電磁アクチュエータ及び関節装置
【課題】機械的な回転トルクに起因する可動子の回転動作を規制することができる電磁アクチュエータ及び関節装置を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る関節装置は、可動子1と、固定子2と、支持機構D3Sとを具備する。出力軸(駆動軸)8は、第1の電磁トルクによって当該出力軸のまわりに回転し、第2の電磁トルクによって当該出力軸と直交する軸のまわりに回転力を受けて傾動する。支持機構D3Sは、出力軸8に作用する上記傾動方向への回転トルクを弾性的に支持するコイルスプリング61を含む。したがって、コイルスプリング61の弾性力を適宜の値に設定することによって、出力軸8に作用する機械的な回転トルクに起因する、可動子1の固定子2に対する傾動動作を規制あるいは制限することが可能となる。また、当該回転トルクの大きさに応じて、可動子1の傾動角度を制御することが可能となる。
【解決手段】本発明の一形態に係る関節装置は、可動子1と、固定子2と、支持機構D3Sとを具備する。出力軸(駆動軸)8は、第1の電磁トルクによって当該出力軸のまわりに回転し、第2の電磁トルクによって当該出力軸と直交する軸のまわりに回転力を受けて傾動する。支持機構D3Sは、出力軸8に作用する上記傾動方向への回転トルクを弾性的に支持するコイルスプリング61を含む。したがって、コイルスプリング61の弾性力を適宜の値に設定することによって、出力軸8に作用する機械的な回転トルクに起因する、可動子1の固定子2に対する傾動動作を規制あるいは制限することが可能となる。また、当該回転トルクの大きさに応じて、可動子1の傾動角度を制御することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多自由度駆動を可能とする電磁アクチュエータ及び関節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多自由度駆動を可能とするアクチュエータとして、三自由度球面電磁アクチュエータが知られている。例えば、非特許文献1には、球面全方位の駆動が可能であり、ロボットの肩関節や眼球の駆動に応用が期待される三自由度球面電磁アクチュエータが開示されている。
【0003】
上記電磁アクチュエータは、可動子と、この可動子を3軸(x軸、y軸、z軸)方向のまわりに回転トルクを発生させる固定子を備えている。可動子は、xy平面に平行な周方向に沿って分割された4つの磁性体と、これら磁性体の間に90°おきに挿入された4つの永久磁石とを含む。固定子は、可動子の外周側に所定のエアギャップを介して配置されており、z軸方向に沿って上下二つに分割されている。個々の固定子はそれぞれ、6個の磁極をもつ同一材質の磁性体で形成されており、各磁極の極性を制御することで、可動子をz軸のまわりに360°、x軸及びy軸のまわりに所定角度範囲にわたって回転させることが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電気学会研究会資料LD-08-46「3自由度球面電磁アクチュエータの研究」加嶋俊大、山本匡史、平田勝弘
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成を有する電磁アクチュエータにおいては、x軸及びy軸のまわりへの可動子の回転範囲に制限があるため、この制限を超えて可動子を回転させた場合、可動子が初期位置へ復帰できなくなるという不都合がある。
【0006】
特に、上記電磁アクチュエータを搬送ロボット等の関節部に適用した場合、被搬送体の自重やアームに加わる外力に起因するモーメントを受けることで、可動子に対してx軸、y軸またはこれらの合成軸のまわりに機械的な回転トルクが作用する。この回転トルクによって可動子が所定角度範囲を超えて回転した場合、固定子による電磁トルクでは可動子が復帰位置へ復帰できなくなるおそれがある。この場合、当該電磁アクチュエータによる関節部としての所期の機能が果たせなくなり、搬送ロボットの動作不良を招く。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、機械的な回転トルクに起因する可動子の回転動作を規制することができる電磁アクチュエータ及び関節装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態に係る電磁アクチュエータは、可動子と、固定子と、支持機構とを具備する。
【0009】
上記可動子は、出力軸を有する。上記固定子は、上記可動子に対して、上記出力軸を回転中心とする第1の電磁トルクと、上記出力軸と直交する軸を回転中心とする第2の電磁トルクを発生させる。上記支持機構は、上記出力軸に作用する、上記出力軸と直交する軸のまわりへの回転トルクを弾性的に支持する。
【0010】
出力軸は、第1の電磁トルクによって当該出力軸のまわりに回転し、第2の電磁トルクによって当該出力軸と直交する軸のまわりに回転力を受けて傾動する。支持機構は、出力軸に作用する上記回転トルクを弾性的に支持する。したがって、支持機構の弾性力を適宜の値に設定することによって、出力軸に作用する機械的な回転トルクに起因する、可動子の固定子に対する傾動動作を規制あるいは制限することが可能となる。また、当該回転トルクの大きさに応じて、可動子の傾動角度を制御することが可能となる。なお、出力軸は可動子と一体に形成されていてもよいし、可動子と別部材で構成されていてもよい。
【0011】
さらに、支持機構は、出力軸に作用する機械的な回転トルクだけでなく、固定子との間の磁気的相互作用にて発生する上記第2の電磁トルクをも支持する。これにより、この第2の電磁トルクと支持機構の弾性力との間の力のつり合いを利用して、可動子を任意の傾動角度位置に位置決めすることが可能となる。また、支持機構の弾性力に基づいて、当該可動子の任意の傾動角度位置への位置決めをオープンループ制御で実現することができる。
【0012】
上記支持機構は、第1の支持部材と、第2の支持部材と、コイルスプリングとを有していてもよい。上記第1の支持部材は、上記出力軸を軸支する。上記第2の支持部材は、上記固定子に取り付けられる。上記コイルスプリングは、上記第1の支持部材と上記第2の支持部材との間に上記出力軸と同心的に配置される。
【0013】
出力軸がそれと直交する軸方向のまわりに回転トルクを受けたとき、第1の支持部材は出力軸と一体となって傾動する。この第1の支持部材の傾動によって、コイルスプリングに圧縮力が付加される。そこで、コイルスプリングの弾性力を適宜の値に設定することで、出力軸の傾動量が調整可能となる。また、コイルスプリングを予め圧縮された状態にしておくことで、当該コイルスプリングの圧縮力に相当する回転トルク以下の外力に対して、出力軸の傾動を防止することが可能となる。
【0014】
上記電磁アクチュエータは、上記可動子を支持する球面ベアリングを含む支持軸をさらに具備してもよい。
【0015】
これにより、可動子の三次元的な回転動作を安定かつ円滑に支持することが可能となる。
【0016】
一方、上記支持機構は、軸受け部と、板バネとを有していてもよい。上記軸受け部は、上記出力軸を回転自在に支持する。上記板バネは、上記固定子と前記軸受け部との間に架け渡される。
【0017】
出力軸がそれと直交する軸方向のまわりに回転トルクを受けることで傾動した際、上記板バネが変形することで、出力軸を初期位置へ復帰させる弾性力が出現する。この板バネの弾性力を適宜の値に設定することで、出力軸の傾動量が調整可能となる。また、当該板バネの変形に必要な機械力に相当する回転トルク以下の外力に対して、出力軸の傾動を防止することが可能となる。
【0018】
上記構成の支持機構において、可動子は、上記出力軸の延在方向に沿って分割され、上記板バネの両主面と隙間を介して対向する第1及び第2の可動子部で構成することができる。この場合、上記固定子は、上記出力軸の延在方向に沿って分割された第1及び第2の固定子部で構成することができる。板バネは、上記第1及び第2の固定子部の間に固定される第1の端部と、上記軸受け部に固定される第2の端部とを有する構成とすることができる。
【0019】
これにより、支持機構の構成を複雑化することなく、出力軸と直交する軸まわりへの可動子の回転規制を実現することが可能となる。
【0020】
上記電磁アクチュエータは、上記出力軸に取り付けられたアーム部材をさらに具備してもよい。
【0021】
これにより、例えば、被搬送体を目的とする位置へ搬送するための搬送ロボットを構成することが可能となる。また、アーム部材の自重やアーム部材に作用する負荷に起因する、可動子に対する機械的な回転トルクを上記支持機構によって弾性的に支持することが可能となる。
【0022】
ここで、上記可動子は、周方向に極性を交互に異ならせて磁化された複数の磁性体で構成することができる。また、固定子は、第1の固定子部と、第2の固定子部とで構成することができる。上記第1の固定子部は、上記可動子の外周側に向かって突出する複数の第1のコアと、上記複数の第1のコアにそれぞれ巻回された第1の電磁コイルとを含む。上記第2の固定子部は、上記可動子の外周側に向かって突出する複数の第2のコアと、上記複数の第2のコアにそれぞれ巻回された第2の電磁コイルとを含み、上記第1の固定子部に積層される。
【0023】
この構成により、可動子に対して出力軸を回転中心とする第1の電磁トルクと、出力軸と直交する軸を回転中心とする第2の電磁トルクを付与することが可能となり、可動子の多自由度駆動が可能となる。
【0024】
本発明の一形態に係る関節装置は、第1の部材と、可動子と、固定子と、第2の部材と、支持機構とを具備する。
