電解加工装置及び電解加工方法
本発明は、被加工物の不良品化を招くと考えられるピットの発生を効果的に防止することができるようにした電解加工装置及び電解加工方法を提供する。この電解加工装置は、被加工物を加工する加工電極(210)と、被加工物に給電する給電電極(212)と、加工電極(210)と給電電極(212)との間に電圧を印加する電源(232)と、加工電極(210)及び給電電極(212)を内部に収納した耐圧容器(200)と、耐圧容器(210)内に高圧液体を供給する高圧液体供給系(204)を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解加工装置及び電解加工方法に係り、特に半導体ウェハ等の基板の表面に形成された導電性材料を加工したり、基板の表面に付着した不純物を除去したりするのに使用される電解加工装置及び電解加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェハ等の基板上に回路を形成するための配線材料として、アルミニウム又はアルミニウム合金に代えて、電気抵抗率が低くエレクトロマイグレーション耐性が高い銅(Cu)を用いる動きが顕著になっている。この種の銅配線は、基板の表面に設けた微細凹みの内部に銅を埋め込むことによって一般に形成される。この銅配線を形成する方法としては、化学気相成長法(CVD: Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング及びめっきといった手法があるが、いずれにしても、基板のほぼ全表面に銅を成膜して、化学機械的研磨(CMP: Chemical Mechanical Polishing)により不要の銅を除去するようにしている。
【0003】
図1A乃至図1Cは、この種の銅配線基板Wの一製造例を工程順に示すものである。図1Aに示すように、半導体素子が形成された半導体基材1上の導電層1aの上にSiO2からなる酸化膜やLow−k材膜などの絶縁膜2が堆積され、リソグラフィ・エッチング技術によりコンタクトホール3と配線溝4が形成される。これらの上にTaN等からなるバリア膜5、更にその上に電解めっきの給電層としてのシード層7がスパッタリングやCVD等により形成される。
【0004】
そして、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、図1Bに示すように、半導体基材1のコンタクトホール3及び配線溝4内に銅を充填するとともに、絶縁膜2上に銅膜6を堆積する。その後、化学機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅膜6、シード層7及びバリア膜5を除去して、コンタクトホール3及び配線溝4に充填させた銅膜6の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1Cに示すように銅膜6からなる配線が形成される。
【0005】
また、最近ではあらゆる機器の構成要素において微細化かつ高精度化が進み、サブミクロン領域での物作りが一般的となるにつれて、加工法自体が材料の特性に与える影響は益々大きくなっている。このような状況下においては、従来の機械加工のように、工具が被加工物を物理的に破壊しながら除去していく加工方法では、加工によって被加工物に多くの欠陥を生み出してしまうため、被加工物の特性が劣化してしまう。従って、いかに材料の特性を損なうことなく加工を行うことができるかが問題となってくる。
【0006】
この問題を解決する手段として開発された特殊加工法に、化学研磨や電解加工、電解研磨がある。これらの加工方法は、従来の物理的な加工とは対照的に、化学的溶解反応を起こすことによって、除去加工等を行うものである。従って、塑性変形による加工変質層や転位等の欠陥は発生せず、上述の材料の特性を損なわずに加工を行うといった課題が達成される。
【0007】
上述した電解加工や電解研磨では、被加工物と電解液(NaCl,NaNO3,HF,HCl,HNO3,NaOH等の水溶液)との電気化学的相互作用によって加工が進行するとされている。従って、このような電解質を含む電解液を使用する限り、その電解液で被加工物が汚染されることは避けられない。
【0008】
また、化学機械的電解研磨のように、めっきをしながらCMPで削るというプロセスも発表されているが、めっき成長面に機械加工が付加されることで、めっきの異常成長を促すことにもなり、膜質に問題を起こしている。
【0009】
このため、最近では、環境負荷、加工される製品の汚染または作業中の危険性などを改善させた金属の電解加工方法が開発されつつある(例えば、特開2000−52235号公報及び特開2001−64799号公報参照)。これらの電解加工方法は、純水または超純水を使用して電解加工を行う方法である。純水または超純水は電気をほとんど通さないため、この電解加工方法では、陽極となる被加工物と陰極となる加工電極との間にイオン交換体を配置して被加工物の電解加工が行われる。被加工物、イオン交換体、加工電極は、総て純水または超純水下に置かれるので、環境負荷の問題及び被加工物の汚染の問題が著しく改善される。また、被加工物である金属は、電解反応により金属イオンとして除去され、イオン交換体に保持される。このように、除去された金属イオンがイオン交換体に保持されるため、被加工物及び液体(純水または超純水)自体の汚染を更に低減させることができ、上記方法は理想の電解加工方法として考えられている。
【0010】
上述したように、イオン交換体を配置した状態で超純水を供給しつつ被加工物を加工する電解加工方法によれば、被加工物の汚染が防止され、環境負荷を著しく低減させることができる。また、上記電解加工方法によれば、各種金属部品の表面に鏡面光沢を与えることができ、さらには、従来の金属機械加工仕上げ方法に必要とされる切削油、研磨剤を含むスラリー、電解液などを不要とすることができる。
【0011】
しかしながら、イオン交換体を用いた電解加工方法では、前述のアドバンテージを有するものの、被加工物の種類や加工条件などによっては、加工した面にピット(微小な穴)が形成される。このピットは、電解加工した表面に鏡面光沢ができている場合でも発生している程の肉眼で確認不可能な細孔である。すなわち、このピットは、走査型電子顕微鏡、レーザー顕微鏡、原子間力顕微鏡等で分析して初めて明らかになる細孔である。
【0012】
このピットは、一般的な機械部品の表面仕上げでは、商品の見栄えに特に悪影響を与えない場合もある。しかしながら、真空機器や圧力機器など、高度の密閉度が要求されるシール面にピットが形成されると、所望の真空または圧力が得られず、さらに金属の腐食を進行させると考えられる。また、半導体デバイスにおいても、ピットが形成されると様々な悪影響を及ぼすと考えられている。
【0013】
また、イオン交換体を用いた電解加工においては、ある種の電極系(給電電極及び加工電極)を使用して加工を行った場合に、被加工物と加工電極との間の相対速度の変化に伴って、加工速度が変化する。つまり、図2に示すように、被加工物と加工電極との間の相対速度を速めて加工を行うと加工速度が遅くなり、逆に、被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くして加工を行う加工速度が速くなる現象が見られる。
【0014】
これは、第1に、ハイドロプレーニング現象が要因と考えられる。つまり、図3A及び3Bに示すように、被加工物Wと加工電極300の表面を覆うイオン交換体(イオン交換膜)302とを互いに接触させながら相対運動させ、被加工物Wと加工電極300との間に電圧を印加しつつ、被加工物Wと加工電極300との間に、純水、好ましくは超純水等の液体を供給して電解加工を行うと、イオン交換体302と被加工物Wの被加工面との間に水膜304a,304bができる(ハイドロプレーニング現象)。図3Aに示すように、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が遅い場合に形成される水膜304aの厚さは、図3Bに示すように、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が速い場合に形成される水膜304bの厚さより薄くなる。つまり、この水膜304a,304bは絶縁体であり、この水膜304a,304bの厚さが厚いほど電解効率が低下し、加工速度も低下する。
【0015】
第2に、反応生成物による電気伝導度の上昇が要因と考えられる。つまり、図3A及び3Bに示す場合と同様にして電解加工を行うと、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が遅い場合には、図4Aに示すように、被加工物Wの被加工面に対する加工電極300の滞在時間が長く、また加工生成物(銅イオン/銅酸化物や純水の電気分解により発生するOH−等)306の排出性も悪くなる。このため、図4Bに示す、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が速い場合と比較して、加工生成物306の濃度が高まる。加工生成物306の濃度が高いほど電気伝導度が上昇し、電解効率が向上して、加工速度も向上する。
【0016】
また、例えば、図1Bに示す、絶縁膜2上の余剰な銅膜6を除去し平坦化して、図1Cに示す配線を形成する作業を、例えば、前述のイオン交換体を用いた電解加工で行うと、加工量に対する残留段差は、一般的に図5に示すような関係にあって、加工量が増加すると段差が減少することが判っている。この段差の減少の度合いは、被加工物の初期膜厚、初期段差及び加工条件によって変動する。
【0017】
図5に示す段差解消能力は、イオン交換体を用いた電解加工にあっては、加工速度が速い程、低下する傾向にある。従って、前述のように、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)とを相対運動させて加工する場合、この相対速度が速くなると加工速度が低下し、この加工速度の低下に伴って、段差解消能力は高くなると考えられる。また、イオン交換体の挙動からも、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との相対速度が速い程、段差解消能力が高くなると推察される。
【0018】
これは、第1に、反応生成物による電気伝導度の上昇が要因と考えられる。つまり、前述の図4Aに示す場合と同様に、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が遅い(加工速度が速い)場合には、図6Aに示すように、図6Bに示す、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が速い(加工速度が遅い)場合と比較して、加工生成物306の濃度が高まる。この結果、パターン凹部での反応生成物の濃度が上昇してパターン凸部と凹部の加工速度差が小さくなり、段差解消能力が低下する。
【0019】
第2に、イオン交換体の見かけ弾性率の変化が要因と考えられる。つまり、前述と同様に、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が遅い場合には、図7Aに示すように、図7Bに示す、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が速い場合と比較して、イオン交換体302の見かけの弾性率が低くなり、変形が大きくなって、パターンの凹部へのイオン交換体302の入り込みが多くなる。これによって、パターン凹部でのイオン交換体302との距離がより狭まり、パターン凸部と凹部の加工速度差が小さくなって、段差解消能力が低くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、被加工物の不良品化を招くと考えられるピットの発生を効果的に防止することができるようにした電解加工装置及び電解加工方法を提供することを第1の目的とする。
【0021】
本発明はまた、例えばトレンチの内部の埋込みに使用された銅等の余剰な金属を、段差解消能力を高めつつ除去して平坦化し、しかも加工時間の短縮を図れるようにした電解加工方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の電解加工装置は、被加工物を加工する加工電極と、被加工物に給電する給電電極と、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加する電源と、前記加工電極及び前記給電電極を内部に収納した耐圧容器と、前記耐圧容器内に高圧液体を供給する高圧液体供給系を有することを特徴とする。
【0023】
図8は、イオン交換体を使用した場合における本発明の加工原理を示すものである。図8は、被加工物10の表面に、加工電極14に取付けたイオン交換体12aと、給電電極16に取付けたイオン交換体12bとを接触又は近接させ、加工電極14と給電電極16との間に電源17を介して電圧を印加しつつ、加工電極14及び給電電極16と被加工物10との間に液体供給部19から超純水等の液体18を供給した状態を示している。
【0024】
超純水のような液自身の抵抗値が大きい液体を使用する場合には、イオン交換体12aを被加工物10の表面に「接触させる」ことが好ましく、このようにイオン交換体12aを被加工物10の表面に接触させることにより、電気抵抗を低減させることができ、印加電圧も小さくて済み、消費電力も低減できる。従って、本発明に係る加工における「接触」は、例えばCMPのように物理的なエネルギー(応力)を被加工物に与えるために、「押し付ける」ものではない。
【0025】
これにより、超純水等の液体18中の水分子20をイオン交換体12a,12bで水酸化物イオン22と水素イオン24に解離し、例えば生成された水酸化物イオン22を、被加工物10と加工電極14との間の電界と超純水等の液体18の流れによって、被加工物10の加工電極14と対面する表面に供給して、ここでの被加工物10近傍の水酸化物イオン22の密度を高め、被加工物10の原子10aと水酸化物イオン22を反応させる。反応によって生成された反応物質26は、液体18中に溶解し、被加工物10の表面に沿った超純水等の液体18の流れによって被加工物10から除去される。これにより、被加工物10の表面層の除去加工が行われる。
【0026】
このように、本加工法は純粋に被加工物との電気化学的相互作用のみにより被加工物の除去加工を行うものであり、CMPのような研磨部材と被加工物との物理的な相互作用及び研磨液中の化学種との化学的相互作用の混合による加工とは加工原理が異なるものである。この方法では、被加工物10の加工電極14と対面する部位が加工されるので、加工電極14を移動させることで、被加工物10の表面を所望の表面形状に加工することができる。
【0027】
なお、本発明に係る電解加工装置は、電気化学的相互作用による溶解反応のみにより被加工物の除去加工を行うため、CMPのような研磨部材と被加工物との物理的な相互作用及び研磨液中の化学種との化学的相互作用の混合による加工とは加工原理が異なるものである。従って、材料の特性を損なわずに除去加工を行うことが可能であり、例えば前述のLow−k材に挙げられる機械的強度の小さい材料に対しても、物理的な相互作用を及ぼすことなく除去加工が可能である。また、通常の電解加工装置と比較しても、電解液に500μS/cm以下の液体、好ましくは純水、更に好ましくは超純水を用いるため、被加工物表面への汚染も大幅に低減させることが可能であり、また加工後の廃液の処理も容易となる。
【0028】
上述した電解加工にあっては、一般に、電解加工時間を長くするに伴いピットの数が増える傾向にある。経験的には電解加工時に被加工物の表面にガス(気泡)が発生するほど、ピットの数も多くなってくることが明らかになっている。水が含まれている電解液を用いた場合、電極で発生する酸素や水素の量が多いほどピットの数も増大するため、このピットはガスピットとも呼ばれている。
【0029】
本発明によれば、液体中へのガスの溶解容量は、液体の圧力に比例して増加し、気泡発生量は、ガス発生量から液体中に溶解したガスの量(ガス溶存量)の差で求められるため、高圧液体の下で電解加工を行うことで、電極及び被加工物表面で発生するガスの溶解速度及び溶解量を増大させ、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させて、ピットの発生量を減少させることができる。
【0030】
前記加工電極と前記被加工物の間に接触部材を配置することが好ましい。
前記給電電極と前記加工電極からなる電極部を設け、前記電極部と前記被加工物との間及び/または前記電極部の前記加工電極と前記給電電極との間に接触部材を配置することが好ましい。
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることが好ましい。
このように、接触部材としてイオン交換体を使用することで、超純水等の液体中の水分子の水酸化イオンと水素イオンへの解離を促進し、電解加工を行うことができる。
【0031】
本発明の好ましい一態様は、前記耐圧容器内に供給される高圧液体の圧力は、2kgf/cm2以上であることを特徴とする。耐圧容器内に供給される高圧液体の圧力は、一般的には2kgf/cm2以上であることが好ましい。
【0032】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることが好ましい。
液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量は、液体の温度の増加と共に減少する。このため、耐圧容器内に供給される高圧液体の温度を低下させることで、液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量を増大させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させ、同時に液体の温度によるガスの膨張を抑えることができる。
【0033】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体中の溶存気体を脱気するための脱気装置が備えられていることが好ましい。
液体中へのガスの溶解容量は、溶液中に溶存ガスが存在する場合、溶存ガスに相当するガス分圧分だけ減少し、またガス溶解速度は、溶液中の既存ガス量の増加と共に残存するガス溶解容量が減少するため減少する。このため、耐圧容器内に供給される高圧液体中の溶存気体を予め脱気しておくことで、液体中へのガス溶解容量及びガス溶解速度を増加させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
【0034】
本発明の他の電解加工装置は、被加工物を加工する加工電極と、被加工物に給電する給電電極と、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加する電源と、記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に液体を供給する液体供給系を有し、前記液体供給系には、前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に供給される前記液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることを特徴とする。
【0035】
液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量は、液体の温度の増加と共に減少するため、被加工物と加工電極または給電電極の少なくとも一方との間に供給される液体の温度を低下させることで、液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量を増大させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させ、同時に温度によるガスの膨張を抑えることができる。
【0036】
本発明の好ましい一態様は、前記熱交換器は、液温が25℃以下となるように前記被加工物と前記イオン交換体との間に供給される前記液体を調節することを特徴とする。この被加工物とイオン交換体との間に供給される液体の液温は、一般的には25℃以下であることが好ましい。
【0037】
本発明の更に他の電解加工装置は、電極と該電極の表面を覆うイオン交換体とを有する電極部材を有する電極部と、被加工物を保持し、前記電極部材のイオン交換体に被加工物を接触させる保持部と、前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物との間に液体を供給する液体供給系と、前記電極部と前記被加工物との間に相対運動を生じさせる駆動機構と、前記電極部の各電極部材の電極に接続される電源とを備え、被加工物の被加工面のある一点の前記イオン交換体に対する該イオン交換体との連続接触時間は、10msec以下であることを特徴とする。
【0038】
被加工物の被加工面のある一点のイオン交換体に対する該イオン交換体との連続接触時間は、一般には10msec以下であり、好ましくは5msec以下、更に好ましくは1.5msec以下である。
【0039】
前記電極を覆うイオン交換体は、前記保持部で保持した被加工物と0.2〜1.5mmの接触幅で接触するように構成されていることが好ましい。
液体中へのガス溶解量は、ガス溶解時間に依存して増加し、最終的にはガス溶解容量に漸近する。このため、ガス溶解時間が大きいほど、液体中へのガス溶解量は増加する。そこで、電極を覆うイオン交換体が保持部で保持した被加工物と線状に接触する接触幅をより狭くすることで、被加工物の任意の加工点に対する電極の通過時間(加工時間)を相対的に短くすることができ、これによって、ガス発生時間を短くするとともに、ガス溶解時間を長くして、ガス溶解量を増加させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。この接触幅は、一般的には0.2〜1.5mmであり、好ましくは0.2〜1.2mm、更に好ましくは0.2〜1.0mmである。
【0040】
前記駆動機構は、前記電極部と前記被加工物とを0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させるように構成されていることが好ましい。
電解加工において、発生したガスは、電極と被加工物との間に存在する液体中に溶解する。このため、電極と被加工物との相対速度をより大きくして、電極と被加工物と間に存在し、電極と被加工物との相対速度に伴って置換される流量を大きくすることで、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。この相対速度は、一般的には0.2m/sec以上であり、好ましくは0.5m/sec以上、更に好ましくは0.7m/sec以上である。
【0041】
本発明の更に他の電解加工装置は、電極と該電極の表面を覆うイオン交換体とを有する電極部材を有する電極部と、被加工物を保持し、前記電極部材のイオン交換体に被加工物を接触させる保持部と、前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物との間に液体を供給する液体供給系と、前記電極部と前記被加工物との間に相対運動を生じさせる駆動機構と、前記電極部の各電極部材の電極に接続される電源とを備え、前記電源は、前記電極部と前記被加工物との間の相対運動に同期してON/OFFまたは正/負制御されることを特徴とする。
【0042】
このように、電極部と被加工物との間の相対運動と電源のON/OFF制御を同期させ、例えば、電極部の電極と被加工物との間における該電極部の幅方向の相対速度が0.2m/sec以上の相対速度が速い区間でのみ加工が行われるようにすることで、前述の相対速度をより大きくした場合と同様にして、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
前記電源は、前記電極部の電極と前記被加工物との間における該電極部の幅方向の相対速度が0.2m/sec以上の時にONとなるようにON/OFF制御されることが好ましい。
【0043】
本発明の好ましい一態様は、隣り合う前記電極部材の電極を前記電源の陰極と陽極とに交互に接続したことを特徴とする。
前記液体は、例えば純水、超純水または電気伝導度が500μs/cm以下の液体である。
本発明の電解加工方法は、電極部に電圧を印加し、高圧液体を介して被加工物の加工を行うことを特徴とする。
前記高圧液体は、好ましくは、前記電極部と前記被加工物との間に供給される。
前記被加工物と前記電極部を前記高圧液体に浸漬させつつ被加工物の加工を行うことが好ましい。
前記電極部は、被加工物を加工する加工電極と前記被加工物に給電する給電電極とからなることが好ましい。
前記高圧液体の圧力は、2kgf/cm2以上であることが好ましい。
【0044】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物を加工する加工電極と前記被加工物に給電する給電電極とからなる電極部に電圧を印加し、高圧液体を介して被加工物の加工を行うことを特徴とする。
【0045】
本発明の他の電解加工方法は、被加工物に近接または接触自在な加工電極と被加工物に給電する給電電極とを用意し、前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に温度を調整した液体を供給しつつ、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加して被加工物の加工を行うことを特徴とする。
【0046】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物に近接または接触自在な加工電極と被加工物に給電する給電電極とを用意し、前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に溶存気体を脱気した液体を供給しつつ、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加して被加工物の加工を行うことを特徴とする。
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間にイオン交換体を配置することが好ましい。
【0047】
本発明の更に他の電解加工方法は、電極の表面を覆うイオン交換体と保持部で保持した被加工物とを、被加工物の被加工面のある一点の前記イオン交換体に対する該イオン交換体との接触時間が10msec以下となるように、互いに接触させながら相対運動させ、液体の存在下で、前記電極に電圧を印加して被加工物を加工することを特徴とする。
【0048】
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物とを、0.2〜1.5mmの接触幅で互いに接触させることが好ましい。
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物とを互いに線状に接触させながら0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させることが好ましい。
【0049】
本発明の更に他の電解加工方法は、平行に配置した複数の電極の表面を覆うイオン交換体と保持部で保持した被加工物とを互いに接触させながら相対運動させ、液体の存在下で、前記相対運動に同期してON/OFF制御された電圧を前記電極に印加して被加工物を加工することを特徴とする。
【0050】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では速く、加工後期では遅くすることを特徴とする。
【0051】
この方法によれば、加工初期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を速めることで段差解消能力を高め、段差が解消した加工後期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くすることで加工速度を早め、これによって、段差解消性能を高め、かつ加工時間を短縮することができる。
【0052】
本発明の好ましい一態様は、被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が600nm以下に達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を遅くすることを特徴とする。
加工後期に被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くする時期は、薄膜の残膜厚が、一般的には600nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下に達した時である。
【0053】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では速く、加工中期では遅く、加工後期では再び前記加工中期より速くすることを特徴とする。
【0054】
この方法によれば、加工初期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を速めることで段差解消能力を高め、段差が解消した加工中期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くすることで加工速度を早め、更に、加工後期おいて、被加工物と加工電極との間の相対速度を再び速めることで段差解消能力を高めるとともに、加工面にピット発生を防止した仕上げを行い、しかも加工速度を遅くすることで、加工終点(エンドポイント)をより正確に検知することができる。
【0055】
本発明の好ましい一態様は、被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が600nm以下に達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を遅くし、薄膜の残膜厚が50〜300nmのときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を再び速くすることを特徴とする。
【0056】
加工中期に被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くする時期は、薄膜の残膜厚が、一般的には600nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下である。また、加工後期に被加工物と加工電極との間の相対速度を再び速くする時期は、薄膜の残膜厚が、一般的には50〜300nm、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは50〜150nmの時である。
【0057】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では遅く、加工後期では速くすることを特徴とする。
【0058】
この方法によれば、加工初期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くすることで加工速度を速め、加工後期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を速めることで段差解消能力を高め、これによって、段差解消性能を高め、かつ加工時間を短縮することができる。
【0059】
本発明の好ましい一態様は、被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が50〜300nmに達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を速くすることを特徴とする。
