の配置例を説明する説明図である。
【図3】図2のステータコアに第1コイルと第2コイルを巻回すると共に、ステータコアの周囲にロータを配置した例を説明する説明図である。
【図4】図4(a)は、低速回転域のために第1コイルと第2コイルを用いた結線状態を説明する説明図であり、図4(b)は、高速回転域のために第1コイルのみを用いた結線状態を説明する説明図である。
【図5】第1コイルと第2コイルの通電状態を切り替えるための電流制御部を含む回路構成を説明する回路図である。
【図6】本実施形態における低速回転時の磁束変化率とそのときに生じるトルクの関係を説明する説明図である。
【図7】図7(a)は低速回転時における磁束変化率と電流のズレを説明する説明図である。図7(b)は高速回転時における磁束変化率と電流のズレを説明する説明図である。
【図8】電流の時定数を電気角に変換した値と平均トルクの関係を説明する説明図である。
【図9】本実施形態の磁極数と突起部数と電気角および機械角の関係を説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態を図面に基づいて説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
なお、以下の説明において特に指定のない角度はモータの1回転を360°とする機械角として記述する。また、以下の説明において電気角はマグネットの磁極の一対のN極とS極(1極対)がなす角度(扇角)を2π(rad)として表現した角度をいう。したがって、2n個の磁極を有する場合は、機械角で360°は、電気角で2π・n(rad)と表現することがある。例えばマグネットの磁極の数2n=8(n=4つまり4極対)である場合に、ロータの1回転は機械角で360°、電気角で2π・4=8π(rad)回転したと表現する。また、以下の説明において特に指定のない場合の“電流”の語は第1コイルまたは第2コイルに流れる駆動電流を指すものとして記述する。
【0012】
図1は、本実施形態の電動車両用駆動モータ10のシステム構成を説明するブロック図である。なお、本実施形態においては、電動車両用駆動モータ10は、モータ本体12、駆動回路14、回転検出センサ16、位置検出部18、速度検出部20、電流制御部22等を含むシステム全体をさすものとして説明する。また、モータ本体を含むハウジングの中に上述した各構成を含み、それ全体を電動車両用駆動モータ10と称してもよい。
【0013】
モータ本体12の詳細は後述するが、3相ブラシレス型のモータで、例えばアウターロータタイプの場合、複数の磁極を円周方向に配列するリング状のマグネットを内周面に備える回転自在なリング状のロータを有する。そして、このロータの内周にマグネットの磁極に対向して配置される複数の突起部(突極)にコイルが巻回されたステータコアが配置される。駆動回路14により公知の3相ブラシレスモータの駆動シーケンスにより駆動電流が各突起部に巻回されたコイルに順次切替えて通電されると、コイルはステータコアの突起部に回転磁界を発生する。そして、ロータのマグネットの駆動用磁極と回転磁界との相互作用により回転駆動力、すなわちトルクが生じる。そして、ロータが駆動電流と電源電圧に応じたトルクと回転数(回転速度)で回転可能となる。モータ本体12の回転状態は、スタータコアに形成された突起部の間に配置されたホールIC等で構成される回転検出センサ16により検出され、回転検出センサ16がその検出結果に基づきロータの状態、すなわち予め定められた基準位置に対するロータの回転位置を検出する。また、速度検出部20は位置検出部18が検出した回転位置の変化に基づき、ロータの回転速度を検出する。なお、後述するが、電流制御部22はロータの回転速度に基づき回転駆動のためにどの突起部群(突極群)に巻回されたコイルに電流を流すか決定するコイル切替手段または電流切替手段としての機能を有する。
【0014】
図2は、本実施形態のモータ本体12に含まれるステータコア24の形状を説明する説明図である。また、図3は、本実施形態のモータ本体12に含まれるステータコア24の突起部26にコイル28が巻回され、その外周側に円環状のマグネット30を有するロータ32が配置されている状態を示している。なお、本実施形態においては、ステータコア24の外周側にロータ32が配置されるアウターロータタイプのモータ構造をモータ本体12の構成例として説明する。
【0015】
