説明

電流測定装置及び電流測定方法

【課題】 電子ビーム等のプローブ照射により半導体基板等の測定サンプルに流れる微小電流を、低ノイズでかつ広周波数帯域で測定できる電流測定装置及び電流測定方法を提供する。
【解決手段】 電子ビーム12等のプローブを測定サンプル4に照射したときに、その測定サンプル4に生じる電流を測定する手段を有する電流測定装置であって、測定サンプル4に流れる電流について増幅する増幅回路として、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流測定装置及び電流測定方法に関する。また、本発明は、電子ビーム、イオンビーム、電磁波、音波、振動などを利用して、半導体デバイス製造工程途中のプロセス評価を行うのに好適な電流測定装置及び電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム照射時に流れる基板電流を用いて半導体デバイスのプロセス良否を評価する方法として基板電流法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
この方法は、例えばエッチングを終えた状態のウエハに対して、一定のエネルギーを持つ電子ビームを数秒の間、照射し、その時に生じる基板電流の大小あるいは極性からプロセスの状態を知る方法である。例えば電子ビームエネルギーとしては1KeVが利用され、電流量としては、ピコアンペア(pA)の大きさを用いる。
【0004】
この方法では、プロセス結果が同じである場合、同じ基板電流が生じ、プロセス結果が異なる場合、異なった電流が生じることでプロセス状態を把握できる。また、プロセスの状態によってピコアンペアレベルの電流が変化し、その電流を測定することでプロセスが評価できる。
【特許文献1】特許第3334750号公報
【特許文献2】特許第3292159号公報
【特許文献3】特許第3175765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板電流から精密な測定を行うためには、非常にノイズの小さな電流測定手段が必要である。従来は、ピコアンペア以下の電流を測定するために、図13に示すように、低入力電流特性を持つ演算増幅器21を選定し、かつ、フィードバック抵抗器R1に大きな抵抗値の抵抗器を用いていた。フィードバック抵抗器R1に大きな抵抗値のものを用いると、増幅率に対するホワイトノイズの増加割合を減らすことが出来るが、寄生容量に起因して測定可能な周波数帯域幅が狭くなるトレードオフの課題がある。このように、従来は高速で、かつ低ノイズの増幅を行うことは原理的に困難であった。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、電子ビーム等のプローブ照射により半導体基板等の測定サンプルに流れる微小電流を、低ノイズでかつ広周波数帯域で測定できる電流測定装置及び電流測定方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、測定感度と精度を向上させ、さらに基板電流等の測定における利便性を向上させることができる電流測定装置及び電流測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の電流測定装置は、電子ビーム等のプローブを測定サンプルに照射したときに、該測定サンプルに生じる電流を測定する手段を有する電流測定装置であって、前記測定サンプルに流れる電流について増幅する増幅回路として、スイッチトキャパシタ形式の増幅回路を有することを特徴とする。
本発明によれば、スイッチトキャパシタ形式の増幅回路におけるコンデンサは電荷を充放電することにより抵抗として機能する。その一方、このコンデンサは大きな抵抗値の現実の抵抗と異なり、いわゆる「ホワイトノイズ」を発生させない。したがって、本発明は、電子ビーム等のプローブ照射により半導体基板等の測定サンプルに流れる微小電流を、低ノイズでかつ広周波数帯域で測定することができる。
【0008】
また、本発明の電流測定装置は、測定対象となる測定サンプルにプローブを照射するプローブ照射手段と、前記測定サンプルにプローブを照射したときに、該測定サンプルに流れた電流について電荷として蓄積する第1のコンデンサと、前記第1のコンデンサに蓄積された電荷によって生じた電圧が印加される負入力端子と基準電圧が印加されている正入力端子とを有する演算増幅器と、一端が前記演算増幅器の負入力端子に接続されており、他端が該演算増幅器の出力端子に接続されている第2のコンデンサと、前記第1のコンデンサに蓄積された電荷を放電するスイッチと、前記スイッチの動作を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、第1のコンデンサ、演算増幅器、第2のコンデンサ、スイッチ及び制御手段がスイッチトキャパシタ形式の増幅回路として機能することができる。すなわち、第1及び第2のコンデンサは、スイッチの開閉により電荷を充放電して抵抗として機能する。その一方、第1及び第2のコンデンサは大きな抵抗値の現実の抵抗と異なり、いわゆる「ホワイトノイズ」を発生させない。したがって、本発明は、電子ビーム等のプローブ照射により半導体基板等の測定サンプルに流れる微小電流を、低ノイズでかつ広周波数帯域で測定することができる。
【0009】
また、本発明の電流測定装置は、測定対象となる測定サンプルにプローブを照射するプローブ照射手段と、前記測定サンプルに容量結合している電極と、一端が前記電極に接続されている第1のコンデンサと、前記第1のコンデンサの他端に接続されている負入力端子と基準電圧が印加されている正入力端子とを有する演算増幅器と、一端が前記演算増幅器の負入力端子に接続されており、他端が該演算増幅器の出力端子に接続されている第2のコンデンサと、前記第1のコンデンサに蓄積された電荷を放電するスイッチと、前記スイッチの動作を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、測定サンプルと電極が容量結合しているので、測定サンプルと電極とを直流的又は交流的に良好に接続することができる。測定サンプルに流れる電流について、電極を介して、第1のコンデンサに良好に充電することができる。さらに、第1のコンデンサ、演算増幅器、第2のコンデンサ、スイッチ及び制御手段がスイッチトキャパシタ形式の増幅回路として機能することができる。したがって、本発明は、電子ビーム等のプローブ照射により半導体基板等の測定サンプルに流れる微小電流を、さらに低ノイズでかつ広周波数帯域で測定することができる。また、本発明は、測定サンプルとスイッチトキャパシタ形式の増幅回路とを配線接続する必要がなく、実用性を高くすることができる。
