説明

電子撮像装置

【課題】システム全体が小型でありながらレンズに由来する性能の調整が可能な電子撮像装置を提供すること。
【解決手段】複数のレンズ群と、結像光学系と、撮像素子と、を有し、結像光学系は、最も物体側に配置された最物体側レンズ群と、最物体側レンズ群よりも像側に配置された明るさ絞りと、明るさ絞りよりも像側に配置された像側レンズ群を少なくとも有し、最物体側レンズ群はレンズ面の有効領域にマークが施されたレンズを有し、少なくともいずれかのレンズが少なくともシフトまたはチルト調整可能に保持され、さらに、マークによる輝度むらを補正する補正パラメータを記憶する補正パラメータ記憶部と、補正パラメータ記憶部に記憶されている補正パラメータに基づいて、撮像素子にて撮像したマークによる輝度むらを補正する信号処理部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子撮像システム中の部材の位置を撮像素子上に投影されたマークの状態に基づき調整可能とする電子撮像系が知られている。
例えば、特許文献1に開示されている電子撮像装置が知られている。ここでは、撮像システムの外側に解像度チャート図などのマークを配置している。チャート図を撮像システムにて撮像する。そして、撮像システム中の撮像素子上のチャート図の撮影像の結像状態に基づいて、撮像素子の位置調整を行う。
【0003】
また、特許文献2には他の撮像素子を使用する電子撮像系が開示されている。ここでは、光軸に対してそれぞれ直交するX−Y軸部分及び中心部分にジーメンスチャートが、コーナー部分には解像チャートが、それぞれ印刷されたフィルターをレンズ前面に装着している。そして、レンズをマクロ状態にし、被写界深度の浅い状態でそのジーメンスチャートを撮像面に結像させる。これにより、レンズ光軸と固体撮像素子の有効面中心とのズレと、レンズのX−Y軸に対する有効面角度のズレ と、レンズの結像平面と撮像面の平行度と、をそれぞれ調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−116559号公報
【特許文献2】特開昭63−292781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される位置調整の方式を採用する電子撮像系では、電子撮像系に加えてチャート図などのマークを準備する必要がある。このため、チャート図を含めたシステムが大型化してしまう。さらに加えて、チャート図を準備するための工数が必要となってしまう。
【0006】
また、特許文献2に開示された電子撮像系における位置調整の方式では、電子撮像系自体は小型化できる。これに対して、電子撮像系のレンズに由来する性能、例えば像面湾曲、非対称な画像ボケなどの調整は行っていない。加えて、通常の使用状態では、チャートが形成されたフィルターを、電子撮像系から取り外す必要がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、システム全体が小型でありながらレンズに由来する性能の調整が可能な電子撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の電子撮像装置によれば、
複数のレンズ群と、
物体の像を結像する結像光学系と、
結像光学系により結像された像を電気信号に変換する撮像面を有する撮像素子と、
を有し、
結像光学系は、
最も物体側に配置された最物体側レンズ群と、
最物体側レンズ群よりも像側に配置された明るさ絞りと、
明るさ絞りよりも像側に配置された像側レンズ群を少なくとも有し、
最物体側レンズ群はレンズ面の有効領域にマークが施されたレンズを有し、
少なくともいずれかのレンズが少なくともシフトまたはチルト調整可能に保持され、
さらに、マークによる輝度むらを補正する補正パラメータを記憶する補正パラメータ記憶部と、
補正パラメータ記憶部に記憶されている補正パラメータに基づいて、撮像素子にて撮像したマークによる輝度むらを補正する信号処理部と、を有することを特徴とする電子撮像装置。
【0009】
また、本発明の好ましい態様によれば、最物体側レンズ群よりも像側に配置された少なくともいずれかのレンズが少なくともシフトまたはチルト調整可能に保持されていることが望ましい。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、最物体側レンズ群と明るさ絞りとの間に配置された中間レンズ群を有することが望ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群と、負屈折力の第2レンズ群と、明るさ絞りと、正屈折力の第3レンズ群と、を有し、
第1レンズ群または第3レンズ群が少なくともシフトまたはチルト調整可能に保持されていることが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、物体側から順に、負屈折力の第1レンズ群と、明るさ絞りと、正屈折力の第2レンズ群と、正屈折力の第3レンズ群と、を有し、
第1レンズ群または第2レンズ群が少なくともシフトまたはチルト調整可能に保持されていることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、最物体側レンズ群は少なくとも複数のレンズ面を有し、
マークは、最物体側のレンズ群の最も物体側のレンズ成分のレンズ面に形成されていることが望ましい。
【0014】
結像光学系は広角端から望遠端へのズーミングの際、各レンズ群の間の距離が変化するズームレンズであり、
マークが形成されているレンズは、広角端において撮像面に映りこみ、望遠端においては映りこまない位置に配置されたラジアル方向に伸びたマークと、
広角端と望遠端において共に撮像面に映りこむ位置に配置されたラジアル方向に伸びたマークとを有することが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、撮像素子を移動可能に保持する撮像素子移動部を有し、
撮像素子移動部は、広角端において撮像素子を少なくともシフトまたはチルト調整し、
望遠端においては撮像素子を固定して保持することが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、信号処理部は、ズーム状態、フォーカス状態、シフト状態、チルト状態、及び絞り値の少なくともいずれか一つに応じて補正パラメータ記憶部から補正パラメータを読み出し、
信号処理部は、さらに、複数の状態での補正パラメータに基づいて補間演算により中間状態の補正パラメータを算出することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、システム全体が小型でありながらレンズに由来する性能の調整が可能な電子撮像装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係るデジタルカメラ40の外観を示す前方斜視図、(b)は同後方斜視図である。
【図2】(a)は、撮影光学系41のうち、マークが形成されたレンズを表面側から見た図、(b)は、撮影光学系41であるズームレンズを広角端状態にて、被写体を撮影したときのマークの像を示す図、撮影光学系41であるズームレンズを望遠端状態にて、被写体を撮影したときのマークの像を示す図である。
