説明

高解像度有機薄膜パターンの形成方法

【課題】高解像度有機薄膜パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】高解像度有機薄膜パターンの形成方法に係り、(a)基板上に第1有機層を形成する段階と、(b)第1有機層に選択的に光エネルギーを照射し、第1有機層を選択的に除去し、第1有機層の残っている部分に犠牲層を形成する段階と、(c)基板及び犠牲層上の全面に、第2有機層を形成する段階と、(d)ソルベントを使用し、犠牲層を除去し、犠牲層上に形成された第2有機層をリフトオフすることによって、残っている第2有機層に第2有機層パターンを形成する段階と、を含む有機薄膜パターンの形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜パターンの形成方法に係り、さらに詳細には、製造工程が単純であり、安定しており、低価格化を実現することができる高解像度有機薄膜パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物は、所望の電気光学的特性を有するように物質自体の合成が容易であり、加工性(processibility)にすぐれ、次世代電子素子の高性能化と低価格化とに有利な材料であるとして注目されている。
【0003】
低分子物質は、有機発光ディスプレイ(organic light−emitting display)装置や有機薄膜トランジスタ(organic thin film transistor)のような素子を真空蒸着法で製作するためにすでに使われているが、真空工程とシャドーマスク(shadow mask)の解像度限界とのために、大型の高解像度素子の製作が容易ではないという問題がある(たとえば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−47560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような問題点及びそれ以外の問題点を解決するために、製造工程が単純であり、安定しており、低価格化を実現できる高解像度有機薄膜パターンの形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、(a)基板上に第1有機層を形成する段階と、(b)前記第1有機層に選択的に光エネルギーを照射し、前記第1有機層を選択的に除去し、前記第1有機層の残っている部分に犠牲層を形成する段階と、(c)前記基板及び前記犠牲層上の全面に、第2有機層を形成する段階と、(d)ソルベントを使用し、前記犠牲層を除去し、前記犠牲層上に形成された前記第2有機層をリフトオフすることによって、残っている第2有機層に第2有機層パターンを形成する段階と、を含む有機薄膜パターンの形成方法を提供する。
【0007】
本発明の他の特徴によれば、前記(a)段階で、前記第1有機層は、フッ素系高分子を含むことができる。
【0008】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(b)段階で、前記第1有機層上に所定パターンを具備したマスクを配し、前記マスクにレーザを照射することによって、前記第1有機層を選択的に除去するレーザ・アブレーション法を使用できる。
【0009】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(b)段階は、エキシマ・レーザを照射することができる。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で、前記第2有機層は、前記基板上の第1電極と第2電極との間に配された有機発光物質を含む有機発光素子(OLED)の有機発光物質を形成できる。
【0011】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記有機発光物質は、白色光を放出できるように、互いに異なる色の有機発光物質を複数層形成できる。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で、前記有機半導体物質は、有機薄膜トランジスタの活性層でありうる。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で、前記第2有機層は、有機カラーフィルタ物質を含むことができる。
【0014】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で、前記第2有機層は、蒸着法によって形成されうる。
【0015】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(d)段階で、前記ソルベントは、フッ素系ソルベントでありうる。
【0016】