【0025】
上記可動子は、上記第1の部材に連結される出力軸を有する。上記固定子は、上記第2の部材に固定され、上記可動子に対して、上記出力軸を回転中心とする第1の電磁トルクと、上記出力軸と直交する軸を回転中心とする第2の電磁トルクを発生させる。上記支持機構は、上記出力軸と直交する軸のまわりへの回転トルクを弾性的に支持する。
【0026】
第1の部材は、第1の電磁トルクによって、出力軸のまわりに回転される。また、第1の部材は、第2の電磁トルクによって、出力軸と直交する軸のまわりに回転力を受けて傾動する。支持機構は、第2の部材に対する第1の部材の傾動トルクを弾性的に支持する。したがって、支持機構の弾性力を適宜の値に設定することによって、出力軸に作用する機械的な回転トルクに起因する、可動子の固定子に対する傾動動作を規制あるいは制限することが可能となる。また、当該回転トルクの大きさに応じて、可動子の傾動角度を制御することが可能となる。
【0027】
上記第1、第2の部材は、当該関節装置が適用される各種ロボットのアーム部材やリンクレバー等が含まれ、その形状や長さは特に限定されない。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、出力軸に作用する機械的な回転トルクに起因する、可動子の固定子に対する回転動作を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る関節装置が適用される搬送ロボットの概略構成図である。
【図2】図1の搬送ロボットの一動作例を示す平面図及び側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る関節装置の側断面図である。
【図4】上記関節装置を構成するアクチュエータの全体斜視図である。
【図5】上記アクチュエータの動作原理を説明する当該アクチュエータの概略斜視図である。
【図6】上記アクチュエータの動作原理を説明する図であり、(a)及び(b)はアクチュエータの概略側面図、(c)は概略平面図である。
【図7】(a)は図3の関節装置の平面図であり、(b)は当該関節装置を構成する電磁アクチュエータの平面図である。
【図8】上記関節装置の一作用を説明する側断面図である。
【図9】上記関節装置の可動子の傾動角と電磁トルクとの関係を説明する図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る関節装置の側断面図である。
【図11】上記関節装置の支持機構を構成する板バネ部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る搬送装置を示す斜視図である。図示する搬送装置100は、支軸部Pと、多関節アームLとを備える。多関節アームLは、第1のアーム部材L1と、第2のアーム部材L2と、第3のアーム部材L3とを有する。第1及び第2のアーム部材L2は、リンクレバー型のアームで構成されており、第3のアーム部材L3は、搬送対象物である基板Wを保持するハンド型のアームで構成されている。基板Wは、例えば、半導体ウェハ、ディスプレイ用のガラス基板等である。搬送装置100は、例えば、基板成膜ユニットの一部として、真空処理室内に配置されてもよい。
【0032】
図2(a)は搬送装置100の平面図、図2(b)は搬送装置100の側面図である。支軸部Pと第1のアーム部材L1は第1の駆動部D1により接続され、第1のアーム部材L1と第2のアーム部材L3は第2の駆動部D2により接続され、第2のアーム部材L3と第3のアーム部材L3は第3の駆動部D3により接続されている。それぞれの接続は、それぞれの部材が相対的に移動(旋回)可能な関節部を構成している。
【0033】
支軸部Pは図示しない基台に設置され、各アーム部材L1〜L3を略水平な姿勢で支持する。支軸部Pは、また、鉛直方向(z軸方向)に昇降する機構を備えていてもよい。
【0034】
第1の駆動部D1は、支軸部Pの頂部と第1のアーム部材L1の一端との間を接続し、支軸部Pに対して第1のアーム部材L1をxy平面内で旋回させる駆動軸を備えている。第2の駆動部D2は、第1のアーム部材L1の他端と第2のアーム部材L2の一端との間を接続し、第1のアーム部材L1に対して第2のアーム部材L2をxy平面で旋回させる駆動軸を備えている。第3の駆動部D3は、第2のアーム部材L2の他端と第3のアーム部材L3の一端との間を接続する。そして、後述するように、第3の駆動部D3は、第2のアーム部材L2に対して第3のアーム部材L3をxy平面で旋回させる機能と、xy平面に平行な軸(以下、水平軸ともいう。)のまわりに第3のアーム部材L3を傾動させる機能とを備えた電磁アクチュエータで構成されている。
【0035】
なお、第1の駆動部D1は、第1のアーム部材L1を旋回させる第1の駆動源と第2のアーム部材L2を旋回させる第2の駆動源を備えていてもよい。この場合、第2の駆動部D2は、第2の駆動軸の駆動力をベルト、歯車あるいはリンク機構を介して伝達される軸(プーリ)で構成することができる。
【0036】
第3のアーム部材L3は、基板Wを摩擦力で保持する保持層を有していてもよい。これ以外にも、第3のアーム部材L3は、メカニカルチャック機構、静電チャック機構、バキュームチャック機構などの基板保持機構を備えていてもよい。
【0037】
搬送装置100は、第1〜第3の駆動部D1〜D3をそれぞれ独立あるいは同期して駆動することにより、多関節アームLをxy平面内で旋回させたり伸縮させたりすることが可能である。これにより、任意の位置において第3のアーム部材L3で基板Wを支持したり、他の任意の位置へ基板Wを搬送したりすることが可能とされる。また、後述するように、第3の駆動部D3は、第3のアーム部材L3を水平軸のまわりに傾動させることが可能とされる。
【0038】
次に、第3の駆動部D3の構成について説明する。第3の駆動部D3は、第2のアーム部材L2と第3のアーム部材L3との間を接続する関節装置として構成される。
【0039】
図3は駆動部D3の詳細を示す側断面図である。第3の駆動部D3は、第3のアーム部材L3を弾性的に支持する支持機構D3Sと、第3のアーム部材L3を回転または傾動させるアクチュエータD3Mを備えている。
【0040】
図4は、アクチュエータD3Mの要部の斜視図である。アクチュエータD3Mは、可動子1と固定子2とを備える。可動子1は、xy平面内の円周方向に沿って4つの分割された磁性体11と、隣接する2つの磁性体11の各間に等ピッチ(90°間隔)で挿入された4つの永久磁石12(例えば、残留磁束密度Br=1.4T)とを有している。すなわち、可動子1は、円周方向に2つの磁極対を有する。永久磁石12は、矢印dの向きに着磁されている。
【0041】
固定子2は、可動子1を駆動するための複数の電磁石3を有する。これら電磁石3は、コア32及びこのコア32に巻かれたコイル31で構成されている。電磁石3は、上段及び下段にそれぞれ6個ずつ設けられている。上段の複数の電磁石3と、下段の複数の電磁石3とは、可動子1の外周側に向けて突出するように、円周形状である固定子2の外枠部21A、21Bの内周面側にそれぞれ等ピッチ(60°間隔)で取り付けられている。上段の複数の電磁石3と、下段の複数の電磁石3とは、z軸方向で対称位置となるように、それぞれ対応するように配置されている。外枠部21A、21Bは、共通の固定子ケース20に収容されており、互いの相対位置が規定されている。
【0042】
コア32の端部である磁極321の先端面は、可動子1の外周面と対向している。可動子1と固定子2との対向面は球面にそれぞれカットされ、所定のギャップ(例えば、0.5mm)を有するように支持されている。
【0043】
各コイル31に供給される電流は独立して制御することが可能であり、12個の磁極321のそれぞれにおける励磁量も独立に制御することが可能である。本実施形態のアクチュエータD3Mは、3相(U,V,W)の駆動電流で駆動されるコイル31の組が、4組構成されている。何れのコイルが何れの相で駆動されるかは任意に設定可能である。磁極321の数も上記の例に限られず、アクチュエータの大きさ、必要とする回転トルク等に応じて適宜設定することが可能である。
【0044】
アクチュエータD3Mは、固定子2が第2のアーム部材L2に、可動子1が第3のアーム部材L3に、上記z軸が鉛直方向となるように配置され、第3のアーム部材L3を、支持機構D3Sを介して、第2のアーム部材L2に対して回転及び傾動可能に接続している。
【0045】
次に、このアクチュエータD3Mの動作原理について図5及び図6を参照して説明する。図5は、アクチュエータD3Mの動作原理を説明するための斜視図で、電磁石3のコイル31の図示は省略されている。
【0046】
まず、x軸周りの回転運動について動作原理を説明する。図6(a)は、図5で示したx軸に垂直な断面、すなわち断面Aを表している。ここで、断面A内には4つの磁極321が存在している。また、これら4つの磁極321に対向する磁性体11は、永久磁石12の着磁方向により、S極の磁性を示している。
【0047】
今、図6(a)で示した磁極が現れるようにコイル31が励磁されると、可動子1は図中の矢印方向に電磁トルクを得て傾動することができる。また、コイル31の電流を反転させると、可動子1は図6(a)とは反対方向に電磁トルクを得ることになる。x軸周りの回転におけるトルク量は、断面A内に存在するコア32に巻かれたコイル31への電流量を調整することによって制御可能である。
【0048】
