駆動装置、プリントヘッド及び画像形成装置
【課題】発光サイリスタを駆動するための駆動回路の発振を防止する。
【解決手段】オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルの場合、PMOS43及びNMOS44からなるCMOSインバータ42の出力側のデータ端子DAがLレベルとなる。この結果、プリントヘッド13側の共通端子INも0Vとなり、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間に電源電圧VDDが印加される。この際、発光サイリスタ210−1〜210−nの内、発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを、シフトレジスタ110によって選択的にHレベルとすることで、発光指令されているサイリスタ210がターンオンする。NMOS44のチャネル形成予定領域に、サブストレート領域と同極性の不純物が注入されているので、NMOS44の閾値電圧が増加し、駆動回路41の発振を防止できる。
【解決手段】オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルの場合、PMOS43及びNMOS44からなるCMOSインバータ42の出力側のデータ端子DAがLレベルとなる。この結果、プリントヘッド13側の共通端子INも0Vとなり、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間に電源電圧VDDが印加される。この際、発光サイリスタ210−1〜210−nの内、発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを、シフトレジスタ110によって選択的にHレベルとすることで、発光指令されているサイリスタ210がターンオンする。NMOS44のチャネル形成予定領域に、サブストレート領域と同極性の不純物が注入されているので、NMOS44の閾値電圧が増加し、駆動回路41の発振を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光サイリスタ等の3端子発光素子の群を選択的に、且つサイクリックに駆動する駆動装置と、この駆動装置を有するプリントヘッドと、このプリントヘッドを有する電子写真プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プリンタ等の画像形成装置に設けられる駆動装置として、多数の発光サイリスタが配列された発光サイリスタアレイレイを駆動するために、相補形MOSトランジスタ(以下「CMOS」という。)からなるCMOSインバータと電流制限抵抗とを備え、そのCMOSインバータにより、電流制限抵抗を介して発光サイリスタアレイのカソードへ駆動電流を供給する構成が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−287393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の駆動装置、プリントヘッド及び画像形成装置では、発光サイリスタの負性抵抗値の絶対値よりも駆動装置側の電流制限抵抗の抵抗値が小さいため、発光サイリスタの負性抵抗領域で発振することがあった。しかも、その発振現象は駆動電流の立ち上がり部や立下り部で発生し、これによって実質的な駆動電流の駆動パルス幅が変動することで、露光エネルギー量が変化してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の駆動装置は、各々、第1電源と接続される第1端子と、前記第1端子との間に駆動電流を流すための第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子間の導通状態を制御する第1制御端子とを有し、前記第1端子同士及び前記第2端子同士が共通接続された複数の3端子発光素子を駆動する駆動装置において、相補接続された第1導電形MOSトランジスタと前記第1導電形MOSトランジスタとは異なる極性の第2導電形MOSトランジスタとを有し、入力された駆動信号に基づいて、前記複数の3端子発光素子のうち導通状態にあるものを駆動する駆動回路を備えている。
【0006】
そして、前記第1導電形MOSトランジスタは、サブストレート領域に形成され、前記第1電源とは異なる電位の第2電源に接続された第3端子と、共通接続された前記第2端子に接続された第4端子と、前記駆動信号に基づいて前記第3端子及び前記第4端子間の導通状態を制御する第2制御端子とを有し、チャネル形成予定領域に前記サブストレート領域と同極性の不純物が注入されたものであることを特徴とする。
【0007】
例えば、前記3端子発光素子は、発光サイリスタであり、前記駆動回路の等価出力抵抗値は、前記発光サイリスタのターンオン特性で定まる負性抵抗値の絶対値よりも大きく設定されている。
【0008】
本発明のプリントヘッドは、前記複数の3端子発光素子と、前記駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の画像形成装置は、前記プリントヘッドを備え、前記プリントヘッドにより露光されて記録媒体に画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の駆動装置及びプリントヘッドによれば、3端子発光素子を駆動する第1導電形MOSトランジスタ及び第2導電形MOSトランジスタを有する駆動回路を備え、その第1導電形MOSトランジスタのチャネル形成予定領域に、サブストレート領域と同極性の不純物が注入されているので、第1導電形MOSトランジスタの閾値電圧が増加し、飽和領域で動作して3端子発光素子の定電流駆動を行うことができる。この結果、駆動回路の等価出力抵抗値を3端子発光素子における負性抵抗値の絶対値よりも大きくすることができ、駆動回路の発振を防止することができる。
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、前記プリントヘッドを備えているので、露光エネルギーの変動を抑制でき、印刷濃度むらのない高品質の画像形成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の実施例1における図5中の印刷制御部及びプリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
【図3】図3は図2中のプリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。
【図4】図4は図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
【図5】図5は図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
【図7】図7は図1中のNMOS44を示す構成図である。
【図8】図8は図1の動作を示すタイムチャートである。
【図9】図9は図6の発光サイリスタ210におけるターンオン過程の動作説明図である。
【図10】図10は図7のNMOS44のトランジスタ特性を示す図である。
【図11】図11は本発明の実施例2における印刷制御部及びプリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図12】図12は図11の動作を示すタイムチャートである。
【図13】図13は本発明の実施例3における印刷制御部及びプリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0014】
(実施例1の画像形成装置)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
【0015】
この画像形成装置1は、被駆動素子(例えば、発光素子として3端子スイッチ素子である発光サイリスタ)を用いた3端子スイッチ素子アレイとしての発光素子アレイを有する露光装置(例えば、プリントヘッド)が搭載されたタンデム型電子写真カラープリンタであり、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4つのプロセスユニット10−1〜10−4を有し、これらが記録媒体(例えば、用紙)20の搬送経路の上流側から順に配置されている。各プロセスユニット10−1〜10−4の内部構成は共通しているため、例えば、マゼンタのプロセスユニット10−3を例にとり、これらの内部構成を説明する。
【0016】
プロセスユニット10−3には、像担持体としての感光体(例えば、感光体ドラム)11が図2中の矢印方向に回転可能に配置されている。感光体ドラム11の周囲には、この回転方向上流側から順に、感光体ドラム11の表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置としてのプリントヘッド13が配設されている。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像器14と、感光体ドラム11上のトナーの顕像を転写した際に残留したトナーを除去するクリーニング装置15が配設されている。なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
【0017】
画像形成装置1の下部には、用紙20を堆積した状態で収納する用紙カセット21が装着され、その上方に、用紙20を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ22が配設されている。用紙20の搬送方向におけるホッピングローラ22の下流側には、ピンチローラ23,24と共に用紙20を挟持することによってこの用紙20を搬送する搬送ローラ25と、用紙20の斜行を修正し、プロセスユニット10−1に搬送するレジストローラ26とが配設されている。これらのホッピングローラ22、搬送ローラ25及びレジストローラ26は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
【0018】
プロセスユニット10−1〜10−4の各感光体ドラム11に対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写ローラ27が配設されている。各転写ローラ27には、感光体ドラム11上に付着されたトナーによる顕像を用紙20に転写する転写時に、各感光体ドラム11の表面電位とこれら各転写ローラ27の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加されている。
【0019】
プロセスユニット10−4の下流には、定着器28が配設されている。定着器28は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、用紙20上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する装置であり、この下流に、排出ローラ29,30、排出部のピンチローラ31,32、及び用紙スタッカ部33が設けられている。排出ローラ29,30は、定着器28から排出された用紙20を、排出部のピンチローラ31,32と共に挟持し、用紙スタッカ部33に搬送する。これらの定着器28及び排出ローラ29等は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達されて回転する。
【0020】
このように構成される画像記録装置1は、次のように動作する。
先ず、用紙カセット21に堆積した状態で収納されている用紙20が、ホッピングローラ22によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この用紙20は、搬送ローラ25、レジストローラ26及びピンチローラ23,24に挟持されて、プロセスユニット10−1の感光体ドラム11と転写ローラ27の間に搬送される。その後、用紙20は、感光体ドラム11及び転写ローラ27に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム10−1の回転によって搬送される。同様にして、用紙20は、順次プロセスユニット10−2〜10−4を通過し、その通過過程で、各プリントヘッド13により形成された静電潜像を各現像器14によって現像した各色のトナー像が、その記録面に順次転写されて重ね合わされる。
【0021】
このようにして記録面上に各色のトナー像が重ね合わされた後、定着器28によってトナー像が定着された用紙20は、排出ローラ29,30及びピンチローラ31,32に挟持されて、画像形成装置1の外部の用紙スタッカ部33に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が用紙20上に形成される。
【0022】
(実施例1のプリントヘッド)
図3は、図2中のプリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。図4は、図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
【0023】
図3に示すプリントヘッド13は、ベース部材13aを有し、このベース部材13a上に、図4に示す基板ユニットが固定されている。基板ユニットは、ベース部材13a上に固定されるプリント基板13bと、このプリント基板13b上に接着剤等で固定され、シフトレジスタが集積された複数の集積回路(以下「IC」という。)チップ100と、この各ICチップ100上に接着剤等で固定された複数のチップ状の発光素子列(例えば、発光サイリスタ列)からなる発光素子アレイ200とにより構成されている。各発光素子アレイ200と各ICチップ100とは、図示しない薄膜配線等により電気的に接続され、更に、各ICチップ100中の複数の端子とプリント基板13b上の図示しない配線パッドとが、ボンディングワイヤ13gにより電気的に接続されている。
【0024】
複数の発光素子アレイ200上には、柱状の光学素子を多数配列してなるレンズアレイ(例えば、ロッドレンズアレイ)13cが配置され、このロッドレンズアレイ13cがホルダ13dにより固定されている。ベース部材13a、プリント基板13b及びホルダ13dは、クランプ部材13e,13fにより固定されている。
【0025】
(実施例1のプリンタ制御回路)
図5は、図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
【0026】
このプリンタ制御回路は、画像形成装置1における印刷部の内部に配設された印刷制御部40を有している。印刷制御部40は、マイクロプロセッサ、読み出し専用メモリ(ROM)、随時読み書き可能なメモリ(RAM)、信号の入出力を行う入出力ポート、タイマ等によって構成され、図示しない上位コントローラからの制御信号SGl、及びビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によってプリンタ全体をシーケンス制御して印刷動作を行う機能を有している。印刷制御部40には、プロセスユニット10−1〜10−4の4つのプリントヘッド13、定着器28のヒータ28a、ドライバ50,52、用紙吸入口センサ54、用紙排出口センサ55、用紙残量センサ56、用紙サイズセンサ57、定着器用温度センサ58、帯電用高圧電源59、及び転写用高圧電源60等が接続されている。ドライバ50には現像・転写プロセス用モータ(PM)51が、ドライバ52には用紙送りモータ(PM)53が、帯電用高圧電源59には現像器14が、転写用高圧電源60には転写ローラ27が、それぞれ接続されている。
【0027】
このような構成のプリンタ制御回路では、次のような動作を行う。
印刷制御部40は、上位コントローラからの制御信号SGlによって印刷指示を受信すると、先ず、温度センサ58によって定着器28内のヒータ28aが使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、温度範囲になければヒータ28aに通電し、使用可能な温度まで定着器28を加熱する。次に、ドライバ50を介して現像・転写プロセス用モータ51を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用高圧電源59をオン状態にし、現像器14の帯電を行う。
【0028】
そして、セットされている図2中の用紙20の有無及び種類が用紙残量センサ56、用紙サイズセンサ57によって検出され、その用紙20に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ53はドライバ52を介して双方向に回転させることが可能であり、最初に逆転させて、用紙吸入口センサ54が検知するまで、セットされた用紙20を予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙20をプリンタ内部の印刷機構内に搬送する。
【0029】
印刷制御部40は、用紙20が印刷可能な位置まで到達した時点において、図示しない画像処理部に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、ビデオ信号SG2を受信する。画像処理部においてページ毎に編集され、印刷制御部40に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データとして各プリントヘッド13に転送される。各プリントヘッド13は、それぞれ1ドット(ピクセル)の印刷のために設けられた発光サイリスタを複数個略直線状に配列したものである。
【0030】
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。各プリントヘッド13によって印刷される情報は、負電位に帯電された図示しない各感光体ドラム11上において電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像器14において、負電位に帯電された画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引され、トナー像が形成される。
【0031】
その後、トナー像は転写ローラ27へ送られ、一方、転写信号SG4によって正電位に転写用高圧電源60がオン状態になり、転写ローラ27は感光体ドラム11と転写ローラ27との間隔を通過する用紙20上にトナー像を転写する。転写されたトナー像を有する用紙20は、ヒータ28aを内蔵する定着器28に当接して搬送され、この定着器28の熱によって用紙20に定着される。この定着された画像を有する用紙20は、更に搬送されてプリンタの印刷機構から用紙排出口センサ55を通過してプリンタ外部へ排出される。
【0032】
印刷制御部40は、用紙サイズセンサ57、及び用紙吸入口センサ54の検知に対応して、用紙20が転写ローラ27を通過している間だけ転写用高圧電源60からの電圧を転写ローラ27に印加する。印刷が終了し、用紙20が用紙排出口センサ55を通過すると、帯電用高圧電源59による現像器14への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ51の回転を停止させる。以後、上記の動作を繰り返す。
【0033】
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッド)
図1は、本発明の実施例1における図5中の印刷制御部40及びプリントヘッド13の概略の回路構成を示すブロック図である。
【0034】
プリントヘッド13は、ICチップ100内に形成されたシフトレジスタ110と、発光素子アレイ200とを有している。
【0035】
シフトレジスタ110は、発光素子アレイ200にトリガ信号(例えば、トリガ電流)を与えてオン/オフ動作させる回路であり、複数個のフリップフロップ回路(以下「FF」という。)111(=111−1〜111−n)を有している。各FF111は、データを入力する入力端子D、データを出力する出力端子Q、及びシリアルクロック信号(以下単に「シリアルクロック」という。)SCKを入力するクロック端子CKをそれぞれ有し、初段のFF111−1の入力端子DがシリアルデータSIを入力し、このFF111−1の出力端子Qが、2段目のFF111−2の入力端子Dに接続され、以下同様に終段のFF111−nまで縦続接続されている。印刷制御部40からシリアルクロックSCK及びシリアルデータSIが供給されると、このシフトレジスタ110では、シリアルクロックSCKに同期して、シリアルデータSIを初段から終段のFF111−1〜111−nへと順次入力してシフトしていき、シフトしたデータを各段の出力端子Q1〜Qnから出力する構成になっている。
【0036】
シフトレジスタ110は、例えば、シリコンウェハ基材上に公知のCMOS構造を用いて作成されるが、その他、ガラス基板上に公知の薄膜トランジスタ(TFT)技術を用いて製造することもできる。
【0037】
発光素子アレイ200は、3端子発光素子である例えば複数のPゲート型発光サイリスタ210(=210−1〜210−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210の第1端子(例えば、アノード)が第1電源(例えば、電源電圧VDD電源)に接続され、第2端子(例えば、カソード)が駆動電流Ioutを流す共通端子INに接続され、第1制御端子(例えば、ゲート)がシフトレジスタ110の各出力端子Q1〜Qnに接続されている。各発光サイリスタ210は、アノード・カソード間に電源電圧VDDが印加された状態で、ゲートにトリガ電流が入力されると、アノード・カソード間がオン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・の総数は、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能なプリントヘッドの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
【0038】
印刷制御部40は、発光素子アレイ200のオン/オフを指令するオン/オフ指令信号DRVON−P(但し、「−P」は正論理を意味する。)、シフトレジスタ110に対する制御信号であるシリアルデータSI及びシリアルクロックSCKをプリントヘッド13へ供給する図示しない回路と、複数の発光素子アレイ200を時分割に駆動する複数の駆動回路41と、VDD電源や第2電源(例えば、グランドGND=0V)等とを有している。図1においては、説明を簡略化するために1個の駆動回路41のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200は、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・が複数の発光サイリスタ210−1〜210−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられた駆動回路41によってそれらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