本発明の他の側面によれば、(a)基板上に第1有機層を形成する段階と、(b)前記第1有機層に選択的に光エネルギーを照射し、前記第1有機層を選択的に除去し、前記第1有機層の残っている部分に犠牲層を形成する段階と、(c)前記基板及び前記犠牲層上の全面に、第2有機層を形成する段階と、(d)ソルベントを使用し、前記犠牲層を除去し、前記犠牲層上に形成された前記第2有機層をリフトオフすることによって、残っている第2有機層に第2有機層パターンを形成する段階と、(e)前記第2有機層パターンが形成された前記基板上に、前記(a)ないし(d)段階の単位工程を連続して遂行し、前記第2有機層パターンが形成されていない領域に他の第2有機層パターンを形成する段階と、を含む有機薄膜パターンの形成方法を提供できる。
【0017】
本発明の他の特徴によれば、前記(a)段階で、前記第1有機層は、フッ素系高分子を含むことができる。
【0018】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(b)段階で、前記第1有機層上に所定パターンを具備したマスクを配し、前記マスクにレーザを照射することによって、前記第1有機層を選択的にレーザ・アブレーション法を使用できる。
【0019】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(b)段階は、エキシマ・レーザを照射することができる。
【0020】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で、前記第2有機層は、前記基板上の第1電極と第2電極との間に配された有機発光物質を含む有機発光素子(OLED)の有機発光物質を形成できる。
【0021】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記有機発光物質は、低分子物質を含むことができる。
【0022】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で形成された有機発光物質は、前記(e)段階で形成された有機発光物質と互いに異なる色を有することができる。
【0023】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で形成された有機発光物質と、前記(e)段階で形成された有機発光物質は、フルカラーを具現できる。
【0024】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で、前記第2有機層は、カラーフィルタ物質を含むことができる。
【0025】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で形成されたカラーフィルタ物質は、前記(e)段階で形成されたカラーフィルタ物質と互いに異なる色を有することができる。
【0026】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で形成された有機発光物質と、前記(e)段階で形成されたカラーフィルタ物質は、フルカラーを具現できる。
【0027】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(c)段階で、前記第2有機層は、蒸着法によって形成されうる。
【0028】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(d)段階で、前記ソルベントは、フッ素系ソルベントでありうる。
【0029】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記(e)段階は、所定回数反復的に実行されうる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の有機薄膜パターンの形成方法は、次のような効果を奏する。
【0031】
第一に、有機薄膜パターン形成時に使われるフッ素系溶媒の化学的性質によって、有機薄膜の特性が低下しない。
【0032】
第二に、さらなる化学的な現像工程が必要とならず、工程を単純化させることができる。
【0033】
第三に、レーザ・アブレーションを利用した光学的な方法で、犠牲層をリフトオフさせてパターンを形成する工程の特性上、高解像度の有機薄膜パターン形成が可能である。
【0034】
第四に、有機発光ディスプレイ装置の有機発光層の形成時、既存のシャドーマスク技術に比べて、高解像度のパターンアレイを大面積に均一に適用でき、高解像度有機発光ディスプレイの工程単純化及び低価格化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】本発明の一実施形態による有機薄膜パターンの形成方法を概略的に示した断面図である。
【図1B】図1Aに後続する断面図である。
【図1C】図1Bに後続する断面図である。
【図1D】図1Cに後続する断面図である。
【図2A】本発明の一実施形態による有機薄膜トランジスタの有機半導体層の形成方法を概略的に示した断面図である。
【図2B】図2Aに後続する断面図である。
【図2C】図2Bに後続する断面図である。
【図2D】図2Cに後続する断面図である。
【図3A】図1Aないし図1Dによる単位有機薄膜パターン工程の後続工程を概略的に示した断面図である。
【図3B】図3Aに後続する断面図である。
【図3C】図3Bに後続する断面図である。
【図3D】図3Cに後続する断面図である。