【0010】
また、本発明の電流測定装置は、測定対象となる測定サンプルにプローブを照射するプローブ照射手段と、前記測定サンプルに電気的に接続された負入力端子と基準電圧が印加されている正入力端子とを有する演算増幅器と、前記演算増幅器の負入力端子と出力端子との間に配置されている第1のコンデンサと、前記第1のコンデンサに蓄積された電荷を放電するスイッチと、前記スイッチの動作を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、第1のコンデンサ、演算増幅器、スイッチ及び制御手段がスイッチトキャパシタ形式の増幅回路として機能することができる。すなわち、第1のコンデンサはスイッチの開閉により電荷を充放電して、演算増幅器の帰還抵抗として機能する。その一方、第1のコンデンサは大きな抵抗値の現実の抵抗と異なり、いわゆる「ホワイトノイズ」を発生させない。したがって、本発明は、電子ビーム等のプローブ照射により半導体基板等の測定サンプルに流れる微小電流を、低ノイズでかつ広周波数帯域で測定することができる。
【0011】
また、本発明の電流測定装置は、前記スイッチが、前記第1のコンデンサの一端に接続された第1のスイッチと、該第1のコンデンサの他端に接続された第2のスイッチとを有してなることを特徴とする。
本発明によれば、第1及び第2のスイッチを所定のタイミングで断続させることにより第1及び第2のコンデンサを抵抗として機能させることができる。
【0012】
また、本発明の電流測定装置は、前記第1のスイッチにおける前記第1のコンデンサ側の端子とは逆側の端子と、前記第2のスイッチにおける前記第1のコンデンサ側の端子とは逆側の端子とに可変電圧を印加する電圧源を有することを特徴とする。
本発明によれば、例えば、プローブ照射手段から測定サンプルが受ける電子ビームのエネルギーと、電圧源からスイッチ等を介して測定サンプルに印加される電圧のエネルギーとの差が、測定サンプルが受ける実効電子ビームエネルギーとなる。これにより、例えば、プローブ照射手段から高エネルギーの電子ビームを測定サンプルに照射しても、測定サンプルが受ける実効電子ビームエネルギーを小さくすることができる。したがって、本発明は、このような電流測定において測定サンプルに与えるダメージを低減しながら、測定感度と精度を向上させ、さらに基板電流等の測定における利便性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の電流測定装置は、前記増幅回路、又は前記演算増幅器の正入力端子に、基準電圧として可変電圧を印加する増幅器用電圧源を有することを特徴とする。
本発明によれば、例えば測定サンプルの電位と演算増幅器などの電位とを近づけることができる。したがって、本発明は、このような電流測定において測定サンプルに与えるダメージを低減しながら、測定感度と精度を向上させ、さらに基板電流等の測定における利便性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の電流測定装置は、前記プローブの照射を断続させる断続手段を有することを特徴とする。
また、本発明の電流測定装置は、前記断続手段が前記プローブの照射を断続させるタイミングと、前記スイッチトキャパシタ形式の増幅回路のコンデンサ、又は第1のコンデンサを充放電するタイミングと、を同期させる同期手段を有することを特徴とする。
本発明によれば、スイッチトキャパシタ形式の増幅回路などが同期アンプ(ロックインアンプ)として機能することができる。そこで、本発明は、その同期アンプが狭帯域アンプを形成し、ノイズを除去することができる。したがって、本発明は、さらにノイズの影響を抑えた高性能な電流測定装置を提供することができる。
【0015】
また、本発明の電流測定装置は、前記増幅回路又は前記演算増幅器の出力をアナログ信号からデジタル信号に変換するコンバータと、前記測定サンプルに流れる電流について測定するときに、該測定サンプルと、前記増幅回路又は前記演算増幅器と、前記コンバータとが少なくとも入れられる真空チャンバとを有することを特徴とする。
本発明によれば、測定サンプルを流れる電流についてデジタル信号にするまでを、真空チャンバ内で実行することができる。ここで、スイッチトキャパシタ形式の増幅回路などは電池で駆動する構成としてもよい。
【0016】
また、本発明の電流測定装置は、前記プローブとして、電子ビーム、イオンビーム、電磁波、音波、振動のうちの少なくとも1つを前記測定サンプルに照射する照射手段を有することを特徴とする。
本発明によれば、例えばプローブと測定サンプルとを非接触状態としながら測定サンプルに電流を流すことができる。したがって、測定サンプルについての製造工程途中のプロセス評価などを、高精度に行うことができる。
【0017】
また、本発明の電流測定方法は、電子ビーム等のプローブを測定サンプルに照射し、該測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定方法であって、前記測定サンプルに流れる電流について、スイッチトキャパシタ形式の増幅回路により増幅することを特徴とする。
本発明によれば、スイッチトキャパシタ形式の増幅回路を用いて、測定サンプルに生じる電流を測定するので、電子ビーム等のプローブ照射により半導体基板等の測定サンプルに流れる微小電流を、低ノイズでかつ広周波数帯域で測定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電流測定装置及び電流測定方法においては、測定サンプルに生じた電流について、スイッチトキャパシタ形式の増幅回路で増幅するので、電子ビーム等のプローブ照射により半導体基板等の測定サンプルに流れる微小電流を、低ノイズでかつ広周波数帯域で測定することができる。
【0019】
また、外部からスイッチトキャパシタ形式の増幅回路にバイアス電圧などを印加することで、測定サンプルの電位を制御し、その測定サンプルが受ける照射電子ビーム等の実効エネルギーを低下させることが容易に行え、測定感度を向上させることができる。
