説明

ACF貼付装置

【課題】ACFを表示基板やプリント基板に貼付する際に機械式のテンション制御方式を用いずにACFに与えるテンションの制御を行うことができるようにする。
【解決手段】ACF貼付装置1は、ACFテープ110が巻回されている供給リール2と、ベーステープ108を巻き取る回収リール4と、を備えている。更に、張力用モータ27と、制御部37と、を備えている。張力用モータ27は、供給リール2に取り付けられており、回収リール4の巻き取り方向Mと反対方向Nへトルクを供給リール2に加える。また、制御部37は、供給リール2に巻回されているACFテープ110の径Dに基づいて張力用モータ27のトルクを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELなどのFPD(Flat Panel Display)、すなわち表示基板やPCB(プリント基板:Printed Circuit Board)にACF(異方性導電フィルム、Anisotropic Conductive Film)を貼付するACF貼付装置に関り、特にACFを貼付する際のACFテープのテンション制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶やプラズマ、有機ELなどのFPD(Flat Panel Display)、すなわち表示基板には、複数の処理ステーションによって、その周囲に様々な電子部品が接続又は実装される。実装される電子部品の具体例としては、COF(Chip on Film)、FPC(Flexible Printed Circuit)などのいわゆるTAB(Tape Automated Bonding)及び、PCB(周辺基板:Printed Circuit Board)及び駆動ICなどが挙げられる。
【0003】
ここで、一般的なACF貼付装置に用いられる表示基板について、図5を参照して説明しておく。
図5は、表示基板とTABとの接続状態を示す斜視図である。
【0004】
図5に示すように、表示基板100は、カラーフィルタ基板101と、TFT(Thin Film Transistor)アレイ基板102と、このTFTアレイ基板の間に封入される液晶とから構成されている。TFTアレイ基板102の少なくとも1辺には、ICチップ103を搭載したフレキシブル基板からなる複数のTAB105を介して不図示のプリント基板(PCB)が設けられる。なお、図5では、TFTアレイ基板102の2辺にTAB105を設ける例を示す。
【0005】
TFTアレイ基板102には、所定数のリード部104が形成されている。そして、このリード部104には、複数のTAB105が接続される。TAB105には、ICチップ103が搭載されており、このICチップ103を間に挟むようにして、第1のリード部107と、第2のリード部108が設けられている。
【0006】
表示基板100とTAB105との接続には、ACF(異方性導電フィルム、Anisotropic Conductive Film)109が用いられる。このACF109は、粘着性のある電気絶縁物質からなる熱硬化性樹脂(バインダ樹脂)に導電性を持つ微細な金属粒子を分散させてフィルム状に成形したものである。そして、ACF109は、表示基板100における複数のリード部104上に貼り付けられている。
【0007】
一般的に、ACFは、一面に剥離層を形成したベーステープに所定の厚みで積層されることでACFテープを構成している。このACFテープは、供給リールに巻き付けられている。使用時には、供給リールから所定の長さ分のACFテープを引き出し、ACFテープを表示基板の貼付面に対向させる。そして、表示基板の貼付面と対向したACFテープを圧着ツールによって圧着し、ACFをベーステープから剥離することで表示基板の一辺の略全体にわたって貼り付けられる。
【0008】
ACF貼付装置では、表示基板にACFを貼付する場合、表示基板やプリント基板と対向させた際に、ACFテープが撓まないように、ACFテープに所定の引張力を与えるテンション機構が必要不可欠となっていた。従来のテンション機構としては、例えば、特許文献1に記載された技術が挙げられる。この特許文献1に記載の技術では、ACFテープをガイドする揺動可能なスイングアームをバネや錘などで所定の力で引っ張ることで、ACFテープの所定の長さの送り量が規定されると共にACFテープに所定の引張力を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−242400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、ACFテープに所定の引張力を与えるテンション機構が、揺動可能なスイングアームと、このスイングアームを所定の力で引っ張るバネ等からなる機械式の構成となっていた。そして、供給リールに巻回されているACFテープの径の変化に伴って、スイングアームが揺動していた。そのため、供給リールからACFテープを高速で送り出すと、スイングアームに力を付与するバネ等の固有振動の影響を受け、スイングアームの揺動動作がACFテープの径(供給リールに巻回されているときの直径、以下同じ)の変化に追従できずに、ACFテープに必要以上の引張力を与える恐れがあった。
