説明

電磁干渉パターンの使用

可視光干渉パターンの様々な使用が提供される。適した干渉パターンは、絞りのパターンからの回折により形成されるパターンである。本明細書中で開示される典型的な使用は、並進及び/又は角度位置決定システムなどの空間計測学に関連する。更なる使用は、光自体の特性の解析(例えば、電磁放射線の波長の決定)を含む。更なる他の使用は、光が通過する物質の1つ以上の特性(例えば屈折率)の解析を含む。干渉パターンの一部がCCDチップなどの画素化された検出器で捕らえられ、捕らえられたパターンが計算されたパターンと比較される。最大値間の間隔の非常に正確な測定が可能であり、したがって、干渉パターン中における検出器の位置の非常に正確な測定を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁干渉パターンの様々な使用、特に(排他的ではないが)、可視光干渉パターン、UV干渉パターン、および、IR干渉パターンの使用を提供する。本明細書中で開示される典型的な使用は、並進及び/又は角度位置決定システムなどの空間計測学、および、そのような位置決定のための方法に関連する。更なる使用は、電磁放射線自体の特性の解析(例えば、電磁放射線の波長の決定)を含む。更なる他の使用は、電磁放射線が通過する物質の1つ以上の特性(例えば屈折率)の解析を含む。
【背景技術】
【0002】
US4,111,557は、基準物体の形状または位置に対する物体の形状または位置を決定するための方法を開示する。基準物体は、マスター物体、スケールモデル、または、計算により或いは図解的にのみ決定される理想的な物体であってもよく、または、異なる時間に観察される同じ物体であってもよい。
【0003】
US4,111,557において、コヒーレント源からの光線は、レンズを使用して、線配列及び/又は点配列として物体上に投影される。これらの線配列または点配列は、対物レンズを用いて光電子記録デバイス(例えば、TVカメラまたはフォトダイオードマトリクス)へと送られる。記録デバイスにより生成される信号は、記憶のため及び基準物体に対応するデータとの比較のために、デジタル信号へと変換される。
【0004】
他の既知の光学ポジショニングシステムを以下で説明する。
【0005】
WO2004/031686は、位置フィードバックを与えるレーザ干渉計システムを開示する。WO2004/031686に開示される干渉計システムは、外部逆反射体標的光学素子を必要とするとともに、光ビームの軸に沿う位置の変化を測定する。
【0006】
WO02/084223およびEP0503176は、絶対位置情報をエンコードするスケールを使用する光学ポジショニングシステムを開示する。また、LEDが周期的なリニアスケールを照射し且つ反射光が検出されて解析される光学ポジショニングシステムを提供することも知られる。デバイスは、スケールとLEDおよび検出器を含む読み取りヘッドとの間の相対的な位置を決定する。
【0007】
WO2006/067481は、互いに対して移動できる2Dパターンおよびセンサを開示する。パターン(例えば、ドットの配列)が特徴のグループとして配置され、各グループが絶対位置をエンコードする。例えば、各グループの1つのドットは、そのグループの位置を特定するための独特の色を有してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,111,557号明細書
【特許文献2】WO2004/031686号
【特許文献3】WO2002/084223号
【特許文献4】EP0503176号
【特許文献5】WO2006/067481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば現代の航空機は、電子サーボ機構によってほぼ全体的に制御される。この技術を可能にするために測定システムの深い階層が開発されてきた。階層の底部には、ポテンショメータまたは線形可変差動トランス(LVDT)などの電気的な距離測定に基づく簡単なシステムがある。これらのシステムは、(通常は)安価であり、非常に精度があるが、非常に不正確である。階層中の次には、物理的な物差しの位置の測定に基づくシステムがある。そのような“エンコーダ”は、複雑なシステムであり、非常に正確であるが、簡単なLVDTと精度があまり変わらない。そのようなシステムに伴う特定の問題点は、システムの正確度が格子によって規定されるという点である。したがって、大きい距離の測定は、大型の精密な物差しの形成を必要とする。これらの物差しは、高価であり、大型であるとともに、しばしば、それらが汚染されないようにするために注意深い環境制御を必要とする。(例えば、x−yまたは回転を測定するための)2次元格子の製造は、非常に高価であり、非常に大きいスケールにおいてはほぼ不可能である。階層の最上部は干渉計である。光の波長で距離を測定する干渉計は、全ての標準的な距離測定に基づいている。また、干渉計は、あまり正確でない測定のために使用される。これは、現在では正確なレーザ源が比較的安価であり、また、標準的実験室で使用される干渉計との比較が容易だからである。適切なレーザを用いると、干渉計が任意に大きくされる場合がある(例えば、重力波を測定する試みで使用される干渉計は4kmの大きさである[J. Hough “Long Baseline Gravitational Wave Detectors - Status and Developments” Journal of Physics Conference Series 66 012002 (2007)])
【0010】
しかしながら、干渉計は多くの問題を有する。第1に、モノクロ干渉計によって生成される信号が本質的に周期的であり、それにより、特定の位置(“ゼロ”距離)の識別が困難である。次に、計量干渉計は、本質的に、一次元でしか距離を測定することができない。位置を3軸で測定するために干渉計が使用されるべき場合には、3つの独立の干渉計を一緒に使用する必要がある。この構成の角度の正確度は、物理的構造エラーに晒される。あるいは、(例えば)x−y位置は、垂直方向での並進によって影響されていない状態でミラーを使用して距離を一方向で測定することによって測定されてもよい。これは、非常に高価なミラーの使用を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、新規の形態の位置決定が干渉パターン(interference pattern)などの二次元強度パターンの使用に基づいてもよいことに気付いた。これは、本発明の第1の開発の一般的態様である。そのようなパターンは、並進的な(translational)非周期性を与えることができるとともに、低い回転対称性を与えることができる。真に並進的に非周期的な強度パターンは、無限の周期を有する周期的な強度パターンとして規定されてもよい。したがって、用語“非周期的”または“略周期的”は、例えばパターンの周期がパターンの一部を捕らえるための対応する検出器の寸法に匹敵する或いは該寸法よりも大きい場合には、比較的長い周期を有する並進的に周期的な強度パターンも含むように意図される。これは、干渉パターンの数少ない部分だけを使用するときであっても、パターン内の物体の絶対的な或いは相対的な位置および方向の一意的な特定を可能にし得る。これに基づいて作動するシステムは、設置が容易で、LVDTのコストが低いとともに、有用な精度および正確度をもって複数の軸を一度に測定することができる。
【0012】
したがって、第1の開発の第1の好ましい態様において、本発明は、略並進的に非周期的な強度パターンを発生させる電磁放射線強度パターン発生器と、その位置が決定されるべき物体と、前記発生器によって生成される強度パターンの全て、一部、または、僅かな部分を検出するようになっている電磁放射線検出器とを有し、検出された強度パターンまたは該強度パターンの一部を使用して物体の位置を決定できる位置決定システムを提供する。
【0013】
第1の開発の第2の好ましい態様において、本発明は、物体の位置を決定する方法であって、電磁放射線の略並進的に非周期的な強度パターンを発生させるステップと、強度パターンの全て、一部、または、僅かな部分を検出して物体の位置を決定するステップとを含む方法を提供する。
【0014】
第1の開発の第3の好ましい態様において、本発明は、電磁放射線の略並進的に非周期的な強度パターンの僅かな部分の強度パターン内での位置を決定する方法であって、強度パターンの僅かな部分における最大値または最小値の相対的な位置を決定するステップを含む方法を提供する。
【0015】
第1の開発の第4の好ましい態様において、本発明は、第3の態様の方法を実施するために記憶媒体に随意的に記録されるコンピュータプログラムを提供する。
【0016】
第1の開発の第5の好ましい態様において、本発明は、第3の態様の方法を実施するように作用的に構成されるコンピュータまたは他の処理手段(デジタル信号プロセッサなど)を提供する。
【0017】
第1の開発の第6の好ましい態様において、本発明は、位置決定システムで用いる略並進的に非周期的な干渉パターンの生成のための光学素子を提供する。
【0018】
第1の開発の第7の好ましい態様において、本発明は、電磁放射線の略並進的に非周期的な強度パターンの発生器と、呼掛け体積(interrogation volume)と、前記発生器によって生成される強度パターンの少なくとも一部を検出するようになっている電磁放射線検出器とを有し、検出された強度パターンを使用して呼掛け体積内の屈折率歪みを決定できる屈折率歪み決定システムを提供する。
【0019】
以下の、[A1]−[A26]の番号が付された段落は、特徴の特定の好ましい組み合わせを示している。言うまでもなく、特徴の他の組み合わせもここに開示されており本発明の範囲内に入る。
【0020】
[A1]略並進的に非周期的な二次元強度パターンを発生させるための電磁放射線強度パターン発生器と、
その位置が決定されるべき物体と、
前記発生器によって生成される強度パターンの僅かな部分を検出するようになっている電磁放射線検出器と、
を有し、
強度パターンの検出された僅かな部分を使用して物体の位置を決定できる位置決定システム。
【0021】
[A2] 強度パターンは、干渉パターンである[A1]に係るシステム。
【0022】
[A3] 使用時、第1の位置から第2の位置への物体の動きは、検出器で捕らえられる強度パターンの変化を引き起こす[A1]または[A2]に係るシステム。
【0023】
[A4] その位置が決定されるべき物体は、電磁放射線強度パターン発生器および電磁放射線検出器のいずれか一方と一定(fixed)の空間的関係を有する[A1]ないし[A3]のいずれか1つに係るシステム。
【0024】
[A5] 検出器は、位置決定を行なうために強度パターンにおける複数の最大値及び/又は最小値をほぼ同時に検出するようになっている[A1]ないし[A4]のいずれか1つに係るシステム。
【0025】
[A6] 検出器は、検出素子のアレイ(array)を含む[A1]ないし[A5]のいずれか1つに係るシステム。
【0026】
[A7] 検出器は、強度パターンの僅かな部分を直接に捕らえる[A1]ないし[A6]のいずれか1つに係るシステム。
【0027】
[A8] 物体は、3つの直交軸のうちの少なくとも1つに沿う並進によって移動でき、随意的には、3つの直交回転軸のうちの少なくとも1つの周りで移動でき、これらの軸に沿う物体の移動或いはこれらの軸の任意の1つ又は任意の組み合わせの周りでの物体の移動が、検出器によって検出される強度パターンの一部に変化を与える[A1]ないし[A7]のいずれか1つに係るシステム。
【0028】
[A9] 強度パターン発生器は、コヒーレント光源を含む[A1]ないし[A8]のいずれか1つに係るシステム。
【0029】
[A10] 強度パターン発生器は、コヒーレント光から強度パターンを生成するために1つの光学素子または複数の光学素子を含む[A1]ないし[A9]のいずれか1つに係るシステム。
【0030】
[A11] 光学素子は、光の透過および回折のための透光絞りの配列を含む[A10]に係るシステム。
【0031】
[A12]光学素子は、光を透光絞りへと優先的に方向付けるための合焦(focusing)手段を含む[A11]に係るシステム。
【0032】
[A13] 合焦手段は、少なくとも1つのゾーンプレート(zone plate)である[A12]に係るシステム。
【0033】
[A14] 光学素子は、上面および下面を有する光透過基板を含み、それぞれの面には光不透過層が形成され、絞りおよび合焦手段は、光不透過層の一部を除去し或いは省くことにより形成される[A11]ないし[A13]のいずれか1つに係るシステム。
【0034】
[A15] 光をほぼ遮断する筐体内に入れられる[A1]ないし[A14]のいずれか1つに係るシステム。
【0035】
[A16] 第2の検出器を含み、該第2の検出器は、第1の検出器とは異なる強度パターンの部分を検出する[A1]ないし[A15]のいずれか1つに係るシステム。
【0036】
[A17] 第1の検出器および第2の検出器は、単一の主検出器の一部である[A16]に係るシステム。
【0037】
[A18] 強度パターン発生器と第1および第2の検出器との間の光学経路の屈折率は、意図的に異ならされる[A16]または[A17]に係るシステム。
【0038】
[A19] 第2の検出器上に或いはその近傍に屈折率調整層が含まれる[A18]に係るシステム。
【0039】
[A20] システムは、第1の二次元強度パターンとは異なる波長の電磁放射線を使用して、検出器で第1の二次元強度パターンと共に検出されるべき少なくとも第2の二次元強度パターンを発生させることができる[A1]ないし[A19]のいずれか1つに係るシステム。
【0040】
[A21] 各波長は、強度パターンを発生させるために光学素子の対応する絞りへ向けて案内される[A20]に係るシステム。
【0041】
[A22] 異なる波長の強度パターンは、波長に基づいて少なくとも部分的に検出される[A20]または[A21]に係るシステム。
【0042】
[A23] 異なる波長の強度パターンは、パターンにおける複数の最大値及び/又は最小値の間隔に基づいて少なくとも部分的に検出される[A20]ないし[A22]のいずれか1つに係るシステム。
【0043】
[A24] 物体の位置を決定する方法であって、
電磁放射線の略並進的に非周期的な二次元強度パターンを発生させるステップと、
強度パターンの僅かな部分を検出して物体の位置を決定するステップと、
を含む方法。
【0044】
[A25] 電磁放射線の略並進的に非周期的な二次元強度パターンの僅かな部分の位置を決定する方法であって、強度パターンの僅かな部分における最大値または最小値の相対的な位置を決定するステップを含む方法。
【0045】
[A26] 強度パターンの僅かな部分を、強度パターンに対応する計算されたパターンと相互に関連付けるステップを更に含む[A24]または[A25]に係る方法。
【0046】
本発明者等は、本発明が略並進的に非周期的な強度パターンの使用に必ずしも制限される必要がないことに更に気付いた。したがって、以下の、[B1]−[B22]の番号が付された段落は、特徴の特定の好ましい組み合わせを示している。言うまでもなく、特徴の他の組み合わせもここに開示されており本発明の範囲内に入る。
【0047】
[B1] 二次元強度パターンを発生させるための電磁放射線強度パターン発生器と、
その位置が決定されるべき物体と、
前記発生器によって生成される強度パターンの僅かな部分を検出するようになっている電磁放射線検出器と、
を有し、
強度パターンの検出された僅かな部分を使用して物体の位置を決定できる位置決定システム。
【0048】
[B2] 使用時、第1の位置から第2の位置への物体の動きが、検出器で捕らえられる強度パターンの変化を引き起こす[B1]に係るシステム。
【0049】
[B3] その位置が決定されるべき物体は、電磁放射線強度パターン発生器および電磁放射線検出器のいずれか一方と所定の空間的関係を有する[B1]または[B2]に係るシステム。
【0050】
[B4] 検出器は、強度パターンの僅かな部分を直接に捕らえる[B1]ないし[B3]のいずれか1つに係るシステム。
【0051】
[B5] 物体は、3つの直交軸のうちの少なくとも1つに沿う並進によって移動でき、随意的には、3つの直交回転軸のうちの少なくとも1つの周りで移動でき、これらの軸に沿う物体の移動或いはこれらの軸の任意の1つ又は任意の組み合わせの周りでの物体の移動が、検出器によって検出される強度パターンの一部に変化を与える[B1]ないし[B4]のいずれか1つに係るシステム。
【0052】
[B6] システムは、第1の二次元強度パターンとは異なる波長の電磁放射線を使用して、検出器で第1の二次元強度パターンと共に検出されるべき少なくとも第2の二次元強度パターンを発生させることができる[B1]ないし[B5]のいずれか1つに係るシステム。
【0053】
[B7] 各波長は、強度パターンを発生させるために光学素子の対応する絞りへ向けて案内される[B6]に係るシステム。
【0054】
[B8] 異なる波長の強度パターンは、波長に基づいて少なくとも部分的に検出される[B6]または[B7]に係るシステム。
【0055】
[B9] 異なる波長の強度パターンは、パターンにおける最大値及び/又は最小値の間隔に基づいて少なくとも部分的に検出される[B6]ないし[B8]のいずれか1つに係るシステム。
【0056】
[B10] 強度パターン発生器は、コヒーレント光源を含む[B1]ないし[B9]のいずれか1つに係るシステム。
【0057】
[B11] その波長が決定されるべきコヒーレント光源を含む、二次元強度パターンを発生させるための電磁放射線強度パターン発生器と、
前記発生器により生成される強度パターンの一部を検出するようになっている第1の電磁放射線検出器と、
前記発生器により生成される強度パターンの一部を検出するようになっている第2の電磁放射線検出器と、
を有し、
発生器と第1および第2の検出器との間のそれぞれの光学経路の屈折率が既知の大きさだけ意図的に異ならされ、第1および第2の検出器により検出されるパターンがコヒーレント光源の波長を決定するために役立つ電磁放射線波長検出器。
【0058】
[B12] 第1の検出器および第2の検出器は、単一の主検出器の一部である[B11]に係るシステム。
【0059】
[B13] 第2の検出器上に或いはその近傍に屈折率調整層が含まれる[B12]に係るシステム。
【0060】
[B14] 強度パターンは、干渉パターンである[B1]ないし[B13]のいずれか1つに係るシステム。
【0061】
[B15] 検出器は、強度パターンにおける複数の最大値及び/又は最小値をほぼ同時に検出するようになっている[B1]ないし[B14]のいずれか1つに係るシステム。
【0062】
[B16] 検出器は、検出素子の配列(array)を含む[B1]ないし[B15]のいずれか1つに係るシステム。
【0063】
[B17] 強度パターン発生器は、コヒーレント光から強度パターンを生成するために1つの光学素子または複数の光学素子を含む[B1]ないし[B16]のいずれか1つに係るシステム。
【0064】
[B18] 光学素子は、光の透過および回折のための透光絞りの配列を含む[B17]に係るシステム。
【0065】
[B19] 光学素子は、光を透光絞りへと優先的に方向付けるための合焦手段を含む[B18]に係るシステム。
【0066】
[B20] 合焦手段は、少なくとも1つのゾーンプレートである[B19]に係るシステム。
【0067】
[B21] 光学素子は、上面および下面を有する光透過基板を含み、それぞれの面には光不透過層が形成され、絞りおよび合焦手段は、光不透過層の一部を除去し或いは省くことにより形成される[B18]または[B19]に係るシステム。
【0068】
[B22] 光をほぼ遮断する筐体内に入れられる[B1]ないし[B21]のいずれか1つに係るシステム。
【0069】
また、本発明者等は、本発明が物理的特性の測定の分野に対して更に一般的な適用性を有することに気付いた。
【0070】
したがって、本発明の第2の開発の第1の好ましい態様では、
強度最大値および強度最小値を含む干渉パターンを発生させるための電磁放射線干渉パターン発生器と、
前記発生器により生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出する電磁放射線検出器であり、干渉パターンの複数の強度最大値及び/又は強度最小値をほぼ同時に検出する検出素子のアレイを有する電磁放射線検出器と、
を有する測定システムであって、
検出される強度最大値及び/又は強度最小値に基づいて、当該システムの物理的特性または当該システムの物理的特性の変化を決定できる測定システムが提供される。
【0071】
本発明の第2の開発の第2の好ましい態様では、第2の開発の第1の態様に係る測定システムを含む位置決定装置が提供される。
【0072】
本発明の第2の開発の第3の好ましい態様では、第2の開発の第1の態様に係る測定システムを含む波長決定装置が提供される。
【0073】
本発明の第2の開発の第4の好ましい態様では、波長分割多重通信チャンネルにおける波長を測定するための第2の開発の第1の態様に係るデバイスの使用が提供される。
【0074】
本発明の第2の開発の第5の好ましい態様では、第2の開発の第1の態様に係る測定システムを含む屈折率決定装置が提供される。
【0075】
本発明の第2の開発の第6の好ましい態様では、物理的特性を測定する方法であって、
電磁放射線干渉パターン発生器を使用して、強度最大値および強度最小値を含む電磁放射線干渉パターンを発生させるステップと、
検出器を使用して、前記発生器により生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出するステップであり、検出器が検出素子の配列を有し、それにより、検出器が、干渉パターンの複数の強度最大値及び/又は強度最小値をほぼ同時に検出する、ステップと、
検出された強度最大値及び/又は強度最小値を使用して、物理的特性または物理的特性の変化を測定するステップと、
を含む方法が提供される。
【0076】
ここで、本発明の好ましい及び/又は随意的な特徴について説明する。これらは、そうでないとの記載がない限り、単独で適用することができ、あるいは、本発明の任意の開発の任意の態様と任意に組み合わせて適用することができる。同様に、本発明の任意の開発の任意の態様が他の態様と組み合わされてもよい。
【0077】
強度パターンのための好ましい形式は干渉パターンである。適したパターンは回折によって形成されてもよい。幾つかの実施形態では、強度パターンをホログラムから形成することができる。しかしながら、好ましい実施形態では、強度パターンは、ホログラムから形成されない。以下の説明では、用語“強度パターン”が“干渉パターン”と置き換え可能に使用される。
【0078】
一般に、干渉パターンは発生器と検出器との間の空間の体積を占め、検出器は、該検出器の位置に対応する干渉パターンを貫く断面で干渉パターンを“見ている”。原理的には、検出器は、ほぼ同じ効果を得るように、干渉パターンによって占められる空間の体積の任意の部分に位置させることができる。これは、一般に干渉パターンが発生器からの距離に伴って焦点が合ったり焦点から外れたりしないからである。それよりむしろ、一般的に、発生器からの距離が増大すると、干渉パターンにおける隣り合う最大値間の間隔が増大する。
【0079】
干渉パターンの最大値が検出素子のピッチの2倍に等しいピッチで隔てられると、検出器での干渉パターンのサンプリングのためのナイキスト限界に達する。したがって、これは、干渉パターンに存在する最も高い空間周波数の2倍に対応する、干渉パターンの最大値と検出素子との相対的な間隔のための好ましい下限である。しかしながら、干渉パターンの最大値がこの好ましい下限よりも小さいピッチで隔てられるときに、適した測定値が依然として得られる場合がある。干渉パターンの最大値は、検出素子のピッチの最大で5倍、10倍、20倍、または、100倍だけ隔てられるのが好ましい。更に長い縞模様波長(すなわち、最大値の更に大きい間隔、したがって、干渉パターンにおける更に小さい空間周波数)の使用は、パターンの最大値ごとの強度の測定数が増大されるという利点を有する。しかしながら、更に長い縞模様波長を使用する欠点は、あまりシャープではない最大値の位置が本質的にあまりうまく規定されないという点である。フーリエ変換などの変換によってパターンの解析が達成される場合には、検出素子の間隔の2倍よりも小さい縞模様間隔の使用がエイリアシングをもたらす場合がある。それにもかかわらず、検出器および光学素子のおおよその距離間隔が知られる場合には、検出器に対する光学素子の位置を高い正確度で推測することができる。パターンのエイリアシングは、更なる情報を利用できなければ、位置の決定を曖昧にするが、そのような決定を不可能にはしない。したがって、そのような場合のシステムの動作が想起されてもよく、また、該動作は、ある場合には、例えば移動に伴う検出パターンの変化率が非常に高い場合には有利かもしれない。なお、そのような検出は、必要に応じて、フーリエ変換に頼ることなく行なうことができる。
【0080】
電磁放射線は、一般に、200nm〜12μmの範囲の少なくとも1つの波長を有する。これは、画素化された検出器を利用できる(例えば、COベースのレーザおよび水銀−カドミウム−テルル化物検出器の使用において)中間および近紫外線波長から赤外線波長までの電磁スペクトルの範囲に対応する。この範囲における上限は、少なくとも重要な1.5μm通信帯域波長を含むように1.6μmであることがより好ましい。より好ましくは、電磁放射線は、380−1000nm(または、可視光スペクトルに対応する380−750nm)範囲の少なくとも1つの波長を有する。これは、可視光または近赤外光の検出に適した検出器を低コストであるが非常に高品質で利用できるため、検出素子の配設に関してかなり興味深い。例えば、検出器がデジタルカメラで用いるのに適していてもよい。1つの特定の対象波長は、860nmであり、例えばDFBレーザから利用できる。適した検出器は、市販のデジタルカメラ撮像チップに類似してもよいが、対象波長において必要な場合には任意の赤外線フィルタが除去される。
【0081】
検出器では、干渉パターンが二次元干渉パターンであることが好ましい。二次元とは、最大値および最小値が少なくとも2つの次元で変化を有する配列を成して配置されることを意味する。この場合、検出素子は、検出器において一次元配列を成して或いは二次元配列を成して配置されるのが好ましい。一次元検出器配列とは、検出器が一列に、一般的には直線を成して配置されることを意図している。二次元検出器配列とは、検出器が面に配置され、一般的には平面に配置されることを意図している。二次元干渉パターンと一次元検出器との組み合わせは、システムが軸上(または、近軸上)回転測定用である場合に利点を有する。これは、干渉パターンおよび検出器の互いに対する回転が、検出器によって捕らえられる干渉パターンの部分の特定できる変化を与え、また、特に検出素子の総数が少ない場合に検出器の読み出しが高速となり得るからである。二次元干渉パターンと二次元検出器との組み合わせは、システムが並進測定用または軸外回転測定用である場合に利点を有する。これは、これらの状況では、干渉パターンと検出器との相対的な動きを決定するために、更なる情報が一般に必要とされるからである。
【0082】
あるいは、検出器では、干渉パターンが一次元干渉パターンである。一次元とは、最小値が一次元のみにほぼ沿って隣り合う最大値間に配置されるような配列を成して配置される最大値および最小値を干渉パターンが有することを意図している。この場合、検出素子は、検出器において二次元配列を成して配置されるのが好ましい。一次元干渉パターンと二次元検出器との組み合わせは、システムが軸上(または、近軸上)回転測定用である場合に利点を有する。これは、干渉パターンおよび検出器の互いに対する回転が、検出器によって捕らえられる干渉パターンの特定できる変化を与えるからである。
【0083】
検出器が三次元検出器配列を有してもよい。一般に、そのような配列では、検出素子の複数の層が存在し、各層は検出素子の二次元配列を含む。例えば、適した三次元検出器配列は、Foveon, Inc. (2880 Junction Avenue, San Jose, CA 95134, USA), such as the Foveon X3 14.1 MP image sensor (http://www.foveon.com/article.php?a=222 - accessed 19 August 2009)から入手できる。
【0084】
測定システムは、その位置が測定されるべき物体を更に含むことが好ましい。その位置が決定されるべき物体は、
(i)電磁放射線干渉パターン発生器、または、
(ii)電磁放射線検出器、
のいずれかと所定の空間的関係を有してもよい。
【0085】
一般に、使用時、第1の位置から第2の位置への物体の移動は、検出器で捕らえられる干渉パターンの変化を引き起こす。物体は、
(i)3つの直交並進軸のうちの少なくとも1つに沿う並進;及び/又は、
(ii)3つの直交回転軸のうちの少なくとも1つを中心とする回転、
によって移動されてもよく、
これらの軸に沿う物体の移動或いはこれらの軸の任意の1つ又は任意の組み合わせを中心とする物体の移動は、検出器によって検出される干渉パターンまたは干渉パターンの一部に変化を与える。システムは、この変化を検出して、この変化に基づいて第1の位置に対する第2の位置を計測するようになっていてもよい。ここでは言うまでもなく、物体の移動は、所定の軸のいずれかに沿っている必要はなく或いは所定の軸のいずれかを中心とする必要はなく、物体の移動をこれらの軸によって規定される座標系で表わすことができる。典型的な移動は、これらの軸に沿う及び/又はこれらの軸を中心とする成分の適切な組み合わせによって表わすことができる。
【0086】
発生器と検出器との間の距離は固定されてもよい。これは、軸上回転測定および不動ベースの物理的測定(例えば、波長測定または屈折率測定)のための特定の有用性を有する。発生器および検出器は共通の主軸を中心にほぼアライメントされてもよく、システムは、共通の主軸を中心とする角度位置を決定するようになっていてもよい。この場合、検出器は、主軸と垂直にアライメントされ(あるいは、アライメントされるように調整でき)てもよい。同様に、発生器は、干渉パターンの回転対称の中心が主軸とアライメントされるようにアライメントされ(あるいは、アライメントされるように調整でき)てもよい。しかしながら、干渉パターンおよび検出器の開始位置(0度)からの360度未満の相対的な回転が検出器で干渉パターンの同一分布を与えないようにするため、干渉パターンの回転対称の中心が主軸と一致しないことが好ましい場合がある。
【0087】
これに加えて或いはこれに代えて、干渉パターン全体に回転対称性の欠如を与えるために、干渉パターンに少なくとも1つの強度マーカが設けられてもよい。この強度マーカは干渉パターン上に重ね合わされてもよい。
【0088】
他の実施形態では、発生器および検出器の相対位置が固定されるのが好ましい場合がある。これは、不動ベースの物理的測定(例えば、波長測定または屈折率測定)のための特定の有用性を有する。
【0089】
検出器は、位置決定を行なうために強度パターンにおける複数の最大値及び/又は最小値をほぼ同時に検出するようになっていることが好ましい。前述したように、強度パターンは少なくとも2つの空間次元で延びてもよい。検出器は、強度パターン内の異なる空間位置で複数の最大値及び/又は最小値をほぼ同時に検出するようになっていてもよい。検出器は、(各検出事象ごとに)一次元のみにほぼ沿ってこれらの最大値及び/又は最小値を検出してもよい。しかしながら、検出器は、(各検出事象ごとに)これらの最大値及び/又は最小値を2つの次元で検出することが好ましい場合がある。例えば、検出器は、強度パターンと交わる平面に沿って最大値及び/又は最小値を検出してもよい。都合良く、既知の平面センサ(例えば、一般にデジタルカメラで使用されるCCD配列)が検出器として使用されてもよい。検出器は、強度パターンを三次元空間で検出するために、検出器の平面から外れる方向で並進され或いは回転されてもよい。
【0090】
位置(特に、並進及び/又は軸外回転)測定などの幾つかの実施形態では、検出器が干渉パターンの僅かな部分だけを捕らえることが好ましい。干渉パターンは略並進的に非周期的な二次元干渉パターンであってもよい。
【0091】
干渉パターンにおける最大値及び/又は最小値の間隔が決定されるのが好ましい。これは、例えばフーリエ解析によって行なわれてもよい。間隔を決定する際には、随意的に、検出された干渉パターンをマッピングするステップが含まれる。これは、例えば、検出された干渉パターンを等角にマッピングすることによって行なわれてもよい。また、干渉パターンの検出された部分は、干渉パターンに対応する計算されたパターンと相互に関連付けられてもよい。
【0092】
システムで複数の検出器を使用することが好ましい。例えば、(各検出事象ごとに)第1の検出器とは異なる干渉パターンの部分を検出する第2の検出器が設けられてもよい。第1および第2の検出器は、互いに対して所定の空間的関係を成していてもよい。これは、例えば大型光学素子での回転測定の正確度を向上させる更なる計量情報−センサ距離間隔を与えるという利点を有する。なお、ここでは、更なる検出器が使用されてもよい。例えば、3つの検出器が特に適する場合がある。単一の干渉パターンを撮像するために複数の検出器が使用される場合には、複数の検出器の空間的関係(例えばアライメント)が精密アライメントを必要とすることなく決定されてもよい。
【0093】
第1および第2の検出器は単一の検出器配列の2つの部分(例えばCCD配列または同様の配列)であってもよい。これは、第1の検出器と第2の検出器との間の空間的関係を正確に知ることができるようにすると共に第1および第2の検出器を同一平面上にすることができるという利点を有する。
【0094】
