説明

電子材料用洗浄剤

【課題】 微細化したパーティクルや有機物の洗浄力に優れると共に基板上の金属汚染が低減でき、製造時における歩留まり率の向上や短時間で洗浄が可能となる極めて効率的な高度洗浄を可能にする電子材料用洗浄剤を提供する。
【解決手段】 スルファミン酸(A)、分子内に少なくとも1個のスルホン酸基又はその塩基を有するアニオン性界面活性剤(B)、キレート剤(C)及び水を含有してなる電子材料用洗浄剤であり、25℃でのpHが3以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料用洗浄剤に関するものである。さらに詳しくは、電子材料を汚染することがなく、また製造設備の腐食を引き起こす恐れのない電子材料上の微小なパーティクルの除去性に優れた電子材料用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク用基板、フラットパネルディスプレイ用基板及び半導体基板等に代表される電子材料の洗浄技術において、近年、超LSI等に代表される微細加工技術の進歩につれて、電子材料、特に基板上に残存する微量のパーティクルや有機物がデバイスの性能や歩留まりに大きく影響するため、洗浄時の管理が極めて重要になってきている。特に洗浄対象であるパーティクル自体が、最近ではより微粒子化する傾向にあり、微粒子化したパーティクルは、さらに界面へ付着しやすくなることから、高度洗浄技術の確立が急務となっている。
これらのパーティクルによる汚染を防止するために、界面活性剤を添加してパーティクル表面のゼータ電位を下げ、パーティクルの付着を低減する方法(特許文献1〜3参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−138142号公報
【特許文献2】特開平6−41770号公報
【特許文献3】特開2001−7071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1で提案されている界面活性剤は、非イオン界面活性剤であるため、パーティクル表面のゼータ電位を十分に下げることができず、再付着防止性が不十分である。また、上記特許文献2で提案されている界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であり、確かにパーティクル表面のゼータ電位を下げることでパーティクルの再付着防止効果はある程度改善できるものの微細化したパーティクルの除去性が不十分である。
さらに、基板上の金属汚染を低減するために、上記特許文献3では有機酸と界面活性剤を用いた酸性の洗浄剤が提案されているが、洗浄時に微量の金属(カルシウムやマグネシウム等)と容易に水難溶性の塩を形成するため、これらの析出した塩が基板を汚染するといった問題がある。
【0005】
本発明の課題は、微細化したパーティクルの洗浄力に優れると共に基板上の金属汚染が低減でき、製造時における歩留まり率の向上や短時間で洗浄が可能となる極めて効率的な高度洗浄を可能にする電子材料用洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、スルファミン酸(A)、分子内に少なくとも1個のスルホン酸基又はその塩基を有するアニオン性界面活性剤(B)、キレート剤(C)、及び水を必須成分として含有することを特徴とする電子材料用洗浄剤;並びに該洗浄剤を用いて電子材料を洗浄する工程を含む電子材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子材料用洗浄剤は、従来の課題であった洗浄工程時におけるパーティクル粒子の電子材料への再付着防止性及び微細化したパーティクルの除去性に優れ、デバイスの信頼性や歩留まりを向上することができるという効果を有する。
さらに、本発明の電子材料用洗浄剤は、洗浄時に水中に存在する微量の金属イオンと反応して水不溶解物を生じることが無いため、洗浄剤からの2次汚染の恐れがなく、製造設備に使用されている金属部材に対する腐食がないという効果も有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明におけるスルファミン酸(A)は、特に限定されるものではなく、一般に市販されている試薬又は工業用原料のいずれでもよく、また、粉末状又は水溶液状のいずれの形態であってもよい。
【0009】
本発明における分子内に少なくとも1個のスルホン酸基又はその塩基を有するアニオン性界面活性剤(B)としては、1分子中に少なくとも2個以上の繰り返し単位を有する重量平均分子量(以下、Mwと略記)1,000〜2,000,000の高分子アニオン性界面活性剤(B1)及び低分子アニオン性界面活性剤(B2)が挙げられる。
【0010】
上記の高分子アニオン性界面活性剤(B1)の具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、ポリ{2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸}、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/アクリルアミド共重合体、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ジメチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アニリンスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩等が挙げられる。
【0011】
低分子アニオン性界面活性剤(B2)の具体例としては、炭素数6〜24のアルコールのスルホコハク酸(モノ又はジ)エステル(塩){ジオクチルスルホコハク酸(塩)等}、炭素数8〜24のα−オレフィンのスルホン酸化物(塩)、炭素数8〜14のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸(塩){オクチルベンゼンスルホン酸(塩)、ドデシルベンゼンスルホン酸(塩)等}、石油スルホネート(塩)、トルエンスルホン酸(塩)、キシレンスルホン酸(塩)及びクメンスルホン酸(塩)等が挙げられる。
【0012】
これらの内、パーティクルの除去性、低起泡性の観点から、好ましいのは高分子アニオン性界面活性剤(B1)であり、さらに好ましいのはポリスチレンスルホン酸、ポリ{2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸}、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩である。
さらに好ましいのはポリスチレンスルホン酸、ポリ{2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸}、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体及びこれらの塩、特に好ましいのはポリスチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合物及びこれらの塩である。
