ウエーハの分割装置
【課題】分割予定ラインに沿って強度が低下せしめられたウエーハを、分割予定ラインの両側で確実に吸引保持し、分割予定ラインに沿って確実に引張力を作用させることができるウエーハの分割装置を提供する。
【解決手段】ウエーハを分割予定ラインに沿って分割する装置であって、ウエーハの一方の面を貼着した保護テープが装着された環状のフレームを保持するフレーム保持手段と、ウエーハを分割予定ラインの両側においてそれぞれ吸引保持する保持面を備えた第1および第2の吸引保持部材と、吸引領域に負圧を作用せしめる吸引手段と、第1の吸引保持部材と第2の吸引保持部材を離反する方向に移動せしめる移動手段とからなる張力付与手段を具備し、第1と第2の吸引保持部材の保持面はウエーハの直径に対応する長さに形成され、複数の吸引領域は保持面の長手方向に沿って形成されており、吸引手段は吸引領域を変更する吸引領域変更手段を備えている。
【解決手段】ウエーハを分割予定ラインに沿って分割する装置であって、ウエーハの一方の面を貼着した保護テープが装着された環状のフレームを保持するフレーム保持手段と、ウエーハを分割予定ラインの両側においてそれぞれ吸引保持する保持面を備えた第1および第2の吸引保持部材と、吸引領域に負圧を作用せしめる吸引手段と、第1の吸引保持部材と第2の吸引保持部材を離反する方向に移動せしめる移動手段とからなる張力付与手段を具備し、第1と第2の吸引保持部材の保持面はウエーハの直径に対応する長さに形成され、複数の吸引領域は保持面の長手方向に沿って形成されており、吸引手段は吸引領域を変更する吸引領域変更手段を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に分割予定ラインが形成されたウエーハを分割予定ラインに沿って分割するウエーハの分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等の回路を形成する。そして、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することにより回路が形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハも所定の分割予定ラインに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の分割予定ラインに沿った切断は、通常、ダイサーと称されている切削装置によって行われている。この切削装置は、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる切削送り手段とを具備している。切削手段は、回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードおよび回転スピンドルを回転駆動する駆動機構を含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって基台に固定し厚さ20μm程度に形成されている。
【0004】
しかるに、サファイヤ基板、炭化珪素基板等はモース硬度が高いため、上記切削ブレードによる切断は必ずしも容易ではない。更に、切削ブレードは20μm程度の厚さを有するため、デバイスを区画する分割予定ラインとしては幅が50μm程度必要となる。このため、例えば大きさが300μm×300μm程度のデバイスの場合には、ストリートの占める面積比率が14%にもなり、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
一方、近年半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、その被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法も試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、被加工物の一方の面側から内部に集光点を合わせて被加工物に対して透過性を有する赤外光領域のパルスレーザー光線を照射し、被加工物の内部に分割予定ラインに沿って変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特許第3408805号公報
【0006】
上述したように分割予定ラインに沿って変質層が連続的に形成されたウエーハの分割予定ラインに沿って外力を付与し、ウエーハを個々のチップに分割する方法として、本出願人はウエーハが貼着された保護テープを拡張してウエーハに引っ張り力を付与することにより、ウエーハを個々のチップに分割する技術を特願2003−361471号として提案した。
【0007】
しかしながら、ウエーハが貼着された保護テープを拡張してウエーハに引張力を付与する方法は、ウエーハが貼着された保護テープを拡張するとウエーハには放射状に引っ張り力が作用するため、格子状に形成された分割予定ラインに対してランダムな方向に引張力が作用することになるので、ウエーハは不規則に分割され、分割されない未分割領域が残存するという問題がある。また、分割予定ライン上に回路の機能をテストするためのテスト エレメント グループ(TEG)と称するテスト用の金属パターンが配設されているウエーハを上述したように保護テープを拡張して分割予定ラインに沿って分割すると、上記金属パターンに不規則な力が作用することに起因して、金属パターンが鋸刃状に破断され、コンタミの原因となるとともにデバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0008】
このような問題を解消するために、本出願人はウエーハの一方の面に貼着した保護テープを保持するテープ保持手段と、テープ保持手段に保護テープを介して支持されたウエーハを分割予定ラインの両側において保護テープを介して吸引保持する第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材と、該第1の吸引保持部材と第2の吸引保持部材を互いに離反する方向に移動せしめる移動手段とを具備するウエーハの分割装置を特願2004−215111号として提案した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特願2004−215111号として提案した分割装置の第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材はウエーハの直径に対応して形成されているので、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材をウエーハの直径位置から離れた位置に位置付けた状態においては、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の両端部はウエーハが貼着された保持テープを装着した環状のフレームと対向する位置に位置付けられることになる。この結果、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材は環状のフレームをも吸引してしまい、第1の吸引保持部材と第2の吸引保持部材を離反する際に支障をきたすという問題がある。また、環状のフレーム部においては第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材との接触部で負圧漏れが生じやすく、全体の吸引力が低下するという問題もある。
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、分割予定ラインに沿って強度が低下せしめられたウエーハを、分割予定ラインの両側で確実に吸引保持し、分割予定ラインに沿って確実に引張力を作用させることができるウエーハの分割装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、分割予定ラインに沿って強度が低下せしめられているウエーハを、分割予定ラインに沿って分割するウエーハの分割装置において、
ウエーハの一方の面を貼着した保護テープが装着された環状のフレームを保持するフレーム保持手段と、
該フレーム保持手段に保持された該環状のフレームに装着された該保護テープに貼着されているウエーハを、分割予定ラインの両側において該保護テープを介してそれぞれ吸引保持する保持面を備え該保持面に複数の吸引領域を備えた第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材と、該吸引領域に負圧を作用せしめる吸引手段と、該第1の吸引保持部材と該第2の吸引保持部材を離反する方向に移動せしめる移動手段とからなる張力付与手段と、を具備し、
該第1の吸引保持部材の該保持面と該第2の吸引保持部材の該保持面はウエーハの直径に対応する長さに形成され、該複数の吸引領域は該保持面の長手方向に沿って形成されており、該吸引手段は負圧を作用せしめる該吸引領域を変更する吸引領域変更手段を備えている、
ことを特徴とするウエーハの分割装置が提供される。
【0012】
ウエーハの分割装置は、上記張力付与手段を該移動手段による移動方向に移動せしめるインデックス手段を備えていることが望ましい。上記第2の吸引保持部材は上記第1の吸引保持部材に移動可能に配設されており、上記移動手段は第2の吸引保持部材を移動せしめ、上記インデックス手段は第1の吸引保持部材を移動せしめる。また、ウエーハの分割装置は、上記テープ保持手段に保護テープを介して保持されたウエーハの分割予定ラインを検出する検出手段を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、複数の吸引孔を備えた第1の吸引保持部材の保持面と第2の吸引保持部材の保持面はウエーハの直径に対応する長さに形成され、複数の吸引孔は保持面の長手方向に沿って形成されており、吸引手段は負圧を作用せしめる吸引孔の数を変更する吸引領域変更手段を備えているので、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材がウエーハの直径位置から離れた位置に位置付けられ、その両側部が環状のフレームと対向する位置に位置付けられた場合には、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の両側部における負圧の作用を制限することができる。従って、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材によって環状のフレームを吸引することがないので、第1の吸引保持部材と第2の吸引保持部材を確実に離反することができ、保護テープを介してウエーハの分割予定ラインに沿って確実に引張力を作用させることができる。また、上述したように第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の両側部が環状のフレームと対向する位置に位置付けられた場合には、該両側部における負圧の作用を制限するので、負圧漏れが生ずることはなく、吸引力不足となることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明によるウエーハの分割装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成された分割装置によって分割されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図が示されている。図1に示す半導体ウエーハ10は、例えば厚さが300μmのシリコンウエーハからなっており、表面10aには複数の分割予定ライン101が格子状に形成されている。そして、半導体ウエーハ10の表面10aには、複数の分割予定ライン101によって区画された複数の領域に機能素子としての回路102が形成されている。
【0016】
上述した半導体ウエーハ10を分割予定ラインに沿って分割するには、半導体ウエーハ10に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を分割予定ライン101に沿って照射し、半導体ウエーハ10の内部に分割予定ライン101に沿って変質層を形成することにより分割予定ラインに沿って強度を低下せしめる変質層形成加工を実施する。この変質層形成加工は、図2乃至図4に示すレーザー加工装置1を用いて実施する。図2乃至図4に示すレーザー加工装置1は、被加工物を保持するチャックテーブル11と、該チャックテーブル11上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段12と、チャックテーブル11上に保持された被加工物を撮像する撮像手段13を具備している。チャックテーブル11は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない移動機構によって図2において矢印Xで示す加工送り方向および矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0017】