【0020】
さらに、電子ビーム源などの設定を変えることなく電子ビームなどのエネルギーレベルを大きく変更できるので、高速で電子ビームのエネルギーレベルを変更できる。このため、電子ビームのエネルギーレベルを変更した後に同じ場所に電子ビーム照射することができ、複数のエネルギーレベルを持つ電子ビームを用いて基板電流を測定する場合に、測定精度を著しく向上できると共に、測定のスループットが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電流測定装置の全体構成例を示す図である。本実施形態の電流測定装置は、電子ビーム源1と、トレイ5と、XYステージ6と、真空チャンバー7と、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8と、高圧電源9と、電子銃11とを有して構成されている。電子銃11は、コンデンサレンズ2、対物レンズ3、アパーチャ10からなる。
【0022】
電子ビーム源(プローブ照射手段)1は、一定のエネルギーで電子ビーム(プローブ)12を放出するものである。真空チャンバー7は、電子ビーム12が放出できるように雰囲気制御するためのものである。そして、真空チャンバー7内には、電子ビーム12が照射され測定対象となる測定サンプル4と、トレイ5と、XYステージ6とが配置されている。高圧電源9は、電子銃11が所望のエネルギーレベルを有した電子ビーム12を発生するために必要な高圧を、その電子銃11に加えるものである。また、本電流測定装置には、電子ビーム12を偏向するための電圧を制御する制御電源(図示せず)が備えられている。
【0023】
また、測定サンプル4は、測定対象となるものであり、半導体デバイス製造工程の途中における半導体基板などが該当する。トレイ5は、測定サンプル4を支持すると共に、測定サンプル4に流れる基板電流を集めるための電極としても機能するものである。XYステージ6は、電子ビーム12を所望の場所に照射するための位置決め機構である。XYステージ6には、ボールネジを使用したものやセラミック振動を利用したものなどが適用できる。より精密に位置合わせを行うためには、光学顕微鏡あるいは電子ビーム12の照射時に得られる二次電子画像を利用してパターンマッチングを行う方法を、位置決め機構として適用してもよい。
【0024】
スイッチトキャパシタ電流増幅回路8は、測定サンプル4へ電子ビーム12が照射された時に、その測定サンプル4に生じる電流を測定するためのスイッチトキャパシタ形式の増幅回路である。スイッチトキャパシタ電流増幅回路8は、トレイ(電極)5を介して測定サンプル4に接続されている。
【0025】
本実施形態においては、測定サンプル4に電子ビーム12が照射されたとき、その測定サンプル4に生じる微小電流を、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8が増幅することができる。これにより、本実施形態によれば、測定サンプル4について、非常に低ノイズでかつ広い周波数帯域を持つ微少電流測定が可能となる。
【0026】
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。すなわち、図2では、電子ビーム12の照射により測定サンプル4に生じる電流を増幅するスイッチトキャパシタ電流増幅回路8の構成例を示している。本実施形態は、図1に示す第1実施形態の電流測定装置におけるスイッチトキャパシタ電流増幅回路8の具体的な構成例とみることができる。したがって、本実施形態の電流測定装置は、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8以外は、第1実施形態の電流測定装置と同一とすることもできる。
【0027】
スイッチトキャパシタ電流増幅回路8は電流信号を電圧信号に変換する。そして、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8は、コンデンサC1,C2と、スイッチS1,S2と、演算増幅器21と、フィルター22とを有して構成されている。スイッチトキャパシタ電流増幅回路8は、通常の演算増幅器回路で使用される抵抗器を、コンデンサC1,C2とスイッチS1,S2で置き換えた回路である。
【0028】
そして、コンデンサC2は、測定サンプル4に電子ビーム12を照射したときに、その測定サンプル4に流れた電流について電荷として蓄積する第1のコンデンサをなしている。演算増幅器21は、コンデンサC2に蓄積された電荷によって生じた電圧が印加される負入力端子とグランド電位が印加されている正入力端子とを有する演算増幅器である。コンデンサC1は、一端が演算増幅器21の負入力端子に接続されており、他端が演算増幅器21の出力端子に接続されている第2のコンデンサをなしている。また、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8は、スイッチS1,S2の動作を制御する制御手段(図示せず)を有している。また、スイッチS1,S2は例えばMOSトランジスタで構成することができる。
【0029】
抵抗器は、ある電圧を加えたときに流れる電流を規制する部品である。その関係は、抵抗値Rの抵抗器の両端に加える電圧をEとして流れる電流はI=E/Rで与えられる。一方、これと同じ機能は、一回のコンデンサに蓄積される電荷を何回充放電するかで実現できる。つまり、I=CV×N=Q×Nの関係が成立する。ここで、Cはコンデンサ容量、Vはコンデンサの両端の電圧、Nは単位時間当たりのスイッチングの回数、Qはコンデンサに蓄積される電荷量である。
【0030】
一般に、抵抗器は抵抗器値が大きくなるにつれ電気伝導に関わる電子数が減少する。従って、電気抵抗器値が大きくなると伝導電子の個数が少なくなることによる揺らぎが生じる。この揺らぎは、ホワイトノイズとして知られており、抵抗値を大きくすれば、それに比例して大きくなる性質がある。一方、コンデンサは単なる金属の対であり、金属の中には大量の伝導電子が存在し、揺らぎによるノイズはきわめて小さい。また電流は変位電流によって伝わる。従って、電流を運ぶための電子が直接的には関与せず、ノイズを発生しない。スイッチをオンオフする際にはノイズが発生するが、そのノイズは既知の周期を有するパルス性のノイズなので、容易にフィルター22を利用して除去することが可能である。
