電圧電流変換回路及びセンサユニット
【課題】センサの測定精度を向上する。
【解決手段】電圧電流変換回路であって、直流電源電流を供給又は遮断するスイッチS1と、スイッチS1に一端が接続されたインダクタL1と、周囲温度の変化に応じて測定値が変動し得るセンサの測定値に対応する入力電圧Vinに応じた電流がインダクタL1の充放電を通じて出力されるよう、スイッチS1のスイッチングを制御する制御回路12と、を備える。ここで、前記周囲温度の変化は、前記電圧電流変換回路の自己発熱に起因する温度変化を含む。
【解決手段】電圧電流変換回路であって、直流電源電流を供給又は遮断するスイッチS1と、スイッチS1に一端が接続されたインダクタL1と、周囲温度の変化に応じて測定値が変動し得るセンサの測定値に対応する入力電圧Vinに応じた電流がインダクタL1の充放電を通じて出力されるよう、スイッチS1のスイッチングを制御する制御回路12と、を備える。ここで、前記周囲温度の変化は、前記電圧電流変換回路の自己発熱に起因する温度変化を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、電圧電流変換回路及びセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電流による信号伝送方式は、配線の長さによって伝送誤差を生じることがない優れた方式であるため、産業用機器(例えば、センサやアクチュエータ等)のアナログ信号伝送に用いられることがある。センサやアクチュエータのアナログ信号伝送では、0%を4mA、100%を20mAに対応させた、いわゆる4〜20mA信号が標準的に用いられる。
【0003】
このような電流による信号伝送を行なう場合、入力電圧に応じた電流を伝送路に出力する電圧電流変換回路が用いられる。電圧電流変換回路は、入力電圧に応じた目標の電流値となるよう内部の出力トランジスタの抵抗値を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−54767号公報
【特許文献2】特許第3078476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、出力トランジスタの抵抗値を調整する方式では、トランジスタに加わる電圧と電流の積である消費電力がすべて熱となって周囲に放出される。4〜20mA伝送においては、直流電源Vs=24V、負荷抵抗RL=250Ωが標準的に用いられる。図6において、出力電流(4〜20mA)をIoutとしたとき、トランジスタQ1の消費電力Poは、Po=(Vs−Iout*RL)*Ioutにより求めることができる。Iout=4mAのときPo=92mW、Iout=20mAのときPo=380mWと計算される。このように、出力トランジスタの消費電力Poは出力電流Ioutによって大きく変化する。また、直流電源には器差があり、例えば±10%としたとき、+10%ではVs=26.4Vとなる。また、負荷抵抗RLは標準的には250Ωであるが、例えば50Ωという場合もある。このような動作条件では、Iout=20mAのとき、消費電力Po=508mWに達する。すなわち消費電力は、出力電流Ioutだけでなく、電源電圧Vs、負荷抵抗RLの値によっても変動する。トランジスタの消費電力は熱となって周囲の温度を上昇させる。温度上昇の値は消費電力値に比例する。また、トランジスタは周囲の空気によって冷却されるため、温度上昇の値は周囲の気流速によっても変化する。最大508mWの消費電力は、小型の機器内においては無視できない温度上昇をもたらす。
【0006】
機器の温度上昇は、例えば周囲環境の温度を測定する温度センサの場合には大きな問題となる。すなわち、温度センサの近傍に発熱体があるため、温度上昇により測定温度に誤差を生じる。出力トランジスタの発熱を抑制するため、例えば特許文献1に示されるように、直流電源Vsの電圧24V一定ではなく可変とし、最小限の電圧まで低下させる方法が考えられている。しかし、回路の動作マージンを確保するため出力トランジスタに電圧を残す必要があり、消費電力の抑制は限定的である。
【0007】
そこで、センサ出力値に対して温度上昇分を推定して補正する等の対策がとられることもある。しかし、出力トランジスタの発熱による温度上昇は、出力電流、負荷抵抗、センサ周囲の気流速によって変化し一定ではないため、測定誤差をゼロにすることが困難である。
【0008】
その他の対策としては、温度センサを出力トランジスタから離して配置する方法(例えば特許文献2参照)も考えられるが、機器のサイズが増大してしまう。なお、温度センサに限らず例えば湿度センサの場合も、発熱により温度上昇すると相対湿度が低下するため、測定誤差を生じる。出力トランジスタの発熱量を低下させることでセンサの測定精度を向上させることが課題となる。
【0009】
本発明の目的の一つは、センサの測定精度を向上することにある。
【0010】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電圧電流変換回路の一態様は、周囲温度の変化に応じて測定値が変動し得るセンサの前記測定値に対応する入力電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換回路であって、直流電源電流が供給されるスイッチと、前記スイッチに一端が接続されたインダクタと、前記センサの測定値に応じた入力電圧に対応する電流が前記インダクタの充放電を通じて出力されるよう、前記スイッチのスイッチングを制御する制御回路と、を備え、前記周囲温度の変化が、前記電圧電流変換回路の自己発熱に起因する温度変化を含む。
【0012】
ここで、前記スイッチは、前記供給及び前記遮断を制御する、トランジスタ及びスイッチングダイオードを含んでもよい。
【0013】
また、前記インダクタの他端側にキャパシタが出力負荷に対して並列に接続されてもよい。
【0014】
さらに、前記センサが収められたケース内に、前記電圧電流変換回路が設けられてもよい。
【0015】
また、前記センサは、温度、湿度及び気流のいずれかを測定するものであってよい。前記温度は、輻射温度を含んでもよい。
【0016】
さらに、本発明のセンサユニットの一態様は、周囲温度の変化に応じて測定値が変動するセンサと、前記センサの測定値に対応する入力電圧に応じた電流を、直流電源電流の周期的な第1のスイッチング制御を通じて出力するスイッチング方式の電圧電流変換回路と、前記電圧電流変換回路から前記直流電源電流の一部を受け、当該一部の電流の周期的な第2のスイッチング制御を通じて前記センサへ駆動電流を出力するスイッチング方式のセンサ用電源回路と、を備え、前記周囲温度の変化が、前記電圧電流変換回路及び前記電源回路の少なくとも一方の自己発熱に起因する温度変化を含む。
【0017】
ここで、前記第1のスイッチング制御がON状態のときに前記第2のスイッチング制御がOFF状態となり、前記第1のスイッチング制御がOFF状態のときに前記第2のスイッチング制御がON状態となる、こととしてもよい。
【0018】
また、前記センサユニットは、前記第1及び第2のスイッチング制御の一方における前記ON状態及びOFF状態を制御するクロック信号を発生するクロック発生器と、前記クロック発生器が発生した前記クロック信号を反転するインバータと、をさらに備え、前記インバータで反転された前記クロック信号によって、前記第1及び第2のスイッチング制御の他方における前記ON状態及びOFF状態が制御される、こととしてもよい。
前記センサは、温度、湿度及び気流のいずれかを測定するものであってよい。前記温度は、輻射温度を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る電圧電流変換回路の一例を示す図である。
【図2】図1に例示するスイッチング方式の電圧電流変換回路の詳細構成例を示す回路図である。
【図3】図2に例示する電圧電流変換回路の動作を説明するタイミングチャートの一例である。
【図4】(A)〜(C)はスイッチング方式の電圧電流変換回路の効果をシリーズ方式と比較して説明する図である。
【図5】シリーズ方式の電圧電流変換回路の一例を示す図である。
【図6】図5に例示するシリーズ方式の電圧電流変換回路の詳細構成例を示す回路図である。
【図7】第1実施形態の電圧電流変換回路の立ち上がり特性(シミュレーション結果)の一例を示すグラフである。
【図8】シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の電源消費電流(平均値)特性(シミュレーション結果)の一例を示すグラフである。
【図9】シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の電源消費電力(平均値)比(シミュレーション結果)の一例を示すグラフである。
【図10】シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の回路消費電力(平均値)特性(シミュレーション結果)の一例を示すグラフである。
【図11】シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の回路消費電力(平均値)比(シミュレーション結果)の一例を示すグラフである。
【図12】第2実施形態に係るスイッチング方式のセンサ用電源回路を備えたセンサユニットの構成例を示す図である。
【図13】図12に例示するスイッチング方式のセンサ用電源回路の詳細構成例をスイッチング方式の電圧電流変換回路の詳細構成例と共に示す回路図である。
【図14】図13においてインバータU5を通さずに、スイッチングトランジスタQ1及びQ2を同相動作させる場合の動作タイミングチャートの一例である。。
【図15】図13においてトランジスタQ1及びQ2を同相動作させる場合のタイミングチャートの一例である。
【図16】シリーズ方式の電圧電流変換回路及びシリーズ方式のセンサ用電源回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施例を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0021】
〔1〕第1実施形態の説明
(原理的構成例)
図1は、第1実施形態に係る電圧電流変換回路の一例を示す図である。図1に示す電圧電流変換回路10は、例示的に、インダクタL1、インダクタL1の一方の端子に接続されたスイッチS1、インダクタL1の他方の端子に直列接続されて負荷抵抗RLへ出力される電流値Ioutを検出するための電流検出抵抗R1、制御回路12を備える。
【0022】
スイッチS1は、例示的に、バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタ(FET:Field-Effect Transistor)等(以下、単に「トランジスタ」と総称する。)を用いて構成できる。スイッチS1は、直流電源Vsの高電位側との接続を成すVs接点と、直流電源Vsの低電位側(グランド(GND))との接続を成す接点(以下、便宜的に、「GND接点」と表記する。)とを有する。
【0023】
スイッチS1がVs接点に接続されると、直流電源Vsから電流がインダクタL1へ供給され、スイッチS1がGND接点に接続されると、直流電源VsからインダクタL1への電流が遮断される。2つの接点に対応して素子として2つのトランジスタを用いてもよいし、回路簡素化のため、一方(例えばGND接点)をダイオード(例えば図2のD1参照)によって構成してもよい。
【0024】
