電気化学的発電装置及びその製造方法
【課題】電気化学的発電装置において、ホスト金属から成る穿孔シートを用い、合金の生成に伴う体積膨張によりシートの構造体及びその周囲環境に作用する機械的な応力を局部的に吸収できるようにする。
【解決手段】電気化学的発s電装置は、正極及びその集電体を含む薄膜と、後に負極を構成することを意図されたホスト金属シートと、アルカリイオンに対して伝導性を有する電解質と、アルカリイオン源とを備えている。ホスト金属シートは、空隙を有している。この空隙の量及び配列は、ホスト金属シートのあらゆる横膨張を局部的に吸収することができるように選択される。これにより、ホスト金属とアルカリイオンによってもたらされるアルカリ金属との間でシートに最初の合金生成が行われる時に、シートの平面における総ての累積的な変化を実質的に防止する。本発明の電気化学的発電装置の製造方法も開示される。
【解決手段】電気化学的発s電装置は、正極及びその集電体を含む薄膜と、後に負極を構成することを意図されたホスト金属シートと、アルカリイオンに対して伝導性を有する電解質と、アルカリイオン源とを備えている。ホスト金属シートは、空隙を有している。この空隙の量及び配列は、ホスト金属シートのあらゆる横膨張を局部的に吸収することができるように選択される。これにより、ホスト金属とアルカリイオンによってもたらされるアルカリ金属との間でシートに最初の合金生成が行われる時に、シートの平面における総ての累積的な変化を実質的に防止する。本発明の電気化学的発電装置の製造方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部応力緩和能を有する高密度合金アノードシートに関する。より詳細に言えば、本発明は、ホスト金属(host metal)から成るシートを含む負極を備えた電気化学的発電装置に関する。上記ホスト金属は、例えば、アルミニウム、鉛、銀、珪素、亜鉛、マグネシウム、炭素、又は、これらの組み合わせから形成される。ホスト金属製のシートは、後に負極を構成することを意図されている。ホスト金属製のシートは、ホスト金属とリチウムの如きアルカリ金属との間の合金を形成する際に、あらゆる横膨張を局部的に吸収すると共に、当該シートの平面のあらゆる変化を実質的に防止する性質を有している。
【背景技術】
【0002】
ポリマー電解質で作動するより技術的に進歩した発電装置は、アノードシートとして、金属リチウム、場合によってはナトリウム、あるいは、他のアルカリ金属を用いている。アルカリ金属は、展性があり、薄膜の形態で使用することができる(カナダ特許第2,099,526号(CA2,099,526)(特許文献1)、及び、カナダ特許第2,099,524号(CA2,099,524)(特許文献2))。しかしながら、温度が100°Cよりも高いような特定の極端な用途においては、金属リチウム又は他のアルカリ金属を使用すると、リチウム又はアルカリ金属の融解が生じて、電気化学的電池が破損する可能性がある。また、電気化学的サイクリングの強制的な条件の下では、例えば、非常に大きな再充電電流を用いた場合には、例えばリチウムの樹枝状結晶が形成されるという周知の欠点があるが、一方、より高いアノード電位(例えば、リチウムアルミニウム対リチウムに関しては、+300mV乃至450mV)で作動する合金は、リチウムの析出物を生じさせることがない。
【0003】
リチウムの如きアルカリ金属の合金を用いることが提案されており、これは、溶融塩の媒質で作動する発電装置の場合に成功することが証明されている(米国特許第4,489,143号(特許文献3))。有機媒質で、より詳細に言えばポリマー媒質で作動させ、電極膜の厚さが100マイクロメートル(μm)よりも小さい場合には、合金から成るシートの形態のアノードで作動させることが極めて困難になる。実際に、アノードとして使用することのできるリチウムの金属間化合物(例えば、LiAl、Li21Si5、Li22Pb5等)は、硬くて脆く、リチウム又は弱合金リチウムの場合のように、積層することができない。
【0004】
上述のアノードは、ポリマー電解質によって固化された金属間化合物の粉末から成る複合材料を製造することによって、薄膜の形態として作製することができ(カナダ特許第1,222,543号(特許文献4))、あるいは、特定の条件下では、シートの表面を化学的に処理することによって(米国特許第4,590,840号(特許文献5))、又は、上記シートの一部を電気化学的に装荷することによって(米国特許第4,794,060号(特許文献6))、アノードのホスト金属から成るシートをプレアロイ化(pre−alloy)することが可能であった。しかしながら、特定の条件下で作動可能な上述の技術は、反応性の物質を用いており、また、上記事前挿入された合金は、発火性を有することが多く、従って、パフォーマンスの運用及び最適化を困難にする。上述のアノードは、放電状態で作製されるが、克服するのが困難な主要な事項の一つは、構造体に大きな応力を与える合金が生成することによって生ずる大きな体積変化に起因している。
【0005】
ポリマー電解質発電装置を組み立てる間に又はその後に、リチウムを全く含まないホスト金属から成るシートから合金を形成しようとすると、該シートの厚さ方向における構造体の体積の膨張は、例えば、積層されたシートの全厚さの増大を許容することによって、電池を適正に設計することにより補償することができる。より詳細に言えば、厚さ方向における変化は、非常に小さく、従って、より無視できるようになる。
【0006】
しかしながら、シートの平面におけるホスト金属の膨張は、シートの全面に沿って蓄積され、そのような膨張によって生ずる局部応力を許容する褶曲部が形成される。その結果、各電極の間に短絡回路が形成されるか、あるいは、機械的な欠陥が生じて、発電装置の運転を阻害する。この現象は、図4のポリマー電解質発電装置のリチウムと合金化アルミニウムから成る通常のシートの場合について、図6の写真に示されている。実際の発電装置においては、生成した表面、各膜の間の接着、及び、電池全体にわたって維持される圧力が、上記横膨張を許容するホスト構造のあらゆる摺動を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】カナダ特許第2,099,526号
【特許文献2】カナダ特許第2,099,524号
【特許文献3】米国特許第4,489,143号
【特許文献4】カナダ特許第1,222,543号
【特許文献5】米国特許第4,590,840号
【特許文献6】米国特許第4,794,060号
【発明の概要】
【0008】
本発明は、正極及びその集電体を含む薄膜と、後に負極を構成することを意図されたホスト金属から成るシートと、アルカリイオンに対して伝導性を有する電解質と、アルカリイオン源を構成する手段とを備える電気化学的発電装置に関し、この電気化学的発電装置は、上記ホスト金属から成るシートに空隙が設けられており、上記ホスト金属から成るシートにおける上記空隙の量及びその配列が、上記ホスト金属から成るシートのあらゆる横膨張を上記空隙の中に局部的に吸収すると共に、上記ホスト金属と上記アルカリイオンによって導入されたアルカリ金属との間で上記シートに合金が最初に生成された後に、上記ホスト金属から成るシートの平面のあらゆる累積的な変化を実質的に阻止するように選択されている、という特徴を備えている。
【0009】
本発明の発電装置は、充電状態においては、上記シートが、上記ホスト金属及び上記アルカリ金属から成る合金に少なくとも部分的に転化される、という特徴を有していることに注意する必要がある。
【0010】
本発明の好ましい実施例によれば、上記アルカリイオン源は、上記ホスト金属から成るシートに接触するアルカリ金属から成るシートから構成されており、上記アルカリ金属は、発電装置が充電状態にある時に上記ホスト金属と合金化される上記アルカリイオン源から発生する。
【0011】
別の実施例によれば、上記アルカリイオン源は、上記正極にあり、また、上記アルカリイオン源及び上記アルカリ金属から成るシートから得られる上記アルカリ金属は、発電装置が充電状態にある時に、上記ホスト金属と合金化される。
【0012】
別の実施例によれば、上記アルカリイオン源は、上記ホスト金属から成るシートに接触しているアルカリ金属から成るシートから構成されると共に、上記正極にも存在しており、上記アルカリイオン源及び上記アルカリ金属から成るシートから得られる上記アルカリ金属は、発電装置が充電状態にある時に、上記ホスト金属と合金化される。上記アルカリ金属は、リチウムであるのが好ましい。
【0013】
別の実施例によれば、上記ホスト金属は、高活性アルカリ金属と合金を生成することができ且つ上記アルカリ金属の拡散が迅速である金属から構成されている。例えば、高活性アルカリ金属との合金は、純粋なアルカリ金属の電位に関して、0ボルトと+1.5ボルトとの間の電位を有している。上記ホスト金属は、Al、C、Sn、Pb、Ag、Si、Zn、Mg、又は、これらの組み合わせから選択されるのが好ましい。本発明を説明する文脈の範囲内において、これは厳密な定義ではないが、炭素は金属であると見なすことを理解する必要がある。
【0014】
ホスト金属から成るシートの上記空隙は、通常、そのようなホスト金属から成るシートの全面積の約5%乃至80%に相当し、約5%乃至30%であるのが好ましい。上記空隙は、格子の形態、あるいは、打ち抜き加工/引き伸ばし加工並びに恐らくは再薄板化加工(relaminating)によって得られるエキスパンドメタルの形態とすることができる。
【0015】
アルカリイオンに対して伝導性を有する上記電解質は、ポリマー電解質を含むのが好ましい。また、上記電解質は、ポリマーマトリックスと、液体電解質と、該液体電解質の中に少なくとも部分的に溶解する塩とから構成することもできる。
【0016】
上記空隙は、ホスト金属から成るシートの一方又は両方の面に、凹部の形態として設けることができる。これらの凹部は、彫刻加工又は凹陥加工(depressing)によって形成されるのが好ましく、また、上記空隙の量は、上記凹部を含む面の約5%乃至80%、好ましく、約5%乃至30%に相当する。上記凹部は、通常、合金の生成によりホスト金属から成るシートの平面に生ずるあらゆる横膨張を実質的に補償するように、配列される。
【0017】
別の実施例によれば、上記ホスト金属から成るシートは、該シートの面の少なくとも一方に設けられるポリマー電解質から成る層を備えており、該層は、上記ホスト金属から成るシートに設けられていて、合金とアルカリイオンに対して伝導性を有する上記電解質との間のイオン交換を最大限にし、また、上記電解質は、上記負極と上記正極との間のセパレーターとして作用する。
【0018】
上記ポリマー電解質は、炭素を含むことができ、該炭素は、電子伝導の添加剤又は促進剤として作用するように、上記ポリマー電解質の中に分布されていて、イオン交換及び電子交換を最大限にする。
【0019】
上記リチウムのシートは、上記ホスト金属から成るシートの一方の側部にだけ設けることができる。上記リチウムのシートは、上記ホスト金属から成るシートの両側部に設けることもできる。
【0020】
上記合金は、一般的に、発電装置を組み立てる時に得られる。上記合金は、発電装置を組み立てた後の活性化反応の間に得ることもできる。
別の実施例によれば、上記リチウムのシートは、上記正極に対向する上記ホスト金属から成るシートに設けられていて、発電装置を組み立てた後の合金の生成を遅延させると共に、発電装置を組み立てる作業の安全性を極力高める。上記ホスト金属は、上記アルカリ金属よりも過剰の量であるのが好ましく、これにより、上記ホスト金属の一部を未反応状態として残して、そのような未反応状態のホスト金属が、上記ホスト金属から成るシートの平面の上で集電体として作用することができるようにする。
【0021】
本発明の発電装置は、通常、円筒形又は平坦に巻かれた膜、あるいは、平坦に重積された膜から構成される。また、上記ホスト金属から成るシート、及び、上記正極の集電体は、上記円筒形又は平坦に巻かれた膜、あるいは、平坦に重積された膜の両側部の上で突出して、上記集電体及び上記ホスト金属から成るシートのそれぞれの側縁部の全体に対する効率的な電流接続を許容するようにするのが好ましい。上記電流接続は、例えば上記シートの側縁部全体に沿って導電性金属を粉砕することにより得られる。
【0022】
別の実施例によれば、合金のシートから成る上記負極は、発電装置を組み立てた後に、上記ホスト金属から成るシート、及び、該ホスト金属から成るシートに接触している上記アルカリ金属から成るシートを熱処理することによって得られ、この熱処理は、加圧下で又は機械的に拘束することにより、また、負極のシートが平坦な状態を確実に維持する条件下で実行される。
【0023】
上記ホスト金属は、約1μm乃至約150μmの厚さを有するのが好ましく、約10μm乃至約100μmの厚さを有するのが特に好ましい。
本発明は、また、電気化学的発電装置の製造方法にも関係し、この製造方法は、正極及びその集電体を含む薄膜、後に負極を構成することを意図されたホスト金属から成るシート、アルカリイオンに対して伝導性を有する電解質、並びに、アルカリイオン源を構成する手段を準備する工程と、上記負極及び上記シートを上記伝導性を有する電解質の両側部に設ける工程とを備えており、上記シートは、空隙を有するホスト金属から成るシートから選択され、上記ホスト金属から成るシートにおける上記空隙の量及びこれら空隙の配列は、上記ホスト金属から成るシートのあらゆる横膨張を上記空隙の中に局部的に吸収し、これにより、上記ホスト金属と上記アルカリイオンによりもたらされるアルカリ金属との間で上記シートに合金が最初に生成される時に、上記ホスト金属から成るシートの平面におけるあらゆる累積的な変化を実質的に防止するように選択され、本製造方法は、更に、その後上記膜、上記伝導性を有する電解質及び上記アルカリイオン源を組み立てて発電装置を構成する工程を備えている。
【0024】
従って、本発明は、例えば、合金化アノードから成るシートを形成するものであり、該シートは、発電装置を組み立てる間に形成されるのが好ましく、また、ホスト金属から成る穿孔シート及びリチウム源から構成される。上記合金の生成は、発電装置を組み立てる時に、又は、上記合金を調製する後の工程の間に実行されるのが好ましい。使用されるのが好ましいプロセスは、金属リチウムから成るシートのホスト金属を化学的に熱処理するプロセス、あるいは、リチウムと合金化されているのが好ましいカソード(例えば、LiCoO2、Li2Mn2O4を含む)から出発したホスト金属を電気化学的に充電するプロセス(米国特許第5,425,932号)である。
【0025】
