説明

電子制御装置

【課題】低コストで容易に製造でき、しかも熱を散逸させる能力が高い電子制御装置を提供する。
【解決手段】プリント基板115は、ケース117とカバー119とによって挟まれた状態で、プリント基板115を貫くネジにより、筐体に固定されている。プリント基板115の搭載面には、モールド部品113が搭載され、このモールド部品113はプリント基板115とカバー119との間に配置されている。カバー119には突出部123が設けられ、この突出部123とモールド部品113との間には熱伝導材125が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のエンジンルームなどに配置される電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の制御に用いられる電子制御装置(ECU)には、演算処理を行うマイコン、外部負荷やセンサなどと接続される入出力回路、これらの回路に電源を供給する電源回路などが、基板上に配置されており、それらは、ケース及びカバーからなる筐体に収容されていた。
【0003】
上述した回路を構成する電子部品は、その動作により発熱し、これが過度に温度上昇すると部品作動に害を及ぼすので、基板などに伝熱して熱を拡散させることにより、部品温度を低減する方法が知られている。また、図12に示す様に、特に発熱が大きい電子部品(例えばパワートランジスタの半導体チップ)P1に関しては、放熱フィンP2を用いるなどして、電子部品P1から発生する熱をケースP3側に効率よく散逸させる方法がとられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年では、電子制御装置の一層の高機能・高能力が求められるようになっており、電子部品P1の発する熱は増加の一途をたどっている。そのため、これらの発熱する電子部品P1からより多くの熱を散逸させるために、図13に示す様に、基板P4上の電子部品P1の(詳しくはヒートシンクP5の)装着部分に、大きな銅箔P6を配置し、VIAホールP7を介して、更に広い銅箔P8などに熱を散逸させる構造が採用されている。
【0005】
しかしながら、この方法では、基板P4上の有効な配線面積が減少するので、結果的に大きな基板P4が必要であり、コストアップとなってしまう。一方、近年では、電子制御装置の小型化も求められており、それに対応して、半導体集積技術の進歩に伴って部品を小型化したり、多くの回路をIC化したりするなどの方法が採られているが、このことは、電子部品P1の温度上昇を招くことになる。
【0006】
この対策としては、電力損失の少ない高価な電子部品P1を用いること、放熱フィンP2に部品を搭載すること、基板P4をある程度大きくして散熱能力を向上することなどが考えられるが、いずれもコストアップに結びつく結果となる。また、これら発熱する電子部品P1自体を高耐熱とすることも考えられるが、高密度に配置される周辺部品も、基板P4から伝導する熱により温度上昇するので、基板P4をある程度大きくするか、周辺部品を高耐熱部品としなければならず、必ずしも好ましくない。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、低コストで容易に製造でき、しかも熱を散逸させる能力が高い電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る電子制御装置は、(A)発熱する電子部品が所定領域に搭載された基板、(B)開口部を有する箱状のケースと、当該ケースの開口部を閉塞するとともにケースよりも底の浅いカバーとから構成され、前記基板を収容する筐体、(C)前記筐体内において前記カバー側に設けられ、前記基板の前記所定領域に対応する突出面を有して前記所定領域に向けて突出、前記カバーと一体に形成された突出部、(D)前記突出部の前記突出面と前記所定領域において前記突出面に近接する前記基板あるいは前記電子部品の前記突出面の対向面との間の隙間に配置された柔軟性を有する熱伝導材とを有し、(E)前記熱伝導材の配置される前記隙間の間隔の寸法精度を確保するように、前記基板は所定の厚みを有するスペーサに接触して押圧されて固定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、電子部品から熱伝導材とカバーの突出部を介して筐体のカバー側に放熱できるので、放熱性がよく、基板上の他の電子部品への熱の影響を抑制することができる。また、基板上の配線と電子部品の実装面積を高めることもできる。
【0010】
