説明

電子装置、電子機器及び電子装置の製造方法

【課題】MEMS構造体の可動部が固定部に密着するときにも可動部と固定部とを離すことができる電子装置を提供する。
【解決手段】基板2上の包囲壁26及び第1封止層33に覆われた空洞部36内に位置する可動部7bと、可動部7bと対向する場所に位置する第1封止層33と、を備え、可動部7bは基板2と第1封止層33との間に位置し、可動部7bと第1封止層33とは少なくとも一部が導電体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置、電子機器及び電子装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して形成した機能素子が基板上に設けられた空洞部に配置された電子装置が知られている。機能素子はマイクロ振動子やマイクロセンサー等であり、微小な構造体が振動や変形等の動作を行う。そして、機能素子が動作し易くするために空洞部内は減圧されている。
【0003】
空洞部を形成する方法が特許文献1に開示されている。これによると、基板上にMEMS構造体を形成しその上に層間絶縁膜を形成する。その後、貫通孔を有する第1被覆層がMEMS構造体の周囲の層間絶縁膜を覆うように形成する。続いて、第1被覆層の貫通孔を通してエッチング液を流動させることにより層間絶縁膜を除去してMEMS構造体の可動部を可動可能にする。最後に第1被覆層の貫通孔を第2被覆層で覆うことにより、MEMS構造体の周囲に密閉された空洞が形成される。以下第1被覆層を被覆部と称す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−105411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
密閉された空洞の中に形成されたMEMS構造体において、その製造過程もしくは動作過程において、構造体同士もしくは、構造体と空洞を形成する部位とが密着して離れなくなることがあった。このため、構造体が密着した状態を引き離すことができる電子装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかる電子装置であって、基板上の被覆部に覆われた空洞部内に位置する可動部と、前記可動部と対向する場所の前記被覆部に位置する蓋部と、前記基板と前記蓋部との間の前記被覆部に位置し、前記基板と前記蓋部とを絶縁する側壁絶縁膜と、を備え、前記可動部は前記基板と前記蓋部との間に位置し、前記可動部と前記被覆部の側壁絶縁膜より前記蓋部側の部分とは少なくとも一部が導電体であることを特徴とする。
【0008】
この電子装置によれば、被覆部に覆われた空洞部が基板上に設置されている。その空洞部内に可動部が配置されている。その可動部と対向する場所の被覆部は蓋部となっている。そして、可動部は被覆部と基板との間に位置している。可動部と蓋部とは導電体となっており、側壁絶縁膜によって絶縁されている。従って、可動部と蓋部とに電圧を印加することにより、可動部と蓋部とに静電気を蓄積させることができる。これにより、可動部と蓋部との間に引力を生じさせることができる。製造過程もしくは動作過程において、可動部が基板に密着して離れなくなることがあるが、このとき、可動部と蓋部との間に引力を生じさせて可動部と基板とを離すことができる。
【0009】
[適用例2]
上記適用例にかかる電子装置において、前記基板上に固定部をさらに備え、前記固定部は前記可動部と対向する場所に位置し少なくとも一部が導電体であることを特徴とする。
【0010】
この電子装置によれば、可動部と対向する場所に固定部が位置している。従って、可動部と固定部とに電圧を印加することにより、可動部と固定部とに静電気を蓄積させることができる。これにより、可動部と固定部との間に引力を生じさせることができる。その結果、可動部が蓋部に密着して離れなくなるときにも、可動部と固定部との間に引力を生じさせて可動部と蓋部とを離すことができる。
【0011】
[適用例3]
上記適用例にかかる電子装置において、前記側壁絶縁膜は前記可動部より前記蓋部側に位置することを特徴とする。
【0012】
この電子装置によれば、被覆部には基板側と蓋部側との間に側壁絶縁膜が配置されている。その側壁絶縁膜は基板側の被覆部と蓋部側の被覆部とを絶縁する。側壁絶縁膜は可動部より蓋部側に位置している。側壁絶縁膜は基板側の被覆部が形成された後の工程にて形成される。そして、側壁絶縁膜は広い膜を形成した後、被覆部と接する場所を残すようにエッチングして形成される。
【0013】
側壁絶縁膜が可動部より基板側に位置するとき、エッチングする前の側壁絶縁膜が可動部に接する可能性がある。そして、側壁絶縁膜をエッチングするときにエッチング液が可動部と触れるので、エッチング液によって可動部が損傷を受ける可能性がある。一方、本適用例では側壁絶縁膜が可動部より蓋側に位置している。従って、側壁絶縁膜を配置する場所と基板との間に所定の部材を配置することにより、エッチングする前の側壁絶縁膜が可動部に接しないように側壁絶縁膜を形成することができる。そして、側壁絶縁膜をエッチングした後で可動部の周囲の部材を取り除くことにより、側壁絶縁膜をエッチングするときにエッチング液が可動部に損傷を与えることを防止することができる。
【0014】
[適用例4]
上記適用例にかかる電子装置において、前記蓋部と前記可動部との間に印加する電圧を出力する電圧回路と、前記蓋部と前記可動部との間に前記電圧を印加するか否かを切替えるスイッチ部と、を有することを特徴とする。
【0015】
この電子装置によれば、電圧回路が電圧を形成し、スイッチ部を用いて蓋部と可動部との間に電圧を印加するか否かを切替えることができる。従って、蓋部と可動部との間に引力を作用させるか否かを制御することができる。
【0016】
[適用例5]
上記適用例にかかる電子装置において、前記固定部は固定電極であり、前記蓋部と前記可動部との間の距離である第1距離は前記可動部と前記固定電極との距離である第2距離より長いことを特徴とする。
【0017】
この電子装置によれば、第1距離は第2距離より長くなるように固定電極、可動部、蓋部が配置されている。これにより、可動部は蓋部より固定電極に近い場所に位置する。従って、可動部は蓋部より固定電極に密着し易くなる。可動部が蓋部と固定電極との両方に密着するとき、可動部と蓋部との間に引力を制御するスイッチ部と可動部と固定電極との間に引力を制御するスイッチ部とが必要となる。一方、本実施形態では可動部と蓋部との間に引力を制御するスイッチ部のみでよい。従って、スイッチ部の制御を簡便にすることができる。
【0018】
[適用例6]
上記適用例にかかる電子装置において、前記可動部を用いて波形を形成する発振回路を有することを特徴とする。
【0019】
この電子装置によれば、電子装置は発振回路を備えており、発振回路は可動部を用いて波形を形成することができる。可動部は固有振動数を有する。従って、発振回路は所定の周波数の波形を出力することができる。
【0020】
[適用例7]
本適用例にかかる電子機器は、発振回路を備えた電子機器であって、前記発振回路に上記に記載の電子装置を用いたことを特徴とする。
【0021】
この電子機器によれば、可動部及び蓋部の少なくとも一部が導電体である電子装置を備えている。従って、電子機器は可動部が基板と密着しても回復させて作動可能な電子装置を備えた電子機器とすることができる。
【0022】
[適用例8]
本適用例にかかる電子装置の製造方法であって、基板上及び前記基板上に形成された導電性の可動部上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、前記可動部を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する導電性の蓋部を形成する蓋部形成工程と、前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、前記開口部を封止する封止工程と、を有し、前記側壁形成工程は導電性の前記側壁部に前記側壁部の全周に渡って側壁絶縁膜を形成する工程を有することを特徴とする。
【0023】
