説明

駆動伝達装置、駆動装置および画像形成装置

【課題】駆動伝達ギヤが軸部材に対して軸方向に往復移動する構成で、従来よりも長期に渡ってギヤ内周摺動部と軸外周摺動部との間の耐摩耗性を維持し、長寿命化を図ることができる駆動伝達装置、並びに、これを備えた駆動装置、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】固定軸部材61と、固定軸部材61の回りで回転する駆動伝達ギヤ64と、固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の位置を往復移動させるギヤ移動手段とを備え、固定軸部材61の軸外周面61fに軸外周摺動部よりも外周径が小さく軸外周面61f上の円周方向に沿って一周する溝部となる軸外周小径部であるグリス溝62を形成し、グリス溝62にグリス63を充填した駆動伝達装置200で、グリス溝62に対してギヤ内周大径部76が常に対向するように固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の移動範囲を規制する規制手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に対して固定された固定軸部材と、この固定軸部材の回りで回転する駆動伝達ギヤとを備えた駆動伝達装置、並びにこの駆動伝達装置を備えた駆動装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置の長寿命化の要求に伴い、感光体等の回転体に駆動源からの回転駆動を伝達する駆動伝達装置の長寿命化も要求されている。駆動伝達装置としては、装置本体の筺体に固定され回転しない固定軸部材と、この固定軸部材の回りで回転する駆動伝達ギヤとを備え、駆動源からの回転駆動を駆動伝達ギヤを介して回転体に向けて伝達するものがある。このような駆動伝達装置では、長寿命化のために駆動伝達ギヤと固定軸部材との間の回転摺動部の耐磨耗性の向上が求められる。
【0003】
駆動伝達ギヤと固定軸部材との間の回転摺動部の耐磨耗性の向上する構成としては、特許文献1に記載の駆動伝達装置(特許文献1では、連結駆動機構)のように、駆動伝達ギヤと固定軸部材との回転摺動部に軸受部材を設ける構成を挙げることができる。しかし、小型化および低コスト化が要求される画像形成装置では、駆動伝達ギヤと固定軸部材との回転摺動部に軸受部材を設けることは困難である。
【0004】
回転摺動部に軸受部材を設けない駆動伝達装置では、駆動伝達ギヤの内周面が固定軸部材の外周面と擦り合わされて駆動伝達ギヤが回転する。このため、駆動伝達ギヤの内周面の摺動部(以下、ギヤ内周摺動部と呼ぶ。)と、固定軸部材の外周面の摺動部(以下、軸外周摺動部と呼ぶ。)との耐磨耗性の向上が要求される。
ギヤ内周摺動部と軸外周摺動部との耐磨耗性の向上を図ることができる構成として、固定軸部材の外周面にグリス溝を設け、このグリス溝にグリスを充填する構成の駆動伝達装置が実機の画像形成装置等に用いられ既に知られている。
【0005】
以下、固定軸部材の外周面にグリス溝を設けた従来の駆動伝達装置の2つの例について、図11及び図12を用いて説明する。
図11は、従来の駆動伝達装置の一つ目の例(以下、従来例1と呼ぶ)の説明図である。図11(a)は、駆動伝達ギヤの回転中心線を通る断面の説明図であり、図11(b)は、図11(a)中の矢印A方向から見た正面図である。また、図11(a)は図11(b)中のB‐B´断面の断面図である。
従来例1の駆動伝達装置200は、装置本体の筺体であるフレーム75に固定され回転しない固定軸部材61と、固定軸部材61の回りで回転する駆動伝達ギヤ64とを備える。図11では、駆動伝達ギヤ64に駆動を入力する入力ギヤと、駆動伝達ギヤ64から駆動が出力される出力ギヤとの図示は省略している。
【0006】
図11に示す従来例1の駆動伝達装置200では、不図示の入力ギヤから不図示の入力ギヤから駆動伝達ギヤ64に駆動が伝達されると、駆動伝達ギヤ64が図11(b)中の矢印Cで示すように回転する。このとき、駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fと、固定軸部材61の軸外周面61fとが摺動する。
図11に示す従来例1の駆動伝達装置200では、固定軸部材61の軸線方向に沿って軸外周面61fにグリス溝62を設けており、このグリス溝62にグリス63が充填されている。駆動伝達ギヤ64が矢印Cで示すように回転することによって、ギヤ内周面64fにおけるグリス溝62と対向してグリス63が付着した箇所が軸外周面61fと対向する位置に移動する。これにより、ギヤ内周面64fにおけるギヤ内周摺動部と軸外周面61fにおける軸外周との間にグリス63を進入させることができ、ギヤ内周摺動部と軸外周摺動部との摩耗を抑制し、耐摩耗性を向上させることができる。
【0007】
しかし、従来例1の駆動伝達装置200では、固定軸部材61の軸線方向に沿ったグリス溝62と軸外周面61fとの境目となる溝エッジ部61eが延在する軸方向と、固定軸部材61に対してギヤ内周面64fが移動する方向とが直交する。このような構成で、駆動伝達ギヤ64が回転すると、固定軸部材61に対して移動するギヤ内周面64fに溝エッジ部61eがカウンター当接するような状態となり、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが擦れて焼付きが発生するおそれがある。
このような従来例1の課題を解決することができる構成である従来例2の駆動伝達装置について図12を用いて説明する。
【0008】
図12は、従来の駆動伝達装置の二つ目の例(以下、従来例2と呼ぶ)の説明図である。
従来例2の駆動伝達装置200は、装置本体の筺体であるフレーム75及びブラケット73に固定され回転しない固定軸部材61と、固定軸部材61の回りで回転する駆動伝達ギヤ64とを備える。さらに、駆動モータ500からの回転駆動を駆動伝達ギヤ64に入力する入力ギヤ65と、駆動伝達ギヤ64の回転駆動を不図示の被駆動部に出力する出力ギヤ69とを備える。図12は、駆動伝達ギヤ64の回転中心線64aを通る断面の説明図である。また、駆動伝達ギヤ64は大径ギヤ部77と小径ギヤ部79とからなる2段ギヤである。
図12の駆動伝達装置200は、駆動モータ500が駆動することで回転する入力ギヤ65によって駆動伝達ギヤ64の大径ギヤ部77に回転駆動が入力されて駆動伝達ギヤ64が回転する。駆動伝達ギヤ64が回転することで駆動伝達ギヤ64の小径ギヤ部79と連結する出力ギヤ69が回転し、不図示の被駆動部に駆動モータ500の回転駆動を伝達する。
【0009】
図12の駆動伝達装置200では、駆動伝達ギヤ64の大径ギヤ部77及び入力ギヤ65が、はすば歯車となっており、入力ギヤ65と駆動伝達ギヤ64とが回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な図中矢印D方向のスラスト力が働く。このため、駆動モータ500を駆動することで、駆動伝達ギヤ64に回転駆動が入力されると駆動伝達ギヤ64はスラストガタ68の分だけスラスト力が働く方向(以下、スラスト方向と呼ぶ)に移動し、ワッシャ74に突き当たった状態で回転する。駆動モータ500を停止すると、不図示の付勢部材の作用によって駆動伝達ギヤ64がスラスト方向とは逆方向に付勢され、ワッシャ74に対してスラストガタ68の分だけ離間した図12に示す状態となる。このため、駆動モータ500の駆動と停止を繰り返すことで、駆動伝達ギヤ64はスラスト方向に移動したり、戻ったりして軸線方向に沿って往復運動を行う。
図12に示す従来例2の駆動伝達装置200では、円柱状の固定軸部材61の軸外周面61fの円周方向に沿って一周するようにグリス溝62を設けており、このグリス溝62にグリス63が充填されている。駆動モータ500が駆動し、駆動伝達ギヤ64がスラスト方向に移動することによって、停止時のギヤ内周面64fにおけるグリス溝62と対向してグリス63が付着した箇所がグリス溝62よりもスラスト方向側の軸外周面61fの位置と対向する位置に移動し、この軸外周面61fの位置にグリス63を付着させる。その後、駆動モータ500が停止し、駆動伝達ギヤ64がスラスト方向とは逆方向に移動することによって、軸外周面61fのグリス63が付着した箇所が、停止時のギヤ内周面64fにおけるグリス溝62と対向する箇所よりもスラスト方向側のギヤ内周面64fの箇所と対向し、このギヤ内周面64fの箇所にグリス63を付着させることができる。このように駆動モータ500の駆動と停止を繰り返すことによる駆動伝達ギヤ64の軸線方向に沿った往復運動によってグリス溝62に充填されたグリス63をスラスト方向に供給することが出来る。これにより、ギヤ内周面64fと軸外周面61fとの間にグリス63を進入させることができ、ギヤ内周摺動部と軸外周摺動部との摩耗を抑制し、耐摩耗性を向上させることができる。
また、グリス溝62と軸外周面61fとの境目となる溝エッジ部61eが摺動方向に沿って形成されるため、駆動伝達ギヤ64が回転したときに、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが擦れて焼付きが発生することを抑制できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、図12に示す従来例2の駆動伝達装置200は、ギヤ内周面64fにおける軸外周面61fに対向する箇所と、グリス溝62に対向する箇所との内径が同じである。このような構成では、グリス溝62の容積分しかグリス63を充填することが出来ず、長期に渡ってギヤ内周面64fと軸外周面61fとの間にグリス63を供給し続けることができない。ギヤ内周面64fと軸外周面61fとの間へのグリス63の供給が不足すると、ギヤ内周摺動部と軸外周摺動部との間の摺動負荷が大きくなり、駆動伝達装置が寿命となる。
