静電チャックおよび基板搬送用トレー
【課題】 静電チャックと基板との間にトレーを介在させることなく、静電チャックに複数枚の基板を設置できる静電チャックを提供する。
【解決手段】 本発明の静電チャック10は、そのチャック台13の上面に、複数のチャック領域16を備えている。各チャック領域16は、チャック台13の上面に複数突出形成された島状部17の各々の上面に形成されている。各島状部17の内部には、基板吸着用の双極型の電極層と、基板冷却用ガスの流出孔18がそれぞれ設けられている。この構成により、複数の基板が載置されたトレー上面にカバーを取り付けて基板をトレー40に保持する作業が不要となるので、作業性および生産性が向上し、基板の冷却効率も高められる。
【解決手段】 本発明の静電チャック10は、そのチャック台13の上面に、複数のチャック領域16を備えている。各チャック領域16は、チャック台13の上面に複数突出形成された島状部17の各々の上面に形成されている。各島状部17の内部には、基板吸着用の双極型の電極層と、基板冷却用ガスの流出孔18がそれぞれ設けられている。この構成により、複数の基板が載置されたトレー上面にカバーを取り付けて基板をトレー40に保持する作業が不要となるので、作業性および生産性が向上し、基板の冷却効率も高められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の基板を同時に吸着できる静電チャックおよびこれに用いられる基板搬送用トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウェーハ等の被処理基板を真空処理するに際しては、当該基板を真空槽内に固定するのに静電チャックが用いられている。この種の静電チャックは、基板を支持する支持台の上に誘電層が設けられており、支持台と基板との間に電圧が印加されることにより発生するクーロン力によって基板を吸着する機構を備えている。
【0003】
しかし、従来の静電チャックは、その上面のチャック面に吸着できる基板は1枚のみであるため、複数枚の基板を同時に吸着保持して処理するのは不可能な構成であった。
【0004】
そこで、本発明者らは、複数枚の基板を載せたトレーを静電チャックで吸着し、このトレーを介して各基板を静電チャック上に固定して、各基板を同時に処理するようにしていた。このトレーの構成を図11及び図12を参照して説明する。図11は当該トレーの平面図、図12は静電チャック6に吸着されたトレー1の要部側断面図である。
【0005】
トレー1は円板状で、その上面に5枚の基板Wが載置されている。図示する基板Wは矩形状であるが、勿論円形状であってもよい。トレー1は、例えばアルミニウム合金製で、その上面には基板Wを位置決め保持するためのカバー2が複数本のネジ部材3を介して取り付けられている。
【0006】
カバー2は石英等の非導電性材料で形成されているとともに、このカバー2には、基板Wの被処理面(上面)を外部へ露出させるための開口2aが、各基板Wの収容位置に対応して複数(本例では5個)形成されている。
【0007】
基板Wは、トレー1の基板収容部4内に収容されているとともに、基板Wの周縁部が、カバー2の開口2aの周縁に突出形成された保持爪2bと、基板収容部4の内部周縁に沿って配置された環状のシール部材5との間において機械的にクランプされている。なお、基板収容部4の底部には、トレー1と静電チャック6上面との間に導入された冷却用ガス(例えばヘリウム)を基板収容部4内に導くための流路7が形成されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−332091号公報
【特許文献2】特開平10−1772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さて、上述した従来の構成では、静電チャック6に対して複数枚の基板Wを載置するのに、これら複数枚の基板Wをトレー1の基板収容部4に移載した後、トレー1の上面に対してカバー2を取り付けて各基板Wを保持し、このトレー1を静電チャック6に吸着させることにより、真空槽内における複数の基板Wの一括処理を可能としている。
【0010】
しかしながら、上記構成では、トレー1に対する基板Wの移載後、カバー2を複数本のネジ部材3を用いて取り付ける必要があるため、作業の煩雑性が増すという問題がある。また、カバー2の取り付け、取り外し作業に時間が費やされる結果、生産性にも悪影響を与えるという問題がある。
【0011】
また、上述した従来の構成においては、基板Wの冷却効率を高めるために、トレー1をアルミニウム等の伝熱性の高い材料で形成してはいるものの、十分な冷却作用が得られているとは言えない。
【0012】
更に、基板Wにプラズマ処理を施す場合にあっては、トレー1に取り付けられたカバー2の影響でプラズマ分布が変動することにより、処理後における基板Wの面内均一性が損なわれるという問題もある。
【0013】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、作業性および生産性を損なうことなく、複数枚の基板を同時に吸着でき、更には、基板の冷却効率および処理均一性を高められる静電チャックおよびこれに用いられる基板搬送用トレーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するに当たり、本発明の静電チャックは、その上面に、基板を静電的に吸着するチャック領域を複数形成することにより、複数枚の基板を同時に吸着できるようにしている。
【0015】
これにより、トレーを介さずに複数枚の基板を同時に吸着することが可能となるので、トレーに対する基板の面倒な保持作業を廃止でき、これにより作業性および生産性を向上させることができる。また、基板を静電チャックで直接吸着できるので、トレーを介して基板を保持する従来の構成に比べて、基板の冷却効率を高めることができる。更に、基板保持用のカバーが不要となるので、例えばプラズマ処理時における基板面内均一性が高められる。
【0016】
本発明において、各チャック領域は、静電チャック上面に突設された複数の島状部の各々の上面部に形成されている。この構成により、後述する基板搬送用トレーを用いて、当該静電チャックに対する複数枚の基板の同時搬送が可能となる。
【0017】
