説明

2次空気供給装置

【課題】 経時的な変化があっても、2次空気を十分に供給することによりエンジンの排気浄化機能を十分に作用させる。
【解決手段】 エンジン制御用コンピュータは、エアポンプの端子電圧値を検知するステップ(S100)と、経時的な変化によりエアポンプをバッテリとを接続するワイヤハーネスの内部抵抗が上昇してエアポンプの端子電圧値が予め定められた電圧しきい値を下回ると(S200にてYES)、オルタネータに「発電Hi指令」信号を出力するステップ(S300)とを含むプログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気系の排気浄化技術に関し、特に、排気浄化装置の上流に2次空気を供給する2次空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気浄化装置として、排気系に触媒を配置し、排気ガス中のCO、HC、NOx成分等を浄化する装置が知られている。さらに、排気管に接続された開閉弁を有する2次空気供給通路を介して排気管内に2次空気を供給して酸素濃度を高めることで、排気ガス中のHC、COを2次燃焼させることで排気ガスの浄化を促進する技術が知られている。特に、暖機が完了して触媒が十分な転換作用を開始するまでは所望の排気浄化機能が発揮されず、特に冷間始動時のように燃焼状態が不安定で燃料が多めに供給される条件下においては排気組成が悪化しがちである。このような対策として、2次空気を供給することが有効である。
【0003】
さらに詳しくは、内燃機関の始動と同時または始動から所定時間経過後に、制御装置によりエアポンプ用リレーがON状態に制御され、バッテリからエアポンプに電力が供給されて、エアポンプが駆動される。エアポンプから吐出された2次空気は、空気導入管を介して排気管に導入される。排気管内に導入された加熱された2次空気は、排気ガスとともに触媒装置に導入される。触媒装置では、導入された2次空気による燃焼により触媒の温度上昇が促進されて、触媒が反応温度に速やかに達し活性化する。
【0004】
特開平6−129244号公報(特許文献1)は、2次空気導入装置の主としてエアポンプ側の異常発生を機関始動の当初から確実に診断する診断装置を開示する。この診断装置は、内燃機関の排気通路に2次空気を圧送する電動エアポンプを備えた2次空気導入装置において、エアポンプの回転数を検出する回転数検出手段と、エアポンプ回転数の基準値を記憶した基準値記憶手段と、エアポンプの検出回転数と基準回転数とを比較する比較手段と、この比較結果に基づき、検出回転数が基準回転数よりも低下したときに異常と判定する異常判定手段とを備える。
【0005】
この診断装置によると、エアポンプの吐出量はその回転数と強い相関があり、エアポンプやこれを駆動する電動機の劣化、潤滑不良、固着、配線劣化等により回転数が低下すれば2次空気吐出量も低下する。したがって、エアポンプ回転数を監視してこれが2次空気流量として必要な量に相当する基準値よりも低下したときには直ちに異常発生と診断することができる。
【0006】
特開平7−54647号公報(特許文献2)は、内燃機関の出力の低減と有害な排気ガスの排出を抑える内燃機関の排気管内空気導入制御装置を開示する。この排気管内空気導入制御装置は、エアポンプと排気管とを連通する空気導入管の経路中に加熱器を設け、加熱された2次空気を排気管内に導入する内燃機関の排気管内空気導入制御装置において、エアポンプおよび加熱器に電力を供給する電源と、内燃機関の出力により発電して電源を充電する発電機と、エアポンプと加熱器との少なくとも一方が作動している間発電機の発電を停止させ、電源の端子電圧が所定値以下の場合に発電機の発電を作動させる制御装置とを備える。
【0007】
この排気管内空気導入制御装置によると、電源の端子電圧が所定値以下の場合に発電機の発電が作動されて、発電機により電源が充電される。そこで、電源の端子電圧は常に所定値以上に維持され、エアポンプと加熱器とには電源から十分な電力が供給され、エアポンプおよび加熱器の性能低下が抑えられる。
【特許文献1】特開平6−129244号公報
【特許文献2】特開平7−54647号公報(特許第2842764号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された診断装置は、2次空気導入装置に異常が発生したことを検知するものに過ぎない。特許文献2に開示された制御装置は、エアポンプと加熱器との少なくとも一方が作動している間発電機の発電を停止させ、電源の端子電圧が所定値以下の場合に発電機の発電を作動されるものに過ぎない。エアポンプや加熱器の電源であるバッテリの充電量が不足した場合にはバッテリの端子電圧が所定値以下となると発電機の発電を作動させるようにしている。
【0009】
