説明

電池電圧検出装置の異常検出装置および異常検出方法

【課題】電池電圧検出装置の異常を正確に検出可能な電池電圧検出装置の異常検出装置および異常検出方法を提供する。
【解決手段】電池電圧検出装置50は、スイッチ回路SW1,SW2が導通されたことに応じて、電池ブロックB1と電源線PL1,PL2を介して並列接続される容量素子C1と、電池ブロックB1から電池電圧Vb1の供給を受けて充電される容量素子C1の端子間電圧Vcを検出する電圧検出部とを含む。検出装置異常検出部36は、検出された容量素子の端子間電圧Vcを取得する端子間電圧取得部と、取得された容量素子C1の端子間電圧Vcの時間的変化における時定数に基づいて電池電圧検出装置50の異常を判定する異常判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池電圧検出装置の異常検出装置および異常検出方法に関し、特に、電池電圧を検出する電圧検出装置の異常を検出する異常検出装置および異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境性能を走行性能とを兼ね備えた自動車として、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)や電気自動車(Electric Vehicle)が注目されている。ハイブリッド自動車や電気自動車において、電気エネルギーによる駆動力は、直流電源から供給される直流電力をインバータによって交流電力に変換し、これによりモータを回転させることにより得ている。また、車両の減速時には、モータの回生発電により得られる回生エネルギーをバッテリに蓄電することにより、エネルギーを無駄なく利用して走行している。
【0003】
現状のハイブリッド自動車や電気自動車において、直流電源は、二次電池などの単電池を複数個直列に接続してなる組電池で構成されるのが一般的である。そして、組電池のSOC(充電量:State of Charge)は、モータの回生制動時に発電した電力を受け入れられるように、また要求があればモータに直ちに電力を供給できるように、満充電状態と全く蓄電されていない状態の略中間値に制御される。
【0004】
組電池における充放電の制御は、たとえば複数の電池ブロックごとの電池電圧を検出し、その検出された電池電圧からSOCを演算によって推定することにより行なわれている。また、組電池の長時間の使用によって電池ブロック間には容量ばらつきが発生するため、検出された電池電圧に基づいて過放電状態の電池ブロックを特定するとともに、容量ばらつきを解消するための均等化処理が行なわれている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
したがって、電池電圧を検出する電池電圧検出装置においては、配線の断線や組電池と装置本体との結合を確保するためのコネクタの接触不良などが発生すると、正確な電池電圧の検出ができないため、組電池の制御を継続させることが困難となる。この結果、モータの駆動制御において、その安定性が損なわれることとなる。そのため、このような電池電圧検出装置に発生した不具合を確実に検出することができる異常検出装置が必要とされる。
【0006】
たとえば特許文献1には、複数の電池モジュールの各々の一方の電位検出点から引出されて他方の電位検出点に戻る電圧検出線と、各電圧検出線に流れる電流を測定し、その測定した電流を電圧に換算することにより各電池モジュールの電池電圧を検出する組電池の電圧検出回路が開示される。これによれば、ある電池モジュールの電圧検出値が実質的に零であった場合には、その電池モジュールから引出された電圧検出線に断線が生じているものと推定される。
【0007】
また、たとえば特許文献2は、外部電源からモータ駆動回路の電源端子に供給される電圧を外部電源電圧監視回路を介して受けると、その電源端子の電圧に基づいて、電源端子に接続されるハーネスの電源や接地電位にショートした故障や、外部電源と電源端子との間に接続された充電抵抗の断線を診断する駆動回路の故障診断回路を開示する。
【0008】
これによれば、故障診断回路は、電源端子が外部電源から切断されたときに、電源端子の電圧が所定電圧を超えていることに応じて、電源端子が電源にショート状態であると診断する。また、故障診断回路は、電源端子が外部電源に接続された時点からの経過時間を計時する計時手段を備え、電源端子の電圧が所定電圧を超える以前に経過時間が所定時間を過ぎたときには、充電抵抗の断線、または電源端子に接続されるハーネスが接地電位にショート状態であると診断する。
【特許文献1】特開2003−61254号公報
【特許文献2】特開2001−218495号公報
【特許文献3】特開2001−108244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の組電池の電圧検出装置によれば、電池モジュールの電圧検出値の大きさに基づいて電圧検出線の断線が判定される。そのため、SOCの低下によって電池モジュール自体の電源電圧が低下しているにも拘らず、電圧検出値が所定の閾値以下であるとして電圧検出線の断線と誤って判定される可能性がある。
【0010】
また、特許文献2に記載の故障診断回路についても、電源端子の電圧と所定電圧との大小を比較した結果に基づいて故障の診断が行なわれる。したがって、電源端子に電圧を供給する外部電源自体に電源電圧の低下が生じていた場合には、電源端子の電圧と所定電圧との関係において、正常状態であるにも拘らず、誤って故障と診断されるおそれがある。
【0011】
それゆえ、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電池電圧検出装置の異常を正確に検出可能な電池電圧検出装置の異常検出装置および異常検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明によれば、電池電圧検出装置の異常検出装置は、電池の電圧を検出する電池電圧検出装置の異常を検出する。電池電圧検出装置は、第1の開閉器が閉状態とされたことに応じて、電池と電源線を介して並列接続される容量素子と、容量素子の端子間電圧を検出する電圧検出部とを含む。異常検出装置は、電池と並列接続されたことに応じて電池電圧の供給を受けて充電される容量素子の端子間電圧を取得する端子間電圧取得部と、取得された容量素子の端子間電圧の時間的変化における時定数に基づいて電池電圧検出装置の異常を判定する異常判定部とを備える。