この電子装置の製造方法によれば、層間絶縁膜形成工程において基板上及び基板上に形成された導電性の可動部上に層間絶縁膜を形成している。側壁形成工程では可動部を囲むように層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に導電性の側壁部を形成している。そして、導電性の側壁部の中または端の場所に側壁の全周に渡って側壁絶縁膜を形成している。蓋部形成工程では側壁部と側壁部に囲まれた層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する蓋部を形成している。保護膜形成工程では側壁部を取り巻く層間絶縁膜上に保護膜を形成している。空洞部形成工程では開口部からエッチング液を流入させて基板と側壁部と蓋部とに囲まれた場所の層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成している。封止工程では開口部を封止している。
【0024】
基板上には可動部が形成され、可動部を取り囲んで側壁が配置されている。側壁と重ねて蓋部が形成され、側壁と蓋部とに覆われた場所は空洞部が形成されている。従って、可動部の周囲は空洞部となっている。側壁は導電性の部分と側壁絶縁膜とが重ねて形成されている。従って、蓋部は基板側の被覆部と絶縁され、蓋部は可動部と絶縁される。そして、可動部と蓋部とに電圧を印加することにより、可動部と蓋部とに静電気を蓄積させることができる。これにより、可動部と蓋部との間に引力を生じさせることができる。可動部が基板に密着して離れなくなるとき、可動部と蓋部との間に引力を生じさせて可動部と基板とを離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態にかかわるレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図。
【図2】レゾネーターの要部模式断面図。
【図3】(a)はレゾネーターの回路構成を示すブロック図、(b)は、レゾネーターの製造方法を示すフローチャート。
【図4】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図5】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図6】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図7】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図8】第2の実施形態にかかわり、(a)及び(b)は、第2の実施形態にかかわるレゾネーターの要部模式断面図。
【図9】第3の実施形態にかかわる時計の構成を示す電気ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、振動素子を空洞部内に備えて所定の周波数の波形を出力するレゾネーターとこのレゾネーターを製造する特徴的な例について、図1〜図7に従って説明する。
【0027】
(レゾネーター)
図1はレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図である。図2(a)は図1のレゾネーターのA−A’線に沿う要部模式断面図であり、図2(b)及び図2(c)は図1のレゾネーターのB−B’線に沿う要部模式断面図である。最初にレゾネーター1について図1及び図2に従って説明する。電子装置としてのレゾネーター1は長方形の基板2を備えている。基板2の長手方向をX方向とし、基板2の平面方向でX方向と直交する方向をY方向とする。基板2の厚み方向をZ方向とする。基板2の材質は特に限定されないが、シリコン基板等の半導体基板、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、合成樹脂基板等の各種の基板を用いることができる。基板2上に半導体による集積回路を形成するときには、シリコン基板等の半導体基板を用いる。本実施形態では、例えば、シリコン基板を採用している。基板2の厚みは特に限定されないが本実施形態では例えば、200μm〜600μmの厚みを採用している。
【0028】
基板2上には第1下地層3が形成されている。第1下地層3としては、例えば、トレンチ絶縁層、LOCOS(Local oxidation of silicon)絶縁層、セミリセスLOCOS絶縁層を用いることができる。第1下地層3は、基板2上に形成された複数の素子間を電気的に絶縁する絶縁層となっている。
【0029】
第1下地層3の上の一部には第2下地層4が形成されている。第2下地層4の材質は、特に限定されないが二酸化シリコンの膜をエッチングするエッチング液に対して腐食され難い材質であれば良い。例えば、第2下地層4の材質にアルミナを用いることができる。これにより、第2下地層4は、第2下地層4上にてエッチング処理を行なうときのエッチングストッパー層として機能することができる。
【0030】
第2下地層4上の中央付近には機能素子としての振動素子5が設置されている。振動素子5は固定部としての固定電極6と可動電極7とを備えている。固定電極6は第2下地層4上に設置されている。可動電極7は固定保持部7aと可動部7bと支持部7cとを有する。固定保持部7aは第2下地層4上に形成され、可動部7bは固定電極6に対向する場所に配置されている。そして、支持部7cは、可動部7bと固定保持部7aとを連結するように配置され可動部7bを支持している。可動部7bは支持部7cにより支持された片持ち梁の構造になっている。これにより、可動部7bを振動させることにより、可動部7bと固定電極6との距離を変動させることができる。
【0031】
第2下地層4上には配線としての第1配線8と配線としての第2配線9とが設置されている。そして、第1配線8は固定電極6と接続され、第2配線9は可動電極7と接続されている。第1下地層3上には駆動回路10が設置され、第2下地層4上には第1中間端子11及び第2中間端子12が設置されている。第1配線8の一端は駆動回路10と接続され、第1配線8の別の他端は第1中間端子11と接続されている。第2配線9の一端は駆動回路10と接続され、第2配線9の別の他端は第2中間端子12と接続されている。そして、第1中間端子11と第2中間端子12との間の電圧を検出することにより、振動素子5に印加される電圧信号を検出することができる。
【0032】
駆動回路10はトランジスターやキャパシター等の電気素子によって構成され、振動素子5に駆動信号を出力する。第1下地層3上には第3中間端子13、第4中間端子14、第5中間端子15、第6中間端子16及び第7中間端子17が設置されている。そして、第3中間端子13と駆動回路10とは配線13aにより接続され、第4中間端子14と駆動回路10とは配線14aにより接続されている。同様に、第5中間端子15と駆動回路10とは配線15aにより接続され、第6中間端子16と駆動回路10とは配線16aにより接続されている。第7中間端子17と駆動回路10とは配線17aにより接続されている。
【0033】
第3中間端子13はグランドライン用の端子であり、第4中間端子14は電源供給用の端子である。そして、第5中間端子15は信号出力用の端子である。第6中間端子16は、可動電極7と固定電極6とが密着して可動電極7が振動しなくなったときに可動電極7を固定電極6から離す動作を指示する信号を入力する端子である。第7中間端子17は、可動電極7を固定電極6から離すために供給する電圧を出力する端子である。
【0034】
駆動回路10は所定の周波数の電圧信号を形成する回路であり、形成した電圧信号を第5中間端子15に出力する。換言すれば、レゾネーター1は、振動素子5と駆動回路10とが同じ基板2上に併設された発振器となっている。レゾネーター1のうち駆動回路10以外の部分を発振装置1aとする。
【0035】
第2下地層4上において振動素子5のY方向側には第1包囲壁18が配置され、振動素子5の−Y方向側には第2包囲壁19が配置されている。第1包囲壁18の一端は第1配線8の近くの場所まで延在し、第1包囲壁18の別の他端は第2配線9の近くの場所まで延在して配置されている。同様に、第2包囲壁19の一端は第1配線8の近くの場所まで延在し、第2包囲壁19の別の他端は第2配線9の近くの場所まで延在して配置されている。
【0036】
