説明

電子制御装置

【課題】走行風による冷却効果を期待できない状況において、エンジンが過熱することを防止する電子制御装置を提供する。
【解決手段】外気温,ファン回転数,車速から冷却可能熱量Cを算出し、アクセル開度要求から必要パワーPw1を算出し、パワー機器群8からの動作指令(起動/停止)に基づき必要パワーPw2を算出する(S110〜S130)。必要パワーの合計値Pw(=Pw1+Pw2)が得られるようエンジン2を動作させた場合のエンジン2での生成熱量Jを推定し、C≧Jであれば、エンジン2は過熱のおそれがないものとして、必要パワーの合計値Pwを、そのままエンジン2への要求パワーPrとして設定し、C<Jであれば、エンジン2は過熱のおそれがあるものとして、必要パワーPwを、冷却可能熱量Cに相当する大きさに制限して設定し、その旨をドライバに報知する(S140〜S180)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御に使用する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、エンジンやエンジン排気系の冷却のためにラジエータや冷却ファンが設けられている。また、車両の走行中にラジエータが受ける走行風にも大きな冷却効果があり、この走行風を考慮した熱設計がなされている。
【0003】
つまり、アクセルペダルが踏み込まれる(アクセル開度が大きくなる)と、エンジン回転数が上昇しエンジンの発熱も増大するが、走行中であれば、走行速度(ひいては走行風)も増大するため、十分な冷却効果が得られることになる。
【0004】
また、エンジンの過熱を防止する装置として、冷却ファンの故障時に、エンジン回転数を低下させたり、エンジンを停止させたりする技術(例えば、特許文献1参照)や、冷却水の温度が高くなると、冷却ファンのブレード角度を変化させて風量を増加させる技術(例えば、特許文献2参照)等も提案されている。
【0005】
その他、冷却ファンの作動温度を冷却水温に応じて制御したり、走行風や冷却ファンによって導入される外気の通り道を工夫したりする等、不要な生成熱量を如何に放熱・冷却するかについて様々な対策が講じられてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−249161号公報
【特許文献2】特開平7−224657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両の停止時に、エアコン(特に冷房)を動作させる場合には、A/Cコンプレッサを駆動するために、エンジンをアイドリング状態で動作させる必要がある。この場合、走行風による冷却効果が得られず、ラジエータや冷却ファンだけで冷却することになるため、冷却可能な熱量は小さくなる。
【0008】
ここで、例えば、駐車場等においてエアコンを作動させたままの車内で、ドライバが仮眠している状況を考えると、寝返り等でアクセルペダルに足が乗ってしまい、エンジンがレーシングした状態となる可能性は皆無ではない。
【0009】
この場合、走行風による冷却効果が得られないにも拘わらず、エンジン回転数が増大することにより、上述の冷却可能な熱量を超える熱量がエンジンで発生する。この状態が継続すると、エンジンが過熱するだけでなくエンジン排気系も高温になり、その結果、エンジン排気系付近に配置されたハーネス等に悪影響を及ぼし、故障の原因となるおそれがある。
【0010】
しかし、特許文献1に記載の装置では、故障時における制御であるため、上述のような故障とはいえない異常な状況に対して対処することができないという問題があった。
また、特許文献2に記載のように、冷却ファン等の冷却能力を向上させるにしても、装置サイズとの関係で限界があり、また、走行風の代わりになるような大きな冷却効果を期待することはできないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するために、走行風による冷却効果を期待できない状況において、エンジンが過熱することを防止する電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明の電子制御装置では、必要パワー算出手段が、車両各部から動作指令に従って、該動作指令に基づく制御の実現に必要なパワーを求め、生成熱量推定手段が、その算出されたパワーが得られるようにエンジンを動作させた場合に、エンジンで生成される熱量である生成熱量を推定する。