【図3】デジタルカメラ40の主要部の内部回路の構成ブロック図である。
【図4】本撮像装置の機能ブロックを示す図である。
【図5】シェーディングと、ノイズと、ディストーションとを補正する手順を示すフローチャートである。
【図6】レンズのシフト量0、チルト量0の状態における補正パラメータのテーブルの内容を示す図である。
【図7】レンズのシフト量Max(最大)、チルト量0の状態における補正パラメータのテーブルの内容を示す図である。
【図8】レンズのシフト量0、チルト量Max(最大)の状態における補正パラメータのテーブルの内容を示す図である。
【図9】レンズのシフト量Max(最大)、チルト量Max(最大)の状態における補正パラメータのテーブルの内容を示す図である。
【図10】接合レンズを保持する保持枠の断面構成を示している。
【図11】第1実施形態のレンズの駆動に関する機能ブロックを示している。
【図12】第1実施形態の機能ブロックを用いたときの手順を示すフローチャートである。
【図13】調整モードの詳細な手順を示すフローチャートである。
【図14】(a)は、第1実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。(b)は、第2実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。
【図15】(a)は、第4実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。(b)は、第4実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。
【図16】(a)は、第5実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。(b)は、第6実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる電子撮像装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るデジタルカメラ40の外観を示す前方斜視図、図1(b)は同後方斜視図である。デジタルカメラ40は、この例の場合、撮影用光路42を有する撮影光学系41シャッターボタン45、フラッシュ46、液晶表示モニタ47等を含み、カメラ40の上部に配置されたシャッターボタン45を押圧すると、それに連動して撮影光学系41、例えば後述する実施例のズームレンズを通して撮影が行われる。
【0021】
撮影光学系41によって形成された物体像が、近赤外カットフィルターと光学的ローパスフィルターFを介してCCD149(図3)の撮像面上に形成される。フィルターFはローパス機能を持たないようにしてもよい。このCCD149で受光された物体像は、処理手段を介し、電子画像としてカメラ背面に設けられた液晶表示モニター47に表示される。また、この処理手段には記録手段が接続され、撮影された電子画像を記録することもできる。なお、この記録手段は処理手段と別体に設けてもよいし、フレキシブルディスクやメモリーカード、MO等により電子的に記録書込を行うように構成してもよい。また、CCD149に代わって銀塩フィルムを配置した銀塩カメラとして構成してもよい。
【0022】
ここで、例えば、結像光学系である撮影光学系41は、広角端から望遠端へのズーミングの際、各レンズ群の間の距離が変化するズームレンズである。
レンズには、マークが形成されている。マークが形成されているレンズは、広角端において撮像面に映りこみ、望遠端においては映りこまない位置に配置されたラジアル方向に伸びたマークと、
広角端と望遠端において共に撮像面に映りこむ位置に配置されたラジアル方向に伸びたマークとを有する。
【0023】
このようなマークを形成することにより、広角端での軸外状況と、望遠端での軸外状況と、両方を撮像面上で得ることができる。この結果、広角端と望遠端との双方でのレンズ調整が可能となる。
【0024】
図2(a)は、撮影光学系41のうち、マークが形成されたレンズを表面側から見た図である。
レンズは円回転対称な形状を有している。レンズの中心部には、十字形状のマークMK1が形成されている。斜め45度のラジアル方向には、接線方向に延びる直線状のマークMK2、マークMK3が、それぞれ2本ずつを1組として形成されている。
【0025】
マークを傾く2線とすることで、ぼけた像が重なるとその重なり量で偏心度合いが分かる。
2線のボケのオーバーラップを見ることで、像面の湾曲状況、傾斜状況を確認できる。
【0026】
図2(b)は、撮影光学系41であるズームレンズを広角端状態にて、被写体を撮影したときのマークの像を示す図である。このとき、被写体に合焦している。このため、直線状のマークMK1、マークMK2、マークMK3は、それぞれ焦点がずれた状態で撮像される。
【0027】
図2(c)は、撮影光学系41であるズームレンズを望遠端状態にて、被写体を撮影したときのマークの像を示す図である。このときも、被写体に合焦している。このため、直線状のマーク1、マーク2、マーク3は、それぞれ焦点がずれた状態、すなわちぼけた状態で撮像される。
【0028】
そして、マークMK1、マークMK2、マークMK3を撮像素子であるCCD149で撮像する。これにより、ズームレンズ全体の片ボケの状態や像面湾曲の状態を認識することが可能となる。
【0029】
なお、マーキングは、直線に限らず、例えば、円形形状のものでも良い。
また、図2(a)において、1組の2線の間隔は、片ボケの度合いを認識できる片ボケの度合いに対応している。2線の間隔を変えると、図2(b)、2(c)におけるボケ像の重なり具合(斜線が重複している部分)が変化する。そして、片ボケの度合いを大きくしたい場合は、ボケ像の重なり具合が大きいマークを形成することが望ましい。
【0030】
撮像面上の像を基にして、シフトまたはチルト可能に保持されたレンズを移動させる。これにより、像面の調整が可能となる。
「シフト」とは、レンズまたはレンズ群の光軸AX(図10)に対して垂直な方向への移動をいう。また、「チルト」とは、レンズまたはレンズ群の光軸AXに対して垂直面内における傾き、をいう。ここで、「シフト」には、レンズの光軸AXに沿った方向の移動、いわゆるフォーカシングの移動は含まない。
【0031】
レンズをシフト及び/またはチルトする具体的な構成、手順は後述する。また、ズームレンズを構成する複数のレンズのうち、いずれのレンズをシフト及び/またはチルトするかの具体的な例についても、後述する。
【0032】
また、例えば、レンズではなく、フィルターなどに付加的にマークを形成することも考えられる。この場合、光学系とマークとの間に偏心が生じるおそれがある。これに対して、本実施形態のように、レンズ系自体にマークを形成することで、レンズ系のみの偏心の要素を取り出すことが可能となる。
【0033】
撮影意図によっては、片ボケや像面湾曲を意図的に発生させたい場合がある。この場合、マークMK1、マークMK2、マークMK3の状態を見ながら、レンズを、シフトまたはチルトさせる。これにより、所望の片ボケ、像面湾曲の効果を得ることができる。
【0034】
明るさ絞りに近い位置のレンズにマークを形成すると、撮像面において像の認識が困難になる。そのため、明るさ絞りから離れた位置の、最物体側レンズ群にマークが施されたレンズを配置するとよい。