更なる計量的情報(metrological information)は、強度パターン発生器と第1および第2の検出器との間の光学経路の光学特性を意図的に変えることによって得られてもよい。例えば、これらの光学経路の屈折率が意図的に異ならされてもよい。これを達成するための1つの都合良い方法は、エタロン(または同様のもの)などの屈折率調整層を第2の検出器上に或いはその近傍に又は少なくとも発生器と第2の検出器との間の光学経路に含めることである。光学経路における屈折率の差は、第1の検出器が強度パターンの“実質”深さを“見る”と想定されてもよく且つ第2の検出器が強度パターンの“見掛けの”深さを“見る”と想定されてもよいことを意味する。屈折率の差が知られている場合には、この構成がシステムのための距離基準を与えることができる。これに加えて或いはこれに代えて、この構成は、コヒーレント光源(例えばレーザ)の波長を較正するための手段を与えてもよい。これは、波長安定性が比較的良くないレーザの使用を可能にする場合があり、それに対応してコストおよび全体のパッケージサイズを減少させるため、非常に有益である。
【0095】
前述したような構成は、電磁放射線の波長の測定において特定の有用性を有する。
【0096】
使用時、検出器は、単一の検出事象において、少なくとも10個の最大値及び/又は最小値を捕らえる(したがって、検出する機会を有する)ことが好ましい。“単一の検出事象”とは、検出器が最大値及び/又は最小値をほぼ同時に検出できることを意味する。検出器が検出素子の配列(例えば、CCD配列または同様のもの)を含む場合には、“単一の検出事象”をフレームと同じであると見なすことができる。使用時、検出器は、単一の検出事象において、10個を超える(おそらく、かなり超える)数の最大値及び/又は最小値を捕らえる(したがって、検出する機会を有する)ことが更に好ましい。例えば、この下限は、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも1000個、少なくとも10000個、少なくとも100000個、または、少なくとも1000000個であってもよい。最大値及び/又は最小値の数が増大するにつれて、システムから得られる位置情報のランダムエラーを非常に少なくでき、それに対応して精度が高まる。
【0097】
“僅かな部分”とは、検出器が強度パターンで利用できる光の半分未満を受けるように配置されることを意味しようとしている。強度パターンで利用できる光は、パターン発生器から出力される光に対応する。検出器は、強度パターンで利用できる光の40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下の光を受けるように配置されるのが好ましい。波長測定などの幾つかの用途では、検出器が強度パターンで利用できる光のほぼ全てを受けることが好ましい。
【0098】
検出器は、ここではピクセルと称される光学素子の配列を含むことが好ましい。1つのそのような類の検出器は、当業者に良く知られるCCD(電荷結合素子)イメージセンサを含む。別の類の検出器は、同様に当業者に良く知られるCMOSイメージセンサを含む。両方の類の検出器は、例えば写真用カメラおよびカムコーダ産業で幅広く使用される。
【0099】
画素化された検出器を使用する特定の利点は、ピクセルが検出器の感知面上に非常に正確にほぼ空間的に配置されるという点である。これは、そのような検出器のために使用される厳格な半導体製造プロセスに起因する。更なる利点は、感知面が一般に非常に平坦であるという点である。これらの特徴により、検出器は、ほんの小さなエラーに晒される態様で、強度パターンの僅かな部分を捕らえることができる。典型的な画素化された検出器を使用する更なる利点は、検出器にけるピクセルの数を非常に多くすることができ、例えば10ピクセル、3×10ピクセル(VGAに対応する)、または、10ピクセル以上とすることができるという点である。例えば、KodakからのKAF50100検出器などの市販の検出器は50.1×10ピクセルを与える。
【0100】
システムでは、検出器が強度パターンの僅かな部分を直接に捕らえることが好ましい。したがって、本発明の幾つかの好ましい用途では、強度パターン発生器と検出器との間に機能的な光学素子(レンズなど)が存在しないことが好ましい。これは、そのような機能的な光学素子の避けられない収差に起因するエラーの導入を回避する。あるいは、強度パターンを検出器へ向けて反射するために反射手段が使用される場合には、反射手段と検出器との間に更なる機能的な光学素子(レンズなど)が存在しないことが好ましい。前述したように、検出器は、合焦を伴うことなく干渉パターンの最大値/最小値を検出することができる。更にまた、発生器と検出器との間の光学経路の少なくとも一部にエタロンを含む本発明の他の実施形態について以下で説明する。エタロンは、エタロンを伴わない実施形態を超える技術的利点を与える。
【0101】
物体は、1軸、2軸、または、最も好ましくは3軸(一般的には直交軸)に沿って並進移動できることが好ましい。これに加えて或いはこれに代えて、物体は、1つ、2つ、あるいは、好ましくは3つの回転軸(一般的には直交回転軸)周りで移動できてもよい。これらの軸に沿う物体の移動またはこれらの軸のうちの任意の1つ或いは任意の組み合わせの周りでの物体の移動が、検出器により検出される強度パターンの部分に変化を与えることが好ましい。
【0102】
干渉パターン発生器によって与えられる電磁放射線は、空間的にコヒーレントであることが好ましい。コヒーレンス長は一般に十分に大きく、そのため、干渉パターンの最大値及び/又は最小値は、検出器の全ての望ましい動きに関し、検出器にわたって検出されて解析されるのに十分な視認性を有する。例えば、干渉パターンが光学素子における絞りの配列によって生成される場合には、最小コヒーレンス長が絞り間の最大間隔であることが好ましい。絞りが正多角形の頂点に配置される(例えば、5つの絞りが五角形の頂点に配置される)例を考えると、最小コヒーレンス長は、頂点に一致する円の直径であることが好ましい。無論、絞りがあまり規則的でない配列で配置される場合には、以下で絞りの配列の“直径”と称される同様の要件が成り立つ。コヒーレンス長がこの好ましい要件を満たすと、干渉パターンは、発生器の前方の全ての空間にわたって延びる。これよりも小さいコヒーレンス長は、発生器の前方の小さい角度を満たすパターンをもたらす。これは、許容できる場合があり、あるいは、幾つかの用途にとって好ましい場合さえある。したがって、検出器の前方の±45度の円錐を満たすことが望ましい場合には、コヒーレンス長が<絞り配列直径>×sin(45度)となる。しかしながら、非常に小さい角度だけを満たすことが必要とされる場合(例えば、ピンホールから僅かに離れた範囲にわたる位置測定の場合、例えば風力タービンブレードに関して)には、コヒーレンス長は小さくなければならない。
【0103】
検出器は、レーザなどのコヒーレント光源を含むことが好ましい。ガスレーザが技術的観点から特に適している。これは、そのようなレーザが安定した波長を与えることができるからである。典型的なガスレーザとしては、He−Ne、Ar、Kr、Xeイオン、N、CO、COレーザが挙げられる。COおよびCOレーザなどの赤外線レーザを使用できるが、対応する赤外線検出器(例えば、水銀−カドミウム−テルル化物を使用する)は、光検出器のために開発されてきたスケールの経済性を考慮しても、光検出器よりかなり高価である。あるいは、固体レーザが使用されてもよい。多くの異なるタイプの固体レーザが存在するが、YAGベースまたはYLFベースの固体レーザ(例えば、Nd;YAG)が好ましい。これは、それらの固体レーザが中心波長の良好な温度安定性を有することができるからである。半導体ダイオードレーザも好ましく、特に、分布帰還型レーザ、分布ブラッグ反射器レーザ、および、垂直キャビティ面発光レーザなどの長いコヒーレンス長を有するタイプが好ましい。エルビウム添加ファイバレーザなどの光ファイバ固体レーザも好ましい光源である。他のタイプのレーザを使用できる。例えば、YAGは、Ce,Pr,Sm,Eu,Ho,Er,Tm,TbおよびCr、並びに、Ndでドープすることができる。
【0104】
コヒーレント光源は、パルス光信号を供給するようになっていてもよい。信号のパルス作用の周波数は、好ましくは少なくとも10Hz、より好ましくは約25Hzである。これは、検出器の適切な動作を可能にし得る。無論、コヒーレント光源は、好ましくは最適な信号対雑音及び/又は検出器のダイナミックレンジに対応する周波数またはその近傍で、検出器により検出され得る周波数の光を生成しなければならない。一般に、パルス繰り返し周波数は検出器によって制限される。検出器は、少なくとも10kHzの比率を可能にするサブ領域を有することが好ましい。パルス光信号の各パルスの幅は、50ns以下、例えば約10nsまたは約100fsであることが好ましい。
【0105】
システムの動作中、検出器の各呼掛け(すなわち、“検出事象”)ごとに少なくとも1つのパルス光信号が存在することが好ましい。与えるパルス幅が短ければ短いほど、時間分解能が良好になる。しかしながら、短いパルス幅はコヒーレンス長を損なう場合があり、そのため、非常に短いパルスにおいてはトレードオフがある。なお、本発明者等は、トレードオフが従来の干渉計における場合ほど厳しくないと考える。パルスエネルギーが検出器で良好な信号対雑音比を与えるのに十分であることが好ましい。
【0106】
パルス発振は、測定が行なわれる間の発生器と検出器との間の任意の相対的な動きに起因する問題を排除するのに役立ち得る。また、システムは一般に角度を成して干渉する光ビームを使用するため、縞模様が更に長い周期を有する。コヒーレンス長は経路差の縞模様の数を制限するため、システムは、光源のコヒーレンス長よりも長い距離にわたって動きを測定できる。これにより、非常に短いパルスレーザ(前述した100fsパルス長など)を使用できる。また、パルス発振は、同じ平均光出力において平均電力入力を減らす場合がある。
【0107】
しかしながら、幾つかの状況では、パルスモードではなくCWモード(連続波)で動作する利点が存在し得る。例えば、パルス発振は、パルス中に光学的ダメージである“チャーピング”を引き起こす場合があり、また、安全性の問題が存在する場合がある。レーザのパルス発振では、電子シャッタ(既に多くの検出器に存在する)を使用して、レーザの代わりに検出器を開閉(gate)する。
【0108】
強度パターン発生器は、コヒーレント光から強度パターンを生成するための1つの光学素子(または、複数の光学素子)を含むことが好ましい。光学素子は、少なくとも位置決定作業の継続期間にわたって、コヒーレント光源に対して所定の位置関係を成すことが好ましい。しかしながら、幾つかの実施形態では、コヒーレント光源と光学素子との間に光ファイバ配列などの移動可能な光学経路を設けることができる。
【0109】
光学素子は、光の透過および回折のための透光絞りの配列を含むことが好ましい。絞りは既定のパターンで配置されてもよい。絞りがピンホールであってもよい。例えば、5つのピンホールの正五角形配列が本発明の好ましい実施形態の実施に適することが分かってきた。同様に、19個のピンホールの配列が適することも分かってきた。しかしながら、本発明はこれらに必ずしも限定されず、異なる形状の絞り及び/又は異なる数の絞りが使用されてもよい。本発明の幾つかの好ましい実施形態のための主要な要件は、前述したように、結果として生じる強度パターンが略並進的に非周期的であるということである。しかしながら、この要件は、パターンがゼロ対称性のみを有することを必ずしも意味しない。パターンが例えば回転対称性を有してもよい。そのようなパターンは、依然として本発明と共に使用されてもよいが、一意的に検出され得る回転動作の最大角が制限される。パターンの更なる望ましい特徴は、パターンにおける最大値および最小値が有用な大きいパターン領域および測定空間にわたって分布しているという点である。
【0110】
絞りがそれぞれ回折格子の小領域から形成されてもよい。例えば、各絞りが2つ以上のスリット(例えば、長方形スリット)を備えてもよい。これは、強度の角度分布にわたって制御できるという利点を有する。あるいは、例えば分極効果が得られるように楕円形絞りが使用されてもよい。
【0111】
本発明者等は、前述したような光学素子を使用して有用な強度パターンを生成できることを見出した。そのような光学素子は、例えば、他の光不透過部材における透光絞りの配列によって設けられてもよい。光不透過部材は、例えば基板上に形成される不透明膜であってもよい。パターンが比較的大きい測定空間内へ延びるようにするためには、一般に絞りが小さくなければならない。その結果、光学素子に入射する光の大部分が透過せず、そのため、システムの効率が低くなる場合がある。
【0112】
この問題を扱うため、光学素子は、光を透光絞りへ向けて優先的に方向付けるための合焦手段を含むことが好ましい。例えば、それぞれの絞りが対応する合焦手段と関連付けられてもよい。合焦手段は、入射光を透光絞りの焦点或いはおおよその焦点へと至らせることが好ましい。合焦手段が位相物体として実現されてもよい。それぞれの合焦手段は、それぞれの絞りと関連付けられるゾーンプレートであってもよい。ゾーンプレートパターンは、誘電体膜または不透明金属膜にエッチングされてもよい。誘電体膜に形成されるゾーンプレートが高い効率を与える場合があると考えられる。合焦手段は、少なくとも1つのゾーンプレート、少なくとも1つのレンズまたはマイクロレンズ、少なくとも1つのミラー、少なくとも1つの空間光変調器、および、少なくとも1つのホログラムから選択されてもよい。
【0113】
光学素子は、上面および下面を有する光透過基板を使用して適切に形成されてもよく、それぞれの面上には光不透過層が形成される。絞りおよび合焦手段は、光不透過層の一部を除去し或いは省くことにより形成されてもよい。例えば、これは、電子ビームリソグラフィなどのリソグラフィ技術を使用して行なわれてもよい。これにより、絞りおよび合焦手段を高い空間精度で形成することができる。
【0114】
合焦手段は、透光基板の表面の成形によって形成されてもよい。例えば、合焦手段は、位相光学素子、例えばキノフォームまたは二相位相ゾーンプレートを備えてもよい。
【0115】
幾つかの実施形態において、絞り(すなわち、干渉パターンのための光源)は、ホログラムまたはキノフォームまたはゾーンプレートの配列などの回折光学素子の焦点に位置されるのが好ましい。特にキノフォームの使用は、それが“−1”次の焦点スポットの抑制を可能にするため好ましい。そのようなシステムの1つの欠点は、焦点スポットの位置が発生器内の光学素子に対するレーザのアライメントおよびレーザの波長に大きく依存するという点である。
【0116】
絞りがピンホールである場合には、ピンホールのエッジを非常に高い正確度で形成することができる。その場合、残りの光学素子の役目は、ピンホールが均一に照明されるようにすることである。しかしながら、コヒーレントに照明されるコンパクトな光源の配列を生成するための任意の手段を使用できる。例えば、光学素子は、光ファイバ束(例えば、シングルモードファイバ)、または、マイクロレンズの配列、または、格子、プリズム、あるいは、光を特定の点で自由空間に結合するためのファセットを有する集積光学素子ネットワークを備えてもよい。
【0117】
システムでは、システムの要素の互いに対するレイアウトの様々な順序変えがある。
【0118】
1つの順序変えでは、コヒーレント光源および光学素子(強度パターン発生器を一緒に形成する)が互いに対して固定されてもよく、また、物体および検出器が互いに対して固定されてもよい。おそらく、これが最も簡単な基本レイアウトである。
【0119】
他の順序変えでは、コヒーレント光源および光学素子および検出器が互いに対して固定されてもよい。この場合、物体は、強度パターンの少なくとも一部を検出器へと反射するための反射手段を含んでもよく、それにより、物体の動きを検出できる。これは、物体が能動的な電力消費デバイスをその位置に有する必要がなく、したがって、物体位置での熱管理が更に容易であるという利点を有する。
【0120】
他の順序変えでは、コヒーレント光源および光学素子が互いに対して固定されなくてよい。この場合、コヒーレント光は、例えば光ファイバなどの光学経路に沿って光学素子へと伝えられてもよい。この場合、光学素子が物体に対して固定されてもよい。検出器がコヒーレント光源に対して固定されてもよい。この場合も先と同様に、物体が能動的な電力消費デバイスをその位置に有する必要がないという利点がある。
【0121】
本発明者等は、電磁放射線(一般に、光)の2つ以上の波長を使用してシステムが作動されてもよいと更に考える。この利点は、対応する数の強度パターンを設けることができるという点である。これらは同じ発生器によって発生されてもよい。しかしながら、強度パターンを発生させるために、各波長が一般に単一の光学素子内で該光学素子の対応する絞りへ向けて案内されることが好ましい。異なる波長の強度パターンは、波長に基づいて少なくとも部分的に検出されてもよい(例えば、フィルタリングにより)。これに加えて或いはこれに代えて、異なる波長の強度パターンは、パターンにおける最大値及び/又は最小値の間隔に基づいて少なくとも部分的に検出されてもよい。都合良く、光源として、2つの波長を出力できるレーザ、例えばDPYレーザが使用されてもよい。異なる波長の強度パターンは異なる回転周期性を有することが好ましい。
【0122】
システムは、発生器から検出器へと至る電磁放射線のための少なくとも2つの異なる経路長を与えて、少なくとも2つの異なる経路長に対応する少なくとも2つの干渉パターンを検出器に与えるための経路変更手段を更に含んでもよい。一般に、少なくとも2つの干渉パターンは、検出器で少なくとも部分的に重なり合う。
【0123】
経路変更手段は、発生器から検出器へと至る電磁放射線のための3つ以上の異なる経路長を与えることが好ましい。経路変更手段は、それぞれの経路長に沿う電磁放射線の反射に差を与えてもよい。例えば、発生器と検出器との間にエタロンが設けられてもよく、異なる経路長は、使用時に、検出器に到達する前にエタロンを横切る電磁放射線の異なる通過数によって与えられる。検出器で与えられる異なる強度パターンにおける経路長の差は、波長の決定において使用されてもよい。
【0124】
幾つかの実施形態において、電磁放射線は、エタロンにおける二重往復経路よりも短いコヒーレンス長を有してもよい。この理由は、その後のパターンが互いに干渉できないからである。
【0125】
使用時、電磁放射線パターン発生器は、異なる波長の少なくとも2つの成分を有する電磁放射線に基づいて電磁放射線干渉パターンを発生させるようになっていることが好ましい。システムは、検出器の異なる部分へと向かう異なる波長の成分を空間的に分離するための波長依存セパレータを更に含んでもよく、各成分に対応する干渉パターンは、使用時に、随意的に検出器で部分的に重なり合う。波長依存セパレータは、波長依存分散配置または波長依存フィルタ配置であってもよい。本発明は、波長の少なくとも一方または両方の決定を可能にし得る。
【0126】
好ましくは、システムは、光をほぼ遮断する筐体内に入れられ、あるいは、微光状態で動作する。これは、低雑音背景を検出器に与えるのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の一実施形態で用いる、正五角形の頂点に配置される、5つのピンホールを有する光学素子を使用して形成される並進的に非周期的な回折パターンを示している。
【図2】ペンローズタイリング(Penrose tiling)の一例を示している。
【図3A】本発明の一実施形態に係るシステムの概略斜視図を示す。
【図3B】図3Aのシステムの側断面図である。
【図3C】図3BのC−Cで捕らえられる回折パターンの概略正面図を示している。
【図3D】図3BのD−Dで捕らえられる回折パターンの概略正面図を示している。
【図4】本発明の一実施形態で用いる、19個のピンホールのリングからの回折パターンを示している。
【図5A】本発明の一実施形態で用いる光学素子の中心部を示す。
【図5B】光学素子の一方側のより詳細な図を示している。
【図6】図3と比較される変形システムの概略図を示している。
【図7】理想化された座標格子(図7)を射影変換によってどのように歪ませて不格好な座標格子(図8)を与えることができるのかを示している。
【図8】理想化された座標格子(図7)を射影変換によってどのように歪ませて不格好な座標格子(図8)を与えることができるのかを示している。
【図9】類似性に関して最も大きい値を有するオフセットに対応する最も大きい輝度を伴う点を相関で見つけることにより、大きい像内で簡単な正方形基準パターンの位置をどのようにして突き止めることができるのかを示している。
【図10】ペンローズタイリングのパターン例を示している。
【図11】図10のパターンの自己相関を示している。
【図12】擬似ランダムノイズシーケンス(PN)配列のサンプリングを示している。
【図13】ペンローズパターンのサンプリングを示している。
【図14A】マーク探し出し方法および相関ベースの方法によって測定されたxドリフト(図14A)とyドリフト(図14B)との間の比較を示している。
【図14B】マーク探し出し方法および相関ベースの方法によって測定されたxドリフト(図14A)とyドリフト(図14B)との間の比較を示している。
【図15A】マーク探し出し方法および相関ベースの方法のxドリフト変化(図15A)とyドリフト変化(図15B)との間の比較を示している。
【図15B】マーク探し出し方法および相関ベースの方法のxドリフト変化(図15A)とyドリフト変化(図15B)との間の比較を示している。
【図16】“ヤングのスリット”実験の概略図を示している。
【図17】“ヤングのスリット”実験の概略図を示している。
【図18】nに対するxのプロットを示している。
【図19】図18の場合と同じ条件におけるxに対するδxのプロットを示している。
【図20A】図3Aに基づく変形実施形態を示している。
【図20B】図20Aの平面16b,16cで捕らえられる回折パターンの概略図を示している。
【図21A】異なる波長の2つの強度パターン(図示せず)の発生のために視準光学素子を照射するべく使用される従来の二重周波数YLFマイクロレーザを示し、図21Aは第1の波長(例えば、赤色光)を示している。
【図21B】異なる波長の2つの強度パターン(図示せず)の発生のために視準光学素子を照射するべく使用される従来の二重周波数YLFマイクロレーザを示し、図21Bは第2の波長(例えば、緑色光)を示している。
【図22】検出器にぶつかる非周期的な回折パターンに存在する空間周波数を使用して入力レーザビームの波長を測定できるように、検出器と光学素子との間の距離間隔が固定される、図3と光学的に等価な実施形態の概略図を示している。
【図23】発生器によって生成される縞模様が一次元でほぼ周期的である図22の実施形態の変形を示している。
【図24】エタロンを貫く光の連続的な通過が次第に粗い縞模様を検出器にもたらすように、エタロン80が発生器と検出器との間に配置される、図23の実施形態の変形を示している。エタロンの形状が既知であるため、縞模様を形成する光の波長を推測できる。したがって、不十分に規定される波長を有するレーザを使用して光学素子と検出器との距離間隔を測定できる。
【図25】検出される縞模様パターンが非周期的である図24の実施形態の変形を示している。
【図26】図25の実施形態の動作モードを示している。検出器からの増大していく距離でのピンホールの“像”の形成に対応して、強度および空間周波数を減少させる一連の干渉パターンが測定される。その後の像は、エタロンの光学的厚さのほぼ2倍だけ離間される。
【図27】円柱レンズ(L1,L2)の系が発生器と検出器との間の介挿される図23の実施形態の変形を示している。
【図28】フーリエ領域での回転測定の測定精度の決定を示している。
【図29】xおよびyのそれぞれに伴うzの変化率としての傾斜角ψ,φの定義を示している。
【図30】本発明の実施形態における干渉パターン発生器で用いる光学素子におけるピンホールの五角形レイアウトの概略図を示している。
【図31】ホログラフィックコリメータを絞りへ向けて貫く入力ビームの経路を示す、本発明の一実施形態と共に使用するための光学素子の概略部分断面図を示している。
【図32】円形絞りによる回折によってもたらされるエアリー円盤を示している。
【図33】本発明の一実施形態における発生器で使用される光学素子で用いるための格子周期の計算のための構成を示している。
【図34】本発明の一実施形態における発生器で使用される光学素子の設計で用いる開口数を決定するための構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0128】
好ましい実施形態および更なる随意的特徴の詳細な説明
ここで、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を一例として説明する。
現代の技術では、位置の測定が非常に重要な作業である。本発明の好ましい実施形態により、極めて高い精度で非常に低コストに位置を測定できる。好ましい実施形態は、物理的に小さく、かつ、高度に設定変更可能なシステムを提供する。
【0129】
我々は、ここで最初に、簡単に言えば、写真投影機とスクリーンとから成る光学系の概念的な例に基づいて、システムが作動する態様について述べる。像がスクリーン上に投影される。一般に、画像はスクリーンよりも僅かに小さい。第1のケースでは、投影機がスクリーンに対して真向かいにあり、そのため、像がスクリーンに対して“スクエア(square)”である。第2のケースでは、投影機がスクリーンの更に近くへと移動され、その結果、像が更に小さくなる。したがって、スクリーン上の像のサイズは、投影機がスクリーンからどの程度離れているかについての指標である。スクリーン上の像のサイズが測定される場合には、これにより、投影機からの距離を決定できる。
【0130】
投影機およびスクリーンの相対的な配置の他の決定を行なうことができる。投影機がスクリーンに対して正確にスクエアオン(square-on)でない場合には、投影機は一般にスクリーンよりも僅かに下側であり、上を向いている。この場合、像の下端は小さく、像の上端は大きい。像は台形形状へと歪められる。したがって、歪みの特徴は、投影機がスクリーンに対して向いている角度の指標である。
【0131】
本発明の好ましい実施形態では、像の倍率、歪み、位置(上または下)、および、回転を調べることにより、投影機がスクリーンに対してどこにあるのか、および、投影機がどの方向を向いているのかを推論できる。投影機を任意の方向に移動できるが、任意の移動は、6つの可能な方向での移動の適切な組み合わせによって規定することができる。これらは軸x,y,zに沿う並進およびこれらの軸を中心とする回転であり、そのため、6つの次元(x,y,z+3つの全ての回転軸)で位置の明確な指標が与えられる。本発明の実施形態によって与えられ得る位置測定の正確度は1立方インチ当たり100nm(システマチックエラー)程度であり、この場合、ランダムエラーはほぼゼロである。好ましい実施形態では、正確度が高められてもよい。
【0132】
像の全てがスクリーンで捕らえられるとは限らない場合であっても、スクリーンに対する像の相対位置を決定することができる。例えば、投影機がスクリーンから非常に遠く離れて移動される場合には、像の小さな部分だけがスクリーンで捕らえられる。像のそれぞれの部分が像の他の部分と異なる場合には、原理的に、像のどの部分がスクリーンで捕らえられていたのかを決定することができる。しかしながら、像の一部が非常に均一である或は他の部分に類似していると、この決定を行なうことが困難となり得る。
【0133】
この例に伴う他の困難は、簡単な投影機を使用すると投影機がスクリーンから離れるように或はスクリーンに近づくように移動されるにつれて像の焦点が外れてくるという点である。像のぼやけた部分を特定することは更に難しい。
【0134】
より有用なシステムを提供するために、システムの“投影機”および“像”部分は好ましくは以下の特性を与えるべきである。
・像は、多量の細かい詳細を与えるべきであるが、どの場所においても異なっているべきである。
・像の焦点が決して外れるべきではない。
・像は、その構造が知られている像でなければならない。
【0135】
本発明の好ましい実施形態は、並進的に略非周期的な実空間回折パターンを使用する。そのようなパターンの簡単な例は、正五角形の頂点に配置される5つのピンホールからの回折パターンである。この回折パターンが図1に示されている。図1に示されるパターンは5回回転対称性を有し、それにより、該パターンは、まるでペンローズタイリングのように並進下で決して繰り返さない。典型的なペンローズタイリングが図2に示されている。そのようなパターンは、並進対称性がないという点において並進的に非周期的である。局所的に特定の“テーマ”が繰り返すが、十分な面積の像においては、パターンの一部だけがそれ自体のように見えるのが分かる。
【0136】
したがって、光場は、“フィボナッチのペンタグリッド”と呼ばれる数学的対象に類似する特性を有する[“Diffraction from one− and two−dimensional quasicrystalline grating” N. Ferralis, A. W. Szmodis, and R. D. Diehl Am. J. Phys. 72 (9) p. 1241−6 (2004)]。光場の“マップ”は、簡単な光学的対象(例えば、ピンホール配列)の形状、検出器平面の位置、および、レーザの波長の知識から簡単に得られるため、観察される場(決して並進的に繰り返さない)並びにピンホール形状およびレーザ波長の知識から光学素子に対する平面の位置の知識へと逆行して知ることができる。
【0137】
図1の像は回折パターンであるため、像の焦点は外れていない。その代わり、その像はホログラムのように空間を満たす。また、像は、ホールの簡単な配置からの回折によってもたらされる明確な数学的対象であるため、像の任意の部分が何のように見えるべきかを計算することができる。したがって、像の“マップ”は数式である。そのため、検出された像(画像の一部に対応する)を照合して像が画像中のどこにあるのかを見分けるために巨大な画像を記憶する必要はないはずである。
【0138】
回折パターンのサイズは、五角形のサイズ(例えば図1のような回折パターンの場合)や光学素子のホールの直径などの光学素子の特徴を変えることによって制御することができる。このようにすると、必要とされる大きい或いは小さい体積の空間を満たすように回折パターンを引き起こすことができ、また、回折パターン中の最大値(明るいスポット)の距離間隔を検出器(先の例では“スクリーン”に相当する)の分解能に適合させることができる。
【0139】
システムの物理的実現が図3に示されている。先の例では投影機に相当する回折パターン発生器は、ピンホール配列の形態を成す光学素子が取り付けられる(例えば接着される)レーザから成る。一般に、光学素子は、光不透過層が電子ビームリソグラフィを使用してパターニングされて成る石英の小型チップである。光学素子の裏側には、レーザをピンホールに合焦させる他のパターン(これも同様に電子ビームリソグラフィによって書き込まれる)がある。
【0140】
システムの形成に関与するアライメント作業の大部分は、ピンホール配列が形成されるときにウエハスケールで行なわれる。レーザの選択は制約されない。例えば、1つの有用なレーザは、レーザポインタで使用されるものと同様な小型ダイオード励起YAGレーザである。これらは1cmパッケージで利用でき、そのため、システムをコンパクトかつ強固にすることができる。検出器(先の例では“スクリーン”に対応する)は、CCDまたはCMOS技術に基づく固体カメラチップである。これらは、所定範囲のサイズおよび画素数で利用できる。当業者であれば明らかなように、他のタイプの検出器が使用されてもよい。一般に、検出器は、干渉パターンを形成するために使用される電磁放射線の波長を含む様々なファクタに基づいて選択される。例えば、検出器を1cmパッケージで設けることができる。システムは、回折パターン発生器および検出器の全体の方向性を決定するようになっているため、これらの2つをハードウェア的にアライメントするために特別に注意を払う必要はない。その代わり、測定されるべき物体の座標系が測定装置の座標系からソフトウェア的に変換され、それにより、コサインエラーと、測定されるシステムの物理的な動作軸に対する測定システムの正確なアライメントの必要性とが排除されてもよい。
【0141】
CCDまたはCMOSフォトセンサは、現在のプロセスにおいては当たり前のように、50nmよりも良好なピクセル配置正確度をもって形成される(130nmノードのオーバーレイはウエハにわたって65nmである)。したがって、低コストカメラチップが(偶然の一致で)非常に正確な物差しである。好ましい実施形態と共に使用するのに適した典型的な検出器チップは市販の1.3メガピクセルチップである。しかしながら、当業者であれば直ちに分かるように、異なる検出器チップ(一般的には、より多くのピクセルを伴う)が定期的に利用可能になり、また、同様に異なる検出器チップを本発明と共に使用できる。
【0142】
前述したように、システムは、光学素子上のパターンを変更することによって回折場のサイズを変えるために修正することができる。電子ビームリソグラフィを使用して光学素子上にパターンを形成することは、現代の電子ビームリソグラフィ機を使用して形成されるパターンがフォトリソグラフィマスクではなくソフトウェアを使用して決定されるため、有益である。また、ピンホールのサイズおよび形状を非常に正確に規定できる。
【0143】
光学素子が大きいサイズを成す場合には、他のプロセスによって、例えばナノインプリントリソグラフィまたはフォトリソグラフィを使用して光学素子を製造することが好ましい可能性がある。そのようなプロセスは、約2nmのランダム位置エラーに対応する約20nmに至るまでの寸法の特徴を形成することができる(例えば、遠紫外線リソグラフィを使用して)。
【0144】
本発明を具現化する典型的なシステムは、数十立方センチメートル(数立方インチ)の体積を調べることができる。そのようなシステムは、光学顕微鏡および光学ステージで用いるのに適している。
【0145】
別のシステムが異なるレーザを使用して構成されてもよい。二重ネオジムYLF/YAGマイクロレーザの利点は、小サイズ、低電力、低コストであるが、ビームが明確な波長で良好な形状を有する。多くの想定し得るレーザを使用できる。適した別のレーザが表1に挙げられている。
【0146】
【表1】