また本発明では、基板をカバーに固定するようにしており、基板とカバーの突出部との間の熱伝導材の配置される間隔の寸法精度を容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図2】実施例2の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図3】実施例3の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図4】実施例3の電子制御装置の移動防止部を示す平面図である。
【図5】実施例4の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図6】実施例5の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図7】実施例6の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図8】実施例7の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図9】実施例8の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図10】実施例9の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図11】実施例10の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図12】従来技術の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【図13】従来技術の電子制御装置を破断して示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の電子制御装置の実施の形態の例(実施例)を説明する。
【0013】
(実施例1)
a)実施例1の電子制御装置を、図1に基づいて説明する。
【0014】
図1に示す様に、本実施例における電子制御装置(ECU)1は、発熱する電子部品(例えば半導体チップ)3を実装したプリント基板5と、プリント基板5を収容した筐体7とを備えている。筐体7は、例えばアルミニウム等の金属製であり、一方(図の下方)が開放された略四角箱状のケース9と、ケース9の開放側(開口部11)を閉塞する略四角板状の底の浅いカバー13とから構成され、ケース9とカバー13とは、その四隅にて、ネジ15にて結合されている。
【0015】
この結合時には、プリント基板5は、ケース9とカバー13とによって挟まれた状態で、プリント基板5を貫くネジ15により、筐体7に固定されている。従って、プリント基板5におけるカバー13側の反搭載面5b(電子部品3が搭載される搭載面5aとは反対の面)と、カバー13の外周に設けられた結合面13aとは、同一平面上に位置することになる。
【0016】
プリント基板5は、例えばエポキシ等の樹脂製の材料からなり、その搭載面5aと反搭載面5bとプリント基板5の内部に、銅箔からなる熱伝導薄膜層17a、17b、17c(17と総称する)が、平行に複数形成されている。つまり、搭載面5aと反搭載面5bとプリント基板5の内部において、各平面にそれぞれ形成された熱伝導薄膜層17は、同図の上下方向に分離しているとともに、左右方向にも分離している。従って、各熱伝導薄膜層17は、それぞれ熱的にも分離している。
【0017】
電子部品3は、リードフレーム19やボンディングワイヤ21とともに、樹脂23によりモールドされている。このモールドされた電子部品3(以下モールド部品25とも記す)は、その本体部分25aが、プリント基板5の搭載面5a上に形成された熱伝導薄膜層17aに、接着剤により接合されており、リードフレーム19は、搭載面5a上の他の熱伝導薄膜層17aにはんだ付けされている。
【0018】
尚、熱伝導薄膜層17は、電子部品23をプリント基板5側に投影した領域と重なるように(即ち投影領域よりも広くなるように)形成されており、そのうち、熱伝導薄膜層17aは、モールド部品25の本体部分25aの下端面と同形状であり、熱伝導薄膜層17b、17cは、電子部品23をプリント基板5側に投影した形状とほぼ同形状である。
【0019】
カバー13には、カバー13の底部13bから電子部品5の搭載位置に向けて突出する突出部27が、略台形状に設けられており、その先端面27aは、プリント基板5の反搭載面5bと平行なように平坦に形成されている。尚、このカバー13は、例えばプレスにより形成されるので、突出部27の裏側は突出部27の形状に対応するように凹んでいる。
【0020】
