説明

TFTアレイ検査装置

【課題】基板上に形成されたアクティブエリアと共にアクティブエリア外に設けられたTFT駆動回路の欠陥を検出する。
【解決手段】TFTアレイ検査装置は、TFT駆動回路に検査信号を供給するTFT駆動回路用ドライバ部と、アクティブエリアの走査画像に基づいて、TFT駆動回路およびアクティブエリアの駆動状態を検出する検出部とを備える。TFT駆動回路用ドライバ部は、基板上のTFT駆動回路に検査信号を供給することによってTFT駆動回路のTFTアレイを駆動し、基板上のアクティブエリアに形成されたTFTアレイを駆動する。検出部は、アクティブエリアの走査画像を用いて、アクティブエリア上で駆動していない非駆動部位を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶基板等の製造過程等で行われるTFTアレイ検査工程に関し、特に、TFTアレイ検査を行う際のTFTアレイ駆動、および欠陥種の分類に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶基板や有機EL基板等のTFTアレイが形成された半導体基板の製造過程では、製造過程中にTFTアレイ検査工程を含み、このTFTアレイ検査工程において、TFTアレイの欠陥検査が行われている。
【0003】
TFTアレイは、例えば液晶表示装置のピクセル(画素電極)を選択するスイッチング素子として用いられる。TFTアレイを備える基板は、例えば、走査線として機能する複数本のゲートラインが平行に配設されると共に、信号線として記載する複数本のソースラインがゲートラインに直交して配設され、両ラインが交差する部分の近傍にTFT(Thin film transistor)が配設され、このTFTを介してピクセル(画素電極)に駆動信号が供給される。
【0004】
このTFTアレイにおいて、走査線(ゲートライン)や信号線(ソースライン)の断線、走査線(ゲートライン)と信号線(ソースライン)の短絡、画素を駆動するTFTの特性不良による画素欠陥等の欠陥検査は、例えば、対向電極を接地し、ゲートラインの全部あるいは一部に、例えば、−15V〜+15Vの直流電圧を所定間隔で印加し、ソースラインの全部あるいは一部に検査用の駆動信号を印加することによって行っている。(例えば、特許文献1の従来技術、特許文献2。)
【0005】
TFTアレイ検査装置は、TFTアレイに検査用の駆動信号を入力し、そのときの電圧状態を検出することで欠陥検出を行うことができる。
【0006】
液晶アレイ検査装置等のTFTアレイ検査装置において、液晶基板等の基板上を撮像して得られる撮像画像として、光学的に撮像して得られる光学撮像画像、あるいは、電子ビームやイオンビーム等の荷電ビームを基板上で二次元的に走査して得られる走査画像を用いることができる。
【0007】
例えば、検査対象である基板のTFTアレイに検査信号を印加してTFTアレイを所定電位状態とし、基板上に電子ビームやイオンビーム等の荷電ビームを二次元的に照射して走査し、このビーム走査で得られる走査画像に基づいてTFTアレイを検査する。
【0008】
電子線を用いたTFTアレイ検査装置では、ピクセル(画素電極)に対して電子線を照射し、この電子線照射によって放出される二次電子をフォトマルチプライヤなどによってアナログ信号に変換して検出し、ピクセル(画素電極)に印加された電圧波形を二次電子波形に変えてイメージ化することによって走査画像を求め、これによってTFTアレイの電気的検査を行い、欠陥検査を行っている。
【0009】
基板のTFTアレイとピクセルは対応して形成されており、TFTアレイに駆動信号を印加することによって特定のピクセルを駆動することができる。TFTアレイ欠陥は、例えば、取得した走査画像の信号強度を、所定パターンの駆動信号で駆動した際に正常なTFTアレイから得られる走査画像の信号強度と比較することによって検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−271516号公報
【特許文献2】特開2004−309488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、TFTアレイの駆動は、基板の外部に設けたTFT駆動回路によって行われている。TFT駆動回路は、例えばゲート回路からなるシフトレジスタによって構成される。シフトレジスタは、ゲートラインに駆動信号を順に印加し、パネル等のアクティブエリア内に配置されるTFTアレイを順に駆動する。
【0012】
近年、パネルのコストダウン等を目的として、外付けとしていたTFT駆動回路を基板上に組み込む構成が提案されている。
【0013】
そのため、基板およびパネルの歩留まりを向上させるために、基板上においてアクティブエリアに形成されるTFTアレイの欠陥だけでなく、アクティブエリア外に形成されたTFT駆動回路の欠陥についても検査・修正が必要となっている。
