説明

電子部品及び電子部品の製造方法

【課題】電子部品の高密度実装を可能とする電子部品及び電子部品の製造方法を低コストで提供すること。
【解決手段】電子部品1は、素体2、外部電極3,4、及び絶縁層20,21を備えている。素体2は、互いに対向する一対の端面2a,2bと、一対の端面2a,2bを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面2c,2dと、一対の主面2c,2dを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面2e,2fと、を有している。外部電極3,4は、素体2の端面2a,2b側に形成され、端面2a,2bに隣接する主面2c,2d及び側面2e,2fの一部を覆う。少なくとも外部電極3,4における側面2e,2f側に位置する電極部分3e,3f,4e,4fの表面が、絶縁層20,21で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、特に、表面実装型の電子部品、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面実装型の電子部品、たとえば積層セラミックコンデンサは、その製造方法として、グリーンシートと内部電極材料を交互に積層して焼成することによって形成した素体の端面を導電性ペーストに浸漬、乾燥させてペースト層を形成後、焼成し、更にハンダ付け性を改善するためにめっきを施して外部電極を形成する方法が広く用いられている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−13315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の電子部品の製造方法においては、外部電極は、素体の両端面及び端面に隣接する主面、及び側面の一部にまたがって形成される五面電極構造となる。
【0005】
このため、図14〜図17に示されるように、配線パターンWPを備えている基板SSへのはんだ実装時において、電子部品101の側面に形成された外部電極103にもはんだが周り込み、外部電極103の電極側面部にもはんだフィレットSFが形成される。このため、複数の電子部品101を平行に配置して実装すると、隣接した電子部品101の電極側面部間で、はんだブリッジを形成し、電子部品101間が短絡する問題が発生しやすく、電子部品101間の間隔を小さくした狭隣接高密度実装上の課題となっていた。また、図18に示されるように、実装時の位置ズレによって、隣接する電子部品101の両側面部が接触した際に、両電子部品101間の電極間短絡が発生する懼れがあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電子部品の高密度実装を可能とする電子部品及び電子部品の製造方法を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子部品は、互いに対向する一対の端面と、一対の端面を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面と、一対の主面を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面と、を有する素体と、素体の端面側に形成され、該端面に隣接する主面及び側面の一部を覆う外部電極と、を備えており、少なくとも外部電極における側面側に位置する電極部分の表面が、絶縁層で覆われていることを特徴とする。
【0008】
はんだは、金属以外には濡れないため、絶縁層ははんだレジスト層として機能する。このため、本発明の電子部品を基板に実装しても、外部電極の絶縁層で覆われている部分、すなわち電子部品の側面側部分にはんだが濡れ上がらず、はんだフィレットが形成されない。したがって、本発明の電子部品を狭間隔に隣接して複数実装しても、電子部品の側面側部分にははんだフィレットが存在しないため、隣接した電子部品間のはんだブリッジによる短絡問題が発生しない。更に、仮に実装時の位置ズレにより、隣接する電子部品の両側面側部分が接触しても絶縁層が存在するため両電子部品間の電極間短絡が発生しない。
【0009】
上記電極部分は、焼付け電極層を有し、絶縁層は、焼付け電極上に設けられており、外部電極における絶縁層で覆われていない部分は、焼付け電極層と、該焼付け電極上に設けられためっき層と、を有していてもよい。
【0010】
好ましくは、絶縁層が、不透過性又は着色性を有している。
【0011】