【0011】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、駆動伝達ギヤが軸部材に対して軸方向に往復移動する構成で、従来よりも長期に渡ってギヤ内周摺動部と軸外周摺動部との間の耐摩耗性を維持し、長寿命化を図ることができる駆動伝達装置、並びに、これを備えた駆動装置、及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、軸部材と、該軸部材の回りで回転自在に該軸部材に支持された駆動伝達ギヤと、該軸部材に対する該駆動伝達ギヤの軸方向の位置を往復移動させるギヤ移動手段とを有し、該駆動伝達ギヤが回転することにより、該駆動伝達ギヤの内周面のギヤ内周摺動部と該軸部材の外周面の軸外周摺動部とが摺動する構成で、該軸部材の外周面に、該軸外周摺動部よりも外周の径が小さく該軸部材の外周面上の円周方向に沿って一周する溝部となる軸外周小径部を形成し、該軸外周小径部にグリスが充填されており、入力部から回転駆動が入力されて該駆動伝達ギヤが回転する駆動伝達装置において、上記駆動伝達ギヤの内周面に、上記ギヤ内周摺動部よりも内周の径が大きいギヤ内周大径部を形成し、上記軸外周小径部に対して該ギヤ内周大径部が常に対向するように該軸部材に対する該駆動伝達ギヤの軸方向の移動範囲を規制する規制手段を備えることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の駆動伝達装置において、上記ギヤ移動手段は、該駆動伝達ギヤを回転させることで該駆動伝達ギヤに対してスラスト力が働く歯車機構であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の駆動伝達装置において、上記歯車機構が、はすば歯車を備えることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2の駆動伝達装置において、上記歯車機構が、ホイールギヤを備えることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項2の駆動伝達装置において、上記歯車機構が、かさ歯車を備えることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項2の駆動伝達装置において、上記歯車機構が、ウォームギヤを備えることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項2の駆動伝達装置において、上記駆動伝達ギヤは2段ギヤであり、2段のギヤを構成する2つの歯車のうちの少なくとも一方が請求項3乃至6のいずれか1項に記載の上記歯車機構を構成することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、上記ギヤ内周摺動部と上記ギヤ内周大径部との間は、断面形状が傾斜状となるように、上記駆動伝達ギヤの内周面における該ギヤ内周摺動部側から該ギヤ内周大径部側に向けて内周の径が大きくなる形状となっていることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、上記ギヤ内周摺動部と上記ギヤ内周大径部との間のギヤ内周面は、断面形状がR形状となるように、上記駆動伝達ギヤの内周面における該ギヤ内周摺動部側から該ギヤ内周大径部側に向けて徐々に内周の径が大きくなる形状となっていることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、上記ギヤ内周摺動部と上記ギヤ内周大径部との間のギヤ内周面は、断面形状が袋形状となるように、上記駆動伝達ギヤの内周面における該ギヤ内周摺動部側から該ギヤ内周大径部側に向けて徐々に内周の径が大きくなる形状となっていることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、回転駆動する駆動源と、該駆動源の回転駆動を回転体に伝達する駆動伝達手段とを有する駆動装置において、上記駆動伝達手段として、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の駆動伝達装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、像担持体上に形成された画像を最終的に記録媒体上に転写して、記録媒体上に画像を形成する画像形成部と、装置本体に設けられた被駆動部材を駆動させる駆動手段とを備えた画像形成装置において、前記駆動手段として、請求項11の駆動装置を備えることを特徴とするものである。
【0013】
本発明においては、駆動伝達ギヤの内周面に、ギヤ内周摺動部よりも内周の径が大きいギヤ内周大径部を形成し、このギヤ内周大径部が軸外周小径部に対向する位置に配置されることで、軸外周小径部によって形成されるグリス溝の容積を超える量のグリスをギヤ内周大径部によって形成される空間に充填することができる。このような構成では、駆動伝達ギヤが往復移動の一方向に移動する前に、グリス溝と対向し、グリスを保持するギヤ内周大径部によって形成される空間の一部が、軸部材に対する駆動伝達ギヤの軸方向の位置が上記一方向に移動することで、軸外周摺動部と外周の径が等しい軸部材の外周面と対向する。これにより、ギヤ内周大径部によって形成される空間の一部に保持されたグリスが軸外周摺動部と外周の径が等しい軸部材の外周面に供給される。次に、駆動伝達ギヤが上記一方向とは逆方向に移動することで、グリスが供給された軸外周摺動部と外周の径が等しい軸部材の外周面がギヤ内周摺動部と対向し、ギヤ内周摺動部にグリスが供給される。さらに、駆動伝達ギヤが上記一方向に移動することで、グリスが供給されたギヤ内周摺動部が軸外周摺動部と対向して、ギヤ内周摺動部と軸外周摺動部との間にグリスが供給される。
また、グリスを充填するときにギヤ内周大径部が軸外周小径部に対向する位置にあっても、駆動伝達ギヤが軸部材に対して軸方向に移動して、ギヤ内周面におけるギヤ内周摺動部と内周の径が同じ箇所が軸外周小径部に対向するとグリス溝の容積を超えるグリスが掻き取られてしまい、ギヤ内周摺動部と軸外周摺動部との間にグリスを長期に渡って供給しつづけることができなくなる。これに対して、本発明においては、規制手段が軸外周小径部に対してギヤ内周大径部が常に対向するように軸部材に対する駆動伝達ギヤの軸方向の移動範囲を規制しているため、グリス溝の容積を超えるグリスが掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部と軸外周摺動部との間にグリスを従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ギヤ内周摺動部と軸外周摺動部との間にグリスを従来よりも長期に渡って供給し続けることにより、内周摺動部と軸外周摺動部との間の耐摩耗性を維持し、長寿命化を図ることができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の駆動伝達装置の説明図。
【図2】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図3】同プリンタのK用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図4】同プリンタの駆動ローラへの駆動伝達装置の説明図。
【図5】実施例2の駆動伝達装置の説明図。
【図6】実施例3の駆動伝達装置の説明図。
【図7】実施例4の駆動伝達装置の説明図。
【図8】実施例5の駆動伝達装置の説明図。
【図9】実施例6の駆動伝達装置の説明図。
【図10】実施例7の駆動伝達装置の説明図。
【図11】従来例1の駆動伝達装置の説明図。
【図12】従来例2の駆動伝達装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタ100という)の一実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図2は、プリンタ100を示す概略構成図である。同図において、プリンタ100は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン(以下、K、Y、M、Cと記す)のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット1K,Y,M,Cを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のK,Y,M,Cトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するためのプロセスユニット1Kを例にすると、図3に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、不図示の除電装置、帯電装置4K、現像装置5K等を備えている。画像形成ユニットたるプロセスユニット1Kは、プリンタ100本体に対して脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
【0017】
帯電装置4Kは、駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる帯電ローラを備え、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、レーザ光Lによって露光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示を省略したKトナーを用いる現像装置5KによってKトナー像に現像される。そして、後述する中間転写ベルト16上に中間転写される。ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写工程を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色のプロセスユニット(1Y,M,C)においても、同様にして感光体(2Y,M,C)上に(Y,M,C)トナー像が形成されて、後述する中間転写ベルト16上に中間転写される。