【0011】
その結果、特許文献1に記載された技術では、ACFテープが供給リールに強く巻き付き、ACF自体の粘着力によってACF同士が接着すると共にACFテープが供給リールに固定される、という恐れがあった。
【0012】
また、供給リールに巻回されているACFテープの径の変化が、スイングアームの揺動可能な範囲より大きい場合、スイングアームによってACFテープにテンションを付与することができなくなる、という恐れがあった。
【0013】
更に、特許文献1に記載された技術では、テンション機構が機械式であるため、スイングアーム、スイングアームを支持する揺動軸、バネ等の部品点数が多くなり、コストがかかるという問題も有していた。
【0014】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、スイングアームやバネ等からなる機械式の機構を用いずにACFに与えるテンションの制御を行えるようにして、装置の構成の簡略化を図ることができるACF貼付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のACF貼付装置は、基板にACFを貼り付けるACF貼付装置である。
ACF貼付装置は、ベーステープの一面にACFが積層されたACFテープが巻回される供給リールと、ACFを基板に貼付されて、ACFテープからACFが剥離されたベーステープを巻き取る回収リールと、を備えている。そして、供給リールに取り付けられ、回収リールの巻き取り方向と反対方向のトルクを供給リールに加える張力用モータと、供給リールに巻回されているACFテープの径から張力用モータのトルクを制御する制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のACF貼付装置によれば、機械式の機構を用いずに張力用モータのトルクを制御することでACFテープのテンションを付与しているため、ACFテープのテンション制御の構成を簡略化することができ、装置全体を小型にすることが可能である。更に、ACFテープのテンションの制御を張力用モータによる電気的な機構にしているため、ACFテープを高速で送り出す場合でも、ACFテープの径の変化にテンション制御を追従させることができ、ACFテープに所定の引張力を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のACF貼付装置の第1の実施の形態例の概略構成示す正面図である。
【図2】本発明のACF貼付装置の第1の実施の形態例にかかるACFのテンション制御の構成を示すブロック図である。
【図3】ACFのテンション制御における計算概念を示す概念図である。
【図4】本発明のACF貼付装置の第2の実施の形態例にかかるACFのテンション制御の構成を示すブロック図である。
【図5】表示基板とTABとの接続状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のACF貼付装置の実施の形態例について、図1〜図4を参照して説明するが、既に背景技術の説明に用いた図5についても適宜参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態例
1−1.ACF貼付装置の構成例
1−2.ACFテープの制御方法
1−3.実験例
2.第2の実施の形態例
【0019】
<1.第1の実施の形態例>
1−1.ACF貼付装置の構成例
まず、図1〜図2を参照して本発明のACF貼付装置の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)について説明する。
図1は、ACF貼付装置の概略構成を示す正面図、図2は、ACF貼付装置におけるACFのテンション制御の構成を示すブロック図である。
【0020】
本例のACF貼付装置1は、図5に示す液晶やプラズマ、有機ELなどのFPDの表示基板100の少なくとも一辺にACF109を貼り付ける装置である。図1に示すように、ACF貼付装置1は、ACFテープ110が巻回された供給リール2と、ACF109を表示基板100に圧着する圧着ツール3と、使用済みのACFテープ110を巻き取る回収リール4と、ベース部材5とを有している。更に、このACF貼付装置1は、供給リール2に巻回されたACFテープ110からACFテープ110を引き出すテープ引出機構6を有している。
【0021】
供給リール2は、回転軸11を介してベース部材5に着脱可能に装着されている。この供給リール2は、回転軸11に回転可能に支持されている。そして、この供給リール2には、ACFテープ110が、巻回されている。なお、ベース部材5には、回収リール4と、第1の水平ガイドローラ7と、第2の水平ガイドローラ8と、ガイドローラ9が装着されている。ガイドローラ9は、供給リール2と第1の水平ガイドローラ7の間に配置されている。
【0022】
ここで、ACFテープ110は、ベーステープ108と、このベーステープ108に積層されたACF109とから構成されている。ACF109は、粘着性のある電気絶縁物質からなる熱硬化性樹脂(バインダ樹脂)に導電性を持つ微細な金属粒子を分散させてフィルム状に成型されている。