本発明に係る電子部品の製造方法は、互いに対向する一対の端面と、一対の端面を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面と、一対の主面を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面と、を有する素体と、素体の端面側に形成され、該端面に隣接する主面及び側面の一部を覆う外部電極と、を備えた電子部品の製造方法であって、少なくとも外部電極における側面側に位置する電極部分の表面を、絶縁層で覆うことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る電子部品の製造方法によれば、上述したように、実装時に電子部品の側面側部分にはんだフィレットが形成されず、狭隣接実装時のはんだブリッジ等の隣接した電子部品間で短絡が発生しない、高密度実装が可能な電子部品を製造することができる。
【0013】
外部電極を、導電性ペーストの焼付け電極層と、めっき層と、で構成し、絶縁層を、絶縁性樹脂をコーティングして形成してもよい。
【0014】
素体に導電性ペーストを塗布し乾燥させて、導電性ペースト層を形成した後に、素体の側面及び導電性ペースト層における側面に形成された部分に、ガラスペーストを塗布してガラスペースト層を形成し、導電性ペースト層とガラスペースト層とを一体焼成することにより、絶縁層を形成してもよい。
【0015】
素体に導電性ペーストを塗布し乾燥させ、焼成して焼付け電極層を形成した後に、素体の側面及び焼付け電極層における側面に形成された部分に、ガラスペーストを塗布し、焼付けることにより、絶縁層を形成してもよい。
【0016】
素体に導電性ペーストを塗布し乾燥させ、焼成して焼付け電極層を形成した後に、素体の側面及び焼付け電極層における側面に形成された部分に、絶縁性樹脂を塗布し、硬化させることにより、絶縁層を形成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子部品の高密度実装を可能とする電子部品及び電子部品の製造方法を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る電子部品の断面構成を説明するための図である。
【図3】本実施形態に係る電子部品の断面構成を説明するための図である。
【図4】本実施形態に係る電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る電子部品の梱包状態を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る電子部品の一実装例を示す斜視図である。
【図7】本実施形態に係る電子部品の一実装例を示す平面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線に沿った断面構成を説明するための図である。
【図9】図7におけるIX−IX線に沿った断面構成を説明するための図である。
【図10】本実施形態に係る電子部品の一実装例を示す平面図である。
【図11】本実施形態の変形例に係る電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態の変形例に係る電子部品の断面構成を説明するための図である。
【図13】本実施形態の変形例に係る更なる電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【図14】従来の電子部品の一実装例を示す斜視図である。
【図15】従来の電子部品の一実装例を示す平面図である。
【図16】図15におけるXVI−XVI線に沿った断面構成を説明するための図である。
【図17】図15におけるXVII−XVII線に沿った断面構成を説明するための図である。
【図18】従来の電子部品の一実装例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る電子部品1の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。図2及び図3は、本実施形態に係る電子部品の断面構成を説明するための図である。図3では、後述する内部電極7,8などの図示を省略している。
【0021】
電子部品1は、例えば積層セラミックコンデンサなどの電子部品であり、複数のセラミックグリーンシートを積層して一体化することによって略直方体形状に構成された素体2と、素体2の両端面側に形成された外部電極3,4と、を備えている。素体2は、図1にも示されているように、素体2の長手方向に向かい合って互いに平行をなす一対の端面2a,2bと、一対の端面2a,2bを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面2c,2dと、一対の主面2c,2dを連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面2e,2fと、を有する。
【0022】
電子部品1は、たとえば、長さ(L)が0.4mm〜1.6mm程度に設定され、幅(W)が0.2mm〜0.8mm程度に設定され、高さ(T)が0.4mm〜0.8mm程度に設定されている。
【0023】