制御回路12は、電流検出抵抗R1で検出される電流値Ioutが入力電圧Vinに対応する値となるよう、スイッチS1を2つの接点(Vs接点及びGND接点)の間で繰り返し交互に切り替える。入力電圧Vinは、非限定的な一例として、センサによる測定値に応じた電圧である。
【0025】
センサは、例示的に、温度(例えば気温)を測定する温度センサ、輻射温度を測定する輻射温度センサ、湿度を測定する湿度センサ、及び、気流を測定する気流センサ等であり、温度、輻射温度、湿度及び気流のいずれか2以上を測定する複合センサであってもよい。
【0026】
これらのセンサは、周囲温度の変化に応じて測定値が変動し得るセンサの非限定的な一例であり、ここでの周囲温度の変化には、電圧電流変換回路10自体の回路発熱に起因する温度変化が含まれる。すなわち、電圧電流変換回路10自体の回路発熱に起因する温度変化によって、センサの測定値に誤差が生じ得る。
【0027】
例えば、温度センサのなかには、センサケース内の空気温度を測定するもののほか、センサケース外の測定対象の温度を測定する熱電対センサがある。熱電対は、温度の絶対値ではなく両接点間の相対温度に応じた起電力を発生する。このため、一方の接点を測定対象物に接触させ、他方の接点を基準温度環境に置く。後者を冷接点と呼ぶ。別の温度センサを使って冷接点の温度を測定し、その出力を熱電対センサの相対温度と加算することにより、測定対象の温度の絶対値を求める。冷接点はセンサケース内に設けられるが、2つの温度センサの位置を一致させることが難しいためある距離をもって設置することになる。2つの温度センサ間に温度差があると、冷接点温度が正しく測れないため測定誤差を生じる。したがって、センサケース内に発熱体(例えば、電圧電流変換回路10)が存在するとケース内の温度が均一でなくなり、冷接点温度が正しく測れないため測定誤差を生じ得る。
【0028】
また、対象物の放射温度を測定する輻射温度センサは、例えば熱電対を重ねたサーモパイル素子を用いる。輻射温度センサも冷接点の温度を別の温度センサを使って測定し、2つの温度センサの出力値を加算することにより、放射温度の絶対値を求める。冷接点は通常センサケース内に設けられるが、2つの温度センサの位置を一致させることができないためある距離をもって設置される。2つの温度センサ間に温度差があると、冷接点温度が正しく測れないため放射温度測定値に誤差を生じる。したがって、センサケース内に発熱体(例えば、電圧電流変換回路10)が存在するとケース内の温度が均一でなくなり、測定誤差を生じ得る。
【0029】
また、室内の気流速を測定する気流センサは、近傍に発熱体(例えば、電圧電流変換回路10)が存在すると上昇気流が発生するため、気流センサの測定値に誤差を生じ得る。
【0030】
制御回路12は、T1の期間(ON期間)、スイッチS1をVs接点に接続し、続くT2の期間(OFF期間)、GND接点に接続することを(T1+T2)を1周期として繰り返す。
【0031】
これにより、インダクタL1は、ON期間T1において直流電源Vsの電圧(以下「直流電圧Vs」とも表記する。)によって充電され、OFF期間T2において充電エネルギーを電流として放電することを繰り返す。したがって、T1及びT2の比を制御すれば、負荷抵抗RLへ出力される電流値Ioutの平均値(実効値)を制御できる。
【0032】
よって、制御回路12は、電流検出抵抗R1によって出力電流値Ioutを監視し、出力電流値Ioutの平均値が目標の電流値(入力電圧Vinに対応する電流値)となるようスイッチS1のON期間T1及びOFF期間T2の比(ON/OFF期間のデューティ比)を制御する。T1及びT2の比を変化させる方式には、T1+T2を固定とするPWM方式と、T1又はT2のどちらか一方を固定するPFM方式とがあり、いずれを制御回路12に適用してもよい。
【0033】
このように、電圧電流変換回路10の出力電流制御を、トランジスタの内部抵抗ではなく、スイッチS1及びインダクタL1により行なう(以下「スイッチング方式」と称することがある。)ことで、理想的な素子を用いた場合、電流検出抵抗R1での消費電力を除いて、スイッチS1及びインダクタL1による消費電力を原理的にはゼロにできる。
【0034】
したがって、回路発熱による温度上昇を抑制でき、ひいては温度センサや湿度センサ等による測定誤差の発生を抑制して測定精度を向上することができる。
例えば図4(A)に模式的に示すように、4〜20mA出力空調用温度・湿度センサユニットのような温度センサと出力トランジスタとが通風孔(図示省略)を有するケース内に収められている場合を想定する。
【0035】
この場合、シリーズ方式の電圧電流変換回路100(図5参照)では、図4(B)に例示するように、発熱が大きいため、取り付け環境のケースに対する気流の有無や方向によってケース内の温度、湿度が変化し、温度、湿度の測定値に大きな誤差(例えば温度で数℃程度、湿度で数%程度)が発生し易い。仮に、製造段階で校正されたセンサでも、現場で再調整が必要な場合もある。
【0036】
これに対し、本実施形態のスイッチング方式の電圧電流変換回路10では、設計にもよるが、例えば、回路効率約90%で、発熱はシリーズ方式の約1/10にすることができる。そのため、図4(C)に例示するように、発熱が小さく、取付け環境の気流の有無や方向によらずにケース内の温度変化を小さくできる。したがって、シリーズ方式において取り付け環境の気流の有無や方向によって生じていた測定誤差を約1/10に大幅改善できることが見込まれる。また、センサを電圧電流変換回路10に従来よりも近接して配置することができるため、ケースの小型化を測ることもできる。
【0037】
(詳細回路例)
次に、図2は、上述したスイッチング方式の電圧電流変換回路10の詳細構成例を示す回路図である。図2に例示する電圧電流変換回路10は、トランジスタQ1、スイッチングダイオードD1、インダクタL1、電流検出抵抗R1、負荷抵抗RL、直流電源Vs、キャパシタC1、抵抗R2及びR3、オペアンプU1、コンパレータU2、クロック発生器U3、及びNANDゲートU4を備える。
【0038】
トランジスタQ1は、例示的に、PNP構造のバイポーラトランジスタである(駆動回路を変更してNPN構造のバイポーラトランジスタや、J−FET、MOS−FETを用いてもよい)。当該トランジスタQ1は、エミッタが直流電源Vsの高電位側に接続され、ベースがNANDゲートU4の出力に接続され、コレクタがインダクタL1の一方の端子に直列接続されるとともにスイッチングダイオードD1のカソードに並列接続されている。ダイオードD1には、順方向電圧が低くスイッチング速度の速いショットキーダイオードを用いてもよい。
【0039】
NANDゲートU4の出力がロー(L)になるとトランジスタQ1がONとなり、直流電源VsからインダクタL1に電流が流れる。逆に、NANDゲートU4の出力がハイ(H)になるとトランジスタQ1はOFFとなり、インダクタL1に逆起電力が発生することによりスイッチングダイオードD1が導通する。別言すると、トランジスタQ1及びダイオードD1は、既述のスイッチS1(Vs接点及びGND接点)を成している。
【0040】
NANDゲートU4は、2入力の一方にコンパレータU2の出力が接続され、他方に周期的にハイ(H)及びロー(L)を繰り返す方形波を生成するクロック発生器U3の出力が接続されている。したがって、コンパレータU2の出力及びクロック発生器U3の出力が共にハイ(H)の時にだけNANDゲートU4の出力がロー(L)となり、トランジスタQ1にベース電流が流れ、エミッタ−コレクタ間が導通してONとなる。その他の状態ではNANDゲートU4からハイ(H)が当該エミッタに出力される(すなわち、トランジスタがOFFとなる)。
【0041】
オペアンプU1、抵抗R2及びR3は、非反転増幅器を成し、電流検出抵抗R1に流れる電流に応じて両端に生じる電位差(両端電圧)を−(R3/R2)倍して出力する。
【0042】
コンパレータU2は、入力電圧VinとオペアンプU1の出力とを比較して、オペアンプU1の出力よりも入力電圧Vinの方が高い場合にハイ(H)、逆に、入力電圧VinよりもオペアンプU1の出力の方が高い場合にロー(L)をNANDゲートU4に出力する。当該出力によってNANDゲートU4の出力(H/L)が制御され、それによりトランジスタQ1のON/OFFが制御される。
【0043】
別言すると、非反転増幅器(オペアンプU1、抵抗R2及びR3)とコンパレータU2とは、既述の制御回路12の一例を成す。
【0044】
キャパシタC1は、直列接続された負荷抵抗RL及び電流検出抵抗R1の両端に対して並列に接続されて、負荷抵抗RLへ出力される出力電流の交流成分を吸収しリップルを抑制する役割を果たす。
【0045】
図3に、図2により上述した電圧電流変換回路10の動作を説明するタイミングチャートの一例を示す。図3において、(1)はクロック発生器U3の出力、(2)は負荷抵抗RLに流れる電流、(3)はコンパレータU2の出力、(4)はNANDゲートU4の出力、(5)はトランジスタQ1のエミッタ−コレクタ間に流れる電流、(6)はスイッチングダイオードD1に流れる電流、(7)はインダクタL1に流れる電流をそれぞれ表わしている。なお、図3は、オペアンプU1及びコンパレータU2での遅延時間(制御遅延)を加味して表記している。
【0046】
図3の(1)、(3)及び(4)に例示するように、クロック発生器U3及びコンパレータU2の各出力が共にHとなる期間(T1)だけNANDゲートU4の出力がLとなり、その他の期間(T2)ではNANDゲートU4の出力がHとなる。したがって、図3の(5)に例示するように、トランジスタQ1は、(T1+T2)を1周期として、T1の期間でONとなりT2の期間でOFFとなることを繰り返す。
【0047】
よって、図3の(2)及び(7)に例示するように、トランジスタQ1のON期間T1において、直流電源Vs、インダクタL1、抵抗R1、及び負荷抵抗RLを経由する閉ループに電流が流れてインダクタL1が充電され、その後のOFF期間T2においてインダクタL1に充電された電磁エネルギーが電流として負荷抵抗RL側へ放電される。負荷抵抗RLには充電電流と放電電流とが繰り返し相補的に途切れることなく流れる。
【0048】
一方、図3の(6)に例示するように、スイッチングダイオードD1は、トランジスタQ1がONである期間T1においてOFF状態となり電流は流れず、トランジスタQ1がOFFである期間T2においてON状態となりインダクタL1の放電電流が流れる。
【0049】
すなわち、トランジスタQ1のON期間T1では、直流電源Vs、インダクタL1、抵抗R1、及び負荷抵抗RLを経由する閉ループに電流が流れてインダクタL1が充電され、その後のOFF期間T2では、インダクタL1、抵抗R1、負荷抵抗RL、及びダイオードD1を経由する閉ループにインダクタL1の放電電流が流れる。
【0050】
このようにして、(T1+T2)を1周期としてトランジスタQ1がON/OFF制御されることで、インダクタL1の充放電が繰り返される。ここで、T1及びT2のデューティ比は、コンパレータU2の出力(図3の(3)参照)のH及びLの期間の比率によって定まる。
【0051】
出力電流Ioutは電流検出抵抗R1を流れ電圧に変換される。R1の両端に発生する電圧はオペアンプU1によって増幅される。オペアンプU1の出力には出力電流に比例した電圧が発生する。コンパレータU2によって、オペアンプU1の出力電圧と入力電圧Vinとを比較する。コンパレータU2の出力はオペアンプU1の出力電圧が入力電圧Vinよりも低い場合にはHに、逆の場合にはLになる。コンパレータU2の出力によって、インダクタL1の充電と放電が切り替えられ、IoutがVinによって示される目標値となるように、フィードバック制御される。平衡状態においては、Iout*R1*R3/R2=V1が成り立つので式を変形してIoutは次のように表すことができる。
