説明

GaN結晶の成長方法

【課題】主面の面積が大きな大口径のGaN結晶基板を効率よく生産するためのGaN結晶の成長方法を提供する。
【解決手段】GaN種結晶基板101の主面101s上に第1の気相法により第1のGaN結晶110を成長させ、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の少なくともいずれかを加工することによりGaN種結晶基板101の主面101sに比べて面積が小さな主面111sを有する少なくとも1つの第1のGaN結晶基板111を得て、この第1のGaN結晶基板111bを液相法により成長させることにより第1のGaN結晶基板111bの主面111bsに比べて面積が大きな主面112sを有する第2のGaN結晶基板112を得て、この第2のGaN結晶基板112の主面112s上に第2の気相法により第2のGaN結晶120の成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主面の面積が大きな大口径のGaN結晶基板を効率よく生産するためのGaN結晶の成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)などの光デバイス、電子デバイスなどの半導体デバイス用の基板として、主面の面積が大きな大口径のGaN結晶基板が求められている。
【0003】
このような大口径のGaN結晶基板を製造するために、特開2005−236261号公報(以下、特許文献1という。)は、下地基板上にフラックス法などの液相法により第1のIII族窒化物結晶として第1のGaN(窒化ガリウム)結晶を成長させる工程と、この第1のGaN結晶上にHVPE(ハイドライド気相成長)法などの気相法により第2のIII族窒化物結晶として第2のGaN結晶を成長させる方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−236261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、HVPE法などの気相法により成長させた第2のGaN結晶は、結晶成長とともに第2のGaN結晶の外周部に結晶成長主面以外のファセットが形成される。このため、第2のGaN結晶を加工して得られるGaN結晶基板は、下地基板とされた第1のGaN結晶に比べて、主面の面積が小さくすなわち口径が小さくなる。
【0006】
すなわち、HVPE法などの気相法では、下地基板として用いたGaN結晶基板の主面の面積以上の主面を有するGaN結晶基板を再生産することが難しい。このため、主面の面積が大きな大口径のGaN結晶基板を得るために、下地基板として主面の面積が大きな大口径のサファイア基板、GaAs基板などのGaNと化学式が異なる基板上にGaN結晶をヘテロエピタキシャル成長させる必要があり、結晶性を高めることが困難であり、生産コストも高くなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決して、主面の面積が大きな大口径のGaN結晶基板を効率よく生産するためのGaN結晶の成長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、GaN種結晶基板を準備する工程と、GaN種結晶基板の主面上に第1の気相法により第1のGaN結晶を成長させる工程と、GaN種結晶基板および第1のGaN結晶の少なくともいずれかを加工することによりGaN種結晶基板の主面に比べて面積が小さな主面を有する少なくとも1つの第1のGaN結晶基板を得る工程と、第1のGaN結晶基板を液相法により成長させることにより第1のGaN結晶基板の主面に比べて面積が大きな主面を有する第2のGaN結晶基板を得る工程と、第2のGaN結晶基板の主面上に第2の気相法により第2のGaN結晶を成長させる工程と、を備えるGaN結晶の成長方法である。
【0009】
本発明にかかるGaN結晶の成長方法において、第2のGaN結晶基板の主面の面積を、GaN種結晶基板の主面の面積以上とすることができる。さらに、第1のGaN結晶基板は、第1のGaN結晶の中央よりも結晶成長主面側の結晶成長後半領域から加工して得ることができる。また、第1のGaN結晶基板は、GaN種結晶基板および第1のGaN結晶の中央よりもGaN種結晶基板側の結晶成長前半領域の少なくともいずれかから加工して得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主面の面積が大きな大口径のGaN結晶基板を効率よく生産するためのGaN結晶の成長方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかるGaN結晶の成長方法のある例を示す概略断面図である。
【図2】本発明にかかるGaN結晶の成長方法の別の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明にかかるGaN結晶の成長方法のさらに別の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜図3を参照して、本発明のある実施形態であるGaN結晶の成長方法は、GaN種結晶基板101を準備する工程(図1(A)、図2(A)および図3(A))と、GaN種結晶基板101の主面101s上に第1の気相法により第1のGaN結晶110を成長させる工程(図1(B)、図2(B)および図3(B))と、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の少なくともいずれかを加工することにより、GaN種結晶基板101の主面101sに比べて面積が小さな主面111sを有する少なくとも1つの第1のGaN結晶基板111を得る工程(図1(C)および(D)、図2(C)および(D)、ならびに図3(C)および(D))と、第1のGaN結晶基板111を液相法により成長させることにより、第1のGaN結晶基板111の主面111sに比べて面積が大きな主面112sを有する第2のGaN結晶基板112を得る工程(図1(E)、図2(E)および図3(E))と、第2のGaN結晶基板112の主面112s上に第2の気相法により第2のGaN結晶120を成長させる工程(図1(F)、図2(F)および図3(F))と、を備える。かかるGaN結晶の成長方法により、主面の面積が大きな大口径のGaN結晶基板を効率よく生産することができる。
【0013】
[GaN種結晶基板の準備工程]