本発明の主要な目的は、ホスト金属から成る穿孔シートを用いて、合金の生成に伴う体積膨張により上記シートの構造体及びその周囲環境に作用する機械的な応力を「局部的」に吸収できるようにすることである。使用することのできるアルミニウムから成るホスト構造の非制限的な例が、EXMET(登録商標)の名称で商業的に入手可能であり、ある種のバッテリに不活性集電体として現在使用されている製品に関して、図1に示されている。これらの集電体は、本発明において探し求められている性質も備えることができることが観察された。特にサイクリング及び安全性に関して、ポリマー電解質発電装置における上記集電体の新規な使用、及び、アノードとしての良好な作用が確立されている。現在入手可能な上記製品における開口の量は、極めて高く、例えば、図1に示すように、25マイクロメートルの厚さのシートに関して、表面の50%近くが穿孔されている。この開口のパーセンテージは、実際には合金の生成の後に満たされるアノード表面を形成するために、減少させることができる。
【0026】
勿論、本発明の特徴を再現する他の構造も可能であり、そのような構造は、例えば、機械的なプロセス又は同様なプロセスによってシートに形成される彫刻構造によって得ることができる。穿孔部及び/又は空隙の配列、その寸法、並びに、シートの体積パーセンテージは、シートの平面におけるホスト金属の体積膨張を吸収し、これにより、反応の後の合金化シートの密度を最適化すると共に、合金化シートの平坦な表面を維持するように選択される。本発明の図2及び図3は、合金の生成の間にホスト金属に起こる事象を示している。
【0027】
本発明の利点の一つは、合金が高密度の形態(複合物ではない)であって、発電装置を作動させた後に生成されるのが好ましいという事実により、作動が容易で、安全性を有しているということである。また、本発明は、高密度のゾーンが存在するために、容積エネルギ密度の最適化に寄与すると共に、空隙率を制御して、合金が生成して構造体が膨張した後にアノードのシートの残留空間に存在するポリマーを最適化することによって、発電装置の出力を最適化することに寄与する。ポリマー電解質と共に使用された場合の本発明の他の利点は、アノードの高密度部分へのポリマー電解質の浸透速度を最小限にし、これにより、合金化構造の電気接点の品質を維持することである。当然、ポリマーは合金に浸透しないので、合金の粒子を孤立させることはできない。
【0028】
本発明を作動させる効果的な方法は、ソースすなわち補給源中のリチウムの量を制御して、合金の生成の後にホスト金属の一部を未反応の状態で残し、これにより、シートの平面において横方向の集電体として作用させることである。
【0029】
本発明のアノードを作動させる簡単な方法は、上述のEXMET(登録商標)を所定厚さのリチウムシートに与えることである。そのような作動の重要な部分が、図2、図3及び図4に示されており、以下の例において詳細に説明される。勿論、穿孔部の数、空隙を形成する方法、並びに、合金化シートの密度を最適化して合金の生成により局部的に発生する応力を吸収するための空隙の幾何学的形状は、ホスト金属の性質及び意図するエネルギ密度に応じて、また、当業者には周知の他のパラメータの関数として変えることができる。例として、表1及び図22は、穿孔部の数を最適化するための、特定の数の可能なホスト化合物の重要な性質、並びに、等量のリチウム合金の生成により生ずる体積変化を示している。
【0030】
一般的に言えば、特に限定するものではないが、十分に高密度であり且つ平坦であって電気化学的及び安全上の性能すなわちパフォーマンスが最適なシートを得るためには、穿孔部の数は、5%乃至80%の間、好ましくは、5%乃至30%の間で変化する。実際に、金属リチウムの量に関するホスト金属の量は、過剰のホスト金属が残って、シートの平面のアノードのための集電体として作用することができるように、概ね調節される。
【0031】
アルミニウムの如きある種の金属に関しては、ホスト金属の表面に炭素複合物から成る薄膜を使用することにより、例えば、電子接点の品質に関して、均一な合金の生成を促進することが判明した。
【0032】
製造すべき発電装置のタイプに応じて、1又はそれ以上のリチウムシートをホスト金属から成る中央シートに用いるか、あるいは、反対に、2つのホスト金属シートを1つのリチウムシートに用いる。
【0033】
図20に示すように、電気化学的発電装置を製造する好ましい方法は、カソード(集電体及び複合カソード)のシート及び電解質のシートを、ホスト金属シート及びリチウムシートの形態のアノードと共に巻着する(モノフェース(monoface)すなわち単面システムの場合には、ポリプロピレンの如き絶縁プラスチックフィルムと共に巻く)。
【0034】
図21は、バイフェース(biface)すなわち両面システムの電気化学的発電装置を製造する好ましい方法を示しており、この方法においては、カソード(集電体及び複合カソード)及び電解質のシートを、一枚のホスト金属シート及び二枚のリチウムシートから成る形態のアノードと共に巻着する。このアセンブリにおいては、カソード(集電体)及びアノード(リチウムから突出するホスト金属)のそれぞれのシートは、上記巻着体の両側部から突出し、これにより、各々の突出するシートの全縁部に電極を集めることができるようになっている。次に、粉砕された金属を上記巻着体の端部に塗布して、最適な電気的及び熱的な交換を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】EXMET(登録商標)タイプのアルミニウム製の拡張シートを200倍の倍率の走査型電子顕微鏡で撮影した写真(金属組織の写真)である。
【図2】本発明の合金化電極の形成を示す概略的な斜視図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】リチウムシート及び拡張アルミニウムのホスト構造から合金を生成する状態をその場で光学的に観察することを可能にする実験装置の垂直方向断面図である。
【図5】アルミニウムシート(全面)、並びに、図4に示す装置によって上記アルミニウムシートに機械的に付与されたリチウムシートの合金生成前の特徴を示す写真(金属組織の写真)である。
【図6】80°Cにおける化学反応によって合金が生成されてリチウムが消失した後に撮影された点を除いて図5と同様な写真(金属組織の写真)である。
【図7】合金生成後に図4の装置によって撮影した拡張アルミニウムシート及びリチウムシートの特徴を示す写真(金属組織の写真)である。
【図8】拡張アルミニウムシートをリチウムシートと共に図4の装置の中で80°Cで加熱した後の図1と同様のEXMET(登録商標)のシートの詳細を示す走査型電子顕微鏡で撮影した精密写真(金属組織の写真)である。
【図9】褶曲部又は溝が無い大きな表面を示す点を除いて図8に示すシートと同様なシートを走査型電子顕微鏡で撮影した写真(金属組織の写真)である。
【図10】モノフェース型のアノードバッテリを備える本発明の発電装置を製造する状態を示す概略的な垂直方向断面図である。
【図11】タイプIの炭素に基づくフィルムを有するモノフェース型アノードバッテリに関する点を除いて、図10と同様な概略図である。
【図12】タイプIIの対して相対的に基づくフィルムを有するモノフェース型アノードバッテリに関する点を除いて、図10と同様な概略図である。
【図13】タイプIIIの炭素に基づくフィルムを有するモノフェース型アノードバッテリに関する点を除いて、図10と同様な概略図である。
【図14】バイフェース型アノードバッテリに関する点を除いて、図13と同様な概略図である。
【図15】通常のリチウム発電装置及び図11の発電装置の初期放電を比較する曲線を示すグラフである。
【図16】通常の発電装置及び本発明の発電装置に関するARCによる安定性を比較して示すグラフである。
【図17】発電装置が図14に示す発電装置である点を除いて、図15と同様なグラフである。
【図18】図11に示す発電装置のサイクリング曲線を示すグラフである。
【図19】図13に示す発電装置のサイクリング曲線を示すグラフである。
【図20】モノフェース様式で平坦に巻着された本発明のバッテリのアセンブリの放電状態を概略的に示す斜視図である。
【図21】バイフェース様式で平坦に巻着された本発明のバッテリのアセンブリの放電状態を概略的に示す斜視図である。
【図22】種々の合金の体積膨張を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、非制限的な例を示す図面に示されている。
図1においては、拡張(expanded)アルミニウムは、25マイクロメートルの厚さを有しており、この拡張アルミニウムは、切断され、引き伸ばされ、更に、平坦化されたものである。
【0037】
ここで図2及び図3を参照すると、これらの図は、局部応力緩和能を有する合金化された「高密度」負極を化学的に作動させる原理を示している。図2は、合金化シートを生成させる一連の作業を示しており、図3は、合金生成の間の拡張シートの挙動を断面で示している。この例においては、拡張アルミニウムシートとリチウムシートとの間にある圧力を維持して、両シートを確実に接触させると共に、両シートの表面の変形を防止している。温度上昇により、急速な合金生成が生じ、この合金生成は、例えば、図4の装置を用いて行わせることができる。
【0038】
図10乃至図14を参照すると、図示の集電体は、一般的に、通常のアルミニウムシートであり、SPEは、ポリマー電解質を示しており、Cは、接着性のポリマー電解質の中に分散された炭素の薄膜を示している。(+)は、複合カソードを示しており、この複合カソードは、充電された反応材料すなわち活物質と、炭素と、接着性のポリマー電解質とから形成されている。Hは、合金LiAlが生成される前に拡張されたホスト金属(Al)のシートを示している。以上の事柄は、より詳細に言えば、以下のように図示されている。
【0039】
図10は、バッテリのモノフェースをAl集電体(+)/SPE/Li°/Hの順序で示しており、
図11は、タイプIの炭素の複合膜を有するモノフェース型アノードを備えたバッテリを、Al集電体(+)/SPE/Li°/C/Hの順序で示しており、
図12は、タイプIIの炭素の複合膜を有するモノフェース型アノードを備えたバッテリを、Al集電体(+)/SPE/H/C/Li°の順序で示しており、
図13は、タイプIIIの炭素の複合膜を有していて、放電状態で作製されたモノフェース型アノードを備えたバッテリを、Al集電体/LiCoO2/SPE/C/Hの順序で示しており、
図14は、バイフェース型アノードを備えたバッテリを、Al集電体(+)/SPE/Li°/H/Li°/SPE/(+)/Al集電体の順序で示している。
【0040】
図15を参照すると、比較された初期放電の曲線は、以下のバッテリに関するものである。◎
(a)Al集電体/(V2O5)/SPE/Li°、及び、
(b)Al集電体/(V2O5)/SPE/Li°/C/H(Hは、タイプIのEXMET(登録商標)の形態である)。
【0041】
図16を参照すると、この安定度試験は、以下のバッテリに関するものである。◎
(a)SPE/Li°、及び、
(b)Al集電体/(V2O5)/SPE/H/C/Li°(Hは、EXMET(登録商標)の形態のAlである)。
【0042】
図17において、比較された初期放電の曲線は、以下のバッテリの曲線である。◎
(a)Al集電体/(V2O5)/SPE/Li°、及び、
(b)Al集電体/(V2O5)/SPE/H/C/Li°(Hは、タイプIIのEXMET(登録商標)の形態のAlである)。
【0043】
図18、例3及び図11に示すタイプIのバッテリに関するサイクリング曲線を示している。
図19は、以下のバッテリのサイクリング曲線を示している。◎
Al集電体/LiCoO2/SPE/C/H(Hは、EXMET(登録商標)の形態のAlである)。
【0044】
図20は、バイフェース様式で平坦に巻着されているバッテリのアセンブリの概略図であって、上記バッテリは、炭素と、側部同士が接合された二枚の金属リチウムシートとで被覆された拡張アルミニウムから形成されたアノードを備えている。
【0045】
図21は、バイフェース様式で巻着されている放電状態のバッテリの概略図であって、このバッテリは、炭素と、互いに接合された二枚の金属リチウムシートとで被覆された拡張アルミニウムから形成されたアノードを備えており、このバッテリにおいては、過剰のホスト金属が、アノードのシートのための集電体として用いられており、合金化されていないホスト構造が巻着体の一端部において横方向に突出している。図21においては、アノードのホストシートのカソードのアルミニウム集電体の横方向の突出部は、粉砕された金属接点によって集合されている。
【0046】
ここで、非限定的な例として示す以下の実例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0047】
例 1
この例は、厚さが20マイクロメートルの通常のアルミニウムシートが、厚さが18マイクロメートルの金属リチウムシートに接触した場合の性能すなわちパフォーマンスを示している。重積されたシートは、図5乃至図7に示す試験の最初に示されていて、図4の装置によって作製される。
【0048】
80°Cで1時間にわたって加熱した後に、リチウムシートは、アルミニウムとの反応によって溶解し、また、上記アルミニウムは、合金の生成により生ずる横膨張の結果、シートの平面から突出する複数の褶曲部を形成することが観察された。ポリマー電解質を有する完全なバッテリにおいては、上記現象は、一般に、短絡回路を生じさせる。
例 2
この例においては、上記高密度アルミニウムのシートを、EXMET社(米国コネチカット州Naugatuck)によって商業的に製造されているエキスパンドメタルのシートで置き換えることによって、例1の試験を再現している。リチウムをアルミニウム合金と完全に反応させるために、上記アルミニウム合金を複合炭素の薄膜で被覆した。使用したアルミニウムの平坦化した後の厚さは、25マイクロメートルであった。穿孔された表面は、シートの全面積の約50%に相当し、開口の幅は、約145マイクロメートルであった。この例においては、開口の割合は、反応後の合金化構造を完全に閉じるためには大き過ぎる。
【0049】
