説明

3次元画像処理装置及び医用画像診断装置

【課題】血管内を流れる血液の血流情報を血管内部の立体表示と共に表示可能な3次元画像処理装置及びこのような3次元画像処理装置を備えた医用画像診断装置を提供すること。
【解決手段】画像収集部10において被検体の対象部位に関する複数枚の断層画像データから被検体の血管の表面形状データを含む3次元画像データが構築され、仮想内視鏡画像生成部31において該3次元画像データを血管内部で定めた視点位置から見たときの画像が仮想内視鏡画像として生成される。更に、この仮想内視鏡画像と血流情報収集部20で収集される血流情報とが合成部32において合成され、表示部50に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像を画像処理する3次元画像処理装置及びそれを備える医用画像診断装置に関し、特に被検体の血管内部の3次元画像データを血管内部で定めた視点位置から見たときの立体画像として作成して表示する3次元画像処理装置及びそれを備える医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者に対する医用検査で生成されたX線CT画像やMR画像等の2次元断層画像(スライス画像)データから3次元画像データを構築し、これを2次元画面上に立体表示することにより、人体内の各臓器の形状や大きさ等をその各臓器の外部から観察できる3次元画像表示装置が知られている。
【0003】
このような3次元画像表示装置において、内部が空洞である血管や胃等の臓器を対象とし、その血管や臓器の内部に視点を置き、その視点で定めた視線に沿った3次元画像を構築し、これを電子内視鏡装置で観察される内視鏡画像のように、2次元画面上に立体表示させることにより、血管や臓器の内部を観察可能とする仮想内視鏡表示が、例えば特許文献1において知られている。
【特許文献1】特開平9−139339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のような仮想内視鏡表示においては、血管の内部の立体画像を表示することが可能であるが、血管内部における異常の検出を容易とするために、立体画像を見ながら、血管内部を流れる血液が逆流している部分や狭窄部位等で血流速度の遅い部分などを瞬時に知りたいという欲求がなされている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、血管内を流れる血液の血流情報を血管内部の立体表示と共に表示可能な3次元画像処理装置及びこのような3次元画像処理装置を備えた医用画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1による3次元画像処理装置は、被検体の対象部位に関する複数の断層画像データから前記被検体の血管の表面形状データを含む3次元画像データを構築すると共に、該構築した3次元画像データを血管内部で定めた視点位置から見たときの当該血管内部の立体画像として表示する3次元画像表示手段と、前記血管内部の立体画像に、該立体画像として表示される血管内部を流れる血液の血流情報を合成して前記3次元画像表示手段に表示させる合成手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
また、上記の目的を達成するために、本発明の請求項6による医用画像診断装置は、被検体の対象部位に関する複数の断層画像データを収集し、該収集した断層画像から前記被検体の血管の表面形状データを含む3次元画像データを構築する3次元画像データ構築手段と、前記3次元画像データを血管内部で定めた視点位置から見たときの当該血管内部の立体画像として表示する3次元画像表示手段と、前記立体画像として表示される血管内部を流れる血液の血流情報を収集する血流情報収集手段と、前記血管内部の立体画像に、前記収集された血流情報を合成して前記3次元画像表示手段に表示させる合成手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、血管内を流れる血液の血流情報を血管内部の立体表示と共に表示可能な3次元画像処理装置及びこのような3次元画像処理装置を備えた医用画像診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置の構成を示すブロック図である。図1に示す医用画像診断装置は、画像収集部10と、血流情報収集部20と、画像処理部30と、入力部40と、表示部50とから構成されている。ここで、図1に示す医用画像診断装置は、特に限定されるものではなく、例えばX線CT装置やMRI装置等の被検体の断層画像を撮影可能な医用画像診断装置が挙げられる。