【0052】
Iout=V1*R2/(R1*R3)
すなわち、出力電流Ioutが入力電圧Vinに比例する電圧電流変換器となる。変換係数である相互コンダクタンスGmは、
Gm=Iout/Vin=R2/(R1*R3)
と表すことができる。
【0053】
以上のように、本実施形態の電圧電流変換回路10によれば、出力電流制御を、スイッチS1及びインダクタL1を用いて虚数電流の充放電によって実施することになるため、従来の直流抵抗による制御よりも回路発熱による温度上昇を抑制できる。したがって、電圧電流変換回路10の入力電圧Vinを例えば温度センサや湿度センサ等の検出電圧とする場合、回路発熱による温度センサや湿度センサ等の測定誤差を小さくできる。
【0054】
なお、図7〜図11に、図2に例示したスイッチング方式電圧電流変換回路10の回路シミュレーション結果を例示する。解析条件は、電源電圧Vs=24V、負荷抵抗RL=250Ω、出力電流設定値=20mA、クロック発生器U3のクロック周波数=100kHzである。
【0055】
図7は、電圧電流変換回路10の立ち上がり時の過渡解析結果の一例を示している。負荷抵抗RLに流れる電流が0から設定値(20mA)に達するまでの時間(立ち上がり時間)が約1msであることを示している。温度センサや湿度センサの時定数である数秒から数分と比べて非常に速く、十分な応答特性をもっている。
【0056】
図8は、シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の電源消費電流(平均値)特性の一例を示すグラフである。ただし、比較対象であるシリーズ方式の電圧電流変換回路は図6に例示する構成とし、電源電圧Vs=24V、負荷抵抗RL=250Ωである(図9〜図11においても同様)。図8から、出力電流が4〜20mAの範囲においてスイッチング方式ではシリーズ方式に比べて約1/3以下に消費電流を削減できることが分かる。
【0057】
図9は、図8を電源消費電力(平均値)比として書き直したグラフである。ただし、「電源消費電力比」=「スイッチング方式での電源消費電力/シリーズ方式での電源消費電力」である。図9から、スイッチング方式での電源消費電力は、シリーズ方式の電源消費電力と比べて出力電流4〜20mAの範囲において約33%以下に低減されるため、直流電源Vsの電流容量は1/3の小容量でよいことが分かる。
【0058】
図10は、シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の回路消費電力(平均値)特性の一例を示すグラフである。ただし、「回路消費電力」に負荷抵抗RLの消費電力は含まない。図10から、スイッチング方式での回路消費電力は、4〜20mAの範囲の出力電流に対して比例的に増加するシリーズ方式での回路消費電力に比べて、4〜20mAの範囲の出力電流に対して変化が小さく僅かであり大幅に低減できることが分かる。なお、スイッチング方式での回路消費電力は、既述のとおり理想的にはゼロにできるが、実際にはトランジスタQ1、インダクタL1、キャパシタC1での損失、電流検出抵抗R1の電力消費によってゼロにはならない。電流検出抵抗R1の消費電力P1は、P1=Iout*Iout*R1と表わすことができる。一例として、抵抗R1=50Ω、Iout=20mAのとき、消費電力P1=20mWとなる。なお、電流検出抵抗の値は小さいほど電力消費が少なく好都合であるが、抵抗値が小さいと発生電圧も小さくなるため高倍率の増幅器を必要として、目標の変換精度を保つことが難しくなる。
【0059】
図11は、シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の回路消費電力(平均値)比の一例を示すグラフである。ただし、「回路消費電力比」=「スイッチング方式での回路消費電力/シリーズ方式での回路消費電力」である。図11から、スイッチング方式での回路消費電力は、シリーズ方式の回路消費電力と比べて、出力電流4〜20mAの範囲において約1/10に低減できることが分かる。
【0060】
以上のように、本実施形態のスイッチング方式の電圧電流変換回路10によれば、消費電力(電源/回路消費電力)をシリーズ方式に比べて大幅に低減できる。したがって、電圧電流変換回路10を例えば長時間(24時間等)にわたって連続運転されるような温度センサや湿度センサ等の機器に適用した場合に、機器自体の消費電力は少なくても大きな節電効果を得ることができる。また、直流電源Vsの電流容量を削減することも可能になる。
【0061】
〔2〕第2実施形態の説明
第2実施形態では、電圧電流変換回路のスイッチング方式化に加えて、センサユニットにおけるセンサ用電源回路についても、第1実施形態で述べたようなスイッチング方式化することについて説明する。
【0062】
4〜20mAで信号を電流伝送する機器のうち、回路消費電流が4mA以下の機器については、伝送電流の一部を当該機器の駆動のために用いることがある。例えば、回路消費電流が3mAの機器の場合には、4〜20mAの電流の一部を当該機器の駆動のために、常時、消費することができる。
【0063】
したがって、DC5Vや、DC12Vといった電源を個別に用意する必要がなくなり、省配線化を図ることができる。4〜20mA出力の空調用室内温度・湿度センサユニット等においてもこのような方式を採用することがある。センサはDC3VやDC5Vといった一定電圧で駆動されるので、例えばシリーズレギュレータ(通称「3端子レギュレータ」)を用いて当該一定電圧を作ることができる。
【0064】
図16に、センサ用電源回路の構成例を示す。図16に例示するセンサ用電源回路200は、図5に例示した電圧電流変換回路100をセンサ140に適用した構成において当該センサ140に電流(Isens)を供給する。
【0065】
センサ用電源回路200には、例示的に、シリーズ方式の3端子レギュレータ(入力:V1、出力:Vreg)が用いられ、出力電圧Vregが目標値(センサ140への供給電圧であって例えば5V)になるように、制御回路220が、出力トランジスタQ2の内部抵抗を調整する。なお、V1及びVregは、端子V0を基準とした電圧を示す。
【0066】
ここで、センサ140の消費電流をIsensとすると、出力トランジスタQ2の消費電力P2は、次のように表わせる。
【0067】
P2=(V1−Vreg)*Isens
V1=Vs−Iout*(RL+R1)
したがって、例えば、Isens=3mA、Iout=4mA、RL=250Ω、R1=50Ω、Vs=24V、Vreg=5Vの場合、V1=22.8V、P2=53.4mWとなる。なお、センサ140及びセンサ用電源回路200が電圧電流変換回路100に接続されている場合、電源電圧Vsからの電流の一部がセンサ用電源回路200(トランジスタQ2)に用いられるため、センサ140及びセンサ用電源回路200が接続されていない場合に比べてトランジスタQ1の消費電力は低下する。
【0068】
ところで、上述したような3端子レギュレータの出力トランジスタQ2には、常時、電流が流れるため発熱する。温度センサや湿度センサ等の場合には、この発熱によりセンサケース内の温度が上昇し、測定誤差を生じ易くなる。
【0069】
そこで、第2実施形態では、電圧電流変換回路のスイッチング方式化に加えて、センサ用電源回路についても第1実施形態で述べたようなスイッチング方式を採用することにより、更なる発熱抑制効果を得る。
【0070】
(原理的構成例)
図12に、スイッチング方式のセンサ用電源回路を備えたセンサユニットの構成例を示す。図12に例示するセンサユニットは、センサ14と、センサ14に駆動電流Isensを供給するスイッチング方式のセンサ用電源回路20と、第1実施形態にて説明したスイッチング方式の電圧電流変換回路10と、を備える。なお、電圧電流変換回路10は、センサ14で測定された温度や湿度に対応する電圧を入力電圧Vinとする。また、Vinは、端子V0を基準とした電圧を示す。
【0071】
センサ14は、温度、輻射温度、湿度及び気流のいずれかを測定するセンサであり、電圧電流変換回路10及びセンサ用電源回路20の一方又は双方の回路発熱に起因する温度変化によって測定値に誤差が生じ得るセンサである。
【0072】
センサ用電源回路20は、スイッチング方式の電圧電流変換回路10の原理的構成例と同様に、インダクタL2と、スイッチS2と、制御回路22と、を備える。インダクタL2の一方の端子はセンサ14に接続され、他方の端子はスイッチS2に接続される。
【0073】
スイッチS2は、例示的に、トランジスタを用いて構成できる。スイッチS2は、入力電圧(V1)接点及び端子V0接点の2つの接点を有する。電圧電流変換回路10と同様に、2つの接点に対応して素子として2つのトランジスタを用いてもよいし、回路簡素化のため、一方(例えばV0接点)をダイオードによって構成してもよい。
【0074】
制御回路22は、センサ14への出力電圧Vregが目標値(センサ140への出力電圧であって例えば5V)となるよう、スイッチS2を2つの接点(V1接点及びV0接点)の間で繰り返し交互に切り替える。
【0075】
例えば、制御回路22は、T3の期間(ON期間)、スイッチS2をV1接点に接続し、続くT4の期間(OFF期間)、V1接点に接続することを(T3+T4)を1周期として繰り返す。
【0076】
これにより、インダクタL2は、ON期間T1において電圧V1によって充電され、OFF期間T2において充電エネルギーを電流として放電することを繰り返す。したがって、T3及びT4の比を制御すれば、センサ14へ出力される電流値Isensの平均値(実効値)、ひいては出力電圧Vregの平均値を制御できる。
【0077】
よって、制御回路22は、出力電圧Vregの平均値が目標値となるようスイッチS2のON期間T3及びOFF期間T4の比(ON/OFF期間のデューティ比)を制御する。T3及びT4の比を変化させる方式には、T3+T4を固定とするPWM方式と、T3又はT4のどちらか一方を固定するPFM方式とがあり、いずれを制御回路22に適用してもよい。ただし、図13及び図14により後述するようにスイッチS1(トランジスタQ1)及びスイッチS2(トランジスタQ2)を逆相で動作させる場合には、電圧電流変換回路10とセンサ用電源回路20とで方式を統一する。
【0078】
このように、スイッチング方式のセンサ用電源回路20によれば、センサ14への出力電圧制御を、トランジスタQ2(図16参照)の内部抵抗ではなく、スイッチS2及びインダクタL2を用いて行なうことで、理想的な素子を用いた場合、スイッチS2及びインダクタL2による消費電力を原理的にはゼロにできる。
【0079】
したがって、電圧電流変換回路10に加えてセンサ用電源回路20の回路発熱による温度上昇をも抑制でき、ひいては温度センサや湿度センサ等による測定誤差の発生を第1実施形態のみの実施よりも更に抑制して測定精度を向上することができる。なお、実際の回路では、設計にもよるが、例えば効率90%程度にできるため、シリーズ方式のセンサ用電源回路200(図16参照)に比べて発熱量は1/10程度にできることが見込まれる。また、電圧電流変換回路10及びセンサ用電源回路20の双方をスイッチング方式とすることで、センサユニットの消費電力を従来よりも大幅に低減できる。
【0080】
(詳細回路例)