【0013】
上記の電池電圧検出装置の異常検出装置によれば、容量素子の端子間電圧の時間的変化における時定数に基づいて電池電圧検出装置の異常が判定されるため、電池電圧の低下を受けて端子間電圧が低下した場合に誤って異常と判定されるのを防止することができる。
【0014】
好ましくは、電池電圧検出装置は、電池の出力端子と第1の開閉器の一方端子とを結合するための結合部材をさらに含む。異常判定部は、時定数が第1の基準値より大きいことに応じて結合部材の接触不良と判定する一方で、時定数が第2の基準値よりも小さいことに応じて電源線の断線と判定する。
【0015】
上記の電池電圧検出装置の異常検出装置によれば、電池電圧検出装置の抵抗値に応じて時定数が変化することを利用してその異常を判定することから、電池電圧が低下した場合であっても正確に電池電圧検出装置の異常を検出することができる。
【0016】
好ましくは、異常判定部は、容量素子の端子間電圧が連続して略一定となるときの電圧を飽和電圧として取得する飽和電圧取得部と、第1の開閉器を閉状態としてから容量素子の端子間電圧が飽和電圧に達するまでの経過時間について、時定数が第1の基準値のときの経過時間を第1の閾値として予め記憶する記憶部と、端子間電圧取得部により取得された容量素子の端子間電圧の時間的変化における経過時間が、第1の閾値よりも大きいことに応じて結合部材の接触不良と判定する接触不良判定部とを含む。
【0017】
上記の電池電圧検出装置の異常検出装置によれば、電池電圧の変動に拘らず、結合部材の接触不良を正確に検出することができる。
【0018】
好ましくは、記憶部は、さらに、時定数が第2の基準値のときの経過時間を第2の閾値として予め記憶する。異常判定部は、端子間電圧取得部により取得された容量素子の端子間電圧の時間的変化における経過時間が、第2の閾値よりも小さいことに応じて電源線の断線と判定する断線判定部をさらに含む。
【0019】
上記の電池電圧検出装置の異常検出装置によれば、電池電圧の変動に拘らず、電源線の断線を正確に検出することができる。
【0020】
好ましくは、電池電圧検出装置は、閉状態とされたことに応じて電源線と接地電位とを接続する第2の開閉器をさらに含む。異常判定部は、電池電圧検出装置の異常検出が終了したことに応じて、容量素子の残留電荷の放電指令を生成して電池電圧検出装置へ出力する。電池電圧検出装置は、放電指令を受けると、第1の開閉器を開状態とするとともに、第2の開閉器を閉状態とする。
【0021】
上記の電池電圧検出装置の異常検出装置によれば、容量素子が完全に放電された状態で電池電圧検出装置の異常検出が行なわれるため、電池電圧検出装置の異常検出の確度を保つことができる。
【0022】
この発明の別の局面によれば、電池電圧検出装置の異常検出方法は、電池の電圧を検出する電池電圧検出装置の異常を検出する。電池電圧検出装置は、第1の開閉器が閉状態とされたことに応じて、電池と電源線を介して並列接続される容量素子と、容量素子の端子間電圧を検出する電圧検出部とを含む。異常検出方法は、電池と並列接続されたことに応じて電池電圧の供給を受けて充電される容量素子の端子間電圧を取得する端子間電圧取得ステップと、取得された容量素子の端子間電圧の時間的変化における時定数に基づいて電池電圧検出装置の異常を判定する異常判定ステップとを備える。
【0023】
上記の電池電圧検出装置の異常検出方法によれば、容量素子の端子間電圧の時間的変化における時定数に基づいて電池電圧検出装置の異常が判定されるため、電池電圧の低下を受けて端子間電圧が低下した場合に誤って異常と判定されるのを防止することができる。
【0024】
好ましくは、電池電圧検出装置は、電池の出力端子と第1の開閉器の一方端子とを結合するための結合部材をさらに含む。異常判定ステップは、時定数が第1の基準値よりも大きいことに応じて結合部材の接触不良と判定する一方で、時定数が第2の基準値よりも小さいことに応じて電源線の断線と判定する。
【0025】
上記の電池電圧検出装置の異常検出方法によれば、電池電圧検出装置の抵抗値に応じて時定数が変化することを利用してその異常を判定することから、電池電圧が低下した場合であっても正確に電池電圧検出装置の異常を検出することができる。
【0026】
好ましくは、異常判定ステップは、容量素子の端子間電圧が連続して略一定となるときの電圧を飽和電圧として取得する飽和電圧取得ステップと、第1の開閉器を閉状態としてから容量素子の端子間電圧が飽和電圧に達するまでの経過時間について、時定数が第1の基準値のときの経過時間を第1の閾値として予め記憶する記憶ステップと、端子間電圧取得部により取得された容量素子の端子間電圧の時間的変化における経過時間が、第1の閾値よりも大きいことに応じて結合部材の接触不良と判定する接触不良判定ステップとを含む。
【0027】
上記の電池電圧検出装置の異常検出方法によれば、電池電圧の変動に拘らず、結合部材の接触不良を正確に検出することができる。
【0028】
好ましくは、記憶ステップは、さらに、時定数が第2の基準値のときの経過時間を第2の閾値として予め記憶する。異常判定ステップは、端子間電圧取得ステップにより取得された容量素子の端子間電圧の時間的変化における経過時間が、第2の閾値よりも小さいことに応じて電源線の断線と判定する断線判定ステップをさらに含む。
【0029】
上記の電池電圧検出装置の異常検出方法によれば、電池電圧の変動に拘らず、電源線の断線を正確に検出することができる。
【0030】
好ましくは、電池電圧検出装置は、閉状態とされたことに応じて電源線と接地電位とを接続する第2の開閉器をさらに含む。異常判定ステップは、電池電圧検出装置の異常検出が終了したことに応じて、容量素子の残留電荷の放電指令を生成して電池電圧検出装置へ出力する。電池電圧検出装置は、放電指令を受けると、第1の開閉器を開状態とするとともに、第2の開閉器を閉状態とする。