素体2は、図2に示されるように、複数の長方形状の誘電体層6と、複数の内部電極7及び内部電極8とが積層された積層体として構成されている。内部電極7と内部電極8とは、素体2内において誘電体層6の積層方向(以下、単に「積層方向」と称する。)に沿ってそれぞれ一層ずつ配置されている。内部電極7と内部電極8とは、少なくとも一層の誘電体層6を挟むように対向配置されている。
【0024】
各誘電体層6は、例えば誘電体セラミック(BaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、又は(Ba,Ca)TiO系等の誘電体セラミック)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体2では、各誘電体層6の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0025】
内部電極7,8は、例えばNiやCuなどの導電材を含んでいる。内部電極7,8の厚みは、たとえば0.5μm〜3μm程度である。内部電極7,8は、積層方向から見て互いに重なりあう領域を有するような形状であれば、特に形状は限定されず、例えば矩形状などの形状をなしている。内部電極7,8は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。内部電極7は外部電極3と電気的且つ物理的に接続されており、内部電極8は外部電極4と電気的且つ物理的に接続されている。
【0026】
外部電極3は、一方の端面2aと、一対の主面2c,2d及び一対の側面2e,2fの端面2a寄りの各縁部の一部と、を覆うように形成されている。外部電極3は、対応する各面2a,2c,2d,2e,2fに位置する電極部分3a,3c,3d,3e,3fを有している。
【0027】
外部電極4は、他方の端面2bと、一対の主面2c,2d及び一対の側面2e,2fの端面2b寄りの各縁部の一部と、を覆うように形成されている。外部電極4は、対応する各面2b,2c,2d,2e,2fに位置する電極部分4b,4c,4d,4e,4fを有している。外部電極3,4は、素体2の外表面にCuやNi、あるいはAg、Pd等を主成分とする導電性ペーストを後述の方法によって付着させた後に所定温度(例えば、700℃程度)にて焼付け、更に後述の方法によって電気めっきを施すことにより形成される。電気めっきには、Cu、Ni、Sn等を用いることができる。本実施形態では、外部電極3,4は、焼付け電極層31,41、Niめっき層33,43、及びSnめっき層35,45を有している。
【0028】
絶縁層20は、図1及び図3にも示されるように、素体2の側面2e、及び側面2e側に位置する電極部分3e,4eを覆うように形成されている。絶縁層21も、同じく図1及び図3にも示されるように、素体2の側面2f、及び側面2f側に位置する電極部分3f,4fを覆うように形成されている。
【0029】
続いて、図4を参照して、本実施形態に係る電子部品1の製造方法について説明する。図4は、本実施形態に係る電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【0030】
(素体準備工程)
電子部品1の製造工程は、素体準備工程(S101)から開始する。素体準備工程では、誘電体層6となるセラミックグリーンシートを形成した後、当該セラミックグリーンシート上に内部電極7,8となるパターンを導電性ペーストで印刷し、乾燥することによって電極パターンを形成する。このように電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを複数枚重ね合わせ、そのセラミックグリーンシートの積層体をそれぞれ素体2の大きさのチップとなるように切断する。続いて、ポリエチレン等の材料からなる密閉回転ポットに水と複数のチップと研磨用のメディアを入れて、この密閉回転ポットを回転させることによって、チップの角部分の面取りが行われる。面取り加工を施したチップに所定温度で所定時間加熱処理を施すことによって脱バインダを行う。脱バインダを行った後、更に焼成を行うことで素体2を得る。
【0031】
(外部電極ペースト層形成工程)
次に、外部電極ペースト層形成工程(S103)を行う。外部電極ペースト層形成工程は、公知の導電性ペーストへの浸漬工法で形成することが出来る。具体的には、キャリアプレートなどの公知の保持冶具を用いて、素体2の一方の端面2aが上方を向くように他方の端面2b側において主面2c,2dを保持する。次に、保持冶具で保持された素体2の端面2aを塗布用ベッド上に入れられた導電性ペースト中に浸漬により塗布し、乾燥させることによって、第一ペースト層を形成する。この時導電性ペーストに浸漬させる素体2の深さを適切に設定することで、五つの電極部分3a,3c,3d,3e,3fに第1ペースト層が形成される。第1ペースト層乾燥後、素体2の端面2b側にも同様な工程を経て、五つの電極部分4a,4c,4d,4e,4fに第2ペースト層を形成する。