図8、図9及び図7においては、リチウムと化学反応した後のホスト構造の詳細を見ることができる。また、この例においては、上の例1とは異なり、挿入の間に溝が全く形成されておらず、従って、体積変化及び応力を局部的に吸収することができないことに注意する必要がある。シートは、完全に平坦な状態のままであり、これは、薄膜を有するポリマー電解質発電装置を良好に作動させるための重要な条件である。電子顕微鏡(図8及び図9)で認識することのできるこの試験の他の驚くべき効果は、アルミニウムの構造から網の上に合金を生成させることにより、表1の値から予測されるものよりも小さな、高密度部分の横膨張が生ずるということである。観察された膨張は、約10%であり、一方、表1から予測される値は94%である。この現象は、挿入を許容するリチウム源の指向性、並びに、製造された装置の完全性(solid nature)から生ずるものである。以上の観察は、最適化されたアルミニウムの構造(EXMET(登録商標))は、20%程度の量の穿孔部を有する必要があるということを示唆している。
例 3
以下に述べる例においては、約4cm2の表面を有する完全な発電装置が製造される。この発電装置は、この例3に関して図11に示すように、Al集電体(+)/SPE/Li°/C/Hの構造から形成されており、この構造は、以下の膜、すなわち、厚さが13マイクロメートルのアルミニウム集電体と、酸化バナジウムを含む厚さが約45マイクロメートルの複合カソードと、炭素導体と、接着性ポリマーとから構成されている。該接着性ポリマーは、エチレンオキシド系のコポリマー、及び、リチウム塩(CF3SO2)2NLiから構成されており、O(ポリエーテルの)/Li(塩の)で表すそのモル比は、30/1である。このカソードの静電容量は、1平方cm当たり約4クーロンである。セパレーターは、接着剤と同じ性質を有しており、その厚さは、30マイクロメートルである。この正の半電池は、80°Cで加圧することによって取り付けられている。一方、リチウム膜が、取り扱いを容易にするために剥離可能なサポートに取り付けられた約10マイクロメートルの厚さの複合炭素の薄膜に対して、80°Cで圧接される。上記炭素のコーティングは、80°Cの熱い状態でHで示される25マイクロメートルの厚さのEXMET(登録商標)シートに移送されて、電気的な交換及びイオン交換を促進する。
【0050】
最後に、上記正の半電池は80°Cで、Li°/C/Hのアセンブリのリチウム面に移送され、これにより製造された発電装置(タイプI)は、以下の例において説明する後の試験を行うために、60°Cに維持される。
【0051】
この例、並びに、以下の例においては、ホスト構造の一部を未反応の状態で残すために、最初に存在するリチウムの量に関して約20%過剰のアルミニウムを使用し、これにより、シートの平面における集電体の連続性を確保している。
例 4
この例においては、例3(タイプI)の発電装置の性能が、アノードがリチウムの単純なシートである等価の発電装置と比較される。
【0052】
初期の放電曲線が、図15において比較されており、この図においては、性能は同様であるが、平均電圧が低いことが分かる。この電圧低下は、合金Li−Alのリチウムの活性の低下に対応し、Li°に対して約+270mV乃至+420mVである。
【0053】
本発明の合金化アノードを用いた発電装置のサイクリングの間の性能(図18)は、安定化され、金属リチウムを用いた発電装置の性能に比肩しうるものであることが判明した。参考として、通常のアルミニウムシートを用いた同じ発電装置は、短絡回路を形成し、第1のサイクルの間に既に幾分かのキャパシティを失う。
例 5
この例は、図12に示すように、炭素複合物の膜の位置が異なっている点を除いて、例3及び例4の要素と同じ要素を含んでいる。初期の放電曲線も、図17に示すように、リチウムアノードを有する等価のバッテリの初期の放電曲線と比較されている。この装置の利点は、この時点においてバッテリを活性化させることなく、そのようなバッテリの組み立てを行うことができることである。合金の生成反応が完了した時にだけ、バッテリは、その完全な電位容量に達し、これにより、バッテリの組み立て作業は更に安全になる。
例 6
この例においては、安全に関する本発明の重要な特徴を示すために試験を行っている。
【0054】
使用したバッテリは、金属リチウムアノードを有する同一のバッテリとの熱平衡の比較試験を行うために図12に示す例5の装置に相当するものである。
使用した技術は、Columbia Scientific(米国テキサス州Austin)のARC(Accelerated Rate Calorimetry)の名称で知られており、バッテリの各要素の間の自発的な熱化学反応により追加の熱が発生する(一時的な温度上昇の安定化)まで、サンプルの温度を極めて高い温度で順次上昇させる。これは、敏感であり、過酷な使用条件において危険をもたらす可能性のある発熱反応を集中させる技術として知られている。
【0055】
熱量測定比較試験ARCは、例5で作製された約0.5157gの重量の本発明のタイプIIの完成された電池と、上述の試験と同一のポリマー電解質の膜、及び、厚さが22マイクロメートルの金属リチウムの膜から成るサンプルとの間で行った。
【0056】
図16に示すサンプルの場合には、温度上昇曲線は、完全なバッテリを取り扱った場合でも、観察した全温度範囲において自己発熱効果を示さない。
カソードを有さず金属リチウムを有する図16のサンプル(a)は、発熱状態を示し、これは、255°C(すなわち、約180°Cであるリチウムの融解温度よりも高い)まで観察できる。完全なサンプル(すなわち、カソードも有する)は、リチウムの融解の後に生ずる短絡回路に起因する高い発熱状態を示すことがある。
【0057】
この試験は、安全性の観点からの本発明の効果を良好に示しており、その理由は、薄く高密度の膜の形態である非易融性の合金化リチウム製のアノードを製造することができ、従って、300°Cよりも高い温度において完全に固体状態にある発電装置を製造することができるからである。
例 7
この例においては、図13に示す装置を使用しており、この装置においては、リチウム源は、放電状態で作製されたカソードから生ずる。この場合においては、酸化バナジウムが、合成により作製されて事前挿入された酸化コバルトによって置き換えられている。
【0058】
図19は、タイプIIの複合膜で作製されたモノフェース型アノードを有していて以下の構造に相当する本バッテリの電圧のサイクリングの間の進展を示している。◎
Al集電体/LiCoO2/SPE/C/H
例 8
この例においては、以下の膜を図14、図20及び図21に示す如きダブル・バイフェース(double biface)の形態で一緒に巻着することにより、バッテリを組み立てた(上記図面において、炭素の膜は、ホスト構造の各々の面に付与された状態で示されていない)。
【0059】
SPE/(+)/Al集電体/(+)/SPE、並びに、
Li°,C/H/C、及び、Li°(組み立ての間に接触している)。
上記アセンブリを40°Cで、その後、80°Cで30分間にわたって加圧し、これにより、合金の生成を完了させる。
【0060】
Shooping(カナダ特許第2,068,290号)の技術によって、カソードのアルミニウム集電体の横方向突出部、及び、アノードの未反応アルミニウムのホスト金属の横方向突出部に、銅の粉末を付与することによって、横方向接点が形成される。
【0061】
このアセンブリの電気化学的性能は、例3及び例4に示す4cm2のバッテリの性能と同等である(総ての割合は、使用される表面に関して考えられる)。
例 9
この例においては、レーザで穿孔された銅の薄いシートの組成(Li4Sn)の合金が生成される間の性能が、図4の装置によって示されている。シートを雑に作製したにも拘わらず、シートの平面のあらゆる変形が挿入の間に除去されることが観察された。
【0062】
【表1】
【0063】
上の表1は、文献(R. Nesper. Prog. Solid St. Chem., Vol. 20, pp. 1−45, 1990)に従って計算された種々の合金の体積膨張を示している。
【0064】
請求の範囲に包含される限りにおいて、当業者に自明の変更例が、本発明の範囲から逸脱することなく、可能であることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部応力緩和能を有する高密度合金アノードシートに関する。より詳細に言えば、本発明は、ホスト金属(host metal)から成るシートを含む負極を備えた電気化学的発電装置に関する。上記ホスト金属は、例えば、アルミニウム、鉛、銀、珪素、亜鉛、マグネシウム、炭素、又は、これらの組み合わせから形成される。ホスト金属製のシートは、後に負極を構成することを意図されている。ホスト金属製のシートは、ホスト金属とリチウムの如きアルカリ金属との間の合金を形成する際に、あらゆる横膨張を局部的に吸収すると共に、当該シートの平面のあらゆる変化を実質的に防止する性質を有している。
【背景技術】
【0002】
ポリマー電解質で作動するより技術的に進歩した発電装置は、アノードシートとして、金属リチウム、場合によってはナトリウム、あるいは、他のアルカリ金属を用いている。アルカリ金属は、展性があり、薄膜の形態で使用することができる(カナダ特許第2,099,526号(CA2,099,526)(特許文献1)、及び、カナダ特許第2,099,524号(CA2,099,524)(特許文献2))。しかしながら、温度が100°Cよりも高いような特定の極端な用途においては、金属リチウム又は他のアルカリ金属を使用すると、リチウム又はアルカリ金属の融解が生じて、電気化学的電池が破損する可能性がある。また、電気化学的サイクリングの強制的な条件の下では、例えば、非常に大きな再充電電流を用いた場合には、例えばリチウムの樹枝状結晶が形成されるという周知の欠点があるが、一方、より高いアノード電位(例えば、リチウムアルミニウム対リチウムに関しては、+300mV乃至450mV)で作動する合金は、リチウムの析出物を生じさせることがない。
【0003】
リチウムの如きアルカリ金属の合金を用いることが提案されており、これは、溶融塩の媒質で作動する発電装置の場合に成功することが証明されている(米国特許第4,489,143号(特許文献3))。有機媒質で、より詳細に言えばポリマー媒質で作動させ、電極膜の厚さが100マイクロメートル(μm)よりも小さい場合には、合金から成るシートの形態のアノードで作動させることが極めて困難になる。実際に、アノードとして使用することのできるリチウムの金属間化合物(例えば、LiAl、Li21Si5、Li22Pb5等)は、硬くて脆く、リチウム又は弱合金リチウムの場合のように、積層することができない。
【0004】
上述のアノードは、ポリマー電解質によって固化された金属間化合物の粉末から成る複合材料を製造することによって、薄膜の形態として作製することができ(カナダ特許第1,222,543号(特許文献4))、あるいは、特定の条件下では、シートの表面を化学的に処理することによって(米国特許第4,590,840号(特許文献5))、又は、上記シートの一部を電気化学的に装荷することによって(米国特許第4,794,060号(特許文献6))、アノードのホスト金属から成るシートをプレアロイ化(pre−alloy)することが可能であった。しかしながら、特定の条件下で作動可能な上述の技術は、反応性の物質を用いており、また、上記事前挿入された合金は、発火性を有することが多く、従って、パフォーマンスの運用及び最適化を困難にする。上述のアノードは、放電状態で作製されるが、克服するのが困難な主要な事項の一つは、構造体に大きな応力を与える合金が生成することによって生ずる大きな体積変化に起因している。
【0005】
ポリマー電解質発電装置を組み立てる間に又はその後に、リチウムを全く含まないホスト金属から成るシートから合金を形成しようとすると、該シートの厚さ方向における構造体の体積の膨張は、例えば、積層されたシートの全厚さの増大を許容することによって、電池を適正に設計することにより補償することができる。より詳細に言えば、厚さ方向における変化は、非常に小さく、従って、より無視できるようになる。
【0006】
しかしながら、シートの平面におけるホスト金属の膨張は、シートの全面に沿って蓄積され、そのような膨張によって生ずる局部応力を許容する褶曲部が形成される。その結果、各電極の間に短絡回路が形成されるか、あるいは、機械的な欠陥が生じて、発電装置の運転を阻害する。この現象は、図4のポリマー電解質発電装置のリチウムと合金化アルミニウムから成る通常のシートの場合について、図6の写真に示されている。実際の発電装置においては、生成した表面、各膜の間の接着、及び、電池全体にわたって維持される圧力が、上記横膨張を許容するホスト構造のあらゆる摺動を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】カナダ特許第2,099,526号
【特許文献2】カナダ特許第2,099,524号
【特許文献3】米国特許第4,489,143号
【特許文献4】カナダ特許第1,222,543号
【特許文献5】米国特許第4,590,840号
【特許文献6】米国特許第4,794,060号
【発明の概要】
【0008】
本発明は、正極及びその集電体を含む薄膜と、後に負極を構成することを意図されたホスト金属から成るシートと、アルカリイオンに対して伝導性を有する電解質と、アルカリイオン源を構成する手段とを備える電気化学的発電装置に関し、この電気化学的発電装置は、上記ホスト金属から成るシートに空隙が設けられており、上記ホスト金属から成るシートにおける上記空隙の量及びその配列が、上記ホスト金属から成るシートのあらゆる横膨張を上記空隙の中に局部的に吸収すると共に、上記ホスト金属と上記アルカリイオンによって導入されたアルカリ金属との間で上記シートに合金が最初に生成された後に、上記ホスト金属から成るシートの平面のあらゆる累積的な変化を実質的に阻止するように選択されている、という特徴を備えている。
【0009】
本発明の発電装置は、充電状態においては、上記シートが、上記ホスト金属及び上記アルカリ金属から成る合金に少なくとも部分的に転化される、という特徴を有していることに注意する必要がある。
【0010】
本発明の好ましい実施例によれば、上記アルカリイオン源は、上記ホスト金属から成るシートに接触するアルカリ金属から成るシートから構成されており、上記アルカリ金属は、発電装置が充電状態にある時に上記ホスト金属と合金化される上記アルカリイオン源から発生する。
【0011】
別の実施例によれば、上記アルカリイオン源は、上記正極にあり、また、上記アルカリイオン源及び上記アルカリ金属から成るシートから得られる上記アルカリ金属は、発電装置が充電状態にある時に、上記ホスト金属と合金化される。
【0012】
別の実施例によれば、上記アルカリイオン源は、上記ホスト金属から成るシートに接触しているアルカリ金属から成るシートから構成されると共に、上記正極にも存在しており、上記アルカリイオン源及び上記アルカリ金属から成るシートから得られる上記アルカリ金属は、発電装置が充電状態にある時に、上記ホスト金属と合金化される。上記アルカリ金属は、リチウムであるのが好ましい。