【0014】
従来のTFTアレイ検査装置は、基板上のアクティブエリアであるパネル部分のTFTアレイに検査信号を印加することによって行う構成であるため、基板上のアクティブエリア外に設けられたTFT駆動回路の欠陥を検出することができないという課題がある。
【0015】
そこで、本発明は上記課題を解決して、基板上に形成されたアクティブエリアと共にアクティブエリア外に設けられたTFT駆動回路の欠陥を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明は、基板上に形成されたTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置である。本発明のTFTアレイ検査装置が検査対象とする基板上には、アクティブエリアとこのアクティブエリアを駆動するTFT駆動回路とが設けられており、共にTFTアレイで形成されている。
【0017】
本発明のTFTアレイ検査装置は、TFT駆動回路に検査信号を供給するTFT駆動回路用ドライバ部と、アクティブエリアを走査し、この走査で得られるアクティブエリアの画像出力に基づいて、TFT駆動回路およびアクティブエリアの駆動状態を検出する検出部とを備える。
【0018】
本発明のTFT駆動回路用ドライバ部は、基板上に設けられたTFT駆動回路に検査信号を供給することによってTFT駆動回路のTFTアレイを駆動する。TFT駆動回路のTFTアレイを駆動することによって、基板上のアクティブエリアに形成されたTFTアレイを駆動する。
【0019】
本発明の検出部は、アクティブエリアの走査画像を用いて、アクティブエリア上で駆動していない非駆動部位を検出する。非駆動部位は、アクティブエリアの走査画像の信号強度に基づいて検出することができる。例えば、アクティブエリアの走査画像の信号強度と、正常に駆動した状態における信号強度と比較することで検出することができる。
【0020】
検出部は、検出した非駆動部位の出現状態に基づいて、アクティブエリアの非駆動状態とTFT駆動回路の非駆動状態とを検出する。この非駆動状態の検出において、TFT駆動回路の非駆動状態をアクティブエリアの非駆動状態よりも優先して検出する。
【0021】
本発明のTFTアレイ検査装置が検査対象とする基板に設けられるTFT駆動回路はゲート回路を備える。このゲート回路は、TFTアレイによって形成されるシフトレジスタによって構成される。
【0022】
本発明のTFT駆動回路用ドライバ部は、TFT駆動回路のシフトレジスタのゲート回路を順に駆動する。ゲート回路は、アクティブエリアをシフトレジスタの駆動順序に応じて順に駆動する。アクティブエリア上のTFTアレイは、TFT駆動回路によって順に駆動され、このTFTアレイに対応するピクセルはソースラインに印加される電圧が印加される。このピクセルの電圧状態により、TFTアレイの非駆動状態を検出することができ、駆動回路あるいはアクティブエリアのTFTアレイが正常状態であるか異常状態であるかの欠陥判定を行うことができる。
【0023】
TFT駆動回路の駆動信号は、駆動回路のTFTアレイに先に印加され、次にアクティブエリアのTFTアレイに印加されるため、TFTアレイの非駆動状態の検出は、TFT駆動回路の非駆動状態をアクティブエリアの非駆動状態よりも優先して検出される。
【0024】
さらに、本発明のTFTアレイ検査装置は、基板上に形成されるTFTアレイの欠陥種を判別する欠陥種判別部を備える。
【0025】
本発明の欠陥種判別部は、検出部で検出したアクティブエリアの走査画像内で検出される非駆動部位が現れる形態が、互いに分離した領域で現れる形態である場合にはアクティブエリアの欠陥と判定し、連続的又は断続的な領域で現れる形態である場合にはTFT駆動回路の欠陥と判定する。
【0026】
通常、アクティブエリアで発生するTFTアレイの欠陥は、他のTFTアレイと独立しているため、アクティブエリア上に現れる非駆動部位は、互いに分離した領域として現れる。そこで、検出部で検出したアクティブエリアの走査画像内で検出される非駆動部位が現れる形態が互いに分離した領域で現れる形態である場合には、アクティブエリア内におけるTFTアレイの欠陥として判定する。
【0027】
一方、TFT駆動回路で発生するTFTアレイの欠陥は、シフトレジスタ上の欠陥部位のゲート回路を通してアクティブエリアに印加される駆動信号が停止するため、この欠陥部位のゲート回路を通して印加されるゲートラインの領域がアクティブエリア上において非駆動部位として現れる他、欠陥部位から後方にあるゲート回路についても駆動信号の供給が停止するため、この欠陥部位のゲート回路に対応するゲートラインから後方の領域についてもアクティブエリア上において非駆動部位として現れる。そこで、このような場合には、連続的又は断続的な領域で現れる形態である場合にはTFT駆動回路の欠陥として判定する。