上記レーザー光線照射手段12は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング121を含んでいる。ケーシング121内には図3に示すようにパルスレーザー光線発振手段122と伝送光学系123とが配設されている。パルスレーザー光線発振手段122は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器122aと、これに付設された繰り返し周波数設定手段122bとから構成されている。伝送光学系123は、ビームスプリッタの如き適宜の光学要素を含んでいる。上記ケーシング121の先端部には、それ自体は周知の形態でよい組レンズから構成される集光レンズ(図示せず)を収容した集光器124が装着されている。上記パルスレーザー光線発振手段122から発振されたレーザー光線は、伝送光学系123を介して集光器124に至り、集光器124から上記チャックテーブル11に保持される被加工物に所定の集光スポット径Dで照射される。この集光スポット径Dは、図4に示すようにガウス分布を示すパルスレーザー光線が集光器124の対物レンズ124aを通して照射される場合、D(μm)=4×λ×f/(π×W)、ここでλはパルスレーザー光線の波長(μm)、Wは対物レンズ124aに入射されるパルスレーザー光線の直径(mm)、fは対物レンズ124aの焦点距離(mm)、で規定される。
【0018】
上記レーザー光線照射手段12を構成するケーシング121の先端部に装着された撮像手段13は、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0019】
上述したレーザー加工装置1を用いて実施する変質層形成加工について、図2、図5および図6を参照して説明する。
この変質層形成加工は、先ず上述した図2に示すレーザー加工装置1のチャックテーブル11上に半導体ウエーハ10を裏面10bを上にして載置し、該チャックテーブル11上に半導体ウエーハ10を吸着保持する。半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル11は、図示しない移動機構によって撮像手段13の直下に位置付けられる。
【0020】
チャックテーブル11が撮像手段13の直下に位置付けられると、撮像手段13および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段13および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されている分割予定ライン101と、該分割予定ライン101に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段12の集光器124との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されている分割予定ライン101に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10の分割予定ライン101が形成されている表面10aは下側に位置しているが、撮像手段13が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面10bから透かして分割予定ライン101を撮像することができる。
【0021】
以上のようにしてチャックテーブル11上に保持された半導体ウエーハ10に形成されている分割予定ライン101を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図5の(a)で示すようにチャックテーブル11をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段12の集光器124が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン101の一端(図5の(a)において左端)をレーザー光線照射手段12の集光器124の直下に位置付ける。そして、集光器124から透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル11即ち半導体ウエーハ10を図5の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図5の(b)で示すようにレーザー光線照射手段12の集光器124の照射位置が分割予定ライン101の他端の位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル11即ち半導体ウエーハ10の移動を停止する。この変質層形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ10の表面10a(下面)付近に合わせる。この結果、半導体ウエーハ10の表面10a(下面)に露出するとともに表面10aから内部に向けて変質層110が形成される。この変質層110は、溶融再固化層として形成され、強度を低下せしめられる。
【0022】
上記変質層形成加工における加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4スレーザー
波長 :1064nmのパルスレーザー
パルス出力 :10μJ
集光スポット径 :φ1μm
繰り返し周波数 :100kHz
加工送り速度 :100mm/秒
【0023】
なお、半導体ウエーハ10の厚さが厚い場合には、図6に示すように集光点Pを段階的に変えて上述した変質層形成加工を複数回実行することにより、複数の変質層110を形成する。例えば、上述した加工条件においては1回に形成される変質層の厚さは約50μmであるため、上記変質層形成加工を例えば3回実施して150μmの変質層210を形成する。また、厚さが300μmのウエーハ10に対して6層の変質層を形成し、半導体ウエーハ2の内部に分割予定ライン101に沿って表面10aから裏面10bに渡って変質層を形成してもよい。また、変質層210は、表面10aおよび裏面10bに露出しないように内部だけに形成してもよい。
【0024】
上述した変質層形成加工によって半導体ウエーハ10の内部に全ての分割予定ライン101に沿って変質層110を形成したならば、図7に示すように環状のフレーム15の内側開口部を覆うように外周部が装着された保護テープ16の表面に半導体ウエーハ10の裏面10bを貼着する。なお、上記保護テープ16は、図示の実施形態においては厚さが70μmのポリ塩化ビニル(PVC)からなるシート基材の表面にアクリル樹脂系の糊が厚さが5μm程度塗布されている。なお、半導体ウエーハ10の保護テープ16への貼着は、上記変質層形成加工を実施する前に実施してもよい。即ち、半導体ウエーハ10の裏面10bを上側にして表面10aを保護テープ16に貼着し、環状のフレーム15に支持された状態で上述した変質層形成加工を実施する。
【0025】
次に、上述したように分割予定ライン101に沿って変質層110が形成され強度が低下せしめられた半導体ウエーハ10を、分割予定ライン101に沿って分割する分割装置について、図8乃至図10を参照して説明する。
図8には本発明に従って構成されたウエーハの分割装置の斜視図が示されており、図9には図8に示す分割装置の要部を分解して示す斜視図が示されている。図示の実施形態におけるウエーハの分割装置2は、基台3と、該基台3上に配設され上記図7に示す環状のフレーム15を保持するフレーム保持手段4と、該フレーム保持手段4によって保持された環状のフレーム15に保護テープ16を介して支持された半導体ウエーハ10を分割予定ライン101に沿って破断するウエーハ破断手段5を具備している。
【0026】
フレーム保持手段4は、一対の支持部材41、41と、該一対の支持部材41、41上に配設される保持テーブル42を具備している。一対の支持部材41、41は所定の曲率半径を有する円弧状に形成されており、所定の間隔を置いて互いに対向して配設されている。この一対の支持部材41、41の上面には複数のボールベアリング43がそれぞれ配設されている。保持テーブル42は、円板状に形成されており、その中央部には矩形状の開口421が設けられている。保持テーブル42の上面には、開口421を挟んで互いに対向する位置に4個のクランプ44が配設されている。また、保持テーブル42の下面には、上記一対の支持部材41、41の曲率半径と同一の半径を有する環状の被案内溝422が設けられている。このように構成された保持テーブル42は、環状の被案内溝422を一対の支持部材41、41の上端部に嵌合せしめ、ボールベアリング43によって支持される。従って、保持テーブル42は、一対の支持部材41、41の曲率に沿って回転可能に支持される。このように構成されたフレーム保持手段4によって上記環状のフレーム15を保持する。即ち、上記図7に示すように保護テープ16を介して半導体ウエーハ10を支持した環状のフレーム15を保持テーブル42上に載置し、この載置されたフレーム15をクランプ44によって固定する。
【0027】
図示の実施形態におけるウエーハの分割装置2は、図8に示すように上記保持テーブル42を回動せしめる回動手段45を具備している。この回動手段45は、上記基台2に配設されたパルスモータ451と、該パルスモー451の回転軸に装着されたプーリ452と、該プーリ452と保持テーブル42の外周面とに捲回された無端ベルト453とからなっている。このように構成された回動手段45は、パルスモータ451を駆動することにより、プーリ452および無端ベルト453を介して保持テーブル42を回動せしめる。
【0028】
次に、上記ウエーハ破断手段5について説明する。
図示の実施形態におけるウエーハ破断手段5は、上記フレーム保持手段4の一対の支持部材41、41間において基台3に配設され矢印Y方向に延びる一対の案内レール50、50と、該一対の案内レール50、50上に直列に配設された第1の張力付与手段5aと第2の張力付与手段5bとからなっている。一対の案内レール50、50は、互いに所定の間隔を置いて平行に配設されている。第1の張力付与手段5aと第2の張力付与手段5bは、一対の案内レール50、50上に互いに対向して配設され、一対の案内レール50、50に沿って移動可能に構成されている。なお、第1の張力付与手段5aと第2の張力付与手段5bは、実質的に同一の構成であり、従って同一部材には同一符号を付して説明する。
【0029】
第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bは、それぞれ第1の吸引保持部材51と第2の吸引保持部材52を備えている。第1の吸引保持部材51はL字状に形成され、矩形状の第1の支持部511と該第1の支持部511の一端から上方に延びる第1の保持部512とからなっている。第1の吸引保持部材51を構成する第1の支持部511は、その下面に上記一対の案内レール50、50と対応する一対の被案内溝513が形成されており、この一対の被案内溝513、513を一対の案内レール50、50に嵌合することにより、一対の案内レール50、50に沿って移動可能に支持される。なお、第1の吸引保持部材51を構成する第1の支持部511の上面には、矢印Y方向に延びる一対の案内レール514、514が配設されている。第1の吸引保持部材51を構成する第1の保持部512は、上記保持テーブル42の開口421内に配置され、その上端にそれぞれ上記矢印Y方向に対して垂直な方向に延びる細長い長方形の第1の保持面515を備えている。この第1の保持面515は上記半導体ウエーハの直径より僅かに大きい長さを有しており、上記保持テーブル42の上面と略同一の高さに位置付けられている。第1の保持部512の第1の保持面515には、長手方向に沿って複数の吸引孔516が形成されている。この複数の吸引孔516は、図10に示す吸引手段55に連通されている。従って、吸引手段55を作動すると複数の吸引孔516に負圧が作用し、第1の保持面515上に上記保護テープ16を介して半導体ウエーハ10を吸引保持することができる。このように第1の保持部512の第1の保持面515には、複数の吸引孔516からなる複数の吸引領域が形成される。なお、第1の保持部512に形成された複数の吸引孔516と吸引手段55との関係については、後で詳細に説明する。
【0030】
次に、第2の吸引保持部材52について説明する。
第2の吸引保持部材52はL字状に形成され、矩形状の第2の支持部521と該第2の支持部521の一端から上方に延びる第2の保持部522とからなっている。第2の吸引保持部材52を構成する第2の支持部521は、その下面に上記第1の吸引保持部材51を構成する第1の支持部511に設けられた一対の案内レール514、514と対応する一対の被案内溝523、523が形成されており、この一対の被案内溝523、523を一対の案内レール514、514に嵌合することにより、一対の案内レール514、514に沿って移動可能に支持される。第2の吸引保持部材52を構成する第2の保持部522は、上記保持テーブル42の開口421内に配置され、その上端にそれぞれ上記矢印Y方向に対して垂直な方向に延びる細長い長方形の第2の保持面525を備えている。この第2の保持面525は、上記第1の保持面515と同じ長さ即ち上記半導体ウエーハの直径と略同じ長さを有しており、上記保持テーブル42の上面と略同一の高さに位置付けられている。第2の保持部522の第2の保持面525には、長手方向に沿って複数の吸引孔526が形成されている。この複数の吸引孔526は、図10に示す吸引手段55に連通されている。従って、吸引手段55を作動すると複数の吸引孔526に負圧が作用し、第2の保持面525上に上記保護テープ16を介して半導体ウエーハ10を吸引保持することができる。このように、第2の保持部522の第2の保持面525には、複数の吸引孔526からなる複数の吸引領域が形成される。なお、第2の保持部522に形成された複数の吸引孔526と吸引手段55との関係については、後で詳細に説明する。