第1配線8を挟むように第1包囲壁18及び第2包囲壁19が接近して配置されている場所を第1貫通部8aとする。第1配線8において第1貫通部8aよりも振動素子5から離れる場所には絶縁膜8bが設置されている。絶縁膜8bは第1配線8の表面を酸化して形成された膜となっている。同様に、第2配線9を挟むように第1包囲壁18及び第2包囲壁19が接近して配置されている場所を第2貫通部9aとする。第2包囲壁19の近くには第8中間端子20が設置され、第2包囲壁19と第8中間端子20とは配線20aによって接続されている。さらに、第8中間端子20と駆動回路10とは配線20bによって接続されている。
【0037】
そして、第1貫通部8aでは第1配線8を覆うように第1絶縁層21が配置されている。そして、第1貫通部8aでは第1絶縁層21は第1配線8と第1包囲壁18との間及び第1配線8と第2包囲壁19との間に配置されている。これにより、第1配線8は第1包囲壁18及び第2包囲壁19と絶縁される。
【0038】
同様に、第2貫通部9aでも第2配線9を覆うように第1絶縁層21が配置されている。そして、第2貫通部9aでは第1絶縁層21は第2配線9と第1包囲壁18との間及び第2配線9と第2包囲壁19との間に配置されている。これにより、第2配線9は第1包囲壁18及び第2包囲壁19と絶縁される。
【0039】
振動素子5、第1配線8、第2配線9、第1中間端子11、第2中間端子12、第8中間端子20、第1包囲壁18及び第2包囲壁19の各部材の材質は同じ材質となっている。この材質は、電気伝導性があり二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難ければ良く特に限定されない。これらの材質には金属や電気伝導性のあるシリコン等を採用することができる。本実施形態では例えば、燐やホウ素等の不純物をドーピングすることにより電気伝導性が付与された多結晶シリコンを用いている。第3中間端子13〜第7中間端子17、配線13a〜配線17aの各部材の材質は導電性のある材料であればよく、例えば、多結晶シリコンや金属等を用いることができる。本実施形態では、例えば、アルミニウム銅合金を採用している。
【0040】
第1包囲壁18、第2包囲壁19、第1貫通部8a及び第2貫通部9aにおける第1絶縁層21上には第3包囲壁22が配置されている。該第3包囲壁22と重ねて第4包囲壁23が配置され、該第4包囲壁23と重ねて側壁絶縁膜24が配置されている。さらに、側壁絶縁膜24と重ねて第5包囲壁25が配置されている。側壁絶縁膜24により第4包囲壁23と第5包囲壁25とが絶縁されている。第3包囲壁22、第4包囲壁23、側壁絶縁膜24、第5包囲壁25は四角形の枠形状をしており、振動素子5の周囲を取り囲むように配置されている。第1包囲壁18、第2包囲壁19、第3包囲壁22、第4包囲壁23、側壁絶縁膜24、第5包囲壁25は振動素子5を取り囲む包囲壁26を構成している。
【0041】
第3包囲壁22、第4包囲壁23、第5包囲壁25の材質は、電気伝導性と構造的強度とがあり、二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難い材質で有れば良く、多結晶シリコン、アルミニウム、銅、タングステン、チタン等の金属やその合金を用いることができる。本実施形態では例えば、アルミニウムと銅との合金を採用している。
【0042】
側壁絶縁膜24の材質は電気絶縁性があり、二酸化シリコンをエッチングするエッチング液に対してエッチングされ難い材質であれば良い。これらの材質にはアルミナ、Si34、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、ノボラック樹脂、ジアゾナストキノン樹脂等を好適に用いることができる。本実施形態では、例えば、アルミナを採用している。
【0043】
第1包囲壁18、第2包囲壁19、第3包囲壁22、第4包囲壁23は共に電気伝導性のある材料からなり、電気的に接続している。そして、第8中間端子20は第2包囲壁19と電気的に接続している。従って、第1包囲壁18、第2包囲壁19、第3包囲壁22、第4包囲壁23及び第8中間端子20は同じ電位となる。第1配線8は第1絶縁層21を介して第1包囲壁18、第2包囲壁19、第3包囲壁22に囲まれている。第1絶縁層21は電気絶縁性のある材質からなっている。これにより、第1配線8は第1包囲壁18、第2包囲壁19、第3包囲壁22と電気的に絶縁されている。同様に、第2配線9も第1絶縁層21を介して第1包囲壁18、第2包囲壁19、第3包囲壁22に囲まれている。これにより、第2配線9は第1包囲壁18、第2包囲壁19、第3包囲壁22と電気的に絶縁される。
【0044】
包囲壁26の周囲には第1絶縁層21、第2絶縁層27、第3絶縁層28がこの順に積層された層間絶縁膜としての絶縁層29が配置されている。第1絶縁層21は第1包囲壁18及び第2包囲壁19の間から包囲壁26の周囲にかけて設置されている。絶縁層29の材質は電気絶縁性があってエッチング液によって除去可能であれば良く、例えば、二酸化シリコンを用いることができる。
【0045】
第1中間端子11〜第7中間端子17及び第8中間端子20の上には各端子と重ねて第1貫通電極30が配置され、第1貫通電極30と重ねて第2貫通電極31及び第3貫通電極32がこの順に配置されている。第1貫通電極30、第2貫通電極31、第3貫通電極32は導電体等からなりそれぞれ第1絶縁層21、第3絶縁層28を貫通する電極となっている。
【0046】
包囲壁26の上側には包囲壁26に蓋をするように被覆部及び蓋部としての第1封止層33が配置されている。第1封止層33には開口部としての貫通孔33aが複数形成されている。貫通孔33aの数及び大きさは特に限定されない。本実施形態では例えば、第1封止層33に16個の貫通孔33aが形成されている。
【0047】
第1封止層33のX側には第1封止層33と接続する配線33bが設置されている。この配線33bは第1貫通電極30及び第2貫通電極31を介して第7中間端子17と接続されている。これにより、駆動回路10は第1封止層33に所定の電圧を印加することができる。
【0048】
第1封止層33の材質は電気伝導性や構造的強度があり、二酸化シリコンをエッチングするエッチング液に対して耐腐され難い材質で有れば良く特に限定されない。本実施形態では例えば、チタン層、窒化チタン層、アルミニウム−銅合金層、窒化チタン層がこの順で積層された積層構造を採用している。
【0049】
第1封止層33上の外周に位置する部分と第3絶縁層28とに重ねて保護膜34が積層されている。この保護膜34は貫通孔33aを塞がないように配置される。保護膜34の材質は二酸化シリコンをエッチングするエッチング液に対して腐食され難い材料であれば良く、特に限定されない。保護膜34の材質としてTEOS(テトラ・エトキシ・シラン)酸化膜、窒化シリコン等を用いることができる。本実施形態では例えば、保護膜34の材質にTEOS酸化膜と窒化シリコンの積層膜を採用している。
【0050】
第1封止層33と重ねて第2封止層35が積層されている。第2封止層35は第1封止層33の貫通孔33aを塞いでいる。第2封止層35の材質としては貫通孔33aを塞げる強度のある膜を形成できれば良く、例えば、アルミニウム、チタン、タングステン、チタンニッケル合金等の金属を用いることができる。本実施形態では例えば、第2封止層35の材質にアルミニウムを採用している。第2封止層35の膜厚は特に限定されないが本実施形態では例えば、3μm程度に設定している。
【0051】
第2下地層4、包囲壁26、第1封止層33に囲まれた場所は空洞部36となっている。包囲壁26、第1封止層33は空洞部36を覆う被覆部に対応する。そして、振動素子5は空洞部36に設置されている。空洞部36の気圧は減圧されている。これにより、可動電極7の可動部7bは気体による抵抗が小さくなるので振動し易くなっている。そして、第1封止層33及び第2封止層35は、空洞部36が減圧した状態で空洞部36を封止する封止部材として機能している。
【0052】