【0031】
スイッチトキャパシタ電流増幅回路8は、コンデンサとスイッチからなる等価抵抗器の大きさで決まる電流電圧変換能力を持つ。例えば、コンデンサC1とコンデンサC2に1pFのコンデンサを用いたとする。そして、1pAの電流が演算増幅器21に流入すると、先ず、スイッチS1(第1のスイッチ)は開、スイッチS2(第2のスイッチ)は閉の状態として、コンデンサC2に電荷を蓄積する。
【0032】
その結果、コンデンサC2の両端には1Vの電位差が生じる。次の瞬間スイッチS1を閉、スイッチS2を開とする。その結果、演算増幅器21の負入力端子には、1Vの逆電圧が加えられる。演算増幅器21は正負の入力端の電位差を0にするように働くので、演算増幅器21の出力端には1Vの出力が現れる。つまり、1pAという非常に小さな電流が1Vという大きな電圧に変換される。半導体デバイスの中に小さな容量を作るのは容易なので、1pFよりも小さな容量をコンデンサC2として適用することも容易である。もし、コンデンサC2を0.1pF、コンデンサC1を1pFとすれば、100fAの電流入力があったときに1Vの出力を得ることができる。なお、スイッチS1、S2をオンオフする発生するノイズは、フィルター22により除去する。
【0033】
これらにより、本実施形態の電流測定装置によれば、非常に低ノイズでかつ広い周波数帯域を持つ微少電流測定が可能となる。そのため、本実施形態の電流測定装置は、同じ信号量の場合、例えば、測定速度が従来の電流測定装置(図12参照)と比較して100倍以上速くなる。また、電流をより多く流せば、さらに高速で電流を測定することが可能となり、メガヘルツよりも高い周波数の測定が可能となる。また、一度に高倍率増幅を行いかつ、温度特性に左右されにくいので、良好な温度特性を得ることができる。
【0034】
[第3実施形態]
図3は、本発明の第3実施形態に係る電流測定装置を示す回路図である。本実施形態と第2実施形態との相違点は、本実施形態では電極31を有している点である。
【0035】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定サンプル4の下に、その測定サンプル4との間で容量結合するプレート状の電極31が付設されている。そして、測定サンプル4と電極31との間は、直流的又は交流的に接続されている。この電極31は、測定サンプル4の裏面にあってもよいし、測定サンプル4の表面又は側面にあってもかまわない。電極31を測定サンプル4の裏面に配置した場合、電極31は測定サンプル4とほぼ同じ大きさを有することとして、非常に大きな容量を形成することができる。ここで、非常に大きな容量とは、例えば、測定サンプル4と電流測定装置の筐体との寄生容量等に比較して、非常に大きな容量という意味である。
【0036】
本実施形態の電流測定装置は、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8が電極31に電気的に接続されており、電極31に集められた電流を測定することに特徴がある。つまり、本実施形態によれば、測定サンプル4とスイッチトキャパシタ電流増幅回路8とを配線接続する必要がなく、実用性が高くなる。
【0037】
[第4実施形態]
図4は、本発明の第4実施形態に係る電流測定装置の全体構成例を示す図である。本実施形態の電流測定装置は、第1から第3実施形態のスイッチトキャパシタ電流増幅回路8に相当する電流測定回路41を有するとともに、その電流測定回路41にバイアス電圧を印加するバイアス電源44を有していることが特徴の一つである。なお、図4において、図1から図3の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。
【0038】
光学の原理によれば、物体を見分ける指標となる空間分解能は利用する光の波長と同等程度であることが分かっている。電子ビームは波長が非常に短いことが特徴である。例えば単色の100eVの電子ビームでさえ波長は1オングストロームよりもはるかに短い。しかしながら、実際に発生し得る電子ビームは大きなエネルギーの分散をもち、波長がわずかずつ異なった電子ビームの集合体であるため、電子ビームのエネルギーから想定されるよりもはるかに低い空間分解能しか得ることができない。電子ビームを用いた電流測定装置では、デバイス(測定サンプル4)へのダメージや感度の向上を目的として、低エネルギーでかつ、エネルギーの良く揃った電子ビームが必要とされる。
【0039】
図4に示す本実施形態の電流測定装置は、相対的に、低エネルギーでかつエネルギーの良く揃った電子ビームを得ることができる。本実施形態では、加速電極42と加速電源43を用いて、電子ビーム源1から飛び出た電子ビームを一旦非常に高いエネルギーの状態にする。この状態で非常に小さな円筒形のアパーチャ10を通過させ、エネルギーの揃っている部分だけを取り出す。その後、何らかの方法で実効的な電子ビーム照射エネルギーを下げる方法が利用される。
【0040】
例えば、電子ビーム12を一旦加速電極42により5kV程度までエネルギーを増加させる。アパーチャ10は、数ミクロンの大きさを有しており、一種のエネルギーフィルターを構成する。電子ビーム源1から放出される電子ビームは、チップと呼ばれる電子ビーム放出電極の先端部分から放出される。放出される領域は数百オングストロームの範囲と小さな領域ではあるが、放出される場所によって電子ビームエネルギーに差が生じている。この差が生じると、電子ビームをフォーカスした際に、収差が生じて異なった場所に焦点を結ぶため、像がぼけてしまう原因となる。これらは、空間分解能を低下させ測定精度を悪化する原因になる。
【0041】
小さなアパーチャ10に電子ビーム12を照射すると電子ビーム12のエネルギーレベルが揃っている中心部のみが通過し、電子ビーム源1から電子ビーム12が放出された時のエネルギー分散に比べ非常に小さな分散を持つようになる。このような状態の電子ビーム12は電子ビームエネルギーが低くても良いフォーカスを実現できる。その後、バイアス電源44により電流測定回路41に加えられた、例えば4.9kVというようなバイアス電圧により、サンプルに実際に照射される電子ビームエネルギーは100eVと小さなものになる。しかしながら、この電子ビームは非常にエネルギーが揃っており、ビームがシャープにフォーカスするようになる。なお、電流測定回路41は、先に説明したスイッチトキャパシタ電流増幅回路8と同様の回路であり、バイアス電源44を含む回路構成については、後の実施形態で説明する。