ロータ32は、円環状のハウジング34とマグネット30で構成され、ハウジング34の一部にはロータ32の回転力を外部に出力する動力伝達部材(図示省略)が固定されている。例えば、ハウジング34に出力軸の一部が固定されていてもよいし、出力軸に備えられた従動ギアと噛合する駆動ギアが固定されていてもよい。円環状のマグネット30は、2n個(nは自然数)の磁極を円周方向に配列している。図3の場合、S極とN極が交互に配置され、合計で8個の磁極(4極対)が配列されている例を示している。
【0016】
本実施形態のステータコア24は、図3に示すように、ロータ32のマグネット30の各磁極に対向するように内周側に配置される。また、図2に示されるようにステータコア24の周面には6m個(mは自然数)の突起部が配列されている。この突起部がそれぞれ突極になる。図2、図3で示すように、本実施形態の場合、8個(n=4)の磁極に対して12個(m=2)の突起部が形成される例を示している。図2に詳細に示すように、本実施形態のステータコア24は、突起部として周方向に等間隔で形成される3m個の第1突起部群と、突起部として周方向に等間隔で形成される3m個の第2突起部群とを含んでいる。第1突起部群を構成する第1突起部36と第2突起部群を構成する第2突起部38とが交互に配置されている。そして、第2突起部群と第1突起部群は、ある第2突起部38がこの第2突起部38を挟む2つの第1突起部36のうち一方に偏って配置されている。
【0017】
また、第1突起部36には、コイル28として低速回転時および高速回転時に使用する第1コイル40が巻回されている、また、第2突起部38には、コイル28として低速回転時のみに使用する第2コイル42が巻回されている。本実施形態の場合、3相モータであるため、U相、V相、W相が存在し、第1コイル40のU相としてU1−1、U1−2が存在する。また、第1コイル40のV相としてV1−1、V1−2が存在し、第1コイル40のW相としてW1−1、W1−2が存在する。同様に、第2コイル42のU相としてU2−1、U2−2が存在する。また、第2コイル42のV相としてV2−1、V2−2が存在し、第2コイル42のW相としてW2−1、W2−2が存在する。
【0018】
前述したように、第1突起部群の各第1突起部36は機械角で例えば60°の等間隔で配置されている。同様に、第2突起部群の各第2突起部38は機械角で例えば60°の等間隔で配置されている。そして、図2に示すように、ある第2突起部38aがこの第2突起部38aを挟む2つの第1突起部36a、36bのうち一方に偏って配置されている。図2の場合、第2突起部38aが、第1突起部36bより第1突起部36aに偏って配置されている。したがって、第1突起部36aと第2突起部38aで第1扇角θ1を形成し、第2突起部38aと第1突起部36bで第2扇角θ2を形成している。つまり、第1コイル40および第2コイル42は、この第1扇角θ1、第2扇角θ2の関係で配置されることになる。なお、第2突起部群は第1突起部群に対してロータ32を正規の回転方向、例えば時計回り方向と逆の方向に回すようなズレ方で配置しているといえる。
【0019】
図4(a)は、低速回転域のために第1コイル40と第2コイル42に通電するための結線状態を説明する説明図である。図4(a)の場合、U相第1コイルU1とU相第2コイルU2が直列で接続され、V相第1コイルV1とV相第2コイルV2が直列で接続され、W相第1コイルW1とW相第2コイルW2が直列で接続され、Y結線を構成している。一方、図4(b)は、高速回転域のために第1コイルのみに通電するための結線状態を説明する説明図である。図4(b)の場合、U相第2コイルU2とV相第2コイルV2とW相第2コイルW2を回路上離脱させて、U相第1コイルU1とV相第1コイルV1とW相第1コイルW1とで、Y結線を構成している。
【0020】
図5は、第1コイル40と第2コイル42の通電状態を切り替えるための電流制御部22を含む回路構成を説明する図である。図5に示す電流制御部22は、2種類のスイッチSW1とスイッチSW2を含む。電動車両用駆動モータ10を高速モードで使用する場合は、スイッチSW1を導通状態、スイッチSW2を非導通状態にする。また、電動車両用駆動モータ10を低速モードで使用する場合は、スイッチSW1を非導通状態、スイッチSW2を導通状態にする。なお、スイッチSW1とスイッチSW2は、導通状態と非導通状態を制御可能なデバイスであれば特別な制限はない。一例としては、スイッチSW1とスイッチSW2は機械的接点を有するリレーを用いて構成することができる。また別の例としては、スイッチSW1とスイッチSW2は半導体素子を用いて構成することができる。
【0021】
