説明

インバータアンプ

【課題】パワーダウン時のリーク電流が抑制されるインバータアンプの提供。
【解決手段】入力端子とバイアス供給回路との間にパワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインバータアンプに係り、特にCMOS−FETを用いたインバータアンプに係る発明である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インバータ型増幅器に係る発明が開示されている。
特許文献1発明のインバータ型増幅器は、増幅器本体と、バイアス回路と、インピーダンス素子とを備えて成る。ここで、増幅器本体は、一対の動作電源の間に第1のインバータと第1のパワーダウン用スイッチトランジスタとを直列接続で備えている。バイアス回路は、増幅器本体の動作点の電圧を形成する。インピーダンス素子は、バイアス回路の出力端子と第1のインバータの入力端子との接続経路に配置されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−202595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部に寄生ダイオードが存在するMOS−FETを具備するバイアス供給回路では、たとえ電源が切断されていても、インバータアンプの入力端子に交流電圧が入力されると、リーク電流が発生してしまう。特に、バッテリーの電力消費を少しでも節約したいモバイル端末機器においては、パワーダウン時のリーク電流は重大な電力ロスにつながる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、(発明を実施するための最良の形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための最良の形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0006】
本発明のインバータアンプは、入力端子(11)と、パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタ(21)と、バイアス供給回路(30)と、インバータ回路(40)と、電源部と、出力端子(12)とを具備する。バイアス供給回路(30)と、入力端子(11)と、インバータ回路(40)と、出力端子(12)とはこの順番に直列に接続されており、入力端子(11)とバイアス供給回路(30)とはパワーダウン用スイッチトランジスタ(21)を介して接続されている。電源部は、バイアス供給回路(30)と、インバータ回路(40)と、パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタ(21)とに接続されている。電源部が電力を供給しないパワーダウン時には、入力端子(11)とバイアス供給回路(30)とを接続する経路を流れるリーク電流を、パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタ(21)が抑制する。
【0007】
本発明のインバータアンプは、入力端子(11)と、パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタ(21)と、バイアス供給回路(30)と、シュミットトリガ回路(50)と、電源部と、出力端子(12)とを具備する。バイアス供給回路(30)と、入力端子(11)と、シュミットトリガ回路(50)と、出力端子(12)とはこの順番に直列に接続されており、入力端子(11)とバイアス供給回路(30)とはパワーダウン用スイッチトランジスタ(21)を介して接続されている。電源部は、バイアス供給回路(30)と、シュミットトリガ回路(40)と、パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタ(21)とに接続されている。電源部が電力を供給しないパワーダウン時には、入力端子(12)とバイアス供給回路(30)とを接続する経路を流れるリーク電流を、パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタ(21)が抑制する。
【発明の効果】
【0008】
インバータアンプの入力端子とバイアス供給回路とを、パワーオフ時リーク電流抑制用トランジスタを介して接続することによって、パワーオフ時リーク電流が抑制され、特にモバイル端末のバッテリーの電力がより効率良く使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明によるインバータアンプを実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を説明する前に、まずはその前段階となる従来技術によるインバータアンプについて説明する。
図1は、従来技術によるインバータアンプの回路図である。従来技術によるインバータアンプは、入力端子11と、バイアス供給回路30と、インバータ回路40と、出力端子12と、図示されない電源部とを具備している。