【0028】
欠陥種判別部は、アクティブエリアの欠陥種判別において、非駆動部位が互いに分離した領域で現れる形態において、非駆動部位が点状部位である場合には点欠陥と判定し、非駆動部位が線状部位である場合には線欠陥と判定し、各被駆動部位の位置をアクティブエリア上のTFTアレイの欠陥位置として判定する。
【0029】
また、欠陥種判別部は、TFT駆動回路の欠陥種判別において、連続的な領域で現れる非駆動部位が面状の領域、あるいは、断続的な領域で現れる非駆動部位が、線状部位が断続的に現れる領域である場合には、アクティブエリア上の前記した領域において、その領域を駆動するTFT駆動回路の駆動順で先頭に対応するTFT駆動回路上の位置を、TFT駆動回路のTFTアレイの欠陥位置として判定する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、TFT駆動回路に検査信号を供給するTFT駆動回路用ドライバ部を備える構成とすることによって、検査対象の基板上に、アクティブエリアとアクティブエリアを駆動するTFT駆動回路が設けられ、共にTFTアレイで形成される場合においても、アクティブエリアのTFTアレイの他にTFT駆動回路のTFTアレイについても欠陥検査を行うことができる。
【0031】
また、本発明によれば、アクティブエリアを走査し、この走査で得られるアクティブエリアの画像出力に基づいて、TFT駆動回路およびアクティブエリアの駆動状態を検出する検出部を備える構成とすることによって、検出した非駆動部位の出現状態に基づいて、アクティブエリアの非駆動状態とTFT駆動回路の非駆動状態とを区別して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】TFT駆動回路が形成された基板の構成例を説明するための図である。
【図2】本発明のTFTアレイ検査装置の構成を説明するための図である。
【図3】本発明のTFTアレイ検査装置によって基板に駆動信号を印加するプローバフレームの構成を説明するための図である。
【図4】本発明のTFTアレイ検査装置において、基板上のTFT駆動回路とTFT駆動回路用ドライバ部との関係を説明するための図である。
【図5】本発明のTFTアレイ検査装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】正常時において、本発明のTFTアレイ検査装置で得られるアクティブエリアの走査画像例を説明するための図である。
【図7】本発明のTFTアレイ検査装置において、アクティブエリア上に欠陥がある場合のアクティブエリアの走査画像例を説明するための図である。
【図8】本発明のTFTアレイ検査装置において、TFT駆動回路上に欠陥がある場合のアクティブエリアの走査画像例を説明するための図である。
【図9】本発明のTFTアレイ検査装置において、アクティブエリア上およびTFT駆動回路上に欠陥がある場合のアクティブエリアの走査画像例を説明するための図である。
【図10】本発明のTFTアレイ検査装置による欠陥種の判別処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら詳細に説明する。以下では、図1を用いてTFT駆動回路が形成された基板の構成例を説明し、図2〜4を用いて本発明のTFTアレイ検査装置の構成を説明し、図5,10のフローチャートを用いて本発明のTFTアレイ検査装置による動作を説明し、図6〜9を用いて本発明のTFTアレイ検査装置で得られるアクティブエリアの走査画像例を説明する。
【0034】
はじめに、図1を用いて本発明のアレイ検査装置が検査対象とする基板の一構成例を説明する。
【0035】
図1において、TFTアレイ検査装置1が検査対象とする基板100上には、パネル等のアクティブエリア101の他に、アクティブエリア101のTFTアレイを駆動するためのTFT駆動回路102が形成されている。アクティブエリア101およびTFT駆動回路102にはTFTアレイが形成される。
【0036】
アクティブエリア101は、TFTアレイ(図示していない)に検査信号を印加することによって、TFTアレイに対応するピクセルを駆動することができる。駆動するTFTアレイの選択は、TFT駆動回路102のゲート回路(図示していない)を介してゲートライン(図示していない)に信号を印加することで行い、選択されたTFTアレイに対して、ソースライン(図示していない)を通して電圧を印加することによって、TFTアレイに対応するピクセル(図示していない)を所定電圧に設定する。
【0037】
この所定電圧の設定において、TFTアレイに欠陥がある場合には、ピクセルの電圧は所定電圧と異なる電圧状態となる。欠陥によってピクセル現れる電圧状態は、短絡欠陥や断線欠陥等の欠陥種によって異なり、印加した電圧よりも低い電圧が現れる場合や、電圧を印加しない状態で電圧が現れる場合がある。