【0018】
現像装置5Kは、図示しないKトナーを収容する縦長のホッパ部6Kと、現像部7Kとを有している。ホッパ部6K内には、駆動手段によって回転駆動されるアジテータ8K、これの鉛直方向下方で駆動手段によって回転駆動される撹拌パドル9K、これの鉛直方向で駆動手段によって回転駆動されるトナー供給ローラ10Kなどが配設されている。ホッパ部6K内のKトナーは、アジテータ8Kや撹拌パドル9Kの回転駆動によって撹拌されながら、自重によってトナー供給ローラ10Kに向けて移動する。トナー供給ローラ10Kは、金属製の芯金と、これの表面に被覆された発泡樹脂等からなるローラ部とを有しており、ホッパ部6K内のKトナーをローラ部の表面に付着させながら回転する。
【0019】
現像装置5Kの現像部7K内には、感光体2Kやトナー供給ローラ10Kに当接しながら回転する現像ローラ11Kや、これの表面に先端を当接させる薄層化ブレード12Kなどが配設されている。ホッパ部6K内のトナー供給ローラ10Kに付着したKトナーは、現像ローラ11Kとトナー供給ローラ10Kとの当接部で現像ローラ11Kの表面に供給される。供給されたKトナーは、現像ローラ11Kの回転に伴って現像ローラ11Kと薄層化ブレード12Kとの当接位置を通過する際に、現像ローラ11Kの表面上での層厚が規制される。そして、層厚規制後のKトナーは、現像ローラ11Kと感光体2Kとの当接部である現像領域において、感光体2K表面のK用の静電潜像に付着する。この付着により、K用の静電潜像がKトナー像に現像される。
【0020】
図3を用いてK用のプロセスユニット1について説明したが、Y,M,C用のプロセスユニット1Y,M,Cにおいても、同様のプロセスにより、感光体2Y,M,C表面にY,M,Cトナー像が形成される。
【0021】
先に示した図2において、プロセスユニット1K,Y,M,Cの鉛直方向上方には、光書込ユニット70が配設されている。潜像書込装置たる光書込ユニット70は、画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザ光Lにより、プロセスユニット1K,Y,M,Cにおける感光体2K,Y,M,Cを光走査する。この光走査により、感光体2K,Y,M,C上にK,Y,M,C用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット70は、光源から発したレーザ光Lを、不図示のポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して各感光体2K,Y,M,C上に照射するものである。
【0022】
プロセスユニット1K,Y,M,Cの鉛直方向下方には、無端状の中間転写ベルト16を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。転写手段たる転写ユニット15は、中間転写ベルト16の他に、中転駆動ローラ18、中転従動ローラ17、4つの一次転写ローラ19K,Y,M,C、二次転写ローラ20、ベルトクリーニング装置21、クリーニングバックアップローラ22などを備えている。
【0023】
中間転写ベルト16は、そのループ内側に配設された中転駆動ローラ18、中転従動ローラ17、クリーニングバックアップローラ22及び4つの一次転写ローラ19K,Y,M,Cによって張架されている。そして、詳細は後述する駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される中転駆動ローラ18の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
【0024】
4つの一次転写ローラ19K,Y,M,Cは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト16を感光体2K,Y,M,Cとの間に挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ベルト16のおもて面と、感光体2K,Y,M,Cとが当接するK,Y,M,C用の一次転写ニップが形成されている。
【0025】
一次転写ローラ19K,Y,M,Cには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されており、これにより、感光体2K,Y,M,Cの静電潜像と、一次転写ローラ19K,Y,M,Cとの間に転写電界が形成される。なお、一次転写ローラ19K,Y,M,Cに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0026】
K用のプロセスユニット1Kの感光体2K表面に形成されたKトナー像は、感光体2Kの回転に伴って上述のK用の一次転写ニップに進入すると、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2K上から中間転写ベルト16上に一次転写される。このようにしてKトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト16は、その無端移動に伴ってY,M,C用の一次転写ニップを通過する際に、感光体2Y,M,C上のY,M,Cトナー像が、Kトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト16上には4色トナー像が形成される。
【0027】
転写ユニット15の二次転写ローラ20は、中間転写ベルト16のループ外側に配設されながら、ループ内側の中転駆動ローラ18との間に中間転写ベルト16を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ベルト16のおもて面と、二次転写ローラ20とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ20には、図示しない転写バイアス電源によって二次転写バイアスが印加される。この印加により、二次転写ローラ20と、アース接続されている中転駆動ローラ18との間には、二次転写電界が形成される。
【0028】
転写ユニット15の鉛直方向下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット30がプリンタ100の筐体に対してスライド着脱可能に配設されている。この給紙カセット30は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ30aを当接させており、これを所定のタイミングで図中反時計回り方向に回転させることで、その記録紙Pを給紙路31に向けて送り出す。
【0029】
給紙路31の末端付近には、レジストローラ対32が配設されている。このレジストローラ対32は、給紙カセット30から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを上述の二次転写ニップ内で中間転写ベルト16上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを二次転写ニップに向けて送り出す。
【0030】
二次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト16上の4色トナー像は、二次転写電界やニップ圧の影響を受けて記録紙P上に一括二次転写され、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、二次転写ニップを通過すると、二次転写ローラ20や中間転写ベルト16から曲率分離する。そして、転写後搬送路33を経由して、後述する定着装置34に送り込まれる。
【0031】
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト16には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト16のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置21によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト16のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ22は、ベルトクリーニング装置21によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0032】
定着装置34は、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ34aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ34bとによって定着ニップを形成している。定着装置34内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ34aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化せしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0033】