次に、図13は、上述したスイッチング方式のセンサ用電源回路20の詳細構成例をスイッチング方式の電圧電流変換回路10の構成例と共に示す回路図である。図13に例示する電圧電流変換回路10は、図2に例示した構成と同様の構成を有している。一方、図13に例示するスイッチング方式のセンサ用電源回路20は、トランジスタQ2、スイッチングダイオードD2、インダクタL2、キャパシタC2、コンパレータU7、基準電圧源Vref、及びNANDゲートU6を備える。
【0081】
トランジスタQ2は、例示的に、PNP構造のバイポーラトランジスタである(駆動回路を変更してNPN構造のバイポーラトランジスタや、J−FET、MOS−FETを用いてもよい)。当該トランジスタQ2は、エミッタが直流電源Vsの高電位側に接続され、ベースがNANDゲートU6の出力に接続され、コレクタがインダクタL2の一方の端子に直列接続されるとともにスイッチングダイオードD2のカソードに並列接続されている。
【0082】
NANDゲートU6の出力がロー(L)になるとトランジスタQ2がONとなり、センサ14に向けてインダクタL2に電流が流れる。逆に、NANDゲートU6の出力がハイ(H)になるとトランジスタQ2はOFFとなり、インダクタL2に逆起電力が発生することによりスイッチングダイオードD2が導通する。別言すると、トランジスタQ2及びダイオードD2は、既述のスイッチS2を成している。
【0083】
NANDゲートU6は、2入力の一方にコンパレータU7の出力が接続され、他方に周期的にハイ(H)及びロー(L)を繰り返すクロック信号を生成するクロック発生器U3の出力が接続されている。したがって、コンパレータU7の出力及びクロック発生器U3の出力が共にハイ(H)の時にだけNANDゲートU6の出力がロー(L)となり、トランジスタQ2にベース電流が流れ、エミッタ−コレクタ間が導通してONとなる。その他の状態ではNANDゲートU6の出力がハイ(H)で、トランジスタQ2にベース電流が流れずエミッタ−コレクタ間は遮断状態でOFFとなる。なお、クロック発生器U3は、電圧電流変換回路10及びセンサ用電源回路20に共用でよい。
【0084】
コンパレータU7は、センサ電源電圧Vregを基準電圧Vrefと比較して、Vref>Vregの場合にハイ(H)、逆に、Vref<Vregの場合にロー(L)をNANDゲートU6に出力する。当該出力によってNANDゲートU6の出力(H/L)が制御され、それによりトランジスタQ2のON/OFFが制御される。
【0085】
別言すると、コンパレータU2及び基準電圧源Vrefは、既述の制御回路22の一例を成す。
【0086】
キャパシタC2は、センサ14と並列に接続されて、インダクタL2を通じてセンサ14へ出力される電流のリップルを抑制する役割を果たす。
【0087】
なお、クロック発生器U3を電圧電流変換回路10及びセンサ用電源回路20に共用として、2つのトランジスタQ1及びW2を同相で駆動すると、両者同時に電流が流れるため、ピーク電流値が大きくなる。過渡的な電流変化も大きいため、電流が流れる信号線から大きな電磁ノイズが発生する。
【0088】
そこで、例えばNANDゲートU4及びU6の一方(例えばNANDゲートU4)のクロック信号入力に対してインバータU5を追加することで、両トランジスタQ1及びQ2を互いに逆相で駆動する。別言すると、電圧電流変換回路10のスイッチング制御パルスの位相とセンサ用電源回路20のスイッチング制御パルスの位相とを逆相にする。これにより、両スイッチング制御においてトランジスタQ1及びQ2に電流が相補的に流れ平準化されるため、電源Vsのピーク負荷を低減できるとともに、ピーク電磁ノイズ発生量を低減することができる。
【0089】
以下、動作例を説明する。まず、スイッチング方式の電圧電流変換回路10の動作は、NANDゲートU4にクロック発生器U3の出力(クロック信号)をインバータU5で反転した信号が入力される点を除いて、第1実施形態(図3)と同様である。NANDゲートU4にクロック発生器U3の出力をインバータU5で反転した信号が入力されるから、トランジスタQ1は、既述のようにトランジスタQ2とは逆相で動作することになる。
【0090】
一方、スイッチング方式のセンサ用電源回路20の動作は、図3に例示したタイミングチャートにおける「(2)RL電流」、「(3)U2出力」、「(4)U4出力」、「(6)D1電流」、及び、「(7)L1電流」をそれぞれ「(2)センサ駆動電流」、「(3)U7出力」、「(4)U6出力」、「(6)D2電流」、及び、「(7)L2電流」に置き換えた動作に相当する。
【0091】
まず、NANDゲートU6の出力は、クロック発生器U3及びコンパレータU7の各出力が共にHとなる期間(T3)だけLとなり、その他の期間(T4)ではHとなる。したがって、トランジスタQ2は、(T3+T4)を1周期として、T3の期間でON(エミッタ−コレクタ間が導通)となりT4の期間でOFFとなることを繰り返す。
【0092】
よって、トランジスタQ2のON期間T3においてインダクタL2が充電され、その後のOFF期間T4においてインダクタL2に蓄えられた電磁エネルギーが放電する。インダクタL2の充電電流および放電電流は、相補的に途切れることなく連続してセンサ14の駆動電流となる。
【0093】
一方、スイッチングダイオードD2は、トランジスタQ2がONである期間T3においてOFF状態となり電流は流れず、トランジスタQ2がOFFである期間T4においてON状態となりインダクタL2の放電電流が流れる。
【0094】
このようにして、(T3+T4)を1周期としてトランジスタQ2がON/OFF制御されることで、インダクタL2の充放電が繰り返される。ここで、T3及びT4のデューティ比は、コンパレータU7の出力のH及びLの期間の比率によって定まる。
【0095】
すなわち、コンパレータU7の出力は、基準電圧Vrefに対するセンサ14への出力電圧Vregの高低に応じて切り替わり、出力電圧Vregが目標値である基準電圧Vrefよりも低い状態であればHとなり、逆であればLとなる。コンパレータU7の出力によって、インダクタL2の充電と放電が切り替えられ、出力電圧Vregが目標値である基準電圧Vrefとなるように、フィードバック制御される。
【0096】
図14に、トランジスタQ1及びQ2を逆相動作させる場合のタイミングチャートの一例を示す。図14において、(1)はクロック発生器U3の出力、(2)はインダクタL2に流れる電流、(3)はトランジスタQ2のエミッタ−コレクタ間に流れる電流、(4)はインバータU5の出力、(5)はトランジスタQ1のエミッタ−コレクタ間に流れる電流、(6)は直流電源Vsから流れる電流をそれぞれ表わしている。
【0097】
図4の(1)及び(3)に例示するように、センサ用電源回路20のトランジスタQ2は、(T3+T4)を1周期としてクロック発生器3の出力と同相でON/OFFを繰り返す。これにより、図4の(2)に例示するように、トランジスタQ2のON期間T3でインダクタL2が充電され、その後のOFF期間でインダクタL2が放電する。
【0098】
これに対し、電圧電流変換回路10のトランジスタQ1は、図4の(4)及び(5)に例示するように、NANDゲートU4にクロック発生器U3の出力をインバータU5で反転した信号が入力されるから、クロック発生器3の出力と逆相で(つまりはトランジスタQ2のON/OFFタイミングとは相補的に)ON/OFFを繰り返す。
【0099】
したがって、図4の(6)に例示するように、トランジスタQ1及びQ2に電流が相補的に流れるから、トランジスタQ1及びQ2に共用である直流電源Vsから流れる電流(Vs電流)の時間変化が平準化される。これにより、ピーク電磁ノイズ発生量を低減することができる。
【0100】
なお、比較例として、図15に、トランジスタQ1及びQ2を同相で動作させる場合(別言すると、インバータU5を設けない場合)のタイミングチャートを例示する。図15と図14とを比較すれば容易に理解されるように、トランジスタQ1及びQ2を同相で動作させると、逆相で動作させる場合に比して、Vs電流に大きなピークが生じるためピーク電磁ノイズ発生量が増加する。
【0101】
〔3〕その他
上述した実施形態で説明した電圧電流変換回路10は、カレントソース(電流供給)回路の一例であるが、カレントシンク(電流吸込み)回路として構成することも可能である。
【符号の説明】
【0102】
10,100…電圧電流変換回路、12,22,120,220…制御回路、14,140…センサ、20,200…センサ用電源回路、Vs…直流電源、Vin…入力電圧、Iout…出力電流、Vref…基準電圧源、C1,C2…キャパシタ、D1,D2…スイッチングダイオード、L1,L2…インダクタ、Q1,Q2…トランジスタ、Isens…センサ電源電流、R1…電流検出抵抗、RL…負荷抵抗、S1,S2…スイッチ、U1…オペアンプ、U2,U7…コンパレータ、U3…クロック発生器、U4,U6…NANDゲート、U5…インバータ
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、電圧電流変換回路及びセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電流による信号伝送方式は、配線の長さによって伝送誤差を生じることがない優れた方式であるため、産業用機器(例えば、センサやアクチュエータ等)のアナログ信号伝送に用いられることがある。センサやアクチュエータのアナログ信号伝送では、0%を4mA、100%を20mAに対応させた、いわゆる4〜20mA信号が標準的に用いられる。
【0003】
このような電流による信号伝送を行なう場合、入力電圧に応じた電流を伝送路に出力する電圧電流変換回路が用いられる。電圧電流変換回路は、入力電圧に応じた目標の電流値となるよう内部の出力トランジスタの抵抗値を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−54767号公報
【特許文献2】特許第3078476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、出力トランジスタの抵抗値を調整する方式では、トランジスタに加わる電圧と電流の積である消費電力がすべて熱となって周囲に放出される。4〜20mA伝送においては、直流電源Vs=24V、負荷抵抗RL=250Ωが標準的に用いられる。図6において、出力電流(4〜20mA)をIoutとしたとき、トランジスタQ1の消費電力Poは、Po=(Vs−Iout*RL)*Ioutにより求めることができる。Iout=4mAのときPo=92mW、Iout=20mAのときPo=380mWと計算される。このように、出力トランジスタの消費電力Poは出力電流Ioutによって大きく変化する。また、直流電源には器差があり、例えば±10%としたとき、+10%ではVs=26.4Vとなる。また、負荷抵抗RLは標準的には250Ωであるが、例えば50Ωという場合もある。このような動作条件では、Iout=20mAのとき、消費電力Po=508mWに達する。すなわち消費電力は、出力電流Ioutだけでなく、電源電圧Vs、負荷抵抗RLの値によっても変動する。トランジスタの消費電力は熱となって周囲の温度を上昇させる。温度上昇の値は消費電力値に比例する。また、トランジスタは周囲の空気によって冷却されるため、温度上昇の値は周囲の気流速によっても変化する。最大508mWの消費電力は、小型の機器内においては無視できない温度上昇をもたらす。
【0006】