駆動回路44は、トランジスタTr1からTr6が3対のトーテムポール型出力回路を構成している。当該トーテムポール型出力回路の各出力端子は第1コイル40と第2コイル42が接続されてコイルに駆動電流を出力する。トランジスタTr1からTr6は、そのそれぞれのゲートに駆動タイミング生成回路からゲート駆動信号が入力されて導通状態が制御される。トランジスタTr1からTr6は、公知の原理によるPWM駆動をなす。
【0022】
電動車両用駆動モータ10を高速モードで使用する場合は、スイッチSW1を導通状態にして、スイッチSW2を非導通状態にする。この状態で公知の3相ブラシレスモータの駆動シーケンスにより、駆動回路44のトランジスタTr1からTr6を順次切替えて導通状態にする。トランジスタTr1からTr6の導通状態とはPWM駆動のデューティ比が0%以外でそれより大きい状態である。例えば、あるタイミングでU相第1コイルU1からV相第1コイルV1に電流が抜けるようにトランジスタTr1とトランジスタTr4が導通状態になり、U相第1コイルU1が巻かれた突起部とV相第1コイルV1が巻かれた突起部とに磁界を発生させる。次に、U相第1コイルU1からW相第1コイルW1に電流が抜けるようにトランジスタTr1とトランジスタTr6が導通状態になり、U相第1コイルU1が巻かれた突起部とW相第1コイルW1が巻かれた突起部とに磁界を発生させる。同様なスイッチングを行うことで、ステータコア24上で回転磁界が発生して、ステータコア24の外周側に配置されたマグネット30を含むロータ32が回転する。
【0023】
同様に、電動車両用駆動モータ10を低速モードで使用する場合は、スイッチSW1を非導通状態にして、スイッチSW2を導通状態にする。この状態で公知の3相ブラシレスモータの駆動シーケンスにより、駆動回路44のトランジスタTr1からTr6を順次切替えて導通状態を制御する。上述の動作により、第1コイル40と第2コイル42にはトランジスタTr1からTr6によって駆動電流として交番電流が流される。
【0024】
ここで、ロータの角度変化に対するコイルと鎖交する磁束の変化の大きさを磁束変化率というとすると、各コイルが発生させるトルクは、磁束変化率とコイルに流れる駆動電流との積に比例する。つまり、磁束変化率が相対的に小さいタイミングで駆動電流を流した場合に発生するトルクの大きさと比較して、磁束変化率が相対的に大きいタイミングで駆動電流を流した場合に発生するトルクは大きいという関係にある。なお、本実施形態では突起部の中心が磁極の中心に一致しているロータ位置では、磁束変化率がゼロとなり、突起部の中心が磁極のN極とS極の境目に一致しているロータ位置では、磁束変化率が最大となる。また本実施形態では磁束変化率がロータの回転位置の電気角を変数とする正弦関数となるように磁極を構成している。
【0025】
また、コイルに誘起される逆起電力は、時間変化に対するコイルと鎖交する磁束の変化の大きさに比例する。したがって、磁束変化率と逆起電力とは、コイルと鎖交する磁束の変化の大きさに比例する点で共通し、回転速度と駆動電流を一定とする場合には、ロータの角度に対する磁束変化率と逆起電力の波形は相似する。このため磁束変化率は、コイルに誘起される逆起電力を観察することで、間接的に相似波形として確認することができる。
【0026】
電動車両用駆動モータ10を低速モードで使用する場合は、第1コイル40と第2コイル42とが同時に磁界発生に寄与するので、高速モードで使用する場合に第1コイル40のみで磁界を発生させる場合に比べて大きなトルクを発生させることができる。ここで、逆起電力の大きさはモータ本体12の回転速度に比例する。したがって、この場合、モータ本体12は低速回転しているので発生する逆起電力は低く、モータ本体12の回転数の上昇を妨げることはない。一方、電動車両用駆動モータ10を高速モードで使用する場合は、第1コイル40のみで磁界を発生させるので、低速モードで第1コイル40と第2コイル42とが同時に磁界を発生した場合に比べて、実質的に稼働するコイルの巻回数が減る。その結果、発生する逆起電力は低くなり、モータ本体12の回転数の上昇を妨げない。
【0027】
上述のように本実施形態の場合、第1コイル40と第2コイル42を用いることにより低速回転時に有効な巻き線状態と、第1コイル40のみを用いることにより高速回転時に有効な巻き線状態とを切り替えている。図6は、第1コイル40の磁束変化率と第2コイル42の磁束変化率、およびその合成による磁束変化率とそのとき発生しているトルクの関係、さらに第1コイル40と第2コイル42が駆動しているときに流れる電流の関係例を示した説明図である。横軸は4対極のマグネット30でロータ32を構成する場合に、ロータ32の回転位置(角度)を電気角で4π(rad)すなわちロータが半周回転する分を示している。なお、残りの半周回転する分は同様の変化の繰り返しとなるので、記載を省略している。
