説明

静電チャックのクリーニング方法

【課題】クリーニング性を向上させた静電チャックのクリーニング方法を提供する。
【解決手段】静電チャックのクリーニングを実行する際、まず、金属ベースプレートの外周面と弾性プレートの外周面とに付着した成膜残渣を研磨して除去する(研磨工程:ステップS1)。そして、研磨工程で研磨された金属ベースプレートと弾性プレートとを洗浄し(洗浄工程:ステップS2)、洗浄工程で洗浄された金属ベースプレートと弾性プレートとを脱ガスさせる(脱ガス工程:ステップS3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャックのクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置に搭載される各種のチャンバは、シリコンウェハ等の基板を支持するための基板支持装置を有する。基板支持装置としては、加熱器又は冷却器を内蔵するベース部材と、このベース部材に装着されてクーロン力で基板を吸着する静電チャックとを有するものが知られている。半導体製造装置は、この静電チャックの上面に基板を吸着した後にスパッタリング法等の所望の成膜方法を用い、基板上に金属膜や誘電体膜を成膜する。
【0003】
静電チャックの上面や側面には、成膜処理を繰り返すに連れて、成膜に関わる各種の成膜残渣が堆積する。こうした成膜残渣の堆積の進行は、静電チャックの吸着力を劣化させて基板の位置ズレを招いてしまう。また、堆積した成膜残渣の剥がれ等を招いて、基板上に多量のパーティクルを発生させてしまう。そこで、静電チャックを用いる基板処理プロセスにおいては、基板処理を所定回数だけ繰り返す毎に、静電チャックに対して成膜残渣を除去するためのクリーニングが実施される。
【0004】
静電チャックのクリーニング方法としては、静電チャックをチャンバに装着した状態でクリーニングガスをチャンバ内に導入し、マイクロ波や高周波電力等の投入により発生させたプラズマでクリーニングガスを分解及び活性化させ、これを成膜残渣に作用させることにより成膜残渣を物理的あるいは化学的に除去する。
【0005】
特許文献1は、静電チャックにプラズマエッチングを施すエッチング工程と、エッチング工程後のチャンバ内に基板を搬入して静電チャックの上に基板を載置する基板搬入工程と、静電チャック上の基板をチャンバから搬出する基板搬出工程とを有する。エッチング工程では、静電チャックにプラズマエッチングを施して静電チャックに堆積する成膜残渣を静電チャックの上から剥がし、基板搬入工程では、静電チャックの上に基板を載置して剥がされた成膜残渣を基板に付着させる。基板搬出工程は、基板に付着した成膜残渣を基板とともにチャンバ内から搬出し、静電チャックの上から成膜残渣を除去する。
【特許文献1】特開2002−280365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成膜処理に伴って堆積する成膜残渣は、静電チャックの上面だけでなく、静電チャックの側面等の各部位にも付着する。特許文献1のクリーニング方法では、プラズマエッチングのエッチング能力に限りがあるため、静電チャックの側面等に堆積する成膜残渣を剥がし難い。また、特許文献1のクリーニング方法では、静電チャックの上面にある成膜残渣のみが基板とともに搬出されるため、静電チャックの側面にある成膜残渣が、静電チャックに取り残されてしまう。また、基板裏面に成膜残渣を付着させたとしても、静電チャックの上面にある全ての成膜残渣を基板の裏面に付着させることは不可能である。
【0007】
本願発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、クリーニング性を向上させた静電チャックのクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、金属ベースプレート上に取付けられた弾性プレートを有して前記弾性プレートの上面に対象物を静電気的に吸着する静電
チャックのクリーニング方法であって、前記静電チャックに付着した導電性材料を研磨して除去する研磨工程と、前記研磨工程で研磨された前記静電チャックを洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程で洗浄された前記静電チャックを脱ガスする脱ガス工程とを有することを要旨とする。
【0009】