なお、可動子1の図中矢印方向への傾動量が所定以上に大きくなると、可動子1に作用する電磁トルクが弱まることで、動作が不安定になる。この所定以上の可動子1の回転角範囲を、以下、「動作不安定領域」ともいう。これに対して、可動子1の傾動量が上記所定未満の回転角範囲を、可動子1の「動作安定領域」とする。
【0049】
次に、y軸周りの回転運動について、図6(b)をもとに説明する。図6(b)は断面Aをz軸周りに60°回転させた断面、すなわち断面Bまたは断面Cを示している。ここで、断面B及び断面Cにおいても、その断面内には4つの磁極321が存在している。また、これら4つの磁極321に対向する磁性体11は、永久磁石12の着磁方向により、N極の磁性を示している。
【0050】
今、図6(b)で示した磁極が現れるようにコイル31が励磁されると、可動子1は図中の矢印方向に電磁トルクを得て傾動することができる。また、コイル31の電流を反転させると、可動子1は図6(b)とは反対方向にトルクを得ることになる。すなわち、断面B及び断面Cの両方において、同様の作用によって同じ大きさのトルクを作用させれば、可動子に働く合力はy軸周りの回転トルクとなる。y軸周りの回転におけるトルク量は、断面BまたはC内に存在するコア32に巻かれたコイル31への電流量を調整することによって制御可能である。なお、この場合にも、上述したような可動子1の「動作不安定領域」が存在する。
【0051】
最後に、z軸周りの回転について、図6(c)をもとに動作原理を説明する。図6(c)はz軸に垂直な断面図を示している。今、図6(c)で示した磁極が現れるようコイル31が励磁されると、可動子1は図中の矢印方向に電磁トルクを得ることができる。z軸に沿って配置された2つの固定子についてそれぞれ同じ磁極を発生させれば、z軸以外の軸には電磁トルクは発生しないことになる。また、コイル31の電流を反転させると、可動子1は反対方向に電磁トルクを得ることになる。z軸周りの回転におけるトルク量は、コア32に巻かれたコイル31への電流量を調整することによって制御可能である。
【0052】
アクチュエータD3Mのこれらの駆動は、搬送装置100の図示しない制御ユニットによって制御される。この制御ユニットは、他の駆動部D1、D2等の駆動制御系と同一ユニットで構成することができる。
【0053】
さらに、本実施形態の搬送装置100は、アクチュエータD3Mの可動子1を上述のような回転動作及び傾動動作可能に支持する支持軸4を備えている。この支持軸4は、z軸方向に延在する固定軸であり、第2のアーム部材L2に連結されている。支持軸4は、その上端に、可動子1の中心部に取り付けられた球面ベアリング41を有している。これにより、可動子1は、安定かつ円滑に回転され、あるいは傾動される。
【0054】
続いて、第3の駆動部D3を構成する支持機構D3Sについて説明する。
【0055】
図7(a)は、図3に示した駆動部D3の平面図、図7(b)は、図7(a)において支持機構D3Sを取り除いたときの平面図である。支持機構D3Sは、アクチュエータD3Mと第3のアーム部材L3との間を弾性的に支持するためのものである。支持機構D3Sは、上部支持ユニット5(第1の支持部材)と、コイルスプリング61と、下部支持ユニット7(第2の支持部材)とを備える。
【0056】
上部支持ユニット5は、駆動軸8(出力軸)を回転自在に支持する。駆動軸8は、その軸芯位置が可動子1の中心に配置されている。駆動軸8の下端部は、アクチュエータD3Mの可動子1と一体的に接合されたフランジ部81に固定されており、駆動軸8の上端部は、第3のアーム部材L3を支持する台座部82に固定されている。上部支持ユニット5は、コイルスプリング61の上端を支持する環状部材51と、駆動軸8の外周面に固定された筒状部材53と、環状部材51と筒状部材53との間に配置されたベアリング部材52とを有する。
【0057】
下部支持ユニット7は、コイルスプリング61の下端を支持する円板部材71と、この円板部材71をアクチュエータD3Mの固定子2に連結する一対の連結部材72とを有する。円板部材71は、その中心部に駆動軸6が挿通される貫通孔711を有する。貫通孔711は、駆動軸8の軸径よりも十分に大きな孔径を有しており、所定角度範囲にわたる駆動軸8の傾動を許容する。連結部材72は、図7(a)、(b)に示すように、駆動軸8を挟むように互いに対向して、固定子2の外枠部21A上にそれぞれ固定されている。円板部材71と連結部材72は、ボルト等の適宜の締結具を用いて一体化されている。
【0058】
コイルスプリング61は、上部支持ユニット5と下部支持ユニット7との間に駆動軸8と同心的に配置されている。コイルスプリング61が駆動軸8と同心的に配置されることによって、可動子1の傾動方向に関係無く、等方的な弾性復元力を得ることができる。
【0059】
コイルスプリング61は、予め圧縮された状態で配置される。コイルスプリング61への予付加荷重の大きさは、例えば、アクチュエータD3Mの電磁トルクによって駆動軸8の傾動動作を確保できる圧縮荷重に設定される。さらに、アーム部材L3に作用し得る比較的大きな外力に対して、可動子1が上記「動作安定領域」で可動子1の回転量を規制できる荷重に設定される。
【0060】
なお、コイルスプリング61は、予負荷状態で配置される例に限られない。また、コイルスプリング61に代えて、他の弾性部材を採用することも可能である。例えば、筒状のゴム部材や合成樹脂製のコイル成形体などが適用可能である。
【0061】
以上のように構成される本実施形態の搬送装置100において、第3のアーム部材L3は、第3の駆動部D3よって、駆動軸8のまわりに電磁トルクを受けて回転する。また、第3のアーム部材L3は、アクチュエータD3Mによって、駆動軸8と直交する軸(x軸、y軸あるいはそれらの合成軸)のまわりに電磁トルクを受けて傾動する。これにより、搬送装置100は、第3のアーム部材L3によって支持した基板Wを駆動軸8のまわりへの旋回動作と、xy平面に対するティルト動作が可能となる。
【0062】
ここで、上記構成を有するアクチュエータD3Mにおいては、x軸及びy軸のまわりへの可動子1の回転範囲に制限があるため、この制限を超えて上記動作不安定領域にまで可動子1が回転された場合、可動子1が初期位置へ復帰できなくなるおそれがある。
【0063】
特に本実施形態では、被搬送体である基板Wの自重や、アーム部材L3に作用する過剰な外力に起因するモーメントを受けることで、可動子1は、x軸、y軸またはこれらの合成軸のまわりに機械的な回転トルクが作用する。この回転トルクによって可動子1が動作安定領域を超えて動作不安定領域にまで回転した場合、固定子2による電磁トルクでは可動子1が復帰位置へ復帰できなくなるおそれがある。この場合、当該電磁アクチュエータによる関節部としての所期の機能が果たせなくなり、搬送ロボットの動作不良を招く。
【0064】
そこで、本実施形態の搬送装置100は、支持機構D3Sを備えている。支持機構D3Sは、第2のアーム部材L2に対する第3のアーム部材L3の傾動トルクを弾性的に支持する。したがって、支持機構D3Sによる弾性支持力を適宜の値に設定することによって、駆動軸8に作用する機械的な回転トルクに起因する、可動子1の固定子2に対する回転動作を規制あるいは制限することが可能となる。また、当該回転トルクの大きさに応じて、可動子の回転角度を制御することが可能となる。
【0065】
図8は、第3の駆動部D3が、第3のアーム部材L3に対して矢印で示す方向に比較的大きな負荷Pを受けたときの様子を示す要部側断面図である。アクチュエータD3Mの可動子1は、駆動軸8を介して負荷Pに起因する機械的トルク(モーメント)を受ける。これにより、固定子2が可動子1に対してx軸まわりに電磁トルクを付与していない場合でも、コイルスプリング1の弾性力に抗して、可動子1はy軸方向に傾動する場合がある。可動子1の傾動量は、負荷Pの大きさ、駆動軸8の長さ、可動子1の傾動中心と負荷Pの作用点との間の距離などによって定まる。このとき、コイルスプリング61は、上部支持ユニット5による圧縮荷重を打ち消す方向に復元力を発生させ、可動子1の所定以上の傾動を規制する。その結果、可動子1に作用する機械的トルクとコイルスプリング61の弾性力とがつり合う位置で、可動子1の傾動が停止される。図8は、駆動軸8を基準として角度θ傾いた位置で可動子1が停止した状態を示している。
【0066】
上述のように、支持機構D3Sは、駆動軸8及び可動子1の傾動を規制する機能を有する。したがって、本実施形態によれば、アーム部材L3に比較的大きな負荷Pが作用した場合においても、可動子1の大きな傾動動作を規制できる。これにより、可動子1が「動作不安定領域」にまで傾動することを回避可能となり、固定子2からの所要の電磁トルクを発生させることで、可動子1を当初の水平位置まで安定に復帰させることができるようになる。
【0067】
また、本実施形態によれば、アーム部材L3に作用する負荷Pとコイルスプリング61の弾性力とのつり合い位置によって可動子1の傾動角が決まるため、可動子1の傾動角がわかれば固定子1(電磁石3)に対する電流制御で元の水平位置へ可動子1を安定に復帰させることが可能となる(図9)。
【0068】
図9は、上記作用を説明する図である。図9(a)に示すように、ばねで支持された駆動軸を上記アクチュエータD3Mによって駆動制御する場合を考える。図9(b)は、アームに対して鉛直上向き(+方向)及び下向き(−方向)に荷重Pを作用させたときに、アームの傾斜角に対応する上記ばねの弾性力と、当該荷重Pを相殺するのに必要な電磁石への通電量との関係を示している。図9(b)から明らかなように、アームを何れの方向に負荷を作用させた場合でも、ばねの復元力が発生する。
【0069】
