説明

2つの発振器を有する振動性回路

【課題】水晶振動子よりも安価で小型の安定した振動性回路の実現
【解決手段】振動性回路(100)。振動性回路は第1の発振器(110)と、第2の発振器(120)と、ミクサ回路(130)とを含む。第1の発振器は第1の周波数において第1の発振信号(115)を生成するように構成され、第1の周波数温度係数を有する。第2の発振器は第2の周波数において第2の発振信号(125)を生成するように構成され、第2の周波数温度係数を有する。第2の周波数は第1の周波数よりも高く、第2の周波数温度係数は第1の周波数温度係数よりも小さい。ミクサ回路は第1の発振器から第1の発振信号を受信し、第2の発振器から第2の発振信号を受信し、且つ第1の発振信号及び第2の発振信号からミクサ信号を生成するように構成される。ミクサ信号(135)はビート周波数(fB)における信号成分(136)を含む。ビート周波数は第2の周波数と第1の周波数との差に等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの発振器を有する振動性回路に関する。
【背景技術】
【0002】
簡単な腕時計から複雑なコンピュータサーバまでの多数の最新の電子装置は、1つ又は複数のクロック或いは発振器信号の生成に依存する。種々の用途の要件を満たすために、生成される信号は正確で、安定していなければならない。さらに、生成される信号の動作周波数は、温度が変化しても、設計周波数から大きく外れてはならない。
【0003】
基本的に携帯電話、コンピュータ、電子レンジ、及び多数の他の電子製品は全て、水晶共振器を用いて、通常20MHz程度の予め選択された周波数において基準信号を生成する。そのような発振器は水晶制御発振器と呼ばれる。これらの製品におけるゲートは、基準信号を用いて、予め選択された周波数において「クロック同期される」、又は切り替えられる。ありとあらゆる「時間基準」が、この水晶共振器−発振器から生成される。携帯電話、ラップトップコンピュータ、及び他のポータブル装置では、水晶共振器回路が、望ましい大きさよりも大きい。通常、発振器は、製品の動作温度範囲全体にわたって、約±2ppmの周波数ドリフトを有する必要がある。このレベルの周波数制御を達成するために、水晶共振器は、周囲の周りをアーク溶接された金属蓋を備えるハーメチックセラミックパッケージ内にパッケージングされるのが普通である。そのような事情から、パッケージには比較的費用がかかる。一例が、Kyocera TCXO 部品番号KT21である。この製品は、3.2×2.5×1mmのセラミックパッケージ内に入れられ、−30〜+85℃において±2ppmの精度を有し、2mAの電流を引き込む。この水晶の共振周波数は20MHzであるので、この製品を用いる発振器からの信号は、電力を消費する他の電子回路によって逓倍されなければならない。さらに、結果として生じる高調波が一般的には、基本周波数に対して約5dBだけしか低減されない。
【0004】
また、発振器は、他のタイプの共振器、例えば、標準的なLC(インダクタ−キャパシタ)共振器、圧電薄膜共振器(thin film bulk acoustic resonator:FBAR)等を用いて構成され得る。そのような共振器は水晶共振器よりも安価であるが、それらの共振器の周波数ドリフト特性は一般的に、上記の応用形態に許容できるものよりも劣る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、上述した技術的な問題を克服、又は少なくとも緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
代表的な実施形態において、振動性回路が開示される。この振動性回路は第1の発振器と、第2の発振器と、ミクサ回路とを含む。第1の発振器は第1の周波数において第1の発振信号を生成するように構成され、第1の周波数温度係数を有する。第2の発振器は第2の周波数において第2の発振信号を生成するように構成され、第2の周波数温度係数を有する。第2の周波数は第1の周波数よりも高く、第2の周波数温度係数は第1の周波数温度係数よりも小さい。ミクサ回路は第1の発振器から第1の発振信号を受信するように構成され、第2の発振器から第2の発振信号を受信するように構成され、且つ第1の発振信号及び第2の発振信号からミクサ信号を生成するように構成される。ミクサ信号はビート周波数における信号成分を含む。ビート周波数は第2の周波数と第1の周波数との差に等しい。
【0007】
別の代表的な実施形態において、振動性回路を製造するための方法が開示される。この方法は、第1の周波数において第1の発振信号を生成するように構成され、第1の周波数温度係数を有する第1の発振器を製造し、第2の周波数において第2の発振信号を生成するように構成され、第2の周波数温度係数を有する第2の発振器を製造し、及び第1の発振器の出力及び第2の発振器の出力を互いに接続することを含む。第2の周波数は第1の周波数よりも高く、第2の周波数温度係数は第1の周波数温度係数よりも小さく、第2の周波数に第2の周波数温度係数を掛けたものと、第1の周波数に第1の周波数温度係数を掛けたものとの差は0に等しい。
【0008】
本明細書において提示される代表的な実施形態の他の態様及び利点は、添付図面に関連してなされる、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、これまでに用いられてきた水晶振動子よりも低コストで、小さいサイズであり、非常に小さな周波数ドリフト対温度特性(T)を有する振動性回路を提供することが可能になる。また、係る振動性回路の出力信号は、水晶共振器に比べて相対的にスプリアスモードを生じないようにすることができ、はるかに高い周波数にすることができる。結果として、必要とされる「きれいな」高周波トーンを作り出す際に消費される電力も少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
添付図面は、視覚的な表現を与えており、種々の代表的な実施形態をさらに十分に説明するために使用され、それらの図面を用いることにより、当業者が種々の実施形態及びそれらの固有の利点をより深く理解することができる。これらの図面において、同様の参照符号は対応する要素を特定する。
【0011】
例示のために図面に示されるように、新規な共振器は、その共振周波数及び周波数ドリフト特性を適切に調整して、非常に小さな周波数ドリフト対温度特性を有する振動性回路になることができる。集積回路技術を用いて、適切な一対の共振器を製造することができ、同等の周波数ドリフト特性を得るために、これまでに用いられてきた水晶振動子よりもコスト及びサイズにおいて結果的に有利である。これまでは、温度に対して低い周波数ドリフトを提供するために、水晶の結晶を慎重にカットし、調整してきた。
【0012】
代表的な実施形態では、温度とともに異なる速度でドリフトする2つの共振器を発振器回路に用いて、携帯電話、ポータブルコンピュータ及び他の同等の装置のための標準的な温度範囲全体にわたって、その正味の温度ドリフトが、0ではないにしても、非常に小さい「ビート」周波数が生成される。それらの共振器は、圧電薄膜共振器(FBAR)として製造されることができ、他の集積回路と組み合わせて、結果として約0.2ミリメートル(mm)の厚み及び1×1mm未満の面積を有することができるシリコンチップとなることができる。さらに、その出力信号は、水晶共振器よりもはるかに高い周波数にすることができ、それゆえ、相対的にスプリアスモードを生じないようにすることができる。結果として、必要とされる「きれいな」高周波トーンを作成する際に消費される電力が少なくなる。
【0013】
以下の詳細な説明、及び図面のいくつかの図において、同様の要素は同様の参照符号で識別される。
【0014】
図1は、種々の代表的な実施形態において説明されるような、振動性回路100のブロック図である。図1において、振動性回路100は、第1の発振器110と、第2の発振器120と、ミクサ回路130と、フィルタ140とを含む。第1の発振器110は、第1の共振器111と、第1の増幅器112とを含む。第2の発振器120は、第2の共振器121と、第2の増幅器122とを含む。
【0015】
第1の増幅器112の出力は、第1の共振器111を介して、第1の増幅器112の入力にフィードバックされ、結果として、第1の発振器110は、第1の周波数f01において第1の発振信号115を生成し、第1の周波数f01は第1の共振器111の共振周波数である。
【0016】
