説明

GNSS受信装置及びそれを用いた運転支援装置

【課題】マルチパスのある環境でも位置測位精度の誤差の少ないGNSS測位を行うことができるGNSS受信装置及びそれを用いた運転支援装置を提供する。
【解決手段】GNSS衛星から送信される電波を右旋偏波用アンテナ10と左旋偏波用アンテナ20で受信し、受信した電波の電界強度を選択処理部30で比較し、比較した電波の電界強度のうち、GNSS衛星から送信される電波と同じ右旋偏波用アンテナ10で受信した電波の電界強度が、左旋偏波用アンテナ20で受信した電波の電界強度より大きい場合に、右旋偏波用アンテナで受信した電波を測位に用い、小さい場合には、測位に用いない。さらに、右旋偏波用アンテナで受信した電波の電界強度が所定の値以上である場合にのみ、右旋偏波用アンテナで受信した電波を測位に用い、受信した電波の電界強度が所定の値より小さい場合には、受信した電波を測位に用いない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、GNSS測位に関する技術、特に、マルチパスのある環境下でも位置測位精度の誤差の少ないGNSS測位を行うことができるGNSS受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のGPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)では、GNSS衛星が見通すことが可能な開けた場所では精度の高い測位が可能であるが、例えば街中などのように周囲が高い建築物に囲まれている場所ではマルチパス等に起因するフェージング現象の影響により、測位の精度が大幅に落ちてしまう。
【0003】
これを解決するために、左旋偏波及び右旋偏波を受信する2つの受信アンテナを所定の距離だけ離して設け、2つの受信アンテナの左旋偏波及び右旋偏波の出力値を比較し、マルチパスの影響が少ないと判断されたアンテナの信号を利用することにより、マルチパスの影響を低減するダイバーシチ受信方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに詳細に説明すると、ダイバーシチ受信方式のGPS受信装置は、測位情報が重畳された電波を左旋偏波で送信するGPS衛星からの電波を受信して測位を行うものであって、左旋偏波及び右旋偏波を受信する第1のアンテナと、この第1のアンテナから所定の距離だけ離れた位置に設けられた左旋偏波及び右旋偏波を受信する第2のアンテナと、第1のアンテナが受信した左旋偏波及び右旋偏波の出力値と第2のアンテナが受信した左旋偏波及び右旋偏波の出力値とを比較することによりマルチパスの影響が少ないと判断された第1又は第2のいずれかのアンテナの左旋偏波の出力を選択する選択手段と、この選択手段により選択された左旋偏波の出力信号を用いて測位処理を行う処理手段とを備えたものである。
【特許文献1】特開2007−127497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のようなダイバーシチ受信方式では、2つのアンテナの距離を離しても、例えば車に搭載する場合には、それほど離れた距離に設置できないので、両方のアンテナがマルチパスの影響を受けてしまい、結果的に測位精度の誤差を生じてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、マルチパスのある環境でも位置測位精度の誤差の少ないGNSS測位を行うことができるGNSS受信装置及びそれを用いた運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる問題を解決するためになされた請求項1に記載のGNSS受信装置(5:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための最良の形態」欄において用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、測位情報が重畳された左旋偏波又は右旋偏波の何れかの電波を送信するGNSS衛星(80)からの電波を受信して測位を行うGNSS受信装置(5)であって、右旋偏波用アンテナ(10)、左旋偏波用アンテナ(20)、電界強度比較手段(30)及び制御手段(40)を備えている。
【0008】
右旋偏波用アンテナ(10)は、右旋偏波の電波を受信し、左旋偏波用アンテナ(20)は、左旋偏波の電波を受信し、電界強度比較手段(30)は、右旋偏波用アンテナ(10)で受信した電波と左旋偏波用アンテナ(20)で受信した電波の電界強度を比較する。
【0009】
制御手段(40)は、GNSS衛星(80)から送信される電波を右旋偏波用アンテナ(10)と左旋偏波用アンテナ(20)で受信し、受信した電波の電界強度を電界強度比較手段(30)で比較する。そして、比較した電波の電界強度のうち、GNSS衛星(80)から送信される電波と同じ旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波の電界強度が逆の旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波の電界強度より大きい場合に、GNSS衛星(80)から送信される電波と同じ旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波を測位に用い、小さい場合には、測位に用いない。