【0028】
曲線Aが第1コイル40による1相分の磁束変化率であり、曲線Bが第2コイル42による1相分の磁束変化率である。そして、曲線Cが本実施形態で低速モードと称している第1コイル40と第2コイル42を両方用いたときに発生する第1コイル40による1相分の磁束変化率と第2コイル42による1相分の磁束変化率が合成された状態の合成磁束変化率である。また、波形Dが低速モードのときに流れている電流である。さらに、曲線Eは各相のコイルで発生するトルクを3相分合成した合成トルクである。なお、本実施形態で高速モードと称している場合の磁束変化率は、第1コイル40のみの逆起電力を考慮すればよいので、第1コイル40に誘起される逆起電力と対応する曲線Aで示される。
【0029】
ところで、三相モータの各相のコイルに交番電流が流れるときには、電流は瞬間的に流れだすのではなく、そのコイルのインダクタンスにより立ち上がりに遅れ時間がある。つまり、コイルの交番電流に遅れ方向のズレが生じる。この遅れ時間はロータの回転数に係わらずほぼ一定である。ロータの回転数が低い時は、交番電流の交番周期が長いから立ち上がりの遅れ時間も相対的に無視出来る程度である。一方、回転数が上昇して、交番電流の周波数が高くなり交番周期が短くなると、電流の立ち上がりの遅れ時間も相対的に大きくなり、無視できなくなる。つまり、回転数の上昇にしたがい電流の流れるタイミングの遅れの影響が顕著になる。図7(a)、図7(b)は、ロータの回転数が低速モードのときと高速モードのときとで、高速モードの方が電流の流れるタイミングが、発生している逆起電力に対して遅れることを説明する説明図である。
【0030】
図7(a)、図7(b)は、ロータ32の回転角に対する発生トルクの波形をシミュレーションで求めたものである。図7(a)は、コイルの電流に遅れ方向のズレが相対的に少ない場合であり、図7(b)は、コイルの電流に遅れ方向のズレが相対的に大きい場合である。上述したように、トルクは磁束変化率と電流の積に比例するから、相対的に磁束変化率が大きいタイミングで電流を流すことで大きなトルクが生じる。逆に、相対的に磁束変化率が小さいタイミングで電流を流した場合は発生するトルクは小さくなる。さらに、磁束変化率がマイナスであるタイミングで電流を流すと負方向すなわち逆方向のトルクを生じる。コイルの電流に遅れ方向のズレが少ない場合は、電流は相対的に磁束変化率が大きいタイミングで流れるので、発生トルクの平均値も大きい(図7(a))。一方、コイルの電流に大きな遅れ方向のズレがある場合は、電流は相対的に磁束変化率が小さいタイミングでも流れるので、発生トルクの平均値が小さくなる(図7(b))。また、コイルの電流にさらに大きな遅れ方向のズレがある場合は、電流は磁束変化率がマイナスであるタイミングでも流れるので、負方向トルクを生じることで発生トルクの平均値がさらに小さくなる。なお、逆にコイルの電流のタイミングに進み方向のズレがある場合も発生トルクの平均値が小さくなる点は同様である。前述したようにコイルの電流の遅れ時間は、図7(b)のラインaで示す電流の通電開始タイミングから、電流ピークの63%に相当するラインbのタイミングまでの時定数τで表すことができる。また、時定数τは回転数に関わらず一定であるが、交番周期を2πとする電気角に変換した値は回転数に比例して大きくなる。したがって回転数が上昇し、交番周期が短くなるにつれて時定数τを電気角に変換した値は大きくなり、電流の遅れ影響が大きくなる。
【0031】
図8は、コイルのインダクタンスによる電流の時定数τと発生トルクの平均の大きさをシミュレーションで求めたものである。横軸は時定数τを電気角に変換した値である。縦軸は各相のコイルで発生するトルクを3相分を合成した合成トルクの1回転中の平均の大きさ(以下、「平均トルク」という。)である。例えば、図8において、電流の時定数τを電気角に変換した値がπ/6のとき平均トルクは、電流の遅れがない電気角が0(rad)のときの平均トルクに対して79.3%である。つまり、電流の遅れがない場合に対し、20.7%平均トルクが低下している。つまり、図6において、高速モードへの切り替えのために第2コイル42への電流を遮断したとき、図6で第1コイル40のみの磁束変化率(曲線A)の位相変化量と、コイルの電流の遅れが揃うようにすれば平均トルクの低下が改善される。この場合、第1突起部36に対して第2突起部38を周方向に回転させる、つまり進角させることで磁束変化率の位相を変化させることができる。また、前述したように、回転数(回転速度)が大きくなると、電流の遅れ方向の時定数τを電気角に変換した値が大きくなり、平均トルクは低下する。つまり、電動車両用駆動モータ10で必要とされる回転数(回転速度)に対応して第1突起部36と第2突起部38の配置関係を設定すれば高速モードへの切り替え時に平均トルクが向上するような調整ができる。