一方、電源であるバッテリとエアポンプとはワイヤハーネスにより接続され、バッテリから電力が供給される。このワイヤハーネスは、経時的な変化によりその内部抵抗値が大きくなる場合がある。内部抵抗値が大きくなるとバッテリの端子電圧は正常値を示していても、ワイヤハーネスで電圧降下が発生して、エアポンプの端子電圧が低下して、2次空気を所望の流量だけ供給することができなくなる可能性がある。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、耐久消費財である自動車における経時的な変化があっても、2次空気の供給により排気浄化機能を十分に作用させることができる2次空気供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る2次空気供給装置は、内燃機関の排気系の排気浄化装置より上流側に2次空気を供給する。この2次空気供給装置は、電力により作動され、2次空気を供給するための供給手段と、電力を供給する蓄電機構と、内燃機関の出力により発電して蓄電機構を充電する発電機と、供給手段に供給される電力値を検知するための検知手段と、検知された電力値が低下すると、発電電力量を上昇させるように発電機を制御するための制御手段とを含む。
【0012】
第1の発明によると、2次空気は、供給手段として一般的に用いられる電動エアポンプにより排気浄化装置より上流側に供給される。蓄電機構から電力が供給されて電動エアポンプは作動するが、電動エアポンプに供給された電力値が低下すると、流量が低下して、2次空気の供給による排気浄化機能の十分な作用を実現できない。たとえば、蓄電機構と電動エアポンプとを接続するワイヤハーネスの内部抵抗値が大きくなり、蓄電機構は所望の状態であっても、電動エアポンプの電力値が低下する。このため、電動エアポンプに供給された電力値を検知(たとえば電圧値を検知)して、電動エアポンプの端子電圧値が低下すると、蓄電機構を充電する発電機にの発電電力量を上昇させる。これにより、発電機からの出力電圧値が上昇して、蓄電機構の電圧値が上昇する。その結果、経時的にワイヤハーネスの内部抵抗が大きくなり電圧降下が大きくなっても、供給元の蓄電機構の電圧が上昇するので、電動エアポンプの端子電圧値は所望の電圧値を確保でき、所望の流量を確保できる。その結果、耐久消費財である自動車における経時的な変化があっても、2次空気の供給により排気浄化機能を十分に作用させることができる2次空気供給装置を提供することができる。
【0013】
第2の発明に係る2次空気供給装置においては、第1の発明の構成に加えて、制御手段は、検知された電力値が予め定められた値を下回ると、発電電力量を上昇させるように発電機を制御するための手段を含む。
【0014】
第2の発明によると、供給手段として一般的に用いられる電動エアポンプの端子電圧値を検知する。供給された電力値が予め定められた値(この値は、2次空気の供給による排気浄化機能の十分な作用を実現するために必要最低限の流量を供給するために電動エアポンプに供給される電力値)を下回ると、所望の流量を供給できなくなる。これを避けるために、発電機の発電電力量を上昇させて、供給された電力値が予め定められた値以上になるように発電機を制御することができる。
【0015】
第3の発明に係る2次空気供給装置においては、第1の発明の構成に加えて、供給手段は、エアポンプであって、検知手段は、エアポンプの電力供給端子における電圧値を検知するための手段を含み、制御手段は、検知された電圧値が予め定められた値を下回ると、発電電力量を上昇させるように発電機を制御するための手段を含む。
【0016】
第3の発明によると、エアポンプの端子電圧値を検知して、その検知された電圧値が、2次空気の供給による排気浄化機能の十分な作用を実現するために必要最低限の流量を供給するためにエアポンプに必要な電圧値を下回ると、所望の流量を供給できなくなる。これを避けるために、発電機の発電電力量を上昇させて、供給された電圧値が予め定められた値以上になるように発電機を制御することができる。
【0017】
第4の発明に係る2次空気供給装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、発電機は、オルタネータであって、制御手段は、オルタネータの駆動回路に発電電力量を上昇させる指令信号を出力するための手段を含む。
【0018】
第4の発明によると、制御手段は、オルタネータの駆動回路に発電電圧値を指令する。制御手段は、通常の状態においては発電電圧値がたとえば12Vになるような指令信号を出力し、発電電力量を上昇させるときには、発電電圧値がたとえば14.5Vになるような指令信号を出力する。この指令信号を受信した駆動回路においては、レギュレータによりオルタネータのロータコイルの励磁電流が調整されて、発電電圧値が上昇する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
図1に、本発明の実施の形態に係る2次空気供給装置を含む、エンジンおよびその周辺機器(以下、エンジンシステムという)の全体構成を示す。この2次空気供給装置は、内燃機関である多気筒ガソリンエンジン(以下、単にエンジンと記載する)10に取り付けられる。