図1(A)、図2(A)および図3(A)を参照して、本実施形態のGaN結晶の製造方法は、GaN種結晶基板101を準備する工程を備える。GaN種結晶基板101を準備する工程は、特に制限はなく、主面の面積が大きい大口径の下地基板上に気相法または液相法によりGaN種結晶を成長させ、得られたGaN種結晶の外周部を除去し、下地基板の主面に平行な面でスライスし、スライス面を研磨するなどの加工をすることによりGaN種結晶基板101が得られる。
【0014】
GaN種結晶の成長に用いられる下地基板は、特に制限はないが、転位密度が低く結晶性の高いGaN種結晶を成長させる観点から、GaN種結晶の格子定数との整合性が高い基板が好ましい。たとえば、サファイア基板、SiC(炭化珪素)基板、GaAs(砒化ガリウム)基板などが好ましく、III族窒化物基板がより好ましく、GaN基板がさらに好ましい。また、GaN種結晶を成長させる方法は、特に制限はないが、転位密度(主面および/または主面に平行な面における平均の転位密度をいう。以下同じ。)が低く結晶性の高いGaN種結晶を成長させる観点から、HVPE(ハイドライド気相エピタキシ)法、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法、MBE(分子線エピタキシ)法などの気相法、フラックス法、高窒素圧溶液法などの液相法、液相法に類似した方法であるアモノサーマル法などが好適に用いられる。
【0015】
[第1のGaN結晶を得る工程]
図1(B)、図2(B)および図3(B)を参照して、本実施形態のGaN結晶の製造方法は、GaN種結晶基板101の主面101s上に第1の気相法により第1のGaN結晶110を成長させる工程を備える。かかる第1のGaN結晶110を成長させる工程により、転位密度の低い第1のGaN結晶110が得られる。
【0016】
第1の気相法は、転位密度が低く結晶性の高い第1のGaN結晶110を成長させる方法であれば特に制限はなく、HVPE法、MOCVD法、MBE法、昇華法などが用いられるが、結晶成長速度が高い観点からHVPE法が好適に用いられる。HVPE法などの気相法で成長させた第1のGaN結晶110は、GaN種結晶基板101の主面101sから遠い位置になるほど、転位密度が低くなるとともに、外周部に(10−11)面および(11−22)面の少なくともいずれかのファセット110fが形成され、外周径が小さくなる。また、第1のGaN結晶110の外周部には(10−10)面のファセット110eも形成されるが、かかる(10−10)面にはGaN多結晶が成長しやすい。
【0017】
[第1のGaN結晶基板を得る工程]
図1(C)、図2(C)および図3(C)を参照して、本実施形態のGaN結晶の製造方法は、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の少なくともいずれかを加工することにより、GaN種結晶基板101の主面101sに比べて面積が小さな主面111sを有する少なくとも1つの第1のGaN結晶基板111を得る工程を備える。
【0018】
上記のように、第1のGaN結晶110は、外周部に(10−11)面および(11−22)面の少なくともいずれかのファセット110fが形成され、外周径が小さくなる。また、外周部に(10−10)面のファセット110eが形成されて、(10−10)面にGaN多結晶が成長する。このため、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の少なくともいずれかから、その外周部を除去する加工をして得られる第1のGaN結晶基板111の主面111sの面積は、GaN種結晶基板101の主面101sの面積より小さくなる。
【0019】
GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の少なくともいずれかを少なくとも1つの第1のGaN結晶基板111に加工する工程には、特に制限はなく、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の外周部を除去するサブ工程、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110をGaN種結晶基板101の主面101sに平行な面で分離するサブ工程、かかる分離により得られた第1のGaN結晶基板111の分離された面を研磨するサブ工程などが含まれる。これらの外周部除去サブ工程、分離サブ工程の順序には特に制限はなく、たとえば以下の方法がある。
【0020】
(第1のGaN結晶基板への加工工程の形態1)
図1(C)を参照して、第1のGaN結晶基板への加工工程のある形態は、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の外周部を除去するサブ工程と、外周部が除去されたGaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110をGaN種結晶基板101の主面101sに平行な面で分離するサブ工程と、かかる分離により得られた第1のGaN結晶基板111の分離された面を研磨するサブ工程と、を含む。本形態の加工工程により、GaN種結晶基板101の主面101sの面積より小さな主面111sを有する第1のGaN結晶基板111を少なくとも1つ得ることができる。
【0021】
本形態の加工工程において、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の外周部を除去する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高い観点から、外周研削、レーザー加工、コアドリル加工、放電加工などの方法が好ましい。
【0022】
また、外周部が除去されたGaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110をGaN種結晶基板101の主面101sに平行な面で分離する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高い観点から、スライス、レーザー加工、放電加工などの方法が好ましい。
【0023】
また、分離により得られた第1のGaN結晶基板111の分離された面を研磨する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高く大口径化への対応が容易な観点から、CMP(化学機械的研磨)、機械研磨、光照射援用化学研磨法などの方法が好ましい。