すなわち、本発明の基板搬送用トレーは、上面に基板吸着用のチャック領域が島状に複数突出形成された静電チャックに対して複数枚の基板を搬送するための基板搬送用トレーであって、静電チャックの上面に載置されるトレー本体と、このトレー本体の面内に形成され前記複数のチャック領域をそれぞれ収容できる大きさに形成された複数の開口と、これら複数の開口の各々の周縁に形成され前記基板の下面周縁を支持する基板支持部とを有し、前記トレー本体の下面に対する前記基板支持部の高さが、前記静電チャック上面に対する前記チャック領域の高さよりも小さく形成されていることを特徴とする。
【0018】
静電チャックに対して複数枚の基板を搬送するには、トレーの複数の開口に形成された基板支持部において基板下面周縁を支持した状態で、当該トレーを静電チャック上面に載置する。このとき、基板支持部の高さが島状部上面の各チャック領域よりも低くなるように形成されているので、静電チャック上面にトレーを載せると同時に、各基板を基板支持部から各チャック領域へ容易に移載できる。また、処理終了後は、静電チャック上面に対してトレーを浮上させることによって、各基板を各チャック領域からトレーの基板支持部へ容易に移載できる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明の静電チャックによれば、トレーを介さずに複数枚の基板を同時に吸着することができるので、トレーに対する基板の保持作業を不要として作業性を改善することができるとともに、生産性の向上を図ることができる。
【0020】
また、基板を静電チャックで直接吸着できるので、トレーを介して基板を保持する従来の構成に比べて、基板の冷却効率を高めることができる。また、基板保持用のカバーが不要となるので、例えばプラズマ処理時における基板面内均一性を高めることができる。
【0021】
一方、本発明の基板搬送用トレーによれば、複数枚の基板を静電チャック上面の各チャック領域に対して一括的に搬送および搬出することが可能となり、基板設置作業を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1および図2は本発明の実施の形態による静電チャックの構成を示している。ここで図1は静電チャック10の側断面図、図2はその平面図を示している。
【0024】
静電チャック10は、真空槽11の底部に気密に設置された本体12と、この本体12の上部に取り付けられたチャック台13とで構成されている。本実施の形態において、真空槽11は、プラズマエッチング装置の真空槽を構成している。なお、プラズマCVD装置等の他の真空処理装置が適用されてもよい。
【0025】
真空槽11はプロセス室26を形成するとともに、プロセスガスの供給管27、プラズマ形成用の高周波コイル、永久磁石等でなるプラズマ形成手段28、バイアス用高周波電源29等を備え、プロセス室26に導入されたガスをプラズマ化し、静電チャック10上の基板(図示略)に対して所定のエッチング処理を行うように構成されている。なお図示せずとも、プロセス室26を所定の真空度に排気する真空ポンプが真空槽11に接続されている。
【0026】
静電チャック10の本体12は、アルミニウム合金等の金属材料で構成されており、その内部には、冷却水循環用の通路14や、チャック台13に吸着された基板を冷却するためのガス(例えばヘリウム)が導入されるガス流通路15が設けられている。この冷却用ガスは、本体12の下部に接続された導入管30を介して装置外部から供給される。本体12とチャック台13とは、例えばシリコーン樹脂を主剤とする接着剤等によって一体的に接合されている。
【0027】
チャック台13は、主としてセラミック等の誘電材料でなる平板状に形成されており、特に本実施の形態では、セラミックシートの積層体として構成されている。このチャック台13の上面には、図2に示したように、基板を吸着するチャック領域16(16A〜16E)が複数形成されている。各チャック領域16は、互いに分離独立して配置されており、図示の例では中心部に1つのチャック領域16Aが配置され、その周囲に90度間隔で4つのチャック領域16B,16C,16D及び16Eがそれぞれ配置されている。
【0028】
図3は、チャック台13の側断面図である。各チャック領域16は、チャック台13の上面に突設された複数の島状部17の上面にそれぞれ形成されている。この島状部17の上面(チャック領域16)は、1枚の基板を載置できる大きさに形成されている。
【0029】
特に本実施の形態では、図9Aに示すように、チャック領域16は、吸着する基板Wよりも小さな面積で形成されている。一例を挙げると、縦×横の長さが基板Wでは50mm×50mmであるのに対し、チャック領域16では45mm×45mmとされている。なお、島状部17の上面は、基板Wの平面形状に対応するように四角形状に形成されているが、例えば円形状等のように他の形状に形成されていてもよい(図10)。
【0030】
なお、島状部17の高さは特に限定されないが、後述するように、各チャック領域16へ基板を搬送するトレーとの関係で調整される。
【0031】
また、各島状部17の上面(チャック領域16)には、本体12に導入された冷却用ガスを基板下面に向けて流出させる複数の流出孔18がそれぞれ形成されている。これら各流出孔18は、島状部17の内部に形成された流路19を介して、本体12のガス流通路18と連通している。流路19は、図4に示すように平面的に見て、田の字形状を有し、その中心部ならびに四辺の隅部および中点部に対応する位置の計9カ所に、流出孔18がそれぞれ設けられている。
【0032】
流路19の形成層と島状部17の最上層との間には、図5に示すように電極層20a,20bが形成されている。これら電極層20a,20bは、一対の櫛形電極構造を有し、一方の櫛歯が他方の櫛歯間に位置するように所定の間隙をおいて互い違いに配置され、一方側の電極層20aには正電位が印加され、他方側の電極層20bには負電位が印加されるようになっている。
【0033】
なお、電極層20a,20bにおいて、上記流路19に連通する流出孔18の形成部位には、これら流出孔18を覆わないように円形状あるいは円弧状のニゲ21がそれぞれ設けられている。電極層20a,20bは、その上面に積層される誘電層を介して基板の下面に対向するようになっている。
【0034】
上記構成の電極層20a,20bは各々の島状部17に対して同様に設けられている。図6に示すように本実施の形態では、一方側の電極層20a,20a,…の各々は、配線22aを介して正電位供給源23aに共通に接続されており、また、他方側の電極層20b,20b,…の各々は、配線22bを介して負電位供給源23bに共通に接続されている。
【0035】