【0039】
印刷制御部40側の駆動回路41等と、プリントヘッド13側のシフトレジスタ110とにより、本実施例1の駆動装置が構成されている。
【0040】
一例として典型的な設計例を挙げると、発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200のチップを図4のプリント基板13b上に26個整列する。これにより、プリントヘッド13に必要な総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を構成している。この際、駆動回路41は前記26個の発光素子アレイ200に対応して設けられ、これらの駆動回路41における出力端子の総数が26である。なお、駆動回路41は、図1においては印刷制御部40の内部に配置されているが、プリントヘッド13の内部に配置しても良い。
【0041】
駆動回路41は、入力されるオン/オフ指令信号DRVON−Pを反転してデータ端子DAに出力するCMOSインバータ42により構成されている。CMOSインバータ42は、第2導電形MOSトランジスタ(例えば、PチャネルMOSトランジスタ、以下「PMOS」という。)43と、第1導電形MOSトランジスタ(例えば、NチャネルMOSトランジスタ、以下「NMOS」という。)44とを有し、これらがVDD電源とグランドGNDとの間に直列に接続されている。即ち、PMOS43は、ゲートにオン/オフ指令信号DRVON−Pが入力され、ソースがVDD電源に接続され、ドレーンがデータ端子Dに接続されている。NMOS44は、第2制御端子(例えば、ゲート)にオン/オフ指令信号DRVON−Pが入力され、第3端子(例えば、ソース)がグランドGNDに接続され、第4端子(例えば、ドレーン)がデータ端子DAに接続されている。データ端子DAは、発光素子アレイ200側の共通端子INに接続されている。
【0042】
(実施例1の発光サイリスタ)
図6(a)〜(d)は、図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
【0043】
図6(a)は、発光サイリスタ210の回路シンボルを示し、アノードA、カソードK、及びゲートGの3つの端子を有している。
【0044】
図6(b)は、発光サイリスタ210の断面構造を示す図である。発光サイリスタ210は、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD(Metal Organic−Chemical Vapor Deposition)法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0045】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211と、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハ形成する。次いで、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、最上層であるN型層213の一部に、選択的にP型不純物領域214を形成する。更に、公知のエッチング法により、図示しない溝部を形成することで、素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。これと同時に、P型領域214とP型領域212にも、それぞれアノードAとゲートGが形成される。
【0046】
図6(c)は、発光サイリスタ210の他の形態を示す断面構造図である。この断面構造では、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、そのGaAs基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0047】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213と、P型不純物を含ませ成層したP型層215とを順に積層させたPNPNの4層構造のウェハを形成する。更に、公知のエッチング法を用いて、図示しない溝部を形成することで素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。同様に、最上層となるP型領域215の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してアノードAを形成する。これと同時に、P型領域212にゲートGが形成される。
【0048】
図6(d)は、図6(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタ210の等価回路図である。発光サイリスタ210は、PNPトランジスタ(以下「PNPTR」という。)221とNPNトランジスタ(以下「NPNTR」という。)222とからなり、PNPTR221のエミッタが発光サイリスタ210のアノードAに相当し、NPNTR222のベースが発光サイリスタ210のゲートGに相当し、NPNTR222のエミッタが発光サイリスタ210のカソードKに相当している。又、PNPTR221のコレクタは、NPNTR222のベースに接続され、PNPTR221のベースが、NPNTR222のコレクタに接続されている。
【0049】
なお、図6に示す発光サイリスタ210では、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであっても良く、更には、サファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
【0050】
図6の発光サイリスタ210は、例えば、エピタキシャルフィルムボンディング法を用いて、シフトレジスタ110を集積したICウェハと接着され、両者の接続端子間がフォトリソグラフィ法を用いて配線される。更に、公知のダイシング法を用いて複数のチップに分離することで、図4に示すように、ICチップ100及び発光素子アレイ200からなる複合チップが形成される。
【0051】
(図1中のNMOS)
図7(a)〜(c)は、図1中のNMOS44を示す構成図である。
【0052】
図7(a)は、NMOS44の回路シンボルを示し、ドレーンD、ゲートG、及びソースSの3つの端子を有している。図7(b)は、NMOS44のチャネル方向への縦断面を示す断面図であって、製造途中における一段階の断面が示されている。更に、図7(c)は、NMOS44のチャネル方向への縦断面を示す断面図である。
【0053】
図7(c)に示すように、NMOS44は、図1中のPMOS43と共に、例えば、N型シリコンウェハからなる基板300に形成されている。基板300の表面内には図示しないPMOS43が形成され、このPMOS43に対してNMOS44を電気的に分離するために、NMOS形成用のサブストレート領域(例えば、Pウェル領域(Pwell))301が、基板300内に形成されている。Pウェル領域301は、基板300内にP型不純物を島状に拡散して形成される。Pウェル領域301内には、N型不純物を拡散してソース領域302とドレーン領域303とが対向して形成されている。
【0054】
ソース領域302とドレーン領域303との間のチャネル形成予定領域304上には、図示しないゲート絶縁膜を介して、ポリシリコンからなるゲート部305が形成されている。ソース領域302とドレーン領域303とは、ゲート部305をマスクとして、N型不純物を基板300中に拡散させることにより形成される。これらのソース領域302、ドレーン領域303、及びゲート部305により、NMOS44が構成されており、このNMOS44を図示しない他の素子と電気的に分離するために、ソース領域302及びドレーン領域303の周囲にフィールド酸化膜306が形成されている。
【0055】
ソース領域302、ドレーン領域303、及びゲート部305上のコンタクト領域には、図示しないメタル電極が形成され、ソース領域302にソースSが、ドレーン領域303にドレーンDが、ゲート部305にゲートGが、それぞれ接続されている。全体は、図示しないパッシベーション膜により覆われている。
【0056】
図7(b)には、ゲート部305を形成する前に、チャネル形成予定領域304に対して行われる不純物注入工程が示されている。この不純物注入工程では、NMOS44のチャネル形成予定領域304を除き、それ以外の他回路で用いられるNMOS等の形成領域がレジスト膜307で覆われる。露出したチャネル形成予定領域304には、破線矢印にて示すように、サブストレート領域であるPウェル領域301と同極性の不純物(例えば、ホウ素BからなるP型不純物)が注入される。この不純物注入工程の後に、図7(c)に示すようなゲート部305の形成と、このゲート部305をマスクとして用いたソース領域302及びドレーン領域303の形成とが行われる。
【0057】
本実施例1の不純物注入工程は、以下の理由により行われる。
NMOS44では、チャネル形成予定領域304における浅い領域に、リンP等のN型不純物を注入しておくことで、反転層であるチャネルの形成を容易にして閾値電圧を下げ、所望のトランジスタ特性に調整することができる。これに対し、本実施例1では、チャネル形成予定領域304における浅い領域に、ホウ素B等のP型不純物を注入しておき、反転層であるチャネルが形成し難くすることで、逆に閾値電圧を増加させて後述するトランジスタ特性を調整するようにしている。
【0058】
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッドの概略動作)
図1において、例えば、印刷制御部40におけるオン/オフ指令信号DRVON−Pが低レベル(以下「Lレベル」という。)の場合、CMOSインバータ42を構成するPMOS43がオン状態、NMOS44がオフ状態となり、出力側のデータ端子DAは、高レベル(以下「Hレベル」という。)レベル(≒電源電圧VDD)となる。この結果、プリントヘッド13側の共通端子INも略電源電圧VDDとなり、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutもゼロとなり、発光サイリスタ210−1〜210−nが全て非発光状態となる。
【0059】
これに対し、オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルの場合、CMOSインバータ42を構成するPMOS43がオフ状態、NMOS44がオン状態となって、出力側のデータ端子DAがLレベル(=0V)となる。この結果、プリントヘッド13側の共通端子INも0Vとなり、各発光サイリスタ210のアノードに電源電圧VDDが印加され、カソードがLレベル(=0V)となって、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間に電源電圧VDDが印加される。この際、発光サイリスタ210−1〜210−nのうち、発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、この発光サイリスタ210のゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210がターンオンすることになる。
【0060】
ターンオンした発光サイリスタ210のカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210は発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた光出力を生じる。
【0061】
後述するように、NMOS44は飽和領域で動作するように設計条件が設定され、電子デバイス物理の理論により良く知られているように、この時のドレーン電流1dは、次式で与えられる
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vtn)2
但し、K;定数
W;NMOS44のゲート幅
L;NMOS44のゲート長
Vtn;NMOS44の閾値電圧
Vgs;NMOS44のゲート・ソース間電圧(≒電源電圧VDD)
【0062】
この式から明らかなように、NMOS44のドレーン電流1d、即ち、発光サイリスタ210の駆動電流Ioutは、閾値電圧Vtnの電位を調整することで変化させることができる。
【0063】
その上、NMOS44のように飽和領域で動作するMOSトランジスタにおいては、その素子サイズを適切に設定することで、ドレーン電位が多少変動したとしても、ドレーン電流値を所定値に保つことが可能である。このような特性はMOSトランジスタの定電流特性として公知であり、良好な特性を得るためには、NMOS44のゲート長Lを大きめに設定することが望ましい。
【0064】
なお、図1における駆動回路41においては、データ端子DAをHレベルとするためにPMOS43を設けているが、NMOS44をオフ状態にすることで駆動電流Ioutを遮断して発光サイリスタ210−1〜210−nをターンオフさせることができるので、発光サイリスタ210のスイッチング速度に高速性を要求されないケースにおいては、PMOS43を省略することも可能である。
【0065】
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッドの詳細動作)
図8は、図1のプリントヘッド13及び印刷制御部40の詳細な動作を示すタイムチャートである。
【0066】
この図8では、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図1の発光サイリスタ210−1〜210−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
【0067】
先ず、画像形成装置1のおける電源投入時の予備動作として、図1のシフトレジスタ110のリセット処理が行われる。このリセット処理では、シリアルデータSIをLレベルとしておき、シフトレジスタ110の段数(例えば、n=8)に相当する個数のシリアルクロックSCKのクロックパルスをシフトレジスタ110に入力する。これにより、シフトレジスタ110の全出力端子Q1〜Q8がLレベルとなる。
【0068】
1ライン分の走査に先立ち、図8の時刻t1において、シリアルデータSIがHレベルに設定される。次いで時刻t2において、シリアルクロックSCKの第1パルスSCK1が入力される。第1パルスSCK1が立ち上がると、シリアルデータSIはシフトレジスタ110内の第1段FF111−1に取り込まれ、これより僅かに遅れて、第1段FF111−1の出力端子Q1がHレベルへと遷移する。第1パルスSCK1が立ち上がった後で、時刻t3にてシリアルデータSIが再びLレベルに戻される
【0069】
第1段FF111−1の出力端子Q1がHレベルとなることで、発光サイリスタ210−1のゲート電位が上昇する。次いで時刻t4にて、オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルにされる。これにより、CMOSインバータ42のNMOS44がオン状態になってデータ端子DAがLレベルになり、発光サイリスタ210−1のゲート・カソード間に電位差が生じる。この結果、トリガ電流によって発光サイリスタ210−1がターンオンして発光状態となる。
【0070】
発光サイリスタ210−1による発光状態は、主としてアノード・カソード間に流れる電流によるので、一度ターンオンした発光サイリスタ210−1をオフさせるためには、アノード・カソード間に印加される電圧をゼロにする必要がある。そのため、時刻t5において、オン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルにされる。すると、CMOSインバータ42のPMOS43がオン状態になってデータ端子DAがHレベルとなり、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間電圧が略0Vになり、この発光サイリスタ210−1がオフする。
【0071】
前述したように、発光サイリスタ210−1〜210−nの発光出力は、主としてそのアノード・カソード間に流れる駆動電流Ioutの電流値によるので、図1において駆動源として定電流特性を有する駆動回路41を用いることで、発光サイリスタ210の発光時におけるアノード・カソード間電圧に多少の素子ばらつきを生じていたとしても、その駆動電流Ioutを所定値に保つことができる。
【0072】
なお、図8では、発光サイリスタ210−1を発光させるために、時刻t4でデータ端子DAをLレベルとし、消灯させるために、時刻t5でデータ端子DAをHレベルとしているが、発光サイリスタ210−1を発光させる必要がない場合には、時刻t4〜t5の間もデータ端子DAをHレベルのままとすれば良い。このように、データ端子DAの論理レベルにより、発光サイリス210−1の発光状態/非発光状態を切り替えることができる。
【0073】
次いで、時刻t6において、シリアルクロックSCKの第2パルスSCK2が立ち上がる。この時、シリアルデータSIはLレベルとなっているので、これより僅かに遅れて、シフトレジスタ110内における第1段FF111−1の出力端子QlがLレベルへと遷移する一方で、第2段FF111−2の出力端子Q2がHレベルに変化する。時刻t7において、オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルにされる。これにより、CMOSインバータ42のNMOS44がオン状態になってデータ端子DAがLレベルになる。その結果、発光サイリスタ210−2のゲート・カソード間に電位差を生じ、これによるトリガ電流によって発光サイリスタ210−2がターンオンして発光状態となる。
【0074】
発光サイリスタ210−2による発光状態は、主としてアノード・カソード間に流れる駆動電流Ioutの電流値によるので、一度ターンオンした発光サイリスタ210−2をオフさせるためには、アノード・カソード間に印加される電圧を略0Vにすることが必要になる。そのため、時刻t8において、オン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルにされる。これにより、CMOSインバータ42のPMOS43がオン状態になってデータ端子DAがHレベルになり、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間電圧が略0Vになって発光サイリスタ210−2がオフ状態になる。
【0075】
このように、シリアルクロックSCKの第1パルスSCK1、第2パルスSCK2、第3パルスSCK3、第4パルスSCK4、第5パルスSCK5、第6パルスSCK6、第7パルスSCK7、及び第8パルスSCK8の立ち上が毎に、シフトレジスタ110の第1段出力端子Q1、第2段出力端子Q2、第3段出力端子Q3、第4段出力端子Q4、第5段出力端子Q5、第6段出力端子Q6、第7段出力端子Q7、及び第8段出力端子Q8が順に1出力端子QだけがHレベルとなり、他の出力端子QがLレベルとなる。このように、シリアルデータSIがLレベルの時、出力端子Q1〜Qnに接続される発光サイリスタ210−1〜210−nの内、対応する出力端子Q1〜QnがHレベルとなっているものだけが択一的に発光する。
【0076】
この際、発光サイリスタ210−1〜210−nをオンさせるためには、これらの発光サイリスタ210−1〜210−nのゲート・カソード間のPN接合部を順方向にバイアスさせる電位差を与え、ゲート電流を供給させるだけで良い。又、発光サイリスタ210−1〜210−nをオフ状態のままとするためには、ゲート・カソード間の電位差を順方向電圧以下としておくだけで十分であり、電位差を0Vにしたり、逆方向へ電圧を印加することもできる。
【0077】
更に、図8の発光サイリスタ210−1における時刻t4〜t5間の駆動時間T1、発光サイリスタ210−2における時刻t7〜t8間の駆動時間T2等は、異なる時間であっても良く、発光サイリスタ210−1〜210−nの発光効率にばらつきを生じていたとしても、これを補正して所定の露光エネルギー量が得られるようにするため、駆動時間T1,T2等を異なる値に制御することは容易である。
【0078】
(実施例1の発光サイリスタの動作)
図9(a)〜(d)は、図6の発光サイリスタ210におけるターンオン過程の動作説明図であり、同図(a)は発光サイリスタ210のシンボルと各端子の電圧、電流の記号を示す図、同図(b)は同図(a)の等価回路を示す図、及び同図(c)、(d)は動作波形を示す図である。
【0079】
図9(a)に示す発光サイリスタ210において、Vakはアノード・カソード間電圧、Vgkはゲート・カソード間電圧、Iaはアノード電流、及び、Igはゲート電流である。
【0080】
図9(b)において、破線で囲まれた発光サイリスタ210の等価回路は、PNPTR221及びNPNTR222により構成されている。
【0081】
例えば、発光サイリスタ210のターンオン過程を説明するために、ゲートGがHレベルになっている場合を考える。
【0082】
発光サイリスタ210を駆動するために図示しない駆動回路の出力電圧がLレベルとされ、この時、ゲートはHレベルとされているので、ゲート電流Igが発生する。このゲート電流Igは、発光サイリス210のゲート・カソード間のPN接合、即ちNPNTR222のエミッタ・ベース間を順方向電流となって流れる。
【0083】
ゲート電流1gは、発光サイリスタ210の内部にあるNPNTR222のベース電流1bに相当するものである。このベース電流Ibが流れることで、NPNTR222はオン状態への移行を開始して、このNPNTR222のコレクタにコレクタ電流Ikを生じる。なお、図示したIkはエミッタ電流であるが、NPNTR222のエミッタ電流とコレクタ電流とは略等しい。コレクタ電流Ikは、PNPTR221のベース電流となり、このPNPTR221もまたオン状態へと移行させる。これにより生じたコレクタ電流は、NPNTR222のベース電流1bを増強し、このNPNTR222のオン状態への移行を加速させることになる。
【0084】
一方、PNPTR221が完全にオン状態に移行した後には、そのコレクタ・エミッタ間電圧、即ち、アノード・ゲート間電圧Vagが低下して、ゲート電位が上昇し、図示しないゲート駆動回路のHレベル出力電圧VoH以上となると、ゲート駆動出力端子側から発光サイリスタ210のゲートGに流れるゲート電流1gを略ゼロとすることができる。この結果、発光サイリスタ210のカソードKには、アノード電流1aと略等しいカソード電流Ikが流れることになり、発光サイリスタ210が完全にオン状態となる。
【0085】
図9(c)は、発光サイリスタ210のターンオン過程を説明する図であって、横軸にカソード電流Ik、縦軸にアノード・カソード間電圧Vakを示している。
【0086】