【0010】
このようなGNSS受信装置(5)では、マルチパスによる測位誤差をなくし、高い位置測位精度を得ることができる。以下説明する。
GNSS衛星(80)から送信される電波(直接波)は、円偏波の電波であるため、右旋偏波又は左旋偏波の何れかの電波である。したがって、ビル(82)などで1回反射された電波は偏波方向が逆になる。例えば、右旋偏波で送信された電波が反射すると左旋偏波になる。
【0011】
したがって、GNSS衛星(80)からの直接波や反射波を右旋偏波用アンテナ(10)と左旋偏波用アンテナ(20)で電波を受信し、受信した電波の電界強度を電界強度比較手段(30)で比較する。そして、右旋偏波用アンテナ(10)及び左旋偏波用アンテナ(20)で受信した電波の電界強度のうち、GNSS衛星(80)から送信される電波と同じ旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波の電界強度が逆の旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波の電界強度より大きい場合に、GNSS衛星(80)から送信される電波と同じ旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波を測位に用い、小さい場合には、測位に用いないようにすれば、電界強度が強いGNSS衛星(80)からの直接波だけを用いて測位を行うことができる。
【0012】
つまり、ビル(82)からの反射波などのようなマルチパスの影響を受けた電波を用いず、GNSS衛星(80)からの直接波のみでの測位が可能となるので、高い位置測位精度を得ることができる。
【0013】
ところで、受信する電波の旋回方向が異なっていればGNSS衛星からの直接波であるとはいえないが、必ずしも、旋回方向が同じであるから直接波であるとはいえない。なぜなら、GNSS衛星(80)から送信される電波が偶数回反射されると、反射波は、GNSS衛星(80)の送信する電波と同じ旋回方向の偏波となるからである。
【0014】
ところが、この場合には、反射波は、反射するごとに大幅に電界強度は減衰する。そこで、請求項2に記載のように、制御手段(40)は、GNSS衛星(80)から送信される電波と同じ旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波の電界強度が所定の値以上である場合にのみ、GNSS衛星(80)から送信される電波と同じ旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波を測位に用い、受信した電波の電界強度が所定の値より小さい場合には、受信した電波を測位に用いないようにするとよい。
【0015】
このようにすると、GNSS衛星(80)の送信する電波と同じ旋回方向の偏波と同じ偏波であって、2回以上反射した電波の信号を無視して測位することができる、換言すれば、GNSS衛星(80)から送信された電波と同じ旋回方向の偏波の電波の直接波のみを用いて測位をすることができるので、位置測位精度の誤差を小さくすることができる。
【0016】
さらに、請求項3に記載のように、右旋偏波用アンテナ(10)による受信作動と左旋偏波用アンテナ(20)による受信作動とを切り替えるための切替え手段(50)を備え、制御手段(40)は、切替え手段(50)により右旋偏波用アンテナ(10)の受信作動と左旋偏波用アンテナ(20)の受信作動とを切り替えてGNSS衛星(80)からの電波を受信するようにするとよい。
【0017】
このようにすると、簡易で安価な切替え手段(50)を追加するだけで、右旋偏波用アンテナ(10)で受信した電波と左旋偏波用アンテナ(20)で受信した電波を処理するための複数の信号処理部が不要となる。したがって、GNSS受信装置(7)の構成を簡易にすることができるので、GNSS受信装置(7)を小型化したりコストを低減したりすることができる。
【0018】
ところで、請求項1〜請求項3の何れかに記載のGNSS受信装置(5)では、従来のGPS車載器などに比べ、高精度の測位が行われる。そこで、それを車両(80)に搭載し、運転支援を行うことが考えられる。
【0019】
つまり、請求項4に記載のように、請求項1〜請求項3の何れかに記載のGNSS受信装置(5)を車両(84)に搭載し、GNSS受信装置(5)で測位した車両(84)の現在位置を入力し、入力した車両(84)の現在位置に基づいて、車両(84)の運転のための運転支援を行う運転支援手段(60)を備えた運転支援装置(1)とするのである。
【0020】
このようにすると、GNSS受信装置(5)により車両(84)の現在位置が高精度で取得できるので、運転支援、例えば、車両(84)の現在位置と地図データだけで、車両(84)が走行している車線を判別して、交差点の手前で車線変更の案内を行ったり、一時停止線で車両(84)を停止させるための警告を行ったりするといった運転支援を正確に行うことができるようになる。
