説明

TFTアレイ検査方法、製造方法および検査装置

【課題】 短時間で高精度な画素欠陥を検査することのできる検査方法等を提供する。
【解決手段】上述した課題は、アレイ状に配置した複数の画素とデータ線とを備え、画素の各々が、保持容量と、データ線と保持容量との導通状態を制御するスイッチ素子とを備えた、TFTアレイ基板の検査方法であって、スイッチ素子を導通状態にして、データ線の電位を第1の電位に設定して、保持容量を充電するステップと、保持容量の充電後に、スイッチ素子を非導通の状態で、データ線の電位を第2の電位に設定して、所定時間保持するステップと、所定時間保持後に、スイッチ素子を導通の状態で、データ線の電位を第3の電位に設定して、保持容量から放出された電荷を検出するステップと、検出された電荷に基づいて、前記TFTアレイ基板の前記画素の良否判定を行うステップとを含み、第3の電位が、第1の電位と第2の電位の間の電位であることを特徴とする検査方法等により解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TFTアレイ基板の検査方法に関し、特に画素の欠陥の有無を電気的な方法で検査を行う検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TFTアレイ基板は、液晶パネルディスプレイやELパネルディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)を構成する部品のひとつである。TFTアレイ基板は、液晶素子やEL素子などの機能素子の状態を画素毎に制御し、画素の発光レベルを制御する機能を有する。出射光は、カラーフィルタで赤・青・緑の三原色の光となり、カラー画像の構成要素となる。
【0003】
図2に代表的なTFTアレイ基板200の構成を示す。TFTアレイ基板200は、複数のゲート線211、212、213、214と、ゲート線と交差する複数のデータ線221、222、・・・、225と、ゲート線とデータ線の各交差点近傍に設けられアレイ状に配置された複数の画素241、242、・・・、284が備えられている。図2では、紙面の都合上、4行5列の計20個の画素しか記載していないが、実際のTFTアレイ基板はさらに多くの画素が配列し、列数、行数に応じたデータ線とゲート線が配設されている。
【0004】
また、図2では、発明の説明の都合上、各画素が制御する色を示してあるが、発色はカラーフィルタの色のみによって決定されるものであり、色毎にTFTアレイ基板の画素自体の内部構造が異なるわけではない。つまり、「赤」と表示された画素241の内部構造と、「緑」と表示された画素251の内部構造と、「青」と表示された画素261の内部構造は、全て同一の構造である。
【0005】
TFTアレイ基板200には、さらに、ラスタ線201と、ラスタゲート線202、203、204と、ラスタゲート線によって各データ線とラスタ線201との導通状態を制御するトランジスタ231、232、・・・、235とが備えられている。これらの構成要素は、主としてTFTアレイやFPDの動作試験のために、同一色の発色を制御する画素に同時に共通のデータ信号を供給するために設けられた構成要素であり、TFTアレイ本来の動作に不可欠な構成要素ではない。
【0006】
具体的な動作例としては、例えば、全ての「赤」の画素にデータを供給する場合には、ラスタゲート線204の電位を制御して、トランジスタ231とトランジスタ234を導通状態にする。すると、ラスタ線201と「赤」の画素が接続されているデータ線221、224とが導通状態となり、全ての「赤」の画素にデータ線の信号が供給される。同様に、全ての「緑」の画素にデータを供給する場合には、ラスタゲート線203に電圧を印加して、トランジスタ232とトランジスタ235を導通状態にする。
【0007】
図3にTFTアレイ200の各画素の構造を示す。図3は、画素241、242、251、252の近傍を拡大した図である。前述したように画素の内部構造は制御する発色が異なっても全て同一であるため、画素241を例にとって説明を行う。画素241は、トランジスタ311と、保持容量312により構成されている。トランジスタ311は、ゲート線241の電位によってデータ線221と保持容量312の一端との導通状態を制御する機能を有する。トランジスタ311は、アナログスイッチなどスイッチ機能を有する他のスイッチ素子と置き換え可能である。