第2貫通電極31と接続する配線33b上には電極パッド37の一つが設置され、保護膜34は電極パッド37を露出するように配置されている。保護膜34及び第2封止層35上には樹脂層38が積層されている。樹脂層38は電極パッド37と重ならないように配置される。該電極パッド37上から樹脂層38上にかけて配線39が設置されている。そして、配線39上には外部端子40が設置され、外部端子40は配線39と電気的に接続されている。
【0053】
樹脂層38の材質としては、ポリイミド樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)、PBO(ポリベンゾオキサゾール)等の樹脂を好適に用いることができる。樹脂層38の膜厚は特に限定されないが、例えば、10μm以上が好ましい。これにより、レゾネーターを実装する際に樹脂層38が破損しないように応力を吸収することができる。
【0054】
配線39の材質は特に限定されず電気伝導性を有する材質であれば良い。配線39には、例えば、チタン−タングステン合金層、銅層がこの順で積層された金属層や銅層、クロム層、アルミニウム層等の金属層の単層構造やこれらの層を積層した積層構造を用いてもよい。
【0055】
外部端子40の材質は特に限定されないが、電気伝導性を有していれば良く、各種類の金属を用いることができる。本実施形態では例えばハンダを採用している。外部端子40は略球状に形成されている。
【0056】
配線39及び樹脂層38上にレジスト層41が積層されている。レジスト層41は外部端子40の一部が露出するように形成されている。レジスト層41は配線39の酸化や腐食を防止し、塵等による電気的な不良を防ぐことができる。
【0057】
レゾネーター1は例えば上記のようにチップ状にした半導体基板からなる基板2の上方に外部端子40を直接設けることができる。そのため、レゾネーター1のパッケージサイズを、半導体チップとほぼ等しくすることができる。
【0058】
駆動回路10は第1配線8を介して固定電極6と接続され、第2配線9を介して可動電極7と接続されている。駆動回路10が振動素子5に電圧を印加することにより、固定電極6と可動電極7との間には静電気が作用する。そして、振動素子5に印加する電圧を変動させることにより可動電極7が振動する。これにより、固定電極6と可動電極7との間の静電容量を変動させることができる。そして、静電容量が変動する周波数特性は可動電極7の固有振動数によって設定される。従って、駆動回路10は振動素子5を用いて特定の周波数の電圧波形を形成することが可能になっている。
【0059】
空洞部36内は減圧されていることから、空気が充填されているときに比べて可動電極7は振動し易くなっている。さらに、第3包囲壁22は電気伝導性があり第8中間端子20を通じて所定の電圧に維持されている。第5包囲壁25及び第1封止層33も電気伝導性があり第7中間端子17を通じて所定の電圧に維持されている。従って、レゾネーター1の外部から雑音となる電磁波が伝播するときにも、包囲壁26及び第1封止層33が電磁波の伝播を遮ることができる。その結果、振動素子5は雑音となる電磁波の影響を受け難くすることができる。
【0060】
可動部7bと第1封止層33との間の距離を第1距離5aとする。そして、可動部7bと固定電極6との距離を第2距離5bとする。このとき、第1距離5aは第2距離5bより長い距離となっている。これにより、可動部7bは第1封止層33より固定電極6に近い場所に位置する。従って、可動部7bは第1封止層33より固定電極6に密着し易くなっている。
【0061】
図2(c)は、可動部が固定部に密着した状態を説明するための模式図である。図2(c)に示すように、可動部7bと固定電極6との間に液体が介在するとき、液体の表面張力により可動部7bが固定電極6に密着することがある。このとき、可動部7bは振動できなくなるので、駆動回路10は振動素子5を用いて特定の周波数の電圧波形を形成することができなくなる。
【0062】
駆動回路10は可動電極7と第2配線9によって接続されている。さらに、配線33b、第1貫通電極30、第2貫通電極31、第7中間端子17、配線17aを介して駆動回路10は第1封止層33と接続されている。そして、駆動回路10は可動電極7と第1封止層33とに電圧を印加することにより、可動電極7と第1封止層33との間の電位差を所定の電圧にすることができる。
【0063】
これにより、駆動回路10は、可動電極7と第1封止層33との間に静電気を作用させて可動電極7と第1封止層33との間に引力を形成させる。そして、可動部7bを第1封止層33に引き寄せることにより、可動部7bを固定電極6から離すことができる。
【0064】
図3(a)はレゾネーターの回路構成を示すブロック図である。図3(a)に示すように、レゾネーター1が備える駆動回路10は発振回路43と波形形成回路44とを有している。発振回路43は振動素子5と接続され、所定の周波数の波形を形成する回路となっている。そして、波形形成回路44は発振回路43が出力する波形を分周して波形の周波数を変更したり、波形の形状を変更する機能を備えている。例えば、三角波、矩形波、パルス波等の波形を出力する。波形形成回路44は、発振回路43が出力する波形を分周することにより発振回路43が出力する波形の周波数より低い周波数の波形を出力することが可能となっている。
【0065】
駆動回路10はさらに、電圧回路45、スイッチ部46、スイッチ制御回路47を有している。電圧回路45は可動電極7を固定電極6から離すのに必要な電圧を形成する回路であり、昇圧回路等から構成されている。スイッチ部46は第1封止層33の電圧を接地電圧と電圧回路45が出力する電圧との一方に切り替える回路である。スイッチ制御回路47は第6中間端子16から入力される指示信号に応じてスイッチ部46を切替える回路である。
【0066】
可動電極7が固定電極6と離れているとき、スイッチ制御回路47はスイッチ部46を駆動して第1封止層33の電圧を接地電圧にする。このとき、第3包囲壁22と第1封止層33とが接地電圧となるので、振動素子5が電磁ノイズを受け難くすることができる。
【0067】
可動電極7が固定電極6に密着するとき、スイッチ制御回路47はスイッチ部46を駆動して第1封止層33の電圧を電圧回路45が出力する電圧にする。これにより、可動電極7と第1封止層33との間に引力を作用させることができる。
【0068】
(レゾネーターの製造方法)
次に上述したレゾネーター1の製造方法について図3(b)〜図7にて説明する。図3(b)は、レゾネーターの製造方法を示すフローチャートであり、図4〜図7はレゾネーターの製造方法を説明するための模式図である。尚、駆動回路10、第3中間端子13〜第7中間端子17、配線13a〜配線17aの製造方法は公知であり説明を省略する。
【0069】
図3(b)のフローチャートにおいて、ステップS1は配線形成工程に相当し、基板上に振動素子の一部、配線、中間端子、第1包囲壁及び第2包囲壁を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は第1層間絶縁膜形成工程に相当し、振動素子上に第1絶縁層を形成する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は第1側壁形成工程に相当し、第3包囲壁を形成する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は第2層間絶縁膜形成工程に相当し、第1絶縁層に重ねて第2絶縁層を形成する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は第2側壁形成工程に相当し、第3包囲壁に重ねて第4包囲壁を形成する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は側壁絶縁膜形成工程に相当し、側壁絶縁膜を形成する工程である。次にステップS7に移行する。
【0070】
ステップS7は第3層間絶縁膜形成工程に相当し、第2絶縁層に重ねて第3絶縁層を形成する工程である。次にステップS8に移行する。ステップS2の第1層間絶縁膜形成工程、ステップS4の第2層間絶縁膜形成工程、ステップS7の第3層間絶縁膜形成工程により層間絶縁膜形成工程が構成されている。ステップS8は第3側壁形成工程に相当し、側壁絶縁膜に重ねて第5包囲壁を形成する工程である。次にステップS9に移行する。ステップS3の第1側壁形成工程、ステップS5の第2側壁形成工程、ステップS6の側壁絶縁膜形成工程、ステップS8の第3側壁形成工程により側壁形成工程が構成されている。