定着装置34内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路35を経由した後、排紙路36と反転前搬送路41との分岐点にさしかかる。定着後搬送路35の側方には、回動軸42aを中心にして回動駆動される切替爪42が配設されており、その回動によって定着後搬送路35の末端付近を閉鎖したり開放したりする。定着装置34から記録紙Pが送り出されるタイミングでは、切替爪42が実線で示す回動位置で停止して、定着後搬送路35の末端付近を開放している。よって、記録紙Pが定着後搬送路35から排紙路36内に進入して、排紙ローラ対37のローラ間に挟み込まれる。
【0034】
不図示のテンキー等からなる操作部に対する入力操作や、不図示のパーソナルコンピュータ等から送られてくる制御信号などにより、片面プリントモードが設定されている場合には、排紙ローラ対37に挟み込まれた記録紙Pがそのまま機外へと排出される。そして、筐体の上カバー50の上面であるスタック部にスタックされる。
【0035】
一方、両面プリントモードに設定されている場合には、先端側を排紙ローラ対37に挟み込まれながら排紙路36内を搬送される記録紙Pの後端側が定着後搬送路35を通り抜けると、切替爪42が図中点線の位置まで回動して、定着後搬送路35の末端付近が閉鎖されるとともに、排紙路36から反転前搬送路41に向かう通路が切替爪42によって連結される。これとほぼ同時に、排紙ローラ対37が逆回転を開始する。すると、記録紙Pは、今度は後端側を先頭に向けながら搬送されて、反転前搬送路41内に進入する。
【0036】
図2は、プリンタ100を正面側から示している。図紙面に直交する方向の手前側がプリンタ100の前面であり、奥側が後面である。また、プリンタ100の図中右側が右側面、左側が左側面である。プリンタ100の右端部は、ユニット回動軸40aを中心に回動することで筐体本体に対して開閉可能な反転ユニット40になっている。排紙ローラ対37が逆回転すると記録紙Pがこの反転ユニット40の反転前搬送路41内に進入して、鉛直方向上側から下側に向けて搬送される。そして、反転搬送ローラ対43のローラ間を経由した後、半円状に湾曲している反転搬送路44内に進入する。更に、その湾曲形状に沿って搬送されるのに伴って上下面が反転せしめられながら、鉛直方向上側から下側に向けての進行方向も反転して、鉛直方向下側から上側に向けて搬送される。その後、上述した給紙路31内を経て、二次転写ニップに再進入する。そして、もう一方の面にもフルカラー画像が一括二次転写された後、転写後搬送路33、定着装置34、定着後搬送路35、排紙路36、排紙ローラ対37を順次経由して、機外へと排出される。
【0037】
上述の反転ユニット40は、外部カバー45と揺動体46とを有している。具体的には、反転ユニット40の外部カバー45は、プリンタ100本体の筺体に設けられたユニット回動軸40aを中心にして図2中の矢印Aで示すように回動可能に支持されている。この回動により、外部カバー45は、その内部に保持している揺動体46とともに筺体に対して開閉する。図中点線で示すように、外部カバー45がその内部の揺動体46とともに開かれると、反転ユニット40とプリンタ100本体側との間に形成されていた給紙路31、二次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36が縦に2分されて、外部に露出する。これにより、給紙路31、二次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
【0038】
また、揺動体46は、外部カバー45が開かれた状態で、外部カバー45に設けられた図示しない揺動軸を中心にして回動するように外部カバー45に支持されている。この回動により、揺動体46が外部カバー45に対して開かれると、反転前搬送路41や反転搬送路44が縦に2分されて外部に露出する。これにより、反転前搬送路41内や反転搬送路44内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
【0039】
プリンタ100の筺体の上カバー50は、図2中の矢印Bで示すように、上部カバー回動軸51を中心にして回動自在に支持されており、図中反時計回り方向に回転することで、筺体に対して上カバー50が開いた状態になる。そして、筺体の上部開口を外部に向けて大きく露出させる。これにより、光書込ユニット70が露出する。
【0040】
プリンタ100では、4つのプロセスユニット1K,Y,M,Cの上方には光書込ユニット70が配置されているため、筐体の上カバー50を開くだけでは、4つのプロセスユニット1K,Y,M,Cを上方から見ることができない。また、光書込ユニット70が邪魔になるので、そのままでは上カバー50の開放によって出現した上部開口からそれらプロセスユニットに対してメンテナンス作業を行うことができない。
このため、プリンタ100では、必要に応じて光書込ユニット70がプリンタ100本体に対して着脱可能となっている。そして、4つのプロセスユニット1K,Y,M,Cのいずれかを交換する際には、上カバー50を開いて光書込ユニット70を取り外すことでプロセスユニット1K,Y,M,Cを露出させ、必要なプロセスユニット1を取り外し、交換する。
筐体の上カバー50を開放して、プロセスユニット1を装置本体から着脱可能とする構成としては、光書込ユニット70を上カバー50に固定し、上カバー50を開放することで、光書込ユニット70が上カバー50とともにプロセスユニット1K,Y,M,Cの上方から離脱する構成としてもよい。
【0041】
次に、中転駆動ローラ18を駆動する駆動手段について説明する。
図4は、中転駆動ローラ18を駆動する駆動装置300の斜視説明図である。駆動装置300は、駆動源である駆動モータ500が駆動することにより、駆動モータ500の回転軸に固定された入力ギヤ65が回転し、駆動伝達ギヤ64及び出力ギヤ69を介して、中転駆動ローラ18の回転軸に固定された駆動ローラギヤ18gに回転駆動を伝達する。
【0042】
また、駆動装置300は、4つのプロセスユニット1K,Y,M,Cに対して駆動を伝達する作像部駆動伝達ギヤ25K,Y,M,Cを備える。K用のプロセスユニット1Kに駆動を伝達するK用の作像部駆動伝達ギヤ25Kは、大径のギヤ部が入力ギヤ65と噛合っており、駆動モータ500が駆動することで、入力ギヤ65が回転し、K用の作像部駆動伝達ギヤ25Kに回転駆動が入力され、K用のプロセスユニット1Kを構成する各回転駆動部材(感光体2K、帯電ローラ、アジテータ8K、撹拌パドル9K、トナー供給ローラ10K、現像ローラ11K等)に回転駆動が伝達される。
【0043】
一方、Y,M,C用のプロセスユニット1Y,M,Cに駆動を伝達するY,M,C用の作像部駆動伝達ギヤ25Y,M,Cは第二駆動モータ520が駆動することによって回転駆動する。第二駆動モータ520が駆動することにより、第二駆動モータ520の回転軸に固定された第二入力ギヤ521が回転し、この第二入力ギヤ521に大径のギヤ部が噛合ったM用の作像部駆動伝達ギヤ25Mが回転駆動する。そして、作像部駆動伝達ギヤ25Mからは2つのアイドラギヤ530のそれぞれを介して、C用及びY用の作像部駆動伝達ギヤ25C,Yが回転駆動する。これにより、Y,M,C用のプロセスユニット1Y,M,Cを構成する各回転駆動部材に回転駆動が伝達される。
黒用のトナーのみを用いて作像するモノクロモードのときには、Y,M,C用の感光体2Y,M,Cは、中間転写ベルト16から離間し、第二駆動モータ520は停止した状態となる。
【0044】
〔実施例1〕
次に、本実施形態の特徴部である、駆動装置300の駆動モータ500の回転駆動を駆動ローラギヤ18gに伝達する駆動伝達装置200の一つ目の実施例(以下、実施例1と呼ぶ)について説明する。
図1は、実施例1の駆動伝達装置200の説明図であり、図1(a)は駆動モータ500が停止している状態の説明図、図1(b)は駆動モータ500が駆動している状態の説明図である。
【0045】
図1に示すように、駆動伝達装置200は、水平に配置された固定軸部材61があり、固定軸部材61の片方の端部がブラケット73にカシメ固定されており、もう1方の軸端部は小径になっており、フレーム75の保持穴に挿入保持されている。固定軸部材61の軸小径部61aにはワッシャ74が嵌め込まれており、固定軸部材61の軸小径部61aと軸大径部61bとの境目となる軸大径部61b側のスラスト面61cとフレーム75端面とによって挟持されている。軸大径部61bには、軸外周面61fとギヤ内周面64fとが対向するように駆動伝達ギヤ64が取り付けられている。
駆動伝達装置200では、駆動伝達ギヤ64は大径ギヤ部77と小径ギヤ部79とからなる2段ギヤであり、大径ギヤ部77ははすば歯車となっており、はすば歯車の入力ギヤ65に連結されている。一方、小径ギヤ部79は平歯車であり、出力ギヤ69に連結されている。大径ギヤ部77と入力ギヤ65とのはすば歯車同士の連結により、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な図1(b)中の矢印D方向のスラスト力が働く。
【0046】
駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fには、駆動伝達ギヤ64が回転することで軸外周面61fと摺動するギヤ内周摺動部67が形成されており、ギヤ内周摺動部67に対して上記矢印D方向とは逆方向にギヤ内周摺動部67よりも内周の径が大きいギヤ内周大径部76が形成されている。
ギヤ内周摺動部67の摺動部大径側端78とギヤ内周大径部76との間には、回転中心線64aに直交する平面であるグリス転写面80が形成されている。
【0047】
また、プリンタ100が小型低コストを要求される装置である場合、駆動伝達ギヤ64と固定軸部材61との摺動部に専用の軸受部材を設けることが困難である。