【0008】
保持容量312の他端は共通線301に接続されている。共通線301は、全ての画素の保持容量の他端と接続されている。画素241は、この保持容量312の両端間の電位差で発光量を制御する機能を有する。例えば、液晶ディスプレイパネルの場合は、保持容量312と並列に液晶素子を接続して液晶の状態を制御する。また、ELディスプレイパネルの場合は、保持容量312と並列に電圧電流変換回路を接続して、電位差を電流量に変換することによって、EL素子を流れる電流量を制御して発光量を制御する。
【0009】
次に、代表的なTFTアレイ200の電気的な画素検査方法を簡単に説明する。まず、検査を行う画素(例えば画素241)に接続されたゲート線211に電圧を印加し、画素241内のトランジスタ311を導通状態にする。次に、データ線221に電圧を印加し、保持容量312を充電する。充電後トランジスタ311を非導通状態にして、データ線の電位を変更して、しばらくその状態を保持する。
【0010】
もし、画素241に欠陥がなければ、保持容量312は蓄えられた電荷を保持し続ける。ところが、トランジスタ311のオフ抵抗が小さかったり、保持容量312と周辺の線(例えば隣のデータ線222)が短絡していたりすると、保持容量312の電荷がリークして、次第に電荷量が減少する。
【0011】
保持後に、再びゲート311を導通状態にする。すると、保持容量312の電位とデータ線221の電位の違いから、保持容量からデータ線221に電荷が放出される。放出された電荷を検出することによって、画素の欠陥を判定することができる。
【0012】
【特許文献1】特開2003−43980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、リークする電流量が小さい場合には、保持容量を充電してから長い時間保持してから、電荷を検出しないと、電荷量の変化が検出できない。1つの画素の測定時間が長くなれば、TFTアレイ基板全体の検査時間が格段に長くなってしまう。そこで、リーク量が小さい欠陥も短時間で検出可能な検査方法等が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題は、アレイ状に配置した複数の画素とデータ線とを備え、前記画素の各々が、保持容量と、前記データ線と前記保持容量との導通状態を制御するスイッチ素子とを備えた、TFTアレイ基板の検査方法であって、前記スイッチ素子を導通状態にして、前記データ線の電位を第1の電位に設定して、前記保持容量を充電するステップと、前記保持容量の充電後に、前記スイッチ素子を非導通の状態で、前記データ線の電位を第2の電位に設定して、所定時間保持するステップと、前記所定時間保持後に、前記スイッチ素子を導通の状態で、前記データ線の電位を第3の電位に設定して、前記保持容量から放出された電荷を検出するステップと、
検出された前記電荷に基づいて、前記TFTアレイ基板の前記画素の良否判定を行うステップとを含み、前記第3の電位が、前記第1の電位と前記第2の電位の間の電位であることを特徴とする検査方法等により解決することができる。
【0015】
すなわち、充電した保持容量を保持する間、リークを促進する電圧をデータ線に印加することにより、短時間で大きなリークによる電荷移動を発生させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、短時間で高精度な画素欠陥を検査することのできる検査方法等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1を参照しながら、本発明を利用したTFTアレイ基板200の検査方法を示す。本検査工程は、TFTアレイ基板200の製造工程において、ガラス基板上に画素やデータ線、ゲート線などを構成した後に行われる。液晶素子やEL素子などの機能素子の封入工程の前であっても後であってもよい。
【0018】
図1では、TFTアレイ基板200が、検査装置100に接続されている。検査装置100は、出力電位が変更可能は電圧源101と、電荷量測定装置102と、制御装置103とから構成されている。電荷量測定装置102は電圧源101と直列に接続され、電圧源に流出入する電荷量を測定する。制御装置103は、TFTアレイ基板200の動作を制御する信号を発生するとともに、電圧源101の出力電位を制御し、さらに電荷量測定装置102の測定結果からTFTアレイ基板200の画素の良否判断を行う機能を有する。