【0147】
本発明の好ましい実施形態が任意のレーザタイプを用いて満足に作動すると考えられる。検出器は一般にシリコンベースであり、また、可視波長及び/又は近赤外波長が一般に必要とされる。特に、長い“コヒーレンス長”のための要件は非常に緩やかであり、そのため、(例えば)短いパルスレーザが使用されてもよい。
【0148】
検出器の選択の幅は、広いとともに、検査中の領域の位置を明確に突き止めるために回折パターンの十分大きい部分を捕らえる必要性によって主に制限される。
【0149】
システムの速度は、一般に、検出器で捕らえられるパターンの部分の完全な像を読み出すために要される時間によって制限される。低コストコンシューマ型CCDまたはCMOSカメラチップの場合、これは一般に最大で50フレーム/秒である。より複雑な撮像チップを非常に迅速に読み出すことができ、例えば像全体に関して500フレーム/秒[例えば、Micron Technology, Inc.の部品番号MT9M413C36STM、8000S. Federal Way, Boise, ID 83707−0006, USA]、または、像のほんの一部に関して数十キロサンプル/秒で読み出すことができる。これは、ほぼ絶対位置が既に知られている動作の測定に関して、例えば可聴周波数範囲全体にわたる振動の測定において、有用である。
【0150】
これに関しては、パルス光信号を使用することが有益である。パルス繰り返し周波数は、基本的に、レーザによってではなく検出器によって制限される。前述したように、検出器は、部分領域に関して数十kHz程度をもって利用できる。また、パルス幅は動きを“停止させる”ために有用である。コヒーレンス長は、呼掛けられる面積ではなくピンホール間隔に等しいだけで済むため(前述したように、絞りの配列の直径に関して)、本発明の好ましい実施形態は既知の干渉計に優る重要な利点を有する。例えば、100fsパルス長を伴うシステムは30μmのコヒーレンス長を有するため、通常の干渉計は最大で30μmの距離しか測定できない。本システムの場合には、500nm波長レーザおよび30μmコヒーレンス長を使用して、約60×60縞模様(最大及び/又は最小)を与えることができる。しかしながら、これらは、望まれる任意の面積を覆うことができる。したがって、32μm周期を用いると、干渉分光法を約2mm(60×32μm)にわたって高精度で行なうことができる。これは、波面測定において特に有用である。先の表1で言及されるように、小型の受動QスイッチYLFおよびYAGレーザが知られている。これらは、構成が通常のグリーンマイクロレーザに非常に類似しているが、付加的な可飽和吸収体を伴う。これらのレーザは約10nsのパルスを与えることができ、それにより、10nsで最大30μmのサンプル速度(すなわち、3ms−1)を可能にする。
【0151】
他の用途は、像の他の歪みの測定に関連する。回折パターン発生器に対する検出器の単純な動きは、前述したような明確で滑らかな歪みをもたらす。一方、回折パターン発生器とスクリーンとの間に歪曲媒体が存在する場合には、像が更なる歪みを被る。一例は、かげろう、徐々に波打つ水、または、アンティークなウインドウガラスを通じて物体を観察するときに見られる効果である。システムは、そのような更なる歪みの程度を測定して、投影機とカメラチップとの間の屈折率の変化のマップを形成することができる。システムは、これを非常に高い正確度まで行なうことができ、それにより、“位相物体”を高い感度をもって定量的に撮像することができる。そのような位相物体は、タービンブレード上の気流、または、電子部品上方の熱風、または、水のサンプル中の透明な有機体あるいは他の物体に起因する場合がある。システムは、カメラチップのサイズにほぼ等しい面積にわたって位相を撮像できるだけである。カメラチップは一般に大きくないため、システムは、小さい物体の付近で位相を撮像できるだけである。一方、システムは、数ピクセル間隔(約10μm)に等しい空間分解能を有し、そのため、位相差顕微鏡としての機能を果たすことができる。
【0152】
1つの特定の用途において、本発明の一実施形態は、光学顕微鏡のためのステージ位置読み出しで使用される。顕微鏡を使用する際、ユーザは、ステージ上でサンプルをあちこち移動させて、異なる領域を見る。一般的には、ミクロンレベルのサンプルにおける比較的大きな物体の位置およびサイズを記録するために、また、サンプルの厚さの指標である焦点位置を測定するために、特定の位置へ戻る必要がある。図3に関して説明した実施形態がこの用途にとって理想的である。ナノメートル未満の精度および再現性を与えることは、実際には、この用途においてあまり必要ない。アライメントの容易さ及び小サイズにより、システムを顕微鏡の任意の都合良い部分に取り付けることができる。これにより、特定の架台をそれぞれごとに設計して製造する必要なく、本発明を多くの異なる型およびモデルの顕微鏡と共に使用することができる。本発明の実施形態の絶対正確度は、較正を伴わずに0.1%程度である。少なくともある程度の大きさは単一の測定によって達成できる(高さ及びレーザ波長を効果的に較正する)。本実施形態が6つの全ての軸を直接に測定できることは、ステージに対する測定システムのアライメントがソフト的に達成されてもよい(コサインエラー補償)ことを意味する。また、実施形態は、既存の顕微鏡における安価なレトロフィット可能性も高める。
【0153】
本発明の実施形態は、多くの異なる技術分野で用途を見出す。既に言及された用途に加えて、本発明の実施形態は以下において使用されてもよい。
・製造ロボット(特に、航空宇宙産業において)
・機械的なアクチュエータ(特に、動きの精度を必要とするアクチュエータ)
・光学素子製造
・研磨
・自動車検査
・外科手術ロボット
・測定器具(例えば、マイクロメータおよびダイヤルゲージ)
・マイクロポジショニングシステム(例えば、旋盤、フライス盤、リソグラフィ工具、光学機械、精密動作ステージ測定)
・電子顕微鏡ステージ
・ナノポジショニングシステム
・制御システム(ロボット、航空宇宙、自動車)
・品質制御・処理(成分計測)
・ヒューマンインタフェース(ジョイスティック、ノブ、および、レバー)
・科学的測定(例えば、天文学)
・サーボ制御
・例えば、小粒子に関する弾道学的研究で用いる使い捨て可能な干渉計
・医療干渉計(例えば、定量的な振戦測定)
・精密非接触コントローラ(例えば、爆発性雰囲気でのノブおよびジョイスティック)
【0154】
本発明の実施形態は、極めて高い精度と低コストおよび多軸能とを組み合わせる。
【0155】
ここで、本発明の好ましい実施形態に関する更なる技術的詳細について説明する。
【0156】
図3A−Dを参照してシステムの動作について説明する。コヒーレント光12は、レーザ10によって発生されて、光学素子14を照射するために使用される。明確にするため、図3Aには光学素子の全てが示されておらず、実際には、光学素子14の五角形配列のピンホールが光12によって照射される。光学素子14は、検出のための利用できるパターン内に並進的に非周期的な実空間縞模様の系16を形成する。パターンのサンプルC−Cは、図3Bに示される位置で取得される。サンプリングされたパターンが図3Cに正面図で示されている。光学素子から離れて更に検出器18の方で取得されたサンプルは、サンプル位置D−Dによって示され且つ図3Dに示されるように、更に大きい縞模様間隔を有する。したがって、検出器18の表面上で撮像されるパターンは、場内の検出器の位置によって一意的に決定される。非周期場の選択は、以下で詳しく説明される多くの基準に依存する。一般に、回折場の“リッチさ”(像内に規定されてもよい固有点の数に対応し、像の位置決めに関連付けられるランダムエラーと相関関係がある)と、検出された像を空間内の位置として解釈するために使用されるアルゴリズムの容易性との間にはトレードオフがある。適切な選択のため、6つの全ての次元(3つの並進自由度および3つの回転自由度)を明確に規定することができる。例えば、5回準周期的回折パターンの場合(図1)には、1つの縮退のみが存在する。すなわち、光学素子と検出器とを分離する軸の周りの回転に関してパターンが72度ごとに繰り返す。
【0157】
システムの予測される正確度および精度は、多くのシステムパラメータの関数である。縞模様間隔は、検出器のピクセル間隔の約2倍であることが好ましい。これは、一般に、市販のカメラにおいては2.2μm〜約20μmの範囲にある。回折場内で最大値の位置を突き止めることができる検出器の能力はほぼ完璧である。例えば、回折場が4ピクセル間隔の明るいスポット間に平均的な距離間隔を与えるように設定されていた場合(この必然的に帯域制限されたケースではかなりオーバーサンプリングされる)には、小さい(VGA=640×480ピクセル)光検出器における各像が19200個の別個の最大値を含む。各最大値の位置の特定は、像の信号対雑音によって制限される(帯域制限された信号をサンプリングする際の情報の損失はない)。典型的な検出器(50dB SNR)の場合には、最大ピクセルおよび隣接する2つのピクセルを使用する中心に対する簡単な二次式適合が、10−3ピクセル間隔の位置でランダムエラーを与える(MonteCarlo/Excelによって行われる解析)。したがって、(例えば)検出器の並進位置におけるランダムエラーは、各ピークの位置でのランダムエラーによって与えられ、特定された最大値の数のほぼ平方根だけ、すなわち、ほぼ
【数1】