【図4】基板上に互いに異なる色の有機発光層(R,G,B)を含むフルカラーの有機発光素子の例を示した断面図である。
【図5】単位有機薄膜パターン形成工程によって製作された多様な有機物質の微細パターンアレイを、光学顕微鏡で観察した写真である。
【図6】単位有機薄膜パターン形成工程を連続して実施して製作された互いに異なる発光波長を有する有機発光物質のピクセルアレイを、蛍光顕微鏡で観察した写真である。
【図7】本発明の有機薄膜パターンの形成方法で製作された有機発光素子と、既存のシャドーマスク技術を利用して製作した有機発光素子との発光特性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付された図面に示された本発明の望ましい実施形態を参照しつつ、本発明の思想について詳細に説明する。
【0037】
図1Aないし図1Dは、本発明の一実施形態による有機薄膜パターンの形成方法を概略的に示した断面図である。
【0038】
図1Aを参照すれば、本実施形態による有機薄膜パターンの形成方法は、まず所望の有機薄膜パターンを形成しようとする基板110上に、第1有機層130を形成する。
【0039】
基板110は、SiOを主成分とするガラス材基板、プラスチック材基板、または金属箔(metal foil)のような多様な材質の基板を使用できる。
【0040】
第1有機層130は、フッ素系高分子膜をディップ・コーティング、スピン・コーティングの方法などを利用して形成できる。かようなフッ素系高分子膜としては、下記化学式1ないし化学式3の物質のうちいずれか一つを使用できる。また、フッ素を10〜50%含有する機能性物質も使用可能である。
【0041】
【化1】

【0042】
ここで、n=50ないし1,000の整数のうちの一つである。
【0043】
【化2】

【0044】
ここで、m=50ないし1,000の整数のうちの一つであり、n=50ないし1,000の整数のうちの一つである。
【0045】
【化3】

【0046】
ここで、n=50ないし1,000の整数のうち一つである。
【0047】
かようなフッ素系高分子を、沸点の低いフッ素化溶媒(fluorinated solvent)に溶かし使用すれば、ディップ・コーティングのような方法を介して、数nmから数μm厚の均一の薄膜を形成でき、これは、形成しようとする有機薄膜のパターン厚によって、後述する犠牲層の厚さを調節するのに有用である。
【0048】
図1Bを参照すれば、第1有機層130のフッ素系高分子膜に、光エネルギーを選択的に照射し、フッ素系高分子膜130を選択的に除去(ablation)し、残っている第1有機層130で犠牲層131パターンを形成する。
【0049】
このとき、光エネルギーを照射する方法として、レーザを利用でき、望ましくは、エキシマ・レーザ(excimer laser)を利用できる。また、第1有機層130上に、所定パターンを具備した第1マスクM1を配し、前記第1マスクM1上に、レーザを照射することによって、第1有機層130の一部133を選択的に除去するレーザ・アブレーション(laser ablation)工程を進める。
【0050】
さらに詳細に説明すれば、第1有機層130上に設けられた光遮断部M1aと光透過部M1bとを具備した第1マスクM1の光透過部M1bを通過したレーザは、第1有機層130の一部133に吸収され、レーザを吸収した第1有機層130の一部133は、熱的拡散がなされつつ除去される。そして、レーザが照射されていない第1有機層130の残りの領域131は、後述する犠牲層パターン131として残る。
【0051】
一方、前述の図では、第1有機層130の一部を選択的に除去するために、所望の所定パターンを具備したマスクを使用したが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。すなわち、高解像度のパターンを得るためには、前記のようなマスクの使用が必要であるが、マスクなしにレーザを照射しようとするときは、第1有機層130に直接照射することができることは言うまでもない。
【0052】
図1Cを参照すれば、犠牲層131が形成された基板110の全面に、第2有機層150を形成する。
【0053】
第2有機層150は、望ましくは、蒸着工程で形成されるが、これに限定されるものではなく、インクジェット・プリンティング、スクリーン・プリンティング、レーザ熱転写(LITI:laser induced thermal imaging)法など、多様な方法で形成されうる。一方、第2有機層150は、犠牲層131が形成されていない基板110上に形成された層153と、犠牲層131上に形成された層151とから構成される。
【0054】
かような第2有機層150は、多様な材料を使用できる。例えば、有機発光物質、有機カラーフィルタ物質、有機半導体物質などを含むことができ、これについての詳細な説明は後述する。
【0055】
図1Dを参照すれば、ソルベント(図示せず)を使用し、基板110上に所望の第2有機層150のパターン153を形成する。
【0056】