【0031】
上記の電池電圧検出装置の異常検出装置によれば、容量素子が完全に放電された状態で電池電圧検出装置の異常検出が行なわれるため、電池電圧検出装置の異常検出の確度を保つことができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、電池電圧検出装置の異常を正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0034】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による電池電圧検出装置の異常検出装置が適用される電源装置の概略ブロック図である。
【0035】
図1を参照して、電源装置100は、たとえば電源によってモータを駆動して車両を推進させる電気自動車、ハイブリッド自動車または燃料電池車に適用される。電源装置100は、バッテリ10と、バッテリ10からの電力を車両負荷20に供給するための電源線12,14と、システムメインリレーSMR1,SMR2と、車両負荷20を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)40と、電池監視ユニット80とを備える。
【0036】
バッテリ10は、複数個の単電池を直列に接続してなる組電池である。バッテリ10は、各々が、数個ずつの直列接続された単電池からなるn(nは自然数)個の電池ブロックB1〜Bnに区分される。
【0037】
電池監視ユニット80は、バッテリ10の状態を検出するための手段として、電池電圧検出装置50と、温度検出部60と、電流検出部70と、温度センサ62,64と、電流センサ72とを含む。
【0038】
電池電圧検出装置50は、後述する方法によって電池ブロックB1〜Bnの各々の電池電圧Vb1〜Vbnを検出し、その検出した電池電圧Vb1〜Vbnを車両ECU40へ出力する。
【0039】
温度検出部60は、バッテリ10の複数箇所に取り付けられた温度センサ62,64からのセンサ出力に基づいて各箇所の電池温度を検出し、その検出した電池温度を車両ECU40へ出力する。
【0040】
電流検出部70は、電流センサ72からのセンサ出力に基づいて電池ブロックB1〜Bnを流れるバッテリ10の充放電電流を検出して車両ECU40へ出力する。
【0041】
車両負荷20は、たとえば車輪を駆動する駆動システムであり、この駆動システムは、モータおよびモータを駆動するインバータを含む(ともに図示せず)。インバータは、電源線12,14を介してバッテリ10から直流電力が供給されると、その直流電力を交流電力に変換してモータを駆動する。これにより、モータは、駆動輪を駆動するためのトルクを発生する。また、ハイブリッド自動車においては、モータは、駆動輪を駆動するモータではなく、エンジンにて駆動される発電機の機能を持つように、そして、エンジンに対して電動機として動作し、たとえばエンジンの始動を行ない得るようなモータであってもよい。
【0042】
システムメインリレーSMR1,SMR2は、バッテリ10から車両負荷20に対する電力供給経路を導通/遮断する。システムメインリレーSMR1,SMR2の導通/非導通は、車両ECU40内部の制御部44によって制御される。
【0043】
車両ECU40は、電池ECU30と、制御部44と、通信線42とを含む。
電池ECU30は、電池電圧検出装置50から電池ブロックB1〜Bnの電池電圧Vb1〜Vbnを受け、温度検出部60から電池温度を受け、電流検出部70からバッテリ10の充放電電流を受けると、これらをバッテリ10の状態を示す信号として通信線42を介して制御部44へ送信する。
【0044】
さらに、電池ECU30は、電池電圧Vb1〜Vbn、電池温度および充放電電流に基づいてバッテリ10の入出力許容電力およびSOCを演算し、その演算した結果を通信線42を介して制御部44へ送信する。
【0045】
より具体的には、電池ECU30は、入出力許容電力演算部32と、SOC演算部34と、検出装置異常検出部36とを含む。
【0046】
入出力許容電力演算部32は、電池電圧検出装置50から電池ブロックB1〜Bnの各々の電池電圧Vb1〜Vbnを受け、温度検出部60から電池温度を受ける。そして、入出力許容電力演算部32は、電池電圧Vb1〜Vbnと電池温度とに基づいて、バッテリ10に入力可能な電力の許容値(入力許容電力)とバッテリ10から出力可能な電力の許容値(出力許容電力)とを演算し、その演算した結果を通信線42を介して制御部44へ送信する。
【0047】
SOC演算部34は、電池電圧検出装置50から電池ブロックB1〜Bnの各々の電池電圧Vb1〜Vbnを受け、電流検出部70からバッテリ10の充放電電流を受ける。そして、SOC演算部34は、電池電圧Vb1〜Vbnとバッテリ10の充放電電流とに基づいて電池ブロックごとのSOCを演算により推定する。そして、SOC演算部34は、その推定した電池ブロックごとのSOCを通信線42を介して制御部44へ送信する。
【0048】
なお、制御部44は、バッテリ10の状態とともに、バッテリ10の入出力許容電力およびSOCを受信すると、これらの入力情報と運転者からの要求出力とに基づいて車両の走行に必要な駆動力を算出し、その算出した駆動力が得られるように車両負荷20を駆動制御する。
【0049】
電池ECU30の検出装置異常検出部36は、電池電圧検出装置50から電池電圧Vb1〜Vbnを受けると、電池電圧Vb1〜Vbnに基づいて、後述する方法によって電池電圧検出装置50の異常を検出する。そして、検出装置異常検出部36は、電池電圧検出装置50の異常が検出されると、その異常内容を指示する信号DET1,DET2を生成して通信線42を介して制御部44へ送信する。
【0050】
次に、図1の検出装置異常検出部36が行なう電池電圧検出装置50の異常検出動作について詳細に説明する。
【0051】
図2は、図1における電池電圧検出装置50および検出装置異常検出部36の詳細な構成を説明するための図である。
【0052】