請求項1に記載の発明において、研磨工程は、静電チャックの各面に付着した導電性材料を研磨により剥がす。そのため、導電性材料の付着位置にかかわらず、静電チャックの全体から導電材料を剥がすことができる。洗浄工程は、導電性材料の剥離片等を静電チャックから取り除くことができ、脱ガス工程は、研磨工程及び洗浄工程で静電チャックに付着した液体や気体を取り除くことができる。したがって、本静電チャックのクリーニング方法は、静電チャックのクリーニング性を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記研磨工程は、前記弾性プレートに付着した導電性材料を研磨材によって研磨して除去する物理研磨工程と、前記金属ベースプレートに付着した導電性材料を研磨液によって研磨して除去する化学研磨工程とを有することを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、物理的研磨と化学的研磨とを行うため、静電チャックが複合的な材料からなる場合にも、該静電チャックのクリーニング性を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記弾性プレートが、シリコーンゴムからなることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、弾性プレートがシリコーンゴムからなるため、その汎用性を向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記研磨材の平均粉末粒径が、1μm〜5μmであることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、研磨材の平均粉末粒径が1μm以上であるため、研磨材の過度な縮小化に伴う研磨時間の増大と、導電性材料の研磨不足とを抑制することができる。また、研磨材の平均粉末粒径が5μm以下であるため、研磨材の過度な拡大化に伴う弾性プレートへの機械的な損傷を抑えることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記研磨材が、アルミナ粉末を有する水系研磨材であることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、油分を含む研磨材を用いる場合に比べて、クリーニング後におけるチャンバの真空度を容易に高くすることができる。したがって、このクリーニング方法は、クリーニング時間の短縮化を図ることができ、クリーニング方法の汎用性を向上させることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1つに記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記研磨液が、フッ化水素酸溶液であることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、研磨液がフッ化水素酸溶液であるため、アルカリ溶液を用いる場合に比べて、シリコーンゴムの化学的な劣化を抑えることができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記フッ化水素酸溶液におけるフッ化水素の濃度が0.5重量%〜5.0重量%であることを要旨とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、0.5重量%〜5.0重量%のフッ化水素酸溶液を研磨液に
用いるため、シリコーンゴムの化学的な劣化を抑えることができ、かつ、導電性材料の研磨により除去を、より確実に行うことができる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一つに記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記金属ベースプレートが、アルミニウムからなることを要旨とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、金属ベースプレートがアルミニウムからなるため、その汎用性を向上させることができる。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記洗浄工程が、30℃以下の冷水を用いて前記静電チャックに超音波洗浄を施す超音波洗浄工程と、40℃〜60℃の温水を用いて前記静電チャックを濯ぐ濯ぎ工程とを有することを要旨とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、超音波洗浄工程を30℃以下の冷水で行うため、金属ベースプレートの酸化を抑えることができる。また、請求項9に記載の発明は、濯ぎ工程を40℃〜60℃の温水で行うため、金属ベースプレートの熱的、化学的劣化を抑えることができる。
【0021】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記洗浄工程が、前記超音波洗浄工程の時間を5分以内にすることを要旨とする。
請求項10に記載の発明は、超音波洗浄工程の時間を5分以内にするため、金属ベースプレートの熱的、化学的劣化を、より確実に抑えることができる。
【0022】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記洗浄工程が、前記濯ぎ工程の時間を1分以内にすることを要旨とする。
請求項11に記載の発明は、濯ぎ工程の時間を1分以内にするため、金属ベースプレートの熱的、化学的劣化を、より確実に抑えることができる。
【0023】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1つに記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記脱ガス工程が、希ガスの雰囲気で前記脱ガスを行うことを要旨とする。