第1有機層130として、フッ素系高分子を使用する場合、ソルベントとして、フッ素系ソルベントを使用することが望ましい。本実施形態では、フッ素系ソルベントとして、3MTMNOVECのHFE−7100を使用した。フッ素が含まれている17族ハロゲン元素は、ハロゲン元素ではない他の物質との反応性が非常に低いという特徴を有する。かようなフッ素系ソルベントの化学的性質によって、パターンを形成しようとする第2有機層150の特性を低下させない。
【0057】
かようなフッ素系ソルベントで犠牲層131を除去し、犠牲層131上に形成された第2有機層151をリフトオフさせる。その結果、基板110上には、所望の第2有機層部分153だけがパターンとして残ることになる。
【0058】
以下、図2Aないし図2Dを参照しつつ、前述の有機薄膜パターンを形成する方法を利用した本発明の他の実施形態を説明する。
【0059】
図2Aないし図2Dは、本発明の一実施形態による有機薄膜トランジスタの有機半導体層の形成方法を概略的に示した断面図である。
【0060】
図2Aを参照すれば、まずゲート電極220及びゲート絶縁膜層221が形成された基板210上に、第1有機層230を形成する。
【0061】
ゲート電極220は、一般的なフォトリソグラフィ(photolithograph)工程を利用して形成できる。換言すれば、基板210上にゲート金属物質を蒸着し、フォトレジスト(PR:photoregist)を塗布した後、所定パターンが形成されたフォトマスク(図示せず)を介して、フォトレジストを露光する。露光されたフォトレジストを現像液に浸して現像し、所望のフォトレジストパターンを形成した後、エッチング工程でゲート電極220を形成する。ゲート電極220上にゲート絶縁膜221を形成し、ゲート絶縁膜221上に第1有機層230で、前述のフッ素系高分子を所定厚に塗布する。
【0062】
図2Bを参照すれば、第2有機層230であるフッ素系高分子膜に、光エネルギーを選択的に照射し、フッ素系高分子膜230を選択的に除去し、残っている第1有機層230で犠牲層231パターンを形成する。このとき、光エネルギーを照射する方法として、前述のようにレーザを利用でき、望ましくは、エキシマ・レーザを利用できる。
【0063】
一方、前記図面では、マスク(図示せず)を使用せずに、第1有機層230上に直接パルス・エキシマ・レーザを照射し、第1有機層230の一部233を直接除去したが、前述のように、所定パターンを具備したマスクを第1有機層230上に配し、マスク上にレーザを照射することによって、第1有機層230の一部を選択的に除去できることは言うまでもない。
【0064】
図2Cを参照すれば、犠牲層231が形成されたゲート絶縁膜221の全面に、第2有機層250を形成する。
【0065】
第2有機層250は、有機半導体物質から形成される。かような有機半導体物質としては、高分子で構成される場合には、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリチオフェンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン−ヘテロ環芳香族共重合体及びその誘導体を含むことができる。低分子で構成される場合には、ペンタセン、テトラセン、ナフタレンのオリゴアセン及びそれらの誘導体、アルファ(α)−6−チオフェン、アルファ(α)−5−チオフェンのオリゴチオフェン及びそれらの誘導体、金属を含有している、あるいは含有していないフタロシアニン及びそれらの誘導体、ピロメリット酸二無水物またはピロメリット酸ジイミド及びそれらの誘導体、ペリレンテトラカルボン酸二無水物またはペリレンテトラカルボン酸ジイミド及びそれらの誘導体を含むことができる。それら以外の多様な有機半導体物質でもって構成されうることは言うまでもない。
【0066】
第2有機層250は、犠牲層231が形成されていないゲート絶縁膜221上に形成された層253と、犠牲層231上に形成された層251とから構成される。
【0067】
図2Dを参照すれば、フッ素系ソルベント(図示せず)で犠牲層231を除去し、犠牲層231上に形成された第2有機層251を除去する。その結果、ゲート絶縁膜221上には、所望の有機半導体層253がパターンとして残るようになる。このとき、前述のように、反応性が非常に低いフッ素系ソルベントを利用し、化学的に非常に敏感な有機半導体層253を安定してパターニングする。そして、有機半導体層253の両側に、ソース電極261及びドレイン電極262を形成し、有機半導体素子の一種である有機薄膜トランジスタ(OTFT:organic thin film transistor)を形成する。
【0068】
無機半導体素子の製作工程に一般的に使われてきたフォトリソグラフィ技術は、高解像度であり、大面積工程の可能性が良好に確立された技術や装備であるにもかかわらず、有機半導体素子の製作に広く利用されていない。それは、フォトリソグラフィ工程に使われるソルベントと有機物間の化学的適合性(chemical compatibility)の問題によるものであり、有機半導体素子の製作工程中に、フォトレジストを塗布したり現像するときに、使われる溶媒によって、有機物が損傷を受けたり、特性が低下するという問題が現れるためである。