したがって、アームの傾斜角や駆動軸の傾斜角、可動子の傾動角、ばねの圧縮力などを電気的、機械的あるいは光学的に検出することで、アームを水平位置へ復帰させるのに必要なアクチュエータによる電磁トルクの大きさ、すなわちコイルへ供給する電流値(i1、i2、i3、・・・[A])を一義的に定めることができる。上記検出をするためのセンサは、アクチュエータD3Mに内蔵されていてもよいし、アクチュエータD3Mの外部に配置されていてもよい。
【0070】
一方、上記アームを水平位置から任意の傾斜角で傾斜させる場合にも、その傾斜角に応じた大きさの電流を電磁石へ供給することによって、安定に所望の傾斜角でアームを傾斜させることが可能となる。さらに、可動子1の傾動角とコイル電流値との関係を示すマッピングを予め用意することにより、オープンループ制御によるアームの傾斜角度制御が実現可能となる。これにより、アクチュエータの制御システムの簡素化、制御の容易化が図れるようになる。
【0071】
(第2の実施形態)
図10は本発明の第2の実施形態に係る搬送装置における第3の駆動部D3’を示している。図において、上述の第1の実施形態と対応する部分については同一の符号を付している。駆動部D3’は、アクチュエータD3M’と保持機構D3S’とを備えている。
【0072】
本実施形態のアクチュエータD3M’は、可動子1を構成する個々の永久磁石及び磁性材料が、それぞれ駆動軸8の延在方向(z軸方向)に分割された下段側の第1の可動子部1Aと上段側の可動子部1Bとで構成されている。これら2つの可動子部1A、1Bの間には、所定の間隙1sが形成されている。
【0073】
駆動軸8は、可動子1の中心部に固定された固定軸部83を介して可動子1と一体化されている。固定軸部83には軸受け部材42のインナーレース部421と接合されている。第2の可動子部1Bは、軸受け部材42のインナーレース部421に支持されている。第1の可動子部1Aは、固定軸部83の周囲に結合された回転ディスク92の上に設置されている。
【0074】
保持機構D3S’は、固定子2と駆動軸8の固定軸部83との間に架け渡された板バネ部材62を備えている。図11は、保持機構D3S’の要部の平面図である。板バネ部材62は、固定子2の外枠部21A、21B(第1、第2の固定子部)の間に固定される外周端部621(第1の端部)と、軸受け部材42のアウターレース部422に固定される内周端部622(第2の端部)とを有する。
【0075】
板バネ部材62は、第1の可動子部1Aと第2の可動子部1Bとの間の間隙1sに挿通されることで軸受け部材42のアウターレース部に固定されている。可動子部1A、1Bは、板ばね部材62の両主面にそれぞれ隙間を介して対向している。これにより、板バネ部材62に対する可動子1の回転動作が確保される。内周端部622とアウターレース部422は、連結部材93を介して連結されている。連結部材93は、回転ディスク92の回転量を磁気的あるいは光学的に検出するセンサ91を支持する。これらセンサ91、回転ディスク92及び連結部材93は、可動子1の回転角を検出する角度検出機構9を構成する。
【0076】
板バネ部材62は円板形状を有しており、その面内部に複数の円弧状の開口あるいはスリット623が形成されている。これらのスリット623は円周方向に間欠的に形成されており、その境界部には内周側領域と外周側領域とを連結する連結部624x、624yがそれぞれ設けられている。連結部624xは、板バネ部材62の内周側をその外周側に対してx軸まわりに弾性変形を可能とし、連結部624yは、板バネ部材62の内周側をその外周側に対してy軸まわりに弾性変形可能とする。これにより、駆動軸8及び可動子1は、固定子2に対してx軸まわり、y軸まわり、及びそれらの合成軸のまわりに傾動可能である。
【0077】
以上のように構成される本実施形態の駆動部D3’において、可動子1は、固定子2からの電磁トルクを受けてz軸まわりの回転動作と、x、y軸のまわりの傾動動作が可能である。可動子1はz軸方向に分割された第1、第2の可動子部1A、1Bで構成され、それらの間に板バネ部材62が隙間を介して配置されているため、板バネ部材62によって可動子1のz軸まわりの回転動作が阻害されることはない。また、可動子1の傾動時、板バネ部材62は、第1、第2の可動子部1A,1Bと接触してもよいが、固定子2(電磁石3)とは接触しないように、上下各固定子の電磁石3と板バネ部材62との距離が規定される。
【0078】
本実施形態において、駆動軸8及び可動子1に作用する水平軸まわりの機械的トルクは、板バネ部材62の弾性力によって支持される。したがって、上述の第1の実施形態と同様に、当該機械的トルクによる可動子1の回転量を板バネ部材62の弾性復元力によって規制し、動作不安定領域に至る可動子1の傾動動作を回避することができる。これにより、駆動部D3’の安定した駆動制御を確保することができる。板バネ部材62の弾性力は、バネ材の厚みスリット623の幅、長さ、本数、位置などによって任意に調整することが可能である。
【0079】
また、本実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様に、保持機構D3S’の弾性力を利用した可動子1の傾動角度制御を安定かつ容易に行うことができる。可動子1の傾動角度制御はオープンループ制御で行ってもよいし、フィードバック制御で行ってもよい。後者の場合、角度検出機構9を可動子1の傾動角センサとして兼用させることができる。
【0080】
本実施形態において、支持機構D3S’を構成する板バネ部材62は、円板状に限られない。例えば、上記板バネ部材を、駆動軸8側から外周の固定子2側に向かって放射状に延びる複数の短冊状の板バネ部材を用いることも可能である。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0082】
例えば、以上の実施形態では、本発明に係る電磁アクチュエータ及び関節装置を搬送装置100の第3の駆動部D3に適用した例について説明したが、第1、第2の駆動部D1、D2にも同様な構造を適用することも可能である。
【0083】
また、搬送ロボットの関節部に限られず、例えば溶接ロボット、モニタ用カメラなど、回転及び傾動動作を伴う各種ロボットの関節装置及びその駆動源に、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 可動子
1A、1B 可動子部
2 固定子
3 電磁石
4 支持軸
5 上部支持ユニット(第1の支持部材に相当)
7 下部支持ユニット(第2の支持部材に相当)
8 駆動軸(出力軸に相当)
11 磁性体
12 永久磁石
31 コイル
32 コア
41 球面ベアリング
61 コイルスプリング
62 板バネ部材
100 搬送装置
D1〜D3 駆動部
L1〜L3 アーム部
D3M、D3M’ アクチュエータ
D3S、D3S’ 支持機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、多自由度駆動を可能とする電磁アクチュエータ及び関節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多自由度駆動を可能とするアクチュエータとして、三自由度球面電磁アクチュエータが知られている。例えば、非特許文献1には、球面全方位の駆動が可能であり、ロボットの肩関節や眼球の駆動に応用が期待される三自由度球面電磁アクチュエータが開示されている。
【0003】
上記電磁アクチュエータは、可動子と、この可動子を3軸(x軸、y軸、z軸)方向のまわりに回転トルクを発生させる固定子を備えている。可動子は、xy平面に平行な周方向に沿って分割された4つの磁性体と、これら磁性体の間に90°おきに挿入された4つの永久磁石とを含む。固定子は、可動子の外周側に所定のエアギャップを介して配置されており、z軸方向に沿って上下二つに分割されている。個々の固定子はそれぞれ、6個の磁極をもつ同一材質の磁性体で形成されており、各磁極の極性を制御することで、可動子をz軸のまわりに360°、x軸及びy軸のまわりに所定角度範囲にわたって回転させることが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電気学会研究会資料LD-08-46「3自由度球面電磁アクチュエータの研究」加嶋俊大、山本匡史、平田勝弘
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成を有する電磁アクチュエータにおいては、x軸及びy軸のまわりへの可動子の回転範囲に制限があるため、この制限を超えて可動子を回転させた場合、可動子が初期位置へ復帰できなくなるという不都合がある。
【0006】
特に、上記電磁アクチュエータを搬送ロボット等の関節部に適用した場合、被搬送体の自重やアームに加わる外力に起因するモーメントを受けることで、可動子に対してx軸、y軸またはこれらの合成軸のまわりに機械的な回転トルクが作用する。この回転トルクによって可動子が所定角度範囲を超えて回転した場合、固定子による電磁トルクでは可動子が復帰位置へ復帰できなくなるおそれがある。この場合、当該電磁アクチュエータによる関節部としての所期の機能が果たせなくなり、搬送ロボットの動作不良を招く。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、機械的な回転トルクに起因する可動子の回転動作を規制することができる電磁アクチュエータ及び関節装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態に係る電磁アクチュエータは、可動子と、固定子と、支持機構とを具備する。