加工後期に被加工物と加工電極との間の相対速度を速くする時期は、薄膜の残膜厚が、一般的には50〜300nm、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは50〜150nmに達した時である。
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を段階的に変化させようにしてもよい。また、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を、例えば直線的または曲線的に連続的に変化させるようにしてもよい。
【0060】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、被加工物及び/または加工電極が所定の周期運動を行うことにより、被加工物と加工電極との間に相対運動を起こさせ加工を行う電解加工方法であって、前記加工の途中で、前記被加工物及び/または加工電極の運動の周期を変えることを特徴とする。
【0061】
本発明によれば、基板等の被加工物に物理的な欠陥を与えて被加工物の特性を損なうことを防止しつつ、電気化学的作用によって、例えばCMPに代わる電解加工等を施すことができ、これによって、CMP処理そのものを省略したり、CMP処理の負荷を低減したり、更には基板等の被加工物の表面に付着した付着物を除去(洗浄)することができる。しかも、純水または超純水のみを使用しても基板を加工することができ、これによって、基板の表面に電解質等の余分な不純物が付着したり、残留したりすることをなくして、除去加工後の洗浄工程を簡略化できるばかりでなく、廃液処理の負荷を極めて小さくすることができる。
本発明によれば、加工の途中で、被加工物と加工電極との間の相対速度を速めることで段差解消能力を高め、被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くすることで加工速度を早めることによって、段差解消性能を高め、かつ加工時間を短縮することができ、更には、被加工物の不良品化を招いていた加工面のピットの発生を防止するようにすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、被加工物として基板を使用し、電解加工装置で基板を加工するようにした例を示しているが、本発明を基板以外にも適用できることは言うまでもない。
【0063】
図9は、本発明の第1の実施の形態における電解加工装置の系統図を示す。この電解加工装置は、密閉可能な耐圧容器200を有する装置本体202と、この装置本体202の耐圧容器200に高圧液体を供給する高圧液体供給系204と、この耐圧容器200内の液体を外部に排出する液体排出系206と、補助ライン系208とから主に構成されている。
【0064】
装置本体202には、一対の加工電極210と給電電極212を有し、この加工電極210と給電電極212の露出表面をイオン交換体214,216でそれぞれ覆った電極板218と、半導体ウェハ等の基板Wを着脱自在に保持する基板保持部220とが備えられている。この電極板218と基板保持部220は、耐圧容器200の内部に互いに対峙して配置されている。電極板218は、耐圧容器200を貫通して延び、駆動部222を介して前後動自在な主軸224の先端に固着されている。一方、基板保持部220は、耐圧容器200を貫通して延びる回転軸226の先端に固着され、この回転軸226は、モータ228の出力軸にカップリング230を介して連結されている。
【0065】
このようなイオン交換体214,216は、例えば、アニオン交換能又はカチオン交換能を付与した不織布で構成されている。カチオン交換体は、好ましくは強酸性カチオン交換基(スルホン酸基)を担持したものであるが、弱酸性カチオン交換基(カルボキシル基)を担持したものでもよい。また、アニオン交換体は、好ましくは強塩基性アニオン交換基(4級アンモニウム基)を担持したものであるが、弱塩基性アニオン交換基(3級以下のアミノ基)を担持したものでもよい。
【0066】
ここで、例えば強塩基性アニオン交換能を付与した不織布は、繊維径20〜50μmで空隙率が約90%のポリオレフィン製の不織布に、γ線を照射した後グラフト重合を行ういわゆる放射線グラフト重合法により、グラフト鎖を導入し、次に導入したグラフト鎖をアミノ化して4級アンモニウム基を導入して作製される。導入されるイオン交換基の容量は、導入するグラフト鎖の量により決定される。グラフト重合を行うためには、例えばアクリル酸、スチレン、メタクリル酸グリシジル、更にはスチレンスルホン酸ナトリウム、クロロメチルスチレン等のモノマーを用い、これらのモノマー濃度、反応温度及び反応時間を制御することで、重合するグラフト量を制御することができる。従って、グラフト重合前の素材の重量に対し、グラフト重合後の重量の比をグラフト率と呼ぶが、このグラフト率は、最大で500%が可能であり、グラフト重合後に導入されるイオン交換基は、最大で5meq/gが可能である。
【0067】
強酸性カチオン交換能を付与した不織布は、前記強塩基性アニオン交換能を付与する方法と同様に、繊維径20〜50μmで空隙率が約90%のポリオレフィン製の不織布に、γ線を照射した後グラフト重合を行ういわゆる放射線グラフト重合法により、グラフト鎖を導入し、次に導入したグラフト鎖を、例えば加熱した硫酸で処理してスルホン酸基を導入して作製される。また、加熱したリン酸で処理すればリン酸基が導入できる。ここでグラフト率は、最大で500%が可能であり、グラフト重合後に導入されるイオン交換基は、最大で5meq/gが可能である。
【0068】
イオン交換体214,216の素材の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系高分子、又はその他有機高分子が挙げられる。また素材形態としては、不織布の他に、織布、シート、多孔質材、短繊維等が挙げられる。
ここで、ポリエチレンやポリプロピレンは、放射線(γ線と電子線)を先に素材に照射する(前照射)ことで、素材にラジカルを発生させ、次にモノマーと反応させてグラフト重合することができる。これにより、均一性が高く、不純物が少ないグラフト鎖ができる。一方、その他の有機高分子は、モノマーを含浸させ、そこに放射線(γ線、電子線、紫外線)を照射(同時照射)することで、ラジカル重合することができる。この場合、均一性に欠けるが、ほとんどの素材に適用できる。
【0069】
このように、イオン交換体214,216をアニオン交換能又はカチオン交換能を付与した不織布で構成することで、純水又は超純水や電解液等の液体が不織布の内部を自由に移動して、不織布内部の水分解触媒作用を有する活性点に容易に到達することが可能となって、多くの水分子が水素イオンと水酸化物イオンに解離される。更に、解離によって生成した水酸化物イオンが純水又は超純水や電解液等の液体の移動に伴って効率良く加工電極の表面に運ばれるため、低い印加電圧でも高電流が得られる。
【0070】
ここで、イオン交換体214,216をアニオン交換能又はカチオン交換能の一方を付与したもののみで構成すると、電解加工できる被加工材料が制限されるばかりでなく、極性により不純物が生成しやすくなる。そこで、アニオン交換能を有するアニオン交換体とカチオン交換能を有するカチオン交換体とを重ね合わせたり、イオン交換体214,216自体にアニオン交換能とカチオン交換能の双方の交換基を付与するようにしたりしてもよく、これにより、被加工材料の範囲を拡げるとともに、不純物を生成しにくくすることができる。
【0071】
本発明は、イオン交換体を用いた電解加工に限られるものではない。例えば、加工液として電解液を用いた場合は、電極の表面に取付けられる加工部材(接触部材)としては、純水や超純水に最適なイオン交換体214,216に代えて、柔らかい研磨パッドや不織布のようなものであってもよい。また、接触部材として、ポリテックス(ロデール社の商標)、ポリウレタンスポンジ、不織布、発泡ポリウレタンまたはPVDスポンジを使用してもよい。
【0072】
この実施の形態では、加工電極210は、電源232の陰極に、給電電極212は、電源232の陽極にそれぞれ接続される。これは、例えば、銅を加工する場合においては、陰極側に電解加工作用が生じるためである。加工材料によっては、電源232の陰極に接続される電極を給電電極とし、陽極に接続される電極を加工電極としてもよい。すなわち、被加工材料が例えば銅やモリブデン、鉄である場合には、陰極側に電解加工作用が生じるため、電源232の陰極に接続した電極が加工電極210となり、陽極に接続した電極が給電電極212となる。一方、被加工材料が例えばアルミニウムやシリコンである場合には、陽極側で電解加工作用が生じるため、電源232の陽極に接続した電極が加工電極となり、陰極に接続した電極が給電電極となる。
【0073】
ここで、加工電極210や給電電極212は、電解反応により、酸化又は溶出が一般に問題となる。このため、電極の素材として、電極に広く使用されている金属や金属化合物よりも、炭素、比較的不活性な貴金属、導電性酸化物又は導電性セラミックスを使用することが好ましい。この貴金属を素材とした電極としては、例えば、下地の電極素材にチタンを用い、その表面にめっきやコーティングで白金又はイリジウムを付着させ、高温で焼結して安定化と強度を保つ処理を行ったものが挙げられる。セラミックス製品は、一般に無機物質を原料として熱処理によって得られ、各種の非金属・金属の酸化物・炭化物・窒化物などを原料として、様々な特性を持つ製品が作られている。この中に導電性を持つセラミックスもある。電極が酸化すると電極の電気抵抗値が増加し、印加電圧の上昇を招くが、このように、白金などの酸化しにくい材料やイリジウムなどの導電性酸化物で電極表面を保護することで、電極素材の酸化による導電性の低下を防止することができる。
【0074】
高圧液体供給系204は、純水、好ましくは超純水を輸送する純水ライン240を備え、この純水ライン240に該純水ライン240に沿って流れる純水の温度を調整する熱交換器242と、純水ライン240に沿って流れる純水中の溶存気体を脱気する脱気装置244が介装されている。そして、この脱気装置244の下流側で、内部に開閉弁246を介装した初期給水ライン248と、高圧(超)純水製造装置250を介装した高圧純水供給ライン254に分岐し、再び合流して装置本体202の耐圧容器200に接続されている。
【0075】
これにより、純水ライン240に沿って流れる純水を、先ず熱交換器242を通過させて、その液温が25℃以下となるように冷却する。そして、脱気装置244を通過させることで、初期の溶存ガスを除去(脱気)する。初期段階では、開閉弁246を開くことで、初期給水ライン248を通して、この冷却及び脱気した後の純水を耐圧容器200内に供給する。一方、電解加工を行うに当たっては、開閉弁246を閉じて、純水を高圧純水供給ライン254に沿って流す。これによって、高圧純水製造装置250で、純水を2kgf/cm2以上に加圧し、この加圧した純水を耐圧容器200の内部に供給する。
【0076】
なお、この例では、高圧純水製造装置250として、プランジャポンプを使用し、この高圧純水製造装置(プランジャポンプ)250で加圧した純水を耐圧容器200内に供給し、これによって、予め溜めておいた耐圧容器200内の純水を所定の圧力に加圧するようにしている。
液体排出系206は、内部に開閉弁256を介装した排水ライン258を有しており、この開閉弁256を開閉することで、耐圧容器200内の液体の排出及び遮断が行えるようになっている。
【0077】
補助ライン系208は、内部に開閉弁260を介装して耐圧容器200に接続した、排水兼ガス抜き用の補助ライン262を有しており、この補助ライン262に、内部に開閉弁264を介装した不活性ガス供給ライン266と、耐圧容器200の限界圧力より低い圧力で開くリリーフ弁268を備えた安全ライン270が接続され、更に、耐圧容器200内の液体(圧力純水)の圧力を検出する圧力計272が備えられている。
【0078】
これにより、不活性ガス供給ライン266の開閉弁264を開くことで、例えばN2ガス等の不活性ガスを耐圧容器200内に供給することができる。また、耐圧容器200の限界圧力より低い圧力で開くリリーフ弁268を備えた安全ライン270を備え、耐圧容器200内がこの限界圧力に達する前にリリーフ弁268を介して耐圧容器200内の液体(純水)の圧力を開放することで、耐圧容器200が液体圧で破壊されることを防止することができる。
【0079】
ここで、純水は、例えば電気伝導度が10μS/cm(1atm,25℃換算、以下同じ)以下の水であり、超純水は、例えば電気伝導度が0.1μS/cm以下の水である。このように電解質を含まない純水又は超純水を使用して電解加工を行うことで、基板Wの表面に電解質等の余分な不純物が付着したり、残留したりすることをなくすことができる。
【0080】
純水又は超純水の代わりに、電気伝導度500μS/cm以下の液体や、任意の電解液、例えば純水又は超純水に電解質を添加した電解液を使用してもよい。電解液を使用することで、電気抵抗を低減して消費電力を削減することができる。この電解液としては、例えば、NaClやNa2SO4等の中性塩、HClやH2SO4等の酸、更には、アンモニア等のアルカリなどの溶液を使用することができ、被加工物の特性によって適宜選択して使用することができる。
【0081】
純水又は超純水の代わりに、純水又は超純水に界面活性剤等を添加して、電気伝導度が500μS/cm以下、好ましくは、50μS/cm以下、更に好ましくは、0.1μS/cm以下(比抵抗で10MΩ・cm以上)にした液体を使用してもよい。このように、純水又は超純水に界面活性剤を添加することで、基板Wとイオン交換体214,216の界面にイオンの移動を防ぐ一様な抑制作用を有する層を形成し、これによって、イオン交換(金属の溶解)の集中を緩和して被加工面の平坦性を向上させることができる。ここで、界面活性剤濃度は、100ppm以下が好ましい。なお、電気伝導度の値があまり高いと電流効率が下がり、加工速度が遅くなるが、500μS/cm以下、好ましくは、50μS/cm以下、更に好ましくは、0.1μS/cm以下の電気伝導度を有する液体を使用することで、所望の加工速度を得ることができる。
【0082】
次に、この実施の形態における電解加工装置を使用した電解加工例について説明する。
まず、基板保持部220で基板Wを保持する。この時、耐圧容器200内は空の状態で、また電極板218は、基板保持部220で保持した基板Wと所定間隔離間した対峙位置にある。
この状態で、不活性ガス供給ライン266の開閉弁264を開き、耐圧容器200内にN2ガス等の不活性ガスを供給して、耐圧容器200内をN2ガス等の不活性ガスで置換する。このように、電解加工に先立って、耐圧容器200内のO2等の気体をN2ガス等の不活性ガスで置換することで、電解加工で発生し該電解加工で使用する液体(純水)中に溶解させたいガスを外方に押しやって予め除去しておく。特に、O2ガスは大気中に多量に存在するため、予め除去しておくことが望ましい。
【0083】
次に、初期給水ライン248の開閉弁246を開き、熱交換器242で冷却(温度調整)され、脱気装置244で脱気された純水を、初期給水ライン248を通して耐圧容器200内に供給し、同時に、補助ライン262の開閉弁260を開いて、耐圧容器200内を加圧されていない純水で満たしつつ、耐圧容器200内に残留する気泡やガス等を補助ライン262から外部に排出して除去する。
【0084】
そして、初期給水ライン248の開閉弁246を閉じ、高圧純水供給ライン254を通して、高圧純水製造装置250で発生した高圧純水を耐圧容器200内に供給し、これによって、耐圧容器200内を、例えば2kgf/cm2で加圧された純水で満たす。なお、この例では、前述のように、高圧純水製造装置250として、プランジャポンプを使用し、耐圧容器200内に満たされた加圧されていない純水を、プランジャポンプから吐出される純水で加圧するようにしているが、これに限定されないことは勿論である。
【0085】
このように、耐圧容器200内を高圧純水で満たした状態で、電解加工を開始する。
先ず、駆動部222を駆動させて、電極板218を基板保持部220で保持した基板Wに向けて前進させ、このイオン交換体214,216を基板保持部220で保持した基板Wに接触させる。この状態で、モータ228を駆動して基板Wを基板保持部220と一体に回転させる。そして、電源232により加工電極210と給電電極212との間に所定の電圧を印加し、イオン交換体214,216により生成された水素イオン又は水酸化物イオンによって、加工電極(陰極)210において基板Wの表面の導電体膜、例えば図1Bに示す銅膜6等の電解加工を行う。
電解加工中には、例えば加工電極210と給電電極212との間に印加する電圧、又はこの間を流れる電流をモニタ部でモニタして、エンドポイント(加工終点)を検知する。
【0086】
ここで、超純水のような液自身の抵抗値が大きい液体を使用する場合には、イオン交換体214,216を基板Wに接触させることにより、電気抵抗を低減させることができ、印加電圧も小さくて済み、消費電力も低減できる。この「接触」は、例えばCMPのように物理的なエネルギー(応力)を被加工物に与えるために、「押し付ける」ことを意味するものではない。すなわち、CMPにおいては、一般に20〜50kPa程度の押圧力で基板を研磨面に押し付けているが、この実施の形態の電解加工装置では、例えば、20kPa以下の圧力でイオン交換体214,216を基板Wに接触させればよく、10kPa以下の圧力でも十分除去加工効果が得られる。
【0087】
電解加工完了後、加工電極210及び給電電極212と電源232との接続を切り、基板保持部220の回転を停止させ、しかる後、電極板218を基板保持部220から離れる方向に移動させる。
そして、先ず、補助ライン262の開閉弁260を開いて、耐圧容器200内の高圧純水の圧抜きを行う。つまり、補助ライン262を通して、耐圧容器200内の純水の一部及び上部に溜まった気体を外部に排出する。この圧抜きと同時に、不活性ガス供給ライン266の開閉弁264を開いて、耐圧容器200内にN2ガス等の不活性ガスを供給する。これにより、高圧純水中に溶存し該高圧純水の圧抜きに伴ってガス化し体積を急増させたH2をN2ガス等の不活性ガスで希釈して、H2が爆発してしまうことを防止する。
【0088】
しかる後、排水ライン258の開閉弁256を開き、耐圧容器200内の純水を排水ライン258を通して外部に排出し、これによって、一連の電解加工を終了する。
このように、耐圧容器200内を、例えば2kgf/cm2以上の圧力の高圧純水で満たした状態で電解加工を行い、更に耐圧容器200内に、例えば25℃以下の低温の液温の純水(高圧純水)を供給し、しかもこの耐圧容器200内に供給される純水(高圧純水)中の溶存気体を予め脱気しておくことで、基板Wの導電体膜、例えば図1Bに示す銅膜6等の被加工面にピットが発生することを防止することができる。この原理を以下に説明する。
【0089】
ピットの発生原因となる気泡の発生量(気泡量)は、ガス発生量から純水(液体)中に溶解したガスの量(ガス溶存量)の差、つまり、
気泡量=ガス発生量−ガス溶存量 …(1)
で求められる。従って、ガス発生量を減少させるか、または純水中のガス溶存量を増大させることで、気泡量を減少させることができる。
【0090】
ここで、液体中へのガス溶解速度及びガス溶解容量は、液体単位体積(一定温度、1kg・cm2)当たりのガス溶解量(C)と、液体体積(V)と、液体圧力(=ガス分圧)(P)と初期溶存ガス量に相当するガス分圧(P0)の差(P−P0)の積に比例する。
液体中へのガス溶解速度及びガス溶解容量∝C×V×(P−P0) …(2)
従って、液体中へのガス溶解速度及びガス溶解容量と液体の圧力(水圧)との関係は、図10に示すようになる。つまり、液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量は、液体の圧力に比例して増加し、また式(1)より、気泡発生量は、ガス発生量から液体中に溶解したガスの量(ガス溶存量)の差で求められるため、高圧液体の下で電解加工を行うことで、電極及び被加工物表面で発生したガスの溶解速度及び溶解量を増大させ、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させて、ピットの発生量を減少させることができる。
【0091】
ここで、式(2)における液体短期体積当たりのガス溶解量(C)は、水温と共に減少する。つまり、ガス溶解量と液体の水温との関係は、図11に示すようになる。これにより、耐圧容器200内に供給される高圧液体の温度を低下させることで、液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量を増大させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させ、同時に液体の温度によるガスの膨張を抑えることができる。
【0092】
更に、式(1)に示すように、ガス溶解容量は、液体中に初期溶存ガスが存在する場合、溶存ガス量に相当するガス分圧(P0)分だけ減少する。従って、初期溶存ガス量がA,B,C(A>B>C)である液体と液体の圧力(水圧)との関係は、図12に示すようになる。また、ガス溶解速度は、液体中の既存ガス量の増加と共に、残存するガス溶解容量が減少するため減少する。従って、ガス溶解速度と液体中の既存ガス量の関係は、図13に示すようになる。これにより、耐圧容器内に供給される高圧液体中の溶存気体を予め脱気しておくことで、液体中へのガス溶解容量及びガス溶解速度を増加させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
【0093】
図14は、本発明の第2の実施の形態における電解加工装置を備えた基板処理装置の構成を示す平面図である。図14に示すように、この基板処理装置は、例えば、図1Bに示すように、表面に導電体膜(被加工膜)としての銅膜6を有する基板Wを収納したカセットを搬出入する搬出入部としての一対のロード・アンロード部30と、基板Wを反転させる反転機32と、電解加工装置34とを備えている。これらの機器は直列に配置されており、これらの機器の間で基板Wを搬送して授受する搬送装置としての搬送ロボット36がこれらの機器と平行に配置されている。また、電解加工装置34による電解加工の際に、後述する加工電極と給電電極との間に印加する電圧又はこれらの間を流れる電流をモニタするモニタ部38がロード・アンロード部30に隣接して配置されている。
【0094】
図15は基板処理装置内の電解加工装置34を示す平面図、図16は図15の縦断面図である。図15及び図16に示すように、電解加工装置34は、上下動可能かつ水平面に沿って往復動可能なアーム40と、アーム40の自由端に垂設されて基板Wを下向き(フェースダウン)に吸着保持する基板保持部42と、アーム40が取付けられる可動フレーム44と、矩形状の電極部46と、電極部46に接続される電源48とを備えている。この実施の形態では、電極部46の大きさは基板保持部42で保持する基板Wの外径よりも一回り大きな大きさに設定されている。
【0095】
図15及び図16に示すように、可動フレーム44の上部には上下動用モータ50が設置されており、この上下動用モータ50には上下方向に延びるボールねじ52が連結されている。ボールねじ52にはアーム40の基部40aが取付けられており、上下動用モータ50の駆動に伴ってアーム40がボールねじ52を介して上下動する。また、可動フレーム44自体も、水平方向に延びるボールねじ54に取付けられており、往復動用モータ56の駆動に伴って可動フレーム44及びアーム40が水平面に沿って往復動する。
【0096】
基板保持部42は、アーム40の自由端に設置された自転用モータ58に接続されており、この自転用モータ58の駆動に伴って回転(自転)する。また、上述したように、アーム40は上下動及び水平方向に往復動可能となっており、基板保持部42はアーム40と一体となって上下動及び水平方向に往復動可能となっている。
【0097】
電極部46の下方には中空モータ60が設置されており、この中空モータ60の主軸62には、この主軸62の中心から偏心した位置に駆動端64が設けられている。電極部46は、その中央において上記駆動端64に軸受(図示せず)を介して回転自在に連結されている。また、電極部46と中空モータ60との間には、周方向に3つ以上の自転防止機構が設けられている。
【0098】
図17Aは、この実施の形態における自転防止機構を示す平面図、図17Bは、図17AのA−A線断面図である。図17A及び図17Bに示すように、電極部46と中空モータ60との間には、周方向に3つ以上(図17Aにおいては4つ)の自転防止機構66が設けられている。図17Bに示すように、中空モータ60の上面と電極部46の下面の対応する位置には、周方向に等間隔に複数の凹所68,70が形成されており、これらの凹所68,70にはそれぞれ軸受72,74が装着されている。軸受72,74には、距離“e”だけずれた2つの軸体76,78の一端部がそれぞれ挿入されており、軸体76,78の他端部は連結部材80により互いに連結される。ここで、中空モータ60の主軸62の中心に対する駆動端64の偏心量も上述した距離“e”と同じになっている。従って、電極部46は、中空モータ60の駆動に伴って、主軸62の中心と駆動端64との間の距離“e”を半径とした、自転を行わない公転運動、いわゆるスクロール運動(並進回転運動)を行う。
【0099】
次に、この実施の形態における電極部46について説明する。この実施の形態における電極部46は複数の電極部材82を備えている。図18は、この実施の形態における電極部46を示す平面図、図19は、図18のB−B線断面図、図20は、図19の部分拡大図である。図19及び図20に示すように、電極部46は、X方向(図15及び図18参照)に延びる複数の電極部材82を備えており、これらの電極部材82は平板状のベース84上に並列に配置されている。
【0100】
図20に示すように、各電極部材82は、電源48(図15及び図16参照)に接続される電極86と、電極86の上部に積層されたイオン交換体88と、電極86及びイオン交換体88の表面を一体的に覆うイオン交換体(イオン交換膜)90とを備えている。イオン交換体90は、電極86の両側に配置された保持プレート85により電極86に取付けられている。
【0101】
ここで、イオン交換体88,90には、以下の4点が求められる。
(1)加工生成物(ガス含む)の除去
これは、加工レートの安定性、加工レート分布の均一性に影響するためである。このため、「通水性」及び「吸水性」のあるイオン交換体を用いることが好ましい。ここで「通水性」とは、マクロな透過性を意味する。すなわち、素材自体に通水性がなくても、該部材に穴及び溝を切ることで水が通過できるようになり、通水性を持たせることができる。一方、「吸水性」とは、素材に水がしみ込む性質を意味する。
【0102】
(2)加工レートの安定性
加工レートの安定性を図るためには、イオン交換材料を多数枚重ねて、イオン交換能力を確保することが好ましいと考えられる。
(3)被加工面の平坦性(段差解消能力)
被加工面の平坦性を確保するためには、イオン交換体の加工面の表面平滑性が良好であることが好ましいと考えられている。更に、硬い部材ほど加工表面の平坦性(段差解消能力)が高いのではないかと考えられている。
【0103】
(4)長寿命
機械的寿命に関しては、耐磨耗性の高いイオン交換材料が好ましいと考えられている。
ここで、イオン交換体88としては、イオン交換容量の高いイオン交換体を用いることが好ましい。この実施の形態では、厚さが1mmの不織布イオン交換体を3枚重ねた多層構造としており、イオン交換体88の持つトータルのイオン交換容量を増加させている。このようにすることで、電解反応により発生した加工生成物(酸化物やイオン)をイオン交換体88内にこの蓄積容量以上に蓄積させないようにして、イオン交換体88内に蓄積された加工生成物の形態が変化して、それが加工速度及びその分布に影響を与えることを防止することができる。また、目標とする被加工物の加工量を十分補えるだけのイオン交換容量を確保することができる。なお、イオン交換体88のイオン交換容量が高ければ1枚としてもよい。
【0104】
また、少なくとも被加工物と対面するイオン交換体90は、硬度が高く、しかも良好な表面平滑性を有することが好ましい。ここで、「硬度が高い」とは、剛性が高く、かつ圧縮弾性率が低いことを意味する。硬度が高い材質を用いることにより、パターンウェハ等の、被加工物表面の微細な凹凸に加工部材が倣いにくくなるため、パターンの凸部のみを選択的に除去しやすい。また、「表面平滑性を有する」とは、表面の凹凸が小さいことを意味する。すなわち、イオン交換体が、被加工物であるパターンウェハ等の凹部に接触しにくくなるため、パターンの凸部のみを選択的に除去しやすくなる。このように、表面平滑性を有するイオン交換体90とイオン交換容量の大きなイオン交換体88とを組み合わせることにより、イオン交換容量が少ないというイオン交換体90の短所をイオン交換体88により補うことができる。
【0105】
また、イオン交換体90としては通水性に優れたものを使用することがより好ましい。純水又は超純水がイオン交換体90を通過するように流すことで、水の解離反応を促進させる官能基(強酸性陽イオン交換材料ではスルホン酸基)に十分な水を供給して水分子の解離量を増加させ、水酸化物イオン(もしくはOHラジカル)との反応により発生した加工生成物(ガスも含む)を水の流れにより除去して、加工効率を高めることができる。従って、純水又は超純水の流れが必要となり、純水又は超純水の流れとしては、一様かつ均一であることが好ましい。このように、一様かつ均一な流れとすることで、イオンの供給及び加工生成物の除去の一様性及び均一性、ひいては加工効率の一様性及び均一性を図ることができる。
【0106】
ここで、本発明は、イオン交換体を用いた電解加工に限られるものではない。例えば、加工液として電解液を用いた場合は、電極の表面に取付けられる加工部材(接触部材)としては、純水や超純水に最適なイオン交換体88,90に代えて、柔らかい研磨パッドや不織布のようなものであってもよい。また、接触部材として、ポリテックス(ロデール社の商標)、ポリウレタンスポンジ、不織布、発泡ポリウレタンまたはPVDスポンジを使用してもよい。
【0107】
この実施の形態では、隣り合う電極部材82の電極86に、電源48の陰極と陽極とが交互に接続されている。例えば、電極86a(図19参照)を電源48の陰極に接続し、電極86b(図19参照)を陽極に接続する。例えば、銅を加工する場合においては、陰極側に電解加工作用が生じるので、陰極に接続した電極86aが加工電極となり、陽極に接続した電極86bが給電電極となる。このように、この実施の形態では、加工電極と給電電極とが並列に交互に配置される。
加工材料によっては、電源48の陰極に接続される電極を給電電極とし、陽極に接続される電極を加工電極としてもよいことは、前述と同様である。
【0108】
また、被加工物が錫酸化物やインジウム錫酸化物(ITO)などの導電性酸化物の場合には、被加工物を還元した後に、電解加工を行う。すなわち、図16において、電源48の陽極に接続した電極が還元電極となり、陰極に接続した電極が給電電極となって、導電性酸化物の還元を行う。続いて、先程給電電極であった電極を加工電極として、還元された導電性酸化物の加工を行う。あるいは、導電性酸化物の還元時の極性を反転させることによって還元電極を加工電極にしてもよい。また、被加工物を陰極にして、陽極電極を対向させることによっても導電性酸化物の除去加工ができる。
【0109】
なお、上記の例では、基板の表面に形成した導電体膜としての銅膜6を電解加工するようにした例を示しているが、基板の表面に成膜乃至付着した不要なルテニウム(Ru)膜も同様にして、すなわちルテニウム膜を陽極となし、陰極に接続した電極を加工電極として、電解加工(エッチング除去)することができる。
このように、加工電極と給電電極とを電極部46のY方向(電極部材82の長手方向と垂直な方向)に交互に設けることで、基板Wの導電体膜(被加工物)に給電を行う給電部を設ける必要がなくなり、基板の全面の加工が可能となる。
