説明

エネルギー生成システム

【課題】電力及び水素を生成する小規模なエネルギー生成システムを提供する。
【解決手段】電力及び水素を生成する水素ステーション1であって、作動に伴って電力及び高温の排気ガスを生成するエンジン11及び発電機13と、エンジン11からの高温の排気ガスの熱を利用して、MCHを脱水素反応させることで水素を生成する反応器30と、発電機13からの電力によって水を電気分解し、水素及び酸素を生成する電気分解装置60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力及び水素を生成するエネルギー生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球において、資源の枯渇及び環境破壊は大きな問題とされており、再生可能エネルギーによるゼロエミッション型社会の構築が求められている。例えば、風力、太陽光等の自然エネルギーの利用や、自然界に存在するものの、未だ利用されていない未利用エネルギーの活用が勧められている。
【0003】
また、自然界に無限に存在し、貯蔵可能なエネルギーである水素に着目され、化石燃料の代替エネルギーとして期待されている。特に、水素を利用した水素自動車、分散電源としての燃料電池、燃料電池自動車等の開発が進められており、これに並行して、水素自動車等に水素を供給する水素ステーション(水素供給インフラ)の開発、整備も進められている。
【0004】
このうち、水素ステーションについては、(1)水素(気体)を圧縮して、貯蔵・供給する方式、(2)水素を物理的に吸着し、又は化学的(原子的)に吸蔵し、貯蔵・供給する方式、(3)水素(気体)を冷却し、水素(液体)を貯蔵・供給する方式、(4)天然ガス、メタノール等の原燃料を改質することで水素を生成し、水素を貯蔵・供給する方式等が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、排気ガスの熱により活性化した触媒下で、水素を貯蔵する有機ハイドライド(水素貯蔵媒体)を脱水素反応させ、水素を生成する「高圧水素の供給システム」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−197705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の「高圧水素の供給システム」では、多量の水素を製造する場合、水素を生成する水素製造装置に、多量の排気ガスを供給しなければならず、排気ガス及び電力を生成するエンジン(発電機)が大型化してしまい、システム全体の規模が大きくなってしまうという不都合があった。
【0008】
そこで、本発明は、電力及び水素を生成する小規模なエネルギー生成システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、電力及び水素を生成するエネルギー生成システムであって、作動に伴って電力及び高温の排気ガスを生成する発電手段と、前記発電手段からの高温の排気ガスの熱を利用して、水素貯蔵媒体を脱水素反応させることで水素を生成する水素生成手段と、前記発電手段からの電力によって水を電気分解し、水素及び酸素を生成する電気分解手段と、を備えることを特徴とするエネルギー生成システムである。
【0010】
このようなエネルギー生成システムによれば、発電手段は、その作動に伴って、電力及び高温の排気ガスを生成する。そして、水素生成手段は、発電手段からの高温の排気ガスの熱を利用して、化学的に水素を貯蔵する水素貯蔵媒体を脱水素反応させることで水素を生成する。また、電気分解手段は、発電手段からの電力によって水を電気分解し、水素及び酸素を生成する。
すなわち、このようなエネルギー生成システムによれば、水素生成手段及び電気分解手段で水素を生成できるので、システムを小規模な構成としても、多量の水素を製造できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力及び水素を生成する小規模なエネルギー生成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る水素ステーションの構成を示す図である。
【図2】(a)は本実施形態に係る反応器の輪切り断面図であり、(b)は本実施形態に係る反応セルの輪切り断面図であり、(c)は本実施形態に係る反応シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図2を参照して説明する。
【0014】
≪エネルギー生成システムの構成≫
図1に示すように、本実施形態に係るエネルギー生成システム(水素ステーション1)は、電力及び水素(エネルギー)を生成するシステムである。
本実施形態における水素ステーション1は、水素自動車に燃料である水素を供給することを目的にする以外に、パイプラインや水素貯蔵タンクなどと接続され、消費地に輸送することも可能である。
水素ステーション1は、少なくともエンジン11と、エンジン11の動力により作動する発電機13と、エンジン11からの排気ガスの熱を利用して、MCH(メチルシクロヘキサン、C14、水素貯蔵媒体)を脱水素反応させることで(式(1)参照)、水素及びトルエン(高オクタン価燃料、脱水素物)を生成する反応器30(水素生成手段)と、発電機13で生成した電力を分配する電力分配装置51(電力分配手段)と、分配された電力によって水を電気分解し、水素及び酸素を生成する電気分解装置60(電気分解手段)と、システムを電子制御するコントローラ70(制御手段)と、を備えている。
また、エンジン11の動力により作動する圧縮機14と、過給器21(ターボ装置)を備えることも可能となる。また、さらに圧縮機14と水素自動車をつなぐ配管に圧縮機、水素貯蔵タンクや充填機を配置することも可能となる。
つまり、本実施形態において、「作動に伴って電力及び高温の排気ガスを生成する発電手段」は、エンジン11と発電機13とを備えて構成されている。