【0035】
本実施形態では、マークを形成した部材を光学系から取り外す手間の煩わしさを低減するため、光学系を構成するレンズにマークを形成している。
このため、上述した図2(b)、図2(c)に示したように、レンズに施したマークMK1、マークMK2、マークMK3は、通常の撮影時にも撮像面上にぼけた像として投影される。
【0036】
このため、マークによるぼけた像による輝度むら、輝度低減を補正することが望ましい。本実施形態では、補正パラメータを用いた信号処理により、マークのぼけた像の影響を取り除く補正を行う。
【0037】
このため、ユーザは、撮像素子上のぼけたマークの像を用いて光学系の調整を行うこと、及び通常の撮影において、マークの影響を補正した撮影を行うこと、がそれぞれ可能となる。
【0038】
(内部回路構成)
図3は、デジタルカメラ40の主要部の内部回路の構成ブロック図である。なお、以下の説明では、上記の処理手段は、例えばCDS/ADC部124、一時記憶メモリ117、画像処理部118等からなり、記憶手段は、例えば記憶媒体部119等からなる。
【0039】
図3に示すように、デジタルカメラ40は、操作部112と、この操作部112に接続された制御部113と、この制御部113の制御信号出力ポートにバス114及び115を介して接続された撮像駆動回路116並びに一時記憶メモリ117、画像処理部118、記憶媒体部119、表示部120、及び設定情報記憶メモリ部121を備えている。
【0040】
上記の一時記憶メモリ117、画像処理部118、記憶媒体部119、表示部120、及び設定情報記憶メモリ部121は、バス122を介して相互にデータの入力又は出力が可能なように構成され、また、撮像駆動回路116には、CCD149とCDS/ADC部124が接続されている。
【0041】
操作部112は各種の入力ボタンやスイッチを備え、これらの入力ボタンやスイッチを介して外部(カメラ使用者)から入力されるイベント情報を制御部に通知する回路である。
【0042】
制御部113は、例えばCPU等からなる中央演算処理装置であり、不図示のプログラムメモリを内蔵し、そのプログラムメモリに格納されているプログラムにしたがって、操作部112を介してカメラ使用者から入力される指示命令を受けてデジタルカメラ140全体を制御する回路である。
【0043】
CCD149は、本発明による撮影光学系141(図1では、撮影光学系41)を介して形成された物体像を受光する。CCD149は、撮像駆動回路116により駆動制御され、その物体像の各画素ごとの光量を電気信号に変換してCDS/ADC部124に出力する撮像素子である。
【0044】
CDS/ADC部124は、CCD149から入力する電気信号を増幅しかつアナログ/デジタル変換を行って、この増幅とデジタル変換を行っただけの映像生データ(ベイヤーデータ、以下RAWデータという。)を一時記憶メモリ117に出力する回路である。
【0045】
一時記憶メモリ117は、例えばSDRAM等からなるバッファであり、CDS/ADC部124から出力される上記RAWデータを一時的に記憶するメモリ装置である。画像処理部118は、一時記憶メモリ117に記憶されたRAWデータ又は記憶媒体部119に記憶されているRAWデータを読み出して、制御部113から指定された画質パラメータに基づいて歪曲収差補正を含む各種画像処理を電気的に行う回路である。
【0046】
記録媒体部119は、例えばフラッシュメモリ等からなるカード型又はスティック型の記録媒体を着脱自在に装着して、それらカード型又はスティック型のフラッシュメモリに、一時記憶メモリ117から転送されるRAWデータや画像処理部118で画像処理された画像データを記録して保持する装置の制御回路である。
【0047】
表示部120は、液晶表示モニターを備え、その液晶表示モニターに画像や操作メニュー等を表示する回路である。設定情報記憶メモリ部121には、予め各種の画質パラメータが格納されているROM部と、そのROM部から読み出された画質パラメータの中から操作部112の入力操作によって選択された画質パラメータを記憶するRAM部が備えられている。設定情報記憶メモリ部121は、それらのメモリへの入出力を制御する回路である。
【0048】
このように構成されたデジタルカメラ40は、撮影光学系41が、本発明により、十分な広角域を有し、コンパクトな構成としながら、高変倍で全変倍域で結像性能が極めて安定的であるので、高性能・小型化・広角化が実現できる。そして、広角側、望遠側での速い合焦動作が可能となる。
【0049】
撮像素子(CCD)149で撮像した画像を電気的に補正する補正回路125(シェーディング補正部、ディストーション補正部、後述するノイズ補正部に対応)を備えている。
【0050】
補正回路125は、マークのぼけた像による撮像面上の異なる位置における明るさ補正のパラメータを保持する補正パラメータ記憶手段126(シェーディング補正パラメータ記憶部とシェーディング補正パラメータ算出部に対応)を有する。
【0051】
それにより、マークのぼけた像により撮像面上の各位置で異なる露出差を信号処理により補正でき、良好な画像を得ることができる。
【0052】
更には、補正パラメータ記憶手段126は、ズームレンズの変倍、及び、明るさ絞りの開口面積の変更により変化するマークのぼけた像により撮像面上の各位置で異なる露出差を考慮して、それぞれの状態に対応したマークのぼけた像により撮像面上の各位置で異なる補正パラメータを保持する。
【0053】
それにより、ズームレンズの状態により変化するマークのぼけた像により撮像面上の各位置で異なる露出差に合わせて補正ができ好ましい。
【0054】
他にも、マークのぼけた像により撮像面上の各位置で異なる画像の変化を補正するべく、画像処理によりシェーディング補正時のノイズなどを補正することが好ましい。
【0055】
また、測光エリアやフォーカシングエリアに応じてマークのぼけた像により撮像面上の各位置で異なる画像の変化を考慮した補正を行うことが好ましい。
【0056】
また、マークのぼけた像により撮像面上の各位置で異なる画像の変化による影響を低減するように事前に画像処理を行い、その後、画像処理によるフィルター効果の画像変換を行うようにしてもよい。
【0057】
シェーディング補正パラメータの生成方法としては、明るさが均一白色の平面を撮影し、発生するシェーディング分布を逆演算して、それを補正パラメータとして記憶させておくことができる。
【0058】
例えば、撮影画像にて中心の輝度に対する対応画素の輝度の比の逆数を補正パラメータとする場合、撮影画像の中心の画素に対応する輝度に対して任意の画素Aでは2分の1(中心との差が−1EV)、任意の画素Bで4分の1(中心との差が−2EV)の輝度であるなら、補正パラメータは中心にて1(+0EV)、画素Aに対して2(+1EV)、画素Bに対しては4(+2EV)となる。
そして、各画素の輝度の値に各画素に対応する補正パラメータを乗算することで高い精度でシェーディング補正を行うことが可能となる。
すなわち、マークによる輝度低減を補正することができる。
【0059】
明るさが均一の赤(R)、緑(G)、青(B)の平面を撮影して、撮像素子の各色成分のシェーディング傾向を補正する補正パラメータを生成すれば、色シェーディングの補正も高い精度で行うことが可能となる。