【0110】
更に、上述したスクロール運動(第1の相対運動)に加えて、電解加工中に基板保持部42をY方向に所定の距離だけ移動させて、基板Wと電極部材82との間で第2の相対運動を行うことにより、加工量のバラツキをなくすことができる。すなわち、図23Aに示すように、スクロール運動(第1の相対運動)のみを行った場合には、基板WのY方向に沿って加工量に差が生じ、同一形状の加工量分布がピッチPごとに現れるが、電解加工中に、往復運動用モータ56を駆動させてアーム40及び基板保持部42をY方向に図23Aに示すピッチPの整数倍だけ移動させて、基板Wと電極部材82との間で第2の相対運動を行う。電解加工中にこのような第2の相対運動を上記第1の相対運動とともに行った場合、例えば、ピッチPの等倍だけ移動させた場合には、図23Bに示す基板W上の点Qは、面積SQに相当する加工量だけ加工され、図23Cに示す基板W上の点Rは、面積SRに相当する加工量だけ加工される。ここで、各加工量分布の形状は互いに等しいため、これらの面積SQ,SRは互いに等しくなり、基板W上の点Qと点Rにおける加工量が等しくなる。このように、第1の相対運動とともに第2の相対運動をさせることで基板Wの全面を均一に加工することが可能となる。この場合において、第2の相対運動の移動速度は一定であることが好ましい。
【0111】
図19に示すように、電極部46のベース84の内部には、被加工面に純水、より好ましくは超純水を供給するための流路92が形成されており、この流路92は純水供給管94を介して、純水供給系120に接続されている。この純水供給系120は、純水ライン122を備え、この純水ライン122に該純水ライン122に沿って流れる純水の温度を調整する熱交換器124と、純水ライン122に沿って流れる純水中の溶存気体を脱気する脱気装置126が介装されている。これにより、前述の例と同様に、純水ライン122に沿って流れる純水を、先ず熱交換器124を通過させて、その液温が25℃以下となるように冷却し、そして、脱気装置126を通過させることで、初期の溶存ガスを除去(脱気)するよう構成されている。
【0112】
各電極部材82の両側には、前述のように、熱交換器124を通過して冷却(温度調整)され、脱気装置126を通過して脱気されて流路92から供給される純水又は超純水を基板Wと電極部材82のイオン交換体90との間に噴射するための純水噴射ノズル96が設置されている。この純水噴射ノズル96には、電極部材82に対向する基板Wの被加工面、すなわち基板Wとイオン交換体90との接触部分に向けて純水又は超純水を噴射する噴射口98がX方向に沿って複数箇所(図18参照)に設けられている。この純水噴射ノズル96の噴射口98から流路92内の純水又は超純水が基板Wの被加工面全域に供給される。ここで、図20に示すように、純水噴射ノズル96の高さは、電極部材82のイオン交換体90の高さよりも低くなっており、基板Wを電極部材82のイオン交換体90に接触させた際にも、純水噴射ノズル96が基板Wに接触しないようになっている。
【0113】
また、各電極部材82の電極86の内部には、流路92からイオン交換体88に通じる貫通孔100が形成されている。このような構成により、流路92内の純水又は超純水は、貫通孔100を通ってイオン交換体88に供給される。ここで、純水、より好ましくは超純水の代わりに、電気伝導度500μS/cm以下の液体や、任意の電解液等を使用しても良いことは前述と同様である。
【0114】
次に、この基板処理装置を用いた基板処理(電解加工)について説明する。まず、例えば、図1Bに示すように、表面に導電体膜(被加工膜)として銅膜6を形成した基板Wを収納したカセットをロード・アンロード部30にセットし、このカセットから1枚の基板Wを搬送ロボット36で取り出す。搬送ロボット36は、取り出した基板Wを必要に応じて反転機32に搬送し、基板Wの導電体膜(銅膜6)を形成した表面が下を向くように反転させる。
【0115】
搬送ロボット36は反転させた基板Wを受け取り、これを電解加工装置34に搬送し、基板保持部42により吸着保持させる。アーム40を移動させて基板Wを保持した基板保持部42を電極部46の直上方の加工位置まで移動させる。次に、上下動用モータ50を駆動して基板保持部42を下降させ、この基板保持部42で保持した基板Wを電極部46のイオン交換体90の表面に接触又は近接させる。この状態で、自転用モータ58を駆動して基板Wを回転させ、同時に中空モータ60を駆動して電極部46をスクロール運動させる。このとき、純水噴射ノズル96の噴射口98から基板Wと電極部材82との間に純水又は超純水を噴射し、また、各電極部46の貫通孔100を通じて純水又は超純水をイオン交換体88に含ませる。この実施の形態では、イオン交換体88に供給された純水又は超純水は各電極部材82の長手方向端部から排出される。
【0116】
そして、電源48により加工電極と給電電極との間に所定の電圧を印加し、イオン交換体88,90により生成された水素イオン又は水酸化物イオンによって、加工電極(陰極)において基板Wの表面の導電体膜(銅膜6)の電解加工を行う。なお、この実施の形態では、基板保持部42を回転させ、同時に電極部46をスクロール運動させて加工を行うようにしているが、電解加工中に往復動用モータ56を駆動させてアーム40及び基板保持部42をY方向に移動させるようにしてもよい。
【0117】
つまり、図24Aに示す状態で、上述したようにピッチPの整数倍だけ基板Wを電極部材82に対してY1方向に移動させる。次に、自転用モータ58を駆動させて、基板Wを反時計回りに90度回転させた後、ピッチPの整数倍だけ基板WをY2方向に移動させる(図24B参照)。同様に、基板Wを反時計回りに90度回転させた後、ピッチPの整数倍だけ基板WをY1方向に移動させ(図24C参照)、更に基板Wを反時計回りに90度回転させた後、ピッチPの整数倍だけ基板WをY2方向に移動させる(図24D参照)。このように、基板Wにおける第2の相対運動の方向を往路(Y1方向への移動)と復路(Y2方向への移動)で変化させることで、加工電極の加工レートに多少のバラツキがあっても、このバラツキを基板W上で均等に分散して、全体として加工の不均一を相殺することができる。
また、基板Wをスクロール運動させてもよく、スクロール運動に代えて、Y方向への直進往復運動を行うこととしてもよい。
【0118】
電解加工中には、加工電極と給電電極との間に印加する電圧、又はこの間を流れる電流をモニタ部38でモニタして、エンドポイント(加工終点)を検知する。すなわち、同じ電圧(電流)を印加した状態で電解加工を行うと、材料によって流れる電流(印加される電圧)に違いが生じる。例えば、図21Aに示すように、表面に材料Bと材料Aとを順次成膜した基板Wの該表面に電解加工を施したときに流れる電流をモニタすると、材料Aを電解加工している間は一定の電流が流れるが、異なる材料Bの加工に移行する時点で流れる電流が変化する。同様に、加工電極と給電電極との間に印加される電圧にあっても、図21Bに示すように、材料Aを電解加工している間は一定の電圧が印加されるが、異なる材料Bの加工に移行する時点で印加される電圧が変化する。なお、図21Aは、材料Bを電解加工するときの方が、材料Aを電解加工するときよりも電流が流れにくくなる場合を、図21Bは、材料Bを電解加工するときの方が、材料Aを電解加工するときよりも電圧が高くなる場合の例を示している。これにより、この電流又は電圧の変化をモニタすることでエンドポイントを確実に検知することができる。
【0119】
なお、モニタ部38で加工電極と給電電極との間に印加する電圧、又はこの間を流れる電流をモニタして加工終点を検知するようにした例を説明したが、このモニタ部38で、加工中の基板の状態の変化をモニタして、任意に設定した加工終点を検知するようにしてもよい。この場合、加工終点は、被加工面の指定した部位について、所望の加工量に達した時点、もしくは加工量と相関関係を有するパラメータが所望の加工量に相当する量に達した時点を指す。このように、加工の途中においても、加工終点を任意に設定して検知できるようにすることで、多段プロセスでの電解加工が可能となる。
【0120】
電解加工完了後、電源48の接続を切り、基板保持部42と電極部46の回転を停止させ、しかる後、基板保持部42を上昇させ、アーム40を移動させて基板Wを搬送ロボット36に受け渡す。基板Wを受け取った搬送ロボット36は、必要に応じて反転機32に搬送して反転させた後、基板Wをロード・アンロード部30のカセットに戻す。
【0121】
この実施の形態において、基板Wと電極部材82のイオン交換体90とを接触させて加工を行う場合、電極部46のイオン交換体90と基板Wの被加工面との接触範囲内で加工が進行する。このため、図22に示すように、この電解加工に際して、イオン交換体90と基板Wの被加工面とは、その接触幅w1が、0.1〜1.5mm、好ましくは0.2〜1.2mm、更に好ましくは0.2〜1.0mmで、線状に接触するように構成されている。また、電解加工に際して、電極部46はスクロール運動を行い、基板保持部42で保持された基板Wも回転するのであるが、この電極部46と基板Wとは、0.2m/sec以上、好ましくは0.5m/sec以上、更に好ましくは0.7m/sec以上の相対速度で相対運動するように構成されている。これにより、基板Wの導電体膜、例えば図1Bに示す銅膜6等の被加工面にピットが発生することを防止することができる。この原理を以下に説明する。
【0122】
なお、熱交換器124を通過して冷却(温度調整)され、脱気装置126を通過して脱気されて流路92から供給される純水又は超純水を基板Wと電極部材82のイオン交換体90との間に噴射(供給)することで、基板の被加工面にピットが発生することが防止できることは前述と同様である。
【0123】
つまり、液体中へのガス溶解量は、図25に示すように、ガス溶解時間に依存して増加し、最終的にはガス溶解容量に漸近する。このため、ガス溶解時間が大きいほど、液体中へのガス溶解量は増加する。そこで、電極86を覆うイオン交換体90が基板保持部42で保持した基板Wと線状に接触する接触幅w1をより狭くすることで、基板Wの任意の加工点に対する電極86の通過時間(加工時間)を相対的に短くすることができ、これによって、ガス発生時間を短くするとともに、ガス溶解時間を長くして、ガス溶解量を増加させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
【0124】
図27に、下記の表1に示す電極幅を有する電極1〜4を使用し、イオン交換体と基板Wの被加工面との接触幅を表1に示すように設定して加工を行った時における基板と電極との相対速度と各電極でのピット数の関係を示す。この試験において、イオン交換体と基板の被加工面との接触幅は、電極上に設置するイオン交換膜の張力およびその際の曲率により決まり、イオン交換体自体に絶縁フィルムを貼る等で接触範囲を制限することはしていない。
【表1】
この図27から、相対速度が同じ0.22m/secにおける各電極でのピット数を比較すると、特にイオン交換体と基板の被加工面との接触幅が1mmと狭い電極1で良好な結果が得られていることが判る。
【0125】
また、電解加工において、発生したガスは、電極86と基板Wとの間に存在する液体中に溶解する。つまり、液体体積A,B(A>B)中に溶解するガスのガス溶解速度及びガス溶解量と液体の圧力(水力)の関係は、図26に示すようになる。このため、電極86と基板Wとの相対速度をより大きくして、電極86と基板Wと間に存在し、電極86と基板Wとの相対速度に伴って置換される流量を大きくすることで、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
【0126】
このことは、前述の図27からも明らかである。つまり、電極86と基板Wとの相対速度を大きくすることで、ピット数を減少させることができる。
これを基板の被加工面のある一点に対する電極(イオン交換体)との接触時間として表すと、図28に示すようになる。この図28から、基板の被加工面のある一点の電極(イオン交換体)に対する接触時間が短いほど、ピット発生数が減少することが判る。
【0127】
上記のイオン交換体90と基板Wの被加工面との接触幅w1の好適値と、電極部46と基板Wとの間の相対移動速度の好適値から求められる基板の被加工面のある一点の電極(イオン交換体)に対する電極(イオン交換体)との接触時間は、一般には10msec以下であり、好ましくは5msec以下、更に好ましくは1.5msec以下である。
なお、上記の例では、電解加工中に、電源48から電極86に常時電圧を印加して電解加工を行うようにした例を示しているが、電極部46と基板Wとの間の相対的なスクロール運動と同期して、電源48をON/OFF制御するようにしてもよい。
【0128】
つまり、スクロール運動では、例えば図29Bに示す電極(イオン交換体)Aに対して垂直な一方向の相対速度:Vcosθが常に変化し、この相対速度が最大となる点(図29Cにおける点a)や、相対速度がゼロとなる点(図29Cにおける点b)が存在する。このため、スクロール運動と電源48のON/OFF制御を同期させ、図30に示すように、スクロール運動の相対速度が速い区間でのみ電源48をONとして加工が行われるようにすることで、前述の高相対速度によるときの同様なピット減少効果が得られる。このスクロール運動と同期した電源48のON/OFF制御は、例えばスクロール運動用の回転モータが発するパルス信号やスクロール運動するテーブルに設置した位置センサからの信号より該テーブルの回転角度を検出し、電源装置のON/OFFを連動させることで行うことができる。
【0129】
このように、スクロール運動と電源のON/OFF制御を同期させ、例えば、電極部の電極と基板の被加工面との間における該電極部の幅方向の相対速度が、0.2m/sec以上、より好ましく0.5m/sec以上、更に好ましくは0.7m/sec以上の相対速度が速い区間でのみ加工が行われるようにすることで、前述の相対速度をより大きくした場合と同様にして、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
【0130】
この場合にあっても、前述と同様に、イオン交換体90と基板Wの被加工面とが、その接触幅w1が、0.1〜1.5mm、好ましくは0.2〜1.2mm、更に好ましくは0.2〜1.0mmで線状に接触することが好ましい。また、基板の被加工面のある一点の電極(イオン交換体)に対する電極(イオン交換体)との接触時間は、一般には10msec以下であり、好ましくは5msec以下、更に好ましくは1.5msec以下である。
【0131】
ここで、θa=45゜(ON/OFF デュ−ティ50%)または30゜(ON/OFF デュ−ティ30%)として、ON時の最小相対速度vを0.2m/s、最大接触時間を1.5msecとなる条件で、スクロール半径r(mm)、スクロール回転速度N(rpm)、回転角度θ(deg)及び接触幅L(mm)の関係を試算した結果を表2に示す。
【表2】
【0132】
以上説明したように、本発明によれば、基板等の被加工物に物理的な欠陥を与えて被加工物の特性を損なうことを防止しつつ、電気化学的作用によって、例えばCMPに代わる電解加工等を施すことができ、これによって、CMP処理そのものを省略したり、CMP処理の負荷を低減したり、更には基板等の被加工物の表面に付着した付着物を除去(洗浄)することができる。しかも、純水または超純水のみを使用しても基板を加工することができ、これによって、基板の表面に電解質等の余分な不純物が付着したり、残留したりすることをなくして、除去加工後の洗浄工程を簡略化できるばかりでなく、廃液処理の負荷を極めて小さくすることができる。また、本発明によれば、被加工物の不良品化を招いていたピットの発生を防止することができる。
【0133】
図31は、本発明の他の実施の形態における電解加工方法を行う電解加工装置を備えた基板処理装置の構成を示す平面図である。図31に示すように、この基板処理装置は、例えば、図1Bに示す、表面に導電体膜(薄膜)としての銅膜6及びバリア膜5を有する基板Wを収納したカセットを搬出入する搬出入部としての一対のロード・アンロード部30と、基板の1次洗浄を行う第1洗浄機31aと、基板の2次洗浄(仕上げ洗浄)を行う第2洗浄機31bと、基板Wを反転させる反転機32と、電解加工装置34aを備えている。これらの機器は、直列に配置されており、これらの機器の間で基板Wを搬送して授受する搬送装置としての搬送ロボット36がこれらの機器と平行に走行自在に配置されている。また、電解加工装置34による電解加工の際に、下記のように、渦電流センサ200からの出力に基づいて電極部46の回転速度を制御する制御部38がロード・アンロード部30に隣接して配置されている。
【0134】
図32は、基板処理装置内の電解加工装置34aを示す縦断面図である。この電解加工装置34aの前述の図15乃至図20に示す電解加工装置34と異なる点は以下の通りである。すなわち、電極部46の内部には、基板Wの表面に堆積した銅膜6(図1B参照)等の導電性膜の内部に渦電流を発生させ、しかも、この時に発生した渦電流の大きさを検出する渦電流センサ200が埋め込まれている。そして、この渦電流センサ200で検出した信号は、膜厚検出部としての信号処理装置202に入力され、この信号処理装置202で処理された信号は、制御部38aに入力される。
【0135】
この渦電流センサ200は、センサコイルを有し、このセンサコイルに高周波電流を流すことで、基板Wの表面に堆積した銅膜6等の導電性膜の内部に渦電流を発生させるようになっており、この時に発生する渦電流は、銅膜6等の導電性膜の膜厚によって変化する。
【0136】
そこで、この例では、この基板Wの表面に堆積した銅膜6等の導電性膜の内部に発生する渦電流の大きさを渦電流センサ200で検出し、この渦電流センサ200で検出した信号を信号処理装置202に送り、この信号処理装置202で、例えば、この渦電流の変化の大きさが所定値以上に達したことを検知した時に、基板Wの表面に堆積した銅膜6等の導電性膜の膜厚(残膜厚)が所定の値に達したと判断して、所定の加工の終点を検出するようになっている。信号処理装置202は、所定の加工の終点を検出すると制御部38に所定の信号を送る。
【0137】
次に、この基板処理装置を用いた基板処理(電解加工)について説明する。まず、例えば、図1Bに示すように、表面に導電体膜(被加工部)として銅膜6を形成した基板Wを収納したカセットをロード・アンロード部30にセットし、このカセットから1枚の基板Wを搬送ロボット36で取り出す。搬送ロボット36は、取り出した基板Wを必要に応じて反転機32に搬送し、基板Wの導電体膜(銅膜6)を形成した表面が下を向くように反転させる。
【0138】
搬送ロボット36は、反転させた基板Wを受け取り、これを電解加工装置34aに搬送し、基板保持部42により吸着保持させる。アーム40を移動させて基板Wを保持した基板保持部42を電極部46の直上方の加工位置まで移動させる。次に、上下動用モータ50を駆動して基板保持部42を下降させ、この基板保持部42で保持した基板Wを電極部46のイオン交換体90の表面に接触または近接させる。この状態で、自転用モータ58を駆動して基板Wを回転させ、同時に中空モータ60を駆動して電極部46をスクロール運動させることで、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86とを相対運動させる。このとき、純水噴射ノズル96の噴射口98から基板Wと電極部材82との間に純水または超純水を噴射し、また、各電極部46の貫通孔100を通じて純水または超純水をイオン交換体88に含ませる。この実施の形態では、イオン交換体88に供給された純水または超純水は各電極部材82の長手方向端部から排出される。
【0139】
そして、電源48により加工電極と給電電極との間に所定の電圧を印加し、イオン交換体88,90により生成された水素イオンまたは水酸化物イオンによって、加工電極(陰極)において基板Wの表面の導電体膜(銅膜6)の電解加工を行う。この実施の形態では、基板保持部42を回転させ、同時に電極部46をスクロール運動させることで、基板Wと電極86とを相対移動させて加工を行うようにしている。電解加工中に往復動用モータ56を駆動させてアーム40及び基板保持部42をY方向に移動させるようにしてもよい。
【0140】
ここで、図33に示すように、電解加工の初期(〜t1)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を速くして、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにする。つまり、例えば、この相対速度が、0.4m/sec以上、好ましくは0.5m/sec以上、更に好ましくは0.6m/sec以上となるようにする。このように、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにすることで、前述のように、加工速度を遅くし、基板Wの表面に形成した薄膜、例えば図1Bに示す銅膜6を除去し平坦化する時の段差解消能力を向上させる。
【0141】
そして、この銅膜6の残膜厚が所定の値、例えば600nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下に達したことを渦電流センサ200で検知した時、この信号を信号処理装置202に送り、信号処理装置202と制御部38を介して、例えば電極部46のスクロール運動速度を落とし、これによって、図33に示すように、加工後期(t1〜)において、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が遅くなるようにする。このように、基板Wと各電極86との間の相対速度を落とすことで、前述のように、加工速度を速める。一般に、被加工面の初期段差は300〜500nmであるが、加工速度上昇のための相対速度の切替えは、初期段差が完全に解消する前、初期段差分の膜厚を除去加工するより前に行う。
【0142】
このように、加工初期(〜t1)においては、基板Wと電極86との間の相対速度を速めることで段差解消能力を高め、段差が解消した加工後期(t1〜)においては、基板Wと電極86との間の相対速度を遅くすることで加工速度を早めることで、段差解消性能を高め、かつ加工時間を短縮することができる。
【0143】
電解加工完了後、電源48の電極86との接続を切り、基板保持部42と電極部46の回転を停止させ、しかる後、基板保持部42を上昇させ、アーム40を移動させて基板Wを搬送ロボット36に受け渡す。基板Wを受け取った搬送ロボット36は、必要に応じて反転機32に搬送して反転させ、第1洗浄機31aに搬送して基板の1次洗浄を、第2洗浄機31bに搬送して基板の2次洗浄(仕上げ洗浄)を、順次行って乾燥させ、乾燥後の基板Wをロード・アンロード部30のカセットに戻す。
【0144】
ここで、超純水のような液自身の抵抗値が大きい液体を使用する場合には、イオン交換体90を基板Wに接触させることにより、電気抵抗を低減させることができ、印加電圧も小さくて済み、消費電力も低減できる。この「接触」は、例えばCMPのように物理的なエネルギー(応力)を被加工物に与えるために、「押し付ける」ことを意味するものではない。従って、この実施の形態における本電解加工装置では、基板Wの電極部46への接触または近接には上下動用モータ50を用いており、例えばCMP装置において基板と研磨部材を積極的に押し付ける押圧機構は具備していない。すなわち、CMPにおいては、一般に20〜50kPa程度の押圧力で基板を研磨面に押し付けているが、この実施の形態の電解加工装置では、例えば、20kPa以下の圧力でイオン交換体90を基板Wに接触させればよく、10kPa以下の圧力でも十分除去加工効果が得られる。
【0145】
なお、上記の例では、電解加工に際し、基板Wと電極86との間の相対速度を、加工初期では速く、加工後期では遅くした例を示しているが、図34に示すように、基板Wと電極86との間の相対速度を、加工初期(〜t2)では速く、加工中期(t2〜t3)では遅く、加工後期(t3〜)では再び速くするようにしてもよい。
【0146】
つまり、電解加工の初期(〜t2)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を速くして、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにして、加工速度を遅くし、基板Wの表面に形成した薄膜、例えば図1Bに示す銅膜6を除去し平坦化する時の段差解消能力を向上させる。
【0147】
そして、この銅膜6の残膜厚が所定の値、例えば600nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nmに達したことを渦電流センサ200で検知した後の加工中期(t2〜t3)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を落とし、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が遅くなるようにして、加工速度を速める。ここで相対速度を遅くするとは、その直前の相対速度より遅くすることである。具体的には、0.4m/sec以下、好ましくは0.3m/sec以下、更に好ましくは0.2m/sec以下となるようにする。
【0148】
更に、この銅膜6の残膜厚が、例えば50〜300nm、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは50〜150nmであることを渦電流センサ200で検知した後の加工後期(t3〜)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を再度速め、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにして、段差解消能力を高め、しかも加工面にピットの発生を防止した仕上げ加工を行う。
【0149】
このように、加工後期(t3〜)において、基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにすることで、段差解消能力を更に高めるとともに、加工面にピットの発生を防止することができる。つまり、この例のように、電極部46をスクロール運動させ、基板保持部42で保持した基板Wも回転させつつ相対運動させて電解加工を行うようにした場合、電極86と基板Wとを、0.4m/sec以上、好ましくは0.5m/sec以上、更に好ましくは0.6m/sec以上の相対速度で相対運動させながら加工を行うことで、基板Wの導電体膜、例えば図1Bに示す銅膜6等の被加工面に、加工後にピットが発生することを防止することができることが確かめられている。しかも、このように、加工後期で加工速度を落とすことで、加工終点(エンドポイント)をより正確に検知することができる。
【0150】
なお、加工前期と加工後期における基板Wと各電極86との間の相対速度とを一致させる必要はなく、その目的に応じて、例えば加工後期における基板Wと各電極86との間の相対速度を加工前期における相対速度より速くするようにしてもよい。
【0151】
また、図35に示すように、基板Wと電極86との間の相対速度を、加工初期(〜t4)では遅く、加工中期(t4〜t5)では速くし、更に、必要に応じて、加工中期(t4〜t5)よりも、加工後期(t5〜)の方が、更に速くなるようにしてもよい。
【0152】
つまり、電解加工の初期(〜t4)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を遅くし、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が遅くなるようにして、加工速度を速める。そして、基板Wの表面に形成した薄膜、例えば図1Bに示す銅膜6の残膜厚が所定の値、例えば500nm以下、好ましくは400nm以下、更に好ましくは300nm以下に達したことを渦電流センサ200で検知した後の加工中期(t4〜t5)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を速め、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにして、例えば銅膜6を除去し平坦化する時の段差解消能力を向上させる。これによっても、段差解消性能を高め、かつ加工時間を短縮することができる。
【0153】
更に、このように、加工中期で基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにすることで、被加工面にピットが発生することを防止し、しかも加工中期(t4〜t5)よりも、加工後期(t5〜)の方が、更に速くなるようにすることで、段差解消能力と被加工面にピットが発生するのを防止する効果をより高めることができる。
【0154】
更に、図36に示すように、基板Wと電極86との間の相対速度を、残膜厚600nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下までの加工初期(〜t7)では速く、残膜厚50〜300nm、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは50〜150nmとなるまでの加工中期(t7〜t8)では遅く、加工後期(t8〜)では再び速くするようにして電解加工を行うに際し、加工初期(〜t7)において、その初期(〜t6)の方が後期(t6〜t7)よりも相対速度が遅くなるようにして加工速度を稼ぎ、加工後期(t8〜)において、その後期(t9〜)の方が初期(t8〜t9)よりも相対運動が速くなるようにして、段差解消能力と被加工面にピットが発生するのを防止する効果をより高めるようにしてもよい。
【0155】
前述の各例においては、基板Wと電極86との間の相対速度を段階的に変化させるようにした例を示しているが、図37に示すように、例えば、基板Wと電極86との間の相対速度を、加工初期(〜t10)では速く、加工中期(t10〜t11)では遅く、加工後期(t11〜)では再び速くするようにして電解加工を行うに際し、加工初期(〜t10)においては、基板Wと電極86との間の相対速度を直線的に減少させ、加工後期(t11〜)においては、基板Wと電極86との間の相対速度を直線的に増加させるようにしてもよい。この時、加工初期(〜t10)における、相対速度減少直線の傾きと、加工後期(t11〜)における、相対速度増加直線の傾きは、任意に設定される。
【0156】
なお、この例では、基板Wと電極86との間の相対速度を直線的に減少または増加させるようにした例を示しているが、基板Wと電極86との間の相対速度を曲線的に任意に減少または増加させるようにしてもよい。
【0157】
また、上記の例では、渦電流センサ200によって、加工中における、例えば図1Bに示す銅膜6の残膜厚を測定して、相対速度の切替えを行うタイミングを検知するようにしているが、(1)予め測定した初期膜厚と加工速度より計算した加工時間により、(2)印加電流または印加電圧値の一方を固定し、他方の変化を測定することにより、(3)電極部46を回転させる中空モータ60のトルク値を測定するか、またはその時間当たりの変化量を測定することにより、または(4)光学的手段により膜厚を検知することにより、相対速度の切替えを行うタイミングを検知するようにしてもよい。また加工量対段差の関係を予め測定することなく、加工終了後の段差が最適となるよう、試行錯誤等で速度切替えの為の加工量/残膜厚を決定するようにしてもよい。また、各種膜厚をin−situで測定し、相対速度だけではなく、基板Wと電極86(イオン交換体90)との間の印加電圧や接触圧を変え、またこれら複数の加工因子の組合せを変えて加工してもよい。
【0158】