【0021】
また、車両(84)が曲線道路を走行する場合、車両(84)前方を照射する照明で車両(84)が曲がって行く方向を照射すると、夜間走行時などの安全性を向上させることができる。そのためには、車両(84)が曲線道路のどの位置を走行しているかを正確に把握する必要がある。車両(84)の走行位置を正確に把握していないと、車両(84)が曲がって行く方向を正確に照射することができないからである。
【0022】
そこで、請求項6に記載のように、運転支援手段(70)は、車両(84)が走行するために必要な道路情報を含む地図データを記憶した地図データ記憶手段(62)と、GNSS受信装置(5)で測位した車両(84)の現在位置と地図データ記憶手段(62)に記憶された道路情報とに基づいて、車両(84)の前方を照射する照明の照射方向を制御する照明制御手段(64)と、を備えるようにするとよい。
【0023】
ここで「道路情報」とは、道路の曲率半径や幅などの車両(84)が走行するために必要な道路に関する情報を意味している。
このような運転支援装置(2)では、車両(84)の正確な現在位置が把握できるので、道路情報に基づいて、例えば、現在位置から100mの地点で道路が曲率半径300mで右カーブしているという情報が正確に把握できる。
【0024】
したがって、その情報に基づいて90m走行したら前方照明の照射方向を所定の角度右にするといった照明制御が可能となるので、夜間など照明を点灯した場合の車両(84)走行時の安全性を向上させることができる。
【0025】
また、カーナビゲーション装置(60)に適用することもできる。つまり、請求項5に記載のように、運転支援手段(60)をカーナビゲーション装置(60)とするのである。
【0026】
このようにすると、従来のGPS受信機に比べ、正確な車両(84)の現在位置取得することができる。したがって、従来のGPS受信機を用いた経路案内よりも高機能なカーナビゲーション装置とすることができる。
【0027】
例えば、車両(84)から交差点までの距離が正確に把握できるので、よりきめ細かく正確な経路指示を行うことや目的地までの到着時間の報知をより正確に行うことなどが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、本発明が適用された運転支援装置1の概略の構成を示すブロック図であり、図2は、GNSS受信装置5の概略の構成を示すブロック図である。運転支援装置1は、図1に示すように、GNSS受信装置5及び運転支援部60を備えている。以下、説明を簡単にするために、GNSS衛星80(図3参照)から送信される電波は右旋偏波であるとして説明する。
【0030】
GNSS受信装置5は、測位情報が重畳された左旋偏波又は右旋偏波の何れかの電波を送信するGNSS衛星80からの電波を受信して測位を行う装置であって、図2に示すように右旋偏波用アンテナ10、左旋偏波用アンテナ20、GNSS信号処理部12,22、選択処理部30及び制御部40を備えている。
【0031】
右旋偏波用アンテナ10は、右旋偏波の電波を受信するためのアンテナであり、左旋偏波用アンテナ20は、左旋偏波の電波を受信するためのアンテナである。アンテナとしては、クロスダイポールアンテナ、トライポールアンテナなど円偏波の受信に適した簡易なものを用いる。
【0032】
GNSS信号処理部12は、図示しない低雑音増幅器、スーパーへテロダイン方式などによる中間周波数変換器や変調器を有しており、右旋偏波用アンテナ10で受信した電波を増幅、変調し、選択処理部30へ出力する。また、GNSS信号処理部22は、GNSS信号処理部12と同様にして、左旋偏波用アンテナ20で受信した電波を増幅、変調し選択処理部30へ出力する。
【0033】
選択処理部30は、図示しない電界強度計を有しており、GNSS信号処理部12からの出力である右旋偏波用アンテナ10で受信した電波と、GNSS信号処理部22からの出力である左旋偏波用アンテナ20で受信した電波の電界強度、電界強度計で比較するものである。
【0034】
制御部40は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/Oで構成されており、GNSS衛星80から送信される電波を右旋偏波用アンテナ10と左旋偏波用アンテナ20で受信し、受信した電波の電界強度を選択処理部30で比較する。
【0035】
そして、比較した電波の電界強度のうち、GNSS衛星80から送信される電波と同じ旋回方向の偏波用アンテナ、つまり、右旋偏波用アンテナ10で受信した電波の電界強度が、逆の旋回方向の偏波用アンテナ、つまり、左旋偏波用アンテナ20で受信した電波の電界強度より大きい場合に、右旋偏波用アンテナで受信した電波を測位に用い、小さい場合には、測位に用いないで、車両84(図3参照)の測位を行う。
【0036】
このとき、制御部40は、右旋偏波用アンテナ10で受信した電波の電界強度が所定の値以上である場合にのみ、右旋偏波用アンテナ10で受信した電波を測位に用い、受信した電波の電界強度が所定の値より小さい場合には、受信した電波を測位に用いないで、車両84の測位を行う。