【0071】
ステップS9は蓋部形成工程に相当し、第5包囲壁及び第5包囲壁に囲まれた場所に第1封止層を積層して形成する工程である。次にステップS10に移行する。ステップS10は保護膜形成工程に相当し、第1封止層の周囲に保護膜を形成する工程である。次にステップS11に移行する。ステップS11は空洞部形成工程に相当し、包囲壁及び第1封止層に覆われた絶縁層をエッチングして空洞を形成する工程である。次にステップS12に移行する。ステップS12は封止工程に相当し、第1封止層に重ねて第2封止層を形成して空洞を封止する工程である。次にステップS13に移行する。ステップS13は端子部形成工程に相当し、中間端子と接続する外部端子を形成する工程である。次にステップS14に移行する。ステップS14はダイシング工程に相当し、マザー基板を切断してチップ状に分割する工程である。以上の製造工程にてレゾネーターが完成する。
【0072】
次に、図4〜図7を用いて、図3(b)に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。まず、図4(a)〜図4(c)はステップS1の配線形成工程に対応する図である。図4(a)に示すように、マザー基板48を用意し、マザー基板48上に第1下地層3及び第2下地層4を形成する。第2下地層4は包囲壁26を形成する予定の場所に形成する。マザー基板48は、例えば、シリコンウェハーであり、レゾネーター1を複数配置可能な広さを備えている。そして、マザー基板48を分割したものが基板2に相当する。第1下地層3は、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)法、LOCOS法により形成される。第2下地層4は、例えば、CVD(Chemical Vaper Deposition)法、スパッタ法を用いて形成される。
【0073】
次に、第2下地層4上に固定電極6を形成し、第1下地層3及び第2下地層4上に第1配線8を形成する。固定電極6、第1配線8はCVD法やスパッタ法等による成膜処理と、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理とを用いて形成される。多結晶シリコンからなるパターンを形成した後でこのパターンに電気伝導性を付与するために所定の不純物をドーピングする。ドーピングは例えば、POCL3やBBr3等のガス中でドーパントを堆積させ、熱拡散させることにより行うことができる。続いて、固定電極6及び第1配線8を熱酸化することにより、固定電極6の表面に絶縁膜6aを形成し、第1配線8の表面に絶縁膜8bを形成する。
【0074】
次に、図4(b)及び図4(c)に示すように、可動電極7、第2配線9、第2中間端子12、第1包囲壁18、第2包囲壁19を形成する。このとき、同時に第1中間端子11、第8中間端子20も形成する。可動電極7、第2配線9、第1中間端子11、第2中間端子12、第1包囲壁18、第2包囲壁19、第8中間端子20の形成方法は固定電極6及び第1配線8と同様な方法であり、説明を省略する。
【0075】
図4(d)及び図4(e)はステップS2の第1層間絶縁膜成工程に対応する図である。図4(d)及び図4(e)に示すように、固定電極6、可動電極7、第1配線8、第2配線9、第1包囲壁18及び第2包囲壁19に重ねて第1絶縁層21を積層する。第1絶縁層21はCVD法やスパッタ法等による成膜処理を用いて形成する。第1絶縁層21のうち第1包囲壁18及び第2包囲壁19に囲まれる予定の場所の第1絶縁層21を第1犠牲層49とする。
【0076】
図5(a)及び図5(b)はステップS3の第1側壁形成工程に対応する図である。図5(a)及び図5(b)に示すように、第1包囲壁18、第2包囲壁19及び第2中間端子12上に位置する第1絶縁層21をパターニングして第1絶縁層21を貫通する開口部を形成する。尚、第1配線8及び第2配線9上の第1絶縁層21は除去せずに残留させる。次に、開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第3包囲壁22及び第1貫通電極30を形成する。尚、第3包囲壁22及び第1貫通電極30は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。第3包囲壁22はCVD法やスパッタ法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0077】
電気伝導性のある第3包囲壁22は第1包囲壁18及び第2包囲壁19と接触して形成される。これにより、第1包囲壁18と第2包囲壁19との間は第3包囲壁22を介して電流が流動可能となる。第3包囲壁22と第1配線8及び第2配線9との間には第1絶縁層21が配置されている。従って、第3包囲壁22と第1配線8との間は絶縁され、第3包囲壁22と第2配線9との間も絶縁される。
【0078】
第1貫通電極30は第1中間端子11〜第7中間端子17、第8中間端子20と接触して形成される。これにより、第1貫通電極30はこれらの端子との間で通電可能になる。
【0079】
図5(c)はステップS4の第2層間絶縁膜形成工程に対応する図である。図5(c)に示すように、ステップS4の第2層間絶縁膜形成工程では第1絶縁層21に重ねて第2絶縁層27を形成する。第2絶縁層27のうち第3包囲壁22に囲まれている場所の第2絶縁層27を第2犠牲層50とする。第2絶縁層27はCVD法やスパッタ法等による成膜処理を用いて形成する。
【0080】
図5(d)はステップS5の第2側壁形成工程に対応する図である。図5(d)に示すように、ステップS5の第2側壁形成工程では第3包囲壁22上に位置する第2絶縁層27をパターニングして第2絶縁層27を貫通する開口部を形成する。次に、開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第4包囲壁23が形成される。そして、第4包囲壁23を形成する工程と同じ工程にて第2貫通電極31が第1貫通電極30上に形成される。尚、第4包囲壁23及び第2貫通電極31は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。第4包囲壁23及び第2貫通電極31はCVD法やスパッタ法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0081】
図5(e)はステップS6の側壁絶縁膜形成工程に対応する図である。図5(e)に示すように、ステップS6の側壁絶縁膜形成工程では第2絶縁層27及び第4包囲壁23と重ねて絶縁膜を積層する。絶縁膜はCVD法やスパッタ法等による成膜処理を用いて形成する。次に、第4包囲壁23を覆う場所以外の絶縁膜を除去して側壁絶縁膜24を形成する。これにより、側壁絶縁膜24は第4包囲壁23の全周に渡って覆うように配置される。側壁絶縁膜24はフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0082】
側壁絶縁膜24は第4包囲壁23及び第2犠牲層50上に配置されている。そして、可動電極7は第1犠牲層49及び第2犠牲層50に覆われている。これにより、側壁絶縁膜24をエッチングするエッチング液が可動電極7に損傷を与えないように、第1犠牲層49が振動素子5を保護している。この内容は側壁絶縁膜24を振動素子5より第1封止層33側に配置することにより可能となっている。
【0083】
図6(a)はステップS7の第3層間絶縁膜形成工程に対応する図である。図6(a)に示すように、ステップS7の第3層間絶縁膜形成工程において第2絶縁層27に重ねて第3絶縁層28を形成する。第3絶縁層28はCVD法やスパッタ法等による成膜処理を用いて形成する。
【0084】