固定軸部材61には軸外周面61fよりも外径径の小さい軸外周小径部であるグリス溝62が設けられている。グリス溝62の位置は、図1(a)に示す停止時の状態で、摺動部大径側端78と対向する軸外周面61fにおける位置から、グリス溝間距離72の分だけブラケット73側の位置である。ここで、グリス溝間距離72は、スラストガタ68の幅以上の距離に設定されている。
このような構成により、図1(a)に示す駆動伝達ギヤ64が停止した状態から、図1(b)で示すように駆動伝達ギヤ64が回転することによって、駆動伝達ギヤ64がスラスト力が働く方向(図1中の矢印D方向)に移動してもグリス溝62とギヤ内周摺動部67とが対向することがない。よって、グリス溝62の容積を超えるグリス63がギヤ内周摺動部67を形成する部分に掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63を従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。
【0048】
図12に示す従来例2の構成も実施例1と同様に、グリス溝62と軸外周面61fとの境目となる溝エッジ部61eが摺動方向に沿って形成されるため、駆動伝達ギヤ64が回転したときにギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが擦れて焼付きが発生することを抑制できる。しかし、溝エッジ部61eが摺動方向に沿って形成されていたとしても、軸外周面61fのみがギヤ内周面64fと摺動する構成に比べて、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとの摺動部では応力集中が発生しやすい。摺動部で応力集中が発生すると焼き付きが発生し易くなる。
一方、図1に示す実施例1の駆動伝達装置200では、グリス溝62とギヤ内周摺動部67とが対向することがない。このため、グリス溝62と軸外周面61fとの境目となる溝エッジ部61eがギヤ内周面64fと対向することが無く、溝エッジ部61eがギヤ内周面64fと摺動して応力集中を発生させないため、焼き付きが発生することを防止できる。
【0049】
また、ギヤ内周摺動部67の摺動部大径側端78よりもブラケット73側のギヤ内周大径部76とグリス溝62との間に形成された空間に充填されたグリス63は、停止時には摺動部大径側端78とギヤ内周大径部76との間のグリス転写面80に転写されている。そして、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な図1(b)中の矢印D方向のスラスト力が働くと、駆動伝達ギヤ64のグリス転写面80がワッシャ74側に移動する。これにより、グリス転写面80に転写されたグリス63が軸外周面61fに移動し、駆動伝達ギヤ64の回転により軸外周面61fの全周にグリス63が供給され、軸外周面61fとギヤ内周摺動部67との磨耗を防止することができる。
【0050】
図12で示す従来例2の駆動伝達装置200のように、ギヤ内周面64fの軸外周面61fと摺動する箇所と同じ内径の箇所が、グリス溝62と対向する構成の場合、グリス溝62と対向する箇所の隙間が小さいため、グリス63の充填量が制限される。さらに、グリス溝62と対向するギヤ内周面64fによってグリス63のほとんどが扱き出されてしまう。このため、長期に渡ってギヤ内周面64fと軸外周面61fとの間にグリス63を供給し続けることができない。
【0051】
一方、図1に示す実施例1の駆動伝達装置200は、ギヤ内周大径部76がグリス溝62に対向する位置に配置されることで、グリス溝62の容積を超える量のグリス63をギヤ内周大径部76によって形成される空間に充填することができる。
さらに、規制手段であるブラケット73、フレーム75及びワッシャ74が、グリス溝62に対してギヤ内周大径部76が常に対向するように固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の移動範囲を規制している。このため、グリス溝62の容積を超えるグリス63が駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fで掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63を従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。
ここで、グリス溝62に充填されたグリス63のギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間への供給は次のように行われる。すなわち、グリス溝62にあるグリス63が停止時にグリス転写面80に転写され、駆動時に駆動伝達ギヤ64が軸方向に移動しグリス転写面80が軸方向に移動することで、このグリス63が軸外周面61fに供給される。次の停止時に駆動伝達ギヤ64が元の位置に戻り、グリス転写面80がグリス溝62に近づくことで再びグリス転写面80にグリス63が転写される。このように、回転時と停止時とで駆動伝達ギヤ64が軸方向の移動を繰り返すことにより、グリス溝62に充填されたグリス63がギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間へと供給される。
【0052】
また、図11に示す従来例1では、溝エッジ部61eが摺動方向に直交するように延在するため、駆動伝達ギヤ64が回転すると、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが擦れ、駆動伝達ギヤ64の内周面または固定軸部材61の溝エッジ部61eが削れ、異物が生じることがある。また、図11に示す従来例1では、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとの摺動部で応力集中が発生すると、駆動伝達ギヤ64の内周面または固定軸部材61の溝エッジ部61eが削れ、異物が生じることがある。
このような異物が発生すると、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63が残っていても、異物とギヤ内周摺動部67とが摺動することになり、異物にはグリス63がついていないため、ビビリ音と呼ばれる異音が発生することがある。
これに対して、実施例1の駆動伝達装置200では、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが対向することがないため、駆動伝達ギヤ64の内周面または固定軸部材61の溝エッジ部61eが削れることを防止し、異物に起因する異音の発生を防止することができる。
【0053】
また、従来例1の駆動伝達装置200が備える固定軸部材61は、その軸線方向に沿うようにグリス溝62が形成されている。このような固定軸部材61を作成する場合、フライスを用いた加工を行う必要があり、旋盤で軸状の部材を作成した後、グリス溝62を形成するために、フライス加工機に軸状の部材をセットし直してフライス加工を行う必要がある。このため、二回の加工段取りが発生し、部品コスト、生産時間が長くなる。一方、実施例1の駆動伝達装置200が備える固定軸部材61のように、軸に全周溝を設けることでグリス溝62を形成する構成であれば、旋盤を用いた一回の加工段取りで部品が作成出来る。このため、実施例1の固定軸部材61は従来例1よりも生産性の向上を図ることができる。
【0054】
〔実施例2〕
次に、駆動伝達装置200の二つ目の実施例(以下、実施例2と呼ぶ)について説明する。
図5は、実施例2の駆動伝達装置200の説明図であり、図5(a)は駆動モータ500が停止している状態の説明図、図5(b)は駆動モータ500が駆動している状態の説明図である。
【0055】
実施例2の駆動伝達装置200は、2段ギヤである駆動伝達ギヤ64の大径ギヤ部77がホイールギヤで構成され、入力ギヤ65がウォームギヤで構成されている点で実施例1の駆動伝達装置200と相違する。他の構成は共通するため、ここでは相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
図5に示すように、実施例2の駆動伝達装置200は、ホイールギヤで構成される大径ギヤ部77とウォームギヤで構成される入力ギヤ65とが連結されている。ウォームギヤの入力ギヤ65には進み角が設けられており、例えば進み角16[°]の場合、ホイールギヤの大径ギヤ部77の進み角は74[°]となり、入力ギヤ65が図5(b)中の矢印Eに示すように回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して図5(b)中の矢印D方向のスラスト力が働く。
小径ギヤ部79は、実施例1と同様に平歯車であり、出力ギヤ69に連結されている。入力ギヤ65から回転駆動が伝達されると、大径ギヤ部77にスラスト力が働き、駆動伝達ギヤ64がワッシャ74側に移動することで、駆動伝達ギヤ64のグリス転写面80もワッシャ74側に移動する。これにより、グリス転写面80に転写されたグリス63が軸外周面61fに移動し、駆動伝達ギヤ64の回転により軸外周面61fの全周にグリス63が供給され、軸外周面61fとギヤ内周摺動部67との磨耗を防止することができる。
【0056】
また、図5に示す実施例2の駆動伝達装置200も実施例1と同様に、規制手段であるブラケット73、フレーム75及びワッシャ74が、グリス溝62に対してギヤ内周大径部76が常に対向するように固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の移動範囲を規制している。このため、グリス溝62の容積を超えるグリス63が駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fで掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63を従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。さらに、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが対向することがないため、駆動伝達ギヤ64の内周面または固定軸部材61の溝エッジ部61eが削れることを防止し、異物に起因する異音の発生を防止することができる。