図2を参照して、電池電圧検出装置50は、電源線PL1,PL2と、バッテリ10と電源線PL1,PL2とを結合するためのコネクタCNTと、スイッチ回路SW1〜SWnと、容量素子C1と、差動増幅器54と、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ56と、スイッチ回路SW1〜SWnの導通/非導通を制御する制御部52とを含む。
【0053】
コネクタCNTは、バッテリ10の電池ブロックB1〜Bnの各々と電池電圧検出装置50の入力端子とを結合するための結合部材を構成する。なお、コネクタCNTをバッテリ10に結合することにより、各電池ブロックB1〜Bnの正極および負極とスイッチ回路SW1〜SWn+1との間には接触抵抗Rc1〜Rcn+1が介在することとなる。
【0054】
スイッチ回路SW1〜SWn+1は、一方端子が電池ブロックB1〜Bnの正極および/または負極に接続され、他方端子が電源線PL1,PL2のいずれかに接続される。
【0055】
たとえば電池ブロックB1に着目して、スイッチ回路SW1は、一方端子が電池ブロックB1の正極に接続され、他方端子が電源線PL1に接続される。また、スイッチ回路SW2は、一方端子が電池ブロックB1の負極に接続され、他方端子が電源線PL2に接続される。そして、制御部52からの信号SC1,SC2に応じてスイッチ回路SW1,SW2が導通することにより、電池ブロックB1は、コネクタCNTおよびスイッチ回路SW1,SW2を介して電源線PL1,PL2と電気的に接続される。
【0056】
なお、電池ブロックB2〜Bnについても同様に、制御部52からの信号SC2〜SCn+1に応じて電池ブロックBi(iは2以上n以下の自然数)の正極側に配されるスイッチ回路SWiと負極側に配されるスイッチ回路SWi+1とが導通することにより、電池ブロックBiと電源線PL1,PL2とが電気的に接続される。このように制御部52がスイッチ回路SW1〜SWn+1の導通/非導通を順次切換えることにより、電池ブロックB1〜Bnの各々の電池電圧Vb1〜Vbnの検出が行なわれる。
【0057】
容量素子C1は、一方端子が電源線PL1に接続され、他方端子が電源線PL2に接続される。容量素子C1は、スイッチ回路(たとえばSW1,SW2とする)が導通したことに応じて、コネクタCNTおよび電源線PL1,PL2を介して電池ブロックB1と並列に接続される。これにより、容量素子C1は、電池ブロックB1から電池電圧Vb1の供給を受けて充電が開始される。
【0058】
そして、スイッチ回路SW1,SW2が導通したタイミングを起点(t=0)して容量素子C1の充電が開始されると、容量素子C1の両端の電圧(以下、端子間電圧とも称する)Vcは、次式の関係に従って増加する。
【0059】
Vc=Vb1×{1−exp(−t/τ)} (1)
ただし、Vb1は電池ブロックB1の電池電圧、τは時定数である。また、時刻t=0における容量素子C1の蓄積電荷を零(すなわち、Vc=0)としている。
【0060】
式(1)から分かるように、端子間電圧Vcは、時定数τで次第に増加し、やがて電池ブロックB1の電池電圧Vb1と略等しい電圧で飽和する時間的変化を示す。
【0061】
なお、時定数τは、電池ブロックB1、コネクタCNT、スイッチ回路SW1,SW2、電源線PL1,PL2および容量素子C1で構成される閉回路において、容量素子C1の容量値をCとし、配線抵抗の抵抗値をRとすると、
τ=CR (2)
で表わされる。
【0062】
そして、容量素子C1の端子間電圧Vcは、電源線PL1,PL2を介して差動増幅器54に入力される。差動増幅器54は、一方入力端子が電源線PL1に接続され、他方入力端子が電源線PL2に接続される。そして、両入力端子から容量素子C1の端子間電圧Vcが入力されると、差動増幅器54は、後段のA/Dコンバータ56の入力電圧範囲に対応するように、これを差動増幅する。
【0063】
A/Dコンバータ56は、差動増幅器54からの出力電圧を、入力電圧範囲に応じてデジタル変換し、そのデジタル変換した電圧を電池ブロックB1の電池電圧の検出値として、上述した電池ECU30へ出力する。
【0064】
図3は、図2のスイッチ回路SW1,SW2が導通した時点以降における容量素子C1の端子間電圧Vcの時間的変化を示すタイミングチャートである。
【0065】
図3を参照して、容量素子C1の端子間電圧Vcは、時刻t=0でスイッチ回路SW1,SW2が導通したことに応じて増加し、やがて飽和電圧Vsに到達する時間的変化を示す。なお、飽和電圧Vsは、電池ブロックB1の電池電圧Vb1に略等しい電圧となる。
【0066】
ここで、容量素子C1の端子間電圧Vcには、電池電圧検出装置50と電池ブロックB1との結合状態に応じて、その時間的変化に以下に述べる違いが現われる。
【0067】
なお、電池電圧検出装置50と電池ブロックB1との結合状態とは、電池ブロックB1と容量素子C1との間に介在するコネクタCNT、スイッチ回路SW1,SW2および電源線PL1,PL2の状態を示しており、たとえば電源線PL1,PL2の断線やコネクタCNTの接触不良などが含まれる。
【0068】
そして、電池電圧検出装置50と電池ブロックB1との結合状態は正常のとき、すなわち、電池電圧検出装置50に断線や接触不良が生じていないときには、端子間電圧Vcは、図3の曲線LN1に示すように変化する。なお、曲線LN1の時間的変化における時定数をτ1とする。
【0069】
これに対し、電池電圧検出装置50と電池ブロックB1との結合状態が異常のとき、たとえばコネクタCNTの接触不良が生じているときには、端子間電圧Vcは、図3の曲線LN2に示すように変化する。なお、曲線LN2の時間的変化における時定数をτ2とする。
【0070】
ここで、図3の曲線LN1と曲線LN2とを対比すると、両者は飽和電圧Vsを同じくするものの、曲線LN2の方が曲線LN1に対して時定数が大きいことが分かる。さらに、この時定数の違いに起因して、端子間電圧Vcが飽和電圧Vsに到達するタイミングは、曲線LN2の方がより遅いことが分かる。
【0071】
このように電池電圧検出装置50と電池ブロックB1との結合状態によって端子間電圧Vcの時間的変化における時定数に違いが生じる理由としては、電池ブロックB1、コネクタCNT、スイッチ回路SW1,SW2、電源線PL1,PL2および容量素子C1で構成される閉回路において、配線抵抗の抵抗値が結合状態によって異なることが挙げられる。