【0024】
ここで、HVPE法などの気相法により成長させた第1のGaN結晶110は、GaN種結晶基板101の主面101sから遠い位置になるほど、転位密度が低くなるとともに、外周部に(10−11)面および(11−22)面の少なくともいずれかのファセット110fが形成され、外周径が小さくなる。また、外周部に(10−10)面のファセット110eが形成されて、(10−10)面にGaN多結晶が成長する。
【0025】
このため、本形態の加工工程においては、同じ外周径で同じ面積の主面111sを有する第1のGaN結晶基板111を複数枚同時に作製することができるが、それらの第1のGaN結晶基板111の主面111sの面積は、GaN種結晶基板101の主面101sの面積に比べて、小さくなる。また、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の中央よりもGaN種結晶基板101側の結晶成長前半領域110aの少なくともいずれかから加工して得られる第1のGaN結晶基板111aの転位密度に比べて、第1のGaN結晶110の中央よりも結晶成長主面110g側の結晶成長後半領域110bから加工して得られる第1のGaN結晶基板111bの転位密度は低くなる。
【0026】
(第1のGaN結晶基板への加工工程の形態2)
図2(C)を参照して、第1のGaN結晶基板への加工工程の別の形態は、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110を、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な面で、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の中央よりもGaN種結晶基板101側の結晶成長前半領域110aと、第1のGaN結晶110の中央よりも結晶成長主面110g側の結晶成長後半領域110bと、に分離するサブ工程と、GaN種結晶基板101および結晶成長前半領域110aの外周部ならびに結晶成長後半領域110bの外周部を除去するサブ工程と、外周部が除去されたGaN種結晶基板101および結晶成長前半領域110aならびに外周部が除去された結晶成長後半領域110bをそれぞれGaN種結晶基板101の主面101sに平行な面で分離するサブ工程と、かかる分離により得られた第1のGaN結晶基板111の分離された面を研磨するサブ工程と、を含む。本形態の加工工程により、GaN種結晶基板101の主面101sの面積より小さな主面111sを有する第1のGaN結晶基板111を少なくとも1つ得ることができる。
【0027】
本形態の加工工程において、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110を、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の結晶成長前半領域110aと第1のGaN結晶110の結晶成長後半領域110bとに分離する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高い観点から、スライス、レーザー加工、放電加工などの方法が好ましい。
【0028】
また、GaN種結晶基板101および結晶成長前半領域110aの外周部ならび結晶成長後半領域110bの外周部を除去する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高い観点から、外周研削、レーザー加工、コアドリル加工、放電加工などの方法が好ましい。
【0029】
また、外周部が除去されたGaN種結晶基板101および結晶成長前半領域110aならびに外周部が除去された結晶成長後半領域110bを、それぞれGaN種結晶基板101の主面101sに平行な面で分離する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高い観点から、スライス、レーザー加工、放電加工などの方法が好ましい。
【0030】
また、分離により得られた第1のGaN結晶基板111の分離された面を研磨する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高く大口径化への対応が容易な観点から、CMP(化学機械的研磨)、機械研磨、光照射援用化学研磨法などの方法が好ましい。
【0031】
ここで、HVPE法などの気相法により成長させた第1のGaN結晶110は、GaN種結晶基板101の主面101sから遠い位置になるほど、転位密度が低くなるとともに、外周部に(10−11)面および(11−22)面の少なくともいずれかのファセット110fが形成され、外周径が小さくなる。また、外周部に(10−10)面のファセット110eが形成されて、(10−10)面にGaN多結晶が成長する。
【0032】
このため、本形態の加工工程においては、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の中央よりもGaN種結晶基板101側の結晶成長前半領域110aの少なくともいずれかから加工して得られる第1のGaN結晶基板111aの転位密度に比べて、第1のGaN結晶110の中央よりも結晶成長主面110g側の結晶成長後半領域110bから加工して得られる第1のGaN結晶基板111bの転位密度は低くなる。また、第1のGaN結晶基板111aの主面111asおよび第1のGaN結晶基板111bの主面111bsの面積はいずれもGaN種結晶基板101の主面101sの面積に比べて小さくなる。また、第1のGaN結晶基板111aの主面111asの面積は、第1のGaN結晶基板111bの主面111bsの面積に比べて、大きくなる。
【0033】
(第1のGaN結晶基板への加工工程の形態3)
図3(C)を参照して、第1のGaN結晶基板への加工工程のさらに別の形態は、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110を、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な面で、GaN種結晶基板101およびその近傍のGaN種結晶基板近傍領域110cと、第1のGaN結晶110からGaN種結晶基板近傍領域110cを除いた第1のGaN結晶の結晶成長領域110dと、に分離するサブ工程と、GaN種結晶基板101およびGaN種結晶基板近傍領域110cの外周部ならびに結晶成長領域110dの外周部を除去するサブ工程と、外周部が除去されたGaN種結晶基板101およびGaN種結晶基板近傍領域110cをGaN種結晶基板101の主面101sに平行な面で分離するサブ工程と、上記少なくともいずれかの分離により得られた第1のGaN結晶基板111の分離された面を研磨するサブ工程と、を含む。本形態の加工工程により、GaN種結晶基板101の主面101sの面積より小さな主面111sを有する第1のGaN結晶基板111を少なくとも1つ得ることができる。