【0019】
図1では、ラスタ線201は電荷量測定装置102に接続されている。また、ラスタデータ線202〜204と、ゲート線211〜214は制御装置103に接続されている。なお、TFTアレイ基板によっては、基板内にゲートドライバが内蔵され、基板外にはゲート線自体ではなく、ゲートドライバの制御信号が出力されているものもある。このようなタイプのTFTアレイ基板を検査する場合には、制御装置103をゲートドライバの制御線に接続され、制御装置103からドライバの制御信号を出力することになる。
【0020】
次に、図4のフローチャートと図5のタイミングチャートを参照しながら、本発明に係る検査方法の一実施態様を詳細に述べる。
なお、以下の実施態様では、スイッチ素子であるトランジスタが導通状態となるゲート電圧を「オン電圧」、非導通状態となるゲート電圧を「オフ電圧」と表記する。本実施態様で説明するTFTアレイ基板200内のトランジスタは、「オン電圧」を11V、「オフ電圧」を−5Vでドライブしている。つまり、ラスタデータ線202〜204とゲート線211〜214には、制御装置103から11Vまたは−5Vの電圧が印加されており、印加電圧によって各線に接続されているトランジスタ(231〜235、311、321等)の導通状態を制御している。オン電圧とオフ電圧は、トランジスタの極性や特性に応じて適宜設定可能である。
【0021】
本実施態様では、同一行に配置された同一色の発色を制御する複数の画素を同時に検査を行う。このため、まず検査対象となる画素が制御する色(検査対象色)に対応するラスタゲート線をオンにする(ステップ400)。本実施態様では、検査対象色として「赤」が選択され、ラスタゲート線204にオン電圧が、他色に対応するラスタゲート線202、203にオフ電圧が与えられる。これにより、ラスタゲート線204に接続されたトランジスタ231、234が導通状態となる。また、ラスタゲート線202、203に接続されたトランジスタ232、233、235が非導通状態となる。
【0022】
次に、電圧源101の出力電位を5Vに設定して、ラスタ線201の電位を5Vにする(ステップ401、50)。すると、導通状態となっているトランジスタ231、234を介して赤色の発色を制御する画素241〜244、271〜274に接続されたデータ線221、224の電位が約5Vとなる。印加された電圧が安定するまで約1マイクロ秒の間この状態を保持する(T〜T)。
【0023】
つぎに、検査対象となる画素が属する行(検査行)のゲート線にオン電圧を与える(ステップ402、52)。本実施態様では、第1行から順次検査を行うので、まず第1行のゲート線211にオン電圧を与え、他のゲート線212〜214にオフ電圧を与える。すると、第1行の画素241、251、・・・、281のスイッチ素子311、331が導通状態となる。すると、データ線に与えられた電圧が画素の保持容量に印加される。この時点では、「赤」の発色を制御する画素が接続されたデータ線221、224のみに電圧が与えられているから、画素241の保持容量312と、画素271の保持容量のみが充電されることになる。保持容量が十分充電されるまで、約5マイクロ秒間この状態を保持する(T〜T)。その後、検査行(第1行)のゲート線にオフ電圧を与え(ステップ403)、第1行の各画素のスイッチ素子311、331を非導通状態にする(T〜T)。
【0024】
その後、電圧源101の出力電位を−1Vに設定して、全てのラスタゲート線202〜204にオン電圧を与える(ステップ404、51)。すると、全てのデータ線221〜225の電位が−1Vとなる。この時点では、全ての画素のスイッチ素子311、321、332、342は非導通状態であるから、画素に欠陥がなければ充電された保持容量312から電荷が流出することはない。
【0025】
しかし、スイッチ素子311のオフ抵抗が小さかったり、保持容量312とデータ線221、222が短絡しているなどの欠陥があると、保持容量312に蓄積された電荷がリークする。このとき、データ線221〜225には、後述する電荷量測定時の電圧(0V)よりもさらにリークを促進する電圧が与えられているため、検査対象となる画素に欠陥があると、保持容量312に蓄積されている電荷が短時間で放出される。電荷が移動するためには相当の時間が必要となるため、所定の時間、この状態を保持する。保持する時間は、測定精度や検査時間などを勘案して適宜設定可能だが、実際の表示駆動時のフレームと同等の時間に設定することが望ましい。本実施例では、60Hz駆動を想定して16.7msの間、この状態を保持している(T〜T)。