入力端子11は、バイアス供給回路30とインバータ回路40の入力側端子11とに接続されている。インバータ回路40の出力側端子は、出力端子12に接続されている。
入力端子11には、外部より交流電圧が入力される。バイアス供給回路30は、入力された交流電圧に直流電圧のバイアスをかける。インバータ回路40は、入力側端子から直流電圧バイアスをかけられた交流電圧を入力され、位相の反転と増幅を行い、出力側端子から出力する。
このとき、入力端子から入力される信号の振幅が小さい場合は、その小振幅信号を出力する回路とインバータアンプの入力端子とを、容量の両端子のそれぞれに接続する。こうすることで、容量結合を介して小振幅信号がインバータアンプに入力される。
【0011】
バイアス供給回路30は、N型MOS−FET31と、P型MOS−FET32と、パワーダウン用N型MOS−FET33と、パワーダウン用P型MOS−FET34とを具備している。
P型MOS−FET32と、パワーダウン用P型MOS−FET34と、パワーダウン用N型MOS−FET33と、N型MOS−FET31とは、この順番に直列に接続されている。P型MOS−FET32とN型MOS−FET31とは、図示されない電源部とグラウンド14とにそれぞれ接続されている。パワーダウン用P型MOS−FET34およびパワーダウン用N型MOS−FET33の出力端子は、P型MOS−FET32およびN型MOS−FET31のゲートとに短絡されており、バイアス供給回路30の入出力端子11に接続されている。パワーダウン用P型MOS−FET34およびパワーダウン用N型MOS−FET33のゲートには、それぞれのオンオフを制御するEN端子15およびENB端子16が接続されている。
インバータアンプが動作するパワーオン時において、パワーダウン用P型MOS−FET34は、ゲートにEN端子15からロー信号が入力されて常時オン状態になる。パワーダウン用N型MOS−FET33も同様に、ゲートにENB端子16からハイ信号が入力されて常時オン状態になる。
入力端子11に入力された信号は、それが小振幅信号であっても、バイアス供給回路30によってDCレベルが調整されるので、インバータアンプへの伝達が可能となる。
反対に、インバータアンプが動作しないパワーオフ時においては、EN端子15およびENB端子16からの制御信号は提供されないので、両端子ともロー信号が入力された状態に等しい。したがって、パワーダウン用N型MOS−FET33はオフ状態になるが、パワーダウン用P型MOS−FET34はオン状態になってしまう。この時、入力端子11に交流電圧が入力されると、パワーオフ時にもかかわらず、P型MOS−FET32内部に存在する寄生ダイオードを通って、リーク電流が発生してしまう。
図2は、従来のインバータアンプにおけるリーク電流を示す図である。
なお、これはあくまでもバイアス供給回路の一例に過ぎず、他のバイアス供給回路を代わりに用いても良い。
【0012】
インバータ回路は、上記のバイアス供給回路30とほぼ同じ構造をしている。相違点は、N型MOS−FET41およびP型MOS−FET42のゲートに接続される入力側端子と、パワーダウン用のP型MOS−FET44およびパワーダウン用のN型MOS−FET43のドレイン・ソースに接続される出力側端子とが、短絡されていないことである。そのため、バイアス供給回路30のように、パワーダウン時にリーク電流が発生することは無い。
入力端子11に入力されて、バイアス供給回路30によってDCレベルを調整された入力信号は、インバータアンプ回路40によってその信号が増幅されて、出力端子12に伝達される。
なお、これはあくまでもインバータ回路の一例に過ぎず、代わりに他のインバータ回路を用いても構わない。
【0013】
バイアス供給回路30とインバータ回路における40P型MOS−FET32、42と、N型MOS−FET31、41は、複数用いられても良い。
図3は、P型MOS−FET32、42およびN型MOS−FET31、41の数が2つに増やされた場合の従来技術によるインピーダンスアンプの回路図である。
バイアス供給回路30とインバータ回路40がそれぞれ具備するP型MOS−FET32、42およびN型MOS−FET31、41の状態は、ゲートに印加される電圧によってオンまたはオフが切り替わる。その閾値電圧は、バイアス供給回路30とインバータ回路40とで一致する事が望ましい。そのためには、図1または図2のように、バイアス供給回路30とインバータ回路40におけるP型MOS−FET32、42またはN型MOS−FET31、41は、それぞれ数と種類が同じである事が望ましい。
【0014】
図4は、本実施形態によるインバータアンプの回路図である。本実施形態によるインバータアンプは、図1のインバータアンプに加えて、N型MOS−FET21をさらに具備している。
このN型MOS−FET21は、入力端子11とバイアス供給回路30との間に接続されている。また、このN型MOS−FET21のゲートは、図示されない電源部に接続されている。
このN型MOS−FET21は、パワーオフ時のリーク電流を抑制するためにあるので、今後は「パワーオフ時リーク電流抑制トランジスタ」21と呼称する。以下、その動作を説明する。