発光サイリスタ210の消灯状態において、カソード電流Ikは略ゼロであり、図9(c)のグラフの原点(0,0)の状態にある。発光サイリスタ210のターンオン開始に伴い、カソード駆動が行われると、図9(c)中の矢印で示したようにカソード電位が降下する結果、アノード・カソード間電圧Vakは上昇してゆき、ピーク点のアノード電圧Vpに到達する。このアノード電圧Vpが印加されることで、ゲート電流1g(=NPNTR222のベース電流1b)を生じる。図9(c)において、丸印を付して示すポイント(Ip,Vp)は、発光サイリスタ210のオフ領域AR1とオン遷移領域AR2との境目に相当している。
【0087】
ポイント(Ip,Vp)におけるピーク点のカソード電流Ipから、更にカソード電流Ikが増加するに伴い、アノード・カソード間電圧Vakが低下していき、丸印を付して示すポイント(Iv,Vv)に到達する。このポイント(Iv,Vv)は、発光サイリスタ210のオン遷移領域AR2とオン領域AR3との境目に相当している。ポイント(Iv,Vv)の時のゲート電流1gは、略ゼロにまで低下していて、図示しないゲート駆動回路は、実質的に発光サイリスタ210のゲートGから切り離されたのと等価な状態にある。
【0088】
ポイント(Iv,Vv)から更にカソード電流Ikが増加するに伴い、発光サイリスタ210のアノード・カソード間電圧Vakが再び増加していき、丸印を付して示すポイント(I1,Vl)に到達する。このポイント(I1,V1)は、発光サイリスタ210における発光駆動の最終動作ポイントであり、図1の駆動回路41から供給される駆動電流Ioutに等しいカソード電流Ik(=I1)により、所定の発光パワーで発光駆動が行われる。
【0089】
図9(d)は、図9(c)に対応する図であって、横軸にカソード電流Ik、縦軸にゲート電流Igを示しており、前記発光サイリスタ210のターンオン過程において生じる発光サイリスタ210のゲート電流Igとそのピーク値Ig1と前記アノード電圧Vpとカソード電流Ipとの関係を示している。
【0090】
なお、図9(c)に示すオン遷移領域AR2においては、カソード電流Ikの増加によりアノード・カソード間電圧Vakが低下する特性を示しており、このオン遷移領域AR2でアノード・カソード間は負性抵抗を示す。図9(c)において一点鎖線で示すのは、前記負性抵抗領域における特性線の接線であって、この接線の傾きが負性抵抗値に対応しており、その負性抵抗値は、発光サイリスタ210の製造ばらつきやチップ温度等により変動するが、典型例では数KΩに達するものである。
【0091】
これに対し、従来の駆動回路(図1の駆動回路41に相当)は、PMOS及びNMOSからなるCMOSインバータ(図1のCMOSインバータ42に対応)と、このCMOSインバータの出力側と発光サイリスタのカソード(図1の発光サイリスタ210のカソードに相当)との間に接続された電流制限抵抗とにより構成され、その電流制限抵抗の抵抗値の典型例が、例えば200Ωに設定されている。そのため、従来の駆動回路を用いて図9の特性の発光サイリスタ210を駆動する場合を考えると、そのターンオン過程は、図9(c)のグラフの原点(0,0)を出発して図9(c)中の矢印で示す通り、ポイント(Ip,Vp)を経由してポイント(Iv,Vv)に至り、最終的にポイント(I1,V1)で発光駆動が行われることになる。その途中でオン遷移領域AR2にて示す負性抵抗領域を経由することになるが、前記駆動回路の出力抵抗値(これは前記電流制限抵抗の抵抗値に略等しい)は、発光サイリスタの負性抵抗値よりも小さいため、そのオン遷移領域AR2で発振してしまうという問題点があった。
【0092】
このような従来の問題点を解決するために、本実施例1の駆動回路41では、従来の電流制限抵抗を省略し、CMOSインバータ42におけるNMOS44を図7のような構成にしている。以下、本実施例1におけるNMOS44のトランジスタ特性を説明する。
【0093】
(実施例1のNMOSのトランジスタ特性)
図10(a)、(b)は、図7のNMOS44のトランジスタ特性を示す図である。
【0094】
図10(a)は、NMOS44のゲート電圧とドレーン電流の関係を示す図であって、横軸はゲート・ソース間電圧Vgsを示し、縦軸にドレーン電流の平方根をSQRT(Id)として示している。
【0095】
図10(a)において、例えば、曲線TC1はゲート・ソース間電圧Vgsの増加に対して略直線的に変化しており、この曲線TC1の接線と横軸との交点が、NMOS44の閾値電圧Vt1となっている。なお、曲線TC1は、図7(b)においてチャネル形成予定領域304に対するP型不純物の注入量が少ない場合を示している。
【0096】
これに対し、チャネル形成予定領域304に対するP型不純物の注入量を増していくと、図10(a)の曲線TC2のように、閾値電圧Vt1が大きくなる方向にシフトしていく(この時の閾値電圧はVt2)。更にチャネル形成予定領域304に対するP型不純物の注入量を増していくと、曲線TC3のような閾値電圧Vt3を有する特性が得られる。
【0097】
図10(b)は、NMOS44において、ゲート・ソース間電圧を電源電圧VDDに略等しくした場合におけるドレーン電圧とドレーン電流の関係を模式的に示す図であって、横軸はドレーン・ソース間電圧Vdsを示し、縦軸にドレーン電流Idを示している。
【0098】
図10(b)において、曲線TC10は図10(a)の曲線TC1と、曲線TC20は図10(a)の曲線TC2と、曲線TC30は図10(a)の曲線TC3とに対応するものであって、例えば、曲線TC10においてはドレーン電流Idとして大きな値が得られる一方で、ドレーン・ソース間電圧Vdsが増加するに従いドレーン電流1dもまた増加する特性となる。曲線TC20においては、曲線TC10の場合よりもドレーン電流Idが小さくなるように特性変化している。又、曲線TC30においては、曲線TC20の場合よりも更にドレーン電流Idが小さくなってしまうものの、ドレーン・ソース間電圧Vdsが所定値以上であれば、ドレーン電流1dが略一定とみなせて駆動電流Ioutとなり、ドレーン・ソース間電圧Vds電圧によらない定電流特性が得られることが判る。
【0099】
以上の関係を定量的に説明すると、電子デバイス物理の理論により良く知られているように、NMOS44のドレーン電流1dは、次式で与えられる。
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vtn)2
但し、K;定数
W;NMOS44のゲート幅
L;NMOS44のゲート長
Vgs;NMOS44のゲート・ソース間電圧
Vtn;NMOS44の閾値電圧
【0100】
図1及び図7を用いて説明したように、本実施例1の駆動回路41において、NMOS44は、チャネル形成予定領域304に対するP型不純物の注入が行われ、その注入量を適切に調整することで閾値電圧Vtnを増加させている。
【0101】
この時、NMOS44のゲート・ソース間に印加される電圧のHレベルは、電源電圧VDDに略等しく、たかだか3.3V程度であるため、前記閾値電圧Vtnの増加によって、オーバドライブ電圧ΔV(=Vgs−Vtn)は減少していき、NMOS44は飽和領域で動作するようになる。
【0102】
又、前記電源電圧VDDを前記3.3Vから下げて、例えば3.0Vや2.7Vといった値に設定することは容易であり、電源電圧VDDを下げることで、NMOS44を飽和領域で動作させることはいっそう容易になる。
【0103】
その上、NMOS44のゲート幅Wとゲート長Lの比は、NMOS44の設計段階で比較的自由に、広範囲に渡って変化させることが可能であり、前述したように前記閾値電圧Vtnもまた調整することが可能であって、前記ドレーン電流Idもまた比較的自由に調整することができる。
【0104】
更に、NMOS44においては、そのゲート長Lを比較的大きめに設定することで、ドレーン電位が多少変動したとしても、ドレーン電流値を所定値に保つことが可能である。このような特性は、MOSトランジスタの定電流特性として公知であり、良好な特性を得るためには、前記ゲート長Lを大きめに設定することが望ましい。
【0105】
前記NMOS44が定電流動作する場合、その出力抵抗は非常に大きくなり(理想的には無限大)、図9(c)に示す発光サイリスタ210の特性曲線に引いた負荷線は略縦線となって、発光サイリスタ210の特性曲線とは唯一点でのみ交わることになる。
【0106】
このようにすることで、本実施例1の駆動回路41では、発光サイリスタ210の負性抵抗に起因して発振するという従来の問題を解決することができる。
【0107】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、次の(1)〜(3)のような効果がある。
【0108】
(1) 本実施例1の駆動回路41を有する駆動装置とこれを用いたプリントヘッド13によれば、駆動回路41におけるNMOS44にサブストレート領域と同極性の不純物を注入することで、閾値電圧Vtnを増加させ、飽和領域動作させることでNMOS44による定電流駆動を実現している。そのため、駆動回路41の出力抵抗値を発光サイリスタ210の負性抵抗値よりも大きくすることができ、負性抵抗に起因する発振現象を未然に防止することができる。
【0109】
(2) 本実施例1の駆動回路41の構成においては、従来の駆動回路に設けられているCMOSインバータ(本実施例1のCMOSインバータ42に対応)の出力端子とデータ端子DAとの間の電流制限抵抗を、不要とすることができる。そのため、図3のプリントヘッド13における図4の基板ユニットを構成するプリント基板13bにおいて、従来設けられていた電流制限抵抗の占有領域を削減することができ、更に、CMOSインバータ42の出力端子と従来の電流制限抵抗との接続配線に要する占有面積も削減することができるので、プリントヘッド13に用いられるプリント基板13bの小型化を図ることが可能になる。
【0110】
(3) 本実施例1の画像形成装置1によれば、プリントヘッド13を採用しているので、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置1を提供することができる。即ち、プリントヘッド13を用いることにより、本実施例1のフルカラーの画像形成装置1に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に、露光装置としてのプリントヘッド13を数多く必要とするフルカラーの画像形成装置1において一層大きな効果が得られる。
【実施例2】
【0111】
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッド)
図11は、本発明の実施例2における印刷制御部及びプリントヘッドの概略の回路構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0112】
本実施例2の画像形成装置1では、プリントヘッド13A及び印刷制御部40Aの回路構成が、実施例1のプリントヘッド13及び印刷制御部40と異なっている。
【0113】
本実施例2のプリントヘッド13Aは、実施例1のシフトレジスタ110とは異なる構成の自己走査型シフトレジスタ110Aと、実施例1と同様の発光素子アレイ200等とを有している。
【0114】
自己走査型シフトレジスタ110Aは、発光素子アレイ200にトリガ電流を与えてオン/オフ動作させる回路であり、自己走査サイリスタを用いた複数段の回路120(=120−1〜120−n)により構成されている。各段の回路120(=120−1〜120−n、例えばn=4992)は、アノードがVDD電源に接続された自己走査サイリスタ121と、カソードが自己走査サイリスタ121のゲートに接続されたダイオード122と、自己走査サイリスタ121のゲート及びグランドGND間に接続された抵抗123とにより構成されている。奇数段目の各回路120−1,120−3,・・・,120−(n−1)における自己走査サイリスタ121は、アノードがVDD電源に接続され、カソードが抵抗124−1の一端に接続され、ゲートが抵抗123を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートがダイオード122のカソード・アノードを介して抵抗124−2の一端に接続されている。偶数段目の各回路120−2,120−4,・・・,120−nにおける自己走査サイリスタ121は、アノードがVDD電源に接続され、カソードが抵抗124−2の一端に接続され、ゲートが抵抗123を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートがダイオード122のカソード・アノードを介して抵抗124−1の一端に接続されている。更に、各段の自己走査サイリスタ121のゲートは、自己走査型シフトレジスタ110Aの各出力端子Q1〜Qnにそれぞれ接続されている。
【0115】
各段の回路120−1〜120−nにおける自己走査サイリスタ121は、発光素子アレイ200における発光サイリスタ210と同様なレイヤ構造を有し、且つ同様な回路動作を行う素子であるが、発光サイリスタ210のような発光機能を必要としないので、上層がメタル膜等で覆われ、遮光して用いられる。各段の自己走査サイリスタ121におけるゲートにカソードが接続されたダイオード122は、各段の自己走査サイリスタ121のゲート間を接続するものであって、発光サイリスタ210−1〜210−nが順次点灯する時の走査方向(例えば、図11において右方向)を決定するために設けられている。
【0116】
印刷制御部40Aは、複数の発光素子アレイ200を時分割に駆動するための実施例1と同様の複数の駆動回路41と、自己走査型シフトレジスタ110Aに対してクロック信号(以下単に「クロック」という。)を供給するクロック駆動回路45と、図示しない電源端子やグランド端子等とを有している。図11においては、図1と同様に、説明を簡略化するために1個の駆動回路41のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200は、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・が複数の発光サイリスタ210−1〜210−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられた駆動回路41によってそれらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
【0117】
印刷制御部40A側の駆動回路41及びクロック駆動回路45等と、プリントヘッド13側の自己走査型シフトレジスタ110Aとにより、本実施例2の駆動装置が構成されている。
【0118】
一例として典型的な設計例を挙げると、実施例1と同様に、発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200のチップを図4のプリント基板13b上に26個整列する。これにより、プリントヘッド13Aに必要な総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を構成している。この際、駆動回路41は前記26個の発光素子アレイ200に対応して設けられ、これらの駆動回路41における出力端子の総数が26である。これに対し、クロック駆動回路45は、前記アレイ化したチップを並列に駆動することができ、回路を共用することができる。なお、駆動回路41やクロック駆動回路45は、図11においては印刷制御部40Aの内部に配置されているが、プリントヘッド13Aの内部に配置しても良い。
【0119】
クロック駆動回路45は、クロックを出力する複数の出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cを有し、これらの出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cが、図示しないスリーステート型バッファに接続されている。スリーステート型バッファは、CMOS出力駆動部を備えた回路であって、Hレベル出力状態、Lレベル出力状態の他に、他の出力状態であるハイインピーダンス(以下「Hi−Z」という。)出力状態を有している。
【0120】
クロック駆動回路45の出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cには、抵抗46−1、コンデンサ47−1、抵抗46−2、及びコンデンサ47−2の一端がそれぞれ接続されている。抵抗46−1の他端及びコンデンサ47−1の他端は、クロック端子CK1に接続され、このクロック端子CK1が、プリントヘッド13A側の抵抗124−1の他端に接続されている。抵抗46−2の他端及びコンデンサ47−2の他端は、クロック端子CK2に接続され、このクロック端子CK2が、プリントヘッド13A側の抵抗124−2の他端に接続されている。
【0121】
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッドの概略動作)
図11において、例えば、印刷制御部40Aにおけるオン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルの場合、CMOSインバータ42のPMOS43がオン状態、NMOS44がオフ状態となり、CMOSインバータ42の出力側のデータ端子DAがHレベル(≒電源電圧VDD)となる。
【0122】
この結果、プリントヘッド13A側の共通端子INも略電源電圧VDDとなり、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutもゼロとなり、発光サイリスタ210−1〜210−nが全て非発光状態となる。
【0123】
これに対し、オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルの場合、CMOSインバータ42を構成するPMOS43がオフ状態、NMOS44がオン状態となって、出力側のデータ端子DAがLレベル(=0V)となる。この結果、プリントヘッド13A側の共通端子INも0Vとなり、各発光サイリスタ210のアノードに電源電圧VDDが印加され、カソードがLレベル(=0V)となって、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間に電源電圧VDDが印加される。この際、発光サイリスタ210−1〜210−nのうち、発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、この発光サイリスタ210のゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210がターンオンすることになる。
【0124】
ターンオンした発光サイリスタ210のカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210は発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた光出力を生じる。
【0125】
なお、図11における駆動回路41においては、実施例1と同様に、データ端子DAをHレベルとするためにPMOS43を設けているが、NMOS44をオフ状態にすることで駆動電流Ioutを遮断して発光サイリスタ210−1〜210−nをターンオフさせることができるので、発光サイリスタ210のスイッチング速度に高速性を要求されないケースにおいては、PMOS43を省略することも可能である。
【0126】
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッドの詳細動作)
図12は、図11のプリントヘッド13A及び印刷制御部40Aの詳細な動作を示すタイムチャートである。
【0127】
この図12では、実施例1と同様に、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図11の発光サイリスタ210−1〜210−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
【0128】
本実施例2のように、自己走査サイリスタ121を用いた自己走査型シフトレジスタ110Aの場合、2つのクロック端子CK1,CK2から供給される2相クロックが用いられ、この2相クロックを生成するために、クロック駆動回路45には、各クロック毎に2種の出力端子CK1C,CK1RとCK2C,CK2Rが設けられている。これらの出力端子CK1R、CK1CとCK2R,CK2Cとは、図示しないスリーステート出力型バッファによって駆動される。即ち、スリーステート型バッファは、CMOS出力駆動部を備えた回路であって、Hレベル出力状態、Lレベル出力状態の他に、他の出力状態であるHi−Z出力状態を切り替える機能を有している。
【0129】
図12のタイムチャートにおいて、左端部に示す状態においては、出力端子CK1C,CK1R,CK2C,CK2Rの各信号はHレベルとされる。
【0130】
クロック駆動回路45の出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cの内、出力端子CK1R,CK1Cは、抵抗46−1とコンデンサ47−1をそれぞれ介してクロック端子CK1に接続され、出力端子CK2R,CK2Cは、抵抗46−2とコンデンサ47−2をそれぞれ介してクロック端子CK2に接続されている。そのため、図12のタイムチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1,CK2の各信号は共にHレベルとなって、第1段、第3段、第5段、第7段回路120−1,120−3,120−5,120−7の各自己走査サイリスタ121の組と、第2段、第4段、第6段、第8段回路120−2,120−4,120−6,120−8の各自己走査サイリスタ121の組とのいずれも、そのカソードがHレベルとされ、オフ状態となっている。
【0131】
以下、第1段、第2段、第3段回路120−1,120−2,120−3における各自己走査サイリスタ121のターンオン過程(1)〜(3)を説明する。
【0132】
(1) 第1段回路120−1における自己走査サイリスタ121のターンオン過程
図12の時刻t1において、クロック駆動回路45の出力端子CKlRがLレベルとされる。すると、コンデンサ47−1には、出力端子CK1Cからコンデンサ47−1、抵抗46−1、及び出力端子CK1Rに向かう方向に充電電流を生じ、このコンデンサ47−1の両端電圧が上昇していく。これに伴い、クロック端子CK1の電位がa部のようにグランドGND電位へと降下していく。
【0133】
時刻t2において、出力端子CK1CがLレベルとされ、出力端子CK1Rが、図12の中間電位の横破線で示されたHi−Z状態とされる。時刻t2で前記Hi−Z状態に遷移したことで、クロック端子CK1には、図12のb部に示すようなアンダシュート波形を生じる。このアンダシュート波形は、コンデンサ47−1の充電電圧により生じる。
【0134】
図11のクロック駆動回路45において、図示しないスリーステート出力型バッファには、寄生ダイオードが生じており、前記アンダシュート波形を生じることで、その寄生ダイオードに電流が流れ、前記b部の負電圧レベルがクランプされる。この結果、b部に示すアンダシュート波形の極小部は、略−0.6V程度の負電圧にとどまる。その後、コンデンサ47−1の充電電荷が自己放電して、コンデンサ47−1の両端電圧が減少していく。そのため、b部に示すアンダシュートは、時間経過と共に解消していく。