【0013】
また、冷却熱量推定手段が、車両の状態および車両周囲の環境に基づいて、エンジンおよびエンジン排気系を冷却する冷却装置による冷却可能熱量を推定する。
そして、生成熱量が冷却可能熱量を上回る場合に、制限手段が、生成熱量が冷却可能熱量以下となるように、エンジンに要求するパワーを制限する。
【0014】
なお、動作指令は、例えば、アクセルペダルの操作に基づく指令(アクセル開度)、バッテリの充電状態に応じたオルタネータの起動,停止、A/Cコンプレッサの起動,停止等、エンジンの駆動力に影響を与えるものであればよい。
【0015】
また、冷却可能熱量の推定に用いる車両の状態としては、走行風と関連のある車速や冷却装置(例えば冷却ファン)の作動状態などが考えられ、また、車両周囲の環境としては外気温などが考えられる。
【0016】
このように構成された本発明の電子制御装置によれば、エンジンでの生成熱量が冷却可能熱量以下に制限されるため、エンジンの過熱を防止することができ、その結果、エンジンやエンジン排気系の周辺に配置されたハーネスや機器の過熱による故障を防止することができる。
【0017】
なお、制限手段は、エンジンに要求するパワーを、例えば、スロットル開度を閉じることで制限してもよいし、エンジン回転数を低めることで制限してもよい。
また、本発明の電子制御装置が、ドライバの走行意図の有無を判定する意図判定手段を備えると共に、動作指令に、少なくともアクセルペダルの操作に基づくアクセル開度要求が含まれている場合、制限手段は、意図判定手段によりドライバの走行意図がないと判定された場合に、アクセル開度要求をキャンセルすることで生成熱量を制限してもよい。
【0018】
つまり、ドライバに走行意図がない場合、アクセルペダルの操作は、誤操作または不要な操作である考えられる。従って、これに基づくアクセル開度要求をキャンセルすることによって、他の動作指令に基づく制御に必要なパワーが制限されることを抑制しつつ、エンジンやエンジン排気系を適正な温度に維持することができる。
【0019】
ところで、意図判定手段は、例えば、シフトレバーの位置がパーキングにある場合に走行意図がないものと判定するように構成することが考えられる。
また、本発明の電子制御装置は、エンジンに要求するパワーが制限手段によって制限されたことを報知する報知手段を備えていてもよい。
【0020】
この場合、例えば、走行意図がないと判定される状態にあることを失念して、アクセルペダルを操作した場合に、その操作に基づく制御がキャンセルされた理由(故障ではないこと)をドライバに把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の車両故障防止システムの全体構成を示すブロック図。
【図2】エンジンの冷却に係わる要因と冷却熱量との関係を示す模式図。
【図3】要求パワー設定処理の内容を示すフローチャート。
【図4】目標値設定処理の内容を示すフローチャート。
【図5】第2実施形態の車両故障防止システムの全体構成を示すブロック図。
【図6】必要パワー算出処理の詳細を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明が適用された電子制御装置10を組み込んで構成した車両故障防止システム1の全体構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、車両故障防止システム1は、車両を駆動する駆動力を発生させるエンジン2と、ラジエータや冷却ファン等からなりエンジンやエンジン排気系を冷却する冷却装置3と、警報音や音声を発生させるスピーカ4と、機器の動作状態等を表示するインジケータ5と、車両の走行状態や車両周囲の状況を検出する状況センサ群6と、アクセルペダルの操作量に応じたアクセル開度信号を出力するアクセルペダルセンサ7と、エンジンの駆動力を利用して動作するパワー機器群8と、状況センサ群6,アクセルペダルセンサ7,パワー機器群8からの信号に基づき、エンジン2を制御したり、エンジン2の動作状態等を、スピーカ4やインジケータ5を介してドライバに報知したりする処理を実行する電子制御装置10とからなる。これら以外にも、電子制御装置10がエンジン制御を実行するために必要な各種センサから信号を取得するように構成されているが、これらは周知技術であり、本発明の主要部ではないため、図示および説明を省略する。