図6(b)はステップS8の第3側壁形成工程に対応する図である。図6(b)に示すように、ステップS8の第3側壁形成工程では第3絶縁層28の第4包囲壁23と対向する場所に開口部を形成する。開口部は側壁絶縁膜24が露出するように形成する。続いて、開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第5包囲壁25を形成する。そして、第5包囲壁25を形成する工程と同じ工程にて第3貫通電極32が第2貫通電極31上に形成される。尚、第5包囲壁25及び第3貫通電極32は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。第5包囲壁25及び第3貫通電極32はCVD法やスパッタ法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0085】
第3絶縁層28のうち第5包囲壁25に囲まれている場所の第3絶縁層28を第3犠牲層53とする。そして、第1犠牲層49、第2犠牲層50、第3犠牲層53を合わせて犠牲層54と称す。
【0086】
図6(c)はステップS9の蓋部形成工程に対応する図である。図6(c)に示すように、ステップS9の蓋部形成工程では第3絶縁層28に重ねてチタン層、窒化チタン層、アルミニウム−銅合金層、窒化チタン層をこの順で積層した金属層を形成する。金属層はスパッタ法やCVD法による成膜処理を用いて形成する。続いて、金属層をパターニングして第1封止層33を形成する。このとき、第1封止層33に貫通孔33aを形成する。さらに、金属層をパターニングして第3貫通電極32上に電極パッド37を形成する。第1封止層33及び電極パッド37はフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニングを用いて形成する。尚、第1封止層33及び電極パッド37は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。さらに、ステップS8の第3側壁形成工程とステップS9の蓋部形成工程とは同一工程にて実施しても良い。
【0087】
図6(d)はステップS10の保護膜形成工程に対応する図である。図6(d)に示すように、ステップS10の保護膜形成工程では第1封止層33の少なくとも一部を避けて、第3絶縁層28上に保護膜34を形成する。このとき、第1封止層33に形成された貫通孔33aが露出するように保護膜34を形成する。保護膜34は、例えば、スパッタ法やCVD法等により成膜した後、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニングによって形成される。
【0088】
図7(a)はステップS11の空洞部形成工程に対応する図である。図7(a)に示すように、貫通孔33aを通してエッチング液を流動させて振動素子5の周囲に位置する犠牲層54をエッチングする。これにより、包囲壁26と第1封止層33とに囲まれた場所に空洞部36を形成する。このとき、固定電極6と可動電極7との間に位置する犠牲層54も除去される。これにより、固定電極6と可動電極7との間に隙間ができて可動電極7が可動可能になる。エッチングにはHFベーパーエッチングを採用している。
【0089】
第2下地層4、包囲壁26、第1封止層33、保護膜34はエッチング液に腐食され難い材料から構成されている。従って、第2下地層4、包囲壁26及び第1封止層33に囲まれた犠牲層54のみがエッチングされる。そして、保護膜34に覆われた包囲壁26を取り囲む場所の絶縁層29はエッチングされずに残留する。
【0090】
第3包囲壁22と第1配線8との間、第1包囲壁18と第1配線8との間、第2包囲壁19と第1配線8との間は間隔が狭く設定されている。従って、犠牲層54をエッチングするエッチング液が第1配線8に沿って包囲壁26から絶縁層29に漏洩し難くなっている。同様に、第3包囲壁22と第2配線9、第1包囲壁18と第2配線9との間、第2包囲壁19と第2配線9との間も間隔が狭く設定されている。従って、犠牲層54をエッチングするエッチング液が第2配線9に沿って包囲壁26から絶縁層29に漏洩し難くなっている。
【0091】
図7(b)はステップS12の封止工程に対応する図である。図7(b)に示すように、ステップS12の封止工程では第1封止層33上及び保護膜34上に第2封止層35を形成する。これにより、貫通孔33aを塞いで空洞部36を封止する。第2封止層35は、例えば、スパッタ法、CVD法等の気相成長法により形成することができる。このとき、減圧状態において第2封止層35を形成する。これにより、空洞部36を減圧状態のまま封止することができる。
【0092】
図7(c)及び図7(d)はステップS13の端子部形成工程に対応する図である。図7(c)に示すように、ステップS13の端子部形成工程では電極パッド37の上面を除いて、保護膜34上及び第2封止層35上に樹脂層38を形成する。より具体的には、まず、電極パッド37の上面の保護膜34をフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によってパターニングして開口する。次に、スピンコート法により樹脂を塗布し窒素雰囲気中で300℃〜400℃程度の熱処理を行う。これにより塗布した樹脂を硬化させて樹脂の膜を形成する。次に、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によって樹脂の膜をパターニングして樹脂層38を形成する。続いて、電極パッド37上及び樹脂層38上に配線39を形成する。配線39は、スパッタ法やめっき法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理とにより形成される。
【0093】
次に、図7(d)に示すように、樹脂層38上及び配線39上に、レジスト層41を形成する。レジスト層41は、配線39の外部端子40が形成される予定の場所を除いて形成される。レジスト層41は、例えば、スピンコート法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理とにより形成される。
【0094】
次に、配線39上に外部端子40を形成する。外部端子40は、例えば、配線39上にハンダ膜を形成した後、180℃〜300℃程度に加熱してハンダ膜を溶融する。これによりハンダが液状化して表面張力が作用して球形に形成される。
【0095】
ステップS14のダイシング工程ではマザー基板48を切断予定線にて切断する。マザー基板48を粘着性のあるシートに貼る。続いて、先端にダイヤモンド粉が塗布された回転刃を用いて切断予定線に沿って切り込みを入れる。この後、シートを広げることにより切断予定線に沿ってマザー基板48が破断される。そして、各レゾネーター1がチップ状に分離する。その結果、図1に示すように、レゾネーター1が完成する。
【0096】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、包囲壁26及び第1封止層33に覆われた空洞部36が基板2上に設置されている。その空洞部36内に可動部7bが配置されている。その可動部7bと対向する場所は第1封止層33となっている。そして、可動部7bは第1封止層33と基板2との間に位置している。可動部7bと第1封止層33とは導電体となっている。従って、可動部7bと第1封止層33とに電圧を印加することにより、可動部7bと第1封止層33とに静電気を蓄積させることができる。これにより、可動部7bと第1封止層33との間に引力を生じさせることができる。可動部7bが固定電極6に密着して離れなくなったとき、可動部7bと第1封止層33との間に引力を生じさせて可動部7bと固定電極6とを離すことができる。
【0097】
(2)本実施形態によれば、包囲壁26は第3包囲壁22と第5包囲壁25との間に側壁絶縁膜24が配置されている。その側壁絶縁膜24は第3包囲壁22と第5包囲壁25とを絶縁する。側壁絶縁膜24は可動電極7より第1封止層33側に位置している。側壁絶縁膜24は第3包囲壁22が形成された後に形成される。そして、側壁絶縁膜24は広い膜を形成した後、第3包囲壁22と接する場所を残すようにエッチングして形成される。
【0098】
側壁絶縁膜24が可動電極7より基板2側に位置するとき、側壁絶縁膜24を形成するためのエッチングする前の膜が可動電極7に接する可能性がある。このとき、側壁絶縁膜24をエッチングするエッチング液が可動電極7と触れるので、可動電極7がエッチング液によって損傷を受ける可能性がある。一方、本実施形態では側壁絶縁膜24が可動電極7より第1封止層33側に位置している。従って、側壁絶縁膜24を配置する場所と基板2との間に第1犠牲層49を配置することにより、エッチングする前の側壁絶縁膜24が可動電極7に接しないように側壁絶縁膜24を形成することができる。そして、側壁絶縁膜24をエッチングした後で可動電極7の周囲の第1犠牲層49を取り除くことにより、側壁絶縁膜24をエッチングするエッチング液が可動電極7に損傷を与えることを防止することができる。