【0042】
これらにより、本実施形態の電流測定装置によれば、バイアス電源44を設けているので、照射電子ビームエネルギーの実効エネルギーを低下させることが可能となり、測定の感度を向上させることができる。したがって、本電流測定装置は、測定サンプル4へのダメージを大幅に低減させるような、低エネルギーレベルの電子ビームにかかわらず、フォーカスを絞ることができる。また、電流測定回路41に高電圧を加えるだけで、照射電子ビームの実効エネルギーを下げることが可能となり、従来必要であった高圧部と通常電圧部を結ぶための複雑なアイソレーションアンプなどが不要になる。
【0043】
[第5実施形態]
図5は、本発明の第5実施形態に係る電流測定装置を示す図である。なお図5において図1から図4の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態は、測定サンプル4に接続されたスイッチトキャパシタ電流増幅回路8にバイアス電圧を加えるための電源(電圧源)51および電源(増幅器用電圧源)52を設けた構成に特徴がある。
【0044】
この電源51、52は、可変電圧電源であり、出力電圧V1,V2を変化させることにより、測定サンプル4の表面の実効電子ビームエネルギーを電圧V1、V2に比例して変化させることができる。つまり、電子ビーム照射エネルギー(例えば、電圧V3)から、測定サンプル4に印加されたV1又はV2の電圧を引いたエネルギーレベルが、測定サンプル4の表面の実効電子ビームエネルギーとなる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、外部からスイッチトキャパシタ電流増幅回路8にバイアス電圧を加えることで、測定サンプル4の電位を制御することができ、照射電子ビームエネルギーの実効エネルギーを低下させることができ、測定の感度を上げることができる。また、本実施形態によれば、電子ビーム源1の設定を変えないで、電圧V1,V2,V2のいずれかを変えることにより、電子ビームのエネルギーレベルを大きく変更することができる。また、電子ビーム12のエネルギーレベルを変更した後に同じ場所に電子ビーム照射できるので、異なるエネルギーレベルの電子ビームを複数用いて測定する場合に測定精度が著しく向上し、また、測定のスループットも向上する。
【0046】
[第6実施形態]
図6は、本発明の第6実施形態に係る電流測定装置を示す図である。なお図6において、図1から図5の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第5実施形態との相違点は、本実施形態では電極31を有している点である。
【0047】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定対象となる測定サンプル4に隣接してプレート状の電極31を設けた構成に特徴がある。測定系に存在する容量成分は、電極31と測定サンプル4との間にできた容量と、測定サンプル4と電流測定装置の筺体間に生じる寄生容量が主な成分となる。この中で、測定サンプル4と電極31の間に生じる容量は圧倒的にほかの容量と比較して大きい。これにより、測定サンプル4を直接バイアスしていないにも関わらず、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8に加えた電圧V1又はV2によって照射電子ビームの実効エネルギーを変化させることが可能となる。
【0048】
測定サンプル4に対して、電子ビーム照射エネルギー(例えば、電圧V3)から測定サンプル4に印加された電圧V1又は電圧V2の電圧を引いたエネルギーレベルを持つ電子ビームの照射が行われる。なお、電圧V1と電圧V2は同じ電圧としてもよい。また、電極31を使用することにより、測定サンプル4とスイッチトキャパシタ電流増幅8とを配線接続する必要がなくなり、実用性が向上する。
【0049】
[第7実施形態]
図7は、本発明の第7実施形態に係る電流測定装置を示す図である。なお図7において、図1から図6の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と上記第1から第6実施形態との主な相違点は、本実施形態では電子ビーム12の照射タイミングを決定するスイッチS3(断続手段)を設けている点である。
【0050】
このスイッチS3の表現は概念的な表現であり、電子源における電子ビーム12の発生そのものを同期信号等に基づいたあるタイミングでオンオフする機能で、スイッチS3を実現してもよい。また、連続して放射される電子ビームの通り道にブランキング電極等の偏向手段を配置して、その偏向手段によって電子ビームブランキングを行うことで、スイッチS3を実現してもよい。
【0051】
また、本実施形態では、電子ビーム12のオンオフタイミングと、スイッチS1、S2のスイッチの動作から決定される電流の測定タイミングを同期させる同期手段(図示せず)を有することが好ましい。このようにすると、一種の同期アンプ(ロックインアンプ)を形成できる。同期アンプは、同期信号に同期した信号だけが増幅される狭帯域アンプを形成する。そのため、外部から測定系に入り込むノイズ(同期アンプの同期信号に非同期なノイズ)を減少させることができる。同期信号自身は本来の信号にとってはノイズとなるので、演算増幅器21の出力部に設けたフィルター22はこれら同期信号に同期したノイズを減少させるために適切な時定数を有するフィルターとする。なお、このフィルター22自身も電子ビームのオンオフのタイミングと同期して動作する相関型のフィルターであってもよい。
【0052】
これらにより、本実施形態によれば、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8などが同期アンプ(ロックインアンプ)として機能することができる。そこで、本実施形態によればさらにノイズの影響を抑えた高性能な電流測定装置を提供することができる。
【0053】
[第8実施形態]
図8は、本発明の第8実施形態に係る電流測定装置を示す図である。なお、図8において、図1から図7の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第7実施形態との相違点は、本実施形態では電極31を有している点である。