【0026】
次に、ふたたび検査対象色のラスタゲート線204にオン電圧を、他のラスタゲート線202、203にオフ電圧を与えるとともに、電圧源101の出力電位を0Vに設定する(ステップ405)。この状態で、ラスタ線201や検査対象色である赤の画素が属するデータ線221、224の電位が安定するまでこの状態を保持して、基板200上の浮遊容量に蓄積された電荷を除電する(T〜T)。除電完了後、電荷量測定装置102をリセットする。
【0027】
そして、検査行である第1行のゲート線211にオン電圧を与える(ステップ406、53)。すると、第1行の全ての画素241、251、・・・、281のスイッチ素子311、331が導通状態となる。すると、保持容量312に蓄積されている電荷がデータ線221に放出され、トランジスタ231、ラスタ線201、電荷量測定装置102を通って、電圧源101に流れ込む。同様に、画素271など第1行の赤の発色を制御する各画素の保持容量から放出された電荷がラスタ線201、電荷量測定装置102を通って、電圧源101に流れ込む。
【0028】
このため、電荷量測定装置102で測定される電荷量は、第1行の赤の発色を制御する画素から放出された電荷の総量となる(ステップ407)。電荷の放出には時間がかかるため、この状態を5マイクロ秒程度保持する(T〜T)。このときの保持時間は、保持容量312の容量と放出された電荷が移動する経路上の抵抗(例えば、トランジスタ213、311のオン抵抗や電荷量測定装置102の内部抵抗など)によって決まる時定数により適宜設定する。
【0029】
ここで、電荷量測定装置102の測定について更に詳細に述べる。ゲート線211にオン電圧が与えられると、上述したように第1行の赤の発色を制御する画素の保持容量(312など)に蓄積された電荷が放出されるが、それとともにゲート線211にオン電圧が与えられた瞬間に(T)、スイッチ素子(311など)のゲート・ドレイン間の容量にオン電圧が印加されることにより発生する電流(カップリング電流)も流れる。このため、電荷量測定装置102の測定値は、求めたい保持容量からの放出電荷量よりも大きな値を示す(T〜T、54)。
【0030】
所定時間経過後、ゲート線211にオフ電圧を印加した瞬間、ゲート・ドレイン間の容量には先のカップリング電流をキャンセルする電流が流れる(T、55)。約5マイクロ秒ほどして測定値が安定したとき(T)の測定値が、求めるべき保持容量に蓄積された電荷量である。電荷量測定装置102は、ゲート線211にオン電圧を印加する前(T直前)の測定値Bと、ゲート線211に再びオフ電圧を印加後に収束した測定値A(T)の2回測定を行い、AとBとの差分(A−B)求めて、第1行の赤の発色を制御する画素から放出された電荷の総量の測定結果とする。
【0031】
電荷量測定装置102で測定された値は、制御装置103のメモリに格納される。以上で、第1行の赤色の発色を制御する画素241、271の検査を終了する。この時点では、第2行の赤色の発色を制御する画素242、272の検査が未完了であるため(ステップ408)、ステップ401に戻って、第2行の赤色の発色を制御する画素242、272について、ステップ401からステップ407の工程を実行して検査を行う。
【0032】
このようにして、赤色の発色を制御する画素について第1行から順次検査を行って、最終行まで検査を終えると、次に異なる色の発色を制御する画素について、同様に検査を行う(ステップ409)。本実施態様では、赤色の次には、緑色の発色を制御する画素の検査を行う。すなわち、第1行の緑色の発色を制御する画素251、281の検査を行い、次に第2行の緑色の発色を制御する画素252、282の検査を行うという順で最終行まで検査する。緑色が終了すると、最後に青色の発色を制御する画素の検査を実行する。
【0033】