【0023】
ACFテープ110は、ガイドローラ9と、第1の水平ガイドローラ7と、第2の水平ガイドローラ8によって、圧着ツール3における圧着箇所までガイドされている。第1の水平ガイドローラ7は、圧着ツール3の一側に配置されており、第2の水平ガイドローラ8は、圧着ツール3の他側に配置されている。
【0024】
そして、第1の水平ガイドローラ7が、表示基板100に貼付するACFテープ110の長手方向の一端部を保持し、第2の水平ガイドローラ8が、表示基板に貼付するACFテープ110の長手方向の他端部を保持している。これにより、ACFテープ110は、第1の水平ガイドローラ7と第2の水平ガイドローラ8によって圧着ツール3における圧着箇所で略水平に保持されている。
【0025】
この第1の水平ガイドローラ7及び第2の水平ガイドローラ8は、円筒部の両側に鍔部を設けたものであり、この2つの鍔部の間にACFテープ110が挿入される。そのため、この第1の水平ガイドローラ7及び第2の水平ガイドローラ8によって、ACFテープ110の幅方向への移動を制限することができる。
【0026】
また、第2の水平ガイドローラ8のACFテープ110の走行経路の下流側には、回収リール4が配置されている。回収リール4は、供給リール2と同様に、回転軸12に回転可能に支持されて、ベース部材5に装着されている。そして、この回収リール4は、ACFテープ110からACF109を剥離したベーステープ108を巻き取り、ベーステープ108を回収している。
【0027】
また、第2の水平ガイドローラ8と回収リール4との間には、テープ引出機構6が設けられている。テープ引出機構6は、第1の送りローラ6aと第2の送りローラ6bとから構成されている。第1の送りローラ6aと第2の送りローラ6bによってベーステープ108が挟持される。そして、このテープ引出機構6によって、供給リール2からACFテープ110を引き出すと共に、供給リール2から引き出すACFテープ110の長さを規定している。
【0028】
圧着ツール3は、受け刃14と、受け刃14と鉛直方向に対向して配置された加圧刃15と、第1の昇降ブロック16と、第1の昇降ブロック16と対向する第2の昇降ブロック17と、駆動部19と、シリンダ20から構成されている。受け刃14と加圧刃15の間には、保持台(不図示)に着脱可能に固定された表示基板100の一辺が配置される。この圧着ツール3は、受け刃14と加圧刃15の間に配置される表示基板100及びACFテープ110を挟んで両者を熱圧着するものである。
【0029】
受け刃14と加圧刃15は、第1の水平ガイドローラ7と第2の水平ガイドローラ8の間に挟まれるようにして配置されている。受け刃14は、第1の昇降ブロック16に取り付けられており、加圧刃15は、第2の昇降ブロック17に取り付けられている。そして、この第1の昇降ブロック16及び第2の昇降ブロック17は、上下方向、すなわち鉛直方向に沿って延在する2本のガイドレール21,21によって上下方向に移動可能に支持されている。
【0030】
第1の昇降ブロック16には、シリンダ20が取り付けられている。そして、第1の昇降ブロック16が、シリンダ20が伸縮動作することで2本のガイドレール21,21に沿って上下方向に移動する。すなわち、第1の昇降ブロック16は、シリンダ20が縮小状態の際には、表示基板100から離間して表示基板100の下方に配置される。また、シリンダ20が伸長すると、第1の昇降ブロック16は、表示基板100の下面に当接する。
【0031】
第2の昇降ブロック17には、駆動部19が取り付けられている。駆動部19は、駆動力を発生させるアクチュエータ22と、このアクチュエータ22によって駆動される送りネジ23とを有している。この駆動部19の送りネジ23には、第2の昇降ブロック17が連結されている。そして、駆動部19が駆動力を発生すると、送りネジ23によって第2の昇降ブロック17が上下方向に移動する。この駆動部19と上述したシリンダ20が動作することで、受け刃14と加圧刃15が近接又は離間する。
【0032】
また、加圧刃15には、加圧刃15を加熱するヒータ(不図示)が内蔵されている。これにより、ヒータによって加熱された加圧刃15がACFテープ110に接触することで、ACF109の樹脂が軟化する。その後、加圧刃15を表示基板100から離間し、ベーステープ108をACF109から剥離する。このようにして、ACF109が表示基板100の貼付面に貼り付けられる。
【0033】
圧着ツール3と第1の水平ガイドローラ7の間には、ハーフカット機構25が設けられている。このハーフカット機構25は、可動カッタと、カッタ受け部とを備えている。可動カッタは、カッタ受け部に対して接近及び離反可能に構成されている。可動カッタがカッタ受け部に最も接近した状態における可動カッタとカッタ受け部の間隔は、ACFテープ110のベーステープ108の厚みと同じか、それより僅かに短い間隔に設定されている。
【0034】