第2の増幅器122の出力は、第2の共振器121を介して、第2の増幅器122の入力にフィードバックされ、結果として、第2の発振器120は、第2の周波数f02において第2の発振信号125を生成し、第2の周波数f02は第2の共振器121の共振周波数である。
【0017】
図1の代表的な実施形態では、第2の周波数f02は第1の周波数f01よりも高い。第1の発振器110及び第2の発振器120のために図1に示される細部は、例示にすぎない。第1の共振器111及び第2の共振器121とともに、種々の構成の発振器回路を用いることができる。
【0018】
ミクサ回路130は、第1の発振器110から第1の周波数f01の第1の発振信号115を受信し、第2の発振器120から第2の周波数f02の第2の発振信号125を受信する。第1の発振信号115及び第2の発振信号125は、ミクサ回路130によって混合され、ミクサ信号135が生成される。ミクサ信号135は、第2の周波数f02から第1の周波数f01を引いた周波数に等しいビート周波数fにおける信号成分136(図2Aを参照)と、第1の周波数f01と第2の周波数f02との和に等しい和周波数fにおける他の信号成分137(図2Aを参照)とを含む。
【0019】
フィルタ140は、ミクサ回路130からのミクサ信号135を受信し、ミクサ信号135のうちのビート周波数fの信号成分136を通過させ、ミクサ信号135のうちの和周波数fの他の信号成分137を阻止して、その結果、その出力として、本明細書で出力信号145とも呼ばれるフィルタ信号145が生じる。結果として、フィルタ信号145は主に、フィルタ140の伝達関数によって変化したビート周波数fの信号からなる。通常、フィルタ信号145のうちの和周波数fのあらゆる成分は、フィルタ140の伝達関数によって大きく減少するであろう。
【0020】
図2Aは、図1のミクサ信号135の成分のミクサ出力235対周波数のグラフである。ミクサ出力235はミクサ信号135であり、上述のように、ビート周波数fの信号成分136と、和周波数fの他の信号成分137とを含む。信号成分136及び他の信号成分137の両方が図2Aに示される。信号成分136はビート周波数f=(f02−f01)においてプロットされ、他の信号成分137は和周波数f=(f02+f01)においてプロットされる。また、図2Aには、第1の周波数f01及び第2の周波数f02が相対的な位置に示される。
【0021】
図2Bは、図1のフィルタ140のための伝達関数250対周波数のグラフである。図2Bの代表的な実施形態では、フィルタ140はローパスフィルタ140である。しかしながら、フィルタ140の伝達関数250がミクサ信号135のうちのビート周波数fにおける信号成分136を通過させ、ミクサ信号135のうちの和周波数fにおける他の信号成分137のような他の顕著な成分を阻止する限り、種々の構成のフィルタ140を用いることができる。そのような事情で、及び前述されたように、フィルタ140の出力におけるフィルタ信号145は主に、フィルタ140の伝達関数250によって変化したビート周波数fの信号を含む。一般に、その際、フィルタ信号145のうちの和周波数fにおけるあらゆる成分は、フィルタ140の伝達関数250によって大きく低減するであろう。
【0022】
図2Cは、図1の第1の共振器111及び第2の共振器121に関する周波数温度係数Tのグラフである。基準周波数fにおける共振回路の周波数温度係数Tの値は、T=(1/f)(Δf/Δt)によって与えられ、ここで、Δfは、Δtの温度変化によって引き起こされる、fの周波数シフトである。周波数温度係数Tの値は一般に、摂氏度当たりの百万分率(ppm/℃)として表される。所与の発振器において他の大きな周波数依存構成要素が存在しないものと仮定すると、その発振器の温度係数の値は、その共振回路の温度係数の値と同じになるであろう。第1の共振器111は第1の周波数温度係数TC1を有し、第2の共振器121は第2の周波数温度係数TC2を有する。第2の周波数温度係数TC2の値は、第1の周波数温度係数TC1よりも小さいことに留意されたい。
【0023】
そして、振動性回路100のビート周波数fは、第2の周波数f02を第2の周波数温度係数TC2と乗算したものから第1の周波数f01を第1の周波数温度係数TC1と乗算したものを引いた値に等しい回路周波数温度係数TCCを有する(即ち、TCC=[f02×TC2]−[f01×TC1])。こうして、第1の周波数f01、第1の周波数温度係数TC1、第2の周波数f02、及び第2の周波数温度係数TC2は、特定の応用形態の要件を満たすように適切に選択され得る。これらのパラメータを慎重に調整する結果として、回路周波数温度係数TCCが、水晶振動子を使用することによって得られるものと同等、又はそれよりも良好になることができる。実際には、これらのパラメータを慎重に選択して、調整することにより、0の回路周波数温度係数TCCを得ることができる。
【0024】
図2Dは、圧電薄膜共振器(FBAR)の等価回路260の図である。圧電薄膜共振器は、それらの製造技術が集積回路の製造技術に適合し、結果として、他の技術よりもコスト、信頼性及びサイズに関して比較的有利になるという事実によって、本明細書の種々の代表的な実施形態に使用され得る。図2Dは、圧電薄膜共振器の修正バターワース・バンダイク(Butterworth-Van Dyke)モデルである。この等価回路260から、圧電薄膜共振器は、2つの共振周波数を有することが明らかである。第1の共振周波数は、直列共振周波数fSERと呼ばれ、インダクタL及びキャパシタCの直列の組合せから生じる。第2の共振周波数は、並列共振周波数fPARと呼ばれ、シャントキャパシタCと、上記のインダクタL及びキャパシタCの直列の組合せとの並列の組合せから生じる。並列共振周波数fPARは反共振周波数fPARとも呼ばれる。抵抗RSERIES及びシャント抵抗RSHUNTは、その構造における理想的でない抵抗構成要素を表す。結果としての出力信号145の周波数を決定する際に、フィルタ140を適切に選択して、並列共振周波数fPAR又は直列共振周波数fSERのいずれかを選択することができる。上記の観点から、及び所与の具現化形態において、第1の共振器111の第1の周波数f01は、並列共振周波数fPAR又は直列共振周波数fSERのいずれかにすることができ、第2の共振器121の第2の周波数f02は、並列共振周波数fPAR又は直列共振周波数fSERのいずれかにすることができる。2つの圧電薄膜共振器のミクサ回路130の出力は、図2Aに示される2つの周波数ではなく、8つの別個の周波数の信号の組み合わせであることは当業者には理解されよう。これらの8つの周波数は以下の通りである。即ち(1)fPAR−1±fPAR−2、(2)fPAR−1±fSER−2、(3)fSER−1±fPAR−2及び(4)fSER−1±fSER−2。結果として、任意の所与の応用形態において、フィルタ140は、不要な7つの周波数を、要求されるレベルまでフィルタリングする必要があるであろう。任意の所与の共振器の場合に、並列共振周波数fPARは、直列共振周波数fSERよりも低いので、適切に設計されたローパスフィルタ140は、周波数(fPAR−1−fPAR−2)だけを通過させることができる。
【0025】
図3Aは、種々の代表的な実施形態において説明されるような共振器構造300の図である。図3Aでは、一対の共振器300が、第1の共振器111及び第2の共振器121からなり、それらの共振器が側面図で示されており、集積回路処理に適合する手順を用いて製造される。この例では、共振器111、121は圧電薄膜共振器(FBAR)である。共振器111、121は基板305上に製造され、基板は、例えばシリコン305又は他の適切な材料とすることができ、共振器111、121は、力学的な波を利用する音響共振器であるので、それぞれ第1の空洞(キャビティ)311及び第2の空洞312の上に製造される。それらの空洞は、分離されなければ基板305に散逸されることになる振動エネルギーを低減するために、共振器111、121の振動する部分を基板305から分離する。第1の空洞311及び第2の空洞312は、基板305の上側表面306上に形成される。
【0026】
第1の共振器111は、第1の空洞311の上に製造されて、橋渡しされる(架橋される)。第1の共振器111は、第1の下側電極321と、第1の上側電極331と、第1の下側電極321と第1の上側電極331との間に挟まれた第1の圧電構造体341とを含む。第1の圧電構造体341は、第1の下側電極321の上にある第1の下側圧電層351と、第1の下側圧電層351の上にある間隙層361と、間隙層361の上にある第1の上側圧電層371とを含む。第1の上側圧電層371の上には、第1の上側電極331がある。図3Aには、第1の上側電極331の上にある質量負荷層381も示される。