【0024】
このうち、状況センサ群6には、車両周囲の温度(外気温)を検出する外気温センサ61と、冷却装置3を構成する冷却ファンの動作状態(冷却ファンの回転数)を検出する動作センサ62と、車両の速度を検出する車速センサ63とが少なくとも含まれている。
【0025】
また、パワー機器群8には、A/Cコンプレッサ81と、オルタネータ82とが少なくとも含まれている。
そして、アクセルペダルセンサ7からのアクセル開度要求、A/Cコンプレッサ81およびオルタネータ82に対して起動,停止を指示する信号を、動作指令として、電子制御装置10に供給されるように構成されている。なお、A/Cコンプレッサ81は、インパネに設けられたスイッチの操作によって起動,停止を指示され、また、オルタネータ82は、バッテリの充電量を監視する制御装置から必要に応じて起動,停止が指示される。
【0026】
<電子制御装置>
電子制御装置10は、状況センサ群6からの検出信号に基づき、冷却装置3により冷却可能な最大の熱量(以下「冷却可能熱量」という)Qを算出する冷却熱量算出部12と、アクセルペダルセンサ7およびパワー機器群8からの動作指令に基づき、動作指令に基づく全ての制御を実現するために必要なパワー(以下「必要パワー」という)Pwを算出し、更に、その必要パワーPwが得られるようにエンジンを動作させた場合に、エンジンで発生する熱量である生成熱量Jを推定する生成熱量算出部13と、冷却可能熱量Cと生成熱量Jとを比較した結果に基づいて、エンジン2に要求するパワー(以下「要求パワー」という)Prを設定すると共に、要求パワーPrが必要パワーPwより制限された場合には、その旨を表す制限通知Dを出力する要求調停部14とを備えている。
【0027】
以下では、冷却熱量算出部12,生成熱量算出部13,要求調停部14を総称して、要求パワー設定部11ともいう。
また、電子制御装置10は、要求パワー設定部11で設定された要求パワーPrに基づいて、エンジン2の制御に用いる目標値(目標エンジン回転数/目標スロットル開度)を設定し、その目標値に従ってエンジンを制御するエンジン制御部16と、制限通知Dに従って、スピーカ4やインジケータ5を介した報知処理を実行する報知部17とを備えている。
【0028】
なお、電子制御装置10は、CPU,ROM,RAMを主要部として構成された周知のマイクロコンピュータからなり、当該電子制御装置10を構成する各部は、CPUが実行する処理によって実現される。
【0029】
また、ROMには、上記処理を実現するためのプログラムの他、状況センサ群6の検出信号から冷却可能熱量を求めるための冷却熱量変換テーブル、アクセルペダルの操作量(アクセル開度要求)からエンジン出力(パワー)を求めるためのパワー変換テーブル、目標図示トルクから目標充填空気量を求めるための空気量変換テーブル、目標スロットル通過空気量から目標スロットル開度を求めるための開度変換テーブルが少なくとも記憶されている。
【0030】
図2は、外気温,車速,冷却ファンの回転数と冷却熱量との関係を示すグラフであり、このグラフが示す傾向に従って、冷却熱量変換テーブルは、外気温が低いほど、車速が速いほど、冷却ファンの回転数が高いほど、冷却熱量が大きくなるように設定されている。
【0031】
<要求パワー設定処理>
次に、電子制御装置10のCPUが実行する要求パワー設定処理(要求パワー設定部11としての処理)を、図3に示すフローチャートに沿って説明する。
【0032】
なお、本処理は、エンジン2が動作している間、予め設定された一定間隔毎に繰り返し実行される。
本処理が起動すると、S110では、状況センサ群6からの検出信号(外気温/ファン回転数/車速)に基づき、冷却熱量変換テーブルを用いて、冷却装置3にて冷却可能な最大熱量(冷却可能熱量)Cを算出する。
【0033】
S120では、アクセルペダルセンサ7からの動作指令(アクセル開度要求)に基づき、その要求を満たすためにエンジン2で発生させるべきパワー(必要パワー)Pw1を、パワー変換テーブルを用いて算出する。
【0034】