【0024】
請求項12に記載の発明は、希ガスの雰囲気で脱ガスを行うため、洗浄工程後の清浄度を維持することができる。
請求項13に記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1つに記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記脱ガス工程が、希ガスの雰囲気で前記静電チャックを100℃〜150℃に加熱することを要旨とする。
【0025】
請求項13に記載の発明は、100℃以上に加熱された希ガスの雰囲気で脱ガスを行うため、洗浄工程にて吸着する各種の液体や気体を、より確実に脱ガスすることができる。また、150℃以下に加熱された希ガスの雰囲気で脱ガスを行うため、弾性プレートの熱的劣化を防止することができる。
【0026】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか1つに記載の静電チャックのクリーニング方法であって、前記脱ガス工程が、0.1Torr〜0.5Torrの減圧下に前記静電チャックを配置することを要旨とする。
【0027】
請求項14に記載の発明は、0.5Torr以下の減圧下で脱ガス処理を実行するため、静電チャックに付着する液体や気体の量を、より高い精度の下で取り除くことができる
。また、0.1Torr以上の減圧下で脱ガス処理を実行するため、過剰な脱ガス処理の時間を省くことができる。
【発明の効果】
【0028】
上記したように、本発明によれば、静電チャックのクリーニング性を向上させた静電チャックのクリーニング方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した一実施形態について以下に説明する。まず、本発明に係る静電チャックを搭載するスパッタリング装置10について説明する。図1は、スパッタリング装置10を模式的に示す断面図である。
【0030】
図1において、スパッタリング装置10は、所定圧力に減圧されるチャンバ本体11を有し、チャンバ本体11の上部にカソード12を搭載している。カソード12は、チャンバ本体11に取付けられる円環状のカソードフランジ13と、カソードフランジ13に取付けられて接地電位に接続されるアースシールド14と、アースシールド14上に取付けられる円板状のカソード15とを有する。
【0031】
カソード15は、チャンバ本体11の内部空間(以下単に、成膜空間11Sという。)に露出する円板状のターゲットTを有し、図示しない外部電源からの直流電力あるいは高周波電力を受けて該電力をターゲットTに供給する。ターゲットTは、タンタル、銅、アルミニウム、チタン等の導電性材料からなる板材であって、外部電源からの直流電力あるいは高周波電力を受けるとき、その下面の近傍にプラズマを生成して、導電性材料からなるスパッタ粒子を成膜空間11Sに飛散させる。
【0032】
アースシールド14の下方には、円筒状の上側防着リング16と、上側防着リング16を支持して成膜空間11Sにスパッタガスを導入するガスリング17と、上側防着リング16の下方に配設されて下方に向かって切頭円筒状を呈する下側防着リング18とを有する。上側防着リング16及び下側防着リング18は、それぞれチャンバ本体11の内周面の略全体を覆い、チャンバ本体11の内周面に対してスパッタ粒子の堆積を防ぐ。下側防着リング18は、昇降機構19に連結され、昇降機構19からの駆動力を受けることにより昇降する。
【0033】
下側防着リング18の下方であって成膜空間11Sの底部には、クーロン力によって基板を吸着するための静電チャック20が取付けられている。
静電チャック20は、チャンバ本体11の底部にネジ止め固定される円板状の金属ベースプレート21と、金属ベースプレート21の上面に接着されて断面凸型の円板状を呈する弾性プレート23と、金属ベースプレート21と弾性プレート23との間に挟入された電極プレート24とを有する。また、静電チャック20は、弾性プレート23の外側面(以下単に、第1クリーニング面23bという。)を囲う円環状のプラテンリング25Aと、プラテンリング25Aの下方に取り付けられて金属ベースプレート21の外側面(以下単に、第2クリーニング面21b)を囲う円環状のカソードリング25Bとを有する。
【0034】
図2(a)は、金属ベースプレート21に接着された状態の弾性プレート23を示す平面図であり、図2(b)は、静電チャック20の分解図である。
図2において、金属ベースプレート21は、アルミニウムを基材とする金属板であって、その内部には、電極プレート24に所定電圧を供給するための図示しないプローブが備えられている。金属ベースプレート21は、チャンバ本体11の底部に配設された連結部22にネジ止め固定され、この連結部22を介し、図示しない外部電源に接続されている。金属ベースプレート21は、外部電源からの駆動電圧を受け、外部電源からの駆動電圧
を電極プレート24に供給する。
【0035】