【0031】
次に、上記第1の保持部512に形成された複数の吸引孔516および第2の保持部522に形成された複数の吸引孔526と吸引手段55との関係について、図10を参照して説明する。なお、図10は第1の張力付与手段5aに対応した構成が示されているが、第2の張力付与手段5bに対応した構成も実質的に同様である。
図10に示すように第1の保持部材51の第1の保持部512に形成された複数の吸引孔516における両最外側の吸引孔516,516が吸引パイプ551aによって連通され、外側から2番面の吸引孔516、516が吸引パイプ551bによって連通され、外側から3番面の吸引孔516、516が吸引パイプ551cによって連通され、外側から4番面の吸引孔516、516が吸引パイプ551dによって連通され、その他中央部の複数の吸引孔516、516、・・・が吸引パイプ551eによって連通されている。また、第2の保持部材52の第2の保持部522に形成された複数の吸引孔526も第1の保持部512に形成された複数の吸引孔516と同様に、両最外側の吸引孔526、526が吸引パイプ552aによって連通され、外側から2番面の吸引孔526、526が吸引パイプ552bによって連通され、外側から3番面の吸引孔526、526が吸引パイプ552cによって連通され、外側から4番面の吸引孔526、526が吸引パイプ552dによって連通され、その他中央部の複数の吸引孔526、526、・・・が吸引パイプ552eによって連通されている。
【0032】
上記吸引パイプ551aと552aが吸引パイプ553aによって連通され、上記吸引パイプ551bと552bが吸引パイプ553bによって連通され、上記吸引パイプ551cと552cが吸引パイプ553cによって連通され、上記吸引パイプ551dと552dが吸引パイプ553dによって連通され、上記吸引パイプ551eと552eが吸引パイプ553eによって連通されている。そして、上記吸引パイプ553a、553b、553c、553dおよび553eが吸引源554に接続されている。吸引パイプ553a、553b、553c、553dおよび553eには、それぞれ電磁切り換え弁555a、555b、555c、555dおよび555eが配設されている。この電磁切り換え弁555a、555b、555c、555dおよび555eは、除勢(OFF)されている状態では連通を遮断し、附勢(ON)されると連通するようになっている。
【0033】
図10に示す吸引手段55は以上のように構成されており、電磁切り換え弁555eを附勢(ON)すると、吸引パイプ553eと吸引パイプ551eおよび552eを介して第1の保持部512および第2の保持部522の中央部にそれぞれ形成された複数の吸引孔516および526が吸引源554と連通する。従って、電磁切り換え弁555eを附勢(ON)すると、第1の保持部512と第2の保持部522は第1の吸引領域A1が吸引領域となる。また、電磁切り換え弁555eと555dを附勢(ON)すると、吸引パイプ553eを介して吸引パイプ551eおよび552eと吸引源554が連通するとともに、吸引パイプ553dを介して吸引パイプ551dおよび552dと吸引源554が連通するので、第1の保持部512と第2の保持部522は第2の吸引領域A2が吸引領域となる。同様に、、電磁切り換え弁555eと555dおよび555cを附勢(ON)すると第1の保持部512と第2の保持部522は第3の吸引領域A3が吸引領域となり、電磁切り換え弁555eと555dと555cおよび555bを附勢(ON)すると第1の保持部512と第2の保持部522は第4の吸引領域A4が吸引領域となり、電磁切り換え弁555eと555dと555cと555bおよび555aを附勢(ON)すると第1の保持部512と第2の保持部522は第5の吸引領域A5が吸引領域となる。このように、電磁切り換え弁555a、555b、555c、555dおよび555eを附勢(ON)する数を変更することにより、第1の保持部512に形成された複数の吸引孔516と第2の保持部522に形成された複数の吸引孔526の吸引源554と連通する数を変更し吸引領域を変更することができる。従って、上記各吸引パイプおよび各電磁切り換え弁は、吸引孔の数を変更する吸引領域変更手段として機能する。
【0034】
図8および図9に戻って説明を続けると、上記第1の張力付与手段5aと第2の張力付与手段5bは、図示の実施形態においては第1の吸引保持部材51の第1の保持部512が互いに対向するように配設されている。従って、第1の吸引保持部材51、51に配設された第2の吸引保持部材52、52は、それぞれ外側に移動することにより第1の吸引保持部材51、51と離反するようになっている。
【0035】
図示の実施形態における第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bは、それぞれ第2の吸引保持部材52、52を上記一対の案内レール514、514に沿って矢印Yで示す方向に移動する移動手段53を具備している。この移動手段53は、図9に示すように第1の吸引保持部材51の第1の支持部511上に配設された2本のエアシリンダ531、531からなっており、そのピストンロッド532、532が第2の吸引保持部材52の第2の支持部521に連結されている。このエアシリンダ531、531は、図示しない一方の作動室に圧縮空気を供給することにより第2の吸引保持部材52を第1の吸引保持部材51から離反する方向に作動し、図示しない他方の作動室に圧縮空気を供給することにより第2の吸引保持部材52を第1の吸引保持部材51と接近する方向に作動せしめる。
【0036】
また、図示の実施形態における第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bは、それぞれ第1の吸引保持部材51を上記一対の案内レール50、50に沿って矢印Yで示す方向に移動するインデックス手段54を具備している。このインデックス手段54は、図9に示すように一対の案内レール50、50と平行に配設された雄ネジロッド541と、該雄ネジロッド541の一端に連結され雄ネジロッド541を回転駆動するためのパルスモータ542と、雄ネジロッド541の他端部を回転可能に支持するための基台3に配設された軸受543(図10参照)とからなっており、雄ネジロッド541が第1の吸引保持部材51を構成する第1の支持部511に形成された雌ネジ穴517に螺合せしめられる。従って、パルスモータ542を正転又は逆転駆動することにより、第1の吸引保持部材51を上記一対の案内レール50、50に沿って矢印Yで示す方向に移動することができる。
【0037】
図8に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるウエーハの分割装置2は、上記フレーム保持手段4を構成する保持テーブル42に保持された図7に示す環状のフレーム15に保護テープ16を介して支持されている半導体ウエーハ10の分割予定ライン101を検出するための検出手段6を具備している。検出手段6は、基台3に配設された回動機構61に連結されたL字状の支持柱62に取り付けられている。この検出手段6は、光学系および撮像素子(CCD)等で構成されており、上記張力付与手段4の上方位置に配置されている。このように構成された検出手段6は、上記保持テーブル42に保持された環状のフレーム15に保護テープ16を介して支持されている半導体ウエーハ10の分割予定ライン101を撮像し、これを電気信号に変換して図示しない制御手段に送る。なお、検出手段6を支持したL字状の支持柱62は、回動機構61によって矢印で示す方向に揺動せしめられる。
【0038】
図示の実施形態におけるウエーハの分割装置2は以上のように構成されており、以下その作動について主に図8、図10乃至図13を参照して説明する。
上記図7に示すように分割予定ライン101に沿って強度が低下せしめられた半導体ウエーハ10を保護テープ16を介して支持した環状のフレーム15を、図11に示すようにフレーム保持手段4を構成する保持テーブル42の上面に載置し、クランプ44によって保持テーブル42に固定する。
【0039】
半導体ウエーハ10を保持テープ16を介して支持した環状のフレーム15をフレーム保持手段4に保持したならば、図11に示すように第1の張力付与手段5aのインデックス手段54を作動して第1の張力付与手段5aの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52を半導体ウエーハ10に所定方向に形成された図において最右端の分割予定ライン101と対応する位置に位置付けるとともに、第2の張力付与手段5bのインデックス手段54を作動して第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52を半導体ウエーハ10の所定方向に形成された図において真中の分割予定ライン101と対応する位置に位置付ける。そして、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bにおける第1の吸引保持部材51を構成する第1の保持部512の第1の保持面515と、第2の吸引保持部材52を構成する第2の保持部522の第2の保持面525を、それぞれ分割予定ライン101の両側に位置付ける。このとき、検出手段6によって分割予定ライン101を撮像し、それぞれ第1の保持面515および第2の保持面525との位置合わせを行う。このように、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52をそれぞれ図11に示す位置に位置付けた状態においては、半導体ウエーハ10が貼着された保護テープ16および環状のフレーム15と吸引領域との関係は図13に示すようになる。即ち、半導体ウエーハ10の最右端の分割予定ライン101と対応する位置に位置付けられた第1の張力付与手段5aの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の両側部が環状のフレーム15と対向して位置するので、第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の吸引領域は環状のフレーム15と対向する領域を除く第2の吸引領域A2とする。一方、半導体ウエーハ10の真中の分割予定ライン101と対応する位置に位置付けられた第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52は環状のフレーム15の内側に位置するので、その吸引領域は第5の吸引領域A5とする。
【0040】
以上のようにして、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52をそれぞれ図11に示す位置に位置付けたならば、第1の張力付与手段5aにおいては吸引手段55の電磁切り換え弁555dおよび555eを附勢(ON)し、第2の張力付与手段5bにおいては電磁切り換え弁555a、555b、555c、555dおよび555eを附勢(ON)する。この結果、図12の(a)および図13に示すように第1の張力付与手段5aを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の第2の吸引領域A2に位置する吸引孔516および526に負圧が作用せしめられ、第2の張力付与手段5bを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の第5の吸引領域A5に位置する吸引孔516および526に負圧が作用せしめられる。従って、第1の張力付与手段5aを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52においては第2の吸引領域A2で半導体ウエーハ10を保護テープ16を介して吸引保持し、第2の張力付与手段5bを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52においては第5の吸引領域A5で半導体ウエーハ10を保護テープ16を介して吸引保持する(保持工程)。このとき、第1の張力付与手段5aを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の両側部は環状のフレーム15と対向しているが、負圧が作用しないので環状のフレーム15を吸引することがないとともに、負圧漏れも生じない。従って、負圧洩れにより他の領域が吸引力不足となることもない。