【0038】
TFT駆動回路102は、アクティブエリア101と同様に基板100上に形成されるTFTアレイによって構成される。TFTアレイは、例えば、複数のゲート回路を含むシフトレジスタを構成し、アクティブエリア101のゲートラインに対してゲート信号を順に供給する。
【0039】
基板100上には複数のアクティブエリア101が形成され、各アクティブエリア101に対してTFT駆動回路102が形成される。基板100は、ゲートラインやソースラインに供給するゲート信号や走査信号を外部から入力するための端子パッド103が設けられる。端子パッド103とTFT駆動回路102との間は、配線104によって接続されている。
【0040】
端子パッド103は、プローバフレームに設けられたプローブピン等を接触させることによって外部から信号を受け、配線104を通してTFT駆動回路102に入力する。
【0041】
図1に示した基板100の構成は一例であり、この構成に限られるものではない。例えば、アクティブエリア101に対するTFT駆動回路102や端子パッド103の配置位置は、図1に示すようにアクティブエリア101のx方向(図中の横方向)に限らずy方向(図中の縦方向)としてもよい。
【0042】
次に、図2を用いて本発明のアレイ検査装置の一構成例を説明する。図2に示す構成例では、液晶基板等のTFT基板に電子線を照射し、TFT基板から放出される二次電子を検出し、二次電子の検出信号から走査画像を形成し、この走査画像に基づいて欠陥検出を行う構成例を示している。本発明は、検査対象の基板は液晶基板に限らず、また、基板走査は電子線に限らずイオンビーム等の荷電ビームとすることができる。また、検出信号は照射する荷電ビームに依存し、二次電子に限られるものではない。
【0043】
TFTアレイ検査装置1は、液晶基板等の基板100を載置すると共にXY方向に搬送自在とするステージ22と、基板100上に設けられたパネル等のアクティブエリア101のTFTアレイ(図示していない)に検査信号を印加するプローバフレーム20と、基板100上を走査してアクティブエリア101の画像出力を取得する検出部2と、検出部2で取得した画像出力に基づいて欠陥を検出する欠陥検出部9および欠陥種を判別する欠陥種判別部10を備える。
【0044】
検出部2は、ステージ22の上方位置にステージ22から離して配置された電子銃3と、基板100のアクティブエリア101のピクセル(図示していない)から放出される二次電子を検出する検出器4とを備える。電子銃3および検出器4は複数組みを設けることができる。
【0045】
走査制御部8は、ステージ駆動制御部(図示していない)と電子線走査制御部(図示していない)の機能を備え、ステージ駆動制御部はステージ22の駆動を制御し、電子線走査制御部は電子銃3が照射する電子線の照射方向を制御して、基板100上の電子線の走査を制御する。
【0046】
さらに、本発明のTFTアレイ検査装置1は、基板100上に形成されるTFT駆動回路102を駆動するためのTFT駆動回路用ドライバ部7を備える。TFT駆動回路用ドライバ部7は、検査信号生成部6で生成した検査信号を入力し、駆動信号としてTFT駆動回路102に供給する。
【0047】
検査信号生成部6が生成する検査信号は、アクティブエリアにおける欠陥の種類を判別するために、複数の信号パターンを生成する。アクティブエリアにおける欠陥の種類としては、例えば、短絡欠陥や断線欠陥等がある。検査信号を駆動信号として基板に供給した際、アクティブエリアに欠陥がある場合には、その欠陥の種類によって得られる走査画像には点欠陥部位や線欠陥部位の非駆動部位が現れる。
【0048】
信号処理部5は、検出器4が検出する二次電子の検出信号を信号処理し走査画像を形成する。信号処理部5によって得られた走査画像の信号強度や検出位置は、欠陥検出部9、欠陥種判別部10に送られ、欠陥位置の検出および欠陥種の判定が行われる。欠陥検出部9は、信号処理部5から送られた走査画像の信号強度に基づいてアクティブエリア101内において非駆動部位を検出する。
【0049】
非駆動部位は、TFTアレイに駆動信号を印加しても駆動状態とならない部位である。非駆動部位の検出は、正常時において得られる走査画像の信号強度をしきい値として設定しておき、アクティブエリアに駆動信号を印加した際に得られる走査画像の信号強度をこのしきい値と比較することで行うことができる。欠陥時における信号強度としきい値との大小関係は欠陥の種類に依存し、また、アクティブエリアに印加する検査信号の信号パターンも検出する欠陥種に応じて異なる。そのため、欠陥検出部9において、欠陥検出に用いるしきい値および信号強度との大小関係は、検出する欠陥種に応じて設定する。
【0050】