【0057】
〔実施例3〕
次に、駆動伝達装置200の三つ目の実施例(以下、実施例3と呼ぶ)について説明する。
図6は、実施例3の駆動伝達装置200の説明図であり、図6(a)は駆動モータ500が停止している状態の説明図、図6(b)は駆動モータ500が駆動している状態の説明図である。
【0058】
実施例3の駆動伝達装置200は、2段ギヤである駆動伝達ギヤ64の大径ギヤ部77と入力ギヤ65とが、かさ歯車で構成されている点と、ワッシャ74が波ワッシャである点とで実施例1の駆動伝達装置200と相違する。他の構成は共通するため、ここでは相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
図6に示すように、実施例3の駆動伝達装置200は、かさ歯車で構成される大径ギヤ部77及び入力ギヤ65とが連結されている。入力ギヤ65には円すい角が設けられている。また、小径ギヤ部79は、実施例1と同様に平歯車であり、出力ギヤ69に連結されている。入力ギヤ65から回転駆動が伝達されると、大径ギヤ部77にスラスト力が働き、駆動伝達ギヤ64がワッシャ74側に移動することで、駆動伝達ギヤ64のグリス転写面80もワッシャ74側に移動する。このとき、停止状態でスラストガタ68内で与圧をかけられた波ワッシャで構成されるワッシャ74が更に弾性変形し、その反力によって、大径ギヤ部77のかさ歯ギヤがスラスト力が働く方向に逃げて歯飛びしない程度であるギヤ噛合幅の1/2以下にスラスト移動量を抑制する。
上述のように、グリス転写面80がワッシャ74側に移動することにより、グリス転写面80に転写されたグリス63が軸外周面61fに移動し、駆動伝達ギヤ64の回転により軸外周面61fの全周にグリス63が供給され、軸外周面61fとギヤ内周摺動部67との磨耗を防止することができる。また、駆動伝達が停止すると、波ワッシャで構成されるワッシャ74の反発力により、大径ギヤ部77のかさ歯が入力ギヤ65のかさ歯に噛込む方向に駆動伝達ギヤ64が移動する。
【0059】
また、図6に示す実施例3の駆動伝達装置200も実施例1と同様に、規制手段であるブラケット73、フレーム75及びワッシャ74が、グリス溝62に対してギヤ内周大径部76が常に対向するように固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の移動範囲を規制している。このため、グリス溝62の容積を超えるグリス63が駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fで掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63を従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。さらに、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが対向することがないため、駆動伝達ギヤ64の内周面または固定軸部材61の溝エッジ部61eが削れることを防止し、異物に起因する異音の発生を防止することができる。
【0060】
〔実施例4〕
次に、駆動伝達装置200の四つ目の実施例(以下、実施例4と呼ぶ)について説明する。
図7は、実施例4の駆動伝達装置200の説明図であり、図7(a)は駆動モータ500が停止している状態の説明図、図7(b)は駆動モータ500が駆動している状態の説明図である。
【0061】
実施例4の駆動伝達装置200は、2段ギヤである駆動伝達ギヤ64の大径ギヤ部77がウォームギヤで構成され、入力ギヤ65がホイールギヤで構成されている点で実施例1の駆動伝達装置200と相違する。他の構成は共通するため、ここでは相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
図7に示すように、実施例4の駆動伝達装置200は、ウォームギヤで構成される大径ギヤ部77とホイールギヤで構成される入力ギヤ65とが連結されている。ホイールギヤの入力ギヤ65には進み角が設けられており、例えば進み角74[°]の場合、ウォームギヤの大径ギヤ部77の進み角は16[°]となり、入力ギヤ65が図7(b)中の矢印Eに示すように回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して図7(b)中の矢印D方向のスラスト力が働く。
小径ギヤ部79は、実施例1と同様に平歯車であり、出力ギヤ69に連結されている。入力ギヤ65から回転駆動が伝達されると、大径ギヤ部77にスラスト力が働き、駆動伝達ギヤ64がワッシャ74側に移動することで、駆動伝達ギヤ64のグリス転写面80もワッシャ74側に移動する。これにより、グリス転写面80に転写されたグリス63が軸外周面61fに移動し、駆動伝達ギヤ64の回転により軸外周面61fの全周にグリス63が供給され、軸外周面61fとギヤ内周摺動部67との磨耗を防止することができる。
【0062】
また、図7に示す実施例4の駆動伝達装置200も実施例1と同様に、規制手段であるブラケット73、フレーム75及びワッシャ74が、グリス溝62に対してギヤ内周大径部76が常に対向するように固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の移動範囲を規制している。このため、グリス溝62の容積を超えるグリス63が駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fで掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63を従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。さらに、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが対向することがないため、駆動伝達ギヤ64の内周面または固定軸部材61の溝エッジ部61eが削れることを防止し、異物に起因する異音の発生を防止することができる。
【0063】
〔実施例5〕
次に、駆動伝達装置200の五つ目の実施例(以下、実施例5と呼ぶ)について説明する。
図8は、実施例5の駆動伝達装置200の説明図であり、図8(a)は駆動モータ500が停止している状態の説明図、図8(b)は駆動モータ500が駆動している状態の説明図である。
【0064】
上述した実施例1の駆動伝達装置200では、ギヤ内周摺動部67の摺動部大径側端78とギヤ内周大径部76との間に形成されたグリス転写面80が回転中心線64aに直交する平面で形成されている。一方、実施例5の駆動伝達装置200は、グリス転写面80が回転中心線64aに対して傾斜した平面で形成されている。他の構成は、実施例1と共通するため、ここでは相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
実施例5の駆動伝達装置200の大径ギヤ部77及び入力ギヤ65は実施例1と同様に、はすば歯車であり、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な図8(b)中の矢印D方向のスラスト力が働く。
【0065】
実施例5の駆動伝達装置200では、ギヤ内周大径部76とグリス溝62との間に形成された空間に充填されたグリス63は、停止時には摺動部大径側端78とギヤ内周大径部76との間の傾斜面のグリス転写面80に転写されている。そして、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な図8(b)中の矢印D方向のスラスト力が働くと、駆動伝達ギヤ64の傾斜面のグリス転写面80がワッシャ74側に移動する。これにより、傾斜面のグリス転写面80に転写されたグリス63が軸外周面61fに移動し、駆動伝達ギヤ64の回転により軸外周面61fの全周にグリス63が供給され、軸外周面61fとギヤ内周摺動部67との磨耗を防止することができる。
【0066】
また、図8に示す実施例5の駆動伝達装置200も実施例1と同様に、規制手段であるブラケット73、フレーム75及びワッシャ74が、グリス溝62に対してギヤ内周大径部76が常に対向するように固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の移動範囲を規制している。このため、グリス溝62の容積を超えるグリス63が駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fで掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63を従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。さらに、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが対向することがないため、駆動伝達ギヤ64の内周面または固定軸部材61の溝エッジ部61eが削れることを防止し、異物に起因する異音の発生を防止することができる。
【0067】
〔実施例6〕
次に、駆動伝達装置200の六つ目の実施例(以下、実施例6と呼ぶ)について説明する。
図9は、実施例6の駆動伝達装置200の説明図であり、図9(a)は駆動モータ500が停止している状態の説明図、図9(b)は駆動モータ500が駆動している状態の説明図である。