【0013】
別の実施例によれば、上記ホスト金属は、高活性アルカリ金属と合金を生成することができ且つ上記アルカリ金属の拡散が迅速である金属から構成されている。例えば、高活性アルカリ金属との合金は、純粋なアルカリ金属の電位に関して、0ボルトと+1.5ボルトとの間の電位を有している。上記ホスト金属は、Al、C、Sn、Pb、Ag、Si、Zn、Mg、又は、これらの組み合わせから選択されるのが好ましい。本発明を説明する文脈の範囲内において、これは厳密な定義ではないが、炭素は金属であると見なすことを理解する必要がある。
【0014】
ホスト金属から成るシートの上記空隙は、通常、そのようなホスト金属から成るシートの全面積の約5%乃至80%に相当し、約5%乃至30%であるのが好ましい。上記空隙は、格子の形態、あるいは、打ち抜き加工/引き伸ばし加工並びに恐らくは再薄板化加工(relaminating)によって得られるエキスパンドメタルの形態とすることができる。
【0015】
アルカリイオンに対して伝導性を有する上記電解質は、ポリマー電解質を含むのが好ましい。また、上記電解質は、ポリマーマトリックスと、液体電解質と、該液体電解質の中に少なくとも部分的に溶解する塩とから構成することもできる。
【0016】
上記空隙は、ホスト金属から成るシートの一方又は両方の面に、凹部の形態として設けることができる。これらの凹部は、彫刻加工又は凹陥加工(depressing)によって形成されるのが好ましく、また、上記空隙の量は、上記凹部を含む面の約5%乃至80%、好ましく、約5%乃至30%に相当する。上記凹部は、通常、合金の生成によりホスト金属から成るシートの平面に生ずるあらゆる横膨張を実質的に補償するように、配列される。
【0017】
別の実施例によれば、上記ホスト金属から成るシートは、該シートの面の少なくとも一方に設けられるポリマー電解質から成る層を備えており、該層は、上記ホスト金属から成るシートに設けられていて、合金とアルカリイオンに対して伝導性を有する上記電解質との間のイオン交換を最大限にし、また、上記電解質は、上記負極と上記正極との間のセパレーターとして作用する。
【0018】
上記ポリマー電解質は、炭素を含むことができ、該炭素は、電子伝導の添加剤又は促進剤として作用するように、上記ポリマー電解質の中に分布されていて、イオン交換及び電子交換を最大限にする。
【0019】
上記リチウムのシートは、上記ホスト金属から成るシートの一方の側部にだけ設けることができる。上記リチウムのシートは、上記ホスト金属から成るシートの両側部に設けることもできる。
【0020】
上記合金は、一般的に、発電装置を組み立てる時に得られる。上記合金は、発電装置を組み立てた後の活性化反応の間に得ることもできる。
別の実施例によれば、上記リチウムのシートは、上記正極に対向する上記ホスト金属から成るシートに設けられていて、発電装置を組み立てた後の合金の生成を遅延させると共に、発電装置を組み立てる作業の安全性を極力高める。上記ホスト金属は、上記アルカリ金属よりも過剰の量であるのが好ましく、これにより、上記ホスト金属の一部を未反応状態として残して、そのような未反応状態のホスト金属が、上記ホスト金属から成るシートの平面の上で集電体として作用することができるようにする。
【0021】
本発明の発電装置は、通常、円筒形又は平坦に巻かれた膜、あるいは、平坦に重積された膜から構成される。また、上記ホスト金属から成るシート、及び、上記正極の集電体は、上記円筒形又は平坦に巻かれた膜、あるいは、平坦に重積された膜の両側部の上で突出して、上記集電体及び上記ホスト金属から成るシートのそれぞれの側縁部の全体に対する効率的な電流接続を許容するようにするのが好ましい。上記電流接続は、例えば上記シートの側縁部全体に沿って導電性金属を粉砕することにより得られる。
【0022】
別の実施例によれば、合金のシートから成る上記負極は、発電装置を組み立てた後に、上記ホスト金属から成るシート、及び、該ホスト金属から成るシートに接触している上記アルカリ金属から成るシートを熱処理することによって得られ、この熱処理は、加圧下で又は機械的に拘束することにより、また、負極のシートが平坦な状態を確実に維持する条件下で実行される。
【0023】
上記ホスト金属は、約1μm乃至約150μmの厚さを有するのが好ましく、約10μm乃至約100μmの厚さを有するのが特に好ましい。
本発明は、また、電気化学的発電装置の製造方法にも関係し、この製造方法は、正極及びその集電体を含む薄膜、後に負極を構成することを意図されたホスト金属から成るシート、アルカリイオンに対して伝導性を有する電解質、並びに、アルカリイオン源を構成する手段を準備する工程と、上記負極及び上記シートを上記伝導性を有する電解質の両側部に設ける工程とを備えており、上記シートは、空隙を有するホスト金属から成るシートから選択され、上記ホスト金属から成るシートにおける上記空隙の量及びこれら空隙の配列は、上記ホスト金属から成るシートのあらゆる横膨張を上記空隙の中に局部的に吸収し、これにより、上記ホスト金属と上記アルカリイオンによりもたらされるアルカリ金属との間で上記シートに合金が最初に生成される時に、上記ホスト金属から成るシートの平面におけるあらゆる累積的な変化を実質的に防止するように選択され、本製造方法は、更に、その後上記膜、上記伝導性を有する電解質及び上記アルカリイオン源を組み立てて発電装置を構成する工程を備えている。
【0024】
従って、本発明は、例えば、合金化アノードから成るシートを形成するものであり、該シートは、発電装置を組み立てる間に形成されるのが好ましく、また、ホスト金属から成る穿孔シート及びリチウム源から構成される。上記合金の生成は、発電装置を組み立てる時に、又は、上記合金を調製する後の工程の間に実行されるのが好ましい。使用されるのが好ましいプロセスは、金属リチウムから成るシートのホスト金属を化学的に熱処理するプロセス、あるいは、リチウムと合金化されているのが好ましいカソード(例えば、LiCoO2、Li2Mn2O4を含む)から出発したホスト金属を電気化学的に充電するプロセス(米国特許第5,425,932号)である。
【0025】
本発明の主要な目的は、ホスト金属から成る穿孔シートを用いて、合金の生成に伴う体積膨張により上記シートの構造体及びその周囲環境に作用する機械的な応力を「局部的」に吸収できるようにすることである。使用することのできるアルミニウムから成るホスト構造の非制限的な例が、EXMET(登録商標)の名称で商業的に入手可能であり、ある種のバッテリに不活性集電体として現在使用されている製品に関して、図1に示されている。これらの集電体は、本発明において探し求められている性質も備えることができることが観察された。特にサイクリング及び安全性に関して、ポリマー電解質発電装置における上記集電体の新規な使用、及び、アノードとしての良好な作用が確立されている。現在入手可能な上記製品における開口の量は、極めて高く、例えば、図1に示すように、25マイクロメートルの厚さのシートに関して、表面の50%近くが穿孔されている。この開口のパーセンテージは、実際には合金の生成の後に満たされるアノード表面を形成するために、減少させることができる。
【0026】
勿論、本発明の特徴を再現する他の構造も可能であり、そのような構造は、例えば、機械的なプロセス又は同様なプロセスによってシートに形成される彫刻構造によって得ることができる。穿孔部及び/又は空隙の配列、その寸法、並びに、シートの体積パーセンテージは、シートの平面におけるホスト金属の体積膨張を吸収し、これにより、反応の後の合金化シートの密度を最適化すると共に、合金化シートの平坦な表面を維持するように選択される。本発明の図2及び図3は、合金の生成の間にホスト金属に起こる事象を示している。
【0027】
本発明の利点の一つは、合金が高密度の形態(複合物ではない)であって、発電装置を作動させた後に生成されるのが好ましいという事実により、作動が容易で、安全性を有しているということである。また、本発明は、高密度のゾーンが存在するために、容積エネルギ密度の最適化に寄与すると共に、空隙率を制御して、合金が生成して構造体が膨張した後にアノードのシートの残留空間に存在するポリマーを最適化することによって、発電装置の出力を最適化することに寄与する。ポリマー電解質と共に使用された場合の本発明の他の利点は、アノードの高密度部分へのポリマー電解質の浸透速度を最小限にし、これにより、合金化構造の電気接点の品質を維持することである。当然、ポリマーは合金に浸透しないので、合金の粒子を孤立させることはできない。
【0028】
本発明を作動させる効果的な方法は、ソースすなわち補給源中のリチウムの量を制御して、合金の生成の後にホスト金属の一部を未反応の状態で残し、これにより、シートの平面において横方向の集電体として作用させることである。
【0029】
本発明のアノードを作動させる簡単な方法は、上述のEXMET(登録商標)を所定厚さのリチウムシートに与えることである。そのような作動の重要な部分が、図2、図3及び図4に示されており、以下の例において詳細に説明される。勿論、穿孔部の数、空隙を形成する方法、並びに、合金化シートの密度を最適化して合金の生成により局部的に発生する応力を吸収するための空隙の幾何学的形状は、ホスト金属の性質及び意図するエネルギ密度に応じて、また、当業者には周知の他のパラメータの関数として変えることができる。例として、表1及び図22は、穿孔部の数を最適化するための、特定の数の可能なホスト化合物の重要な性質、並びに、等量のリチウム合金の生成により生ずる体積変化を示している。
【0030】
一般的に言えば、特に限定するものではないが、十分に高密度であり且つ平坦であって電気化学的及び安全上の性能すなわちパフォーマンスが最適なシートを得るためには、穿孔部の数は、5%乃至80%の間、好ましくは、5%乃至30%の間で変化する。実際に、金属リチウムの量に関するホスト金属の量は、過剰のホスト金属が残って、シートの平面のアノードのための集電体として作用することができるように、概ね調節される。
【0031】
アルミニウムの如きある種の金属に関しては、ホスト金属の表面に炭素複合物から成る薄膜を使用することにより、例えば、電子接点の品質に関して、均一な合金の生成を促進することが判明した。
【0032】
製造すべき発電装置のタイプに応じて、1又はそれ以上のリチウムシートをホスト金属から成る中央シートに用いるか、あるいは、反対に、2つのホスト金属シートを1つのリチウムシートに用いる。
【0033】
図20に示すように、電気化学的発電装置を製造する好ましい方法は、カソード(集電体及び複合カソード)のシート及び電解質のシートを、ホスト金属シート及びリチウムシートの形態のアノードと共に巻着する(モノフェース(monoface)すなわち単面システムの場合には、ポリプロピレンの如き絶縁プラスチックフィルムと共に巻く)。
【0034】
図21は、バイフェース(biface)すなわち両面システムの電気化学的発電装置を製造する好ましい方法を示しており、この方法においては、カソード(集電体及び複合カソード)及び電解質のシートを、一枚のホスト金属シート及び二枚のリチウムシートから成る形態のアノードと共に巻着する。このアセンブリにおいては、カソード(集電体)及びアノード(リチウムから突出するホスト金属)のそれぞれのシートは、上記巻着体の両側部から突出し、これにより、各々の突出するシートの全縁部に電極を集めることができるようになっている。次に、粉砕された金属を上記巻着体の端部に塗布して、最適な電気的及び熱的な交換を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】EXMET(登録商標)タイプのアルミニウム製の拡張シートを200倍の倍率の走査型電子顕微鏡で撮影した写真(金属組織の写真)である。
【図2】本発明の合金化電極の形成を示す概略的な斜視図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】リチウムシート及び拡張アルミニウムのホスト構造から合金を生成する状態をその場で光学的に観察することを可能にする実験装置の垂直方向断面図である。
【図5】アルミニウムシート(全面)、並びに、図4に示す装置によって上記アルミニウムシートに機械的に付与されたリチウムシートの合金生成前の特徴を示す写真(金属組織の写真)である。
【図6】80°Cにおける化学反応によって合金が生成されてリチウムが消失した後に撮影された点を除いて図5と同様な写真(金属組織の写真)である。
【図7】合金生成後に図4の装置によって撮影した拡張アルミニウムシート及びリチウムシートの特徴を示す写真(金属組織の写真)である。
【図8】拡張アルミニウムシートをリチウムシートと共に図4の装置の中で80°Cで加熱した後の図1と同様のEXMET(登録商標)のシートの詳細を示す走査型電子顕微鏡で撮影した精密写真(金属組織の写真)である。
【図9】褶曲部又は溝が無い大きな表面を示す点を除いて図8に示すシートと同様なシートを走査型電子顕微鏡で撮影した写真(金属組織の写真)である。
【図10】モノフェース型のアノードバッテリを備える本発明の発電装置を製造する状態を示す概略的な垂直方向断面図である。
【図11】タイプIの炭素に基づくフィルムを有するモノフェース型アノードバッテリに関する点を除いて、図10と同様な概略図である。
【図12】タイプIIの対して相対的に基づくフィルムを有するモノフェース型アノードバッテリに関する点を除いて、図10と同様な概略図である。
【図13】タイプIIIの炭素に基づくフィルムを有するモノフェース型アノードバッテリに関する点を除いて、図10と同様な概略図である。
【図14】バイフェース型アノードバッテリに関する点を除いて、図13と同様な概略図である。
【図15】通常のリチウム発電装置及び図11の発電装置の初期放電を比較する曲線を示すグラフである。
【図16】通常の発電装置及び本発明の発電装置に関するARCによる安定性を比較して示すグラフである。
【図17】発電装置が図14に示す発電装置である点を除いて、図15と同様なグラフである。
【図18】図11に示す発電装置のサイクリング曲線を示すグラフである。
【図19】図13に示す発電装置のサイクリング曲線を示すグラフである。
【図20】モノフェース様式で平坦に巻着された本発明のバッテリのアセンブリの放電状態を概略的に示す斜視図である。
【図21】バイフェース様式で平坦に巻着された本発明のバッテリのアセンブリの放電状態を概略的に示す斜視図である。
【図22】種々の合金の体積膨張を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、非制限的な例を示す図面に示されている。
