説明

電気装置

【課題】発熱モジュールを効率良く冷却することできて、しかも、小型化および軽量化できる電気装置を提供する。
【解決手段】ヒートスプレッダ1の一方の表面の下部には、SiCスイッチング素子11を含むモジュール2が取り付けられている。ヒートスプレッダ1の一方の表面の上部には冷却フィン3が取り付けられている。モジュール2の熱はヒートスプレッダ1を介して冷却フィン3に伝わって、冷却フィン3から外部に放熱される。ヒートスプレッダ1は、内部に空間が残るように液体が充填されたヒートパイプ4を内蔵している。ヒートパイプ4は、ヒートスプレッダ1の下部から鉛直方向に延びて上記ヒートスプレッダ1の上部に達している。このヒートパイプ4内では液体が気化と液化とを繰り返して循環し、モジュール2の熱が冷却フィン3に効率良く運ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスタック構造を有する電力変換装置等の電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気装置としては、構成部品をファンで冷却する空冷方式を採用したものがあるが、冷却しなければならない構成部品が複数あると、この複数の構成部品の全てを1つのファンで効果的に冷却するのは困難である。
【0003】
また、上記冷却しなければならない構成部品が複数ある場合、ファンを複数設置すれば、構成部品の全てを効果的に冷却できるが、装置が大型化してしまう。
【0004】
このため、特開2006−74963号公報(特許文献1)の電気装置では水冷方式を採用している。より詳しく説明すると、上記電気装置は、リアクトル、コンデンサおよび半導体素子を備え、リアクトル、コンデンサおよび半導体素子を経由する導水ホースにポンプで冷却水を送る。これにより、上記リアクトル、コンデンサおよび半導体素子が一括冷却される。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の電気装置では、ポンプを設置するスペースを確保しなければならないため、小型化および軽量化できないという問題がある。
【特許文献1】特開2006−74963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、発熱モジュールを効率良く冷却することできて、しかも、小型化および軽量化できる電気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の電気装置は、
伝熱性部材と、
上記伝熱性部材の一方の表面の下部に取り付けられ、電気素子を含む発熱モジュールと、
上記伝熱性部材の一方の表面の上部に取り付けられ、上記発熱モジュールの熱を上記伝熱性部材を介して受けて放熱する放熱フィンと、
上記放熱フィンに対向するように配置され、上記放熱フィンに送風する送風装置と、
上記伝熱性部材の他方の表面の上部に隙間をあけて対向するように配置されたコンデンサ装置と、
上記伝熱性部材の一方の表面から上記伝熱性部材の他方の表面に貫通すると共に、上記送風装置から上記コンデンサ装置へ向かう風が通過する風通路と
を備え、
上記伝熱性部材は、内部に空間が残るように液体が充填されたヒートパイプを内蔵し、
上記ヒートパイプは、上記伝熱性部材の下部から上方に延びて上記伝熱性部材の上部に達していることを特徴としている。
【0008】
ここで、「上方に延び」とは、鉛直方向に延びたり、斜め上方に延びたりすることを意味する。
【0009】
上記構成の電気装置によれば、上記ヒートパイプの下部に溜まった液体は、伝熱性部材を介して、発熱モジュールの熱を奪って気化する。この気化した気体は、上方に移動して、ヒートパイプの上部で冷却されて液化する。そして、上記液化した液体は、下方に移動して、再び、ヒートパイプの下部に溜まる。このような気化および液化がヒートパイプ内で繰り返される。つまり、上記ヒートパイプ内で液体が状態を変えながら循環する。
【0010】
その結果、上記発熱モジュールから放熱フィンへ熱が効率良く移動するので、発熱モジュールを効率良く冷却することができる。
【0011】
また、上記液体の循環に例えばポンプを用いなくてもよいから、設置スペースが小さく、小型化および軽量化することができる。
【0012】
また、上記ヒートパイプが上方に延びていることによって、液体がスムーズに循環するので、発熱モジュールから熱をその液体で効率良く奪うことができる。つまり、上記発熱モジュールの冷却効果を高めることができる。
【0013】