【0013】
アニオン性界面活性剤(B)中のスルホン酸基が塩を形成している場合、その塩としては例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、炭素数4〜25の第4級アンモニウム塩、炭素数1〜36の脂肪族アミン塩、炭素数4〜10のアミジン塩、炭素数1〜23のアルカノールアミン塩、及び炭素数6〜20の芳香族又は芳香脂肪族アミン塩が挙げられる。また(B)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
これらの内、パーティクル除去性の観点から、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、炭素数4〜25のアンモニウム塩、炭素数1〜36の脂肪族アミン塩、炭素数4〜10のアミジン塩、及び炭素数1〜23のアルカノールアミン塩が好ましい。
また基板への金属汚染の観点から、さらに好ましいのは、アンモニウム塩、炭素数4〜25のアンモニウム塩、炭素数1〜36の脂肪族アミン塩、炭素数4〜10のアミジン塩及び炭素数1〜23のアルカノールアミン塩である。
特に好ましいのは、炭素数1〜36の脂肪族アミン塩、炭素数4〜10のアミジン塩及び炭素数1〜23のアルカノールアミン塩であり、最も好ましいのは、DABCO、DBU、DBN、1H−イミダゾール、2−メチル−1H−イミダゾール、2−エチル−1H−イミダゾール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール及び3−アミノ−1−プロパノールの塩である。
【0015】
アニオン性界面活性剤(B)は、酸となっていても、塩を形成してもよいが、工業的な入手のし易さの観点から、塩を形成していることが好ましい。
【0016】
高分子アニオン性界面活性剤(B1)のMwは、パーティクルの再付着防止性及び低泡性の観点等から、通常1,000〜2,000,000、好ましくは1,200〜1,000,000、さらに好ましくは1,500〜80,000、特に好ましくは2,000〜50,000である。
【0017】
尚、本発明におけるMw及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)によって、ポリエチレンオキサイドを基準物質として40℃で測定される。
具体的には、装置本体:HLC−8120(東ソー株式会社製)、カラム:東ソー株式会社製TSKgel α6000、G3000 PWXL、検出器:装置本体内蔵の示差屈折計検出器、溶離液:0.5%酢酸ソーダ・水/メタノール(体積比70/30)、溶離液流量:1.0mL/分、カラム温度:40℃、試料:0.25%の溶離液溶液、注入量:200μL、標準物質:東ソー(株)製TSKTANDARD POLYETHYLENE OXIDE、データ処理ソフト:GPC−8020modelII(東ソー株式会社製)で測定される。
上記及び以下において特に規定しない限り、%は重量%を表す。
【0018】
高分子アニオン性界面活性剤(B1)の製造方法としては、
(1)スルホン酸基を有する不飽和モノマーを用いてラジカル重合により製造する方法、
(2)高分子化合物にスルホン酸基を導入することにより製造する方法、
(3)分子内にスルホン酸基を有する芳香族化合物を用いてホルムアルデヒドとの重縮合反応により製造する方法等の下記の公知の方法が挙げられる。
【0019】
(1)スルホン酸基を有する不飽和モノマーを用いてラジカル重合により製造する方法:
スルホン酸基を有する不飽和モノマー[スチレンスルホン酸及び2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸等]と必要によりその他の不飽和モノマー(スチレン、アクリル酸及びアクリルアミド等)からなるモノマーと、ラジカル開始剤(過硫酸塩、アゾビスアミジノプロパン塩及びアゾビスイソブチルニトリル等)をモノマーに対して0.1〜30%用い、水又はアルコール系溶剤等の溶媒中で30〜150℃の温度で重合する。必要であれば、メルカプタン等の連鎖移動剤を用いてもよい。
【0020】
(2)高分子化合物にスルホン酸基を導入することにより製造する方法:
上記(1)の方法等で不飽和結合を有する高分子化合物(ポリスチレンスルホン酸等)を得た後に、下記の方法により高分子化合物にスルホン酸基を導入する方法(以下、スルホン化と記載)が挙げられる。
【0021】
スルホン化反応法としては、例えば、反応溶剤(1,2―ジクロロエタン、メチレンジクロリド、塩化エチル、四塩化炭素、1,1―ジクロルエタン、1,1,2,3−テトラクロルエタン、クロロホルム及びエチレンジブロミド等のスルホン化に不活性な溶剤)、スルホン化剤(無水硫酸及びクロルスルホン酸等)を仕込んだ後、0〜50℃で反応させ、必要により溶剤をろ過又は留去させることによりスルホン酸基が導入された高分子化合物を得ることができる。
この時のスルホン化剤の使用量(モル比)は、高分子化合物を構成する不飽和モノマーのモル数に対して、0.5〜3が好ましく、さらに好ましくは1〜2.5である。溶剤の使用量(重量%)は、該高分子化合物の分子量にもよるが、原料の高分子化合物に対して通常1〜30、好ましくは2〜20である。
【0022】
得られた高分子化合物の構成モノマー単位当たりのスルホン化率(モル%)は、水への溶解性の観点等から、50〜100が好ましく、さらに好ましくは80〜99である。尚、スルホン化率は、高分子化合物中の構成モノマー単位当たり、いくつのスルホン酸基が導入されたかを表す指標であり、例えば、ポリスチレンのスルホン化物の場合、スルホン化率が100%とは、ポリスチレン中の全ての芳香族環に対して1つのスルホン酸基が導入されたことを意味する。
スルホン化率は、公知の方法によって求めることができ、例えば元素分析により炭素原子と硫黄原子との比率を測定する方法や、結合硫酸量(JIS K3362:1998のアニオン界面活性剤の定量:対応ISO 2271)を測定する方法により求められる。
【0023】
(3)分子内にスルホン酸基を有する芳香族化合物を用いてホルムアルデヒドとの重縮合反応により製造する方法:
スルホン酸基を有する芳香族化合物(ナフタレンスルホン酸及びアントラセンスルホン酸メチルナフタレンスルホン酸等)と、必要によりその他の化合物(ナフタレン、フェノール及びクレゾール等)や尿素、触媒として用いる酸(硫酸等)又はアルカリ(水酸化ナトリウム等)を反応容器に仕込み、70〜90℃の攪拌下で所定量のホルマリン水溶液(例えば37重量%水溶液)を1〜4時間かけて滴下し、滴下後、還流下で3〜30時間攪拌して冷却する方法が挙げられる。
【0024】
本発明の電子材料用洗浄剤に用いられるキレート剤(C)としては、アミノポリカルボン酸(塩)(C1)、ヒドロキシカルボン酸(塩)(C2)、シクロカルボン酸(塩)(C3)、エーテルカルボン酸(塩)(C4)、その他カルボン酸(塩)(C5)、ホスホン酸(塩)(C6)、縮合リン酸(塩)(C7)等が挙げられる。
【0025】