特に、本実施例では、突出部27の先端面27aと、電子部品5の搭載位置(即ち電子部品5の投影領域)に対応するプリント基板5の反搭載面5bとの間に、先端面27a及び反搭載面5bと接して、柔軟性を有する半固体の熱伝導材29が配置されている。この熱伝導材29とは、例えば金属フィラーが含まれたシリコン系のゲル状の樹脂材料からなるものである。
【0021】
また、プリント基板5の反搭載面5bのうち、熱伝導材29と接する表面には、電子部品5の投影領域と同様な形状の熱伝導薄膜層17bが形成されており、その位置に対応するプリント基板5内の熱伝導薄膜層17cも、電子部品5の投影形状と同様に形成されている。
【0022】
尚、熱伝導材は、柔軟性を有する例えば半固体(又はゲル状)であり、押圧されるとその形状が容易に変形するものである。熱伝導材としては、その熱伝導材の熱伝導率が、例えば基板材料のエポキシ樹脂等の樹脂よりも高いシリコン系の材料など使用できるが、この熱伝導率としては、1〜3W/m・K程度のものを採用できる。
【0023】
また熱伝導薄膜層としては、熱伝導率が例えば基板材料であるエポキシ樹脂等の樹脂よりも高い例えば銅箔からなる薄膜層を用いることができるが、この熱伝導率としては、銅の398W/m・K程度のものを採用できる。
【0024】
b)本実施例では、電子部品5の搭載位置に対応して、熱伝導薄膜層17が図の上下方向に順次配置されるとともに、プリント基板5とカバー13の突出部27との間に、熱伝導材27が押圧されて接触するように配置されているので、従来より低コストで、電子部品5に発生した熱を、カバー13を介して効率よく外部に散逸させることができる。
【0025】
また、本実施例では、プリント基板5はカバー13に直接に接触して押圧されて固定されるので、プリント基板5とカバー13の突出部27との間隔、即ち熱伝導材29の配置部分の寸法精度を、容易に確保することができる。また、電子部品5の搭載位置に対応した熱伝導薄膜層17と、その周囲の他の熱伝導薄膜層17との間は、熱的に分離されているので、プリント基板5を介して周囲に熱が伝わり難いという利点がある。
【0026】
尚、熱伝導薄膜層17の面積を、プリント基板5の搭載面5a側よりも反搭載面5b側の方を大きくしてもよい。これにより、一層熱の散逸性が向上する。また、プリント基板5とカバー13とを直接に接触させるのではなく、その間に、所定の厚みを有するスペーサを配置してもよい。これにより、隙間の調節が可能になる。
【0027】
(実施例2)
次に、実施例2の電子制御装置について説明するが、図1の実施例と同様な内容の説明は省略する。
【0028】
a)実施例2の電子制御装置を、図2に基づいて説明する。図2に示す様に、本実施例における電子制御装置(ECU)31も、図1に示す実施例1と同様に、プリント基板33をケース35及びカバー37にて挟持して固定している。
【0029】
プリント基板33には、その搭載面33a及び反搭載面33bに、電子部品39の投影形状と同様な形状の熱伝導薄膜層41a、41bが形成されるとともに、両側の熱伝導薄膜層41a、41bを接続するようにVIAホール43が形成されている。
【0030】
尚、VIAホール43の内周面には銅の薄膜が形成されており、その内部にははんだ45が充填されている。また、熱伝導薄膜層41a、41bは、電子部品23をプリント基板5側に投影した領域と重なるように(即ち投影領域よりも広くなるように)形成されている。
【0031】
電子部品39は、リードフレーム47、ボンディングワイヤ49、及び放熱部材(放熱フィン:ヒートシンク)51とともに、樹脂53によりモールドされている。このモールド部品55は、放熱部材51を介して、はんだ57により、プリント基板33の搭載面33aの熱伝導薄膜層41aに接合されている。
【0032】
尚、放熱部材(例えばヒートシンク)としては、熱伝導率が例えばモールド材料の樹脂より高い固体の金属材料を使用できるが、この熱伝導率としては、一般的な合金や金属材料から20〜400W/m・Kのものを採用できる。
【0033】
カバー37には、カバー37の底部37aから電子部品51の搭載位置に向けて突出する突出部59が設けられており、その突出部59はカバー37と一体に中実に形成されている。そして、本実施例でも、突出部59の先端面59aと、(電子部品39の搭載位置に対応する)プリント基板33の反搭載面33bとの間に、先端面59aと反搭載面33bとに接して、柔軟性を有する半固体の熱伝導材61が配置されている。
【0034】
b)本実施例においても、実施例1と同様な効果を奏するとともに、特に搭載面33a及び反搭載面33bの両熱伝導薄膜層41a、41bを接続するように、VIAホール43が形成されているので、一層熱の散逸性に優れているという効果がある。従って、本実施例は、比較的発熱の大きな電子部品に好適である。