【0034】
なお、本形態の加工工程におけるGaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110のGaN種結晶基板近傍領域110cは、形態2の加工工程におけるGaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の結晶成長前半領域110aに含まれる領域である。
【0035】
本形態の加工工程において、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110を、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110のGaN種結晶基板近傍領域110cと第1のGaN結晶110の結晶成長領域110dとに分離する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高い観点から、スライス、レーザー加工、放電加工などの方法が好ましい。
【0036】
また、GaN種結晶基板101およびGaN種結晶基板近傍領域110cの外周部ならび結晶成長領域110dの外周部を除去する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高い観点から、外周研削、レーザー加工、コアドリル加工、放電加工などの方法が好ましい。
【0037】
また、外周部が除去された結晶成長領域110dを、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な面で分離する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高い観点から、スライス、レーザー加工、放電加工などの方法が好ましい。
【0038】
また、上記の少なくともいずれかの分離により得られた第1のGaN結晶基板111の分離された面を研磨する方法には、特に制限はないが、加工が容易で加工精度が高く大口径化への対応が容易な観点から、CMP(化学機械的研磨)、機械研磨、光照射援用化学研磨法などの方法が好ましい。
【0039】
ここで、HVPE法などの気相法により成長させた第1のGaN結晶110は、GaN種結晶基板101の主面101sから遠い位置になるほど、転位密度が低くなるとともに、外周部に(10−11)面および(11−22)面の少なくともいずれかのファセット110fが形成され、外周径が小さくなる。また、外周部に(10−10)面のファセット110eが形成されて、(10−10)面にGaN多結晶が成長する。
【0040】
このため、本形態の加工工程においては、GaN種結晶基板101およびGaN種結晶基板近傍領域110cから加工により得られる第1のGaN結晶基板111cの転位密度に比べて、第1のGaN結晶110の結晶成長領域110dから加工して得られる第1のGaN結晶基板111dの転位密度は低くなる。また、第1のGaN結晶基板111cの主面111csおよび第1のGaN結晶基板111dの主面111dsの面積はいずれもGaN種結晶基板101の主面101sの面積に比べて小さくなる。また、第1のGaN結晶基板111cの主面111csの面積は、第1のGaN結晶基板111dの主面111dsの面積に比べて、大きくなる。
【0041】
このようにして、少なくとも1つの第1のGaN結晶基板111が得られる。こうして得られる第1のGaN結晶基板111の主面111sの面積は、上記の加工工程の形態1〜形態3のいずれの場合においても、GaN種結晶基板101の主面101sの面積に比べて小さくなる。このため、第1のGaN結晶基板上に気相法によりさらに成長させた次のGaN結晶から加工により得られる次のGaN結晶基板は、その主面の面積が第1のGaN結晶基板の主面の面積よりさらに小さくなる。すなわち、得られたGaN結晶基板をそのまま用いてその主面上に気相法により次のGaN結晶を成長させ、GaN結晶基板およびその主面上に成長させた次のGaN結晶を加工して次のGaN結晶基板を生産するGaN結晶基板の再生産を繰り返すと、得られるGaN結晶基板はその主面の面積が低減する。
【0042】
上記のようなGaN結晶基板の再生産において、得られるGaN結晶基板の主面の面積が低減するのを防止するためには、上記の第1のGaN結晶基板の主面の面積を増大させて、主面の面積を増大させたGaN結晶基板の主面上に次のGaN結晶を成長させる必要がある。
【0043】
[第2のGaN結晶基板を得る工程]
図1(C)〜(E)、図2(C)〜(E)、および図3(C)〜(E)を参照して、本実施形態のGaN結晶の製造方法は、第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cを液相法により成長させることにより、第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cの主面111s,111as,111bs,111csに比べて面積が大きな主面112sを有する第2のGaN結晶基板112を得る工程を備える。
【0044】
第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cを液相法により成長させることにより、第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cの主面111s,111as,111bs,111csに垂直な方向の結晶成長速度に比べて、第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cの主面111s,111as,111bs,111csに平行な方向の結晶成長速度を高くすることができる。このため、第1のGaN結晶基板の主面の面積を増大させて、第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cの主面111s,111as,111bs,111csに比べて面積が大きな主面112sを有する第2のGaN結晶基板112が得られる。