アミノポリカルボン酸(塩)(C1)としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)(塩)、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸(TTHA)(塩)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)(塩)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(DHEDDA)(塩)、ニトリロ酸酢酸(NTA)(塩)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)(塩)、β−アラニンジ酢酸(塩)、アスパラギン酸ジ酢酸(塩)、メチルグリシンジ酢酸(塩)、イミノジコハク酸(塩)、セリンジ酢酸(塩)、ヒドロキシイミノジコハク酸(塩)、ジヒドロキシエチルグリシン(塩)、アスパラギン酸(塩)及びグルタミン酸(塩)等が挙げられる。
【0026】
ヒドロキシカルボン酸(塩)(C2)としては、例えば、ヒドロキシ酢酸(塩)、乳酸(塩)、酒石酸(塩)、リンゴ酸(塩)、ヒドロキシ酪酸(塩)、グリセリン酸(塩)、クエン酸(塩)、グルコン酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、イソアスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)、サリチル酸(塩)及び没食子酸(塩)等が挙げられる。
【0027】
シクロカルボン酸(塩)(C3)としては、例えば、ピロメリット酸(塩)、ベンゾポリカルボン酸(塩)及びシクロペンタンテトラカルボン酸(塩)等が挙げられる。
【0028】
エーテルカルボン酸(塩)(C4)としては、例えば、カルボキシメチルタルトロネート、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、酒石酸モノサクシネート及び酒石酸ジサクシネート等が挙げられる。
【0029】
その他カルボン酸(塩)(C5)としては、例えば、マレイン酸(塩)、フマル酸(塩)及びシュウ酸(塩)等が挙げられる。
【0030】
ホスホン酸(塩)(C6)としては、例えば、メチルジホスホン酸(塩)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(塩)、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸(塩)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(塩)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、トリアミノトリエチルアミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(塩)、トランス−1、2−シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)、グリコールエーテルジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)及びテトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)(塩)等が挙げられる。
【0031】
縮合リン酸(塩)(C7)としては、例えば、ピロリン酸(塩)、メタリン酸(塩)、トリポリリン酸(塩)及びヘキサメタリン酸(塩)等が挙げられる。
等が挙げられる。
【0032】
キレート剤(C)は、酸として使用しても、中和塩として使用しても良い。
なお、キレート剤(C)が塩を形成する場合、その塩としては、上述のアニオン性界面活性剤(B)の塩で例示したものと同様のカチオン成分を有するものが挙げられる。また、これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
これらの内でパーティクル除去性の観点から好ましいのは、(C1)、(C2)、(C6)、(C7)及びこれらの塩であり、さらに好ましいのは(C1)、(C6)、(C7)及びこれらの塩である。
特に好ましいのはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)(塩)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)(塩)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(DHEDDA)(塩)、ニトリロ酸酢酸(NTA)(塩)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)(塩)、アスパラギン酸ジ酢酸(塩)、アスパラギン酸(塩)、グルタミン酸(塩)、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸(塩)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(塩)及びメタリン酸(塩)及びヘキサメタリン酸(塩)である。
最も好ましいのはジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)(塩)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(DHEDDA)(塩)、ニトリロ酸酢酸(NTA)(塩)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)(塩)、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸(塩)及びエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)(塩)である。
【0034】
本発明における水としては、金属不純物による2次汚染を防止する観点から、特にイオン交換水(導電率0.2μS/cm以下)、又は超純水(電気抵抗率18MΩ・cm以上)が好ましい。
尚、本発明の含有量の部数の説明において水以外の成分を有効成分と定義する。
【0035】
本発明の洗浄剤における(A)の含有量は、洗浄性の観点から、洗浄剤の有効成分の重量に基づいて、好ましくは5〜90%、さらに好ましくは10〜85%、特に好ましくは20〜60%である。
【0036】
本発明の洗浄剤における(B)の含有量は、洗浄性の観点から、洗浄剤の有効成分の重量に基づいて、好ましくは0.1〜50%、さらに好ましくは1〜30%、特に好ましくは3〜25%である。
【0037】
本発明の洗浄剤における(C)の含有量は、洗浄性の観点から、洗浄剤の有効成分の重量に基づいて、好ましくは0.1〜50%、さらに好ましくは0.5〜40%、特に好ましくは1〜30%である。
【0038】
また、特にパーティクルの除去性の観点から、(C)に対する(B)の重量比率[(B)/(C)]は、0.1〜7が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5、特に好ましくは0.2〜2、最も好ましくは0.3〜1である。