機器の温度上昇は、例えば周囲環境の温度を測定する温度センサの場合には大きな問題となる。すなわち、温度センサの近傍に発熱体があるため、温度上昇により測定温度に誤差を生じる。出力トランジスタの発熱を抑制するため、例えば特許文献1に示されるように、直流電源Vsの電圧24V一定ではなく可変とし、最小限の電圧まで低下させる方法が考えられている。しかし、回路の動作マージンを確保するため出力トランジスタに電圧を残す必要があり、消費電力の抑制は限定的である。
【0007】
そこで、センサ出力値に対して温度上昇分を推定して補正する等の対策がとられることもある。しかし、出力トランジスタの発熱による温度上昇は、出力電流、負荷抵抗、センサ周囲の気流速によって変化し一定ではないため、測定誤差をゼロにすることが困難である。
【0008】
その他の対策としては、温度センサを出力トランジスタから離して配置する方法(例えば特許文献2参照)も考えられるが、機器のサイズが増大してしまう。なお、温度センサに限らず例えば湿度センサの場合も、発熱により温度上昇すると相対湿度が低下するため、測定誤差を生じる。出力トランジスタの発熱量を低下させることでセンサの測定精度を向上させることが課題となる。
【0009】
本発明の目的の一つは、センサの測定精度を向上することにある。
【0010】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電圧電流変換回路の一態様は、周囲温度の変化に応じて測定値が変動し得るセンサの前記測定値に対応する入力電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換回路であって、直流電源電流が供給されるスイッチと、前記スイッチに一端が接続されたインダクタと、前記センサの測定値に応じた入力電圧に対応する電流が前記インダクタの充放電を通じて出力されるよう、前記スイッチのスイッチングを制御する制御回路と、を備え、前記周囲温度の変化が、前記電圧電流変換回路の自己発熱に起因する温度変化を含む。
【0012】
ここで、前記スイッチは、前記供給及び前記遮断を制御する、トランジスタ及びスイッチングダイオードを含んでもよい。
【0013】
また、前記インダクタの他端側にキャパシタが出力負荷に対して並列に接続されてもよい。
【0014】
さらに、前記センサが収められたケース内に、前記電圧電流変換回路が設けられてもよい。
【0015】
また、前記センサは、温度、湿度及び気流のいずれかを測定するものであってよい。前記温度は、輻射温度を含んでもよい。
【0016】
さらに、本発明のセンサユニットの一態様は、周囲温度の変化に応じて測定値が変動するセンサと、前記センサの測定値に対応する入力電圧に応じた電流を、直流電源電流の周期的な第1のスイッチング制御を通じて出力するスイッチング方式の電圧電流変換回路と、前記電圧電流変換回路から前記直流電源電流の一部を受け、当該一部の電流の周期的な第2のスイッチング制御を通じて前記センサへ駆動電流を出力するスイッチング方式のセンサ用電源回路と、を備え、前記周囲温度の変化が、前記電圧電流変換回路及び前記電源回路の少なくとも一方の自己発熱に起因する温度変化を含む。
【0017】
ここで、前記第1のスイッチング制御がON状態のときに前記第2のスイッチング制御がOFF状態となり、前記第1のスイッチング制御がOFF状態のときに前記第2のスイッチング制御がON状態となる、こととしてもよい。
【0018】
また、前記センサユニットは、前記第1及び第2のスイッチング制御の一方における前記ON状態及びOFF状態を制御するクロック信号を発生するクロック発生器と、前記クロック発生器が発生した前記クロック信号を反転するインバータと、をさらに備え、前記インバータで反転された前記クロック信号によって、前記第1及び第2のスイッチング制御の他方における前記ON状態及びOFF状態が制御される、こととしてもよい。
前記センサは、温度、湿度及び気流のいずれかを測定するものであってよい。前記温度は、輻射温度を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る電圧電流変換回路の一例を示す図である。
【図2】図1に例示するスイッチング方式の電圧電流変換回路の詳細構成例を示す回路図である。
【図3】図2に例示する電圧電流変換回路の動作を説明するタイミングチャートの一例である。
【図4】(A)〜(C)はスイッチング方式の電圧電流変換回路の効果をシリーズ方式と比較して説明する図である。
【図5】シリーズ方式の電圧電流変換回路の一例を示す図である。
【図6】図5に例示するシリーズ方式の電圧電流変換回路の詳細構成例を示す回路図である。
【図7】第1実施形態の電圧電流変換回路の立ち上がり特性(シミュレーション結果)の一例を示すグラフである。
【図8】シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の電源消費電流(平均値)特性(シミュレーション結果)の一例を示すグラフである。
【図9】シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の電源消費電力(平均値)比(シミュレーション結果)の一例を示すグラフである。
【図10】シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の回路消費電力(平均値)特性(シミュレーション結果)の一例を示すグラフである。
【図11】シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の回路消費電力(平均値)比(シミュレーション結果)の一例を示すグラフである。
【図12】第2実施形態に係るスイッチング方式のセンサ用電源回路を備えたセンサユニットの構成例を示す図である。
【図13】図12に例示するスイッチング方式のセンサ用電源回路の詳細構成例をスイッチング方式の電圧電流変換回路の詳細構成例と共に示す回路図である。
【図14】図13においてインバータU5を通さずに、スイッチングトランジスタQ1及びQ2を同相動作させる場合の動作タイミングチャートの一例である。。
【図15】図13においてトランジスタQ1及びQ2を同相動作させる場合のタイミングチャートの一例である。
【図16】シリーズ方式の電圧電流変換回路及びシリーズ方式のセンサ用電源回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施例を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0021】
〔1〕第1実施形態の説明
(原理的構成例)
図1は、第1実施形態に係る電圧電流変換回路の一例を示す図である。図1に示す電圧電流変換回路10は、例示的に、インダクタL1、インダクタL1の一方の端子に接続されたスイッチS1、インダクタL1の他方の端子に直列接続されて負荷抵抗RLへ出力される電流値Ioutを検出するための電流検出抵抗R1、制御回路12を備える。
【0022】
スイッチS1は、例示的に、バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタ(FET:Field-Effect Transistor)等(以下、単に「トランジスタ」と総称する。)を用いて構成できる。スイッチS1は、直流電源Vsの高電位側との接続を成すVs接点と、直流電源Vsの低電位側(グランド(GND))との接続を成す接点(以下、便宜的に、「GND接点」と表記する。)とを有する。
【0023】
スイッチS1がVs接点に接続されると、直流電源Vsから電流がインダクタL1へ供給され、スイッチS1がGND接点に接続されると、直流電源VsからインダクタL1への電流が遮断される。2つの接点に対応して素子として2つのトランジスタを用いてもよいし、回路簡素化のため、一方(例えばGND接点)をダイオード(例えば図2のD1参照)によって構成してもよい。
【0024】
制御回路12は、電流検出抵抗R1で検出される電流値Ioutが入力電圧Vinに対応する値となるよう、スイッチS1を2つの接点(Vs接点及びGND接点)の間で繰り返し交互に切り替える。入力電圧Vinは、非限定的な一例として、センサによる測定値に応じた電圧である。
【0025】
センサは、例示的に、温度(例えば気温)を測定する温度センサ、輻射温度を測定する輻射温度センサ、湿度を測定する湿度センサ、及び、気流を測定する気流センサ等であり、温度、輻射温度、湿度及び気流のいずれか2以上を測定する複合センサであってもよい。
【0026】
これらのセンサは、周囲温度の変化に応じて測定値が変動し得るセンサの非限定的な一例であり、ここでの周囲温度の変化には、電圧電流変換回路10自体の回路発熱に起因する温度変化が含まれる。すなわち、電圧電流変換回路10自体の回路発熱に起因する温度変化によって、センサの測定値に誤差が生じ得る。
【0027】
例えば、温度センサのなかには、センサケース内の空気温度を測定するもののほか、センサケース外の測定対象の温度を測定する熱電対センサがある。熱電対は、温度の絶対値ではなく両接点間の相対温度に応じた起電力を発生する。このため、一方の接点を測定対象物に接触させ、他方の接点を基準温度環境に置く。後者を冷接点と呼ぶ。別の温度センサを使って冷接点の温度を測定し、その出力を熱電対センサの相対温度と加算することにより、測定対象の温度の絶対値を求める。冷接点はセンサケース内に設けられるが、2つの温度センサの位置を一致させることが難しいためある距離をもって設置することになる。2つの温度センサ間に温度差があると、冷接点温度が正しく測れないため測定誤差を生じる。したがって、センサケース内に発熱体(例えば、電圧電流変換回路10)が存在するとケース内の温度が均一でなくなり、冷接点温度が正しく測れないため測定誤差を生じ得る。
【0028】
また、対象物の放射温度を測定する輻射温度センサは、例えば熱電対を重ねたサーモパイル素子を用いる。輻射温度センサも冷接点の温度を別の温度センサを使って測定し、2つの温度センサの出力値を加算することにより、放射温度の絶対値を求める。冷接点は通常センサケース内に設けられるが、2つの温度センサの位置を一致させることができないためある距離をもって設置される。2つの温度センサ間に温度差があると、冷接点温度が正しく測れないため放射温度測定値に誤差を生じる。したがって、センサケース内に発熱体(例えば、電圧電流変換回路10)が存在するとケース内の温度が均一でなくなり、測定誤差を生じ得る。
【0029】
また、室内の気流速を測定する気流センサは、近傍に発熱体(例えば、電圧電流変換回路10)が存在すると上昇気流が発生するため、気流センサの測定値に誤差を生じ得る。
【0030】
制御回路12は、T1の期間(ON期間)、スイッチS1をVs接点に接続し、続くT2の期間(OFF期間)、GND接点に接続することを(T1+T2)を1周期として繰り返す。
【0031】
これにより、インダクタL1は、ON期間T1において直流電源Vsの電圧(以下「直流電圧Vs」とも表記する。)によって充電され、OFF期間T2において充電エネルギーを電流として放電することを繰り返す。したがって、T1及びT2の比を制御すれば、負荷抵抗RLへ出力される電流値Ioutの平均値(実効値)を制御できる。
【0032】
よって、制御回路12は、電流検出抵抗R1によって出力電流値Ioutを監視し、出力電流値Ioutの平均値が目標の電流値(入力電圧Vinに対応する電流値)となるようスイッチS1のON期間T1及びOFF期間T2の比(ON/OFF期間のデューティ比)を制御する。T1及びT2の比を変化させる方式には、T1+T2を固定とするPWM方式と、T1又はT2のどちらか一方を固定するPFM方式とがあり、いずれを制御回路12に適用してもよい。