各配線22a,22bは、チャック台13の内部に設けられており、また、正電位供給源23aおよび負電位供給源23bは、本体12の下部に取り付けられた電位供給源31a,31b(図1)にそれぞれ接続されている。なお、配線22a,22bは、各島状部17ごとに独立して設けられていても良い。
【0036】
更にチャック台13には、リフトピン33(図9B)が上方へ向かって突出するリフトピン進入孔24(図2)が設けられている。図2に示したように、リフトピン進入孔24は複数形成されており、チャック台13の中心位置のチャック領域16Aを形成する島状部17の四隅外方側に計4カ所配置されている。
【0037】
なお、リフトピン33は本体12の内部に設けられ、後述するトレー40を図9Bに示すようにチャック台13の上面から浮上させるための突き上げピンとして構成されており、本体12の下部に取り付けられたリフトピン駆動部32の駆動により上下方向へ進退移動する。
【0038】
次に、トレー40の詳細について図7〜図9を参照して説明する。ここで、図7はトレー40の平面図、図8はトレー40の要部断面図、図9A,Bはトレー40と静電チャック10との関係を示す要部側断面図である。
【0039】
トレー40は、トレー本体41と、このトレー本体41の面内に形成された複数の開口42と、これら開口部42の各々の周縁に形成された基板支持部43とを備えている。トレー本体41は、本実施の形態では石英製とされるが、これ以外にも、シリコン炭化物(SiC)やシリコン窒化物(SiN)、アルミナ(Al2O3)、更にはアルミニウム等の金属材料で形成されてもよい。
【0040】
各開口42は、チャック台13の複数の島状部17の各々の形成位置に対応するようにトレー本体41に形成されている。これらの各開口42は、トレー本体41がチャック台13の上面に載置された際、島状部17をそれぞれ収容できる程度の大きさに形成されている(図9A)。本実施の形態では、開口42の縦×横の長さが、例えば47mm×47mmとされている。なお、各開口42は、基板Wの平面形状と対応する形状に形成されているが、勿論、他の形状とされてもよい。
【0041】
基板支持部43は、開口42内に収容された基板Wの下面周縁を支持するように、開口42の周縁に形成された段部44(図8)の上面に設けられている。本実施の形態では、図7に示すように基板支持部43を開口42の周縁全域に形成しているが、これに代えて、互いに対向関係にある一対の周縁部にのみ形成されていてもよい。
【0042】
また、トレー本体41の下面に対する基板支持部43の高さは、チャック台13の上面に対するチャック領域16の高さ(すなわち島状部17の高さ)よりも低く形成されている。これにより、基板支持部43で基板Wを支持した状態でトレー40がチャック台13の上面に載置されたときは、各開口42内に島状部17が各々進入し、図9Aに示したように、基板支持部43に代わって島状部17上面のチャック領域16が基板Wを支持することになる。
【0043】
なお、基板支持部43による基板Wの支持高さは、島状部17の高さに関連して設定され、開口42周縁に形成される段部44の高さによって調整される。本実施の形態では、島状部17の高さが1.7mmであるのに対し、段部44の高さは1.2mmとされている。
【0044】
また、チャック台13にトレー40が載置され、島状部17上面で基板Wが支持されている状態において、基板Wの上面とトレー40の上面とが略同一の高さとなるように、トレー40の厚さが設定されている。本例では、トレー40の厚さを2mmとしている。
【0045】
次に、以上のように構成される本実施の形態の作用について説明する。ここでは、基板Wとして、被処理面に所定のレジストパターンが形成された四角形状の石英基板が用いられ、真空槽11の内部において基板表面を所定形状にエッチングするプロセスを例に挙げて説明する。
【0046】
まず、真空槽11の外部において、トレー40の各開口42上に、基板Wがその被処理面を上方に向けてそれぞれ1枚ずつ載置される。各基板Wは、開口42周縁の基板支持部43上にその下面周縁が支持される。
【0047】
ここで、基板Wのトレー40への載置作業は、手作業またはロボットを用いることができる。なお、ロボットを用いた自動基板移載システムにおいては、基板Wをその被処理面に非接触で搬送できるベルヌーイチャック機構を用いるのが好適である。
【0048】
次に、基板Wが載せられたトレー40を真空槽11の内部に搬送し、静電チャック10のチャック台13上に載置する。このとき、トレー40の各開口42に対応して、その直下方に、チャック台13上面の島状部17がそれぞれ位置しており、トレー40の下降に伴って、島状部17が開口42内にそれぞれ進入し、開口42周縁の基板支持部43から島状部17上面のチャック領域16(16A〜16E)へ基板Wがそれぞれ載せ替えられる。この操作は、チャック台13に対するトレー40の載置作業に連動して自動的に行われる。
【0049】
なお、トレー40から各チャック領域16への基板Wの載せ替えには、チャック台13に対するトレー40の高精度な位置合わせ作業が必要とされるが、本実施の形態では、チャック台13の周縁に形成した切欠き13A(図2)と、トレー40の周縁に形成した切欠き40A(図7)とを基準とした両者の位置合わせが行われるようにしている。
【0050】
以上のようにして、チャック台13に対して複数枚の基板Wが同時に載置される。そして、チャック台13上面の各チャック領域16において、各々の電極層20a,20bに電位供給線31a(31b)を介して所定の吸着用電位が印加される(本例では±1.1kV〜1.4kV)。これにより、各基板Wが、それぞれのチャック領域16A〜16Eに静電的に吸着される。なお本実施の形態では、基板Wの下面に予めアルミニウムめっき等の金属層が形成されており、これによりチャック領域16における静電吸着を可能としている。
【0051】
その後、プロセス室26が所定の真空度にまで真空排気され、静電チャック本体12に冷却水および冷却用ガス(−10℃、1000Pa)が導入される。そして、供給管27からプロセスガス(CHF3、0.5Pa、80sccm)が導入されると共に、プラズマ形成用高周波コイル(13.56MHz、500W)28およびバイアス用高周波電源(12.5MHz、400W)により、プロセス室26にプラズマが生成され、生成されたプラズマがチャック台13上の各基板Wに照射される。これにより、基板Wの被処理面に対して所定のエッチング処理が行われる。
【0052】
本実施の形態においては、複数枚の基板Wを静電チャック13に載置する際、図10を参照して説明した従来技術のように、トレー上面に基板保持用のカバーを取り付ける必要がなくなるので、作業工数の削減および作業時間の低減が図れるようになり、これにより作業性および生産性を大幅に向上させることができる。