【0072】
詳細には、端子間電圧Vcの時間的変化における時定数τは、上記式(2)のように、容量素子C1の容量値Cと配線抵抗の抵抗値Rとを積算した値に等しい。このうちの容量値Cは、容量素子C1に固有の値であり、略固定された値となる。一方、抵抗値Rについては、コネクタCNTの接触抵抗や、スイッチ回路SW1,SW2および電源線PL1,PL2の配線抵抗などを含む可変値となる。そのため、コネクタCNTが接触不良の場合には、抵抗値Rは、コネクタCNTの接触抵抗Rc1,Rc2が増大することに起因して正常時の抵抗値よりも高い値となる。この結果、コネクタCNTが接触不良のときの端子間電圧Vcにおける時定数τ2は、正常時の時定数τ1よりも大きくなる。
【0073】
そこで、この発明の実施の形態は、検出装置異常検出部36を、容量素子C1の端子間電圧Vcの時間的変化における時定数τに基づいて電池電圧検出装置50の異常を判定する構成とする。
【0074】
具体的には、図3を参照して、検出装置異常検出部36は、電池電圧検出装置50から曲線LN2で示される容量素子C1の端子間電圧Vcを受けると、図示しないタイマを用いてカウント動作を開始し、スイッチ回路SW1,SW2が導通したタイミング(t=0)から端子間電圧Vcが飽和するタイミング(t=T2)までの経過時間を計測する。なお、端子間電圧Vcが飽和するタイミング(t=T2)については、複数の制御周期において連続して略同じ電圧を示す端子間電圧Vcが検出されたことに応じて、そのタイミングでのタイマのカウント値が取得される。
【0075】
そして、検出装置異常検出部36は、その計測した経過時間T2が、予め設定した所定の閾値T1を上回るか否かを判定する。このとき、経過時間T2が所定の閾値T1を上回ることに応じて、検出装置異常検出部36は、コネクタCNTの接触不良による電池電圧検出装置50の異常と判定する。なお、所定の閾値T1は、図3の曲線LN1の時間的変化に基づいて予め設定されて検出装置異常検出部36の記憶領域に格納されている。検出装置異常検出部36は、コネクタCNTの接触不良による異常を指示する信号DET1を生成し、その生成した信号DET1を通信線42を介して制御部44へ送信する。
【0076】
また、電源線PL1,PL2などの断線が生じた場合には、容量素子C1は、電池ブロックB1と電気的に分離されているため、端子間電圧Vcは、図3の曲線LN3で示すように略零に固定された波形となる。
【0077】
そこで、検出装置異常検出部36は、スイッチ回路SW1,SW2を導通したタイミング(t=0)から複数の制御周期において連続して略零を示す端子間電圧Vcが検出されたことに応じて、そのタイミングでのカウント値を端子間電圧Vcが飽和したタイミング(t=T3)として取得する。
【0078】
そして、検出装置異常検出部36は、タイミングt=0からタイミングt=T3までの経過時間T3が、予め設定した所定の閾値T1/m(m>1)を下回るか否かを判定する。このとき、経過時間T3が所定の閾値T1/mを下回ることに応じて、検出装置異常検出部36は、断線による電池電圧検出装置50の異常と判定する。そして、検出装置異常検出部36は、断線による異常を指示する信号DET2を生成し、その生成した信号DET2を通信線42を介して制御部44へ送信する。
【0079】
以上に述べたように、端子間電圧Vcの時間的変化における時定数τに基づいて電池電圧検出装置50の異常を検出する構成とすることにより、この発明による異常検出方法は、端子間電圧Vcの電圧レベルに基づいて電池電圧検出装置の異常を判定する従来の異常検出方法に対して、以下の理由により、より正確に電池電圧検出装置50の異常を検出することが可能となる。
【0080】
詳細には、従来の異常検出方法では、SOCの減少に起因して電池ブロックB1の電池電圧Vb1が低下したときには、容量素子C1の端子間電圧Vcにおける飽和電圧Vsも連動して低下するため、端子間電圧Vcが予め設定した閾値を下回るとして、誤って電池電圧検出装置50が異常と判定されるおそれがある。
【0081】
これに対して、この発明による異常検出方法は、端子間電圧Vcの時間的変化における時定数τに基づいて電池電圧検出装置50の異常を判定するため、電池電圧Vb1が低下したことによって誤って異常と判定されることがない。
【0082】
図4は、電池電圧Vb1が異なる場合の図2のスイッチ回路SW1,SW2が導通した時点以降における容量素子C1の端子間電圧Vcの時間的変化を示すタイミングチャートである。
【0083】
図4を参照して、電池ブロックB1の電池電圧Vb1が相対的に高いとき、端子間電圧Vcは曲線LN1で示すように、時定数τ1に従って増加し、電池電圧Vb1と略同電圧の飽和電圧Vs1に到達する。
【0084】
一方、電池ブロックB1の電池電圧Vb1が相対的に低いときには、端子間電圧Vcは曲線LN4で示すように、時定数τ4に従って増加し、電池電圧Vb1と略同電圧の飽和電圧Vs2に到達する。
【0085】
ここで、曲線LN1と曲線LN4とを比較すると、飽和電圧Vs1,Vs2は電池電圧Vb1の違いを反映して異なる電圧となるものの、時定数τ1,τ4については略同じとなることが分かる。したがって、飽和電圧Vs1,Vs2にそれぞれ到達するタイミングT1,T4についても、略同じタイミングとなる。
【0086】
すなわち、時定数τは、上述したように容量素子C1の容量値Cと配線抵抗の抵抗値Rとで決まるため、電池電圧Vb1の変動に何ら影響されない。よって、電池電圧Vb1が低下した場合であっても、正確に電池電圧検出装置50の異常を検出することができる。
【0087】
図5は、この発明の実施の形態1による電池電圧検出装置50の異常検出動作を説明するためのフローチャートである。
【0088】
図5を参照して、最初に、電池電圧検出装置50の制御部52がスイッチ回路SW1,SW2を導通するための信号SC1,SC2を生成してスイッチ回路SW1,SW2へ出力する。これによりスイッチ回路SW1,SW2が導通し(ステップS01)、電池ブロックB1と容量素子C1とがコネクタCNT、スイッチ回路SW1,SW2および電源線PL1,PL2を介して電気的に接続される。