S130では、パワー機器群8からの動作指令(起動/停止)に基づき、起動しているパワー機器の駆動に必要なパワー(必要パワー)Pw2を算出する。具体的には、駆動に必要なパワーは機器毎に決まっており、起動している各パワー機器に必要なパワーを合計することで算出する。
【0035】
S140では、必要パワーPw1,Pw2の合計値Pw(=Pw1+Pw2)が得られるようにエンジン2を動作させた場合に、該エンジン2で発生する熱量(生成熱量)Jの推定値を、エンジン2の熱効率をηとして、次式(1)に従って算出する。
【0036】
J=Pw×(1−η) (1)
S150では、S110にて算出した冷却可能熱量CがS140にて算出した生成熱量J以上であるか否かを判断し、肯定判断した場合は、エンジン2が過熱するおそれがないものとして、S160に進み、必要パワーの合計値Pwを、エンジン2に要求するパワー(要求パワー)Prに設定して、これをエンジン制御部16(即ち、エンジン制御を行う処理)に出力して、本処理を終了する。
【0037】
一方、S150にて否定判断した場合は、エンジン2が過熱するおそれがあるものとして、S170に進み、必要パワーPwを、冷却可能熱量Cに相当する大きさに制限するために、次式(2)を用いて調整後必要パワーQを算出する。
【0038】
Q=C÷(1−η) (2)
S180では、調整後必要パワーQを要求パワーPrに設定して、これをエンジン制御部16に出力し、続くS190では、エンジン2に要求するパワーを制限したことをドライバに報知させるために制限通知Dを、報知部17(即ち、報知を行う処理)に出力して、本処理を終了する。
【0039】
この制限通知Dを受けた報知部17は、スピーカ4やインジケータ5を介して音声や表示によるドライバへの報知を行う。
<目標値設定処理>
次に、電子制御装置10のCPUが、要求パワー設定処理によって設定された要求パワーPrに基づいて、エンジン制御を実行する際の目標値を設定するために実行する目標値設定処理(エンジン制御部16としての処理の一部)を、図4に示すフローチャートに沿って説明する。
【0040】
なお、本処理は、要求パワー設定処理によって要求パワーPrが設定される毎に起動される。
本処理が起動すると、まずS210では、要求パワーPrと、エンジン回転数の実測値である実エンジン回転数Nとに基づき、次式(3)に従って、目標軸トルクTを算出する。
【0041】
T=Pr÷N (3)
S220では、S210で求めた目標軸トルクTと、エンジン2の運転状態から別途算出される実エンジンロスLとに基づき、次式(4)に従って、目標図示トルクTZを算出する。
【0042】
TZ=T+L (4)
S230では、S220で求めた目標図示トルクTZから、予め用意されている空気量変換テーブルを用いて、目標充填空気量Aを算出する。
【0043】
S240では、S230で求めた目標充填空気量A[g/rev]と、実エンジン回転数N[rpm]とに基づき、次式(5)に従って、目標スロットル通過空気量PA[g/sec]を算出する。
【0044】
PA=A×N (5)
S250では、S240にて求めた目標スロットル通過空気量PAから、予め用意されている開度変換テーブルを用いて、目標スロットル開度Sを算出して本処理を終了する。
【0045】
なお、電子制御装置10のCPUは、別途実行する処理により、エンジン2のスロットル開度が、目標スロットル開度Sと一致するようにエンジン2を制御する。
また、上述した目標値設定処理を含め、電子制御装置10のCPUが実行するエンジン制御部16としての処理は周知のものである。
【0046】
<効果>
以上説明したように、車両故障防止システム1では、車両の状態や車両周囲の環境に応じて冷却装置3での冷却可能熱量Cを推定すると共に、車両各部からのエンジンの駆動力を利用する動作指令から必要パワーPw、更には生成熱量Jを推定し、生成熱量Jが冷却可能熱量Cを上回る場合は、エンジン2に要求するパワーPrを、冷却可能熱量Cに相当する大きさに制限するようにされている。
【0047】
従って、車両故障防止システム1によれば、エンジン2で生成される熱量が冷却可能熱量C以下に制限されるため、エンジン2やエンジン排気系の過熱を防止することができ、その結果、エンジンやエンジン排気系の周辺に配置されたハーネスや機器の過熱による故障を防止することができる。
【0048】