【0053】
また、チャック台13に形成された複数のチャック領域16に対してそれぞれ基板Wを直に載置することができるので、チャック領域16の複数の流出孔18から流出される冷却用ガスを効率良く基板Wの下面に導いて基板Wの十分な冷却作用を行うことができる。なお、チャック領域16に沿って各流出孔18を結ぶように、例えば「田」の字状の溝を設けて、基板下面への冷却用ガスの導入効率を高めるようにしてもよい。
【0054】
更に、本実施の形態によれば、トレーの上面に基板保持用のカバーが取り付けられていないので、基板Wの上方に生成されるプラズマの分布密度の一様化を図ることができ、また、トレー40が石英製であることから、基板Wの上面に対するプラズマの照射効率を高められる。その結果、エッチングレートが向上し、処理時間の短縮を図ることが可能となる。
【0055】
さて、基板Wに対するエッチング処理の終了後は、リフトピン駆動部32の駆動によりチャック台13のリフトピン進入孔24を介してリフトピン33が図9Bに示したように上方へ突出し、これによりトレー40がチャック台13に対して浮上される。このトレー40の浮上過程において、島状部17上面のチャック領域16から開口42の基板支持部43へ基板Wが載せ替えられる。
【0056】
その後、図示しない搬送ロボットを介して、当該トレー40が真空槽11の外部へ搬出されるとともに、未処理の基板を複数載置した新たなトレー40が真空槽11へ搬入される。
【0057】
上述のように、本実施の形態においては、トレー40を用いて複数枚の基板Wをチャック台13の各チャック領域16に搬送するようにしているので、チャック台13に対する複数の基板Wの一括搬送および一括搬出が可能となり、基板設置作業が容易となる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0059】
例えば以上の実施の形態では、チャック台13の上面に計5個のチャック領域16A〜16Eを図2に示した配置で形成したが、チャック領域の形成数および形成位置はこれに限らない。また、各チャック領域16をチャック台13上面に突出形成した凸状の島状部17の上面に形成する場合に限らず、島状部を形成せずに、チャック台13上面と同一平面上に形成されていてもよい。
【0060】
また、基板Wは上述の四角形状の石英基板に限らず、シリコン基板や化合物半導体基板、サファイア基板、ガラス基板等にも本発明は適用可能である。また、形状も四角形状に限らず、例えば円形であってもよい。この場合、図10に示すように、静電チャック10のチャック台13の各島状部17の上面も、これに合わせて円形とすることができる。
【0061】
また、基板吸着用の電極層として、一対の櫛形電極層20a,20bでなる双極型を適用したが、単極型であってもよい。なお、電極層を双極型とすることにより、プラズマを生成せずとも基板の吸着作用が得られるというメリットがある。
【0062】
更に、トレー40の基板支持部43を、開口42の周縁に形成した段部44の上面で構成したが、これに代えて、例えば開口42の周縁に形成したすり鉢状のテーパー面で基板支持部を構成することも可能である。
【0063】
更に、以上の実施の形態では、プラズマエッチング装置として誘導結合型のプラズマエッチング装置を例に挙げて説明したが、平行平板型や電子サイクロトロン(ECR)型等の他のエッチング装置にも、本発明は適用可能である。また、プロセスガスも上述のCHF3系ガスに限らず他のガスも適用可能であり、更に条件に応じて、H2系ガスを添加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態による静電チャック10の構成を示す概略側断面図である。
【図2】静電チャック10(チャック台13)の平面図である。
【図3】チャック台13の側断面図である。
【図4】チャック台の上面に形成され、上面にチャック領域を形成する島状部17の内部の冷却用ガス流路19を示す断面図である。
【図5】島状部17の内部に形成された電極層20a,20bを示す断面図である。
【図6】チャック台13上の各島状部17の電極層20a,20bの配線例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態よる基板搬送用のトレー40を示す平面図である。
【図8】図7における[8]−[8]線方向断面図である。
【図9】チャック台13、基板Wおよびトレー40の関係を模式的に示す側断面図であり、Aは基板吸着時、Bは基板搬出時の状態を示している。
【図10】静電チャック10の構成の変形例を示す平面図である。
【図11】従来の基板搬送用トレーの構成を示す平面図である。
【図12】従来の静電チャックとトレー、基板との関係を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 静電チャック
11 真空槽
12 本体
13 チャック台
16(16A〜16E) チャック領域
17 島状部
18 流出孔
19 流路
20a,20b 電極層
40 トレー
41 トレー本体
42 開口
43 基板支持部
W 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の基板を同時に吸着できる静電チャックおよびこれに用いられる基板搬送用トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウェーハ等の被処理基板を真空処理するに際しては、当該基板を真空槽内に固定するのに静電チャックが用いられている。この種の静電チャックは、基板を支持する支持台の上に誘電層が設けられており、支持台と基板との間に電圧が印加されることにより発生するクーロン力によって基板を吸着する機構を備えている。
【0003】
しかし、従来の静電チャックは、その上面のチャック面に吸着できる基板は1枚のみであるため、複数枚の基板を同時に吸着保持して処理するのは不可能な構成であった。
【0004】
そこで、本発明者らは、複数枚の基板を載せたトレーを静電チャックで吸着し、このトレーを介して各基板を静電チャック上に固定して、各基板を同時に処理するようにしていた。このトレーの構成を図11及び図12を参照して説明する。図11は当該トレーの平面図、図12は静電チャック6に吸着されたトレー1の要部側断面図である。
【0005】