図38は、本発明の電解加工方法を行うのに適した更に他の電解加工装置の要部を示す縦断面図で、図39は、図38の要部を拡大して示す要部拡大図である。図38に示すように、この電解加工装置600は、表面を下向きにして基板Wを吸着する基板保持部602と、矩形状の電極部604とを上下に備えている。この基板保持部602は、前述の例と同様に、上下動、左右動及び回転自在に構成されている。電極部604は、中空スクロールモータ606を備えており、この中空スクロールモータ606の駆動により、自転を行わない円運動、いわゆるスクロール運動(並進回転運動)を行うようになっている。
【0159】
電極部604は、直線状に延びる複数の電極部材608と、上方に開口する容器610とを備えており、複数の電極部材608は容器610内に並列に等ピッチで配置されている。更に、この容器610の上方に位置して、該容器610の内部に超純水や純水等の液体を供給する液体供給ノズル612が配置されている。各電極部材608は、装置内の電源に接続される電極614を備えており、この各電極614に電源の陰極と陽極とが交互に、つまり、電極614aに電源の陰極が、電極614bに陽極が交互に接続されている。これによって、前述と同様に、例えば、銅を加工する場合においては、陰極側に電解加工作用が生じるので、陰極に接続した電極614aが加工電極となり、陽極に接続した電極614bが給電電極となるようになっている。
【0160】
そして、この陰極に接続した加工電極614aにあっては、図39に詳細に示すように、この上部に、例えば不織布からなるイオン交換体616aが取付けられ、この加工電極614a及びイオン交換体616aは、液体の通過を遮断しイオンのみを通過可能に構成されたイオン交換膜からなる第2のイオン交換体618aで一体に覆われている。陽極に接続した給電電極614bにあってもほぼ同様に、この上部に、例えば不織布からなるイオン交換体616bが取付けられ、この加工電極614a及びイオン交換体616bは、液体の通過を遮断しイオンのみを通過可能に構成されたイオン交換膜からなる第2のイオン交換体618bで一体に覆われている。
【0161】
これにより、不織布からなるイオン交換体616a,616bにあっては、電極614の長さ方向に沿った所定の位置に設けられた貫通孔(図示せず)を通過した超純水や液体が、この内部を自由に移動して、不織布内部の水分解触媒作用を有する活性点に容易に到達することができるが、この液体は、イオン交換膜からなるイオン交換体618a,618bで流れを遮断されて、このイオン交換体618a,618bが、下記の第2の隔壁を構成するようになっている。
【0162】
電源の陰極に接続された加工電極614aの両側には、一対の液体供給ノズル620が配置され、この液体供給ノズル620の内部には、長さ方向に沿って延びる流体流通路620aが設けられ、更に、長さ方向に沿った所定の位置に、上面に開口し流体流通路620aに連通する液体供給孔620cが設けられている。
【0163】
そして、加工電極614aと一対の液体供給ノズル620は、一対のタップバー622を介して一体化され、一対のインサートプレート624に挟持されて電極ベース626に固定されている。一方、給電電極614bは、その表面をイオン交換体618bで覆った状態で、一対の保持プレート628で挟持されて電極ベース626に固定されている。
【0164】
なお、イオン交換体616a,616bは、例えば、アニオン交換基またはカチオン交換基を付与した不織布で構成されているが、アニオン交換基を有するアニオン交換体とカチオン交換基を有するカチオン交換体とを重ね合わせたり、イオン交換体616a,616b自体にアニオン交換基とカチオン交換基の双方の交換基を付与するようにしたりしてもよく、また、素材の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系高分子、またはその他有機高分子が挙げられることは前述と同様である。また、電極部材608の電極614の素材として、電極に広く使用されている金属や金属化合物よりも、炭素、比較的不活性な貴金属、導電性酸化物または導電性セラミックスを使用することが好ましいことは前述と同様である。
【0165】
そして、各液体供給ノズル620の上面には、例えば弾性を有する樹脂等からなる隔壁630がその長さ方向の全長にわたって取付けられている。この隔壁630の肉厚は、基板保持部602で保持した基板Wを、電極部材608のイオン交換体618a,618bに接触乃至近接させて、この基板Wに電解加工を施す際に、この隔壁630の上面が基板保持部602で保持された基板Wに圧接する厚さに設定されている。
【0166】
これによって、電解加工を行う際に、電極部604と基板保持部602との間に、隔壁630で隔離された、加工電極614aと基板Wとの間に形成される流路632と、給電電極614bと基板との間に形成される流路634が並列に形成され、しかも、加工電極614aと基板Wとの間に形成される流路632は、イオン交換膜で構成された第2の隔壁としてのイオン交換体618aで2つの流路632a,632bに隔離され、給電電極614bと基板Wとの間に形成される流路634は、イオン交換膜で構成された第2の隔壁としてのイオン交換体618bで2つの流路634a,634bに隔離されるようになっている。
【0167】
この例では、容器610の内部は液体供給ノズル612から供給された超純水や純水等の液体で満たされ、一方、電極614に設けた貫通孔(図示せず)から加工電極614a及び給電電極614bの上部に配置された不織布からなるイオン交換体616a,616bに超純水や純水等の液体が供給された状態で電解加工が行われる。容器610の外側には、この容器610の外周壁610aをオーバフローした液体を排出するオーバフロー路636が設けられており、外周壁610aをオーバフローした液体は、オーバフロー路636を介して排液タンク(図示せず)に入るようになっている。
【0168】
この例では、加工電極の両側に、長手方向に沿った所定位置に液体供給孔を設けた液体供給ノズルを使用し、液体供給ノズルによる液体の供給を行うことで、加工電極614aと基板Wとの間に形成される流路632に沿って流れる流体と、給電電極614bと基板との間に形成される流路634に沿って流れる流体の流れをより確実に制御して、隔壁を越えて隣接する空間へ流れる流体の量を減らすようにすることができる。電極に沿った液体流れを各電極の長手方向に押し出すことにより形成してもよい。
【0169】
また、前述の例では電極にイオン交換体を装着した例を示しているが、電極の形状や加工に用いる液体は、特に限定されない。隣り合う電極の間に、接触部材や隔壁を設けるようにすればよい。即ち、電極の形状は、棒状のものに限られず、被加工物に対して複数の電極が対向するようにした任意の形状が選択される。電極にイオン交換体以外の通液性または含液性スクラブ部材を取付けるようにしてもよい。また、接触部材や隔壁を電極面よりも高くして、被加工物と電極が直接接しないようにすることで、電極の表面を露出させることができる。電極表面にイオン交換体を装着しない場合でも、被加工物と電極の間の流体の流れを仕切る第2の隔壁はあった方が好ましい。
【0170】
図40は、本発明の電解加工方法を行うのに適した更に他の電解加工装置の概要を示す。この電解加工装置は、基板を着脱自在に保持する基板保持部134と、この基板保持部134の直径の2倍以上の直径を有する回転(自転)自在な電極部136を上下に備えている。この電極部136の上面には、半径方向に放射状に延びる複数の加工電極152が設けられ、この各加工電極152を挟んだ両側に、直線状に延びる各一対の給電電極154が配置されている。そして、加工電極152の上面(表面)には、例えばイオン交換体からなる接触部材156が設けられ、給電電極154の上面(表面)にも、例えばイオン交換体からなる接触部材158が設けられている。
【0171】
この例では、加工電極152は、図示しないスリップリングを介して電源の陰極に、給電電極154は、図示しないスリップリングを介して電源の陽極にそれぞれ接続される。これは、例えば銅にあっては、陰極側に電解加工作用が生じるからであり、被加工材料によっては、陰極側が給電電極となり、陽極側が加工電極となるようにしてもよいことは前述と同様である。
【0172】
この例にあっては、基板保持部134を電極部136上に所定に位置に位置させて下降させ、この基板保持部134で保持した基板Wを、電極部136の上面に取付けた加工電極152及び給電電極154の表面を覆う接触部材156,158の表面に接触させる。この状態で、加工電極152と給電電極154との間に電源から所定の電圧を印加しつつ、基板保持部134と電極部136を回転(自転)させる。同時に、基板保持部134で保持した基板Wと接触部材156,158との間に、純水、好ましくは超純水等の供給し、これによって、基板Wの表面の電解加工が行われる。
【0173】
この電解加工装置によれば、電極(加工電極152及び給電電極154)と基板保持部134で保持した基板との相対速度を一定に保ちながら、単純な回転によって加工を行うことができ、しかも、電極(加工電極152及び給電電極154)と基板との相対速度を、例えばスクロール型と比較して、より速くすることができる。
【0174】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な形態の電解加工に適用でき、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の電解加工装置及び電解加工方法は、半導体ウェハ等の基板の表面に形成された導電性材料を加工したり、基板の表面に付着した不純物を除去したりするのに有利に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1A乃至1Cは、銅配線基板の一製造例を工程順に示す図である。
【図2】図2は、被加工物と加工電極との間の相対速度と加工速度との関係を示すグラフである。
【図3】図3Aは、被加工物と加工電極との間の相対速度が遅い場合におけるハイドロプレーニング現象の説明に付する図で、図3Bは、被加工物と加工電極との間の相対速度が速い場合におけるハイドロプレーニング現象の説明に付する図である。
【図4】図4Aは、被加工物と加工電極との間の相対速度が遅い場合における反応生成物の濃度変化の説明に付する図で、図4Bは、被加工物と加工電極との間の相対速度が速い場合における反応生成物の濃度変化の説明に付する図である。
【図5】図5は、加工量と段差の関係を示すグラフである。
【図6】図6A及び6Bは、被加工物と加工電極との間の相対速度が異なる場合における反応生成物の濃度変化の説明に付する図である。
【図7】図7Aは、被加工物と加工電極との間の相対速度が遅い場合におけるイオン交換体の変形の説明に付する図で、図7Bは、被加工物と加工電極との間の相対速度が速い場合におけるイオン交換体の変形の説明に付する図である。
【図8】図8は、加工電極及び給電電極を基板(被加工物)に近接させ、加工電極及び給電電極と基板(被加工物)との間に純水または電気伝導度が500μS/cm以下の液体を供給するようにしたときの本発明による電解加工の原理の説明に付する図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態の電解加工装置の概要図である。
【図10】図10は、ガス溶解速度及びガス溶解量と水圧の関係を示すグラフである。
【図11】図11は、ガス溶解量と水温の関係を示すグラフである。
【図12】図12は、初期溶存ガス量が異なる液体中に溶解するガスのガス溶解容量と水圧の関係を示すグラフである。
【図13】図13は、ガス溶解速度と液体中の既存ガス量の関係を示すグラフである。
【図14】図14は、本発明の他の実施の形態における電解加工装置を備えた基板処理装置の構成を示す平面図である。
【図15】図15は、図14に示す基板処理装置の電解加工装置を示す平面図である。
【図16】図16は、図15の縦断面図である。
【図17】図17Aは、図15の電解加工装置における自転防止機構を示す平面図、図17Bは、図17AのA−A線断面図である。
【図18】図18は、図15の電解加工装置における電極部を示す平面図である。
【図19】図19は、図18のB−B線断面図である。
【図20】図20は、図19の部分拡大図である。
【図21】図21Aは、異なる材料を成膜した基板の表面に電解加工を施したときに流れる電流と時間の関係を、図21Bは、同じく印加される電圧と時間の関係をそれぞれ示すグラフである。
【図22】図22は、電解加工中におけるイオン交換体と基板との接触状態の説明に付する断面図である。
【図23】図23A乃至23Cは、電解加工中に、電極部のスクロール運動に加えて基板保持部をY方向に所定の距離だけ移動させることで、加工量のバラツキをなくすことができる原理の説明に付する図である。
【図24】図24A乃至24Dは、電解加工中に、電極部のスクロール運動に加えて基板保持部をY方向に所定の距離だけ移動させることで、加工量のバラツキをなくすことができるようにした電解加工方法の説明に付する図である。
【図25】図25は、ガス溶解量とガス溶解時間との関係を示すグラフである。
【図26】図26は、ガスが溶解する溶媒(液体)の体積が異なる場合のガス溶解速度及びガス溶解量と水圧との関係を示すグラフである。
【図27】図27は、接触幅が異なる電極1〜4を使用して電解加工を行った時におけるピット数と相対速度の関係を示すグラフである。
【図28】図28は、接触幅が異なる電極1〜4を使用して電解加工を行った時におけるピット数と電極(イオン交換体)接触時間の関係を示すグラフである。
【図29】図29A乃至29Cは、スクロール運動の解析の説明に付する図である。
【図30】図30は、スクロール運動に同期して電源をON/OFF制御する時の回転角とON/OFF時の関係を示す図である。
【図31】図31は、本発明の他の実施の形態における電解加工方法を行う電解加工装置を備えた基板処理装置の構成を示す平面図である。
【図32】図32は、図31に示す基板処理装置の電解加工装置の縦断面図である。
【図33】図33は、本発明の電解加工方法における被加工物(基板)と加工電極(電極)との間の相対速度と加工時間との関係の一例を示すグラフである。
【図34】図34は、本発明の電解加工方法における被加工物(基板)と加工電極(電極)との間の相対速度と加工時間との関係の他の例を示すグラフである。
【図35】図35は、本発明の電解加工方法における被加工物(基板)と加工電極(電極)との間の相対速度と加工時間との関係の更に他の例を示すグラフである。
【図36】図36は、本発明の電解加工方法における被加工物(基板)と加工電極(電極)との間の相対速度と加工時間との関係の更に他の例を示すグラフである。
【図37】図37は、本発明の電解加工方法における被加工物(基板)と加工電極(電極)との間の相対速度と加工時間との関係の更に他の例を示すグラフである。
【図38】図38は、本発明の電解加工方法を行うのに適した他の電解加工装置の要部を示す縦断面図である。
【図39】図39は、図38の要部を拡大して示す要部拡大図である。
【図40】図40は、本発明の電解加工方法を行うのに適した更に他の電解加工装置の概要を示す平面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解加工装置及び電解加工方法に係り、特に半導体ウェハ等の基板の表面に形成された導電性材料を加工したり、基板の表面に付着した不純物を除去したりするのに使用される電解加工装置及び電解加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェハ等の基板上に回路を形成するための配線材料として、アルミニウム又はアルミニウム合金に代えて、電気抵抗率が低くエレクトロマイグレーション耐性が高い銅(Cu)を用いる動きが顕著になっている。この種の銅配線は、基板の表面に設けた微細凹みの内部に銅を埋め込むことによって一般に形成される。この銅配線を形成する方法としては、化学気相成長法(CVD: Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング及びめっきといった手法があるが、いずれにしても、基板のほぼ全表面に銅を成膜して、化学機械的研磨(CMP: Chemical Mechanical Polishing)により不要の銅を除去するようにしている。
【0003】
図1A乃至図1Cは、この種の銅配線基板Wの一製造例を工程順に示すものである。図1Aに示すように、半導体素子が形成された半導体基材1上の導電層1aの上にSiO2からなる酸化膜やLow−k材膜などの絶縁膜2が堆積され、リソグラフィ・エッチング技術によりコンタクトホール3と配線溝4が形成される。これらの上にTaN等からなるバリア膜5、更にその上に電解めっきの給電層としてのシード層7がスパッタリングやCVD等により形成される。
【0004】
そして、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、図1Bに示すように、半導体基材1のコンタクトホール3及び配線溝4内に銅を充填するとともに、絶縁膜2上に銅膜6を堆積する。その後、化学機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅膜6、シード層7及びバリア膜5を除去して、コンタクトホール3及び配線溝4に充填させた銅膜6の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1Cに示すように銅膜6からなる配線が形成される。
【0005】
また、最近ではあらゆる機器の構成要素において微細化かつ高精度化が進み、サブミクロン領域での物作りが一般的となるにつれて、加工法自体が材料の特性に与える影響は益々大きくなっている。このような状況下においては、従来の機械加工のように、工具が被加工物を物理的に破壊しながら除去していく加工方法では、加工によって被加工物に多くの欠陥を生み出してしまうため、被加工物の特性が劣化してしまう。従って、いかに材料の特性を損なうことなく加工を行うことができるかが問題となってくる。
【0006】
この問題を解決する手段として開発された特殊加工法に、化学研磨や電解加工、電解研磨がある。これらの加工方法は、従来の物理的な加工とは対照的に、化学的溶解反応を起こすことによって、除去加工等を行うものである。従って、塑性変形による加工変質層や転位等の欠陥は発生せず、上述の材料の特性を損なわずに加工を行うといった課題が達成される。
【0007】
上述した電解加工や電解研磨では、被加工物と電解液(NaCl,NaNO3,HF,HCl,HNO3,NaOH等の水溶液)との電気化学的相互作用によって加工が進行するとされている。従って、このような電解質を含む電解液を使用する限り、その電解液で被加工物が汚染されることは避けられない。
【0008】
また、化学機械的電解研磨のように、めっきをしながらCMPで削るというプロセスも発表されているが、めっき成長面に機械加工が付加されることで、めっきの異常成長を促すことにもなり、膜質に問題を起こしている。
【0009】
このため、最近では、環境負荷、加工される製品の汚染または作業中の危険性などを改善させた金属の電解加工方法が開発されつつある(例えば、特開2000−52235号公報及び特開2001−64799号公報参照)。これらの電解加工方法は、純水または超純水を使用して電解加工を行う方法である。純水または超純水は電気をほとんど通さないため、この電解加工方法では、陽極となる被加工物と陰極となる加工電極との間にイオン交換体を配置して被加工物の電解加工が行われる。被加工物、イオン交換体、加工電極は、総て純水または超純水下に置かれるので、環境負荷の問題及び被加工物の汚染の問題が著しく改善される。また、被加工物である金属は、電解反応により金属イオンとして除去され、イオン交換体に保持される。このように、除去された金属イオンがイオン交換体に保持されるため、被加工物及び液体(純水または超純水)自体の汚染を更に低減させることができ、上記方法は理想の電解加工方法として考えられている。
【0010】
上述したように、イオン交換体を配置した状態で超純水を供給しつつ被加工物を加工する電解加工方法によれば、被加工物の汚染が防止され、環境負荷を著しく低減させることができる。また、上記電解加工方法によれば、各種金属部品の表面に鏡面光沢を与えることができ、さらには、従来の金属機械加工仕上げ方法に必要とされる切削油、研磨剤を含むスラリー、電解液などを不要とすることができる。
【0011】
しかしながら、イオン交換体を用いた電解加工方法では、前述のアドバンテージを有するものの、被加工物の種類や加工条件などによっては、加工した面にピット(微小な穴)が形成される。このピットは、電解加工した表面に鏡面光沢ができている場合でも発生している程の肉眼で確認不可能な細孔である。すなわち、このピットは、走査型電子顕微鏡、レーザー顕微鏡、原子間力顕微鏡等で分析して初めて明らかになる細孔である。
【0012】
このピットは、一般的な機械部品の表面仕上げでは、商品の見栄えに特に悪影響を与えない場合もある。しかしながら、真空機器や圧力機器など、高度の密閉度が要求されるシール面にピットが形成されると、所望の真空または圧力が得られず、さらに金属の腐食を進行させると考えられる。また、半導体デバイスにおいても、ピットが形成されると様々な悪影響を及ぼすと考えられている。
【0013】
また、イオン交換体を用いた電解加工においては、ある種の電極系(給電電極及び加工電極)を使用して加工を行った場合に、被加工物と加工電極との間の相対速度の変化に伴って、加工速度が変化する。つまり、図2に示すように、被加工物と加工電極との間の相対速度を速めて加工を行うと加工速度が遅くなり、逆に、被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くして加工を行う加工速度が速くなる現象が見られる。
【0014】
これは、第1に、ハイドロプレーニング現象が要因と考えられる。つまり、図3A及び3Bに示すように、被加工物Wと加工電極300の表面を覆うイオン交換体(イオン交換膜)302とを互いに接触させながら相対運動させ、被加工物Wと加工電極300との間に電圧を印加しつつ、被加工物Wと加工電極300との間に、純水、好ましくは超純水等の液体を供給して電解加工を行うと、イオン交換体302と被加工物Wの被加工面との間に水膜304a,304bができる(ハイドロプレーニング現象)。図3Aに示すように、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が遅い場合に形成される水膜304aの厚さは、図3Bに示すように、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が速い場合に形成される水膜304bの厚さより薄くなる。つまり、この水膜304a,304bは絶縁体であり、この水膜304a,304bの厚さが厚いほど電解効率が低下し、加工速度も低下する。
【0015】
第2に、反応生成物による電気伝導度の上昇が要因と考えられる。つまり、図3A及び3Bに示す場合と同様にして電解加工を行うと、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が遅い場合には、図4Aに示すように、被加工物Wの被加工面に対する加工電極300の滞在時間が長く、また加工生成物(銅イオン/銅酸化物や純水の電気分解により発生するOH−等)306の排出性も悪くなる。このため、図4Bに示す、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が速い場合と比較して、加工生成物306の濃度が高まる。加工生成物306の濃度が高いほど電気伝導度が上昇し、電解効率が向上して、加工速度も向上する。
【0016】
また、例えば、図1Bに示す、絶縁膜2上の余剰な銅膜6を除去し平坦化して、図1Cに示す配線を形成する作業を、例えば、前述のイオン交換体を用いた電解加工で行うと、加工量に対する残留段差は、一般的に図5に示すような関係にあって、加工量が増加すると段差が減少することが判っている。この段差の減少の度合いは、被加工物の初期膜厚、初期段差及び加工条件によって変動する。
【0017】
図5に示す段差解消能力は、イオン交換体を用いた電解加工にあっては、加工速度が速い程、低下する傾向にある。従って、前述のように、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)とを相対運動させて加工する場合、この相対速度が速くなると加工速度が低下し、この加工速度の低下に伴って、段差解消能力は高くなると考えられる。また、イオン交換体の挙動からも、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との相対速度が速い程、段差解消能力が高くなると推察される。
【0018】
これは、第1に、反応生成物による電気伝導度の上昇が要因と考えられる。つまり、前述の図4Aに示す場合と同様に、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が遅い(加工速度が速い)場合には、図6Aに示すように、図6Bに示す、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が速い(加工速度が遅い)場合と比較して、加工生成物306の濃度が高まる。この結果、パターン凹部での反応生成物の濃度が上昇してパターン凸部と凹部の加工速度差が小さくなり、段差解消能力が低下する。
【0019】
第2に、イオン交換体の見かけ弾性率の変化が要因と考えられる。つまり、前述と同様に、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が遅い場合には、図7Aに示すように、図7Bに示す、被加工物Wと加工電極300(イオン交換体302)との間の相対速度が速い場合と比較して、イオン交換体302の見かけの弾性率が低くなり、変形が大きくなって、パターンの凹部へのイオン交換体302の入り込みが多くなる。これによって、パターン凹部でのイオン交換体302との距離がより狭まり、パターン凸部と凹部の加工速度差が小さくなって、段差解消能力が低くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、被加工物の不良品化を招くと考えられるピットの発生を効果的に防止することができるようにした電解加工装置及び電解加工方法を提供することを第1の目的とする。
【0021】
本発明はまた、例えばトレンチの内部の埋込みに使用された銅等の余剰な金属を、段差解消能力を高めつつ除去して平坦化し、しかも加工時間の短縮を図れるようにした電解加工方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、本発明の電解加工装置は、被加工物を加工する加工電極と、被加工物に給電する給電電極と、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加する電源と、前記加工電極及び前記給電電極を内部に収納した耐圧容器と、前記耐圧容器内に高圧液体を供給する高圧液体供給系を有することを特徴とする。
【0023】
図8は、イオン交換体を使用した場合における本発明の加工原理を示すものである。図8は、被加工物10の表面に、加工電極14に取付けたイオン交換体12aと、給電電極16に取付けたイオン交換体12bとを接触又は近接させ、加工電極14と給電電極16との間に電源17を介して電圧を印加しつつ、加工電極14及び給電電極16と被加工物10との間に液体供給部19から超純水等の液体18を供給した状態を示している。
【0024】
超純水のような液自身の抵抗値が大きい液体を使用する場合には、イオン交換体12aを被加工物10の表面に「接触させる」ことが好ましく、このようにイオン交換体12aを被加工物10の表面に接触させることにより、電気抵抗を低減させることができ、印加電圧も小さくて済み、消費電力も低減できる。従って、本発明に係る加工における「接触」は、例えばCMPのように物理的なエネルギー(応力)を被加工物に与えるために、「押し付ける」ものではない。
【0025】
これにより、超純水等の液体18中の水分子20をイオン交換体12a,12bで水酸化物イオン22と水素イオン24に解離し、例えば生成された水酸化物イオン22を、被加工物10と加工電極14との間の電界と超純水等の液体18の流れによって、被加工物10の加工電極14と対面する表面に供給して、ここでの被加工物10近傍の水酸化物イオン22の密度を高め、被加工物10の原子10aと水酸化物イオン22を反応させる。反応によって生成された反応物質26は、液体18中に溶解し、被加工物10の表面に沿った超純水等の液体18の流れによって被加工物10から除去される。これにより、被加工物10の表面層の除去加工が行われる。
【0026】
このように、本加工法は純粋に被加工物との電気化学的相互作用のみにより被加工物の除去加工を行うものであり、CMPのような研磨部材と被加工物との物理的な相互作用及び研磨液中の化学種との化学的相互作用の混合による加工とは加工原理が異なるものである。この方法では、被加工物10の加工電極14と対面する部位が加工されるので、加工電極14を移動させることで、被加工物10の表面を所望の表面形状に加工することができる。
【0027】
なお、本発明に係る電解加工装置は、電気化学的相互作用による溶解反応のみにより被加工物の除去加工を行うため、CMPのような研磨部材と被加工物との物理的な相互作用及び研磨液中の化学種との化学的相互作用の混合による加工とは加工原理が異なるものである。従って、材料の特性を損なわずに除去加工を行うことが可能であり、例えば前述のLow−k材に挙げられる機械的強度の小さい材料に対しても、物理的な相互作用を及ぼすことなく除去加工が可能である。また、通常の電解加工装置と比較しても、電解液に500μS/cm以下の液体、好ましくは純水、更に好ましくは超純水を用いるため、被加工物表面への汚染も大幅に低減させることが可能であり、また加工後の廃液の処理も容易となる。
【0028】
上述した電解加工にあっては、一般に、電解加工時間を長くするに伴いピットの数が増える傾向にある。経験的には電解加工時に被加工物の表面にガス(気泡)が発生するほど、ピットの数も多くなってくることが明らかになっている。水が含まれている電解液を用いた場合、電極で発生する酸素や水素の量が多いほどピットの数も増大するため、このピットはガスピットとも呼ばれている。
【0029】
本発明によれば、液体中へのガスの溶解容量は、液体の圧力に比例して増加し、気泡発生量は、ガス発生量から液体中に溶解したガスの量(ガス溶存量)の差で求められるため、高圧液体の下で電解加工を行うことで、電極及び被加工物表面で発生するガスの溶解速度及び溶解量を増大させ、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させて、ピットの発生量を減少させることができる。
【0030】
前記加工電極と前記被加工物の間に接触部材を配置することが好ましい。
前記給電電極と前記加工電極からなる電極部を設け、前記電極部と前記被加工物との間及び/または前記電極部の前記加工電極と前記給電電極との間に接触部材を配置することが好ましい。
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることが好ましい。
このように、接触部材としてイオン交換体を使用することで、超純水等の液体中の水分子の水酸化イオンと水素イオンへの解離を促進し、電解加工を行うことができる。
【0031】
本発明の好ましい一態様は、前記耐圧容器内に供給される高圧液体の圧力は、2kgf/cm2以上であることを特徴とする。耐圧容器内に供給される高圧液体の圧力は、一般的には2kgf/cm2以上であることが好ましい。
【0032】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることが好ましい。