電源部がバイアス供給回路30およびインバータ回路40に電力を供給するパワーオン時には、パワーオフ時リーク電流抑制用トランジスタ21は連動して自動的にオン状態になる。この時、入力端子11とバイアス供給回路30とを結ぶ経路は導通される。反対に、電源部がバイアス供給回路30およびインバータ回路40に電力を供給しないパワーオフ時には、パワーオフ時リーク電流抑制用トランジスタ21は連動して自動的にオフ状態になる。この時、入力端子11とバイアス供給回路30とを結ぶ経路は絶縁される。
なお、図5のように、パワーオフ時リーク電流抑制トランジスタ21は入力端子11に直接接続されていても構わない。
さらに、図6のように、バイアス供給回路30およびインバータ回路40がそれぞれ具備するCMOSインバータにおいて、N型MOS−FET31、41とP型MOS−FET32、42の数が増えて、N型MOS−FET31’、41’とP型MOS−FET32’、42’が追加されても構わない。ただし、上述したとおり、バイアス供給回路30とインバータ回路40のCMOSインバータの閾値電圧は同じであることが望ましい。
【0015】
本実施形態例では、入力端子11からバイアス供給回路30へ抜けるリーク電流を抑制することによって、特にモバイル機器におけるバッテリー電力の節約に大きく寄与する。しかし、一般的にモバイル機器内の電圧は低く、場合によっては1.2ボルト程度である事もある。これでは、通常のMOS−FETでは閾値電圧が高すぎて、パワーオン時にもパワーオフ時リーク電流抑制用トランジスタ21がオン状態になれない。このような場合、0ボルトという低い閾値電圧を持つネイティブデプレッション型MOS−FETが用いられることが望ましい。
【0016】
(第2の実施形態)
図7は、第1の実施形態の応用として、図3においてインバータ回路40の変わりにシュミットトリガインバータ回路50を用いた場合の回路図である。
本実施形態例におけるシュミットトリガインバータ回路50は、3つの部分回路に分けて考えることが出来る。まず第1の部分回路として、左側に直列に接続された3つのN型MOS−FET51、51’、53と3つのP型MOS−FET52、52’、54とは、図3におけるCMOSインバータ回路40と同じ構成である。次に第2の部分回路として、N型MOS−FET55とP型MOS−FET56とで構成されるCMOSインバータ回路が、第1の部分回路の出力を受ける。第2の部分回路の出力は出力端子12に向かう一方で、第3の部分回路にも入力される。第3の部分回路は、N型MOS−FET55とP型MOS−FET56とで構成されている。N型MOS−FET55の出力は第1の部分回路の2つのN型MOS−FET51、51’に接続されている。同様に、P型MOS−FET56の出力は第1の部分回路の2つのN型MOS−FET52、52’に接続されている。
シュミットトリガインバータ回路は、そのヒステリシス特性により、オフ状態からオン状態に遷移する際と、オン状態からオフ状態に遷移する際とでは、それぞれの閾値電圧が異なる。したがって、入力端子11に入力される信号に多少のノイズが乗っていても、そのノイズの影響でオン状態とオフ状態とが不要な場面で切り替わってしまうことが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、従来のインバータアンプの回路図である。
【図2】図2は、従来のインバータアンプにおけるリーク電流を示す回路図である。
【図3】図3は、従来のインバータアンプで、図1とはMOS−FETの数が異なる場合の回路図である。
【図4】図4は、本発明のインバータアンプの回路図である。
【図5】図5は、本発明のインバータアンプで、図4とはパワーオフ時リーク電流抑制用トランジスタの位置が異なる場合の回路図である。
【図6】図6は、本発明のインバータアンプで、図4とはMOS−FETの数が異なる場合の回路図である。
【図7】図7は、本発明のインバータアンプで、図4のインバータ回路の代わりにシュミットトリガ回路が用いられた場合の回路図である。
【符号の説明】
【0018】
11 入力端子
12 出力端子
13 電源
14 グラウンド
15 制御信号(ロー)
16 制御信号(ハイ)
21 パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタ
30 バイアス供給回路
31 N型MOS−FET
31’ N型MOS−FET
32 P型MOS−FET
32’ P型MOS−FET
33 パワーダウン用N型MOS−FET
34 パワーダウン用P型MOS−FET
40 インバータ回路
41 N型MOS−FET
41’ N型MOS−FET
42 P型MOS−FET
42’ P型MOS−FET
43 パワーダウン用N型MOS−FET
44 パワーダウン用P型MOS−FET
50 シュミットトリガインバータ回路
51 N型MOS−FET
51’ N型MOS−FET
52 P型MOS−FET
52’ P型MOS−FET
53 パワーダウン用N型MOS−FET
54 パワーダウン用P型MOS−FET