【0021】
エンジン10には吸気管20と排気管40とが取り付けられている。吸気管20には、スロットルバルブ30が配置され、その上流にはエアクリーナ50が設けられている。エアクリーナ50とスロットルバルブ30との間には、空気量(一次空気量)を測定するためのエアフローメータや吸気温度を測定するための吸気温センサなども配置される。
【0022】
また、エンジン10は、エンジン制御用コンピュータ170により制御される。エンジン制御用コンピュータ170には、これらエアフローメータ、吸気温センサ、エンジン回転数センサ、エンジン冷却水温、スロットルバルブ30の開度等の情報が入力される。これらの情報および他のコンピュータからの情報に基づいて、エンジン制御用コンピュータ170は、スロットルバルブ30の開度、点火プラグ90の点火時期、燃料噴射弁100の燃料噴射量、吸気弁70および排気弁80の開閉タイミングなどを制御する。
【0023】
排気管40の下流には、3元触媒からなる排気浄化装置60が配置される。排気浄化装置60の上流には、排気中の酸素濃度を検知するための酸素センサ110が配置される。
【0024】
2次空気供給装置は、大気解放された部分に連通したエアクリーナのまたは吸気管20のエアクリーナ50とスロットルバルブ30との間と、排気管40の酸素センサ110との間を接続するエア配管140を備える。エア配管140には、電気モータ駆動式のエアポンプ120、電磁式エアシャットバルブ(ASV)130、2次空気をエンジン10の気筒数と同じ数のエキゾーストマニホールドに分岐させる分岐管150が配置される。エアポンプ120とASV130との間には圧力センサが配置される。
【0025】
エンジン制御用コンピュータ170は、2次空気供給装置の動作も制御する。エンジン制御用コンピュータ170は、エアポンプ120のモータ駆動とASV130の開閉とを制御する。
【0026】
2次空気供給装置は、エンジン10の始動直後である状態や、エンジン10が冷えた状態や、エンジン10の燃焼が安定している状態においては、エンジン制御用コンピュータ170がASV130を開くように制御するとともにエアポンプ120を駆動することで、エア配管140を介して排気管40内に2次空気を導く。このとき、エンジン10の燃焼が安定している度合いに基づいて、排気管40に導かれる空気の量が多くなるように制御するようにすることもできる。
【0027】
一方、エンジン10が十分に暖気され排気浄化装置60が十分に活性化された状態や、エンジン20の燃焼が安定していない状態や安定しなくなること予測される状態においては、エンジン制御用コンピュータ170が、ASV130を閉じるように制御するとともに、エアポンプ120を停止させることで、2次空気の供給を停止させる。このとき、エンジン20の燃焼が安定していない度合いに基づいて、排気管40に導かれる空気の量が少なくなるように制御するようにすることもできる。
【0028】
なお、排気管40内に導かれた空気は、排気中の酸素濃度を上昇させ、そのA/Fを上げ、排気中のHC、COの排気管40における2次燃焼を促して排気の浄化を図る。さらに、排気温度を上昇させて排気浄化装置60の3元触媒の昇温を促進することにより排気エミッションの悪化を抑制する。
【0029】
エアポンプ120およびASV130は、エアポンプ・ASV駆動回路160により制御される。エンジン制御用コンピュータ170は、このエアポンプ・ASV駆動回路160に制御信号を出力することにより、エアポンプ120を駆動させたり停止させたり、ASV130を開いた状態にしたり閉じた状態にしたりする。また、バッテリ230からエアポンプ120へ、エアポンプハーネス180を介して電力が供給される。このエアポンプハーネス180はエアポンプ120の電力入力端子に接続される。この電力入力端子における電圧値が電圧センサ190により検知され、エンジン制御コンピュータ170に入力される。
【0030】
エンジン10のクランクシャフトプーリ200はベルトを介してオルタネータ210に接続され、エンジン10の回転力によりオルタネータ210のロータが回転される。オルタネータ210はオルタネータ駆動回路220により制御される。エンジン制御用コンピュータ170は、オルタネータ駆動回路220に発電指令信号を出力する。オルタネータ駆動回路220は、レギュレータとコントローラとを備える。
【0031】
オルタネータ210は、ダイオード整流器と、ステータと、クランクシャフトの回転力を受けて回転するロータコイルとを備え、ロータコイルに励磁電流が印加されると、ロータコイルが磁束を発生しつつ回転し、それによりステータに三相交流が誘起される。
【0032】
ステータで発生した三相交流は、ダイオード整流器によって直流に変換されてオルタネータ210から出力される。オルタネータ210から出力された直流電圧は、バッテリ230を充電する。
【0033】