【0041】
次に、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの移動手段53を構成するエアシリンダ531を作動し、図12の(b)に示すように第1の張力付与手段5aの第2の吸引保持部材52を矢印Y1で示す方向に移動し、第2の張力付与手段5b の第2の吸引保持部材52をY2で示す方向に移動する。即ち、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第2の吸引保持部材52をそれぞれ第1の吸引保持部材51から外側に離反する方向に移動せしめる。このとき、第1の張力付与手段5aを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の両側部は環状のフレーム15と対向しているが、該両側部には上述したように負圧が作用しないので環状のフレーム15を吸引することはないため、第2の吸引保持部材52の移動に支障をきたすことはない。この結果、図12の(b)に示すように第1の吸引保持部材51の第1の保持面515と第2の吸引保持部52の第2の保持面525との間に位置付けられた分割予定ライン101には、分割予定ライン101と直交する方向に引張力が作用して、半導体ウエーハ10は分割予定ライン101に沿って破断される(分割工程)。なお、この分割工程においては、半導体ウエーハ10は分割予定ライン101に沿って変質層110が形成され強度が低下せしめられているので、第2の吸引保持部材52を第1の吸引保持部材51から離反する方向に0.5mm程度移動することにより半導体ウエーハ10を分割予定ラインに沿って破断することができる。
【0042】
このように、図示の実施形態においては、分割予定ライン101の両側に位置付けられた第1の吸引保持部材51と第2の吸引保持部材52によって保護テープ16を介して半導体ウエーハ10を吸引保持し、第2の吸引保持部材52を第1の吸引保持部材51から離反する方向に移動して、分割予定ライン101と直交する方向に引張力を作用せしめるので、変質層110が形成された分割予定ライン101に沿って正確に且つ確実に分割することができる。従って、分割予定ライン101上に回路の機能をテストするためのテスト エレメント グループ(TEG)と称するテスト用の金属パターンが配設されていても、この金属パターンも分割予定ラインに沿って正確に破断される。また、図示の実施形態においては、第1の張力付与手段5aと第2の張力付与手段5bを備えているので、同時に2本の分割予定ライン101に沿って分割することができるため、生産性が向上する。更に、図示の実施形態においては、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第2の吸引保持部材52は、上記分割工程においてそれぞれ第1の吸引保持部材51から外側に離反する方向に移動するように構成されているので、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51間に位置する領域のウエーハには圧縮力が作用しないためウエーハを破損することはない。
【0043】
上述したように所定方向に形成された2本の分割予定ライン101に沿って破断する分割工程を実施したならば、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52による半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。次に、第1の張力付与手段5aのインデックス手段54および第2の張力付与手段5bのインデックス手段54を作動して、第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52を分割予定ライン101の間隔に相当する分だけそれぞれ図11および図13において左方に移動し、上記分割工程を実施した分割予定ライン101の図において左隣の分割予定ライン101と対応する位置に位置付ける。そして、上記保持工程および分割工程を実施する。なお、保持工程においては、第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52を位置付けた状態において環状のフレーム15と対応する領域の吸引を制限するように、上記吸引手段55の電磁切り換え弁555a、555b、555c、555dおよび555eを選択して附勢(ON)する。
【0044】
以上のようにして、所定方向に形成された全ての分割予定ライン101に対して上記保持工程および分割工程を実施したならば、回動手段45を作動してフレーム保持手段4の保持テーブル42を90度回動せしめる。この結果、フレーム保持手段4の保持テーブル42に保持された半導体ウエーハ10も90度回動することになり、所定方向に形成され上記分割工程が実施された分割予定ライン101と直交する方向に形成された分割予定ライン101が第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51の第1の保持面515と第2の吸引保持部材52の第2の保持面525と平行な状態に位置付けられる。次に、上記分割工程が実施された分割予定ライン101と直交する方向に形成された全ての分割予定ライン101に対して上述し保持工程および分割工程を実施することにより、半導体ウエーハ10は分割予定ライン101に沿って個々の半導体チップに分割される。
【0045】
次に、上記第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の他の実施形態について、図14を参照して説明する。なお、図14に示す実施形態においては、第1の吸引保持部材51と第2の吸引保持部材52の保持部の構成は実質的に同一であるため、吸引保持部材51(52)として説明する。
図14に示す吸引保持部材51(52)は、保持部512(522)の上面に吸引補助部材56を装着したものである。この吸引補助部材56は、複数の隔壁561によって区画された複数の領域にポーラス部材562を配設した構成であり、ポーラス部材562が吸引孔516(526)と対向して位置付けられる。なお、各吸引孔516(526)に負圧を作用せしめる吸引手段は、上記図10に示す吸引手段55と同様でよい。このように構成された吸引保持部材51(52)は、吸引孔516(526)を通して吸引補助部材56の各ポーラス部材562の上面に負圧が作用し、各ポーラス部材562の上面で保護テープを介してウエーハを吸引保持するので、吸引孔により直接吸引保持するより安定した保持効果が得られる。
【0046】
次に、上記第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の更に他の実施形態について、図15を参照して説明する。なお、図15に示す実施形態においても、第1の吸引保持部材51と第2の吸引保持部材52の保持部の構成は実質的に同一であるため、吸引保持部材51(52)として説明する。
図15に示す吸引保持部材51(52)は、保持部512(522)の上部に長手方向(図15において左右方向)に細長い吸引溝57を形成するとともに、該吸引溝57の中央部に連通する1本の吸引孔58が設けられている。なお、吸引孔58は、図示しない吸引手段に連通されている。そして、吸引保持部材51(52)には、長手方向両側部において上記吸引溝57を仕切る複数の仕切り板59が図において上下方向に移動可能に配設されている。この複数の仕切り板59は、それぞれ電磁ソレノイドなどのアクチュエータ590によって上下方向に作動されるようになっている。このように構成された吸引保持部材51(52)においては、アクチュエータ590によって仕切り板58を図において上方に移動して吸引溝57を仕切ることにより、該仕切り板58より側方の領域の吸引を制限する。なお、図15に示す吸引保持部材51(52)においても、その上面に上記図14に示す実施形態における吸引補助部材56を装着してもよい。
【0047】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形が可能である。例えば、図示の実施形態においては2個の張力付与手段(第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5b)を備えた例を示したが、ウエーハ破断手段は1個でもよい。また、図示の実施形態においては上述した第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51の第1の保持面515と第2の吸引保持部材52の第2の保持面525は共に水平面に形成した例を示したが、第1の保持面515と第2の保持面525は互いに対向する側縁に向けてそれぞれ下方または上方に向けて傾斜して形成してもよい。この互いに傾斜して形成された第1の保持面515と第2の保持面525とのなす角度は、175〜185度が適当である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に従って構成されるウエーハの分割装置によって分割される半導体ウエーハの斜視図。
【図2】図1に示す半導体ウエーハに変質層形成加工を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
【図3】図2に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成を簡略に示すブロック図。
【図4】パルスレーザー光線の集光スポット径を説明するための簡略図。
【図5】図2に示すレーザー加工装置により半導体ウエーハの分割予定ラインに沿って変質層形成加工を実施している状態を示す説明図。
【図6】図5に示す変質層形成加工において半導体ウエーハの内部に変質層を積層して形成した状態を示す説明図。
【図7】変質層形成加工が実施された半導体ウエーハを環状のフレームに装着された保護テープの表面に貼着した状態を示す斜視図。
【図8】本発明に従って構成されたウエーハの分割装置の斜視図。
【図9】図8に示すウエーハの分割装置の要部を分解して示す斜視図。
【図10】図8に示す分割装置を構成する第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材に形成された吸引孔に負圧を作用せしめる吸引手段の説明図。
【図11】図8に示す分割装置を構成するフレーム保持手段に保護テープを介して半導体ウエーハを支持した環状のフレームを保持した状態を示す要部断面図。
【図12】図8に示す分割装置により半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って分割する工程を示す説明図。
【図13】環状のフレームに保護テープを介して保持された半導体ウエーハと第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の吸引領域との関係を示す説明図。
【図14】図8に示す分割装置を構成する第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の他の実施形態を示す断面斜視図。
【図15】図8に示す分割装置を構成する第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の更に他の実施形態を示す断面斜視図。
【符号の説明】
【0049】
1:レーザー加工装置
11:レーザー加工装置のチャックテーブル
12:レーザー光線照射手段
13:撮像手段
2:ウエーハの分割装置
3:基台
4: フレーム保持手段
41、41:一対の支持部材
42:保持テーブル
43:ボールベアリング
44:クランプ
45:回動手段
5:ウエーハ破断手段
5a:第1の張力付与手段
5b:第2の張力付与手段
51:第1の吸引保持部材
52:第2の吸引保持部材
53:移動手段
54:インデックス手段
55:吸引手段
6:検出手段
10:半導体ウエーハ
101:分割予定ライン
102:回路
110:変質層
15:環状のフレーム
16:保護テープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に分割予定ラインが形成されたウエーハを分割予定ラインに沿って分割するウエーハの分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等の回路を形成する。そして、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することにより回路が形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハも所定の分割予定ラインに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の分割予定ラインに沿った切断は、通常、ダイサーと称されている切削装置によって行われている。この切削装置は、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる切削送り手段とを具備している。切削手段は、回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードおよび回転スピンドルを回転駆動する駆動機構を含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって基台に固定し厚さ20μm程度に形成されている。