図1においては、拡張(expanded)アルミニウムは、25マイクロメートルの厚さを有しており、この拡張アルミニウムは、切断され、引き伸ばされ、更に、平坦化されたものである。
【0037】
ここで図2及び図3を参照すると、これらの図は、局部応力緩和能を有する合金化された「高密度」負極を化学的に作動させる原理を示している。図2は、合金化シートを生成させる一連の作業を示しており、図3は、合金生成の間の拡張シートの挙動を断面で示している。この例においては、拡張アルミニウムシートとリチウムシートとの間にある圧力を維持して、両シートを確実に接触させると共に、両シートの表面の変形を防止している。温度上昇により、急速な合金生成が生じ、この合金生成は、例えば、図4の装置を用いて行わせることができる。
【0038】
図10乃至図14を参照すると、図示の集電体は、一般的に、通常のアルミニウムシートであり、SPEは、ポリマー電解質を示しており、Cは、接着性のポリマー電解質の中に分散された炭素の薄膜を示している。(+)は、複合カソードを示しており、この複合カソードは、充電された反応材料すなわち活物質と、炭素と、接着性のポリマー電解質とから形成されている。Hは、合金LiAlが生成される前に拡張されたホスト金属(Al)のシートを示している。以上の事柄は、より詳細に言えば、以下のように図示されている。
【0039】
図10は、バッテリのモノフェースをAl集電体(+)/SPE/Li°/Hの順序で示しており、
図11は、タイプIの炭素の複合膜を有するモノフェース型アノードを備えたバッテリを、Al集電体(+)/SPE/Li°/C/Hの順序で示しており、
図12は、タイプIIの炭素の複合膜を有するモノフェース型アノードを備えたバッテリを、Al集電体(+)/SPE/H/C/Li°の順序で示しており、
図13は、タイプIIIの炭素の複合膜を有していて、放電状態で作製されたモノフェース型アノードを備えたバッテリを、Al集電体/LiCoO2/SPE/C/Hの順序で示しており、
図14は、バイフェース型アノードを備えたバッテリを、Al集電体(+)/SPE/Li°/H/Li°/SPE/(+)/Al集電体の順序で示している。
【0040】
図15を参照すると、比較された初期放電の曲線は、以下のバッテリに関するものである。◎
(a)Al集電体/(V2O5)/SPE/Li°、及び、
(b)Al集電体/(V2O5)/SPE/Li°/C/H(Hは、タイプIのEXMET(登録商標)の形態である)。
【0041】
図16を参照すると、この安定度試験は、以下のバッテリに関するものである。◎
(a)SPE/Li°、及び、
(b)Al集電体/(V2O5)/SPE/H/C/Li°(Hは、EXMET(登録商標)の形態のAlである)。
【0042】
図17において、比較された初期放電の曲線は、以下のバッテリの曲線である。◎
(a)Al集電体/(V2O5)/SPE/Li°、及び、
(b)Al集電体/(V2O5)/SPE/H/C/Li°(Hは、タイプIIのEXMET(登録商標)の形態のAlである)。
【0043】
図18、例3及び図11に示すタイプIのバッテリに関するサイクリング曲線を示している。
図19は、以下のバッテリのサイクリング曲線を示している。◎
Al集電体/LiCoO2/SPE/C/H(Hは、EXMET(登録商標)の形態のAlである)。
【0044】
図20は、バイフェース様式で平坦に巻着されているバッテリのアセンブリの概略図であって、上記バッテリは、炭素と、側部同士が接合された二枚の金属リチウムシートとで被覆された拡張アルミニウムから形成されたアノードを備えている。
【0045】
図21は、バイフェース様式で巻着されている放電状態のバッテリの概略図であって、このバッテリは、炭素と、互いに接合された二枚の金属リチウムシートとで被覆された拡張アルミニウムから形成されたアノードを備えており、このバッテリにおいては、過剰のホスト金属が、アノードのシートのための集電体として用いられており、合金化されていないホスト構造が巻着体の一端部において横方向に突出している。図21においては、アノードのホストシートのカソードのアルミニウム集電体の横方向の突出部は、粉砕された金属接点によって集合されている。
【0046】
ここで、非限定的な例として示す以下の実例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0047】
例 1
この例は、厚さが20マイクロメートルの通常のアルミニウムシートが、厚さが18マイクロメートルの金属リチウムシートに接触した場合の性能すなわちパフォーマンスを示している。重積されたシートは、図5乃至図7に示す試験の最初に示されていて、図4の装置によって作製される。
【0048】
80°Cで1時間にわたって加熱した後に、リチウムシートは、アルミニウムとの反応によって溶解し、また、上記アルミニウムは、合金の生成により生ずる横膨張の結果、シートの平面から突出する複数の褶曲部を形成することが観察された。ポリマー電解質を有する完全なバッテリにおいては、上記現象は、一般に、短絡回路を生じさせる。
例 2
この例においては、上記高密度アルミニウムのシートを、EXMET社(米国コネチカット州Naugatuck)によって商業的に製造されているエキスパンドメタルのシートで置き換えることによって、例1の試験を再現している。リチウムをアルミニウム合金と完全に反応させるために、上記アルミニウム合金を複合炭素の薄膜で被覆した。使用したアルミニウムの平坦化した後の厚さは、25マイクロメートルであった。穿孔された表面は、シートの全面積の約50%に相当し、開口の幅は、約145マイクロメートルであった。この例においては、開口の割合は、反応後の合金化構造を完全に閉じるためには大き過ぎる。
【0049】
図8、図9及び図7においては、リチウムと化学反応した後のホスト構造の詳細を見ることができる。また、この例においては、上の例1とは異なり、挿入の間に溝が全く形成されておらず、従って、体積変化及び応力を局部的に吸収することができないことに注意する必要がある。シートは、完全に平坦な状態のままであり、これは、薄膜を有するポリマー電解質発電装置を良好に作動させるための重要な条件である。電子顕微鏡(図8及び図9)で認識することのできるこの試験の他の驚くべき効果は、アルミニウムの構造から網の上に合金を生成させることにより、表1の値から予測されるものよりも小さな、高密度部分の横膨張が生ずるということである。観察された膨張は、約10%であり、一方、表1から予測される値は94%である。この現象は、挿入を許容するリチウム源の指向性、並びに、製造された装置の完全性(solid nature)から生ずるものである。以上の観察は、最適化されたアルミニウムの構造(EXMET(登録商標))は、20%程度の量の穿孔部を有する必要があるということを示唆している。
例 3
以下に述べる例においては、約4cm2の表面を有する完全な発電装置が製造される。この発電装置は、この例3に関して図11に示すように、Al集電体(+)/SPE/Li°/C/Hの構造から形成されており、この構造は、以下の膜、すなわち、厚さが13マイクロメートルのアルミニウム集電体と、酸化バナジウムを含む厚さが約45マイクロメートルの複合カソードと、炭素導体と、接着性ポリマーとから構成されている。該接着性ポリマーは、エチレンオキシド系のコポリマー、及び、リチウム塩(CF3SO2)2NLiから構成されており、O(ポリエーテルの)/Li(塩の)で表すそのモル比は、30/1である。このカソードの静電容量は、1平方cm当たり約4クーロンである。セパレーターは、接着剤と同じ性質を有しており、その厚さは、30マイクロメートルである。この正の半電池は、80°Cで加圧することによって取り付けられている。一方、リチウム膜が、取り扱いを容易にするために剥離可能なサポートに取り付けられた約10マイクロメートルの厚さの複合炭素の薄膜に対して、80°Cで圧接される。上記炭素のコーティングは、80°Cの熱い状態でHで示される25マイクロメートルの厚さのEXMET(登録商標)シートに移送されて、電気的な交換及びイオン交換を促進する。
【0050】
最後に、上記正の半電池は80°Cで、Li°/C/Hのアセンブリのリチウム面に移送され、これにより製造された発電装置(タイプI)は、以下の例において説明する後の試験を行うために、60°Cに維持される。
【0051】
この例、並びに、以下の例においては、ホスト構造の一部を未反応の状態で残すために、最初に存在するリチウムの量に関して約20%過剰のアルミニウムを使用し、これにより、シートの平面における集電体の連続性を確保している。
例 4
この例においては、例3(タイプI)の発電装置の性能が、アノードがリチウムの単純なシートである等価の発電装置と比較される。
【0052】
初期の放電曲線が、図15において比較されており、この図においては、性能は同様であるが、平均電圧が低いことが分かる。この電圧低下は、合金Li−Alのリチウムの活性の低下に対応し、Li°に対して約+270mV乃至+420mVである。
【0053】
本発明の合金化アノードを用いた発電装置のサイクリングの間の性能(図18)は、安定化され、金属リチウムを用いた発電装置の性能に比肩しうるものであることが判明した。参考として、通常のアルミニウムシートを用いた同じ発電装置は、短絡回路を形成し、第1のサイクルの間に既に幾分かのキャパシティを失う。
例 5
この例は、図12に示すように、炭素複合物の膜の位置が異なっている点を除いて、例3及び例4の要素と同じ要素を含んでいる。初期の放電曲線も、図17に示すように、リチウムアノードを有する等価のバッテリの初期の放電曲線と比較されている。この装置の利点は、この時点においてバッテリを活性化させることなく、そのようなバッテリの組み立てを行うことができることである。合金の生成反応が完了した時にだけ、バッテリは、その完全な電位容量に達し、これにより、バッテリの組み立て作業は更に安全になる。
例 6
この例においては、安全に関する本発明の重要な特徴を示すために試験を行っている。
【0054】
使用したバッテリは、金属リチウムアノードを有する同一のバッテリとの熱平衡の比較試験を行うために図12に示す例5の装置に相当するものである。
使用した技術は、Columbia Scientific(米国テキサス州Austin)のARC(Accelerated Rate Calorimetry)の名称で知られており、バッテリの各要素の間の自発的な熱化学反応により追加の熱が発生する(一時的な温度上昇の安定化)まで、サンプルの温度を極めて高い温度で順次上昇させる。これは、敏感であり、過酷な使用条件において危険をもたらす可能性のある発熱反応を集中させる技術として知られている。
【0055】
熱量測定比較試験ARCは、例5で作製された約0.5157gの重量の本発明のタイプIIの完成された電池と、上述の試験と同一のポリマー電解質の膜、及び、厚さが22マイクロメートルの金属リチウムの膜から成るサンプルとの間で行った。
【0056】
図16に示すサンプルの場合には、温度上昇曲線は、完全なバッテリを取り扱った場合でも、観察した全温度範囲において自己発熱効果を示さない。
カソードを有さず金属リチウムを有する図16のサンプル(a)は、発熱状態を示し、これは、255°C(すなわち、約180°Cであるリチウムの融解温度よりも高い)まで観察できる。完全なサンプル(すなわち、カソードも有する)は、リチウムの融解の後に生ずる短絡回路に起因する高い発熱状態を示すことがある。
【0057】
この試験は、安全性の観点からの本発明の効果を良好に示しており、その理由は、薄く高密度の膜の形態である非易融性の合金化リチウム製のアノードを製造することができ、従って、300°Cよりも高い温度において完全に固体状態にある発電装置を製造することができるからである。
例 7
この例においては、図13に示す装置を使用しており、この装置においては、リチウム源は、放電状態で作製されたカソードから生ずる。この場合においては、酸化バナジウムが、合成により作製されて事前挿入された酸化コバルトによって置き換えられている。
【0058】
図19は、タイプIIの複合膜で作製されたモノフェース型アノードを有していて以下の構造に相当する本バッテリの電圧のサイクリングの間の進展を示している。◎
Al集電体/LiCoO2/SPE/C/H
例 8
この例においては、以下の膜を図14、図20及び図21に示す如きダブル・バイフェース(double biface)の形態で一緒に巻着することにより、バッテリを組み立てた(上記図面において、炭素の膜は、ホスト構造の各々の面に付与された状態で示されていない)。
【0059】
SPE/(+)/Al集電体/(+)/SPE、並びに、
Li°,C/H/C、及び、Li°(組み立ての間に接触している)。
上記アセンブリを40°Cで、その後、80°Cで30分間にわたって加圧し、これにより、合金の生成を完了させる。
【0060】
Shooping(カナダ特許第2,068,290号)の技術によって、カソードのアルミニウム集電体の横方向突出部、及び、アノードの未反応アルミニウムのホスト金属の横方向突出部に、銅の粉末を付与することによって、横方向接点が形成される。
【0061】
このアセンブリの電気化学的性能は、例3及び例4に示す4cm2のバッテリの性能と同等である(総ての割合は、使用される表面に関して考えられる)。
例 9
この例においては、レーザで穿孔された銅の薄いシートの組成(Li4Sn)の合金が生成される間の性能が、図4の装置によって示されている。シートを雑に作製したにも拘わらず、シートの平面のあらゆる変形が挿入の間に除去されることが観察された。
【0062】
【表1】
【0063】
上の表1は、文献(R. Nesper. Prog. Solid St. Chem., Vol. 20, pp. 1−45, 1990)に従って計算された種々の合金の体積膨張を示している。
【0064】