【0060】
シェーディング補正パラメータの算出の仕方や補正演算には種々のバリエーションが可能である。
【0061】
例えば、マークのぼけた像により撮像面上の各位置で異なるシェーディングを補正するためは、パラメータの数が多くなってくる。そのため、ズームレンズの種々の状態で補正パラメータテーブルを記憶しておくと補正パラメータを記憶する記憶容量が過大となる。
【0062】
そこで、シェーディング補正パラメータを3つ以上の種類に分解し、ある撮影状態での補正パラメータを、乗算、和算などの演算により求めるようにする。これにより、メモリーの容量を低減できるので好ましい。
【0063】
例えば、回転対称となるパラメータデータ(像高に依存する補正パラメータ)と非回転対称となるパラメータデータ(撮像面の短辺方向の位置に依存するパラメータ、長辺方向の位置に依存するパラメータ)に分けてパラメータを保持する。各画素の補正パラメータは、それぞれのパラメータデータの加算や乗算にて求めるようにしてもよい。
【0064】
また、ズームレンズの焦点距離、Fナンバー、フォーカス状態に依存して変化するシェーディング傾向を電気的に補正するため、有限の複数の状態に対応した補正パラメータ分布(もしくは分布を演算可能な補正パラメータ)を記憶させておく。
そして、記憶もしくは演算されたパラメ−タ分布のうちの複数のパラメータ分布の補間により任意の状態での補正パラメータを算出するようにしてもよい。
【0065】
また、マークのぼけた像による撮像面上の異なる位置でのシェーディングを電気的に補正するとマークのぼけた像により撮像面上の位置において異なる分布のノイズが発生する。そのため、マークのぼけた像による撮像面上の異なる位置でノイズ補正パラメータを持たせ、マークのぼけた像による撮像面上の異なる位置で発生するノイズも補正するようにするようにしてもよい。
【0066】
また、シェーディングを生かした撮影が楽しめるようにすることもできる。例えば、シェーディング補正のON/OFFの切り替えが行えるスイッチを設ける。そして、シェーディング補正ONのときは、マークのぼけた像による撮像面上の異なる位置でのシェーディングを補正する。OFFのときは、シェーディングを補正しない。
【0067】
また、ストロボ撮影を行うと、ストロボの配光特性の影響でマークのぼけた像による撮像面上の異なる位置でのシェーディングが目立ち易くなる。
【0068】
そのため、ストロボ発光時のシェーディング補正パラメータを別のテーブルとして記憶させておき、光学系のシェーディング補正パラメータにストロボ発光時のシェーディング補正パラメータを乗算して各画素に乗算する補正パラメータを演算するようにしてもよい。
【0069】
もしくは、ズームレンズによるシェーディングを補正するようにマークのぼけた像による撮像面上の異なる位置で明るくなるストロボ配光特性としてもよい。
【0070】
(シェーディング補正の実施例)
以下に、シェーディング補正パラメータ記憶部、シェーディング補正パラメータ算出部、シェーディング補正部、ノイズ補正パラメータ算出部、ノイズ補正部、ディストーション補正部を用いた例を説明する。
【0071】
図4から図9を参照して、シェーディング補正等を行う装置の説明をする。
図4は、本撮像装置の機能ブロックを示す図である。
【0072】
シェーディング補正パラメータ記憶部101は、シェーディングを電気的に補正する構成として、ズームレンズのマークのぼけた像による撮像面上の異なる位置でのシェーディングを補正するために、マークのぼけた像による撮像面上の各位置で異なるシェーディング補正パラメータを保持する。
【0073】
シェーディング補正部103は、シェーディング補正パラメータ記憶部101に記憶されているシェーディングの補正パラメータに基づいて、撮像素子で撮像した画像を補正演算する。
【0074】
シェーディング補正パラメータ算出部102は、シェーディング補正パラメータ記憶部101から補正パラメータを読み出す。
シェーディング補正パラメータ算出部102へは、画像信号、ズームレンズ状態信号が入力される。
【0075】
ズームレンズの状態に応じて変化するシェーディング特性の逆関数となるようにシェーディング補正パラメータ分布を算出する。
【0076】
そして、シェーディング補正パラメータ算出部102は、シェーディング補正部103に対して、算出したシェーディング補正パラメータ分布を送信する。
【0077】
信号処理部に対応するシェーディング補正パラメータ算出部102は、ズーム状態、フォーカス状態、シフト状態、チルト状態、及び絞り値の少なくともいずれか一つに応じて補正パラメータ記憶部に対応するシェーディング補正パラメータ記憶部101から補正パラメータを読み出す。
そして、信号処理部に対応するシェーディング補正パラメータ算出部102は、さらに、複数の状態での補正パラメータに基づいて補間演算により中間状態の補正パラメータを算出する。
【0078】
また、シェーディング補正パラメータ算出部102は、シェーディング補正パラメータ修正部106を備えている。
シェーディング補正パラメータ修正部106は、シェーディング補正パラメータ記憶部101内の補正パラメータに記憶されていないズームレンズ状態での補正パラメータ分布を算出するために補間演算(最小二乗法など)を行う。
【0079】
シェーディング補正パラメータ算出部102で算出された補正パラメータ分布は、シェーディング補正部103に送られると共に、ノイズパラメータ算出部107にも送信される。
【0080】
シェーディング補正部103は、撮影画像の各画素に対して輝度と補正パラメータとを乗算する。これにより、シェーディング補正部103は、シェーディング補正を行った画像を生成する。
【0081】
ノイズパラメータ算出部107は、シェーディング補正パラメータの分布に基づき、ノイズ補正パラメータ分布を算出する。
【0082】
シェーディング補正部103で補正された画像信号は、ノイズ補正部104に送られる。ノイズ補正部104は、シェーディング補正部103からの画像信号に対して、ノイズ補正パラメータ算出部107からのノイズ補正パラメータ分布を有するパラメータを基にして、シェーディング補正パラメータが大きい値の領域ほどノイズ補正値を大きくしている。
【0083】
ノイズ補正部104にてノイズ補正された画像信号は、ディストーション補正部105に送られる。ディストーション補正部105は、ディストーションを補正する画像処理を行う。
【0084】
このとき、ディストーション補正部105は、ズームレンズの状態に対応したディストーションの補正パラメータを用いてディストーションを補正するように画像信号を演算処理する。この結果、ディストーション補正部105は、歪みを補正した画像信号を出力する。
【0085】
ディストーション補正パラメータ記憶部108は、ズームレンズ状態を示す信号に基づいた基礎的な補正パラメータを記憶する。
ディストーション補正パラメータ算出部109は、ディストーション補正パラメータ記憶部108から、対応するズームレンズ状態に近い補正パラメータを複数読み出す。
【0086】
そして、ディストーション補正パラメータ算出部109は、複数のパラメータの相互補間等の演算により、ズームレンズの状態に対応するディスーション補正パラメータを算出する。ディストーション補正パラメータ算出部109からの信号は、上述のディストーション補正部105に送られる。