【0089】
そして、電池ブロックB1から電池電圧Vb1の供給を受けて容量素子C1の充電が開始されると、容量素子C1の端子間電圧Vcは、図3の曲線LN1〜LN3のいずれかに示す波形を描いて増加する。このときの端子間電圧Vcは、差動増幅器54およびA/Dコンバータ56を介して検出装置異常検出部36へ出力される。
【0090】
検出装置異常検出部36は、電池電圧検出装置50から端子間電圧Vcを受けると、スイッチ回路SW1,SW2が導通したタイミングを起点として計時動作を開始する(ステップS02)。
【0091】
さらに、検出装置異常検出部36は、端子間電圧Vcの検出を実行し(ステップS03)、端子間電圧Vcが飽和電圧Vsに達したか否かを判定する(ステップS03)。より具体的には、検出装置異常検出部36は、複数の制御周期において連続して略同じ電圧を示す端子間電圧Vcが検出されたことに応じて、端子間電圧Vcが飽和電圧Vsに達したと判定する。
【0092】
ステップS03にて端子間電圧Vcが飽和電圧Vsに達したと判定されると、検出装置異常検出部36は、スイッチ回路SW1,SW2が導通したタイミング(t=0)から端子間電圧Vcが飽和するタイミング(t=T)までの経過時間Tを計測する(ステップS05)。なお、ステップS03,S04の動作は、ステップS04で端子間電圧Vcが飽和電圧Vsに達したと判定されるまで継続して実行される。
【0093】
次に、検出装置異常検出部36は、ステップS05で計測した経過時間Tが、予め設定した所定の閾値T1を上回るか否かを判定する(ステップS06)。ステップS05にて経過時間Tが閾値T1を上回るとき、検出装置異常検出部36は、コネクタCNTの接触不良による電池電圧検出装置50の異常と判定する(ステップS07)。そして、検出装置異常検出部36は、コネクタCNTの接触不良による異常を指示する信号DET1を生成し、その生成した信号DET1を通信線42を介して制御部44へ送信する(ステップS08)。
【0094】
一方、ステップS06にて経過時間Tが閾値T1以下のとき、検出装置異常検出部36は、続いて、経過時間Tが、所定の閾値T1/mを下回るか否かを判定する(ステップS09)。ステップS09にて経過時間Tが閾値T1/mを下回るとき、検出装置異常検出部36は、断線による電池電圧検出装置50の異常と判定する(ステップS10)。そして、検出装置異常検出部36は、断線による異常を指示する信号DET2を生成し、その生成した信号DET2を通信線42を介して制御部44へ送信する(ステップS11)。
【0095】
一方、ステップS09にて経過時間Tが閾値T1/m以上のとき、すなわち、経過時間TがT1/m以上であり、かつT1以下のときには、検出装置異常検出部36は、電池電圧検出装置50は正常と判定する(ステップS12)。
【0096】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、電池電圧を受けて充電される容量素子の端子間電圧の時間的変化における時定数に基づいて電池電圧検出装置の異常を検出することから、端子間電圧の電圧レベルに基づいて電池電圧検出装置の異常を検出する従来の異常検出装置に対して、より正確に電池電圧検出装置の異常を検出することができる。
【0097】
[実施の形態2]
図6は、この発明の実施の形態2による電池電圧検出装置および検出装置異常検出部の詳細な構成を説明するための図である。
【0098】
なお、図6の電池電圧検出装置50Aは、図2の電池電圧検出装置50に対して、電源線PL1を接地電位に電気的に接続するためのスイッチ回路SWDを付加するとともに、制御部52を制御部52Aに変更したものである。
【0099】
スイッチ回路SWDは、一方端子が電源線PL1に接続され、他方端子が接地電位に接続される。スイッチ回路SWDは、制御部52Aからの信号SCdにより導通/非導通される。
【0100】
検出装置異常検出部36Aは、先の実施の形態1で述べた方法に従って電池電圧検出装置50Aの異常検出動作を行なう。すなわち、制御部52Aからの信号SC1,SC2によりスイッチ回路SW1,SW2が導通して電池ブロックB1からの電池電圧Vb1に容量素子C1の充電が開始されると、容量素子C1の端子間電圧Vcの時間的変化における時定数τに基づいて電池電圧検出装置50Aの異常を検出する。
【0101】
そして、一連の異常検出動作が終了すると、検出装置異常検出部36Aは、容量素子C1の放電を指令するための信号DSを生成し、その生成した信号DSを制御部52Aへ出力する。
【0102】
制御部52Aは、検出装置異常検出部36Aから容量素子C1の放電指令を示す信号DSを受けると、スイッチ回路SW1,SW2を非導通とするための信号SC1,SC2を生成してスイッチ回路SW1,SW2へ出力する。さらに、制御部52Aは、スイッチ回路SWDおよびスイッチ回路SWn+1を導通するための信号SWd,SCn+1を生成してスイッチ回路SWD,SWn+1へ出力する。
【0103】
このようなスイッチング動作の制御を行なうことにより、容量素子C1は、電池ブロックB1から電気的に分離されるとともに、両方の端子が電源線PL1,PL2を介して接地電位に接続されることとなる。この結果、容量素子C1に蓄積された電荷が放電されて、容量素子C1は充電電荷が零となり、初期状態となる。
【0104】
そして、容量素子C1の端子間電圧Vcが略零となったことに応じて、検出装置異常検出部36Aは、容量素子C1の放電を指令する信号DSの出力を停止する。制御部52Aは、放電指令が停止したことに応じて、電池電圧の検出対象を電池ブロックB1から隣接する電池ブロックB2に切換えるためのスイッチング動作の制御を行なう。具体的には、制御部52Aは、スイッチ回路SWD,SWn+1を非導通とするための信号SCd,SCn+1を生成してスイッチ回路SWD,SWn+1へ出力する。さらに、制御部52Aは、スイッチ回路SW2,SW3を導通するための信号SC2,SC3を生成してスイッチ回路SW2,SW3へ出力する。
【0105】