アクティブエリア101に出現する非駆動部位は、アクティブエリア101のTFTアレイに欠陥があることによって非駆動となる場合と、TFT駆動回路102にTFTアレイに欠陥があることによって非駆動となる場合とを含んでいる。アクティブエリア101のTFTアレイに欠陥があることによって発生する非駆動部位と、TFT駆動回路102のTFTアレイに欠陥があることによって発生する非駆動部位は、アクティブエリア101上に出現する際にその形態が異なって現れる。
【0051】
本発明のTFTアレイ検査装置1は、基板100上に形成されるTFTアレイの欠陥種を判別する欠陥種判別部10を備え、欠陥検出部9で検出したアクティブエリア101の走査画像内で検出される非駆動部位について、非駆動部位が出現する状態に基づいて、欠陥がアクティブエリア101内のTFTアレイによるものであるか、あるいはTFT駆動回路102内のTFTアレイによるものであるかを判別する。
【0052】
本発明の欠陥種判別部10は、欠陥検出部9で検出したアクティブエリアの走査画像内で検出される非駆動部位が現れる形態が、互いに分離した領域で現れる形態である場合にはアクティブエリア101で発生した欠陥と判定し、連続的又は断続的な領域で現れる形態である場合にはTFT駆動回路102で発生した欠陥と判定する。
【0053】
アクティブエリア101内のTFTアレイに欠陥が発生した場合には、他のTFTアレイと独立して発生するため、アクティブエリア101上には点欠陥や線欠陥のように、互いに分離した領域として現れる。欠陥種判別部10は、このようにアクティブエリア101の走査画像内で検出される非駆動部位が互いに分離した領域で現れる形態である場合には、アクティブエリア101内のTFTアレイに欠陥があるものとして判定する。
【0054】
一方、TFT駆動回路102内のTFTアレイに欠陥が発生した場合には、TFT駆動回路102のレイシフトレジスタ上において欠陥が発生したゲート回路を通してアクティブエリア101に印加する駆動信号が停止することになる。
【0055】
この場合には、欠陥部位のゲート回路を通して印加されるゲートラインの領域が非駆動部位として現れる他、欠陥部位から後方にあるゲート回路についても駆動信号の供給が停止されるため、欠陥部位のゲート回路のゲートラインから後方のゲートラインへの駆動信号を停止されるため、欠陥部位よりの下方の部分全体の領域が非駆動状態となり、線欠陥が断続する欠陥領域や、線欠陥が連続してなる面状の欠陥領域が出現する。
【0056】
欠陥種判別部10は、上記したように、アクティブエリア101の走査画像内で検出される非駆動部位が、線欠陥が断続する欠陥領域、あるいは、線欠陥が連続する面状の欠陥領域の形態で現れる場合には、TFT駆動回路102のTFTアレイに欠陥が発生したものとして判定する。
【0057】
欠陥種判別部10は、アクティブエリア101の欠陥種判別において、非駆動部位が互いに分離した領域の形態で現れたとき、その非駆動部位が点状部位である場合には点欠陥と判定し、非駆動部位が線状部位である場合には線欠陥と判定する。さらに、アクティブエリアの走査画像上に現れる非駆動部位の位置からアクティブエリア上のTFTアレイの欠陥位置を判定する。
【0058】
また、欠陥種判別部10は、TFT駆動回路102の欠陥種判別において、非駆動部位が線欠陥が断続する欠陥領域や、線欠陥が連続してなる面状の欠陥領域が出現する場合に、TFT駆動回路102のTFTアレイの欠陥と判定し、アクティブエリアの走査画像上に現れる非駆動部位の位置からTFT駆動回路102上のTFTアレイの欠陥位置を判定する。TFTアレイの欠陥位置は、アクティブエリアの走査画像上に現れる領域において、駆動信号の供給順序で先頭に対応する位置に対応するTFT駆動回路102上のTFTアレイの位置を欠陥位置として判定する。
【0059】
図3は、本発明のTFTアレイ検査装置1によって基板100に駆動信号を印加するプローバフレーム20の構成を説明するための図である。
【0060】
プローバフレーム20はプローブピン21を備え、配線を介してTFT駆動回路用ドライバ部7と接続される。プローブピン21は、基板100上に形成された端子パッド103に接触させることによって、TFT駆動回路用ドライバ部7からの検査信号を駆動信号として基板100上のTFT駆動回路102に供給する。
【0061】
図4は、基板100上のTFT駆動回路102とTFT駆動回路用ドライバ部7との関係を説明するための図であり、図1で示した基板100に図3で示したプローバフレーム20を配置した状態を示している。
【0062】