【0087】
ディストーション補正部105は、補正パラメータに基づいて画像の歪みを補正する。
特に図示していないが、更なる画像処理として彩度強調処理や回転対称な周辺光量低減処理などの画像処理を行ってもよい。変換された画像信号は、表示部120、47に画像を表示され、または記録媒体へ記録される。
以上の処理により、マークによる輝度むらを補正することができる。
【0088】
図5は、シェーディングと、ノイズと、ディストーションとを補正する手順を示すフローチャートである。
ステップS201において、シェーディング補正パラメータ算出部102は、シェーディング補正パラメータ記憶部101に記憶されているシェーディング補正パラメータを読み出す。
【0089】
ステップS202において、シェーディング補正パラメータ算出部102は、補正パラメータを補間する必要性の有無を判断する。ステップS202の判断結果が、真(Yes)のとき、ステップS203へ進む。
【0090】
ステップS203において、シェーディング補正パラメータ修正部106は、シェーディング補正パラメータ記憶部101内の補正パラメータに記憶されていないズームレンズ状態での補正パラメータ分布を算出するために補間演算(最小二乗法など)を行う。そして、ステップS204へ進む。
【0091】
ステップS202の判断結果が偽(No)のときもステップS204へ進む。ステップS204において、シェーディング補正パラメータ算出部102は、画像信号と、ズームレンズ状態信号に基づいて、補正パラメータ分布を算出する。
【0092】
ステップS205において、シェーディング補正部103は、シェーディングの補正を行なう。また、ステップS206において、ノイズパラメータ算出部107は、算出された補正パラメータ分布に基づいて、ノイズ補正パラメータ分布を算出する。
【0093】
ステップS208において、ノイズ補正部104は、シェーディング補正部103からの画像信号に対して、ノイズ補正パラメータ算出部107からのノイズ補正パラメータ分布を有するパラメータを基にして、シェーディング補正パラメータが大きい値の領域ほどノイズ補正値を大きくする。そして、ノイズ補正部104は、画像に対してノイズ補正を行なう。
【0094】
また、ステップS207において、ディストーション補正パラメータ算出部109は、ディストーション補正パラメータ記憶部108から、対応するズームレンズ状態に近い補正パラメータを複数読み出す。そして、ディストーション補正パラメータ算出部109は、複数のパラメータの相互補間等の演算により、ズームレンズの状態に対応するディスーション補正パラメータを算出する。
【0095】
ステップS209において、ディストーション補正部105は、ズームレンズの状態に対応したディストーションの補正パラメータを用いてディストーションを補正するように画像信号を演算処理する。この結果、ディストーション補正部105は、歪みを補正した画像信号を出力する。
【0096】
次に、シェーディング補正のパラメータに関して詳しく説明する。
シェーディング補正パラメータ記憶部101は、ズームレンズにより生じる撮像素子のマークのぼけた像による撮像面上の各位置で異なる分布となるシェーディング補正パラメータを記憶している。
【0097】
補正パラメータの値は、上述したように明るさの均一な被写体の撮影像から求める方法でもよいが、コンピューターによるシミュレーションなどにより予め算出した値としてもよい。
【0098】
シェーディング補正パラメータ記憶部101に記憶された補正パラメータは、全画素に対応しているわけではない。シェーディング補正パラメータ算出部102にて、それぞれの補正パラメータを補間する。これにより、全画素に対応した補正パラメータの分布を計算する。
【0099】
以下、ズームレンズの1つの状態に対応する補正パラメータの集まりをテーブルと称す。
図6、図7、図8、図9は、補正パラメータのテーブルの内容を示す図である。シェーディング補正パラメータ記憶部101に記憶しておくテーブルは、以下の状態(1)、(2)、(3)の組合せである。
(1)ズーミング状態は広角端、中間焦点距離状態、望遠端の3状態、
(2)フォーカス状態は無限遠合焦時と至近距離合焦時の2状態、
(3)絞り状態は絞り開放時と最小絞り時の2状態。
【0100】
図6は、レンズのシフト量0、チルト量0の状態における補正パラメータの内容を示す。シェーディング補正パラメータ記憶部101には、テーブル1a〜テーブル12aが記憶されている。
【0101】
図7は、レンズのシフト量Max(最大)、チルト量0の状態における補正パラメータの内容を示す。シェーディング補正パラメータ記憶部101には、テーブル1b〜テーブル12bが記憶されている。
【0102】
図8は、レンズのシフト量0、チルト量Max(最大)の状態における補正パラメータの内容を示す。シェーディング補正パラメータ記憶部101には、テーブル1c〜テーブル12cが記憶されている。
【0103】
図9は、レンズのシフト量Max(最大)、チルト量Max(最大)の状態における補正パラメータの内容を示す。シェーディング補正パラメータ記憶部101には、テーブル1d〜テーブル12dが記憶されている。
【0104】
このため、シェーディング補正パラメータ記憶部101は、各状態の組合せで、3状態×2状態×2状態=12状態でのテーブルを記憶しておく。なお、ズームレンズの変倍比に応じてテーブルの数を増やしてもよい。
【0105】
シェーディング補正パラメータ算出部102は、シェーディング補正パラメータ記憶部101のシェーディング補正パラメータを基にして、撮像素子の平面に2次元配置された各画素にそれぞれ対応したシェーディング補正パラメータの算出を行う。
【0106】
シェーディング補正パラメータの算出において、予め記憶されていない画素に対応するシェーディング補正係数を、線形補間、非線形補間、或いは最小二乗法による補間などを行う。
【0107】
ズームレンズの状態が、予め記憶されたテーブルに存在しない場合、シェーディング補正パラメータ算出部102は、そのズームレンズの状態に近いテーブルを複数読み出す。そして、シェーディング補正パラメータ修正部106は、ズームレンズの状態に応じた重み付けを行って演算する。これにより、撮影時のズームレンズの状態に対応したシェーディング補正パラメータを算出する。
【0108】
算出するシェーディング補正パラメータの一例を挙げると、上述した多項式に変換した場合、各画素のX.Y座標の値に基づいて、各画素の補正パラメータが求まる。
【0109】
シェーディング補正部103は、シェーディング補正パラメータ算出部102にて算出されたシェーディング補正パラメータの中から対応画素に関するシェーディング補正係数を抽出する。そして、シェーディング補正部103は、撮像素子の各画素からそれぞれ取り出された輝度データに対して、シェーディング補正係数を用いて補正演算する。
【0110】
次に、レンズをシフト、チルトする機構と、制御手順について説明する。
まず、図14(a)は、本実施形態の電子撮像装置が備える結像光学系のレンズ断面構成を示す図である。ここで、マークは、レンズL1の物体側面に形成されている。そして、斜線を付したレンズL10とレンズL11との接合レンズがシフト、チルト可能に保持されている。