だけ減少される(また、それは、推測され、場合により、自由度の数(6)の平方根だけ減少される)。
【0158】
これは、従来(例えば、Michelson)の干渉計における同じ数の光子を使用して予期される精度と単に比較される。1ピクセル当たりに3・10個の電子(典型的な高いダイナミックレンジのCCDの飽和点)があると仮定すると、従来の干渉計は約0.002nmの位置正確度(非常に大雑把に言って、λ/光子の数の平方根)を与える。これは安心感を与える。なぜなら、20μm“周期”縞模様パターンの位置の検出は、波長の半分の間隔を有する縞模様パターンの位置を検出するよりも正確である必要がないからであり、そのため、解析はもっともらしい。
【0159】
本発明のこの実施形態におけるナイキスト限界は、ピクセル間隔が干渉パターンの周期の半分に等しいことである(言い換えれば、干渉パターンにおける最大値間の間隔がピクセルのピッチの2倍に等しい)。これよりも小さい干渉パターンの周期にわたって、すなわち、サンプリング限度を超えてデータを抽出することができるが、像のコントラストが低下する。干渉パターンの周期がピクセルピッチに等しくなることが最悪のケースであるというのは注目に値する。これは、検出された信号の振幅がゼロになるからである。
【0160】
検出器におけるデッドピクセルの効果を考慮することは有用である。パターンが像全体にわたって生み出され、最終的な解析は一般にフーリエ領域で行なわれる。したがって、考慮中の空間周波数が像全体にわたって同じであるように、像の実空間内での適切な歪みの後、その空間周波数の波の特性が、以下で更に詳しく説明されるような窓離散フーリエ変換を使用して抽出される。これは、光学素子の一対のピンホールに関連する周波数および位相を与える。その後、全てのピンホール対に関して手続きが繰り返される。したがって、動作可能なピクセルからの実信号は全てフーリエ面内の単一のポイント対に集まる。一方、デッドピクセルからの信号は実空間内の単一のポイントを占める。単一のポイントからの変換は、変換の全体にわたって均一な振幅である。ウィーナー−ヒンチンの定理から、2つの領域のエネルギーは同じである。したがって、均一な正弦波縞模様は、フーリエ面内の単一のスポットに集中される大きい全エネルギーを有する。欠陥(デッドピクセル)は、その後に全フーリエ面にわたって可能な限り薄く広げられる非常に小さいエネルギーを有する。正弦波信号変換のピークに近い変換値のみを考慮することによって測定が行なわれるため、したがって、単一のピクセル欠陥の効果は排除される。
【0161】
ここで、我々は、検出器におけるピクセル間隔と回折パターンにおける最大/最小間隔との間の関係について更に詳しく考慮する。これは、3つの部分で、すなわち、(I)通常の動作における精度の計算;(II)振動測定法に関する精度の計算;(III)位置を決定するために必要とされるパターンの割合の計算において考慮され得る。システムにおけるランダムエラーのより十分な議論については明細書本文において後述する。
【0162】
(I):通常の動作における精度の計算
図3の5−ピンホール発生器が使用されるとすると、検出器のピクセレーションによるエイリアシングを伴うことなく干渉パターンを検出する必要がある。したがって。我々が強度の正弦波変調を有する場合、我々は、正弦波の周期の半分よりも近い間隔でピクセルを互いに離間させる必要がある(サンプリング定理)。5ピンホール配列は、正弦波の数の総和である1つのパターンを生み出す。したがって、干渉パターンは本質的に帯域制限される。このことは、我々がナイキスト限界の非常に近傍でサンプリングできて少しの情報も失わないことを意味する。したがって、我々は、発生器の最も近くまで接近すると、最も短い周期の正弦波がピクセル対角線上に(例えば)2ピクセルの周期を有するものと予想する[なお、色検出器チップが使用される場合には、緑色ピクセル(例えば)が検出器領域を半分だけ満たす]。そのため、保守的なアプローチをとって、存在する4つのピクセルにつき1つのピクセルだけを使用できるようにし、活性ピクセル間隔×2×√2辺りのピーク−ピーク間隔を考慮に入れると、我々は32ピクセルごとに1つの最大値を得る。したがって、1メガピクセル色検出器は32768個の最大値を検出できる。モノクロセンサを使用すると、これが4倍だけ増大する(131072個の最大値)。各最大値は、ピクセル間隔よりもはるかに小さいほどに正確な2つの位置を与える。したがって、モノクロ検出器を用いると、262144個の数を6つの座標系で計算することができる。このため、本発明者らは、システムが非常に小さなランダムエラーだけ(高精度)を有すると考える。パターン全体における最大値の数は、波長およびピンホール間隔だけによって決定される。そのため、光学素子は、好ましい(平均)作用距離を隔てた最大値で検出器を満たすように容易に規定される。各最大値を決定できる精度は統計によって制限される。したがって、検出器上の典型的なピクセルは、それが約10個のピクセル上の電子を有するときに“満杯”である。電子の数の変化は、電子の数の平方根、すなわち、約300である。これは、読み出しノイズ(通常の写真用途では露光不足領域のみにおけるファクタである。通常は数個の電子)に対して大きい。ここで、我々は、曲線を(サンプリングされた)値に適合させることによりピーク位置を規定する。ナイキスト限界でピークが2つのピクセル値に正確に中心付けられる場合には、ピーク幅が1つのピクセルの幅と同じである。このとき、ピークがピクセル間隔のちょうど1%だけ移動されれば、我々は、電子全体の1%が1つのピクセルへ更に入り込んで他のピクセルから更に出ると予測する。したがって、移動前の状況は、ピクセルAが50000個の電子を有する状況である。ピクセルBは50000個の電子を有する。移動後、ピクセルAは100000個の電子の1%を更に多く有し、ピクセルBは100000個全体の1%減る。したがって、移動後、ピクセルAは51000個の電子を有し、ピクセルBは49000個の電子を有する。これは、約300個の電子の変化×3である差異である。そのため、ピクセル間隔の約0.3%に対応するおおよその動きを検出できる。典型的なピクセル間隔は2−20μmであり、7μmが通常の値である。したがって、この例では、x−y方向での1つのピークからの検出可能な最小移動は7μmの約0.3%=20nmである。262144個の測定値が6座標へ平均化されれば、(262144/6)の平方根の改善が得られる。したがって、これは約200倍の改善である。そのため、精度は約0.1nmである。
【0163】
(II):振動測定法に関する精度の計算
ある場合には、位置の僅かな急速な変化、すなわち、振動または滑らかな連続的動きを測定することが好ましい。検出器チップの角部の4つの小さい領域を呼掛けて、通常のデータ転送速度(約50メガピクセル/秒)をとると、50kサンプルで1000ピクセル値が読み出される(パターンの強度が十分であり、適切な検出器が使用されると仮定する)。これは、25kHzまたは0.01nm/Hz−1/2の帯域幅で、√(1000/6)×20nm、すなわち、約1.6nmの精度を与える。
【0164】
(III):位置を決定するために必要とされるパターンの割合の計算
ここで扱われるべき問題は、(実用的目的のために)位置規定が一意的となる前にどのくらいの大きさの干渉パターンが捕らえられる必要があるのか?ということである。数学的には、ペンローズパターンの何らかの任意の部分領域の無数のコピーが無限ペンローズパターン内に含まれる。しかしながら、実用的な目的のために本実施形態が有限パターンを使用するため、この数学的証明は厳格に適用されない。また、好ましい実施形態のいずれも厳密なペンローズパターンを実際に使用しないことに留意されたい。振動測定法においては、位置の変化だけが測定される。したがって、この考慮は、振動測定法において大した問題ではない。しかしながら、絶対位置測定においては、この問題を扱うことが有益である。まず第1に、絶対位置測定のために検出されるパターンだけに依存する必要はないかもしれない。例えば、単に、使用されるステージの位置を記憶していることにより、あるいは、非コヒーレントパターン投影機または簡単なターゲットイメージングなどを使用することにより、大雑把な表示が使用されてもよい。パターン自体に関しては、中心領域へ向かって移動するにつれてパターンが更に明るくなり(当業者であれば良く分かるように、個々のピンホールのエアリー回折パターンによりパターン全体が変調される)、それにより、パターンの“包絡線”がパターンの中心へ向かう方向の表示を形成することが予期される。第2に、本発明の典型的な実施形態では、検出器が多数の最大値及び/又は最小値を捕らえる。パターン中の2つ以上の場所の非常に大きい回折パターンにおいてさえも(例えば)10000個の最大値の全てが同じ相対位置にあるケースはあまりない。当業者であれば分かるように、パターン中の異なる候補領域間を区別するために使用されるアルゴリズムは、パターンの性質と使用される検出器のサイズおよびタイプとに合わせて調整されてもよい。実用的なシステムでは、一般に、製造時に任意の欠陥の影響を評価するために何らかの較正が求められる。しかしながら、そのような欠陥(例えば、意図的に導入される)が利点となる場合もある。5つの円形のピンホールの“純粋な”系の場合には、回折パターンが回転対称性(72°)を有する。これは、パターンの意図的な変更によって、例えば一軸方向に向けられた楕円ピンホールの使用によって排除できる。
【0165】
干渉パターン全体内の干渉パターンの検出部のおおよその位置の特定のための他の方法は、ピンホールの各対によって次々に考慮されるときにもたらされる縞模様に存在する非線形歪みを使用することである。ピンホールの単一の対において、回折パターン最大値は、その焦点がピンホール位置にある一組のネスト化した双曲面を描く。したがって、次々に考慮されるピンホールの各対からの縞模様の曲率の測定値を、撮像面に対するピンホールの位置を推測するために使用できる。ピンホールの各対によってもたらされる回折パターンは、フーリエ領域でははっきりとしており、その結果、像の空間フィルタリングによって容易に分離されてもよい。
【0166】
第1の動作モードでは、2つの要素の位置を0.088nm内に保持するために干渉計が制御システムで使用される。一例としては、顕微鏡および他の解析技術、例えば長期にわたる後方散乱/チャネリングマップが挙げられる。
【0167】
第2の動作モードでは、6軸で0.088nmRMSエラーを伴ってストロボ式に(パルスレーザ/検出器)或いは幾つかのピクセルから信号をリアルタイム(非常に高い帯域幅で単一軸において約5nmRMS)で監視することにより、特定の位置付近でシステムの振動を測定するために干渉計が使用される。この後者のモードは、一般に、高いフレームレートにとって最適化されるカメラチップ、例えばMicron Technology, Inc.の部品番号MT9M413C36STM、8000S. Federal Way, Boise, ID 83707−0006, USA、を必要とする。
【0168】
パターンがほぼ明確である(非周期である)という事実は、回折場内の検出器の絶対位置の特定を可能にする。絶対精度の決定におけるシステマチックエラーは、回折場を規定し得る正確度のエラーと関連付けられる。
【0169】
カメラのピクセル間隔は、リソグラフィックに規定されて完璧と見なされる。また、優れた構造(以下を参照)によって、カメラの架台および光学素子の熱膨張を補正し或いは補償することもできる。回折場は、光学素子と関連付けられる位置エラーの倍率を表わす。電子ビームにより規定される絞りにおいては、絞りを約5nm内まで位置決めすることができる。これは、緑色光におけるλ/100の縞模様シフト、または、20μm/100(200nm)の20μm周期縞模様のシフトに対応する。絞り規定における細心の注意により、この数を、リソグラフィプロセスにおいて約2nmまで減らすことができ、したがって、約80nm縞模様正確度まで減らすことができる。光学素子にわたる位相シフトのドリフトが問題になる可能性がある。150μm直径の五角形を使用するλ/100の入射レーザの傾きにおいては、約50μradの指向安定性を与えることが必要である。これはHeNeレーザの能力内であるが、一般にダイオードおよびYAGレーザはかなりのマージンだけ更に悪い。解決策は、空間フィルタと回折素子とが単一のモノリシック構造へと組み合わされる2層光学素子を使用することである。最後に、縞模様のサイズは直接に波長に対応する。したがって、100nmの位置正確度をもって立方インチの体積を呼掛けるため、レーザ波長が約4ppmまで安定であることが好ましい。これは、HeNeレーザの能力の範囲内である。YAGレーザ[H. G. Danielmeyer, “Progress in Nd:YAG Lasers,” in Lasers, A. K. Levine and A. J. DeMaria, eds. Marcel Dekker, New York, 4 (1976)]の場合、0.04cm−1−1のドリフトが基本波長すなわち4ppm K−1において予期され、それにより、適度に大きい距離に関して計量正確度がガスレーザの使用を求めると予期される。なお、±5Kの実験室温度範囲にわたって、YAGレーザは、1立方インチの体積で1μm絶対内まで或いは0.1立方インチの体積で100nm内まで距離を測定できる。正確度およびコスト/サイズをトレードオフする余地がある。
【0170】
第3の動作モードでは、干渉計は、適度な費用(約$400のHeNeレーザコスト)で、6つの自由度における絶対距離間隔を100nm内まで測定するとともに、1立方インチを超えるビデオレート読み取り値を測定する。
【0171】
第4の動作モードでは、干渉計は、非常に低コスト/小サイズで(YAGレーザのコストは約$10から)、立方インチで1μmまで測定できる。他の体積を正確度の比例スケーリングをもって呼掛けることができる。非常に大きな体積は良好なレーザを必要とする場合があり、その場合、大気に晒されて、立方メートル単位の100nm正確度が可能である。
【0172】
レーザは一般に以下から選択される。
HeNe(例えば、小キャビティレッドHeNe 632.8nmで約0.5mW:Example Melles Griot, model 05 SRP 810−230, 1つにつき$430)。このようなレーザは、大きいとともに、コンセント電源(約18W電力)で給電される。これらのレーザは、優れた光学的品質および線幅を与える。これらのレーザはターンキー動作を行ない、また、重要な環境要件はない。
【0173】
二重YAG(532nm波長)。このようなレーザは、光子がシリコンセンサを使用して検出されるようになっている場合には二重にされる必要がある。コヒーレンス長15nm、波長シフト(モーダル)1インチで1μm(ウォーミングアップ中のファブリー・ペローキャビティシフト)、および、ゲイン波長の同様の温度ドリフト。これらのレーザは安価である(レーザポインタコスト約$10、CE認定科学モジュールコスト約70ユーロ)。そのようなレーザは、非常に小さく(例えば、9mm TO can sp3plus GDL 6001)、DC電源である(2.5V、1W)。これらのレーザは、良好な光学的品質を与えるが、機械的にはあまり良好ではない(ドリフトがミリラドレベルになる虞がある。以下を参照)。
【0174】
ダイオードレーザ。このようなレーザは、波長の熱ドリフトが非常に悪いが、非常に低コストで小型である。そのようなレーザは、光学素子にわたって広がるのに十分なコヒーレンス長のみを必要とする(一般に<1mm)。位置正確度は一般にたった約1%である。そのようなレーザは、特に反射モードで非常に低コストな振動計の基準を与える。使用されるダイオードレーザがシングルモードである場合には、波長の簡単な測定により、ガスレーザを使用して得られる正確度に相当する高い正確度が得られる場合がある。以下で説明するように、これは、システムの簡単な変更により低コストで容易に達成される。
【0175】
図3に示されるシステムでは、2つの電動モジュール(レーザ10および検出器18)が、その相対的位置が決定されるようになっている2つの物体(図示せず)に接続(例えばボルト締結)される。したがって、これらのモジュールは、比較的大型であってもよく、いずれも熱を放散する。他のオプション(図示せず)は、シングルモードファイバ(ここでは、ピッグテイルYAGまたはダイオードレーザを使用できる)を使用してレーザを光学素子14に結合することである。このとき、検出器およびレーザは、同じ物体に位置させることができ、したがって互いに対して移動せず、そのため、1つの熱源だけを与える。この場合、光学素子を非常に小型で受動的にすることができる。5mm立方体に相当する体積が一般的である。これにより、移動要素の基準点に非常に近接して光学素子を装着でき、それにより、熱膨張エラー量、クローズドループシステムに取り込む質量に関して利点が得られる。他の形式(図示せず)は、カメラおよび光学素子を同じハウジング内に配置して、場をカメラへ反射するためにミラーを使用することである。この場合、測定は距離間隔および2つの傾きに制限される。他の形式(図示せず)は、大きな体積(数立方メートル)を回折場で満たし、その後、端部にボール(または、他の接触デバイス)を伴って(随意的に手持ち式の)カメラを有することである。カメラの位置(x,y,zおよび3つの傾き)は、ボールの位置を3次元で一意的に規定する。したがって、ボールを使用して大きい3次元物体の形状をマッピングすることができる。この場合、光学的な危険などの取り扱うべき幾つかの特定の問題がある(5回場ごとの強度がほぼ均一であって約1μWcm−2であってもよく、これがクラス1に近いことに留意されたい)。この実施形態では、迅速なセンチメートル位置決めの必要性があり得る(より正確な位置測定のための開始点を与えるため)。これは、超音波振動子を使用して達成できる。ボールは例えばロボットによって扱われてもよく、それにより、これらの問題のそれぞれが取り組まれる。
【0176】
光学素子を様々な方法で形成することができる。非周期性のクラスの選択は全く自由である。5回(ペンローズのような)パターンは、場にわたってかなり均一な濃密配列の最大値の利点を有する。そのようなパターンは、正五角形の形状を成すピンホールの配列から簡単に発生させることができる。これは、位置の統計を改善するとともに、低ダイナミックレンジの検出器の使用を可能にするが、複雑なアルゴリズムを必要とし得る。しかしながら、任意の他のほぼ並進的に非周期的なパターンが使用されてもよい。図4に示される例は、19個のピンホールのリングからの回折パターンである。19回配列の利点は、それが容易に特定された中心スポットと更に明白な長い範囲の構造とを有するという点である。
【0177】
非周期場発生器におけるピンホール配列の利点は、構造の寸法公差が非常に容易に特定されて許容されるという点である。しかしながら、回折場が大きな体積を満たすように、ピンホールは小さくなければならず、それにより、光学的スループットが低下する。別の手法は、例えばゾーンプレート、マイクロレンズ、プリズムなどの軸外配列といった良好なスループットを有する光学系を使用することである。しかしながら、非常に構造化された光場の寸法正確度が低い場合があり、また、スペックル、大きな強度ダイナミックレンジなどに起因する問題が存在する場合がある。
【0178】
好ましい実施形態では、複合光学素子が設けられる。一例が図5Aに示されており、図5Aは、石英ウエハから形成される光学素子20の中心部を概略的に示している。石英ウエハの全体の面積は約1mmであってもよい。石英ウエハの裏側には、150nm厚のタングステンから成る層22が形成される。アルミニウムなどの他の金属を使用することもできる。石英ウエハの前側には、150nm厚のタングステンから成る他の層24が形成される。ピンホール26が、電子ビームリソグラフィを使用して、概念的な正五角形の頂点で、タングステン層24の前側に形成される。ゾーンプレート28が、同様に電子ビームリソグラフィを使用して、対応する概念的な正五角形の頂点で、タングステン層22の裏側に形成される。ゾーンプレートの効果は、裏側からの入射光を前側へ向けてピンホール26に合焦させる(光線30参照)ことである。これは、回折場を発生させるためにより多くの入射光を使用することによりシステムの効率を高める。
【0179】
図5Bは、光学素子20で使用するのに適したゾーンプレート配列の更に詳しい図を示している。これは実際には簡単な“集光器”であり、そのため、5つのゾーンプレートレンズによってレーザが(この実施形態では)5つのピンホールに合焦される。なお、実際の光学素子は、図5Bに示されるよりも多い数の“ゾーン”を有してもよい。また、5つの別個のゾーンプレートの組を規定するのではなく、ビームをホログラフ的に平行にする光学素子を計算することもできる−これについては以下で更に詳しく説明する。
【0180】
モノリシック光学素子の使用は、ゾーンプレートとピンホールとの間の正確なアライメントを保持するという利点を有する。位置決め角ドリフトを抑制するため、光学素子がファイバアライメントホールまたは空間フィルタに組み込まれてもよい。ゾーンプレートを適切な電子ビームリソグラフィ機のソフトウェア制御によって形成することができる。したがって、必要に応じて軸外動作を達成することができる。同様に、単一の点光源(例えば、ファイバまたはレーザダイオードファセット)から多くのピンホールへの視準を達成できる。マイクロレンズ配列、ホログラム、または、小型ミラーをゾーンプレートと置き換えて使用することができ、また、プリズム、格子、または、ミラーを使用して干渉場を形成できる。なお、回折パターンで満たされる空間の体積を簡単に変更することができる。個々のピンホールから出る光が散乱される角度は、ピンホールの直径によって制御される。図示の体積内の縞模様間隔は、ピンホール間の間隔によって、一般的には図5Aに(26)で示されるような光学素子のピンホールの五角形配列を取り囲む円の直径によって制御される。したがって、ピンホール配列の直径は、縞模様間隔(例えば約20μm)と波長の半分との比率だけ照射される面積よりも小さくなければならない。1m立方の体積は、約1インチの直径を有するピンホール配列を必要とする。これは、一般に、立方インチの照射のために必要とされるよりも正確な配列の照射を確保するために更に重要な光学素子(1/2mm直径の光学素子)を必要とする。あるいは、(更に小さい直径の光学素子を使用して)縞模様間隔を増大させることができる。これは好ましい手段である。なぜなら、大きな体積の測定精度は、いずれにしても、大気圧変化、対流、レーザ波長の定義の欠如などによって損なわれるからである。エラー量は、非常にフレキシブルであり、正確度、精度、および、コストに関して多くのトレードオフを行なうことができるようにする。
【0181】
一例として、VGA CCDを300000個の電子にまで「満たす」ために必要とされる総電力は30fpsで1μWであり、そのため、光学素子の光学効率は0.1%であれば済む。
【0182】
ピントがぼけたゾーンプレートを使用してアライメント公差を改善してもよい。それに加えて或いはそれに代えて、レーザをパワーサイクルして、熱負荷を減らすことができ及び/又はストロボスコピーを可能にすることができる。
【0183】
また、レーザ出力と発生器の光学素子との間で更なる光学素子を利用することができる。そのような更なる光学素子は、図5Aに示される発生器光学素子とのレーザ出力のアライメントにおいて更に大きな許容誤差を可能にする更なるゾーンプレートを含むことが好ましい。
【0184】
検出器は一般にモノクロである。CCDの検出器としての使用は、より均一な感度をピクセルごとに与え、それにより、測定される位置のノイズが僅かに低下され得ると予期される(一般に、このノイズはとにかく非常に小さい)。検出器は、(例えば)ベローズを使用する外部光源からのスクリーニングを必要とする。検出器はレンズを組み込むべきでないことが好ましい。これは、検出器ピクセルの位置決めの幾何学的精度がシステムの動作にとって極めて重要だからである(しかしながら、後述するように、他の実施形態は更なる機能性のためにエタロンを使用してもよい。更にまた、他の実施形態は、特定の機能性のために1つ以上のレンズを使用してもよい)。カスタムCMOSカメラが使用される場合には、かなり高いデータ転送速度で幾つかの光学的最大値付近の強度を呼掛けるためにカメラを再構成できる場合がある。これにより、前述したように幅広い帯域幅の振動を測定することができる。測定の精度は、ピクセル間隔が減少されるにつれて高まるが、正確度は、ほぼ全体的に、非周期場が発生される正確度によって決定される。感度は重大な問題ではなく、位置測定のためのデータ転送速度はカメラのフレームレートに等しく、そのため、高速カメラの使用が有益となり得る。
【0185】
検出器から受けられるデータの処理において、必要とされる計算の数は、一般に、画像圧縮(例えばJPEG)で使用される数ほどあまり多くない。5回ピンホールパターンの場合、典型的な処理アルゴリズムは、場内の全ての最大値の特定から始まる階層的なものであり、像中に存在する様々なモチーフの位置を(最も近い隣接最大値までの距離に基づいて)特定する。次に、モチーフ分布を計算された場の分布へマッピングして、場内のカメラの位置を特定し、最後に、傾きとピンホール−カメラの距離間隔とに対応するパターンの幾何学的歪みおよびスケールを特定する。出力データ転送速度を低くできるため(6つの数、30×/秒、状態フラグ)、当業者であれば容易に分かるように、インタフェースは、例えば、位置読み出しのためにUSBおよびテキストフォーマットを使用できる。
【0186】
パターンの位置の決定のための別の方法は、ほぼ空間周波数領域で処理を達成するために2次元フーリエ変換(2−dFT)を使用する。そのようなアルゴリズムは、例えばパターンの中心および隅でパターンの小さいパッチに関して2−dFTを行なうことによってパターン中に局所的に存在する空間周波数を測定することによって始まる。次に、光学素子と検出器との間の傾きの幾何学的効果を逆にするために、パターンが実空間内で歪まされる。局所的な周波数の測定は、補間アルゴリズムと適切な窓関数の選択とによって非常に正確に達成することができる。例えば、“Optimal interpolating windowed discrete Fourier transform algorithms for garmonic analysis in power systems”H. Xue and R. Yang, IEEE Proc. Gener. Transm. Distrib. Vol. 150 No. 5 p. 583−587 (2003)を参照されたい。そのようなプロセスは、パターン中に存在する空間周波数が略均一になるまで反復態様で達成される。この場合、必要とされる歪みは、光学素子と検出器との間の傾きの指標である。次に、再び適切に窓付けられた変換を使用して、像全体に関して2−dFTを行なうことができる。
【0187】
その結果、最大空間周波数の位置は、センサと光学素子との間の距離およびこれら2つの光軸を中心とする回転の直接的な指標を与える。測定された変換の位相が決定され、全ての位相がゼロ値であったように求められる並進が決定される。この並進距離は、光軸に対して垂直な面内での構成要素の動きを表わす。
【0188】
また、この方法により、エタロンを使用する波長の測定は、検出器全体をカバーできる(後述するハーフカバー検出器とは異なる)。この場合、エタロンを使用すると、光の複数の経路は、エタロンの光学的厚さを2倍だけ離間される距離に対応するパターンの変換の多数のレプリカとして現われる。そのようなエタロンは、干渉計の通常の動作中に連続した波長測定を可能にする。波長測定のためのこの技術については以下で更に詳しく説明する。
【0189】
システムは、システム全体の正確度のチェックとして、既知の精度の干渉計に対して較正されてもよい。
【0190】
システムは、拡張された領域にわたる光学波面の差動位相の変化の定量的測定のためのシステムとしての役目を果たすように構成されてもよい(例えば、シュリーレンシステムから得られる定性的効果に類似する)。これは、図3と比較される改良システムを示す図6に図示されている。同様の特徴には同様の参照符号を与えて再び説明しない。
【0191】
図6(図3Aにほぼ類似する)では、位相物体40が発生器(10,12,14)と検出器18との間に介挿され、位相物体40を通過した後に面42でサンプリングされるパターンが、面16で見られる本来のパターンと比べて歪ませられる。したがって、位置と関連するベースライン歪みが(ソフトウェアを使用して)除去される場合には、パターンの任意の残存する歪みが、呼掛けられる空間内の屈折率の局所的変化を反映する。これらの歪み(位置測定アルゴリズムからの「残存」)をプロットすることにより、シュリーレン像またはマッハ・ツェンダー干渉計を使用して得られるマップによく似た屈折率の直接的な定量的マップが与えられる。ここでの重要な利点は、システムの“アライメント”がソフトウェア的に行なわれるという点である。そのため、ミラー、ナイフエッジなどを注意深くアライメントするのではなく、発生器および検出器の位置を固定した後に即座に測定し始めることで事足りる。このアライメント要件がないことは、任意に激しく湾曲された波面の定量的測定と相まって、非常に魅力的である。適用例としては、弾道学(パルスレーザを使用する、ballistics)、化学プロセスまたは熱プロセスの“蜃気楼効果(mirage effect)”測定、透明な微小物体(プランクトンなど)の撮像および検出、接合された光学系(非球面レンズなど)の心出し、火炎前面の漸進的変化(evolution of flame fronts)、および、内燃機関での燃焼などが挙げられる。システムを低コストで製造することができ、また、光学素子の“ギアリング”効果が低コヒーレンス(短パルス)源の使用を可能にするため、システムは、トモグラフィー測定または極めて高速のビデオのために物体の周囲で多数の測定値を取得するのに良く適している。この位相測定システムに伴う1つの困難は、呼掛けられる領域のサイズが本質的にイメージセンサのサイズよりも小さいということである。したがって、この用途は(位置決め用途とは異なり)、高価な大型センサの使用を必要とするが、更に安価になる。
【0192】
図6の差動位相測定システムにおいて、干渉パターンの最大値は、発生器と検出器との間の体積を貫通する一連の(双曲線)経路を形成する。媒体40が(空間的に)可変の屈折率を有すると、光学素子14のピンホール間の位相関係が差動変調され、強度最大位置の“経路”を規定する曲線が歪まされる。したがって、平らなガラスシートが光学素子14と検出器18との間に配置されて、ガラスシートが検出器領域を半分覆っている状態の場合、ガラスにより覆われる領域の回折パターンは、例えば、ガラスが存在しない場所よりも検出器の方に近いパターンの特徴となるように思われる。これについては、図20aおよび図20bに関連して以下で更に詳しく説明する。プリズムは、検出器面に傾きを与えるように見える。レンズは曲率の局所的変化をもたらす。したがって、ピンホール配列に対する検出器の簡単な6軸配向性にパターンのバルクが合わされた後、屈折率の小さい勾配が、最大位置の移動の“残存”マップとして容易に測定される。
【0193】
システムは安価でコンパクトな構成要素から成ることができるため、多数の光源を単一の検出器に向けることよって(または、多数の完備システムを複写して物体をパンして撮影することにより)トモグラフィー位相撮像システムが容易に達成される。空間分解能は、パターン中に存在する空間周波数に近似する。物体を移動させるための時間分解能は、パルスレーザの使用によって容易に得られる。例えば、QスイッチYAGレーザが比較的安価であり、システムのコヒーレンス長減少要件は、非常に短いパルス長システムの使用を可能にする。例えば、1psレーザは、約500波長のコヒーレンス長、前述した“立方インチ”干渉計システムの説明で使用される最大位相差を有する。したがって、屈折率変化の完全な3次元像を形成するために、対象とされる(interrogated)体積の周囲に一連のシステムが配置されてもよい。そのようなシステムの適用例は、水を25立方インチ/秒で圧送する1インチ直径のパイプである。パイプ内に存在するプランクトンは、縞模様間隔に近似する分解能をもって検出(透明位相物体)されて撮像(ストロボ露光)される。これは大型検出器の使用を必要とする。“フルフレーム”検出器[http://www.canon.com/technology/canon_tech/explanation/cmos.htmlおよびhttp://www.kodak.com/US/en/dpq/site/SENSORS/name/ISSProductFamiliesRoot_product]は、手ごろな価格(約£1000)で書き込み時に利用でき、36mm×24mm(35mmフィルム相当)以上のサイズを有する。なお、そのようなセンサは遅い傾向があり(Nikon D3に関しては9fpsであり、これは書き込み時には従来通りである)、そのため、データ転送速度(レーザによって規定される時間分解能ではない)が制約される。他の用途は、(凸状)エアロフォイルの表面に近い空気圧の検査、表面の上側の反応生成物の進展(電気化学反応、溶解など)、火炎/燃焼研究(特に、内燃機関において)、弾道学など、流体における温度勾配および濃度勾配(プロセス制御および混合)、およびマイクロ屈折計法である。それにより、安価で(弾道学用途で有用な使い捨て可能であっても)コンパクトな高精度な定量的代替が高価な干渉計およびシュリーレンカメラに与えられる。
【0194】
屈折率歪みの検出は、そのような歪みがない状態で検出されるパターンが既知であり或いは計算されるという事実に依存する。したがって、対象体積(interrogated volume)内の屈折率の局所的変化は、発生器に対する検出器の粗雑な相対的動きに起因して生じる歪みから見分けられるパターンの歪みをもたらす。一般に、強度パターン発生器は、比較的小さい空間的広がりを成し(検出器のピクセル間隔は一般に光の波長よりも大きい或いはかなり大きい)、一般に本質的には、検出器に投影されるような対象体積の倍率がある。したがって、通常、検出器は、少なくとも、対象体積の投影と同じ大きさでなければならず、さもなければ、“対象とされる(interrogated)”体積の全てが取り調べられる(interrogated)とは限らない。例えば、1インチ平方の検出器は、1インチ平方よりも大きい面積として検出器に投影される体積における局所的な屈折率変化を測定するために使用することができない。
【0195】
他の想定し得る用途は、分布される反射物体にわたる差動拡張の撮像におけるものである。この場合、システムは、多くの“パッチ”を伴って構造化される物体に向けられる。この場合、干渉計を使用して、測定量に応じたパッチの相対的高さの変化を測定する。例えば、異なる高さを有する表面を伴う均質な材料が温度に応じて拡張し、それにより、困難な環境での温度測定が可能となる。方法が拡張されてもよい。例えば、湿度に敏感な材料の拡張が湿度の測定を可能にする。機能性パッチ(多孔性または機能化された表面)に対する化学結合は、汚染物質、生化学物質などの特定の化学物質の検出を可能にする。多くの(機能化された、および、基準)パッチが、表面と幾つかの検出される測定量とに同時に適用されてもよい。透明な基板上に堆積される透明なパッチは、困難な環境で用いる“ウインドウ”形態を成すセンサの背面からの測定を可能にする。
【0196】
好ましいシステムは、一般に、低い時間コヒーレンス、特に短いパルスレーザを有する光源と適合する。特に、回折光学素子は、使用される光源のコヒーレンス長よりもかなり長い体積の干渉計呼掛けを可能にするよう最適化される。これは、弾道などの高速プロセスの調査において重要である。
【0197】
当業者であれば分かるように、干渉計は位置測定の最も基準となるものであり、本発明の好ましい実施形態は、既存のシステムよりも高い正確度および精度を与える。本発明者らは、本発明の実施形態が1つのシステムによって6つの全ての軸を測定でき且つこの能力を有する既存の技術が存在しないことに留意する。干渉計状況における絶対位置を測定できるシステムの能力は、主要な利点であり、システムの始動時の“ゼロ”点の精度規定の必要性を排除する。好ましい実施形態を既存のシステムに組み込むことができる(簡単な外部パッケージング変更のみを必要とする)。システムは、競合する技術と比べて比較的低いコストで製造することができ、また、ここで想定される殆どの基本システムは、最良の存在する技術に匹敵する精度を有するとともに、高い正確度を有する。また、本発明は、psまたはfsレーザシステムなどの低時間コヒーレンス光源を使用して、大きな体積にわたる定量的な位相測定を行なうことができる能力を有してもよい。本発明の好ましい実施形態は、ターンキー位置測定を行なう。これらの実施形態は、非接触ベースで動作できるとともに、環境的に柔軟である。
【0198】
特定の実施形態では、システムがジョイスティックなどのコントローラ内で使用される。一般に、ジョイスティックの測定(例えば、航空機)において冗長性が求められる場合には、複数のセンサが一般にジョイスティックに設けられる。そのようなセンサは、単一の自由度を測定するため、同じ軸/ベアリング上で一般に平行である。一方、本実施形態の干渉計システムは、ジョイスティックの上端から下端への移動の全てを一度で測定できる。測定は、動きを実現して抑制するために使用されるベアリングシステムとは無関係であるため、ジョイスティック上に任意の場所により多くの干渉計を位置決めすることによって冗長測定が得られる。
【0199】
検出器からのデータの呼掛けは、適切なソフトウェアを使用して達成される。本質的に、このステップはデータ適合ステップである−回折パターンの計算された“マップ”に対して検出された像を適合させる。これを達成できる多くの想定し得る方法がある。特に、好ましい実施形態は、大域的な輝度変化/エアリー関数、または、初期の位置評価を誘導するためにパターンを形成する縞模様の曲率など、低空間周波数項目を使用する。モチーフ認識を使用でき、及び又は、ビニングピーク分離マップを使用できる。あるいは、“強引な”最小二乗相関が使用されてもよい。
【0200】
1つの実施形態において、全回折パターン内における検出像の位置は、電子ビームリソグラフィプロセスでウエハのアライメントを検出するために開発されたソフトウェアを使用して決定される。全ての機能的な半導体デバイスの製造は複数のリソグラフィ露光を必要とし、それぞれの露光に引き続いて、その露光によって規定されるサンプルの面積を変更する何らかのプロセスがなされる。これらの異なるリソグラフィ露光で規定される構造が互いに対して正確に位置決めされることが重要である。この単純化した例が電界効果トランジスタの製造におけるものであり、この場合、最初のリソグラフィ露光中にドレインおよびソースがパターニングされ、その後の露光は、既に規定されたドレイン領域とソース領域との間に正確に位置されなければならないトランジスタのゲートを規定して作動デバイスを製造するために使用される。パターンをそれが幾つかの既存の特徴に適合されるように露光中に位置決めするプロセスは、アライメントとして知られている。
【0201】
デバイスが益々小さくなって高密度にパッケージングされるにつれて、ナノファブリケーションの全てのステージで許容できる公差が結果として更に厳しくなる。デバイス製造の基本ステージのうちの1つであるアライメントは異ならず、したがって、現在の方法の改良は、半導体製造の全ての分野にとって深い関心事である。
【0202】
アライメントは、露光されるべき設計形態をウエハ上に既にパターニングされる層に対して関連付けることとして考えることができる。大まかに言えば、アライメントされるべき2つの層のそれぞれにおける位置が異なる座標系で表わされるものとして考えるのが都合良い。設計形態は、我々が露光後にウエハ上で観察することを期待するものである理想化された歪みのない座標グリッドを有する。しかしながら、ウエハの歪みに起因して、また、サンプルの装着と関連付けられる回転エラーおよび並進エラーに起因して、この理想化された座標系は、サンプルの表面で測定されるときに、オフセットされ、回転され、引き伸ばされ、および、歪められて、より複雑なキーストーン歪み、バレル歪み、および、ピンクッション歪みに晒される。この場合、アライメントのプロセスは、1つの座標フレームから他の座標フレームへと数学的に変換するための方法を見出すことであると見なすことができ、それにより、設計形態のその後の層が露光されるときに、設計形態の理想化された座標系が、既存の露光された層の歪みに正確に適合するように歪まされる。
【0203】
当業者であれば分かるように、回折場における撮像面(検出器)の回転および並進は、対象とされる体積における屈折率変化によってもたらされる歪みであるとして同様の解析を受けやすい。
【0204】
数学的には、この変換は、射影変換を使用して設計形態上の理想的な座標をウエハ上で測定される実際の位置に適合するように変換することによって達成できる。設計形態の(x,y)座標フレームからサンプル上の(X,Y)座標フレームへの射影変換のための一般的な表現は、以下の方程式1,2によって与えられる。この場合、係数と物理的歪みとの間の関係が表2に詳しく示されている。
【数2】