【0009】
上記可動子は、出力軸を有する。上記固定子は、上記可動子に対して、上記出力軸を回転中心とする第1の電磁トルクと、上記出力軸と直交する軸を回転中心とする第2の電磁トルクを発生させる。上記支持機構は、上記出力軸に作用する、上記出力軸と直交する軸のまわりへの回転トルクを弾性的に支持する。
【0010】
出力軸は、第1の電磁トルクによって当該出力軸のまわりに回転し、第2の電磁トルクによって当該出力軸と直交する軸のまわりに回転力を受けて傾動する。支持機構は、出力軸に作用する上記回転トルクを弾性的に支持する。したがって、支持機構の弾性力を適宜の値に設定することによって、出力軸に作用する機械的な回転トルクに起因する、可動子の固定子に対する傾動動作を規制あるいは制限することが可能となる。また、当該回転トルクの大きさに応じて、可動子の傾動角度を制御することが可能となる。なお、出力軸は可動子と一体に形成されていてもよいし、可動子と別部材で構成されていてもよい。
【0011】
さらに、支持機構は、出力軸に作用する機械的な回転トルクだけでなく、固定子との間の磁気的相互作用にて発生する上記第2の電磁トルクをも支持する。これにより、この第2の電磁トルクと支持機構の弾性力との間の力のつり合いを利用して、可動子を任意の傾動角度位置に位置決めすることが可能となる。また、支持機構の弾性力に基づいて、当該可動子の任意の傾動角度位置への位置決めをオープンループ制御で実現することができる。
【0012】
上記支持機構は、第1の支持部材と、第2の支持部材と、コイルスプリングとを有していてもよい。上記第1の支持部材は、上記出力軸を軸支する。上記第2の支持部材は、上記固定子に取り付けられる。上記コイルスプリングは、上記第1の支持部材と上記第2の支持部材との間に上記出力軸と同心的に配置される。
【0013】
出力軸がそれと直交する軸方向のまわりに回転トルクを受けたとき、第1の支持部材は出力軸と一体となって傾動する。この第1の支持部材の傾動によって、コイルスプリングに圧縮力が付加される。そこで、コイルスプリングの弾性力を適宜の値に設定することで、出力軸の傾動量が調整可能となる。また、コイルスプリングを予め圧縮された状態にしておくことで、当該コイルスプリングの圧縮力に相当する回転トルク以下の外力に対して、出力軸の傾動を防止することが可能となる。
【0014】
上記電磁アクチュエータは、上記可動子を支持する球面ベアリングを含む支持軸をさらに具備してもよい。
【0015】
これにより、可動子の三次元的な回転動作を安定かつ円滑に支持することが可能となる。
【0016】
一方、上記支持機構は、軸受け部と、板バネとを有していてもよい。上記軸受け部は、上記出力軸を回転自在に支持する。上記板バネは、上記固定子と前記軸受け部との間に架け渡される。
【0017】
出力軸がそれと直交する軸方向のまわりに回転トルクを受けることで傾動した際、上記板バネが変形することで、出力軸を初期位置へ復帰させる弾性力が出現する。この板バネの弾性力を適宜の値に設定することで、出力軸の傾動量が調整可能となる。また、当該板バネの変形に必要な機械力に相当する回転トルク以下の外力に対して、出力軸の傾動を防止することが可能となる。
【0018】
上記構成の支持機構において、可動子は、上記出力軸の延在方向に沿って分割され、上記板バネの両主面と隙間を介して対向する第1及び第2の可動子部で構成することができる。この場合、上記固定子は、上記出力軸の延在方向に沿って分割された第1及び第2の固定子部で構成することができる。板バネは、上記第1及び第2の固定子部の間に固定される第1の端部と、上記軸受け部に固定される第2の端部とを有する構成とすることができる。
【0019】
これにより、支持機構の構成を複雑化することなく、出力軸と直交する軸まわりへの可動子の回転規制を実現することが可能となる。
【0020】
上記電磁アクチュエータは、上記出力軸に取り付けられたアーム部材をさらに具備してもよい。
【0021】
これにより、例えば、被搬送体を目的とする位置へ搬送するための搬送ロボットを構成することが可能となる。また、アーム部材の自重やアーム部材に作用する負荷に起因する、可動子に対する機械的な回転トルクを上記支持機構によって弾性的に支持することが可能となる。
【0022】
ここで、上記可動子は、周方向に極性を交互に異ならせて磁化された複数の磁性体で構成することができる。また、固定子は、第1の固定子部と、第2の固定子部とで構成することができる。上記第1の固定子部は、上記可動子の外周側に向かって突出する複数の第1のコアと、上記複数の第1のコアにそれぞれ巻回された第1の電磁コイルとを含む。上記第2の固定子部は、上記可動子の外周側に向かって突出する複数の第2のコアと、上記複数の第2のコアにそれぞれ巻回された第2の電磁コイルとを含み、上記第1の固定子部に積層される。
【0023】
この構成により、可動子に対して出力軸を回転中心とする第1の電磁トルクと、出力軸と直交する軸を回転中心とする第2の電磁トルクを付与することが可能となり、可動子の多自由度駆動が可能となる。
【0024】
本発明の一形態に係る関節装置は、第1の部材と、可動子と、固定子と、第2の部材と、支持機構とを具備する。
【0025】
上記可動子は、上記第1の部材に連結される出力軸を有する。上記固定子は、上記第2の部材に固定され、上記可動子に対して、上記出力軸を回転中心とする第1の電磁トルクと、上記出力軸と直交する軸を回転中心とする第2の電磁トルクを発生させる。上記支持機構は、上記出力軸と直交する軸のまわりへの回転トルクを弾性的に支持する。
【0026】
第1の部材は、第1の電磁トルクによって、出力軸のまわりに回転される。また、第1の部材は、第2の電磁トルクによって、出力軸と直交する軸のまわりに回転力を受けて傾動する。支持機構は、第2の部材に対する第1の部材の傾動トルクを弾性的に支持する。したがって、支持機構の弾性力を適宜の値に設定することによって、出力軸に作用する機械的な回転トルクに起因する、可動子の固定子に対する傾動動作を規制あるいは制限することが可能となる。また、当該回転トルクの大きさに応じて、可動子の傾動角度を制御することが可能となる。
【0027】
上記第1、第2の部材は、当該関節装置が適用される各種ロボットのアーム部材やリンクレバー等が含まれ、その形状や長さは特に限定されない。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、出力軸に作用する機械的な回転トルクに起因する、可動子の固定子に対する回転動作を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る関節装置が適用される搬送ロボットの概略構成図である。
【図2】図1の搬送ロボットの一動作例を示す平面図及び側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る関節装置の側断面図である。
【図4】上記関節装置を構成するアクチュエータの全体斜視図である。
【図5】上記アクチュエータの動作原理を説明する当該アクチュエータの概略斜視図である。
【図6】上記アクチュエータの動作原理を説明する図であり、(a)及び(b)はアクチュエータの概略側面図、(c)は概略平面図である。
【図7】(a)は図3の関節装置の平面図であり、(b)は当該関節装置を構成する電磁アクチュエータの平面図である。
【図8】上記関節装置の一作用を説明する側断面図である。
【図9】上記関節装置の可動子の傾動角と電磁トルクとの関係を説明する図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る関節装置の側断面図である。
【図11】上記関節装置の支持機構を構成する板バネ部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る搬送装置を示す斜視図である。図示する搬送装置100は、支軸部Pと、多関節アームLとを備える。多関節アームLは、第1のアーム部材L1と、第2のアーム部材L2と、第3のアーム部材L3とを有する。第1及び第2のアーム部材L2は、リンクレバー型のアームで構成されており、第3のアーム部材L3は、搬送対象物である基板Wを保持するハンド型のアームで構成されている。基板Wは、例えば、半導体ウェハ、ディスプレイ用のガラス基板等である。搬送装置100は、例えば、基板成膜ユニットの一部として、真空処理室内に配置されてもよい。
【0032】
図2(a)は搬送装置100の平面図、図2(b)は搬送装置100の側面図である。支軸部Pと第1のアーム部材L1は第1の駆動部D1により接続され、第1のアーム部材L1と第2のアーム部材L3は第2の駆動部D2により接続され、第2のアーム部材L3と第3のアーム部材L3は第3の駆動部D3により接続されている。それぞれの接続は、それぞれの部材が相対的に移動(旋回)可能な関節部を構成している。
【0033】
支軸部Pは図示しない基台に設置され、各アーム部材L1〜L3を略水平な姿勢で支持する。支軸部Pは、また、鉛直方向(z軸方向)に昇降する機構を備えていてもよい。
【0034】
第1の駆動部D1は、支軸部Pの頂部と第1のアーム部材L1の一端との間を接続し、支軸部Pに対して第1のアーム部材L1をxy平面内で旋回させる駆動軸を備えている。第2の駆動部D2は、第1のアーム部材L1の他端と第2のアーム部材L2の一端との間を接続し、第1のアーム部材L1に対して第2のアーム部材L2をxy平面で旋回させる駆動軸を備えている。第3の駆動部D3は、第2のアーム部材L2の他端と第3のアーム部材L3の一端との間を接続する。そして、後述するように、第3の駆動部D3は、第2のアーム部材L2に対して第3のアーム部材L3をxy平面で旋回させる機能と、xy平面に平行な軸(以下、水平軸ともいう。)のまわりに第3のアーム部材L3を傾動させる機能とを備えた電磁アクチュエータで構成されている。