【0032】
発明者らの実験で平均トルクの低下が5%を超える場合には実用上改善する必要があることを見いだした。また、シミュレーションの結果、図8に示すように、電流の時定数τを電気角に変換した値がπ/18以下の範囲では平均トルクの低下が5%以内になることを見いだした。したがって、高速回転時の第1コイル40による時定数τを電気角に変換した値がπ/18になるまでは、第1コイル40と第2コイル42を用いた低速モードでトルク重視の駆動を行うことが好ましいことを確認した。また、高速回転時の電流の時定数τを電気角に変換した値がπ/18以上になる場合に、低速モードから高速モードに切り替えられるように、第1コイル40と第2コイル42の配置関係、すなわち第1突起部36と第2突起部38の配置関係を設定すればよいということに想到した。
【0033】
低速モードで電流の時定数τがほぼ無視できる場合には、図6の磁束変化率を示す曲線Cと電流を示す曲線Dとは、それぞれピークのタイミングがほぼ一致している。したがって、高速回転になり電流の時定数τを電気角に変換した値がπ/18になったときに、この値に合わせて磁束変化率の位相を図6の第1コイル40による磁束変化率を示す曲線Aのようにπ/18ずらすことで、平均トルクの低下を5%以下に抑えることができる。つまり、第1コイル40による磁束変化率を示す曲線Aは、第1コイル40と第2コイル42による磁束変化率を示す曲線Cを基準にπ/18遅れるように第1突起部36と第2突起部38の配置関係を設定すればよい。曲線Cは、曲線Aと曲線Bの合成なので、第2コイル42による磁束変化率を示す曲線Bは、第1コイル40による磁束変化率を示す曲線Aを基準にπ/9進めれば、上述のような設定ができる。
【0034】
したがって、図2における第1突起部36aと第2突起部38aで示される第1扇角θ1と、第2突起部38aと第1突起部36bで示される第2扇角θ2の電気角の差がπ/9になるように第1突起部群と第2突起部群を配置すれば、高速モードに切り替えたときの磁束変化率の位相が電流の時定数τを電気角に変換した値に一致するような調整ができる。この場合、第1扇角θ1と第2扇角θ2の電気角の差を大きくすればするほど高速回転に適した第1突起部群と第2突起部群の配置ができることになる。ただし、本実施形態の電動車両用駆動モータ10は、三相コイルなので電気角の差がπ/3以上となってしまうと逆回転にトルクをかけることになる。したがって、第1扇角θ1と第2扇角θ2は電気角の差でπ/3までとしている。なお、第1扇角θ1および第2扇角θ2は回転体(ロータ)の回転中心と突起部先端から発生する磁気の中心を結ぶ線同士がなす角度である。
【0035】
図9は、第1扇角θ1と第2扇角θ2の電気角の差でπ/9とする場合と2π/3とする場合で、ロータ32の磁極数とステータコア24の突起部数(スロット数、ティース数、突極数と表現する場合もある)の組合せに対応する第1扇角θ1と第2扇角θ2を機械角で例示している。なお、モータを構成する場合、磁極数と突起部数は、様々な組合せがある。磁極数は偶数(2n:nは自然数)であればよい。磁極が少ないと、コイルの巻回数に制限を受けることがあり、それを考慮して本実施形態の場合は磁極数の最低数を4個として、「n」は2の倍数としている。突起部数は、3相のそれぞれの相に2個の突起部を備えることを単位として6の倍数(6m:mは自然数)としている。また、本実施形態の場合、突起部は、第1突起部群と第2突起部群があるため、突起部数全体としては3の倍数を示す6mで示し、第1突起部群の突起部数を3m、第2突起部群の突起部数を3mと表し、「m」は1から始まる自然数としている。例えば、磁極数が4個の場合、突起部数は6個である。このとき第1突起部36は3個、第2突起部38は3個である。
【0036】
前述したように低速回転時と高速回転時の磁束変化率の位相の差が電気角でπ/18となる場合、第1突起部36aと第2突起部38aで示される第1扇角θ1と、第2突起部38aと第1突起部36bで示される第2扇角θ2の電気角の差がπ/9になる。
【0037】
磁極数を2nとすると、電気角=機械角×π/180×nの関係がある。したがって第1扇角θ1と第2扇角θ2の電気角の差をθd、機械角の差をθkとすると、両者には式1の関係を有する。
【0038】
θk=θd×180/π/n ・・・(式1)
θ1、θ2の機械角をそれぞれθ1k、θ2kとすると以下のように表わされる。