レギュレータは、バッテリ230とロータコイルとの電気的な通電/非通電とを切り換えるスイッチングトランジスタと、このスイッチングトランジスタをオン/オフ駆動するトランジスタ駆動回路とから構成される。
【0034】
コントローラは、トランジスタ駆動回路と電気配線を介して接続され、トランジスタ駆動回路へ駆動信号を送信することにより、スイッチングトランジスタのオン/オフを制御する。その際、コントローラは、オルタネータ210から出力される電圧をセンシングし、その出力電圧が所望の電圧とすべく、レギュレータを制御してロータコイルの励磁電流を調節する。これにより発電電圧が可変に制御される。
【0035】
エンジン制御用コンピュータ170からオルタネータ駆動回路220へは、「発電Hi」指令、「発電Lo」指令、「発電カット」指令、のいずれかが出力される。また、「発電Mid」指令を設けてもよい。
【0036】
「発電Hi」指令は、オルタネータ210による発電量を最大にすべく、たとえば発電電圧が14.5Vになるような指令である。「発電Lo」指令は、たとえば所定時間内におけるバッテリ230への電流収支が±0[A]になるような指令である。すなわち、「発電Lo」指令は、必要最低限の電力のみをオルタネータ210に発電させる指令であるといえる。「発電カット」指令は、オルタネータ210による発電を行なわない指令である。また、「発電Mid」指令は、オルタネータ210による発電量を最大より小さくすべく、たとえば発電電圧が13.8Vになるような指令である。
【0037】
オルタネータ210における発電電圧が変化すると、その変化に従って、バッテリ230の入力電圧(充電電圧)および出力電圧(放電電圧)が変化する。すなわち、オルタネータ210における発電電圧が上昇すると、バッテリ230の出力電圧が上昇して、エアポンプハーネス180の内部抵抗による電圧降下分を上回る、十分な電圧値の電力がエアポンプ120に供給される。十分な電圧値の電力によりエアポンプ120が作動して、2次空気の供給による排気浄化機能の十分な作用を実現するために必要な流量が確保される。
【0038】
図2を参照して、エアポンプ120の流量特性について説明する。図2は、横軸を電圧センサ190で検知されるエアポンプ120の端子電圧、縦軸をエアポンプ120から吐出される流量とした特性図である。エアポンプ端子電圧とエアポンプ流量とはほどリニアな特性を有しており、エアポンプ端子電圧が高くなるほど、エアポンプ流量も高くなる。
【0039】
また、図2に示すように、2次空気の供給による排気浄化機能の十分な作用を実現するために必要な流量が必要流量領域として設定される。この必要流量領域の流量をエアポンプ120から吐出させるために必要なエアポンプ端子電圧(電圧しきい値)は、たとえば12Vである。
【0040】
図3を参照して、エンジン制御用コンピュータ170で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0041】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、エンジン制御用コンピュータ170は、エアポンプ120の端子電圧値Vを、電圧センサ190から入力された信号に基づいて検知する。
【0042】
S200にて、エンジン制御用コンピュータ170は、エアポンプ120の端子電圧値Vが予め定められた電圧しきい値(たとえば図2に示す12V)よりも低いか否かを判断する。端子電圧値Vが予め定められた電圧しきい値よりも低いと(S200にてYES)、処理はS300へ移される。もしそうでないと(S200にてNO)、この処理は終了する。
【0043】
S300にて、エンジン制御用コンピュータ170は、オルタネータ駆動回路220に「発電Hi指令」信号を出力する。
【0044】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る2次空気供給装置を備えたエンジンシステムの動作について説明する。
【0045】
エンジンシステムは車両に搭載され、経時的な要因により、バッテリ230からエアポンプ120に電力を供給するエアポンプハーネス180の内部抵抗値が上昇する。内部抵抗値が上昇するまでは、バッテリ230からの出力電圧値が、ほぼエアポンプ120の端子電圧値であって(S200にてNO)、オルタネータ210に対する発電電圧制御は、特に行なわれない。
【0046】
内部抵抗値が上昇して、エアポンプ120の端子電圧値が予め定められた電圧しきい値を下回ると(S200にてYES)、オルタネータ駆動回路220を介して発電電力値を上昇させるようにオルタネータ210が制御される。このとき、レギュレータによりオルタネータ210のロータコイルの励磁電流が制御されて、ステータに誘起される三相交流電力が上昇して、発電電圧が上昇する。オルタネータ210における発電電圧が上昇すると、バッテリ230の出力電圧が上昇して、エアポンプハーネス180の内部抵抗による電圧降下分を上回る、十分な電圧値の電力がエアポンプ120に供給され、十分な電圧値の電力によりエアポンプ120が作動して、2次空気の供給による排気浄化機能の十分な作用を実現するために必要な流量が確保される。