【0205】
【表2】

【0206】
射影変換が座標系に対してどのように影響を及ぼすのかについての例が図7および図8に示されており、これらの図は、理想化された図7の座標グリッドを不格好な図8の座標グリッドを与えるように射影変換によってどのように歪ませることができるのかを示している。
【0207】
射影変換のための8個の係数を計算できるためには、少なくとも4つの基準点が使用されなければならない。これらの4つの点のウエハ上における位置を測定して、それらの位置を我々が設計形態から知るそれらの予期される位置と比較すると、射影変換係数を完全に計算するのに十分な情報が与えられる。実際には、電子ビームリソグラフィとの関連のアライメントのため、これは、アライメントされるべきパターンの最初のレベルでマーカを設計して形成することによって行なわれる。現在、マーカは、正方形、八角形、または、十字形などの簡単な幾何学的形状であり、異なる原子番号を有する材料を堆積させることによって或いは基板の上端に刻設されるピットまたは基板の上端の隆起領域などの地形的形態を形作ることによって形成することができる。この場合、電子ビームを横断走査して、位置の関数として後方散乱電子信号を検査することにより、マーカを検出することができる。
【0208】
現在のアライメント方法は、幅広い範囲のデバイスに関して十分正確なアライメントを行なってきたが、アライメントのこのプロセスを使用するときに最終的に達成できる正確度を制限する幾つかの面がある。この技術に伴う基本的な問題点は、マークのエッジだけがそれらの位置に関する有用な情報を含み、そのため、マークのエッジだけがアライメントに寄与するという点である。したがって、正確度は、製造中にパターンのエッジをいかにうまく規定されたかに直接に関連付けられ、多くのエラーの影響を受けやすい。また、エッジを見つけるため、マークの全体の面積を上回る面積が呼掛け(interrogated)られなければならず、各マークエッジ付近の非常に小さな領域だけが、マーカの位置に関する任意の使用できる情報を含む。そのような大面積の呼掛け(interrogation)は、必然的に、レジストのこの面積の露光をもたらし、そのため、マーカは、その後のプロセスステップが必要とするどんなものに対しても晒される。これにより、ほぼ必然的に、マーカが使用できる状態の域を超えて破壊され或いは損傷される。これは、現在のアライメント方法においてもう1つの根本的な不正確さをもたらす。すなわち、多段アライメントが必要とされると、異なるアライメントマークがそれぞれのアライメントごとに使用されなければならず、これにより、更なるエラー源がプロセスに導入される。
【0209】
これらの問題を扱うため、Holburn等[Holburn, D. M., Jones, G. A. C. およびAhmed, H. (1981)“A pattern−recognition technique using sequences of marks for registration in electron−beam lithography, Journal of Vacuum Science & Technology, 19 (4), pp. 1229−1233”]は、画像レジストレーション分野およびパターン認識分野からの技術を利用するとともに、相関のプロセスに基づくアライメントアルゴリズムを使用した。
【0210】
相関は、画像処理に関して、2つの像間の類似性を測定するプロセスである。したがって、相関を使用して、ウエハ上に露出されるマーカの像内の理想的なマーカの基準像と存在する関連した歪みとを比較することによりマーカの位置を突き止めることができる。相関法を使用する主な利点のうちの1つは、マーカの位置を突き止めるために全体の像が使用されるため、呼掛けられた面積全体から情報が取り出されるという点である。
【0211】
数学的には、相関は、方程式3に見られるようなコンボリューション、2つの関数f(r)およびg(r)における相関積分に密接に関連付けられる。ここで、“*”は相関を示している。
【数3】

【0212】
コンボリューションは、しばしば、フーリエ変換を使用して更に都合の良い形式で表わされ、また、方程式4に示されるように、相関に関して同様の関係が存在する。ここで、F(k)およびG(k)は、関数f(r)およびg(r)のそれぞれのフーリエ変換を示し、また、F{}、

はフーリエ変換を示す。
【数4】

【0213】
方程式4から、空間領域における2つの関数の相関が、逆格子空間におけるそれらのフーリエ変換の乗算に等しいことが分かる。フーリエ領域における関数のうちの1つのオーバーバーによって示される複素共役は、畳み込み積分に対する相関積分の符号変化に起因する。
【0214】
関数のそれ自体との相関である関数の自己相関は、関数のパワースペクトル密度に対して重要な関係を有する。ウィーナー・ヒンチン(Wiener−Khintchine)の定理は、自己相関および関数のパワースペクトル密度がフーリエ変換対であると述べている[Koopmans, L. H. (1974). The Spectral Analysis of Time Series, chapter 2, number 22 in Probability and Mathematical Statistics - A Series of Monographs and Textbooks, Academic Press, New York and London, pp. 33−34]。これは、2つの等しい関数を相互に関連付ける場合に方程式4がどのように変化するのかを我々が考慮する場合に実証される。
【数5】

【0215】
ここで、相関の図解的解釈を求めると、これらの数学的特性からの実用的結果は、相関関係が2つの関数同士の間の類似性の指標を与えることを意味する。これは、一方の関数が他方の関数に対して変位されるからである。したがって、二次元関数(または、像)を使用してそれらを相関させると、最も大きい度合いの類似性を与える2つの像間の相対的なオフセットの指標を得ることができる。したがって、それを使用して、ノイズの多い、不完全な、あるいは、どうかすると歪まされる場合がある他の像内の基準パターンの位置を突き止めることができる。
【0216】
これが図9に概略的に示されており、図9は、類似性に関して最も大きい値を有するオフセットに対応する最も大きい輝度を伴う点を相関で見つけることにより、大きい像内で簡単な正方形基準パターンの位置をどのようにして突き止めることができるのかを示している。
【0217】
相関を使用してアライメントを実行すると、簡単な幾何学的形状をマーカとして使用するという制限が排除される。これは、マーカの位置を突き止めることがもはやエッジ検出の方法に依存しないからである。これは、より洗練されたパターンのマーカとしての使用を探る可能性を広げ、実際に、これは、相関に基づくアライメントの正確度に影響を与える最も重要なファクタのうちの1つである。
【0218】
パターン或いは更に重要なことにはその自己相関の評価を容易にするため、フィギュアオブメリットが導き出されてきた。アライメントにおいて最も必要な特徴は鋭くとがった自己相関であり、これが異なる自己相関同士の間をどのように関連付けるかについての表示を与えることを目的とする幾つかのいわゆるピーク鋭さ測度が存在する。ピーク鋭さ測度のうちで最も適用できるのは、ピーク対相関エネルギー比率すなわちPCEである。これは、相関の中心ピークに含まれるエネルギーを相関面内に含まれる全エネルギーに関連付ける。したがって、それは、自己相関の中心ピークの鋭さの直接的な測度を与える。すなわち、鋭いピークは、全エネルギーのうち、幅広く広げられるピークよりも大きい割合のエネルギーを中心ピーク内に含む。数学的には、それは方程式6によって与えられる。ここで、A(x,y)は相関の数学的表示であり、(0,0)はその最大値の位置である。
【数6】

【0219】
最良のアルゴリズムは、最良のケースのシナリオにおいて2Dデルタ関数により近似され得る鋭くとがった自己相関関数によってもたらされる。これは、自己相関において1に近いPCE(デルタ関数においては1に等しい)を与える。ウィーナー・ヒンチンの定理を使用すると、自己相関をパワースペクトル密度のフーリエ変換に関連付ける方程式5は、良好な自己相関特性を有する想定し得るパターンをもたらす。2Dデルタ関数のフーリエ変換は一定値であり、これは、ウィーナー・ヒンチンの定理を使用すると、理想的なマーカのパワースペクトル密度がフラットなプロファイルも有することを示唆する。1つの像において、これは、ピクセル間の全ての想定し得る距離間隔が、一定の回数ごとに、理想的には1回だけ、像内に表示されることを示唆する。それは、その範囲全体にわたって周波数の良好なサンプリングを伴う完全に非周期的なパターンである。
【0220】
前述した回折パターンが良好な自己相関特性を有することが本発明者等によって見出される。再びペンローズタイリングの例を考慮されたい。これらのタイリングは、無限周期をもって無限平面を完全に覆うために使用され得る2つの基本タイルのみに基づく。このことは、どんなに大きい並進シフトが導入されようともタイリングの任意の部分が決してパターン内に再び現われないことを意味する。選択するための無数の想定し得るパターンが存在し、また、パターンの一例が、図11に示されるその自己相関と共に、図10に示されている。
【0221】
ペンローズパターンの興味深い特徴は、それらの一般的な形状を直交格子によって容易に描くことができないという事実によってもたらされる。これは、ペンローズタイリングが、正方形要素からも長方形要素からも形成されず、図13から分かるように菱形または三角形の要素から形成されるためである。比較のため、図12は擬似ランダムノイズシーケンス(PN)配列を示している。この特徴は、直交格子空間上の正則点でパターンが呼掛けられ或いはサンプリングされるときに何が起こるのかを我々が考慮するときに利点を与える。パターンの周期性に類似する点間の間隔を格子が有すると仮定すれば、格子がパターンに対して僅かな量だけ移動される際に、サンプリングの結果が大きく影響されないことが望ましい。
【0222】
これを例示するため、想定し得るサンプリング格子の1つの垂直線が、一連のドットとして図12および図13の像上に描かれている[点の縦列の左側に、空白正方形ドットとして示される]。ドットの第2の垂直線は、位置の小さな移動後のサンプリング格子の同じ線を表わす[ドットの縦列の右側に、部分的に満たされた正方形ドットとして示される]。楕円は、位置の小さな移動がサンプリングされたパターンに不一致をもたらす点を強調しており、正方形ベース擬似ランダムノイズシーケンスパターンに関してかなり悪化している。この場合、半分を超えるサンプリング点の全てが一挙に変化しており、一方、サンプリング点の僅かな部分だけがペンローズパターンで同じ移動が与えられて変化している。
【0223】
相関ベースアライメントがいかにうまく小さな位置変化を測定できるかに関する幾つかの実用的な見識を得るため、ステージ位置の小さなドリフトを経時的に測定するための幾つかの実験が行なわれた。これを行なうため、システムがペンローズマーカの領域に位置されるようにセットアップされ、その後、約2時間の期間にわたって領域の像が定期的に捕らえられた。それぞれの像が得られると、相関プログラムは、その像と取得された第1の像との相関を生み出し、それから、x方向およびy方向の両方でステージの相対的な変位またはドリフトを計算した。ステージドリフトのこれらの測定値は、それぞれの相関と同時に行なわれる従来のアライメントまたはマーク探し出しルーチン(mark locate routines)によって測定される測定値と比較された。図14A,Bのグラフは、2つの方法を使用して測定されたx方向のドリフトとy方向のドリフトとの間の関係を示している。
【0224】
図14A,Bは、相関方法が小さい変位の指標をもたらすことができるという良好な表示を与える。しかしながら、これらの測定値がどの程度正確であるかをこれらのグラフから解釈することは難しい。しかし、特にxドリフトグラフ(図14A)からのマーク探し出しアルゴリズムによる結果の量子化に注目することができ、また、これが従来のアルゴリズムから達成できる正確度を制限し得る理由を理解することができる。
【0225】
相関ベースのアライメントの正確度の評価は、5次多項式をデータに対して最小二乗適合した後にこの曲線から点の偏差を測定することによって得られた。測定された点の標準偏差は、x方向で0.5nmの値を与えるとともに、y方向で1.1nmの値を与え、それにより、達成できる正確度に関する初期概算値が示唆された。
【0226】
相関方法の想定し得る正確度の更に直接的な指標を与えるため、同様の実験装置が使用された。しかしながら、2つのペンローズパターンが使用され、2つの相関がそれぞれ繰り返して行なわれた。これにより、両方の相関に共通のシステマチックエラーを排除でき、特に、それによりステージドリフトをデータから除去できた。これは、使用されるアルゴリズムの不正確さを含むアライメントプロセスの不正確さの指標を残す。図15A,Bのグラフは、そのような実験からの結果を示しており、組み込まれたマーク探し出しルーチンの変化と相関アルゴリズムのそれとをx方向およびy方向の両方に関して比較している。
【0227】
図15A,Bのグラフに挙げられるσ値は、曲線のそれぞれの標準偏差を示しており、また、曲線はアルゴリズムにおけるエラーに伴ってのみ変化するため、これは、相関ルーチンおよびマーク探し出しルーチンの達成できる正確度の直接的な指標を与える。x方向とy方向との間には際立った違いがあり、この場合、y方向の値が一般に悪化している。これは、たいがい、この方向でビームに約3nmの揺れが存在することに起因し得る。マーク探し出し結果と比べると、相関アルゴリズムは、約10倍良好な正確度、すなわち、x方向では4.6nmとは対照的に0.46nmの正確度を、y方向では9.8nmとは対照的に0.83nmの正確度をもたらす。これらの図は、相関ベースの方法を使用するnm未満アライメントの可能性を示している。
【0228】
したがって、当業者は、適切な相関ベースの処理技術を実施して、回折パターン内での取得像の位置を特定する。同様の技術は、歪まされていない回折パターンと比べると、取得像の歪みの特定を可能にする。
【0229】
回折パターンにおける最大値と最小値との間隔(縞模様)がパターン発生器からの距離に伴ってどのように変化するのかを考慮することは有用である。図16は、良く知られる“ヤングのスリット”実験の概略図を示している。縞模様は、2つ以上の絞り(スリット60,62)からの光間の建設的干渉に起因して生じる。結果として、距離の関数としての任意の2つの最大値間の間隔同士の間の関係を計算することができる。図16の場合のように2つの光源(スリット60,62)だけを考慮すると、波長λの光が距離bだけ離間される2つの絞りを照射するときに、スリットから垂直距離yにあるスクリーン上の照明は、一方のスリットからスクリーンまでの距離が他方のスリットからの距離と同一±波長の自然数の場合には明るい。したがって、r1−r2=nλとなる。この関係が成り立つ経路は、双曲線の基本定義に照らして、図16に曲線64により示されるように双曲線である。
【0230】
y=0での経路差を考慮すると、r1−r2=nλ=2aとなる。r1およびr2の値に関して代入すると、
【数7】