弾性プレート23は、シリコーンゴムを基材とする誘電板であって、成膜空間11Sに搬送される基板を上面(以下単に、載置面23aという。)に載置する。弾性プレート23は、電極プレート24に所定電圧が供給されるとき、載置される基板をクーロン力によって載置面23aに吸着する。
【0036】
弾性プレート23は、その上方から金属ベースプレート21までを貫通する6つの貫通孔(以下単に、ネジ孔23h)を有し、各ネジ孔23hを介したネジの螺挿により、金属ベースプレート21を連結部22に固定する。また、弾性プレート23は、各ネジ孔23hを介したネジの螺脱により、金属ベースプレート21を連結部22から取外し可能にする。また、弾性プレート23は、ネジ孔23hの内側に3つの貫通孔(以下単に、ピン孔Hp)を有し、基板を昇降するための複数のリフトピンが各ピン孔Hpに挿通される。
【0037】
電極プレート24は、基板を吸着するための電極として作用する金属板であって、図2に示す多極型に限らず、単極型であっても良い。電極プレート24は、金属ベースプレート21のプローブを介して外部電源に接続され、外部電源からの所定電圧を受けるとき、基板を吸着するためのクーロン力を載置面23aに誘起する。これら電極プレート24及び弾性プレート23は、それぞれシリコン系やアクリル系の接着剤を介して金属ベースプレート21に接着されている。
【0038】
プラテンリング25Aは、弾性プレート23の第1クリーニング面23bに沿う内周面を有して第1クリーニング面23bの全体を囲う。カソードリング25Bは、金属ベースプレート21の第2クリーニング面21bに沿う内周面を有して第2クリーニング面21bの全体を囲う。
【0039】
図1において、スパッタリング装置10は、成膜処理を実行するとき、まず、成膜空間11Sに基板を搬入して該基板を弾性プレート23の載置面23aに載置する。次いで、スパッタリング装置10は、外部電源からの所定電圧を電極プレート24に供給し、弾性プレート23の載置面23aに基板を吸着させる。また、スパッタリング装置10は、下側防着リング18を下動して下側防着リング18の下面をプラテンリング25Aの上面に近接させ、下側防着リング18によって、プラテンリング25Aとカソードリング25Bの略全体を覆う。
【0040】
そして、スパッタリング装置10は、外部電源からのスパッタ電力をターゲットTに供給し、導電性材料からなるスパッタ粒子を成膜空間11Sに向けて飛散させる。
この際、導電性材料からなるスパッタ粒子は、基板の表面に堆積して導電性材料からなる薄膜を形成する。また、導電性材料からなるスパッタ粒子は、アースシールド14の表面、上側防着リング16の表面、及び下側防着リング18の表面に付着して堆積する。さらに、導電性材料からなるスパッタ粒子は、第1クリーニング面23bとプラテンリング25Aの内周面との隙間、及び第2クリーニング面21bとカソードリング25Bの内周面との隙間に進入する。そして、導電性材料からなるスパッタ粒子は、成膜処理を実行する毎に、第1クリーニング面23b及び第2クリーニング面21bに付着して堆積する。本実施形態では、静電チャック20に付着して堆積するスパッタ粒子を、成膜残渣という。
【0041】
次に、静電チャック20に堆積した成膜残渣のクリーニング方法について以下に説明する。図3及び図4は、それぞれ静電チャック20のクリーニング方法を示す工程図、及びフローチャートである。
【0042】
静電チャック20のクリーニング工程を実行するとき、スパッタリング装置10では、まず、成膜空間11Sが大気に開放され、カソード15、アースシールド14、カソードフランジ13、上側防着リング16、及び下側防着リング18が順にチャンバ本体11から取外され、その後、静電チャック20が取外される。
【0043】
次いで、図3に示すように、取外された静電チャック20の載置面23aにクリーニング用治具31が取付けられる。クリーニング用治具31は、弾性プレート23と略同じサイズの樹脂材料からなる円板状に形成され、各ネジ孔23hに嵌脱可能な複数の凸部31aを有する。クリーニング用治具31は、載置面23aに取付けられるとき、全ての凸部31aを対応するネジ孔23hに嵌挿して静電チャック20に位置決めされ、その外周面31bと第1クリーニング面23bとを略面一にする。これにより、クリーニング用治具31は、静電チャック20の第1クリーニング面23b及び第2クリーニング面21bを外部に露出し、載置面23aの全体を機械的及び化学的に保護する。
【0044】
クリーニング用治具31が静電チャック20に取付けられると、静電チャック20には、図4に示すように、成膜残渣を研磨して除去する研磨工程(ステップS1)と、研磨工程後の静電チャック20を洗浄する洗浄工程(ステップS2)と、洗浄工程後の静電チャック20を脱ガスする脱ガス工程(ステップS3)とが順に実施される。
【0045】
