説明

電気機器の液冷式冷却装置

【課題】電動機付き自動車の動作モードに応じて必要な機器のみを重点的に冷却を行いポンプ動力の無駄が少ないことにより、効率が良く、ポンプ寿命も良好な液冷式冷却装置を追加部品のない構成にて提供することを目的とする。
【解決手段】同時に動作することはない少なくとも一組の電気機器を含む複数の電気機器に各々設けられた冷却液流路と、冷却液循環方向を選択的に反転させて循環させる冷却液循環ポンプと、前記各冷却液流路と前記冷却液循環ポンプを接続して冷却液を循環させる流路を構成する冷却液循環流路とを備えた電気機器の液冷式冷却装置において、前記同時に動作することはない少なくとも一組の電気機器に設けられた前記冷却液流路は、冷却液循環方向により圧損が異なり、かつ圧損が大きい循環方向が各々異なるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、電動機付き自動車に搭載された、電気機器の液冷式冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は従来の電気機器の液冷式冷却装置を示す斜視図である。図8は従来の電気機器の液冷式冷却装置を示す斜視図である。
【0003】
これら図7、図8において、1は電気機器本体、2は冷却液流路蓋、3は電気機器本体1内に構成された冷却液流路である。冷却液流路3は冷却液流路蓋2と共に冷却液を通す流路を構成する。この冷却液流路3は、断面積一定である。
【0004】
図9は電動機付き自動車に搭載された、従来の電気機器の液冷式冷却装置を示す構成図である。図10は電動機付き自動車に搭載された、従来の電気機器の液冷式冷却装置の冷却液流路を示す構成図である。
【0005】
これら図9、図10において、8は走行用モータ、8aは走行用モータ8に設けられた冷却液流路、9は走行用モータ8を駆動する駆動用インバータ、9aは駆動用インバータ9に設けられた冷却液流路、10は走行用の主電池を充電するための充電器、10aは充電器10に設けられた冷却液流路、11は補機系に電力を供給するDC/DCコンバータ、11aはDC/DCコンバータ11に設けられた冷却液流路、12は冷却液を一定方向のみに循環させる冷却液循環ポンプ、13はラジエータ、14は各電気機器と前記冷却液循環ポンプ12を一つの環状に直列に接続する冷却液循環流路である。15は充電時の冷却液循環方向、16は走行時の冷却液循環方向であり、充電時と走行時は同じ方向に冷却液が流れる。
【0006】
電動機付き自動車の走行時は、走行用モータ8とモータ駆動用インバータ9が動作し、充電器10は動作しない。冷却液循環ポンプ12が冷却液循環流路14に冷却液を送ることにより、走行用モータ8とモータ駆動用インバータ9を冷却する。このような走行時には動作しておらず、冷却が不要の充電器10にも冷却液が流れる。
【0007】
電動機付き自動車の主電池の充電は停車時に行い、この充電時は、充電器10は動作し、走行用モータ8とモータ駆動用インバータ9は動作しない。冷却液循環ポンプ12が冷却液循環流路14に冷却液を送ることにより、充電器10を冷却する。このような充電時には動作しておらず、冷却が不要の走行用モータ8とモータ駆動用インバータ9にも冷却液が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−275492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように構成された従来の電気機器の液冷式冷却装置においては、電動機付き自動車の走行時は動作しておらず冷却が不要の充電器10にも冷却液が流れる。また、電動機付き自動車の充電時は動作しておらず冷却が不要の走行用モータ8とモータ駆動用インバータ9にも冷却液が流れる。そのため冷却が不要の機器に冷却液を流すため冷却液循環ポンプ
12の運転負荷が無駄に大きくなり、ポンプ動力の無駄が大きい、冷却液循環ポンプ12の寿命が短くなる等の課題があった。
【0010】
