説明

インホイールモータの構造

【課題】ブレーキの放熱特性あるいは冷却特性がよく、かつインホイールモータを大径化できる構造を提供する。
【解決手段】アーム部材7を介して車体に支持された状態でホイール1と同軸上に配置され、かつ出力軸8がホイール取付部9に連結されたインホイールモータ4の構造において、前記インホイールモータ4のハウジング6が前記アーム部材7によって支持され、外周部が前記ハウジング6の外周側に延びるように軸線方向に屈曲して円筒部11に形成されたブレーキディスク10が前記ホイール取付部9と一体となって回転するように設けられ、前記ブレーキディスク10における円筒部11を内外周両側から挟み付けるブレーキパッド14,15を備えたキャリパー13が前記ハウジング6に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の駆動輪毎に設けられ、かつその駆動輪に直接駆動力を伝達し、あるいは制動力を作用させることのできるインホイールモータの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インホイールモータは、駆動輪の近傍に設けられて駆動輪に直接動力を伝達するものであるから、従来の車両に設けられている変速機やデファレンシャルなどの動力伝達機構を設ける必要がなくなり、車両の構成を簡素化することができる。その一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された構造は、ホイールの内側にモータとブレーキユニットとを設けたものであって、固定側のアクスルに固定子ハウジングが取り付けられるとともに、その固定子ハウジングの固定子とブレーキユニットとが並列に配置されて取り付けられている。また一方、回転側のアクスルに回転子ハウジングが取り付けられるとともに、その回転子ハウジングの円筒状の部分で固定子とブレーキユニットとの外周側を覆い、かつその回転子ハウジングの内周面に回転子とブレーキシューとが並列に配置されて取り付けられている。
【0003】
なお、モータジェネレータを搭載した車両において、いわゆる機械ブレーキによる制動力の不足を、モータジェネレータによる回生制動力で補うように構成した装置が、特許文献2に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−75006号公報
【特許文献2】特開2003−87904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構造では、回転側のアクスルと実質的に一体の回転子ハウジングにモータの回転子が取り付けられ、またその回転子ハウジングにブレーキシューが取り付けられているから、回転側のアクスルに対して直接駆動力を伝達することができ、またブレーキユニットによる制動力を作用させることができる。しかしながら、モータにはジュール損による不可避的な発熱があり、またブレーキユニットは制動時に摩擦熱を生じさせるにも拘わらず、これらが円筒体である回転子ハウジングの内部に収容されているので、放熱が制限されて冷却性能が低く、この点に改善の余地がある。
【0006】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、冷却性能に優れ、しかもスペースを有効利用してインホイールモータもしくはそのユニットを大径化することの可能な構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、アーム部材を介して車体に支持された状態でホイールと同軸上に配置され、かつ出力軸がホイール取付部に連結されたインホイールモータの構造において、前記インホイールモータのハウジングが前記アーム部材によって支持され、外周部がそのハウジングの外周側に延びるように軸線方向に屈曲して円筒部に形成されたブレーキディスクが前記ホイール取付部と一体となって回転するように設けられ、前記ブレーキディスクにおける円筒部を内外周両側から挟み付けるブレーキパッドを備えたキャリパーが前記ハウジングに取り付けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、制動開始初期における前記ブレーキパッドの前記円筒部に対する押圧力を、内周側のブレーキパッドによる押圧力に対して外周側のブレーキパッドによる押圧力が大きくなるように設定する機構を更に備えていることを特徴とするインホイールモータの構造である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記機構は、前記内周側のブレーキパッドの厚さより前記外周側のブレーキパッドの厚さが厚い構造を含むことを特徴とするインホイールモータの構造である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記機構は、前記内周側のブレーキパッドと外周側のブレーキパッドとのそれぞれを個別に動作させる油圧機構と、制