そのため、この可動カッタがカッタ受け部に接近すると、ACFテープ110のACF109のみに切れ込みが入れられ、ACFテープ110のハーフカットが行われる。このハーフカットを行うことで、ACFテープ110のハーフカットされた位置が貼り付けの終端位置となり、前回貼り付けを行ったACF109の端部が貼り付けの始端位置となる。
【0035】
次に、図2に示すように、供給リール2には、回転軸11を介して張力用モータ27が取り付けられており、回収リール4には、回転軸12を介して巻き取り用モータ28が取り付けられている。また、テープ引出機構6の第1の送りローラ6aにも同様に、回転軸13を介して送りモータ29が取り付けられている。張力用モータ27と巻き取り用モータ28は、電力値によってトルクが可変可能なトルクモータであり、送りモータ29は、パルスモータである。
【0036】
張力用モータ27は、回収リール4の巻き取り方向である回転方向Mと反対方向Nのトルクを供給リール2に加えている。張力用モータ27には、張力用モータ27を駆動させる第1のモータドライバ32が接続されている。この第1のモータドライバ32は、D/A変換回路33を介してテンション制御指令回路36に接続されている。そして、第1のモータドライバ32は、テンション制御指令回路36から張力用モータ27の制御信号を受信する。
【0037】
また、この張力用モータ27には、回転角度検出部31が設けられている。この回転角度検出部31は、張力用モータ27の回転角度を検出することで、供給リール2の回転角度を検出している。また、回転角度検出部31は、テンション制御指令回路36に接続されている。そして、この回転角度検出部31は、検出した回転角度情報をテンション制御指令回路36に送信する。
【0038】
回転角度検出部31は、例えばエンコーダであり、エンコーダが回転したパルス信号から供給リール2の回転角度を算出する。すなわち、エンコーダの分解能が360パルス/revの場合、次の式1によって回転角度θが算出される。
[式1]
θ(rad)=(2π×エンコーダの回転パルス)÷360
【0039】
巻き取り用モータ28には、第2のモータドライバ34が接続されており、送りモータ29には、第3のモータドライバ35が接続されている。第2のモータドライバ34は、テンション制御指令回路36に接続されており、テンション制御指令回路36から巻き取り用モータ28の制御信号を受信する。同様に、第3のモータドライバ35は、テンション制御指令回路36に接続されており、送りモータ29の制御信号をテンション制御指令回路36から受信している。
【0040】
テンション制御指令回路36は、ACFテープ110の送り量と、回転角度検出部31から受信した供給リール2の回転角度から張力用モータ27の適正なトルク制御信号を生成する。そして、このテンション制御指令回路36は、生成したトルク制御信号を第1のモータドライバ32に送信する。また、テンション制御指令回路36は、巻き取り用モータ28に対して一定のトルクを与えるように制御している。
【0041】
上述した第1のモータドライバ32、D/A変換回路33、第2のモータドライバ34、第3のモータドライバ35及びテンション制御指令回路36によって、ACFテープのテンションの制御を行う制御部37が構成されている。
【0042】
1−2.ACFテープのテンション制御方法
次に、図2及び図3を参照して本例のACF貼付装置1におけるACFテープ110に与えるテンションの制御方法について説明する。
図3は、ACFテープのテンション制御における計算概念を示す概念図である。
【0043】
まず、テンション制御指令回路36は、所定量のACFテープ110を供給リール2から引き出すために送りモータ29を駆動させるための第3のモータドライバ35に制御信号を出力する。そして、第3のモータドライバ35は、入力された制御信号に基づいて送りモータ29を駆動させる。送りモータ29が駆動することで、第1の送りローラ6aが回転する。これにより、第1の送りローラ6aと第2の送りローラ6bに挟持されたACFテープ110が所定量Lだけ引き出される。
【0044】
次に、回転角度検出部31は、張力用モータ27を介してACFテープ110が引き出された供給リール2の回転角度θを検出する。そして、回転角度検出部31は、検出して供給リール2の角度情報をテンション制御指令回路36に出力する。次に、テンション制御指令回路36は、供給リール2から引き出されたACFテープ110の長さLと、回転角度検出部31から入力された供給リール2の角度情報から供給リール2に巻回されているACFテープの径Dを算出する。
【0045】
ここで、図3に示すように、供給リール2から引き出されたACFテープ110の長さLは、扇形の円弧の長さLであり、供給リール2の回転角度θ(rad)は、扇型の中心角θである。そのため、下記の式2から供給リール2に巻回されているACFテープの径Dを算出することができる。
[式2]
D=(2×L)/θ
【0046】
次に、テンション制御指令回路36は、算出したACFテープの径DとACFテープに付与する張力Fから張力用モータ27が供給リール2に加えるトルクTを、式2に示されるACFテープの径Dの中心のまわりに働く力のモーメントから、式3によって算出する。
[式3]
T=(F×D)÷2
【0047】