また、上記送風装置が放熱フィンに送風するので、放熱フィンの放熱効率を向上させることができる。このとき、上記送風装置が起こした風の一部が風通路を流れてコンデンサ装置に当たるので、コンデンサ装置の冷却効果を高めることができる。
【0014】
一実施形態の電気装置は、
上記コンデンサ装置を搭載する荷台と、
上記伝熱性部材の他方の表面の下部に対向するように配置されると共に、上記コンデンサ装置に比べて上下方向の長さが短いリアクトル装置と
を備え、
上記コンデンサ装置は、上記発熱モジュールに電気的に接続される端子を下面に有する。
【0015】
上記実施形態の電気装置によれば、上記コンデンサ装置の上下方向の長さよりも、リアクトル装置の上下方向の長さが短くて、コンデンサ装置は、発熱モジュールに電気的に接続される端子を下面に有するので、この端子と発熱モジュールとを結ぶ電気経路が短くなり、浮遊インダクタンスを小さくできる。
【0016】
一実施形態の電気装置では、
上記リアクトル装置は上記発熱モジュールに電気的に接続されている。
【0017】
上記実施形態の電気装置によれば、上記リアクトル装置を発熱モジュールに電気的に接続するので、リアクトル装置の熱を伝熱性部材の下部に運ぶことができる。
【0018】
したがって、上記リアクトル装置も、発熱モジュールと同様に、ヒートパイプで効率良く冷却することができる。
【0019】
一実施形態の電気装置は、
上記電気素子はSiCスイッチング素子である。
【0020】
上記実施形態の電気装置によれば、上記電気素子はSiCスイッチング素子であるので、Siスイッチング素子に比べて、3倍以上の高温で動作できるし、約10倍の高耐圧や1/100の低損失化および10倍の高速化が可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電気装置によれば、上記伝熱性部材は、内部に空間が残るように液体が充填されたヒートパイプを内蔵し、かつ、このヒートパイプは、伝熱性部材の下部から上方に延びて上記伝熱性部材の上部に達していることによって、ヒートパイプ内で液体が循環し、発熱モジュールの熱が放熱フィンに効率良く送られるので、発熱モジュールを効率良く冷却することができる。
【0022】
また、上記液体の循環に例えばポンプを用いなくてもよいから、設置スペースが小さく、小型化および軽量化することができる。
【0023】
また、上記ヒートパイプが上方に延びていることによって、液体がスムーズに循環するので、発熱モジュールの冷却効果を向上させることができる。
【0024】
また、上記伝熱性部材の一方の表面から伝熱性部材の他方の表面に貫通する風通路があることによって、送風装置が起こした風の一部が風通路を流れてコンデンサ装置に当たるので、コンデンサ装置の冷却効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の電気装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の一実施の形態の電力変換装置の前部を斜め上方から見た模式図である。また、図2は上記電力変換装置の後部を斜め上方から見た模式図である。なお、図2においては、図3のフレーム8、主回路導体13、リアクトル用端子16および抵抗用端子17は図示していない。
【0027】
上記電力変換装置は、図1,図2に示すように、伝熱性部材の一例としてのアルミ製のヒートスプレッダ1と、発熱モジュールの一例としてのモジュール2と、放熱フィンの一例としての銅製の冷却フィン3と、コンデンサ装置の一例としての直流平滑用コンデンサ5と、抵抗6と、リアクトル装置の一例としてのリアクトル7と、制御回路基板(図示せず)を含む制御回路ボックス9とを備えている。
【0028】
上記ヒートスプレッダ1は2個あって、水平方向において所定の間隔を空けて配置されている。上記各ヒートスプレッダ1は略板状であり、一方の表面および他方の表面が鉛直方向に対して略平行になっている。そして、上記ヒートスプレッダ1同士の隙間が風通路10である。
【0029】
上記モジュール2は、ヒートスプレッダ1の一方の表面の下部に取り付けられて、冷却フィン3の下方に位置している。
【0030】
上記冷却フィン3はヒートスプレッダ1の一方の表面の上部に取り付けられている。そして、上記冷却フィン3はモジュール2の熱をヒートスプレッダ1を介して受けて放熱する。
【0031】
図3は上記電力変換装置を側方から見た模式図である。
【0032】