【0039】
θk=θ2k−θ1k ・・・(式2)
また突起部の平均角度間隔θaは、突起部数を6mとして以下のように表わされる。
【0040】
θa=360/(6m)=60/m ・・・(式3)
またθaはθ1kとθ2kの平均でもあるから以下のように表わされる。
【0041】
θa=(θ1k+θ2k)/2 ・・・(式4)
式2、式4からθ1kとθ2kは以下のように表わされる。
【0042】
θ2k=θa+θk/2
θ1k=θa−θk/2
これらに式1、式3を代入するとθ1kとθ2kは以下のように表わされる。
【0043】
θ2k=60/m+θd×90/(πn) ・・・(式5)
θ1k=60/m−θd×90/(πn) ・・・(式6)
例えば、低速回転時と高速回転時の磁束変化率の位相の差を電気角でπ/18とする場合は、第1扇角θ1と第2扇角θ2の電気角の差をθd=π/9とすればよい。磁極数が4極(n=2)、突起部数(スロット)が6個(m=1)であれば、θ1kとθ2kは式5,6から以下のように求められる。
【0044】
θ2k=60/1+π/9×90/(2π)=60+5=65°
θ1k=60/1−π/9×90/(2π)=60−5=55°
したがって、第1扇角θ1k=55°、第2扇角θ2k=65°になる。
【0045】
また、同様に第1扇角θ1と第2扇角θ2の電気角の差をθd=π/9として、磁極数が8極(n=4)、突起部数(スロット)が12個(m=2)であれば、θ1kとθ2kは以下のように求められる。
【0046】
θ2k=60/2+π/9×90/(4π)=30+2.5=32.5°
θ1k=60/2−π/9×90/(4π)=30−2.5=27.5°
したがって、第1扇角θ1k=27.5°、第2扇角θ2k=32.5°になる。その他の磁極数と突起部数の組合せの場合も同様の算出ですることができる。
【0047】
また、低速回転時と高速回転時の磁束変化率の位相の差を電気角でπ/3とする場合は、第1扇角θ1と第2扇角θ2の電気角の差をθd=2π/3とすればよい。磁極数が4極(n=2)、突起部数(スロット)が6個(m=1)であれば、θ1kとθ2kは式5,6から以下のように求められる。
【0048】
θ2k=60/1+2π/3×90/(2π)=60+30=90°
θ1k=60/1−2π/3×90/(2π)=60−30=30°
したがって、第1扇角θ1k=30°、第2扇角θ2k=90°になる。
【0049】
また、同様に第1扇角θ1と第2扇角θ2の電気角の差をθd=2π/3として、磁極数が8極(n=4)、突起部数(スロット)が12個(m=2)であれば、θ1kとθ2kは以下のように求められる。
【0050】
θ2k=60/2+2π/3×90/(4π)=30+15=45°
θ1k=60/2−2π/3×90/(4π)=30−15=15°
したがって、第1扇角θ1k=15°、第2扇角θ2k=45°になる。その他の磁極数と突起部数の組合せの場合も同様の算出ですることができる。
【0051】
このように、隣接する2つの第1突起部36が形成する扇角を第2突起部38によって2分割して形成される第1扇角θ1と第2扇角θ2の機械角の差を予め電動車両用駆動モータ10の仕様として定められた要求最大回転数に対応して決定する。つまり、第1コイル40と第2コイル42とによる磁束変化率の位相と第1コイル40のみによる磁束変化率位相の電気角の差がπ/18〜π/3の範囲内になるように定める。具体的には、第1扇角θ1と第2扇角θ2の機械角の差を図9に例示するような角度に設定することにより、磁極数と突起部数との組合せが変化する場合でもY結線から第2コイル42を離脱させるだけのシンプルな制御で低速モードから高速モードへの切り替えが可能になる。そして、第1コイル40と第2コイル42で発生する回転磁界によりロータ32を高トルクで回転駆動できる低速モードが実現できる。また、第2コイル42への電流供給を遮断して第1コイル40のみで回転磁界を発生させて、高速回転時における大きな逆起電力の発生を抑制して、高速回転を可能にする高速モードが実現できる。また、高速モードにおいては、第2コイル42への電流供給を遮断する制御のみでも、第1コイル40による磁束変化率の位相が電流の時定数τを電気角に変換した値に対応するように調整がされるから、平均トルクの減少も軽減できる。その結果、低速回転駆動から高速回転駆動に切り替えた際の平均トルクの変動を抑制した電動車両用駆動モータ10の駆動が実現できる。なお、電流の位相調整等と組合わせて制御を行うことも可能である。
【0052】