【0032】
(外部電極ペースト層焼付け工程)
第1、第2ペースト層形成後、例えば780℃で熱処理を行うことによって、図3に示されるような、焼付け電極層31,41を形成する(S105)。
【0033】
(めっき工程)
焼付け電極層31,41を形成後、めっき工程(S107)を行う。めっき工程では、焼付け電極層31,41の表面にNiめっき層33,43やSnめっき層35,45を形成する。具体的に、このめっき工程では、バレル内のめっき液に焼付け電極層31,41が形成された素体2を浸漬させた後、バレルを回転させつつ焼付け電極層31,41の表面にめっきが施される。これにより、外部電極3、4は、焼付け電極層31,41、Niめっき層33,43、及びSnめっき層35,45の複合構造が全面に形成されることになる。
【0034】
(絶縁層形成工程)
めっき工程の終了後、絶縁層20,21の形成を行う(S109)。絶縁層20,21は、めっき層33,43,35,45形成後の素体の側面2e,2f、及び電極部分3e,3f,4e,4f上に絶縁性材料(たとえば、絶縁性ガラス材料や絶縁性樹脂材料)をコーティングすることで形成される。絶縁層20,21は少なくとも外部電極3,4の電極部分3e,3f,4e,4fの表面を完全に覆うことが必要となる。絶縁層20,21としては、めっき層33,43,35,45が積層された外部電極3,4の形成後にコーティングを行うため、コーティング工程の負荷によりめっき層が溶融、酸化等のダメージが発生しない、低温処理で形成可能で、かつ電子部品実装時のはんだ耐熱性を有する絶縁層が好ましい。絶縁層20,21は、たとえば、絶縁性樹脂層やガラス層などからなる。
【0035】
低温処理の温度としては、200℃以下、より好ましくは160℃以下である。具体的には、絶縁性樹脂として、プリント基板のソルダーレジストとして用いられる金属酸化物顔料を用いた熱硬化性エポキシ樹脂塗料や、耐熱性塗料として用いられる金属酸化物顔料を用いたシリコーン樹脂系塗料、フッ素系樹脂塗料、フェノール樹脂系塗料、ユリア樹脂系塗料、メラミン樹脂系塗料、不飽和ポリエステル樹脂系塗料、ジアリルフタレート系樹脂塗料等の耐熱性樹脂塗料を用いることができる。
【0036】
これらの耐熱性樹脂塗料には、有機若しくは無機顔料を適度に添加することにより、絶縁層に着色性、若しくは不透明性を付与することが好ましい。たとえば、着色性の有機顔料としては、フタロシアニン系顔料やアンスラキノン系顔料等が挙げられ、無機顔料としてはカーボンブラック等が挙げられる。金属酸化物顔料に屈折率の大きい顔料を用いることで、絶縁層20,21に適度な光散乱性を付与し、実質的な不透明性を付与してもよい。
【0037】
コーティング方法としては、公知の方法を用い、素体2の端面2a,2b、及び主面2c,2d並びに電極部分3a,3b,3c,3d,4a,4b,4c,4dに回り込まないように、側面2e及び電極部分3e,4e上に塗布乾燥後、反転させて同じく側面2f及び電極部分3f、4f上に塗布すればよい。
【0038】
塗布の方法として好ましくはスクリーン印刷法を用いる。スクリーン印刷法を用いて塗料の塗布を行うことで、素体2の端面2a,2b、及び主面2c,2d並びに電極部分3a,3b,3c,3d,4a,4b,4c,4dへの塗料の回り込みを生じないようにコーティングが可能となる。素体の保持手段として、粘着保持媒体を用いれば、側面2e及び電極部分3e,4e上に絶縁層20を塗布乾燥形成後に、他の粘着保持媒体に移し替えることで、容易に反転させて側面2f及び電極部分3f,4f上に絶縁層21を塗布形成することができる。ここでは、絶縁層20,21は、絶縁性樹脂層からなる。
【0039】
以上の工程により、電子部品1が得られる。絶縁層20,21の材質や形成方法などは、上述したものに限られない。たとえば、絶縁層20,21として、高周波スパッタリング法や真空蒸着法を用い、SiOなどからなる絶縁層を形成してもよい。
【0040】
(判別工程)
続いて、判別工程(S111)おいて、主面2c,2dと絶縁層20,21が形成された側面2e,2fとの色の違いを判別する。例えば、測色機器として、分光色差計を用いることができる。この分光色差計によりL*a*b*表色系(JIS Z8729)の明度Lを測定する。分光色差計を用いることで、絶縁層20,21が形成された側面2e,2fと形成されていない主面2c,2dを機械的に判別することができる。
【0041】
(梱包工程)
次に、図5に示されるように、梱包工程(S113)において、判別した絶縁層20,21が形成された側面2e,2fが同じ向きを向くように複数の電子部品1を配置して梱包する。梱包材は、梱包材51及び梱包材52からなる。梱包材51には、断面が四角形状の凹部51aが2次元に配列して複数形成されている。この凹部51aにそれぞれ電子部品1が収容される。電子部品1は、絶縁層20,21が形成された側面2e,2fが凹部51aの深さ方向に対して垂直となるように、凹部51aに収容される。その後、梱包材52により、凹部51aの開口部が覆われて、梱包が完了する。