また、冷却可能熱量Cは、その算出に車速を用いることによって、走行風による冷却効果が考慮されたものとなっているため、走行風による冷却効果を期待できない状況(例えば停車時)において、エンジンが過熱することも防止することができる。
【0049】
また、車両故障防止システム1では、要求パワーPrが制限された場合に、その旨をドライバに報知するようにされているため、制限されたことによる影響を、エンジン2等の故障であるとドライバが勘違いしてしまうことを防止することができる。
【0050】
<発明との対応>
本実施形態において、S120,S130が必要パワー算出手段、S140が生成熱量推定手段、S110が冷却熱量推定手段、S170,S180が制限手段、S190が報知手段に相当する。
【0051】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図5は、車両故障防止システム1aの全体構成を示すブロック図である。
【0052】
<構成>
車両故障防止システム1aは、第1実施形態の車両故障防止システム1とは、要求パワー設定部11の一部と、これに関連して一部構成が追加されている点が異なるだけであるため、この相違点を中心に説明する。
【0053】
図5に示すように、車両故障防止システム1aは、シフトレバーの操作位置を検出するシフトレバーセンサ9を備えている。
また、車両故障防止システム1aでは、要求パワー設定部11が、冷却熱量算出部12,生成熱量算出部13,要求調停部14に加えて、シフトレバーセンサ9での検出結果に基づき、ドライバが走行意図を有しているか否かを判定する走行意図判定部15を備えている。
【0054】
<必要パワーPw1算出処理>
次に、電子制御装置10のCPUが実行する要求パワー設定処理(要求パワー設定部11としての処理)は、図3のS120に示した必要パワーPw1を算出する処理以外は、第1実施形態と同様である。
【0055】
従って、ここでは、必要パワーPw1算出処理の詳細を、図6に示すフローチャートに沿って説明する。
本処理が起動すると、S310では、シフトレバーセンサ91での検出結果に基づき、シフトレバーの位置(シフト位置)が、パーキングであるか否かを判断する。
【0056】
そして、S310にてシフト位置がパーキングにはなく、ドライバに走行意図があると判定した場合は、S320に進み、アクセルペダルセンサ7からのアクセル開度要求に応じた必要パワーPw1を求めて本処理を終了する。
【0057】
一方、S310にてシフトレバーの位置がパーキングにあり、ドライバに走行意図がないと判定した場合は、S330に進み、アクセルペダルセンサ7からのアクセル開度要求に拘わらず必要パワーPw1を0に設定し、即ち、アクセル開度要求をキャンセルする。
【0058】
続くS340では、アクセル開度要求をキャンセルすることによって、要求パワーPrを制限したことを表す制限通知Dを報知部17に対して出力して、本処理を終了する。
<効果>
このように構成された車両故障防止システム1aでは、ドライバの走行意図がない場合でのアクセル開度要求をキャンセルするため、走行風による冷却効果を期待できない状態(例えば、アイドリング状態で停車中)でアクセルペダルが誤操作されることによってエンジンが過熱してしまうことをより確実に防止することができる。
【0059】
<発明との対応>
本実施形態において、S310が意図判定手段、S330が制限手段、S340が報知手段に相当する。
【0060】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施することが可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、アクセルペダルセンサ7からのアクセル開度要求、A/Cコンプレッサ81やオルタネータ82の起動/停止を指示する信号を動作指令として、必要パワーPwの算出,生成熱量Jの推定の対象としているが、これら以外のエンジン駆動力を必要とする機器の起動停止を表す信号を動作指令に含めて構成してもよいし、逆に、例えば、アクセルペダルセンサ7からのアクセル開度要求だけを動作指令とするように構成してもよい。
【0062】
上記実施形態では、エンジン2の制御に用いる目標値として、要求パワーPrから目標スロットル開度Sを求めているが、目標スロットル開度Sの代わりに目標エンジン回転数Npを求めるように構成してもよい。この場合、運転状態の検出結果から実軸トルクTrを求め、この実軸トルクTrと要求パワーPrとに基づき、次式(6)を用いて、目標エンジン回転数Npを求めればよい。