液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量は、液体の温度の増加と共に減少する。このため、耐圧容器内に供給される高圧液体の温度を低下させることで、液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量を増大させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させ、同時に液体の温度によるガスの膨張を抑えることができる。
【0033】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体中の溶存気体を脱気するための脱気装置が備えられていることが好ましい。
液体中へのガスの溶解容量は、溶液中に溶存ガスが存在する場合、溶存ガスに相当するガス分圧分だけ減少し、またガス溶解速度は、溶液中の既存ガス量の増加と共に残存するガス溶解容量が減少するため減少する。このため、耐圧容器内に供給される高圧液体中の溶存気体を予め脱気しておくことで、液体中へのガス溶解容量及びガス溶解速度を増加させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
【0034】
本発明の他の電解加工装置は、被加工物を加工する加工電極と、被加工物に給電する給電電極と、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加する電源と、記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に液体を供給する液体供給系を有し、前記液体供給系には、前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に供給される前記液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることを特徴とする。
【0035】
液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量は、液体の温度の増加と共に減少するため、被加工物と加工電極または給電電極の少なくとも一方との間に供給される液体の温度を低下させることで、液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量を増大させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させ、同時に温度によるガスの膨張を抑えることができる。
【0036】
本発明の好ましい一態様は、前記熱交換器は、液温が25℃以下となるように前記被加工物と前記イオン交換体との間に供給される前記液体を調節することを特徴とする。この被加工物とイオン交換体との間に供給される液体の液温は、一般的には25℃以下であることが好ましい。
【0037】
本発明の更に他の電解加工装置は、電極と該電極の表面を覆うイオン交換体とを有する電極部材を有する電極部と、被加工物を保持し、前記電極部材のイオン交換体に被加工物を接触させる保持部と、前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物との間に液体を供給する液体供給系と、前記電極部と前記被加工物との間に相対運動を生じさせる駆動機構と、前記電極部の各電極部材の電極に接続される電源とを備え、被加工物の被加工面のある一点の前記イオン交換体に対する該イオン交換体との連続接触時間は、10msec以下であることを特徴とする。
【0038】
被加工物の被加工面のある一点のイオン交換体に対する該イオン交換体との連続接触時間は、一般には10msec以下であり、好ましくは5msec以下、更に好ましくは1.5msec以下である。
【0039】
前記電極を覆うイオン交換体は、前記保持部で保持した被加工物と0.2〜1.5mmの接触幅で接触するように構成されていることが好ましい。
液体中へのガス溶解量は、ガス溶解時間に依存して増加し、最終的にはガス溶解容量に漸近する。このため、ガス溶解時間が大きいほど、液体中へのガス溶解量は増加する。そこで、電極を覆うイオン交換体が保持部で保持した被加工物と線状に接触する接触幅をより狭くすることで、被加工物の任意の加工点に対する電極の通過時間(加工時間)を相対的に短くすることができ、これによって、ガス発生時間を短くするとともに、ガス溶解時間を長くして、ガス溶解量を増加させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。この接触幅は、一般的には0.2〜1.5mmであり、好ましくは0.2〜1.2mm、更に好ましくは0.2〜1.0mmである。
【0040】
前記駆動機構は、前記電極部と前記被加工物とを0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させるように構成されていることが好ましい。
電解加工において、発生したガスは、電極と被加工物との間に存在する液体中に溶解する。このため、電極と被加工物との相対速度をより大きくして、電極と被加工物と間に存在し、電極と被加工物との相対速度に伴って置換される流量を大きくすることで、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。この相対速度は、一般的には0.2m/sec以上であり、好ましくは0.5m/sec以上、更に好ましくは0.7m/sec以上である。
【0041】
本発明の更に他の電解加工装置は、電極と該電極の表面を覆うイオン交換体とを有する電極部材を有する電極部と、被加工物を保持し、前記電極部材のイオン交換体に被加工物を接触させる保持部と、前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物との間に液体を供給する液体供給系と、前記電極部と前記被加工物との間に相対運動を生じさせる駆動機構と、前記電極部の各電極部材の電極に接続される電源とを備え、前記電源は、前記電極部と前記被加工物との間の相対運動に同期してON/OFFまたは正/負制御されることを特徴とする。
【0042】
このように、電極部と被加工物との間の相対運動と電源のON/OFF制御を同期させ、例えば、電極部の電極と被加工物との間における該電極部の幅方向の相対速度が0.2m/sec以上の相対速度が速い区間でのみ加工が行われるようにすることで、前述の相対速度をより大きくした場合と同様にして、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
前記電源は、前記電極部の電極と前記被加工物との間における該電極部の幅方向の相対速度が0.2m/sec以上の時にONとなるようにON/OFF制御されることが好ましい。
【0043】
本発明の好ましい一態様は、隣り合う前記電極部材の電極を前記電源の陰極と陽極とに交互に接続したことを特徴とする。
前記液体は、例えば純水、超純水または電気伝導度が500μs/cm以下の液体である。
本発明の電解加工方法は、電極部に電圧を印加し、高圧液体を介して被加工物の加工を行うことを特徴とする。
前記高圧液体は、好ましくは、前記電極部と前記被加工物との間に供給される。
前記被加工物と前記電極部を前記高圧液体に浸漬させつつ被加工物の加工を行うことが好ましい。
前記電極部は、被加工物を加工する加工電極と前記被加工物に給電する給電電極とからなることが好ましい。
前記高圧液体の圧力は、2kgf/cm2以上であることが好ましい。
【0044】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物を加工する加工電極と前記被加工物に給電する給電電極とからなる電極部に電圧を印加し、高圧液体を介して被加工物の加工を行うことを特徴とする。
【0045】
本発明の他の電解加工方法は、被加工物に近接または接触自在な加工電極と被加工物に給電する給電電極とを用意し、前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に温度を調整した液体を供給しつつ、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加して被加工物の加工を行うことを特徴とする。
【0046】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物に近接または接触自在な加工電極と被加工物に給電する給電電極とを用意し、前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に溶存気体を脱気した液体を供給しつつ、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加して被加工物の加工を行うことを特徴とする。
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間にイオン交換体を配置することが好ましい。
【0047】
本発明の更に他の電解加工方法は、電極の表面を覆うイオン交換体と保持部で保持した被加工物とを、被加工物の被加工面のある一点の前記イオン交換体に対する該イオン交換体との接触時間が10msec以下となるように、互いに接触させながら相対運動させ、液体の存在下で、前記電極に電圧を印加して被加工物を加工することを特徴とする。
【0048】
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物とを、0.2〜1.5mmの接触幅で互いに接触させることが好ましい。
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物とを互いに線状に接触させながら0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させることが好ましい。
【0049】
本発明の更に他の電解加工方法は、平行に配置した複数の電極の表面を覆うイオン交換体と保持部で保持した被加工物とを互いに接触させながら相対運動させ、液体の存在下で、前記相対運動に同期してON/OFF制御された電圧を前記電極に印加して被加工物を加工することを特徴とする。
【0050】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では速く、加工後期では遅くすることを特徴とする。
【0051】
この方法によれば、加工初期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を速めることで段差解消能力を高め、段差が解消した加工後期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くすることで加工速度を早め、これによって、段差解消性能を高め、かつ加工時間を短縮することができる。
【0052】
本発明の好ましい一態様は、被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が600nm以下に達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を遅くすることを特徴とする。
加工後期に被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くする時期は、薄膜の残膜厚が、一般的には600nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下に達した時である。
【0053】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では速く、加工中期では遅く、加工後期では再び前記加工中期より速くすることを特徴とする。
【0054】
この方法によれば、加工初期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を速めることで段差解消能力を高め、段差が解消した加工中期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くすることで加工速度を早め、更に、加工後期おいて、被加工物と加工電極との間の相対速度を再び速めることで段差解消能力を高めるとともに、加工面にピット発生を防止した仕上げを行い、しかも加工速度を遅くすることで、加工終点(エンドポイント)をより正確に検知することができる。
【0055】
本発明の好ましい一態様は、被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が600nm以下に達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を遅くし、薄膜の残膜厚が50〜300nmのときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を再び速くすることを特徴とする。
【0056】
加工中期に被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くする時期は、薄膜の残膜厚が、一般的には600nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下である。また、加工後期に被加工物と加工電極との間の相対速度を再び速くする時期は、薄膜の残膜厚が、一般的には50〜300nm、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは50〜150nmの時である。
【0057】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では遅く、加工後期では速くすることを特徴とする。
【0058】
この方法によれば、加工初期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くすることで加工速度を速め、加工後期において、被加工物と加工電極との間の相対速度を速めることで段差解消能力を高め、これによって、段差解消性能を高め、かつ加工時間を短縮することができる。
【0059】
本発明の好ましい一態様は、被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が50〜300nmに達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を速くすることを特徴とする。
加工後期に被加工物と加工電極との間の相対速度を速くする時期は、薄膜の残膜厚が、一般的には50〜300nm、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは50〜150nmに達した時である。
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を段階的に変化させようにしてもよい。また、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を、例えば直線的または曲線的に連続的に変化させるようにしてもよい。
【0060】
本発明の更に他の電解加工方法は、被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、被加工物及び/または加工電極が所定の周期運動を行うことにより、被加工物と加工電極との間に相対運動を起こさせ加工を行う電解加工方法であって、前記加工の途中で、前記被加工物及び/または加工電極の運動の周期を変えることを特徴とする。
【0061】
本発明によれば、基板等の被加工物に物理的な欠陥を与えて被加工物の特性を損なうことを防止しつつ、電気化学的作用によって、例えばCMPに代わる電解加工等を施すことができ、これによって、CMP処理そのものを省略したり、CMP処理の負荷を低減したり、更には基板等の被加工物の表面に付着した付着物を除去(洗浄)することができる。しかも、純水または超純水のみを使用しても基板を加工することができ、これによって、基板の表面に電解質等の余分な不純物が付着したり、残留したりすることをなくして、除去加工後の洗浄工程を簡略化できるばかりでなく、廃液処理の負荷を極めて小さくすることができる。
本発明によれば、加工の途中で、被加工物と加工電極との間の相対速度を速めることで段差解消能力を高め、被加工物と加工電極との間の相対速度を遅くすることで加工速度を早めることによって、段差解消性能を高め、かつ加工時間を短縮することができ、更には、被加工物の不良品化を招いていた加工面のピットの発生を防止するようにすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、被加工物として基板を使用し、電解加工装置で基板を加工するようにした例を示しているが、本発明を基板以外にも適用できることは言うまでもない。
【0063】
図9は、本発明の第1の実施の形態における電解加工装置の系統図を示す。この電解加工装置は、密閉可能な耐圧容器200を有する装置本体202と、この装置本体202の耐圧容器200に高圧液体を供給する高圧液体供給系204と、この耐圧容器200内の液体を外部に排出する液体排出系206と、補助ライン系208とから主に構成されている。
【0064】
装置本体202には、一対の加工電極210と給電電極212を有し、この加工電極210と給電電極212の露出表面をイオン交換体214,216でそれぞれ覆った電極板218と、半導体ウェハ等の基板Wを着脱自在に保持する基板保持部220とが備えられている。この電極板218と基板保持部220は、耐圧容器200の内部に互いに対峙して配置されている。電極板218は、耐圧容器200を貫通して延び、駆動部222を介して前後動自在な主軸224の先端に固着されている。一方、基板保持部220は、耐圧容器200を貫通して延びる回転軸226の先端に固着され、この回転軸226は、モータ228の出力軸にカップリング230を介して連結されている。
【0065】
このようなイオン交換体214,216は、例えば、アニオン交換能又はカチオン交換能を付与した不織布で構成されている。カチオン交換体は、好ましくは強酸性カチオン交換基(スルホン酸基)を担持したものであるが、弱酸性カチオン交換基(カルボキシル基)を担持したものでもよい。また、アニオン交換体は、好ましくは強塩基性アニオン交換基(4級アンモニウム基)を担持したものであるが、弱塩基性アニオン交換基(3級以下のアミノ基)を担持したものでもよい。
【0066】
ここで、例えば強塩基性アニオン交換能を付与した不織布は、繊維径20〜50μmで空隙率が約90%のポリオレフィン製の不織布に、γ線を照射した後グラフト重合を行ういわゆる放射線グラフト重合法により、グラフト鎖を導入し、次に導入したグラフト鎖をアミノ化して4級アンモニウム基を導入して作製される。導入されるイオン交換基の容量は、導入するグラフト鎖の量により決定される。グラフト重合を行うためには、例えばアクリル酸、スチレン、メタクリル酸グリシジル、更にはスチレンスルホン酸ナトリウム、クロロメチルスチレン等のモノマーを用い、これらのモノマー濃度、反応温度及び反応時間を制御することで、重合するグラフト量を制御することができる。従って、グラフト重合前の素材の重量に対し、グラフト重合後の重量の比をグラフト率と呼ぶが、このグラフト率は、最大で500%が可能であり、グラフト重合後に導入されるイオン交換基は、最大で5meq/gが可能である。
【0067】
強酸性カチオン交換能を付与した不織布は、前記強塩基性アニオン交換能を付与する方法と同様に、繊維径20〜50μmで空隙率が約90%のポリオレフィン製の不織布に、γ線を照射した後グラフト重合を行ういわゆる放射線グラフト重合法により、グラフト鎖を導入し、次に導入したグラフト鎖を、例えば加熱した硫酸で処理してスルホン酸基を導入して作製される。また、加熱したリン酸で処理すればリン酸基が導入できる。ここでグラフト率は、最大で500%が可能であり、グラフト重合後に導入されるイオン交換基は、最大で5meq/gが可能である。
【0068】
イオン交換体214,216の素材の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系高分子、又はその他有機高分子が挙げられる。また素材形態としては、不織布の他に、織布、シート、多孔質材、短繊維等が挙げられる。
ここで、ポリエチレンやポリプロピレンは、放射線(γ線と電子線)を先に素材に照射する(前照射)ことで、素材にラジカルを発生させ、次にモノマーと反応させてグラフト重合することができる。これにより、均一性が高く、不純物が少ないグラフト鎖ができる。一方、その他の有機高分子は、モノマーを含浸させ、そこに放射線(γ線、電子線、紫外線)を照射(同時照射)することで、ラジカル重合することができる。この場合、均一性に欠けるが、ほとんどの素材に適用できる。
【0069】
このように、イオン交換体214,216をアニオン交換能又はカチオン交換能を付与した不織布で構成することで、純水又は超純水や電解液等の液体が不織布の内部を自由に移動して、不織布内部の水分解触媒作用を有する活性点に容易に到達することが可能となって、多くの水分子が水素イオンと水酸化物イオンに解離される。更に、解離によって生成した水酸化物イオンが純水又は超純水や電解液等の液体の移動に伴って効率良く加工電極の表面に運ばれるため、低い印加電圧でも高電流が得られる。
【0070】
ここで、イオン交換体214,216をアニオン交換能又はカチオン交換能の一方を付与したもののみで構成すると、電解加工できる被加工材料が制限されるばかりでなく、極性により不純物が生成しやすくなる。そこで、アニオン交換能を有するアニオン交換体とカチオン交換能を有するカチオン交換体とを重ね合わせたり、イオン交換体214,216自体にアニオン交換能とカチオン交換能の双方の交換基を付与するようにしたりしてもよく、これにより、被加工材料の範囲を拡げるとともに、不純物を生成しにくくすることができる。
【0071】
本発明は、イオン交換体を用いた電解加工に限られるものではない。例えば、加工液として電解液を用いた場合は、電極の表面に取付けられる加工部材(接触部材)としては、純水や超純水に最適なイオン交換体214,216に代えて、柔らかい研磨パッドや不織布のようなものであってもよい。また、接触部材として、ポリテックス(ロデール社の商標)、ポリウレタンスポンジ、不織布、発泡ポリウレタンまたはPVDスポンジを使用してもよい。
【0072】
この実施の形態では、加工電極210は、電源232の陰極に、給電電極212は、電源232の陽極にそれぞれ接続される。これは、例えば、銅を加工する場合においては、陰極側に電解加工作用が生じるためである。加工材料によっては、電源232の陰極に接続される電極を給電電極とし、陽極に接続される電極を加工電極としてもよい。すなわち、被加工材料が例えば銅やモリブデン、鉄である場合には、陰極側に電解加工作用が生じるため、電源232の陰極に接続した電極が加工電極210となり、陽極に接続した電極が給電電極212となる。一方、被加工材料が例えばアルミニウムやシリコンである場合には、陽極側で電解加工作用が生じるため、電源232の陽極に接続した電極が加工電極となり、陰極に接続した電極が給電電極となる。
【0073】
ここで、加工電極210や給電電極212は、電解反応により、酸化又は溶出が一般に問題となる。このため、電極の素材として、電極に広く使用されている金属や金属化合物よりも、炭素、比較的不活性な貴金属、導電性酸化物又は導電性セラミックスを使用することが好ましい。この貴金属を素材とした電極としては、例えば、下地の電極素材にチタンを用い、その表面にめっきやコーティングで白金又はイリジウムを付着させ、高温で焼結して安定化と強度を保つ処理を行ったものが挙げられる。セラミックス製品は、一般に無機物質を原料として熱処理によって得られ、各種の非金属・金属の酸化物・炭化物・窒化物などを原料として、様々な特性を持つ製品が作られている。この中に導電性を持つセラミックスもある。電極が酸化すると電極の電気抵抗値が増加し、印加電圧の上昇を招くが、このように、白金などの酸化しにくい材料やイリジウムなどの導電性酸化物で電極表面を保護することで、電極素材の酸化による導電性の低下を防止することができる。
【0074】
高圧液体供給系204は、純水、好ましくは超純水を輸送する純水ライン240を備え、この純水ライン240に該純水ライン240に沿って流れる純水の温度を調整する熱交換器242と、純水ライン240に沿って流れる純水中の溶存気体を脱気する脱気装置244が介装されている。そして、この脱気装置244の下流側で、内部に開閉弁246を介装した初期給水ライン248と、高圧(超)純水製造装置250を介装した高圧純水供給ライン254に分岐し、再び合流して装置本体202の耐圧容器200に接続されている。
【0075】
これにより、純水ライン240に沿って流れる純水を、先ず熱交換器242を通過させて、その液温が25℃以下となるように冷却する。そして、脱気装置244を通過させることで、初期の溶存ガスを除去(脱気)する。初期段階では、開閉弁246を開くことで、初期給水ライン248を通して、この冷却及び脱気した後の純水を耐圧容器200内に供給する。一方、電解加工を行うに当たっては、開閉弁246を閉じて、純水を高圧純水供給ライン254に沿って流す。これによって、高圧純水製造装置250で、純水を2kgf/cm2以上に加圧し、この加圧した純水を耐圧容器200の内部に供給する。
【0076】
なお、この例では、高圧純水製造装置250として、プランジャポンプを使用し、この高圧純水製造装置(プランジャポンプ)250で加圧した純水を耐圧容器200内に供給し、これによって、予め溜めておいた耐圧容器200内の純水を所定の圧力に加圧するようにしている。
液体排出系206は、内部に開閉弁256を介装した排水ライン258を有しており、この開閉弁256を開閉することで、耐圧容器200内の液体の排出及び遮断が行えるようになっている。
【0077】
補助ライン系208は、内部に開閉弁260を介装して耐圧容器200に接続した、排水兼ガス抜き用の補助ライン262を有しており、この補助ライン262に、内部に開閉弁264を介装した不活性ガス供給ライン266と、耐圧容器200の限界圧力より低い圧力で開くリリーフ弁268を備えた安全ライン270が接続され、更に、耐圧容器200内の液体(圧力純水)の圧力を検出する圧力計272が備えられている。
【0078】
これにより、不活性ガス供給ライン266の開閉弁264を開くことで、例えばN2ガス等の不活性ガスを耐圧容器200内に供給することができる。また、耐圧容器200の限界圧力より低い圧力で開くリリーフ弁268を備えた安全ライン270を備え、耐圧容器200内がこの限界圧力に達する前にリリーフ弁268を介して耐圧容器200内の液体(純水)の圧力を開放することで、耐圧容器200が液体圧で破壊されることを防止することができる。
【0079】
ここで、純水は、例えば電気伝導度が10μS/cm(1atm,25℃換算、以下同じ)以下の水であり、超純水は、例えば電気伝導度が0.1μS/cm以下の水である。このように電解質を含まない純水又は超純水を使用して電解加工を行うことで、基板Wの表面に電解質等の余分な不純物が付着したり、残留したりすることをなくすことができる。
【0080】
純水又は超純水の代わりに、電気伝導度500μS/cm以下の液体や、任意の電解液、例えば純水又は超純水に電解質を添加した電解液を使用してもよい。電解液を使用することで、電気抵抗を低減して消費電力を削減することができる。この電解液としては、例えば、NaClやNa2SO4等の中性塩、HClやH2SO4等の酸、更には、アンモニア等のアルカリなどの溶液を使用することができ、被加工物の特性によって適宜選択して使用することができる。
【0081】
純水又は超純水の代わりに、純水又は超純水に界面活性剤等を添加して、電気伝導度が500μS/cm以下、好ましくは、50μS/cm以下、更に好ましくは、0.1μS/cm以下(比抵抗で10MΩ・cm以上)にした液体を使用してもよい。このように、純水又は超純水に界面活性剤を添加することで、基板Wとイオン交換体214,216の界面にイオンの移動を防ぐ一様な抑制作用を有する層を形成し、これによって、イオン交換(金属の溶解)の集中を緩和して被加工面の平坦性を向上させることができる。ここで、界面活性剤濃度は、100ppm以下が好ましい。なお、電気伝導度の値があまり高いと電流効率が下がり、加工速度が遅くなるが、500μS/cm以下、好ましくは、50μS/cm以下、更に好ましくは、0.1μS/cm以下の電気伝導度を有する液体を使用することで、所望の加工速度を得ることができる。
【0082】
次に、この実施の形態における電解加工装置を使用した電解加工例について説明する。
まず、基板保持部220で基板Wを保持する。この時、耐圧容器200内は空の状態で、また電極板218は、基板保持部220で保持した基板Wと所定間隔離間した対峙位置にある。
この状態で、不活性ガス供給ライン266の開閉弁264を開き、耐圧容器200内にN2ガス等の不活性ガスを供給して、耐圧容器200内をN2ガス等の不活性ガスで置換する。このように、電解加工に先立って、耐圧容器200内のO2等の気体をN2ガス等の不活性ガスで置換することで、電解加工で発生し該電解加工で使用する液体(純水)中に溶解させたいガスを外方に押しやって予め除去しておく。特に、O2ガスは大気中に多量に存在するため、予め除去しておくことが望ましい。
【0083】
次に、初期給水ライン248の開閉弁246を開き、熱交換器242で冷却(温度調整)され、脱気装置244で脱気された純水を、初期給水ライン248を通して耐圧容器200内に供給し、同時に、補助ライン262の開閉弁260を開いて、耐圧容器200内を加圧されていない純水で満たしつつ、耐圧容器200内に残留する気泡やガス等を補助ライン262から外部に排出して除去する。
【0084】
そして、初期給水ライン248の開閉弁246を閉じ、高圧純水供給ライン254を通して、高圧純水製造装置250で発生した高圧純水を耐圧容器200内に供給し、これによって、耐圧容器200内を、例えば2kgf/cm2で加圧された純水で満たす。なお、この例では、前述のように、高圧純水製造装置250として、プランジャポンプを使用し、耐圧容器200内に満たされた加圧されていない純水を、プランジャポンプから吐出される純水で加圧するようにしているが、これに限定されないことは勿論である。
【0085】
このように、耐圧容器200内を高圧純水で満たした状態で、電解加工を開始する。
先ず、駆動部222を駆動させて、電極板218を基板保持部220で保持した基板Wに向けて前進させ、このイオン交換体214,216を基板保持部220で保持した基板Wに接触させる。この状態で、モータ228を駆動して基板Wを基板保持部220と一体に回転させる。そして、電源232により加工電極210と給電電極212との間に所定の電圧を印加し、イオン交換体214,216により生成された水素イオン又は水酸化物イオンによって、加工電極(陰極)210において基板Wの表面の導電体膜、例えば図1Bに示す銅膜6等の電解加工を行う。
電解加工中には、例えば加工電極210と給電電極212との間に印加する電圧、又はこの間を流れる電流をモニタ部でモニタして、エンドポイント(加工終点)を検知する。
【0086】
ここで、超純水のような液自身の抵抗値が大きい液体を使用する場合には、イオン交換体214,216を基板Wに接触させることにより、電気抵抗を低減させることができ、印加電圧も小さくて済み、消費電力も低減できる。この「接触」は、例えばCMPのように物理的なエネルギー(応力)を被加工物に与えるために、「押し付ける」ことを意味するものではない。すなわち、CMPにおいては、一般に20〜50kPa程度の押圧力で基板を研磨面に押し付けているが、この実施の形態の電解加工装置では、例えば、20kPa以下の圧力でイオン交換体214,216を基板Wに接触させればよく、10kPa以下の圧力でも十分除去加工効果が得られる。
【0087】
電解加工完了後、加工電極210及び給電電極212と電源232との接続を切り、基板保持部220の回転を停止させ、しかる後、電極板218を基板保持部220から離れる方向に移動させる。