【0069】
しかし、前記の通り、本実施形態による有機半導体素子の有機薄膜パターンの形成方法によれば、有機薄膜パターン形成時に使われるフッ素系溶媒の化学的性質によって、有機薄膜の特性が低下しない。また、さらなる化学的な現像工程が不要であり、工程が非常に単純である。また、レーザ・アブレーションを利用した光学的な方法で、犠牲層を除去してパターンを形成する工程の特性上、高解像度有機薄膜パターンの形成が可能である。
【0070】
一方、前記図面には、ゲート電極220が有機半導体層253下に配され、有機半導体層253上に、ソース電極261及びドレイン電極262が形成された典型的なボトム・ゲート(bottom gate)薄膜トランジスタが示されたが、これは一例示に過ぎず、多様な構造の有機薄膜トランジスタが適用されうることはいうまでもない。
【0071】
一方、前述の実施形態では、第2有機層として有機半導体物質を使用して薄膜トランジスタの有機半導体層を形成する例を技術したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、アノードとカソードとしての第1電極と第2電極との間に、第2有機層として白色光を放出できる互いに異なる色(カラー)の有機発光物質を複数層積層した、有機発光素子の形成にも使われうる。例えば、アノード(またはカソード)が形成された基板上に、第1有機層にフッ素系高分子膜で犠牲層を形成し、犠牲層の全面に赤色、青色、及び緑色の互いに異なる色の有機発光層を順に積層した後、フッ素系ソルベントで、犠牲層と、犠牲層上に形成された互いに異なる色の複数層の有機発光層とを除去し、その上に、カソード(またはアノード)を積層することによって、白色を放出できる有機発光素子を設けることができる。
【0072】
以下、図3Aないし図3Dを参照しつつ、前述の有機薄膜パターンを形成する方法を利用した本発明のさらに他の実施形態について説明する。
【0073】
図3Aないし図3Dは、前述の図1Aないし図1Dによる単位有機薄膜パターン工程の後続工程を概略的に示した断面図である。
【0074】
まず、図3Aを参照すれば、図1Aないし図1Dに示された前述の第1単位有機薄膜パターン形成工程によって第2有機層パターン153が形成された基板110上に、フッ素系高分子膜330をさらにコーティングする。
【0075】
図3Bを参照すれば、フッ素系高分子膜330に、光エネルギーを選択的に照射し、フッ素系高分子膜330を選択的に除去し、残っているフッ素系高分子膜330で第2犠牲層パターン331を形成する。このとき、第2犠牲層パターン331は、前述の第1単位有機薄膜パターン形成工程ですでに形成された第2有機層パターン153上に形成する。
【0076】
第2マスクM2を使用し、第2犠牲層パターン331を形成するとき、第2有機層パターン153が形成された領域は、光遮断部M2aが対応し、第2有機層パターン153が形成されていない領域には、光透過部M2bが対応するように配する。
【0077】
第2マスクM2上に、レーザを照射することによって、第2有機層パターン153が形成されていない領域のフッ素系高分子膜333を選択的に除去し、第2有機層パターン153が形成された領域のフッ素系高分子膜330の一部を、第2犠牲層パターン331として残す。
【0078】
図3Cを参照すれば、第2犠牲層331が形成された基板110全面に、第3有機層350を形成する。
【0079】
第3有機層350は、望ましくは、蒸着工程で形成され、第2犠牲層331が形成されていない基板110上に形成された層353と、第2犠牲層331上に形成された層351とから構成される。
【0080】
かような第3有機層350は、多様な材料を使用できる。例えば、有機発光物質、有機カラーフィルタ物質、有機半導体物質などを含むことができる。これについての詳細な説明は後述する。
【0081】
図3Dを参照すれば、フッ素系ソルベント(図示せず)を使用し、基板110上に所望の第3有機層350のパターン353を形成する。
【0082】
かようなフッ素系ソルベントで第2犠牲層331を除去し、第2犠牲層331上に形成された第3有機層パターン351を除去する。その結果、基板110上には、前述の第1単位有機薄膜パターン形成工程で形成された第2有機層パターン153と、本有機薄膜パターン形成工程(以後、「第2単位有機薄膜パターン形成工程」と称する)で形成された第3有機層パターン353の部分だけ残るようになる。
【0083】
このとき、使われたフッ素系ソルベントの化学的性質によって、パターンを形成しようとする、第2有機層パターン153及び第3有機層パターン353の特性を低下させずに、基板110上に互いに異なる第2有機層パターン153及び第3有機層パターン353を形成できる。
【0084】
以下、第2有機層パターン153及び第3有機層パターン353が、有機発光素子の有機層として使われた場合を例示して説明する。
【0085】