研磨工程は、静電チャック20に付着した成膜残渣を研磨材、又は研磨液を用いて研磨する工程である。研磨工程としては、第1クリーニング面23bに付着した成膜残渣を研磨材によって研磨して除去し、続いて、第2クリーニング面21bに付着した成膜残渣を研磨液によって研磨して除去する構成が好ましい。すなわち、研磨工程としては、物理研磨工程(ステップS1−1)を実施し、続いて、化学研磨工程(ステップS1−2)を実施する構成が好ましい。これら物理研磨工程と化学研磨工程との組合せによれば、静電チャック20が複数の異なる材料からなる場合であっても、各構成材料に応じた研磨除去を実施することができる。
【0046】
なお、弾性プレート23がシリコーンゴムからなるため、研磨材の平均粉末粒径が過剰に大きくなると、弾性プレート23の機械的な劣化が大幅に加速し、弾性プレート23の寿命が短くなってしまう。また、研磨材の平均粉末粒径が過剰に小さくなると、成膜残渣の研磨時間が大幅に長くなる、あるいは成膜残渣が十分に取り除けなくなる。そこで、研磨材としては、平均粉末粒径を1μm〜5μmにする構成がより好ましい。この研磨工程によれば、研磨材の平均粉末粒径が5μm以下であるため、弾性プレート23への機械的な損傷が抑えられる。また、研磨材の平均粉末粒径が1μm以上であるため、研磨時間の長期化が抑えられる。
【0047】
また、研磨材の中に油分等、高沸点の有機物が含まれると、静電チャック20の表面に該有機物が付着し続けて、クリーニング後の真空度を得難くしてしまう。そこで、研磨材としては、アルミナ粉末を含む水系研磨材を用いる構成がより好ましい。この研磨材によれば、油分を含む研磨材を用いる場合に比べ、クリーニング後における成膜空間11Sの真空度を容易に高くすることができる。すなわち、クリーニングに要する時間の短縮化を図ることができる。
【0048】
また、弾性プレート23の基材がシリコーンゴムであり、金属ベースプレート21の基材がアルミニウムであるため、研磨液としてアルカリ溶液を用いると、弾性プレート23や金属ベースプレート21の化学的な劣化を加速してしまう。そこで、研磨液としては、フッ化水素酸溶液を用いる構成が好ましく、フッ化水素酸溶液におけるフッ化水素の濃度を0.5重量%〜5.0重量%にする構成がより好ましい。この研磨液よれば、アルカリ溶液を用いる場合に比べて、弾性プレート23や金属ベースプレート21の化学的な劣化
が抑えられる。
【0049】
洗浄工程は、研磨工程において付着する成膜残渣の断片や研磨材等を洗浄する工程である。洗浄工程としては、30℃以下の冷水を用いて静電チャック20に超音波洗浄を施し、続いて、40℃〜60℃の温水を用いて静電チャック20を濯ぐ構成が好ましい。すなわち、洗浄工程としては、超音波洗浄工程(ステップS2−1)を実施し、続いて、濯ぎ工程(ステップS2−2)を実施する構成が好ましい。この洗浄工程によれば、超音波洗浄工程を30℃以下の冷水で行うことにより、金属ベースプレート21(アルミニウム)の酸化を抑えることができる。また、濯ぎ工程を40℃〜60℃の温水で行うことにより、金属ベースプレート21の熱的、化学的劣化を抑えることができる。
【0050】
なお、超音波洗浄工程や濯ぎ工程の時間が過度に長いと、金属ベースプレート21の変色、すなわち化学的劣化を招いてしまう。そこで、超音波洗浄工程としては、30℃以下の冷水で洗浄時間を5分以内にする構成がより好ましく、また、濯ぎ工程としては、40℃〜60℃の温水で洗浄時間を1分以内にする構成がより好ましい。この超音波洗浄工程と濯ぎ工程とによれば、金属ベースプレート21の酸化を、より確実に抑えることができる。
【0051】
脱ガス工程は、静電チャック20からクリーニング用治具31を脱装し、洗浄工程にて付着した洗浄液や各種のガスを、静電チャック20から取除くための工程である。脱ガス工程としては、減圧した希ガスの雰囲気の下で洗浄工程後の静電チャック20を脱ガスさせる構成が好ましい。この脱ガス工程によれば、静電チャック20からの脱ガスと、雰囲気との化学的な反応を回避させることができ、静電チャック20の清浄度を確実に向上させることができる。
【0052】
なお、脱ガス工程における雰囲気の圧力が過剰に高くなる、あるいは静電チャック20の温度が過剰に低くなると、シリコーンゴムからの脱ガスが十分に行われず、結果的に基板の吸着不良を招いてしまう。そこで、脱ガス工程としては、洗浄工程後の静電チャック20を100℃〜150℃に加熱する、又は、希ガスの雰囲気を0.1Torr〜0.5Torrに減圧する構成がより好ましい。この脱ガス工程によれば、100℃以上の加熱によって脱ガス効率を向上させることができ、かつ、150℃以下の加熱によって弾性プレート23の熱的劣化を防止することができる。また、0.5Torr以下の減圧によって脱ガス効率を向上させることができ、かつ、0.1Torr以上の減圧によって過剰な脱ガス処理を省くことができる。
【0053】
(実施例)
金属ベースプレート21の基材としてアルミニウムを用い、弾性プレート23の基材としてシリコーンゴムを用いた。そして、ターゲットTとしてタンタルターゲットを用い、所定枚数の基板の成膜処理を実行した後、静電チャック20のクリーニングを実施した。
【0054】