【0045】
第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cを成長させる液相法は、第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cの主面111s,111as,111bs,111csに垂直な方向の結晶成長速度に比べて、第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cの主面111s,111as,111bs,111csに平行な方向の結晶成長速度が高いものであれば特に制限はないが、転位密度が低く結晶性の高いGaN結晶を成長させる観点から、フラックス法、高窒素圧溶液法などが好ましい。また、同様の観点から、液相法に類似した方法であるアモノサーマル法なども好適である。
【0046】
ここで、第1のGaN結晶基板111の主面111sに平行な方向の結晶成長速度を高める観点から、上記のフラックス法において、フラックスは、Na、Li、またはNaおよびLiの混合フラックスなどが好ましく、結晶成長温度は800℃以上900℃以下が好ましく、窒素原料ガス圧力は1MPa以上10MPa以下が好ましい。また、同様の観点から、上記の高窒素圧溶液法において、結晶成長温度は1000℃以上1200℃以下が好ましく、窒素原料ガス圧力は50MPa以上200MPa以下が好ましい。
【0047】
さらに、上記第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cの主面111s,111as,111bs,111csの面積以上の主面112sを有する第2のGaN結晶基板112を再生産させることができる観点から、第1のGaN結晶基板111,111a,111b,111cを成長させた第2のGaN結晶基板112の主面112sの面積は、GaN種結晶基板101の主面101sの面積以上であることが好ましい。
【0048】
ここで、図1(C)および(D)を参照して、第1のGaN結晶基板111が、上記加工工程の形態1〜形態3において、それぞれ第1のGaN結晶110の中央よりも結晶成長主面側の結晶成長後半領域110bから加工して得られる場合は、そのGaN結晶基板111bの主面111bsの面積は、GaN種結晶基板101の主面101sの面積に比べて、相当に小さくなっている。したがって、このような第1のGaN結晶基板111bは、GaN種結晶基板101に比べて転位密度が低いが、GaN種結晶基板の主面の面積以上の主面を有する第2のGaN結晶基板を得るためには第1のGaN結晶基板を液相法により相当成長させる必要がある。
【0049】
また、図2(C)および(D)を参照して、第1のGaN結晶基板111が、上記加工工程の形態2において、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の中央よりもGaN種結晶基板側の結晶成長前半領域110aの少なくともいずれかから加工して得られる場合は、GaN種結晶基板101の主面101sの面積に比べて、少し小さくなっている。したがって、このような第1のGaN結晶基板111aは、GaN種結晶基板101に比べて転位密度は同じまたは僅かに低い程度であるが、GaN種結晶基板の主面の面積以上の主面を有する第2のGaN結晶基板を得るためには第1のGaN結晶基板を液相法により少し成長させれば足りる。
【0050】
また、図3(C)および(D)を参照して、第1のGaN結晶基板111が、上記加工工程の形態3において、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110のGaN種結晶基板近傍領域110cから加工して得られる場合は、GaN種結晶基板101の主面101sの面積に比べて、少し小さくなっている。したがって、このような第1のGaN結晶基板111cは、GaN種結晶基板101に比べて転位密度は同程度であるが、GaN種結晶基板の主面の面積以上の主面を有する第2のGaN結晶基板を得るためには第1のGaN結晶基板を液相法により少し成長させれば足りる。
【0051】
[第2のGaN結晶を成長させる工程]
図1(F)、図2(F)および図3(F)を参照して、本実施形態のGaN結晶の製造方法は、第2のGaN結晶基板112の主面112s上に第2の気相法により第2のGaN結晶120を成長させる工程を備える。第2のGaN結晶基板112は、その主面112sの面積が、第1のGaN結晶基板111の主面111sの面積より大きく、好ましくはGaN種結晶基板101の主面101sの面積以上である。このため、第2のGaN結晶基板112の主面112s上に第2の気相法により成長させた第2のGaN結晶120から加工された次のGaN結晶基板(第3のGaN結晶基板という。以下同じ。)を、その主面の面積の低減を抑制して、生産することができる。このようにして、GaN結晶基板を、その主面の面積の低減を抑制して、再生産することができる。
【0052】
第2の気相法は、転位密度が低く結晶性の高い第2のGaN結晶120を成長させる方法であれば特に制限はなく、HVPE法、MOCVD法、MBE法、昇華法などが用いられるが、結晶成長速度が高い観点からHVPE法が好適に用いられる。なお、HVPE法などの気相法で成長させた第2のGaN結晶120は、GaN種結晶基板101の主面101sから遠い位置になるほど、転位密度が低くなるとともに、外周部に(10−11)面および(11−22)面の少なくともいずれかのファセット110fが形成され、外周径が小さくなる。また、第1のGaN結晶110の外周部には(10−10)面のファセット110eも形成されるが、かかる(10−10)面にはGaN多結晶が成長しやすい。すなわち、第2の気相法も、上記の点については、第1の気相法と同様である。
【0053】
ここで、図1(D)〜(F)を参照して、上記加工工程の形態1〜形態3において、それぞれ第1のGaN結晶110の中央よりも結晶成長主面側の結晶成長後半領域110bから加工して得られた第1のGaN結晶基板111bを液相法により成長させた第2のGaN結晶基板112は、GaN種結晶基板101に比べて転位密度が低くなる。このため、かかる第2のGaN結晶基板112を用いて、第2のGaN結晶120を成長させることにより、転位密度の低いGaN結晶基板を再生産することができる。
【0054】