【0035】
(実施例3)
次に、実施例3の電子制御装置について説明するが、図2に示す実施例2と同様な内容の説明は省略する。
【0036】
a)実施例3の電子制御装置を、図3に基づいて説明する。図3に示す様に、本実施例の電子制御装置70の基本的な構造は、実施例2と同様である。特に本実施例では、カバー71の突出部73の先端面73aに、熱伝導材75が周囲に流出することを防止する凸状の移動防止部(枠部)77を設けている。
【0037】
この移動防止部77は、図4(a)にその平面を示す様に、突出部73の先端面73aの周囲を囲む様に、四角の枠状に形成されたものであり、図3に示す様に、先端面73aからプリント基板79の反搭載面79b側に向けて突出している。
【0038】
尚、移動防止部77は、突出部73(従ってカバー71)と一体に成形されたものである。
【0039】
b)本実施例によっても、実施例2と同様な効果を奏するとともに、先端面73aには枠状の移動防止部77が設けてあるので、熱伝導材75の流出や脱落を効果的に防止することができ、例えば電子制御装置を縦に配置しても熱伝導材の流出を防止できる。
【0040】
また、熱伝導材の配置位置の周囲は枠部により囲まれているので、熱伝導材を薄く塗る必要はなく、枠内に熱伝導材を簡単な工程で配置すれば(例えば山状にポッティングすれば)、均一な厚さになる。
【0041】
また、移動防止部77は、突起部73と一体に形成されるので、その形成が容易であり、寸法精度も高いという利点がある。尚、熱伝導材75が、例えばシート状の様なそれほど流動性高くない場合には、例えば図4(b)に示す様に、突出部73の先端面73aの例えば周囲に、部分的に凸部81を設けてもよい。
【0042】
また、突出部73側に移動防止部77を設けるのではなく、プリント基板79の反搭載面79側に、図4と同様な形状の移動防止部を、例えばはんだ付けなどにより設けてもよい。
【0043】
(実施例4)
次に、実施例4の電子制御装置について説明するが、実施例3と同様な内容の説明は省略する。
【0044】
a)実施例4の電子制御装置を、図5に基づいて説明する。図5に示す様に、本実施例の電子制御装置90の基本的な構造は、実施例3と同様である。特に本実施例では、カバー91の突出部93の先端面93aに、多数の凸部95を設けて、先端面93aを凹凸形状とするとともに、(モールド部品97の搭載位置に対応する)プリント基板99の反搭載面99bの熱伝導薄膜層101上にも、多数の凸部103を設けて、熱伝導薄膜層101の表面を凹凸形状としている。
【0045】
また、突出部93の先端面93aの凸及び凹と熱伝導薄膜層101の凹及び凸が、それぞれ対応するように、即ち凹に対向して凸が配置されるように、表面形状が形成されている。そして、その凹凸形状の突出部93の先端面93aと熱伝導薄膜層101との間に、熱伝導材105が配置され、それによって、熱伝導材105はその断面が蛇行したような状態となるが、熱伝導材105の厚みは、ほぼ均一化される。
【0046】
尚、突起部93の凸部95は、突出部93(従ってカバー91)と一体に成形されたものであり、プリント基板99の反搭載面99b側の凸部103は、はんだ付けにより形成されたものである。
【0047】
b)本実施例においても、実施例3と同様な効果を奏するとともに、熱伝導材105は、凹凸形状の突出部93の先端面93aと熱伝導薄膜層101との間に挟まれて、その接触面積が大きいので、一層熱散逸性が高いという効果がある。
【0048】
また、突出部93の先端面93aの凹凸と熱伝導薄膜層101の凹凸が互いに入り込んで、突出部93の先端面93aと熱伝導薄膜層101との凹凸表面間における距離は均一になるので、熱の伝わり方も均一になる。従って、最小限の熱伝導材103で最大の熱の放逸性が得られるという効果がある。しかも、使用する熱伝導材103が少量で済むので、コストを低減できるという利点もある。
【0049】
(実施例5)
次に、実施例5の電子制御装置について説明するが、実施例1乃至3と同様な内容の説明は省略する。
【0050】
a)実施例5の電子制御装置を、図6に基づいて説明する。図6に示す様に、本実施例の電子制御装置110は、実施例3とは異なり、電子部品111を収容したモールド部品113の本体部分113aは、プリント基板115に接しておらず、プリント基板115にはVIAホールが形成されていない。
【0051】
つまり、本実施例では、モールド部品113は、ケース117側ではなくカバー119側に配置されている。そして、放熱部材121は、プリント基板115側ではなく、カバー119側に配置されており、この放熱部材121とカバー119の突出部123との間に、熱伝導材125が配置されている。