この際、研磨工程では、第1クリーニング面23bをクリーニングするために、アルミナ粉末の水系研磨材を研磨材とする物理的研磨工程を実施し、次いで、第2クリーニング面21bをクリーニングするために、フッ化水素酸溶液を研磨液とする化学的研磨工程とを実施した。そして、このフッ化水素の濃度を、0.5重量%、1.0重量%、3.0重量%に変更して実施例1〜3のクリーニングを行った。また、研磨液の組成を表1に示す組成に変更し、その他の条件を実施例1〜3と同じくして、比較例1〜8のクリーニングを行った。
【0055】
また、研磨工程では、第1クリーニング面23bをクリーニングするために、アルミナ粉末の水系研磨材を研磨材とする物理的研磨工程を実施し、次いで、第2クリーニング面
21bをクリーニングするために、1.0重量%のフッ化水素酸溶液を研磨液とする化学的研磨工程(実施例2)を実施した。そして、このアルミナ粉末の平均粉末粒径を、1.0μm〜5.0μmに変更して実施例4〜8のクリーニングを行った。また、アルミナ粉末の平均粉末粒径を0.7μmと7.5μmとに変更し、その他の条件を実施例4〜8と同じくして、比較例11と比較例12のクリーニングを行った。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

表1及び表2の「○」印で示すように、実施例1〜8では、それぞれ金属ベースプレート21と弾性プレート23の双方に付着した成膜残渣を除去することができ、かつ、金属ベースプレート21と弾性プレート23の双方に関して劣化が認められなかった。
【0058】
一方、表1の「×」印で示すように、比較例1、2では、それぞれ金属ベースプレート21と弾性プレート23に付着した成膜残渣を双方とも除去できなかった。
比較例3〜5では、それぞれ金属ベースプレート21に付着した成膜残渣を除去することはできたが、弾性プレート23に劣化(例えば、変色)が認められた。比較例6〜8では、それぞれ金属ベースプレート21と弾性プレート23に付着した成膜残渣を双方とも除去することはできたが、金属ベースプレート21の劣化(例えば、変色)が認められた。
【0059】
比較例11においては、研磨材の平均粉末粒径が過度に小さすぎるため、弾性プレート23に付着した成膜残渣の除去に大幅に長い時間を要し、成膜残渣の除去できない箇所が認められた。比較例12においては、弾性プレート23に付着した成膜残渣の除去が可能であるが、研磨材の平均粉末粒径が過度に大きすぎるため、弾性プレート23に過度の機械的損傷が認められた。
【0060】
したがって、上記クリーニング方法では、0.5重量%〜5.0重量%のフッ化水素酸溶液を研磨液として用いることにより、金属ベースプレート21や弾性プレート23に劣化を来たすことなく、静電チャック20のクリーニング性を向上させることができる。また、上記クリーニング方法では、1μm〜5μmの平均粉末粒径を有するアルミナ粉末を研磨材として用いることにより、弾性プレート23に劣化を来たすことなく、静電チャック20のクリーニング性を向上させることができる。
【0061】
上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)上記実施形態においては、金属ベースプレート21の第2クリーニング面21bと、弾性プレート23の第1クリーニング面23bとに付着した成膜残渣を研磨して除去する。そして、研磨工程で研磨された金属ベースプレート21と弾性プレート23とを洗浄し、洗浄工程で洗浄された金属ベースプレート21と弾性プレート23とを脱ガスさせる。
【0062】
したがって、上記クリーニング法は、成膜残渣の付着位置に関わらず、静電チャック20の全体から成膜残渣を剥がすことができる。そして、静電チャック20から剥がされた成膜残渣を洗浄工程で洗浄することができ、洗浄工程で付着する液体や気体を脱ガス工程で取り除くことができる。よって、上記クリーニング方法は、静電チャック20のクリーニング性を向上させることができる。
【0063】
(2)上記実施形態においては、弾性プレート23に付着した成膜残渣を研磨材によって研磨して除去し、金属ベースプレート21に付着した成膜残渣を研磨液によって研磨して除去する。したがって、上記クリーニング方法は、物理的研磨と化学的研磨とを行うため、複合的な材料からなる静電チャック20に対し、そのクリーニング性を向上させることができる。
【0064】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施しても良い。
・上記実施形態においては、弾性プレート23の基材をシリコーンゴムに具体化した。これに限らず、本発明は、弾性プレート23の基材を、ポリイミド等のプラスチックに具体化しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】スパッタリング装置を模式的に示す断面図。
【図2】(a)、(b)は、それぞれ静電チャックを示す平面図と分解図。
【図3】静電チャックのクリーニング工程を示す工程図。
【図4】静電チャックのクリーニング工程を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0066】