動開始初期に内周側のブレーキパッドよりも先に外周側のブレーキパッドに対する油圧を増大させる制御機構を含むことを特徴とするインホイールモータの構造である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかの発明において、前記外周側のブレーキパッドによる押圧力が前記内周側のブレーキパッドによる押圧力より大きい際に、これらの押圧力の際に応じた制動力を前記インホイールモータによって発生させる制御手段を更に備えていることを特徴とするインホイールモータの構造である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ブレーキディスクの外周側の部分が、ホイールと同軸上に設けられているインホイールモータ側に屈曲して円筒状に形成されているので、ブレーキディスクの外径が相対的に小さく、またその円筒状の部分をブレーキパッドによって内外周の両側から挟み付けるように構成されているので、ブレーキディスクの外周側に重ねて配置せずに、軸線方向に延ばして配置する構造になるので、全体としての外径を小さくすることができる。すなわち、インホイールモータの外周側のスペースを有効に利用してブレーキパッドを配置するので、インホイールモータの外径を相対的に大きくすることができる。さらに、ブレーキディスクの外周部が円筒状に形成されているものの、その外周面にもブレーキパッドを接触させて制動力を生じさせるので、熱の放散が促進され、冷却性能が良好になる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、摩擦による発熱量が相対的に多い制動初期にはブレーキディスクにおける円筒部の外周面を主として使用して制動力を発生させるので、制動に伴う熱を効率良く放散させることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、内外周両側のブレーキパッドのストロークが同じ場合には、厚さの厚い外周側のブレーキパッドが、内周側のブレーキパッドよりも先にブレーキディスクに押し付けられ、あるいはその押圧力の増大が先行する。そのため、制動初期には主として、前記円筒部の外周面を使用した制動力が生じるので、放熱性あるいは冷却性能を向上させることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、制動初期には、外周側のブレーキパッドが内周側のブレーキパッドよりも先にブレーキディスクに押し付けられ、あるいはその押圧力が増大させられる。したがって、制動初期には主として、前記円筒部の外周面を使用した制動力が生じるので、放熱性あるいは冷却性能を向上させることができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、内周側のブレーキパッドを外周側のブレーキパッドに対して遅らせてブレーキディスクに押し付ける場合、その遅れ分の制動力をインホイールモータによって発生させるので、外周側のブレーキパッドによる制動力から内外周両側のブレーキパッドによる制動力に変化しても、車両の全体としての制動力の変化が少なく、その結果、制動力の不足や変化などによる違和感を防止もしくは抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明に係るインホイールモータは、車体に支持されてホイールを直接駆動するモータであり、ホイールと同軸上に配置されている。その駆動の形態は、回転子(ロータ)と一体の出力軸をホイール取付部に直接連結してホイールを駆動する形態以外に、出力軸と回転子との間に、減速比が一定値に固定されている減速機を介在させて、その減速機で増大させたトルクをホイールに伝達する形態であってもよい。そのインホイールモータは、前輪などの操舵輪においてはナックルアーム、後輪などの非操舵輪についてはアッパーアームおよびロアーアームなどのアーム部材を介して車体に支持されている。
【0018】
トルクが伝達されるホイール取付部にブレーキディスクが一体化されている。そのブレーキディスクはホイール取付部に一体に形成され、あるいは取り付けられたものであってもよく、あるいは前記出力軸と一体に形成され、あるいは出力軸に取り付けられていてもよく、要は、ホイールと一体となって回転するように構成されている。そのブレーキディスクの外周部は、インホイールモータのハウジングの外周側に延びるように軸線方向に向けて屈曲しており、したがって円筒状に形成されている。その円筒部の内外周両側にブレーキパッドが配置され、これらのブレーキパッドによって円筒部をその内外周両側から挟み付けることにより制動力を生じさせるようになっている。そして、これらのブレーキパッドは、これを収容するキャリパーなどと共にインホイールモータのハウジングに取り付けられている。
【0019】