【0042】
続いて、図6〜図10を参照して、電子部品1の実装例を説明する。図6は、本実施形態に係る電子部品の一実装例を示す斜視図である。図7及び図10は、本実施形態に係る電子部品の一実装例を示す平面図である。図8は、図7におけるVIII−VIII線に沿った断面構成を説明するための図である。図9は、図7におけるIX−IX線に沿った断面構成を説明するための図である。図8及び図9では、後述するはんだフィレットSFのみにハッチングを付している。
【0043】
電子部品1は、図5に示された梱包材(梱包材51及び梱包材52)から取り出され、基板に実装される。梱包した電子部品1を梱包材から取り出す際に、表面実装マウンターの吸着ヘッドを用いて取り出す。この際に、梱包工程(S113)にて、絶縁層20,21が形成された側面2e,2fが凹部51aの深さ方向に対して垂直となるように一様に梱包されているため、吸着ノズルは主面2c又は主面2dに当接することになる。これにより、実装時に電子部品1の実装向きを揃える必要が生じない。
【0044】
実装する際には、はんだリフローによって電子部品1の外部電極3,4を基板SSの配線パターンWPに電気的に接続する。したがって、図6〜図10に示されるように、電子部品1は、はんだ実装される。はんだは、Sn−SbなどのJIS Z 3282に基づくものが用いられ、いずれも上述した絶縁性樹脂によって濡れることがない。
【0045】
電子部品1は、絶縁層20,21が形成された一対の側面2e,2fが基板SSに対して垂直な方向に配置するため、はんだ付けを行った場合は、素体2の側面2e,2f側にははんだフィレットSFが形成されない。そのため、側面2e,2f方向に余裕が生まれ実装密度を高めることが可能となる。
【0046】
電子部品1は、プリント基板などへの実装時に、主面2c又は主面2dを上面側に実装することで、側面2e,2f側に位置する電極部分3e,3f,4e,4f上に絶縁層20,21が形成されているため、図6〜図8に示されるように素体2の側面2e,2f側にははんだフィレットSFが形成されない。更に、絶縁層20,21が存在するため、図10に示されるように、仮に実装位置がずれて隣接する電子部品1と側面2e,2f側の部分が接触しても電子部品1間が電気的に短絡する問題が発生しない。このため、高密度実装が可能な電子部品1を実現することができる。
【0047】
絶縁層20,21が絶縁性樹脂からなる場合、めっき層(Niめっき層33,43やSnめっき層35,45など)を形成した後に形成する際に、めっき層が絶縁層20,21の形成時に熱的なダメージなどを受けるのを避けることができる。
【0048】
ところで、表面実装型の電子部品は、一般に、テーピング装置によりキャリアテープのポケットに個々の部品を収納したテーピング包装で供給される。テーピング包装された部品は表面実装マウンターで、キャリアテープのポケットから個々の部品を吸着ヘッドでピッキングし、実装基板にマウントされる。マウント時の電子部品の実装方向は、キャリアテープのポケットに電子部品を収納する際の方向によって決定される。
【0049】
本実施形態の電子部品1は、基板SSに実装する際に、絶縁層20,21が形成された側面2e,2fが、基板SSの実装面に垂直になるように方向を揃えて実装することにより、絶縁層20,21の効果を発揮して狭隣接による高密度実装を可能とする。したがって、キャリアテープのポケットには、絶縁層20,21が形成された側面2e,2fを整列させてテーピングする必要がある。
【0050】
電子部品1の整列のためにはカメラや分光色差計による光学的な外観チェックによる非整列部品の選別が必要である。絶縁層20,21が、光学的に不透過性又は着色性を有していることで、この整列が高速、かつ高精度に行うことが可能となる。ここで、光学的に不透明性又は着色性とは、光学的検査で、絶縁層20,21の有無が識別可能な程度であればよく、絶縁層20,21が形成されている電極部分3e,3f,4e,4f又は側面2e,2fの色を完全に隠蔽する必要はない。
【0051】
次に、図11を参照して、本実施形態の変形例に係る電子部品1の製造方法について説明する。図11は、本実施形態の変形例に係る電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【0052】
本変形例では、上述した実施形態と同様に、素体準備工程(S201)にて素体2を形成し、次に、外部電極ペースト層形成工程(S203)、外部電極ペースト層焼付け工程(S205)を行い、焼付け電極層31,41を形成する。
【0053】