【0010】
図1に示すように、画像収集部10には、心電計11が接続されている。心電計11は、被検体の心臓の収縮によって生ずる微弱な電流を検出し、検出された電流の時間変化を心電波形として画像収集部10に出力する。画像収集部10は、心電計11の心電波形情報に基づいて動作し、被検体の内部を撮像してX線CT画像やMR画像等の断層画像データを複数枚収集し、該収集した複数枚の断層画像データから補間処理により被検体の臓器や血管の表面形状データを含む3次元画像データ(ボリュームデータ)を構築する。そして、構築した3次元画像データを心電波形情報と対応付けて画像処理部30の仮想内視鏡画像生成部31に出力する。この画像収集部10による画像収集は、例えばX線CT装置やMRI装置により行うことができる。
【0011】
なお、臓器内腔を仮想内視鏡表示するために、必要があれば画像収集部10において仮想内視鏡表示の妨げとなる部分の画像をセグメンテーション技術により削除するようにしても良い。
【0012】
血流情報収集部20には、心電計21が接続されている。そして、血流情報収集部20は、心電計21によって出力される心電波形情報に基づいて、被検体の血流情報(血流速度及び血流方向等)を収集すると共に、後述する仮想内視鏡画像と血流情報との対応付けを行うために、被検体の断層画像を収集して3次元画像データを構築し、心電波形情報、血流情報、及び3次元画像データを対応付けて画像処理部30の合成部32に出力する。ここで、血流情報収集部20による血流情報の収集は、例えば超音波のドップラ効果を利用して行っても良いし、MRI装置におけるMR血流計測を利用しても良い。或いは、X線CT装置における造影剤注入時の造影部分の動態から血流情報を収集するようにしても良い。即ち、血流情報収集部20は、被検体の3次元画像データ及び血流情報を収集できるものであれば特に限定されるものではない。
【0013】
画像処理部30は、仮想内視鏡画像生成部31と、合成部32とから構成されている。
仮想内視鏡画像生成部31は、医師等のユーザによって指定された臓器内腔を、ユーザによって指定された視点位置から見たときの3次元画像データ(仮想内視鏡画像データ)を生成する。即ち、仮想内視鏡画像生成部31は、例えばX線CT画像やMR画像などの医用画像の種類に応じた臓器の特徴、例えば臓器の位置、大きさ、しきい値、エッジ、画素値の分布統計量等に基づいて、画像収集部10で得られたボリュームデータからユーザによって指定された臓器内腔を2値化画像として抽出する。更に、この2値化画像データと、もとの3次元画像データと、入力部40から入力される仮想内視鏡表示の際の視野角、視点位置、及び視線方向の情報とに基づいて仮想内視鏡画像データを作成し、この仮想内視鏡画像データを心電波形情報と共に合成部32に出力する。
【0014】
合成部32は、仮想内視鏡画像生成部31によって生成された仮想内視鏡画像データに血流情報収集部20によって収集された血流情報を視認可能に表示するための血流情報表示画像データを合成して表示部50に出力する。
【0015】
入力部40は、医師等のユーザが医用画像診断装置の各種入力操作を行うための、例えばマウス等の操作部である。表示部50は、合成部32において合成された仮想内視鏡画像を2次元画面上に表示する、例えば液晶ディスプレイ等の表示部である。
【0016】
以下、本実施形態の医用画像診断装置の動作について説明する。図2は、本実施形態の医用画像診断装置の主要な動作について示すフローチャートである。
【0017】
まず、心電計11の動作に同期して画像収集部10によって被検体が撮像され、これにより収集される断層画像から被検体被検体の臓器や血管の表面形状データを含む3次元画像データ(ボリュームデータ)が得られる(ステップS1)。また、心電計21の動作に同期して血流情報収集部20によって被検体の血流情報及び3次元画像データ(ボリュームデータ)が得られる(ステップS2)。その後、画像収集部10によって得られた3次元画像データが心電波形情報に対応付けられて画像処理部30に入力されると共に血流情報収集部20によって得られた3次元画像データ及び血流情報が心電波形情報に対応付けられて画像処理部30に入力される(ステップS3)。ここで、画像収集部10における3次元画像データの収集と血流情報収集部20における3次元画像データ及び血流情報の収集とは同時に行っても良いし、別に行っても良い。