【0033】
このように、電圧電流変換回路10の出力電流制御を、トランジスタの内部抵抗ではなく、スイッチS1及びインダクタL1により行なう(以下「スイッチング方式」と称することがある。)ことで、理想的な素子を用いた場合、電流検出抵抗R1での消費電力を除いて、スイッチS1及びインダクタL1による消費電力を原理的にはゼロにできる。
【0034】
したがって、回路発熱による温度上昇を抑制でき、ひいては温度センサや湿度センサ等による測定誤差の発生を抑制して測定精度を向上することができる。
例えば図4(A)に模式的に示すように、4〜20mA出力空調用温度・湿度センサユニットのような温度センサと出力トランジスタとが通風孔(図示省略)を有するケース内に収められている場合を想定する。
【0035】
この場合、シリーズ方式の電圧電流変換回路100(図5参照)では、図4(B)に例示するように、発熱が大きいため、取り付け環境のケースに対する気流の有無や方向によってケース内の温度、湿度が変化し、温度、湿度の測定値に大きな誤差(例えば温度で数℃程度、湿度で数%程度)が発生し易い。仮に、製造段階で校正されたセンサでも、現場で再調整が必要な場合もある。
【0036】
これに対し、本実施形態のスイッチング方式の電圧電流変換回路10では、設計にもよるが、例えば、回路効率約90%で、発熱はシリーズ方式の約1/10にすることができる。そのため、図4(C)に例示するように、発熱が小さく、取付け環境の気流の有無や方向によらずにケース内の温度変化を小さくできる。したがって、シリーズ方式において取り付け環境の気流の有無や方向によって生じていた測定誤差を約1/10に大幅改善できることが見込まれる。また、センサを電圧電流変換回路10に従来よりも近接して配置することができるため、ケースの小型化を測ることもできる。
【0037】
(詳細回路例)
次に、図2は、上述したスイッチング方式の電圧電流変換回路10の詳細構成例を示す回路図である。図2に例示する電圧電流変換回路10は、トランジスタQ1、スイッチングダイオードD1、インダクタL1、電流検出抵抗R1、負荷抵抗RL、直流電源Vs、キャパシタC1、抵抗R2及びR3、オペアンプU1、コンパレータU2、クロック発生器U3、及びNANDゲートU4を備える。
【0038】
トランジスタQ1は、例示的に、PNP構造のバイポーラトランジスタである(駆動回路を変更してNPN構造のバイポーラトランジスタや、J−FET、MOS−FETを用いてもよい)。当該トランジスタQ1は、エミッタが直流電源Vsの高電位側に接続され、ベースがNANDゲートU4の出力に接続され、コレクタがインダクタL1の一方の端子に直列接続されるとともにスイッチングダイオードD1のカソードに並列接続されている。ダイオードD1には、順方向電圧が低くスイッチング速度の速いショットキーダイオードを用いてもよい。
【0039】
NANDゲートU4の出力がロー(L)になるとトランジスタQ1がONとなり、直流電源VsからインダクタL1に電流が流れる。逆に、NANDゲートU4の出力がハイ(H)になるとトランジスタQ1はOFFとなり、インダクタL1に逆起電力が発生することによりスイッチングダイオードD1が導通する。別言すると、トランジスタQ1及びダイオードD1は、既述のスイッチS1(Vs接点及びGND接点)を成している。
【0040】
NANDゲートU4は、2入力の一方にコンパレータU2の出力が接続され、他方に周期的にハイ(H)及びロー(L)を繰り返す方形波を生成するクロック発生器U3の出力が接続されている。したがって、コンパレータU2の出力及びクロック発生器U3の出力が共にハイ(H)の時にだけNANDゲートU4の出力がロー(L)となり、トランジスタQ1にベース電流が流れ、エミッタ−コレクタ間が導通してONとなる。その他の状態ではNANDゲートU4からハイ(H)が当該エミッタに出力される(すなわち、トランジスタがOFFとなる)。
【0041】
オペアンプU1、抵抗R2及びR3は、非反転増幅器を成し、電流検出抵抗R1に流れる電流に応じて両端に生じる電位差(両端電圧)を−(R3/R2)倍して出力する。
【0042】
コンパレータU2は、入力電圧VinとオペアンプU1の出力とを比較して、オペアンプU1の出力よりも入力電圧Vinの方が高い場合にハイ(H)、逆に、入力電圧VinよりもオペアンプU1の出力の方が高い場合にロー(L)をNANDゲートU4に出力する。当該出力によってNANDゲートU4の出力(H/L)が制御され、それによりトランジスタQ1のON/OFFが制御される。
【0043】
別言すると、非反転増幅器(オペアンプU1、抵抗R2及びR3)とコンパレータU2とは、既述の制御回路12の一例を成す。
【0044】
キャパシタC1は、直列接続された負荷抵抗RL及び電流検出抵抗R1の両端に対して並列に接続されて、負荷抵抗RLへ出力される出力電流の交流成分を吸収しリップルを抑制する役割を果たす。
【0045】
図3に、図2により上述した電圧電流変換回路10の動作を説明するタイミングチャートの一例を示す。図3において、(1)はクロック発生器U3の出力、(2)は負荷抵抗RLに流れる電流、(3)はコンパレータU2の出力、(4)はNANDゲートU4の出力、(5)はトランジスタQ1のエミッタ−コレクタ間に流れる電流、(6)はスイッチングダイオードD1に流れる電流、(7)はインダクタL1に流れる電流をそれぞれ表わしている。なお、図3は、オペアンプU1及びコンパレータU2での遅延時間(制御遅延)を加味して表記している。
【0046】
図3の(1)、(3)及び(4)に例示するように、クロック発生器U3及びコンパレータU2の各出力が共にHとなる期間(T1)だけNANDゲートU4の出力がLとなり、その他の期間(T2)ではNANDゲートU4の出力がHとなる。したがって、図3の(5)に例示するように、トランジスタQ1は、(T1+T2)を1周期として、T1の期間でONとなりT2の期間でOFFとなることを繰り返す。
【0047】
よって、図3の(2)及び(7)に例示するように、トランジスタQ1のON期間T1において、直流電源Vs、インダクタL1、抵抗R1、及び負荷抵抗RLを経由する閉ループに電流が流れてインダクタL1が充電され、その後のOFF期間T2においてインダクタL1に充電された電磁エネルギーが電流として負荷抵抗RL側へ放電される。負荷抵抗RLには充電電流と放電電流とが繰り返し相補的に途切れることなく流れる。
【0048】
一方、図3の(6)に例示するように、スイッチングダイオードD1は、トランジスタQ1がONである期間T1においてOFF状態となり電流は流れず、トランジスタQ1がOFFである期間T2においてON状態となりインダクタL1の放電電流が流れる。
【0049】
すなわち、トランジスタQ1のON期間T1では、直流電源Vs、インダクタL1、抵抗R1、及び負荷抵抗RLを経由する閉ループに電流が流れてインダクタL1が充電され、その後のOFF期間T2では、インダクタL1、抵抗R1、負荷抵抗RL、及びダイオードD1を経由する閉ループにインダクタL1の放電電流が流れる。
【0050】
このようにして、(T1+T2)を1周期としてトランジスタQ1がON/OFF制御されることで、インダクタL1の充放電が繰り返される。ここで、T1及びT2のデューティ比は、コンパレータU2の出力(図3の(3)参照)のH及びLの期間の比率によって定まる。
【0051】
出力電流Ioutは電流検出抵抗R1を流れ電圧に変換される。R1の両端に発生する電圧はオペアンプU1によって増幅される。オペアンプU1の出力には出力電流に比例した電圧が発生する。コンパレータU2によって、オペアンプU1の出力電圧と入力電圧Vinとを比較する。コンパレータU2の出力はオペアンプU1の出力電圧が入力電圧Vinよりも低い場合にはHに、逆の場合にはLになる。コンパレータU2の出力によって、インダクタL1の充電と放電が切り替えられ、IoutがVinによって示される目標値となるように、フィードバック制御される。平衡状態においては、Iout*R1*R3/R2=V1が成り立つので式を変形してIoutは次のように表すことができる。
【0052】
Iout=V1*R2/(R1*R3)
すなわち、出力電流Ioutが入力電圧Vinに比例する電圧電流変換器となる。変換係数である相互コンダクタンスGmは、
Gm=Iout/Vin=R2/(R1*R3)
と表すことができる。
【0053】
以上のように、本実施形態の電圧電流変換回路10によれば、出力電流制御を、スイッチS1及びインダクタL1を用いて虚数電流の充放電によって実施することになるため、従来の直流抵抗による制御よりも回路発熱による温度上昇を抑制できる。したがって、電圧電流変換回路10の入力電圧Vinを例えば温度センサや湿度センサ等の検出電圧とする場合、回路発熱による温度センサや湿度センサ等の測定誤差を小さくできる。
【0054】
なお、図7〜図11に、図2に例示したスイッチング方式電圧電流変換回路10の回路シミュレーション結果を例示する。解析条件は、電源電圧Vs=24V、負荷抵抗RL=250Ω、出力電流設定値=20mA、クロック発生器U3のクロック周波数=100kHzである。
【0055】
図7は、電圧電流変換回路10の立ち上がり時の過渡解析結果の一例を示している。負荷抵抗RLに流れる電流が0から設定値(20mA)に達するまでの時間(立ち上がり時間)が約1msであることを示している。温度センサや湿度センサの時定数である数秒から数分と比べて非常に速く、十分な応答特性をもっている。
【0056】
図8は、シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の電源消費電流(平均値)特性の一例を示すグラフである。ただし、比較対象であるシリーズ方式の電圧電流変換回路は図6に例示する構成とし、電源電圧Vs=24V、負荷抵抗RL=250Ωである(図9〜図11においても同様)。図8から、出力電流が4〜20mAの範囲においてスイッチング方式ではシリーズ方式に比べて約1/3以下に消費電流を削減できることが分かる。
【0057】
図9は、図8を電源消費電力(平均値)比として書き直したグラフである。ただし、「電源消費電力比」=「スイッチング方式での電源消費電力/シリーズ方式での電源消費電力」である。図9から、スイッチング方式での電源消費電力は、シリーズ方式の電源消費電力と比べて出力電流4〜20mAの範囲において約33%以下に低減されるため、直流電源Vsの電流容量は1/3の小容量でよいことが分かる。
【0058】
図10は、シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の回路消費電力(平均値)特性の一例を示すグラフである。ただし、「回路消費電力」に負荷抵抗RLの消費電力は含まない。図10から、スイッチング方式での回路消費電力は、4〜20mAの範囲の出力電流に対して比例的に増加するシリーズ方式での回路消費電力に比べて、4〜20mAの範囲の出力電流に対して変化が小さく僅かであり大幅に低減できることが分かる。なお、スイッチング方式での回路消費電力は、既述のとおり理想的にはゼロにできるが、実際にはトランジスタQ1、インダクタL1、キャパシタC1での損失、電流検出抵抗R1の電力消費によってゼロにはならない。電流検出抵抗R1の消費電力P1は、P1=Iout*Iout*R1と表わすことができる。一例として、抵抗R1=50Ω、Iout=20mAのとき、消費電力P1=20mWとなる。なお、電流検出抵抗の値は小さいほど電力消費が少なく好都合であるが、抵抗値が小さいと発生電圧も小さくなるため高倍率の増幅器を必要として、目標の変換精度を保つことが難しくなる。