請求の範囲に包含される限りにおいて、当業者に自明の変更例が、本発明の範囲から逸脱することなく、可能であることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学的発電装置であって、正極及びその集電体を含む複数の薄膜と、後に負極を構成することを意図されたホスト金属シートと、アルカリイオンに対して伝導性を有する電解質と、アルカリイオン源を構成する手段とを備えており、前記ホスト金属シートには複数の空隙が形成されており、前記ホスト金属シートにおけるこれら空隙の数、及び前記空隙の配列は、前記ホスト金属シートのあらゆる横膨張を前記空隙の中に局部的に吸収するように選択されており、これにより、前記ホスト金属と前記アルカリイオンによってもたらされるアルカリ金属との間の最初の合金生成が前記シートに生じた時に、前記ホスト金属シートの平面におけるあらゆる累積的な変化を実質的に阻止するように構成されたことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学的発電装置において、充電状態において、前記シートの少なくとも一部が、前記ホスト金属及び前記アルカリ金属から成る合金に転化されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリイオン源は、前記ホスト金属シートに接触しているアルカリ金属シートから構成されており、前記アルカリイオン源からもたらされる前記アルカリ金属は、当該電気化学的発電装置が充電状態にある時に、前記ホスト金属と合金化されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリイオン源は、前記正極に存在し、前記アルカリイオン源からもたらされる前記アルカリ金属は、当該電気化学的発電装置が充電状態にある時に、前記ホスト金属と合金化されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリイオン源は、前記ホスト金属シートに接触しているアルカリ金属シートであり、また、前記正極にも存在しており、前記アルカリ金属シート及び前記アルカリイオン源からもたらされる前記アルカリ金属は、当該電気化学的発電装置が充電状態にある時に、前記ホスト金属と合金化されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリ金属は、リチウムであることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属は、アルカリ金属の中で高い活性を有する合金を形成することのできる金属から成り、前記アルカリ金属の拡散が速いことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気化学的発電装置において、アルカリ金属の中で高い活性を有する前記合金は、純粋なアルカリ金属の電位に関して、0乃至+0.15ボルトの電位を有することを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属の主要な構成要素は、Al、C、Sn、Pb、Ag、Si、Zn、Mgあるいはこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シートの空隙は、該ホスト金属シートの全表面の又は該ホスト金属シートの本体の約5乃至80%に相当することを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シートの空隙は、該ホスト金属シートの表面の又は該ホスト金属シートの本体の約5乃至30%に相当することを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記空隙は、格子状の形態を有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、空隙を有する前記シートは、格子状の形態を有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、空隙を有する前記シートは、切断加工、引き伸ばし加工、並びに、恐らくは再薄板化加工によって形成されるエキスパンドメタルの形態を有することを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、アルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質は、ポリマー電解質を含むことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項16】
請求項1乃至12のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、アルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質は、ポリマーマトリックスと、液体電解質と、該液体電解質に少なくとも部分的に溶解することのできる塩とを含むことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項17】
請求項1乃至9並びに請求項12乃至16のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記空隙は、前記ホスト金属シートの両面の中の一方にだけ設けられていて、凹部の形態を有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項18】
請求項1乃至9並びに請求項12乃至16のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記空隙は、前記ホスト金属シートの両面に設けられていて、凹部の形態を有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の電気化学的発電装置において、前記凹部は、彫刻加工又は型彫り加工によって形成されており、前記空隙の量は、凹部を含む面の約5乃至80%、好ましくは、5乃至30%に相当することを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項20】
請求項17乃至19のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記凹部は、前記合金生成により前記ホスト金属シートの平面に生ずるあらゆる直線的な膨張を実質的に補償するように配列されていることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シートは、該ホスト金属シートの面の中の少なくとも一方に設けられたポリマー電極の層を含んでおり、該ポリマー電極の層は、前記合金とアルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質との間のイオン交換を最大限にすると共に、前記負極と前記正極との間のセパレーターとして作用するように、前記ホスト金属シートに設けられていることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項22】
請求項21に記載の電気化学的発電装置において、前記ポリマー電解質は、該ポリマー電解質の中に分散された炭素を含んでおり、該炭素は、電子伝導添加剤として作用すると共に、イオン交換及び電子交換を最大限にすることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項23】
請求項3に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリ金属シートは、前記ホスト金属シートの一方の側部にだけ設けられていることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項24】
請求項3に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリ金属シートは、前記ホスト金属シートの両側部に設けられていることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項25】
請求項2に記載の電気化学的発電装置において、前記合金は、当該電気化学的発電装置を組み立てる間に生成されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項26】
請求項2に記載の電気化学的発電装置において、前記合金は、当該電気化学的発電装置を組み立てた後の活性化反応の間に生成されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項27】
請求項3に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリ金属シートは、前記正極とは反対側の前記ホスト金属シートの面に設けられており、これにより、当該電気化学的発電装置を組み立てた後の合金生成を遅延させると共に、当該電気化学的発電装置を組み立てる作業の安全性を最大限にすることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属は、該ホスト金属の一部が未反応の状態で残るように、前記アルカリ金属に関して過剰の量で設けられ、これにより、前記未反応の一部が、前記ホスト金属シートの平面上で集電体として作用することを可能にしたことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項29】
請求項1乃至22のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、円筒形、又は、平坦に巻着された、あるいは、平坦に重積された膜から構成されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項30】
請求項22に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シート、及び、前記正極の集電体は、前記円筒形、又は、平坦に巻着された、あるいは、平坦に重積された薄膜の両側部で突出し、これにより、前記集電体及び前記ホスト金属シートのそれぞれの全側縁部に沿って、効率的な接続を行うことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項31】
請求項30に記載の電気化学的発電装置において、前記接続は、前記シートの前記側縁部に導電性金属の粉末を付与することによって達成されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項32】
請求項3に記載の電気化学的発電装置において、前記負極の合金シートは、当該電気化学的発電装置を組み立てた後に、前記ホスト金属シート、及び、該ホスト金属シートに接触している前記アルカリ金属シートを熱処理することによって形成され、前記熱処理は、加圧下、又は、機械的な拘束の下で、且つ、前記負極のシートの平坦な状態を確実に維持する条件下で実行されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項33】
請求項1乃至32のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シートは、約1乃至150μmの厚さを有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項34】
請求項33に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シートは、約10乃至100μmの厚さを有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項35】
電気化学的発電装置の製造方法であって、正極及びその集電体を含む複数の薄膜と、後に負極を構成することを意図されたホスト金属シートと、アルカリイオンに対して伝導性を有する電解質と、アルカリイオン源を構成する手段とを準備する工程と、前記負極及び前記シートを前記伝導性の電解質のいずれかの部分に設ける工程とを備えており、前記シートは、複数の空隙を有するホスト金属シートから選択され、前記ホスト金属シートにおけるこれら空隙の量、及び前記空隙の配列は、前記ホスト金属シートのあらゆる横膨張を前記空隙の中に局部的に吸収するように選択され、これにより、前記ホスト金属と前記アルカリイオンによってもたらされるアルカリ金属との間の最初の合金生成が前記シートに生じた時に、前記ホスト金属シートの平面におけるあらゆる累積的な変化を実質的に阻止するようになっており、更に、その後、前記複数の膜、前記伝導性の電解質、及び、前記アルカリイオン源を組み立てて前記発電装置を構成する工程を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項36】
請求項35に記載の製造方法において、前記発電装置を充電し、これにより、前記シートが、前記ホスト金属及び前記アルカリ金属から成る合金の少なくとも一部になるようにすることを特徴とする製造方法。
【請求項37】
請求項36に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートをアルカリ金属シートに接触させ、その後、前記発電装置を充電し、これにより、前記アルカリ金属が、前記ホスト金属と合金化されるようにすることを特徴とする製造方法。
【請求項38】
請求項35又は36に記載の製造方法において、前記アルカリイオン源を前記正極に集中させ、その後、前記発電装置を電気化学的に充電して、前記アルカリイオン源からもたらされるアルカリ金属を前記ホスト金属と合金化させることを特徴とする製造方法。
【請求項39】
請求項35又は36に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートをアルカリ金属シートに接触させ、また、別のアルカリイオン源を前記正極に導入し、その後、前記発電装置を電気化学的に充電して、前記アルカリ金属シート及び前記アルカリイオン源からもたらされるアルカリ金属を前記ホスト金属と合金化させることを特徴とする製造方法。
【請求項40】
請求項35又は36に記載の製造方法において、前記アルカリ金属が、リチウムであることを特徴とする製造方法。
【請求項41】
請求項35又は36に記載の製造方法において、前記ホスト金属は、アルカリ金属の中で高い活性を有する合金を形成することのできる金属から成り、前記アルカリ金属の拡散が速いことを特徴とする製造方法。
【請求項42】
請求項41に記載の製造方法において、アルカリ金属の中で中い活性を有する前記合金は、純粋なアルカリ金属の電位に関して、0乃至+0.15ボルトの電位を有することを特徴とする製造方法。
【請求項43】
請求項35乃至42のいずれか一に記載の製造方法において、前記ホスト金属の主要な構成要素は、Al、C、Sn、Pb、Ag、Si、Zn、Mgあるいはこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする製造方法。
【請求項44】