【0047】
図4に示すように、冷間時にエンジン10が始動されて、アイドリング中において、従来のようにエアポンプハーネス180の内部抵抗が上昇したままで何ら制御が行なわれないと、点線で示すように、エアポンプ120からの流量が不足して、触媒の温度が緩やかにしか上昇しない。触媒が触媒活性化温度に到達するまでの時間が長く、その間は排ガスが十分に浄化されない状態で排出される。
【0048】
一方、本発明の実施の形態のようにエアポンプハーネス180の内部抵抗が上昇してポンプ端子電圧値が電圧しきい値を下回ると、オルタネータ210の発電電圧が上昇される。このとき、エアポンプ120からの流量が不足しないので、実線で示すように、触媒の温度が速やかに上昇する。触媒が触媒活性化温度に到達するまでの時間が短く、排ガスが十分に浄化されない状態で排出される時間を短くすることができる。
【0049】
以上のようにして、本実施の形態に係る2次空気供給装置のエアポンプの端子電圧が、ワイヤハーネスの経時的変化に伴う内部抵抗値の上昇により、電圧しきい値を下回ると、ワイヤハーネスを介してエアポンプに電力を供給しているバッテリを充電するオルタネータの発電電圧を上昇させる。この電圧しきい値は、2次空気の供給による排気浄化機能の十分な作用を実現するために必要最低限の流量を供給するために電動エアポンプに供給される電圧値である。オルタネータのロータコイルの励磁電流が調整されて、発電電圧値が上昇して、バッテリ230の出力電圧が上昇して、エアポンプハーネス180の内部抵抗による電圧降下分を上回る、十分な電圧値の電力がエアポンプ120に供給され、この電力によりエアポンプ120が作動して、2次空気の供給による排気浄化機能の十分な作用を実現するために必要な流量が確保される。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係る2次空気供給装置を備えたエンジンシステムの制御ブロック図である。
【図2】エアポンプ端子電圧とエアポンプ流量との関係を示す図である。
【図3】エンジン制御用コンピュータで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図4】触媒温度の時間変化を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
10 エンジン、20 吸気管、30 スロットルバルブ、40 排気管、50 エアクリーナ、60 排気浄化装置、70 吸気弁、80 排気弁、90 点火プラグ、100 燃料噴射弁、110 酸素センサ、120 エアポンプ、130 電磁式エアシャットバルブ(ASV)、140 エア配管、150 分岐管、160 エアポンプ・ASV駆動回路、170 エンジン制御用コンピュータ、180 エアポンプハーネス、190 電圧センサ、200 クランクシャフトプーリ、210 オルタネータ、220 オルタネータ駆動回路、230 バッテリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系の排気浄化装置より上流側に2次空気を供給する2次空気供給装置であって、
電力により作動され、前記2次空気を供給するための供給手段と、
前記電力を供給する蓄電機構と、
内燃機関の出力により発電して前記蓄電機構を充電する発電機と、
前記供給手段に供給される電力値を検知するための検知手段と、
前記検知された電力値が低下すると、発電電力量を上昇させるように前記発電機を制御するための制御手段とを含む、2次空気供給装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検知された電力値が予め定められた値を下回ると、発電電力量を上昇させるように前記発電機を制御するための手段を含む、請求項1に記載の2次空気供給装置。
【請求項3】
前記供給手段は、エアポンプであって、
前記検知手段は、前記エアポンプの電力供給端子における電圧値を検知するための手段を含み、
前記制御手段は、前記検知された電圧値が予め定められた値を下回ると、発電電力量を上昇させるように前記発電機を制御するための手段を含む、請求項1に記載の2次空気供給装置。
【請求項4】
前記発電機は、オルタネータであって、
前記制御手段は、前記オルタネータの駆動回路に発電電力量を上昇させる指令信号を出力するための手段を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の2次空気供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−9612(P2006−9612A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184688(P2004−184688)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】