これにより、スイッチ回路SWD,SWn+1が非導通となる一方で、スイッチ回路SW2,SW3が導通する。そして、スイッチ回路SW2,SW3が導通したことに応じて、電池ブロックB2がコネクタCNT,スイッチ回路SW2,SW3および電源線PL1,PL2を介して容量素子C1と接続される。そして、容量素子C1は、電池ブロックB2からの電池電圧Vb2により充電される。
【0106】
以上のように、電池電圧検出装置50Aの異常検出動作が終了したことに応じて、容量素子C1を放電して蓄積電荷を零とする構成とすることにより、電池電圧検出装置50Aの異常検出の確度を保持することができる。
【0107】
すなわち、電池ブロックB1の電池電圧の検出が終了し、容量素子C1に電荷Qが残留した状態で、電池ブロックB2の電池電圧の検出を開始すると、容量素子C1の端子間電圧Vcは、残留電荷Qに応じた電圧V(=Q/C)を初期値として増加することとなる。そのため、スイッチ回路SW2,SW3を導通してから端子間電圧Vcが飽和電圧Vsに到達するまでの経過時間は、蓄積電荷が零のときの経過時間よりも短いものとなる。
【0108】
この結果、電池電圧検出装置50Aが異常であるにも拘らず、検出装置異常検出部36Aは、経過時間が所定の閾値T1以下であるとして電池電圧検出装置50Aが正常と誤って判定する可能性が生じる。
【0109】
そこで、電池電圧検出装置50Aの異常検出動作が終了したことに応じて容量素子C1を放電して蓄積電荷を零とすることにより、かかる誤判定を防止することができる。この結果、電池電圧検出装置50Aの異常検出の確度を保持することができる。
【0110】
図7は、この発明の実施の形態2による電池電圧検出装置において、異常検出動作終了後に行なわれる容量素子の放電動作を説明するためのフローチャートである。なお、図7のステップS20〜S26に示す動作は、図5のステップS07,S10,S11のそれぞれが実行された後に継続して行なわれるものである。
【0111】
図7を参照して、図5のステップS01〜S11に従って、一連の異常検出動作が終了すると、検出装置異常検出部36Aは、容量素子C1の放電を指令するための信号DSを生成して制御部52Aへ出力する(ステップS20)。
【0112】
制御部52Aは、検出装置異常検出部36Aから信号DSを受けると、スイッチ回路SW1,SW2を非導通するための信号SC1,SC2を生成してスイッチ回路SW1,SW2へ出力する。これにより、スイッチ回路SW1,SW2が非導通し、電池ブロックB1と容量素子C1とが電気的に分離される(ステップS21)。
【0113】
さらに制御部52Aは、スイッチ回路SWD,SWn+1を導通するための信号SWD,SWn+1を導通するための信号SCd,SCn+1を生成してスイッチ回路SWD,SWn+1へ出力する。これにより、スイッチ回路SWD,SWn+1が導通し(ステップS22)、容量素子C1は接地電位に接続される。
【0114】
容量素子C1が接地電位に接続されたことに応じて、容量素子C1に残留している電荷の放電が開始される(ステップS23)。検出装置異常検出部36Aは、電池電圧検出装置50Aから容量素子C1の端子間電圧Vcを受けると、端子間電圧Vcが所定の基準値V_stdを下回るか否かを判定する(ステップS24)。なお、所定の基準値V_stdは、容量素子C1の蓄積電荷が零のときの端子間電圧Vcを含むように設定される。
【0115】
ステップS24において端子間電圧Vcが基準値V_stdを下回ると判定されると、検出装置異常検出部36Aは、容量素子C1の放電指令を示す信号DSの出力を停止する(ステップS25)。
【0116】
制御部52Aは、検出装置異常検出部36Aからの信号DCの出力が停止したことに応じて、スイッチ回路SWD,SWn+1を非導通とするための信号SCd,SCn+1を生成してスイッチ回路SWD,SWn+1へ出力する。これにより、スイッチ回路SWD,SWn+1が非導通し(ステップS26)、容量素子C1の放電が終了する。なお、容量素子C1の放電が終了したことに応じてスイッチ回路SW2,SW3が導通すると、電池ブロックB2の電池電圧Vb2の検出が行なわれる。
【0117】
以上のように、この発明の実施の形態2によれば、常に容量素子の蓄積電荷が零の状態で電池電圧の検出が行なわれるため、電池電圧検出装置の異常検出の確度を保持することができる。
【0118】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0119】
この発明は、電池電圧を検出する電池電圧検出装置の異常を検出するための異常検出装置および異常検出方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】この発明の実施の形態1による電池電圧検出装置の異常検出装置が適用される電源装置の概略ブロック図である。
【図2】図1における電池電圧検出装置および検出装置異常検出部の詳細な構成を説明するための図である。
【図3】図2のスイッチ回路が導通した時点以降における容量素子の端子間電圧の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【図4】電池電圧が異なる場合の容量素子の端子間電圧の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1による電池電圧検出装置の異常検出動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2による電池電圧検出装置および検出装置異常検出部の詳細な構成を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態2による電池電圧検出装置において、異常検出動作終了後に行なわれる容量素子の放電動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0121】