トレー1は円板状で、その上面に5枚の基板Wが載置されている。図示する基板Wは矩形状であるが、勿論円形状であってもよい。トレー1は、例えばアルミニウム合金製で、その上面には基板Wを位置決め保持するためのカバー2が複数本のネジ部材3を介して取り付けられている。
【0006】
カバー2は石英等の非導電性材料で形成されているとともに、このカバー2には、基板Wの被処理面(上面)を外部へ露出させるための開口2aが、各基板Wの収容位置に対応して複数(本例では5個)形成されている。
【0007】
基板Wは、トレー1の基板収容部4内に収容されているとともに、基板Wの周縁部が、カバー2の開口2aの周縁に突出形成された保持爪2bと、基板収容部4の内部周縁に沿って配置された環状のシール部材5との間において機械的にクランプされている。なお、基板収容部4の底部には、トレー1と静電チャック6上面との間に導入された冷却用ガス(例えばヘリウム)を基板収容部4内に導くための流路7が形成されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−332091号公報
【特許文献2】特開平10−1772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さて、上述した従来の構成では、静電チャック6に対して複数枚の基板Wを載置するのに、これら複数枚の基板Wをトレー1の基板収容部4に移載した後、トレー1の上面に対してカバー2を取り付けて各基板Wを保持し、このトレー1を静電チャック6に吸着させることにより、真空槽内における複数の基板Wの一括処理を可能としている。
【0010】
しかしながら、上記構成では、トレー1に対する基板Wの移載後、カバー2を複数本のネジ部材3を用いて取り付ける必要があるため、作業の煩雑性が増すという問題がある。また、カバー2の取り付け、取り外し作業に時間が費やされる結果、生産性にも悪影響を与えるという問題がある。
【0011】
また、上述した従来の構成においては、基板Wの冷却効率を高めるために、トレー1をアルミニウム等の伝熱性の高い材料で形成してはいるものの、十分な冷却作用が得られているとは言えない。
【0012】
更に、基板Wにプラズマ処理を施す場合にあっては、トレー1に取り付けられたカバー2の影響でプラズマ分布が変動することにより、処理後における基板Wの面内均一性が損なわれるという問題もある。
【0013】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、作業性および生産性を損なうことなく、複数枚の基板を同時に吸着でき、更には、基板の冷却効率および処理均一性を高められる静電チャックおよびこれに用いられる基板搬送用トレーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するに当たり、本発明の静電チャックは、その上面に、基板を静電的に吸着するチャック領域を複数形成することにより、複数枚の基板を同時に吸着できるようにしている。
【0015】
これにより、トレーを介さずに複数枚の基板を同時に吸着することが可能となるので、トレーに対する基板の面倒な保持作業を廃止でき、これにより作業性および生産性を向上させることができる。また、基板を静電チャックで直接吸着できるので、トレーを介して基板を保持する従来の構成に比べて、基板の冷却効率を高めることができる。更に、基板保持用のカバーが不要となるので、例えばプラズマ処理時における基板面内均一性が高められる。
【0016】
本発明において、各チャック領域は、静電チャック上面に突設された複数の島状部の各々の上面部に形成されている。この構成により、後述する基板搬送用トレーを用いて、当該静電チャックに対する複数枚の基板の同時搬送が可能となる。
【0017】
すなわち、本発明の基板搬送用トレーは、上面に基板吸着用のチャック領域が島状に複数突出形成された静電チャックに対して複数枚の基板を搬送するための基板搬送用トレーであって、静電チャックの上面に載置されるトレー本体と、このトレー本体の面内に形成され前記複数のチャック領域をそれぞれ収容できる大きさに形成された複数の開口と、これら複数の開口の各々の周縁に形成され前記基板の下面周縁を支持する基板支持部とを有し、前記トレー本体の下面に対する前記基板支持部の高さが、前記静電チャック上面に対する前記チャック領域の高さよりも小さく形成されていることを特徴とする。
【0018】
静電チャックに対して複数枚の基板を搬送するには、トレーの複数の開口に形成された基板支持部において基板下面周縁を支持した状態で、当該トレーを静電チャック上面に載置する。このとき、基板支持部の高さが島状部上面の各チャック領域よりも低くなるように形成されているので、静電チャック上面にトレーを載せると同時に、各基板を基板支持部から各チャック領域へ容易に移載できる。また、処理終了後は、静電チャック上面に対してトレーを浮上させることによって、各基板を各チャック領域からトレーの基板支持部へ容易に移載できる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明の静電チャックによれば、トレーを介さずに複数枚の基板を同時に吸着することができるので、トレーに対する基板の保持作業を不要として作業性を改善することができるとともに、生産性の向上を図ることができる。
【0020】
また、基板を静電チャックで直接吸着できるので、トレーを介して基板を保持する従来の構成に比べて、基板の冷却効率を高めることができる。また、基板保持用のカバーが不要となるので、例えばプラズマ処理時における基板面内均一性を高めることができる。
【0021】
一方、本発明の基板搬送用トレーによれば、複数枚の基板を静電チャック上面の各チャック領域に対して一括的に搬送および搬出することが可能となり、基板設置作業を容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1および図2は本発明の実施の形態による静電チャックの構成を示している。ここで図1は静電チャック10の側断面図、図2はその平面図を示している。
【0024】
静電チャック10は、真空槽11の底部に気密に設置された本体12と、この本体12の上部に取り付けられたチャック台13とで構成されている。本実施の形態において、真空槽11は、プラズマエッチング装置の真空槽を構成している。なお、プラズマCVD装置等の他の真空処理装置が適用されてもよい。
【0025】
真空槽11はプロセス室26を形成するとともに、プロセスガスの供給管27、プラズマ形成用の高周波コイル、永久磁石等でなるプラズマ形成手段28、バイアス用高周波電源29等を備え、プロセス室26に導入されたガスをプラズマ化し、静電チャック10上の基板(図示略)に対して所定のエッチング処理を行うように構成されている。なお図示せずとも、プロセス室26を所定の真空度に排気する真空ポンプが真空槽11に接続されている。