【0054】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、測定対象となる測定サンプル4の近傍に電極31を配置した構成に特徴がある。本電流測定装置は、図7に示す第7実施形態の電流測定装置と同様に、スイッチS3を用いて、電子ビーム12を測定サンプル4に対してオンオフしながら照射(断続的に照射)し、その信号に同期してスイッチS1,S2をオンオフして電流を測定する。
【0055】
このような構成により、図7に示した実施形態と同様な効果を奏するのみならず、測定サンプル4に基板電流測定用の配線を接続する必要がなくなり、実用性が高くなる。
【0056】
[第9実施形態]
図9は、本発明の第9実施形態に係る電流測定装置を示す図である。なお、図9において、図1から図8の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第7実施形態との相違点は、本実施形態では電源(電圧源)51および電源(増幅器用電圧源)52を有している点である。
【0057】
すなわち、本実施形態の電流測定装置は、電子ビーム照射をスイッチS3でオンオフしながら電流測定を行う構成と、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8に電圧V1、V2を加えて、測定サンプル4に加えられる実効的な電子ビームのエネルギーレベルを変化させる構成とに特徴がある。
【0058】
このような構成により、電子ビーム12のオンオフタイミングに同期しない信号は除去されるため、SN比が高くなる。また、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8にバイアス電圧を印加するため、測定サンプル4に加えられる電子ビーム12の実効エネルギーが電圧V1又は電圧V2に比例して小さくなり、測定サンプル4に流れる電流についての測定感度が高くなる。
【0059】
また、演算増幅器21に加える電圧V1、V2は可変であり、電子ビーム12のオンオフタイミングに同期して変化させることも可能である。例えば、測定終了後、測定サンプル4を本電流測定装置から取り出す際には、その測定サンプル4の電位を0ボルト(グランドレベル)にしておくことが、そのサンプル4へのダメージを避けるために重要である。このような測定サンプル4の取り出しの際には、スイッチS1を閉じて、電圧V1の電位をグランドレベルに変更することが好ましい。
【0060】
[第10実施形態]
図10は、本発明の第10実施形態に係る電流測定装置を示す図である。なお、図10において、図1から図9の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第9実施形態との相違点は、本実施形態では電極31を有している点である。
【0061】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、電子ビーム照射をスイッチS3でオンオフしながら電流測定を行う構成と、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8に電圧V1、V2を加える構成と、測定サンプル4の近傍に電極31を配置している構成とに特徴がある。電極31は、直流的又は容量的に測定サンプル4と電気的に接続している。なお、測定サンプル4の裏面に酸化膜など絶縁膜が存在する場合には、電極31はその測定サンプル4に容量的に接続される。
【0062】
電極31には、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8が接続されている。電子ビーム照射部にはスイッチS3が設けられており、電子ビーム12の照射を外部からの制御信号によってオンオフすることが可能な構成となっている。
【0063】
さらに、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8には電源51、52が設けられており、そのスイッチトキャパシタ電流増幅回路8のバイアス電位を変更できるように構成されている。この電源51,52により、電圧V1,V2を加えると、演算増幅器21の働きにより、測定サンプル4の近傍に配置された電極31の電位がその電位(電圧V1,V2)に等しくなる。一方、電極31と測定サンプル4との間に形成される容量は非常に大きいので、測定サンプル4は電極31の電位とほぼ同じ電位になる。
【0064】
このような構成により、本実施形態の電流測定装置は、第9実施形態の電流測定装置が奏する効果に加えて、測定サンプル4に基板電流測定用の配線を接続する必要がなくなり実用性が高くなるという効果を奏することができる。
【0065】
[第11実施形態]
図11は、本発明の第11実施形態に係る電流測定装置を示す図である。なお、図11において、図1から図10の構成要素と同一のものには同一符号を付けている。本実施形態と第10実施形態との相違点は、本実施形態ではA/Dコンバータ23と、そのA/Dコンバータ23などを内蔵する真空チャンバー7とを有している点である。
【0066】
すなわち、本実施形態の電流測定装置では、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8の後にA/Dコンバータ23を設けた構成に特徴がある。また、図11において、破線で囲まれる部分は真空チャンバー7を示している。そして、スイッチトキャパシタ電流増幅回路8による電流増幅からA/Dコンバータ23によるアナログ/デジタル信号変換までを真空チャンバー7内で行う点にも特徴がある。スイッチトキャパシタ電流増幅回路8には電圧V1,V2が印加されており、電極31を通じて測定サンプル4の電位を制御する。
【0067】
また、A/Dコンバータ23によりデジタル信号に変換された測定信号は光ファイバー24を通して外部コンピュータ25に送信される。この場合、測定サンプル4の電流測定系は、電圧V1,V2のバイアス電圧により高電圧にバイアスされるが、光ファイバー24等により、外部演算装置である外部コンピュータ25とは電気的に切り離されている。したがって、本実施形態の電流測定装置は、特殊な電気絶縁アンプを介在することなく、電流測定系と外部コンピュータ25との間で信号のやり取りを行うことができる。また、真空チャンバー7内部に配置されたスイッチトキャパシタ電流増幅回路8を電池などで駆動することにすれば、より効果的に絶縁でき、非常に容易に構成できる。