焼付け電極層31,41の形成後、絶縁層形成工程(S207)を行う。ここでは、絶縁層20,21を、素体2の側面2e,2f、及び焼付け電極層31,41における側面2e,2fに形成された部分上に絶縁性材料(たとえば、絶縁性ガラス材料や絶縁性樹脂材料)をコーティングすることで形成する。絶縁層20,21は、少なくとも焼付け電極層31,41における側面2e,2fに形成された部分の表面を完全に覆うことが必要となる。これにより、図12に示されるように、焼付け電極層31,41と絶縁層20,21とが形成される。図12では、内部電極7,8などの図示を省略している。
【0054】
絶縁層20,21は、めっき液に対し耐食性を有し、特にバレルめっきを用いる際に剥離等の問題が発生しない強度を有し、かつ電子部品1の実装時のハンダ耐熱性を有する絶縁層であればよい。具体的には、絶縁性樹脂として、上述した実施形態で挙げたものと同様に、プリント基板のソルダーレジストとして用いられる金属酸化物顔料を用いた熱硬化性エポキシ樹脂塗料や、耐熱性塗料として用いられる金属酸化物顔料を用いたシリコーン樹脂系塗料、フッ素系樹脂塗料、フェノール樹脂系塗料、ユリア樹脂系塗料、メラミン樹脂系塗料、不飽和ポリエステル樹脂系塗料、ジアリルファタレート系樹脂塗料等の耐熱性樹脂塗料を用いることができる。絶縁層20,21の形成方法は、上述した実施形態と同様の手法を用いればよい。
【0055】
絶縁層20,21は、めっき液に対し耐食性を有するガラス組成からなるガラスペーストを塗布してガラスペースト層を形成し、その後、焼付けることにより得られる、絶縁性ガラス層とされてもよい。絶縁層20,21をガラスペーストの焼付け層で形成すれば、上述した耐熱性樹脂塗料を用いた場合と比較して、電子部品1を基板にはんだ実装した後、シンナー等でフラックス洗浄を行う場合の絶縁層20,21の洗浄溶剤によるダメージが発生しないため、より信頼性の高い電子部品1を実現できる。
【0056】
ガラスペーストとしては、焼付け電極層31,41の焼付け時の温度以下で焼付けが出来る低融点ガラス組成物が好ましく、例えばSr−Al−Si−B−O系ガラス、Ba−Al−Si−B−O系ガラス、Si−Ba−Li−O系ガラスをガラスフリットとして用いれば800℃〜700℃以下の焼付け温度でガラスペーストを焼付け、絶縁層20,21を形成することができる。また、ガラスペーストは他の無機フィラーを含んでも良く、結晶化ガラス組成でもよい。
【0057】
ガラスペーストに着色性の無機フィラーを含むことで、絶縁体層に着色性を付与することが可能となる。また、屈折率の異なる無機フィラーを含む、若しくは結晶化ガラス組成とすることで絶縁体層が光学的に不均一化し、光散乱性を得ることが可能となり、実質的な光学的不透明性を得ることができる。
【0058】
絶縁層20,21を形成した後、めっき工程(S209)が行われる。本変形例では、絶縁層20,21がめっき形成前の素体2の側面2e,2f、及び焼付け電極層31,41における側面2e,2fに形成された部分上に形成されているため、めっき層(Niめっき層33,43やSnめっき層35,45など)は、焼付け電極層31,41における端面2a,2b及び主面2c,2dに形成された部分(絶縁層20,21に覆われていない部分)の表面のみに形成される。
【0059】
たとえば、焼付け電極層31,41を、めっき層と異なる色味を有する導電性材料、例えばCu系金属組成とすれば、焼付け電極層31,41における側面2e,2fに形成された部分の色(電極色)と、めっき層を有する外部電極3,4の電極部分3c,3d,4c,4dの表面を異なる状態にすることが可能となり、絶縁層20,21に不透明性や、着色性を有しない場合でも光学的に識別可能とすることができる。
【0060】
その後、上述した実施形態と同様に、判別工程(S211)と梱包工程(S213)とを行う。
【0061】
本変形例の電子部品1は、プリント基板などへの実装の際に、主面2c又は主面2dを上面側に実装することで、外部電極3,4の電極部分3a,3b,3c,3d,4a,4b,4c,4dのみがはんだ濡れ性と導電性を有するため、上述した実施形態と同様の高密度実装が可能な電子部品1を実現できる。また、上述した実施形態と比較して、絶縁層20,21がめっき層より耐熱性の高い焼付け電極層31,41上に直接形成されているため絶縁層20,21の機械的及び熱的強度が高く、たとえば電子部品1を基板にはんだ実装する際、より高温のはんだ処理を行っても絶縁層20,21がダメージを受けることがなく、信頼性の高い電子部品1を実現することもできる。
【0062】
本変形例では、絶縁層20,21は、ガラス層からなる。絶縁性ガラスペーストを用いて絶縁層20,21を形成することにより、絶縁性樹脂による絶縁層と比較して、より機械的に強固で電気絶縁性に優れた絶縁層20,21を形成することができる。
【0063】
絶縁層20,21を形成後、電気めっき等によりめっき層を形成すれば、外部電極3,4は、焼付け電極層31,41における絶縁層20,21に覆われた部分以外にめっき層が形成された構成とすることができる。
【0064】