最後に、制御装置103に記録された測定結果が、全て所定の範囲に入っているかを判定することにより、TFTアレイ基板の良否判定を行う(ステップ410)。すなわち、測定された電荷量が全て所定の範囲内であれば、当該基板は良品と判定し、範囲外のものが含まれている場合には、欠陥がある製品と判定して、欠陥が発見された画素と測定結果を特定して出力する。良否判定や判定結果の出力の方法は、要求されるTFTアレイ基板の品質や必要とされるデータによって適宜変更可能である。たとえば、多少の欠陥画素が存在していても実用上問題ない表示装置向けのTFTアレイ基板の検査では、測定された電荷量に所定の範囲を超えるものが含まれていたとしても、その数が少なく超過量も小さいようであれば、良品と判定とする方法も考えられる。
【0034】
本実施態様では、同一行に配置された同一色の発色を制御する複数の画素を同時に検査を行う(例えば、第1行目の赤色の発色を制御する画素241、271を同時に検査を行う)ため、基板200上の全ての画素の検査を短時間で行うことができるという利点がある。この反面、欠陥が判定された場合、画素241と画素271のどちらの画素に欠陥があるのかを判定することはできない。このため、必要に応じて、欠陥の可能性がある画素を画素単位に個別に検査を行って、欠陥がある画素を特定する必要がある。
【0035】
次に、図6のフローチャートと図7のタイミングチャートを参照しながら、本発明に係る別の実施態様を詳細に述べる。電圧源101や電荷量測定装置102などの装置構成は図1と同じである。先に説明した実施態様との違いは、容量素子を充電するときにデータ線に与える電位と、容量素子に蓄積された電荷量を放電するときにデータ線に与える電位とが、同一電圧であるという点である。
【0036】
まず検査対象となる画素が制御する色(検査対象色)に対応するラスタゲート線をオンにする(ステップ600)。本実施態様では、検査対象色として「赤」が選択され、ラスタゲート線204にオン電圧が、他色に対応するラスタゲート線202、203にオフ電圧を印加する。これにより、ラスタゲート線204に接続されたトランジスタ231、234が導通状態となる。また、ラスタゲート線202、203に接続されたトランジスタ232、233、235が非導通状態となる。
【0037】
次に、電圧源101の出力電位を0Vに設定して、ラスタ線201の電位を0Vにする(ステップ601)。すると、電圧源101から印加された電圧は、導通状態となっているトランジスタ231、234を介してデータ線221、224に与えられる。データ線の電位が安定するまで約1マイクロ秒の間この状態を保持する(T〜T)。
【0038】
つぎに、検査対象となる画素が属する行(検査行)のゲート線にオン電圧を与える(ステップ602、72)。本実施態様では、第1行から順次検査を行うので、まず第1行のゲート線211にオン電圧を与え、他のゲート線212、213、214にオフ電圧を与える。すると、第1行の画素241、251、・・・、281のスイッチ素子311、331が導通状態となる。すると、データ線の電位が画素の保持容量に印加される。この時点では、「赤」の発色を制御する画素が接続されたデータ線221、224のみに電圧が与えられていることから、画素241の保持容量312と、画素271の保持容量(図示せず)のみが充電されることになる。保持容量が十分充電されるまで、約5マイクロ秒間この状態を保持する(T〜T)。その後、検査行(第1行)のゲート線にオフ電圧を与え(ステップ603)、第1行の各画素のスイッチ素子311、331を非導通状態にする(T〜T)。
【0039】
その後、電圧源101の出力電位を−1Vに設定して、全てのラスタゲート線202〜204にオン電圧を与える(ステップ604、71)。すると、全てのデータ線221〜225の電位が−1Vとなる。この時点では、全ての画素のスイッチ素子311、321、332、342は非導通状態であるから、画素に欠陥がなければ保持容量312から電荷が流出することはない。
【0040】
しかし、スイッチ素子311のオフ抵抗が小さかったり、保持容量312と近接して配置されたデータ線221、222が短絡しているなどの欠陥があると、データ線から保持容量312にリーク電流が流れる。すなわち、この時点で保持容量312の電位は0Vであるが、データ線の電位は−1Vであるため、保持容量の電位を下げるように電荷が供給されることになる。この状態を所定する時間は、測定精度や検査時間などを勘案して適宜設定可能だが、実際の表示駆動時のフレームと同等の時間に設定することが望ましい。本実施例では、60Hz駆動を想定して16.7msの間、この状態を保持している(T〜T)。