【0231】
λに関して書き改めると、以下のようになる。
【数8】

【0232】
そのため、nの増分に対応して共焦点双曲線上で連続的な最大値が見出される。
yがcに対して大きい(一般に、本システムの実施形態に関して当てはまる)場合には、双曲線はそれらの漸近線に至る傾向がある。すなわち、
【数9】

【0233】
双スリット干渉における従来の結果は、以下のようにx<<yと仮定することにより得られる。
【数10】

【0234】
これは、図17に示されるように、双スリットシステムに関して従来通りに得られる結果と容易に比較される。そのため、小さいλおよびy>>xに関しては、経路差が以下のようになる。
【数11】

【0235】
そのため、縞模様間の間隔は以下によって与えられる。
【数12】

【0236】
正確な式および近似式が図18に示されるようにグラフで比較されてもよい。図18は、20μmの軸上間隔に対応するλ=532nm、c=333μm、y=25mm、n=0〜1000に関してn(横座標)に対するx(縦座標)のプロットを示している。図18において分かるように、縞模様間隔に関する近似式は、大きな角度で間隔を低く見積もる。例えば、角度が45°(x=yに対応する)であるとき、縞模様間隔は、軸上の20μmから45°の56.5μmまで増大した。したがって、サンプリング定理は、縞模様間隔が軸上の撮像システムピクセル間隔に関して計算される場合に全ての入射角において満たされる。また、それは、図19に示されるように、等しい間隔からの縞模様間隔の逸脱が検出器と光軸との間の角度の指標としての役目を果たし得ることも示唆する。図19は、図18と同じ条件におけるx(横座標)に対するδx(縦座標)のプロットを示している。nに対するδxに関する式は、おそらく、偶数次数の多項式によってうまく表わされる。
【0237】
システムのための安価なレーザの使用に内在する1つの重要な不確実性は、レーザによって発せられる光の波長である。簡単なダイオードレーザの場合、波長は、約1%内であることが知られているだけの場合がある。Nd:YLFマイクロレーザは、おそらく、これよりも約10倍良好な性能を与え得る。安定したレーザ(HeNeなどのガスレーザ、非平面共振器YAGまたはDFBダイオードレーザなど)の使用は、非常に高価であり、ある場合には、システムのかなり大きい物理的サイズ、電力消費量の増大などをもたらす。しかしながら、後述する実施形態において、システムは、必ずしも使用されるレーザが高品質である必要はない。
【0238】
先に詳しく説明したように、回折パターンの縞模様間隔は、一般に、波長の半分よりもかなり大きい。したがって、コヒーレンス長要件はかなり緩い。シングルモードレーザの必要性も同じ理由により回避される。しかしながら、平均波長の正確な決定の必要性は依然として残る。
【0239】
想定し得る解決策は、ピンホール配列から入射する光の一部を捕らえる検出器の前方の“エタロン”のような厚いガラスのシートの使用である。実際には、検出器は、2つの検出器−エタロンを伴わない第1の検出器およびエタロンを伴う第2の検出器であり、これらの検出器は同一平面上にあって隣接する。エタロンは、複数の内部反射を減らすために反射防止コーティングを有する(ゼロ−Qエタロンに類似する)。この配置が図20Aに示されており、図20Aは、図3に示される特徴に類似する特徴を示す(同一の番号を付してここでは更に説明しない)が、検出器18の第2の部分との間の光路を遮るが検出器18の第1の部分との間の光路を遮らないエタロン50を更に示している。強度パターンに対して結果として起こる影響は、影響されない部分16bおよび影響された部分16cとして示される。実際には、影響された部分は、影響されない部分16bよりも光学素子14に近いように見える。
【0240】
エタロン50は、光学素子14から検出器18までの有効距離を減少させるという効果を有する。エタロンの光学的厚さは正確に且つ安価に決定され得るため(一般的には、後にダイスカットされるエタロンのウエハに関して単一の較正がある)、像の上端および下端で測定される有効間隔の変化が正確に知られる。見掛けの変化はレーザの波長に依存する。したがって、見掛けの距離の差は、レーザ波長を較正するのに役立つ。その結果、距離は、波長が知られているため、安価なレーザを使用して高い正確度で決定され得る。この場合、レーザは、単一の横波光学モードを有することが好ましい。これは、幅広いレーザ源にとって満たすのが容易な要件である。
【0241】
従来の(概算の)二重スリット計算を使用すると、縞模様間隔が“real−over−apparent−depth”引数だけ減少される。屈折率neおよび厚さteを有するエタロンに関して、距離間隔の変化は以下のみである。
【数13】

【0242】
軸外の更に入念な数値計算が必要とされる(スネルの法則/レイトレーシング)。物理的距離および方向が(波長決定の正確度内まで;反復解が必要)知られているため、これらの計算が容易に行なわれる。
【0243】
好ましい実施形態において、システムは、YFLマイクロレーザ(DPY)を使用して励起される。この場合、粗雑なアライメントのための第2の粗いパターンを与えるべく、ポンプダイオードレーザ波長が使用されてもよい。視準光学素子(ゾーンプレートが使用される場合)を使用して、異なる波長(この場合、緑色光および赤色光)を同じ発生器光学系の別個のピンホール配列に対して選択的に合焦させることができる。
【0244】
この一例が図21A,21Bに示されている。この図では、視準光学素子72を照射するために従来の二重周波数Nd:YLFマイクロレーザ70が使用される。図示のケースでは、粗い配列(赤色光を対象としたダイオードレーザ波長)が一方の5回対称パターンであり、細かい配列(緑色光を対象としたレーザ波長)が他方の5回対称パターンである。しかしながら、言うまでもなく、異なるパターン(例えば、更に高次のパターン)を使用して、光軸周りの回転曖昧性を排除または減少させてもよい。粗い配列は、ピンホールの細かい配列へ向けて光を平行にし、また、細かい配列は、ピンホールの粗い配列へ向けて光を平行にする。
【0245】
前述した単一波長システムの場合、回折パターンは並進的に非周期的であるが、明白な位置を与えるために、場の特定の最小領域が捕らえられなければならない。また、位置の何らかの粗い表示がデータの迅速な処理に役立つ。回折パターンは一般に回転対称性を有するため、光軸周りの角度に関する位置情報には曖昧性が存在する場合がある。
【0246】
異なる対称性(例えば7回)を有する精度が低いパターンを発生させるために第2の波長が使用されると、先の問題が排除される場合がある。第2の波長は、空間フィルタリング(数値法)によって或いはカラー検出器またはフィルタ(市販のカメラチップに既に存在する)の使用によって或いはこれらの両方によって区別されてもよい。
【0247】
二重YAGマイクロレーザの場合、第2の波長の都合の良い特別な光源がポンプダイオードレーザ(一般に860nm)である。これは、通常、YLF結晶の後のショートパスフィルタによってフィルタ除去されるが、通常は痕跡が残る。多量の赤色光は、漏れ電力が不適切であると分かれば、フィルタを単に除去することにより利用できる。視準光学素子が回折性のものであってもよく、その場合には、異なる波長の焦点が、出力“スリット”としての機能を果たす異なるピンホールに合わされ、それにより、光源がモノクロとなり、クロストークが排除される。これは、更なるパターンを発生させる非常に都合の良い方法である。
【0248】
本発明者等は、本発明と共に用いるための適切な干渉回折パターンがある程度の並進周期性を有してもよいと更に考えており、その周期は、パターンの最大値および最小値の間隔に対して比較的長い。一例として、適切な回折パターンは、1つの角部が幾何学的な正方形から整数比だけ変位される状態で2つの整数値を隔てる正方形の絞りを使用して発生されてもよい。ここでは、パターン発生器が複数の光波長を使用して動作する場合に生成され得るビートパターンに関してではなく光の単一波長によって生み出されるパターンに関して周期性が決定されることが意図される。強度パターンが反射器を介して検出器に達する他の変形では、屈折率が変更された少なくとも1つの領域を反射器に含むことが興味深い。前述した実施形態と同様の態様で、これにより、検出されたパターンは、強度パターンの異なる部分間を区別するのに役立つべく使用され得る対応するアーチファクトを含むことができる。
【0249】
再び波長測定の問題を考えると、本発明者等は、波長の測定が光学素子において重要な問題であることに留意する。非常に狭い線幅を有する電磁放射線のコヒーレント光源は容易に製造されるが、波長の絶対値は必ずしも適切な正確度をもって知られるとは限らない。可視および近赤外の光源の例は、分布ブラッグ反射器(DBR)および分布フィードバック(DFB)半導体レーザダイオードである。例えば、適切なレーザは、Eagleyard Photonics GmbH (Rudower Chaussee 29, 12489 Berlin, Germany)から入手できる。そのようなレーザは多くの重要な用途を有する。これらの用途としては、検出用の吸光光度法(例えば、O検出)、超微細レベルに同調することによる同位体分離(AVLIS−“Overview of Uranium Atomic Vapour Laser Isotope Separation” R. M. Feinberg and R. S. Hargrove, UCRL ID114−671 (1993)参照)、高密度波長分割多重(DWDM)ファイバ通信、空間計測学などが挙げられる。残念ながら、そのようなレーザの線幅は1MHzよりも良好となり得るが、駆動電流および温度の変化によって波長が大きくシフトされる。これらが一定に保たれる場合であっても、そのようなレーザの波長は、デバイス寿命にわたって約0.5%だけドリフトするものと予期され得る。そのようなレーザの波長の測定は、高価なスペクトロメータの使用を必要とし、あるいは、既知のスペクトル吸収ライン(“Frequency stabilization of a 1.54μm DFB−laser diode to Doppler−free lines of acetylene” Kurosu, T.;Sterr, U. Precision Electromagnetic Measurements Digest, 2000 Page(s):511−512参照)に固定することを必要とする。両方の方法は、複雑であるとともに、正確に調整された光の安価な光源を非常に高価な光源へと効果的に変える大型で複雑な外部システムを必要とする。
【0250】
例えば回折格子分光計の分解能は、格子サイズによって直接に決定される。したがって、(比較的保守的な)1GHz分解能は、0.5ns時間差に対応するサイズ、すなわち、15cmの格子を必要とする。大きな収差を伴うことなくそのような格子を照射するための光学素子は非常に高価であり、システムが物理的に大型になる可能性が高く、そのため、適切な機械的安定性の達成が困難になる。スペクトロメータは、このレベルの精度を得るには、約£10k以上のコストがかかる。大型システムに頼ることなく高い精度を得るための1つの既知の方法は、ファブリー・ペローエタロンを使用することである。そのようなデバイスは、光が共振キャビティを複数回通過できるようにすることにより動作し、それにより、分解能の観点からのキャビティの有効長は、光によってなされる往復の数だけ増大される(キャビティの“巧妙さ”)。したがって、入射する波長がキャビティ長を正確に整数回分ける場合には、ファブリー・ペローエタロンが光を容易に通過する。光が波長の整数をキャビティに全く適合させない場合には、光が反射され、透過されない。しかしながら、このアプローチに伴う特定の問題点は、ファブリー・ペローエタロンが多くの波長において最大透過率をもたらすという点である。したがって、約632.82nm(HeNe)の波長の赤色光を調べるために使用される1cm長のファブリー・ペローは、4.7373204213×1014Hzの周波数と15GHzの間隔(自由スペクトル領域)を隔てられる隣接周波数とに対応する632.831、632.811、および、632.791nmの波長の光を通す。したがって、波長の測定において高い正確度を得るために長いエタロンを使用することと、自由スペクトル領域を増大させるために、したがって、調整可能なレーザを不適切な共振に誤ってロックするのを回避するために短いエタロンを使用することとの間には対立がある。
【0251】
1つの実施形態において、波長測定システムは、図3に関連して説明した実施形態に類似する多くの特徴を有する。しかしながら、このシステムは、レーザ波長の極めて正確で明瞭な測定を行なうべく変更される。波長測定システムの1つの実施形態が図22に示される。これは、回折光学素子が検出器から所定の距離Dに保持されるという点において図3のシステムとは異なる。
【0252】
図22では、回折光学素子から検出器までの距離が固定されると、検出器で撮像される回折パターンの“倍率”が波長に伴って単調に変化する。再び前述した位置決定システムについて触れると、発生器と検出器との間の距離の測定値は、使用されるレーザ波長に対してスケーリングされる。したがって、距離が物理的に一定に保持される場合には、“距離”の測定値が波長の指標になる。
【0253】
発生器と検出器との間の距離を固定状態に保つため、発生器(少なくとも発生器の光学素子)および検出器は、石英、zerodur(登録商標)、インバール、または、他の寸法的に安定な材料から形成されるフレームまたはボックスなどの熱的に安定な機械システムに保持される。一般に、使用前、光学素子と検出器との間の距離間隔は、単一の既知の波長(安定化ヘリウム−ネオン(HeNe)レーザなど)を使用して較正される(一般に、1つの較正だけが必要とされる)。この較正の後、システムは、光学素子および検出器にアクセスできる全ての波長において高い正確度で波長を測定することができる。
【0254】
前述した実施形態は、あまり精巧でない回折光学素子を使用することによって簡略化させることができる。例えば、2つのピンホールから成る素子が使用される場合、回折された光場は図23に示されるように正弦波(“ヤングの”スリット)パターンである。これは一次元回折パターンの一例である。
【0255】
検出器での干渉パターンは正弦波縞模様から成る。正弦波の周波数は、フラウンホーファー状態でないときに2つのスリット干渉に関して良く知られる態様で、検出器にわたってゆっくりと変化する。そのような変化は、縞模様の周期が均一にされるように像の簡単な等角写像を行なうことにより除去できる。縞模様間隔が均一にされると、例えば離散型フーリエ変換(DFT)の使用により、好ましくは高速フーリエ変換(FFT)などの効率的なアルゴリズムを使用して、周波数を測定することができる。縞模様の空間周波数は、Xue and Yang 2003(“optimal interpolating windowed discrete Fourier transform algorithms for harmonic analysis in power systems”H. Xue and R. Yang IEE Proc. Gener. Transm. Distrib., 150, (5) p.583−587 (2003))で規定されるような補間アルゴリズムによって非常に高い正確度で概算されてもよい。このようにして、たった1千程度のFFTでサンプリングされる波形の周波数が10億分の1の正確度まで決定されてもよい。
【0256】
一対の絞りの場合(2−ピンホールの場合、例えば図23)には、パターンがピンホール間隔に対して垂直な方向で略均一であり、そのため、使用される検出器が簡単な直線配列であってもよい(すなわち、検出素子の一次元配列)。これは、数値計算を2次元変換ではなく1次元変換を使用して行なうことができ、それにより、計算時間がかなり節約されるという利点を有する。なお、1次元検出器のピクセル読み出し速度は、2次元検出器で達成される速度とほぼ同じであり、そのため、1秒当たりに得られるサンプルの数をかなり多くすることができる。これは、レーザの波長をフィードバックループ内でリアルタイムに制御するためにシステムが使用された場合に明確な利点である。あるいは、おおよその波長が1または幾つかの整数空間周波数内まで知られている場合、必要とされる処理は、非常にわずかな空間周波数のみの計算で済む可能性があり、それにより、時間もかなり節約される。
【0257】
図22および図23の実施形態を使用して行なわれる測定と関連付けられてもよいエラーを考慮することは興味深い。前述したように実施されると、波長測定システムと関連付けられる多くの想定し得るエラーが存在する。例示のため、計算は、光学素子(“光学系”)と検出器との間の仮想的な2cm間隔に基づいている。
【0258】
最初に、シリコン検出器およびパッケージング(PCB)の差動膨張は、一般に、1mm程度の厚さの膨張する物体に関しては数ppm/K程度である。センサの予想温度上昇は10K程度であり、それにより、2cmで1mm×2.6ppm/K(シリコン)×10K=26nmまたは約10分の1の膨張を与える。光学素子と検出器との間の距離を決定するスペーサの膨張は、低膨張材料および自動調温制御の使用によってほぼゼロにされてもよい。極端な天候の変化に起因する空気圧変化は、一般に、100ppmの指数変化をもたらすが、簡単な圧力ゲージまたは密封体積の使用がこの根源からの任意のエラーを除去できる。1024ピクセルスクエア、60dB SNR(ほぼ飽和したセンサ)、および、ナイキスト限界の双スリット縞模様を有する2次元検出器の場合、縞模様のエネルギーは、単一周波数bin広大域幅のランダムノイズよりも1011倍程度大きい。その結果、補間は、短期測定にわたって3×10−9部分エラー(3ppb)に対応する3×10−6程度の最小周波数binのランダムノイズ制限された縞模様周波数測定値を与えることができる。そのような正確度は、1MHz辺りのレーザ周波数ジッターに対応する。距離参照の一環としてかなりの熱膨張を被る光センサチップが使用される検出器の熱膨張(0.1ppm=50MHz)によって全体のエラーが支配される可能性が高いのが分かる。
【0259】
検出器の熱膨張の問題に対する1つの解決策は、受動光学素子を長さ基準として使用することである。この場合の良好な選択は、巧妙さが低い固体エタロンである。そのような構成が図24に示されている。この場合、光学素子14と検出器18との間の距離間隔は重要ではなく、実際には、この距離が使用時に変化されてもよい。システムの作動時には、エタロン80内に形成される複数の往復経路が使用される。縞模様間隔の幾何学的な“チャープ”の補正後、それぞれの往復は、1つ前よりも大きい縞模様間隔を有する縞模様パターンを検出器で生み出す。縞模様間隔の変化は、屈折率に関してスケーリングされるエタロンにおける往復距離の2倍にほぼ対応する。
【0260】
このように、エタロン厚は既知であって安定しているため、見掛けの経路長の差は波長の正確な指標である。なお、その後の往復パターン間の区別はフーリエ領域内で容易に行なわれる。これは、それらのパターンが異なる空間周波数を有するからである。また、従来のファブリー・ペロー干渉計の場合とは異なり、検出される縞模様の次数に関連しては曖昧さがないことにも留意されたい。これは、システムが共振に依存するのではなく経路を直接に測定するからである。巧妙さが低いキャビティの使用は、多くの往復を受けたパターンへの信頼度を最小にする。なぜなら、これらは、その後の往復における空間周波数に厄介なくらい近い小さい空間周波数を不都合なことに有する可能性が高いからである。
【0261】
熱制御は、この実施形態では、エタロンを伴わない実施形態の場合よりもかなり簡単である。これは、エタロンが必ずしも電力を放散するとは限らず(例えば、誘電体コーティングを伴う石英エタロン)、そのため、必要に応じて、エタロンが極僅かな電力負荷を伴う自動調温制御に晒される場合があるからである。
【0262】
前述したように、検出器は検出素子(ピクセル)の直線配列であってもよい。この場合、単一測定と関連付けられるピクセルの数は、検出素子の二次元配列と比べると減少されるが、等しいデータ転送速度に関しては、1秒当たりの全ノイズ信号が同じである(リニアCCDおよびエリアCCDはいずれも1秒当たり同様の数のピクセルでクロックされる)。これは、調整可能な電磁放射線源を制御するために高速フィードバックループ内に波長測定システムを組み込む手段を与える。
【0263】
また、レーザの波長を正確に測定するためのエタロンの使用は、前述した位置決定システムにおいてレーザ波長の測定を可能にする。したがって、図25に示されるように図3の実施形態を変更して、発生器と検出器との間の光学経路中にエタロン80を挿入すると、回折場は一組の干渉パターン(例えば、この実施形態では、並進的に非周期的な干渉パターン)から成り、これらのパターンは、図3の実施形態の場合のような測定場に対応するが、エタロンを貫く多数の“二重往復”通過に起因するセンサからの距離の増大に対応するその場のレプリカを更に含む。一連のレプリカ間の距離は、エタロンの屈折率および物理的寸法によって規定される。しかしながら、見掛けの距離は、使用されるレーザの平均波長の変化によってもスケーリングされる。したがって、その後の往復間の距離間隔が正確に知られるため、波長が容易に計算され、そのため、光学素子の最初の場合までの物理的距離も計算できる。
【0264】
図26は、図25の実施形態の作用を概略的に示している。1往復後の光学素子の見掛け(検出器から“見た”とき)の位置は、エタロン厚の2倍だけ物理的な光学位置から全距離D1で隔てられる。その後の(更に弱い)位置は、同じ量だけ全距離D2,D3等で更に隔てられる。間隔の決定は波長λの指標を与える。
【0265】
エタロンを使用してレーザ波長を動的に測定することは重要である。それにより、位置決定システムにおいて或いは本発明の一実施形態に係る他のシステムにおいて多くの異なるタイプのレーザを使用できるからである。例えば、低コストレーザ(ファブリー・ペローキャビティダイオードレーザなど)が使用されてもよく、あるいは、不十分に決定される波長の狭い線幅のレーザ(DFB/DBRダイオードレーザなど)または短パルスレーザ(幅広い帯域幅と不十分に規定される中心波長とを有する)が使用されてもよい。したがって、前述した計算から引き続いて、最大6つの軸で位置を測定するために使用される位置決定システムは、使用されるレーザが可変波長を有する場合であっても、波長測定の正確度に等しい波長規定される正確度(100万分の1)を有することができる。また、波長のランダムエラー(検出器でのショットノイズに起因する)に関する予め規定された計算が単一の測定に委ねられることにも留意されたい。位置測定の場合には、レーザの波長の変化が遅くなると思われる。したがって、位置測定の複数のサイクルにわたる波長の測定値を平均化する、補間する、及び/又は、予測することによって、ランダムエラーがかなり減少される場合がある。したがって、比較的薄いエタロンを用いる場合であっても、波長測定の極めて高い正確度がもたらされる場合がある。また、単一のフレーム測定におけるエタロンの使用は、例えばレーザを作動させた直後に測定がなされれば、波長を適時に素早く変えるレーザの使用を可能にすることにも留意されたい。これは、ゼロ位置から移動して離れる際に縞模様を数える必要性がないという本発明の実施形態の注目すべき特徴とうまく適合する。レーザ光の単一パルスは、空間内の絶対位置を固定するのに十分である。したがって、原位置波長測定の使用は、これらの特性が急速に変化しているときに(例えば、弾道学的研究において)位置または屈折率の正確な測定を可能にする。
【0266】
他の実施形態では、複数の波長、一般的には比較的幅広く隔てられた多数の波長に関する高い正確度の波長測定に類似する原理の他の用途が与えられる。この場合には、1次元回折パターンの使用により波長が正確に測定されてもよい。低分解能分散素子(格子、プリズムなど)の使用は、幅広く隔てられた周波数の分離を検出器において回折パターンの方向と垂直な方向で可能にする。これが図27に示されており、図27では、精密波長測定のために用いられる回折パターンを発生させるために双スリット回折素子が使用される。この場合、2つの円柱レンズL1,L2とプリズムPとから成る1次元“スペクトロメータ”(実際には、プリズム分光器)を使用して、異なる色の光(例えば、赤および緑)が分散される。これらの素子をミラーや格子などの対応する配置と置き換えることができる。あるいは、色間を区別するために干渉フィルタまたは他のフィルタが検出器の異なる位置に配置されてもよい。
【0267】
図23の実施形態の変形である図27では、ピンホールの実空間像(すなわち、検出器を横切るストライプ)を一方向で形成するために円柱レンズ(L1,L2)の系が使用される。ストライプは、幅広く隔てられた波長が従来のスペクトルグラフに類似する態様で検出器において空間的に分離されるようにプリズム(または格子)(P)によって分散される。そのように分散された各波長ごとに、(波長がプリズムによって分離される方向に対して垂直な)縞模様間隔が使用されて、非常に高い正確度および精度で波長が測定される。エタロン(80)の使用は更なる正確度を与える。これは、L1,L2,Pの光学的厚さが不十分に規定されるからである。
【0268】
この技術の用途は、波長分割多重(WDM)通信チャンネルにおける全ての波長の測定および制御を含む。“スペクトロメータ”はチャンネルを分割し、また、エタロン(それが存在する場合)および回折パターンは中心波長の精密測定を行なうために使用される。
【0269】
前述した実施形態では、エタロンが所定の既知の厚さと屈折率とを有し、それにより、エタロンの光学的厚さが知られ、エタロンが実質的に系を較正するための手段を与える。別の実施形態では、“エタロン”が、未知の屈折率を有する物質または未知の材料のスラブで満たされたセルと置き換えられてもよく、その場合、“エタロン”の光学的厚さが測定される。エタロンの物理的寸法が固定される場合(例えばキュベットのように)には、系を使用して屈折率を決定できる。あるいは、光学素子と検出器との間の全体積が材料で満たされて、光学素子と検出器との間の間隔が固定される場合、光学素子と検出器との間の見掛けの距離は、波長が固定されれば、屈折率の指標となる。
【0270】
更なる変形では、波長を測定するための既知の厚さおよび屈折率のエタロンと、未知の材料の屈折率を測定するための未知の寸法の未知の材料のブロック/キュベットとをシステムに設けることができる。一般に、ブロック/キュベットはエタロンと検出器との間の体積内に位置される。ブロック/キュベットが存在しない或いは空っぽの状態で較正測定値が取得されてもよい。ブロック/キュベットが存在する或いは満たされた状態で取得されるその後の測定値は、屈折率の指標をもたらす見掛けの距離変化を与える。例えば、この技術は、例えばガスの圧力を測定するために適用されてもよい。
【0271】
更なる他の実施形態では、主軸周りの回転を測定するようになっている位置測定システムが提供される。
【0272】
回転角度の測定は、多くの技術分野において基本的なことである。直線移動の測定のための幾つかの既知の方法は存在するが、任意の角度の正確な測定が一般にあまり果たされない。精度の低い測定は、回転ポテンショメータ、可変キャパシタ、または、回転可変差動トランス(RVDT)などの簡単なセンサを使用して容易に行なわれる。より正確な測定は一般に回転エンコーダを使用してなされ、回転エンコーダは、正確となり得るが、しばしば精度がかなり制限されていた。例えば、最も正確な回転エンコーダは約±5μradの正確度を特徴とする。これらは、高価であり、大型のシステムである(例えば、Renishaw REXMエンコーダ(Renishaw plc, New, Wotton−under−Edge, Gloucestersgire, GL12 8JR, United Kingdomから入手できる)は、この正確度を100mmを超えるエンコーダサイズに関してのみ達成する)。
【0273】
回転測定の実施形態において、干渉パターンは、単に、強力な空間周波数成分を1つ以上の方向に有するストライプまたは縞模様の1つ以上の周期的パターンを有することが好ましい。例えば、2つの絞りからなどの一次元干渉パターンを使用できる。平面検出器のそのようなパターンは、絞りからの検出器の距離の簡単な関数である明確な幾何学的歪みを被る。検出されたパターンは、検出器からのデータの処理中に、縞模様を場にわたって真っ直ぐに且つ平行にするために幾何学的歪みによって強いられる方向と反対の方向で歪まされてもよい。その後、離散型フーリエ変換または関連する変換を像に関して行なうことにより回転角度が測定されてもよい。適切な補間アルゴリズムの使用により、変換されたパターンのピークが、Xue and Yang 2003(前述した文献を参照)によって与えられる解析により、離散周波数間の間隔よりもかなり小さい正確度まで決定されてもよい。
【0274】
この場合、絞り軸に対するセンサの角度位置が決定され得る正確度は、光検出器のノイズによって制限される。これについては、位置測定/波長測定中の正確度に関して前述した解析を参照されたい。
【0275】
ここで、干渉パターンの最大値(または、最小値)の位置を突き止めるために補間を更に詳しく考慮することは有用である。この補間は、Xue and Yang 2003によって与えられる窓関数に基づく。
【0276】
Xue and Yang 2003は、フーリエ変換の単一の周波数スポットにおいて強度の最大ロールオフ率を与える窓関数のための形式を導く。この場合、サンプリングされた波形の周波数は、変換の長さにわたって非整数のサイクルを有する。したがって、多くの周波数が存在する場合には、1つの周波数からのフーリエ領域のスポットが他の周波数へと流れ出る。したがって、異なる周波数がうまく解かれる。これは位置決定において(および、他の物理パラメータの測定において)非常に有用である。なぜなら、それによって、複雑な光学的干渉場を比較的簡単に解析でき且つ一組の独立した相互作用しない2−ピンホール回折パターンと見なすことができるからである。なお、これは、比較的複雑な干渉パターンにおいて特に有用である−干渉パターンが2つのピンホールのみから形成されると、この解析が与える利点は少ない。
【0277】
また、Xue and Yang 2003は、FFTにおいてピーク近傍の値から中心周波数の補間のための式も与える。したがって、サンプリングされた波形の周波数がレコード長ごとに78.6サイクルである場合(すなわち、全体のサイクル数が変換されるシーケンスに適合しない)、Xue and Yang 2003は、FFTが波形を整数周波数(77,78,79など)のみに分解する場合でも、値78.6を得るための簡単な式を与える。実際には、これは非常に正確であり、そのため、簡単な256長FFTの分解能が最大周波数入力の最近傍の256分の1までにしか至らないのに対し、純粋な正弦波に関するマイクロソフトエクセルでの簡単な試験は、10億分の1範囲の正確度を与える。したがって、50.15の実周波数は、マイクロソフトエクセルにおける浮動小数点数の正確度によって制限される50.150000000192の補間値を与えた。
【0278】
システムの使用時には、干渉パターンの幾つかのサイクルを検出できるとともに、補間を使用して優れた精度をもって中心周波数を測定することができる。典型的な従来の考え方は、多くの縞模様を縞模様の約1/10まで計数できるということである。先に概説した手法を使用すると、信号対雑音比が許容できるとすると、縞模様を非常に僅かな割合まで計数できる(以下を参照)。なお、縞模様が変換長さにわたって周波数変化に晒される場合には、Xue等によって与えられる簡単な補間関数は不適切である。この場合、中心周波数と変換にわたる瞬時周波数の変化とに応じた線形の数値モデリングに基づいて、より複雑な補間関数を導くことができる。補間関数の使用は、検出器におけるノイズと行なわれる数値近似とによってのみ制限される正確度をもって波の特性のその変換からの抽出を行なうことができるという基本的な結論に全く影響を与えない。
【0279】
一対のピンホールだけを使用して干渉パターンが生成される場合、信号対雑音比が10倍、増大される(より少ない正弦波がより良好なダイナミックレンジを与えるからである)。したがって、縞模様間隔を最小周波数の約1/5000まで測定することができる。ナイキスト限界(ラインに沿う1600ピクセルセンサにわたる800個の縞模様)では、これが800×5000分の1、すなわち、0.25ppmである。回転の観点から、これは1/(2×pi×800×5000)=40nラジアンの角度である。これは、10m秒(marcsec)精度であり、あるいは、Heidenhain RPN 886(Heidenhain Inc., of 333 East State Parkway Schaumburg, IL 60173−5337, USAから入手できる)などの最良の既知の回転エンコーダの見積もり正確度よりも100倍良好であり、また、Renishaw RX10(Renishaw plc, New Mills, Wotton−under−Edge, Gloucestershire, GL12 8JR, United Kingdomから入手できる)などの回転較正システムに関して見積もられた正確度よりもかなり良好である。
【0280】
なお、正確度(精度とは対照的に)は、カメラセンサを形成するために使用されるリソグラフィシステムによって規定されるカメラセンサにおけるピクセルの軸の直交性によって損なわれる可能性がある。Nikon NSR2205i11D、0.35μmマシンなどの既知のステッパの場合、これはステージ動作で0.1秒(arcsec)であり、場にわたる歪みは45nmである(較正後は15nm)。この歪みが全て直交性エラーである最悪の場合のシナリオでは、正確度が25mm角度で15nm、すなわち、0.124秒(arcsec)である。本発明者等は、これが機械工具“較正”システムの基本正確度よりも依然として良好であると考える。
【0281】
ランダムエラーの考慮
好ましい実施形態に係るシステムによって与えられるランダムエラーを考慮することは興味深い。
【0282】
システムによって検出できる異なる動きは、検出器の特性およびランダムエラーに異なって影響される。この解析は、検出器ノイズに起因するランダムエラーの得られた結果への影響に関係する。
【0283】
ピクセルの配列を有するCCD検出器およびCMOS検出器は、パターン固有のノイズの影響を受け易い(すなわち、個々のピクセルの感度は互いに異なる場合がある)とともに、読み出しエレクトロニクスから生じるランダムノイズおよび光の量子化性(ショットノイズ)の影響を受け易い。検出器で検出されるパターンからのデータの解析は、2次元離散型フーリエ変換および周波数領域でのロールオフが最適化された窓関数の使用に基づく。結果として、検出器における欠陥は、変換のプロセスにおいて平均化されるものと予期され得る。例えば、単一のデッドピクセルは、空間周波数領域の近似デルタ関数へ変換するコヒーレント信号によって生成される(大きい)信号に対する想定し得る影響を最小限にする均一な(白色)信号へと変換する。
【0284】
この解析で使用されるべき重要な定理は、変換に存在するエネルギーを空間領域のエネルギーに広く関連付ける周知のウィーナー−ヒンチンの定理である。したがって、信号中の全エネルギーがEsigであり、全ノイズエネルギーがEnoiseであれば、比率
【数14】