【0059】
図11は、シリーズ方式及びスイッチング方式の電圧電流変換回路の回路消費電力(平均値)比の一例を示すグラフである。ただし、「回路消費電力比」=「スイッチング方式での回路消費電力/シリーズ方式での回路消費電力」である。図11から、スイッチング方式での回路消費電力は、シリーズ方式の回路消費電力と比べて、出力電流4〜20mAの範囲において約1/10に低減できることが分かる。
【0060】
以上のように、本実施形態のスイッチング方式の電圧電流変換回路10によれば、消費電力(電源/回路消費電力)をシリーズ方式に比べて大幅に低減できる。したがって、電圧電流変換回路10を例えば長時間(24時間等)にわたって連続運転されるような温度センサや湿度センサ等の機器に適用した場合に、機器自体の消費電力は少なくても大きな節電効果を得ることができる。また、直流電源Vsの電流容量を削減することも可能になる。
【0061】
〔2〕第2実施形態の説明
第2実施形態では、電圧電流変換回路のスイッチング方式化に加えて、センサユニットにおけるセンサ用電源回路についても、第1実施形態で述べたようなスイッチング方式化することについて説明する。
【0062】
4〜20mAで信号を電流伝送する機器のうち、回路消費電流が4mA以下の機器については、伝送電流の一部を当該機器の駆動のために用いることがある。例えば、回路消費電流が3mAの機器の場合には、4〜20mAの電流の一部を当該機器の駆動のために、常時、消費することができる。
【0063】
したがって、DC5Vや、DC12Vといった電源を個別に用意する必要がなくなり、省配線化を図ることができる。4〜20mA出力の空調用室内温度・湿度センサユニット等においてもこのような方式を採用することがある。センサはDC3VやDC5Vといった一定電圧で駆動されるので、例えばシリーズレギュレータ(通称「3端子レギュレータ」)を用いて当該一定電圧を作ることができる。
【0064】
図16に、センサ用電源回路の構成例を示す。図16に例示するセンサ用電源回路200は、図5に例示した電圧電流変換回路100をセンサ140に適用した構成において当該センサ140に電流(Isens)を供給する。
【0065】
センサ用電源回路200には、例示的に、シリーズ方式の3端子レギュレータ(入力:V1、出力:Vreg)が用いられ、出力電圧Vregが目標値(センサ140への供給電圧であって例えば5V)になるように、制御回路220が、出力トランジスタQ2の内部抵抗を調整する。なお、V1及びVregは、端子V0を基準とした電圧を示す。
【0066】
ここで、センサ140の消費電流をIsensとすると、出力トランジスタQ2の消費電力P2は、次のように表わせる。
【0067】
P2=(V1−Vreg)*Isens
V1=Vs−Iout*(RL+R1)
したがって、例えば、Isens=3mA、Iout=4mA、RL=250Ω、R1=50Ω、Vs=24V、Vreg=5Vの場合、V1=22.8V、P2=53.4mWとなる。なお、センサ140及びセンサ用電源回路200が電圧電流変換回路100に接続されている場合、電源電圧Vsからの電流の一部がセンサ用電源回路200(トランジスタQ2)に用いられるため、センサ140及びセンサ用電源回路200が接続されていない場合に比べてトランジスタQ1の消費電力は低下する。
【0068】
ところで、上述したような3端子レギュレータの出力トランジスタQ2には、常時、電流が流れるため発熱する。温度センサや湿度センサ等の場合には、この発熱によりセンサケース内の温度が上昇し、測定誤差を生じ易くなる。
【0069】
そこで、第2実施形態では、電圧電流変換回路のスイッチング方式化に加えて、センサ用電源回路についても第1実施形態で述べたようなスイッチング方式を採用することにより、更なる発熱抑制効果を得る。
【0070】
(原理的構成例)
図12に、スイッチング方式のセンサ用電源回路を備えたセンサユニットの構成例を示す。図12に例示するセンサユニットは、センサ14と、センサ14に駆動電流Isensを供給するスイッチング方式のセンサ用電源回路20と、第1実施形態にて説明したスイッチング方式の電圧電流変換回路10と、を備える。なお、電圧電流変換回路10は、センサ14で測定された温度や湿度に対応する電圧を入力電圧Vinとする。また、Vinは、端子V0を基準とした電圧を示す。
【0071】
センサ14は、温度、輻射温度、湿度及び気流のいずれかを測定するセンサであり、電圧電流変換回路10及びセンサ用電源回路20の一方又は双方の回路発熱に起因する温度変化によって測定値に誤差が生じ得るセンサである。
【0072】
センサ用電源回路20は、スイッチング方式の電圧電流変換回路10の原理的構成例と同様に、インダクタL2と、スイッチS2と、制御回路22と、を備える。インダクタL2の一方の端子はセンサ14に接続され、他方の端子はスイッチS2に接続される。
【0073】
スイッチS2は、例示的に、トランジスタを用いて構成できる。スイッチS2は、入力電圧(V1)接点及び端子V0接点の2つの接点を有する。電圧電流変換回路10と同様に、2つの接点に対応して素子として2つのトランジスタを用いてもよいし、回路簡素化のため、一方(例えばV0接点)をダイオードによって構成してもよい。
【0074】
制御回路22は、センサ14への出力電圧Vregが目標値(センサ140への出力電圧であって例えば5V)となるよう、スイッチS2を2つの接点(V1接点及びV0接点)の間で繰り返し交互に切り替える。
【0075】
例えば、制御回路22は、T3の期間(ON期間)、スイッチS2をV1接点に接続し、続くT4の期間(OFF期間)、V1接点に接続することを(T3+T4)を1周期として繰り返す。
【0076】
これにより、インダクタL2は、ON期間T1において電圧V1によって充電され、OFF期間T2において充電エネルギーを電流として放電することを繰り返す。したがって、T3及びT4の比を制御すれば、センサ14へ出力される電流値Isensの平均値(実効値)、ひいては出力電圧Vregの平均値を制御できる。
【0077】
よって、制御回路22は、出力電圧Vregの平均値が目標値となるようスイッチS2のON期間T3及びOFF期間T4の比(ON/OFF期間のデューティ比)を制御する。T3及びT4の比を変化させる方式には、T3+T4を固定とするPWM方式と、T3又はT4のどちらか一方を固定するPFM方式とがあり、いずれを制御回路22に適用してもよい。ただし、図13及び図14により後述するようにスイッチS1(トランジスタQ1)及びスイッチS2(トランジスタQ2)を逆相で動作させる場合には、電圧電流変換回路10とセンサ用電源回路20とで方式を統一する。
【0078】
このように、スイッチング方式のセンサ用電源回路20によれば、センサ14への出力電圧制御を、トランジスタQ2(図16参照)の内部抵抗ではなく、スイッチS2及びインダクタL2を用いて行なうことで、理想的な素子を用いた場合、スイッチS2及びインダクタL2による消費電力を原理的にはゼロにできる。
【0079】
したがって、電圧電流変換回路10に加えてセンサ用電源回路20の回路発熱による温度上昇をも抑制でき、ひいては温度センサや湿度センサ等による測定誤差の発生を第1実施形態のみの実施よりも更に抑制して測定精度を向上することができる。なお、実際の回路では、設計にもよるが、例えば効率90%程度にできるため、シリーズ方式のセンサ用電源回路200(図16参照)に比べて発熱量は1/10程度にできることが見込まれる。また、電圧電流変換回路10及びセンサ用電源回路20の双方をスイッチング方式とすることで、センサユニットの消費電力を従来よりも大幅に低減できる。
【0080】
(詳細回路例)
次に、図13は、上述したスイッチング方式のセンサ用電源回路20の詳細構成例をスイッチング方式の電圧電流変換回路10の構成例と共に示す回路図である。図13に例示する電圧電流変換回路10は、図2に例示した構成と同様の構成を有している。一方、図13に例示するスイッチング方式のセンサ用電源回路20は、トランジスタQ2、スイッチングダイオードD2、インダクタL2、キャパシタC2、コンパレータU7、基準電圧源Vref、及びNANDゲートU6を備える。
【0081】
トランジスタQ2は、例示的に、PNP構造のバイポーラトランジスタである(駆動回路を変更してNPN構造のバイポーラトランジスタや、J−FET、MOS−FETを用いてもよい)。当該トランジスタQ2は、エミッタが直流電源Vsの高電位側に接続され、ベースがNANDゲートU6の出力に接続され、コレクタがインダクタL2の一方の端子に直列接続されるとともにスイッチングダイオードD2のカソードに並列接続されている。
【0082】
NANDゲートU6の出力がロー(L)になるとトランジスタQ2がONとなり、センサ14に向けてインダクタL2に電流が流れる。逆に、NANDゲートU6の出力がハイ(H)になるとトランジスタQ2はOFFとなり、インダクタL2に逆起電力が発生することによりスイッチングダイオードD2が導通する。別言すると、トランジスタQ2及びダイオードD2は、既述のスイッチS2を成している。
【0083】
NANDゲートU6は、2入力の一方にコンパレータU7の出力が接続され、他方に周期的にハイ(H)及びロー(L)を繰り返すクロック信号を生成するクロック発生器U3の出力が接続されている。したがって、コンパレータU7の出力及びクロック発生器U3の出力が共にハイ(H)の時にだけNANDゲートU6の出力がロー(L)となり、トランジスタQ2にベース電流が流れ、エミッタ−コレクタ間が導通してONとなる。その他の状態ではNANDゲートU6の出力がハイ(H)で、トランジスタQ2にベース電流が流れずエミッタ−コレクタ間は遮断状態でOFFとなる。なお、クロック発生器U3は、電圧電流変換回路10及びセンサ用電源回路20に共用でよい。
【0084】
コンパレータU7は、センサ電源電圧Vregを基準電圧Vrefと比較して、Vref>Vregの場合にハイ(H)、逆に、Vref<Vregの場合にロー(L)をNANDゲートU6に出力する。当該出力によってNANDゲートU6の出力(H/L)が制御され、それによりトランジスタQ2のON/OFFが制御される。
【0085】
別言すると、コンパレータU2及び基準電圧源Vrefは、既述の制御回路22の一例を成す。
【0086】
キャパシタC2は、センサ14と並列に接続されて、インダクタL2を通じてセンサ14へ出力される電流のリップルを抑制する役割を果たす。
【0087】
なお、クロック発生器U3を電圧電流変換回路10及びセンサ用電源回路20に共用として、2つのトランジスタQ1及びW2を同相で駆動すると、両者同時に電流が流れるため、ピーク電流値が大きくなる。過渡的な電流変化も大きいため、電流が流れる信号線から大きな電磁ノイズが発生する。
【0088】
そこで、例えばNANDゲートU4及びU6の一方(例えばNANDゲートU4)のクロック信号入力に対してインバータU5を追加することで、両トランジスタQ1及びQ2を互いに逆相で駆動する。別言すると、電圧電流変換回路10のスイッチング制御パルスの位相とセンサ用電源回路20のスイッチング制御パルスの位相とを逆相にする。これにより、両スイッチング制御においてトランジスタQ1及びQ2に電流が相補的に流れ平準化されるため、電源Vsのピーク負荷を低減できるとともに、ピーク電磁ノイズ発生量を低減することができる。
【0089】