【0039】
本発明の洗浄剤の使用時の有効成分濃度は、洗浄性の観点から、0.01〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜20重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%である。
【0040】
本発明の洗浄剤の25℃でのpHは、パーティクルや有機物に対する洗浄性と金属汚染物の除去性の観点から、好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.5〜0.5、最も好ましくは2.0〜0.8である。
【0041】
本発明の洗浄剤は、その効果を損なわない範囲において、さらに親水性有機溶剤(D)、スルホン酸基又はその塩基を有するアニオン性界面活性剤(B)以外の界面活性剤(E)、3価以上の多価アルコール、還元剤及びその他の添加剤からなる群から選ばれる1種以上の成分を含有することができる。
【0042】
親水性溶剤(D)は、洗浄剤の製品安定性を高める効果とリンス性を高める効果を有する。
(D)としては、20℃における水に対する溶解度[(D)/100gH2O]が3以上、好ましくは10以上の有機溶剤が挙げられる。
(D)の具体例としては、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等);スルホン{ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン及び2,4−ジメチルスルホラン等};アミド{N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルプロピオンアミド等};ラクタム{N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン及びN−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン等};ラクトン{β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びδ−バレロラクトン等};アルコール{メタノール、エタノール及びイソプロパノール等};グリコール及びグリコールエーテル{エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びトリエチレングリコールジエチルエーテル等};オキサゾリジノン(N−メチル−2−オキサゾリジノン及び3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノン等);ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル及びメタクリルニトリル等);カーボネート(エチレンカーボネート及びプロピオンカーボネート等);ケトン(アセトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン及びジアセトンアルコール等);環状エーテル(テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン等)等が挙げられる。
(D)は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(D)の内で、リンス性の観点等から、グリコール及びグリコールエーテルが好ましく、さらに好ましいのは、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテルである。
【0044】
本発明の洗浄剤のリンス性を高める目的で、親水性溶剤(D)の含有量は、洗浄剤の有効成分の重量に基づいて、好ましくは1〜70重量%、さらに好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。
【0045】
電子材料基板上の洗浄剤のぬれ性を高める目的と分散性を高める目的で、本発明の洗浄剤に、さらにノニオン性界面活性剤(E)を含有させることが好ましい。
【0046】
このようなノニオン性界面活性剤(E)としては、高級アルコール、フェノール、アルキルフェノール、脂肪酸、脂肪族アミンなどのアルキレンオキサイド付加物(E1)、アルコールの脂肪酸エステル(E2)、脂肪酸アルカノールアミド(E3)が挙げられる。
【0047】
(E1)としては、高級アルコールの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数1〜30)、フェノールもしくはアルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物(付加モル数1〜30)、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物(付加モル数1〜30)、脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(付加モル数1〜30)、アルキレングリコールのアルキレンオキサイド付加物(付加モル数5〜200)、ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量200〜4,000)のエチレンオキサイド付加物(付加モル数1〜100)、ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量200〜4,000)のプロピレンオキサイド付加物(付加モル数1〜100)、及びポリオキシエチレングリコール(数平均分子量60〜2,000)のアルキル(炭素数1〜20)アリルエーテル;ソルビタンモノラウレートエチレンオキサイド付加物(付加モル数1〜30)、ソルビタンモノオレートエチレンオキサイド付加物(付加モル数1〜30)等の多価アルコールの脂肪酸(炭素数8〜24)エステルのエチレンオキサイド付加物(付加モル数1〜30)等が挙げられる。
【0048】
(E2)としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル等が挙げられる。
【0049】
(E3)としては、ラウリン酸モノエタノールアミド及びラウリン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
【0050】
(E)のうち、電子材料用基板に対する洗浄剤のぬれ性及び有機物除去性等の観点から、好ましいのは(E1)であり、さらに好ましいのは高級アルコールの炭素数2〜3のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数2〜20)、フェノールもしくはアルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物(付加モル数2〜20)及び炭素数9〜18の脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(付加モル数2〜20)である。
【0051】