【0041】
次に、ふたたび検査対象色のラスタゲート線204にオン電圧を、他のラスタゲート線202、203にオフ電圧を与えるとともに、電圧源101の出力電位を0Vに設定する(ステップ605)。この状態で、ラスタ線201や検査対象色である赤の画素が属するデータ線221、224の電位が安定するまでこの状態を保持して、基板200上の浮遊容量に蓄積された電荷を除電する(T〜T)。除電完了後、電荷量測定装置102をリセットする。
【0042】
そして、検査行である第1行のゲート線211にオン電圧を与える(ステップ606、73)。すると、第1行の全ての画素241、251、・・・、281のスイッチ素子311、331が導通状態となる。このとき、電圧源101と保持容量312との間に電位差があれば、保持容量312に蓄積されている電荷がデータ線221に放出され、トランジスタ231、ラスタ線201、電荷量測定装置102を通って、電圧源101に流れ込む。同様に、画素271など第1行の赤の発色を制御する各画素の保持容量と電圧源101との間に電位差があれば、当該保持容量から放出された電荷がラスタ線201、電荷量測定装置102を通って、電圧源101に流れ込む。
【0043】
このため、電荷量測定装置102で測定される電荷量は、第1行の赤の発色を制御する画素から放出された電荷の総量となる(ステップ607)。本実施態様では、保持容量充電時(ステップ602)のデータ線の電位と電荷検出時(ステップ607)のデータ線の電位が等しいので、もし、検査対象である第1行の赤の発色を制御する画素241、271のいずれにも欠陥がなければ、両者間に電位差はなく電荷の流出入はない。しかし、もし画素に欠陥があってリーク電流が発生して保持容量の電圧が−1V近傍になっていると、データ線の電圧(0V)との電位差に応じた電荷移動が発生することになる。
【0044】
電荷の移動には時間がかかるため、この状態を5マイクロ秒程度保持する(T〜T)。このときの保持時間は、保持容量312の容量と放出電流路上の抵抗(例えば、トランジスタ213、311のオン抵抗や電荷量測定装置102の内部抵抗など)によって決まる時定数により適宜設定する。
【0045】
ここで、電荷量測定装置102の測定について更に詳細に述べる。ゲート線211にオン電圧が与えられると、上述したように第1行の赤の発色を制御する画素の保持容量(312など)に蓄積された電荷が放出されるが、それとともにゲート線211にオン電圧が与えられた瞬間(T)に、スイッチ素子(311など)のゲート・ドレイン間の容量にオン電圧が印加されることにより発生する電流(カップリング電流)も流れる(74)。このため、電荷量測定装置102の測定値は、保持容量からの放出電荷とカップリング電流による電荷の和となる。
【0046】
所定時間経過後、ゲート線211にオフ電圧を印加すると、ゲート・ドレイン間の容量には先のカップリング電流をキャンセルする電流が流れる(T、75)。約5マイクロ秒ほどして測定値が安定したとき(T)の測定値が、求める保持容量に蓄積された電荷量となる。電荷量測定装置102は、ゲート線211にオン電圧を印加する前(T直前)の測定値Dと、ゲート線211に再びオフ電圧を印加後に収束した測定値C(T)の2回測定を行い、CとDとの差分(C−D)を求めて、第1行の赤の発色を制御する画素から放出された電荷の総量の測定結果とする。
【0047】
電荷量測定装置102で測定された値は、制御装置103のメモリに格納される。以上で、第1行の赤色の発色を制御する画素241、271の検査を終了する。この時点では、第2行の赤色の発色を制御する画素242、272の検査が未完了であるため(ステップ608)、ステップ601に戻って、第2行の赤色の発色を制御する画素242、272について、ステップ601からステップ607の工程を実行して検査を行う。
【0048】
このようにして、赤色の発色を制御する画素について第1行から順次検査を行って、最終行まで検査を終えると、次に異なる色の発色を制御する画素について、同様に検査を行う(ステップ609)。本実施態様では、赤色の次には、緑色の発色を制御する画素の検査を行う。すなわち、第1行の緑色の発色を制御する画素251、281の検査を行い、次に第2行の緑色の発色を制御する画素252、282の検査を行うという順で最終行まで検査する。緑色が終了すると、最後に青色の発色を制御する画素の検査を実行する。
【0049】