【0027】
第2の共振器121は、第2の空洞312の上に製造されて、橋渡しされる。第2の共振器121は、第2の下側電極322と、第2の上側電極332と、第2の下側電極322と第2の上側電極332との間に挟まれた第2の圧電構造体342とを含む。第2の圧電構造体342は、第2の下側電極322の上にある第2の下側圧電層352と、第2の下側圧電層352の上にある第2の上側圧電層372とを含む。第2の上側圧電層372の上には、第2の上側電極332がある。
【0028】
圧電層351、352、371、372は、窒化アルミニウム(AlN)又は任意の適切な圧電材料を用いて製造され得る。窒化アルミニウムの場合、圧電層351、352、371、372は、適切な処理ステップにおいて、蒸着によって形成され得る。電極321、322、331、332は、例えば、モリブデン又は任意の他の適切な導体とすることができる。理想的には、間隙層361は、圧電層351、352、371、372よりも大きな、剛性係数対温度を有する。そのような場合に、間隙層361の剛性係数対温度を大きくする結果として、第1の周波数温度係数TC1が第2の周波数温度係数TC2よりも大きくなるであろう。モリブデンは、窒化アルミニウムの剛性係数対温度よりも大きな剛性係数対温度を有するので、間隙層361にモリブデンを用いることができる。
【0029】
質量負荷層381、及び間隙層361の厚みを含む他の設計考慮事項、並びに種々の圧電層351、352、371、372の相対的な厚みに起因して、第1の共振器111は、第2の共振器121の第2の共振周波数f02(即ち、第2の周波数)よりも低い第1の共振周波数f01(即ち第1の周波数)を有するように製造され得る。一般に、質量負荷層381の重量を増すほど、共振器の共振周波数が低くなるであろう。また、圧電層(単数または複数)の厚みを増すほど、共振器の共振周波数が低くなるであろう。
【0030】
一般に、質量負荷層381は主として、温度が変化しても変化しない「死荷重」としての役割を果たすので、質量負荷層381の重量が増しても、周波数温度係数は目につくほど変化しないであろう。しかしながら、さらに質量負荷を増していくと、望ましいか、又は望ましくないかは所与の応用形態によるが、第1の共振周波数f01が減少する。質量負荷を増していくほど、ビート周波数fが高くなるであろう。
【0031】
図3Bは、種々の代表的な実施形態において説明されるような別の共振器構造390の図である。図3Bでは、一対の共振器390が、第1の共振器111及び第2の共振器121を含み、それらの共振器が側面図で示されており、図3Aと同様に集積回路処理に適合する手順を用いて製造される。この例では、共振器111、121は圧電薄膜共振器(FBAR)である。共振器111、121は基板305上に製造され、基板305は、例えば、シリコン305又は他の適切な材料とすることができる。図3Bでは、図3Aとは対照的に、共振器111、121は、本明細書で空洞313とも呼ばれる、単一の空洞313の上に製造される。単一の空洞313は、基板305の上側表面306上に形成される。単一の空洞313は、図3Aと同様に、基板305に散逸される振動エネルギーを低減するために、共振器111、121の振動する部分を基板305から分離する。しかしながら、図3Bの構造では、2つの共振器111、121間の振動結合を、図3Aの構造で見出される振動結合よりも大きくすることができる。
【0032】
第1の共振器111は単一の空洞313の上に製造される。第1の共振器111は、第1の下側電極321と、第1の上側電極331と、第1の下側電極321と第1の上側電極331との間に挟まれた第1の圧電構造体341とを含む。第1の圧電構造体341は、第1の下側電極321の上にある第1の下側圧電層351と、第1の下側圧電層351の上にある間隙層361と、間隙層361の上にある第1の上側圧電層371とを含む。第1の上側圧電層371の上には、第1の上側電極331がある。図3Bには、第1の上側電極331の上にある質量負荷層381も示される。
【0033】
第2の共振器121も単一の空洞313の上に製造される。第2の共振器121は、第1の共振器111と共通の第1の下側電極321と、第2の上側電極332と、第1の下側電極321と第2の上側電極332との間に挟まれた第2の圧電構造体342とを含む。第2の圧電構造体342は、第1の下側電極321の上にある第2の下側圧電層352と、第2の下側圧電層352の上にある第2の上側圧電層372とを含む。第2の上側圧電層372の上には、第2の上側電極332がある。構造上の目的のために、図3Bは、下側接続圧電層353及び上側接続圧電層373も示す。
【0034】
図3Aと同様に、圧電層351、352、371、372は、窒化アルミニウム(AlN)又は任意の適切な圧電材料を用いて製造され得る。窒化アルミニウムの場合、圧電層351、352、371、372は、適切な処理ステップにおいて、蒸着によって形成され得る。電極321、331、332は、例えば、モリブデン又は任意の他の適切な導体とすることができる。理想的には、間隙層361は、圧電層351、352、371、372よりも大きな、剛性係数対温度を有する。そのような場合に、間隙層361の剛性係数対温度を大きくする結果として、第1の周波数温度係数TC1が第2の周波数温度係数TC2よりも大きくなるであろう。モリブデンは、窒化アルミニウムの剛性係数対温度よりも大きな剛性係数対温度を有するので、間隙層361にモリブデンを用いることができる。
【0035】
質量負荷層381、及び間隙層361の厚みを含む他の設計考慮事項、並びに種々の圧電層351、352、371、372の相対的な厚みに起因して、第1の共振器111は、第2の共振器121の第2の共振周波数f02(即ち、第2の周波数)よりも低い第1の共振周波数f01(即ち第1の周波数)を有するように製造され得る。
【0036】
図3Cは、種々の代表的な実施形態において説明されるような、さらに別の共振器構造300の図である。図3Cの代替の実施形態では、図3A及び図3Bの共振器構造300、390とは対照的に、第1の共振器111の間隙層361が省かれる。図3Cでは、一対の共振器300が、第1の共振器111及び第2の共振器121を含み、それらの共振器が側面図で示されており、集積回路処理に適合する手順を用いて製造される。この例では、共振器111、121は圧電薄膜共振器(FBAR)である。共振器111、121は基板305上に製造され、基板は、例えばシリコン305又は他の適切な材料とすることができ、共振器111、121は、力学的な波を利用する音響共振器であるので、それぞれ第1の空洞311及び第2の空洞312の上に製造される。それらの空洞は、分離されなければ基板305に散逸されることになる振動エネルギーを低減するために、共振器111、121の振動する部分を基板305から分離する。第1の空洞311及び第2の空洞312は、基板305の上側表面306上に形成される。
【0037】
第1の共振器111は、第1の空洞311の上に製造されて、橋渡しされる。第1の共振器111は、第1の下側電極321と、第1の圧電層351(第1の下側圧電層351)と、第1の上側電極331と、質量負荷層381とを含む。第1の圧電層351は第1の下側電極321の上にあり、第1の上側電極331は第1の圧電層351の上にあり、質量負荷層381は、第1の上側電極331の上にある。
【0038】
第2の共振器121は、第2の空洞312の上に製造されて、橋渡しされる。第2の共振器121は、第2の下側電極322と、第2の圧電層352(第2の下側圧電層352)と、第2の上側電極332とを含む。第2の圧電層352は第2の下側電極322の上にあり、第2の上側電極332は第2の圧電層352の上にある。
【0039】
圧電層351、352は、窒化アルミニウム(AlN)又は任意の適切な圧電材料を用いて製造され得る。窒化アルミニウムの場合、圧電層351、352は、適切な処理ステップにおいて、蒸着によって形成され得る。電極321、322、331、332は、例えば、モリブデン又は任意の他の適切な導体とすることができる。
【0040】