は、空間周波数領域および実空間領域の両方で同じである。
【0285】
ここで、センサパラメータを規定することが必要である。センサの特性は以下の通りである。
− 単一ピクセル信号対雑音比はSNRSPである。良好なセンサに関して典型的な値は10(すなわち、60dB)である。
− x−ピクセルの数Nx。典型的な値は1600である。
− y−ピクセルの数Ny。典型的な値は1200である。
− ピクセル間隔L。典型的な値は6μmである。
【0286】
ここで、検出器で検出される信号の重要な特性について考えると、ノイズ成分は均一な振幅ランダム位相信号へ変換すると考えられる。信号成分は、10個の余弦波によって別個の角度で引き起こされる干渉パターンから成る。この解析のため、10個の余弦波が均一な空間周波数を有していると仮定される。余弦波は等しい振幅を有すると仮定され、センサは最大入力振幅において(パターンの中心に対応するセンサの位置で)ちょうど飽和されると仮定される。したがって、センサでの位置は=(x,y)によって表わされる。ここで、xおよびyがメートルを単位とする位置である場合、信号(振幅)は以下のように表わされる。
【数15】

【0287】
ここで、{ki} は、5つの余弦波を表わす波動ベクトルの組である。したがって、最大振幅は20であり、平均振幅(すなわち、DC値)は10である。DCオフセットは存在する。これは、センサで発生される電気信号が常にプラスの光信号の強度に比例するからである。
【0288】
余弦波の総和のDC成分は、10←→10δ()のように変換する。
個々の余弦波の振動成分は、以下の一対の空間周波数へと変換する。
【数16】

【0289】
そのため、スペクトルが以下の形式を成す。
【数17】

【0290】
実際には、変換は、デルタ関数が空間周波数のコンパクトな範囲にわたって広げられるように最適な窓関数を使用して計算される。ランダムノイズおよび信号の両方が空間内で均一に分布されるため、これらの両方が窓関数の適用によって均等に減衰され、それにより、ノイズエネルギーに対する全体の信号エネルギーの比率が保たれる。塵粒などの空間的に局在化される“ノイズ”源は、ある範囲の減衰に晒される(例えば、センサの角部の少量の塵埃の影響が窓関数によってゼロまで減衰される)が、センサにわたって多くの欠陥が均一に分布されていると仮定すると、我々は、それらを空間的に均一なエラー信号に相当すると見なしてもよい。
【0291】
ここで、窓関数について考えると、フーリエ解析は不連続データに対して達成されるため、前述した“デルタ関数”の性質に関して問題がある。窓関数の適用後、“デルタ関数”は、多くの点を変換でカバーするためにスミア除去される。Xue and Yang 2003によって表わされる窓関数を見ると、最大値に近い振幅の超関数が以下の式によって与えられる。
【数18】

【0292】
ここで、
Xは、窓をかける前のスペクトル成分の振幅であり、
Xkは、窓をかけた後のスペクトル成分の振幅であり、
Kは、窓の次数であり、
aiは、窓関数の重み関数であり、
nは、離散空間周波数である。
【0293】
aiの値は以下によって与えられる。

【0294】
我々は、平方の総和が1となるようにaiの値をスケーリングしてもよい(すなわち、スペクトル線の等しい総エネルギー)。

【0295】
周波数は、最大振幅成分および次の最も高い成分の振幅の解析によって得られる。ランダムノイズは、スペクトル成分の振幅の測定を悪化させ、それにより、ピークの見掛けの中心にエラーを引き起こす。空間周波数が m=m+r によって与えられ場合であって、ここで、mが最大振幅に対応する整数空間周波数で、mがピクセル配列によってサンプリングされる信号の(非整数)空間周波数である場合には、空間周波数の部分成分の値が以下によって与えられることがXue and Yang 2003により示される。
【数19】

【0296】
また、そのため、aの小さいエラーに関しては、
【数20】

となる。
【0297】
2つの極端なケースは、r=0.5およびr=0の場合である。
2つのケース(1−D)における数値振幅は以下の通りである。

【0298】
r=0 K=1のケースでは、m1+1成分のエネルギーが最小であり、これは全体の0.408であり、あるいは、ピークの全エネルギーの16.7%である。m1成分のエネルギーは0.816=全体の66.7%であり、また、ピークの比率の値はa=2であり、そのため、dr/da=−1/3 である。
【0299】
空間周波数が2つの整数周波数間の正に中間にある第2のケース(r=0.5 K=1)では、両方の振幅が等しく、それらは、それぞれが全エネルギーの48%を含み、a=1および dr/da=−1/4 である。
【0300】
第3のケース(r=0 K=2)では、m1+1成分のエネルギーが最小であり、これは全体の0.478であり、あるいは、ピークの全エネルギーの22.9%である。m1成分のエネルギーは0.717=全体の51.4%であり、また、ピークの比率の値はa=1.5であり、そのため、 dr/da=−4/5である。
【0301】
もう一度両方の振幅が等しくなるように空間周波数が再び2つの整数周波数間の正に中間にある最後のケース(r=0.5 K=2)では、それぞれが全エネルギーの42.2%を含み、a=1であり、そのため、dr/da=−3/4 である。
【0302】
2つの次元において、ピーク内のエネルギーは、先の一次元解析に関して、しかし2つの次元において、前述した方法と同じ方法で広げられる。したがって、ピークにおいて測定される全エネルギーが同様の大きさだけ減少され、それにより、我々は、二次元ピークにおける全エネルギーの約半分が各次元のピーク位置の測定に役立つと予期する。
【0303】
この解析をまとめて、変換領域において信号対雑音を考慮すると、フーリエ領域における各ピークの振幅は0.5である([11]から)。この場合、任意のピクセルの最大信号(それらが全て揃う場合)は20である。したがって、各ピクセルにおける特定のフーリエ成分に関する平均信号レベルは、各ピクセルのノイズレベルに関して、以下によって与えられる。
【数21】

【0304】
変換領域における各ピクセルのノイズレベルは、時間領域におけるものと同じ(ホワイトノイズ)であるが、フーリエピークにおける信号はピクセルの総数だけ増大される(それがコヒーレントであるため)。すなわち、
【数22】

【0305】
これは、ここで望まれているものであるaの値、したがってrの値の決定時に予期されるエラーの概算値を我々に与える。
【0306】
aの決定における最悪のケースの値は、m1+1値の振幅が最小のときであることは明らかである。この場合、測定される周波数binに存在する全信号電力の1次元割合は以下の通りである。
【0307】
K=1 16%
K=2 22.9%
【0308】
そのため、2−d変換では、ピークにおける全エネルギーの割合が、
【0309】
K=1 8%
bin
K=2 11.5%
までそれぞれ減少される。
【0310】
振幅の測定の信号対雑音比は、binの全信号電力をbinの雑音電力で割った割合によって与えられる。これは以下により与えられる。
【数23】

【0311】
また、rの値の決定におけるエラーは以下のようになる。
【数24】

【0312】
したがって、
【数25】

の場合には、
【数26】

となる。
【0313】
なお、rを測定する際のエラーは、K=2の場合に更に悪化する。これは、スペクトル線が僅かに太くなったためであり、それにより、aの値の変化(ノイズに起因する)がrの更に大きい変化を与える。トレードオフは、単に、K=1に関しては、我々が更に鋭い線を有し、その場合にはクロストークが悪化するがランダムノイズの存在下で精度が良好であり、また、K=2に関しては、我々が更に太い線を有し、その場合には中心周波数を測定する際の精度が低下するが隣接するスペクトル特徴に対する耐性が大きく向上されるというものである。
【0314】
ここで、測定の個々の軸に対するノイズの影響について考えると、FFTにおけるノイズは、システムによって測定される異なる座標の推測値にノイズをもたらす。
【0315】
z測定: これは、適切な等角(または、他の)写像が行なわれた後にセンサ全体にわたって異なる波の周期を測定できる正確度によって制限される。ピンホールの各対ごとに、我々は、ノイズが相互に関連付けられない2つの周波数(プラス周波数およびマイナス周波数)を得る。これは、平均周波数測定におけるエラーを1/√2倍、減少させる。あるいは、我々が20個の全ての周波数を見る場合には、周波数測定におけるノイズが平均化によって√20倍、改善される。
【0316】
所定の距離では、一対のピンホールにおける回折パターンのおおよその周期が、図17に示される教科書の双スリット干渉計算によって与えられる。
[我々は、ここでは、z軸周りの回転を示すためにこの文書の他の場所でθが使用されることに留意する。この記号の使用は、ここでの議論および図17にしか通用しない]
【0317】
そのため、小さいθおよびy>>xにおいて、経路差は、
【数27】

である。
【0318】
また、したがって、縞模様間の間隔は以下によって与えられる。
【数28】

【0319】
ピンホールとセンサとの間の最も近い有用な距離間隔は、縞模様がナイキスト限界にあるときである。この場合、δx=2Lである。この場合、FFTにおける縞模様の最大空間周波数はおおよそ以下の通りである。
【数29】

【0320】
一対のピンホールにおけるrの値のエラーは以下によって与えられる。
【数30】

【0321】
また、これは、フーリエ領域における周波数のエラーに直接に対応する。
【0322】
そのため、測定された周波数は以下のようになる。
【数31】

【0323】
zにおける部分エラーは、周波数における部分エラーに等しく、そのため、
【数32】

となる。
【0324】
したがって、
【数33】

となる。
【0325】
典型的な数(Nyを使用する。これが最悪のケースだからである)は以下の通りである。
【数34】

【0326】
1インチの典型的な距離に関して、これは1または2nmに対応する。
【0327】
我々が20個の全てのスペクトル線を使用する場合には、これは、√20倍向上し、それにより、0.23または0.46nmが与えられる。
【0328】
xおよびy測定: xおよびyに関して、我々は、スペクトル線の我々の測定において位相エラーによって規定される正確度を有する。これは、π・ε(r)によって与えられる。ナイキスト限界における縞模様の周期は2Lであるため、この位相エラーは、(2L/2π)・πε(r)=Lε(r) の位置エラーに対応する。
【0329】
ε(r)に関する我々の式に代入すると、
【数35】

となる。
したがって、
【数36】

となる。
【0330】
典型的な数を入れると、
【数37】

となる。
【0331】
この場合、ピンホールの半分は、位置に関する情報を与えるために誤った方向を向いており、そのため、全てのスポットあるいは0.046および0.092nmのそれぞれの使用に起因して、√10の改善を得る。
【0332】
θ: これはz軸周りの角度である[二重スリット干渉パターンの導出におけるθの先の使用と混同しないように]。回転の値は、原点を中心とするフーリエ成分の回転として得ることができる。そのため、測定精度は、単に、図28に示されるように空間周波数の大きさで割られるピーク探知の精度である。
【0333】
そのため、前述したように、zを計算するときには、ピークの大きさで割られるピークの位置を見つける際のエラーは、
【数38】

となる。
【0334】
度数に変換すると、40・10−9ラジアン=40nラジアン=2.3μ度=8.25m秒(arcsec)である。
【0335】
K=2の場合、角度精度は、16.5m秒(arcsec)である。注記:θ回転正確度は、z正確度と同じ数である。
【0336】
傾斜角ψおよびφ: これらの角度は、傾斜角が概略的に示される図29に示されるように、検出器100のxおよびyのそれぞれに伴うzの変化率の測定値に対応する。
【0337】
そのため、一対のピンホールに関して、我々は、センサの2等分におけるz測定で2つのエラーを有する。これらの2等分は、我々がどの角度を測定しているかに応じて、(NxL)/2 あるいは (NyL)/2 であるセンササイズの半分の距離で分離される。z測定のエラーは、半分のセンサに対応するエラーである。言うまでもなく、センサ全体におけるz測定のエラーは以下の通りである。
【数39】

【0338】
半分のセンサにおけるエラーは、
【数40】

である。
【0339】
また、角度測定におけるエラーは、
【数41】

によって与えられ、それは(代入すると)、
【数42】

である。
【0340】
これは、数値的には、既に述べたように、以下のように典型的な数値を使用して1インチでは、
【数43】

である。
【0341】
これらの数は、変換においてスポットの数にわたって平均化することにより減少される。この場合、半分だけが平均して軸に寄与し(他の半分は、軸に対して平行であり、そのため傾きに伴って変化しない)、そのため、最終的な数は、
【数44】

である。
【0342】
これらは全てのうちで最悪の数であり、また、それらは依然として非常に良好である。z、ψおよびφにおける値に関する注意は、それらの値の全てがzの増大に伴って直接的割合で低下するということである。これは、それらの値が空間周波数の大きさの相対的変化の測定値に大きく依存しているからである。高価な適用における解決策は、より大きなベースラインによって分離されるより多くのカメラチップを使用することである。ここでは、ベースラインは、先の計算におけるチップの幅と同じ態様で作用し、それにより、ほぼ任意の感度向上が得られる。
【0343】
光学素子仕様
好ましい実施形態の光学素子は、正五角形配列(例えば図30に示されるような5回回転対称)で配置される5つのピンホールと、関連する視準構造とを有する。
【0344】
ピンホール間隔: ピンホール間隔は、検出器により正確に撮像され得る最大空間周波数によって決定される。最大空間周波数は、軸上で生み出され、そのため、以下の通常のヤングのスリット表示により与えられる。

【0345】
センサピクセル(正方形であるとする)のサイズがLである場合、最小距離zminでは、δx=λzmin/2c=2L となり、したがって、2c=λzmin/2L となる。
【0346】
図30から、rsin(36°)=cとなり、それにより、
2rsin(72°)=λzmin/2L ∴ r=λzmin/4Lsin(72°)
となるのが分かる。
【0347】
本発明の1つの実施形態で使用される第1の検出器において、ピクセル間隔は6.8μm程度であり、そのため、最小縞模様間隔は13.6μmである(15μmが使用される)。本発明の他の実施形態で使用される第2の検出器において、ピクセル間隔は2.2μm程度であり、そのため、最小縞模様間隔は4.4μmである(5μmが使用される)。標準的な状態における多くの指示結果が以下の表3に示されている
【0348】
【表3】