そして、先ず、補助ライン262の開閉弁260を開いて、耐圧容器200内の高圧純水の圧抜きを行う。つまり、補助ライン262を通して、耐圧容器200内の純水の一部及び上部に溜まった気体を外部に排出する。この圧抜きと同時に、不活性ガス供給ライン266の開閉弁264を開いて、耐圧容器200内にN2ガス等の不活性ガスを供給する。これにより、高圧純水中に溶存し該高圧純水の圧抜きに伴ってガス化し体積を急増させたH2をN2ガス等の不活性ガスで希釈して、H2が爆発してしまうことを防止する。
【0088】
しかる後、排水ライン258の開閉弁256を開き、耐圧容器200内の純水を排水ライン258を通して外部に排出し、これによって、一連の電解加工を終了する。
このように、耐圧容器200内を、例えば2kgf/cm2以上の圧力の高圧純水で満たした状態で電解加工を行い、更に耐圧容器200内に、例えば25℃以下の低温の液温の純水(高圧純水)を供給し、しかもこの耐圧容器200内に供給される純水(高圧純水)中の溶存気体を予め脱気しておくことで、基板Wの導電体膜、例えば図1Bに示す銅膜6等の被加工面にピットが発生することを防止することができる。この原理を以下に説明する。
【0089】
ピットの発生原因となる気泡の発生量(気泡量)は、ガス発生量から純水(液体)中に溶解したガスの量(ガス溶存量)の差、つまり、
気泡量=ガス発生量−ガス溶存量 …(1)
で求められる。従って、ガス発生量を減少させるか、または純水中のガス溶存量を増大させることで、気泡量を減少させることができる。
【0090】
ここで、液体中へのガス溶解速度及びガス溶解容量は、液体単位体積(一定温度、1kg・cm2)当たりのガス溶解量(C)と、液体体積(V)と、液体圧力(=ガス分圧)(P)と初期溶存ガス量に相当するガス分圧(P0)の差(P−P0)の積に比例する。
液体中へのガス溶解速度及びガス溶解容量∝C×V×(P−P0) …(2)
従って、液体中へのガス溶解速度及びガス溶解容量と液体の圧力(水圧)との関係は、図10に示すようになる。つまり、液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量は、液体の圧力に比例して増加し、また式(1)より、気泡発生量は、ガス発生量から液体中に溶解したガスの量(ガス溶存量)の差で求められるため、高圧液体の下で電解加工を行うことで、電極及び被加工物表面で発生したガスの溶解速度及び溶解量を増大させ、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させて、ピットの発生量を減少させることができる。
【0091】
ここで、式(2)における液体短期体積当たりのガス溶解量(C)は、水温と共に減少する。つまり、ガス溶解量と液体の水温との関係は、図11に示すようになる。これにより、耐圧容器200内に供給される高圧液体の温度を低下させることで、液体中へのガスの溶解速度及び溶解容量を増大させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させ、同時に液体の温度によるガスの膨張を抑えることができる。
【0092】
更に、式(1)に示すように、ガス溶解容量は、液体中に初期溶存ガスが存在する場合、溶存ガス量に相当するガス分圧(P0)分だけ減少する。従って、初期溶存ガス量がA,B,C(A>B>C)である液体と液体の圧力(水圧)との関係は、図12に示すようになる。また、ガス溶解速度は、液体中の既存ガス量の増加と共に、残存するガス溶解容量が減少するため減少する。従って、ガス溶解速度と液体中の既存ガス量の関係は、図13に示すようになる。これにより、耐圧容器内に供給される高圧液体中の溶存気体を予め脱気しておくことで、液体中へのガス溶解容量及びガス溶解速度を増加させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
【0093】
図14は、本発明の第2の実施の形態における電解加工装置を備えた基板処理装置の構成を示す平面図である。図14に示すように、この基板処理装置は、例えば、図1Bに示すように、表面に導電体膜(被加工膜)としての銅膜6を有する基板Wを収納したカセットを搬出入する搬出入部としての一対のロード・アンロード部30と、基板Wを反転させる反転機32と、電解加工装置34とを備えている。これらの機器は直列に配置されており、これらの機器の間で基板Wを搬送して授受する搬送装置としての搬送ロボット36がこれらの機器と平行に配置されている。また、電解加工装置34による電解加工の際に、後述する加工電極と給電電極との間に印加する電圧又はこれらの間を流れる電流をモニタするモニタ部38がロード・アンロード部30に隣接して配置されている。
【0094】
図15は基板処理装置内の電解加工装置34を示す平面図、図16は図15の縦断面図である。図15及び図16に示すように、電解加工装置34は、上下動可能かつ水平面に沿って往復動可能なアーム40と、アーム40の自由端に垂設されて基板Wを下向き(フェースダウン)に吸着保持する基板保持部42と、アーム40が取付けられる可動フレーム44と、矩形状の電極部46と、電極部46に接続される電源48とを備えている。この実施の形態では、電極部46の大きさは基板保持部42で保持する基板Wの外径よりも一回り大きな大きさに設定されている。
【0095】
図15及び図16に示すように、可動フレーム44の上部には上下動用モータ50が設置されており、この上下動用モータ50には上下方向に延びるボールねじ52が連結されている。ボールねじ52にはアーム40の基部40aが取付けられており、上下動用モータ50の駆動に伴ってアーム40がボールねじ52を介して上下動する。また、可動フレーム44自体も、水平方向に延びるボールねじ54に取付けられており、往復動用モータ56の駆動に伴って可動フレーム44及びアーム40が水平面に沿って往復動する。
【0096】
基板保持部42は、アーム40の自由端に設置された自転用モータ58に接続されており、この自転用モータ58の駆動に伴って回転(自転)する。また、上述したように、アーム40は上下動及び水平方向に往復動可能となっており、基板保持部42はアーム40と一体となって上下動及び水平方向に往復動可能となっている。
【0097】
電極部46の下方には中空モータ60が設置されており、この中空モータ60の主軸62には、この主軸62の中心から偏心した位置に駆動端64が設けられている。電極部46は、その中央において上記駆動端64に軸受(図示せず)を介して回転自在に連結されている。また、電極部46と中空モータ60との間には、周方向に3つ以上の自転防止機構が設けられている。
【0098】
図17Aは、この実施の形態における自転防止機構を示す平面図、図17Bは、図17AのA−A線断面図である。図17A及び図17Bに示すように、電極部46と中空モータ60との間には、周方向に3つ以上(図17Aにおいては4つ)の自転防止機構66が設けられている。図17Bに示すように、中空モータ60の上面と電極部46の下面の対応する位置には、周方向に等間隔に複数の凹所68,70が形成されており、これらの凹所68,70にはそれぞれ軸受72,74が装着されている。軸受72,74には、距離“e”だけずれた2つの軸体76,78の一端部がそれぞれ挿入されており、軸体76,78の他端部は連結部材80により互いに連結される。ここで、中空モータ60の主軸62の中心に対する駆動端64の偏心量も上述した距離“e”と同じになっている。従って、電極部46は、中空モータ60の駆動に伴って、主軸62の中心と駆動端64との間の距離“e”を半径とした、自転を行わない公転運動、いわゆるスクロール運動(並進回転運動)を行う。
【0099】
次に、この実施の形態における電極部46について説明する。この実施の形態における電極部46は複数の電極部材82を備えている。図18は、この実施の形態における電極部46を示す平面図、図19は、図18のB−B線断面図、図20は、図19の部分拡大図である。図19及び図20に示すように、電極部46は、X方向(図15及び図18参照)に延びる複数の電極部材82を備えており、これらの電極部材82は平板状のベース84上に並列に配置されている。
【0100】
図20に示すように、各電極部材82は、電源48(図15及び図16参照)に接続される電極86と、電極86の上部に積層されたイオン交換体88と、電極86及びイオン交換体88の表面を一体的に覆うイオン交換体(イオン交換膜)90とを備えている。イオン交換体90は、電極86の両側に配置された保持プレート85により電極86に取付けられている。
【0101】
ここで、イオン交換体88,90には、以下の4点が求められる。
(1)加工生成物(ガス含む)の除去
これは、加工レートの安定性、加工レート分布の均一性に影響するためである。このため、「通水性」及び「吸水性」のあるイオン交換体を用いることが好ましい。ここで「通水性」とは、マクロな透過性を意味する。すなわち、素材自体に通水性がなくても、該部材に穴及び溝を切ることで水が通過できるようになり、通水性を持たせることができる。一方、「吸水性」とは、素材に水がしみ込む性質を意味する。
【0102】
(2)加工レートの安定性
加工レートの安定性を図るためには、イオン交換材料を多数枚重ねて、イオン交換能力を確保することが好ましいと考えられる。
(3)被加工面の平坦性(段差解消能力)
被加工面の平坦性を確保するためには、イオン交換体の加工面の表面平滑性が良好であることが好ましいと考えられている。更に、硬い部材ほど加工表面の平坦性(段差解消能力)が高いのではないかと考えられている。
【0103】
(4)長寿命
機械的寿命に関しては、耐磨耗性の高いイオン交換材料が好ましいと考えられている。
ここで、イオン交換体88としては、イオン交換容量の高いイオン交換体を用いることが好ましい。この実施の形態では、厚さが1mmの不織布イオン交換体を3枚重ねた多層構造としており、イオン交換体88の持つトータルのイオン交換容量を増加させている。このようにすることで、電解反応により発生した加工生成物(酸化物やイオン)をイオン交換体88内にこの蓄積容量以上に蓄積させないようにして、イオン交換体88内に蓄積された加工生成物の形態が変化して、それが加工速度及びその分布に影響を与えることを防止することができる。また、目標とする被加工物の加工量を十分補えるだけのイオン交換容量を確保することができる。なお、イオン交換体88のイオン交換容量が高ければ1枚としてもよい。
【0104】
また、少なくとも被加工物と対面するイオン交換体90は、硬度が高く、しかも良好な表面平滑性を有することが好ましい。ここで、「硬度が高い」とは、剛性が高く、かつ圧縮弾性率が低いことを意味する。硬度が高い材質を用いることにより、パターンウェハ等の、被加工物表面の微細な凹凸に加工部材が倣いにくくなるため、パターンの凸部のみを選択的に除去しやすい。また、「表面平滑性を有する」とは、表面の凹凸が小さいことを意味する。すなわち、イオン交換体が、被加工物であるパターンウェハ等の凹部に接触しにくくなるため、パターンの凸部のみを選択的に除去しやすくなる。このように、表面平滑性を有するイオン交換体90とイオン交換容量の大きなイオン交換体88とを組み合わせることにより、イオン交換容量が少ないというイオン交換体90の短所をイオン交換体88により補うことができる。
【0105】
また、イオン交換体90としては通水性に優れたものを使用することがより好ましい。純水又は超純水がイオン交換体90を通過するように流すことで、水の解離反応を促進させる官能基(強酸性陽イオン交換材料ではスルホン酸基)に十分な水を供給して水分子の解離量を増加させ、水酸化物イオン(もしくはOHラジカル)との反応により発生した加工生成物(ガスも含む)を水の流れにより除去して、加工効率を高めることができる。従って、純水又は超純水の流れが必要となり、純水又は超純水の流れとしては、一様かつ均一であることが好ましい。このように、一様かつ均一な流れとすることで、イオンの供給及び加工生成物の除去の一様性及び均一性、ひいては加工効率の一様性及び均一性を図ることができる。
【0106】
ここで、本発明は、イオン交換体を用いた電解加工に限られるものではない。例えば、加工液として電解液を用いた場合は、電極の表面に取付けられる加工部材(接触部材)としては、純水や超純水に最適なイオン交換体88,90に代えて、柔らかい研磨パッドや不織布のようなものであってもよい。また、接触部材として、ポリテックス(ロデール社の商標)、ポリウレタンスポンジ、不織布、発泡ポリウレタンまたはPVDスポンジを使用してもよい。
【0107】
この実施の形態では、隣り合う電極部材82の電極86に、電源48の陰極と陽極とが交互に接続されている。例えば、電極86a(図19参照)を電源48の陰極に接続し、電極86b(図19参照)を陽極に接続する。例えば、銅を加工する場合においては、陰極側に電解加工作用が生じるので、陰極に接続した電極86aが加工電極となり、陽極に接続した電極86bが給電電極となる。このように、この実施の形態では、加工電極と給電電極とが並列に交互に配置される。
加工材料によっては、電源48の陰極に接続される電極を給電電極とし、陽極に接続される電極を加工電極としてもよいことは、前述と同様である。
【0108】
また、被加工物が錫酸化物やインジウム錫酸化物(ITO)などの導電性酸化物の場合には、被加工物を還元した後に、電解加工を行う。すなわち、図16において、電源48の陽極に接続した電極が還元電極となり、陰極に接続した電極が給電電極となって、導電性酸化物の還元を行う。続いて、先程給電電極であった電極を加工電極として、還元された導電性酸化物の加工を行う。あるいは、導電性酸化物の還元時の極性を反転させることによって還元電極を加工電極にしてもよい。また、被加工物を陰極にして、陽極電極を対向させることによっても導電性酸化物の除去加工ができる。
【0109】
なお、上記の例では、基板の表面に形成した導電体膜としての銅膜6を電解加工するようにした例を示しているが、基板の表面に成膜乃至付着した不要なルテニウム(Ru)膜も同様にして、すなわちルテニウム膜を陽極となし、陰極に接続した電極を加工電極として、電解加工(エッチング除去)することができる。
このように、加工電極と給電電極とを電極部46のY方向(電極部材82の長手方向と垂直な方向)に交互に設けることで、基板Wの導電体膜(被加工物)に給電を行う給電部を設ける必要がなくなり、基板の全面の加工が可能となる。
【0110】
更に、上述したスクロール運動(第1の相対運動)に加えて、電解加工中に基板保持部42をY方向に所定の距離だけ移動させて、基板Wと電極部材82との間で第2の相対運動を行うことにより、加工量のバラツキをなくすことができる。すなわち、図23Aに示すように、スクロール運動(第1の相対運動)のみを行った場合には、基板WのY方向に沿って加工量に差が生じ、同一形状の加工量分布がピッチPごとに現れるが、電解加工中に、往復運動用モータ56を駆動させてアーム40及び基板保持部42をY方向に図23Aに示すピッチPの整数倍だけ移動させて、基板Wと電極部材82との間で第2の相対運動を行う。電解加工中にこのような第2の相対運動を上記第1の相対運動とともに行った場合、例えば、ピッチPの等倍だけ移動させた場合には、図23Bに示す基板W上の点Qは、面積SQに相当する加工量だけ加工され、図23Cに示す基板W上の点Rは、面積SRに相当する加工量だけ加工される。ここで、各加工量分布の形状は互いに等しいため、これらの面積SQ,SRは互いに等しくなり、基板W上の点Qと点Rにおける加工量が等しくなる。このように、第1の相対運動とともに第2の相対運動をさせることで基板Wの全面を均一に加工することが可能となる。この場合において、第2の相対運動の移動速度は一定であることが好ましい。
【0111】
図19に示すように、電極部46のベース84の内部には、被加工面に純水、より好ましくは超純水を供給するための流路92が形成されており、この流路92は純水供給管94を介して、純水供給系120に接続されている。この純水供給系120は、純水ライン122を備え、この純水ライン122に該純水ライン122に沿って流れる純水の温度を調整する熱交換器124と、純水ライン122に沿って流れる純水中の溶存気体を脱気する脱気装置126が介装されている。これにより、前述の例と同様に、純水ライン122に沿って流れる純水を、先ず熱交換器124を通過させて、その液温が25℃以下となるように冷却し、そして、脱気装置126を通過させることで、初期の溶存ガスを除去(脱気)するよう構成されている。
【0112】
各電極部材82の両側には、前述のように、熱交換器124を通過して冷却(温度調整)され、脱気装置126を通過して脱気されて流路92から供給される純水又は超純水を基板Wと電極部材82のイオン交換体90との間に噴射するための純水噴射ノズル96が設置されている。この純水噴射ノズル96には、電極部材82に対向する基板Wの被加工面、すなわち基板Wとイオン交換体90との接触部分に向けて純水又は超純水を噴射する噴射口98がX方向に沿って複数箇所(図18参照)に設けられている。この純水噴射ノズル96の噴射口98から流路92内の純水又は超純水が基板Wの被加工面全域に供給される。ここで、図20に示すように、純水噴射ノズル96の高さは、電極部材82のイオン交換体90の高さよりも低くなっており、基板Wを電極部材82のイオン交換体90に接触させた際にも、純水噴射ノズル96が基板Wに接触しないようになっている。
【0113】
また、各電極部材82の電極86の内部には、流路92からイオン交換体88に通じる貫通孔100が形成されている。このような構成により、流路92内の純水又は超純水は、貫通孔100を通ってイオン交換体88に供給される。ここで、純水、より好ましくは超純水の代わりに、電気伝導度500μS/cm以下の液体や、任意の電解液等を使用しても良いことは前述と同様である。
【0114】
次に、この基板処理装置を用いた基板処理(電解加工)について説明する。まず、例えば、図1Bに示すように、表面に導電体膜(被加工膜)として銅膜6を形成した基板Wを収納したカセットをロード・アンロード部30にセットし、このカセットから1枚の基板Wを搬送ロボット36で取り出す。搬送ロボット36は、取り出した基板Wを必要に応じて反転機32に搬送し、基板Wの導電体膜(銅膜6)を形成した表面が下を向くように反転させる。
【0115】
搬送ロボット36は反転させた基板Wを受け取り、これを電解加工装置34に搬送し、基板保持部42により吸着保持させる。アーム40を移動させて基板Wを保持した基板保持部42を電極部46の直上方の加工位置まで移動させる。次に、上下動用モータ50を駆動して基板保持部42を下降させ、この基板保持部42で保持した基板Wを電極部46のイオン交換体90の表面に接触又は近接させる。この状態で、自転用モータ58を駆動して基板Wを回転させ、同時に中空モータ60を駆動して電極部46をスクロール運動させる。このとき、純水噴射ノズル96の噴射口98から基板Wと電極部材82との間に純水又は超純水を噴射し、また、各電極部46の貫通孔100を通じて純水又は超純水をイオン交換体88に含ませる。この実施の形態では、イオン交換体88に供給された純水又は超純水は各電極部材82の長手方向端部から排出される。
【0116】
そして、電源48により加工電極と給電電極との間に所定の電圧を印加し、イオン交換体88,90により生成された水素イオン又は水酸化物イオンによって、加工電極(陰極)において基板Wの表面の導電体膜(銅膜6)の電解加工を行う。なお、この実施の形態では、基板保持部42を回転させ、同時に電極部46をスクロール運動させて加工を行うようにしているが、電解加工中に往復動用モータ56を駆動させてアーム40及び基板保持部42をY方向に移動させるようにしてもよい。
【0117】
つまり、図24Aに示す状態で、上述したようにピッチPの整数倍だけ基板Wを電極部材82に対してY1方向に移動させる。次に、自転用モータ58を駆動させて、基板Wを反時計回りに90度回転させた後、ピッチPの整数倍だけ基板WをY2方向に移動させる(図24B参照)。同様に、基板Wを反時計回りに90度回転させた後、ピッチPの整数倍だけ基板WをY1方向に移動させ(図24C参照)、更に基板Wを反時計回りに90度回転させた後、ピッチPの整数倍だけ基板WをY2方向に移動させる(図24D参照)。このように、基板Wにおける第2の相対運動の方向を往路(Y1方向への移動)と復路(Y2方向への移動)で変化させることで、加工電極の加工レートに多少のバラツキがあっても、このバラツキを基板W上で均等に分散して、全体として加工の不均一を相殺することができる。
また、基板Wをスクロール運動させてもよく、スクロール運動に代えて、Y方向への直進往復運動を行うこととしてもよい。
【0118】
電解加工中には、加工電極と給電電極との間に印加する電圧、又はこの間を流れる電流をモニタ部38でモニタして、エンドポイント(加工終点)を検知する。すなわち、同じ電圧(電流)を印加した状態で電解加工を行うと、材料によって流れる電流(印加される電圧)に違いが生じる。例えば、図21Aに示すように、表面に材料Bと材料Aとを順次成膜した基板Wの該表面に電解加工を施したときに流れる電流をモニタすると、材料Aを電解加工している間は一定の電流が流れるが、異なる材料Bの加工に移行する時点で流れる電流が変化する。同様に、加工電極と給電電極との間に印加される電圧にあっても、図21Bに示すように、材料Aを電解加工している間は一定の電圧が印加されるが、異なる材料Bの加工に移行する時点で印加される電圧が変化する。なお、図21Aは、材料Bを電解加工するときの方が、材料Aを電解加工するときよりも電流が流れにくくなる場合を、図21Bは、材料Bを電解加工するときの方が、材料Aを電解加工するときよりも電圧が高くなる場合の例を示している。これにより、この電流又は電圧の変化をモニタすることでエンドポイントを確実に検知することができる。
【0119】
なお、モニタ部38で加工電極と給電電極との間に印加する電圧、又はこの間を流れる電流をモニタして加工終点を検知するようにした例を説明したが、このモニタ部38で、加工中の基板の状態の変化をモニタして、任意に設定した加工終点を検知するようにしてもよい。この場合、加工終点は、被加工面の指定した部位について、所望の加工量に達した時点、もしくは加工量と相関関係を有するパラメータが所望の加工量に相当する量に達した時点を指す。このように、加工の途中においても、加工終点を任意に設定して検知できるようにすることで、多段プロセスでの電解加工が可能となる。
【0120】
電解加工完了後、電源48の接続を切り、基板保持部42と電極部46の回転を停止させ、しかる後、基板保持部42を上昇させ、アーム40を移動させて基板Wを搬送ロボット36に受け渡す。基板Wを受け取った搬送ロボット36は、必要に応じて反転機32に搬送して反転させた後、基板Wをロード・アンロード部30のカセットに戻す。
【0121】
この実施の形態において、基板Wと電極部材82のイオン交換体90とを接触させて加工を行う場合、電極部46のイオン交換体90と基板Wの被加工面との接触範囲内で加工が進行する。このため、図22に示すように、この電解加工に際して、イオン交換体90と基板Wの被加工面とは、その接触幅w1が、0.1〜1.5mm、好ましくは0.2〜1.2mm、更に好ましくは0.2〜1.0mmで、線状に接触するように構成されている。また、電解加工に際して、電極部46はスクロール運動を行い、基板保持部42で保持された基板Wも回転するのであるが、この電極部46と基板Wとは、0.2m/sec以上、好ましくは0.5m/sec以上、更に好ましくは0.7m/sec以上の相対速度で相対運動するように構成されている。これにより、基板Wの導電体膜、例えば図1Bに示す銅膜6等の被加工面にピットが発生することを防止することができる。この原理を以下に説明する。
【0122】
なお、熱交換器124を通過して冷却(温度調整)され、脱気装置126を通過して脱気されて流路92から供給される純水又は超純水を基板Wと電極部材82のイオン交換体90との間に噴射(供給)することで、基板の被加工面にピットが発生することが防止できることは前述と同様である。
【0123】
つまり、液体中へのガス溶解量は、図25に示すように、ガス溶解時間に依存して増加し、最終的にはガス溶解容量に漸近する。このため、ガス溶解時間が大きいほど、液体中へのガス溶解量は増加する。そこで、電極86を覆うイオン交換体90が基板保持部42で保持した基板Wと線状に接触する接触幅w1をより狭くすることで、基板Wの任意の加工点に対する電極86の通過時間(加工時間)を相対的に短くすることができ、これによって、ガス発生時間を短くするとともに、ガス溶解時間を長くして、ガス溶解量を増加させて、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
【0124】
図27に、下記の表1に示す電極幅を有する電極1〜4を使用し、イオン交換体と基板Wの被加工面との接触幅を表1に示すように設定して加工を行った時における基板と電極との相対速度と各電極でのピット数の関係を示す。この試験において、イオン交換体と基板の被加工面との接触幅は、電極上に設置するイオン交換膜の張力およびその際の曲率により決まり、イオン交換体自体に絶縁フィルムを貼る等で接触範囲を制限することはしていない。
【表1】
この図27から、相対速度が同じ0.22m/secにおける各電極でのピット数を比較すると、特にイオン交換体と基板の被加工面との接触幅が1mmと狭い電極1で良好な結果が得られていることが判る。
【0125】
また、電解加工において、発生したガスは、電極86と基板Wとの間に存在する液体中に溶解する。つまり、液体体積A,B(A>B)中に溶解するガスのガス溶解速度及びガス溶解量と液体の圧力(水力)の関係は、図26に示すようになる。このため、電極86と基板Wとの相対速度をより大きくして、電極86と基板Wと間に存在し、電極86と基板Wとの相対速度に伴って置換される流量を大きくすることで、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
【0126】
このことは、前述の図27からも明らかである。つまり、電極86と基板Wとの相対速度を大きくすることで、ピット数を減少させることができる。
これを基板の被加工面のある一点に対する電極(イオン交換体)との接触時間として表すと、図28に示すようになる。この図28から、基板の被加工面のある一点の電極(イオン交換体)に対する接触時間が短いほど、ピット発生数が減少することが判る。
【0127】
上記のイオン交換体90と基板Wの被加工面との接触幅w1の好適値と、電極部46と基板Wとの間の相対移動速度の好適値から求められる基板の被加工面のある一点の電極(イオン交換体)に対する電極(イオン交換体)との接触時間は、一般には10msec以下であり、好ましくは5msec以下、更に好ましくは1.5msec以下である。
なお、上記の例では、電解加工中に、電源48から電極86に常時電圧を印加して電解加工を行うようにした例を示しているが、電極部46と基板Wとの間の相対的なスクロール運動と同期して、電源48をON/OFF制御するようにしてもよい。
【0128】
つまり、スクロール運動では、例えば図29Bに示す電極(イオン交換体)Aに対して垂直な一方向の相対速度:Vcosθが常に変化し、この相対速度が最大となる点(図29Cにおける点a)や、相対速度がゼロとなる点(図29Cにおける点b)が存在する。このため、スクロール運動と電源48のON/OFF制御を同期させ、図30に示すように、スクロール運動の相対速度が速い区間でのみ電源48をONとして加工が行われるようにすることで、前述の高相対速度によるときの同様なピット減少効果が得られる。このスクロール運動と同期した電源48のON/OFF制御は、例えばスクロール運動用の回転モータが発するパルス信号やスクロール運動するテーブルに設置した位置センサからの信号より該テーブルの回転角度を検出し、電源装置のON/OFFを連動させることで行うことができる。
【0129】
このように、スクロール運動と電源のON/OFF制御を同期させ、例えば、電極部の電極と基板の被加工面との間における該電極部の幅方向の相対速度が、0.2m/sec以上、より好ましく0.5m/sec以上、更に好ましくは0.7m/sec以上の相対速度が速い区間でのみ加工が行われるようにすることで、前述の相対速度をより大きくした場合と同様にして、ガス発生箇所での気泡発生量を減少させることができる。
【0130】
この場合にあっても、前述と同様に、イオン交換体90と基板Wの被加工面とが、その接触幅w1が、0.1〜1.5mm、好ましくは0.2〜1.2mm、更に好ましくは0.2〜1.0mmで線状に接触することが好ましい。また、基板の被加工面のある一点の電極(イオン交換体)に対する電極(イオン交換体)との接触時間は、一般には10msec以下であり、好ましくは5msec以下、更に好ましくは1.5msec以下である。
【0131】
ここで、θa=45゜(ON/OFF デュ−ティ50%)または30゜(ON/OFF デュ−ティ30%)として、ON時の最小相対速度vを0.2m/s、最大接触時間を1.5msecとなる条件で、スクロール半径r(mm)、スクロール回転速度N(rpm)、回転角度θ(deg)及び接触幅L(mm)の関係を試算した結果を表2に示す。
【表2】
【0132】
以上説明したように、本発明によれば、基板等の被加工物に物理的な欠陥を与えて被加工物の特性を損なうことを防止しつつ、電気化学的作用によって、例えばCMPに代わる電解加工等を施すことができ、これによって、CMP処理そのものを省略したり、CMP処理の負荷を低減したり、更には基板等の被加工物の表面に付着した付着物を除去(洗浄)することができる。しかも、純水または超純水のみを使用しても基板を加工することができ、これによって、基板の表面に電解質等の余分な不純物が付着したり、残留したりすることをなくして、除去加工後の洗浄工程を簡略化できるばかりでなく、廃液処理の負荷を極めて小さくすることができる。また、本発明によれば、被加工物の不良品化を招いていたピットの発生を防止することができる。
【0133】
図31は、本発明の他の実施の形態における電解加工方法を行う電解加工装置を備えた基板処理装置の構成を示す平面図である。図31に示すように、この基板処理装置は、例えば、図1Bに示す、表面に導電体膜(薄膜)としての銅膜6及びバリア膜5を有する基板Wを収納したカセットを搬出入する搬出入部としての一対のロード・アンロード部30と、基板の1次洗浄を行う第1洗浄機31aと、基板の2次洗浄(仕上げ洗浄)を行う第2洗浄機31bと、基板Wを反転させる反転機32と、電解加工装置34aを備えている。これらの機器は、直列に配置されており、これらの機器の間で基板Wを搬送して授受する搬送装置としての搬送ロボット36がこれらの機器と平行に走行自在に配置されている。また、電解加工装置34による電解加工の際に、下記のように、渦電流センサ200からの出力に基づいて電極部46の回転速度を制御する制御部38がロード・アンロード部30に隣接して配置されている。
【0134】
図32は、基板処理装置内の電解加工装置34aを示す縦断面図である。この電解加工装置34aの前述の図15乃至図20に示す電解加工装置34と異なる点は以下の通りである。すなわち、電極部46の内部には、基板Wの表面に堆積した銅膜6(図1B参照)等の導電性膜の内部に渦電流を発生させ、しかも、この時に発生した渦電流の大きさを検出する渦電流センサ200が埋め込まれている。そして、この渦電流センサ200で検出した信号は、膜厚検出部としての信号処理装置202に入力され、この信号処理装置202で処理された信号は、制御部38aに入力される。
【0135】
この渦電流センサ200は、センサコイルを有し、このセンサコイルに高周波電流を流すことで、基板Wの表面に堆積した銅膜6等の導電性膜の内部に渦電流を発生させるようになっており、この時に発生する渦電流は、銅膜6等の導電性膜の膜厚によって変化する。
【0136】