【0052】
また、カバー119の突出部123の先端面123aには、上述した枠状の移動防止部127が形成されている。
【0053】
b)本実施例は、実施例1〜4とは、モールド部品113の配置位置が逆であり、熱伝導材125はプリント基板のモールド部品113の搭載面側、カバー119側に配置されている。これにより、基板を介することなく、電子部品から熱伝導材を介して筐体側に放熱できるので、放熱性がよく、基板上の他の電子部品への熱の影響を抑制することができる。また、基板上の配線と電子部品の実装面積を高めることもできる。また、モールド部品113の本体部分113aが、直接にプリント基板115に接していないので、プリント基板115側に熱が伝わり難く、一層高い熱散逸性を有している。
【0054】
また、モールド部品113の放熱部材121は、プリント基板115側ではなく、カバー119側に配置されており、これにより効率よく放熱を行うことができる。
【0055】
また、移動防止部127により、熱伝導材125の流出も防止することができる。尚、本実施例では、突起部123側に移動防止部127を設けたが、放熱部材121側に同様な移動防止部を設けてもよい。
【0056】
(実施例6)
次に、実施例6の電子制御装置について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
【0057】
a)実施例6の電子制御装置を、図7に基づいて説明する。図7に示す様に、本実施例の電子制御装置130は、実施例5と同様なプリント基板131、モールド部品133及び(プレス加工にて形成した)カバー135を備えている。
【0058】
また、本実施例では、実施例4の様に、カバー135の突出部137の先端面137aに、多数の凸部139を設けて、先端面137aを凹凸形状とするとともに、プリント基板131の反搭載面131bの熱伝導薄膜層141上にも、多数の凸部143を設けて、熱伝導薄膜層141の表面を凹凸形状としている。
【0059】
また、突出部137の先端面137aの凸及び凹と熱伝導薄膜層141の凹及び凸が、それぞれ対応するように形成され、凹凸形状の突出部137の先端面137aと熱伝導薄膜層141の表面との間に、熱伝導材145が配置されている。
【0060】
尚、突起部137の凸部139は、突出部137(従ってカバー135)と一体に成形されたものであり、プリント基板131の反搭載面131b側の凸部143は、はんだ付けにより形成されたものである。
【0061】
b)本実施例においても、実施例4と同様な効果を奏する。
【0062】
また、突起部137の凸部139は、突出部137(従ってカバー135)と一体に成形され、プリント基板131の反搭載面131b側の凸部143は、はんだ付けにより形成されるので、どちらも、本来必要な作業と材料により実施することができる。つまり、追加コストを必要とせずに、放熱能力を改善できるという効果がある。
【0063】
(実施例7)
次に、実施例7の電子制御装置について説明するが、実施例1と同様な内容の説明は省略する。
【0064】
a)実施例7の電子制御装置を、図8に基づいて説明する。図8に示す様に、本実施例の電子制御装置150は、実施例1と同様なプリント基板151及びモールド部品153等を備えている。特に、本実施例では、カバー155に突出部を形成せず、カバー155とプリント基板151の反搭載面151bとの間に、固体のSMD(表面実装部材)である熱伝導部材157を配置するとともに、熱伝導部材157とカバー155との間に熱伝導材159を配置したものである。
【0065】
尚、固体の熱伝導部材としては、熱伝導率が例えば基板材料のエポキシ樹脂等の樹脂より高い金属材料を使用できるが、この熱伝導率としては、一般的な合金や金属材料から20〜400W/m・Kのものを採用できる。
【0066】
熱伝導部材157は、プリント基板151の反搭載面151b上に(電子部品161の搭載位置に対応して)形成された熱伝導薄膜層161に、はんだ163により接合されている。また、そのカバー155側の先端面157aには、多数の凸部165を設けて、先端面157aを凹凸形状としている。
【0067】
一方、熱伝導部材157と対向するカバー155の表面にも、同様に、多数の凸部167を設けて、カバー155表面を凹凸形状としている。尚、熱伝導部材157の凸部165は、熱伝導部材157と一体に(又ははんだ付けにより)成形されたものであり、カバー155側の凸部167もカバー155と一体に成形されたものである。
【0068】
