説明

館内案内システム

【課題】 博物館や美術館で利用者の退館予定時刻や、観覧したい内容、混雑度を元に各展示物の観覧時間の割り当てを算出し、利用者が予定時間内に目的の展示物の鑑賞を終えられるようにすること。
【解決手段】 利用者の使用する携帯端末に予め観覧コース、コース内の展示物、各展示物の内容による重み付けを登録しておき、利用者の設定した観覧時間に合わせて展示物の鑑賞時間を割り当て、館内に複数箇所設置してある位置信号発信装置からの位置情報を受信し、現在の位置と予定上の位置を比較して携帯端末上に表示し、現在の位置と予定の位置に差がある場合は、現在のペースでコースをたどった場合の退館予想時刻を携帯端末上に表示し、利用者が時間配分を意識しながらすべての目的の展示物を鑑賞できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末と館内の位置情報発信装置を利用して、利用者に鑑賞ルートと所要時間を案内する館内案内システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
美術館や博物館の館内の案内には、パンフレットや貸し出される音声案内装置が利用されている。パンフレットでは館内全体の見取り図と主要な展示物の位置を提供している。
また、各展示物の詳細情報を施設で貸し出される専用端末を操作して音声の案内で展示物のガイドを聞くことができる。この際、展示物に振られた番号を利用者が入力することで取得する情報を利用者側がその都度選択することになる。また、この仕組みの場合、次の展示物への案内の程度であれば音声によって伝えることができる。
なお、本発明に関連する公知技術文献としては下記の特許文献1がある。
【特許文献1】特開2002−259612
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、音声の案内装置やパンフレットでは時間の流れに基づく情報を提供することはできないため、全ての人に共通の案内を提供することしかできない。
音声案内は次の展示物へ行くための固定の音声による案内や個々の展示物の詳細情報の提供は可能であるが、館内全体わたるリアルタイムなスケジュール全体での案内を提供することは困難である。いずれの場合でも、個人の鑑賞所要時間と観覧する予定の展示物とは関連づけがないため、団体旅行のような時間制限内に見る予定のものを回るには予定を立てるのが非常に難しくなっている。特に初めて来館する人にとっては観覧する際のペースをつかむことができず、時間が足りなくなり、期待していたものを見逃すことも発生しうる。
パンフレットなどでいくつかの観覧パターンを提示することは可能であるが、個人の鑑賞スピードには差があることや、混雑の具合、館内の不案内などのため、全ての展示物を鑑賞し終えるまでの予定時間との差をつかむことができず最終的に時間内に予定をこなせるかはわからない。
また、上記特許文献1に開示された技術においては、展示物の映像や音声を提供できるが、鑑賞ルートと所要時間を提示することはできない。
【0004】
本発明の目的は、鑑賞希望の展示物を予定時間内で鑑賞し終えるように案内することができる館内案内システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る館内案内システムは、観覧コース上の位置信号を発信する位置信号発信装置と、利用者が携帯し、複数の観覧コースが予め登録されている携帯端末とから構成されたシステムであって、
前記携帯端末が、
複数の観覧コースのうち1つを選択する第1の手段と、選択した観覧コースにおける混雑状態レベルを入力する第2の手段と、退館希望時刻を入力する第3の手段と、観覧開始時刻から前記退館希望時刻までの間において前記第1の手段によって選択された観覧コース上の各展示物の鑑賞に費やすことができる鑑賞時間を前記混雑状態レベルを参照して算出し、スケジューリングする第4の手段と、観覧コース上において前記位置信号発信装置からの位置信号を受信して現在位置を判定し、その判定結果とスケジューリングされた位置との差に基づき展示物鑑賞の進捗状況と退館予想時刻とを利用者に通知する第5の手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の館内案内システムによれば、次のような効果がある。
(1)個人の退館希望時刻と見たいコースを選択することで、利用者別の観覧ルートと展示物の鑑賞時間をスケジューリングすることができ、鑑賞希望の展示物を予定時間内で鑑賞し終えることができる。
(2)混雑度を考慮することで、現在の混雑状態に即したスケジュールを提供することができる。
(3)位置情報の確認により、利用者の観覧の遅れなどを認識でき、利用者に通知することや、現在のペースでの退館予想時刻を通知することで、利用者がペースを調整しながら観覧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を適用した館内案内システムの一実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の一例を示すシステム構成図であり、本実施形態の館内案内システムは、利用者が管内で持ち歩く携帯端末1と、位置情報を提供する複数の無線LAN装置2とデータ作成用コンピュータ3で構成され、携帯端末1は無線LAN装置2から発信される位置信号を受信し、その位置信号により現在どの位置にいるのかを判定し、図2で示すように携帯端末1の表示画面に表示されている館内図上に、現在地4をポイント表示する。所定周期でこの位置信号を確認し、随時利用者の位置を更新することができる。
携帯端末1は、図2に示すように、施設の担当者および利用者がデータ入力登録画面でカーソルを動かす際のカーソル移動ボタン5、入力したデータの確定ボタン6、本装置の案内スタートボタン7、案内終了ボタン8を備えている。
【0008】
図3は、本システムを使用する施設側での処理を示すフローチャートである。
施設のデータ管理者は、展示物に合わせて、有名作品コース、中世ヨーロッパコース、古代エジプトコースなどといった観覧のコースを複数作成する(ステップ301)。その各観覧コースに含まれる展示物のリストを作成する(ステップ302)。それぞれの展示物の重要度、人気度、知名度をもとに個々の展示物に重み付けを行う(ステップ303)。これらのコースごとの観覧の経路情報を作成する(ステップ304)。これらのデータをLAN接続や外部記憶装置を利用して携帯端末1にダウンロードする(ステップ305)。