【0068】
[第12実施形態]
図12は、本発明の第12実施形態に係る電流測定装置を示す図である。本実施形態では、演算増幅器21の出力端子と負入力端子の間にスイッチトキャパシタ回路を挿入したことに特徴がある。
【0069】
すなわち、本実施形態の電流測定装置は、演算増幅器21、コンデンサC20、スイッチS10,S20及びフィルター22を有して構成されている。演算増幅器21の正入力端子は、グランドに接続されている。演算増幅器21の負入力端子は、測定サンプル4に電気的に接続されている。また、演算増幅器21における負入力端子と出力端子との間にコンデンサC20が配置されている。そして、コンデンサC20の一方端(演算増幅器21の負入力端子)は、スイッチS10を介してグランドに接続されている。コンデンサC20の他方端(演算増幅器21の正入力端子)は、スイッチS20を介してグランドに接続されている。また、演算増幅器21の出力は、フィルター22によってノイズが除去される。
【0070】
本実施形態の電流測定装置によれば、図13に示すような従来例における抵抗器で構成されていたフィードバック抵抗器R1を、スイッチトキャパシタで置き換えている。したがって、従来例においてフィードバック抵抗器R1で発生していたノイズは、本実施形態では発生しない。次に本実施形態の動作について説明する。
【0071】
測定サンプル4に電子ビーム12を照射するとその測定サンプル12に電流が生じる。その生じた電流は演算増幅器21の負端子に導入される。演算増幅器21では正入力端子と負入力端子とが同じ電位になるように動作する。そして、スイッチS10とスイッチS20との開閉を順次切り替えることにより、コンデンサC20において前記の生じた電流による充放電を繰り返させる。
【0072】
ここで、初期状態では、スイッチS10,S20が閉じられコンデンサ20において電荷が空になっている。次いで、スイッチS10,S20を開放として、測定サンプル4に生じた電流がコンデンサC20に蓄積される。このとき、コンデンサC20を介して実質的に電流が流れる。この電流量はスイッチS10,S20の開閉動作速度(周期)に比例する。すなわり、コンデンサC20及びスイッチS10,S20で構成される抵抗の値は、スイッチS10,S20の開閉周期で可変制御することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したように、本発明によれば、非常に低ノイズでかつ広い周波数帯域を持つ微少電流測定が可能となる。そのため、同じ信号量の場合、例えば、測定速度が既存の電流測定装置と比較して100倍以上速くなる。電流を多く流せば、さらに高速で電流を測定可能でメガヘルツよりも高い周波数の測定が可能となる。また、一度に高倍率増幅を行い、かつ、温度特性に左右されにくいので、良好な温度特性を得ることができる。
【0074】
また、本発明によれば、電流測定からデジタル信号変換までを1つの半導体チップで実行可能となり、極めて小さな測定系を実現できる。また、真空チャンバー内でアナログ信号をデジタル信号に変換するようにすれば、非常にノイズに強い計測システムを実現できる。
【0075】
また、本発明によれば、外部からスイッチトキャパシタ電流増幅回路にバイアス電圧を加えることで、測定対象サンプルの電位を制御することができる。これにより、照射電子ビームエネルギーの実効エネルギーを低下させることが可能となり、測定の感度を上げることができ、低エネルギーレベルの電子ビームにもかかわらず、フォーカスを絞ること、つまり、高解像度電子ビーム測定が可能になる。
【0076】
また、本発明によれば、スイッチトキャパシタ電流増幅回路に高電圧を加えるだけで、照射電子ビームの実効エネルギーを下げることが可能となり、従来必要であった高圧部と通常電圧部を結ぶための複雑なアイソレーションアンプなどが不要になる。
【0077】
また、本発明によれば、非常に低いエネルギーレベルを持つ電子ビームを基板電流測定に利用できる。低いエネルギーを有する電子ビームは、二次電子放出確率を向上させ、本測定の感度が高くなる。また、測定対象に対してダメージを与えない。
【0078】
さらに、本発明によれば、電子ビーム源の設定を変えることなく電子ビームのエネルギーレベルを大きく変更できるので、高速で電子ビームのエネルギーレベルを変更できる。このため、電子ビームのエネルギーレベルを変更した後に同じ場所に電子ビーム照射することができ、異なるエネルギーレベルを持つ電子ビームを複数用いて基板電流を測定する場合に、測定精度を著しく向上できると共に、測定のスループットも向上する。
【0079】
また、本発明によれば、1つの電子ビームエネルギーを設定するために、いろいろな組み合わせが使用できる。その結果、平均的には同じエネルギーレベルを持つ電子ビームのエネルギー分散状態や空間分布についての調節が可能なので、用途に応じてもっとも最適な組み合わせの電子ビームを選んで測定用電子ビームとすることができる。
【0080】
なお、本発明の実施形態においては、電子ビームを測定サンプルに照射する例のみ示したが、同様の測定を行うために、光などの電磁波、イオンビーム、音波、振動などを電子ビームの代わりにプローブとして適用することも可能である。
【0081】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の電流測定装置は、上述及び図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、電子ビーム等のプローブ照射により半導体基板などの測定サンプルに流れる電流を測定する際に、その電流を低ノイズでかつ広周波数帯域で測定できるので、本発明は、各種の電流測定装置および電流測定方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図7】本発明の第7実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図8】本発明の第8実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図9】本発明の第9実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図10】本発明の第10実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図11】本発明の第11実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図12】本発明の第12実施形態に係る電流測定装置を示す図である。