ところで、第1コイル40と第2コイル42は同一のものを用いてもよい。しかし、低速モードから高速モードに切り替えるときに、コイルに誘起される逆起電力が小さくなりコイル抵抗も小さくなるから、コイルの電流値が増大する。この場合、第1コイル40と第2コイル42を用いた低速モードから第1コイル40のみを用いる高速モードに切り替える際に電流値が増大して回路の許容電流を超えて回路を損傷することがある。この課題に対応して、第1コイル40と第2コイル42の巻回数比は、ロータの回転数が所定値を超えた場合に第1コイル40に供給される最大電流が、ロータの回転数が所定値以下の場合に第1コイル40及び第2コイル42に供給される最大電流を超えないように定めてもよい。第1コイル40と第2コイル42を用いた低速モードの場合の最大電流は起動電流であることが一般的であり、この場合は第1コイル40のみを用いる高速モードの最大電流が低速モードにおける起動電流を超えないように構成できる。
【0053】
第1コイル40の巻回数を大きくすることにより、第1コイル40のみを用いる高速モードにおいて逆起電力が増大するから電流は低下する。また、第1コイル40の抵抗値を大きくすることにより、第1コイル40のみを用いる高速モードにおいて抵抗値が増大するから電流は低下する。したがって、低速モードから高速モードに切り替える際の第1コイル40に供給される最大電流が低速モード時に第1コイル40及び第2コイル42に供給される最大電流を超えない条件は、第1コイル40、第2コイル42の巻回数と抵抗値および低速モードから高速モードに切り替える切換回転数とをパラメータにして実験により定めることができる。なお、本実施の形態においては、第1コイル40の巻回数は第2コイル42の巻回数の150%〜180%とし、第1コイル40の抵抗値は第2コイル42の抵抗値の150%〜180%とし、切換回転数は低速モードにおける最大回転数の75%〜85%に設定している。この構成によりコイル特性の個体差や信号処理時間等に影響されることなくスムーズに低速モードから高速モードに切り替えられることを確認した。また、この構成により低速モードから高速モードへの切り替え時の回路の過大電流を防止しつつ、低速回転時では十分なトルクを確保し、高速回転時には十分な回転速度を確保することができる。
【0054】
上述のように第1コイル40は低速モードおよび高速モードの両方で使用する。一方、第2コイル42は高速モードでは使用しない。つまり、コイルの発熱量を低減したい場合、第1コイル40で対策すれば効率的である。そのため、本実施形態では、第1コイル40の線径は第2コイル42の線径より太くしている。コイルの線径をこのように設定することにより、常時電流を供給する第1コイル40の抵抗が少なくなり発熱量の低減が可能になり、電動車両用駆動モータ10の熱対策を容易にできる。
【0055】
本実施形態では、ロータ32の回転数を検出するために回転検出手段として回転検出センサ16を隣接する2つの第1突起部36とそれに挟まれる第2突起部38によって形成される2つの扇角のうち、広い方の扇角を形成する第1突起部36と第2突起部38との間の位置でロータ32に近接させて配置している。つまり、図2における第2扇角θ2のうちいずれかの位置に配置している。この場合、回転検出センサ16を各突起部から遠ざけることが可能になり、突起部の先端から出る磁束によるノイズの影響を最小限に抑えられて、信頼性のある出力信号を回転検出センサ16から出力できる。なお、ロータ32の回転検出は、例えば、エンコーダを用いて検出したり、逆起電力の発生状態に基づいて算出することもできる。
【0056】
上述した実施形態では、ロータの回転数が所定値を超えた場合は、第2コイル42に対する電流の供給を遮断し第1コイル40に電流を供給する例について説明したが、これに限られない。例えば、ロータの回転数が所定値を超えた場合は、第1コイル40に電流を供給するとともに第2コイル42に第1コイル40と並列に電流を供給するように構成してもよい。
【0057】
上述した実施形態では、速度検出部20は位置検出部18が検出した回転位置の変化に基づき、ロータの回転速度を検出する場合について説明したが、これに限られない。例えば、速度検出部20は回転検出センサ16の検出結果に基づき、ロータの回転速度を検出するように構成してもよい。
【0058】
上述した実施形態では、図3に示すように、アウターロータタイプのモータ構造において、第1突起部群と第2突起部群が、第2突起部が当該第2突起部を挟む2つの第1突起部のうち一方に偏って配置されるように形成されている例を説明した。このような第1突起部群と第2突起部群の構成は、インナーロータタイプのモータ構造にも適用可能であり、同様な効果を得ることができる。また、上述した実施形態は例示であり、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもない。実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能であり、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0059】