請求項35乃至43のいずれか一に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートの空隙は、該ホスト金属シート本体の全表面の又は該ホスト金属シートの本体の約5乃至80%に相当することを特徴とする製造方法。
【請求項45】
請求項44に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートの空隙は、該ホスト金属シートの表面の又は該ホスト金属シートの本体の約5乃至30%に相当することを特徴とする製造方法。
【請求項46】
請求項35乃至45のいずれか一に記載の製造方法において、前記空隙は、格子状の形態を有していることを特徴とする製造方法。
【請求項47】
請求項35乃至46のいずれか一に記載の製造方法において、空隙を有する前記シートは、格子状の形態を有していることを特徴とする製造方法。
【請求項48】
請求項35乃至46のいずれか一に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートは、切断加工し、引き伸ばし加工し、最終的には、再薄板化加工することによって処理され、これにより、エキスパンドメタルの形態の空隙を有するシートを形成することを特徴とする製造方法。
【請求項49】
請求項35乃至46のいずれか一に記載の製造方法において、アルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質は、ポリマー電解質を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項50】
請求項35乃至46のいずれか一に記載の製造方法において、アルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質は、ポリマーマトリックスと、液体電解質と、該液体電解質に少なくとも部分的に溶解することのできる塩とを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項51】
請求項35乃至43並びに請求項46乃至50のいずれか一に記載の製造方法において、前記空隙は、前記ホスト金属シートの両面の中の一方にだけ設けられていて、凹部の形態を有していることを特徴とする製造方法。
【請求項52】
請求項35乃至43並びに請求項46乃至50のいずれか一に記載の製造方法において、前記空隙は、前記ホスト金属シートの両面に設けられていて、凹部の形態を有していることを特徴とする製造方法。
【請求項53】
請求項51又は52に記載の製造方法において、前記凹部は、彫刻加工又は型彫り加工によって形成されており、前記空隙の割合は、凹部を含む面の約5乃至80%、好ましくは、5乃至30%に相当することを特徴とする製造方法。
【請求項54】
請求項51乃至53のいずれか一に記載の製造方法において、前記凹部は、前記合金生成により前記ホスト金属シートの平面に生ずるあらゆる直線的な膨張を実質的に補償するように配列されていることを特徴とする製造方法。
【請求項55】
請求項35乃至54のいずれか一に記載の製造方法において、ポリマー電解質の層を前記ホスト金属シートの少なくとも一方の面に導入し、前記層を前記ホスト金属シートに設け、これにより、前記合金とアルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質との間のイオン交換を最大限にさせると共に、前記負極と前記正極との間のセパレーターとして作用させることを特徴とする製造方法。
【請求項56】
請求項55に記載の製造方法において、炭素を前記ポリマー電解質に導入し、前記炭素を前記ポリマー電解質の中に分散させて電子伝導の添加剤として作用させ、これにより、イオン交換及び電子交換を最大限にすることを特徴とする製造方法。
【請求項57】
請求項37に記載の製造方法において、前記アルカリ金属シートを、前記ホスト金属シートの一方の側部にだけ設けることを特徴とする製造方法。
【請求項58】
請求項37に記載の製造方法において、前記アルカリ金属シートを、前記ホスト金属シートの2つの側部に設けることを特徴とする製造方法。
【請求項59】
請求項36に記載の製造方法において、前記合金は、前記発電装置を組み立てる時に生成されることを特徴とする製造方法。
【請求項60】
請求項36に記載の製造方法において、前記発電装置を組み立てた後に、活性化反応を行わせ、これにより、合金を生成させることを特徴とする製造方法。
【請求項61】
請求項37に記載の製造方法において、前記アルカリ金属シートを、前記正極とは反対側の前記アルカリ金属シートの面に設け、これにより、前記発電装置を組み立てた後の合金生成を遅延させると共に、前記発電装置を組み立てる作業の安全性を最大限にすることを特徴とする製造方法。
【請求項62】
請求項35に記載の製造方法において、前記ホスト金属は、該ホスト金属の一部が未反応の状態で残るように、前記アルカリ金属に関して過剰の量で設けられ、これにより、前記未反応の一部が、前記ホスト金属シートの平面上で集電体として作用することを可能にしたことを特徴とする製造方法。
【請求項63】
請求項35乃至66のいずれか一に記載の製造方法において、前記膜を円筒形に巻着するか、平坦に巻着するか、あるいは、平坦に重積する工程を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項64】
請求項63に記載の製造方法において、前記ホスト金属シート、及び、前記正極の集電体を、前記円筒形又は平坦に巻着されたあるいは平坦に重積された膜の両側部で突出させ、これにより、前記集電体又はホスト金属シートのそれぞれの総ての側縁部に対して効率的な接続が行われるように実行されることを特徴とする製造方法。
【請求項65】
請求項64に記載の製造方法において、前記シートの側縁部に導電性金属の粉末を付与することにより、前記接続を行うことを特徴とする製造方法。
【請求項66】
請求項36に記載の製造方法において、前記負極の合金シートを、当該電気化学的発電装置を組み立てた後に、前記ホスト金属シート、及び、該ホスト金属シートに接触している前記アルカリ金属シートを熱処理することによって形成し、前記熱処理を、加圧下、又は、機械的な拘束の下で、且つ、前記負極のシートの平坦な状態を確実に維持する条件下で実行することを特徴とする製造方法。
【請求項67】
請求項35乃至66に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートが、約1乃至150μmの厚さを有していることを特徴とする製造方法。
【請求項68】
請求項67に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートは、約10乃至100μmの厚さを有していることを特徴とする製造方法。
【請求項1】
電気化学的発電装置であって、正極及びその集電体を含む複数の薄膜と、後に負極を構成することを意図されたホスト金属シートと、アルカリイオンに対して伝導性を有する電解質と、アルカリイオン源を構成する手段とを備えており、前記ホスト金属シートには複数の空隙が形成されており、前記ホスト金属シートにおけるこれら空隙の数、及び前記空隙の配列は、前記ホスト金属シートのあらゆる横膨張を前記空隙の中に局部的に吸収するように選択されており、これにより、前記ホスト金属と前記アルカリイオンによってもたらされるアルカリ金属との間の最初の合金生成が前記シートに生じた時に、前記ホスト金属シートの平面におけるあらゆる累積的な変化を実質的に阻止するように構成されたことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学的発電装置において、充電状態において、前記シートの少なくとも一部が、前記ホスト金属及び前記アルカリ金属から成る合金に転化されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリイオン源は、前記ホスト金属シートに接触しているアルカリ金属シートから構成されており、前記アルカリイオン源からもたらされる前記アルカリ金属は、当該電気化学的発電装置が充電状態にある時に、前記ホスト金属と合金化されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリイオン源は、前記正極に存在し、前記アルカリイオン源からもたらされる前記アルカリ金属は、当該電気化学的発電装置が充電状態にある時に、前記ホスト金属と合金化されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリイオン源は、前記ホスト金属シートに接触しているアルカリ金属シートであり、また、前記正極にも存在しており、前記アルカリ金属シート及び前記アルカリイオン源からもたらされる前記アルカリ金属は、当該電気化学的発電装置が充電状態にある時に、前記ホスト金属と合金化されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリ金属は、リチウムであることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属は、アルカリ金属の中で高い活性を有する合金を形成することのできる金属から成り、前記アルカリ金属の拡散が速いことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電気化学的発電装置において、アルカリ金属の中で高い活性を有する前記合金は、純粋なアルカリ金属の電位に関して、0乃至+0.15ボルトの電位を有することを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属の主要な構成要素は、Al、C、Sn、Pb、Ag、Si、Zn、Mgあるいはこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シートの空隙は、該ホスト金属シートの全表面の又は該ホスト金属シートの本体の約5乃至80%に相当することを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シートの空隙は、該ホスト金属シートの表面の又は該ホスト金属シートの本体の約5乃至30%に相当することを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記空隙は、格子状の形態を有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、空隙を有する前記シートは、格子状の形態を有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、空隙を有する前記シートは、切断加工、引き伸ばし加工、並びに、恐らくは再薄板化加工によって形成されるエキスパンドメタルの形態を有することを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、アルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質は、ポリマー電解質を含むことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項16】
請求項1乃至12のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、アルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質は、ポリマーマトリックスと、液体電解質と、該液体電解質に少なくとも部分的に溶解することのできる塩とを含むことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項17】
請求項1乃至9並びに請求項12乃至16のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記空隙は、前記ホスト金属シートの両面の中の一方にだけ設けられていて、凹部の形態を有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項18】
請求項1乃至9並びに請求項12乃至16のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記空隙は、前記ホスト金属シートの両面に設けられていて、凹部の形態を有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の電気化学的発電装置において、前記凹部は、彫刻加工又は型彫り加工によって形成されており、前記空隙の量は、凹部を含む面の約5乃至80%、好ましくは、5乃至30%に相当することを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項20】
請求項17乃至19のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記凹部は、前記合金生成により前記ホスト金属シートの平面に生ずるあらゆる直線的な膨張を実質的に補償するように配列されていることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シートは、該ホスト金属シートの面の中の少なくとも一方に設けられたポリマー電極の層を含んでおり、該ポリマー電極の層は、前記合金とアルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質との間のイオン交換を最大限にすると共に、前記負極と前記正極との間のセパレーターとして作用するように、前記ホスト金属シートに設けられていることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項22】
請求項21に記載の電気化学的発電装置において、前記ポリマー電解質は、該ポリマー電解質の中に分散された炭素を含んでおり、該炭素は、電子伝導添加剤として作用すると共に、イオン交換及び電子交換を最大限にすることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項23】
請求項3に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリ金属シートは、前記ホスト金属シートの一方の側部にだけ設けられていることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項24】