本発明の洗浄剤がノニオン性界面活性剤(E)を含有する場合、その含有量は、本発明の洗浄剤の有効成分の重量に基づいて、好ましくは0.1〜10%、更に好ましくは0.2〜5%、特に好ましくは0.3〜3%である。
【0052】
本発明の洗浄剤は、その効果を損なわない範囲において、前述のスルホン酸基又はその塩基を有するアニオン性界面活性剤(B)及びノニオン性界面活性剤(E)以外の界面活性剤(F)を含有することができる。
界面活性剤(F)としては、(B)以外のアニオン性界面活性剤(F1)、カチオン性界面活性剤(F2)、及び両性界面活性剤(F3)が挙げられる。
【0053】
(F1)としては、硫酸エステル(塩)基、リン酸エステル(塩)基、ホスホン酸(塩)基及びカルボン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する高分子型及び低分子型アニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0054】
(F2)としては、4級アンモニウム塩型の界面活性剤、アミン系界面活性剤等が挙げられる。
【0055】
(F3)としては、ベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤、アミノスルホン酸塩型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
上記の界面活性剤(F)のうち、洗浄性の観点から好ましいのは、(F1)であり、さらに好ましいのは、ポリアクリル酸(塩)、メタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル/アクリル酸共重合体の塩、及び2−エチルヘキサノール硫酸エステル(塩)である。
なお(F)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、アニオン性界面活性剤(F1)が塩を形成する場合、その塩としては上述した(B)の塩で例示したものと同様のカチオン成分を有するものが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明の洗浄剤がその他の界面活性剤(F)を含有する場合、その含有量は、本発明の洗浄剤の有効成分の重量に基づいて、好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.2〜5%、特に好ましくは0.3〜3%である。
【0058】
本発明の洗浄剤には、洗浄性を高める目的で、3価以上の多価アルコールを加えてもよい。
3価以上の多価アルコールとしては脂肪族多価アルコール、脂肪族多価アルコールの脱水縮合物、糖類、糖アルコール、トリスフェノール等が挙げられ、好ましいのはグリセリン、サッカロース及びソルビトールである。
【0059】
本発明の洗浄剤には、洗浄剤のエッチング性コントロール及び洗浄剤中のイオンによる基板の再汚染防止の目的で、還元剤を加えてもよい。
これらの還元剤としては、アルデヒド類、アルカノールアミン、フェノール化合物、チオール系還元剤、硫黄のオキソ酸類及びリンのオキソ酸類が好ましい。
【0060】
必要に応じて加えることができるその他の添加剤としては、酸化防止剤、防錆剤、pH調整剤、緩衝剤、消泡剤、防腐剤及びハイドロトロープ剤等が挙げられる。
【0061】
本発明の洗浄剤中のNa、K、Ca、Fe、Cu、Al、Pb、Ni及びZn原子の各金属含有量は、金属汚染を防ぐ観点から、洗浄剤の有効成分の重量に基づいて20ppm以下が好ましく、さらに好ましくは10ppm以下、特に好ましくは5ppm以下である。
これらの金属原子の含有量の測定方法としては、公知の方法、例えば原子吸光法、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法及びICP質量分析法が利用できる。
【0062】
本発明の洗浄剤は、電子材料を洗浄するための洗浄剤であるが、洗浄の対象となる電子材料としては、磁気ディスク基板(ガラス基板、アルミニウム基板及びNi−Pメッキが施されたアルミニウム基板)、フラットパネルディスプレイ基板(液晶パネル用のガラス基板、カラーフィルター基板、アレイ基板、プラズマディスプレイ用基板及び有機EL用基板等)、半導体基板(半導体素子及びシリコンウェハ等)、化合物半導体基板(SiC基板、GaAs基板、GaN基板、AlGaAs基板等)、サファイヤ基板(LED等)、フォトマスク用基板、太陽電池用基板(シリコン基板及び薄膜型太陽電池用ガラス基板等)、光学レンズ、プリント配線基板、光通信用ケーブル、微小電気機械システム(MEMS)並びに水晶振動子等が挙げられる。
【0063】
洗浄の対象となる電子材料としては、磁気ディスク用ガラス基板、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板(液晶パネル用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板及び有機EL用ガラス基板)、フォトマスク用ガラス基板、光学レンズ及び薄膜型太陽電池用ガラス基板が特に好適である。
【0064】
洗浄対象物(汚れ)は、油分(クーラント等)、人体からの汚れ(指紋及び皮脂等)、可塑剤(ジオクチルフタレート等)、有機パーティクル等の有機物並びに無機パーティクル[研磨剤(コロイダルシリカ、アルミナ、酸化セリウム及びダイヤモンド等)及び研磨屑(ガラスカレット等)等]等の無機物が挙げられる。
【0065】
本発明の洗浄剤は、パーティクルの除去性に極めて優れていることから、上記基板の製造工程の内、研磨剤、研磨屑及び研削屑等のパーティクルの除去を目的とする洗浄工程で使われることが好ましく、より具体的には研削工程後の洗浄工程、研磨工程後の洗浄工程での洗浄剤として適用することが好ましい。
また、基板表面に大気中に浮遊する汚れ(パーティクル及び有機物汚れ等)が強固に付着することを防止する為に、上記の洗浄工程前後において当該基板を本発明の洗浄剤に浸漬してもよい。
【0066】
前記の研磨剤としてアルミナ、シリカ、酸化セリウム、ダイヤモンドなどを用いて研磨した後の基板を洗浄の対象とする電子材料とすると、本発明の洗浄剤の効果が特に発揮されやすい。
【0067】
本発明の洗浄剤を用いた洗浄方式としては、超音波洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、ブラシ洗浄、浸漬洗浄、浸漬揺動洗浄及び枚葉式洗浄が挙げられ、いずれの方式であっても本発明の洗浄剤の効果が発揮されやすい。
【0068】
本発明の洗浄剤を使用する際の洗浄温度は、洗浄性の観点から、10〜80℃が好ましく、さらに好ましくは15〜60、特に好ましくは20〜50である。
【0069】
本発明の洗浄剤で洗浄した後の電子材料表面の表面粗さ(Ra)は、電子材料の表面平坦性の観点から、好ましくは0.5nm以下、さらに好ましくは0.001〜0.3nm、特に好ましくは0.05〜0.25nmである。
尚、表面粗さ(Ra)は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、E−sweepを用いて下記の条件により測定される。