55 N型MOS−FET
56 P型MOS−FET
57 N型MOS−FET
58 P型MOS−FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタと、
バイアス供給回路と、
インバータ回路と、
電源部と、
出力端子と
を具備し、
前記バイアス供給回路と、前記入力端子と、前記インバータ回路と、前記出力端子とはこの順番に直列に接続されており、
前記入力端子と前記バイアス供給回路とは前記パワーダウン用スイッチトランジスタを介して接続されており、
前記電源部は、前記バイアス供給回路と、前記インバータ回路と、パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタとに接続されており、
前記電源部が電力を供給しないパワーダウン時には、前記入力端子と前記バイアス供給回路とを接続する経路を流れるリーク電流を、前記パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタが抑制する
インバータアンプ。
【請求項2】
請求項1記載のインバータアンプにおいて、
前記パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタは、
N型MOS−FETであり、
前記N型MOS−FETのゲートは、前記電源部に接続されており、
前記N型MOS−FETは、前記電源部から前記バイアス供給回路および前記インバータ回路への電力供給に連動して、入力端子とバイアス供給回路とを導通し、
前記N型MOS−FETは、前記電源部から前記バイアス供給回路および前記インバータ回路への電源切断に連動して、入力端子とバイアス供給回路とを絶縁する
インバータアンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインバータアンプにおいて、
前記パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタは、
閾値電圧が0ボルトのネイティブデプレッションN型MOS−FETである
インバータアンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のインバータアンプにおいて、
前記バイアス供給回路と、前記インバータ回路とはそれぞれ、閾値電圧が等しいCMOSインバータを具備する
インバータアンプ。
【請求項5】
入力端子と、
パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタと、
バイアス供給回路と、
シュミットトリガ回路と、
電源部と、
出力端子と
を具備し、
前記バイアス供給回路と、前記入力端子と、前記シュミットトリガ回路と、前記出力端子とはこの順番に直列に接続されており、
前記入力端子と前記バイアス供給回路とは前記パワーダウン用スイッチトランジスタを介して接続されており、
前記電源部は、前記バイアス供給回路と、前記シュミットトリガ回路と、パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタとに接続されており、
前記電源部が電力を供給しないパワーダウン時には、前記入力端子と前記バイアス供給回路とを接続する経路を流れるリーク電流を、前記パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタが抑制する
インバータアンプ。
【請求項6】
請求項5記載のインバータアンプにおいて、
前記パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタは、
N型MOS−FETであり、
前記N型MOS−FETのゲートは、前記電源部に接続されており、
前記N型MOS−FETは、前記電源部から前記バイアス供給回路および前記インバータ回路への電力供給に連動して、入力端子とバイアス供給回路とを導通し、
前記N型MOS−FETは、前記電源部から前記バイアス供給回路および前記シュミットトリガ回路への電源切断に連動して、入力端子とバイアス供給回路とを絶縁する
インバータアンプ。
【請求項7】
請求項5または6に記載のインバータアンプにおいて、
前記パワーダウン時リーク電流抑制用トランジスタは、
閾値電圧が0ボルトのネイティブデプレッションN型MOS−FETである
インバータアンプ。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載のインバータアンプにおいて、
前記バイアス供給回路と、前記シュミットトリガ回路とはそれぞれ、閾値電圧が等しいCMOSインバータを具備する
インバータアンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−131528(P2008−131528A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316550(P2006−316550)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】