【0135】
クロック端子CK1にb部のアンダシュートを生じることで、第1段回路120−1におけるサイリスタ121のアノード・カソード間には比較的大きな電圧が印加される。この時、クロック端子CK2はHレベルとなっており、第1段回路120−1のダイオード122を介して、そのサイリスタ121のゲートにトリガ電流が流れ、サイリスタ121がターンオンする。このサイリスタ121のオン状態は、クロック端子CK1におけるカソード電位波形がHレベルとなるまで継続する。
【0136】
次の時刻t3において、出力端子CK1CがHi−Z状態とされ、クロック端子CK1がLレベルになる。これにより、クロック端子CK1は、グランドGND電位に略等しくなる。
【0137】
一方、時刻t4において、発光サイリスタ210−1の発光指令のためにオン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルとされ、CMOSインバータ42の出力側のデータ端子DAがLレベルに遷移する。この時、第1段回路120−1のサイリスタ121はオン状態となっていて、カソード・ゲート間には順電圧相当の電位差を生じており、そのサイリスタ121のゲート電位がカソード電位よりも上昇する。
【0138】
発光サイリスタ210−1と第1段回路120−1におけるサイリスタ121とは、ゲート同士が接続されているので、発光サイリスタ210−1のゲートにトリガ電流が流れ、この発光サイリスタ210−1がターンオンする。発光サイリスタ210−1のオン状態は、時刻t6において、オン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルとされ、データ端子DAがHレベルに遷移するまで継続される。
【0139】
(2) 第2段回路120−2における自己走査サイリスタ121のターンオン過程
時刻t5において、出力端子CK2RがLレベルとされる。これにより、コンデンサ47−2には、出力端子CK2Cからコンデンサ47−2、抵抗46−2、及び出力端子CK2Rに向かう方向に充電電流を生じ、コンデンサ47−2の両端電圧が上昇していく。これに伴い、クロック端子CK2の電位は、図12のc部に示すように、グランドGND電位へと降下していく。
【0140】
その後、時刻t7において、出力端子CK2CがLレベルとされ、出力端子CK2Rが、中間電位の横破線で図示されたHi−Z状態とされる。時刻t7で前記状態に遷移したことで、クロック端子CK2には、図12のd部に示すようなアンダシュート波形を生じる。このアンダシュート波形は、コンデンサ47−2の充電電圧により生じる。図11のクロック駆動回路45において、図示しないスリーステート型バッファには寄生ダイオードが生じており、前記アンダシュート波形を生じることで、前記寄生ダイオードに電流が流れ、前記負電圧レベルがクランプされる。この結果、d部に示すアンダシュート波形の極小部は、略−0.6V程度の負電圧にとどまる。その後、コンデンサ47−2の充電電荷が自己放電して、このコンデンサ47−2の両端電圧が減少していく。これにより、d部に示すアンダシュートは、時間経過と共に解消していく。
【0141】
クロック端子CK2にd部のアンダシュートを生じることで、第2段回路120−2におけるサイリスタ121のアノード・カソード間には、比較的大きな電圧が印加される。この時、クロック端子CK2はHレベルとなっており、第1段回路120−1のサイリスタ121は未だオン状態にあって、そのゲート電位が高くなっている。そのため、第2段回路120−2のダイオード122を介して、第2段回路120−2におけるサイリスタ121のゲートにトリガ電流が流れ、そのサイリスタ121がターンオンする。第2段回路120−2におけるサイリスタ121のオン状態は、クロック端子CK2におけるカソード電位波形がHレベルとなるまで継続される。
【0142】
次に、時刻t8において、出力端子CK2CがHi−Z状態とされ、出力端子CK2RがLレベルとされる。これにより、クロック端子CK2の電位がグランドGND電位に略等しくなる。これと同時に、時刻t8において、出力端子CK1C,CI1Rが共にHレベルとされ、クロック端子CK1もHレベルとなる。この結果、第1段回路120−1におけるサイリスタ121がターンオフする。
【0143】
一方、時刻t9において、発光サイリスタ210−2の発光指令のためにオン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルとされ、NMOS44がオン状態になり、データ端子DAがLレベルに遷移する。この時、第2段回路120−2におけるサイリスタ121はオン状態となっていて、カソード・ゲート間には順電圧相当の電位差を生じており、そのゲート電位がカソード電位よりも上昇している。
【0144】
発光サイリスタ210−2と第2段回路120−2のサイリスタ121とは、ゲート同士が接続されているので、発光サイリスタ210−2のゲートにトリガ電流が流れて、この発光サイリスタ210−2がターンオンする。発光サイリスタ210−2のオン状態は、時刻t11において、オン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルとされてPMOS43がオン状態となり、データ端子DAがHレベルに遷移するまで継続される。
【0145】
(3) 第3段回路120−3における自己走査サイリスタ121のターンオン過程
時刻t10において、出力端子CK1RがLレベルとされると、コンデンサ47−1には、出力端子CK1Cからコンデンサ47−1、抵抗46−1、及び出力端子CK1Rに向かう方向に充電電流を生じ、このコンデンサ47−1の両端電圧が上昇していく。これに伴い、クロック端子CK1の電位は、図12のe部のように降下していく。
【0146】
次に、時刻t12において、出力端子CK1CがLレベルとされ、出力端子CK1Rが、図12の中間電位の横破線にて図示されるHi−Z状態とされる。時刻t12で前記状態に遷移したことで、クロック端子CK1には、図12のf部に示すようなアンダシュート波形を生じる。このアンダシュート波形は、コンデンサ47−1の充電電圧により生じる。
【0147】
図11のクロック駆動回路45において、図示しないスリーステート型バッファには、寄生ダイオードが生じており、前記アンダシュート波形を生じることで、その寄生ダイオードに電流が流れ、前記負電圧レベルがクランプされる。この結果、f部に示すアンダシュート波形の極小部は、略−0.6V程度の負電圧にとどまる。その後、コンデンサ47−1の充電電荷が自己放電して、このコンデンサ両端電圧が減少していく。これにより、f部に示すアンダシュートは、時間経過と共に解消していく。
【0148】
クロック端子CK1にf部のアンダシュートを生じることで、第3段回路120−3におけるサイリスタ121のアノード・カソード間には、比較的大きな電圧が印加される。この時、クロック端子CK1はHレベルとなっており、第2段回路120−2のサイリスタ121は未だオン状態にあって、そのゲート電位が高くなっている。そのため、第3段回路120−3におけるダイオード122を介して、第3段回路120−3におけるサイリスタ121のゲートにトリガ電流が流れ、このサイリスタ121がターンオンする。第3段回路120−3におけるサイリスタ121のオン状態は、クロック端子CK1におけるそのカソード電位波形がHレベルとなるまで継続される。
【0149】
次に、時刻t13において、出力端子CK1CがHi−Z状態とされ、出力端子CK1RがLレベルとされる。そのため、クロック端子CK1の電位は、グランドGND電位に略等しくなる。それと同時に、時刻t13において、出力端子CK2C,CK2Rが共にHレベルとされ、クロック端子CK2もHレベルとなる。この結果、第2段回路120−2におけるサイリスタ121がターンオフする。
【0150】
以上、図12を参照して詳細に説明したように、クロック端子CK1,CK2から供給される2つのクロックは、異なる位相をもって同様の波形が繰り返す形状を有しており、この波形の2つのクロックが、第1段、第3段、第5段、第7段回路120−1,120−3,120−5,120−7における各サイリスタ121の組と、第2段、第4段、第6段、第8段回路120−2,120−4,120−6,120−8における各サイリス121の組とに順次入力されることで、第1段〜第8段回路120−1〜120−8における各サイリスタ121が、第1段回路120−1から第8段回路120−8の方向へ順次オンしていく。
【0151】
オン状態にあるサイリスタ121のゲート電位は、略Hレベルであり、オフ状態にあるサイリスタ121のゲート電位は、グランドGND電位に略等しいLレベルである。又、第1段〜第8段回路120−1〜120−8における各サイリスタ121のゲート電位は、シフトレジスタ110Aにおける各出力端子Q1〜Q8の信号となっている。この結果、実施例1の図8において示したのと同様の出力端子Ql〜Q8の信号を得ることができ、シフトレジスタ110Aからの点灯指令によって選択される発光サイリスタ210−1〜210−8の順次点灯を行うことが可能となる。
【0152】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、実施例1の効果(1)〜(3)と同様の効果があり、更に、次の(4)のような効果もある。
【0153】
(4) 本実施例2によれば、発光サイリスタ210−1〜210−nの順次点灯のための自己走査型シフトレジスタ110Aを、自己走査型サイリスタ121を用いて構成しているので、実施例1で備える必要のあったシリコン基材上等に形成されたシフトレジスタ110を不要としている。そのため、自己走査型シフトレジスタ110Aと発光素子アレイ200とをモノリシックに集積することができ、より小型化が可能になる。
【実施例3】
【0154】
(実施例3の印刷制御部及びプリントヘッド)
図13は、本発明の実施例3における印刷制御部及びプリントヘッドの概略の回路構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0155】
本実施例3の画像形成装置1では、プリントヘッド13B及び印刷制御部40Bの回路構成が、実施例1のプリントヘッド13及び印刷制御部40と異なっている。
【0156】
本実施例3のプリントヘッド13Bは、実施例1と同様のシフトレジスタ110と、実施例1の発光素子アレイ200とは異なる構成の発光素子アレイ200B等とを有している。
【0157】
発光素子アレイ200Bは、3端子発光素子である例えば複数のNゲート型発光サイリスタ210B(=210B−1〜210B−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210Bの第1端子(例えば、カソード)が第1電源(例えば、グランドGND=0V)に接続され、第2端子(例えば、アノード)が駆動電流Ioutを流す共通端子INに接続され、第1制御端子(例えば、ゲート)がシフトレジスタ110の各出力端子Q1〜Qnに接続されている。各発光サイリスタ210Bは、アノード・カソード間に電源電圧VDDが印加された状態で、ゲートにトリガ電流が入力されると、アノード・カソード間がオン状態になってカソードが流れ、発光する素子である。
【0158】
印刷制御部40Bは、発光素子アレイ200Bのオン/オフを指令するオン/オフ指令信号DRVON−N(但し、「−N」は負論理を意味する。)、シフトレジスタ110に対する制御信号であるシリアルデータSI及びシリアルクロックSCKをプリントヘッド13Bへ供給する図示しない回路と、複数の発光素子アレイ200Bを時分割に駆動する複数の駆動回路41Bと、第2電源(例えば、電源電圧VDD電源)やグランド等とを有している。図13においては、実施例1と同様に、説明を簡略化するために1個の駆動回路41Bのみが図示されている。複数の発光素子アレイ200Bは、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・が複数の発光サイリスタ210B−1〜210B−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられた駆動回路41Bによってそれらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
【0159】
なお、駆動回路41Bは、図13においては印刷制御部40の内部に配置されているが、プリントヘッド13Bの内部に配置しても良い。
【0160】
駆動回路41Bは、入力されるオン/オフ指令信号DRVON−Nを反転してデータ端子DAに出力するCMOSインバータ42Bにより構成されている。CMOSインバータ42Bは、本実施例3の特徴である第1導電形MOSトランジスタ(例えば、PMOS)43Bと、通常の第2導電形MOSトランジスタ(例えば、NMOS)44Bとを有し、これらがVDD電源とグランドGNDとの間に直列に接続されている。即ち、PMOS43Bは、第2制御端子(例えば、ゲート)にオン/オフ指令信号DRVON−Nが入力され、第3端子(例えば、ソース)がVDD電源に接続され、第4端子(例えば、ドレーン)がデータ端子DAに接続されている。NMOS44Bは、ゲートにオン/オフ指令信号DRVON−Nが入力され、ソースがグランドGNDに接続され、ドレーンがデータ端子DAに接続されている。データ端子DAは、発光素子アレイ200B側の共通端子INに接続されている。
【0161】
本実施例3の特徴であるPMOS43Bは、N型シリコンウェハからなる基板内、又はその基板中に形成されたサブストレート領域(例えば、Nウェル領域)内に形成されるものであって、ソース領域とドレーン領域との間のチャネル形成予定領域に、砒素As等のN型不純物を注入することで、図示しないその他のPMOSよりも閾値電圧Vtpの絶対値を大きくすることができる(通常、PMOSの閾値電圧Vtpは負の値をとるが、明確化のために、その閾値電圧Vtpの絶対値が大きいと表現する。)。この際、チャネル形成予定領域に注入するN型不純物の量を調整することで、PMOS43Bの閾値電圧Vtpを調整することができる。
【0162】
印刷制御部40B側の駆動回路41B等と、プリントヘッド13B側のシフトレジスタ110とにより、本実施例3の駆動装置が構成されている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0163】
(実施例3の印刷制御部及びプリントヘッドの動作)
図13において、例えば、印刷制御部40Bにおけるオン/オフ指令信号DRVON−NがHレベルの場合、CMOSインバータ42Bを構成するPMOS43Bがオフ状態、NMOS44Bがオン状態となり、出力側のデータ端子DAは、Lレベル(=グランド電位)となる。この結果、プリントヘッド13B側の共通端子INも略グランド電位となり、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutもゼロとなり、発光サイリスタ210B−1〜210B−nが全て非発光状態となる。
【0164】
これに対し、オン/オフ指令信号DRVON−NがLレベルの場合、CMOSインバータ42Bを構成するPMOS43Bがオン状態、NMOS44Bがオフ状態となって、出力側のデータ端子DAがHレベル(≒電源電圧VDD)となる。この結果、プリントヘッド13B側の共通端子INも略電源電圧VDDとなり、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加される。この際、発光サイリスタ210B−1〜210B−nのうち、発光指令されている発光サイリスタ210Bのゲートのみをシフトレジスタ110によって選択的にLレベルとすることで、この発光サイリスタ210Bのゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210Bがターンオンすることになる。
【0165】
ターンオンした発光サイリスタ210Bのカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210Bは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた光出力を生じる。
【0166】
具体的な設計例として、例えば電源電圧VDDを3.3Vとする場合、PMOS43Bがオン状態になる時、そのゲート・ソース間に電圧が印加されることになるが、その電圧値はたかだか3.3Vであって、前述した閾値電圧Vtpを大きくすることで、PMOS43Bを飽和領域で動作させることができる。
【0167】
電子デバイス物理の理論により良く知られているように、この時のPMOS43Bのドレーン電流Idは、次式で与えられる。
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vtp)2
但し、K;定数
W;PMOS43Bのゲート幅
L;PMOS43Bのゲート長
Vtp;PMOS43Bの閾値電圧
Vgs;PMOS43Bのゲート・ソース間電圧(≒電源電圧VDD)
【0168】
この式から明らかなように、PMOS43Bのドレーン電流1d、即ち、発光サイリスタ210Bの駆動電流Ioutは、閾値電圧Vtpの電位を調整することで変化させることができる。PMOS43Bの閾値電圧Vtpは、チャネル形成予定領域に注入するN型不純物の量を変えることで調整することができ、ドレーン電流Idもまた変化させることができる。
【0169】
なお、図13における駆動回路41Bにおいては、データ端子DAをLレベルとするためにNMOS42Bを設けているが、PMOS43Bをオフ状態にすることで駆動電流Ioutを遮断して発光サイリスタ210B−1〜210B−nをターンオフさせることができるので、発光サイリスタ210Bのスイッチング速度に高速性を要求されないケースにおいては、NMOS44Bを省略することも可能である。
【0170】
(実施例3の効果)
本実施例3によれば、実施例1とほぼ同様の効果がある。又、シフトレジスタ110に代えて、実施例2における図11のクロック駆動回路45及び自己走査型シフトレジスタ110Aを設ければ、実施例2とほぼ同様の効果が得られる。
【0171】
(変形例)
本発明は、上記実施例1〜3に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(I)、(II)のようなものがある。
【0172】
(I) 実施例1〜3において、光源として用いられる発光サイリスタ210,210Bに適用した場合について説明したが、本発明は、サイリスタをスイッチング素子として用い、このスイッチング素子に例えば直列に接続された他の素子(例えば、有機エレクトロルミネセンス素子(以下「有機EL素子」という。)、表示素子等)への電圧印加制御を行う場合にも適用可能である。例えば、有機EL素子のアレイで構成される有機ELプリントヘッドを備えたプリンタ、表示素子の列を有する表示装置等において利用することができる。
【0173】
(II) 表示素子(例えば、列状あるいはマトリクス状に配列された表示素子)の駆動(即ち、電圧印加の制御)のためスイッチング素子としても用いられるサイリスタにも適用可能である。又、本発明は、3端子構造を備えたサイリスタの他、第1と第2の2つのゲートを備えた4端子サイリスタSCS(Silicon Semiconductor Controlled Switch)の場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0174】
1 画像形成装置
13,13A,13B プリントヘッド
40,40A,40B 印刷制御部
41,41B 駆動回路
43B PMOS
44 NMOS
45 クロック駆動回路
110 シフトレジスタ
110A 自己走査型シフトレジスタ
111,111−1〜111−n FF
120,120−1〜120−n 第1〜第n段回路
121 サイリスタ
200,200B 発光素子アレイ
210,210B,210−1〜210−n,210B−1〜210B−n 発光サイリスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光サイリスタ等の3端子発光素子の群を選択的に、且つサイクリックに駆動する駆動装置と、この駆動装置を有するプリントヘッドと、このプリントヘッドを有する電子写真プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プリンタ等の画像形成装置に設けられる駆動装置として、多数の発光サイリスタが配列された発光サイリスタアレイレイを駆動するために、相補形MOSトランジスタ(以下「CMOS」という。)からなるCMOSインバータと電流制限抵抗とを備え、そのCMOSインバータにより、電流制限抵抗を介して発光サイリスタアレイのカソードへ駆動電流を供給する構成が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−287393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の駆動装置、プリントヘッド及び画像形成装置では、発光サイリスタの負性抵抗値の絶対値よりも駆動装置側の電流制限抵抗の抵抗値が小さいため、発光サイリスタの負性抵抗領域で発振することがあった。しかも、その発振現象は駆動電流の立ち上がり部や立下り部で発生し、これによって実質的な駆動電流の駆動パルス幅が変動することで、露光エネルギー量が変化してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の駆動装置は、各々、第1電源と接続される第1端子と、前記第1端子との間に駆動電流を流すための第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子間の導通状態を制御する第1制御端子とを有し、前記第1端子同士及び前記第2端子同士が共通接続された複数の3端子発光素子を駆動する駆動装置において、相補接続された第1導電形MOSトランジスタと前記第1導電形MOSトランジスタとは異なる極性の第2導電形MOSトランジスタとを有し、入力された駆動信号に基づいて、前記複数の3端子発光素子のうち導通状態にあるものを駆動する駆動回路を備えている。
【0006】
そして、前記第1導電形MOSトランジスタは、サブストレート領域に形成され、前記第1電源とは異なる電位の第2電源に接続された第3端子と、共通接続された前記第2端子に接続された第4端子と、前記駆動信号に基づいて前記第3端子及び前記第4端子間の導通状態を制御する第2制御端子とを有し、チャネル形成予定領域に前記サブストレート領域と同極性の不純物が注入されたものであることを特徴とする。
【0007】
例えば、前記3端子発光素子は、発光サイリスタであり、前記駆動回路の等価出力抵抗値は、前記発光サイリスタのターンオン特性で定まる負性抵抗値の絶対値よりも大きく設定されている。