各ブレーキパッドをブレーキディスクの円筒部に押し付けて生じさせる制動力は、少なくとも制動開始初期においては、外周側で相対的に大きくなるように構成されている。これは、熱放散を促進させるためである。制動力をこのように内外周側で異ならせるための構成は種々可能であって、例えば、外周側のブレーキパッドを内周側のブレーキパッドにより厚く構成する。あるいは各ブレーキパッドを油圧によって動作させる構成であれば、外周側のブレーキパッドに対する油圧を、内周側のブレーキパッドに対する油圧よりも先に増大させる。
【0020】
制動力を上記のように前記円筒部の内外周側で異ならせる場合、内外周の両側で同時にかつ同等の制動力を生じさせる場合よりも、全体としての制動力が相対的に小さくなる。そのいわゆる制動力の不足分は、インホイールモータを回生制御することによりインホイールモータの回生制動力で補うことができる。したがって、車両の全体としての制動力の変化が少なく、違和感を防止することができる。
【0021】
図1にこの発明に係るインホイールモータの構造の一例を模式的に示してある。符号1は車両におけるホイールを示し、ホイルディスク2とその外周部に設けられているリム3とから構成され、そのリム3にタイヤ(図示せず)を取り付けるように構成されている。このホイール1と同軸上にインホイールモータ4が配置されている。
【0022】
このインホイールモータ4は、主として、車両を走行させる駆動トルクを出力するためのものであり、誘導モータなどのモータ5がハウジング6の内部に収納され、そのハウジング6をアーム部材7に取り付けることにより、そのアーム部材7を介して車体(図示せず)に連結されて支持されている。そのモータ5のトルクを出力する出力軸8が設けられている。前記モータ5と出力軸8とは、直接連結されていてもよく、あるいは変速比が一定値に固定された減速機などの伝動機構(図示せず)を介して連結とされていてもよい。その出力軸8がホイール取付部であるホイールハブ9に連結されている。そして、このホイールハブ9に前記ホイール1が装着されている。
【0023】
また、ホイールハブ9と一体のブレーキディスク10が設けられている。このブレーキディスク10は、要は、ホイール1と一体となって回転すればよいので、前記出力軸8に取り付けられていてもよい。ブレーキディスク10は、いわゆるソリッド型あるいはベンチレーテッド型のいずれであってもよく、その外周部は、軸線方向に屈曲して円筒状に形成されている。その円筒部11は、インホイールモータ4のハウジング6の外周側を覆うように軸線方向に延びており、ハウジング6の外面に取り付けたブレーキユニット12によってその円筒部11を制動するように構成されている。
【0024】
すなわち、ハウジング6の外面にキャリパー13が取り付けられ、前記円筒部11をその内周側と外周側とから挟み付けるブレーキパッド14,15がキャリパー13に設けられている。このキャリパー13およびブレーキパッド14,15の構成は、従来の車両用ディスクブレーキと同様であって、各ブレーキパッド14,15毎に図示しないピストンが設けられ、そのピストンを油圧によって押すことにより、それぞれのブレーキパッド14,15を円筒部11に押し付けて摩擦力すなわち制動力を生じさせるように構成されている。なお、各ピストンおよびそれぞれのブレーキパッド14,15は、ピストンシールの弾性復帰力で後退移動させるようになっている。
【0025】
上記のブレーキユニット12は、少なくとも、制動を開始した直後すなわち制動初期には、外周側のブレーキパッド15による制動力が内周側のブレーキパッド14による制動力より大きくなるように構成されている。これは、制動初期に生じる多量の摩擦熱の放散を促進させるためであり、そのための機構の一例を挙げると、外周側のブレーキパッド15が内周側のブレーキパッド14よりも厚く構成されている。また、キャリパー13はインホイールモータ4のハウジング6に固定され、さらに内外周両側のピストンに対して同量の圧油が供給されるようになっている。
【0026】
したがって、制動時に油圧が供給されると、外周側のブレーキパッド15が前記円筒部11の外周面に先に接触し、あるいは押圧力が発生し、円筒部11の外周側で先ず制動力が生じる。それに伴う摩擦熱は、円筒部11の外周側が解放されているので、効率良く放散させられる。その後、内周側のブレーキパッド14による制動力が増大するが、既に外周側で制動力が生じているので、内周側のブレーキパッド14による制動に伴う発熱は相対的に少なく、したがってディスクブレーキ全体としての熱は、効率良く放散させられる。すなわち、放熱特性あるいは冷却特性が良好になる。
【0027】
また他の例を挙げると、外周側および内周側のブレーキパッド15,14毎に油路を設けるとともに、それぞれの油路に圧油の給排のためのバルブ(図示せず)を設け、そのバルブの動作タイミングをずらすように構成されている。そして、それらのバルブは、制動時に先ず、外周側のブレーキパッド15を動作させ、その後に内周側のブレーキパッド14を動作させるように構成されている。したがって、制動初期に円筒部11の外周側で制動力が生じ、その後に内周側で制動力が生じるので、上記の例と同様に、ディスクブレーキ全体としての熱が効率良く放散させられて、放熱特性あるいは冷却特性が良好になる。