【0063】
Np=Pr÷Tr (6)
上記第2実施形態では、シフト位置がパーキングにある場合にドライバの走行意図がないと判断しているが、シフト位置がニュートラルにある場合や、パーキングブレーキが実行中である場合もドライバの走行意図がないと判断してもよい。
【0064】
上記第2実施形態では、ドライバの走行意図の有無をシフト位置によって判断しているが、例えば、インパネにドライバの意図を指示するスイッチを設け、そのスイッチの操作状態によって判断するように構成してもよい。
【0065】
ところで、上記第2実施形態では、シフト位置がパーキングにある場合は、アクセル開度要求がキャンセルされるため、エンジンの調子を確認するための空ふかしを行いたいという要求に応えることができない。そこで、例えば、エンジンの排気温度を検出し、排気温度が一定温度に達するまでは、アクセル開度要求のキャンセルを禁止するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,1a…車両故障防止システム 2…エンジン 3…冷却装置 4…スピーカ 5…インジケータ 6…状況センサ群 7…アクセルペダルセンサ 8…パワー機器群 9…シフトレバーセンサ 10…電子制御装置 11…要求パワー設定部 12…冷却熱量算出部 13…生成熱量算出部 14…要求調停部 15…走行意図判定部 16…エンジン制御部 17…報知部 61…外気温センサ 62…動作センサ 63…車速センサ 81…A/Cコンプレッサ 82…オルタネータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両各部から動作指令に従って、該動作指令に基づく制御の実現に必要なパワーを求める必要パワー算出手段と、
前記必要パワー算出手段にて算出されたパワーが得られるようにエンジンを動作させた場合に、該エンジンで生成される熱量である生成熱量を推定する生成熱量推定手段と、
車両の状態および車両周囲の環境に基づいて、前記エンジンおよびエンジン排気系を冷却する冷却装置による冷却可能熱量を推定する冷却熱量推定手段と、
前記生成熱量が前記冷却可能熱量を上回る場合に、前記生成熱量が前記冷却可能熱量以下となるように、前記エンジンに要求するパワーを制限する制限手段と、
を備えることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記制限手段は、前記エンジンに要求するパワーを、スロットル開度を閉じることで制限することを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置.
【請求項3】
前記制限手段は、前記エンジンに要求するパワーを、エンジン回転数を低めることで制限することを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置.
【請求項4】
ドライバの走行意図の有無を判定する意図判定手段を備え、
前記動作指令には、少なくともアクセルペダルの操作に基づくアクセル開度要求が含まれ、
前記制限手段は、前記意図判定手段によりドライバの走行意図がないと判定された場合に、前記アクセル開度要求をキャンセルすることで前記生成熱量を制限することを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記意図判定手段は、シフトレバーの位置がパーキングである場合、あるいはパーキングブレーキ実行中である場合に走行意図がないものと判定することを特徴とする請求項4に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記エンジンに要求するパワーが前記制限手段によって制限されたことを報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−214465(P2011−214465A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82156(P2010−82156)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】