請求項3に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリ金属シートは、前記ホスト金属シートの両側部に設けられていることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項25】
請求項2に記載の電気化学的発電装置において、前記合金は、当該電気化学的発電装置を組み立てる間に生成されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項26】
請求項2に記載の電気化学的発電装置において、前記合金は、当該電気化学的発電装置を組み立てた後の活性化反応の間に生成されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項27】
請求項3に記載の電気化学的発電装置において、前記アルカリ金属シートは、前記正極とは反対側の前記ホスト金属シートの面に設けられており、これにより、当該電気化学的発電装置を組み立てた後の合金生成を遅延させると共に、当該電気化学的発電装置を組み立てる作業の安全性を最大限にすることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属は、該ホスト金属の一部が未反応の状態で残るように、前記アルカリ金属に関して過剰の量で設けられ、これにより、前記未反応の一部が、前記ホスト金属シートの平面上で集電体として作用することを可能にしたことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項29】
請求項1乃至22のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、円筒形、又は、平坦に巻着された、あるいは、平坦に重積された膜から構成されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項30】
請求項22に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シート、及び、前記正極の集電体は、前記円筒形、又は、平坦に巻着された、あるいは、平坦に重積された薄膜の両側部で突出し、これにより、前記集電体及び前記ホスト金属シートのそれぞれの全側縁部に沿って、効率的な接続を行うことを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項31】
請求項30に記載の電気化学的発電装置において、前記接続は、前記シートの前記側縁部に導電性金属の粉末を付与することによって達成されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項32】
請求項3に記載の電気化学的発電装置において、前記負極の合金シートは、当該電気化学的発電装置を組み立てた後に、前記ホスト金属シート、及び、該ホスト金属シートに接触している前記アルカリ金属シートを熱処理することによって形成され、前記熱処理は、加圧下、又は、機械的な拘束の下で、且つ、前記負極のシートの平坦な状態を確実に維持する条件下で実行されることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項33】
請求項1乃至32のいずれか一に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シートは、約1乃至150μmの厚さを有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項34】
請求項33に記載の電気化学的発電装置において、前記ホスト金属シートは、約10乃至100μmの厚さを有していることを特徴とする電気化学的発電装置。
【請求項35】
電気化学的発電装置の製造方法であって、正極及びその集電体を含む複数の薄膜と、後に負極を構成することを意図されたホスト金属シートと、アルカリイオンに対して伝導性を有する電解質と、アルカリイオン源を構成する手段とを準備する工程と、前記負極及び前記シートを前記伝導性の電解質のいずれかの部分に設ける工程とを備えており、前記シートは、複数の空隙を有するホスト金属シートから選択され、前記ホスト金属シートにおけるこれら空隙の量、及び前記空隙の配列は、前記ホスト金属シートのあらゆる横膨張を前記空隙の中に局部的に吸収するように選択され、これにより、前記ホスト金属と前記アルカリイオンによってもたらされるアルカリ金属との間の最初の合金生成が前記シートに生じた時に、前記ホスト金属シートの平面におけるあらゆる累積的な変化を実質的に阻止するようになっており、更に、その後、前記複数の膜、前記伝導性の電解質、及び、前記アルカリイオン源を組み立てて前記発電装置を構成する工程を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項36】
請求項35に記載の製造方法において、前記発電装置を充電し、これにより、前記シートが、前記ホスト金属及び前記アルカリ金属から成る合金の少なくとも一部になるようにすることを特徴とする製造方法。
【請求項37】
請求項36に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートをアルカリ金属シートに接触させ、その後、前記発電装置を充電し、これにより、前記アルカリ金属が、前記ホスト金属と合金化されるようにすることを特徴とする製造方法。
【請求項38】
請求項35又は36に記載の製造方法において、前記アルカリイオン源を前記正極に集中させ、その後、前記発電装置を電気化学的に充電して、前記アルカリイオン源からもたらされるアルカリ金属を前記ホスト金属と合金化させることを特徴とする製造方法。
【請求項39】
請求項35又は36に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートをアルカリ金属シートに接触させ、また、別のアルカリイオン源を前記正極に導入し、その後、前記発電装置を電気化学的に充電して、前記アルカリ金属シート及び前記アルカリイオン源からもたらされるアルカリ金属を前記ホスト金属と合金化させることを特徴とする製造方法。
【請求項40】
請求項35又は36に記載の製造方法において、前記アルカリ金属が、リチウムであることを特徴とする製造方法。
【請求項41】
請求項35又は36に記載の製造方法において、前記ホスト金属は、アルカリ金属の中で高い活性を有する合金を形成することのできる金属から成り、前記アルカリ金属の拡散が速いことを特徴とする製造方法。
【請求項42】
請求項41に記載の製造方法において、アルカリ金属の中で中い活性を有する前記合金は、純粋なアルカリ金属の電位に関して、0乃至+0.15ボルトの電位を有することを特徴とする製造方法。
【請求項43】
請求項35乃至42のいずれか一に記載の製造方法において、前記ホスト金属の主要な構成要素は、Al、C、Sn、Pb、Ag、Si、Zn、Mgあるいはこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする製造方法。
【請求項44】
請求項35乃至43のいずれか一に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートの空隙は、該ホスト金属シート本体の全表面の又は該ホスト金属シートの本体の約5乃至80%に相当することを特徴とする製造方法。
【請求項45】
請求項44に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートの空隙は、該ホスト金属シートの表面の又は該ホスト金属シートの本体の約5乃至30%に相当することを特徴とする製造方法。
【請求項46】
請求項35乃至45のいずれか一に記載の製造方法において、前記空隙は、格子状の形態を有していることを特徴とする製造方法。
【請求項47】
請求項35乃至46のいずれか一に記載の製造方法において、空隙を有する前記シートは、格子状の形態を有していることを特徴とする製造方法。
【請求項48】
請求項35乃至46のいずれか一に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートは、切断加工し、引き伸ばし加工し、最終的には、再薄板化加工することによって処理され、これにより、エキスパンドメタルの形態の空隙を有するシートを形成することを特徴とする製造方法。
【請求項49】
請求項35乃至46のいずれか一に記載の製造方法において、アルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質は、ポリマー電解質を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項50】
請求項35乃至46のいずれか一に記載の製造方法において、アルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質は、ポリマーマトリックスと、液体電解質と、該液体電解質に少なくとも部分的に溶解することのできる塩とを含むことを特徴とする製造方法。
【請求項51】
請求項35乃至43並びに請求項46乃至50のいずれか一に記載の製造方法において、前記空隙は、前記ホスト金属シートの両面の中の一方にだけ設けられていて、凹部の形態を有していることを特徴とする製造方法。
【請求項52】
請求項35乃至43並びに請求項46乃至50のいずれか一に記載の製造方法において、前記空隙は、前記ホスト金属シートの両面に設けられていて、凹部の形態を有していることを特徴とする製造方法。
【請求項53】
請求項51又は52に記載の製造方法において、前記凹部は、彫刻加工又は型彫り加工によって形成されており、前記空隙の割合は、凹部を含む面の約5乃至80%、好ましくは、5乃至30%に相当することを特徴とする製造方法。
【請求項54】
請求項51乃至53のいずれか一に記載の製造方法において、前記凹部は、前記合金生成により前記ホスト金属シートの平面に生ずるあらゆる直線的な膨張を実質的に補償するように配列されていることを特徴とする製造方法。
【請求項55】
請求項35乃至54のいずれか一に記載の製造方法において、ポリマー電解質の層を前記ホスト金属シートの少なくとも一方の面に導入し、前記層を前記ホスト金属シートに設け、これにより、前記合金とアルカリイオンに対して伝導性を有する前記電解質との間のイオン交換を最大限にさせると共に、前記負極と前記正極との間のセパレーターとして作用させることを特徴とする製造方法。
【請求項56】
請求項55に記載の製造方法において、炭素を前記ポリマー電解質に導入し、前記炭素を前記ポリマー電解質の中に分散させて電子伝導の添加剤として作用させ、これにより、イオン交換及び電子交換を最大限にすることを特徴とする製造方法。
【請求項57】
請求項37に記載の製造方法において、前記アルカリ金属シートを、前記ホスト金属シートの一方の側部にだけ設けることを特徴とする製造方法。
【請求項58】
請求項37に記載の製造方法において、前記アルカリ金属シートを、前記ホスト金属シートの2つの側部に設けることを特徴とする製造方法。
【請求項59】
請求項36に記載の製造方法において、前記合金は、前記発電装置を組み立てる時に生成されることを特徴とする製造方法。
【請求項60】
請求項36に記載の製造方法において、前記発電装置を組み立てた後に、活性化反応を行わせ、これにより、合金を生成させることを特徴とする製造方法。
【請求項61】
請求項37に記載の製造方法において、前記アルカリ金属シートを、前記正極とは反対側の前記アルカリ金属シートの面に設け、これにより、前記発電装置を組み立てた後の合金生成を遅延させると共に、前記発電装置を組み立てる作業の安全性を最大限にすることを特徴とする製造方法。
【請求項62】
請求項35に記載の製造方法において、前記ホスト金属は、該ホスト金属の一部が未反応の状態で残るように、前記アルカリ金属に関して過剰の量で設けられ、これにより、前記未反応の一部が、前記ホスト金属シートの平面上で集電体として作用することを可能にしたことを特徴とする製造方法。
【請求項63】
請求項35乃至66のいずれか一に記載の製造方法において、前記膜を円筒形に巻着するか、平坦に巻着するか、あるいは、平坦に重積する工程を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項64】
請求項63に記載の製造方法において、前記ホスト金属シート、及び、前記正極の集電体を、前記円筒形又は平坦に巻着されたあるいは平坦に重積された膜の両側部で突出させ、これにより、前記集電体又はホスト金属シートのそれぞれの総ての側縁部に対して効率的な接続が行われるように実行されることを特徴とする製造方法。
【請求項65】
請求項64に記載の製造方法において、前記シートの側縁部に導電性金属の粉末を付与することにより、前記接続を行うことを特徴とする製造方法。
【請求項66】
請求項36に記載の製造方法において、前記負極の合金シートを、当該電気化学的発電装置を組み立てた後に、前記ホスト金属シート、及び、該ホスト金属シートに接触している前記アルカリ金属シートを熱処理することによって形成し、前記熱処理を、加圧下、又は、機械的な拘束の下で、且つ、前記負極のシートの平坦な状態を確実に維持する条件下で実行することを特徴とする製造方法。
【請求項67】
請求項35乃至66に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートが、約1乃至150μmの厚さを有していることを特徴とする製造方法。
【請求項68】
請求項67に記載の製造方法において、前記ホスト金属シートは、約10乃至100μmの厚さを有していることを特徴とする製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−114090(P2010−114090A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1969(P2010−1969)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【分割の表示】特願平10−103020の分割
【原出願日】平成10年4月14日(1998.4.14)
【出願人】(309005766)バシウム・カナダ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【分割の表示】特願平10−103020の分割
【原出願日】平成10年4月14日(1998.4.14)
【出願人】(309005766)バシウム・カナダ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]