また、特開平4−275492号公報に示すように複数の冷却液循環流路をバルブで切り替え必要な機器にのみ冷却水を流す液冷式冷却装置があるが、複雑な配管と切り替えバルブが必要であり冷却装置が大型で高価になるという課題があった。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、電動機付き自動車の動作モードに応じて必要な機器のみを重点的に冷却を行いポンプ動力の無駄が少ないことにより、効率が良く、ポンプ寿命も良好な電気機器の液冷式冷却装置を追加部品のない構成にて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係わる電気機器の液冷式冷却装置は、同時に動作することはない少なくとも一組の電気機器を含む複数の電気機器に各々設けられた冷却液流路と、冷却液循環方向を選択的に反転させて循環させる冷却液循環ポンプと、前記各冷却液流路と前記冷却液循環ポンプを接続して冷却液を循環させる流路を構成する冷却液循環流路とを備えた電気機器の液冷式冷却装置において、前記同時に動作することはない少なくとも一組の電気機器に設けられた前記冷却液流路は、冷却液循環方向により圧損が異なり、かつ圧損が大きい循環方向が各々異なることを特徴とする。
【0013】
また、この発明における電気機器の液冷式冷却装置は、前記電気機器に設けられた冷却液流路は徐々に断面積が変化する区間と断面積が急変する区間が交互に繰り返す、のこぎり歯型形状壁面を持つ構造であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明における電気機器の液冷式冷却装置は、前記同時に動作することはない少なくとも一組の電気機器は、電動機付き自動車に搭載された、走行用モータと前記走行用モータを駆動するモータ駆動用インバータ、および走行用の主電池を充電するための充電器で構成され、前記走行用モータと前記モータ駆動用インバータは前記充電器と圧損が大きい循環方向が異なることを特徴とする。
【0015】
また、この発明における電気機器の液冷式冷却装置は、前記複数の電気機器は、異なる冷却液循環方向の圧損が同じである冷却液流路を設けたDC/DCコンバータを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係わる電気機器の液冷式冷却装置によれば、部品、配管を追加することなく、同時に動作することはない電気機器動作モードに応じて必要な機器のみを重点的に冷却を行いポンプ動力の無駄が少ないことにより、効率が良く、ポンプ寿命も良好に保つことができる電気機器の液冷式冷却装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる電気機器の液冷式冷却装置における電気機器の冷却構成を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係わる電気機器の液冷式冷却装置における電気機器の冷却構成を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係わる電気機器の液冷式冷却装置における電気機器の冷却液流路を示す詳細図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係わる電気機器の液冷式冷却装置における電気機器のDC/DCコンバータの冷却液流路を示す詳細図である。
【0018】
【図5】電動機付き自動車に搭載された、この発明の実施例1による電気機器の液冷式冷却装置を示す構成図である。
【図6】電動機付き自動車に搭載された、この発明の実施例1による電気機器の液冷式冷却装置の冷却液流路を示す構成図である。
【0019】
【図7】従来の電気機器の液冷式冷却装置を構成する電気機器の斜視図である。
【図8】従来の電気機器の液冷式冷却装置を構成する電気機器の斜視図である。
【図9】電動機付き自動車に搭載された、従来の電気機器の液冷式冷却装置を示す構成図である。
【図10】電動機付き自動車に搭載された、従来の電気機器の液冷式冷却装置の冷却液流路を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1ないし図6に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係わる電気機器の液冷式冷却装置における電気機器の冷却構成を示す斜視図である。図2はこの発明の実施の形態1に係わる電気機器の液冷式冷却装置における電気機器の冷却構成を示す斜視図である。図3はこの発明の実施の形態1に係わる電気機器の液冷式冷却装置における電気機器の冷却液流路を示す詳細図である。図4はこの発明の実施の形態1に係わる電気機器の液冷式冷却装置における電気機器のDC/DCコンバー