好適には、図3Cの実施形態の質量負荷層381は、温度とともに大きな剛性変化を受ける材料、特に第2の上側電極332よりも大きな剛性変化を受ける材料である。質量負荷層381は酸化物とすることができる。さらに、質量負荷層381は有機材料とすることができ、その有機材料は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PY(有機材料のポリイミド類の1つ)、BCB(ベンゾシクロブテン)又は他の適切な材料とすることができる。質量負荷層381は樹脂とすることもできる。この樹脂は、低誘電率の誘電体樹脂とすることができる。低誘電率材料は一般に、3.5以下の誘電率を有する。適切な低誘電率の誘電体樹脂の一例は、Dow Chemical社のSiLK(R)材料である。SiLK(R)は、温度とともに軟化する有機材料である。そういうものだから、質量負荷層381の剛性係数対温度が大きくなる結果として、第1の周波数温度係数TC1が第2の周波数温度係数TC2よりも大きくなるであろう。付加的な保護層が、質量負荷層381の上を覆うこともできる。
【0041】
質量負荷層381に起因して、第1の共振器111は、第2の共振器121の第2の共振周波数f02(即ち、第2の周波数)よりも低い第1の共振周波数f01(即ち、第1の周波数)を有するように製造され得る。一般に、質量負荷層381の重量を増すほど、共振器の共振周波数が低くなるであろう。また、圧電層(単数または複数)の厚みを増すほど、共振器の共振周波数が低くなるであろう。
【0042】
質量負荷層381の材料が第1の上側電極331及び第2の上側電極332の材料とは異なる、この代表的な実施形態の場合、質量負荷層381の厚み及び材料は、温度の変化とともに質量負荷層381の剛性が変化するのに応じて、周波数温度係数を大幅に変化させることができる。質量負荷が大きくなるほど、ビート周波数fが高くなるであろう。
【0043】
また、代表的な実施形態では、第1の共振器111及び第2の共振器121は、図3Bと類似して1つだけの空洞313の上に構成されることもできる。
【0044】
図3Dは、種々の代表的な実施形態において説明されるような、さらに別の共振器構造300の図である。図3Dの代替の実施形態では、図3Cと同様に、図3A及び図3Bの共振器構造300、390とは対照的に、第1の共振器111の間隙層361が省かれる。図3Dでは、一対の共振器300が、第1の共振器111及び第2の共振器121からなり、それらの共振器が側面図で示されており、集積回路処理に適合する手順を用いて製造される。この例では、共振器111、121は圧電薄膜共振器(FBAR)である。それらの共振器111、121は基板305上に形成され、基板は、例えば、シリコン305又は他の適切な材料とすることができ、共振器111、121は、力学的な波を利用する音響共振器であるので、それぞれ第1の空洞311及び第2の空洞312の上に製造される。それらの空洞は、分離されなければ基板305に散逸されることになる振動エネルギーを低減するために、共振器111、121の振動する部分を基板305から分離する。第1の空洞311及び第2の空洞312は、基板305の上側表面306上に形成される。
【0045】
第1の共振器111は、第1の空洞311の上に製造されて、橋渡しされる。第1の共振器111は、下側質量負荷層382と、第1の下側電極321と、第1の圧電層351(第1の下側圧電層351)と、第1の上側電極331と、オプションの質量負荷層381とを含む。第1の下側電極321は、下側質量負荷層382の上にあり、第1の圧電層351は、第1の下側電極321の上にあり、第1の上側電極331は第1の圧電層351の上にあり、オプションの質量負荷層381は第1の上側電極331の上にある。
【0046】
好適には、図3Dの実施形態の下側質量負荷層382は、温度とともに大きな剛性変化を受ける材料、特に第2の下側電極322よりも大きな剛性変化を受ける材料である。下側質量負荷層382は酸化物とすることができる。さらに、下側質量負荷層382は有機材料とすることができ、その有機材料は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PY(有機材料のポリイミド類の1つ)、BCB(ベンゾシクロブテン)又は他の適切な材料とすることができる。下側質量負荷層382は樹脂とすることもできる。この樹脂は、低誘電率の誘電体樹脂とすることができる。低誘電率材料は一般に、3.5以下の誘電率を有する。適切な低誘電率の誘電体樹脂の一例は、Dow Chemical社のSiLK(R)材料である。SiLK(R)は、温度とともに軟化する有機材料である。そういうものだから、下側質量負荷層382の剛性係数対温度が大きくなる結果として、第1の周波数温度係数TC1が第2の周波数温度係数TC2よりも大きくなるであろう。
【0047】
第2の共振器121は、第2の空洞312の上に製造されて、橋渡しされる。第2の共振器121は、第2の下側電極322と、第2の圧電層352(第2の下側圧電層352)と、第2の上側電極332とを含む。第2の圧電層352は、第2の下側電極322の上にあり、第2の上側電極332は、第2の圧電層352の上にある。
【0048】
圧電層351、352は、窒化アルミニウム(AlN)又は任意の適切な圧電材料を用いて製造され得る。窒化アルミニウムの場合、圧電層351、352は、適切な処理ステップにおいて、蒸着によって形成され得る。電極321、322、331、332は、例えば、モリブデン又は任意の他の適切な導体とすることができる。質量負荷層381は、例えば、モリブデン又は任意の他の適切な材料とすることができる。
【0049】
下側質量負荷層382に起因して、第1の共振器111は、第2の共振器121の第2の共振周波数f02(即ち、第2の周波数)よりも低い第1の共振周波数f01(即ち第1の周波数)を有するように製造され得る。一般に、下側質量負荷層382の重量及び質量負荷層381の重量を増すほど、共振器の共振周波数が低くなるであろう。また、圧電層(単数または複数)の厚みを増すほど、共振器の共振周波数が低くなるであろう。
【0050】
下側質量負荷層382の材料が第2の下側電極322の材料とは異なる、この代表的な実施形態の場合、下側質量負荷層382の厚み及び材料は、温度の変化とともに下側質量負荷層382の剛性が変化するのに応じて、周波数温度係数を大幅に変化させることができる。質量負荷が大きくなるほど、ビート周波数fが高くなるであろう。
【0051】
また、代表的な実施形態では、第1の共振器111及び第2の共振器121は、図3Bと類似して1つだけの空洞313の上に構成されることもできる。
【0052】
図4は、図3A及び図3Bの共振器構造300、390を製造するための方法400の流れ図である。ブロック410では、図3Aの共振器構造300の場合に、空洞311、312が基板305内にエッチングされる。しかしながら、図3Bの他の共振器構造390の場合、基板305内にただ1つの空洞313がエッチングされる。次いで、ブロック410はブロック420に制御を渡す。
【0053】
ブロック420では、図3Aの共振器構造300の場合に、空洞311、312が犠牲材料で満たされる。図3Bの他の共振器構造390の場合、単一の空洞313が犠牲材料で満たされる。犠牲材料は後に除去されることができ、リン珪酸ガラス材料とすることができる。次いで、ブロック420はブロック430に制御を渡す。
【0054】
ブロック430では、図3Aの共振器構造300の場合に、第1の下側電極321及び第2の下側電極322が製造される。図3Bの他の共振器構造390の場合、第1の下側電極321が製造される。図3Aの場合には、第1の下側電極321及び第2の下側電極322、又は図3Bの場合には、第1の下側電極321が、金属堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。一例として、ウェーハ上にモリブデンの層を堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができ、フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いでモリブデンをエッチングすることができる。次いで、ブロック430はブロック440に制御を渡す。
【0055】