検査信号生成部6で生成された検査信号は、TFT駆動回路用ドライバ部7からプローバフレーム20内に配置された配線を通してプローブピン21に送られる。プローブピン21は、基板100上に設けられた端子パッド103と接触し、配線104を通してTFT駆動回路102に供給される。供給された検査信号は、TFT駆動回路102を駆動する駆動信号として動作し、TFT駆動回路102を構成するTFTアレイからなるシフトレジスタを介して、アクティブエリア101内のゲートラインおよびソースラインを通して各TFTアレイにゲート信号およびソース信号を供給し、TFTアレイを駆動すると共に所定の電圧を印加する。
【0063】
次に、本発明のTFTアレイ検査装置により欠陥検出の動作例を図5〜図10を用いて説明する。
【0064】
TFTアレイ検査装置は、検査信号生成部6で生成した検査信号をTFT駆動回路用ドライバ部7から基板100上に形成されるTFT駆動回路102に供給し、このTFT駆動回路102によってアクティブエリア101の各TFTアレイを駆動し、その駆動状態を走査画像として取得する(S1)。
【0065】
欠陥検出部9は、信号処理部5で取得した走査画像を用いて欠陥の有無を判定する。欠陥判定は、走査画像と正常なTFTアレイに対して検査信号を印加した際に得られる走査画像とを比較することで行うことができる(S2)。
【0066】
S2の欠陥判定において欠陥が有ると判定された場合には、その欠陥種を判別する。欠陥種の判別は、欠陥がアクティブエリア内のTFTアレイであるか、あるいはTFT駆動回路内のTFTアレイであるかの判別を行う他に、アクティブエリア内の欠陥である場合には、その欠陥が短絡や断線であるか等の判別を行う。欠陥が短絡や断線であるか等の判別は、正常なTFTアレイに検査信号を印加した際に得られる基準の走査画像と比較することで行うことができ、この検査信号は、検出する欠陥種によって予め設定されたものを用いる(S3)。
【0067】
S2の欠陥判定において欠陥が無いと判定された場合には、基板上に形成されたアクティブエリアおよびTFT駆動回路のTFTアレイは正常であると判定する。 (S4)。
【0068】
図6は、アクティブエリアおよびTFT駆動回路のTFTアレイが正常である場合の走査画像を模式的に示している。図示した走査画像例では、正常状態において、アクティブエリア内の信号強度が全面で均一な走査画像である場合を正常であるとしている。印加する走査信号の種類によっては、正常状態のアクティブエリア内の走査画像が格子状のパターンを表す場合がある。
【0069】
検出して得られた走査画像に現れるパターンと正常状態で得られる走査画像とを比較することで、欠陥の有無、欠陥種、欠陥位置等を判定する
【0070】
図6において、アクティブエリア101のTFTアレイは、TFT駆動回路102に設けられたシフトレジスタのゲート回路からの駆動信号を受けて駆動する。アクティブエリア101のゲートラインとTFT駆動回路102のシフトレジスタとは対応関係にあり、シフトレジスタの各ゲート回路が順に動作することによって、アクティブエリア101のゲートラインに順に駆動信号が印加される。図6に示す例において、TFT駆動回路102のシフトレジスタが図中の上方から下方に向かって順に駆動することによって、アクティブエリア101においても図中の上方から下方に向かって順にゲートラインに駆動信号が印加され、ゲートライン上に配置されたTFTアレイが順に動作する。
【0071】
図7〜図9は、アクティブエリアのTFTアレイないしTFT駆動回路のTFTアレイに欠陥がある場合の走査画像例を示している。
【0072】
図7はTFT駆動回路内のTFTアレイに欠陥がある場合を示す。図7(a)はTFT駆動回路のTFTアレイ(図中のa)に欠陥がある場合の走査画像例であり、図7(b)はTFT駆動回路内のTFTアレイ(図中のb)に欠陥がある場合の走査画像例である。
【0073】
図7(a),(b)において、TFT駆動回路のシフトレジスタにおいてaの位置にあるTFTアレイに欠陥がある場合には、この欠陥を有したTFTアレイが構成するゲート回路が動作しないため、このTFTアレイに対応するアクティブエリア101のゲートラインへの駆動信号の供給は停止する。さらに、シフトレジスタ上において欠陥のあるTFTアレイのゲート回路よりも後方に配置されるゲート回路にも駆動信号が流れないため、前記したアクティブエリア101のゲートラインよりも後方のゲートラインに対しても駆動信号の供給が停止する。
【0074】
このため、図7(a)に示す例では、例えば、TFT駆動回路102のシフトレジスタにおいて位置aのTFTアレイに欠陥がある場合には、アクティブエリア101の走査画像には、位置aのTFTアレイに対応するアクティブエリア上の位置Laから下方に向かって断続的な領域Aからなる非駆動部位が現れる。
【0075】
また、図7(b)に示す例では、例えば、TFT駆動回路102のシフトレジスタにおいて位置bのTFTアレイに欠陥がある場合には、アクティブエリア101の走査画像には、位置bのTFTアレイに対応するアクティブエリア上の位置Lbから下方に向かって連続的な領域Bからなる非駆動部位が現れる。
【0076】