タの冷却液流路を示す詳細図である。図5は電動機付き自動車に搭載された、この発明の実施例1による電気機器の液冷式冷却装置を示す構成図である。図6は電動機付き自動車に搭載された、この発明の実施例1による電気機器の液冷式冷却装置の冷却液流路を示す構成図である。
【0021】
これら図1〜図4において、101は電気機器本体、102は冷却液流路蓋、103は電気機器本体101内に構成された冷却液流路である。冷却液流路103は冷却液流路蓋102と共に冷却液を通す流路を構成する。冷却液の乱流を発生させ、冷却性能を向上させる目的で、図3に示すように、冷却液流路103には、徐々に冷却液流路103の断面積が変化する変化区間104、冷却液流路103の断面積が急変する急変区間105を設けている。
【0022】
断面積が徐々に変化する変化区間104と断面積が急変する急変区間105は交互に繰り返すことにより、冷却液流路103はのこぎり歯型形状壁面にて構成されている。冷却液が矢印6の方向に循環する時は冷却液は漸縮、急拡を繰り返す。逆に、冷却液が矢印7の方向に循環する時は冷却液は漸拡、急縮を繰り返す。
【0023】
一般的に、流体は「漸縮、急拡」は「漸拡、急縮」より圧損が低く、そのため流れの乱れが少なく冷却性能は低いとされている。逆に、「漸拡、急縮」は「漸縮、急拡」より圧損が大きく、そのため流れの乱れが大きく冷却性能は高いとされている。
【0024】
図5は電動機付き自動車に搭載された、この発明の実施例1による電気機器の液冷式冷却装置を示す構成図である。図6は電動機付き自動車に搭載された、この発明の実施例1による電気機器の液冷式冷却装置の冷却液流路を示す構成図であり、各電気機器の冷却路103と冷却液循環流路114を説明するものである。
【0025】
これら図5、図6において、108は走行用モータ、108aおよび108bは走行用モータ108に設けられ、冷却液循環方向16方向に対して「漸拡、急縮」となる変化区間冷却液流路および急変区間冷却液流路である。
【0026】
109は走行用モータ108を駆動するモータ駆動用インバータ、109aおよび109bはモータ駆動用インバータ109に設けられ、冷却液循環方向16方向に対して「漸拡、急縮」となる変化区間冷却液流路および急変区間冷却液流路である。
【0027】
110は走行用の主電池を充電するための充電器、110aおよび110bは充電器110に設けられ、冷却液循環方向116方向に対して「漸縮、急拡」となる変化区間冷却液流路および急変区間冷却液流路である。すなわち、走行用モータ108に設けられた変化区間冷却液流路108aおよび急変区間冷却液流路108bとモータ駆動用インバータ109に設けられた変化区間冷却液流路109aおよび急変区間冷却液流路109bとは相反する違った方向に冷却液流路が構成されている。
【0028】
111は補機系に電力を供給するDC/DCコンバータ、111aはDC/DCコンバータ111に設けられた冷却液流路、112は冷却液の冷却液循環方向を選択的に反転させて循環させる冷却液循環ポンプ、113はラジエータ、114は各電気機器と前記冷却液循環ポンプ112を一つの環状に直列に接続する冷却液循環流路である。115は充電時の冷却液循環方向、116は走行時の冷却液循環方向であり、充電時と走行時は相反する方向に冷却液が流れる。
【0029】
走行時においては、冷却液は冷却液循環方向116の方向に循環する。走行用モータ108に設けられた変化区間冷却液流路108aおよび急変区間冷却液流路108bは冷却液循環方向16の方向に対して「漸拡、急縮」となり、圧損は大きいが冷却性能は高い。また、モータ駆動用インバータ109に設けられた変化区間冷却液流路109aおよび急変区間冷却液流路109bは冷却液循環方向16の方向に対して「漸拡、急縮」となり、圧損は大きいが冷却性能は高い。走行時は使用しない充電器110に設けられた変化区間冷却液流路110aおよび急変区間冷却液流路110bは冷却液循環方向16の方向に対して「漸縮、急拡」となり、圧損は小さく冷却性能は低い。
【0030】
したがって、走行時においては、走行用モータ108とモータ駆動用インバータ109を重点的に効率的に冷却することができるとともに、走行時は使用しない充電器110の冷却液流路への冷却液循環ポンプ112の負荷を低減できるので、ポンプ寿命も良好に保つことができる電気機器の液冷式冷却装置を得ることができる。
【0031】