【0008】
本発明のプリントヘッドは、前記複数の3端子発光素子と、前記駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の画像形成装置は、前記プリントヘッドを備え、前記プリントヘッドにより露光されて記録媒体に画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の駆動装置及びプリントヘッドによれば、3端子発光素子を駆動する第1導電形MOSトランジスタ及び第2導電形MOSトランジスタを有する駆動回路を備え、その第1導電形MOSトランジスタのチャネル形成予定領域に、サブストレート領域と同極性の不純物が注入されているので、第1導電形MOSトランジスタの閾値電圧が増加し、飽和領域で動作して3端子発光素子の定電流駆動を行うことができる。この結果、駆動回路の等価出力抵抗値を3端子発光素子における負性抵抗値の絶対値よりも大きくすることができ、駆動回路の発振を防止することができる。
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、前記プリントヘッドを備えているので、露光エネルギーの変動を抑制でき、印刷濃度むらのない高品質の画像形成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の実施例1における図5中の印刷制御部及びプリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図2】図2は本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
【図3】図3は図2中のプリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。
【図4】図4は図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
【図5】図5は図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
【図7】図7は図1中のNMOS44を示す構成図である。
【図8】図8は図1の動作を示すタイムチャートである。
【図9】図9は図6の発光サイリスタ210におけるターンオン過程の動作説明図である。
【図10】図10は図7のNMOS44のトランジスタ特性を示す図である。
【図11】図11は本発明の実施例2における印刷制御部及びプリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【図12】図12は図11の動作を示すタイムチャートである。
【図13】図13は本発明の実施例3における印刷制御部及びプリントヘッドの回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0014】
(実施例1の画像形成装置)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
【0015】
この画像形成装置1は、被駆動素子(例えば、発光素子として3端子スイッチ素子である発光サイリスタ)を用いた3端子スイッチ素子アレイとしての発光素子アレイを有する露光装置(例えば、プリントヘッド)が搭載されたタンデム型電子写真カラープリンタであり、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4つのプロセスユニット10−1〜10−4を有し、これらが記録媒体(例えば、用紙)20の搬送経路の上流側から順に配置されている。各プロセスユニット10−1〜10−4の内部構成は共通しているため、例えば、マゼンタのプロセスユニット10−3を例にとり、これらの内部構成を説明する。
【0016】
プロセスユニット10−3には、像担持体としての感光体(例えば、感光体ドラム)11が図2中の矢印方向に回転可能に配置されている。感光体ドラム11の周囲には、この回転方向上流側から順に、感光体ドラム11の表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置としてのプリントヘッド13が配設されている。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像器14と、感光体ドラム11上のトナーの顕像を転写した際に残留したトナーを除去するクリーニング装置15が配設されている。なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
【0017】
画像形成装置1の下部には、用紙20を堆積した状態で収納する用紙カセット21が装着され、その上方に、用紙20を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ22が配設されている。用紙20の搬送方向におけるホッピングローラ22の下流側には、ピンチローラ23,24と共に用紙20を挟持することによってこの用紙20を搬送する搬送ローラ25と、用紙20の斜行を修正し、プロセスユニット10−1に搬送するレジストローラ26とが配設されている。これらのホッピングローラ22、搬送ローラ25及びレジストローラ26は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
【0018】
プロセスユニット10−1〜10−4の各感光体ドラム11に対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写ローラ27が配設されている。各転写ローラ27には、感光体ドラム11上に付着されたトナーによる顕像を用紙20に転写する転写時に、各感光体ドラム11の表面電位とこれら各転写ローラ27の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加されている。
【0019】
プロセスユニット10−4の下流には、定着器28が配設されている。定着器28は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、用紙20上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する装置であり、この下流に、排出ローラ29,30、排出部のピンチローラ31,32、及び用紙スタッカ部33が設けられている。排出ローラ29,30は、定着器28から排出された用紙20を、排出部のピンチローラ31,32と共に挟持し、用紙スタッカ部33に搬送する。これらの定着器28及び排出ローラ29等は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達されて回転する。
【0020】
このように構成される画像記録装置1は、次のように動作する。
先ず、用紙カセット21に堆積した状態で収納されている用紙20が、ホッピングローラ22によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この用紙20は、搬送ローラ25、レジストローラ26及びピンチローラ23,24に挟持されて、プロセスユニット10−1の感光体ドラム11と転写ローラ27の間に搬送される。その後、用紙20は、感光体ドラム11及び転写ローラ27に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム10−1の回転によって搬送される。同様にして、用紙20は、順次プロセスユニット10−2〜10−4を通過し、その通過過程で、各プリントヘッド13により形成された静電潜像を各現像器14によって現像した各色のトナー像が、その記録面に順次転写されて重ね合わされる。
【0021】
このようにして記録面上に各色のトナー像が重ね合わされた後、定着器28によってトナー像が定着された用紙20は、排出ローラ29,30及びピンチローラ31,32に挟持されて、画像形成装置1の外部の用紙スタッカ部33に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が用紙20上に形成される。
【0022】
(実施例1のプリントヘッド)
図3は、図2中のプリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。図4は、図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
【0023】
図3に示すプリントヘッド13は、ベース部材13aを有し、このベース部材13a上に、図4に示す基板ユニットが固定されている。基板ユニットは、ベース部材13a上に固定されるプリント基板13bと、このプリント基板13b上に接着剤等で固定され、シフトレジスタが集積された複数の集積回路(以下「IC」という。)チップ100と、この各ICチップ100上に接着剤等で固定された複数のチップ状の発光素子列(例えば、発光サイリスタ列)からなる発光素子アレイ200とにより構成されている。各発光素子アレイ200と各ICチップ100とは、図示しない薄膜配線等により電気的に接続され、更に、各ICチップ100中の複数の端子とプリント基板13b上の図示しない配線パッドとが、ボンディングワイヤ13gにより電気的に接続されている。
【0024】
複数の発光素子アレイ200上には、柱状の光学素子を多数配列してなるレンズアレイ(例えば、ロッドレンズアレイ)13cが配置され、このロッドレンズアレイ13cがホルダ13dにより固定されている。ベース部材13a、プリント基板13b及びホルダ13dは、クランプ部材13e,13fにより固定されている。
【0025】
(実施例1のプリンタ制御回路)
図5は、図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
【0026】
このプリンタ制御回路は、画像形成装置1における印刷部の内部に配設された印刷制御部40を有している。印刷制御部40は、マイクロプロセッサ、読み出し専用メモリ(ROM)、随時読み書き可能なメモリ(RAM)、信号の入出力を行う入出力ポート、タイマ等によって構成され、図示しない上位コントローラからの制御信号SGl、及びビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によってプリンタ全体をシーケンス制御して印刷動作を行う機能を有している。印刷制御部40には、プロセスユニット10−1〜10−4の4つのプリントヘッド13、定着器28のヒータ28a、ドライバ50,52、用紙吸入口センサ54、用紙排出口センサ55、用紙残量センサ56、用紙サイズセンサ57、定着器用温度センサ58、帯電用高圧電源59、及び転写用高圧電源60等が接続されている。ドライバ50には現像・転写プロセス用モータ(PM)51が、ドライバ52には用紙送りモータ(PM)53が、帯電用高圧電源59には現像器14が、転写用高圧電源60には転写ローラ27が、それぞれ接続されている。
【0027】
このような構成のプリンタ制御回路では、次のような動作を行う。
印刷制御部40は、上位コントローラからの制御信号SGlによって印刷指示を受信すると、先ず、温度センサ58によって定着器28内のヒータ28aが使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、温度範囲になければヒータ28aに通電し、使用可能な温度まで定着器28を加熱する。次に、ドライバ50を介して現像・転写プロセス用モータ51を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用高圧電源59をオン状態にし、現像器14の帯電を行う。
【0028】
そして、セットされている図2中の用紙20の有無及び種類が用紙残量センサ56、用紙サイズセンサ57によって検出され、その用紙20に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ53はドライバ52を介して双方向に回転させることが可能であり、最初に逆転させて、用紙吸入口センサ54が検知するまで、セットされた用紙20を予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙20をプリンタ内部の印刷機構内に搬送する。
【0029】
印刷制御部40は、用紙20が印刷可能な位置まで到達した時点において、図示しない画像処理部に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、ビデオ信号SG2を受信する。画像処理部においてページ毎に編集され、印刷制御部40に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データとして各プリントヘッド13に転送される。各プリントヘッド13は、それぞれ1ドット(ピクセル)の印刷のために設けられた発光サイリスタを複数個略直線状に配列したものである。
【0030】
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。各プリントヘッド13によって印刷される情報は、負電位に帯電された図示しない各感光体ドラム11上において電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像器14において、負電位に帯電された画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引され、トナー像が形成される。
【0031】
その後、トナー像は転写ローラ27へ送られ、一方、転写信号SG4によって正電位に転写用高圧電源60がオン状態になり、転写ローラ27は感光体ドラム11と転写ローラ27との間隔を通過する用紙20上にトナー像を転写する。転写されたトナー像を有する用紙20は、ヒータ28aを内蔵する定着器28に当接して搬送され、この定着器28の熱によって用紙20に定着される。この定着された画像を有する用紙20は、更に搬送されてプリンタの印刷機構から用紙排出口センサ55を通過してプリンタ外部へ排出される。
【0032】
印刷制御部40は、用紙サイズセンサ57、及び用紙吸入口センサ54の検知に対応して、用紙20が転写ローラ27を通過している間だけ転写用高圧電源60からの電圧を転写ローラ27に印加する。印刷が終了し、用紙20が用紙排出口センサ55を通過すると、帯電用高圧電源59による現像器14への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ51の回転を停止させる。以後、上記の動作を繰り返す。
【0033】
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッド)
図1は、本発明の実施例1における図5中の印刷制御部40及びプリントヘッド13の概略の回路構成を示すブロック図である。
【0034】
プリントヘッド13は、ICチップ100内に形成されたシフトレジスタ110と、発光素子アレイ200とを有している。
【0035】
シフトレジスタ110は、発光素子アレイ200にトリガ信号(例えば、トリガ電流)を与えてオン/オフ動作させる回路であり、複数個のフリップフロップ回路(以下「FF」という。)111(=111−1〜111−n)を有している。各FF111は、データを入力する入力端子D、データを出力する出力端子Q、及びシリアルクロック信号(以下単に「シリアルクロック」という。)SCKを入力するクロック端子CKをそれぞれ有し、初段のFF111−1の入力端子DがシリアルデータSIを入力し、このFF111−1の出力端子Qが、2段目のFF111−2の入力端子Dに接続され、以下同様に終段のFF111−nまで縦続接続されている。印刷制御部40からシリアルクロックSCK及びシリアルデータSIが供給されると、このシフトレジスタ110では、シリアルクロックSCKに同期して、シリアルデータSIを初段から終段のFF111−1〜111−nへと順次入力してシフトしていき、シフトしたデータを各段の出力端子Q1〜Qnから出力する構成になっている。
【0036】
シフトレジスタ110は、例えば、シリコンウェハ基材上に公知のCMOS構造を用いて作成されるが、その他、ガラス基板上に公知の薄膜トランジスタ(TFT)技術を用いて製造することもできる。
【0037】
発光素子アレイ200は、3端子発光素子である例えば複数のPゲート型発光サイリスタ210(=210−1〜210−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210の第1端子(例えば、アノード)が第1電源(例えば、電源電圧VDD電源)に接続され、第2端子(例えば、カソード)が駆動電流Ioutを流す共通端子INに接続され、第1制御端子(例えば、ゲート)がシフトレジスタ110の各出力端子Q1〜Qnに接続されている。各発光サイリスタ210は、アノード・カソード間に電源電圧VDDが印加された状態で、ゲートにトリガ電流が入力されると、アノード・カソード間がオン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・の総数は、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能なプリントヘッドの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
【0038】
印刷制御部40は、発光素子アレイ200のオン/オフを指令するオン/オフ指令信号DRVON−P(但し、「−P」は正論理を意味する。)、シフトレジスタ110に対する制御信号であるシリアルデータSI及びシリアルクロックSCKをプリントヘッド13へ供給する図示しない回路と、複数の発光素子アレイ200を時分割に駆動する複数の駆動回路41と、VDD電源や第2電源(例えば、グランドGND=0V)等とを有している。図1においては、説明を簡略化するために1個の駆動回路41のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200は、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・が複数の発光サイリスタ210−1〜210−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられた駆動回路41によってそれらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
【0039】
印刷制御部40側の駆動回路41等と、プリントヘッド13側のシフトレジスタ110とにより、本実施例1の駆動装置が構成されている。
【0040】
一例として典型的な設計例を挙げると、発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200のチップを図4のプリント基板13b上に26個整列する。これにより、プリントヘッド13に必要な総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を構成している。この際、駆動回路41は前記26個の発光素子アレイ200に対応して設けられ、これらの駆動回路41における出力端子の総数が26である。なお、駆動回路41は、図1においては印刷制御部40の内部に配置されているが、プリントヘッド13の内部に配置しても良い。
【0041】
駆動回路41は、入力されるオン/オフ指令信号DRVON−Pを反転してデータ端子DAに出力するCMOSインバータ42により構成されている。CMOSインバータ42は、第2導電形MOSトランジスタ(例えば、PチャネルMOSトランジスタ、以下「PMOS」という。)43と、第1導電形MOSトランジスタ(例えば、NチャネルMOSトランジスタ、以下「NMOS」という。)44とを有し、これらがVDD電源とグランドGNDとの間に直列に接続されている。即ち、PMOS43は、ゲートにオン/オフ指令信号DRVON−Pが入力され、ソースがVDD電源に接続され、ドレーンがデータ端子Dに接続されている。NMOS44は、第2制御端子(例えば、ゲート)にオン/オフ指令信号DRVON−Pが入力され、第3端子(例えば、ソース)がグランドGNDに接続され、第4端子(例えば、ドレーン)がデータ端子DAに接続されている。データ端子DAは、発光素子アレイ200側の共通端子INに接続されている。
【0042】
(実施例1の発光サイリスタ)
図6(a)〜(d)は、図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
【0043】
図6(a)は、発光サイリスタ210の回路シンボルを示し、アノードA、カソードK、及びゲートGの3つの端子を有している。
【0044】
図6(b)は、発光サイリスタ210の断面構造を示す図である。発光サイリスタ210は、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD(Metal Organic−Chemical Vapor Deposition)法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0045】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211と、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハ形成する。次いで、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、最上層であるN型層213の一部に、選択的にP型不純物領域214を形成する。更に、公知のエッチング法により、図示しない溝部を形成することで、素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。これと同時に、P型領域214とP型領域212にも、それぞれアノードAとゲートGが形成される。
【0046】
図6(c)は、発光サイリスタ210の他の形態を示す断面構造図である。この断面構造では、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、そのGaAs基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
【0047】
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213と、P型不純物を含ませ成層したP型層215とを順に積層させたPNPNの4層構造のウェハを形成する。更に、公知のエッチング法を用いて、図示しない溝部を形成することで素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。同様に、最上層となるP型領域215の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してアノードAを形成する。これと同時に、P型領域212にゲートGが形成される。
【0048】