施設の窓口で携帯端末1を利用者へ手渡す係員は、その時点で館内の混雑状態を携帯端末1に施設管理者用画面から入力し、利用者用の画面に切り替えてから利用者へ手渡す。
【0009】
図4は、本システムを利用する施設利用者側での入力手順を示すフローチャートである。
利用者は施設の担当者より携帯端末1を受け取ると、施設側で予め用意されている観覧コースリストから自分の利用したい観覧コースを選択する(ステップ401)。次に希望する退館時刻をカーソル移動ボタン5によって表示画面に表示された数字ボタンを選択して入力する(ステップ402)。この後、携帯端末1のスタートボタン7を押すと、最初の展示物までの館内の案内経路図が表示され、利用者を誘導する(ステップ403)。この時点が鑑賞開始時刻として設定される。
【0010】
図5は、利用者が選択した観覧コース上で各展示物の鑑賞に費やすことができる鑑賞時間を算出し、スケジューリングする処理を示すフローチャートである。
このスケジューリング処理は、携帯端末1の内部メモリに格納されたスケジューリングプログラムによって実施される。
スケジューリングプログラムには、入力データとして、利用者が選択した観覧コース名、各コースの展示物名、各展示物の重み、各コースの観覧ルート、混雑度レベル、退館希望時刻が与えられる。
スケジューリングプログラムは、利用者によって選択された観覧コースに含まれる展示物に対して割り当てられた重みを参照してそれぞれの鑑賞時間を決定する(ステップ501)。混雑度を鑑みて移動時間を決定する(ステップ502)。次に、鑑賞時間と次の展示物までの移動時間が予め決めてある最大と最小の範囲に収まるかどうかを判定し(ステップ503)、収まる場合は決定値として利用者に提示する(ステップ504)。範囲外の場合は最大もしくは最低必要な所要時間を提示し、利用者に観覧コースまたは退館希望時刻の再考を促す。そして、再び利用者の決定に基づき上記の判定を繰り返す。
【0011】
図6は、スケジューリングプログラムで設定したスケジュールと、実際の利用者の位置の違いを検出する処理の流れを示すフローチャートである。
利用者が順路を歩いて進むと、各展示室など館内に複数取り付けられている無線LANの位置信号発信装置からの信号を所定の時間間隔で受信する(ステップ601)。その装置と携帯端末1の距離とで現在の位置を取得し、携帯端末1の表示画面の館内地図へ表示する(ステップ602)。
館内地図にはこれから進むべき順路が示されており(ステップ603)、また同時にスケジューリングプログラムが設定したスケジュールでユーザが居ることが予定されている位置を表示し(ステップ604)、予定時刻との誤差を館内図上で目視できるようにする。
【0012】
図7は、利用者の現在の位置と予定上の位置が違う際の画面の例である。
現在の利用者の位置からスケジュールに従ったルートが矢印9で示されている。予定上の位置は10で示された図形で表されており、この例では、利用者は予定より早くコースを辿っていることになる。利用者はこの画面を見ることで、予定より今のペースは早いことを認識し、もう少し余裕を持って鑑賞しても良いということに気づくことができる。
逆に遅れていることが示された場合には、少しペースをあげないと予定のコースを消化できないことに気づくことができる。
【0013】
図8は、ユーザが予め設定しておいた退館希望時刻と、現在の位置から割り出した退館予想時刻を通知する処理の流れを示すフローチャートである。
この処理は携帯端末1で実行する。まず、現在の位置を無線LAN装置2より取得する(ステップ801)。予定上の位置を取得する(ステップ802)。現在の位置が予定より遅れている場合は(ステップ803)、本来居るべき位置との差分を切り出して(ステップ804)、その部分にある展示物の鑑賞時間と移動時間を予定時間に追加して退館予想時刻を算出する(ステップ805)。現在の位置が予定より進んでいる場合は(ステップ806)、本来の予定位置との差分を算出し(ステップ807)、その部分にある展示物の鑑賞時間と移動時間を予定時間から削除して(差し引いて)退館予想時刻を算出する(ステップ808)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態例を示すシステム構成図である。
【図2】携帯端末上に館内案内図が表示されている画面の例である。
【図3】施設側でのデータ登録処理のフローチャートである。
【図4】利用者側のデータ登録処理のフローチャートである。
【図5】観覧時間算出処理のフローチャートである。
【図6】位置の違い検出処理のフローチャートである。
【図7】現在の位置と予定上の位置が違う際の画面の例である。
【図8】退館予想時刻の算出処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0015】
1…携帯端末、2…無線LAN装置、3…データ作成用コンピュータ、4…利用者の現在位置のマーク、5…カーソル操作ボタン、6…決定ボタン、7…スタートボタン、8…終了ボタン、9…利用者が進むべき経路、10…利用者のスケジュール上の位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観覧コース上の位置信号を発信する位置信号発信装置と、利用者が携帯し、複数の観覧コースが予め登録されている携帯端末とから構成されたシステムであって、
前記携帯端末が、
複数の観覧コースのうち1つを選択する第1の手段と、選択した観覧コースにおける混雑状態レベルを入力する第2の手段と、退館希望時刻を入力する第3の手段と、観覧開始時刻から前記退館希望時刻までの間において前記第1の手段によって選択された観覧コース上の各展示物の鑑賞に費やすことができる鑑賞時間を前記混雑状態レベルを参照して算出し、スケジューリングする第4の手段と、観覧コース上において前記位置信号発信装置からの位置信号を受信して現在位置を判定し、その判定結果とスケジューリングされた位置との差に基づき展示物鑑賞の進捗状況と退館予想時刻とを利用者に通知する第5の手段とを備えることを特徴とする館内案内システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−48105(P2007−48105A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232842(P2005−232842)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】