【0004】
しかるに、サファイヤ基板、炭化珪素基板等はモース硬度が高いため、上記切削ブレードによる切断は必ずしも容易ではない。更に、切削ブレードは20μm程度の厚さを有するため、デバイスを区画する分割予定ラインとしては幅が50μm程度必要となる。このため、例えば大きさが300μm×300μm程度のデバイスの場合には、ストリートの占める面積比率が14%にもなり、生産性が悪いという問題がある。
【0005】
一方、近年半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、その被加工物に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法も試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、被加工物の一方の面側から内部に集光点を合わせて被加工物に対して透過性を有する赤外光領域のパルスレーザー光線を照射し、被加工物の内部に分割予定ラインに沿って変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特許第3408805号公報
【0006】
上述したように分割予定ラインに沿って変質層が連続的に形成されたウエーハの分割予定ラインに沿って外力を付与し、ウエーハを個々のチップに分割する方法として、本出願人はウエーハが貼着された保護テープを拡張してウエーハに引っ張り力を付与することにより、ウエーハを個々のチップに分割する技術を特願2003−361471号として提案した。
【0007】
しかしながら、ウエーハが貼着された保護テープを拡張してウエーハに引張力を付与する方法は、ウエーハが貼着された保護テープを拡張するとウエーハには放射状に引っ張り力が作用するため、格子状に形成された分割予定ラインに対してランダムな方向に引張力が作用することになるので、ウエーハは不規則に分割され、分割されない未分割領域が残存するという問題がある。また、分割予定ライン上に回路の機能をテストするためのテスト エレメント グループ(TEG)と称するテスト用の金属パターンが配設されているウエーハを上述したように保護テープを拡張して分割予定ラインに沿って分割すると、上記金属パターンに不規則な力が作用することに起因して、金属パターンが鋸刃状に破断され、コンタミの原因となるとともにデバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0008】
このような問題を解消するために、本出願人はウエーハの一方の面に貼着した保護テープを保持するテープ保持手段と、テープ保持手段に保護テープを介して支持されたウエーハを分割予定ラインの両側において保護テープを介して吸引保持する第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材と、該第1の吸引保持部材と第2の吸引保持部材を互いに離反する方向に移動せしめる移動手段とを具備するウエーハの分割装置を特願2004−215111号として提案した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特願2004−215111号として提案した分割装置の第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材はウエーハの直径に対応して形成されているので、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材をウエーハの直径位置から離れた位置に位置付けた状態においては、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の両端部はウエーハが貼着された保持テープを装着した環状のフレームと対向する位置に位置付けられることになる。この結果、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材は環状のフレームをも吸引してしまい、第1の吸引保持部材と第2の吸引保持部材を離反する際に支障をきたすという問題がある。また、環状のフレーム部においては第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材との接触部で負圧漏れが生じやすく、全体の吸引力が低下するという問題もある。
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、分割予定ラインに沿って強度が低下せしめられたウエーハを、分割予定ラインの両側で確実に吸引保持し、分割予定ラインに沿って確実に引張力を作用させることができるウエーハの分割装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、分割予定ラインに沿って強度が低下せしめられているウエーハを、分割予定ラインに沿って分割するウエーハの分割装置において、
ウエーハの一方の面を貼着した保護テープが装着された環状のフレームを保持するフレーム保持手段と、
該フレーム保持手段に保持された該環状のフレームに装着された該保護テープに貼着されているウエーハを、分割予定ラインの両側において該保護テープを介してそれぞれ吸引保持する保持面を備え該保持面に複数の吸引領域を備えた第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材と、該吸引領域に負圧を作用せしめる吸引手段と、該第1の吸引保持部材と該第2の吸引保持部材を離反する方向に移動せしめる移動手段とからなる張力付与手段と、を具備し、
該第1の吸引保持部材の該保持面と該第2の吸引保持部材の該保持面はウエーハの直径に対応する長さに形成され、該複数の吸引領域は該保持面の長手方向に沿って形成されており、該吸引手段は負圧を作用せしめる該吸引領域を変更する吸引領域変更手段を備えている、
ことを特徴とするウエーハの分割装置が提供される。
【0012】
ウエーハの分割装置は、上記張力付与手段を該移動手段による移動方向に移動せしめるインデックス手段を備えていることが望ましい。上記第2の吸引保持部材は上記第1の吸引保持部材に移動可能に配設されており、上記移動手段は第2の吸引保持部材を移動せしめ、上記インデックス手段は第1の吸引保持部材を移動せしめる。また、ウエーハの分割装置は、上記テープ保持手段に保護テープを介して保持されたウエーハの分割予定ラインを検出する検出手段を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、複数の吸引孔を備えた第1の吸引保持部材の保持面と第2の吸引保持部材の保持面はウエーハの直径に対応する長さに形成され、複数の吸引孔は保持面の長手方向に沿って形成されており、吸引手段は負圧を作用せしめる吸引孔の数を変更する吸引領域変更手段を備えているので、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材がウエーハの直径位置から離れた位置に位置付けられ、その両側部が環状のフレームと対向する位置に位置付けられた場合には、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の両側部における負圧の作用を制限することができる。従って、第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材によって環状のフレームを吸引することがないので、第1の吸引保持部材と第2の吸引保持部材を確実に離反することができ、保護テープを介してウエーハの分割予定ラインに沿って確実に引張力を作用させることができる。また、上述したように第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の両側部が環状のフレームと対向する位置に位置付けられた場合には、該両側部における負圧の作用を制限するので、負圧漏れが生ずることはなく、吸引力不足となることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明によるウエーハの分割装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成された分割装置によって分割されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図が示されている。図1に示す半導体ウエーハ10は、例えば厚さが300μmのシリコンウエーハからなっており、表面10aには複数の分割予定ライン101が格子状に形成されている。そして、半導体ウエーハ10の表面10aには、複数の分割予定ライン101によって区画された複数の領域に機能素子としての回路102が形成されている。
【0016】
上述した半導体ウエーハ10を分割予定ラインに沿って分割するには、半導体ウエーハ10に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を分割予定ライン101に沿って照射し、半導体ウエーハ10の内部に分割予定ライン101に沿って変質層を形成することにより分割予定ラインに沿って強度を低下せしめる変質層形成加工を実施する。この変質層形成加工は、図2乃至図4に示すレーザー加工装置1を用いて実施する。図2乃至図4に示すレーザー加工装置1は、被加工物を保持するチャックテーブル11と、該チャックテーブル11上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段12と、チャックテーブル11上に保持された被加工物を撮像する撮像手段13を具備している。チャックテーブル11は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない移動機構によって図2において矢印Xで示す加工送り方向および矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0017】
上記レーザー光線照射手段12は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング121を含んでいる。ケーシング121内には図3に示すようにパルスレーザー光線発振手段122と伝送光学系123とが配設されている。パルスレーザー光線発振手段122は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器122aと、これに付設された繰り返し周波数設定手段122bとから構成されている。伝送光学系123は、ビームスプリッタの如き適宜の光学要素を含んでいる。上記ケーシング121の先端部には、それ自体は周知の形態でよい組レンズから構成される集光レンズ(図示せず)を収容した集光器124が装着されている。上記パルスレーザー光線発振手段122から発振されたレーザー光線は、伝送光学系123を介して集光器124に至り、集光器124から上記チャックテーブル11に保持される被加工物に所定の集光スポット径Dで照射される。この集光スポット径Dは、図4に示すようにガウス分布を示すパルスレーザー光線が集光器124の対物レンズ124aを通して照射される場合、D(μm)=4×λ×f/(π×W)、ここでλはパルスレーザー光線の波長(μm)、Wは対物レンズ124aに入射されるパルスレーザー光線の直径(mm)、fは対物レンズ124aの焦点距離(mm)、で規定される。
【0018】
上記レーザー光線照射手段12を構成するケーシング121の先端部に装着された撮像手段13は、図示の実施形態においては可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0019】
上述したレーザー加工装置1を用いて実施する変質層形成加工について、図2、図5および図6を参照して説明する。
この変質層形成加工は、先ず上述した図2に示すレーザー加工装置1のチャックテーブル11上に半導体ウエーハ10を裏面10bを上にして載置し、該チャックテーブル11上に半導体ウエーハ10を吸着保持する。半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル11は、図示しない移動機構によって撮像手段13の直下に位置付けられる。
【0020】