【0035】
なお、第1の駆動部D1は、第1のアーム部材L1を旋回させる第1の駆動源と第2のアーム部材L2を旋回させる第2の駆動源を備えていてもよい。この場合、第2の駆動部D2は、第2の駆動軸の駆動力をベルト、歯車あるいはリンク機構を介して伝達される軸(プーリ)で構成することができる。
【0036】
第3のアーム部材L3は、基板Wを摩擦力で保持する保持層を有していてもよい。これ以外にも、第3のアーム部材L3は、メカニカルチャック機構、静電チャック機構、バキュームチャック機構などの基板保持機構を備えていてもよい。
【0037】
搬送装置100は、第1〜第3の駆動部D1〜D3をそれぞれ独立あるいは同期して駆動することにより、多関節アームLをxy平面内で旋回させたり伸縮させたりすることが可能である。これにより、任意の位置において第3のアーム部材L3で基板Wを支持したり、他の任意の位置へ基板Wを搬送したりすることが可能とされる。また、後述するように、第3の駆動部D3は、第3のアーム部材L3を水平軸のまわりに傾動させることが可能とされる。
【0038】
次に、第3の駆動部D3の構成について説明する。第3の駆動部D3は、第2のアーム部材L2と第3のアーム部材L3との間を接続する関節装置として構成される。
【0039】
図3は駆動部D3の詳細を示す側断面図である。第3の駆動部D3は、第3のアーム部材L3を弾性的に支持する支持機構D3Sと、第3のアーム部材L3を回転または傾動させるアクチュエータD3Mを備えている。
【0040】
図4は、アクチュエータD3Mの要部の斜視図である。アクチュエータD3Mは、可動子1と固定子2とを備える。可動子1は、xy平面内の円周方向に沿って4つの分割された磁性体11と、隣接する2つの磁性体11の各間に等ピッチ(90°間隔)で挿入された4つの永久磁石12(例えば、残留磁束密度Br=1.4T)とを有している。すなわち、可動子1は、円周方向に2つの磁極対を有する。永久磁石12は、矢印dの向きに着磁されている。
【0041】
固定子2は、可動子1を駆動するための複数の電磁石3を有する。これら電磁石3は、コア32及びこのコア32に巻かれたコイル31で構成されている。電磁石3は、上段及び下段にそれぞれ6個ずつ設けられている。上段の複数の電磁石3と、下段の複数の電磁石3とは、可動子1の外周側に向けて突出するように、円周形状である固定子2の外枠部21A、21Bの内周面側にそれぞれ等ピッチ(60°間隔)で取り付けられている。上段の複数の電磁石3と、下段の複数の電磁石3とは、z軸方向で対称位置となるように、それぞれ対応するように配置されている。外枠部21A、21Bは、共通の固定子ケース20に収容されており、互いの相対位置が規定されている。
【0042】
コア32の端部である磁極321の先端面は、可動子1の外周面と対向している。可動子1と固定子2との対向面は球面にそれぞれカットされ、所定のギャップ(例えば、0.5mm)を有するように支持されている。
【0043】
各コイル31に供給される電流は独立して制御することが可能であり、12個の磁極321のそれぞれにおける励磁量も独立に制御することが可能である。本実施形態のアクチュエータD3Mは、3相(U,V,W)の駆動電流で駆動されるコイル31の組が、4組構成されている。何れのコイルが何れの相で駆動されるかは任意に設定可能である。磁極321の数も上記の例に限られず、アクチュエータの大きさ、必要とする回転トルク等に応じて適宜設定することが可能である。
【0044】
アクチュエータD3Mは、固定子2が第2のアーム部材L2に、可動子1が第3のアーム部材L3に、上記z軸が鉛直方向となるように配置され、第3のアーム部材L3を、支持機構D3Sを介して、第2のアーム部材L2に対して回転及び傾動可能に接続している。
【0045】
次に、このアクチュエータD3Mの動作原理について図5及び図6を参照して説明する。図5は、アクチュエータD3Mの動作原理を説明するための斜視図で、電磁石3のコイル31の図示は省略されている。
【0046】
まず、x軸周りの回転運動について動作原理を説明する。図6(a)は、図5で示したx軸に垂直な断面、すなわち断面Aを表している。ここで、断面A内には4つの磁極321が存在している。また、これら4つの磁極321に対向する磁性体11は、永久磁石12の着磁方向により、S極の磁性を示している。
【0047】
今、図6(a)で示した磁極が現れるようにコイル31が励磁されると、可動子1は図中の矢印方向に電磁トルクを得て傾動することができる。また、コイル31の電流を反転させると、可動子1は図6(a)とは反対方向に電磁トルクを得ることになる。x軸周りの回転におけるトルク量は、断面A内に存在するコア32に巻かれたコイル31への電流量を調整することによって制御可能である。
【0048】
なお、可動子1の図中矢印方向への傾動量が所定以上に大きくなると、可動子1に作用する電磁トルクが弱まることで、動作が不安定になる。この所定以上の可動子1の回転角範囲を、以下、「動作不安定領域」ともいう。これに対して、可動子1の傾動量が上記所定未満の回転角範囲を、可動子1の「動作安定領域」とする。
【0049】
次に、y軸周りの回転運動について、図6(b)をもとに説明する。図6(b)は断面Aをz軸周りに60°回転させた断面、すなわち断面Bまたは断面Cを示している。ここで、断面B及び断面Cにおいても、その断面内には4つの磁極321が存在している。また、これら4つの磁極321に対向する磁性体11は、永久磁石12の着磁方向により、N極の磁性を示している。
【0050】
今、図6(b)で示した磁極が現れるようにコイル31が励磁されると、可動子1は図中の矢印方向に電磁トルクを得て傾動することができる。また、コイル31の電流を反転させると、可動子1は図6(b)とは反対方向にトルクを得ることになる。すなわち、断面B及び断面Cの両方において、同様の作用によって同じ大きさのトルクを作用させれば、可動子に働く合力はy軸周りの回転トルクとなる。y軸周りの回転におけるトルク量は、断面BまたはC内に存在するコア32に巻かれたコイル31への電流量を調整することによって制御可能である。なお、この場合にも、上述したような可動子1の「動作不安定領域」が存在する。
【0051】
最後に、z軸周りの回転について、図6(c)をもとに動作原理を説明する。図6(c)はz軸に垂直な断面図を示している。今、図6(c)で示した磁極が現れるようコイル31が励磁されると、可動子1は図中の矢印方向に電磁トルクを得ることができる。z軸に沿って配置された2つの固定子についてそれぞれ同じ磁極を発生させれば、z軸以外の軸には電磁トルクは発生しないことになる。また、コイル31の電流を反転させると、可動子1は反対方向に電磁トルクを得ることになる。z軸周りの回転におけるトルク量は、コア32に巻かれたコイル31への電流量を調整することによって制御可能である。
【0052】
アクチュエータD3Mのこれらの駆動は、搬送装置100の図示しない制御ユニットによって制御される。この制御ユニットは、他の駆動部D1、D2等の駆動制御系と同一ユニットで構成することができる。
【0053】
さらに、本実施形態の搬送装置100は、アクチュエータD3Mの可動子1を上述のような回転動作及び傾動動作可能に支持する支持軸4を備えている。この支持軸4は、z軸方向に延在する固定軸であり、第2のアーム部材L2に連結されている。支持軸4は、その上端に、可動子1の中心部に取り付けられた球面ベアリング41を有している。これにより、可動子1は、安定かつ円滑に回転され、あるいは傾動される。
【0054】
続いて、第3の駆動部D3を構成する支持機構D3Sについて説明する。
【0055】
図7(a)は、図3に示した駆動部D3の平面図、図7(b)は、図7(a)において支持機構D3Sを取り除いたときの平面図である。支持機構D3Sは、アクチュエータD3Mと第3のアーム部材L3との間を弾性的に支持するためのものである。支持機構D3Sは、上部支持ユニット5(第1の支持部材)と、コイルスプリング61と、下部支持ユニット7(第2の支持部材)とを備える。
【0056】
上部支持ユニット5は、駆動軸8(出力軸)を回転自在に支持する。駆動軸8は、その軸芯位置が可動子1の中心に配置されている。駆動軸8の下端部は、アクチュエータD3Mの可動子1と一体的に接合されたフランジ部81に固定されており、駆動軸8の上端部は、第3のアーム部材L3を支持する台座部82に固定されている。上部支持ユニット5は、コイルスプリング61の上端を支持する環状部材51と、駆動軸8の外周面に固定された筒状部材53と、環状部材51と筒状部材53との間に配置されたベアリング部材52とを有する。
【0057】
下部支持ユニット7は、コイルスプリング61の下端を支持する円板部材71と、この円板部材71をアクチュエータD3Mの固定子2に連結する一対の連結部材72とを有する。円板部材71は、その中心部に駆動軸6が挿通される貫通孔711を有する。貫通孔711は、駆動軸8の軸径よりも十分に大きな孔径を有しており、所定角度範囲にわたる駆動軸8の傾動を許容する。連結部材72は、図7(a)、(b)に示すように、駆動軸8を挟むように互いに対向して、固定子2の外枠部21A上にそれぞれ固定されている。円板部材71と連結部材72は、ボルト等の適宜の締結具を用いて一体化されている。