【0028】
各ブレーキパッド14,15を上記のいずれかの例で述べたように動作させるために、ブレーキユニット12は、切換バルブや調圧バルブなどの油圧機器を備えた油圧回路16に接続され、またその油圧回路16には油圧ポンプなどの油圧源17が接続されている。なお、前記ホイールモータ4はバッテリーあるいは発電機などの電源18から供給される電力で動作してトルクを出力し、またホイール1から受けるトルクで強制的に回転させられて発電し、その際の反力が制動力となるように構成されている。このようにインホイールモータ4を制御するためのコントローラ19が設けられている。
【0029】
したがって、この発明に係る上述したインホイールモータの構造によれば、ブレーキディスク10を併設した構造であるから、放熱特性あるいは冷却特性を向上させ、ひいては制動性能を向上させることができる。しかも、ブレーキディスク10は外周側の部分を円筒部11として構成し、その円筒部11を内外周両側から挟み付ける構成とし、さらにはその円筒部11を挟み付けるブレーキパッド14,15をインホイールモータ4のハウジング6の外面に取り付けたので、半径方向につなげた状態で配置する部分や部材が少なくなり、その結果、半径方向の寸法を相対的に小さくすることができる。言い換えれば、半径方向での制約を受けにくい構造になるため、インホイールモータ4を大径化することが可能になる。
【0030】
この発明に係るインホイールモータの構造では、制動初期に、ブレーキディスク10における円筒部11の外周面を先ず押圧して制動力を増大させ、その後に内周側のブレーキパッド14による制動力を増大させるように構成することが好ましい。このように構成した場合、内周側のブレーキパッド14による制動力が制動中に変化するので、それに伴う違和感を防止もしくは抑制するために、インホイールモータ4による回生制動力を利用することができる。
【0031】
図2はその制御例を説明するためのフローチャートであって、ここに示す例は、内外周のそれぞれのブレーキパッド14,15毎に油路および油圧弁を設けた構成を対象とする例である。ブレーキペダル(図示せず)が踏み込まれ、あるいは前方車両との車間距離が短くなるなどのことによって制動が開始(ブレーキON)される(ステップS1)と、内外周のそれぞれのブレーキパッド14,15に圧油が供給され始めるものの、その直後(すなわち制動開始初期)に外周側のブレーキパッド15(外周パッド)のための油圧弁は開かれた状態に維持された状態で、内周側のブレーキパッド14(内周パッド)のための油圧弁が閉じられる(ステップS2)。これと同時に、インホイールモータ4が回生制御されて発電を行い、そのトルクが回生トルクとしてホイール1に付与される。すなわち、回生制動が行われる。その回生トルクは、内周側のブレーキパッド14に対する圧油を遮断したことによる制動力の不足分もしくは相対的な低下分に相当するトルクである。
【0032】
したがって車両全体としての制動トルクは、内外周両側のブレーキパッド14,15により制動力を生じさせた場合と同様のトルクとなる。こうして車速が次第に低下し、あるいは所定時間が経過した際に、内周側のブレーキパッド14に対応して設けられている油圧弁が開かれ(ステップS3)、内周側のブレーキパッド14による制動力が再度増大し、最終的には内外周両側のブレーキパッド14,15によって制動が行われる。また、このようにして内周側のブレーキパッド14による制動力が増大することに合わせて、インホイールモータ4による回生トルクが低下させられる。
【0033】
このような制御を行った場合の制動トルクの変化を図3にタイムチャートで示してある。図3で横軸が時間、縦軸が車両の全体としての制動トルクを示し、また実線はブレーキパッド14,15による制動力、鎖線は回生トルク、破線は回生トルクを加えた車両全体の制動トルクをそれぞれ示す。上述したように制動が開始されると、内外周のそれぞれのブレーキパッド14,15に対して圧油が供給されるので、これらによる制動トルクが増大するが、その直後のt1時点に内周側のブレーキパッド14に対する圧油の供給が止まるので、ブレーキパッド14,15による制動力の増大が停止し、あるいは増大勾配が小さくなる。これと同時にインホイールモータ4による回生トルクが生じ、これは内周側のブレーキパッド14に対する圧油の供給が停止した分を補うトルクであるから、車両の全体としての制動力は所期通りに増大する。
【0034】
そして、ブレーキペダルの踏み込み量などに基づく要求制動トルクに達すると(t2時点)、インホイールモータ4による回生トルクが一定に維持される。こうして車速が所定の車速に低下したt3時点、もしくは所定時間が経過したt3時点に、内周側のブレーキパッド14に対する圧油の供給が再開され、その制動トルクの増大に合わせて回生トルクが低下させられる。したがって、内周側のブレーキパッド14による制動トルクが変化するとしても、これに置き換わってインホイールモータ4の回生トルクが作用し、かつ変化するので、車両の全体としての制動トルクは、ブレーキペダルの操作などによる制動要求に応じたものとなる。すなわち、制動の開始後に内周側のブレーキパッド14による制動力が変化するとしても、その変化が、車両の全体としての制動力に特には影響しないので、制動フィーリングが悪化したり、いわゆる違和感が生じたりすることを防止もしくは抑制することができる。