そこで、この例では、この基板Wの表面に堆積した銅膜6等の導電性膜の内部に発生する渦電流の大きさを渦電流センサ200で検出し、この渦電流センサ200で検出した信号を信号処理装置202に送り、この信号処理装置202で、例えば、この渦電流の変化の大きさが所定値以上に達したことを検知した時に、基板Wの表面に堆積した銅膜6等の導電性膜の膜厚(残膜厚)が所定の値に達したと判断して、所定の加工の終点を検出するようになっている。信号処理装置202は、所定の加工の終点を検出すると制御部38に所定の信号を送る。
【0137】
次に、この基板処理装置を用いた基板処理(電解加工)について説明する。まず、例えば、図1Bに示すように、表面に導電体膜(被加工部)として銅膜6を形成した基板Wを収納したカセットをロード・アンロード部30にセットし、このカセットから1枚の基板Wを搬送ロボット36で取り出す。搬送ロボット36は、取り出した基板Wを必要に応じて反転機32に搬送し、基板Wの導電体膜(銅膜6)を形成した表面が下を向くように反転させる。
【0138】
搬送ロボット36は、反転させた基板Wを受け取り、これを電解加工装置34aに搬送し、基板保持部42により吸着保持させる。アーム40を移動させて基板Wを保持した基板保持部42を電極部46の直上方の加工位置まで移動させる。次に、上下動用モータ50を駆動して基板保持部42を下降させ、この基板保持部42で保持した基板Wを電極部46のイオン交換体90の表面に接触または近接させる。この状態で、自転用モータ58を駆動して基板Wを回転させ、同時に中空モータ60を駆動して電極部46をスクロール運動させることで、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86とを相対運動させる。このとき、純水噴射ノズル96の噴射口98から基板Wと電極部材82との間に純水または超純水を噴射し、また、各電極部46の貫通孔100を通じて純水または超純水をイオン交換体88に含ませる。この実施の形態では、イオン交換体88に供給された純水または超純水は各電極部材82の長手方向端部から排出される。
【0139】
そして、電源48により加工電極と給電電極との間に所定の電圧を印加し、イオン交換体88,90により生成された水素イオンまたは水酸化物イオンによって、加工電極(陰極)において基板Wの表面の導電体膜(銅膜6)の電解加工を行う。この実施の形態では、基板保持部42を回転させ、同時に電極部46をスクロール運動させることで、基板Wと電極86とを相対移動させて加工を行うようにしている。電解加工中に往復動用モータ56を駆動させてアーム40及び基板保持部42をY方向に移動させるようにしてもよい。
【0140】
ここで、図33に示すように、電解加工の初期(〜t1)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を速くして、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにする。つまり、例えば、この相対速度が、0.4m/sec以上、好ましくは0.5m/sec以上、更に好ましくは0.6m/sec以上となるようにする。このように、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにすることで、前述のように、加工速度を遅くし、基板Wの表面に形成した薄膜、例えば図1Bに示す銅膜6を除去し平坦化する時の段差解消能力を向上させる。
【0141】
そして、この銅膜6の残膜厚が所定の値、例えば600nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下に達したことを渦電流センサ200で検知した時、この信号を信号処理装置202に送り、信号処理装置202と制御部38を介して、例えば電極部46のスクロール運動速度を落とし、これによって、図33に示すように、加工後期(t1〜)において、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が遅くなるようにする。このように、基板Wと各電極86との間の相対速度を落とすことで、前述のように、加工速度を速める。一般に、被加工面の初期段差は300〜500nmであるが、加工速度上昇のための相対速度の切替えは、初期段差が完全に解消する前、初期段差分の膜厚を除去加工するより前に行う。
【0142】
このように、加工初期(〜t1)においては、基板Wと電極86との間の相対速度を速めることで段差解消能力を高め、段差が解消した加工後期(t1〜)においては、基板Wと電極86との間の相対速度を遅くすることで加工速度を早めることで、段差解消性能を高め、かつ加工時間を短縮することができる。
【0143】
電解加工完了後、電源48の電極86との接続を切り、基板保持部42と電極部46の回転を停止させ、しかる後、基板保持部42を上昇させ、アーム40を移動させて基板Wを搬送ロボット36に受け渡す。基板Wを受け取った搬送ロボット36は、必要に応じて反転機32に搬送して反転させ、第1洗浄機31aに搬送して基板の1次洗浄を、第2洗浄機31bに搬送して基板の2次洗浄(仕上げ洗浄)を、順次行って乾燥させ、乾燥後の基板Wをロード・アンロード部30のカセットに戻す。
【0144】
ここで、超純水のような液自身の抵抗値が大きい液体を使用する場合には、イオン交換体90を基板Wに接触させることにより、電気抵抗を低減させることができ、印加電圧も小さくて済み、消費電力も低減できる。この「接触」は、例えばCMPのように物理的なエネルギー(応力)を被加工物に与えるために、「押し付ける」ことを意味するものではない。従って、この実施の形態における本電解加工装置では、基板Wの電極部46への接触または近接には上下動用モータ50を用いており、例えばCMP装置において基板と研磨部材を積極的に押し付ける押圧機構は具備していない。すなわち、CMPにおいては、一般に20〜50kPa程度の押圧力で基板を研磨面に押し付けているが、この実施の形態の電解加工装置では、例えば、20kPa以下の圧力でイオン交換体90を基板Wに接触させればよく、10kPa以下の圧力でも十分除去加工効果が得られる。
【0145】
なお、上記の例では、電解加工に際し、基板Wと電極86との間の相対速度を、加工初期では速く、加工後期では遅くした例を示しているが、図34に示すように、基板Wと電極86との間の相対速度を、加工初期(〜t2)では速く、加工中期(t2〜t3)では遅く、加工後期(t3〜)では再び速くするようにしてもよい。
【0146】
つまり、電解加工の初期(〜t2)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を速くして、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにして、加工速度を遅くし、基板Wの表面に形成した薄膜、例えば図1Bに示す銅膜6を除去し平坦化する時の段差解消能力を向上させる。
【0147】
そして、この銅膜6の残膜厚が所定の値、例えば600nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nmに達したことを渦電流センサ200で検知した後の加工中期(t2〜t3)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を落とし、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が遅くなるようにして、加工速度を速める。ここで相対速度を遅くするとは、その直前の相対速度より遅くすることである。具体的には、0.4m/sec以下、好ましくは0.3m/sec以下、更に好ましくは0.2m/sec以下となるようにする。
【0148】
更に、この銅膜6の残膜厚が、例えば50〜300nm、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは50〜150nmであることを渦電流センサ200で検知した後の加工後期(t3〜)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を再度速め、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにして、段差解消能力を高め、しかも加工面にピットの発生を防止した仕上げ加工を行う。
【0149】
このように、加工後期(t3〜)において、基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにすることで、段差解消能力を更に高めるとともに、加工面にピットの発生を防止することができる。つまり、この例のように、電極部46をスクロール運動させ、基板保持部42で保持した基板Wも回転させつつ相対運動させて電解加工を行うようにした場合、電極86と基板Wとを、0.4m/sec以上、好ましくは0.5m/sec以上、更に好ましくは0.6m/sec以上の相対速度で相対運動させながら加工を行うことで、基板Wの導電体膜、例えば図1Bに示す銅膜6等の被加工面に、加工後にピットが発生することを防止することができることが確かめられている。しかも、このように、加工後期で加工速度を落とすことで、加工終点(エンドポイント)をより正確に検知することができる。
【0150】
なお、加工前期と加工後期における基板Wと各電極86との間の相対速度とを一致させる必要はなく、その目的に応じて、例えば加工後期における基板Wと各電極86との間の相対速度を加工前期における相対速度より速くするようにしてもよい。
【0151】
また、図35に示すように、基板Wと電極86との間の相対速度を、加工初期(〜t4)では遅く、加工中期(t4〜t5)では速くし、更に、必要に応じて、加工中期(t4〜t5)よりも、加工後期(t5〜)の方が、更に速くなるようにしてもよい。
【0152】
つまり、電解加工の初期(〜t4)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を遅くし、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が遅くなるようにして、加工速度を速める。そして、基板Wの表面に形成した薄膜、例えば図1Bに示す銅膜6の残膜厚が所定の値、例えば500nm以下、好ましくは400nm以下、更に好ましくは300nm以下に達したことを渦電流センサ200で検知した後の加工中期(t4〜t5)においては、例えば電極部46のスクロール運動速度を速め、基板保持部42で保持した基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにして、例えば銅膜6を除去し平坦化する時の段差解消能力を向上させる。これによっても、段差解消性能を高め、かつ加工時間を短縮することができる。
【0153】
更に、このように、加工中期で基板Wと各電極86との間の相対速度が速くなるようにすることで、被加工面にピットが発生することを防止し、しかも加工中期(t4〜t5)よりも、加工後期(t5〜)の方が、更に速くなるようにすることで、段差解消能力と被加工面にピットが発生するのを防止する効果をより高めることができる。
【0154】
更に、図36に示すように、基板Wと電極86との間の相対速度を、残膜厚600nm以下、好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下までの加工初期(〜t7)では速く、残膜厚50〜300nm、好ましくは50〜200nm、更に好ましくは50〜150nmとなるまでの加工中期(t7〜t8)では遅く、加工後期(t8〜)では再び速くするようにして電解加工を行うに際し、加工初期(〜t7)において、その初期(〜t6)の方が後期(t6〜t7)よりも相対速度が遅くなるようにして加工速度を稼ぎ、加工後期(t8〜)において、その後期(t9〜)の方が初期(t8〜t9)よりも相対運動が速くなるようにして、段差解消能力と被加工面にピットが発生するのを防止する効果をより高めるようにしてもよい。
【0155】
前述の各例においては、基板Wと電極86との間の相対速度を段階的に変化させるようにした例を示しているが、図37に示すように、例えば、基板Wと電極86との間の相対速度を、加工初期(〜t10)では速く、加工中期(t10〜t11)では遅く、加工後期(t11〜)では再び速くするようにして電解加工を行うに際し、加工初期(〜t10)においては、基板Wと電極86との間の相対速度を直線的に減少させ、加工後期(t11〜)においては、基板Wと電極86との間の相対速度を直線的に増加させるようにしてもよい。この時、加工初期(〜t10)における、相対速度減少直線の傾きと、加工後期(t11〜)における、相対速度増加直線の傾きは、任意に設定される。
【0156】
なお、この例では、基板Wと電極86との間の相対速度を直線的に減少または増加させるようにした例を示しているが、基板Wと電極86との間の相対速度を曲線的に任意に減少または増加させるようにしてもよい。
【0157】
また、上記の例では、渦電流センサ200によって、加工中における、例えば図1Bに示す銅膜6の残膜厚を測定して、相対速度の切替えを行うタイミングを検知するようにしているが、(1)予め測定した初期膜厚と加工速度より計算した加工時間により、(2)印加電流または印加電圧値の一方を固定し、他方の変化を測定することにより、(3)電極部46を回転させる中空モータ60のトルク値を測定するか、またはその時間当たりの変化量を測定することにより、または(4)光学的手段により膜厚を検知することにより、相対速度の切替えを行うタイミングを検知するようにしてもよい。また加工量対段差の関係を予め測定することなく、加工終了後の段差が最適となるよう、試行錯誤等で速度切替えの為の加工量/残膜厚を決定するようにしてもよい。また、各種膜厚をin−situで測定し、相対速度だけではなく、基板Wと電極86(イオン交換体90)との間の印加電圧や接触圧を変え、またこれら複数の加工因子の組合せを変えて加工してもよい。
【0158】
図38は、本発明の電解加工方法を行うのに適した更に他の電解加工装置の要部を示す縦断面図で、図39は、図38の要部を拡大して示す要部拡大図である。図38に示すように、この電解加工装置600は、表面を下向きにして基板Wを吸着する基板保持部602と、矩形状の電極部604とを上下に備えている。この基板保持部602は、前述の例と同様に、上下動、左右動及び回転自在に構成されている。電極部604は、中空スクロールモータ606を備えており、この中空スクロールモータ606の駆動により、自転を行わない円運動、いわゆるスクロール運動(並進回転運動)を行うようになっている。
【0159】
電極部604は、直線状に延びる複数の電極部材608と、上方に開口する容器610とを備えており、複数の電極部材608は容器610内に並列に等ピッチで配置されている。更に、この容器610の上方に位置して、該容器610の内部に超純水や純水等の液体を供給する液体供給ノズル612が配置されている。各電極部材608は、装置内の電源に接続される電極614を備えており、この各電極614に電源の陰極と陽極とが交互に、つまり、電極614aに電源の陰極が、電極614bに陽極が交互に接続されている。これによって、前述と同様に、例えば、銅を加工する場合においては、陰極側に電解加工作用が生じるので、陰極に接続した電極614aが加工電極となり、陽極に接続した電極614bが給電電極となるようになっている。
【0160】
そして、この陰極に接続した加工電極614aにあっては、図39に詳細に示すように、この上部に、例えば不織布からなるイオン交換体616aが取付けられ、この加工電極614a及びイオン交換体616aは、液体の通過を遮断しイオンのみを通過可能に構成されたイオン交換膜からなる第2のイオン交換体618aで一体に覆われている。陽極に接続した給電電極614bにあってもほぼ同様に、この上部に、例えば不織布からなるイオン交換体616bが取付けられ、この加工電極614a及びイオン交換体616bは、液体の通過を遮断しイオンのみを通過可能に構成されたイオン交換膜からなる第2のイオン交換体618bで一体に覆われている。
【0161】
これにより、不織布からなるイオン交換体616a,616bにあっては、電極614の長さ方向に沿った所定の位置に設けられた貫通孔(図示せず)を通過した超純水や液体が、この内部を自由に移動して、不織布内部の水分解触媒作用を有する活性点に容易に到達することができるが、この液体は、イオン交換膜からなるイオン交換体618a,618bで流れを遮断されて、このイオン交換体618a,618bが、下記の第2の隔壁を構成するようになっている。
【0162】
電源の陰極に接続された加工電極614aの両側には、一対の液体供給ノズル620が配置され、この液体供給ノズル620の内部には、長さ方向に沿って延びる流体流通路620aが設けられ、更に、長さ方向に沿った所定の位置に、上面に開口し流体流通路620aに連通する液体供給孔620cが設けられている。
【0163】
そして、加工電極614aと一対の液体供給ノズル620は、一対のタップバー622を介して一体化され、一対のインサートプレート624に挟持されて電極ベース626に固定されている。一方、給電電極614bは、その表面をイオン交換体618bで覆った状態で、一対の保持プレート628で挟持されて電極ベース626に固定されている。
【0164】
なお、イオン交換体616a,616bは、例えば、アニオン交換基またはカチオン交換基を付与した不織布で構成されているが、アニオン交換基を有するアニオン交換体とカチオン交換基を有するカチオン交換体とを重ね合わせたり、イオン交換体616a,616b自体にアニオン交換基とカチオン交換基の双方の交換基を付与するようにしたりしてもよく、また、素材の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系高分子、またはその他有機高分子が挙げられることは前述と同様である。また、電極部材608の電極614の素材として、電極に広く使用されている金属や金属化合物よりも、炭素、比較的不活性な貴金属、導電性酸化物または導電性セラミックスを使用することが好ましいことは前述と同様である。
【0165】
そして、各液体供給ノズル620の上面には、例えば弾性を有する樹脂等からなる隔壁630がその長さ方向の全長にわたって取付けられている。この隔壁630の肉厚は、基板保持部602で保持した基板Wを、電極部材608のイオン交換体618a,618bに接触乃至近接させて、この基板Wに電解加工を施す際に、この隔壁630の上面が基板保持部602で保持された基板Wに圧接する厚さに設定されている。
【0166】
これによって、電解加工を行う際に、電極部604と基板保持部602との間に、隔壁630で隔離された、加工電極614aと基板Wとの間に形成される流路632と、給電電極614bと基板との間に形成される流路634が並列に形成され、しかも、加工電極614aと基板Wとの間に形成される流路632は、イオン交換膜で構成された第2の隔壁としてのイオン交換体618aで2つの流路632a,632bに隔離され、給電電極614bと基板Wとの間に形成される流路634は、イオン交換膜で構成された第2の隔壁としてのイオン交換体618bで2つの流路634a,634bに隔離されるようになっている。
【0167】
この例では、容器610の内部は液体供給ノズル612から供給された超純水や純水等の液体で満たされ、一方、電極614に設けた貫通孔(図示せず)から加工電極614a及び給電電極614bの上部に配置された不織布からなるイオン交換体616a,616bに超純水や純水等の液体が供給された状態で電解加工が行われる。容器610の外側には、この容器610の外周壁610aをオーバフローした液体を排出するオーバフロー路636が設けられており、外周壁610aをオーバフローした液体は、オーバフロー路636を介して排液タンク(図示せず)に入るようになっている。
【0168】
この例では、加工電極の両側に、長手方向に沿った所定位置に液体供給孔を設けた液体供給ノズルを使用し、液体供給ノズルによる液体の供給を行うことで、加工電極614aと基板Wとの間に形成される流路632に沿って流れる流体と、給電電極614bと基板との間に形成される流路634に沿って流れる流体の流れをより確実に制御して、隔壁を越えて隣接する空間へ流れる流体の量を減らすようにすることができる。電極に沿った液体流れを各電極の長手方向に押し出すことにより形成してもよい。
【0169】
また、前述の例では電極にイオン交換体を装着した例を示しているが、電極の形状や加工に用いる液体は、特に限定されない。隣り合う電極の間に、接触部材や隔壁を設けるようにすればよい。即ち、電極の形状は、棒状のものに限られず、被加工物に対して複数の電極が対向するようにした任意の形状が選択される。電極にイオン交換体以外の通液性または含液性スクラブ部材を取付けるようにしてもよい。また、接触部材や隔壁を電極面よりも高くして、被加工物と電極が直接接しないようにすることで、電極の表面を露出させることができる。電極表面にイオン交換体を装着しない場合でも、被加工物と電極の間の流体の流れを仕切る第2の隔壁はあった方が好ましい。
【0170】
図40は、本発明の電解加工方法を行うのに適した更に他の電解加工装置の概要を示す。この電解加工装置は、基板を着脱自在に保持する基板保持部134と、この基板保持部134の直径の2倍以上の直径を有する回転(自転)自在な電極部136を上下に備えている。この電極部136の上面には、半径方向に放射状に延びる複数の加工電極152が設けられ、この各加工電極152を挟んだ両側に、直線状に延びる各一対の給電電極154が配置されている。そして、加工電極152の上面(表面)には、例えばイオン交換体からなる接触部材156が設けられ、給電電極154の上面(表面)にも、例えばイオン交換体からなる接触部材158が設けられている。
【0171】
この例では、加工電極152は、図示しないスリップリングを介して電源の陰極に、給電電極154は、図示しないスリップリングを介して電源の陽極にそれぞれ接続される。これは、例えば銅にあっては、陰極側に電解加工作用が生じるからであり、被加工材料によっては、陰極側が給電電極となり、陽極側が加工電極となるようにしてもよいことは前述と同様である。
【0172】
この例にあっては、基板保持部134を電極部136上に所定に位置に位置させて下降させ、この基板保持部134で保持した基板Wを、電極部136の上面に取付けた加工電極152及び給電電極154の表面を覆う接触部材156,158の表面に接触させる。この状態で、加工電極152と給電電極154との間に電源から所定の電圧を印加しつつ、基板保持部134と電極部136を回転(自転)させる。同時に、基板保持部134で保持した基板Wと接触部材156,158との間に、純水、好ましくは超純水等の供給し、これによって、基板Wの表面の電解加工が行われる。
【0173】
この電解加工装置によれば、電極(加工電極152及び給電電極154)と基板保持部134で保持した基板との相対速度を一定に保ちながら、単純な回転によって加工を行うことができ、しかも、電極(加工電極152及び給電電極154)と基板との相対速度を、例えばスクロール型と比較して、より速くすることができる。
【0174】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な形態の電解加工に適用でき、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の電解加工装置及び電解加工方法は、半導体ウェハ等の基板の表面に形成された導電性材料を加工したり、基板の表面に付着した不純物を除去したりするのに有利に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1A乃至1Cは、銅配線基板の一製造例を工程順に示す図である。
【図2】図2は、被加工物と加工電極との間の相対速度と加工速度との関係を示すグラフである。
【図3】図3Aは、被加工物と加工電極との間の相対速度が遅い場合におけるハイドロプレーニング現象の説明に付する図で、図3Bは、被加工物と加工電極との間の相対速度が速い場合におけるハイドロプレーニング現象の説明に付する図である。
【図4】図4Aは、被加工物と加工電極との間の相対速度が遅い場合における反応生成物の濃度変化の説明に付する図で、図4Bは、被加工物と加工電極との間の相対速度が速い場合における反応生成物の濃度変化の説明に付する図である。
【図5】図5は、加工量と段差の関係を示すグラフである。
【図6】図6A及び6Bは、被加工物と加工電極との間の相対速度が異なる場合における反応生成物の濃度変化の説明に付する図である。
【図7】図7Aは、被加工物と加工電極との間の相対速度が遅い場合におけるイオン交換体の変形の説明に付する図で、図7Bは、被加工物と加工電極との間の相対速度が速い場合におけるイオン交換体の変形の説明に付する図である。
【図8】図8は、加工電極及び給電電極を基板(被加工物)に近接させ、加工電極及び給電電極と基板(被加工物)との間に純水または電気伝導度が500μS/cm以下の液体を供給するようにしたときの本発明による電解加工の原理の説明に付する図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態の電解加工装置の概要図である。
【図10】図10は、ガス溶解速度及びガス溶解量と水圧の関係を示すグラフである。
【図11】図11は、ガス溶解量と水温の関係を示すグラフである。
【図12】図12は、初期溶存ガス量が異なる液体中に溶解するガスのガス溶解容量と水圧の関係を示すグラフである。
【図13】図13は、ガス溶解速度と液体中の既存ガス量の関係を示すグラフである。
【図14】図14は、本発明の他の実施の形態における電解加工装置を備えた基板処理装置の構成を示す平面図である。
【図15】図15は、図14に示す基板処理装置の電解加工装置を示す平面図である。
【図16】図16は、図15の縦断面図である。
【図17】図17Aは、図15の電解加工装置における自転防止機構を示す平面図、図17Bは、図17AのA−A線断面図である。
【図18】図18は、図15の電解加工装置における電極部を示す平面図である。
【図19】図19は、図18のB−B線断面図である。
【図20】図20は、図19の部分拡大図である。
【図21】図21Aは、異なる材料を成膜した基板の表面に電解加工を施したときに流れる電流と時間の関係を、図21Bは、同じく印加される電圧と時間の関係をそれぞれ示すグラフである。
【図22】図22は、電解加工中におけるイオン交換体と基板との接触状態の説明に付する断面図である。
【図23】図23A乃至23Cは、電解加工中に、電極部のスクロール運動に加えて基板保持部をY方向に所定の距離だけ移動させることで、加工量のバラツキをなくすことができる原理の説明に付する図である。
【図24】図24A乃至24Dは、電解加工中に、電極部のスクロール運動に加えて基板保持部をY方向に所定の距離だけ移動させることで、加工量のバラツキをなくすことができるようにした電解加工方法の説明に付する図である。
【図25】図25は、ガス溶解量とガス溶解時間との関係を示すグラフである。
【図26】図26は、ガスが溶解する溶媒(液体)の体積が異なる場合のガス溶解速度及びガス溶解量と水圧との関係を示すグラフである。
【図27】図27は、接触幅が異なる電極1〜4を使用して電解加工を行った時におけるピット数と相対速度の関係を示すグラフである。
【図28】図28は、接触幅が異なる電極1〜4を使用して電解加工を行った時におけるピット数と電極(イオン交換体)接触時間の関係を示すグラフである。
【図29】図29A乃至29Cは、スクロール運動の解析の説明に付する図である。
【図30】図30は、スクロール運動に同期して電源をON/OFF制御する時の回転角とON/OFF時の関係を示す図である。
【図31】図31は、本発明の他の実施の形態における電解加工方法を行う電解加工装置を備えた基板処理装置の構成を示す平面図である。
【図32】図32は、図31に示す基板処理装置の電解加工装置の縦断面図である。
【図33】図33は、本発明の電解加工方法における被加工物(基板)と加工電極(電極)との間の相対速度と加工時間との関係の一例を示すグラフである。
【図34】図34は、本発明の電解加工方法における被加工物(基板)と加工電極(電極)との間の相対速度と加工時間との関係の他の例を示すグラフである。
【図35】図35は、本発明の電解加工方法における被加工物(基板)と加工電極(電極)との間の相対速度と加工時間との関係の更に他の例を示すグラフである。
【図36】図36は、本発明の電解加工方法における被加工物(基板)と加工電極(電極)との間の相対速度と加工時間との関係の更に他の例を示すグラフである。
【図37】図37は、本発明の電解加工方法における被加工物(基板)と加工電極(電極)との間の相対速度と加工時間との関係の更に他の例を示すグラフである。
【図38】図38は、本発明の電解加工方法を行うのに適した他の電解加工装置の要部を示す縦断面図である。
【図39】図39は、図38の要部を拡大して示す要部拡大図である。
【図40】図40は、本発明の電解加工方法を行うのに適した更に他の電解加工装置の概要を示す平面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工する加工電極と、
被加工物に給電する給電電極と、
前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加する電源と、
前記加工電極及び前記給電電極を内部に収納した耐圧容器と、
前記耐圧容器内に高圧液体を供給する高圧液体供給系を有することを特徴とする電解加工装置。
【請求項2】
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項1記載の電解加工装置。
【請求項3】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項2記載の電解加工装置。
【請求項4】
前記耐圧容器内に供給される高圧液体の圧力は、2kgf/cm2以上であることを特徴とする請求項2記載の電解加工装置。
【請求項5】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることを特徴とする請求項2記載の電解加工装置。
【請求項6】
前記給電電極と前記加工電極を有する電極部と、前記電極部と前記被加工物との間及び/または前記電極部の前記加工電極と前記給電電極との間に配置される接触部材を更に有すること特徴とする請求項1記載の電解加工装置。
【請求項7】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項6記載の電解加工装置。
【請求項8】
前記耐圧容器内に供給される高圧液体の圧力は、2kgf/cm2以上であることを特徴とする請求項1記載の電解加工装置。
【請求項9】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることを特徴とする請求項6記載の電解加工装置。
【請求項10】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることを特徴とする請求項1記載の電解加工装置。
【請求項11】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体中の溶存気体を脱気するための脱気装置が備えられていることを特徴とする請求項1記載の電解加工装置。
【請求項12】
被加工物を加工する加工電極と、
被加工物に給電する給電電極と、
前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加する電源と、
記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に液体を供給する液体供給系を有し、
前記液体供給系には、前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に供給される前記液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることを特徴とする電解加工装置。