上記各ヒートスプレッダ1は、液体が充填されて鉛直方向に延びるヒートパイプ4を複数内蔵している。この複数のヒートパイプ4は図3の紙面に対して垂直な方向に並び、各ヒートパイプ4がヒートスプレッダ1の下部から鉛直方向に延びてヒートスプレッダ1の上部に達している。このようなヒートパイプ4は、ヒートスプレッダ1の内部で密閉された直棒状の穴である。また、上記液体の容量はヒートパイプ4の容量の約1/3となっている。つまり、上記ヒートパイプ4内は液体で一杯になっておらず、空間がヒートパイプ4内に残っている。また、上記液体はヒートスプレッダ1の熱を吸収でるものであればよく、例えば水等を液体として使用できる。
【0033】
上記モジュール2は、複数のSiCスイッチング素子11(図3では1つのみ図示)を含んでいる。また、上記モジュール2は、直流平滑用コンデンサ5、抵抗6およびリアクトル7に電気的に接続されるモジュール用端子18を有している。
【0034】
上記直流平滑用コンデンサ5は、ヒートスプレッダ1の他方の表面の上部に対して隙間をあけて対向するように配置されている。また、上記直流平滑用コンデンサ5は、端子の一例としてのコンデンサ用端子15を下面に有している。また、上記直流平滑用コンデンサ5は、コンデンサ5および抵抗6に比べて鉛直方向の長さが長くなっている。
【0035】
上記抵抗6,リアクトル7は、ヒートスプレッダ1の他方の表面の下部に対向するように配置され、直流平滑用コンデンサ5下に位置している。
【0036】
また、上記電力変換装置は、荷台の一例としてのフレーム8と、送風装置の一例としてのファン12と、例えば銅からなる主回路導体13とを備えている。
【0037】
上記ファン12は、放熱フィン3に対向するように配置されている。そして、上記ファン12は放熱フィン3に向けて風を送る。
【0038】
上記フレーム8は直流平滑用コンデンサ5を搭載して支持する。このフレーム8において直流平滑用コンデンサ5を搭載する部分の下には、例えばマイカからなる絶縁支持材14が配置されている。つまり、上記絶縁支持材14は、直流平滑用コンデンサ5とリアクトル7との間に配置されている。
【0039】
上記主回路導体13は、水平方向に延びる部分と、この部分の一方の端部に連なって鉛直方向に延びる部分とを有している。上記水平方向に延びる部分は、絶縁支持材14に設けられた溝内に挿入されて、コンデンサ用端子15、リアクトル用端子16および抵抗用端子17に電気的に接続されている。一方、上記鉛直方向に延びる部分は、モジュール用端子18に電気的に接続されている。
【0040】
上記構成の電力変換装置によれば、ヒートパイプ4の下部に溜まった液体は、ヒートスプレッダ1を介して、モジュール2の熱を奪って気化する。この気化した気体は、鉛直方向に上昇して、ヒートパイプ4の上部で冷却される結果、液化して、再び、ヒートパイプ4の下部に溜まる。このような気化および液化がヒートパイプ4内で繰り返される。
【0041】
その結果、上記ヒートパイプ4内で液体が循環するので、モジュール2の熱はヒートパイプ4内の液体によってヒートスプレッダ1の上部に運ばれ、そして、その上部から冷却フィン3に到達する。
【0042】
上記構成の電力変換装置によれば、ヒートパイプ4の下部に溜まった液体は、ヒートスプレッダ1を介して、モジュール2の熱を奪って気化する。この気化した気体は、鉛直方向に上昇して、ヒートパイプ4の上部で、この上部に接続された冷却フィン3で冷却されて液化して、再び、液体となってヒートパイプ4の下部に溜まる。このような気化および液化がヒートパイプ4内で繰り返される。すなわち、上記ヒートパイプ4内で液体が循環する。
【0043】
その結果、上記モジュール2から冷却フィン3へ熱が効率良く移動するので、モジュール2を効率良く冷却することができる。
【0044】
また、上記液体の循環に例えばポンプを用いなくてもよいので、設置スペースは小さく、小型化および軽量化することができる。
【0045】
また、上記ヒートパイプ4が上方に延びていることによって、ヒートパイプ4内の液体がスムーズに循環するので、モジュール2の熱をその液体に効率良く移すことができる。
【0046】
また、上記ファン12が冷却フィン3に送風するので、冷却フィン3の放熱効率を向上させることができる。このとき、上記ファン12の風の一部が風通路10を通ってコンデンサ5に当たるので、コンデンサ5の冷却効果を高めることができる。
【0047】
また、上記コンデンサ5の上下方向の長さよりも、リアクトル7の上下方向の長さが短くて、コンデンサ5は、モジュール2に電気的に接続されるコンデンサ用端子15を下面に有するので、このコンデンサ用端子15とモジュール2とを電気的に接続する主回路導体13が短くなり、浮遊インダクタンスを小さくできる。
【0048】