【0018】
続いて、医師等のユーザにより、仮想内視鏡表示する臓器内腔の位置、及び仮想内視鏡表示の際の視野角、視点位置、及び視線方向が指定される(ステップS4)。この際、画像収集部10によって得られた3次元画像データからユーザによって指定された臓器のMPR3断面画像若しくはボリュームレンダリング画像を生成し、これらの画像を表示部50に表示させた状態で視野角、視点位置、及び視線方向の指定を行えるようにしても良い。
【0019】
以上の各種データ入力が終了すると、画像処理部30の仮想内視鏡画像生成部31において仮想内視鏡画像が生成される(ステップS5)。なお、ステップS5において生成される仮想内視鏡画像の不透明度や色は固定であっても良いが、ユーザが自由に設定できるようにしても良い。
【0020】
仮想内視鏡画像が生成された後、合成部32により、仮想内視鏡画像に血流情報を視認可能に表示するための血流情報表示画像が合成される(ステップS6)。そして、血流情報表示画像が合成された仮想内視鏡画像が、例えば図3に示すようにして表示部50に表示される(ステップS7)。ここで、図3の参照符号51aは視点位置52における血流方向を示した血流情報表示画像であり、51bは視点位置52における血流速度を示した血流情報表示画像である。即ち、図3の例では、視点位置52においては血流方向が図面手前から奥方向であり、血流速度が300ml/s(20cm/s)であることを示している。なお、血流情報表示画像の表示位置や血流情報表示画像の表示形態は、図3に示すものに限るものではない。例えば、ステップS4の視点位置等の入力の際に、血流情報を表示させたい位置の情報を1つ以上入力できるようにして、その位置に対応した血流情報を、例えば図4の参照符号53、54に示すようにして表示させるようにしても良い。また、血液の3次元的な流れを視認しやすいように、血流を図4の参照符号55に示すような3次元的な矢印画像で示すようにしても良い。
【0021】
また、図3及び図4のように表示されている仮想内視鏡画像においてユーザの入力部40の操作により、視点位置や視線方向を変更することもできる。この場合には、変更された視点位置や視線方向に基づいて図2のステップS5以降の処理を再び行うようにすれば良い。また、入力部40がホイールマウスのような操作部材であれば、ホイールの回転に伴って仮想内視鏡画像の視点位置を移動させるようなことも可能である。この場合、血流速度及び血流方向に応じて視点位置の移動速度を変化させれば、あたかもユーザが血流を走行しているかのような視覚効果を与えることも可能である。
【0022】
更に、表示部50に仮想内視鏡画像は、単なる3次元画像に限らず、3次元画像を時系列に表示させる4次元画像であっても良い。この場合には、時間変化に伴って逐次新たな仮想内視鏡画像を生成し、生成した仮想内視鏡画像に血流情報表示画像を合成して表示させれば良い。
【0023】
次に、ステップS6の合成処理について更に説明する。図5は、合成部32における合成処理について示すフローチャートである。
【0024】
合成処理においては、まず、仮想内視鏡画像生成部31において生成された3次元画像データ(仮想内視鏡画像)と血流情報収集部20から入力された3次元画像データとの時相合わせが行われる(ステップS11)。即ち、心電計11の心電波形情報と心電計21の心電波形情報とから、血流情報収集部20から入力された3次元画像データのうち、仮想内視鏡画像生成部31において生成された仮想内視鏡画像データと心電波形上で同位相のタイミングで収集された3次元画像データが選択される。次に、仮想内視鏡画像生成部31において生成された3次元画像データとステップS11で選択された3次元画像データとの位置合わせが行われる(ステップS12)。
【0025】
例えば、画像収集部10によって収集される3次元画像がX線CT画像であり、血流情報収集部20によって収集される血流情報が超音波のドップラ画像から得られる情報である場合、通常は、両者を収集したときの座標系が一致していないため、ステップS12に示す位置合わせを行う必要がある。なお、この位置合わせは、例えば、画像収集部10によって得られる3次元画像データと血流情報収集部20によって得られる3次元画像データとの特徴点マッチングにより、画像収集部10の座標系を血流情報収集部20の座標系に一致させるための画像空間位置補正データ(例えば、画像収集部10の座標系を血流情報収集部20の座標系に変換する変換マトリクス)を求めることにより行えば良い。このような位置合わせにより、画像収集部10で収集される3次元画像データにおける空間上の1点と、この点と同じ座標値を示す血流情報収集部20で収集される3次元画像データにおける空間上の1点とは被検体の同一位置を示すことになる。
