説明

高いワイヤスピードでのレーザー/MIGハイブリッド溶接方法。

【課題】高いワイヤスピードを使用するレーザー/MIGハイブリッド溶接方法を提供する。
【解決手段】溶接し合わせようとするエッジ間に設けられる開先の少なくとも一部を、少なくとも1つのフィラーワイヤ2の形態で供給される溶融金属をそこに堆積することにより充填し、互いに併用される電気アーク6およびレーザービーム1を用いてフィラーワイヤを溶融するレーザー/MIGハイブリッド溶接方法であって、溶接を少なくとも2m/minの溶接速度で行い;フィラーワイヤ供給速度は少なくとも20m/minであり;かつフィラーワイヤ直径は1.2mm未満である方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高いワイヤスピードを使用するレーザー/MIGハイブリッド溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのチューブまたはパイプを他のものに溶接するか(突合せ溶接)、または、前もって“U字”に形成した金属シートの二つの縦方向のエッジを縦方向溶接によってそれから“O字”にすることでチューブまたはパイプを製造することが要求される場合、普通溶接し合わせようとするエッジに開先を設け、典型的に“V”、“X”字の形またはその他の形の溝を形成する。
【0003】
レーザー/MIG(金属不活性ガス)ハイブリッド溶接方法を行うことにより金属をそこに堆積することでこの開先を充填することが要求される場合、その原理を示すダイアグラムを図1に示すが、その方法の生産性を維持するためには、高い溶接速度、すなわち少なくとも数m/minの速度を達成する必要がある。
【0004】
さて、溶接速度が高くなればなるほど、開先の体積、すなわち“V”字型、“X”字型または他の形の溝を問題の溶接速度ですばやく充填することを可能にするためには、ワイヤの供給速度はより高くなくてはならない。
【0005】
これらの条件の下では、約2m/minまたはそれ以上の溶接速度に達したらすぐに、これは、一般的に8mmの厚さで、採用した開先の形を考慮に入れた場合、ワイヤフィーダーで通常直面する限界、すなわち約20m/minを超えてワイヤの供給速度を増加させなければならなくなる。
【0006】
従って、堆積速度を増加させる1つの解決策はワイヤの直径を増加させることにある。というのは従来使用しているワイヤが1.2mmの直径を有するためである。
【0007】
しかし、そのことから起きる問題は、一定速度での金属の堆積のために、太い直径のワイヤ、すなわち約1.6mmの直径のものを溶融するにはその結果高電流を必要とすることであるが、この場合、この方法はほとんどのMIG発生器の電流限界(通常は約450A、従ってこの限界はこの値よりも大きい電流が供給されることを許容しない)に達する。
【0008】
次に起きる問題は、上記の欠点および限界に直面することなく、如何にして高速で開先を充填できるかということである。
【発明の開示】
【0009】
本発明の解決策はそれゆえに、溶接し合わせようとするエッジの間に設けられる開先の少なくとも一部を少なくとも1つのフィラーワイヤの形態の供給された溶融金属をそこに堆積することで充填し、互いに併用される電気アークおよびレーザービームを用いて前記フィラーワイヤを溶融するレーザー/MIGハイブリッド溶接方法であって、溶接を少なくとも2m/minの溶接速度で行い、フィラーワイヤ供給速度は少なくとも20m/minであり、かつフィラーワイヤの直径は1.2mm以下であることを特徴とする方法である。
【0010】
場合に応じて、本発明の方法は1つまたはそれ以上の以下の特徴を含んでもよい:
− 単独の電気アークおよび単独のレーザービームを使用し、これらを互いに併用する;
− 溶接しようとするエッジは単一の金属被加工物のエッジまたは2つの異なる金属被加工物のエッジである;
− 溶接しようとするエッジで測定した、溶接しようとする被加工物の厚さは、6から60mmの間である;
− 溶接しようとするエッジは、1つまたはそれ以上のチューブまたはパイプのエッジである;
− 溶接しようとするエッジ間で作られる開先は“V”字または“X”字型である;
− 溶接を2.5から4m/minの間の溶接速度で行う;
− フィラーワイヤ供給速度は少なくとも22m/min、好ましくは25から35m/minの間である;
− フィラーワイヤの直径は1.19mm未満、好ましくは1.17mm未満である;
− フィラーワイヤの直径は0.4mmより大きい;
− フィラーワイヤの直径は1.1mm未満、好ましくは1から0.8mmの間である;
− フィラーワイヤの直径は0.6から1.5mmの間である;
− 溶接しようとする金属被加工物は炭素鋼またはステンレス鋼から作られている;
− ワイヤはソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤである;
− 開先をアークおよびレーザービームによって溶融したワイヤから生ずる金属を堆積することによって完全に充填する;
− 電気アークは350Aから500A、好ましくは400Aから500Aの電流の印加によって得られ、レーザービームはCO、YAGまたはダイオード型のレーザー装置を用いて得られる;および
− 遮蔽ガスを溶接中に使用し、前記遮蔽ガスはヘリウム、アルゴンおよび酸素;ヘリウム、アルゴン、およびCO;ヘリウムおよびアルゴン;アルゴンおよび酸素;またはアルゴンおよびCOからなる。任意の特定の材料の溶接に最も適切なガスの選択は、当業者の能力の範囲内であり、経験的な試験によってなされるだろう。
【0011】
換言すると、本発明によると、上述の問題を解決するために、ワイヤスピードを20m/min以上に、そして30から40m/minの値まで増加させることが賢明であることが実際にわかっている。これは普通、ワイヤフィーダーモーターの減速比を変更することによって、しかしさらに同時に、従来技術で用いられていたのとは逆に、1.2mm未満の直径を有するワイヤを使用することでかなり容易に達成できる。
【0012】
これは、一定の金属の堆積速度で、フィラーワイヤの直径の減少は必要とする電流を減少させるという結果を有するためである。従って、溶接発電機から供給される電流の最大値に対して、溶融金属の量を増加させることができ、それにより2m/minという問題の溶接速度でより多くの開先を充填することができる。