測定モード :DFM(タッピングモード)
スキャンエリア:10μm×10μm
走査線数 :256本(Y方向スキャン)
補正 :X,Y方向のフラット補正あり
【0070】
本発明の電子材料の製造方法は、前記の洗浄剤で電子材料を洗浄する工程を含む電子材料の製造方法であり、特に磁気ディスク基板、フラットパネルディスプレイ基板、フォトマスク基板、光学レンズ及び太陽電池用基板の製造方法として好適である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、部は重量部を意味する。
なお、以下における高分子のGPCによるMwは前述の条件により測定し、超純水は比抵抗値が18MΩ以上のものを使用した。
【0072】
[製造例1]
撹拌、温度調節及び還流が可能な反応容器にエチレンジクロライド100部を仕込み、攪拌下、窒素置換した後に90℃まで昇温し、エチレンジクロライドを還流させた。スチレン120部と、予め2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.7部をエチレンジクロライド20部に溶かした開始剤溶液を、それぞれ別々に6時間かけて同時に反応容器内に滴下し、滴下終了後さらに1時間重合を行った。
重合後、窒素シール下で20℃に冷却した後、温度を20℃に制御しながら無水硫酸105部を10時間かけて滴下し、滴下終了後さらに3時間スルホン化反応させた。反応後、溶媒を留去して固化させた後、超純水345部を投入して溶解し、ポリスチレンスルホン酸水溶液を得た。
得られたポリスチレンスルホン酸水溶液を40%水酸化ナトリウム水溶液(約110部)でpHが7になるまで中和し、超純水で濃度調整することにより、高分子アニオン性界面活性剤であるポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩(B−1)の40%水溶液を得た。
尚、(B−1)のMwは、40,000、スルホン化率は97%であった。
【0073】
[製造例2]
攪拌及び温度調節が可能な反応容器にナフタレンスルホン酸21部及び超純水10部を仕込み、撹拌下、系内の温度を80℃に保ちながら、37%ホルムアルデヒド8部を3時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃に昇温して25時間反応した後、室温(約25℃)まで冷却して水浴中、温度を25℃に制御しながらDBUを徐々に加え、pH6.5に調整した(DBU約15部使用)。超純水を加えて固形分を40%に調整して、高分子アニオン性界面活性剤であるナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のDBU塩(B−2)の40%水溶液を得た。
尚、(B−2)のMwは、5,000であった。
【0074】
[製造例3]
攪拌及び温度調節が可能な反応容器にイソプロピルアルコール300部及び超純水100部を仕込み、窒素置換後、75℃に昇温した。撹拌下で、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸227部、アクリル酸78部及び超純水131部からなる70%モノマー水溶液436部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートの15%イソプロピルアルコール溶液95部を3.5時間かけて同時に滴下した。
滴下終了後、75℃で5時間撹拌した後、系内が固化しないように超純水を間欠的に投入し、イソプロピルアルコールが検出できなくなるまで水とイソプロピルアルコールの混合物を留去した。
得られたアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/アクリル酸共重合体水溶液に、温度を25℃に制御しながらDBUを徐々に加えてpH6.5に調整して(DBU約280部使用)超純水で濃度調整することにより、高分子アニオン性界面活性剤であるアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/アクリル酸共重合体DBU塩(B−3)の40%水溶液を得た。
尚、(B−3)のMwは8,000であった。
【0075】
[製造例4]
製造例1で用いた40%水酸化ナトリウム水溶液の代わりに2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールを用いてpHが6になるまで中和した以外は製造例1と同様にして製造し、高分子アニオン性界面活性剤であるポリスチレンスルホン酸2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩(B−4)の40%水溶液を得た。
尚、(B−4)のMwは、40,000、スルホン化率は97%であった。
【0076】
[製造例5]
製造例2で用いたDBUの代わりにDBNを用いてpHが7になるまで中和した以外は製造例2と同様にして製造し、高分子アニオン性界面活性剤であるナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のDBN塩(B−5)の40%水溶液を得た。
尚、(B−5)のMwは、5,000であった。
【0077】
[製造例6]
製造例3で用いたDBUの代わりに2−メチル−1H−イミダゾールを用いてpHが7になるまで中和した以外は製造例3と同様にして製造し、高分子アニオン性界面活性剤であるアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/アクリル酸共重合体2−メチル−1H−イミダゾール塩(B−6)の40%水溶液を得た。
尚、(B−6)のMwは8,000であった。
【0078】
[製造例7]
オクチルベンゼンスルホン酸136部及び超純水245部をビーカーに仕込み、均一になるまで溶解した。得られたオクチルベンゼンスルホン酸水溶液にDBN(約65部)を徐々に加えてpHが7になるまで中和し、超純水で濃度調整することにより、アニオン性界面活性剤であるオクチルベンゼンスルホン酸DBN塩(B−7)の40%水溶液を得た。
【0079】
[製造例8]
撹拌及び温度調節可能な耐圧反応容器に、ラウリルアルコール186部(1.0モル部)及び水酸化カリウム0.5部を仕込み、100℃、30mmHg以下の減圧下で30分間脱水した。エチレンオキサイド396部(9.0モル部)を、反応温度160℃を保ちながら、3時間かけて滴下した後、160℃で2時間熟成し、液状の粗製ポリエーテルを得た。この粗製ポリエーテルを約80℃まで冷却し、超純水6部及び陽イオン交換樹脂{オルガノ株式会社製、アンバーライトIR120B(I)}100部を加えて、室温(約20℃)で30分間撹拌した後、減圧濾過及び脱水を行い、非イオン性界面活性剤であるラウリルアルコールのエチレンオキサイド9モル付加物(E−1)を得た。
【0080】
[製造例9]