次に、図12及び図13を参照して、本実施形態の更なる変形例に係る電子部品1の製造方法について説明する。図13は、本実施形態の更なる変形例に係る電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【0065】
本変形例では、まず、上述した実施形態と同様に、素体準備工程(S301)にて素体2を形成する。
【0066】
次に、導電性ペースト層形成工程(S303)を行う。導電性ペースト層形成工程は、公知の導電性ペーストへの浸漬工法で形成することが出来る。具体的には、素体2を完成後、キャリアプレートなどの公知の保持冶具を用いて、素体2の一方の端面2aが上方を向くように他方の端面2b側において主面2c,2dを保持する。次に、保持冶具で保持された素体2の端面2aを塗布用ベッド上に入れられた導電性ペースト中に浸漬により塗布し、乾燥させることによって、第一導電性ペースト層を形成する。このとき、導電性ペーストに浸漬させる素体2の深さを適切に設定することで、素体2の五つの面2a,2c,2d,2e,2fに第一導電性ペースト層が形成される。第一導電性ペースト層を形成した後、素体2の反対面にも同様な工程を経て、素体2の五つの面2b,2c,2d,2e,2fに第二導電性ペースト層を形成する。
【0067】
次に、ガラスペースト層形成工程(S305)を行う。ガラスペースト層形成工程は、第一及び第二導電性ペースト層の形成後、導電性ペースト層形成工程(S303)素体2の側面2e,2f、及び第一及び第二導電性ペースト層における側面2e,2fに形成された部分上に、ガラスペースト層を形成する。ここでは、めっき液に対し耐食性を有するガラス組成からなるガラスペーストを用い、当該ガラスペーストを素体2の側面2e,2f、及び第一及び第二導電性ペースト層における側面2e,2fに形成された部分に塗布する。ガラスペースト層は、少なくとも第一及び第二導電性ペースト層における側面2e,2fに形成された部分の表面を完全に覆うことが必要となる。
【0068】
ガラスペーストとしては、第一及び第二導電性ペースト層と同時に焼付けが可能となるように、第一及び第二導電性ペースト層の焼付け温度より若干低い温度で焼付けが可能な低融点ガラス組成物が好ましく、たとえば、上記導電性ペーストで用いるガラスフリット組成を用いることが好ましい。ガラス組成はこれに限る物ではなく、たとえばSr−Al−Si−B−O系ガラス、Ba−Al−Si−B−O系ガラス、Si−Ba−Li−O系ガラスをガラスフリットとして用い、ガラス組成比率を調整することで、第一及び第二導電性ペースト層と同時に焼付けが可能な融点に調整してもよい。また、ガラスペーストは他の無機顔料を含んでもよく、結晶がガラス組成でもよい。
【0069】
次に、焼付け工程(S307)を行う。焼付け工程は、ガラスペースト層の形成後、たとえば780℃で熱処理を行うことによって、第一及び第二導電性ペースト層とガラスペースト層とを同時に焼付ける。これにより、図12に示されるように、焼付け電極層31,41と絶縁層20,21とが形成される。
【0070】
絶縁層20,21の形成後、めっき工程(S309)が行われる。本変形例でも、絶縁層20,21がめっき形成前の素体2の側面2e,2f、及び焼付け電極層31,41における側面2e,2fに形成された部分上に形成されているため、めっき層(Niめっき層33,43やSnめっき層35,45など)は、焼付け電極層31,41における端面2a,2b及び主面2c,2dに形成された部分(絶縁層20,21に覆われていない部分)の表面のみに形成される。
【0071】
その後、図示は省略するが、上述した実施形態と同様に、判別工程と梱包工程とを行う。
【0072】
本変形例の電子部品1も、プリント基板などへの実装の際に、主面2c又は主面2dを上面側に実装することで、外部電極3,4の電極部分3a,3b,3c,3d,4a,4b,4c,4dのみがはんだ濡れ性と導電性を有するため、上述した実施形態と同様の高密度実装が可能な電子部品1を実現できる。また、上述した変形例と比較して、本変形例では、絶縁層20,21と焼付け電極層31,41とが同時焼付けで形成されているため極めて強固に結合され、更に機械的強度が強く、耐熱性の高い絶縁層20,21が構成できる。たとえば、電子部品1を基板にはんだ実装する際、電子部品をハンドリングする際に、衝撃による絶縁層20,21の機械的欠陥発生が無く、さらに熱的にも強固であるため、より高温のはんだ処理を行っても絶縁層20,21がダメージを受けることがなく、極めて信頼性の高い電子部品1を実現することができる。
【0073】
第一及び第二導電性ペースト層とガラスペースト層とを一体焼成することで、上述した変形例と比較して、本変形例では、ガラスペーストを焼付ける工程を削減することが可能となり、電子部品1の製造コストを低減することが可能となる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0075】