【0111】
図10へ戻り、説明を続ける。図10は、レンズL10とレンズL11との接合レンズを保持する保持枠の断面構成を示している。
【0112】
調整部601の一端は保持枠603aに保持され、他端は、移動可能な接合レンズの有効領域以外に当接している。さらに、移動可能な接合レンズに関して調整部とは反対側601に配置され、調整部601の長さが変化する方向に、移動可能な接合レンズに外力を負荷する弾性部材602と、が設けられている。弾性部材602は、例えばコイルばねを用いることができる。
【0113】
また、保持枠603bには、レンズL9、L10以外のレンズも固定保持されている。ここで、調整部601は、例えば、ステッピングモータやボイスコイルモータ(VCM)を用いることができる。
【0114】
ここで、接合レンズをいわゆる片持ち構造にて支持する。そして、調整部601を駆動することで、接合レンズをチルトさせることができる。
【0115】
図11は、本実施形態のレンズの駆動に関する機能ブロックを示している。ユーザは、調整モード選択部301から、例えば以下の情報を入力する。調整モード選択部301は、ジョグダイアル等を用いることができる。
(1)単純なゼロ点補正、
(2)像面を傾ける情報、
(3)像面の湾曲率、
(4)チルト情報、
(5)アオリ情報。
【0116】
例えば、像面傾斜率を可変にすることで、「アオリ撮影モード」にすることができる。また、像面湾曲率を可変にすることで、「アグレッシブ撮影モード」が可能になる。さらには、ハイアマチュア向けには、像面傾斜、像面湾曲の調整率をマニュアルで変更可能とすることもできる。これにより、デジタルカメラで撮影した作品の多様性の幅をさらに広げることが可能である。
【0117】
調整モードの情報は、CPU304へ送られる。CPU304には、撮像素子302、RAM303が接続されている。RAM303には、工場出荷時の初期値と、補正パラメータが格納されている。
【0118】
上述のフローチャートで説明したような手順にしたがって、CPU302は、レンズの駆動量、例えばズーム駆動量、フォーカシング駆動量、広角端状態におけるシフト、チルト量、望遠端状態におけるシフト駆動量、チルト駆動量などを算出する。
【0119】
CPU304からの制御信号は、ドライバ305、306、307、308へ出力される。ドライバ305は、ズームモータ309を駆動する。ドライバ306は、フォーカスモータ310を駆動する。ドライバ307は、広角端用のシフト、チルト調整部311を駆動する。ドライバ308は、望遠端用のシフト、チルト調整部311を駆動する。
【0120】
次に、レンズのシフト及び/またはチルト駆動(適宜「調整駆動」という。)について説明する。
ズームレンズは、焦点距離状態が広角端状態から中間焦点距離状態を経て望遠端まで連続的に可変である。そして、上述のような調整を行うレンズは、ズームレンズ全体が広角端であるか、望遠端であるかにより異ならせることができる。
【0121】
例えば、広角端状態では、撮像素子302を調整する。また、望遠端状態では、第3レンズ群G3を調整する。
【0122】
RAM内に、片ボケ、像面湾曲が無いときの偏心量を記憶しておき、「0(ゼロ)狙いモード」としたとき、自動で広角端と望遠端へレンズの繰り出しを行い、撮像素子と調整レンズの位置を自動で調整し、全ズーム状態で最適なレンズ状態とすることも可能である。
【0123】
図12は、上述の機能ブロックを用いたときの手順を示すフローチャートである。
ステップS401において、ユーザは、調整モード選択部301を用いて調整モードを選択する。
【0124】
ステップS402において、まず、所望の焦点距離状態へズームレンズを駆動する。ステップS403において、CPU304は、撮像した画像に基づいて、調整用のレンズが、所望のシフト、チルト量に達しているか否かを判断する。ステップS404において、CPU304は、所望値へ達するための適切な補正量を選択する。ステップS405において、CPU304は、必要な調整部を駆動させる。なお、これらステップS405におけるさらに詳細な手順は、図13を用いて後述する。
【0125】
ステップS406において、CPU304は、フォーカシングを行う。これにより、被写体に合焦させる。ステップS407において、ユーザが撮影するまで待機する。ステップS408において、ユーザの所望の撮影条件において撮影が行われる。
【0126】
図13は、さらに、調整モードの詳細な手順を示すフローチャートである。ステップS501において、ユーザは、調整モード選択部301を用いて、所望の調整状態、調整量を設定する。調整状態とは、例えば、片ボケ状態、アオリ状態などである。調整量は、片ボケの度合い、アオリ量などである。
【0127】
ステップS502において、輝度が均一な被写体を撮像することで、マーキングされた調整用の画像を撮影する。ステップS503において、CPU304は、撮影した画像において像面の傾斜量、像面の湾曲量を算出する。ステップS504において、CPU304は、算出された値と、初期値とを比較して、所定値以上の差があるか否かを判断する。
【0128】
ステップS504の判断結果が偽(No)のとき、調整モードを終了する。ステップS504の判断結果が真(Yes)のとき、ステップS505へ進む。ステップS505において、CPU304は、所望のレンズ調整値となるような各ドライバ307、308の制御量を算出する。
【0129】
ステップS506において、ドライバ307、308を駆動して、レンズ調整を行う。ステップS507において、再度、調整用の画像を撮影する。ステップS508において、CPU304は、撮影した画像において像面の傾斜量、像面の湾曲量を算出する。ステップS509において、CPU304は、算出された値と、初期値とを比較して、所定値以上の差があるか否かを判断する。
【0130】
ステップS509の判断結果が偽(No)のとき、調整モードを終了する。ステップS509の判断結果が真(Yes)のとき、ステップS510へ進む。ステップS510において、CPU304は、所望のレンズ調整値となるような各ドライバ307、308の制御量を算出する。
【0131】
ステップS511において、ドライバ307、308を駆動して、レンズ調整を行う。ステップS509を実行することで、撮影時に所望のモードになっているか否かの2回目の判断(2次判断)を行うことができる。
【0132】
なお、ステップS504の判断(1回目の判断)だけでもよい。ここで、さらにステップS509の実行により、光学系を正確に所望のモードに設定できる。
【0133】
次に、本実施形態に係る電子撮像装置が備える結像光学系および撮像素子について説明する。以下、すべての実施形態の結像光学系は、複数のレンズ群と、物体の像を結像する結像光学系と、結像光学系により結像された像を電気信号に変換する撮像面Iを有する撮像素子149と有している。
また、結像光学系は、
最も物体側に配置された最物体側レンズ群と、
最物体側レンズ群よりも像側に配置された明るさ絞りSと、
明るさ絞りSよりも像側に配置された像側レンズ群を少なくとも有している。
【0134】
なお、以下に説明するすべての実施形態において、中間焦点距離状態におけるレンズ断面構成を示す。また、調整用のレンズには、斜線を付す。