最後に、制御装置103に記録された測定結果が、全て所定の範囲に入っているかを判定することにより、TFTアレイ基板の良否判定を行う(ステップ610)。すなわち、測定された電荷量が全て所定の範囲内であれば、当該基板は良品と判定し、範囲外のものが含まれている場合には、欠陥がある製品と判定して、欠陥が発見された画素と測定結果を特定して出力する。良否判定や判定結果の出力の方法は、要求されるTFTアレイ基板の品質や必要とされるデータによって適宜変更可能である。たとえば、多少の欠陥画素が存在していても実用上問題ない表示装置向けのTFTアレイ基板の検査では、測定された電荷量に所定の範囲を超えるものが含まれていたとしても、その数が少なく超過量も小さいようであれば、良品と判定とする方法も考えられる。
【0050】
本実施態様では、電圧源101の出力電圧が2つのレベル(0Vと−1V)ですむため、先に説明した実施態様(図4、5の実施態様)に比べて装置構成が簡素になるという利点がある。その反面、欠陥のない画素では電荷の流出入がないため、電荷量の絶対値から保持容量の容量値を求めることができず、容量値を求める必要がある場合には、別条件での測定を行う必要があり、検査時間が増大してしまう特徴がある。このことは、本実施態様で利用する電荷量測定装置が、電荷量の絶対値を測定できる能力まで有している必要は必ずしもなく、所定の電荷量以上の電荷の流出入があったか否かを検出する能力を備えていればよいといえる。
【0051】
本発明における「電荷量測定装置」とは、上述した実施態様の電荷量測定装置102のように電荷量の絶対値を測定する装置のみならず、所定の範囲の電荷量の電荷の流出入があったか否かを検出する装置も含まれる。また、電荷量を直接的に測定する装置のみならず、他の物理量を測定して、その測定値から電荷量を求める装置も含まれる。例えば、保持時間の間の電流量を測定して、測定された電荷量のデータを数値処理により積分して電荷量の絶対値を求める装置であってもよい。同様に、本発明において、電荷を「検出」するとは、所定範囲の電荷量の移動があったか否かの判定のみならず、絶対的な電荷量の測定をも含む概念である点に留意されたい。
【0052】
以上、本発明に係る技術的思想を特定の実施例を参照しつつ詳細にわたり説明したが、本発明の属する分野における当業者には、請求項の趣旨及び範囲から離れることなく様々な変更及び改変を加えることが出来ることは明らかである。例えば、実施態様で紹介したTFTアレイ基板200は、液晶パネルディスプレイ用のTFTアレイ基板であるが、ELパネルディスプレイ用のTFTアレイ基板の画素も、スイッチ素子と、スイッチ素子に直列に接続された保持容量という同様な構成を含むため、同様な検査方法で検査を行うことができる。本発明における「TFTアレイ基板」とは、液晶パネルディスプレイ用のTFTアレイ基板に限定されるものではなく、保持容量と、前記データ線と前記保持容量との導通状態を制御するスイッチ素子を含む画素を有する他の用途向けのTFTアレイ基板も含む。
【0053】
また、画素の充電および検出を行う順序も適宜変更可能である。例えば、保持容量を充電する工程(ステップ401〜403、ステップ601〜603)を第1行から最終行まで全て実行してから、保持工程(ステップ404、405、604、405)を1回だけ実行し、再び第1行から順次、電荷を検出する工程(ステップ406、407、606、607)を実行してもよい。また、良否判定を画素の検査を終了してからまとめて実行せずに、電荷を検出する工程(ステップ407、607)を終了後に逐一判定を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る検査装置の概略構成図である。
【図2】代表的なTFTアレイ基板の概略構成図である。
【図3】代表的なTFTアレイ基板の画素の概略構成図である。
【図4】本発明の実施態様を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の実施態様を説明するタイミングチャートである。
【図6】本発明の別の実施態様を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の別の実施態様を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0055】
100 検査装置