チャックテーブル11が撮像手段13の直下に位置付けられると、撮像手段13および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段13および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されている分割予定ライン101と、該分割予定ライン101に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段12の集光器124との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されている分割予定ライン101に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10の分割予定ライン101が形成されている表面10aは下側に位置しているが、撮像手段13が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面10bから透かして分割予定ライン101を撮像することができる。
【0021】
以上のようにしてチャックテーブル11上に保持された半導体ウエーハ10に形成されている分割予定ライン101を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図5の(a)で示すようにチャックテーブル11をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段12の集光器124が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン101の一端(図5の(a)において左端)をレーザー光線照射手段12の集光器124の直下に位置付ける。そして、集光器124から透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル11即ち半導体ウエーハ10を図5の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図5の(b)で示すようにレーザー光線照射手段12の集光器124の照射位置が分割予定ライン101の他端の位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル11即ち半導体ウエーハ10の移動を停止する。この変質層形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ10の表面10a(下面)付近に合わせる。この結果、半導体ウエーハ10の表面10a(下面)に露出するとともに表面10aから内部に向けて変質層110が形成される。この変質層110は、溶融再固化層として形成され、強度を低下せしめられる。
【0022】
上記変質層形成加工における加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4スレーザー
波長 :1064nmのパルスレーザー
パルス出力 :10μJ
集光スポット径 :φ1μm
繰り返し周波数 :100kHz
加工送り速度 :100mm/秒
【0023】
なお、半導体ウエーハ10の厚さが厚い場合には、図6に示すように集光点Pを段階的に変えて上述した変質層形成加工を複数回実行することにより、複数の変質層110を形成する。例えば、上述した加工条件においては1回に形成される変質層の厚さは約50μmであるため、上記変質層形成加工を例えば3回実施して150μmの変質層210を形成する。また、厚さが300μmのウエーハ10に対して6層の変質層を形成し、半導体ウエーハ2の内部に分割予定ライン101に沿って表面10aから裏面10bに渡って変質層を形成してもよい。また、変質層210は、表面10aおよび裏面10bに露出しないように内部だけに形成してもよい。
【0024】
上述した変質層形成加工によって半導体ウエーハ10の内部に全ての分割予定ライン101に沿って変質層110を形成したならば、図7に示すように環状のフレーム15の内側開口部を覆うように外周部が装着された保護テープ16の表面に半導体ウエーハ10の裏面10bを貼着する。なお、上記保護テープ16は、図示の実施形態においては厚さが70μmのポリ塩化ビニル(PVC)からなるシート基材の表面にアクリル樹脂系の糊が厚さが5μm程度塗布されている。なお、半導体ウエーハ10の保護テープ16への貼着は、上記変質層形成加工を実施する前に実施してもよい。即ち、半導体ウエーハ10の裏面10bを上側にして表面10aを保護テープ16に貼着し、環状のフレーム15に支持された状態で上述した変質層形成加工を実施する。
【0025】
次に、上述したように分割予定ライン101に沿って変質層110が形成され強度が低下せしめられた半導体ウエーハ10を、分割予定ライン101に沿って分割する分割装置について、図8乃至図10を参照して説明する。
図8には本発明に従って構成されたウエーハの分割装置の斜視図が示されており、図9には図8に示す分割装置の要部を分解して示す斜視図が示されている。図示の実施形態におけるウエーハの分割装置2は、基台3と、該基台3上に配設され上記図7に示す環状のフレーム15を保持するフレーム保持手段4と、該フレーム保持手段4によって保持された環状のフレーム15に保護テープ16を介して支持された半導体ウエーハ10を分割予定ライン101に沿って破断するウエーハ破断手段5を具備している。
【0026】
フレーム保持手段4は、一対の支持部材41、41と、該一対の支持部材41、41上に配設される保持テーブル42を具備している。一対の支持部材41、41は所定の曲率半径を有する円弧状に形成されており、所定の間隔を置いて互いに対向して配設されている。この一対の支持部材41、41の上面には複数のボールベアリング43がそれぞれ配設されている。保持テーブル42は、円板状に形成されており、その中央部には矩形状の開口421が設けられている。保持テーブル42の上面には、開口421を挟んで互いに対向する位置に4個のクランプ44が配設されている。また、保持テーブル42の下面には、上記一対の支持部材41、41の曲率半径と同一の半径を有する環状の被案内溝422が設けられている。このように構成された保持テーブル42は、環状の被案内溝422を一対の支持部材41、41の上端部に嵌合せしめ、ボールベアリング43によって支持される。従って、保持テーブル42は、一対の支持部材41、41の曲率に沿って回転可能に支持される。このように構成されたフレーム保持手段4によって上記環状のフレーム15を保持する。即ち、上記図7に示すように保護テープ16を介して半導体ウエーハ10を支持した環状のフレーム15を保持テーブル42上に載置し、この載置されたフレーム15をクランプ44によって固定する。
【0027】
図示の実施形態におけるウエーハの分割装置2は、図8に示すように上記保持テーブル42を回動せしめる回動手段45を具備している。この回動手段45は、上記基台2に配設されたパルスモータ451と、該パルスモー451の回転軸に装着されたプーリ452と、該プーリ452と保持テーブル42の外周面とに捲回された無端ベルト453とからなっている。このように構成された回動手段45は、パルスモータ451を駆動することにより、プーリ452および無端ベルト453を介して保持テーブル42を回動せしめる。
【0028】
次に、上記ウエーハ破断手段5について説明する。
図示の実施形態におけるウエーハ破断手段5は、上記フレーム保持手段4の一対の支持部材41、41間において基台3に配設され矢印Y方向に延びる一対の案内レール50、50と、該一対の案内レール50、50上に直列に配設された第1の張力付与手段5aと第2の張力付与手段5bとからなっている。一対の案内レール50、50は、互いに所定の間隔を置いて平行に配設されている。第1の張力付与手段5aと第2の張力付与手段5bは、一対の案内レール50、50上に互いに対向して配設され、一対の案内レール50、50に沿って移動可能に構成されている。なお、第1の張力付与手段5aと第2の張力付与手段5bは、実質的に同一の構成であり、従って同一部材には同一符号を付して説明する。
【0029】
第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bは、それぞれ第1の吸引保持部材51と第2の吸引保持部材52を備えている。第1の吸引保持部材51はL字状に形成され、矩形状の第1の支持部511と該第1の支持部511の一端から上方に延びる第1の保持部512とからなっている。第1の吸引保持部材51を構成する第1の支持部511は、その下面に上記一対の案内レール50、50と対応する一対の被案内溝513が形成されており、この一対の被案内溝513、513を一対の案内レール50、50に嵌合することにより、一対の案内レール50、50に沿って移動可能に支持される。なお、第1の吸引保持部材51を構成する第1の支持部511の上面には、矢印Y方向に延びる一対の案内レール514、514が配設されている。第1の吸引保持部材51を構成する第1の保持部512は、上記保持テーブル42の開口421内に配置され、その上端にそれぞれ上記矢印Y方向に対して垂直な方向に延びる細長い長方形の第1の保持面515を備えている。この第1の保持面515は上記半導体ウエーハの直径より僅かに大きい長さを有しており、上記保持テーブル42の上面と略同一の高さに位置付けられている。第1の保持部512の第1の保持面515には、長手方向に沿って複数の吸引孔516が形成されている。この複数の吸引孔516は、図10に示す吸引手段55に連通されている。従って、吸引手段55を作動すると複数の吸引孔516に負圧が作用し、第1の保持面515上に上記保護テープ16を介して半導体ウエーハ10を吸引保持することができる。このように第1の保持部512の第1の保持面515には、複数の吸引孔516からなる複数の吸引領域が形成される。なお、第1の保持部512に形成された複数の吸引孔516と吸引手段55との関係については、後で詳細に説明する。
【0030】
次に、第2の吸引保持部材52について説明する。
第2の吸引保持部材52はL字状に形成され、矩形状の第2の支持部521と該第2の支持部521の一端から上方に延びる第2の保持部522とからなっている。第2の吸引保持部材52を構成する第2の支持部521は、その下面に上記第1の吸引保持部材51を構成する第1の支持部511に設けられた一対の案内レール514、514と対応する一対の被案内溝523、523が形成されており、この一対の被案内溝523、523を一対の案内レール514、514に嵌合することにより、一対の案内レール514、514に沿って移動可能に支持される。第2の吸引保持部材52を構成する第2の保持部522は、上記保持テーブル42の開口421内に配置され、その上端にそれぞれ上記矢印Y方向に対して垂直な方向に延びる細長い長方形の第2の保持面525を備えている。この第2の保持面525は、上記第1の保持面515と同じ長さ即ち上記半導体ウエーハの直径と略同じ長さを有しており、上記保持テーブル42の上面と略同一の高さに位置付けられている。第2の保持部522の第2の保持面525には、長手方向に沿って複数の吸引孔526が形成されている。この複数の吸引孔526は、図10に示す吸引手段55に連通されている。従って、吸引手段55を作動すると複数の吸引孔526に負圧が作用し、第2の保持面525上に上記保護テープ16を介して半導体ウエーハ10を吸引保持することができる。このように、第2の保持部522の第2の保持面525には、複数の吸引孔526からなる複数の吸引領域が形成される。なお、第2の保持部522に形成された複数の吸引孔526と吸引手段55との関係については、後で詳細に説明する。
【0031】
次に、上記第1の保持部512に形成された複数の吸引孔516および第2の保持部522に形成された複数の吸引孔526と吸引手段55との関係について、図10を参照して説明する。なお、図10は第1の張力付与手段5aに対応した構成が示されているが、第2の張力付与手段5bに対応した構成も実質的に同様である。
図10に示すように第1の保持部材51の第1の保持部512に形成された複数の吸引孔516における両最外側の吸引孔516,516が吸引パイプ551aによって連通され、外側から2番面の吸引孔516、516が吸引パイプ551bによって連通され、外側から3番面の吸引孔516、516が吸引パイプ551cによって連通され、外側から4番面の吸引孔516、516が吸引パイプ551dによって連通され、その他中央部の複数の吸引孔516、516、・・・が吸引パイプ551eによって連通されている。また、第2の保持部材52の第2の保持部522に形成された複数の吸引孔526も第1の保持部512に形成された複数の吸引孔516と同様に、両最外側の吸引孔526、526が吸引パイプ552aによって連通され、外側から2番面の吸引孔526、526が吸引パイプ552bによって連通され、外側から3番面の吸引孔526、526が吸引パイプ552cによって連通され、外側から4番面の吸引孔526、526が吸引パイプ552dによって連通され、その他中央部の複数の吸引孔526、526、・・・が吸引パイプ552eによって連通されている。
【0032】
上記吸引パイプ551aと552aが吸引パイプ553aによって連通され、上記吸引パイプ551bと552bが吸引パイプ553bによって連通され、上記吸引パイプ551cと552cが吸引パイプ553cによって連通され、上記吸引パイプ551dと552dが吸引パイプ553dによって連通され、上記吸引パイプ551eと552eが吸引パイプ553eによって連通されている。そして、上記吸引パイプ553a、553b、553c、553dおよび553eが吸引源554に接続されている。吸引パイプ553a、553b、553c、553dおよび553eには、それぞれ電磁切り換え弁555a、555b、555c、555dおよび555eが配設されている。この電磁切り換え弁555a、555b、555c、555dおよび555eは、除勢(OFF)されている状態では連通を遮断し、附勢(ON)されると連通するようになっている。