【0037】
運転支援部60は、GNSS受信装置5で測位した車両84の現在位置を取得し、取得した車両84の現在位置を用いて、車両84の運転支援のために、照明の照射方向の制御を行うものであり、地図データ記憶部62、照明制御部64、ピッチ用モータ66及びヨー用モータ68を備えている。
【0038】
地図データ記憶部62は、車両84が走行するために必要な道路情報を含む地図データを記憶した記憶装置であり、具体的には、ハードディスク装置、DVD−ROM、CD−ROM、メモリカードなどで構成されている。
【0039】
照明制御部64は、GNSS受信装置5から取得した車両84の現在位置と地図データ記憶部62に記憶された道路情報とに基づいて、ピッチ用モータ66及びヨー用モータ68を作動させて、車両84の前方を照射する照明(ヘッドライト)の照射方向を制御する。
【0040】
ピッチ用モータ66は、照明制御部64からの信号を受け、ヘッドライトの照射方向を上下に変化させ、ヨー用モータ68は、照明制御部64からの信号を受け、ヘッドライトの照射方向を左右に変化させる。
【0041】
照明制御部64における制御内容は、以下の(ア)〜(エ)に示すものである。
(ア)GNSS受信装置5から車両84の現在位置を取得する。
(イ)地図データ記憶部62から、車両84前方の道路情報を取得する。
【0042】
(ウ)道路情報と車両84の現在位置から車両84前方の道路がカーブしたり、坂道になったりしているか否かを判定する。
(エ)道路がカーブしたり坂道になったりしている場合には、道路情報からカーブの方向や曲率半径、あるいは登坂角度などを取得し、カーブや坂道が始まる直前で、ピッチ用モータ66、ヨー用モータ68の作動を開始し、カーブや坂道の途中においても、照明の照射方向を道路情報に基づいて上下左右に変化させ、車両84の進む向の道路をヘッドライトで照射させる。
【0043】
(運転支援装置1の作動及び特徴)
運転支援装置1の作動及び特徴について、図3に基づき説明する。図3は、GNSS衛星80から送信された電波がビル82などで反射される様子を模式的に示した図である。GNSS衛星80から送信される電波(直接波)は、図3に示すように右旋偏波であるので、ビル82などで1回反射された電波は左旋偏波となる。
【0044】
したがって、GNSS衛星80からの直接波や反射波を右旋偏波用アンテナ10と左旋偏波用アンテナ20で受信した電波の電界強度を比較し、右旋偏波用アンテナ10で受信した電波の電界強度が左旋偏波用アンテナ20で受信した電波の電界強度より大きい場合に、右旋偏波用アンテナ10で受信した電波を測位に用い、小さい場合には、測位に用いないようにすれば、電界強度が強いGNSS衛星80からの直接波だけを用いて測位を行うことができる。
【0045】
つまり、ビル82からの反射波などのマルチチパスの影響を受けた電波を用いず、直接波のみによる複数のGNSS衛星80からの測位が可能となるので、高い位置測位精度を得ることができる。
【0046】
さらに、ビル82などで複数回反射した電波は右旋偏波になるので、右旋偏波を受信しても必ずしも直接波を受信することにはならないが、電波がビル82などで2回以上反射すると、その電波の電界強度は非常に低下する。
【0047】
したがって、GNSS受信装置5のように、右旋偏波の電波を受信しても、その電界強が所定以下の場合には、その信号を無視して測位するようにすれば、GNSS衛星80から送信される右旋偏波の直接波のみを用いて測位をすることができるので、位置測位精度の誤差を小さくすることができる。
【0048】
運転支援装置1は、このような高精度の測位が可能なGNSS受信装置5によって得られる精度の高い測位結果、つまり車両84の現在位置を用いて、運転支援のためのヘッドライトの照射方向制御を行っている。
【0049】
つまり、GNSS受信装置5により車両84の正確な現在位置が分かるので、地図データ記憶部62に記憶された、道路の曲率半径や幅などの車両84が走行するために必要な道路に関する情報(道路情報)に基づいて、走行している道路の前方の状況が予め把握できる。例えば、現在位置から100mの地点で道路が曲率半径300mで右カーブしているという情報が正確に把握できる。
【0050】
したがって、その情報に基づいて90m走行したらヘッドライトの照射方向を所定の角度右にするといった照明制御が可能となるので、夜間など照明を点灯した場合の車両84走行時の安全性を向上させることができる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、第1実施形態における運転支援機能をカーナビゲーション装置にし、GNSS受信装置の構成を一部変更した運転支援装置3について図4及び図5に基づき説明する。図4は、運転支援装置3の概略の構成を示すブロック図であり、図5は、GNSS受信装置7の概略の構成を示すブロック図である。なお、運転支援装置3は、第1実施形態における運転支援装置1と構成や作動が共通している部分が多いため、共通部分には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