10…スパッタリング装置、20…静電チャック、21…金属ベースプレート、23…弾性プレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ベースプレート上に取付けられた弾性プレートを有して前記弾性プレートの上面に対象物を静電気的に吸着する静電チャックのクリーニング方法であって、
前記静電チャックに付着した導電性材料を研磨して除去する研磨工程と、
前記研磨工程で研磨された前記静電チャックを洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程で洗浄された前記静電チャックを脱ガスする脱ガス工程とを有すること、を特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項2】
請求項1に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記研磨工程は、
前記弾性プレートに付着した導電性材料を研磨材によって研磨して除去する物理研磨工程と、
前記金属ベースプレートに付着した導電性材料を研磨液によって研磨して除去する化学研磨工程とを有すること、
を特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項3】
請求項2に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記弾性プレートは、シリコーンゴムからなることを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項4】
請求項3に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記研磨材の平均粉末粒径は、1μm〜5μmであることを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項5】
請求項4に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記研磨材は、アルミナ粉末を有する水系研磨材であることを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1つに記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記研磨液は、フッ化水素酸溶液であることを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項7】
請求項6に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記フッ化水素酸溶液は、フッ化水素の濃度が0.5重量%〜5.0重量%であることを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記金属ベースプレートは、アルミニウムからなることを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項9】
請求項8に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記洗浄工程は、
30℃以下の冷水を用いて前記静電チャックに超音波洗浄を施す超音波洗浄工程と、
40℃〜60℃の温水を用いて前記静電チャックを濯ぐ濯ぎ工程とを有すること、
を特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項10】
請求項9に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記洗浄工程は、前記超音波洗浄工程の時間を5分以内にすることを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記洗浄工程は、前記濯ぎ工程の時間を1分以内にすることを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記脱ガス工程は、希ガスの雰囲気で前記脱ガスを行うことを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つに記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記脱ガス工程は、希ガスの雰囲気で前記静電チャックを100℃〜150℃に加熱することを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1つに記載の静電チャックのクリーニング方法であって、
前記脱ガス工程は、0.1Torr〜0.5Torrの減圧下に前記静電チャックを配置することを特徴とする静電チャックのクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−94166(P2009−94166A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261287(P2007−261287)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】