図6(d)は、図6(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタ210の等価回路図である。発光サイリスタ210は、PNPトランジスタ(以下「PNPTR」という。)221とNPNトランジスタ(以下「NPNTR」という。)222とからなり、PNPTR221のエミッタが発光サイリスタ210のアノードAに相当し、NPNTR222のベースが発光サイリスタ210のゲートGに相当し、NPNTR222のエミッタが発光サイリスタ210のカソードKに相当している。又、PNPTR221のコレクタは、NPNTR222のベースに接続され、PNPTR221のベースが、NPNTR222のコレクタに接続されている。
【0049】
なお、図6に示す発光サイリスタ210では、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであっても良く、更には、サファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
【0050】
図6の発光サイリスタ210は、例えば、エピタキシャルフィルムボンディング法を用いて、シフトレジスタ110を集積したICウェハと接着され、両者の接続端子間がフォトリソグラフィ法を用いて配線される。更に、公知のダイシング法を用いて複数のチップに分離することで、図4に示すように、ICチップ100及び発光素子アレイ200からなる複合チップが形成される。
【0051】
(図1中のNMOS)
図7(a)〜(c)は、図1中のNMOS44を示す構成図である。
【0052】
図7(a)は、NMOS44の回路シンボルを示し、ドレーンD、ゲートG、及びソースSの3つの端子を有している。図7(b)は、NMOS44のチャネル方向への縦断面を示す断面図であって、製造途中における一段階の断面が示されている。更に、図7(c)は、NMOS44のチャネル方向への縦断面を示す断面図である。
【0053】
図7(c)に示すように、NMOS44は、図1中のPMOS43と共に、例えば、N型シリコンウェハからなる基板300に形成されている。基板300の表面内には図示しないPMOS43が形成され、このPMOS43に対してNMOS44を電気的に分離するために、NMOS形成用のサブストレート領域(例えば、Pウェル領域(Pwell))301が、基板300内に形成されている。Pウェル領域301は、基板300内にP型不純物を島状に拡散して形成される。Pウェル領域301内には、N型不純物を拡散してソース領域302とドレーン領域303とが対向して形成されている。
【0054】
ソース領域302とドレーン領域303との間のチャネル形成予定領域304上には、図示しないゲート絶縁膜を介して、ポリシリコンからなるゲート部305が形成されている。ソース領域302とドレーン領域303とは、ゲート部305をマスクとして、N型不純物を基板300中に拡散させることにより形成される。これらのソース領域302、ドレーン領域303、及びゲート部305により、NMOS44が構成されており、このNMOS44を図示しない他の素子と電気的に分離するために、ソース領域302及びドレーン領域303の周囲にフィールド酸化膜306が形成されている。
【0055】
ソース領域302、ドレーン領域303、及びゲート部305上のコンタクト領域には、図示しないメタル電極が形成され、ソース領域302にソースSが、ドレーン領域303にドレーンDが、ゲート部305にゲートGが、それぞれ接続されている。全体は、図示しないパッシベーション膜により覆われている。
【0056】
図7(b)には、ゲート部305を形成する前に、チャネル形成予定領域304に対して行われる不純物注入工程が示されている。この不純物注入工程では、NMOS44のチャネル形成予定領域304を除き、それ以外の他回路で用いられるNMOS等の形成領域がレジスト膜307で覆われる。露出したチャネル形成予定領域304には、破線矢印にて示すように、サブストレート領域であるPウェル領域301と同極性の不純物(例えば、ホウ素BからなるP型不純物)が注入される。この不純物注入工程の後に、図7(c)に示すようなゲート部305の形成と、このゲート部305をマスクとして用いたソース領域302及びドレーン領域303の形成とが行われる。
【0057】
本実施例1の不純物注入工程は、以下の理由により行われる。
NMOS44では、チャネル形成予定領域304における浅い領域に、リンP等のN型不純物を注入しておくことで、反転層であるチャネルの形成を容易にして閾値電圧を下げ、所望のトランジスタ特性に調整することができる。これに対し、本実施例1では、チャネル形成予定領域304における浅い領域に、ホウ素B等のP型不純物を注入しておき、反転層であるチャネルが形成し難くすることで、逆に閾値電圧を増加させて後述するトランジスタ特性を調整するようにしている。
【0058】
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッドの概略動作)
図1において、例えば、印刷制御部40におけるオン/オフ指令信号DRVON−Pが低レベル(以下「Lレベル」という。)の場合、CMOSインバータ42を構成するPMOS43がオン状態、NMOS44がオフ状態となり、出力側のデータ端子DAは、高レベル(以下「Hレベル」という。)レベル(≒電源電圧VDD)となる。この結果、プリントヘッド13側の共通端子INも略電源電圧VDDとなり、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutもゼロとなり、発光サイリスタ210−1〜210−nが全て非発光状態となる。
【0059】
これに対し、オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルの場合、CMOSインバータ42を構成するPMOS43がオフ状態、NMOS44がオン状態となって、出力側のデータ端子DAがLレベル(=0V)となる。この結果、プリントヘッド13側の共通端子INも0Vとなり、各発光サイリスタ210のアノードに電源電圧VDDが印加され、カソードがLレベル(=0V)となって、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間に電源電圧VDDが印加される。この際、発光サイリスタ210−1〜210−nのうち、発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、この発光サイリスタ210のゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210がターンオンすることになる。
【0060】
ターンオンした発光サイリスタ210のカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210は発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた光出力を生じる。
【0061】
後述するように、NMOS44は飽和領域で動作するように設計条件が設定され、電子デバイス物理の理論により良く知られているように、この時のドレーン電流1dは、次式で与えられる
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vtn)2
但し、K;定数
W;NMOS44のゲート幅
L;NMOS44のゲート長
Vtn;NMOS44の閾値電圧
Vgs;NMOS44のゲート・ソース間電圧(≒電源電圧VDD)
【0062】
この式から明らかなように、NMOS44のドレーン電流1d、即ち、発光サイリスタ210の駆動電流Ioutは、閾値電圧Vtnの電位を調整することで変化させることができる。
【0063】
その上、NMOS44のように飽和領域で動作するMOSトランジスタにおいては、その素子サイズを適切に設定することで、ドレーン電位が多少変動したとしても、ドレーン電流値を所定値に保つことが可能である。このような特性はMOSトランジスタの定電流特性として公知であり、良好な特性を得るためには、NMOS44のゲート長Lを大きめに設定することが望ましい。
【0064】
なお、図1における駆動回路41においては、データ端子DAをHレベルとするためにPMOS43を設けているが、NMOS44をオフ状態にすることで駆動電流Ioutを遮断して発光サイリスタ210−1〜210−nをターンオフさせることができるので、発光サイリスタ210のスイッチング速度に高速性を要求されないケースにおいては、PMOS43を省略することも可能である。
【0065】
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッドの詳細動作)
図8は、図1のプリントヘッド13及び印刷制御部40の詳細な動作を示すタイムチャートである。
【0066】
この図8では、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図1の発光サイリスタ210−1〜210−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
【0067】
先ず、画像形成装置1のおける電源投入時の予備動作として、図1のシフトレジスタ110のリセット処理が行われる。このリセット処理では、シリアルデータSIをLレベルとしておき、シフトレジスタ110の段数(例えば、n=8)に相当する個数のシリアルクロックSCKのクロックパルスをシフトレジスタ110に入力する。これにより、シフトレジスタ110の全出力端子Q1〜Q8がLレベルとなる。
【0068】
1ライン分の走査に先立ち、図8の時刻t1において、シリアルデータSIがHレベルに設定される。次いで時刻t2において、シリアルクロックSCKの第1パルスSCK1が入力される。第1パルスSCK1が立ち上がると、シリアルデータSIはシフトレジスタ110内の第1段FF111−1に取り込まれ、これより僅かに遅れて、第1段FF111−1の出力端子Q1がHレベルへと遷移する。第1パルスSCK1が立ち上がった後で、時刻t3にてシリアルデータSIが再びLレベルに戻される
【0069】
第1段FF111−1の出力端子Q1がHレベルとなることで、発光サイリスタ210−1のゲート電位が上昇する。次いで時刻t4にて、オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルにされる。これにより、CMOSインバータ42のNMOS44がオン状態になってデータ端子DAがLレベルになり、発光サイリスタ210−1のゲート・カソード間に電位差が生じる。この結果、トリガ電流によって発光サイリスタ210−1がターンオンして発光状態となる。
【0070】
発光サイリスタ210−1による発光状態は、主としてアノード・カソード間に流れる電流によるので、一度ターンオンした発光サイリスタ210−1をオフさせるためには、アノード・カソード間に印加される電圧をゼロにする必要がある。そのため、時刻t5において、オン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルにされる。すると、CMOSインバータ42のPMOS43がオン状態になってデータ端子DAがHレベルとなり、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間電圧が略0Vになり、この発光サイリスタ210−1がオフする。
【0071】
前述したように、発光サイリスタ210−1〜210−nの発光出力は、主としてそのアノード・カソード間に流れる駆動電流Ioutの電流値によるので、図1において駆動源として定電流特性を有する駆動回路41を用いることで、発光サイリスタ210の発光時におけるアノード・カソード間電圧に多少の素子ばらつきを生じていたとしても、その駆動電流Ioutを所定値に保つことができる。
【0072】
なお、図8では、発光サイリスタ210−1を発光させるために、時刻t4でデータ端子DAをLレベルとし、消灯させるために、時刻t5でデータ端子DAをHレベルとしているが、発光サイリスタ210−1を発光させる必要がない場合には、時刻t4〜t5の間もデータ端子DAをHレベルのままとすれば良い。このように、データ端子DAの論理レベルにより、発光サイリス210−1の発光状態/非発光状態を切り替えることができる。
【0073】
次いで、時刻t6において、シリアルクロックSCKの第2パルスSCK2が立ち上がる。この時、シリアルデータSIはLレベルとなっているので、これより僅かに遅れて、シフトレジスタ110内における第1段FF111−1の出力端子QlがLレベルへと遷移する一方で、第2段FF111−2の出力端子Q2がHレベルに変化する。時刻t7において、オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルにされる。これにより、CMOSインバータ42のNMOS44がオン状態になってデータ端子DAがLレベルになる。その結果、発光サイリスタ210−2のゲート・カソード間に電位差を生じ、これによるトリガ電流によって発光サイリスタ210−2がターンオンして発光状態となる。
【0074】
発光サイリスタ210−2による発光状態は、主としてアノード・カソード間に流れる駆動電流Ioutの電流値によるので、一度ターンオンした発光サイリスタ210−2をオフさせるためには、アノード・カソード間に印加される電圧を略0Vにすることが必要になる。そのため、時刻t8において、オン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルにされる。これにより、CMOSインバータ42のPMOS43がオン状態になってデータ端子DAがHレベルになり、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間電圧が略0Vになって発光サイリスタ210−2がオフ状態になる。
【0075】
このように、シリアルクロックSCKの第1パルスSCK1、第2パルスSCK2、第3パルスSCK3、第4パルスSCK4、第5パルスSCK5、第6パルスSCK6、第7パルスSCK7、及び第8パルスSCK8の立ち上が毎に、シフトレジスタ110の第1段出力端子Q1、第2段出力端子Q2、第3段出力端子Q3、第4段出力端子Q4、第5段出力端子Q5、第6段出力端子Q6、第7段出力端子Q7、及び第8段出力端子Q8が順に1出力端子QだけがHレベルとなり、他の出力端子QがLレベルとなる。このように、シリアルデータSIがLレベルの時、出力端子Q1〜Qnに接続される発光サイリスタ210−1〜210−nの内、対応する出力端子Q1〜QnがHレベルとなっているものだけが択一的に発光する。
【0076】
この際、発光サイリスタ210−1〜210−nをオンさせるためには、これらの発光サイリスタ210−1〜210−nのゲート・カソード間のPN接合部を順方向にバイアスさせる電位差を与え、ゲート電流を供給させるだけで良い。又、発光サイリスタ210−1〜210−nをオフ状態のままとするためには、ゲート・カソード間の電位差を順方向電圧以下としておくだけで十分であり、電位差を0Vにしたり、逆方向へ電圧を印加することもできる。
【0077】
更に、図8の発光サイリスタ210−1における時刻t4〜t5間の駆動時間T1、発光サイリスタ210−2における時刻t7〜t8間の駆動時間T2等は、異なる時間であっても良く、発光サイリスタ210−1〜210−nの発光効率にばらつきを生じていたとしても、これを補正して所定の露光エネルギー量が得られるようにするため、駆動時間T1,T2等を異なる値に制御することは容易である。
【0078】
(実施例1の発光サイリスタの動作)
図9(a)〜(d)は、図6の発光サイリスタ210におけるターンオン過程の動作説明図であり、同図(a)は発光サイリスタ210のシンボルと各端子の電圧、電流の記号を示す図、同図(b)は同図(a)の等価回路を示す図、及び同図(c)、(d)は動作波形を示す図である。
【0079】
図9(a)に示す発光サイリスタ210において、Vakはアノード・カソード間電圧、Vgkはゲート・カソード間電圧、Iaはアノード電流、及び、Igはゲート電流である。
【0080】
図9(b)において、破線で囲まれた発光サイリスタ210の等価回路は、PNPTR221及びNPNTR222により構成されている。
【0081】
例えば、発光サイリスタ210のターンオン過程を説明するために、ゲートGがHレベルになっている場合を考える。
【0082】
発光サイリスタ210を駆動するために図示しない駆動回路の出力電圧がLレベルとされ、この時、ゲートはHレベルとされているので、ゲート電流Igが発生する。このゲート電流Igは、発光サイリス210のゲート・カソード間のPN接合、即ちNPNTR222のエミッタ・ベース間を順方向電流となって流れる。
【0083】
ゲート電流1gは、発光サイリスタ210の内部にあるNPNTR222のベース電流1bに相当するものである。このベース電流Ibが流れることで、NPNTR222はオン状態への移行を開始して、このNPNTR222のコレクタにコレクタ電流Ikを生じる。なお、図示したIkはエミッタ電流であるが、NPNTR222のエミッタ電流とコレクタ電流とは略等しい。コレクタ電流Ikは、PNPTR221のベース電流となり、このPNPTR221もまたオン状態へと移行させる。これにより生じたコレクタ電流は、NPNTR222のベース電流1bを増強し、このNPNTR222のオン状態への移行を加速させることになる。
【0084】
一方、PNPTR221が完全にオン状態に移行した後には、そのコレクタ・エミッタ間電圧、即ち、アノード・ゲート間電圧Vagが低下して、ゲート電位が上昇し、図示しないゲート駆動回路のHレベル出力電圧VoH以上となると、ゲート駆動出力端子側から発光サイリスタ210のゲートGに流れるゲート電流1gを略ゼロとすることができる。この結果、発光サイリスタ210のカソードKには、アノード電流1aと略等しいカソード電流Ikが流れることになり、発光サイリスタ210が完全にオン状態となる。
【0085】
図9(c)は、発光サイリスタ210のターンオン過程を説明する図であって、横軸にカソード電流Ik、縦軸にアノード・カソード間電圧Vakを示している。
【0086】
発光サイリスタ210の消灯状態において、カソード電流Ikは略ゼロであり、図9(c)のグラフの原点(0,0)の状態にある。発光サイリスタ210のターンオン開始に伴い、カソード駆動が行われると、図9(c)中の矢印で示したようにカソード電位が降下する結果、アノード・カソード間電圧Vakは上昇してゆき、ピーク点のアノード電圧Vpに到達する。このアノード電圧Vpが印加されることで、ゲート電流1g(=NPNTR222のベース電流1b)を生じる。図9(c)において、丸印を付して示すポイント(Ip,Vp)は、発光サイリスタ210のオフ領域AR1とオン遷移領域AR2との境目に相当している。
【0087】
ポイント(Ip,Vp)におけるピーク点のカソード電流Ipから、更にカソード電流Ikが増加するに伴い、アノード・カソード間電圧Vakが低下していき、丸印を付して示すポイント(Iv,Vv)に到達する。このポイント(Iv,Vv)は、発光サイリスタ210のオン遷移領域AR2とオン領域AR3との境目に相当している。ポイント(Iv,Vv)の時のゲート電流1gは、略ゼロにまで低下していて、図示しないゲート駆動回路は、実質的に発光サイリスタ210のゲートGから切り離されたのと等価な状態にある。
【0088】
ポイント(Iv,Vv)から更にカソード電流Ikが増加するに伴い、発光サイリスタ210のアノード・カソード間電圧Vakが再び増加していき、丸印を付して示すポイント(I1,Vl)に到達する。このポイント(I1,V1)は、発光サイリスタ210における発光駆動の最終動作ポイントであり、図1の駆動回路41から供給される駆動電流Ioutに等しいカソード電流Ik(=I1)により、所定の発光パワーで発光駆動が行われる。
【0089】
図9(d)は、図9(c)に対応する図であって、横軸にカソード電流Ik、縦軸にゲート電流Igを示しており、前記発光サイリスタ210のターンオン過程において生じる発光サイリスタ210のゲート電流Igとそのピーク値Ig1と前記アノード電圧Vpとカソード電流Ipとの関係を示している。
【0090】
なお、図9(c)に示すオン遷移領域AR2においては、カソード電流Ikの増加によりアノード・カソード間電圧Vakが低下する特性を示しており、このオン遷移領域AR2でアノード・カソード間は負性抵抗を示す。図9(c)において一点鎖線で示すのは、前記負性抵抗領域における特性線の接線であって、この接線の傾きが負性抵抗値に対応しており、その負性抵抗値は、発光サイリスタ210の製造ばらつきやチップ温度等により変動するが、典型例では数KΩに達するものである。
【0091】
これに対し、従来の駆動回路(図1の駆動回路41に相当)は、PMOS及びNMOSからなるCMOSインバータ(図1のCMOSインバータ42に対応)と、このCMOSインバータの出力側と発光サイリスタのカソード(図1の発光サイリスタ210のカソードに相当)との間に接続された電流制限抵抗とにより構成され、その電流制限抵抗の抵抗値の典型例が、例えば200Ωに設定されている。そのため、従来の駆動回路を用いて図9の特性の発光サイリスタ210を駆動する場合を考えると、そのターンオン過程は、図9(c)のグラフの原点(0,0)を出発して図9(c)中の矢印で示す通り、ポイント(Ip,Vp)を経由してポイント(Iv,Vv)に至り、最終的にポイント(I1,V1)で発光駆動が行われることになる。その途中でオン遷移領域AR2にて示す負性抵抗領域を経由することになるが、前記駆動回路の出力抵抗値(これは前記電流制限抵抗の抵抗値に略等しい)は、発光サイリスタの負性抵抗値よりも小さいため、そのオン遷移領域AR2で発振してしまうという問題点があった。
【0092】
このような従来の問題点を解決するために、本実施例1の駆動回路41では、従来の電流制限抵抗を省略し、CMOSインバータ42におけるNMOS44を図7のような構成にしている。以下、本実施例1におけるNMOS44のトランジスタ特性を説明する。
【0093】
(実施例1のNMOSのトランジスタ特性)
図10(a)、(b)は、図7のNMOS44のトランジスタ特性を示す図である。
【0094】
図10(a)は、NMOS44のゲート電圧とドレーン電流の関係を示す図であって、横軸はゲート・ソース間電圧Vgsを示し、縦軸にドレーン電流の平方根をSQRT(Id)として示している。
【0095】
図10(a)において、例えば、曲線TC1はゲート・ソース間電圧Vgsの増加に対して略直線的に変化しており、この曲線TC1の接線と横軸との交点が、NMOS44の閾値電圧Vt1となっている。なお、曲線TC1は、図7(b)においてチャネル形成予定領域304に対するP型不純物の注入量が少ない場合を示している。
【0096】
これに対し、チャネル形成予定領域304に対するP型不純物の注入量を増していくと、図10(a)の曲線TC2のように、閾値電圧Vt1が大きくなる方向にシフトしていく(この時の閾値電圧はVt2)。更にチャネル形成予定領域304に対するP型不純物の注入量を増していくと、曲線TC3のような閾値電圧Vt3を有する特性が得られる。