運転支援装置3は、図4に示すように、GNSS受信装置7及びカーナビゲーション装置70を備えている。
GNSS受信装置7は、図5に示すように、右旋偏波用アンテナ10による受信作動と左旋偏波用アンテナ20による受信作動とを切り替えるための切替スイッチ50を備えている。
【0053】
GNSS信号処理部24は、図示しない低雑音増幅器、スーパーへテロダイン方式などによる中間周波数変換器や変調器を有しており、右旋偏波及び左旋偏波の何れの偏波面を有する電波の増幅及び変調ができるようになっている。
【0054】
そして、切換スイッチ50により右旋偏波用アンテナ10から電波が入力された場合は、右旋偏の電波を増幅、変調して選択処理部30へ出力し、切換スイッチ50により左旋偏波用アンテナ20から電波が入力された場合は、左旋偏の電波を増幅、変調して選択処理部30へ出力する。
【0055】
制御部40は、切替スイッチ50により右旋偏波用アンテナ10の受信作動と左旋偏波用アンテナ20の受信作動とを切り替えてGNSS衛星80からの電波を受信させる。
カーナビゲーション装置70は、図4に示すように、地図データ記憶部62、データ入力器71、操作スイッチ72、ナビ制御部73、外部メモリ74、音声出力装置75及び表示装置76を備えている。
【0056】
データ入力器71は、位置検出の精度向上のため、いわゆるマップマッチング用データ、地図データ及び目印データを含む各種データを入力するための装置である。媒体としては、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、メモリカード、HDD装置等の媒体を用いてもよい。
【0057】
操作スイッチ72は、運転者などの使用者が、運転支援装置3を操作するためのスイッチ類であり、例えば、表示装置76と一体となったタッチスイッチ若しくはメカニカルスイッチ等が用いられる。
【0058】
外部メモリ74は、HDD装置やメモリスティックなどであり、音声出力装置75から出力される音声データや運転支援装置1の各種設定に用いる運転者の個人情報など種々のデータが記憶されている。
【0059】
音声出力装置75は、図示しないスピーカ、オーディオアンプなどから構成される。出力する音声は、外部メモリ74に記憶されているデータ、又は、ナビ制御部73により合成されたものである。
【0060】
また、音声出力装置75は、運転支援装置3の構成装置としては省略することもできる。その場合、例えば、車両84(図3参照)本体のオーディオ機器など他の装置が備えている音声出力装置を利用してもよい。
【0061】
表示装置76は、経路案内のための地図や機器の操作を行うための複数の選択スイッチ画像(操作スイッチ72のタッチスイッチに相当)が表示されるものであり、LCDや有機ELディスプレイなどから構成され、カラー表示が可能である。
【0062】
また、表示装置76の画像には、GNSS受信装置7から入力された車両84の現在位置を示す車両84の現在位置マーク、データ入力器71から入力された地図データ及び地図上に表示する誘導経路等の付加データを重ねて表示することができる。
【0063】
ナビ制御部73は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらを接続するバスラインなどにより構成されている。
ナビ制御部73は、操作スイッチ72から目的地が入力されると、現在位置からその目的地までの最適な経路を自動的に選択して誘導経路を算出し、表示装置76に表示する、いわゆる経路案内機能を備えている。このような自動的に最適経路を算出する手法としては、ダイクストラ法等の公知の方法が用いられている。
【0064】
また、ナビ制御部73は、経路案内機能を実行する以外に、操作スイッチ72から入力された操作指令に基づいて、他の機器の操作出力を行う。
(運転支援装置3の作動及び特徴)
以上のような、運転支援装置3では、簡易で安価な切替スイッチ50を追加するだけで、右旋偏波用アンテナ10で受信した電波と左旋偏波用アンテナ20で受信した電波を処理するための複数のGNSS信号処理部12,22が不要となる。したがって、GNSS受信装置5の構成を簡易にすることができるので、GNSS受信装置7を小型化したりコストを低減したりすることができる。
【0065】
また、GNSS受信装置7を用いることにより、従来のGPS受信機に比べ、車両84の正確な現在位置を取得することができる。したがって、従来のGPS受信機を用いた経路案内よりも高機能なカーナビゲーション装置とすることができる。
【0066】
例えば、車両84から交差点までの距離が正確に把握できるので、よりきめ細かく正確な経路指示を行うことや目的地までの到着時間の報知をより正確に行うことなどが可能となる。
【0067】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、GNSS衛星80から送信される電波は右旋偏波であるとして説明したが、GNSS衛星80から出力される電波が左旋偏波であっても同様である。つまり、GNSS受信装置5,7で右旋偏波用アンテナにおける処理を左旋偏波用アンテナにおける処理に置き換えれば同様の作動及び特徴が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】運転支援装置1の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】GNSS受信装置5の概略の構成を示すブロック図である。