ブロック440では、図3Aの共振器構造300の場合に、下側圧電層351、352(それらの層は同時に堆積される同じ層とすることができ、本明細書では、パターニング前にまとめて下側ウェーハ圧電層350と呼ばれる)が下側電極321、322の上に堆積される。図3Bの他の共振器構造390の場合、下側圧電層351、352が第1の下側電極321の上に堆積される。再び、良く知られたフォトリソグラフィのステップを用いて、第1の下側圧電層351及び第2の下側圧電層352が画定されて、形成される。一例として、ウェーハ上に窒化アルミニウムの層を堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができ、そのフォトレジストを露光して、フォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像して、次いで窒化アルミニウムをエッチングすることができる。次いで、ブロック440はブロック450に制御を渡す。
【0056】
ブロック450では、間隙層361が、第1の共振器111の第1の下側圧電層351の上に加えられる。間隙層361は、金属堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。一例として、ウェーハ上にモリブデンの層を堆積し、その後、基板305上にフォトレジストをスピニングすることができる。フォトレジストを露光して、フォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いでモリブデンをエッチングすることができる。次いで、ブロック450はブロック460に制御を渡す。
【0057】
ブロック460では、上側圧電層371、372(それらの層は同時に堆積される同じ層とすることができ、本明細書では、パターニング前にまとめて上側ウェーハ圧電層370と呼ぶことができる)が、第1の共振器111における間隙層361の上に、かつ第2の共振器121における第2の下側圧電層352の上に堆積される。再び、良く知られたフォトリソグラフィのステップを用いて、第1の上側圧電層371及び第2の上側圧電層372が画定されて、形成される。一例として、ウェーハ上に窒化アルミニウムの層を堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができ、フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いで窒化アルミニウムをエッチングすることができる。次いで、ブロック460はブロック470に制御を渡す。
【0058】
ブロック470では、第1の上側電極331及び第2の上側電極332が製造される。第1の上側電極331及び第2の上側電極332は、金属堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。一例として、上側圧電層371、372の上にモリブデンの層を堆積し、その後、堆積されたモリブデン上にフォトレジストをスピニングすることができる。フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いでモリブデンをエッチングして、第1の上側電極331及び第2の上側電極332を形成することができる。次いで、ブロック470はブロック480に制御を渡す。
【0059】
ブロック480では、質量負荷層381が、第1の共振器111の第1の上側電極331の上に加えられる。質量負荷層381は、金属堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。一例として、ウェーハ上にモリブデン又は他の材料の層を堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができる。フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いでモリブデンをエッチングして、第1の上側電極331の上に質量負荷層381を残すことができる。次いで、ブロック480はブロック485に制御を渡す。
【0060】
ブロック485では、第1の上側電極331の厚みの一部及び第2の上側電極332の厚みの一部が除去されるか、又は第2の上側電極332の厚みの一部及び質量負荷層381の厚みの一部が除去される。代わりに、必要に応じて、ブロック480の処理の前に、ブロック485の処理を行うことができる。次いで、ブロック485はブロック490に制御を渡す。
【0061】
ブロック490では、第2の圧電層352の厚みを維持しながら第1の圧電層351の厚みの一部が除去されるか、第1の圧電層351の厚みを維持しながら第2の圧電層352の厚みの一部が除去されるか、第2の上側電極332の厚みを維持しながら第1の上側電極331の厚みの一部が除去されるか、第1の上側電極331の厚みを維持しながら第2の上側電極332の厚みの一部が除去されるか、第2の上側電極332の厚みを維持しながら質量負荷層381の厚みの一部が除去されるか、又は質量負荷層381の厚みを維持しながら第2の上側電極332の厚みの一部が除去される。代わりに、必要に応じて、ブロック470の処理の前に、又はブロック480の処理の前に、ブロック490の処理を行うことができる。次いで、ブロック490はブロック495に制御を渡す。
【0062】
ブロック495では、図3Aの共振器構造300の場合に、空洞311、312内に以前に堆積された犠牲材料が除去される。図3Bの他の共振器構造390の場合、単一の空洞313内に以前に堆積された犠牲材料が除去される。犠牲材料がガラスである場合には、フッ化水素酸を用いて、必要に応じて、空洞311、312、又は単一の空洞313から犠牲材料をエッチングすることができる。次いで、ブロック495は、そのプロセスを終了する。
【0063】
一例として、第1の発振器110は第1の共振器111を用いて、2.3GHzの第1の周波数f01において第1の発振信号115を生成することができ、第2の発振器120は第2の共振器121を用いて、2.0GHzの第2の周波数f02において第2の発振信号125を生成することができる。その際、ビート周波数fは300MHzになるであろう。
【0064】
当業者には知られているように、他の代表的な実施形態では、説明されたばかりの構造に類似した構造をもたらすために、上述のプロセスに対して種々の変更を加えることができる。詳細には、上記のプロセスは、図3Aの第1の共振器111だけが基板305上に製造されるように修正され得る。こうした場合、上記の教示を用いて、第1の周波数f01及び周波数温度係数Tの両方を修正することができる。間隙層361が、第1の下側圧電層351及び第1の上側圧電層371よりも小さな剛性係数対温度を有する場合には、第1の周波数温度係数TC1は、間隙層361が存在しない場合よりも小さくなるであろう。それとは関係なく、間隙層361のパラメータを調整することによって、第1の周波数温度係数TC1を調整することができる。さらに、イオンミリングステップとともに追加のフォトリソグラフィのステップを含めることによって、第1の周波数f01及び第2の周波数f02の一方または双方を修正することができる。また、ある特定のステップ、例えば(1)ブロック450のステップ(間隙層を加えるステップ)及び(2)ブロック460のステップ(上側圧電層を加えるステップ)を必要に応じて除去することにより、図3Cの代表的な実施形態を構成することができる。
【0065】
図5Aは、図3A及び図3Bの共振器構造300、390の回路周波数温度係数TCC対上側共振器層395の除去される厚みのグラフである。図中では具体的に特定されないが、本明細書では、質量負荷層381及び第2の上側電極332が、まとめて上側共振器層395と呼ばれる。図5Bは、図3Aの共振器構造300及び図3Bの他の共振器構造390のビート周波数f対除去される上側共振器層395の厚みのグラフである。図5A及び図5Bでは、上側共振器層395の材料は、質量負荷層381及び第2の上側電極332を等しい量だけ除去する、ウェーハにわたる全体的除去プロセスを用いて除去され、その除去プロセスはイオンミリングとすることができる。全体的イオンミリングは、第1の共振器111の第1の共振周波数f01及び第2の共振器121の第2の共振周波数f02、並びに第1の共振器111の第1の周波数温度係数TC1及び第2の共振器121の第2の周波数温度係数TC2の両方を調整する。その際、全体的イオンミリングは、振動性回路100の結果として生じるビート周波数f、及びビート周波数fの最終的な温度ドリフト(回路周波数温度係数TCC)の両方を調整する。かくして、全体的イオンミリングを用いて、振動性回路100のビート周波数f、ビート周波数fの最終的な温度ドリフト(回路周波数温度係数TCC)の両方ではなく、いずれかを調整対象にすることができる。また、全体的イオンミリングは、質量負荷層381を加える前に、第1の上側電極331及び第2の上側電極332上で実行されることもできる。
【0066】