【0068】
上述した実施例1の駆動伝達装置200では、ギヤ内周摺動部67の摺動部大径側端78とギヤ内周大径部76との間に形成されたグリス転写面80が回転中心線64aに直交する平面で形成されている。一方、実施例6の駆動伝達装置200は、グリス転写面80がR形状で形成されている。他の構成は、実施例1と共通するため、ここでは相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
実施例6の駆動伝達装置200の大径ギヤ部77及び入力ギヤ65は実施例1と同様に、はすば歯車であり、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な図9(b)中の矢印D方向のスラスト力が働く。
【0069】
実施例6の駆動伝達装置200では、ギヤ内周大径部76とグリス溝62との間に形成された空間に充填されたグリス63は、停止時には摺動部大径側端78とギヤ内周大径部76との間のR形状のグリス転写面80に転写されている。そして、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な図9(b)中の矢印D方向のスラスト力が働くと、駆動伝達ギヤ64のR形状のグリス転写面80がワッシャ74側に移動する。これにより、R形状のグリス転写面80に転写されたグリス63が軸外周面61fに移動し、駆動伝達ギヤ64の回転により軸外周面61fの全周にグリス63が供給され、軸外周面61fとギヤ内周摺動部67との磨耗を防止することができる。
【0070】
また、図9に示す実施例6の駆動伝達装置200も実施例1と同様に、規制手段であるブラケット73、フレーム75及びワッシャ74が、グリス溝62に対してギヤ内周大径部76が常に対向するように固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の移動範囲を規制している。このため、グリス溝62の容積を超えるグリス63が駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fで掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63を従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。さらに、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが対向することがないため、駆動伝達ギヤ64の内周面または固定軸部材61の溝エッジ部61eが削れることを防止し、異物に起因する異音の発生を防止することができる。
【0071】
〔実施例7〕
次に、駆動伝達装置200の七つ目の実施例(以下、実施例7と呼ぶ)について説明する。
図10は、実施例7の駆動伝達装置200の説明図であり、図10(a)は駆動モータ500が停止している状態の説明図、図10(b)は駆動モータ500が駆動している状態の説明図である。
【0072】
上述した実施例1の駆動伝達装置200では、ギヤ内周摺動部67の摺動部大径側端78とギヤ内周大径部76との間に形成されたグリス転写面80が回転中心線64aに直交する平面で形成されている。一方、実施例7の駆動伝達装置200は、グリス転写面80が袋形状で形成されている。他の構成は、実施例1と共通するため、ここでは相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
実施例7の駆動伝達装置200の大径ギヤ部77及び入力ギヤ65は実施例1と同様に、はすば歯車であり、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な図10(b)中の矢印D方向のスラスト力が働く。
【0073】
実施例7の駆動伝達装置200では、ギヤ内周大径部76とグリス溝62との間に形成された空間に充填されたグリス63は、停止時には摺動部大径側端78とギヤ内周大径部76との間の袋形状のグリス転写面80に転写されている。そして、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な図10(b)中の矢印D方向のスラスト力が働くと、駆動伝達ギヤ64の袋形状のグリス転写面80がワッシャ74側に移動する。これにより、袋形状のグリス転写面80に転写されたグリス63が軸外周面61fに移動し、駆動伝達ギヤ64の回転により軸外周面61fの全周にグリス63が供給され、軸外周面61fとギヤ内周摺動部67との磨耗を防止することができる。
【0074】
また、図10に示す実施例7の駆動伝達装置200も実施例1と同様に、規制手段であるブラケット73、フレーム75及びワッシャ74が、グリス溝62に対してギヤ内周大径部76が常に対向するように固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の移動範囲を規制している。このため、グリス溝62の容積を超えるグリス63が駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fで掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63を従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。さらに、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが対向することがないため、駆動伝達ギヤ64の内周面または固定軸部材61の溝エッジ部61eが削れることを防止し、異物に起因する異音の発生を防止することができる。
【0075】
以上、本実施形態の駆動伝達装置200は、軸部材である固定軸部材61と、固定軸部材61の回りで回転自在に固定軸部材61に支持された駆動伝達ギヤ64と、固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の位置を往復移動させるギヤ移動手段であるとを有する。ここでギヤ移動手段は、駆動時に駆動伝達ギヤ64に対してスラスト力を働かせる駆動伝達の構成や、駆動停止時にスラスト力が働く方向とは逆方向に駆動伝達ギヤ64を付勢する付勢手段(実施例3では波ワッシャ、他の実施例では不図示の付勢部材)である。駆動伝達装置200は、駆動伝達ギヤ64が回転することにより、駆動伝達ギヤ64の内周面であるギヤ内周面64fのギヤ内周摺動部67と固定軸部材61の外周面である軸外周面61fの軸外周摺動部とが摺動する構成で、軸外周面61fに、軸外周摺動部よりも外周の径が小さく軸外周面61f上の円周方向に沿って一周する溝部となる軸外周小径部であるグリス溝62を形成し、グリス溝62にグリス63が充填され、入力部である入力ギヤ65から回転駆動が入力されて駆動伝達ギヤ64が回転する。このような駆動伝達装置200で、駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fに、ギヤ内周摺動部67よりも内周の径が大きいギヤ内周大径部76を形成し、グリス溝62に対してギヤ内周大径部76が常に対向するように固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の移動範囲を規制する規制手段としてブラケット73、フレーム75及びワッシャ74を備える。ギヤ移動手段を備えることで、駆動モータ500の駆動と停止を繰り返すことで、駆動伝達ギヤ64はスラスト方向に移動したり、戻ったりして軸線方向に沿って往復運動を行う。これにより、グリス転写面80に転写されたグリス63が軸外周面61fに移動し、駆動伝達ギヤ64の回転により軸外周面61fの全周にグリス63が供給され、軸外周面61fとギヤ内周摺動部67との磨耗を防止することができる。また、規制手段を備えることで、ギヤ内周摺動部67がグリス溝62と対向することがなく、グリス溝62の容積を超えるグリス63が駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fで掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63を従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。さらに、ギヤ内周面64fと溝エッジ部61eとが対向することがないため、駆動伝達ギヤ64の内周面または固定軸部材61の溝エッジ部61eが削れることを防止し、異物に起因する異音の発生を防止することができる。
【0076】
また、本実施形態の駆動伝達装置200のギヤ移動手段は、駆動伝達ギヤ64を回転させることで駆動伝達ギヤ64に対してスラスト力が働く駆動伝達ギヤ64と入力ギヤ65との歯車機構である。規制手段であるブラケット73、フレーム75及びワッシャ74等によって駆動伝達ギヤ64の軸方向の移動範囲が規制されているので、駆動伝達ギヤ64の回転時と停止時とで固定軸部材61に対する駆動伝達ギヤ64の軸方向の位置が変化しても、グリス溝62に対してギヤ内周大径部76が常に対向するため、グリス溝62の容積を超えるグリス63が駆動伝達ギヤ64のギヤ内周面64fで掻き取られることを防止し、ギヤ内周摺動部67と軸外周面61fとの間にグリス63を従来よりも長期に渡って供給し続けることができる。ここで、歯車機構によるスラスト力の働く方向は入力ギヤ65の回転方向に応じて、選択可能である。
【0077】
また、実施例1及び実施例5〜実施例7の駆動伝達装置200は、大径ギヤ部77及び入力ギヤ65が、はすば歯車であるため、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な矢印D方向のスラスト力が働く。
【0078】