【0099】
(3)本実施形態によれば、レゾネーター1には電圧回路45、スイッチ部46、スイッチ制御回路47が搭載されている。電圧回路45が電圧を形成し、スイッチ制御回路47がスイッチ部46を駆動して第1封止層33と可動電極7との間に電圧を印加するか否かを切替えることができる。従って、第1封止層33と可動電極7との間に引力を作用させるか否かを制御することができる。
【0100】
(4)本実施形態によれば、第1距離5aが第2距離5bより長くなるように固定電極6、可動部7b、第1封止層33が配置されている。これにより、可動部7bは第1封止層33より固定電極6に近い場所に位置する。従って、可動部7bは第1封止層33より固定電極6に密着し易くなる。可動部7bが第1封止層33と固定電極6との両方に密着するとき、可動部7bと第1封止層33との間に引力を制御するスイッチ部46と可動部7bと固定電極6との間に引力を制御するスイッチ部46とが必要となる。一方、本実施形態では可動部7bと第1封止層33との間に引力を制御するスイッチ部46のみでよい。従って、スイッチ部46の制御を簡便にすることができる。
【0101】
(5)本実施形態によれば、レゾネーター1は振動素子5と発振回路43とを備えており、発振回路43は振動素子5を用いて波形を形成している。従って、特定の周波数の波形を出力することができる。さらに、レゾネーター1は波形形成回路44を備えている。従って、発振回路43が形成する波形の周波数や波形パターンを変更することができる。
【0102】
(第2の実施形態)
次に、レゾネーターの一実施形態について図8の要部模式断面図を用いて説明する。
本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、図2に示した側壁絶縁膜24の位置が異なる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0103】
図8(a)及び図8(b)はレゾネーターの要部模式断面図である。図8(a)は、図2(a)に対応した図であり、図8(b)は、図2(b)に対応した図である。すなわち、本実施形態では、図8に示したようにレゾネーター58は基板2を備え、基板2上に第1下地層3及び第2下地層4がこの順に積層されている。そして、第2下地層4上に振動素子5、第1配線8、第2配線9、第1包囲壁18、第2包囲壁19が設置されている。そして、第1包囲壁18と第2包囲壁19とは図示しない配線により電気的に接続されている。
【0104】
第1包囲壁18及び第2包囲壁19の上側には側壁絶縁膜59が設置されている。そして、振動素子5のX方向側では第1配線8を跨いで第1包囲壁18と第2包囲壁19とを接続するように側壁絶縁膜59が配置されている。さらに、側壁絶縁膜59は第1包囲壁18と第1配線8との間にも設置され、第2包囲壁19と第1配線8との間にも設置されている。
【0105】
同様に、振動素子5の−X方向側では第2配線9を跨いで第1包囲壁18と第2包囲壁19とを接続するように側壁絶縁膜59が配置されている。さらに、側壁絶縁膜59は第1包囲壁18と第2配線9との間にも設置され、第2包囲壁19と第2配線9との間にも設置されている。
【0106】
側壁絶縁膜59上には第5包囲壁60と第6包囲壁61とが積層して設置されている。第5包囲壁60及び第6包囲壁61は第1の実施形態における第3包囲壁22、第4包囲壁23、第5包囲壁25に相当する。第1包囲壁18、第2包囲壁19、側壁絶縁膜59、第5包囲壁60、第6包囲壁61は振動素子5を取り囲む包囲壁62を構成している。
【0107】
側壁絶縁膜59は第1の実施形態における側壁絶縁膜24と同じ材質からなる膜であり、電気絶縁性があり二酸化シリコンをエッチングするエッチング液に対してエッチングされ難くなっている。これにより、第1配線8及び第2配線9は第1包囲壁18及び第2包囲壁19と電気的に絶縁される。さらに、第5包囲壁60は第1配線8、第2配線9、第1包囲壁18及び第2包囲壁19と電気的に絶縁される。
【0108】
側壁絶縁膜59は犠牲層54をエッチングするエッチング液に対してエッチングされ難くなっている。これにより、空洞部36を形成するときに第1配線8や第2配線9と包囲壁62との間からエッチング液が包囲壁62の外側に流出することを防止することができる。
【0109】
側壁絶縁膜59及び第5包囲壁60の外周には第4絶縁層63が配置され、第6包囲壁61外周には第5絶縁層64が配置されている。そして、第4絶縁層63及び第5絶縁層64により絶縁層65が構成されている。絶縁層65は第1の実施形態における絶縁層29に相当する層である。第1中間端子11〜第7中間端子17及び第8中間端子20上には第4貫通電極66及び第5貫通電極67が重ねて配置されている。第4貫通電極66及び第5貫通電極67は第1貫通電極30〜第3貫通電極32に相当する貫通電極となっている。包囲壁62、絶縁層65、空洞部36の上側は第1の実施形態と同じ構造となっており、説明を省略する。
【0110】
可動電極7と第1封止層33とは側壁絶縁膜59により絶縁されている。そして、固定電極6と第1封止層33とも側壁絶縁膜59により絶縁されている。従って、可動電極7が固定電極6と密着するとき、可動電極7と第1封止層33との間に電圧をかけることにより可動電極7と第1封止層33との間に引力を作用させることができる。
【0111】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、側壁絶縁膜59は第1配線8及び第2配線9と隣り合う第1包囲壁18、第2包囲壁19、第5包囲壁60と間に位置している。側壁絶縁膜59は犠牲層54をエッチングするエッチング液に対してエッチングされ難くなっている。従って、空洞部36を形成するときに第1配線8及び第2配線9と第1包囲壁18、第2包囲壁19、第5包囲壁60との間からエッチング液が包囲壁62の外側に流出することを防止することができる。
【0112】
(2)本実施形態によれば、第5包囲壁60、第6包囲壁61、第1封止層33は導電体であり、電気的接続されているので、同電位となっている。そして、第5包囲壁60、第6包囲壁61、第1封止層33は振動素子5を覆っている為、振動素子5は電磁波ノイズの影響を受け難くすることができる。
【0113】
(3)本実施形態によれば、側壁絶縁膜59により可動部7bと第1封止層33とは絶縁されている。従って、可動部7bが固定電極6と密着するときにも可動部7bと第1封止層33とに電圧をかけて引力を作用させることができる。その結果、可動部7bを固定電極6から離すことができる。
【0114】
(第3の実施形態)
次に、レゾネーターを用いた電子機器の1つである時計の一実施形態について図9を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、レゾネーターを活用した電子機器である点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0115】
図9は、時計の構成を示す電気ブロック図である。図9に示すように、電子機器としての時計70は制御部71を備えている。制御部71はレゾネーター1と接続され、レゾネーター1は一定の周波数の矩形波信号を制御部71に出力する。制御部71は演算部を備え、演算部は矩形波信号と同期して各種の演算を行う。
【0116】
制御部71は表示部72及び入力部73を備えている。表示部72は制御部71の演算部が演算結果を表示する装置であり、液晶表示装置、有機EL(Electro−Luminescence)表示装置、時針分針等アナログ式表示装置等を用いることができる。入力部73は押しボタン式のスイッチや回転式のダイヤル等を用いることができる。
【0117】