有機発光素子は、アノードとカソードとしての第1電極と第2電極との間に有機層を位置させ、カソードに注入された電子と、アノードに注入された正孔とが有機層で結合し、このときの結合を介して、発光層の発光分子が励起された後、基底状態に戻りつつ放出されるエネルギーを光として発光させる発光素子であり、有機発光ディスプレイ装置を具現する単位素子である。前記図面には図示されていないが、本実施形態による第2有機層パターン153及び第3有機層パターン353は、それぞれアノード(またはカソード)上に形成されたものである。
【0086】
有機層として低分子有機物を使用する場合、有機層は、一般的に多層構造に形成され、当該多層構造は、ホール注入層(HIL:hole injection layer)、ホール輸送層(HTL:hole transport layer)、発光層(EL:emitting layer)、電子輸送層(ETL:electron transport layer)、電子注入層(EIL:electron injection layer)のうち、発光層を含んで1層以上が利用された積層構造で形成され、使用可能な有機材料も、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などを始めとして多様に適用可能である。高分子有機物の場合、有機発光層を中心に、アノード電極の方向にホール輸送層をさらに含む構造であり、高分子ホール輸送層としては、ポリエチレンジヒドロキシチオフェン(PEDOT)やポリアニリン(PANI)を、高分子有機発光層としては、ポリフェニレンビニレン(PPV)、Soluble PPV’s、シアノ−PPV、ポリフルオレンなどを使用できる。
【0087】
有機発光ディスプレイ装置では、高精細パターンを有したシャドーマスク(shadow mask)を利用した真空蒸着工程を介して低分子有機発光層のパターンを形成する方法がすでに定着している。しかし、真空工程とシャドーマスクの解像度限界とのために、大型ディスプレイ装置の製作に多くの問題がある。
【0088】
また、無機半導体素子の製作工程に一般的に使われてきたフォトリソグラフィ技術は、高解像度であり、大面積工程の可能性が良好に確立された技術や装備であるにもかかわらず、フォトリソグラフィ工程において、フォトレジストを塗布あるいは現像するときに使われる溶媒によって、有機物が損傷を受けたり特性が低下したりする問題のために、有機発光素子の製作に適用することは難しい。
【0089】
また、前記のような問題を解決するために、あらかじめ形成された有機薄膜を、レーザを利用して基板に転写するレーザ熱転写工程(LITI)技術が開発されたが、該技術は、有機薄膜上に直接的にレーザを照射するために、有機薄膜の物質特性や素子の動作特性が低下するという問題点を有する。
【0090】
しかし、前記の通り、本実施形態による有機発光素子の有機薄膜パターンの形成方法によれば、既存のシャドーマスク技術に比べて、高解像度のパターンアレイを大面積に均一に適用でき、単位工程を単純に反復し、連続して互いに異なる有機発光物質のパターンアレイを形成できる。よって、本発明は、高解像度有機発光ディスプレイの工程単純化及び低価格化に有利である。
【0091】
また、有機薄膜パターンの形成時に使われるフッ素系溶媒の化学的性質によって、有機薄膜の特性が低下せず、さらなる化学的な現像工程が必要とならず、工程が非常に単純である。
【0092】
また、レーザ・アブレーションを利用した光学的な方法で、犠牲層を除去してパターンを形成する工程の特性上、高解像度有機薄膜パターンの形成が可能である。
【0093】
一方、前述の実施形態では、2回の有機薄膜パターン形成の単位工程が実施され、第2有機層パターン及び第3有機層パターンのように、2つの互いに異なる有機薄膜パターンが形成される過程について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、3回またはそれ以上の単位工程を反復できる。例えば、3回の有機薄膜パターン形成工程を進め、図4に図示されているように、基板110上に互いに異なる色の有機発光層(R,G,B)を含むフルカラー(full color)の有機発光素子を製作できる。
【0094】
また、前述の実施形態による有機薄膜パターンの形成方法は、有機カラーフィルタのパターン形成にも適用されうる。すなわち、連続的であってかつ反復的な3回の有機薄膜パターン形成工程を進め、互いに異なる色、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の有機カラーフィルタ層を有するフルカラーの有機カラーフィルタを製作できる。
【0095】
図5は、単位有機薄膜パターン形成工程によって製作された多様な有機物質の微細パターンアレイを、光学顕微鏡で観察した写真である。
【0096】
前記写真を参照すれば、最小10μm幅の線形パターンが可能であり、原則的に、レーザ・アブレーションのような光学的な方法の特性上、工程の解像度を数μmまで下げることができる。また、実際にディスプレイ用ピクセルサイズと類似した横100μm、縦300μmサイズの四角形パターンアレイも大面積に均一に形成された。この有機薄膜パターンは、いずれもAlq3を利用して製作されたものであるが、他種の有機物を利用しても同一にパターン形成が可能であり、あらゆる有機物に対して、一般的なパターン工程で使用できる。