図6Aは、図3A及び図3Bの共振器構造300、390の回路周波数温度係数TCC対質量負荷層381の除去される厚みのグラフである。図6Bは、図3A及び図3Bの共振器構造300、390のビート周波数f対質量負荷層381の除去される厚みのグラフである。図6A及び図6Bでは、厚み除去プロセスは、質量負荷層381から材料を除去する差別的イオンミリングプロセスと呼ばれるが、第2の上側電極332から材料を除去するためにも使用され得る。したがって、差別的イオンミリングは、第1の共振器111の第1の共振周波数f01又は第2の共振器121の第2の共振周波数f02のいずれか、及び第1の共振器111の第1の周波数温度係数TC1又は第2の共振器121の第2の周波数温度係数TC2のいずれかを調整することができる。その際、差別的イオンミリングは、振動性回路100の結果として生じるビート周波数f、及びビート周波数fの最終的な温度ドリフト(回路周波数温度係数TCC)の両方を調整する。かくして、差別的イオンミリングを用いて、共振回路100のビート周波数f、ビート周波数fの最終的な温度ドリフト(回路周波数温度係数TCC)の両方ではなく、いずれかを調整対象にすることができる。また、差別的イオンミリングプロセスを用いて、第2の圧電層352の厚みを維持しながら第1の圧電層351の厚みの一部を除去するか、第1の圧電層351の厚みを維持しながら第2の圧電層352の厚みの一部を除去するか、第2の上側電極332の厚みを維持しながら第1の上側電極331の厚みの一部を除去するか、第1の上側電極331の厚みを維持しながら第2の上側電極332の厚みの一部を除去するか、第2の上側電極332の厚みを維持しながら質量負荷層381の厚みの一部を除去するか、又は、質量負荷層381の厚みを維持しながら第2の上側電極332の厚みの一部を除去することもできる。
【0067】
図6A及び図6Bから、全体的イオンミリングプロセスの対象を決める前または後において、最終的なビート周波数f又は最終的な回路周波数温度係数TCCのいずれかを調整対象にするために、差別的イオンミリングを実施できることは明らかである。そういうものだから、これらの2つのプロセス(全体的イオンミリング及び差別的イオンミリング)を組み合わせることにより、所望のビート周波数f及び回路周波数温度係数TCC(即ち、ビート周波数fの周波数温度係数)の両方を調整対象にすることができる。
【0068】
代表的な例では、第1の圧電構造体341の中央に50nm(500オングストローム)のモリブデンを用いて、165MHz及び約0ppm/℃の回路周波数温度係数TCCのビート周波数fを生成することができる。共振器構造300のための代表的な値は以下の通りである。(1)第1の下側電極321、第2の下側電極322、第1の上側電極331及び第2の上側電極332はそれぞれ150nm(1500オングストローム)のモリブデンであり、(2)第1の下側圧電層351、第2の下側圧電層352、第1の上側圧電層371及び第2の上側圧電層372はそれぞれ1.1μm(1.1ミクロン)の窒化アルミニウムであり、及び(3)間隙層361及び質量負荷層381はそれぞれ100nm(1000オングストローム)のモリブデンである。
【0069】
図7は、図3Cの共振器構造300を製造するための方法700の流れ図である。適切に修正することにより、このプロセスを用いて、図3Cと同様であるが、図3Bに示されるような1つの空洞313だけを有する構造を形成することもできる。ブロック710では、空洞311、312又は単一の空洞313が基板305内にエッチングされる。次いで、ブロック710は、ブロック720に制御を渡す。
【0070】
ブロック720では、空洞311、312又は単一の空洞313が犠牲材料で満たされる。犠牲材料は後に除去されることができ、リン珪酸ガラス材料とするすることができる。次いで、ブロック720はブロック730に制御を渡す。
【0071】
ブロック730では、第1の下側電極321及び第2の下側電極322が製造されるか、又は一体となった第1の下側電極321が製造される。第1の下側電極321及び第2の下側電極322、又は一体となった第1の下側電極321は、金属堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。一例として、ウェーハ上にモリブデンの層を堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができ、フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像して、次いでモリブデンをエッチングすることができる。次いで、ブロック730はブロック740に制御を渡す。
【0072】
ブロック740では、第1の圧電層351及び第2の圧電層352(それらの層は同時に堆積される同じ層とすることができ、本明細書では、パターニング前にまとめて下側ウェーハ圧電層350と呼ばれる)が第1の電極321及び第2の電極322の上に、又は一体となった下側電極321の上に堆積される。再び、良く知られたフォトリソグラフィのステップを用いて、第1の圧電層351及び第2の圧電層352が画定されて、形成される。一例として、ウェーハ上に窒化アルミニウムの層を堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができ、フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像して、次いで窒化アルミニウムをエッチングすることができる。次いで、ブロック740はブロック770に制御を渡す。
【0073】
ブロック770では、第1の上側電極331及び第2の上側電極332が製造される。第1の上側電極331及び第2の上側電極332は、金属堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。一例として、第1の圧電層351及び第2の圧電層352の上にモリブデンの層を堆積し、その後、堆積されたモリブデンの上にフォトレジストをスピニングすることができる。フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いでモリブデンをエッチングして、第1の上側電極331及び第2の上側電極332を形成することができる。次いで、ブロック770は、ブロック780に制御を渡す。
【0074】
ブロック780では、質量負荷層381が、第1の共振器111の第1の上側電極331の上に加えられる。質量負荷層381は、堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。この実施形態における質量負荷層381の剛性の温度係数は、第2の上側電極332とは異なる。前述されたように、質量負荷層381のために種々のオプションが存在する。質量負荷層381が有機材料又は樹脂であると仮定する。ウェーハ上に有機材料又は樹脂を堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができる。フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いでその材料をエッチングして、第1の上側電極331の上に質量負荷層381を残すことができる。次いで、ブロック780はブロック785に制御を渡す。
【0075】
ブロック785では、第1の上側電極331の厚みの一部及び第2の上側電極332の厚みの一部が除去されるか、又は第2の上側電極332の厚みの一部及び質量負荷層381の厚みの一部が除去される。上記の手順の代わりに、必要に応じて、ブロック780の処理の前に、ブロック785の処理を行うことができる。次いで、ブロック785はブロック790に制御を渡す。
【0076】
ブロック790では、第2の圧電層352の厚みを維持しながら第1の圧電層351の厚みの一部が除去されるか、第1の圧電層351の厚みを維持しながら第2の圧電層352の厚みの一部が除去されるか、第2の上側電極332の厚みを維持しながら第1の上側電極331の厚みの一部が除去されるか、第1の上側電極331の厚みを維持しながら第2の上側電極332の厚みの一部が除去されるか、第2の上側電極332の厚みを維持しながら質量負荷層381の厚みの一部が除去されるか、又は、質量負荷層381の厚みを維持しながら第2の上側電極332の厚みの一部が除去される。代わりに、必要に応じて、ブロック770の処理の前に、又はブロック780の処理の前に、又はブロック785の処理の前に、ブロック790の処理を行うことができる。次いで、ブロック790はブロック795に制御を渡す。