以下、動作例を説明する。まず、スイッチング方式の電圧電流変換回路10の動作は、NANDゲートU4にクロック発生器U3の出力(クロック信号)をインバータU5で反転した信号が入力される点を除いて、第1実施形態(図3)と同様である。NANDゲートU4にクロック発生器U3の出力をインバータU5で反転した信号が入力されるから、トランジスタQ1は、既述のようにトランジスタQ2とは逆相で動作することになる。
【0090】
一方、スイッチング方式のセンサ用電源回路20の動作は、図3に例示したタイミングチャートにおける「(2)RL電流」、「(3)U2出力」、「(4)U4出力」、「(6)D1電流」、及び、「(7)L1電流」をそれぞれ「(2)センサ駆動電流」、「(3)U7出力」、「(4)U6出力」、「(6)D2電流」、及び、「(7)L2電流」に置き換えた動作に相当する。
【0091】
まず、NANDゲートU6の出力は、クロック発生器U3及びコンパレータU7の各出力が共にHとなる期間(T3)だけLとなり、その他の期間(T4)ではHとなる。したがって、トランジスタQ2は、(T3+T4)を1周期として、T3の期間でON(エミッタ−コレクタ間が導通)となりT4の期間でOFFとなることを繰り返す。
【0092】
よって、トランジスタQ2のON期間T3においてインダクタL2が充電され、その後のOFF期間T4においてインダクタL2に蓄えられた電磁エネルギーが放電する。インダクタL2の充電電流および放電電流は、相補的に途切れることなく連続してセンサ14の駆動電流となる。
【0093】
一方、スイッチングダイオードD2は、トランジスタQ2がONである期間T3においてOFF状態となり電流は流れず、トランジスタQ2がOFFである期間T4においてON状態となりインダクタL2の放電電流が流れる。
【0094】
このようにして、(T3+T4)を1周期としてトランジスタQ2がON/OFF制御されることで、インダクタL2の充放電が繰り返される。ここで、T3及びT4のデューティ比は、コンパレータU7の出力のH及びLの期間の比率によって定まる。
【0095】
すなわち、コンパレータU7の出力は、基準電圧Vrefに対するセンサ14への出力電圧Vregの高低に応じて切り替わり、出力電圧Vregが目標値である基準電圧Vrefよりも低い状態であればHとなり、逆であればLとなる。コンパレータU7の出力によって、インダクタL2の充電と放電が切り替えられ、出力電圧Vregが目標値である基準電圧Vrefとなるように、フィードバック制御される。
【0096】
図14に、トランジスタQ1及びQ2を逆相動作させる場合のタイミングチャートの一例を示す。図14において、(1)はクロック発生器U3の出力、(2)はインダクタL2に流れる電流、(3)はトランジスタQ2のエミッタ−コレクタ間に流れる電流、(4)はインバータU5の出力、(5)はトランジスタQ1のエミッタ−コレクタ間に流れる電流、(6)は直流電源Vsから流れる電流をそれぞれ表わしている。
【0097】
図4の(1)及び(3)に例示するように、センサ用電源回路20のトランジスタQ2は、(T3+T4)を1周期としてクロック発生器3の出力と同相でON/OFFを繰り返す。これにより、図4の(2)に例示するように、トランジスタQ2のON期間T3でインダクタL2が充電され、その後のOFF期間でインダクタL2が放電する。
【0098】
これに対し、電圧電流変換回路10のトランジスタQ1は、図4の(4)及び(5)に例示するように、NANDゲートU4にクロック発生器U3の出力をインバータU5で反転した信号が入力されるから、クロック発生器3の出力と逆相で(つまりはトランジスタQ2のON/OFFタイミングとは相補的に)ON/OFFを繰り返す。
【0099】
したがって、図4の(6)に例示するように、トランジスタQ1及びQ2に電流が相補的に流れるから、トランジスタQ1及びQ2に共用である直流電源Vsから流れる電流(Vs電流)の時間変化が平準化される。これにより、ピーク電磁ノイズ発生量を低減することができる。
【0100】
なお、比較例として、図15に、トランジスタQ1及びQ2を同相で動作させる場合(別言すると、インバータU5を設けない場合)のタイミングチャートを例示する。図15と図14とを比較すれば容易に理解されるように、トランジスタQ1及びQ2を同相で動作させると、逆相で動作させる場合に比して、Vs電流に大きなピークが生じるためピーク電磁ノイズ発生量が増加する。
【0101】
〔3〕その他
上述した実施形態で説明した電圧電流変換回路10は、カレントソース(電流供給)回路の一例であるが、カレントシンク(電流吸込み)回路として構成することも可能である。
【符号の説明】
【0102】
10,100…電圧電流変換回路、12,22,120,220…制御回路、14,140…センサ、20,200…センサ用電源回路、Vs…直流電源、Vin…入力電圧、Iout…出力電流、Vref…基準電圧源、C1,C2…キャパシタ、D1,D2…スイッチングダイオード、L1,L2…インダクタ、Q1,Q2…トランジスタ、Isens…センサ電源電流、R1…電流検出抵抗、RL…負荷抵抗、S1,S2…スイッチ、U1…オペアンプ、U2,U7…コンパレータ、U3…クロック発生器、U4,U6…NANDゲート、U5…インバータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲温度の変化に応じて測定値が変動し得るセンサの前記測定値に対応する入力電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換回路であって、
直流電源電流を供給又は遮断するスイッチと、
前記スイッチに一端が接続されたインダクタと、
前記センサの測定値に応じた入力電圧に対応する電流が前記インダクタの充放電を通じて出力されるよう、前記スイッチのスイッチングを制御する制御回路と、を備え、
前記周囲温度の変化が、前記電圧電流変換回路の自己発熱に起因する温度変化を含む、電圧電流変換回路。
【請求項2】
前記スイッチは、前記供給及び前記遮断を制御する、トランジスタ及びスイッチングダイオードを含む、請求項1に記載の電圧電流変換回路。
【請求項3】
前記インダクタの他端側にキャパシタが出力負荷に対して並列に接続された、請求項1又は2に記載の電圧電流変換回路。
【請求項4】
前記センサが収められたケース内に、前記電圧電流変換回路が設けられた、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電圧電流変換回路。
【請求項5】
前記センサが、温度、輻射温度、湿度及び気流のいずれかを測定するセンサである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電圧電流変換回路。
【請求項6】
周囲温度の変化に応じて測定値が変動するセンサと、
前記センサの測定値に対応する入力電圧に応じた電流を、直流電源電流の周期的な第1のスイッチング制御を通じて出力するスイッチング方式の電圧電流変換回路と、
前記電圧電流変換回路から前記直流電源電流の一部を受け、当該一部の電流の周期的な第2のスイッチング制御を通じて前記センサへ駆動電流を出力するスイッチング方式のセンサ用電源回路と、を備え、
前記周囲温度の変化が、前記電圧電流変換回路及び前記電源回路の少なくとも一方の自己発熱に起因する温度変化を含む、センサユニット。
【請求項7】
前記第1のスイッチング制御がON状態のときに前記第2のスイッチング制御がOFF状態となり、前記第1のスイッチング制御がOFF状態のときに前記第2のスイッチング制御がON状態となる、請求項6に記載のセンサユニット。
【請求項8】
前記第1及び第2のスイッチング制御の一方における前記ON状態及びOFF状態を制御するクロック信号を発生するクロック発生器と、
前記クロック発生器が発生した前記クロック信号を反転するインバータと、をさらに備え、
前記インバータで反転された前記クロック信号によって、前記第1及び第2のスイッチング制御の他方における前記ON状態及びOFF状態が制御される、請求項7に記載のセンサユニット。
【請求項9】
前記センサが、温度、輻射温度、湿度及び気流のいずれかを測定するセンサである、請求項6〜8のいずれか1項に記載のセンサユニット。
【請求項1】
周囲温度の変化に応じて測定値が変動し得るセンサの前記測定値に対応する入力電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換回路であって、
直流電源電流を供給又は遮断するスイッチと、
前記スイッチに一端が接続されたインダクタと、
前記センサの測定値に応じた入力電圧に対応する電流が前記インダクタの充放電を通じて出力されるよう、前記スイッチのスイッチングを制御する制御回路と、を備え、
前記周囲温度の変化が、前記電圧電流変換回路の自己発熱に起因する温度変化を含む、電圧電流変換回路。
【請求項2】
前記スイッチは、前記供給及び前記遮断を制御する、トランジスタ及びスイッチングダイオードを含む、請求項1に記載の電圧電流変換回路。
【請求項3】
前記インダクタの他端側にキャパシタが出力負荷に対して並列に接続された、請求項1又は2に記載の電圧電流変換回路。
【請求項4】
前記センサが収められたケース内に、前記電圧電流変換回路が設けられた、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電圧電流変換回路。
【請求項5】
前記センサが、温度、輻射温度、湿度及び気流のいずれかを測定するセンサである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電圧電流変換回路。
【請求項6】
周囲温度の変化に応じて測定値が変動するセンサと、
前記センサの測定値に対応する入力電圧に応じた電流を、直流電源電流の周期的な第1のスイッチング制御を通じて出力するスイッチング方式の電圧電流変換回路と、
前記電圧電流変換回路から前記直流電源電流の一部を受け、当該一部の電流の周期的な第2のスイッチング制御を通じて前記センサへ駆動電流を出力するスイッチング方式のセンサ用電源回路と、を備え、
前記周囲温度の変化が、前記電圧電流変換回路及び前記電源回路の少なくとも一方の自己発熱に起因する温度変化を含む、センサユニット。
【請求項7】
前記第1のスイッチング制御がON状態のときに前記第2のスイッチング制御がOFF状態となり、前記第1のスイッチング制御がOFF状態のときに前記第2のスイッチング制御がON状態となる、請求項6に記載のセンサユニット。
【請求項8】
前記第1及び第2のスイッチング制御の一方における前記ON状態及びOFF状態を制御するクロック信号を発生するクロック発生器と、
前記クロック発生器が発生した前記クロック信号を反転するインバータと、をさらに備え、
前記インバータで反転された前記クロック信号によって、前記第1及び第2のスイッチング制御の他方における前記ON状態及びOFF状態が制御される、請求項7に記載のセンサユニット。
【請求項9】
前記センサが、温度、輻射温度、湿度及び気流のいずれかを測定するセンサである、請求項6〜8のいずれか1項に記載のセンサユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−34061(P2013−34061A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168331(P2011−168331)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]