【0097】
図6は、単位有機薄膜パターン形成工程を連続して実施して製作された互いに異なる発光波長を有する有機発光物質のピクセルアレイを、蛍光顕微鏡で観察した写真である。
【0098】
有機発光物質として、100μm×300μmサイズの微細ピクセルパターン・アレイを連続して形成したものであり、左側の写真を見れば、第1単位工程によって、黄緑色の有機薄膜パターンが形成され、右側の写真を見れば、黄緑色の有機薄膜パターン間に、第2単位工程によって、青色の色有機薄膜パターンが良好に形成されたことを確認することができる。
【0099】
右下の図は、有機薄膜パターンの断面構造を図示したものであり、有機薄膜パターンの幅は、一定の形態で形成されたことを確認することができる。また、有機薄膜パターンを互いに異なる厚みに製作できることが分かる。
【0100】
図7は、本発明の有機薄膜パターンの形成方法で製作された有機発光素子と、既存のシャドーマスク技術を利用して製作した有機発光素子との発光特性を比較したグラフである。
【0101】
前記グラフを参照すれば、2種の方法で製作した有機発光素子の発光特性間には、大差がないことが分かる。これを通じて、本発明で提案した方法が、前述のように、高解像度の微細パターンを形成できつつも、既存製作方法に比べて、素子性能の低下をもたらすものではないということを確認することができる。
【0102】
一方、本発明の特許請求の範囲は、必須な工程過程と使用可能な物質との観点から記述されるものであり、本技術分野の当業者であるならば、開示された本発明の概念と特定実施形態は、本発明と類似した目的を遂行するための方法として使われうることが分かるのである。そして、前記図面に示された構成要素は、説明の便宜上、拡大または縮小されて表示されることがあので、図面に示された構成要素のサイズや形状に、本発明が拘束されるものではなく、本技術分野の当業者であるならば、それらから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解することが可能であろう。よって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まるものである。
【符号の説明】
【0103】
110,210 基板、
130,230 第1有機層、
131 犠牲層、
133,233 第1有機層の一部、
150,250 第2有機層、
151 犠牲層の上に形成された層、
153 第2有機層のパターン、
220 ゲート電極、
221 ゲート絶縁膜、
231 第1犠牲層、
251 第1犠牲層の上に形成された第2有機層、
253 有機半導体層、
261 ソース電極、
263 ドレイン電極、
330,333 フッ素系高分子膜、
331 第2犠牲層、
350 第3有機膜、
351 第2犠牲層の上に形成された層、
353 基板の上に形成された層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板上に第1有機層を形成する段階と、
(b)前記第1有機層に選択的に光エネルギーを照射し、前記第1有機層を選択的に除去し、前記第1有機層の残っている部分に犠牲層を形成する段階と、
(c)前記基板及び前記犠牲層上の全面に、第2有機層を形成する段階と、
(d)ソルベントを使用し、前記犠牲層を除去し、前記犠牲層上に形成された前記第2有機層をリフトオフすることによって、残っている第2有機層に第2有機層パターンを形成する段階と、を含む有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項2】
前記(a)段階で、前記第1有機層は、フッ素系高分子を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項3】
前記(b)段階で、前記第1有機層上に所定パターンを具備したマスクを配し、前記マスクにレーザを照射することによって、前記第1有機層を選択的に除去するレーザ・アブレーション法を使用することを特徴とする請求項1または2に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項4】
前記(b)段階は、エキシマ・レーザを照射することを特徴とする請求項3に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項5】
前記(c)段階で、前記第2有機層は、前記基板上の第1電極と第2電極との間に配された有機発光物質を含む有機発光素子(OLED)の有機発光物質を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項6】
前記有機発光物質は、白色光を放出できるように、互いに異なる色の有機発光物質を複数層形成することを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項7】
前記(c)段階で、前記第2有機層は、有機薄膜トランジスタの活性層であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項8】