撹拌及び温度調節可能な耐圧反応容器に、ラウリルアミン296部(1.6モル部)を仕込み、アルゴンガスで置換してから減圧にし、95℃に昇温した。同温度にてエチレンオキサイド140.8部(3.2モル部:アミン1モル部に対して2.0モル部)を耐圧反応容器の内圧が0.3MPa以上にならないようにして、徐々に滴下した。約1.5時間の誘導期間を経て90〜110℃の範囲で温度制御しながら計4時間反応させた。滴下終了後、95℃で耐圧反応容器の内圧が滴下開始時と同じ圧力を示すまで30分反応を行った。
得られたラウリルアミンのエチレンオキサイド2.0モル付加物(X−1)にテトラメチルエチレンジアミン0.8部[(X−1)に対して純分0.183%]を空気が混入しないように添加し、95℃にて1時間減圧脱水した。
温度を70℃に下げてからエチレンオキサイド563.2部(12.8モル部:アミン1モル部に対して8.0モル部)を耐圧反応容器の内圧が0.2MPa以上にならないようにして、温度を70〜90℃に温度制御しながら、3時間かけて滴下した。
滴下終了後、70℃で耐圧反応容器の内圧が滴下開始時と同じ圧力を示すまで30分反応を行い、非イオン性界面活性剤であるラウリルアミンのエチレンオキサイド10モル付加物(E−2)を得た。
【0081】
[比較製造例1]
攪拌及び温度調節が可能な反応容器にイソプロピルアルコール300部及び超純水100部を仕込み、窒素置換後、75℃に昇温した。撹拌下で、アクリル酸の75%水溶液407部及びジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートの15%イソプロピルアルコール溶液95部を3.5時間かけて同時に滴下した。
滴下終了後、75℃で5時間撹拌した後、系内が固化しないように超純水を間欠的に投入し、イソプロピルアルコールが検出できなくなるまで水とイソプロピルアルコールの混合物を留去した。得られたポリアクリル酸水溶液をDBU(約450部)でpHが7になるまで中和し、超純水で濃度調整することにより、アニオン性界面活性剤であるポリアクリル酸DBU塩(F−1)の40%水溶液を得た。
尚、(F−1)のMwは10,000であった。
【0082】
[比較製造例2]
比較製造例1で用いたDBUの代わりに40%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHが7になるまで中和した以外は比較製造例1と同様にして製造し、アニオン性界面活性剤であるポリアクリル酸Na塩(F−2)の40%水溶液を得た。
尚、(F−2)のMwは10,000であった。
【0083】
[実施例1〜15及び比較例1〜8]
表1および表2に記載の各成分と配合部数で、ビーカーを用いて20℃で均一混合して実施例1〜15及び比較例1〜8の洗浄剤を作製した。
但し、表1および表2に記載の(A)〜(E)の部数は有効成分の部数であり、超純水の部数は(B−1)〜(B−7)及び(F−1)、(F−2)中の水を含む。
【0084】
尚、表1および表2中の成分の略号は下記の通りである。
DTPA:ジエチレントリアミンペンタ酢酸
HEDP:1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸
EDTMP:エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
DEGB:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
TEGM:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
【0085】
<物性測定と性能評価>
実施例1〜15及び比較例1〜8の洗浄剤を、予め超純水で20倍量に希釈したものを試験用の洗浄剤として用いて、以下の方法で、pH、洗浄性試験(1)、洗浄性試験(2)、分散性、金属腐食性、起泡性、リンス性及びぬれ性を測定、評価した。
また硬水に対する希釈安定性については、実施例1〜15及び比較例1〜8の洗浄剤をそのまま使用した。
測定結果及び評価結果を表1および表2に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
<pHの測定>
pHメーター(株式会社堀場製作所製、M−12)を用いて測定温度25℃で測定した。
【0089】
<洗浄性試験(1)>
研磨剤としての市販のコロイダルシリカスラリー(平均粒径約30nm)及び研磨布を用いて、2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板を研磨した後、窒素でブローすることにより、汚染基板を作製した。
試験用の洗浄剤1,000部をガラス製ビーカーにとり、作製した汚染基板を浸漬し、超音波洗浄機(200kHz)内で、30℃、5分間の洗浄を行った。洗浄後、基板を取り出し、超純水で十分にリンスを行った後、窒素ガスでブローして乾燥し、下記の判定基準に従い、基板表面の洗浄性を微分干渉顕微鏡(Nikon社製、OPTIPHOT−2、倍率400倍)で評価した。
尚、本評価は大気からの汚染を防ぐため、クラス1,000(HED−STD−209D、米国連邦規格、1988年)のクリーンルーム内で実施した。
◎:除去率約90%以上
○:除去率約70%〜90%程度
△:除去率約50%〜70%程度
×:除去率約50%未満
【0090】
<洗浄性試験(2)>
研磨剤として市販の酸化セリウムスラリー(平均粒径約250nm)を以外は洗浄性試験(1)と同様の評価方法及び判定基準で評価した。
【0091】
<分散性>
洗浄性試験(2)の評価で用いた酸化セリウムスラリー10gと試験用の洗浄剤90gをガラス製容器に秤量した。超音波洗浄機(200kHz)を用いて30℃、30分間超音波を照射し、容器内のスラリーを分散させた。超音波洗浄機から取り出し、室温下(23℃)で静置し、下記の判定基準に従い評価した。
◎:5日以上分散状態を保つ。
○:3〜4日分散状態を保つ。
△:1〜2日分散状態を保つ。
×:1日未満で分離する。
【0092】
<金属腐食性>
試験用の洗浄剤100部をポリプロピレン製容器にとり、この中にステンレス製テストピース(SUS304製、大きさ5cm×2.5m、厚さ0.1cm)を浸漬した。容器を密栓し、23℃に温調された室内で3日間放置した後、溶液中に溶け出した鉄イオンの含量(ppm)を高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(VARIAN社製、Varian730−ES)を用いて分析した。溶出量が少ないほど金属腐食性が低い。
尚、本試験前の試験用の洗浄剤中の鉄イオン含量は、いずれも検出限界(0.02ppm)以下であった。
【0093】
<硬水に対する希釈安定性>
1,000部の超純水に、塩化カルシウム2水和物(和光純薬工業(株)製)3.3部及び塩化マグネシウム6水和物(和光純薬工業(株)製)1.5部を溶解して人工硬水を調製した。この人工硬水を用いて、洗浄剤を20倍量になるように希釈した。
目視にて下記の判定基準に従い評価した。濁りを生じなければ硬水に対する希釈安定性が高い。
◎:透明
○:ほとんど透明
×:濁りあり
【0094】
<振とう直後の起泡性と1分後の消泡性>