したがって、アクティブエリア101の走査画像において、領域Aあるいは領域Bに示すような断続的あるいは連続的な非駆動部位が現れた場合には、TFT駆動回路102上のTFTアレイに欠陥があると判別することができ、各領域において駆動方向で先頭に対応するTFT駆動回路102上のTFTアレイに欠陥があると判別することができる。
【0077】
図8はアクティブエリア内のTFTアレイに欠陥がある場合を示す。図8(a)はアクティブエリアのTFTアレイ(図中の位置c,位置d)に欠陥がある場合の走査画像例であり、図8(b)はアクティブエリアのTFTアレイ(図中の位置e,位置f)に欠陥がある場合の走査画像例である。
【0078】
図8(a)において、アクティブエリアのTFTアレイにおいて位置c、位置dの位置にあるTFTアレイに欠陥がある場合には、この欠陥を有したTFTアレイが動作しないため、アクティブエリア101の走査画像において線欠陥C、Dが現れる。線欠陥Cと線欠陥Dの何れが現れるかは、TFTアレイの欠陥の種類や、印加する走査信号のパターンに依存する。
【0079】
図8(b)において、アクティブエリアのTFTアレイにおいて位置e、位置fの位置にあるTFTアレイに欠陥がある場合には、この欠陥を有したTFTアレイが動作しないため、アクティブエリア101の走査画像において点欠陥E,Fが現れる。
【0080】
線欠陥あるいは点欠陥の何れが現れるか、また、線欠陥において縦方向の線欠陥となるが横方向の線欠陥となるかは、TFTアレイの欠陥の種類や、印加する走査信号のパターンに依存する。
【0081】
図9は、TFT駆動回路102とアクティブエリア101の両方のTFTアレイに欠陥が存在する場合に得られる走査画像例を示している。
【0082】
図9は、TFT駆動回路102において位置aのTFTアレイに欠陥があり、アクティブエリア101において位置e,fのTFTアレイに欠陥があるときに得られる走査画像例を示し、走査画像では断続した線欠陥からなる領域Aと、点欠陥E,Fが現れる。
【0083】
ここで、駆動信号は、はじめにTFT駆動回路102に供給され、その後アクティブエリア101供給される順序であるため、TFT駆動回路102のTFTアレイに欠陥がある場合には、その欠陥があるTFTアレイよりも後方にあるシフトレジスタのTFTアレイには駆動信号は供給されないため、領域Aにおけるアクティブエリア上のTFTアレイが正常であるか欠陥があるかにかかわらず、領域Aは非駆動部位として現れる。そのため、仮に領域A内のアクティブエリアに点欠陥や線欠陥が存在する場合であっても、走査画像には現れない。したがって、アクティブエリア上の走査画像では、TFT駆動回路のTFTアレイの欠陥はアクティブエリアのTFTアレイの欠陥に優先して現れることになる。
【0084】
次に、図10を用いて、本発明のTFTアレイ検査装置による欠陥種の判別を行う動作例を説明する。
【0085】
走査画像から非駆動部位が検出された場合、その非駆動部位の形態から点欠陥部位であるか、線欠陥部位であるか、あるいは、領域の欠陥部位であるかを判別する。この非駆動部位の形態判別は、例えば、走査画像の信号強度について正常時に得られる走査画像の信号強度と比較して、欠陥と判定される欠陥データ列を形成し、このデータ列の連続性等を判定することによって行うことができる。
【0086】
例えば、連続するデータ列の個数が所定個数以下である場合には、点欠陥あるいは線欠陥と判定し、連続するデータ列が断続的あるいは連続的に現れる場合には、領域欠陥と判定する。判定に用いるデータ個数やデータ列の数は、形成する欠陥種等に応じて予め設定することができる(S31)。
【0087】
S31の判定において、非駆動部位の形態が点欠陥あるいは線欠陥である場合には、アクティブエリアに欠陥部位があるものと判定し(S32)、さらに必要がある場合には点欠陥あるいは線欠陥において、その欠陥の要因を判定することができる。この欠陥要因の判定は、印加する走査パターンに応じて判定される(S33)。
【0088】
S31の判定において、非駆動部位の形態が領域部位である場合には、TFT駆動回路に欠陥部位があるものと判定する(S34)。
【0089】
S31の判定において、非駆動部位の形態が点欠陥あるいは線欠陥が存在すると共に領域部位についても存在する場合には、アクティブエリアとTFT駆動回路の両方に欠陥部位があるものと判定し(S35)、さらに必要がある場合には、S33と同様に、点欠陥あるいは線欠陥において、その欠陥の要因を判定することができる(S36)。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明において、TFT基板は液晶基板や有機ELとすることができ、液晶基板や有機ELを形成する成膜装置の他、種々の半導体基板を形成する成膜装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 アレイ検査装置