【0349】
言うまでもなく、カメラピクセルを更に小さくして間隔を更に大きくするためには光学素子のサイズが非常に急速に増大する。光学素子は電子ビームリソグラフィによって形成することができるが、大きな光学素子は、前述するように他の製造手続きによって形成されるのが好ましい。
【0350】
図31は、ホログラフィックコリメータ114を絞り116へ向けて貫く入力ビーム112の経路を示す、本発明の一実施形態と共に使用するための、石英基板上に形成された光学素子110の概略部分断面図を示している。図31から分かるように、半径rが増大するにつれて、θincは、場合により、光が内部全反射される角度を上回って増大する。絞りに入射する光を前方へと散乱させるために絞りには格子が存在するが、θincの非常に大きい値の使用が場合により依然として問題である。また、角度が非常に大きい場合には合焦スポットが正に楕円形であり、それにより、先と同様に、絞りから出る出力が減少されることは明らかである。
【0351】
ビームが内部全反射されるようなθincの値がスネルの法則によって与えられ、それにより、nquartzsin(θinc)≧1 =nairsin(θexiting) となる。この場合、nquartzは石英の屈折率であり、nairは空気の屈折率(=1)であり、また、θexitingは石英から出る光の角度である。内部全反射は、この角度が虚数(sin(θexiting)>1)になるときに起こる。したがって、表4は、 における最大値を幾つかのケースで示している。
【0352】
【表4】

【0353】
そのため、入射角を40°に制限すれば、最小石英厚さのための式を得る。図31から分かるように、r=tquartztan(θinc)であり、それにより、tquartz=r/tan(θinc) となる。これを表3(指示値)に入れると、表5を得る。
【0354】
【表5】

【0355】
これらの値が従来のマスクプレートの値に相当することに注目することは興味深い。通常の(4または5インチ)プレートは0.09インチ厚(2.3±0.1mm)であり、この場合、厚さに関して≦5μmの公差(プレートにわたる変化)を伴う。ナノインプリントリソグラフィのために使用されるブロックは1/4インチ厚である。典型的な供給元は、所定の平行度公差を伴うことなく6.35mm±0.1mmを提案する。
【0356】
したがって、光学素子の製造のための2つの選択肢は、厚さ及び適応パターンの測定を伴うモノリシックブロック(これが現在好ましい方法である)を使用すること、あるいは、互い同士の間で個別にアライメントを伴う別個のホログラムおよび絞りプレートを使用することである。
【0357】
絞り: ホログラムを使用して、入力光を5つの全ての絞りに対して同時に合焦させることができる。焦点の分解能は通常のアッベ限界によって与えられる(傾斜入射角は焦点スポットをやや楕円形にするが; θincを制御するためのもう1つのもっともな理由)。本発明では、絞りを通過する光の位置がうまく規定されることが非常に好ましい。その結果、絞りは、ホログラムの焦点スポットよりも若干小さくなるように設けられる(すなわち、図31では、φaperture < φfocus)。このように、ピンホールは、ホログラムによって形成される曖昧なぼやけたガウススポットによってではなく、金属膜の鋭い金属エッジによって位置が突き止められる。
【0358】
絞りは以下の3つの機能を果たす。
1.高い正確度をもって光源の位置を規定すること。
2.検出器が発生器に対して移動する空間の体積を満たすように十分大きな角度範囲にわたって光を散乱させること。
3.絞りからの光のかなりの割合が前方に向かうように光を散乱させること。
【0359】
第1の要件は、高い分解能、正確度の高い製造プロセスの使用によって達成できる。絞りの位置は、使用されるリソグラフィ工具の正確度(VB6 UHR EWFにおいては約10nm)によって及びエッチングの精度によって制限される。絞り近視野光学顕微鏡AFMプローブの規定のために使用される同様のプロセスは、100nm直径の絞りにおいて約±5nmの再現性を立証した。本発明の幾つかの実施形態で使用される大きい絞りの再現性は、厚い金属に形成されるサブ波長絞りの再現性よりも良好である。
【0360】
第2の要件は、絞りが小さい直径を有するようにすることによって達成される。光が直径 dapertureの円形のピンホールに通される場合、光出力は、所定の角度範囲の“エアリー円盤”へと広げられ、それにより、パターンにおける第1の最小値まで sin(θAiry)=1.22・λ/φaperture となる。これが図32に示されている。絞り116から出る光が光軸の±45°内の体積を満たすべき必要がある場合、これは、
φaperture=1.22・λ/sin(θAiry)=1.22・λ/sin(45°)=1.73λ となることを意味する。
【0361】
あるいは、光強度が軸に対して45°で最大値の半分となるべき必要がある場合には、
φaperture=0.5145・λ/sin(θAiry)=0.5145・λ/sin(45°)=0.728λ となる。
したがって、3つの指示波長に関して表6を得る。
【0362】
【表6】

【0363】
絞りの第3の機能は、かなりの割合の光が前方へと散乱されるようにすることである。これが起こるようにするには、ビームを正しい方向へ向けるために絞りにわたって適切な位相シフトを与える構造体に入射波がぶつかる必要がある。これは、非常に小さいプリズム(容易に製造されない)、回折格子、または、キノフォームの使用によって達成できる。最も簡単なケース(絞りが既に金属シートのホールであるため)は、金属回折格子を使用することである。格子周期の計算のための構成が、ホログラム114と絞り116との間のビーム115の経路を示す図33に示されている。
【0364】
図33から、dsin(θinc)=λ/nquartz であることが分かり、それにより、
d=λ/(sin(θinc)・nquartz) となる。
【0365】
ホログラム: ホログラムは、ホログラムでの位置に委ねられるそれぞれの絞りからの位相を合計することによって通常の方法で計算される(レイトレーシング)。焦点スポットのサイズは、光学顕微鏡の分解能における通常の方法で決定される。したがって、絞りから見てホログラムにより範囲が定められる角度から、スポットサイズを推定できる。図34から、
quartztan(θinc)=r
quartztan(θinc+θholo)=r+(φlaser/2)
となるのが分かる。
【0366】
また、θholoがあまり大きくないとすると、
【数45】

【数46】

【0367】
そのため、
【数47】

となる。
【0368】
したがって、絞りにおけるスポットのサイズは以下によって与えられる。
【数48】

【0369】
ここで、

は、図31のページに対して垂直な方向での焦点スポットサイズである。図にφfocusとして示される寸法は、これよりも僅かに大きい。ビームが角度θincで入射するからである。
【0370】
所定の光学素子厚さにおける焦点スポットのサイズは、ビームの拡張によって或いはホログラムの面積を切り取ることによって変えられるφlaserにより制御される。後者は、ホログラムに入射しない光を無駄にする。ダイオードレーザの場合、ビーム拡張は、レーザファセットからの光の自然の発散を使用することによって容易に達成される。すなわち、ホログラムは、入射波面の曲率を考慮に入れるように簡単に再計算される。
【0371】
ホログラムは、波長深さの半分のバイナリーホログラムパターンを石英にエッチングすることによって形成されるキノフォームであることが好ましい[“The Kinoform: A New Wavefront Reconstruction Device” L. B. Lesem, P. M. Hirsch, J. A. Jordan,Jr. IBM J. Res. Dev. 13 (2) p.150 (1969)参照]これは、あまり多くない製造において、スループットを4倍向上させる(また、ナノインプリントリソグラフィに適合する)。多層キノフォームは、形成するのが困難であるが、全ての光を焦点スポットへと回折させることができる。
【0372】
波長感度: 本発明の好ましい実施形態で使用されるホログラムは回折光学素子である。結果として、焦点スポットの位置は、波長が変化するにつれて変化する。システムがλの波長で完全にアライメントされると仮定すると、δλの波長変化が焦点スポットを、

の距離だけ移動させ、それにより、そのスポットからの出力が消滅する。位置の移動は、偏角δθincの変化によって引き起こされる。この移動が、有効格子周期deffをホログラムに帰するホログラムの部分に対する通常の回折格子作用に対応すると仮定すれば、
【数49】

となり、また、θincの変化は、
【数50】

によって与えられる。
【0373】
そのため、
【数51】

【0374】
また、tquartztan(θinc)=r となり、したがって、
【数52】

となる。
【0375】
ここで、スポットのサイズを、

に制限し、また、前述した数を入れて、φlaserおよびδλ/λについて解くと、表7を得る。
【0376】
【表7】

【0377】
以上のように、長い光学素子ほど、より拡張されたレーザビームの使用を必要とする。また、これらの光学素子は、レーザの波長に関して益々厳しい要件を課す。
【0378】
YLFレーザの場合、長手方向のモード間隔は1/4nm程度であり、そのため、δλ/λが5・10−4よりも小さい場合、光学素子自体は、入力ビームからシングルモードだけを選択し始める。これは、波長測定の使用を重要ならしめる。なぜなら、我々は、全てのモードにわたる平均波長にもはや依存できないからである。したがって、レーザが厳密には単色になり、約±2/10000の波長不確かさを伴う。最悪のケースでは、温度によって誘発されるモード位置の移動が光スループットを全くもたらさない場合がある。これは、光スループットを犠牲にしてビームの拡張を減少させることにより解決することができる。
【0379】
シングルモードダイオードレーザの場合には、状況が更に良い。ビーム拡張は、視準されないレーザ出力をホログラムに近づけて或いはホログラムから遠ざけて移動させることにより自明に得られる。作動時、光が特定の波長に近い場合に該光だけを光学素子が通すという事実は、ダイオードレーザの波長を制御する簡単な方法として使用できる−スループットを200ppmとなるように最適化するだけで済む。この場合、任意の波長測定システム(エタロン)は、適用されなければならない狭い範囲の補正を有する。
【0380】
好ましい実施形態を一例として説明してきた。これらの実施形態の変形、更なる実施形態、および、その変形は、この開示内容を読む当業者に明らかであり、したがって、本発明の範囲内に入る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の強度最大値および強度最小値を含む干渉パターンを発生させる電磁放射線干渉パターン発生器と、
前記発生器により生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出する電磁放射線検出器であり、干渉パターンの複数の強度最大値及び/又は強度最小値をほぼ同時に検出するように配列された検出素子のアレイを有する電磁放射線検出器と、
を有する測定システムであって、
検出される強度最大値及び/又は強度最小値に基づいて、当該システムの物理的特性または当該システムの物理的特性の変化を決定する、測定システム。
【請求項2】
前記検出器において、干渉パターンは二次元の干渉パターンであり、検出素子は検出器で一次元のアレイまたは二次元のアレイにて配列される、請求項1記載の測定システム。
【請求項3】
前記検出器において、干渉パターンは一次元の干渉パターンであり、検出素子は検出器で二次元のアレイにて配列される、請求項1記載の測定システム。
【請求項4】
その位置が測定されるべき物体をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の測定システム。
【請求項5】
その位置が測定されるべき物体は、(i)電磁放射線干渉パターン発生器、または(ii)電磁放射線検出器のいずれかと一定の空間的関係を有する、請求項4記載の測定システム。
【請求項6】
使用時、第1の位置から第2の位置への物体の動きは、検出器で捕らえられる干渉パターンの変化を引き起こす、請求項4又は5に記載の測定システム。
【請求項7】
物体は、(i)3つの直交並進軸の少なくとも1つに沿う並進に対応した移動、及び/又は(ii)3つの直交回転軸の少なくとも1つの周りの回転に対応した移動、により移動可能であり、物体の移動、あるいはこれらの移動の組み合わせは、検出器により検出される干渉パターンにおけるあるいは干渉パターンの一部における変化を提供する、請求項6記載の測定システム。
【請求項8】
発生器と検出器との間の距離は一定である、請求項1から7のいずれかに記載の測定システム。
【請求項9】
発生器及び検出器は、共通の主軸周りにほぼ配列され、当該システムは、共通の主軸周りの角度位置を決定するよう構成されている、請求項1から8のいずれかに記載の測定システム。
【請求項10】
干渉パターンは、回転対称性の欠如を有する干渉パターン全体を与えるように、少なくとも1つの強度マーカを設けている、請求項1から9のいずれかに記載の測定システム。
【請求項11】
発生器と検出器との相対位置は一定である、請求項1から10のいずれかに記載の測定システム。
【請求項12】
検出器は、干渉パターンを直接に捕らえる、請求項1から11のいずれかに記載の測定システム。
【請求項13】
検出器は、干渉パターンの少数部分のみを捕らえる、請求項1から12のいずれかに記載の測定システム。
【請求項14】
干渉パターンは、ほぼ並進的で非周期的な二次元干渉パターンである、請求項1から13のいずれかに記載の測定システム。
【請求項15】
干渉パターン発生器は、光源を含み、干渉パターン発生器により提供される電磁放射線は、空間的にコヒーレントである、請求項1から14のいずれかに記載の測定システム。
【請求項16】
干渉パターン発生器は、干渉パターンを発生するために一つ若しくは複数の光学素子を含む、請求項15に記載の測定システム。
【請求項17】
光学素子は、光の透過及び回折用の光透過絞りの配列を含む、請求項16に記載の測定システム。
【請求項18】
光学素子は、光透過絞り側へ優先的に光を向ける合焦手段を含む、請求項17に記載の測定システム。
【請求項19】
合焦手段は、少なくとも一つのゾーンプレート、少なくとも一つのレンズまたはマイクロレンズ、少なくとも一つのミラー、少なくとも一つの空間光変調器、および、少なくとも一つのホログラムから選択される、請求項18に記載の測定システム。
【請求項20】
光学素子は、上面及び下面を有する光透過基板を含み、それら面の少なくとも一つは、それに形成された光不透過層を有し、絞りは、光不透過層の一部の除去あるいは省略により形成される、請求項17から19のいずれかに記載の測定システム。
【請求項21】
光透過基板の両面は、それに形成された光不透過層を有し、合焦手段は、光不透過層の一部の除去あるいは省略により形成される、請求項20に記載の測定システム。
【請求項22】
合焦手段は、光透過基板の表面の成形によって形成される、請求項18に記載の測定システム。
【請求項23】
合焦手段は、位相光学素子、例えばキノフォームまたは二相位相ゾーンプレートを備える、請求項22に記載の測定システム。
【請求項24】
当該システムは、第1の干渉パターンとは異なる波長の電磁放射線を使用して、検出器で第1の干渉パターンと共に検出されるべき少なくとも第2の干渉パターンを発生させることができる、請求項1から23のいずれかに記載の測定システム。
【請求項25】
各波長は、干渉パターンを発生するために、光学素子における対応の絞りの方へ案内される、請求項24に記載の測定システム。
【請求項26】
波長に基づいて少なくとも一部分において波長を異ならせた干渉パターンが検出される、請求項24又は25に記載の測定システム。
【請求項27】
異なる波長の干渉パターンは、パターンにおける複数の最大値及び/又は最小値の間隔に基づいて少なくとも一部分において検出される、請求項24から26のいずれかに記載の測定システム。
【請求項28】
当該システムは、さらに、第2の検出器を含み、この第2の検出器は、第1の検出器とは異なる強度パターン部分を検出する、請求項1から27のいずれかに記載の測定システム。
【請求項29】
第1及び第2の検出器は、単一の主検出器の部分である、請求項28に記載の測定システム。
【請求項30】
干渉パターン発生器と第1及び第2の検出器との間の光路の屈折率は、意図的に異ならされる、請求項28又は29に記載の測定システム。
【請求項31】
屈折率調整層が、第2の検出器上に或いはその近傍に含まれ、あるいは干渉パターン発生器と第2の検出器との間の光路に割り込まれる、請求項30に記載の測定システム。
【請求項32】
当該システムは、さらに、第2の電磁放射線検出器を含み、第1及び第2の検出器の各々は、前記発生器により生じる干渉パターンのそれぞれの部分を検出するよう動作し、発生器と第1及び第2の検出器との間の各光路の屈折率は、既知量にて意図的に異ならせ、第1及び第2の検出器により検出されるパターンは、電磁放射線の波長を決定するのに使用可能である、請求項1から27のいずれかに記載の測定システム。
【請求項33】
第1及び第2の検出器は、単一の主検出器の一部である、請求項32に記載の測定システム。
【請求項34】
発生器から検出器へ電磁放射線のための少なくとも2つの異なる経路長を提供し、少なくとも2つの異なる経路長に対応する少なくとも2つの干渉パターンを検出器で提供するための経路変更手段を更に含む、請求項1から27のいずれかに記載の測定システム。
【請求項35】
経路変更手段は、発生器から検出器へ電磁放射線用の3つ以上の異なる経路長を提供する、請求項34に記載の測定システム。
【請求項36】
使用時、少なくとも2つの干渉パターンは、検出器で少なくとも部分的に重なり合う、請求項34又は35に記載の測定システム。
【請求項37】
経路変更手段は、それぞれの経路長に沿って電磁放射線の反射における差を提供する、請求項34から36のいずれかに記載の測定システム。
【請求項38】
発生器と検出器との間にエタロンが設けられ、異なる経路長は、使用時に、検出器に到達する前にエタロンを横切る電磁放射線の異なる通過数によって与えられる、請求項37に記載の測定システム。
【請求項39】
使用時、電磁干渉パターン発生器は、異なる波長の少なくとも2つの成分を有する電磁放射線に基づいて電磁放射線干渉パターンを発生させる、請求項1から38のいずれかに記載の測定システム。
【請求項40】
検出器の異なる部分へと向かう異なる波長の成分を空間的に分離するための波長依存セパレータを更に含み、各成分に対応する干渉パターンは、使用時に、随意的に検出器で部分的に重なり合う、請求項39に記載の測定システム。
【請求項41】
波長依存セパレータは、波長依存分散配置または波長依存フィルタ配置である、請求項40に記載の測定システム。
【請求項42】
光をほぼ遮断する筐体内に入れられる、請求項1から41のいずれかに記載の測定システム。
【請求項43】
波長分割多重通信チャンネルにおける波長を測定するための、請求項1から42のいずれかによるデバイスの使用。
【請求項44】
請求項1から42のいずれかに記載の測定システムを含む位置決定装置。
【請求項45】
請求項1から42のいずれかに記載の測定システムを含む波長決定装置。
【請求項46】
請求項1から42のいずれかに記載の測定システムを含む屈折率決定装置。
【請求項47】
電磁放射線干渉パターン発生器を使用して、複数の強度最大値および強度最小値を含む電磁放射線干渉パターンを発生させること、
検出器を使用して、前記発生器により生成される干渉パターンの少なくとも一部を検出すること、ここで検出器は、検出素子のアレイを有し、それにより、検出器が、干渉パターンの複数の強度最大値及び/又は強度最小値をほぼ同時に検出する、
検出された複数の強度最大値及び/又は強度最小値を使用して、物理的特性または物理的特性の変化を測定すること、
を含む、物理的特性を測定する方法。
【請求項48】
干渉パターンに対応する計算されたパターンを、干渉パターンの検出された部分と相互に関連付けることをさらに含む、請求項47に記載の測定方法。
【請求項49】
干渉パターンにおける複数の最大値及び/又は最小値の間隔を決定することを含み、随意的に、検出された干渉パターンを等角的にマッピングすることを含む、請求項47又は48に記載の測定方法。
【請求項50】
複数の最大値及び/又は最小値の間隔をあけることは、フーリエ解析により決定される、請求項49に記載の測定方法。
【請求項51】
複数の最大値及び/又は最小値の間隔をあけることは、補間により決定される、請求項49又は50に記載の測定方法。
【請求項52】
物理的特性は、物体の位置であり、この物体は、(i)電磁放射線干渉パターン発生器、または(ii)電磁放射線検出器のいずれかと一定の空間的関係を有する、請求項47から51のいずれかに記載の測定方法。
【請求項53】
物体は、第1の位置から第2の位置へ移動し、それにより、検出器で捕らえられる、干渉パターンの、あるいは干渉パターンの部分の変化を引き起こす、請求項52に記載の測定方法。
【請求項54】
物体は、(i)3つの直交並進軸の少なくとも1つに沿う並進、及び/又は(ii)3つの直交回転軸の少なくとも1つの周りの回転、により移動され、
それらの軸のいずれか一つ、あるいはいずれかの組み合わせに沿ったあるいは周りの物体の移動は、検出器により捕らえられた干渉パターンにおけるあるいは干渉パターンの一部における変化を提供する、請求項52又は53に記載の測定方法。
【請求項55】
発生器と検出器との間の距離は一定である、請求項47から54のいずれかに記載の測定方法。
【請求項56】
発生器及び検出器は、共通の主軸周りにほぼ配列され、当該方法は、共通の主軸周りの角度位置を決定することを含む、請求項47から55のいずれかに記載の測定方法。
【請求項57】
発生器と検出器との相対位置は一定である、請求項47から54のいずれかに記載の測定方法。
【請求項58】
検出器は、干渉パターンを直接に捕らえる、請求項47から57のいずれかに記載の測定方法。
【請求項59】
検出器は、干渉パターンの少数部分のみを捕らえる、請求項47から58のいずれかに記載の測定方法。
【請求項60】
干渉パターン発生器は、光源を含み、干渉パターン発生器により提供される電磁放射線は、空間的にコヒーレントである、請求項47から59のいずれかに記載の測定方法。
【請求項61】
第1の干渉パターンとは異なる波長の電磁放射線を使用して、少なくとも第2の干渉パターンを生成すること、及び、検出器で第1の干渉パターンと共に第2の干渉パターンを検出すること、を含む、請求項47から60のいずれかに記載の測定方法。
【請求項62】
異なる波長の干渉パターンが、波長に基づいて少なくとも一部分において検出される、請求項61に記載の測定方法。
【請求項63】
異なる波長の干渉パターンは、パターンにおける複数の最大値及び/又は最小値の間隔に基づいて少なくとも一部分において検出される、請求項61又は62に記載の測定方法。
【請求項64】
第2の検出器を用いて、第1の検出器とは異なる強度パターン部分を検出することを含む、請求項47から63のいずれかに記載の測定方法。
【請求項65】
第1及び第2の検出器は、単一の主検出器の部分である、請求項64に記載の測定方法。
【請求項66】
干渉パターン発生器と第1及び第2の検出器との間の光路の屈折率は、意図的に異ならされる、請求項64又は65に記載の測定方法。
【請求項67】
屈折率調整層が、第2の検出器上に或いはその近傍に含まれ、あるいは干渉パターン発生器と第2の検出器との間の光路に割り込まれる、請求項64から66のいずれかに記載の測定方法。
【請求項68】
物理的特性は、電磁放射線の波長である、請求項47から67のいずれかに記載の測定方法。
【請求項69】
波長を制御するために、測定された波長に基づいて、電磁放射線源を動作を制御することを含む、請求項68に記載の測定方法。
【請求項70】
物理的特性は、発生器と検出器との間を通り電磁放射線が通過する媒体の屈折率である、請求項47から67のいずれかに記載の測定方法。
【請求項71】
検出器で少なくとも2つの干渉パターンを提供するように、発生器から検出器への電磁放射線のための少なくとも2つの異なる経路長が設けられ、各パターンは、異なる経路長に対応し、各パターンは、複数の最大値及び/又は最小値の間の間隔をあける異なる特性を有する、請求項47から63のいずれかに記載の測定方法。
【請求項72】
発生器から検出器への電磁放射線のために3つ以上の異なる経路長が設けられる、請求項71に記載の測定方法。
【請求項73】
異なる干渉パターンは、検出器で少なくとも部分的に重なる、請求項71又は72に記載の測定方法。
【請求項74】
異なる経路長は、それぞれの経路長に沿って電磁放射線の反射における差によって提供される、請求項71から73のいずれかに記載の測定方法。
【請求項75】
発生器と検出器との間にエタロンが設けられ、異なる経路長は、検出器に到達する前にエタロンを横切る電磁放射線の異なる通過数によって与えられる、請求項74に記載の測定方法。
【請求項76】
電磁放射線は、異なる波長の少なくとも2つの成分を含み、当該方法は、それら2つの成分の一つ若しくは両方の波長を決定することを含む、請求項47から60のいずれかに記載の測定方法。
【請求項77】
異なる波長の成分は、検出器の異なる部分へ向かって空間的に分離され、各成分に対応する干渉パターンは、随意的に検出器で部分的に重なり合う、請求項76に記載の測定方法。
【請求項78】
異なる波長の成分は、波長依存分散配置または波長依存フィルタ配置によって分離される、請求項77に記載の測定方法。
【請求項79】
波長分割多重通信チャンネルにおける波長測定に適用される、請求項76又は77に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2012−500989(P2012−500989A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524443(P2011−524443)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002071
【国際公開番号】WO2010/023442
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(301008419)ザ ユニバーシティー コート オブ ザ ユニバーシティー オブ グラスゴー (8)
【Fターム(参考)】