【0033】
図10に示す吸引手段55は以上のように構成されており、電磁切り換え弁555eを附勢(ON)すると、吸引パイプ553eと吸引パイプ551eおよび552eを介して第1の保持部512および第2の保持部522の中央部にそれぞれ形成された複数の吸引孔516および526が吸引源554と連通する。従って、電磁切り換え弁555eを附勢(ON)すると、第1の保持部512と第2の保持部522は第1の吸引領域A1が吸引領域となる。また、電磁切り換え弁555eと555dを附勢(ON)すると、吸引パイプ553eを介して吸引パイプ551eおよび552eと吸引源554が連通するとともに、吸引パイプ553dを介して吸引パイプ551dおよび552dと吸引源554が連通するので、第1の保持部512と第2の保持部522は第2の吸引領域A2が吸引領域となる。同様に、、電磁切り換え弁555eと555dおよび555cを附勢(ON)すると第1の保持部512と第2の保持部522は第3の吸引領域A3が吸引領域となり、電磁切り換え弁555eと555dと555cおよび555bを附勢(ON)すると第1の保持部512と第2の保持部522は第4の吸引領域A4が吸引領域となり、電磁切り換え弁555eと555dと555cと555bおよび555aを附勢(ON)すると第1の保持部512と第2の保持部522は第5の吸引領域A5が吸引領域となる。このように、電磁切り換え弁555a、555b、555c、555dおよび555eを附勢(ON)する数を変更することにより、第1の保持部512に形成された複数の吸引孔516と第2の保持部522に形成された複数の吸引孔526の吸引源554と連通する数を変更し吸引領域を変更することができる。従って、上記各吸引パイプおよび各電磁切り換え弁は、吸引孔の数を変更する吸引領域変更手段として機能する。
【0034】
図8および図9に戻って説明を続けると、上記第1の張力付与手段5aと第2の張力付与手段5bは、図示の実施形態においては第1の吸引保持部材51の第1の保持部512が互いに対向するように配設されている。従って、第1の吸引保持部材51、51に配設された第2の吸引保持部材52、52は、それぞれ外側に移動することにより第1の吸引保持部材51、51と離反するようになっている。
【0035】
図示の実施形態における第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bは、それぞれ第2の吸引保持部材52、52を上記一対の案内レール514、514に沿って矢印Yで示す方向に移動する移動手段53を具備している。この移動手段53は、図9に示すように第1の吸引保持部材51の第1の支持部511上に配設された2本のエアシリンダ531、531からなっており、そのピストンロッド532、532が第2の吸引保持部材52の第2の支持部521に連結されている。このエアシリンダ531、531は、図示しない一方の作動室に圧縮空気を供給することにより第2の吸引保持部材52を第1の吸引保持部材51から離反する方向に作動し、図示しない他方の作動室に圧縮空気を供給することにより第2の吸引保持部材52を第1の吸引保持部材51と接近する方向に作動せしめる。
【0036】
また、図示の実施形態における第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bは、それぞれ第1の吸引保持部材51を上記一対の案内レール50、50に沿って矢印Yで示す方向に移動するインデックス手段54を具備している。このインデックス手段54は、図9に示すように一対の案内レール50、50と平行に配設された雄ネジロッド541と、該雄ネジロッド541の一端に連結され雄ネジロッド541を回転駆動するためのパルスモータ542と、雄ネジロッド541の他端部を回転可能に支持するための基台3に配設された軸受543(図10参照)とからなっており、雄ネジロッド541が第1の吸引保持部材51を構成する第1の支持部511に形成された雌ネジ穴517に螺合せしめられる。従って、パルスモータ542を正転又は逆転駆動することにより、第1の吸引保持部材51を上記一対の案内レール50、50に沿って矢印Yで示す方向に移動することができる。
【0037】
図8に戻って説明を続けると、図示の実施形態におけるウエーハの分割装置2は、上記フレーム保持手段4を構成する保持テーブル42に保持された図7に示す環状のフレーム15に保護テープ16を介して支持されている半導体ウエーハ10の分割予定ライン101を検出するための検出手段6を具備している。検出手段6は、基台3に配設された回動機構61に連結されたL字状の支持柱62に取り付けられている。この検出手段6は、光学系および撮像素子(CCD)等で構成されており、上記張力付与手段4の上方位置に配置されている。このように構成された検出手段6は、上記保持テーブル42に保持された環状のフレーム15に保護テープ16を介して支持されている半導体ウエーハ10の分割予定ライン101を撮像し、これを電気信号に変換して図示しない制御手段に送る。なお、検出手段6を支持したL字状の支持柱62は、回動機構61によって矢印で示す方向に揺動せしめられる。
【0038】
図示の実施形態におけるウエーハの分割装置2は以上のように構成されており、以下その作動について主に図8、図10乃至図13を参照して説明する。
上記図7に示すように分割予定ライン101に沿って強度が低下せしめられた半導体ウエーハ10を保護テープ16を介して支持した環状のフレーム15を、図11に示すようにフレーム保持手段4を構成する保持テーブル42の上面に載置し、クランプ44によって保持テーブル42に固定する。
【0039】
半導体ウエーハ10を保持テープ16を介して支持した環状のフレーム15をフレーム保持手段4に保持したならば、図11に示すように第1の張力付与手段5aのインデックス手段54を作動して第1の張力付与手段5aの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52を半導体ウエーハ10に所定方向に形成された図において最右端の分割予定ライン101と対応する位置に位置付けるとともに、第2の張力付与手段5bのインデックス手段54を作動して第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52を半導体ウエーハ10の所定方向に形成された図において真中の分割予定ライン101と対応する位置に位置付ける。そして、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bにおける第1の吸引保持部材51を構成する第1の保持部512の第1の保持面515と、第2の吸引保持部材52を構成する第2の保持部522の第2の保持面525を、それぞれ分割予定ライン101の両側に位置付ける。このとき、検出手段6によって分割予定ライン101を撮像し、それぞれ第1の保持面515および第2の保持面525との位置合わせを行う。このように、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52をそれぞれ図11に示す位置に位置付けた状態においては、半導体ウエーハ10が貼着された保護テープ16および環状のフレーム15と吸引領域との関係は図13に示すようになる。即ち、半導体ウエーハ10の最右端の分割予定ライン101と対応する位置に位置付けられた第1の張力付与手段5aの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の両側部が環状のフレーム15と対向して位置するので、第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の吸引領域は環状のフレーム15と対向する領域を除く第2の吸引領域A2とする。一方、半導体ウエーハ10の真中の分割予定ライン101と対応する位置に位置付けられた第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52は環状のフレーム15の内側に位置するので、その吸引領域は第5の吸引領域A5とする。
【0040】
以上のようにして、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52をそれぞれ図11に示す位置に位置付けたならば、第1の張力付与手段5aにおいては吸引手段55の電磁切り換え弁555dおよび555eを附勢(ON)し、第2の張力付与手段5bにおいては電磁切り換え弁555a、555b、555c、555dおよび555eを附勢(ON)する。この結果、図12の(a)および図13に示すように第1の張力付与手段5aを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の第2の吸引領域A2に位置する吸引孔516および526に負圧が作用せしめられ、第2の張力付与手段5bを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の第5の吸引領域A5に位置する吸引孔516および526に負圧が作用せしめられる。従って、第1の張力付与手段5aを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52においては第2の吸引領域A2で半導体ウエーハ10を保護テープ16を介して吸引保持し、第2の張力付与手段5bを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52においては第5の吸引領域A5で半導体ウエーハ10を保護テープ16を介して吸引保持する(保持工程)。このとき、第1の張力付与手段5aを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の両側部は環状のフレーム15と対向しているが、負圧が作用しないので環状のフレーム15を吸引することがないとともに、負圧漏れも生じない。従って、負圧洩れにより他の領域が吸引力不足となることもない。
【0041】
次に、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの移動手段53を構成するエアシリンダ531を作動し、図12の(b)に示すように第1の張力付与手段5aの第2の吸引保持部材52を矢印Y1で示す方向に移動し、第2の張力付与手段5b の第2の吸引保持部材52をY2で示す方向に移動する。即ち、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第2の吸引保持部材52をそれぞれ第1の吸引保持部材51から外側に離反する方向に移動せしめる。このとき、第1の張力付与手段5aを構成する第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の両側部は環状のフレーム15と対向しているが、該両側部には上述したように負圧が作用しないので環状のフレーム15を吸引することはないため、第2の吸引保持部材52の移動に支障をきたすことはない。この結果、図12の(b)に示すように第1の吸引保持部材51の第1の保持面515と第2の吸引保持部52の第2の保持面525との間に位置付けられた分割予定ライン101には、分割予定ライン101と直交する方向に引張力が作用して、半導体ウエーハ10は分割予定ライン101に沿って破断される(分割工程)。なお、この分割工程においては、半導体ウエーハ10は分割予定ライン101に沿って変質層110が形成され強度が低下せしめられているので、第2の吸引保持部材52を第1の吸引保持部材51から離反する方向に0.5mm程度移動することにより半導体ウエーハ10を分割予定ラインに沿って破断することができる。
【0042】
このように、図示の実施形態においては、分割予定ライン101の両側に位置付けられた第1の吸引保持部材51と第2の吸引保持部材52によって保護テープ16を介して半導体ウエーハ10を吸引保持し、第2の吸引保持部材52を第1の吸引保持部材51から離反する方向に移動して、分割予定ライン101と直交する方向に引張力を作用せしめるので、変質層110が形成された分割予定ライン101に沿って正確に且つ確実に分割することができる。従って、分割予定ライン101上に回路の機能をテストするためのテスト エレメント グループ(TEG)と称するテスト用の金属パターンが配設されていても、この金属パターンも分割予定ラインに沿って正確に破断される。また、図示の実施形態においては、第1の張力付与手段5aと第2の張力付与手段5bを備えているので、同時に2本の分割予定ライン101に沿って分割することができるため、生産性が向上する。更に、図示の実施形態においては、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第2の吸引保持部材52は、上記分割工程においてそれぞれ第1の吸引保持部材51から外側に離反する方向に移動するように構成されているので、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51間に位置する領域のウエーハには圧縮力が作用しないためウエーハを破損することはない。