【請求項13】
前記加工電極と前記被加工物の間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項12記載の電解加工装置。
【請求項14】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項13記載の電解加工装置。
【請求項15】
前記熱交換器は、液温が25℃以下となるように前記被加工物と前記接触部材との間に供給される前記液体を調節することを特徴とする請求項13記載の電解加工装置。
【請求項16】
前記給電電極と前記加工電極を有する電極部と、前記電極部と前記被加工物との間及び/または前記電極部の前記加工電極と前記給電電極との間に配置される接触部材を更に有すること特徴とする請求項12記載の電解加工装置。
【請求項17】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項16記載の電解加工装置。
【請求項18】
前記熱交換器は、液温が25℃以下となるように前記被加工物と前記接触部材との間に供給される前記液体を調節することを特徴とする請求項16記載の電解加工装置。
【請求項19】
電極と該電極の表面を覆うイオン交換体とを有する電極部材を有する電極部と、
被加工物を保持し、前記電極部材のイオン交換体に被加工物を接触させる保持部と、
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物との間に液体を供給する液体供給系と、
前記電極部と前記被加工物との間に相対運動を生じさせる駆動機構と、
前記電極部の各電極部材の電極に接続される電源とを備え、
被加工物の被加工面のある一点の前記イオン交換体に対する該イオン交換体との連続接触時間は、10msec以下であることを特徴とする電解加工装置。
【請求項20】
前記駆動機構は、前記電極部と前記被加工物とを0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させるように構成されていることを特徴とする請求項19記載の電解加工装置。
【請求項21】
前記電極を覆うイオン交換体は、前記保持部で保持した被加工物と0.2〜1.5mmの接触幅で接触するように構成されていることを特徴とする請求項19記載の電解加工装置。
【請求項22】
前記駆動機構は、前記電極部と前記被加工物とを0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させるように構成されていることを特徴とする請求項21記載の電解加工装置。
【請求項23】
電極と該電極の表面を覆うイオン交換体とを有する電極部材を有する電極部と、
被加工物を保持し、前記電極部材のイオン交換体に被加工物を接触させる保持部と、
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物との間に液体を供給する液体供給系と、
前記電極部と前記被加工物との間に相対運動を生じさせる駆動機構と、
前記電極部の各電極部材の電極に接続される電源とを備え、
前記電源は、前記電極部と前記被加工物との間の相対運動に同期してON/OFFまたは正/負制御されることを特徴とする電解加工装置。
【請求項24】
前記電源は、前記電極部の電極と前記被加工物との間における該電極部の幅方向の相対速度が0.2m/sec以上の時にONとなるようにON/OFF制御されることを特徴とする請求項23記載の電解加工装置。
【請求項25】
電極部に電圧を印加し、高圧液体を介して被加工物の加工を行うことを特徴とする電解加工方法。
【請求項26】
前記高圧液体は、前記電極部と前記被加工物との間に供給されることを特徴とする請求項25記載の電解加工方法。
【請求項27】
前記被加工物と前記電極部を前記高圧液体に浸漬させつつ被加工物の加工を行うことを特徴とする請求項25記載の電解加工方法。
【請求項28】
前記電極部は、被加工物を加工する加工電極と前記被加工物に給電する給電電極とからなることを特徴とする請求項25記載の電解加工方法。
【請求項29】
前記高圧液体の圧力は、2kgf/cm2以上であることを特徴とする請求項25記載の電解加工方法。
【請求項30】
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項25記載の電解加工方法。
【請求項31】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項30記載の電解加工方法。
【請求項32】
被加工物を加工する加工電極と前記被加工物に給電する給電電極とからなる電極部に電圧を印加し、高圧液体を介して被加工物の加工を行うことを特徴とする電解加工方法。
【請求項33】
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項32記載の電解加工方法。
【請求項34】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項33記載の電解加工方法。
【請求項35】
被加工物に近接または接触自在な加工電極と被加工物に給電する給電電極とを用意し、
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に温度を調整した液体を供給しつつ、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加して被加工物の加工を行うことを特徴とする電解加工方法。
【請求項36】
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間にイオン交換体を配置したことを特徴とする請求項35記載の電解加工方法。
【請求項37】
被加工物に近接または接触自在な加工電極と被加工物に給電する給電電極とを用意し、
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に溶存気体を脱気した液体を供給しつつ、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加して被加工物の加工を行うことを特徴とする電解加工方法。
【請求項38】
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間にイオン交換体を配置したことを特徴とする請求項37記載の電解加工方法。
【請求項39】
電極の表面を覆うイオン交換体と保持部で保持した被加工物とを、被加工物の被加工面のある一点の前記イオン交換体に対する該イオン交換体との接触時間が10msec以下となるように、互いに接触させながら相対運動させ、液体の存在下で、前記電極に電圧を印加して被加工物を加工することを特徴とする電解加工方法。
【請求項40】
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物とを、0.2〜1.5mmの接触幅で互いに接触させることを特徴とする請求項39記載の電解加工方法。
【請求項41】
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物とを互いに線状に接触させながら0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させることを特徴とする請求項39記載の電解加工方法。
【請求項42】
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物とを互いに線状に接触させながら0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させることを特徴とする請求項40記載の電解加工方法。
【請求項43】
平行に配置した複数の電極の表面を覆うイオン交換体と保持部で保持した被加工物とを互いに接触させながら相対運動させ、液体の存在下で、前記相対運動に同期してON/OFF制御された電圧を前記電極に印加して被加工物を加工することを特徴とする電解加工方法。
【請求項44】
前記液体は、純水、超純水または電気伝導度が500μs/cm以下の液体であることを特徴とする請求項43記載の電解加工方法。
【請求項45】
被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では速く、加工後期では遅くすることを特徴とする電解加工方法。
【請求項46】
被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が600nm以下に達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を遅くすることを特徴とする請求項45記載の電解加工方法。
【請求項47】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を段階的に変化させることを特徴とする請求項45記載の電解加工方法。
【請求項48】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を連続的に変化させることを特徴とする請求項45記載の電解加工方法。
【請求項49】
前記被加工物と前記加工電極との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項45記載の電解加工方法。
【請求項50】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項49記載の電解加工方法。
【請求項51】
前記被加工物に給電する給電電極と、この給電電極と被加工物との間に配置される接触部材を更に有することを特徴とする請求項45記載の電解加工方法。
【請求項52】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項51記載の電解加工方法。
【請求項53】
被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では速く、加工中期では遅く、加工後期では再び前記加工中期より速くすることを特徴とする電解加工方法。
【請求項54】
被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が600nm以下に達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を遅くし、薄膜の残膜厚が50〜300nmのときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を再び速くすることを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項55】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を段階的に変化させることを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項56】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を連続的に変化させることを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項57】
前記被加工物と前記加工電極との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項58】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項57記載の電解加工方法。
【請求項59】
前記被加工物に給電する給電電極と、この給電電極と被加工物との間に配置される接触部材を更に有することを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項60】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項61】
被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では遅く、加工後期では速くすることを特徴とする電解加工方法。
【請求項62】
被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が50〜300nmに達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を速くすることを特徴とする請求項61記載の電解加工方法。
【請求項63】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を段階的に変化させることを特徴とする請求項61記載の電解加工方法。
【請求項64】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を連続的に変化させることを特徴とする請求項61記載の電解加工方法。
【請求項65】
前記被加工物と前記加工電極との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項61記載の電解加工方法。
【請求項66】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項65記載の電解加工方法。
【請求項67】
前記被加工物に給電する給電電極と、この給電電極と被加工物との間に配置される接触部材を更に有することを特徴とする請求項61記載の電解加工方法。
【請求項68】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項67記載の電解加工方法。
【請求項69】
被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、被加工物及び/または加工電極が所定の周期運動を行うことにより、被加工物と加工電極との間に相対運動を起こさせ加工を行う電解加工方法であって、
前記加工の途中で、前記被加工物及び/または加工電極の運動の周期を変えることを特徴とする電解加工方法。
【請求項1】
被加工物を加工する加工電極と、
被加工物に給電する給電電極と、
前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加する電源と、
前記加工電極及び前記給電電極を内部に収納した耐圧容器と、
前記耐圧容器内に高圧液体を供給する高圧液体供給系を有することを特徴とする電解加工装置。
【請求項2】
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項1記載の電解加工装置。
【請求項3】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項2記載の電解加工装置。
【請求項4】
前記耐圧容器内に供給される高圧液体の圧力は、2kgf/cm2以上であることを特徴とする請求項2記載の電解加工装置。
【請求項5】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることを特徴とする請求項2記載の電解加工装置。
【請求項6】
前記給電電極と前記加工電極を有する電極部と、前記電極部と前記被加工物との間及び/または前記電極部の前記加工電極と前記給電電極との間に配置される接触部材を更に有すること特徴とする請求項1記載の電解加工装置。
【請求項7】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項6記載の電解加工装置。
【請求項8】
前記耐圧容器内に供給される高圧液体の圧力は、2kgf/cm2以上であることを特徴とする請求項1記載の電解加工装置。
【請求項9】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることを特徴とする請求項6記載の電解加工装置。
【請求項10】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることを特徴とする請求項1記載の電解加工装置。
【請求項11】
前記高圧液体供給系には、前記耐圧容器内に供給される高圧液体中の溶存気体を脱気するための脱気装置が備えられていることを特徴とする請求項1記載の電解加工装置。
【請求項12】
被加工物を加工する加工電極と、
被加工物に給電する給電電極と、
前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加する電源と、
記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に液体を供給する液体供給系を有し、
前記液体供給系には、前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に供給される前記液体の温度を調節する熱交換器が備えられていることを特徴とする電解加工装置。
【請求項13】
前記加工電極と前記被加工物の間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項12記載の電解加工装置。
【請求項14】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項13記載の電解加工装置。
【請求項15】
前記熱交換器は、液温が25℃以下となるように前記被加工物と前記接触部材との間に供給される前記液体を調節することを特徴とする請求項13記載の電解加工装置。
【請求項16】
前記給電電極と前記加工電極を有する電極部と、前記電極部と前記被加工物との間及び/または前記電極部の前記加工電極と前記給電電極との間に配置される接触部材を更に有すること特徴とする請求項12記載の電解加工装置。
【請求項17】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項16記載の電解加工装置。
【請求項18】
前記熱交換器は、液温が25℃以下となるように前記被加工物と前記接触部材との間に供給される前記液体を調節することを特徴とする請求項16記載の電解加工装置。
【請求項19】
電極と該電極の表面を覆うイオン交換体とを有する電極部材を有する電極部と、
被加工物を保持し、前記電極部材のイオン交換体に被加工物を接触させる保持部と、
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物との間に液体を供給する液体供給系と、
前記電極部と前記被加工物との間に相対運動を生じさせる駆動機構と、
前記電極部の各電極部材の電極に接続される電源とを備え、
被加工物の被加工面のある一点の前記イオン交換体に対する該イオン交換体との連続接触時間は、10msec以下であることを特徴とする電解加工装置。
【請求項20】
前記駆動機構は、前記電極部と前記被加工物とを0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させるように構成されていることを特徴とする請求項19記載の電解加工装置。
【請求項21】
前記電極を覆うイオン交換体は、前記保持部で保持した被加工物と0.2〜1.5mmの接触幅で接触するように構成されていることを特徴とする請求項19記載の電解加工装置。
【請求項22】
前記駆動機構は、前記電極部と前記被加工物とを0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させるように構成されていることを特徴とする請求項21記載の電解加工装置。
【請求項23】
電極と該電極の表面を覆うイオン交換体とを有する電極部材を有する電極部と、
被加工物を保持し、前記電極部材のイオン交換体に被加工物を接触させる保持部と、
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物との間に液体を供給する液体供給系と、
前記電極部と前記被加工物との間に相対運動を生じさせる駆動機構と、
前記電極部の各電極部材の電極に接続される電源とを備え、
前記電源は、前記電極部と前記被加工物との間の相対運動に同期してON/OFFまたは正/負制御されることを特徴とする電解加工装置。
【請求項24】
前記電源は、前記電極部の電極と前記被加工物との間における該電極部の幅方向の相対速度が0.2m/sec以上の時にONとなるようにON/OFF制御されることを特徴とする請求項23記載の電解加工装置。
【請求項25】
電極部に電圧を印加し、高圧液体を介して被加工物の加工を行うことを特徴とする電解加工方法。
【請求項26】
前記高圧液体は、前記電極部と前記被加工物との間に供給されることを特徴とする請求項25記載の電解加工方法。
【請求項27】
前記被加工物と前記電極部を前記高圧液体に浸漬させつつ被加工物の加工を行うことを特徴とする請求項25記載の電解加工方法。
【請求項28】
前記電極部は、被加工物を加工する加工電極と前記被加工物に給電する給電電極とからなることを特徴とする請求項25記載の電解加工方法。
【請求項29】
前記高圧液体の圧力は、2kgf/cm2以上であることを特徴とする請求項25記載の電解加工方法。
【請求項30】
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項25記載の電解加工方法。
【請求項31】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項30記載の電解加工方法。
【請求項32】
被加工物を加工する加工電極と前記被加工物に給電する給電電極とからなる電極部に電圧を印加し、高圧液体を介して被加工物の加工を行うことを特徴とする電解加工方法。
【請求項33】
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項32記載の電解加工方法。
【請求項34】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項33記載の電解加工方法。
【請求項35】
被加工物に近接または接触自在な加工電極と被加工物に給電する給電電極とを用意し、
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に温度を調整した液体を供給しつつ、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加して被加工物の加工を行うことを特徴とする電解加工方法。
【請求項36】
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間にイオン交換体を配置したことを特徴とする請求項35記載の電解加工方法。
【請求項37】
被加工物に近接または接触自在な加工電極と被加工物に給電する給電電極とを用意し、
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間に溶存気体を脱気した液体を供給しつつ、前記加工電極と前記給電電極との間に電圧を印加して被加工物の加工を行うことを特徴とする電解加工方法。
【請求項38】
前記被加工物と前記加工電極または前記給電電極の少なくとも一方との間にイオン交換体を配置したことを特徴とする請求項37記載の電解加工方法。
【請求項39】
電極の表面を覆うイオン交換体と保持部で保持した被加工物とを、被加工物の被加工面のある一点の前記イオン交換体に対する該イオン交換体との接触時間が10msec以下となるように、互いに接触させながら相対運動させ、液体の存在下で、前記電極に電圧を印加して被加工物を加工することを特徴とする電解加工方法。
【請求項40】
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物とを、0.2〜1.5mmの接触幅で互いに接触させることを特徴とする請求項39記載の電解加工方法。
【請求項41】
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物とを互いに線状に接触させながら0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させることを特徴とする請求項39記載の電解加工方法。
【請求項42】
前記イオン交換体と前記保持部で保持した被加工物とを互いに線状に接触させながら0.2m/sec以上の相対速度で相対運動させることを特徴とする請求項40記載の電解加工方法。
【請求項43】
平行に配置した複数の電極の表面を覆うイオン交換体と保持部で保持した被加工物とを互いに接触させながら相対運動させ、液体の存在下で、前記相対運動に同期してON/OFF制御された電圧を前記電極に印加して被加工物を加工することを特徴とする電解加工方法。
【請求項44】
前記液体は、純水、超純水または電気伝導度が500μs/cm以下の液体であることを特徴とする請求項43記載の電解加工方法。
【請求項45】
被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では速く、加工後期では遅くすることを特徴とする電解加工方法。
【請求項46】
被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が600nm以下に達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を遅くすることを特徴とする請求項45記載の電解加工方法。
【請求項47】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を段階的に変化させることを特徴とする請求項45記載の電解加工方法。
【請求項48】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を連続的に変化させることを特徴とする請求項45記載の電解加工方法。
【請求項49】
前記被加工物と前記加工電極との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項45記載の電解加工方法。
【請求項50】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項49記載の電解加工方法。
【請求項51】
前記被加工物に給電する給電電極と、この給電電極と被加工物との間に配置される接触部材を更に有することを特徴とする請求項45記載の電解加工方法。
【請求項52】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項51記載の電解加工方法。
【請求項53】
被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では速く、加工中期では遅く、加工後期では再び前記加工中期より速くすることを特徴とする電解加工方法。
【請求項54】
被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が600nm以下に達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を遅くし、薄膜の残膜厚が50〜300nmのときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を再び速くすることを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項55】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を段階的に変化させることを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項56】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を連続的に変化させることを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項57】
前記被加工物と前記加工電極との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項58】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項57記載の電解加工方法。
【請求項59】
前記被加工物に給電する給電電極と、この給電電極と被加工物との間に配置される接触部材を更に有することを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項60】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項53記載の電解加工方法。
【請求項61】
被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、両者を相対運動させて加工を行う電解加工方法であって、
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を加工初期では遅く、加工後期では速くすることを特徴とする電解加工方法。
【請求項62】
被加工物表面の加工に付する薄膜の残膜厚が50〜300nmに達したときに、前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を速くすることを特徴とする請求項61記載の電解加工方法。
【請求項63】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を段階的に変化させることを特徴とする請求項61記載の電解加工方法。
【請求項64】
前記被加工物と前記加工電極との間の相対速度を連続的に変化させることを特徴とする請求項61記載の電解加工方法。
【請求項65】
前記被加工物と前記加工電極との間に接触部材を配置したことを特徴とする請求項61記載の電解加工方法。
【請求項66】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項65記載の電解加工方法。
【請求項67】
前記被加工物に給電する給電電極と、この給電電極と被加工物との間に配置される接触部材を更に有することを特徴とする請求項61記載の電解加工方法。
【請求項68】
前記接触部材は、イオン交換体または研磨パッドであることを特徴とする請求項67記載の電解加工方法。
【請求項69】
被加工物と加工電極とを互いに近接または接触させ、液体の存在下で、被加工物と加工電極との間に電圧を印加しつつ、被加工物及び/または加工電極が所定の周期運動を行うことにより、被加工物と加工電極との間に相対運動を起こさせ加工を行う電解加工方法であって、
前記加工の途中で、前記被加工物及び/または加工電極の運動の周期を変えることを特徴とする電解加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
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【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【公表番号】特表2007−528933(P2007−528933A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519228(P2006−519228)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010362
【国際公開番号】WO2005/006425
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010362
【国際公開番号】WO2005/006425
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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