【0097】
図10(b)は、NMOS44において、ゲート・ソース間電圧を電源電圧VDDに略等しくした場合におけるドレーン電圧とドレーン電流の関係を模式的に示す図であって、横軸はドレーン・ソース間電圧Vdsを示し、縦軸にドレーン電流Idを示している。
【0098】
図10(b)において、曲線TC10は図10(a)の曲線TC1と、曲線TC20は図10(a)の曲線TC2と、曲線TC30は図10(a)の曲線TC3とに対応するものであって、例えば、曲線TC10においてはドレーン電流Idとして大きな値が得られる一方で、ドレーン・ソース間電圧Vdsが増加するに従いドレーン電流1dもまた増加する特性となる。曲線TC20においては、曲線TC10の場合よりもドレーン電流Idが小さくなるように特性変化している。又、曲線TC30においては、曲線TC20の場合よりも更にドレーン電流Idが小さくなってしまうものの、ドレーン・ソース間電圧Vdsが所定値以上であれば、ドレーン電流1dが略一定とみなせて駆動電流Ioutとなり、ドレーン・ソース間電圧Vds電圧によらない定電流特性が得られることが判る。
【0099】
以上の関係を定量的に説明すると、電子デバイス物理の理論により良く知られているように、NMOS44のドレーン電流1dは、次式で与えられる。
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vtn)2
但し、K;定数
W;NMOS44のゲート幅
L;NMOS44のゲート長
Vgs;NMOS44のゲート・ソース間電圧
Vtn;NMOS44の閾値電圧
【0100】
図1及び図7を用いて説明したように、本実施例1の駆動回路41において、NMOS44は、チャネル形成予定領域304に対するP型不純物の注入が行われ、その注入量を適切に調整することで閾値電圧Vtnを増加させている。
【0101】
この時、NMOS44のゲート・ソース間に印加される電圧のHレベルは、電源電圧VDDに略等しく、たかだか3.3V程度であるため、前記閾値電圧Vtnの増加によって、オーバドライブ電圧ΔV(=Vgs−Vtn)は減少していき、NMOS44は飽和領域で動作するようになる。
【0102】
又、前記電源電圧VDDを前記3.3Vから下げて、例えば3.0Vや2.7Vといった値に設定することは容易であり、電源電圧VDDを下げることで、NMOS44を飽和領域で動作させることはいっそう容易になる。
【0103】
その上、NMOS44のゲート幅Wとゲート長Lの比は、NMOS44の設計段階で比較的自由に、広範囲に渡って変化させることが可能であり、前述したように前記閾値電圧Vtnもまた調整することが可能であって、前記ドレーン電流Idもまた比較的自由に調整することができる。
【0104】
更に、NMOS44においては、そのゲート長Lを比較的大きめに設定することで、ドレーン電位が多少変動したとしても、ドレーン電流値を所定値に保つことが可能である。このような特性は、MOSトランジスタの定電流特性として公知であり、良好な特性を得るためには、前記ゲート長Lを大きめに設定することが望ましい。
【0105】
前記NMOS44が定電流動作する場合、その出力抵抗は非常に大きくなり(理想的には無限大)、図9(c)に示す発光サイリスタ210の特性曲線に引いた負荷線は略縦線となって、発光サイリスタ210の特性曲線とは唯一点でのみ交わることになる。
【0106】
このようにすることで、本実施例1の駆動回路41では、発光サイリスタ210の負性抵抗に起因して発振するという従来の問題を解決することができる。
【0107】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、次の(1)〜(3)のような効果がある。
【0108】
(1) 本実施例1の駆動回路41を有する駆動装置とこれを用いたプリントヘッド13によれば、駆動回路41におけるNMOS44にサブストレート領域と同極性の不純物を注入することで、閾値電圧Vtnを増加させ、飽和領域動作させることでNMOS44による定電流駆動を実現している。そのため、駆動回路41の出力抵抗値を発光サイリスタ210の負性抵抗値よりも大きくすることができ、負性抵抗に起因する発振現象を未然に防止することができる。
【0109】
(2) 本実施例1の駆動回路41の構成においては、従来の駆動回路に設けられているCMOSインバータ(本実施例1のCMOSインバータ42に対応)の出力端子とデータ端子DAとの間の電流制限抵抗を、不要とすることができる。そのため、図3のプリントヘッド13における図4の基板ユニットを構成するプリント基板13bにおいて、従来設けられていた電流制限抵抗の占有領域を削減することができ、更に、CMOSインバータ42の出力端子と従来の電流制限抵抗との接続配線に要する占有面積も削減することができるので、プリントヘッド13に用いられるプリント基板13bの小型化を図ることが可能になる。
【0110】
(3) 本実施例1の画像形成装置1によれば、プリントヘッド13を採用しているので、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置1を提供することができる。即ち、プリントヘッド13を用いることにより、本実施例1のフルカラーの画像形成装置1に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に、露光装置としてのプリントヘッド13を数多く必要とするフルカラーの画像形成装置1において一層大きな効果が得られる。
【実施例2】
【0111】
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッド)
図11は、本発明の実施例2における印刷制御部及びプリントヘッドの概略の回路構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0112】
本実施例2の画像形成装置1では、プリントヘッド13A及び印刷制御部40Aの回路構成が、実施例1のプリントヘッド13及び印刷制御部40と異なっている。
【0113】
本実施例2のプリントヘッド13Aは、実施例1のシフトレジスタ110とは異なる構成の自己走査型シフトレジスタ110Aと、実施例1と同様の発光素子アレイ200等とを有している。
【0114】
自己走査型シフトレジスタ110Aは、発光素子アレイ200にトリガ電流を与えてオン/オフ動作させる回路であり、自己走査サイリスタを用いた複数段の回路120(=120−1〜120−n)により構成されている。各段の回路120(=120−1〜120−n、例えばn=4992)は、アノードがVDD電源に接続された自己走査サイリスタ121と、カソードが自己走査サイリスタ121のゲートに接続されたダイオード122と、自己走査サイリスタ121のゲート及びグランドGND間に接続された抵抗123とにより構成されている。奇数段目の各回路120−1,120−3,・・・,120−(n−1)における自己走査サイリスタ121は、アノードがVDD電源に接続され、カソードが抵抗124−1の一端に接続され、ゲートが抵抗123を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートがダイオード122のカソード・アノードを介して抵抗124−2の一端に接続されている。偶数段目の各回路120−2,120−4,・・・,120−nにおける自己走査サイリスタ121は、アノードがVDD電源に接続され、カソードが抵抗124−2の一端に接続され、ゲートが抵抗123を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートがダイオード122のカソード・アノードを介して抵抗124−1の一端に接続されている。更に、各段の自己走査サイリスタ121のゲートは、自己走査型シフトレジスタ110Aの各出力端子Q1〜Qnにそれぞれ接続されている。
【0115】
各段の回路120−1〜120−nにおける自己走査サイリスタ121は、発光素子アレイ200における発光サイリスタ210と同様なレイヤ構造を有し、且つ同様な回路動作を行う素子であるが、発光サイリスタ210のような発光機能を必要としないので、上層がメタル膜等で覆われ、遮光して用いられる。各段の自己走査サイリスタ121におけるゲートにカソードが接続されたダイオード122は、各段の自己走査サイリスタ121のゲート間を接続するものであって、発光サイリスタ210−1〜210−nが順次点灯する時の走査方向(例えば、図11において右方向)を決定するために設けられている。
【0116】
印刷制御部40Aは、複数の発光素子アレイ200を時分割に駆動するための実施例1と同様の複数の駆動回路41と、自己走査型シフトレジスタ110Aに対してクロック信号(以下単に「クロック」という。)を供給するクロック駆動回路45と、図示しない電源端子やグランド端子等とを有している。図11においては、図1と同様に、説明を簡略化するために1個の駆動回路41のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200は、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・が複数の発光サイリスタ210−1〜210−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられた駆動回路41によってそれらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
【0117】
印刷制御部40A側の駆動回路41及びクロック駆動回路45等と、プリントヘッド13側の自己走査型シフトレジスタ110Aとにより、本実施例2の駆動装置が構成されている。
【0118】
一例として典型的な設計例を挙げると、実施例1と同様に、発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200のチップを図4のプリント基板13b上に26個整列する。これにより、プリントヘッド13Aに必要な総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を構成している。この際、駆動回路41は前記26個の発光素子アレイ200に対応して設けられ、これらの駆動回路41における出力端子の総数が26である。これに対し、クロック駆動回路45は、前記アレイ化したチップを並列に駆動することができ、回路を共用することができる。なお、駆動回路41やクロック駆動回路45は、図11においては印刷制御部40Aの内部に配置されているが、プリントヘッド13Aの内部に配置しても良い。
【0119】
クロック駆動回路45は、クロックを出力する複数の出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cを有し、これらの出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cが、図示しないスリーステート型バッファに接続されている。スリーステート型バッファは、CMOS出力駆動部を備えた回路であって、Hレベル出力状態、Lレベル出力状態の他に、他の出力状態であるハイインピーダンス(以下「Hi−Z」という。)出力状態を有している。
【0120】
クロック駆動回路45の出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cには、抵抗46−1、コンデンサ47−1、抵抗46−2、及びコンデンサ47−2の一端がそれぞれ接続されている。抵抗46−1の他端及びコンデンサ47−1の他端は、クロック端子CK1に接続され、このクロック端子CK1が、プリントヘッド13A側の抵抗124−1の他端に接続されている。抵抗46−2の他端及びコンデンサ47−2の他端は、クロック端子CK2に接続され、このクロック端子CK2が、プリントヘッド13A側の抵抗124−2の他端に接続されている。
【0121】
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッドの概略動作)
図11において、例えば、印刷制御部40Aにおけるオン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルの場合、CMOSインバータ42のPMOS43がオン状態、NMOS44がオフ状態となり、CMOSインバータ42の出力側のデータ端子DAがHレベル(≒電源電圧VDD)となる。
【0122】
この結果、プリントヘッド13A側の共通端子INも略電源電圧VDDとなり、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutもゼロとなり、発光サイリスタ210−1〜210−nが全て非発光状態となる。
【0123】
これに対し、オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルの場合、CMOSインバータ42を構成するPMOS43がオフ状態、NMOS44がオン状態となって、出力側のデータ端子DAがLレベル(=0V)となる。この結果、プリントヘッド13A側の共通端子INも0Vとなり、各発光サイリスタ210のアノードに電源電圧VDDが印加され、カソードがLレベル(=0V)となって、各発光サイリスタ210のアノード・カソード間に電源電圧VDDが印加される。この際、発光サイリスタ210−1〜210−nのうち、発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみを選択的にHレベルとすることで、この発光サイリスタ210のゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210がターンオンすることになる。
【0124】
ターンオンした発光サイリスタ210のカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210は発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた光出力を生じる。
【0125】
なお、図11における駆動回路41においては、実施例1と同様に、データ端子DAをHレベルとするためにPMOS43を設けているが、NMOS44をオフ状態にすることで駆動電流Ioutを遮断して発光サイリスタ210−1〜210−nをターンオフさせることができるので、発光サイリスタ210のスイッチング速度に高速性を要求されないケースにおいては、PMOS43を省略することも可能である。
【0126】
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッドの詳細動作)
図12は、図11のプリントヘッド13A及び印刷制御部40Aの詳細な動作を示すタイムチャートである。
【0127】
この図12では、実施例1と同様に、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図11の発光サイリスタ210−1〜210−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
【0128】
本実施例2のように、自己走査サイリスタ121を用いた自己走査型シフトレジスタ110Aの場合、2つのクロック端子CK1,CK2から供給される2相クロックが用いられ、この2相クロックを生成するために、クロック駆動回路45には、各クロック毎に2種の出力端子CK1C,CK1RとCK2C,CK2Rが設けられている。これらの出力端子CK1R、CK1CとCK2R,CK2Cとは、図示しないスリーステート出力型バッファによって駆動される。即ち、スリーステート型バッファは、CMOS出力駆動部を備えた回路であって、Hレベル出力状態、Lレベル出力状態の他に、他の出力状態であるHi−Z出力状態を切り替える機能を有している。
【0129】
図12のタイムチャートにおいて、左端部に示す状態においては、出力端子CK1C,CK1R,CK2C,CK2Rの各信号はHレベルとされる。
【0130】
クロック駆動回路45の出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cの内、出力端子CK1R,CK1Cは、抵抗46−1とコンデンサ47−1をそれぞれ介してクロック端子CK1に接続され、出力端子CK2R,CK2Cは、抵抗46−2とコンデンサ47−2をそれぞれ介してクロック端子CK2に接続されている。そのため、図12のタイムチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1,CK2の各信号は共にHレベルとなって、第1段、第3段、第5段、第7段回路120−1,120−3,120−5,120−7の各自己走査サイリスタ121の組と、第2段、第4段、第6段、第8段回路120−2,120−4,120−6,120−8の各自己走査サイリスタ121の組とのいずれも、そのカソードがHレベルとされ、オフ状態となっている。
【0131】
以下、第1段、第2段、第3段回路120−1,120−2,120−3における各自己走査サイリスタ121のターンオン過程(1)〜(3)を説明する。
【0132】
(1) 第1段回路120−1における自己走査サイリスタ121のターンオン過程
図12の時刻t1において、クロック駆動回路45の出力端子CKlRがLレベルとされる。すると、コンデンサ47−1には、出力端子CK1Cからコンデンサ47−1、抵抗46−1、及び出力端子CK1Rに向かう方向に充電電流を生じ、このコンデンサ47−1の両端電圧が上昇していく。これに伴い、クロック端子CK1の電位がa部のようにグランドGND電位へと降下していく。
【0133】
時刻t2において、出力端子CK1CがLレベルとされ、出力端子CK1Rが、図12の中間電位の横破線で示されたHi−Z状態とされる。時刻t2で前記Hi−Z状態に遷移したことで、クロック端子CK1には、図12のb部に示すようなアンダシュート波形を生じる。このアンダシュート波形は、コンデンサ47−1の充電電圧により生じる。
【0134】
図11のクロック駆動回路45において、図示しないスリーステート出力型バッファには、寄生ダイオードが生じており、前記アンダシュート波形を生じることで、その寄生ダイオードに電流が流れ、前記b部の負電圧レベルがクランプされる。この結果、b部に示すアンダシュート波形の極小部は、略−0.6V程度の負電圧にとどまる。その後、コンデンサ47−1の充電電荷が自己放電して、コンデンサ47−1の両端電圧が減少していく。そのため、b部に示すアンダシュートは、時間経過と共に解消していく。
【0135】
クロック端子CK1にb部のアンダシュートを生じることで、第1段回路120−1におけるサイリスタ121のアノード・カソード間には比較的大きな電圧が印加される。この時、クロック端子CK2はHレベルとなっており、第1段回路120−1のダイオード122を介して、そのサイリスタ121のゲートにトリガ電流が流れ、サイリスタ121がターンオンする。このサイリスタ121のオン状態は、クロック端子CK1におけるカソード電位波形がHレベルとなるまで継続する。
【0136】
次の時刻t3において、出力端子CK1CがHi−Z状態とされ、クロック端子CK1がLレベルになる。これにより、クロック端子CK1は、グランドGND電位に略等しくなる。
【0137】
一方、時刻t4において、発光サイリスタ210−1の発光指令のためにオン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルとされ、CMOSインバータ42の出力側のデータ端子DAがLレベルに遷移する。この時、第1段回路120−1のサイリスタ121はオン状態となっていて、カソード・ゲート間には順電圧相当の電位差を生じており、そのサイリスタ121のゲート電位がカソード電位よりも上昇する。
【0138】
発光サイリスタ210−1と第1段回路120−1におけるサイリスタ121とは、ゲート同士が接続されているので、発光サイリスタ210−1のゲートにトリガ電流が流れ、この発光サイリスタ210−1がターンオンする。発光サイリスタ210−1のオン状態は、時刻t6において、オン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルとされ、データ端子DAがHレベルに遷移するまで継続される。
【0139】
(2) 第2段回路120−2における自己走査サイリスタ121のターンオン過程
時刻t5において、出力端子CK2RがLレベルとされる。これにより、コンデンサ47−2には、出力端子CK2Cからコンデンサ47−2、抵抗46−2、及び出力端子CK2Rに向かう方向に充電電流を生じ、コンデンサ47−2の両端電圧が上昇していく。これに伴い、クロック端子CK2の電位は、図12のc部に示すように、グランドGND電位へと降下していく。
【0140】
その後、時刻t7において、出力端子CK2CがLレベルとされ、出力端子CK2Rが、中間電位の横破線で図示されたHi−Z状態とされる。時刻t7で前記状態に遷移したことで、クロック端子CK2には、図12のd部に示すようなアンダシュート波形を生じる。このアンダシュート波形は、コンデンサ47−2の充電電圧により生じる。図11のクロック駆動回路45において、図示しないスリーステート型バッファには寄生ダイオードが生じており、前記アンダシュート波形を生じることで、前記寄生ダイオードに電流が流れ、前記負電圧レベルがクランプされる。この結果、d部に示すアンダシュート波形の極小部は、略−0.6V程度の負電圧にとどまる。その後、コンデンサ47−2の充電電荷が自己放電して、このコンデンサ47−2の両端電圧が減少していく。これにより、d部に示すアンダシュートは、時間経過と共に解消していく。
【0141】
クロック端子CK2にd部のアンダシュートを生じることで、第2段回路120−2におけるサイリスタ121のアノード・カソード間には、比較的大きな電圧が印加される。この時、クロック端子CK2はHレベルとなっており、第1段回路120−1のサイリスタ121は未だオン状態にあって、そのゲート電位が高くなっている。そのため、第2段回路120−2のダイオード122を介して、第2段回路120−2におけるサイリスタ121のゲートにトリガ電流が流れ、そのサイリスタ121がターンオンする。第2段回路120−2におけるサイリスタ121のオン状態は、クロック端子CK2におけるカソード電位波形がHレベルとなるまで継続される。
【0142】
次に、時刻t8において、出力端子CK2CがHi−Z状態とされ、出力端子CK2RがLレベルとされる。これにより、クロック端子CK2の電位がグランドGND電位に略等しくなる。これと同時に、時刻t8において、出力端子CK1C,CI1Rが共にHレベルとされ、クロック端子CK1もHレベルとなる。この結果、第1段回路120−1におけるサイリスタ121がターンオフする。
【0143】