【0035】
ここで上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、外周側のブレーキパッド15を内周側のブレーキパッド14より厚く構成した機構や内外周のそれぞれのブレーキパッド14,15の動作タイミングあるいは油圧の増大のタイミングが上述したように異ならせ、かつ変化させる油圧回路16などの機構が、この発明における「制動開始初期における前記ブレーキパッドの前記円筒部に対する押圧力を、内周側のブレーキパッドによる押圧力に対して外周側のブレーキパッドによる押圧力が大きくなるように設定する機構」に相当する。また、図1に示す油圧回路16がこの発明の「油圧機構」および「制御機構」に相当する。さらに、図2に示す制御を実行する機能的手段がこの発明の制御手段に相当する。
【0036】
なお、この発明は、上述した具体例に限定されないのであって、キャリパー13はインホイールモータ4のハウジング6に完全に固定した構造であってもよく、これ以外にいわゆる半浮動型あるいは全浮動型のものであってもよい。また、ブレーキパッドは、内周側のものに比較して外周側のブレーキパッドの接触面積を広くした構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の一例を模式的に示す図である。
【図2】インホイールモータによる回生トルクを付与する制御例を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2に示す制御を行った場合の車両全体の制動トルク、ブレーキパッドによる制動トルク、回生トルクの変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1…ホイール、 4…インホイールモータ、 5…モータ、 6…ハウジング、 7…アーム部材、 8…出力軸、 9…ホイールハブ、 10…ブレーキディスク、 11…円筒部、 12…ブレーキユニット、 13…キャリパー、 14,15…ブレーキパッド、 16…油圧回路、 17…油圧源、 18…電源、 19…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム部材を介して車体に支持された状態でホイールと同軸上に配置され、かつ出力軸がホイール取付部に連結されたインホイールモータの構造において、
前記インホイールモータのハウジングが前記アーム部材によって支持され、
外周部がそのハウジングの外周側に延びるように軸線方向に屈曲して円筒部に形成されたブレーキディスクが前記ホイール取付部と一体となって回転するように設けられ、
前記ブレーキディスクにおける円筒部を内外周両側から挟み付けるブレーキパッドを備えたキャリパーが前記ハウジングに取り付けられている
ことを特徴とするインホイールモータの構造。
【請求項2】
制動開始初期における前記ブレーキパッドの前記円筒部に対する押圧力を、内周側のブレーキパッドによる押圧力に対して外周側のブレーキパッドによる押圧力が大きくなるように設定する機構を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータの構造。
【請求項3】
前記機構は、前記内周側のブレーキパッドの厚さより前記外周側のブレーキパッドの厚さが厚い構造を含むことを特徴とする請求項2に記載のインホイールモータの構造。
【請求項4】
前記機構は、前記内周側のブレーキパッドと外周側のブレーキパッドとのそれぞれを個別に動作させる油圧機構と、制動開始初期に内周側のブレーキパッドよりも先に外周側のブレーキパッドに対する油圧を増大させる制御機構を含むことを特徴とする請求項2に記載のインホイールモータの構造。
【請求項5】
前記外周側のブレーキパッドによる押圧力が前記内周側のブレーキパッドによる押圧力より大きい際に、これらの押圧力の際に応じた制動力を前記インホイールモータによって発生させる制御手段を更に備えていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のインホイールモータの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−113721(P2009−113721A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291224(P2007−291224)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】