【図13】従来の電流測定装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1…電子ビーム源、2…コンデンサレンズ、3…対物レンズ、4…測定サンプル、5…トレイ、6…XYステージ、7…真空チャンバー、8…スイッチトキャパシタ電流増幅回路、9…高圧電源、10…アパーチャ、11…電子銃、12…電子ビーム、21…演算増幅器、22…フィルター、23…A/Dコンバータ、24…光ファイバー、25…外部コンピュータ、31…電極、41…電流測定回路、42…加速電極、43…加速電源、44…バイアス電源、51…電源、52…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム等のプローブを測定サンプルに照射したときに、該測定サンプルに生じる電流を測定する手段を有する電流測定装置であって、
前記測定サンプルに流れる電流について増幅する増幅回路として、スイッチトキャパシタ形式の増幅回路を有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
測定対象となる測定サンプルにプローブを照射するプローブ照射手段と、
前記測定サンプルにプローブを照射したときに、該測定サンプルに流れた電流について電荷として蓄積する第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサに蓄積された電荷によって生じた電圧が印加される負入力端子と基準電圧が印加されている正入力端子とを有する演算増幅器と、
一端が前記演算増幅器の負入力端子に接続されており、他端が該演算増幅器の出力端子に接続されている第2のコンデンサと、
前記第1のコンデンサに蓄積された電荷を放電するスイッチと、
前記スイッチの動作を制御する制御手段とを有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項3】
測定対象となる測定サンプルにプローブを照射するプローブ照射手段と、
前記測定サンプルに容量結合している電極と、
一端が前記電極に接続されている第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサの他端に接続されている負入力端子と基準電圧が印加されている正入力端子とを有する演算増幅器と、
一端が前記演算増幅器の負入力端子に接続されており、他端が該演算増幅器の出力端子に接続されている第2のコンデンサと、
前記第1のコンデンサに蓄積された電荷を放電するスイッチと、
前記スイッチの動作を制御する制御手段とを有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項4】
測定対象となる測定サンプルにプローブを照射するプローブ照射手段と、
前記測定サンプルに電気的に接続された負入力端子と基準電圧が印加されている正入力端子とを有する演算増幅器と、
前記演算増幅器の負入力端子と出力端子との間に配置されている第1のコンデンサと、
前記第1のコンデンサに蓄積された電荷を放電するスイッチと、
前記スイッチの動作を制御する制御手段とを有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項5】
前記スイッチは、前記第1のコンデンサの一端に接続された第1のスイッチと、該第1のコンデンサの他端に接続された第2のスイッチとを有してなることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項6】
前記第1のスイッチにおける前記第1のコンデンサ側の端子とは逆側の端子と、前記第2のスイッチにおける前記第1のコンデンサ側の端子とは逆側の端子とに可変電圧を印加する電圧源を有することを特徴とする請求項5に記載の電流測定装置。
【請求項7】
前記増幅回路、又は前記演算増幅器の正入力端子に、基準電圧として可変電圧を印加する増幅器用電圧源を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項8】
前記プローブの照射を断続させる断続手段を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項9】
前記断続手段が前記プローブの照射を断続させるタイミングと、前記スイッチトキャパシタ形式の増幅回路のコンデンサ、又は第1のコンデンサを充放電するタイミングと、を同期させる同期手段を有することを特徴とする請求項8に記載の電流測定装置。
【請求項10】
前記増幅回路又は前記演算増幅器の出力をアナログ信号からデジタル信号に変換するコンバータと、
前記測定サンプルに流れる電流について測定するときに、該測定サンプルと、前記増幅回路又は前記演算増幅器と、前記コンバータとが少なくとも入れられる真空チャンバとを有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項11】
前記プローブとして、電子ビーム、イオンビーム、電磁波、音波、振動のうちの少なくとも1つを前記測定サンプルに照射する照射手段を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の電流測定装置。
【請求項12】
電子ビーム等のプローブを測定サンプルに照射し、該測定サンプルに生じる電流を測定する電流測定方法であって、
前記測定サンプルに流れる電流について、スイッチトキャパシタ形式の増幅回路により増幅することを特徴とする電流測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−184124(P2006−184124A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377817(P2004−377817)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(502277762)ファブソリューション株式会社 (9)
【Fターム(参考)】