【0026】
静電チャック10の本体12は、アルミニウム合金等の金属材料で構成されており、その内部には、冷却水循環用の通路14や、チャック台13に吸着された基板を冷却するためのガス(例えばヘリウム)が導入されるガス流通路15が設けられている。この冷却用ガスは、本体12の下部に接続された導入管30を介して装置外部から供給される。本体12とチャック台13とは、例えばシリコーン樹脂を主剤とする接着剤等によって一体的に接合されている。
【0027】
チャック台13は、主としてセラミック等の誘電材料でなる平板状に形成されており、特に本実施の形態では、セラミックシートの積層体として構成されている。このチャック台13の上面には、図2に示したように、基板を吸着するチャック領域16(16A〜16E)が複数形成されている。各チャック領域16は、互いに分離独立して配置されており、図示の例では中心部に1つのチャック領域16Aが配置され、その周囲に90度間隔で4つのチャック領域16B,16C,16D及び16Eがそれぞれ配置されている。
【0028】
図3は、チャック台13の側断面図である。各チャック領域16は、チャック台13の上面に突設された複数の島状部17の上面にそれぞれ形成されている。この島状部17の上面(チャック領域16)は、1枚の基板を載置できる大きさに形成されている。
【0029】
特に本実施の形態では、図9Aに示すように、チャック領域16は、吸着する基板Wよりも小さな面積で形成されている。一例を挙げると、縦×横の長さが基板Wでは50mm×50mmであるのに対し、チャック領域16では45mm×45mmとされている。なお、島状部17の上面は、基板Wの平面形状に対応するように四角形状に形成されているが、例えば円形状等のように他の形状に形成されていてもよい(図10)。
【0030】
なお、島状部17の高さは特に限定されないが、後述するように、各チャック領域16へ基板を搬送するトレーとの関係で調整される。
【0031】
また、各島状部17の上面(チャック領域16)には、本体12に導入された冷却用ガスを基板下面に向けて流出させる複数の流出孔18がそれぞれ形成されている。これら各流出孔18は、島状部17の内部に形成された流路19を介して、本体12のガス流通路18と連通している。流路19は、図4に示すように平面的に見て、田の字形状を有し、その中心部ならびに四辺の隅部および中点部に対応する位置の計9カ所に、流出孔18がそれぞれ設けられている。
【0032】
流路19の形成層と島状部17の最上層との間には、図5に示すように電極層20a,20bが形成されている。これら電極層20a,20bは、一対の櫛形電極構造を有し、一方の櫛歯が他方の櫛歯間に位置するように所定の間隙をおいて互い違いに配置され、一方側の電極層20aには正電位が印加され、他方側の電極層20bには負電位が印加されるようになっている。
【0033】
なお、電極層20a,20bにおいて、上記流路19に連通する流出孔18の形成部位には、これら流出孔18を覆わないように円形状あるいは円弧状のニゲ21がそれぞれ設けられている。電極層20a,20bは、その上面に積層される誘電層を介して基板の下面に対向するようになっている。
【0034】
上記構成の電極層20a,20bは各々の島状部17に対して同様に設けられている。図6に示すように本実施の形態では、一方側の電極層20a,20a,…の各々は、配線22aを介して正電位供給源23aに共通に接続されており、また、他方側の電極層20b,20b,…の各々は、配線22bを介して負電位供給源23bに共通に接続されている。
【0035】
各配線22a,22bは、チャック台13の内部に設けられており、また、正電位供給源23aおよび負電位供給源23bは、本体12の下部に取り付けられた電位供給源31a,31b(図1)にそれぞれ接続されている。なお、配線22a,22bは、各島状部17ごとに独立して設けられていても良い。
【0036】
更にチャック台13には、リフトピン33(図9B)が上方へ向かって突出するリフトピン進入孔24(図2)が設けられている。図2に示したように、リフトピン進入孔24は複数形成されており、チャック台13の中心位置のチャック領域16Aを形成する島状部17の四隅外方側に計4カ所配置されている。
【0037】
なお、リフトピン33は本体12の内部に設けられ、後述するトレー40を図9Bに示すようにチャック台13の上面から浮上させるための突き上げピンとして構成されており、本体12の下部に取り付けられたリフトピン駆動部32の駆動により上下方向へ進退移動する。
【0038】
次に、トレー40の詳細について図7〜図9を参照して説明する。ここで、図7はトレー40の平面図、図8はトレー40の要部断面図、図9A,Bはトレー40と静電チャック10との関係を示す要部側断面図である。
【0039】
トレー40は、トレー本体41と、このトレー本体41の面内に形成された複数の開口42と、これら開口部42の各々の周縁に形成された基板支持部43とを備えている。トレー本体41は、本実施の形態では石英製とされるが、これ以外にも、シリコン炭化物(SiC)やシリコン窒化物(SiN)、アルミナ(Al2O3)、更にはアルミニウム等の金属材料で形成されてもよい。
【0040】
各開口42は、チャック台13の複数の島状部17の各々の形成位置に対応するようにトレー本体41に形成されている。これらの各開口42は、トレー本体41がチャック台13の上面に載置された際、島状部17をそれぞれ収容できる程度の大きさに形成されている(図9A)。本実施の形態では、開口42の縦×横の長さが、例えば47mm×47mmとされている。なお、各開口42は、基板Wの平面形状と対応する形状に形成されているが、勿論、他の形状とされてもよい。
【0041】
基板支持部43は、開口42内に収容された基板Wの下面周縁を支持するように、開口42の周縁に形成された段部44(図8)の上面に設けられている。本実施の形態では、図7に示すように基板支持部43を開口42の周縁全域に形成しているが、これに代えて、互いに対向関係にある一対の周縁部にのみ形成されていてもよい。
【0042】
また、トレー本体41の下面に対する基板支持部43の高さは、チャック台13の上面に対するチャック領域16の高さ(すなわち島状部17の高さ)よりも低く形成されている。これにより、基板支持部43で基板Wを支持した状態でトレー40がチャック台13の上面に載置されたときは、各開口42内に島状部17が各々進入し、図9Aに示したように、基板支持部43に代わって島状部17上面のチャック領域16が基板Wを支持することになる。