そして、テンション制御指令回路36は、算出したトルクTから第1のモータドライバ32が張力用モータ27に印加する指令電圧Vを算出する。ここで、トルク・電圧換算定数が例えば0.02の場合、指令電圧Vは、下記の式4によって求められる。
[式4]
V=T÷0.02
【0048】
表1は、ACFテープ110に付与する張力Fが0.5Nで、トルク・電圧換算定数が0.02の場合のACFテープ110の径Dと、トルクTと、制御電圧との相関を示している。
【0049】
【表1】

【0050】
次に、テンション制御指令回路36は、生成した張力用モータ27の指令電圧V信号を第1のモータドライバ32に出力する。そして、テンション制御指令回路36から入力された信号に基づいて張力用モータ27に電圧を印加し、張力用モータ27を駆動する。ここで、張力用モータ27は、電力値によってそのトルクが可変可能なトルクモータである。
【0051】
これにより、張力用モータ27は、ACFテープの径Dの変化に応じたトルクTを発生させて、供給リール2に対して回収リール4の回転方向Mと反対方向NのトルクTを加える。このように、供給リール2にトルクTが加えられることにより、ACFテープ110に所定の張力Fが付与される。
【0052】
上述したように、本例のACF貼付装置1によれば、機械的な機構を用いずにACFテープ110の径Dを算出して、張力用モータ27のトルクTを制御することで、ACFテープ110のテンションを制御している。その結果、スイングアームやバネ等の部品点数を削減することができ、装置の小型化を図ることが可能である。また、ACFテープ110のテンションの制御が電気的な制御であるため、ACFテープ110を高速で送り出す場合でも、ACFテープ110の径Dの変化に追従させてテンションを制御することができる。
【0053】
1−3.実験例
次に、表2〜4を参照して、実際に本例のACF貼付装置1を用いた際の供給リール2に巻回されているACFテープ110の径D(m)と、ACFテープ110の静止時張力F(N)を測定した実験例について説明する。
【0054】
本実験では、まず、定ピッチで供給リール2からACFテープ110を2,3回送り、ACFテープ110に張力が掛かっていることを確認する。次に、定ピッチでACF110を1ピッチ送るごとに制御部37で算出した供給リールに巻回されているACFテープ110の径Dを確認する。更に、定ピッチでACF110を1ピッチ送るごとにテンションゲージを用いてACFテープ110の静止時張力を測定する。なお、ACFテープ110の送り量は、0.05mである。
【0055】
表2は、ACFテープ110に付与する張力Fを0.5Nに設定し、供給リール2に巻回されているACFテープ110の径Dを0.090mに設定した例である。表3は、ACFテープ110に付与する張力Fを1.0Nに設定し、供給リール2に巻回されているACFテープ110の径Dを表2と同一の0.090mに設定した例である。また、表4は、ACFテープ110に付与する張力Fを表2と同一の0.5Nに設定し、供給リール2に巻回されているACFテープ110の径Dを0.108mに設定した例である。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
表2〜表4に示すように、供給リール2に巻回されているACFテープ110の径Dは、制御部37で算出した計算値と実測値の誤差が0.004以下という極めて低い値に収まっている。これにより、本例の制御部37によって、ACFテープ110の径Dを正確に算出できていることが分かる。
【0060】
また、ACFテープ110の静止時張力Fの誤差は、全ての例ともにほぼ一定の値内に収まっている。すなわち、表2に示す例では、誤差が−0.080〜−0.140の範囲内であり、表3に示す例では、誤差の範囲が−0.030〜−0.150に収まっている。また、表4に示す例では、誤差の範囲が−0.100〜0.130という極めて狭い範囲内に収まっている。このほぼ一定の誤差は、供給リール2の回転軸11や張力用モータ27の摩擦損失分であると考えられる。これにより、本例の張力用モータ27を用いた電気的な制御システムでACFテープ110のテンションの制御を適切に行えていることが分かる。
【0061】
<2.第2の実施の形態例>
次に、図4を参照して本発明の第2の実施の形態例にかかるACF貼付装置について説明する。
図4は、第2の実施の形態例にかかるACF貼付装置40のACFテープ110のテンション制御の構成を示すブロック図である。
【0062】
図4に示すように、この第2の実施の形態例にかかるACF貼付装置40は、ACFテープ110の送り出し量と、送り出し回数から、供給リール2に巻回されているACFテープ110の径Dを算出するものである。そのため、ACF貼付装置40では、張力用モータ27に供給リール2の回転角度を検出する回転角度検出部がもうけられていない。また、この第2の実施の形態例にかかるACF貼付装置40では、テンション制御指令回路36Aに供給リールにACFテープ110を巻回する際のACFテープ110の初期状態の径が予め記憶されている。
【0063】