【0077】
ブロック795では、空洞311、312又は単一の空洞313内に以前に堆積された犠牲材料が除去される。犠牲材料がガラスである場合には、フッ化水素酸を用いて、必要に応じて、空洞311、312又は単一の空洞313から犠牲材料をエッチングすることができる。次いで、ブロック795はそのプロセスを終了する。
【0078】
上記方法の代替の実施形態では、質量負荷層381が、第1の上側電極331及び第2の上側電極332を加えるステップの前に、第1の共振器111の第1の圧電層351の上に加えられる。言い換えると、ブロック770及び780の順序が入れ替えられる。
【0079】
図8は、図3Dの共振器構造300を製造するための方法800の流れ図である。適切に修正することにより、このプロセスを用いて、図3Dと同様であるが、図3Bに示されるような1つの空洞313だけを有する構造を形成することもできる。ブロック810では、空洞311、312又は単一の空洞313が基板305内にエッチングされる。次いで、ブロック810は、ブロック820に制御を渡す。
【0080】
ブロック820では、空洞311、312又は単一の空洞313が犠牲材料で満たされる。犠牲材料は後に除去することができ、リン珪酸ガラス材料とすることができる。その後、ブロック820はブロック825に制御を渡す。
【0081】
ブロック825では、下側質量負荷層382が製造される。下側質量負荷層382は、堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。この実施形態における下側質量負荷層382の剛性の温度係数は、第2の下側電極322、又は単一の空洞313の場合の一体となった下側電極321とは異なる。前述されたように、下側質量負荷層382のために種々のオプションが存在する。下側質量負荷層382が有機材料又は樹脂であると仮定する。ウェーハ上に有機材料又は樹脂を堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができる。フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いでその材料をエッチングして、第1の上側電極331の上に下側質量負荷層382を残すことができる。次いで、ブロック825はブロック830に制御を渡す。
【0082】
ブロック830では、第1の下側電極321及び第2の下側電極322が製造されるか、又は一体となった第1の下側電極321が製造される。第1の下側電極321及び第2の下側電極322、又は一体となった第1の下側電極321は、金属堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。一例として、ウェーハ上にモリブデンの層を堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができ、フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いでモリブデンをエッチングすることができる。次いで、ブロック830はブロック840に制御を渡す。
【0083】
ブロック840では、第1の圧電層351及び第2の圧電層352(それらの層は同時に堆積される同じ層とすることができ、本明細書では、パターニング前にまとめて下側ウェーハ圧電層350と呼ばれる)が第1の電極321及び第2の電極322の上に、又は一体となった下側電極321の上に堆積される。再び、良く知られたフォトリソグラフィのステップを用いて、第1の圧電層351及び第2の圧電層352が画定されて、形成される。一例として、ウェーハ上に窒化アルミニウムの層を堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができ、フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いで窒化アルミニウムをエッチングすることができる。次いで、ブロック840はブロック870に制御を渡す。
【0084】
ブロック870では、第1の上側電極331及び第2の上側電極332が製造される。第1の上側電極331及び第2の上側電極332は、金属堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。一例として、第1の圧電層351及び第2の圧電層352上にモリブデンの層を堆積し、その後、堆積されたモリブデン上にフォトレジストをスピニングすることができる。フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いでモリブデンをエッチングして、第1の上側電極331及び第2の上側電極332を形成することができる。次いで、ブロック870はブロック880に制御を渡す。
【0085】
ブロック880では、質量負荷層381が、第1の共振器111の第1の上側電極331の上に加えられる。質量負荷層381は、堆積及びフォトリソグラフィのような良く知られた技術を用いて製造され得る。例えば、ウェーハ上にモリブデンを堆積し、その後、そのウェーハ上にフォトレジストをスピニングすることができる。フォトレジストを露光して、そのフォトレジストを適切にパターニングすることができ、その後、フォトレジストを現像することができ、次いでモリブデンをエッチングして、第1の上側電極331の上に質量負荷層381を残すことができる。次いで、ブロック880はブロック885に制御を渡す。
【0086】
ブロック885では、第1の上側電極331の厚みの一部及び第2の上側電極332の厚みの一部が除去されるか、又は第2の上側電極332の厚みの一部及び質量負荷層381の厚みの一部が除去される。代わりに、必要に応じて、ブロック880の処理の前に、ブロック885の処理を行うことができる。次いで、ブロック885はブロック890に制御を渡す。
【0087】
ブロック890では、第2の圧電層352の厚みを維持しながら第1の圧電層351の厚みの一部が除去されるか、第1の圧電層351の厚みを維持しながら第2の圧電層352の厚みの一部が除去されるか、第2の上側電極332の厚みを維持しながら第1の上側電極331の厚みの一部が除去されるか、第1の上側電極331の厚みを維持しながら第2の上側電極332の厚みの一部が除去されるか、第2の上側電極332の厚みを維持しながら質量負荷層381の厚みの一部が除去されるか、又は質量負荷層381の厚みを維持しながら第2の上側電極332の厚みの一部が除去される。代わりに、必要に応じて、ブロック870の処理の前に、又はブロック880の処理の前に、又はブロック885の処理の前に、ブロック890の処理を行うことができる。次いで、ブロック890はブロック895に制御を渡す。
【0088】
ブロック895では、空洞311、312又は単一の空洞313内に以前に堆積された犠牲材料が除去される。犠牲材料がガラスである場合には、フッ化水素酸を用いて、必要に応じて、空洞311、312又は単一の空洞313から犠牲材料をエッチングすることができる。次いで、ブロック895はそのプロセスを終了する。
【0089】
上記方法の代替の実施形態では、下側質量負荷層382が、第1の上側電極331及び第2の上側電極332を加えるステップの後に、第1の共振器111の第1の圧電層351の下に加えられる。言い換えると、ブロック825及び830の順序が入れ替えられる。
【0090】
図9は、図1の振動性回路100の一部を製造するための方法900の流れ図である。ブロック910では、第1の周波数f01において第1の発振信号115を生成するように構成され、第1の周波数温度係数TC1を有する第1の発振器110が製造される。次いで、ブロック910はブロック920に制御を渡す。
【0091】
ブロック920では、第2の周波数f02において第2の発振信号125を生成するように構成され、第2の周波数温度係数TC2を有する第2の発振器120が製造され、この場合、第2の周波数f02は第1の周波数f01よりも高く、第2の周波数温度係数TC2は第1の周波数温度係数TC1よりも小さく、第2の周波数f02に第2の周波数温度係数TC2を掛けたものと、第1の周波数f01に第1の周波数温度係数TC1を掛けたものとの差は0に等しい。次いで、ブロック920はブロック930に制御を渡す。
【0092】
ブロック930では、第1の発振器110の出力及び第2の発振器120の出力が互いに接続される。次いで、ブロック930はそのプロセスを終了する。
【0093】