一方、時刻t9において、発光サイリスタ210−2の発光指令のためにオン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルとされ、NMOS44がオン状態になり、データ端子DAがLレベルに遷移する。この時、第2段回路120−2におけるサイリスタ121はオン状態となっていて、カソード・ゲート間には順電圧相当の電位差を生じており、そのゲート電位がカソード電位よりも上昇している。
【0144】
発光サイリスタ210−2と第2段回路120−2のサイリスタ121とは、ゲート同士が接続されているので、発光サイリスタ210−2のゲートにトリガ電流が流れて、この発光サイリスタ210−2がターンオンする。発光サイリスタ210−2のオン状態は、時刻t11において、オン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルとされてPMOS43がオン状態となり、データ端子DAがHレベルに遷移するまで継続される。
【0145】
(3) 第3段回路120−3における自己走査サイリスタ121のターンオン過程
時刻t10において、出力端子CK1RがLレベルとされると、コンデンサ47−1には、出力端子CK1Cからコンデンサ47−1、抵抗46−1、及び出力端子CK1Rに向かう方向に充電電流を生じ、このコンデンサ47−1の両端電圧が上昇していく。これに伴い、クロック端子CK1の電位は、図12のe部のように降下していく。
【0146】
次に、時刻t12において、出力端子CK1CがLレベルとされ、出力端子CK1Rが、図12の中間電位の横破線にて図示されるHi−Z状態とされる。時刻t12で前記状態に遷移したことで、クロック端子CK1には、図12のf部に示すようなアンダシュート波形を生じる。このアンダシュート波形は、コンデンサ47−1の充電電圧により生じる。
【0147】
図11のクロック駆動回路45において、図示しないスリーステート型バッファには、寄生ダイオードが生じており、前記アンダシュート波形を生じることで、その寄生ダイオードに電流が流れ、前記負電圧レベルがクランプされる。この結果、f部に示すアンダシュート波形の極小部は、略−0.6V程度の負電圧にとどまる。その後、コンデンサ47−1の充電電荷が自己放電して、このコンデンサ両端電圧が減少していく。これにより、f部に示すアンダシュートは、時間経過と共に解消していく。
【0148】
クロック端子CK1にf部のアンダシュートを生じることで、第3段回路120−3におけるサイリスタ121のアノード・カソード間には、比較的大きな電圧が印加される。この時、クロック端子CK1はHレベルとなっており、第2段回路120−2のサイリスタ121は未だオン状態にあって、そのゲート電位が高くなっている。そのため、第3段回路120−3におけるダイオード122を介して、第3段回路120−3におけるサイリスタ121のゲートにトリガ電流が流れ、このサイリスタ121がターンオンする。第3段回路120−3におけるサイリスタ121のオン状態は、クロック端子CK1におけるそのカソード電位波形がHレベルとなるまで継続される。
【0149】
次に、時刻t13において、出力端子CK1CがHi−Z状態とされ、出力端子CK1RがLレベルとされる。そのため、クロック端子CK1の電位は、グランドGND電位に略等しくなる。それと同時に、時刻t13において、出力端子CK2C,CK2Rが共にHレベルとされ、クロック端子CK2もHレベルとなる。この結果、第2段回路120−2におけるサイリスタ121がターンオフする。
【0150】
以上、図12を参照して詳細に説明したように、クロック端子CK1,CK2から供給される2つのクロックは、異なる位相をもって同様の波形が繰り返す形状を有しており、この波形の2つのクロックが、第1段、第3段、第5段、第7段回路120−1,120−3,120−5,120−7における各サイリスタ121の組と、第2段、第4段、第6段、第8段回路120−2,120−4,120−6,120−8における各サイリス121の組とに順次入力されることで、第1段〜第8段回路120−1〜120−8における各サイリスタ121が、第1段回路120−1から第8段回路120−8の方向へ順次オンしていく。
【0151】
オン状態にあるサイリスタ121のゲート電位は、略Hレベルであり、オフ状態にあるサイリスタ121のゲート電位は、グランドGND電位に略等しいLレベルである。又、第1段〜第8段回路120−1〜120−8における各サイリスタ121のゲート電位は、シフトレジスタ110Aにおける各出力端子Q1〜Q8の信号となっている。この結果、実施例1の図8において示したのと同様の出力端子Ql〜Q8の信号を得ることができ、シフトレジスタ110Aからの点灯指令によって選択される発光サイリスタ210−1〜210−8の順次点灯を行うことが可能となる。
【0152】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、実施例1の効果(1)〜(3)と同様の効果があり、更に、次の(4)のような効果もある。
【0153】
(4) 本実施例2によれば、発光サイリスタ210−1〜210−nの順次点灯のための自己走査型シフトレジスタ110Aを、自己走査型サイリスタ121を用いて構成しているので、実施例1で備える必要のあったシリコン基材上等に形成されたシフトレジスタ110を不要としている。そのため、自己走査型シフトレジスタ110Aと発光素子アレイ200とをモノリシックに集積することができ、より小型化が可能になる。
【実施例3】
【0154】
(実施例3の印刷制御部及びプリントヘッド)
図13は、本発明の実施例3における印刷制御部及びプリントヘッドの概略の回路構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0155】
本実施例3の画像形成装置1では、プリントヘッド13B及び印刷制御部40Bの回路構成が、実施例1のプリントヘッド13及び印刷制御部40と異なっている。
【0156】
本実施例3のプリントヘッド13Bは、実施例1と同様のシフトレジスタ110と、実施例1の発光素子アレイ200とは異なる構成の発光素子アレイ200B等とを有している。
【0157】
発光素子アレイ200Bは、3端子発光素子である例えば複数のNゲート型発光サイリスタ210B(=210B−1〜210B−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210Bの第1端子(例えば、カソード)が第1電源(例えば、グランドGND=0V)に接続され、第2端子(例えば、アノード)が駆動電流Ioutを流す共通端子INに接続され、第1制御端子(例えば、ゲート)がシフトレジスタ110の各出力端子Q1〜Qnに接続されている。各発光サイリスタ210Bは、アノード・カソード間に電源電圧VDDが印加された状態で、ゲートにトリガ電流が入力されると、アノード・カソード間がオン状態になってカソードが流れ、発光する素子である。
【0158】
印刷制御部40Bは、発光素子アレイ200Bのオン/オフを指令するオン/オフ指令信号DRVON−N(但し、「−N」は負論理を意味する。)、シフトレジスタ110に対する制御信号であるシリアルデータSI及びシリアルクロックSCKをプリントヘッド13Bへ供給する図示しない回路と、複数の発光素子アレイ200Bを時分割に駆動する複数の駆動回路41Bと、第2電源(例えば、電源電圧VDD電源)やグランド等とを有している。図13においては、実施例1と同様に、説明を簡略化するために1個の駆動回路41Bのみが図示されている。複数の発光素子アレイ200Bは、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・が複数の発光サイリスタ210B−1〜210B−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられた駆動回路41Bによってそれらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
【0159】
なお、駆動回路41Bは、図13においては印刷制御部40の内部に配置されているが、プリントヘッド13Bの内部に配置しても良い。
【0160】
駆動回路41Bは、入力されるオン/オフ指令信号DRVON−Nを反転してデータ端子DAに出力するCMOSインバータ42Bにより構成されている。CMOSインバータ42Bは、本実施例3の特徴である第1導電形MOSトランジスタ(例えば、PMOS)43Bと、通常の第2導電形MOSトランジスタ(例えば、NMOS)44Bとを有し、これらがVDD電源とグランドGNDとの間に直列に接続されている。即ち、PMOS43Bは、第2制御端子(例えば、ゲート)にオン/オフ指令信号DRVON−Nが入力され、第3端子(例えば、ソース)がVDD電源に接続され、第4端子(例えば、ドレーン)がデータ端子DAに接続されている。NMOS44Bは、ゲートにオン/オフ指令信号DRVON−Nが入力され、ソースがグランドGNDに接続され、ドレーンがデータ端子DAに接続されている。データ端子DAは、発光素子アレイ200B側の共通端子INに接続されている。
【0161】
本実施例3の特徴であるPMOS43Bは、N型シリコンウェハからなる基板内、又はその基板中に形成されたサブストレート領域(例えば、Nウェル領域)内に形成されるものであって、ソース領域とドレーン領域との間のチャネル形成予定領域に、砒素As等のN型不純物を注入することで、図示しないその他のPMOSよりも閾値電圧Vtpの絶対値を大きくすることができる(通常、PMOSの閾値電圧Vtpは負の値をとるが、明確化のために、その閾値電圧Vtpの絶対値が大きいと表現する。)。この際、チャネル形成予定領域に注入するN型不純物の量を調整することで、PMOS43Bの閾値電圧Vtpを調整することができる。
【0162】
印刷制御部40B側の駆動回路41B等と、プリントヘッド13B側のシフトレジスタ110とにより、本実施例3の駆動装置が構成されている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0163】
(実施例3の印刷制御部及びプリントヘッドの動作)
図13において、例えば、印刷制御部40Bにおけるオン/オフ指令信号DRVON−NがHレベルの場合、CMOSインバータ42Bを構成するPMOS43Bがオフ状態、NMOS44Bがオン状態となり、出力側のデータ端子DAは、Lレベル(=グランド電位)となる。この結果、プリントヘッド13B側の共通端子INも略グランド電位となり、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutもゼロとなり、発光サイリスタ210B−1〜210B−nが全て非発光状態となる。
【0164】
これに対し、オン/オフ指令信号DRVON−NがLレベルの場合、CMOSインバータ42Bを構成するPMOS43Bがオン状態、NMOS44Bがオフ状態となって、出力側のデータ端子DAがHレベル(≒電源電圧VDD)となる。この結果、プリントヘッド13B側の共通端子INも略電源電圧VDDとなり、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加される。この際、発光サイリスタ210B−1〜210B−nのうち、発光指令されている発光サイリスタ210Bのゲートのみをシフトレジスタ110によって選択的にLレベルとすることで、この発光サイリスタ210Bのゲートにはトリガ電流を生じ、発光指令されているサイリスタ210Bがターンオンすることになる。
【0165】
ターンオンした発光サイリスタ210Bのカソードに流れる電流は、データ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210Bは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた光出力を生じる。
【0166】
具体的な設計例として、例えば電源電圧VDDを3.3Vとする場合、PMOS43Bがオン状態になる時、そのゲート・ソース間に電圧が印加されることになるが、その電圧値はたかだか3.3Vであって、前述した閾値電圧Vtpを大きくすることで、PMOS43Bを飽和領域で動作させることができる。
【0167】
電子デバイス物理の理論により良く知られているように、この時のPMOS43Bのドレーン電流Idは、次式で与えられる。
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vtp)2
但し、K;定数
W;PMOS43Bのゲート幅
L;PMOS43Bのゲート長
Vtp;PMOS43Bの閾値電圧
Vgs;PMOS43Bのゲート・ソース間電圧(≒電源電圧VDD)
【0168】
この式から明らかなように、PMOS43Bのドレーン電流1d、即ち、発光サイリスタ210Bの駆動電流Ioutは、閾値電圧Vtpの電位を調整することで変化させることができる。PMOS43Bの閾値電圧Vtpは、チャネル形成予定領域に注入するN型不純物の量を変えることで調整することができ、ドレーン電流Idもまた変化させることができる。
【0169】
なお、図13における駆動回路41Bにおいては、データ端子DAをLレベルとするためにNMOS42Bを設けているが、PMOS43Bをオフ状態にすることで駆動電流Ioutを遮断して発光サイリスタ210B−1〜210B−nをターンオフさせることができるので、発光サイリスタ210Bのスイッチング速度に高速性を要求されないケースにおいては、NMOS44Bを省略することも可能である。
【0170】
(実施例3の効果)
本実施例3によれば、実施例1とほぼ同様の効果がある。又、シフトレジスタ110に代えて、実施例2における図11のクロック駆動回路45及び自己走査型シフトレジスタ110Aを設ければ、実施例2とほぼ同様の効果が得られる。
【0171】
(変形例)
本発明は、上記実施例1〜3に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(I)、(II)のようなものがある。
【0172】
(I) 実施例1〜3において、光源として用いられる発光サイリスタ210,210Bに適用した場合について説明したが、本発明は、サイリスタをスイッチング素子として用い、このスイッチング素子に例えば直列に接続された他の素子(例えば、有機エレクトロルミネセンス素子(以下「有機EL素子」という。)、表示素子等)への電圧印加制御を行う場合にも適用可能である。例えば、有機EL素子のアレイで構成される有機ELプリントヘッドを備えたプリンタ、表示素子の列を有する表示装置等において利用することができる。
【0173】
(II) 表示素子(例えば、列状あるいはマトリクス状に配列された表示素子)の駆動(即ち、電圧印加の制御)のためスイッチング素子としても用いられるサイリスタにも適用可能である。又、本発明は、3端子構造を備えたサイリスタの他、第1と第2の2つのゲートを備えた4端子サイリスタSCS(Silicon Semiconductor Controlled Switch)の場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0174】
1 画像形成装置
13,13A,13B プリントヘッド
40,40A,40B 印刷制御部
41,41B 駆動回路
43B PMOS
44 NMOS
45 クロック駆動回路
110 シフトレジスタ
110A 自己走査型シフトレジスタ
111,111−1〜111−n FF
120,120−1〜120−n 第1〜第n段回路
121 サイリスタ
200,200B 発光素子アレイ
210,210B,210−1〜210−n,210B−1〜210B−n 発光サイリスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、第1電源と接続される第1端子と、前記第1端子との間に駆動電流を流すための第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子間の導通状態を制御する第1制御端子とを有し、前記第1端子同士及び前記第2端子同士が共通接続された複数の3端子発光素子を駆動する駆動装置において、
相補接続された第1導電形MOSトランジスタと前記第1導電形MOSトランジスタとは異なる極性の第2導電形MOSトランジスタとを有し、入力された駆動信号に基づいて、前記複数の3端子発光素子のうち導通状態にあるものを駆動する駆動回路を備え、
前記第1導電形MOSトランジスタは、サブストレート領域に形成され、前記第1電源とは異なる電位の第2電源に接続された第3端子と、共通接続された前記第2端子に接続された第4端子と、前記駆動信号に基づいて前記第3端子及び前記第4端子間の導通状態を制御する第2制御端子とを有し、チャネル形成予定領域に前記サブストレート領域と同極性の不純物が注入されたものであることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第1電源の電位は、電源電位であり、
前記第2電源の電位は、接地電位であり、
前記第1導電形MOSトランジスタは、前記第3端子であるソースと、前記第4端子であるドレーンと、前記第2制御端子であるゲートと、を有するNチャネルMOSトランジスタであり、
前記第2導電形MOSトランジスタは、PチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1電源の電位は、接地電位であり、
前記第2電源の電位は、電源電位であり、
前記第1導電形MOSトランジスタは、前記第3端子であるソースと、前記第4端子であるドレーンと、前記第2制御端子であるゲートと、を有するPチャネルMOSトランジスタであり、
前記第2導電形MOSトランジスタは、NチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項4】
前記3端子発光素子は、発光サイリスタであり、
前記駆動回路の等価出力抵抗値は、前記発光サイリスタのターンオン特性で定まる負性抵抗値の絶対値よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の駆動装置は、更に、
前記3端子発光素子の前記第1制御端子に対してトリガ信号を与えて前記3端子発光素子をオン状態にするシフトレジスタを備えたことを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
前記シフトレジスタは、
縦続接続された複数段のフリップフロップ回路を有し、シリアルクロック信号に基づきシリアルデータを入力して前記複数段のフリップフロップ回路から前記トリガ信号を順に出力する構成になっていることを特徴とする請求項6記載の駆動装置。
【請求項7】
前記シフトレジスタは、
3端子スイッチ素子を有する自己走査型回路を備え、クロック信号に基づき複数の前記トリガ信号を順に出力する構成になっていることを特徴とする請求項6記載の駆動装置。
【請求項8】
前記複数の3端子発光素子と、
請求項5〜7のいずれか1項に記載の駆動装置と、
を備えたことを特徴とするプリントヘッド。
【請求項9】
請求項8記載のプリントヘッドを備え、
前記プリントヘッドにより露光されて記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
各々、第1電源と接続される第1端子と、前記第1端子との間に駆動電流を流すための第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子間の導通状態を制御する第1制御端子とを有し、前記第1端子同士及び前記第2端子同士が共通接続された複数の3端子発光素子を駆動する駆動装置において、
相補接続された第1導電形MOSトランジスタと前記第1導電形MOSトランジスタとは異なる極性の第2導電形MOSトランジスタとを有し、入力された駆動信号に基づいて、前記複数の3端子発光素子のうち導通状態にあるものを駆動する駆動回路を備え、
前記第1導電形MOSトランジスタは、サブストレート領域に形成され、前記第1電源とは異なる電位の第2電源に接続された第3端子と、共通接続された前記第2端子に接続された第4端子と、前記駆動信号に基づいて前記第3端子及び前記第4端子間の導通状態を制御する第2制御端子とを有し、チャネル形成予定領域に前記サブストレート領域と同極性の不純物が注入されたものであることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第1電源の電位は、電源電位であり、
前記第2電源の電位は、接地電位であり、
前記第1導電形MOSトランジスタは、前記第3端子であるソースと、前記第4端子であるドレーンと、前記第2制御端子であるゲートと、を有するNチャネルMOSトランジスタであり、
前記第2導電形MOSトランジスタは、PチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1電源の電位は、接地電位であり、
前記第2電源の電位は、電源電位であり、
前記第1導電形MOSトランジスタは、前記第3端子であるソースと、前記第4端子であるドレーンと、前記第2制御端子であるゲートと、を有するPチャネルMOSトランジスタであり、
前記第2導電形MOSトランジスタは、NチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項4】
前記3端子発光素子は、発光サイリスタであり、
前記駆動回路の等価出力抵抗値は、前記発光サイリスタのターンオン特性で定まる負性抵抗値の絶対値よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の駆動装置は、更に、
前記3端子発光素子の前記第1制御端子に対してトリガ信号を与えて前記3端子発光素子をオン状態にするシフトレジスタを備えたことを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
前記シフトレジスタは、
縦続接続された複数段のフリップフロップ回路を有し、シリアルクロック信号に基づきシリアルデータを入力して前記複数段のフリップフロップ回路から前記トリガ信号を順に出力する構成になっていることを特徴とする請求項6記載の駆動装置。
【請求項7】
前記シフトレジスタは、
3端子スイッチ素子を有する自己走査型回路を備え、クロック信号に基づき複数の前記トリガ信号を順に出力する構成になっていることを特徴とする請求項6記載の駆動装置。
【請求項8】
前記複数の3端子発光素子と、
請求項5〜7のいずれか1項に記載の駆動装置と、
を備えたことを特徴とするプリントヘッド。
【請求項9】
請求項8記載のプリントヘッドを備え、
前記プリントヘッドにより露光されて記録媒体に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−194855(P2011−194855A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67335(P2010−67335)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】
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