101 電圧源
102 電荷量測定装置
103 制御装置
200 TFTアレイ基板
221、222、・・・、225 データ線
241、242、・・・、284 画素
311、321、331、341 スイッチ素子
312、322、332、342 保持容量


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状に配置した複数の画素とデータ線とを備え、前記画素の各々が、保持容量と、前記データ線と前記保持容量との導通状態を制御するスイッチ素子とを備えた、TFTアレイ基板の検査方法であって、
前記スイッチ素子を導通状態にして、前記データ線の電位を第1の電位に設定して、前記保持容量を充電するステップと、
前記保持容量の充電後に、前記スイッチ素子を非導通の状態で、前記データ線の電位を第2の電位に設定して、所定時間保持するステップと、
前記所定時間保持後に、前記スイッチ素子を導通の状態で、前記データ線の電位を第3の電位に設定して、前記保持容量から放出された電荷を検出するステップと、
検出された前記電荷に基づいて、前記TFTアレイ基板の前記画素の良否判定を行うステップとを含み、
前記第3の電位が、前記第1の電位と前記第2の電位の間の電位であることを特徴とする検査方法。
【請求項2】
前記第3の電位が、前記第1の電位と同電位であることを特徴とする請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
前記保持容量を充電するステップが複数の画素の保持容量を同時に充電するステップであり、かつ、前記電荷を検出するステップが複数の画素の保持容量を同時に検出するステップであることを特徴とする請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記複数の画素が、全て同一色の発色を制御する画素であることを特徴とする請求項3記載の検査方法。
【請求項5】
アレイ状に配置した複数の画素とデータ線とを備え、前記画素の各々が、保持容量と、前記データ線と前記保持容量との導通状態を制御するスイッチ素子とを備えた、TFTアレイ基板の製造方法であって、前記製造方法が前記TFTアレイ基板の検査工程を含み、前記検査工程が、
前記スイッチ素子を導通状態にして、前記データ線の電位を第1の電圧に設定して、前記保持容量を充電するステップと、
前記保持容量の充電後に、前記スイッチ素子を非導通の状態で、前記データ線の電位を第2の電位に設定して、所定時間保持するステップと、
前記所定時間保持後に、前記スイッチ素子を導通の状態で、前記データ線の電位を第3の電位に設定して、前記保持容量から放出された電荷を検出するステップと、
検出された前記電荷に基づいて前記TFTアレイ基板の前記画素の良否判定を行うステップとを含み、
前記第3の電位が、前記第1の電位と前記第2の電位の間の電位であることを特徴とする製造方法。
【請求項6】
アレイ状に配置した複数の画素とデータ線とを備え、前記画素の各々が、保持容量と、前記データ線と前記保持容量との導通状態を制御するスイッチ素子とを備えた、TFTアレイ基板の検査装置であって、前記検査装置が、
出力電位が変更可能な電圧源と、
前記電圧源と直列に接続された電荷量測定装置と、
前記電圧源の出力電位と前記電荷量測定装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、前記スイッチ素子を導通状態にして、前記データ線の電位を第1の電位に設定して、前記保持容量を充電した後、前記スイッチ素子を非導通の状態で、前記データ線の電位を第2の電位に設定して、所定時間保持し、その後、前記スイッチ素子を導通の状態で、前記データ線の電位を第3の電位に設定して、前記保持容量から放出された電荷を検出して、前記TFTアレイ基板の前記画素の良否判定を行う装置であり、かつ、
前記第3の電位が、前記第1の電位と前記第2の電位の間の電位であることを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−70702(P2008−70702A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250455(P2006−250455)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】