b)本実施例においても、実施例1と同様な効果を奏するとともに、熱伝導材159を上下の凹凸形状の表面により挟み込むので、熱を効率よく熱伝導部材157からカバー155側に伝えることができるので、周辺部品の加熱を最小限に抑えることができる。
【0069】
また、熱伝導材159を上下の凹凸形状の表面により挟み込むので、実施例4と同様に、放熱性等に優れているという利点がある。
【0070】
(実施例8)
次に、実施例8の電子制御装置について説明するが、実施例5と同様な内容の説明は省略する。
【0071】
a)まず、実施例8の電子制御装置を、図9に基づいて説明する。図9に示す様に、本実施例の電子制御装置170は、実施例5と同様に、モールド部品171は、ケース173側ではなくカバー175側に配置されている。
【0072】
つまり、本実施例では、放熱部材177は、プリント基板179側ではなく、カバー175側に配置されており、この放熱部材177とカバー175の突出部181との間に、熱伝導材183が配置されている。特に本実施例では、カバー175の突出部181の先端面181aには、多数の凸部185が設けられ、それにより、先端面181aが凹凸形状とされている。
【0073】
尚、この凸部185は、カバー175と一体に成形される。
【0074】
b)本実施例は、実施例5と同様に、モールド部品171の本体部分171aが、直接にプリント基板179に接していないので、プリント基板179側に熱が伝わり難く、一層高い熱散逸性を有している。
【0075】
また、突出部181の先端面181aには、多数の凸部185が形成されているので、接触面積が広く、放熱効率が高いという利点がある。尚、本実施例では、突起部181側に凸部185を設けたが、放熱部材177側に同様な凸部を多数設けてもよい。
【0076】
(実施例9)
次に、実施例9の電子制御装置について説明するが、実施例4と同様な内容の説明は省略する。
【0077】
a)まず、実施例9の電子制御装置を、図10に基づいて説明する。図10に示す様に、本実施例の電子制御装置190は、実施例4と同様な、モールド部品191、プリント基板193及び(突出部195を有する)カバー197などを備えている。
【0078】
特に本実施例では、プリント基板193の反搭載面193b側に(電子部品199の搭載位置に対向して)形成された熱伝導薄膜層201を備えるとともに、その熱伝導薄膜層201の表面に、熱伝導材203の外周を囲むように、カバー197の突出部195側に向かって突出する移動防止部205を備えている。
【0079】
この移動防止部205は、はんだにより形成されており、熱伝導薄膜層205の外周に沿って(従って突起部195の外周と同形状)、四角枠状に形成されている。
【0080】
b)本実施例では、熱伝導材203の周囲に移動防止部205が形成されているので、熱伝導材203が流れ出ることを防止することができる。
【0081】
つまり、熱伝導材203として、粘性のある半流体状のものを用いる場合に、熱伝導材203を薄く塗りつける必要がなく、例えば熱伝導材203を、配置する空間の容積より多めにポッティングし、プリント基板193とカバー197とを組み合わせればよい。即ち、この組み合わせの際には、熱伝導材203が外部に流れ出す前に、この形状で囲まれた範囲に充填された後に、余分な分だけ押し出されるため、簡単な作業で確実な塗布が可能になる。
【0082】
更には、電子制御装置190が、縦方向に配置された場合でも、移動防止部205が熱伝導材203の移動を防止するので、熱伝導材203が流出することがない。
【0083】
(実施例10)
次に、実施例10の電子制御装置について説明するが、実施例6と同様な内容の説明は省略する。
【0084】
a)まず、実施例10の電子制御装置を、図11に基づいて説明する。図11に示す様に、本実施例の電子制御装置210は、実施例7とほぼ同様に、モールド部品211及びプリント基板213等を備えている。尚、プリント基板213にVIAホール215が設けられている点は異なる。
【0085】
本実施例では、カバー216に突出部を形成せず、カバー216とプリント基板213の反搭載面213bとの間に、固体のSMD(表面実装部材)である熱伝導部材217を配置するとともに、熱伝導部材217とカバー216との間に熱伝導材219を配置している。
【0086】
熱伝導部材217は、プリント基板213の反搭載面213b上に(電子部品221の搭載位置に対応して)形成された熱伝導薄膜層223に、はんだ225により接合されている。また、熱伝導部材217の先端面217aには、熱伝導材219の周囲を囲む様に移動防止部227が設けられている。
【0087】
つまり、移動防止部227は、熱伝導部材217の周囲に沿って、熱伝導部材217側からカバー216側に向かって突出するように枠状に設けられた凸部である。尚、移動防止部227は、熱伝導部材217と一体に成形されたものである。