時計70は現在時刻を表示する機能を備えている。入力部73を用いて操作者は所定の時刻における時刻を入力する。制御部71はレゾネーター1の出力を用いて時間の経過を演算する。そして、時刻を入力された時からの経過時間を加算して現在時刻を算出した結果を表示部72に出力する。表示部72は制御部71の信号を受けて現在時刻を表示する。
【0118】
時計70はストップウォッチの機能を備えている。入力部73を用いて操作者はボタン式のスイッチを押すことにより計時開始の指示信号を入力する。制御部71はレゾネーター1の出力を用いて時間の経過を演算する。そして、計時開始の信号を入力された時からの経過時間を算出し、算出した結果を表示部72に出力する。表示部72は制御部71の信号を受けて経過時間を表示する。
【0119】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、時計70はレゾネーター1を備えている。このレゾネーター1は可動部7bが固定電極6に密着して離れなくなるときにも可動部7bと第1封止層33との間に引力を生じさせて可動部7bと固定電極6とを離すことができる。従って、時計70は振動素子5が復旧可能なレゾネーター1を備えた機器とすることができる。
【0120】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、包囲壁26の平面形状は図1に示すように四角形の枠形状とした。包囲壁26の平面形状は振動素子5を囲む形状であれば特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形の枠形状等の任意の形状にすることができる。これにより、配線、端子、駆動回路10を設定する配置の自由度を高めることができる。
【0121】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、第3包囲壁22と第5包囲壁25との間に側壁絶縁膜24が配置された。側壁絶縁膜24は第3包囲壁22と第4包囲壁23との間に配置しても良い。この場合にも、可動部7bと第1封止層33との間に電圧を印加させることにより引力を作用させて、可動部7bと固定電極6とを離すことができる。側壁絶縁膜24は第3包囲壁22と第4包囲壁23との間に配置するとき、第5包囲壁25と第3絶縁層28とは省略してもよい。工程を少なくできるので、生産性良くレゾネーターを製造することができる。
【0122】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、可動部7b及び第1封止層33は導電体であったが、電気的に絶縁体である部材に導電体の膜を配置しても良い。この場合にも、可動部7bと第1封止層33との間に静電気による引力を作用させることができる。また、材料の選択範囲を広くすることができる。
【0123】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、スイッチ制御回路47がスイッチ部46を制御して第1封止層33に印加する電圧を制御した。これに限らず、電圧回路45が出力する電圧が固定電極6と可動電極7との間に印加される第2スイッチ部を設けても良い。そして、スイッチ制御回路47が該スイッチ部を制御して固定電極6と可動電極7との間に印加する電圧を制御してもよい。
【0124】
可動電極7が第1封止層33に密着するとき、スイッチ制御回路47は第2スイッチ部を駆動して固定電極6と可動電極7との間の電圧を電圧回路45が出力する電圧にする。これにより、固定電極6と可動電極7との間に引力を作用させることができる。可動電極7が第1封止層33に密着するときにも可動電極7を第1封止層33から離すことができる。
【0125】
(変形例5)
前記第3の実施形態では、レゾネーター1を用いたがレゾネーター1の代わりにレゾネーター58を用いても良い。このときにも、品質良く所定の周波数の波形を活用することができる。
【0126】
(変形例6)
前記第3の実施形態では、レゾネーター1を用いる電子機器として時計70の例を示したが、電子機器は時計70に限らない。レゾネーター1を各種の電子機器に適用することができる。例えば、携帯電話、パーソナルコンピューター、電子辞書、デジタルカメラ、デジタル録音再生装置等に用いることができる。このとき、可動部7bが固定電極6に密着して離れないときにもレゾネーター1は可動部7bと第1封止層33との間に引力を生じさせて可動部7bと固定電極6とを離すことができる。従って、電子機器は振動素子5が復旧可能なレゾネーター1を備えた機器とすることができる。
【符号の説明】
【0127】
2…基板、5a…第1距離、5b…第2距離、6…固定部としての固定電極、7b…可動部、24,59…側壁絶縁膜、26,62…被覆部としての包囲壁、33…蓋部及び被覆部としての第1封止層、33a…開口部としての貫通孔、34…保護膜、36…空洞部、43…発振回路、45…電圧回路、46…スイッチ部、70…電子機器としての時計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の被覆部に覆われた空洞部内に位置する可動部と、
前記可動部と対向する場所の前記被覆部に位置する蓋部と、
前記基板と前記蓋部との間の前記被覆部に位置し、前記基板と前記蓋部とを絶縁する側壁絶縁膜と、を備え、
前記可動部は前記基板と前記蓋部との間に位置し、前記可動部と前記被覆部の側壁絶縁膜より前記蓋部側の部分とは少なくとも一部が導電体であることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置であって、
前記基板上に固定部をさらに備え、前記固定部は前記可動部と対向する場所に位置し少なくとも一部が導電体であることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子装置であって、
前記側壁絶縁膜は前記可動部より前記蓋部側に位置することを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子装置であって、
前記蓋部と前記可動部との間に印加する電圧を出力する電圧回路と、
前記蓋部と前記可動部との間に前記電圧を印加するか否かを切替えるスイッチ部と、を有することを特徴とする電子装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子装置であって、
前記固定部は固定電極であり、
前記蓋部と前記可動部との間の距離である第1距離は前記可動部と前記固定電極との距離である第2距離より長いことを特徴とする電子装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置であって、
前記可動部を用いて波形を形成する発振回路を有することを特徴とする電子装置。
【請求項7】
発振回路を備えた電子機器であって、
前記発振回路に請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子装置を用いたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
基板上及び前記基板上に形成された導電性の可動部上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、
前記可動部を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、
前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する導電性の蓋部を形成する蓋部形成工程と、
前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記開口部を封止する封止工程と、を有し、
前記側壁形成工程は導電性の前記側壁部に前記側壁部の全周に渡って側壁絶縁膜を形成する工程を有することを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−119822(P2012−119822A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266217(P2010−266217)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】