【0043】
なお、基板支持部43による基板Wの支持高さは、島状部17の高さに関連して設定され、開口42周縁に形成される段部44の高さによって調整される。本実施の形態では、島状部17の高さが1.7mmであるのに対し、段部44の高さは1.2mmとされている。
【0044】
また、チャック台13にトレー40が載置され、島状部17上面で基板Wが支持されている状態において、基板Wの上面とトレー40の上面とが略同一の高さとなるように、トレー40の厚さが設定されている。本例では、トレー40の厚さを2mmとしている。
【0045】
次に、以上のように構成される本実施の形態の作用について説明する。ここでは、基板Wとして、被処理面に所定のレジストパターンが形成された四角形状の石英基板が用いられ、真空槽11の内部において基板表面を所定形状にエッチングするプロセスを例に挙げて説明する。
【0046】
まず、真空槽11の外部において、トレー40の各開口42上に、基板Wがその被処理面を上方に向けてそれぞれ1枚ずつ載置される。各基板Wは、開口42周縁の基板支持部43上にその下面周縁が支持される。
【0047】
ここで、基板Wのトレー40への載置作業は、手作業またはロボットを用いることができる。なお、ロボットを用いた自動基板移載システムにおいては、基板Wをその被処理面に非接触で搬送できるベルヌーイチャック機構を用いるのが好適である。
【0048】
次に、基板Wが載せられたトレー40を真空槽11の内部に搬送し、静電チャック10のチャック台13上に載置する。このとき、トレー40の各開口42に対応して、その直下方に、チャック台13上面の島状部17がそれぞれ位置しており、トレー40の下降に伴って、島状部17が開口42内にそれぞれ進入し、開口42周縁の基板支持部43から島状部17上面のチャック領域16(16A〜16E)へ基板Wがそれぞれ載せ替えられる。この操作は、チャック台13に対するトレー40の載置作業に連動して自動的に行われる。
【0049】
なお、トレー40から各チャック領域16への基板Wの載せ替えには、チャック台13に対するトレー40の高精度な位置合わせ作業が必要とされるが、本実施の形態では、チャック台13の周縁に形成した切欠き13A(図2)と、トレー40の周縁に形成した切欠き40A(図7)とを基準とした両者の位置合わせが行われるようにしている。
【0050】
以上のようにして、チャック台13に対して複数枚の基板Wが同時に載置される。そして、チャック台13上面の各チャック領域16において、各々の電極層20a,20bに電位供給線31a(31b)を介して所定の吸着用電位が印加される(本例では±1.1kV〜1.4kV)。これにより、各基板Wが、それぞれのチャック領域16A〜16Eに静電的に吸着される。なお本実施の形態では、基板Wの下面に予めアルミニウムめっき等の金属層が形成されており、これによりチャック領域16における静電吸着を可能としている。
【0051】
その後、プロセス室26が所定の真空度にまで真空排気され、静電チャック本体12に冷却水および冷却用ガス(−10℃、1000Pa)が導入される。そして、供給管27からプロセスガス(CHF3、0.5Pa、80sccm)が導入されると共に、プラズマ形成用高周波コイル(13.56MHz、500W)28およびバイアス用高周波電源(12.5MHz、400W)により、プロセス室26にプラズマが生成され、生成されたプラズマがチャック台13上の各基板Wに照射される。これにより、基板Wの被処理面に対して所定のエッチング処理が行われる。
【0052】
本実施の形態においては、複数枚の基板Wを静電チャック13に載置する際、図10を参照して説明した従来技術のように、トレー上面に基板保持用のカバーを取り付ける必要がなくなるので、作業工数の削減および作業時間の低減が図れるようになり、これにより作業性および生産性を大幅に向上させることができる。
【0053】
また、チャック台13に形成された複数のチャック領域16に対してそれぞれ基板Wを直に載置することができるので、チャック領域16の複数の流出孔18から流出される冷却用ガスを効率良く基板Wの下面に導いて基板Wの十分な冷却作用を行うことができる。なお、チャック領域16に沿って各流出孔18を結ぶように、例えば「田」の字状の溝を設けて、基板下面への冷却用ガスの導入効率を高めるようにしてもよい。
【0054】
更に、本実施の形態によれば、トレーの上面に基板保持用のカバーが取り付けられていないので、基板Wの上方に生成されるプラズマの分布密度の一様化を図ることができ、また、トレー40が石英製であることから、基板Wの上面に対するプラズマの照射効率を高められる。その結果、エッチングレートが向上し、処理時間の短縮を図ることが可能となる。
【0055】
さて、基板Wに対するエッチング処理の終了後は、リフトピン駆動部32の駆動によりチャック台13のリフトピン進入孔24を介してリフトピン33が図9Bに示したように上方へ突出し、これによりトレー40がチャック台13に対して浮上される。このトレー40の浮上過程において、島状部17上面のチャック領域16から開口42の基板支持部43へ基板Wが載せ替えられる。
【0056】
その後、図示しない搬送ロボットを介して、当該トレー40が真空槽11の外部へ搬出されるとともに、未処理の基板を複数載置した新たなトレー40が真空槽11へ搬入される。
【0057】
上述のように、本実施の形態においては、トレー40を用いて複数枚の基板Wをチャック台13の各チャック領域16に搬送するようにしているので、チャック台13に対する複数の基板Wの一括搬送および一括搬出が可能となり、基板設置作業が容易となる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0059】
例えば以上の実施の形態では、チャック台13の上面に計5個のチャック領域16A〜16Eを図2に示した配置で形成したが、チャック領域の形成数および形成位置はこれに限らない。また、各チャック領域16をチャック台13上面に突出形成した凸状の島状部17の上面に形成する場合に限らず、島状部を形成せずに、チャック台13上面と同一平面上に形成されていてもよい。
【0060】
また、基板Wは上述の四角形状の石英基板に限らず、シリコン基板や化合物半導体基板、サファイア基板、ガラス基板等にも本発明は適用可能である。また、形状も四角形状に限らず、例えば円形であってもよい。この場合、図10に示すように、静電チャック10のチャック台13の各島状部17の上面も、これに合わせて円形とすることができる。