また、実施例2の駆動伝達装置200は、2段ギヤである駆動伝達ギヤ64の大径ギヤ部77がホイールギヤで構成され、入力ギヤ65がウォームギヤである。このような構成では、ウォームギヤである入力ギヤ65が図5中の矢印E方向に回転して、駆動伝達ギヤ64に回転駆動を伝達することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な矢印D方向のスラスト力が働く。
【0079】
また、実施例3の駆動伝達装置200は、2段ギヤである駆動伝達ギヤ64の大径ギヤ部77と入力ギヤ65とが、かさ歯車であるため、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な矢印D方向のスラスト力が働く。
【0080】
また、実施例4の駆動伝達装置200は、2段ギヤである駆動伝達ギヤ64の大径ギヤ部77がウォームギヤで構成され、入力ギヤ65がホイールギヤである。このような構成では、ホイールギヤである入力ギヤ65が図7中の矢印E方向に回転して、駆動伝達ギヤ64に回転駆動を伝達することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な矢印D方向のスラスト力が働く。
【0081】
また、本実施形態の駆動伝達装置200では、駆動伝達ギヤ64は2段ギヤであり、2段のギヤを構成する2つの歯車のうちの一方である大径ギヤ部77が、入力ギヤ65との連結部で、実施例1乃至4に記載の歯車機構を構成することによって、入力ギヤ65及び駆動伝達ギヤ64が回転することで、駆動伝達ギヤ64に対して回転中心線64aに平行な矢印D方向のスラスト力が働く。
【0082】
また、ギヤ内周摺動部67とギヤ内周大径部76との間のグリス転写面80は、図8を用いて説明した実施例5のように、断面形状が傾斜状となるように、駆動伝達ギヤの内周面における該ギヤ内周摺動部側から該ギヤ内周大径部側に向けて内周の径が大きくなる形状としてもよい。
【0083】
また、ギヤ内周摺動部67とギヤ内周大径部76との間のグリス転写面80は、図9を用いて説明した実施例6のように、断面形状がR形状となるように、駆動伝達ギヤの内周面における該ギヤ内周摺動部側から該ギヤ内周大径部側に向けて内周の径が大きくなる形状としてもよい。
【0084】
また、ギヤ内周摺動部67とギヤ内周大径部76との間のグリス転写面80は、図10を用いて説明した実施例7のように、断面形状が袋形状となるように、駆動伝達ギヤの内周面における該ギヤ内周摺動部側から該ギヤ内周大径部側に向けて内周の径が大きくなる形状としてもよい。
【0085】
実施例1のように、グリス転写面80が、スラスト方向に直交する平面状である場合、グリス溝62によってグリス63がグリス転写面80に押しつけられて、その反力がグリス63が供給されるべき摺動部とは反対方向に働くため、グリス63が軸外周面61fに移動しにくくなるおそれがある。一方、実施例5乃至実施例7のように、グリス転写面80を、傾斜状、R形状または袋形状とすることで、グリス63がグリス転写面80に押されたときに、傾斜状、R形状または袋形状のグリス転写面80がグリス63を軸外周面61fへ送るガイドとなり、グリス63が軸外周面61fとギヤ内周面64fとの摺動部に移動し易くなる。
【符号の説明】
【0086】
1 プロセスユニット
2 感光体
3 ドラムクリーニング装置
4 帯電装置
5 現像装置
6 ホッパ部
7 現像部
8 アジテータ
9 撹拌パドル
10 トナー供給ローラ
11 現像ローラ
12 薄層化ブレード
15 転写ユニット
16 中間転写ベルト
17 中転従動ローラ
18 中転駆動ローラ
18g 駆動ローラギヤ
19 一次転写ローラ
20 二次転写ローラ
21 ベルトクリーニング装置
22 クリーニングバックアップローラ
25 作像部駆動伝達ギヤ
30 給紙カセット
30a 給紙ローラ
31 給紙路
32 レジストローラ対
33 転写後搬送路
34 定着装置
34a 定着ローラ
34b 加圧ローラ
35 定着後搬送路
36 排紙路
37 排紙ローラ対
40 反転ユニット
40a ユニット回動軸
41 反転前搬送路
42 切替爪
43 反転搬送ローラ対
44 反転搬送路
45 外部カバー
46 揺動体
50 上カバー
51 上部カバー回動軸
61 固定軸部材
61a 軸小径部
61b 軸大径部
61c スラスト面
61e 溝エッジ部
61f 軸外周面
62 グリス溝
63 グリス
64 駆動伝達ギヤ
64a 回転中心線
64f ギヤ内周面
65 入力ギヤ
67 ギヤ内周摺動部
68 スラストガタ
69 出力ギヤ
70 光書込ユニット
72 グリス溝間距離
73 ブラケット
74 ワッシャ
75 フレーム
76 ギヤ内周大径部
77 大径ギヤ部
78 摺動部大径側端
79 小径ギヤ部
80 グリス転写面
100 プリンタ
200 駆動伝達装置
300 駆動装置
500 駆動モータ
520 第二駆動モータ
521 第二入力ギヤ
530 アイドラギヤ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2001−82474号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、
該軸部材の回りで回転自在に該軸部材に支持された駆動伝達ギヤと、
該軸部材に対する該駆動伝達ギヤの軸方向の位置を往復移動させるギヤ移動手段とを有し、
該駆動伝達ギヤが回転することにより、該駆動伝達ギヤの内周面のギヤ内周摺動部と該軸部材の外周面の軸外周摺動部とが摺動する構成で、
該軸部材の外周面に、該軸外周摺動部よりも外周の径が小さく該軸部材の外周面上の円周方向に沿って一周する溝部となる軸外周小径部を形成し、該軸外周小径部にグリスが充填されており、
入力部から回転駆動が入力されて該駆動伝達ギヤが回転する駆動伝達装置において、
上記駆動伝達ギヤの内周面に、上記ギヤ内周摺動部よりも内周の径が大きいギヤ内周大径部を形成し、上記軸外周小径部に対して該ギヤ内周大径部が常に対向するように該軸部材に対する該駆動伝達ギヤの軸方向の移動範囲を規制する規制手段を備えることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
請求項1の駆動伝達装置において、
上記ギヤ移動手段は、該駆動伝達ギヤを回転させることで該駆動伝達ギヤに対してスラスト力が働く歯車機構であることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項2の駆動伝達装置において、
上記歯車機構が、はすば歯車を備えることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項4】
請求項2の駆動伝達装置において、
上記歯車機構が、ホイールギヤを備えることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項2の駆動伝達装置において、
上記歯車機構が、かさ歯車を備えることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
請求項2の駆動伝達装置において、
上記歯車機構が、ウォームギヤを備えることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項7】
請求項2の駆動伝達装置において、
上記駆動伝達ギヤは2段ギヤであり、2段のギヤを構成する2つの歯車のうちの少なくとも一方が請求項3乃至6のいずれか1項に記載の上記歯車機構を構成することを特徴とすることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
上記ギヤ内周摺動部と上記ギヤ内周大径部との間は、断面形状が傾斜状となるように、上記駆動伝達ギヤの内周面における該ギヤ内周摺動部側から該ギヤ内周大径部側に向けて内周の径が大きくなる形状となっていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
上記ギヤ内周摺動部と上記ギヤ内周大径部との間のギヤ内周面は、断面形状がR形状となるように、上記駆動伝達ギヤの内周面における該ギヤ内周摺動部側から該ギヤ内周大径部側に向けて徐々に内周の径が大きくなる形状となっていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の駆動伝達装置において、
上記ギヤ内周摺動部と上記ギヤ内周大径部との間のギヤ内周面は、断面形状が袋形状となるように、上記駆動伝達ギヤの内周面における該ギヤ内周摺動部側から該ギヤ内周大径部側に向けて徐々に内周の径が大きくなる形状となっていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項11】
回転駆動する駆動源と、
該駆動源の回転駆動を回転体に伝達する駆動伝達手段とを有する駆動装置において、
上記駆動伝達手段として、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の駆動伝達装置を用いることを特徴とする駆動装置。
【請求項12】
像担持体上に形成された画像を最終的に記録媒体上に転写して、記録媒体上に画像を形成する画像形成部と、
装置本体に設けられた被駆動部材を駆動させる駆動手段とを備えた画像形成装置において、
前記駆動手段として、請求項11の駆動装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−137478(P2011−137478A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295908(P2009−295908)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】