【0026】
ステップS12において、画像空間位置補正データが求められた後、ユーザによって指定された視点位置に対応する血流情報が選択される(ステップS13)。その後、この血流情報を視認可能に表示するための血流情報表示画像データ(例えば、血流方向を示すための指標画像及び血流速度を示すための文字画像等)が生成され、生成された血流情報表示画像データと仮想内視鏡画像データとが図3や図4に示すようにして合成される(ステップS14)。
【0027】
以上説明したように、本一実施形態によれば、仮想内視鏡画像の表示時に血流情報を視認可能に表示させるので、ユーザは血流方向及び血流速度といった血流情報を仮想内視鏡画像を見ながら確認することが可能である。
【0028】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0029】
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】医用画像診断装置の主要な動作について示すフローチャートである。
【図3】仮想内視鏡画像及び血流情報表示画像の第1の表示例である。
【図4】仮想内視鏡画像及び血流情報表示画像の第2の表示例である。
【図5】合成部における合成処理について示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
10…画像収集部、11…心電計、20…血流情報収集部、21…心電計、30…画像処理部、31…仮想内視鏡画像生成部、32…合成部、40…入力部、50…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の対象部位に関する複数の断層画像データから前記被検体の血管の表面形状データを含む3次元画像データを構築すると共に、該構築した3次元画像データを血管内部で定めた視点位置から見たときの当該血管内部の立体画像として表示する3次元画像表示手段と、
前記血管内部の立体画像に、該立体画像として表示される血管内部を流れる血液の血流情報を合成して前記3次元画像表示手段に表示させる合成手段と、
を具備することを特徴とする3次元画像処理装置。
【請求項2】
前記血流情報の表示位置は、前記血管内部で定めた視点位置であることを特徴とする請求項1に記載の3次元画像処理装置。
【請求項3】
前記血管内部の立体画像中の少なくとも1点の位置を指定するための位置指定手段を更に具備し、
前記血流情報の表示位置は、前記位置指定手段によって指定された位置であることを特徴とする請求項1に記載の3次元画像処理装置。
【請求項4】
前記合成手段は、前記血流情報として、前記血管内部の立体画像中で前記血液の流れる方向を示す血流方向を3次元的に示す指標を合成することを特徴とする請求項1に記載の3次元画像処理装置。
【請求項5】
前記3次元画像表示手段は、時系列に入力される被検体の対象部位に関する複数の断層画像データから、前記血管内部で定めた視点位置から見たときの当該血管内部の立体画像を時系列に表示することを特徴とする請求項1に記載の3次元画像処理装置。
【請求項6】
被検体の対象部位に関する複数の断層画像データを収集し、該収集した断層画像から前記被検体の血管の表面形状データを含む3次元画像データを構築する3次元画像データ構築手段と、
前記3次元画像データを血管内部で定めた視点位置から見たときの当該血管内部の立体画像として表示する3次元画像表示手段と、
前記立体画像として表示される血管内部を流れる血液の血流情報を収集する血流情報収集手段と、
前記血管内部の立体画像に、前記収集された血流情報を合成して前記3次元画像表示手段に表示させる合成手段と、
を具備することを特徴とする医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−148858(P2008−148858A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338769(P2006−338769)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】