【0043】
上述したように所定方向に形成された2本の分割予定ライン101に沿って破断する分割工程を実施したならば、第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52による半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。次に、第1の張力付与手段5aのインデックス手段54および第2の張力付与手段5bのインデックス手段54を作動して、第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52を分割予定ライン101の間隔に相当する分だけそれぞれ図11および図13において左方に移動し、上記分割工程を実施した分割予定ライン101の図において左隣の分割予定ライン101と対応する位置に位置付ける。そして、上記保持工程および分割工程を実施する。なお、保持工程においては、第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52を位置付けた状態において環状のフレーム15と対応する領域の吸引を制限するように、上記吸引手段55の電磁切り換え弁555a、555b、555c、555dおよび555eを選択して附勢(ON)する。
【0044】
以上のようにして、所定方向に形成された全ての分割予定ライン101に対して上記保持工程および分割工程を実施したならば、回動手段45を作動してフレーム保持手段4の保持テーブル42を90度回動せしめる。この結果、フレーム保持手段4の保持テーブル42に保持された半導体ウエーハ10も90度回動することになり、所定方向に形成され上記分割工程が実施された分割予定ライン101と直交する方向に形成された分割予定ライン101が第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51の第1の保持面515と第2の吸引保持部材52の第2の保持面525と平行な状態に位置付けられる。次に、上記分割工程が実施された分割予定ライン101と直交する方向に形成された全ての分割予定ライン101に対して上述し保持工程および分割工程を実施することにより、半導体ウエーハ10は分割予定ライン101に沿って個々の半導体チップに分割される。
【0045】
次に、上記第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の他の実施形態について、図14を参照して説明する。なお、図14に示す実施形態においては、第1の吸引保持部材51と第2の吸引保持部材52の保持部の構成は実質的に同一であるため、吸引保持部材51(52)として説明する。
図14に示す吸引保持部材51(52)は、保持部512(522)の上面に吸引補助部材56を装着したものである。この吸引補助部材56は、複数の隔壁561によって区画された複数の領域にポーラス部材562を配設した構成であり、ポーラス部材562が吸引孔516(526)と対向して位置付けられる。なお、各吸引孔516(526)に負圧を作用せしめる吸引手段は、上記図10に示す吸引手段55と同様でよい。このように構成された吸引保持部材51(52)は、吸引孔516(526)を通して吸引補助部材56の各ポーラス部材562の上面に負圧が作用し、各ポーラス部材562の上面で保護テープを介してウエーハを吸引保持するので、吸引孔により直接吸引保持するより安定した保持効果が得られる。
【0046】
次に、上記第1の吸引保持部材51および第2の吸引保持部材52の更に他の実施形態について、図15を参照して説明する。なお、図15に示す実施形態においても、第1の吸引保持部材51と第2の吸引保持部材52の保持部の構成は実質的に同一であるため、吸引保持部材51(52)として説明する。
図15に示す吸引保持部材51(52)は、保持部512(522)の上部に長手方向(図15において左右方向)に細長い吸引溝57を形成するとともに、該吸引溝57の中央部に連通する1本の吸引孔58が設けられている。なお、吸引孔58は、図示しない吸引手段に連通されている。そして、吸引保持部材51(52)には、長手方向両側部において上記吸引溝57を仕切る複数の仕切り板59が図において上下方向に移動可能に配設されている。この複数の仕切り板59は、それぞれ電磁ソレノイドなどのアクチュエータ590によって上下方向に作動されるようになっている。このように構成された吸引保持部材51(52)においては、アクチュエータ590によって仕切り板58を図において上方に移動して吸引溝57を仕切ることにより、該仕切り板58より側方の領域の吸引を制限する。なお、図15に示す吸引保持部材51(52)においても、その上面に上記図14に示す実施形態における吸引補助部材56を装着してもよい。
【0047】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形が可能である。例えば、図示の実施形態においては2個の張力付与手段(第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5b)を備えた例を示したが、ウエーハ破断手段は1個でもよい。また、図示の実施形態においては上述した第1の張力付与手段5aおよび第2の張力付与手段5bの第1の吸引保持部材51の第1の保持面515と第2の吸引保持部材52の第2の保持面525は共に水平面に形成した例を示したが、第1の保持面515と第2の保持面525は互いに対向する側縁に向けてそれぞれ下方または上方に向けて傾斜して形成してもよい。この互いに傾斜して形成された第1の保持面515と第2の保持面525とのなす角度は、175〜185度が適当である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に従って構成されるウエーハの分割装置によって分割される半導体ウエーハの斜視図。
【図2】図1に示す半導体ウエーハに変質層形成加工を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
【図3】図2に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成を簡略に示すブロック図。
【図4】パルスレーザー光線の集光スポット径を説明するための簡略図。
【図5】図2に示すレーザー加工装置により半導体ウエーハの分割予定ラインに沿って変質層形成加工を実施している状態を示す説明図。
【図6】図5に示す変質層形成加工において半導体ウエーハの内部に変質層を積層して形成した状態を示す説明図。
【図7】変質層形成加工が実施された半導体ウエーハを環状のフレームに装着された保護テープの表面に貼着した状態を示す斜視図。
【図8】本発明に従って構成されたウエーハの分割装置の斜視図。
【図9】図8に示すウエーハの分割装置の要部を分解して示す斜視図。
【図10】図8に示す分割装置を構成する第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材に形成された吸引孔に負圧を作用せしめる吸引手段の説明図。
【図11】図8に示す分割装置を構成するフレーム保持手段に保護テープを介して半導体ウエーハを支持した環状のフレームを保持した状態を示す要部断面図。
【図12】図8に示す分割装置により半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って分割する工程を示す説明図。
【図13】環状のフレームに保護テープを介して保持された半導体ウエーハと第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の吸引領域との関係を示す説明図。
【図14】図8に示す分割装置を構成する第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の他の実施形態を示す断面斜視図。
【図15】図8に示す分割装置を構成する第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材の更に他の実施形態を示す断面斜視図。
【符号の説明】
【0049】
1:レーザー加工装置
11:レーザー加工装置のチャックテーブル
12:レーザー光線照射手段
13:撮像手段
2:ウエーハの分割装置
3:基台
4: フレーム保持手段
41、41:一対の支持部材
42:保持テーブル
43:ボールベアリング
44:クランプ
45:回動手段
5:ウエーハ破断手段
5a:第1の張力付与手段
5b:第2の張力付与手段
51:第1の吸引保持部材
52:第2の吸引保持部材
53:移動手段
54:インデックス手段
55:吸引手段
6:検出手段
10:半導体ウエーハ
101:分割予定ライン
102:回路
110:変質層
15:環状のフレーム
16:保護テープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインに沿って強度が低下せしめられているウエーハを、分割予定ラインに沿って分割するウエーハの分割装置において、
ウエーハの一方の面を貼着した保護テープが装着された環状のフレームを保持するフレーム保持手段と、
該フレーム保持手段に保持された該環状のフレームに装着された該保護テープに貼着されているウエーハを、分割予定ラインの両側において該保護テープを介してそれぞれ吸引保持する保持面を備え該保持面に複数の吸引領域を備えた第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材と、該吸引領域に負圧を作用せしめる吸引手段と、該第1の吸引保持部材と該第2の吸引保持部材を離反する方向に移動せしめる移動手段とからなる張力付与手段と、を具備し、
該第1の吸引保持部材の該保持面と該第2の吸引保持部材の該保持面はウエーハの直径に対応する長さに形成され、該複数の吸引領域は該保持面の長手方向に沿って形成されており、該吸引手段は負圧を作用せしめる該吸引領域を変更する吸引領域変更手段を備えている、
ことを特徴とするウエーハの分割装置。
【請求項2】
該張力付与手段を該移動手段による移動方向に移動せしめるインデックス手段を備えている、請求項1記載のウエーハの分割装置。
【請求項3】
該第2の吸引保持部材は該第1の吸引保持部材に移動可能に配設されており、該移動手段は該第2の吸引保持部材を移動せしめ、該インデックス手段は該第1の吸引保持部材を移動せしめる、請求項2記載のウエーハの分割装置。
【請求項4】
該テープ保持手段に該保護テープを介して保持されたウエーハの分割予定ラインを検出する検出手段を備えている、請求項1から3のいずれかに記載のウエーハの分割装置。
【請求項1】
分割予定ラインに沿って強度が低下せしめられているウエーハを、分割予定ラインに沿って分割するウエーハの分割装置において、
ウエーハの一方の面を貼着した保護テープが装着された環状のフレームを保持するフレーム保持手段と、
該フレーム保持手段に保持された該環状のフレームに装着された該保護テープに貼着されているウエーハを、分割予定ラインの両側において該保護テープを介してそれぞれ吸引保持する保持面を備え該保持面に複数の吸引領域を備えた第1の吸引保持部材および第2の吸引保持部材と、該吸引領域に負圧を作用せしめる吸引手段と、該第1の吸引保持部材と該第2の吸引保持部材を離反する方向に移動せしめる移動手段とからなる張力付与手段と、を具備し、
該第1の吸引保持部材の該保持面と該第2の吸引保持部材の該保持面はウエーハの直径に対応する長さに形成され、該複数の吸引領域は該保持面の長手方向に沿って形成されており、該吸引手段は負圧を作用せしめる該吸引領域を変更する吸引領域変更手段を備えている、
ことを特徴とするウエーハの分割装置。
【請求項2】
該張力付与手段を該移動手段による移動方向に移動せしめるインデックス手段を備えている、請求項1記載のウエーハの分割装置。
【請求項3】
該第2の吸引保持部材は該第1の吸引保持部材に移動可能に配設されており、該移動手段は該第2の吸引保持部材を移動せしめ、該インデックス手段は該第1の吸引保持部材を移動せしめる、請求項2記載のウエーハの分割装置。
【請求項4】
該テープ保持手段に該保護テープを介して保持されたウエーハの分割予定ラインを検出する検出手段を備えている、請求項1から3のいずれかに記載のウエーハの分割装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−128378(P2006−128378A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314142(P2004−314142)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]