たとえば、上述したように、絶縁層20,21は、めっき層を形成した後に形成してもよく、また、めっき層を形成する前に形成してもよい。
【0076】
たとえば、素体2の側面2e,2fが絶縁層20,21で覆われておらず、外部電極3,4における側面2e,2f側に位置する電極部分3e,3f,4e,4fの表面のみが、絶縁層20,21で覆われていてもよい。
【0077】
本発明は、積層コンデンサに限られることなく、積層インダクタ、積層バリスタ、積層圧電アクチュエータ、積層サーミスタ、又は積層複合部品などの他の電子部品にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、積層コンデンサなどの電子部品及びその製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
1…電子部品、2…素体、2a,2b…端面、2c,2d…主面、2e,2f…側面、3,4…外部電極、6…誘電体層、7,8…内部電極、20,21…絶縁層、31,41…焼付け電極層、33,43…Niめっき層、35,45…Snめっき層、SF…はんだフィレット、SS…基板、WP…配線パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の端面と、前記一対の端面を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面と、前記一対の主面を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面と、を有する素体と、
前記素体の前記端面側に形成され、該端面に隣接する前記主面及び前記側面の一部を覆う外部電極と、を備えており、
少なくとも前記外部電極における前記側面側に位置する電極部分の表面が、絶縁層で覆われていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記電極部分は、焼付け電極層を有し、
前記絶縁層は、前記焼付け電極上に設けられており、
前記外部電極における前記絶縁層で覆われていない部分は、焼付け電極層と、該焼付け電極上に設けられためっき層と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記絶縁層が、不透過性又は着色性を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
互いに対向する一対の端面と、前記一対の端面を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の主面と、前記一対の主面を連結するように伸び且つ互いに対向する一対の側面と、を有する素体と、前記素体の前記端面側に形成され、該端面に隣接する前記主面及び前記側面の一部を覆う外部電極と、を備えた電子部品の製造方法であって、
少なくとも前記外部電極における前記側面側に位置する電極部分の表面を、絶縁層で覆うことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記外部電極を、導電性ペーストの焼付け電極層と、めっき層と、で構成し、
前記絶縁層を、絶縁性樹脂をコーティングして形成することを特徴とする請求項4に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記素体に導電性ペーストを塗布し乾燥させて、導電性ペースト層を形成した後に、前記素体の前記側面及び前記導電性ペースト層における前記側面に形成された部分に、ガラスペーストを塗布してガラスペースト層を形成し、前記導電性ペースト層と前記ガラスペースト層とを一体焼成することにより、前記絶縁層を形成することを特徴とする請求項4に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記素体に導電性ペーストを塗布し乾燥させ、焼成して焼付け電極層を形成した後に、前記素体の前記側面及び前記焼付け電極層における前記側面に形成された部分に、ガラスペーストを塗布し、焼付けることにより、前記絶縁層を形成することを特徴とする請求項4に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記素体に導電性ペーストを塗布し乾燥させ、焼成して焼付け電極層を形成した後に、前記素体の前記側面及び前記焼付け電極層における前記側面に形成された部分に、絶縁性樹脂を塗布し、硬化させることにより、前記絶縁層を形成することを特徴とする請求項4に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−256758(P2012−256758A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129441(P2011−129441)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】