θ1 第1扇角、 θ2 第2扇角、 10 電動車両用駆動モータ、 24 ステータコア、 28 コイル、 30 マグネット、 32 ロータ、 36 第1突起部、 38 第2突起部、 40 第1コイル、 42 第2コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2n個(nは自然数)の磁極を円周方向に配列するマグネットを備える回転自在なロータと、
前記ロータの各磁極に対向して配置されると共に、周面に6m個(mは自然数)の突起部が配列されるステータコアであって、前記突起部として周方向に等間隔で形成される3m個の第1突起部群と、前記突起部として周方向に等間隔で形成される3m個の第2突起部群とを含み、前記第1突起部群を構成する第1突起部と前記第2突起部群を構成する第2突起部とが交互に配置されてなるステータコアと、
前記第1突起部にそれぞれ巻回される第1コイルと、
前記第2突起部にそれぞれ巻回される第2コイルと、
前記ロータの回転状態を検出する回転検出手段と、
前記回転検出手段の検出した結果にしたがって、前記第1コイルと前記第2コイルに流れる電流量を制御する電流制御手段と、
を含み、
前記第2突起部群と前記第1突起部群とは、前記第2突起部が当該第2突起部を挟む2つの前記第1突起部のうち一方に偏って配置されるように形成されていることを特徴とする電動車両用駆動モータ。
【請求項2】
隣接する2つの第1突起部が形成する扇角を前記第2突起部によって2分割して形成される第1扇角と第2扇角の機械角の差は、前記ロータの角度変化に対する前記各コイルと鎖交する磁束の変化の大きさを磁束変化率とする場合、予め定められた要求最大回転数に対応して前記第1コイルと第2コイルとによる前記磁束変化率の位相と前記第1コイルのみよる前記磁束変化率の位相の電気角の差がπ/18〜π/3の範囲内になるように定められていることを特徴とする請求項1記載の電動車両用駆動モータ。
【請求項3】
前記電流制御手段は、前記ロータの回転数が所定値以下の場合は、前記第1コイル及び第2コイルに電流を供給し、前記ロータの回転数が前記所定値を超えた場合は、前記第2コイルに対する電流の供給を遮断し前記第1コイルに電流を供給することを特徴とする請求項1または請求項2記載の電動車両用駆動モータ。
【請求項4】
前記電流制御手段は、前記ロータの低速時許容最大回転数から切換余裕値を引いた実用最大切換回転数を前記所定値として定めることを特徴とする請求項3記載の電動車両用駆動モータ。
【請求項5】
前記第1コイルと前記第2コイルの巻回数が異なることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動車両用駆動モータ。
【請求項6】
前記第1コイルと前記第2コイルの巻回数比は、前記ロータの回転数が前記所定値を超えた場合に前記第1コイルに供給される最大電流が、前記ロータの回転数が所定値以下の場合に前記第1コイル及び第2コイルに供給される最大電流を超えないように定められることを特徴とする請求項5記載の電動車両用駆動モータ。
【請求項7】
前記回転検出手段は、隣接する2つの前記第1突起部とそれに挟まれる前記第2突起部によって形成される2つの扇角のうち、広い方の扇角を形成する前記第1突起部と前記第2突起部との間の位置で前記ロータに近接させて配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電動車両用駆動モータ。
【請求項8】
前記第1コイルの線径は前記第2コイルの線径より大きいことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電動車両用駆動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−90406(P2013−90406A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227794(P2011−227794)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(508100033)アルファナテクノロジー株式会社 (100)
【Fターム(参考)】