よって、このテンション制御指令回路36Aは、供給リール2から引き出されるACFテープ110の長さ(送り出し量)と、ACFテープ110の送り出し回数と、ACFテープ110の初期状態の径から、現在のACFテープ110の径Dを算出している。
【0064】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかるACF貼付装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するACF貼付装置40によっても、上述した第1の実施の形態例にかかるACF貼付装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
上述したように、第2の実施の形態例にかかるACF貼付装置40によれば、第1の実施の形態例にかかるACF貼付装置1に用いられている、回転角度検出部31を削減することができるので、装置の構成をより簡略化することが可能である。
【0066】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施例では、ACFを表示基板に貼り付ける例を説明したが、被貼付物として、表示基板にTABを介して接続されるプリント基板にACFを貼付してもよく、また、TABにACFを貼付してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,40…ACF貼付装置、 2…供給リール、 3…圧着ツール、 4…回収リール、 5…ベース部材、 11,12,13…回転軸、 27…張力用モータ、 28…巻き取り用モータ、 29…送りモータ、 31…回転角度検出部、 32…第1のモータドライバ、 36,36A…テンション制御指令回路、 37…制御部、 100…表示基板、 109…ACF、 108…ベーステープ、 110…ACFテープ 、D…径、 F…張力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にACFを貼り付けるACF貼付装置であって、
ベーステープの一面に前記ACFが積層されたACFテープが巻回される供給リールと、
前記ACFが前記基板に貼付されて、前記ACFテープから前記ACFが剥離された前記ベーステープを巻き取る回収リールと、
前記供給リールに取り付けられ、前記回収リールの巻き取り方向と反対方向のトルクを前記供給リールに加える張力用モータと、
前記供給リールに巻回されている前記ACFテープの径の大きさに基づいて前記張力用モータのトルクを制御する制御部と、備えた
ことを特徴とするACF貼付装置。
【請求項2】
前記供給リールから所定の長さの前記ACFテープを引き出すテープ引出機構と、
前記テープ引出機構によって前記供給リールから前記ACFテープを引き出した際の前記供給リールの回転角度を検出する回転角検出部と、を備え、
前記制御部は、前記ACFテープを前記供給リールから引き出した前記ACFテープの長さと、前記回転角検出部で検出した前記供給リールの回転角度から前記供給リールに巻回されている前記ACFテープの径を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のACF貼付装置。
【請求項3】
前記制御部には、前記供給リールに前記ACFテープを巻回する際の前記ACFテープの初期状態の径が記憶され、
前記制御部は、前記供給リールから引き出される前記ACFテープの長さと、前記ACFテープの送り出し回数から前記供給リールに巻回されている前記ACFテープの径を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のACF貼付装置。
【請求項4】
前記回収リールに一定のトルクを与える巻き取り用モータを備えた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のACF貼付装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記供給リールに巻回されている前記ACFテープの径が小さくなるにつれて前記張力用モータの前記トルクが小さくなるように前記張力用モータを制御する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のACF貼付装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ACFテープの径を算出する指令回路と、前記張力用モータに電力を供給するモータドライバと、を有しており、
前記指令回路は、前記モータドライバを制御して、前記張力用モータに印加する電圧を変化させる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のACF貼付装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−138041(P2011−138041A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298629(P2009−298629)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】