【0058】
コイルスプリング61は、上部支持ユニット5と下部支持ユニット7との間に駆動軸8と同心的に配置されている。コイルスプリング61が駆動軸8と同心的に配置されることによって、可動子1の傾動方向に関係無く、等方的な弾性復元力を得ることができる。
【0059】
コイルスプリング61は、予め圧縮された状態で配置される。コイルスプリング61への予付加荷重の大きさは、例えば、アクチュエータD3Mの電磁トルクによって駆動軸8の傾動動作を確保できる圧縮荷重に設定される。さらに、アーム部材L3に作用し得る比較的大きな外力に対して、可動子1が上記「動作安定領域」で可動子1の回転量を規制できる荷重に設定される。
【0060】
なお、コイルスプリング61は、予負荷状態で配置される例に限られない。また、コイルスプリング61に代えて、他の弾性部材を採用することも可能である。例えば、筒状のゴム部材や合成樹脂製のコイル成形体などが適用可能である。
【0061】
以上のように構成される本実施形態の搬送装置100において、第3のアーム部材L3は、第3の駆動部D3よって、駆動軸8のまわりに電磁トルクを受けて回転する。また、第3のアーム部材L3は、アクチュエータD3Mによって、駆動軸8と直交する軸(x軸、y軸あるいはそれらの合成軸)のまわりに電磁トルクを受けて傾動する。これにより、搬送装置100は、第3のアーム部材L3によって支持した基板Wを駆動軸8のまわりへの旋回動作と、xy平面に対するティルト動作が可能となる。
【0062】
ここで、上記構成を有するアクチュエータD3Mにおいては、x軸及びy軸のまわりへの可動子1の回転範囲に制限があるため、この制限を超えて上記動作不安定領域にまで可動子1が回転された場合、可動子1が初期位置へ復帰できなくなるおそれがある。
【0063】
特に本実施形態では、被搬送体である基板Wの自重や、アーム部材L3に作用する過剰な外力に起因するモーメントを受けることで、可動子1は、x軸、y軸またはこれらの合成軸のまわりに機械的な回転トルクが作用する。この回転トルクによって可動子1が動作安定領域を超えて動作不安定領域にまで回転した場合、固定子2による電磁トルクでは可動子1が復帰位置へ復帰できなくなるおそれがある。この場合、当該電磁アクチュエータによる関節部としての所期の機能が果たせなくなり、搬送ロボットの動作不良を招く。
【0064】
そこで、本実施形態の搬送装置100は、支持機構D3Sを備えている。支持機構D3Sは、第2のアーム部材L2に対する第3のアーム部材L3の傾動トルクを弾性的に支持する。したがって、支持機構D3Sによる弾性支持力を適宜の値に設定することによって、駆動軸8に作用する機械的な回転トルクに起因する、可動子1の固定子2に対する回転動作を規制あるいは制限することが可能となる。また、当該回転トルクの大きさに応じて、可動子の回転角度を制御することが可能となる。
【0065】
図8は、第3の駆動部D3が、第3のアーム部材L3に対して矢印で示す方向に比較的大きな負荷Pを受けたときの様子を示す要部側断面図である。アクチュエータD3Mの可動子1は、駆動軸8を介して負荷Pに起因する機械的トルク(モーメント)を受ける。これにより、固定子2が可動子1に対してx軸まわりに電磁トルクを付与していない場合でも、コイルスプリング1の弾性力に抗して、可動子1はy軸方向に傾動する場合がある。可動子1の傾動量は、負荷Pの大きさ、駆動軸8の長さ、可動子1の傾動中心と負荷Pの作用点との間の距離などによって定まる。このとき、コイルスプリング61は、上部支持ユニット5による圧縮荷重を打ち消す方向に復元力を発生させ、可動子1の所定以上の傾動を規制する。その結果、可動子1に作用する機械的トルクとコイルスプリング61の弾性力とがつり合う位置で、可動子1の傾動が停止される。図8は、駆動軸8を基準として角度θ傾いた位置で可動子1が停止した状態を示している。
【0066】
上述のように、支持機構D3Sは、駆動軸8及び可動子1の傾動を規制する機能を有する。したがって、本実施形態によれば、アーム部材L3に比較的大きな負荷Pが作用した場合においても、可動子1の大きな傾動動作を規制できる。これにより、可動子1が「動作不安定領域」にまで傾動することを回避可能となり、固定子2からの所要の電磁トルクを発生させることで、可動子1を当初の水平位置まで安定に復帰させることができるようになる。
【0067】
また、本実施形態によれば、アーム部材L3に作用する負荷Pとコイルスプリング61の弾性力とのつり合い位置によって可動子1の傾動角が決まるため、可動子1の傾動角がわかれば固定子1(電磁石3)に対する電流制御で元の水平位置へ可動子1を安定に復帰させることが可能となる(図9)。
【0068】
図9は、上記作用を説明する図である。図9(a)に示すように、ばねで支持された駆動軸を上記アクチュエータD3Mによって駆動制御する場合を考える。図9(b)は、アームに対して鉛直上向き(+方向)及び下向き(−方向)に荷重Pを作用させたときに、アームの傾斜角に対応する上記ばねの弾性力と、当該荷重Pを相殺するのに必要な電磁石への通電量との関係を示している。図9(b)から明らかなように、アームを何れの方向に負荷を作用させた場合でも、ばねの復元力が発生する。
【0069】
したがって、アームの傾斜角や駆動軸の傾斜角、可動子の傾動角、ばねの圧縮力などを電気的、機械的あるいは光学的に検出することで、アームを水平位置へ復帰させるのに必要なアクチュエータによる電磁トルクの大きさ、すなわちコイルへ供給する電流値(i1、i2、i3、・・・[A])を一義的に定めることができる。上記検出をするためのセンサは、アクチュエータD3Mに内蔵されていてもよいし、アクチュエータD3Mの外部に配置されていてもよい。
【0070】
一方、上記アームを水平位置から任意の傾斜角で傾斜させる場合にも、その傾斜角に応じた大きさの電流を電磁石へ供給することによって、安定に所望の傾斜角でアームを傾斜させることが可能となる。さらに、可動子1の傾動角とコイル電流値との関係を示すマッピングを予め用意することにより、オープンループ制御によるアームの傾斜角度制御が実現可能となる。これにより、アクチュエータの制御システムの簡素化、制御の容易化が図れるようになる。
【0071】
(第2の実施形態)
図10は本発明の第2の実施形態に係る搬送装置における第3の駆動部D3’を示している。図において、上述の第1の実施形態と対応する部分については同一の符号を付している。駆動部D3’は、アクチュエータD3M’と保持機構D3S’とを備えている。
【0072】
本実施形態のアクチュエータD3M’は、可動子1を構成する個々の永久磁石及び磁性材料が、それぞれ駆動軸8の延在方向(z軸方向)に分割された下段側の第1の可動子部1Aと上段側の可動子部1Bとで構成されている。これら2つの可動子部1A、1Bの間には、所定の間隙1sが形成されている。
【0073】
駆動軸8は、可動子1の中心部に固定された固定軸部83を介して可動子1と一体化されている。固定軸部83には軸受け部材42のインナーレース部421と接合されている。第2の可動子部1Bは、軸受け部材42のインナーレース部421に支持されている。第1の可動子部1Aは、固定軸部83の周囲に結合された回転ディスク92の上に設置されている。
【0074】
保持機構D3S’は、固定子2と駆動軸8の固定軸部83との間に架け渡された板バネ部材62を備えている。図11は、保持機構D3S’の要部の平面図である。板バネ部材62は、固定子2の外枠部21A、21B(第1、第2の固定子部)の間に固定される外周端部621(第1の端部)と、軸受け部材42のアウターレース部422に固定される内周端部622(第2の端部)とを有する。
【0075】
板バネ部材62は、第1の可動子部1Aと第2の可動子部1Bとの間の間隙1sに挿通されることで軸受け部材42のアウターレース部に固定されている。可動子部1A、1Bは、板ばね部材62の両主面にそれぞれ隙間を介して対向している。これにより、板バネ部材62に対する可動子1の回転動作が確保される。内周端部622とアウターレース部422は、連結部材93を介して連結されている。連結部材93は、回転ディスク92の回転量を磁気的あるいは光学的に検出するセンサ91を支持する。これらセンサ91、回転ディスク92及び連結部材93は、可動子1の回転角を検出する角度検出機構9を構成する。
【0076】
板バネ部材62は円板形状を有しており、その面内部に複数の円弧状の開口あるいはスリット623が形成されている。これらのスリット623は円周方向に間欠的に形成されており、その境界部には内周側領域と外周側領域とを連結する連結部624x、624yがそれぞれ設けられている。連結部624xは、板バネ部材62の内周側をその外周側に対してx軸まわりに弾性変形を可能とし、連結部624yは、板バネ部材62の内周側をその外周側に対してy軸まわりに弾性変形可能とする。これにより、駆動軸8及び可動子1は、固定子2に対してx軸まわり、y軸まわり、及びそれらの合成軸のまわりに傾動可能である。
【0077】
以上のように構成される本実施形態の駆動部D3’において、可動子1は、固定子2からの電磁トルクを受けてz軸まわりの回転動作と、x、y軸のまわりの傾動動作が可能である。可動子1はz軸方向に分割された第1、第2の可動子部1A、1Bで構成され、それらの間に板バネ部材62が隙間を介して配置されているため、板バネ部材62によって可動子1のz軸まわりの回転動作が阻害されることはない。また、可動子1の傾動時、板バネ部材62は、第1、第2の可動子部1A,1Bと接触してもよいが、固定子2(電磁石3)とは接触しないように、上下各固定子の電磁石3と板バネ部材62との距離が規定される。