しかしながら、上述したような、レンズ調整、CCD調整による設定は、広角端状態から中間焦点距離状態をへて望遠端状態までのいずれの焦点距離状態でも行うことができる。
また、フォーカシングは、いずれも最も像面側のレンズ成分を移動することで行う。
【0135】
図14(a)は、本実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。
物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群G1と、負屈折力の第2レンズ群G2と、明るさ絞りSと、正屈折力の第3レンズ群G3と、正屈折力の第4レンズ群G4と、を有している。
【0136】
前記最物体側レンズ群よりも像側に配置された少なくともいずれかのレンズが少なくともシフトまたはチルト調整可能に保持されている。
具体的には、第3レンズ群G3の像面側の、レンズL10とレンズL11との接合レンズが少なくともシフトまたはチルト調整可能に調整部601を介して保持されている。
【0137】
結像光学系は、複数のレンズ群の間の間隔を変更させて、広角端から望遠端へのズーミングを行うことができる。
【0138】
さらに、最物体側レンズ群であるレンズ群G1と、明るさ絞りSとの間に配置された中間レンズ群を有している。
【0139】
最物体側レンズ群である第1レンズ郡G1のレンズL1の物体側のレンズ面の有効領域にマークが施されている。
ここで、マークは黒色で形成することができる。これにより、認識しやすくなる。
【0140】
また、マークを形成する面は、レンズ成分中において、曲率の絶対値が最も小さい面であることが好ましい。マークを形成することが容易だからである。ここでは、レンズ成分を光路中にて空気と接する屈折面が物体側面と像側面の2面のみのレンズ体とする。
【0141】
最物体側レンズ群である第1レンズ群G1は少なくとも複数のレンズ面を有している。
前記マークは、前記最物体側のレンズ群の最も物体側のレンズ成分L1の物体側レンズ面に形成されている。
これにより、明るさ絞りSからマークを遠ざけられるので、調整しやすくなる。
【0142】
また、第1レンズ群G1の物体側の負レンズL1の像側面(凹面)にマークを形成しても良い。
マークを形成する面が最物体側の面の場合、撮影時にマークの映りこみが目立ちやすくなる場合がある。特に、結像光学系がズームレンズの場合、広角端にて軸上光束径が小さくなるのでマークが目立ちやすくなる。さらに、画像処理しても、ノイズが目立つ。このため、マークを形成する面は、最物体側レンズ面よりも像側の面のほうが望ましい。
【0143】
また、調整する対象は、広角端においては、図14(a)のレンズL10とレンズL11との接合レンズに加えて、撮像素子であるCCD149でも良い。CCD149には、調整部604が設けられている。調整部604は、調整部601と同様に、撮像素子のシフト、チルトを調整できる機構を有している。
【0144】
撮像素子であるCCD149を移動可能に保持する撮像素子移動部604が設けられている。
撮像素子移動部604は、広角端において撮像素子であるCCD149を少なくともシフトまたはチルト調整し、望遠端においては撮像素子であるCCD149を固定して保持する。
【0145】
これにより、広角端状態では、CCD149の調整を行う。これに対して、望遠端状態では、CCD149では、CCD149のシフト、チルト調整は行わないで、レンズ調整を行う。このように、焦点距離状態において、レンズ調整、CCD調整を切替えている。
【0146】
(第2実施形態)
図14(b)は、第2実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。
物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群G1と、負屈折力の第2レンズ群G2と、明るさ絞りSと、正屈折力の第3レンズ群G3と、正屈折力の第4レンズ群G4と、を有している。
【0147】
ここで、レンズL1の物体側面にマークが形成されている。また、第1レンズ群G1全体がシフト、チルト調整可能に保持されている。さらに、CCD149もシフト、チルト調整可能に保持されている。
【0148】
本実施例は、調整レンズは、第1レンズ群G1の代わりに第2レンズ群としても良い。
【0149】
(第3実施形態)
図15(a)は、第3実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。
物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群G1と、負屈折力の第2レンズ群G2と、明るさ絞りSと、正屈折力の第3レンズ群G3と、正屈折力の第4レンズ群G4と、を有している。
【0150】
ここで、レンズL2の像側面にマークが形成されている。また、第3レンズ群G3のレンズL6またはレンズL7がシフト、チルト調整可能に保持されている。さらに、CCD149もシフト、チルト調整可能に保持されている。
【0151】
(第4実施形態)
図15(b)は、第4実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。
物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群G1と、負屈折力の第2レンズ群G2と、明るさ絞りSと、正屈折力の第3レンズ群G3と、正屈折力の第4レンズ群G4と、を有している。
【0152】
ここで、レンズL2の像側面にマークが形成されている。また、第1レンズ群G1がシフト、チルト調整可能に保持されている。さらに、CCD149もシフト、チルト調整可能に保持されている。
【0153】
(第5実施形態)
図16(a)は、第5実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。
物体側から順に、負屈折力の第1レンズ群G1と、明るさ絞りSと、正屈折力の第2レンズ群G2と、正屈折力の第3レンズ群G3と、を有している。
【0154】
ここで、レンズL1の物体側面にマークが形成されている。また、第2レンズ群G2のレンズL3、またはレンズL4とレンズL5との接合レンズがシフト、チルト調整可能に保持されている。さらに、CCD149もシフト、チルト調整可能に保持されている。
【0155】
明るさ絞りS近傍のレンズは感度が高い。したがって、レンズL3または接合レンズを調整レンズとすることで、効率よく片ボケなどを制御できる。
【0156】
(第6実施形態)
図16(b)は、第6実施形態の結像光学系の断面構成を示す図である。
物体側から順に、負屈折力の第1レンズ群G1と、明るさ絞りSと、正屈折力の第2レンズ群G2と、正屈折力の第3レンズ群G3と、を有している。
【0157】
ここで、レンズL1の物体側面にマークが形成されている。また、第1レンズ群G1がシフト、チルト調整可能に保持されている。さらに、CCD149もシフト、チルト調整可能に保持されている。
【0158】
以上説明した本発明によれば、例えば、通常、出荷時に決定されてしまう像面傾斜・像面湾曲をユーザが任意に変更することも可能である。この場合、製造工程において、偏心調整の精度が許容されるので、任意の場所に光学系を組むことが可能である。このため、製造ラインの負荷が著しく低減可能で有る。