前記(c)段階で、前記第2有機層は、有機カラーフィルタ物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項9】
前記(c)段階で、前記第2有機層は、蒸着法によって形成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項10】
前記(d)段階で、前記ソルベントは、フッ素系ソルベントであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項11】
(a)基板上に第1有機層を形成する段階と、
(b)前記第1有機層に選択的に光エネルギーを照射し、前記第1有機層を選択的に除去し、前記第1有機層の残っている部分に犠牲層を形成する段階と、
(c)前記基板及び前記犠牲層上の全面に、第2有機層を形成する段階と、
(d)ソルベントを使用し、前記犠牲層を除去し、前記犠牲層上に形成された前記第2有機層をリフトオフすることによって、残っている第2有機層に第2有機層パターンを形成する段階と、
(e)前記第2有機層パターンが形成された前記基板上に、前記(a)ないし(d)段階の単位工程を連続して遂行し、前記第2有機層パターンが形成されていない領域に、他の第2有機層パターンを形成する段階と、を含む有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項12】
前記(a)段階で、前記第1有機層は、フッ素系高分子を含むことを特徴とする請求項11に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項13】
前記(b)段階で、前記第1有機層上に所定パターンを具備したマスクを配し、前記マスクにレーザを照射することによって、前記第1有機層を選択的にレーザ・アブレーションすることを特徴とする請求項11または12に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項14】
前記(b)段階は、エキシマ・レーザを照射することを特徴とする請求項13に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項15】
前記(c)段階で、前記第2有機層は、前記基板上の第1電極と第2電極との間に配された有機発光物質を含む有機発光素子(OLED)の有機発光物質を形成することを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項16】
前記有機発光物質は、低分子物質を含むことを特徴とする請求項15に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項17】
前記(c)段階で形成された有機発光物質は、前記(e)段階で形成された有機発光物質と互いに異なる色を有することを特徴とする請求項15または16に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項18】
前記(c)段階で形成された有機発光物質と、前記(e)段階で形成された有機発光物質は、フルカラーを具現することを特徴とする請求項17に記載の有機薄膜パターンを具備した素子形成方法。
【請求項19】
前記(c)段階で、前記第2有機層は、カラーフィルタ物質を含むことを特徴とする請求項11に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項20】
前記(c)段階で形成されたカラーフィルタ物質は、前記(e)段階で形成されたカラーフィルタ物質と互いに異なる色を有することを特徴とする請求項19に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項21】
前記(c)段階で形成された有機発光物質と、前記(e)段階で形成されたカラーフィルタ物質は、フルカラーを具現することを特徴とする請求項20に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項22】
前記(c)段階で、前記第2有機層は、蒸着法によって形成されることを特徴とする請求項11〜21のいずれか1項に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項23】
前記(d)段階で、前記ソルベントは、フッ素系ソルベントであることを特徴とする請求項11〜22のいずれか1項に記載の有機薄膜パターンの形成方法。
【請求項24】
前記(e)段階は、所定回数反復して実行されることを特徴とする請求項11〜23のいずれか1項に記載の有機薄膜パターンの形成方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−141526(P2011−141526A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249571(P2010−249571)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【出願人】(508298075)ソウル大学校産学協力団 (27)
【Fターム(参考)】