【0088】
b)本実施例においても、実施例7と同様に、熱伝導部材217を配置することにより、高い放熱特性を得ることができる。特に本実施例では、熱伝導部材217側に移動防止部227を設けているので、熱伝導部材217の配置を自由に変更しても、カバー216の設計を変更することなく共通のカバー216を使用することができる(即ち標準化が可能である)。よって、多様な製品に、同一の筐体を使用できるので、コストダウンに大きく寄与することができる。
【0089】
尚、本実施例以外に、例えばVIAホール215を設けずに、基板内部の電子部品221の搭載位置に対応する箇所に、熱伝導薄膜層を設けてもよく、基板表面や基板内部の熱伝導薄膜層を熱的に分離してもよい。尚、本発明は上記した実施例になんら限定されるものではなく、種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0090】
例えば、前記各実施例では、筐体をケース及びカバーにより構成したが、それ以外の第3の部材を組み合わせてもよく、ケース及びカバーは、同様な大きさでもよい。
【符号の説明】
【0091】
1、31、70、90、110、130、150、170、190、210・・電子制御装置(ECU)
3、39、111、161、199、221・・電子部品
5、33、79、99、115、131、151、179、193、213・・プリント基板
7・・筐体
9、35・・ケース
13、37、71、91、119、135、155、175、197、216・・カバー
27、59、73、93、123、137、181、195・・突出部
77、81、127、205、227・・移動防止部
25、55、97、113、133、153、171、191、211・・モールド部品
17a、17b、17c、41a、41b、141、161、201、223・・熱伝導薄膜層
29、61、105、125、145、159、183、203、219・・熱伝導材
157、217・・熱伝導部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱する電子部品が所定領域に搭載された基板、
開口部を有する箱状のケースと、当該ケースの開口部を閉塞するとともにケースよりも底の浅いカバーとから構成され、前記基板を収容する筐体、
前記筐体内において前記カバー側に設けられ、前記基板の前記所定領域に対応する突出面を有して前記所定領域に向けて突出し、前記カバーと一体に形成された突出部、
前記突出部の前記突出面と前記所定領域において前記突出面に近接する前記基板あるいは前記電子部品の前記突出面の対向面との間の隙間に配置された柔軟性を有する熱伝導材とを有し、
前記熱伝導材の配置される前記隙間の間隔の寸法精度を確保するように、前記基板は所定の厚みを有するスペーサに接触して押圧されて固定されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記突出部の突出面に対向する前記対向面は、前記電子部品の放熱部材であることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記電子部品は、該電子部品と一体にモールドされた放熱部材を備え、前記突出部の突出面に該放熱部材を向けて前記基板に搭載されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記突出部の突出面に対向する前記対向面は、前記基板の前記電子部品の搭載面と反対側の前記基板の面に配置された熱伝導薄膜層であることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記突出部の突出面は凹凸状とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記基板は前記カバーにネジにより固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−62509(P2013−62509A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221344(P2012−221344)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2010−173320(P2010−173320)の分割
【原出願日】平成14年3月28日(2002.3.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】