【0078】
本実施形態において、駆動軸8及び可動子1に作用する水平軸まわりの機械的トルクは、板バネ部材62の弾性力によって支持される。したがって、上述の第1の実施形態と同様に、当該機械的トルクによる可動子1の回転量を板バネ部材62の弾性復元力によって規制し、動作不安定領域に至る可動子1の傾動動作を回避することができる。これにより、駆動部D3’の安定した駆動制御を確保することができる。板バネ部材62の弾性力は、バネ材の厚みスリット623の幅、長さ、本数、位置などによって任意に調整することが可能である。
【0079】
また、本実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様に、保持機構D3S’の弾性力を利用した可動子1の傾動角度制御を安定かつ容易に行うことができる。可動子1の傾動角度制御はオープンループ制御で行ってもよいし、フィードバック制御で行ってもよい。後者の場合、角度検出機構9を可動子1の傾動角センサとして兼用させることができる。
【0080】
本実施形態において、支持機構D3S’を構成する板バネ部材62は、円板状に限られない。例えば、上記板バネ部材を、駆動軸8側から外周の固定子2側に向かって放射状に延びる複数の短冊状の板バネ部材を用いることも可能である。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0082】
例えば、以上の実施形態では、本発明に係る電磁アクチュエータ及び関節装置を搬送装置100の第3の駆動部D3に適用した例について説明したが、第1、第2の駆動部D1、D2にも同様な構造を適用することも可能である。
【0083】
また、搬送ロボットの関節部に限られず、例えば溶接ロボット、モニタ用カメラなど、回転及び傾動動作を伴う各種ロボットの関節装置及びその駆動源に、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 可動子
1A、1B 可動子部
2 固定子
3 電磁石
4 支持軸
5 上部支持ユニット(第1の支持部材に相当)
7 下部支持ユニット(第2の支持部材に相当)
8 駆動軸(出力軸に相当)
11 磁性体
12 永久磁石
31 コイル
32 コア
41 球面ベアリング
61 コイルスプリング
62 板バネ部材
100 搬送装置
D1〜D3 駆動部
L1〜L3 アーム部
D3M、D3M’ アクチュエータ
D3S、D3S’ 支持機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸を有する可動子と、
前記可動子に対して、前記出力軸を回転中心とする第1の電磁トルクと、前記出力軸と直交する軸を回転中心とする第2の電磁トルクを発生させる固定子と、
前記出力軸に作用する、前記出力軸と直交する軸のまわりへの回転トルクを弾性的に支持する支持機構と
を具備する電磁アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁アクチュエータであって、
前記支持機構は、
前記出力軸を軸支する第1の支持部材と、
前記固定子に取り付けられた第2の支持部材と、
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間に前記出力軸と同心的に配置されたコイルスプリングとを有する
電磁アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の電磁アクチュエータであって、
前記可動子を支持する球面ベアリングを含む支持軸をさらに具備する
電磁アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁アクチュエータであって、
前記支持機構は、
前記出力軸を回転自在に支持する軸受け部と、
前記固定子と前記軸受け部との間に架け渡された板バネとを有する
電磁アクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載の電磁アクチュエータであって、
前記可動子は、前記出力軸の延在方向に沿って分割され、前記板バネの両主面と隙間を介して対向する第1及び第2の可動子部を有し、
前記固定子は、前記出力軸の延在方向に沿って分割された第1及び第2の固定子部を有し、
前記板バネは、前記第1及び第2の固定子部の間に固定される第1の端部と、前記軸受け部に固定される第2の端部とを有する
電磁アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の電磁アクチュエータであって、
前記出力軸に取り付けられたアーム部材をさらに具備する
電磁アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電磁アクチュエータであって、
前記可動子は、周方向に極性を交互に異ならせて磁化された複数の磁性体を有し、
前記固定子は、
前記可動子の外周側に向かって突出する複数の第1のコアと、前記複数の第1のコアにそれぞれ巻回された第1の電磁コイルとを含む第1の固定子部と、
前記可動子の外周側に向かって突出する複数の第2のコアと、前記複数の第2のコアにそれぞれ巻回された第2の電磁コイルとを含み、前記第1の固定子部に積層された第2の固定子部とを有する
電磁アクチュエータ。
【請求項8】
第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材と連結される出力軸を有する可動子と、
前記第2の部材に固定され、前記可動子に対して、前記出力軸を回転中心とする第1の電磁トルクと、前記出力軸と直交する軸を回転中心とする第2の電磁トルクを発生させる固定子と、
前記出力軸と直交する軸のまわりへの回転トルクを弾性的に支持する支持機構と
を具備する関節装置。
【請求項1】
出力軸を有する可動子と、
前記可動子に対して、前記出力軸を回転中心とする第1の電磁トルクと、前記出力軸と直交する軸を回転中心とする第2の電磁トルクを発生させる固定子と、
前記出力軸に作用する、前記出力軸と直交する軸のまわりへの回転トルクを弾性的に支持する支持機構と
を具備する電磁アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁アクチュエータであって、
前記支持機構は、
前記出力軸を軸支する第1の支持部材と、
前記固定子に取り付けられた第2の支持部材と、
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間に前記出力軸と同心的に配置されたコイルスプリングとを有する
電磁アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の電磁アクチュエータであって、
前記可動子を支持する球面ベアリングを含む支持軸をさらに具備する
電磁アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁アクチュエータであって、
前記支持機構は、
前記出力軸を回転自在に支持する軸受け部と、
前記固定子と前記軸受け部との間に架け渡された板バネとを有する
電磁アクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載の電磁アクチュエータであって、
前記可動子は、前記出力軸の延在方向に沿って分割され、前記板バネの両主面と隙間を介して対向する第1及び第2の可動子部を有し、
前記固定子は、前記出力軸の延在方向に沿って分割された第1及び第2の固定子部を有し、
前記板バネは、前記第1及び第2の固定子部の間に固定される第1の端部と、前記軸受け部に固定される第2の端部とを有する
電磁アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の電磁アクチュエータであって、
前記出力軸に取り付けられたアーム部材をさらに具備する
電磁アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電磁アクチュエータであって、
前記可動子は、周方向に極性を交互に異ならせて磁化された複数の磁性体を有し、
前記固定子は、
前記可動子の外周側に向かって突出する複数の第1のコアと、前記複数の第1のコアにそれぞれ巻回された第1の電磁コイルとを含む第1の固定子部と、
前記可動子の外周側に向かって突出する複数の第2のコアと、前記複数の第2のコアにそれぞれ巻回された第2の電磁コイルとを含み、前記第1の固定子部に積層された第2の固定子部とを有する
電磁アクチュエータ。
【請求項8】
第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材と連結される出力軸を有する可動子と、
前記第2の部材に固定され、前記可動子に対して、前記出力軸を回転中心とする第1の電磁トルクと、前記出力軸と直交する軸を回転中心とする第2の電磁トルクを発生させる固定子と、
前記出力軸と直交する軸のまわりへの回転トルクを弾性的に支持する支持機構と
を具備する関節装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−207064(P2010−207064A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53220(P2009−53220)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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