10 バッテリ、12,14,PL1,PL2 電源線、20 車両負荷、30 電池ECU、32 入出力許容電力演算部、34 SOC演算部、36,36A 検出装置異常検出部、40 車両ECU、42 通信線、44 制御部、50,50A 電池電圧検出装置、52,52A 制御部、54 差動増幅器、56 A/Dコンバータ、60 温度検出部、62,64 温度センサ、70 電流検出部、72 電流センサ、80 電池監視ユニット、100 電源装置、B バッテリ、B1〜Bn 電池ブロック、C1 容量素子、CNT コネクタ、Rc1〜Rcn+1 接触抵抗、SMR1,SMR2 システムメインリレー、SW1〜Swn+1,SWD スイッチ回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の電圧を検出する電池電圧検出装置の異常検出装置であって、
前記電池電圧検出装置は、
第1の開閉器が閉状態とされたことに応じて、前記電池と電源線を介して並列接続される容量素子と、
前記容量素子の端子間電圧を検出する電圧検出部とを含み、
前記異常検出装置は、
前記電池と並列接続されたことに応じて前記電池電圧の供給を受けて充電される前記容量素子の端子間電圧を取得する端子間電圧取得部と、
取得された前記容量素子の端子間電圧の時間的変化における時定数に基づいて前記電池電圧検出装置の異常を判定する異常判定部とを備える、電池電圧検出装置の異常検出装置。
【請求項2】
前記電池電圧検出装置は、前記電池の出力端子と前記第1の開閉器の一方端子とを結合するための結合部材をさらに含み、
前記異常判定部は、前記時定数が第1の基準値より大きいことに応じて前記結合部材の接触不良と判定する一方で、前記時定数が第2の基準値よりも小さいことに応じて前記電源線の断線と判定する、請求項1に記載の電池電圧検出装置の異常検出装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、
前記容量素子の端子間電圧が連続して略一定となるときの電圧を飽和電圧として取得する飽和電圧取得部と、
前記第1の開閉器を閉状態としてから前記容量素子の端子間電圧が前記飽和電圧に達するまでの経過時間について、前記時定数が前記第1の基準値のときの前記経過時間を第1の閾値として予め記憶する記憶部と、
前記端子間電圧取得部により取得された前記容量素子の端子間電圧の時間的変化における前記経過時間が、前記第1の閾値よりも大きいことに応じて前記結合部材の接触不良と判定する接触不良判定部とを含む、請求項2に記載の電池電圧検出装置の異常検出装置。
【請求項4】
前記記憶部は、さらに、前記時定数が前記第2の基準値のときの前記経過時間を第2の閾値として予め記憶し、
前記異常判定部は、前記端子間電圧取得部により取得された前記容量素子の端子間電圧の時間的変化における前記経過時間が、前記第2の閾値よりも小さいことに応じて前記電源線の断線と判定する断線判定部をさらに含む、請求項3に記載の電池電圧検出装置の異常検出装置。
【請求項5】
前記電池電圧検出装置は、閉状態とされたことに応じて前記電源線と接地電位とを接続する第2の開閉器をさらに含み、
前記異常判定部は、前記電池電圧検出装置の異常検出が終了したことに応じて、前記容量素子の残留電荷の放電指令を生成して前記電池電圧検出装置へ出力し、
前記電池電圧検出装置は、前記放電指令を受けると、前記第1の開閉器を開状態とするとともに、前記第2の開閉器を閉状態とする、請求項4に記載の電池電圧検出装置の異常検出装置。
【請求項6】
第1の開閉器が閉状態とされたことに応じて、前記電池と電源線を介して並列接続される容量素子と、前記容量素子の端子間電圧を検出する電圧検出部とを含む電池電圧検出装置の異常検出方法であって、
前記異常検出方法は、
前記電池と並列接続されたことに応じて前記電池電圧の供給を受けて充電される前記容量素子の端子間電圧を取得する端子間電圧取得ステップと、
取得された前記容量素子の端子間電圧の時間的変化における時定数に基づいて前記電池電圧検出装置の異常を判定する異常判定ステップとを備える、電池電圧検出装置の異常検出方法。
【請求項7】
前記電池電圧検出装置は、前記電池の出力端子と前記第1の開閉器の一方端子とを結合するための結合部材をさらに含み、
前記異常判定ステップは、前記時定数が第1の基準値よりも大きいことに応じて前記結合部材の接触不良と判定する一方で、前記時定数が第2の基準値よりも小さいことに応じて前記電源線の断線と判定する、請求項6に記載の電池電圧検出装置の異常検出方法。
【請求項8】
前記異常判定ステップは、
前記容量素子の端子間電圧が連続して略一定となるときの電圧を飽和電圧として取得する飽和電圧取得ステップと、
前記第1の開閉器を閉状態としてから前記容量素子の端子間電圧が前記飽和電圧に達するまでの経過時間について、前記時定数が前記第1の基準値のときの前記経過時間を第1の閾値として予め記憶する記憶ステップと、
前記端子間電圧取得部により取得された前記容量素子の端子間電圧の時間的変化における前記経過時間が、前記第1の閾値よりも大きいことに応じて前記結合部材の接触不良と判定する接触不良判定ステップとを含む、請求項7に記載の電池電圧検出装置の異常検出方法。
【請求項9】
前記記憶ステップは、さらに、前記時定数が前記第2の基準値のときの前記経過時間を第2の閾値として予め記憶し、
前記異常判定ステップは、前記端子間電圧取得ステップにより取得された前記容量素子の端子間電圧の時間的変化における前記経過時間が、前記第2の閾値よりも小さいことに応じて前記電源線の断線と判定する断線判定ステップをさらに含む、請求項8に記載の電池電圧検出装置の異常検出方法。
【請求項10】
前記電池電圧検出装置は、閉状態とされたことに応じて前記電源線と接地電位とを接続する第2の開閉器をさらに含み、
前記異常判定ステップは、前記電池電圧検出装置の異常検出が終了したことに応じて、前記容量素子の残留電荷の放電指令を生成して前記電池電圧検出装置へ出力し、
前記電池電圧検出装置は、前記放電指令を受けると、前記第1の開閉器を開状態とするとともに、前記第2の開閉器を閉状態とする、請求項9に記載の電池電圧検出装置の異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−285714(P2007−285714A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109826(P2006−109826)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】