【0013】
図1は、本発明のレーザー/MIGハイブリッド溶接方法を図示しており、互いに溶接しようとする2つの被加工物のエッジに位置する開先を、フィラーワイヤ2の形態で供給される溶融金属を前記開先に堆積することによって充填することを示す。フィラーワイヤは溶接ノズル4の下で互いに併用される電気アーク6およびレーザービーム1によって溶融され、アークがレーザービームと併用される領域の下でキャピラリーまたはキーホール5に形成する。溶接中、この領域はノズル4の下に供給される遮蔽ガス3によって大気から遮蔽される。
【0014】
図2の写真は、図1の方法に従う厚さ8mmのプレートに作られる開先にMIGハイブリッド溶接することで得られる溶接のマクログラフである(従来技術に従う比較例)。溶接速度は3m/min、レーザーパワーは8kW、ワイヤ供給速度は19m/min、ワイヤ直径は1.2mm、および溶接電流は450Aであった。見てわかるように、この場合開先は完全には充填されていない。
【0015】
それに対して、図3の写真は同じ試験を示すが、この場合、ワイヤ速度は30m/min、ワイヤ直径は1mmであって、すなわち本発明の方法に従うものである。
【0016】
この場合において見てわかるように、本発明の方法を用いた場合には開先は完全に充填されており、20m/min以上のワイヤスピードおよび1.2mm未満のワイヤ直径の採用のおかげで、如何に開先を完全に充填するかという問題の解決策を明確に示す。
【0017】
より一般的には、本発明の溶接方法は、チューブまたはパイプを自動溶接ライン上で製造すること、およびパイプの突合せ溶接または布設に特に適し、特にオフショアまたはオンショアの用途に特に適する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のレーザー/MIG溶接方法を示す図。
【図2】比較例の方法により得られる溶接の写真。
【図3】本発明の方法により得られる溶接の写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接し合わせようとするエッジ間に設けられる開先の少なくとも一部を、少なくとも1つのフィラーワイヤの形態で供給される溶融金属をそこに堆積することで充填し、互いに併用される電気アークとレーザービームを用いて前記ワイヤを溶融するレーザー/MIGハイブリッド溶接方法であって:
− 溶接を少なくとも2m/minの溶接速度で行い;
− フィラーワイヤ供給速度は少なくとも20m/minであり;かつ
− フィラーワイヤ直径は1.2mm未満である
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
溶接しようとする前記エッジは単一の金属被加工物のエッジまたは2つの異なる金属被加工物のエッジであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶接しようとする前記エッジは、1つまたはそれ以上のチューブまたはパイプのエッジであることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
溶接しようとする前記エッジ間に作られる開先は“V”字または“X”字型であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
溶接を2.5から4m/minの間の溶接速度で行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
フィラーワイヤ供給速度は少なくとも22m/min、好ましくは25から35m/minの間であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
フィラーワイヤの直径は1.1mm未満、好ましくは1から0.8mmの間であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
溶接しようとする前記金属被加工物は炭素鋼またはステンレス鋼から作られていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ワイヤはソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記電気アークは350Aから500A、好ましくは400Aから500Aの電流の印加によって得られ、前記レーザービームはCO、YAGまたはダイオード型のレーザー装置を用いて得られることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
遮蔽ガスを溶接中に使用し、前記遮蔽ガスは
−ヘリウム、アルゴンおよび酸素;
−ヘリウム、アルゴンおよびCO
−ヘリウムおよびアルゴン;
−アルゴンおよび酸素;または
−アルゴンおよびCO
からなることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
フィラーワイヤの直径は1.19mm未満、好ましくは1.17mm未満であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
フィラーワイヤの直径は0.6から1.5mmの間であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記アークおよび前記レーザービームによって溶融したワイヤから生ずる金属を堆積することによって前記開先を完全に充填することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−75904(P2006−75904A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253534(P2005−253534)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・ア・ディレクトワール・エ・コンセイユ・ドゥ・スールベイランス・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【出願人】(598099419)ラ・スーデュール・オトジェーヌ・フランセーズ (3)
【氏名又は名称原語表記】LA SOUDURE AUTOGENE FRANCAISE
【Fターム(参考)】