【図3】GNSS衛星80から送信された電波がビル82などで反射される様子を模式的に示した図である。
【図4】運転支援装置3の概略の構成を示すブロック図である。
【図5】GNSS受信装置7の概略の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0069】
1,3…運転支援装置、5,7…GNSS受信装置、10…右旋偏波用アンテナ、12,22、24…GNSS信号処理部、20…左旋偏波用アンテナ、30…選択処理部、40…制御部、50…切替スイッチ、60…運転支援部、62…地図データ記憶部、64…照明制御部、66…ピッチ用モータ、68…ヨー用モータ、70…カーナビゲーション装置、71…データ入力器、72…操作スイッチ、73…ナビ制御部、74…外部メモリ、75…音声出力装置、76…音声出力装置75及び表示装置、76…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位情報が重畳された左旋偏波又は右旋偏波の何れかの電波を送信するGNSS衛星からの電波を受信して測位を行うGNSS受信装置であって、
右旋偏波の電波を受信するための右旋偏波用アンテナと、
左旋偏波の電波を受信するための左旋偏波用アンテナと、
前記右旋偏波用アンテナで受信した電波と前記左旋偏波用アンテナで受信した電波の電界強度を比較する電界強度比較手段と、
前記GNSS衛星から送信される電波を前記右旋偏波用アンテナと前記左旋偏波用アンテナで受信し、前記受信した電波の電界強度を前記電界強度比較手段で比較し、該比較した電波の電界強度のうち、前記GNSS衛星から送信される電波と同じ旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波の電界強度が、逆の旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波の電界強度より大きい場合に、前記GNSS衛星と同じ旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波を測位に用い、小さい場合には、測位に用いない制御手段と、
を備えたことを特徴とするGNSS受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のGNSS受信装置において、
前記制御手段は、
前記GNSS衛星から送信される電波と同じ旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波の電界強度が所定の値以上である場合にのみ、前記GNSS衛星から送信される電波と同じ旋回方向の偏波用アンテナで受信した電波を測位に用い、前記受信した電波の電界強度が所定の値より小さい場合には、前記受信した電波を測位に用いないことを特徴とするGNSS受信装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のGNSS受信装置において、
前記右旋偏波用アンテナによる受信作動と前記左旋偏波用アンテナによる受信作動とを切り替えるための切替え手段を備え、
前記制御手段は、
前記切替え手段により前記右旋偏波用アンテナの受信作動と前記左旋偏波用アンテナの受信作動とを切り替えて前記GNSS衛星からの電波を受信することを特徴とするGNSS受信装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のGNSS受信装置を車両に搭載し、
前記GNSS受信装置で測位した前記車両の現在位置を入力し、入力した前記車両の現在位置に基づいて、前記車両の運転のための運転支援を行う運転支援手段を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の運転支援装置において、
前記運転支援手段は、
前記車両が走行するために必要な道路情報を含む地図データを記憶した地図データ記憶手段と、
前記GNSS受信装置で測位した前記車両の現在位置と前記地図データ記憶手段に記憶された道路情報とに基づいて、前記車両の前方を照射する照明の照射方向を制御する照明制御手段と、
を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項6】
請求項4に記載の運転支援装置において、
前記運転支援手段は、カーナビゲーション装置であることを特徴とする運転支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−186415(P2009−186415A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29075(P2008−29075)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】