また、図2(D)〜(F)を参照して、上記加工工程の形態2において、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の中央よりもGaN種結晶基板側の結晶成長前半領域110aから加工して得られた第1のGaN結晶基板111aを液相法により成長させた第2のGaN結晶基板112は、GaN種結晶基板101の密度と同じまたは僅かに低い転位密度である。このため、かかる第2のGaN結晶基板112を用いて、第2のGaN結晶120を成長させることにより、転位密度が同じまたは僅かに低いGaN結晶基板を再生産することができる。
【0055】
また、図3(D)〜(F)を参照して、上記加工工程の形態3において、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110のGaN種結晶基板近傍領域110cから加工して得られた第1のGaN結晶基板111aを液相法により成長させた第2のGaN結晶基板112は、GaN種結晶基板101の密度と同等の転位密度である。このため、かかる第2のGaN結晶基板112を用いて、第2のGaN結晶120を成長させることにより、転位密度が同等のGaN結晶基板を再生産することができる。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
1.GaN種結晶基板の準備
図1(A)を参照して、直径が55mmで(0001)面の主面101sを有し、転位密度(主面における平均の転位密度をいう。以下同じ。)が5×105cm-2で厚さが400μmのGaN種結晶基板101を準備した。ここで、結晶基板の主面の面方位はX線回折により同定し、転位密度はCL(カソードルミネッセンス)により測定した。かかるGaN種結晶基板101は、下地基板であるGaAs基板の(111)主面上に、HVPE法により成長させたGaN種結晶を、下地基板の主面に平行な面でスライスして、スライス面を鏡面研磨して得られた。
【0057】
2.第1のGaN結晶の成長
図1(B)を参照して、GaN種結晶基板101の主面101s上に、HVPE法により、結晶成長温度1100℃、結晶成長速度300μm/hrで、厚さ5mmの第1のGaN結晶110を成長させた。得られた第1のGaN結晶110は、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な(0001)面の結晶成長主面110gと、結晶成長主面110gの外周に繋がる(10−11)面および(11−22)面のファセット110fと、ファセット110fの外周に繋がる(10−10)面のファセット110eを有していた。また、ファセット110eには、GaN多結晶が成長していた。
【0058】
3.第1のGaN結晶基板の作製
図1(C)を参照して、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110を、それらの外周部を研削により除去して、直径50mmの円筒形状に加工した後、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な面でスライスして、厚さが500μmの第1のGaN結晶基板111を6枚得た。これらの第1のGaN結晶基板111のスライス面を鏡面研磨して、直径が50mmで厚さが400μmの第1のGaN結晶基板111を6枚得た。こうして得られた第1のGaN結晶基板111は、以下のGaN結晶基板の再生産用のGaN結晶基板を除き、製品として供される。
【0059】
4.第2のGaN結晶基板の作製
図1(C)〜(E)を参照して、上記6枚の第1のGaN結晶基板111の内、GaN種結晶基板101側から6枚目の第1のGaN結晶基板111b(かかる第1のGaN結晶基板111bは、第1のGaN結晶110の中央よりも結晶成長主面110g側の結晶成長後半領域110bから上記3.のように作製されたもの)を、Naフラックス法により、Ga:Naのモル比が1:3.7のGa−Na融液を用いて、窒素ガス圧力3.039MPa(30気圧)、結晶成長温度850℃で、第1のGaN結晶基板111bの主面111sに方向な方向の結晶成長速度が40μm/hr、垂直な方向の結晶成長速度が8μm/hrで、200時間成長させることにより、主面の直径を58mmに増大させた。
【0060】
次いで、その外周部および主面を研削して、主面上のフラックス成長領域を全て除去した。フラックス法で高速成長させると、C面上に成長したフラックス成長領域は結晶性が悪化しやすいので、これを除去することが好ましい。
【0061】
さらに、主面を鏡面研磨して、主面112sの直径が55mmで厚さが350μmの第2のGaN結晶基板112を得た。この第2のGaN結晶基板112は、CL(カソードルミネッセンス)法により測定したところ、転位密度が2×105cm-2であり、GaN種結晶基板の転位密度(5×105cm-2)に比べて、低くなった。フラックス法による横方向成長領域(主面に平行な方向に成長した結晶の領域をいう、以下同じ。)の転位密度は1×105cm-2〜2×105cm-2と種結晶基板の転位密度より若干低くなった。
【0062】
5.第2のGaN結晶の成長
図1(F)を参照して、第2のGaN結晶基板112の主面112s上にHVPE法により、結晶成長温度1100℃、結晶成長速度300μm/hrで、厚さ5mmの第2のGaN結晶120を成長させた。かかる第2のGaN結晶120は、上記の第1のGaN結晶110と同様の形状および大きさを有していた。ここで、第2のGaN結晶120は第2のGaN結晶基板112上にHVPE法により成長されたものであり、第1のGaN結晶110はGaN種結晶基板101上にHVPE法に成長されたものであり、第2のGaN結晶基板112の転位密度(2×105cm-2)はGaN種結晶基板101の転位密度(5×105cm-2)に比べて低いことから、第2のGaN結晶の転位密度は第1のGaN結晶の転位密度に比べて低くなる。したがって、第2のGaN結晶を基板に加工することにより、転位密度の低いGaN結晶基板を再生産することができる。
【0063】
(実施例2)
1.GaN種結晶基板の準備
図2(A)を参照して、実施例1と同様にして、直径が55mmで(0001)面の主面101sを有し、転位密度が5×105cm-2で厚さが400μmのGaN種結晶基板101を準備した。
【0064】
2.第1のGaN結晶の成長