充電時においては、冷却液は冷却液循環方向115の方向に循環する。充電器110に設けられた変化区間冷却液流路110aおよび急変区間冷却液流路110bは冷却液循環方向115の方向に対して「漸拡、急縮」となり、圧損は大きいが冷却性能は高い。走行時は使用しない走行用モータ108に設けられた変化区間冷却液流路108aおよび急変区間冷却液流路108bは冷却液循環方向115の方向に対して「漸縮、急拡」となり、圧損は小さく冷却性能は低い。モータ駆動用インバータ109に設けられた変化区間冷却液流路109aおよび急変区間冷却液流路109bは冷却液循環方向15の方向に対して「漸縮、急拡」となり、圧損は小さく冷却性能は低い。
【0032】
したがって、充電時においては、充電器110を重点的に効率的に冷却することができるとともに、走行時は使用しない走行用モータ108とモータ駆動用インバータ109の冷却液流路への冷却液循環ポンプ112の負荷を低減できるので、ポンプ寿命も良好に保つことができる電気機器の液冷式冷却装置を得ることができる。
【0033】
ところで、DC/DCコンバータ111は走行時、充電時とも補機系に電力を供給するため使用するので、図4に示すように、どちら冷却液循環方向15,16に対しても冷却性能と圧損が同じとなるように左右対称型の壁面形状壁面にて構成されている。
【0034】
以上の構成により、電動機付き自動車の動作モードに応じて必要な機器のみを重点的に冷却を行うことができ、ポンプ動力の無駄が少ないことにより、効率が良く、ポンプ寿命も良好な電気機器の液冷式冷却装置を追加部品のない構成にて提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、効率が良く、ポンプ寿命も良好な電気機器の液冷式冷却装置の実現に好適である。
【符号の説明】
【0036】
101 電気機器本体
103 冷却液流路
104 変化区間冷却液流路
105 急変区間冷却液流路
108 走行用モータ
108a 変化区間冷却液流路
108b 急変区間冷却液流路
109 モータ駆動用インバータ
109a 変化区間冷却液流路
109b 急変区間冷却液流路
110 充電器
110a 変化区間冷却液流路
110b 急変区間冷却液流路
111 DC/DCコンバータ
111a 冷却液流路
112 冷却液循環ポンプ
114 冷却液循環流路
115 冷却液循環方向
116 冷却液循環方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時に動作することはない少なくとも一組の電気機器を含む複数の電気機器に各々設けられた冷却液流路と、冷却液循環方向を選択的に反転させて循環させる冷却液循環ポンプと、前記各冷却液流路と前記冷却液循環ポンプを接続して冷却液を循環させる流路を構成する冷却液循環流路とを備えた電気機器の液冷式冷却装置において、前記同時に動作することはない少なくとも一組の電気機器に設けられた前記冷却液流路は、冷却液循環方向により圧損が異なり、かつ圧損が大きい循環方向が各々異なることを特徴とする電気機器の液冷式冷却装置。
【請求項2】
前記電気機器に設けられた冷却液流路は、徐々に断面積が変化する区間と断面積が急変する区間が交互に繰り返す、のこぎり歯型形状壁面を持つ構造であることを特徴とする請求項1に記載の電気機器の液冷式冷却装置。
【請求項3】
前記同時に動作することはない少なくとも一組の電気機器は、電動機付き自動車に搭載された、走行用モータと前記走行用モータを駆動するモータ駆動用インバータ、および走行用の主電池を充電するための充電器で構成され、前記走行用モータと前記モータ駆動用インバータは前記充電器と圧損が大きい循環方向が異なるとることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気機器の液冷式冷却装置。
【請求項4】
前記複数の電気機器は、異なる冷却液循環方向の圧損が同じである冷却液流路を設けたDC/DCコンバータを含むことを特徴とする請求項3に記載の電気機器の液冷式冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−217557(P2011−217557A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85084(P2010−85084)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】