2 検出部
3 電子銃
4 検出器
5 信号処理部
6 検査信号生成部
7 駆動回路用ドライバ部
8 走査制御部
9 欠陥検出部
10 欠陥種判別部
20 プローバフレーム
21 プローブピン
22 ステージ
100 基板
101 アクティブエリア
102 TFT駆動回路
103 端子パッド
104 配線
a,b,c,d,e,f 位置
A,B 領域
C,D 線欠陥
E,F 点欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置において、
前記基板は、アクティブエリアと、当該アクティブエリアを駆動するTFT駆動回路とを備えると共に、共にTFTアレイで形成し、
前記TFTアレイ検査装置は、前記TFT駆動回路に検査信号を供給するTFT駆動回路用ドライバ部と、
前記アクティブエリアを走査し、当該走査で得られるアクティブエリアの走査画像に基づいて、TFT駆動回路およびアクティブエリアの駆動状態を検出する検出部とを備え、
前記TFT駆動回路用ドライバ部は、前記TFT駆動回路に検査信号を供給することによって前記TFT駆動回路のTFTアレイを駆動し、当該TFT駆動回路のTFTアレイの駆動により前記アクティブエリアに形成されたTFTアレイを駆動し、
前記検出部は、前記アクティブエリアの走査画像において非駆動部位を検出し、当該非駆動部位の出現状態に基づいて、前記アクティブエリアの非駆動状態と前記TFT駆動回路の非駆動状態とを検出することを特徴とする、TFTアレイ検査装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記アクティブエリアの非駆動状態と前記TFT駆動回路の非駆動状態の検出において、TFT駆動回路の非駆動状態をアクティブエリアの非駆動状態よりも優先して検出することを特徴とする、請求項1に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項3】
前記TFT駆動回路は、TFTアレイによって形成されるシフトレジスタによって構成されるゲート回路を備え、
前記TFT駆動回路用ドライバ部は、前記シフトレジスタのゲート回路を順に駆動し、前記アクティブエリアを前記シフトレジスタの駆動順序に応じて順に駆動することを特徴とする、請求項1又は2に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項4】
基板上に形成されるTFTアレイの欠陥種を判別する欠陥種判別部を備え、
前記欠陥種判別部は、前記検出部で検出したアクティブエリアの走査画像内で検出される非駆動部位が現れる形態に基づいて、アクティブエリアの欠陥又はTFT駆動回路の欠陥かを判別することを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項5】
前記欠陥種判別部は、前記検出部で検出したアクティブエリアの走査画像内で検出される非駆動部位が現れる形態が、互いに分離した領域で現れる形態である場合にはアクティブエリアの欠陥と判定し、連続的又は断続的な領域で現れる形態である場合にはTFT駆動回路の欠陥と判別することを特徴とする、請求項4に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項6】
前記欠陥種判別部は、アクティブエリアの欠陥種判別において、非駆動部位が互いに分離した領域で現れる形態であって、当該非駆動部位が点状部位である場合には点欠陥と判定し、当該非駆動部位が線状部位である場合には線欠陥と判定し、当該部位の位置をアクティブエリア上のTFTアレイの欠陥位置として判定することを特徴とする、請求項5に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項7】
前記欠陥種判別部は、TFT駆動回路の欠陥種判別において、連続的な領域で現れる非駆動部位は面状の領域、あるいは、断続的な領域で現れる非駆動部位は線状部位が断続的に現れる領域である場合には、アクティブエリア上の前記領域において、当該領域を駆動するTFT駆動回路の駆動順で先頭に対応するTFT駆動回路上の位置を、TFT駆動回路のTFTアレイの欠陥位置として判定することを特徴とする、請求項5に記載のTFTアレイ検査装置。

【図5】
image rotate

【図10】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−133020(P2012−133020A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283518(P2010−283518)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】