図2(B)を参照して、実施例1と同様にして、厚さ5mmの第1のGaN結晶110を成長させた。得られた第1のGaN結晶110は、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な(0001)面の結晶成長主面110gと、結晶成長主面110gの外周に繋がる(10−11)面および(11−22)面のファセット110fと、ファセット110fの外周に繋がる(10−10)面のファセット110eを有していた。また、ファセット110eには、GaN多結晶が成長していた。
【0065】
3.第1のGaN結晶基板の作製
図2(C)を参照して、第1のGaN結晶110をその中央を含むGaN種結晶基板101の主面101sに平行な面でスライスして、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の結晶成長前半領域110aと、第1のGaN結晶110の結晶成長後半領域110bとに分離した。
【0066】
次いで、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の結晶成長前半領域110aを、それらの外周部を研削により除去して、直径54mmの円筒形状に加工した後、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な面でスライスして、厚さが500μmの第1のGaN結晶基板111aを複数枚得た。これらの第1のGaN結晶基板111aのスライス面を鏡面研磨した。こうして、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の結晶成長前半領域110aから直径が54mmで厚さが400μmの第1のGaN結晶基板111aを複数枚得た。
【0067】
また、第1のGaN結晶110の結晶成長後半領域110bを、その外周部を研削により除去して、直径50mmの円筒形状に加工した後、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な面でスライスして、厚さが500μmの第1のGaN結晶基板111bを複数枚得た。これらの第1のGaN結晶基板111bのスライス面を鏡面研磨した。こうして、第1のGaN結晶110の結晶成長後半領域110bから直径50mmで厚さが400μmの第1のGaN結晶基板111bを、それぞれ複数枚得た。こうして得られた第1のGaN結晶基板111は、以下のGaN結晶基板の再生産用のGaN結晶基板を除き、製品として供される。
【0068】
4.第2のGaN結晶基板の作製
図2(C)〜(E)を参照して、上記複数の第1のGaN結晶基板111の内、GaN種結晶基板101を含む第1のGaN結晶基板111a(かかる第1のGaN結晶基板111aは、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の中央よりもGaN種結晶基板101側の結晶成長前半領域110aから上記3.のように作製されたもの)を、Naフラックス法により、Ga:Naのモル比が1:3.7のGa−Na融液を用いて、窒素ガス圧力3.039MPa(30気圧)、結晶成長温度850℃で、第1のGaN結晶基板111aの主面111asに方向な方向の結晶成長速度が40μm/hr、垂直な方向の結晶成長速度が8μm/hrで、100時間成長させることにより、主面の直径を58mmに増大させた。
【0069】
次いで、外周部および主面を研削して、主面上のフラックス成長領域を全て除去した。フラックス法で高速成長させると、C面上に成長したフラックス成長領域は結晶性が悪化しやすいので、これを除去することが好ましい。
【0070】
さらに主面を鏡面研磨して、主面112sの直径が55mmで厚さが350μmの第2のGaN結晶基板112を得た。この第2のGaN結晶基板112は、CL(カソードルミネッセンス)法により測定したところ、転位密度が5×105cm-2であり、GaN種結晶基板の転位密度(5×105cm-2)と同様であった。フラックス法による横方向成長領域の転位密度は3×105cm-2〜5×105cm-2と種結晶基板の転位密度より若干低くなった。
【0071】
5.第2のGaN結晶の成長
図2(F)を参照して、第2のGaN結晶基板112の主面112s上にHVPE法により、実施例1と同様にして、厚さ5mmの第2のGaN結晶120を成長させた。かかる第2のGaN結晶120は、上記の第1のGaN結晶110と同様の形状および大きさを有していた。ここで、第2のGaN結晶120は第2のGaN結晶基板112上にHVPE法により成長されたものであり、第1のGaN結晶110はGaN種結晶基板101上にHVPE法に成長されたものであり、第2のGaN結晶基板112の転位密度(5×105cm-2)はGaN種結晶基板101の転位密度(5×105cm-2)と同様であるから、第2のGaN結晶の転位密度は第1のGaN結晶の転位密度と同じ程度となる。したがって、第2のGaN結晶を基板に加工することにより、同程度の転位密度を有するGaN結晶基板を再生産することができる。
【0072】
(実施例3)
1.GaN種結晶基板の準備
図3(A)を参照して、実施例1と同様にして、直径が55mmで(0001)面の主面101sを有し、CL(カソードルミネッセンス)法により測定した転位密度が5×105cm-2で厚さが400μmのGaN種結晶基板101を準備した。
【0073】
2.第1のGaN結晶の成長
図3(B)を参照して、実施例1と同様にして、厚さ5mmの第1のGaN結晶110を成長させた。得られた第1のGaN結晶110は、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な(0001)面の結晶成長主面110gと、結晶成長主面110gの外周に繋がる(10−11)面および(11−22)面のファセット110fと、ファセット110fの外周に繋がる(10−10)面のファセット110eを有していた。また、ファセット110eには、GaN多結晶が成長していた。
【0074】
3.第1のGaN結晶基板の作製
図3(C)を参照して、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110を、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な面でスライスして、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110のGaN種結晶基板近傍領域110cを含む厚さ500μmの領域と、第1のGaN結晶110からGaN種結晶基板近傍領域110cを除いた第1のGaN結晶の結晶成長領域110dと、に分離した。