また、上記抵抗6およびリアクトル7は主回路導体13を介してモジュール2に電気的に接続されているので、抵抗6およびリアクトル7の熱が主回路導体13を介してヒートスプレッダ1の下部に伝わる。
【0049】
したがって、上記抵抗6およびリアクトル7の熱をヒートパイプ4で処理できるので、抵抗6およびリアクトル7の冷却効果を向上させることができる。
【0050】
また、上記SiCスイッチング素子11は、Siスイッチング素子に比べて、3倍以上の高温で動作できるし、約10倍の高耐圧や1/100の低損失化および10倍の高速化が可能である。
【0051】
図4は比較例の電力変換装置の断面図である。
【0052】
上記比較例の電力変換装置は、直流平滑用コンデンサ5、抵抗6およびリアクトル7の配置が上記実施の形態の電力変換装置と異なっている。より詳しくは、上記比較例の電力変換装置は、フレーム48を用いて、抵抗6およびリアクトル7を直流平滑用コンデンサ5上に配置している。
【0053】
このように、上記抵抗6,リアクトル7の下方に直流平滑用コンデンサ5を配置すると、抵抗6およびリアクトル7よりも直流平滑用コンデンサ5の方が上下方向の長さが長いので、主回路導体13よりも長い主回路導体53を用いることになって、浮遊インダクタンスが大きくなる。
【0054】
上記実施の形態では、鉛直方向に延びるヒートパイプ4を用いていたが、斜め上方に延びるヒートパイプを用いてもよい。
【0055】
上記実施の形態では、2個のヒートスプレッダ1を用いていたが、2個のヒートスプレッダ1を合わせたものと略同じ大きさの1個のヒートスプレッダを用いてもよい。このヒートスプレッダを用いる場合、ヒートスプレッダを貫通する風通路を設け、ファン12の風をその風通路を介して直流平滑用コンデンサ5に送る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は本発明の一実施の形態の電力変換装置の模式斜視図である。
【図2】図2は上記電力変換装置の他の模式斜視図である。
【図3】図3は上記電力変換装置の模式断面図である。
【図4】図4は比較例の電力変換装置の模式断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ヒートスプレッダ
2 モジュール
3 冷却フィン
4 ヒートパイプ
5 直流平滑用コンデンサ
6 抵抗
7 リアクトル
10 SiCスイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱性部材と、
上記伝熱性部材の一方の表面の下部に取り付けられ、電気素子を含む発熱モジュールと、
上記伝熱性部材の一方の表面の上部に取り付けられ、上記発熱モジュールの熱を上記伝熱性部材を介して受けて放熱する放熱フィンと、
上記放熱フィンに対向するように配置され、上記放熱フィンに送風する送風装置と、
上記伝熱性部材の他方の表面の上部に隙間をあけて対向するように配置されたコンデンサ装置と、
上記伝熱性部材の一方の表面から上記伝熱性部材の他方の表面に貫通すると共に、上記送風装置から上記コンデンサ装置へ向かう風が通過する風通路と
を備え、
上記伝熱性部材は、内部に空間が残るように液体が充填されたヒートパイプを内蔵し、
上記ヒートパイプは、上記伝熱性部材の下部から上方に延びて上記伝熱性部材の上部に達していることを特徴とする電気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気装置において、
上記コンデンサ装置を搭載する荷台と、
上記伝熱性部材の他方の表面の下部に対向するように配置されると共に、上記コンデンサ装置に比べて上下方向の長さが短いリアクトル装置と
を備え、
上記コンデンサ装置は、上記発熱モジュールに電気的に接続される端子を下面に有することを特徴とする電気装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気装置において、
上記リアクトル装置は上記発熱モジュールに電気的に接続されていることを特徴とする電気装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の電気装置において、
上記電気素子はSiCスイッチング素子であることを特徴とする電気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−27760(P2010−27760A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185682(P2008−185682)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】