100mLのガラス製有栓メスシリンダー(JIS R3504「化学用体積計ガラス素材」の有栓メスシリンダーとして寸法が規定されたもの)に試験用の洗浄剤20mLを入れ、恒温水槽中で25℃に温調した後、有栓メスシリンダーの蓋を閉め、30秒間で60回上下に激しく振とうし、振とう直後と1分後のそれぞれの泡の量(mL)を測定した。
振とう直後の泡の量が少ないほど起泡性が低く、1分後の泡の量が少ないほど消泡性が高い。
【0095】
<リンス性>
予め試験に用いる2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板の重量(g)を小数点以下第5位まで測定した。
1Lのビーカーに試験用の洗浄剤1Lを入れ、恒温水槽中で25℃に温調した後、上記重量を測定したガラス基板を完全に浸漬させた。
30秒間浸漬した後にすばやく基板を取り出し、1Lの超純水中に5秒間浸漬した後、25℃で基板を吊り下げ約30分間自然乾燥させた。
乾燥後の基板重量を測定し、下式によりリンス性(mg)を算出して評価した。値が小さい(基板への洗浄剤の残留量が少ない)ほど、リンス性が高い。
【0096】
リンス性(mg)=[試験後の基板重量(g)−試験前の基板重量(g)]×10−3
【0097】
<ぬれ性>
2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板に対する試験用の洗浄剤の接触角(25℃、10秒後)を、全自動接触角計[協和界面科学株式会社製、PD−W]を用いて測定した。
接触角の値が小さいほど基板に対する洗浄剤のぬれ性が高いことを示す。
【0098】
表1および表2の結果から、実施例1〜15の本発明の洗浄剤はすべて電子材料上に付着したパーティクルの除去性に優れることがわかる。また、本発明の洗浄剤は研磨剤等のパーティクルの分散性にも優れることから、洗浄時におけるパーティクルの再付着防止性にも優れることが期待できる。
さらに本発明の洗浄剤は、比較例5又は6で使用されているスルファミン酸以外の酸を用いた洗浄剤と比べて金属腐食性が小さいことから、洗浄機等に用いられる金属に対しても腐食するおそれがない。また硬水に対する希釈安定性が高いことから、一般的な工業用水のような金属イオンを含有する水で希釈した場合においても析出物を生じるおそれが無く、ハンドリング性に優れるといった効果も有する。
また実施例の中で、親水性溶剤(D)を使用したもの(実施例7〜11及び実施例13〜15)はさらにリンス性に優れ、ノニオン性界面活性剤(E)を使用したもの(実施例4〜5及び実施例7〜15)は基板に対するぬれ性に優れることから、実際に使用する際に洗浄及びリンス時間の短縮の効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の電子材料用洗浄剤及び洗浄方法は、パーティクル(砥粒、ガラス粉、セラミック粉及び金属粉等)等を洗浄対象とする洗浄に好適に用いられる。
従って、本発明の電子材料用洗浄剤及び洗浄方法は、各種の電子材料の製造工程における洗浄工程において使用することができる。
電子材料としては、例えば磁気ディスク用基板(アルミ基板、NiP基板、ガラス基板、磁気ディスク及び磁気ヘッド等)、フラットパネルディスプレイ用基板(液晶パネル用のガラス基板、カラーフィルター基板、アレイ基板、プラズマディスプレイ用基板及び有機EL用基板等)、半導体用基板(半導体素子及びシリコンウェハ等)、化合物半導体基板(SiC基板、GaAs基板、GaN基板、AlGaAs基板等)、サファイヤ基板(LED等)、フォトマスク用基板、太陽電池用基板(単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板、薄膜型太陽電池用基板、単結晶化合物基板、多結晶化合物基板、有機系太陽電池基板)、光学レンズ、プリント配線基板、光通信用ケーブル、微小電気機械システム(MEMS)などが挙げられる。
特に電子材料が、磁気ディスク用ガラス基板、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光学レンズ又は薄膜太陽電池用ガラス基板である場合に本発明の電子材料用洗浄剤は好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルファミン酸(A)、分子内に少なくとも1個のスルホン酸基又はその塩基を有するアニオン性界面活性剤(B)、キレート剤(C)、及び水を必須成分として含有することを特徴とする電子材料用洗浄剤。
【請求項2】
25℃でのpHが3.0以下である請求項1記載の電子材料用洗浄剤。
【請求項3】
洗浄剤の有効成分の合計重量に基づいて、該スルファミン酸(A)の含有量が5〜90重量%、該アニオン性界面活性剤(B)の含有量が0.1〜50重量%、かつ該キレート剤(C)の含有量が0.1〜50重量%である請求項1又は2記載の電子材料用洗浄剤。
【請求項4】
(C)に対する(B)の重量比率[(B)/(C)]が、0.1〜7である請求項1〜3のいずれか記載の電子材料用洗浄剤。
【請求項5】
該(B)が、重量平均分子量が1,000〜2,000,000の高分子アニオン性界面活性剤(B1)である請求項1〜4のいずれか記載の電子材料用洗浄剤。
【請求項6】
該(B1)が、ポリスチレンスルホン酸、ポリ{2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸}、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸/(メタ)アクリル酸共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項5記載の電子材料用洗浄剤。
【請求項7】
該(C)が、アミノポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ホスホン酸、縮合リン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか記載の電子材料用洗浄剤。
【請求項8】
さらに、親水性溶剤(D)を含有する請求項1〜7のいずれか記載の電子材料用洗浄剤。
【請求項9】
さらに、ノニオン性界面活性剤(E)を含有する請求項1〜8のいずれか記載の電子材料用洗浄剤。
【請求項10】
該電子材料が、研磨剤としてシリカ、アルミナ又はダイヤモンドを用いて研磨した後の基板である請求項1〜9のいずれか記載の電子材料用洗浄剤。
【請求項11】
該電子材料が、磁気ディスク用ガラス基板、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光学レンズ、薄膜太陽電池用ガラス基板又は半導体基板である請求項1〜10のいずれか記載の電子材料用洗浄剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか記載の洗浄剤を用いて電子材料を洗浄する工程を含む電子材料の製造方法。

【公開番号】特開2010−163609(P2010−163609A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283693(P2009−283693)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】