【0061】
また、基板吸着用の電極層として、一対の櫛形電極層20a,20bでなる双極型を適用したが、単極型であってもよい。なお、電極層を双極型とすることにより、プラズマを生成せずとも基板の吸着作用が得られるというメリットがある。
【0062】
更に、トレー40の基板支持部43を、開口42の周縁に形成した段部44の上面で構成したが、これに代えて、例えば開口42の周縁に形成したすり鉢状のテーパー面で基板支持部を構成することも可能である。
【0063】
更に、以上の実施の形態では、プラズマエッチング装置として誘導結合型のプラズマエッチング装置を例に挙げて説明したが、平行平板型や電子サイクロトロン(ECR)型等の他のエッチング装置にも、本発明は適用可能である。また、プロセスガスも上述のCHF3系ガスに限らず他のガスも適用可能であり、更に条件に応じて、H2系ガスを添加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態による静電チャック10の構成を示す概略側断面図である。
【図2】静電チャック10(チャック台13)の平面図である。
【図3】チャック台13の側断面図である。
【図4】チャック台の上面に形成され、上面にチャック領域を形成する島状部17の内部の冷却用ガス流路19を示す断面図である。
【図5】島状部17の内部に形成された電極層20a,20bを示す断面図である。
【図6】チャック台13上の各島状部17の電極層20a,20bの配線例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態よる基板搬送用のトレー40を示す平面図である。
【図8】図7における[8]−[8]線方向断面図である。
【図9】チャック台13、基板Wおよびトレー40の関係を模式的に示す側断面図であり、Aは基板吸着時、Bは基板搬出時の状態を示している。
【図10】静電チャック10の構成の変形例を示す平面図である。
【図11】従来の基板搬送用トレーの構成を示す平面図である。
【図12】従来の静電チャックとトレー、基板との関係を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 静電チャック
11 真空槽
12 本体
13 チャック台
16(16A〜16E) チャック領域
17 島状部
18 流出孔
19 流路
20a,20b 電極層
40 トレー
41 トレー本体
42 開口
43 基板支持部
W 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が基板を静電的に吸着するチャック領域とされている静電チャックであって、
前記上面に、前記チャック領域が複数形成されていることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記各チャック領域は、前記上面に突設された複数の島状部の各々の上面部に形成されている請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記各チャック領域の面積は、前記基板の面積よりも小さく形成されている請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記各チャック領域には、前記基板を冷却する冷却用ガスの流路が形成されている請求項1に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記各チャック領域に配置される基板吸着用の電極が、一対の櫛形電極構造を有している請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
上面に基板吸着用のチャック領域が島状に複数突出形成された静電チャックに対して、複数枚の基板を搬送するための基板搬送用トレーであって、
前記静電チャックの上面に載置されるトレー本体と、このトレー本体の面内に形成され前記複数のチャック領域をそれぞれ収容できる大きさに形成された複数の開口と、これら複数の開口の各々の周縁に形成され前記基板の下面周縁を支持する基板支持部とを有し、
前記トレー本体の下面に対する前記基板支持部の高さが、前記静電チャック上面に対する前記チャック領域の高さよりも小さく形成されていることを特徴とする基板搬送用トレー。
【請求項1】
上面が基板を静電的に吸着するチャック領域とされている静電チャックであって、
前記上面に、前記チャック領域が複数形成されていることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記各チャック領域は、前記上面に突設された複数の島状部の各々の上面部に形成されている請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記各チャック領域の面積は、前記基板の面積よりも小さく形成されている請求項1に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記各チャック領域には、前記基板を冷却する冷却用ガスの流路が形成されている請求項1に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記各チャック領域に配置される基板吸着用の電極が、一対の櫛形電極構造を有している請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
上面に基板吸着用のチャック領域が島状に複数突出形成された静電チャックに対して、複数枚の基板を搬送するための基板搬送用トレーであって、
前記静電チャックの上面に載置されるトレー本体と、このトレー本体の面内に形成され前記複数のチャック領域をそれぞれ収容できる大きさに形成された複数の開口と、これら複数の開口の各々の周縁に形成され前記基板の下面周縁を支持する基板支持部とを有し、
前記トレー本体の下面に対する前記基板支持部の高さが、前記静電チャック上面に対する前記チャック領域の高さよりも小さく形成されていることを特徴とする基板搬送用トレー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−66417(P2006−66417A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243542(P2004−243542)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]