第1の下側圧電層351及び第2の下側圧電層352の圧電材料に、窒化アルミニウム以外の種々の材料を用いることができる。また、下側電極321、322に、間隙層361に、及び上側電極331、332に、モリブデン以外の材料を用いることもできる。さらに、種々の他の構造も実現することができる。
【0094】
代表的な実施形態では、一対の共振器111、121を用いる発振器回路110、120は、その共振周波数f01、f02及び周波数ドリフト特性TC1、TC2を適切に調整して、非常に小さな周波数ドリフト対温度特性(T)を有する振動性回路100となることができる。集積回路技術を用いて、適切な一対の共振器111、121を製造することができ、同等の周波数ドリフト特性を得るために、これまでに用いられてきた水晶振動子よりもコスト及びサイズにおいて結果的に有利である。さらに、目標とされる共振周波数及び周波数温度係数で、個々の共振器を構成することもできる。
【0095】
代表的な実施形態では、異なる速度で温度とともにドリフトする2つの共振器111、121を発振器回路110、120に使用して、携帯電話、ラップトップコンピュータ及び他の同等の装置の標準的な温度範囲全体にわたって、その正味の温度ドリフトTCCが、0ではないにしても、非常に小さなビート周波数fを生成する。それらの共振器は、圧電薄膜共振器(FBAR)として製造されることができ、他の集積回路と組み合わされて、結果として約0.2ミリメートル(mm)の厚み及び1×1mm未満の面積を有することができるシリコンチップとなることができる。さらに、その出力信号は、水晶共振器に比べて相対的にスプリアスモードを生じないようにすることができ、はるかに高い周波数にすることができる。結果として、必要とされる「きれいな」高周波トーンを作り出す際に消費される電力が少なくなる。
【0096】
本明細書において詳細に説明されてきた代表的な実施形態は、一例として提示されており、限定するために提示されていない。添付の特許請求の範囲内に留まりながら、説明された実施形態の形態及び細部において種々の変更を行い、同等の実施形態を生み出すことができることは当業者には理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】種々の代表的な実施形態において説明されるような振動性回路のブロック図である。
【図2A】図1のミクサ信号の成分のためのミクサ出力対周波数のグラフである。
【図2B】図1のフィルタに関する伝達関数対周波数のグラフである。
【図2C】図1の第1の共振回路及び第2の共振回路に関する周波数温度係数のグラフである。
【図2D】圧電薄膜共振器(FBAR)の等価回路の図である。
【図3A】種々の代表的な実施形態において説明されるような共振器構造の図である。
【図3B】種々の代表的な実施形態において説明記述されるような別の共振器構造の図である。
【図3C】種々の代表的な実施形態において説明されるようなさらに別の共振器構造の図である。
【図3D】種々の代表的な実施形態において説明されるようなさらにまた別の共振器構造の図である。
【図4】図3A及び図3Bの共振器構造を製造するための方法の流れ図である。
【図5A】図3Aの共振器構造のための、回路周波数温度係数対除去される上側ウェーハ圧電層の厚みのグラフである。
【図5B】図3Aの共振器構造のための、ビート周波数対除去される上側ウェーハ圧電層の厚みのグラフである。
【図6A】図3Aの共振器構造のための、回路周波数温度係数対第1の共振器から除去される質量負荷のグラフである。
【図6B】図3Aの共振器構造のための、ビート周波数対第1の共振器から除去される質量負荷のグラフである。
【図7】図3Cの共振器構造を製造するための方法の流れ図である。
【図8】図3Dの共振器構造を製造するための方法の流れ図である。
【図9】図1の振動性回路の一部を製造するための方法の流れ図である。
【符号の説明】
【0098】
100 振動性回路
110、120 発振器
111、121 共振器
112、122 増幅器
130 ミクサ回路
135 ミクサ信号
140 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数(f01)において第1の発振信号(115)を生成するように構成され、第1の周波数温度係数(TC1)を有する第1の発振器(110)と、
第2の周波数(f02)において第2の発振信号(125)を生成するように構成され、第2の周波数温度係数(TC2)を有する第2の発振器(120)であって、前記第2の周波数(f02)が前記第1の周波数(f01)よりも高く、前記第2の周波数温度係数(TC2)が前記第1の周波数温度係数(TC1)よりも小さい、第2の発振器と、
前記第1の発振器(110)から前記第1の発振信号(115)を受信するように構成され、前記第2の発振器(120)から前記第2の発振信号(125)を受信するように構成され、且つ前記第1の発振信号(115)及び前記第2の発振信号(125)からミクサ信号(135)を生成するように構成されたミクサ回路(130)とを含み、
前記ミクサ信号(135)が、ビート周波数(f)における信号成分(136)を含み、前記ビート周波数(f)が前記第2の周波数(f02)と前記第1の周波数(f01)との差に等しい、振動性回路(100)。
【請求項2】
前記ミクサ回路(130)から前記ミクサ信号(135)を受信し、ビート周波数(f)信号を通過させて、前記第2の周波数(f02)及び前記第1の周波数(f01)の和に等しい周波数(f)において信号を阻止するように構成されたフィルタ(140)をさらに含む、請求項1に記載の振動性回路(100)。
【請求項3】
前記第1の発振器(110)が第1の共振器(111)を含み、前記第2の発振器(120)が第2の共振器(121)を含み、前記第1の共振器(111)の共振周波数が前記第1の周波数(f01)であり、前記第2の共振器(121)の共振周波数が前記第2の周波数(f02)である、請求項1に記載の振動性回路(100)。
【請求項4】
前記第1の共振器(111)及び前記第2の共振器(121)が同じ半導体基板(305)上に製造される、請求項3に記載の振動性回路(100)。
【請求項5】
前記第1の共振器(111)及び前記第2の共振器(121)が、圧電薄膜共振器及び表面弾性波共振器から成るグループから選択される、請求項4に記載の振動性回路(100)。
【請求項6】
振動性回路(100)を製造するための方法(900)であって、
第1の周波数(f01)において第1の発振信号(115)を生成するように構成され、第1の周波数温度係数(TC1)を有する第1の発振器(110)を製造し、
第2の周波数(f02)において第2の発振信号(125)を生成するように構成され、第2の周波数温度係数(TC2)を有する第2の発振器(120)を製造し、前記第2の周波数(f02)が前記第1の周波数(f01)よりも高く、前記第2の周波数温度係数(TC2)が前記第1の周波数温度係数(TC1)よりも小さく、前記第2の周波数(f02)に前記第2の周波数温度係数(TC2)を掛けたものと、前記第1の周波数(f01)に前記第1の周波数温度係数(TC1)を掛けたものとの差が0に等しく、
前記第1の発振器(110)の出力及び前記第2の発振器(120)の出力を互いに接続することを含む、振動性回路を製造するための方法(900)。
【請求項7】
前記第1の発振器(110)が第1の共振器(111)を含み、前記第2の発振器(120)が第2の共振器(121)を含み、前記第1の共振器(111)の共振周波数が前記第1の周波数(f01)であり、前記第2の共振器(121)の共振周波数が前記第2の周波数(f02)である、請求項6に記載の方法(900)。
【請求項8】
前記第1の共振器(111)及び前記第2の共振器(121)が同じ半導体基板(305)上に製造される、請求項6に記載の方法(900)。
【請求項9】
前記第1の共振器(111)及び前記第2の共振器(121)が圧電薄膜共振器である、請求項8に記載の方法(900)。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−82214(P2007−82214A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243551(P2006−243551)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】5301 Stevens Creek Boulevard Santa Clara California U.S.A.
【Fターム(参考)】