【0159】
また、任意のレンズ表面に調整マークを有し、任意の群またはレンズがカメラ内部の操作で調整可能な機構を有している。よって、像面傾斜及び像面湾曲が、ユーザの任意によって変更可能になる。
【0160】
正先行タイプ、または負先行タイプの光学系においては、調整レンズ群の位置が異なる。最適なズームタイプは、偏心が効くレンズ群と、効かない点図群が明確に分かれているズームレンズが望ましい。
ここで、調整しないレンズは、感度が低く、調整するレンズは、可動範囲を小さくするために、感度が高いことが望ましい。
【0161】
正先行の光学系の場合、正・負・絞りもしくは、正・負・正・絞りの構成であり、絞りから遠く、最も物体側の正レンズにマークを形成するとよい。
また、負先行の光学系の場合、負・正・絞り、もしくは、負・絞りの構成であり、絞りから遠く、最も物体側の負レンズにマークを行うとよい。
【0162】
さらに、光学系全ての組合せで、像面傾斜・像面湾曲の傾向を判断したいので、最も物体側にマークすることが望ましい。
【0163】
マークに関しては、画像処理で除去するためには、結像位置で撮像素子1ピクセル程度の大きさになることが望ましい。また、数ピクセルであれば、調整感度は高くなるが、画像処理でのノイズが大きくなるため好ましくない。
【0164】
ズームレンズの場合、広角端、望遠端で偏心するレンズ群の感度が異なる。焦点深度の関係から、偏心するレンズ群は、像面位置に近いことが望ましい。
また、望遠端では、絞り前後のレンズ群に関係する、レンズ群同士の相対偏心が画質に影響するため、各光学系に依存する。
【0165】
また、正確にレンズ群の調整量を算出するためには、周辺輝度ムラが少ない条件が好ましい。
通常の撮影時は、画像処理にてマークは除去される用にセットされる。
調整選択時は、CCDに移りこむマークを検知し像面傾斜率、像面湾曲率を算出し、数値化をLCDに表示する。
【0166】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で変形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0167】
以上のように、本発明は、システム全体が小型でありながらレンズに由来する性能の調整が可能な電子撮像装置に有用である。
【符号の説明】
【0168】
G1…第1レンズ群
G2…第2レンズ群
G3…第3レンズ群
G4…第4レンズ群
S…開口絞り
F…フィルタ
C…カバーガラス
I…像面
40…デジタルカメラ
41…撮影光学系
42…撮影用光路
45…シャッターボタン
46…フラッシュ
47…液晶表示モニター
112…操作部
113…制御部
114…バス
115…バス
116…撮像駆動回路
117…一時記憶メモリ
118…画像処理部
119…記憶媒体部
120…表示部
121…設定情報記憶メモリ部
122…バス
124…CDS/ADC部
125…補正回路
126…補正パラメータ記憶手段
149…CCD


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズ群と、
物体の像を結像する結像光学系と、
前記結像光学系により結像された像を電気信号に変換する撮像面を有する撮像素子と、
を有し、
前記結像光学系は、
最も物体側に配置された最物体側レンズ群と、
前記最物体側レンズ群よりも像側に配置された明るさ絞りと、
前記明るさ絞りよりも像側に配置された像側レンズ群を少なくとも有し、
前記最物体側レンズ群はレンズ面の有効領域にマークが施されたレンズを有し、
少なくともいずれかのレンズが少なくともシフトまたはチルト調整可能に保持され、
さらに、前記マークによる輝度むらを補正する補正パラメータを記憶する補正パラメータ記憶部と、
前記補正パラメータ記憶部に記憶されている前記補正パラメータに基づいて、前記撮像素子にて撮像した前記マークによる輝度むらを補正する信号処理部と、を有することを特徴とする電子撮像装置。
【請求項2】
前記最物体側レンズ群よりも像側に配置された少なくともいずれかのレンズが少なくともシフトまたはチルト調整可能に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の電子撮像装置。
【請求項3】
前記最物体側レンズ群と前記明るさ絞りとの間に配置された中間レンズ群を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子撮像装置。
【請求項4】
物体側から順に、正屈折力の第1レンズ群と、負屈折力の第2レンズ群と、前記明るさ絞りと、正屈折力の第3レンズ群と、を有し、
前記第1レンズ群または前記第3レンズ群が少なくともシフトまたはチルト調整可能に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の電子撮像装置。
【請求項5】
物体側から順に、負屈折力の第1レンズ群と、前記明るさ絞りと、正屈折力の第2レンズ群と、正屈折力の第3レンズ群と、を有し、
前記第1レンズ群または前記第2レンズ群が少なくともシフトまたはチルト調整可能に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の電子撮像装置。
【請求項6】
前記最物体側レンズ群は少なくとも複数のレンズ面を有し、
前記マークは、前記最物体側のレンズ群の最も物体側のレンズ成分のレンズ面に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子撮像装置。
【請求項7】
前記結像光学系は広角端から望遠端へのズーミングの際、各レンズ群の間の距離が変化するズームレンズであり、
前記マークが形成されているレンズは、広角端において撮像面に映りこみ、望遠端においては映りこまない位置に配置されたラジアル方向に伸びたマークと、
広角端と望遠端において共に撮像面に映りこむ位置に配置されたラジアル方向に伸びたマークとを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子撮像装置。
【請求項8】
前記撮像素子を移動可能に保持する撮像素子移動部を有し、
前記撮像素子移動部は、広角端において前記撮像素子を少なくともシフトまたはチルト調整し、
望遠端においては前記撮像素子を固定して保持することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子撮像装置。
【請求項9】
前記信号処理部は、ズーム状態、フォーカス状態、シフト状態、チルト状態、及び絞り値の少なくともいずれか一つに応じて前記補正パラメータ記憶部から補正パラメータを読み出し、
前記信号処理部は、さらに、複数の状態での前記補正パラメータに基づいて補間演算により中間状態の補正パラメータを算出することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−37574(P2012−37574A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174705(P2010−174705)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】