【0075】
次いで、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110のGaN種結晶基板近傍領域110cを含む厚さ500μmの領域を、その外周部を研削により除去した後、スライス面を研磨して、主面111csの直径が54mmで厚さが400μmの第1のGaN結晶基板111cを得た。
【0076】
また、第1のGaN結晶110の結晶成長領域110dを、その外周部を研削により除去して直径50mmの円筒形状に加工した後、GaN種結晶基板101の主面101sに平行な面でスライスして、厚さが500μmの第1のGaN結晶基板111dを複数枚得た。それらの第1のGaN結晶基板111dのスライス面を鏡面研磨して、主面111dsの直径が50mmで厚さが400μmの第1のGaN結晶基板111dを複数枚得た。こうして得られた第1のGaN結晶基板111は、以下のGaN結晶基板の再生産用のGaN結晶基板を除き、製品として供される。
【0077】
4.第2のGaN結晶基板の作製
図3(C)〜(E)を参照して、上記複数の第1のGaN結晶基板111の内、GaN種結晶基板101を含む第1のGaN結晶基板111c(かかる第1のGaN結晶基板111cは、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110のGaN種結晶基板近傍領域110cを含む厚さ500μmの領域から上記3.のように作製されたものである。ここで、GaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110のGaN種結晶基板近傍領域110cを含む厚さ500μmの領域は、図2(C)のGaN種結晶基板101および第1のGaN結晶110の中央よりもGaN種結晶基板101側の結晶成長前半領域110a内に含まれる。)を、Naフラックス法により、Ga:Naのモル比が1:3.7のGa−Na融液を用いて、窒素ガス圧力3.039MPa(30気圧)、結晶成長温度850℃で、第1のGaN結晶基板111aの主面111asに方向な方向の結晶成長速度が40μm/hr、垂直な方向の結晶成長速度が8μm/hrで、100時間成長させることにより、主面の直径を58mmに増大させた。次いで、外周部および主面を研削して、主面上のフラックス成長領域を全て除去した。フラックス法で高速成長させると、C面上に成長したフラックス成長領域は結晶性が悪化しやすいので、これを除去することが好ましい。
【0078】
さらに、主面を鏡面研磨して、主面112sの直径が55mmで厚さが350μmの第2のGaN結晶基板112を得た。この第2のGaN結晶基板112は、CL(カソードルミネッセンス)法により測定したところ、転位密度が5×105cm-2であり、GaN種結晶基板の転位密度(5×105cm-2)と同様であった。フラックス法による横方向成長領域の転位密度は3×105cm-2〜5×105cm-2と種結晶基板の転位密度より若干低くなった。
【0079】
5.第2のGaN結晶の成長
図3(F)を参照して、第2のGaN結晶基板112の主面112s上にHVPE法により、実施例1と同様にして、厚さ5mmの第2のGaN結晶120を成長させた。かかる第2のGaN結晶120は、上記の第1のGaN結晶と同様の形状および大きさを有していた。ここで、第2のGaN結晶120は第2のGaN結晶基板112上にHVPE法により成長されたものであり、第1のGaN結晶110はGaN種結晶基板101上にHVPE法に成長されたものであり、第2のGaN結晶基板112の転位密度(5×105cm-2)はGaN種結晶基板101の転位密度(5×105cm-2)と同様であるから、第2のGaN結晶の転位密度は第1のGaN結晶の転位密度と同じ程度となる。したがって、第2のGaN結晶を基板に加工することにより、同程度の転位密度を有するGaN結晶基板を再生産することができる。
【0080】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
101 GaN種結晶基板、101s,111as,111bs,111cs,111ds,111s,112s 主面、110 第1のGaN結晶、110a 結晶成長前半領域、110b 結晶成長後半領域、110c GaN種結晶基板近傍領域、110d 結晶成長領域、110e,110f ファセット、110g 結晶成長主面、111,111a,111b,111c,111d 第1のGaN結晶基板、112 第2のGaN結晶基板、120 第2のGaN結晶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaN種結晶基板を準備する工程と、
前記GaN種結晶基板の主面上に第1の気相法により第1のGaN結晶を成長させる工程と、
前記GaN種結晶基板および前記第1のGaN結晶の少なくともいずれかを加工することにより、前記GaN種結晶基板の主面に比べて面積が小さな主面を有する少なくとも1つの第1のGaN結晶基板を得る工程と、
前記第1のGaN結晶基板を液相法により成長させることにより、前記第1のGaN結晶基板の主面に比べて面積が大きな主面を有する第2のGaN結晶基板を得る工程と、
前記第2のGaN結晶基板の主面上に第2の気相法により第2のGaN結晶を成長させる工程と、を備えるGaN結晶の成長方法。
【請求項2】
前記第2のGaN結晶基板の主面の面積は、前記GaN種結晶基板の主面の面積以上である請求項1に記載のGaN結晶の成長方法。
【請求項3】
前記第1のGaN結晶基板は、前記第1のGaN結晶の中央よりも結晶成長主面側の結晶成長後半領域から加工して得られる請求項1または請求項2に記載のGaN結晶の成長方法。
【請求項4】
前記第1のGaN結晶基板は、前記GaN種結晶基板および前記第1のGaN結晶の中央よりも前記GaN種結晶基板側の結晶成長前半領域の少なくともいずれかから加工して得られる請求項1または請求項2に記載のGaN結晶の成長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−6794(P2012−6794A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144973(P2010−144973)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】