【0015】
14(MCH)→C14(トルエン)+3H−205kj …(1)
【0016】
なお、式(1)は吸熱反応であるから、反応器30において排気ガスの熱を利用することにより、つまり、排気ガスのエネルギーを回収することにより、システム全体のエネルギー効率が高められている。
【0017】
<MCH、トルエン>
すなわち、本実施形態では、水素貯蔵媒体(有機ハイドライド)として、MCH(メチルシクロヘキサン)を使用した構成を例示するが、その他に例えば、シクロヘキサン、デカリン等も使用できる。なお、水素貯蔵媒体とは、水素を容易に添加・生成する燃料であって、例えば、炭化水素系燃料やその混合燃料である。
【0018】
また、本実施形態では、燃焼用燃料として、トルエンを使用した構成を例示するが、その他に例えば、トルエン、ガソリン、重油、軽油、灯油、バイオ燃料、アルコール、メタン、LPG(Liquefied Petroleum Gas)から選択された少なくとも1種を使用することもできる。
【0019】
そして、トルエンのオクタン価(約120)は、通常の火花点火用の燃料であるガソリンに対して高いので、エンジン11でノッキングが発生し難く、また、高圧縮比でエンジン11を作動させ、燃焼効率を高めることも可能となっている。具体的には、一般的な火花点火式のエンジン11の場合、圧縮比13程度が最大値であるが、トルエンを使用することにより、圧縮比13以上(例えば圧縮比15)に高めることも可能となる。さらに、火花点火式のエンジン11の場合、理論サイクルがオットーサイクルであるから、圧縮比が高くなると、熱効率が向上する。
【0020】
<エンジン>
エンジン11は、ディーゼルまたは火花点火エンジンで、4サイクル(吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気)を繰り返す4ストローク機関である。火花点火エンジンの場合、エンジン11は、複数の気筒(シリンダ)と、気筒内を往復運動するピストンと、ピストンにコンロッドを介して接続されたクランク軸12と、クランク軸12に連動する吸気弁及び排気弁と、コントローラ70により電子制御される点火プラグと、を備えている。エンジン11の出力(回転速度、トルク、排気ガスの流量等)は、燃料・空気の吸気量、点火タイミングを制御するコントローラ70で制御される。
なお、本実施形態において、エンジン11は圧縮比13以上で作動するように制御される。
【0021】
なお、このようなエンジン11は、タービンと比較して、運転・停止に伴うエネルギロスは小さく、その大きさ(排気量)等は設計変更容易である。また、エンジンの排気量や、気筒の数(2気筒、4気筒、6気筒等)及び配列(V型、直列型等)は、適宜変更自由である。
【0022】
<発電機>
発電機13は、エンジン11の動力によって作動し電力を生成する装置ある。具体的には、発電機13は、増速又は減速機構及びクラッチ(図示しない)を介して、エンジン11のクランク軸12と機械的に接続されている。これにより、エンジン11の動力がロス無く発電機13に伝達し、発電機13で電力に変換されるようになっている。
なお、発電機13で生成した電力は、電力分配装置51に供給されるようになっている。また、発電機13と電力分配装置51との間に、電力を適宜に充電/放電する蓄電装置を設ける構成としてもよい。
【0023】
<圧縮機>
圧縮機14は、エンジン11の動力によって作動し、分離器42及び/又は電気分解装置60からの水素を圧縮して所定圧力(例えば、数MPa〜数十MPa)に昇圧し、水素自動車、燃料電池車、水素タンク等の外部の水素需要機器に向けて圧送する装置である。具体的には、圧縮機14は、増速又は減速機構及びクラッチ(図示しない)を介して、エンジン11のクランク軸12と機械的に接続されている。これにより、エンジン11の動力がロス無く圧縮機14に伝達し、圧縮機14で水素の流体エネルギーに変換されるようになっている。
【0024】
なお、ここでは、圧縮機14がクランク軸12に接続され、エンジン11を動力源として作動する構成を例示しているが、その他に例えば、圧縮機14が電動モータを内蔵し、発電機13からの電力が供給されると前記電動モータが回転し、圧縮機14が作動する構成としてもよい。この構成の場合も、圧縮機14は、エンジン11の動力によって作動することになる。
【0025】
その他、複数の圧縮機14を直列で接続し、一の圧縮機14で圧縮された水素を、他の圧縮機14でさらに圧縮し、水素を段階的に昇圧する構成としてもよい。
さらに、この構成の場合、一の圧縮機14と他の圧縮機14との間に、水素吸蔵合金を内蔵し水素を一時的に貯蔵するバッファタンクをさらに設ける構成としてもよい。このようにバッファタンクを設ければ、前記した他の圧縮機14に、水素を安定した速度で供給することが可能となる。そして、バッファタンクに発電機13からの電力で作動するヒータを設け、このヒータをON/OFF制御することで、水素吸蔵合金による水素の吸蔵/放出を制御すればよい。
【0026】
次に、エンジン11の吸気側を説明する。
上流端が外部の空気に開口した配管21aから、エンジン11に向かって順に、過給器21、配管21b(吸気ポート)、エンジン11の吸気口の順に接続されている。配管21aには、塵等を除去するエアクリーナ、空気の流量を制御するスロットル弁、タンク43からのトルエンを噴射する燃料インジェクタ、電気分解装置60からの酸素を噴射する酸素インジェクタ(いずれも図示しない)が設けられている。
【0027】
このようにして高オクタン価のトルエンがエンジン11に供給されるので、エンジン11でノッキングが発生し難くなり、エンジン11を高圧縮比(13以上)で作動させ、燃焼効率を高めることも可能となる。
【0028】
また、電気分解装置60における水の電気分解により酸素が、配管60b、前記酸素インジェクタを介して、エンジン11に供給されるように構成されている。すなわち、本実施形態において、「電気分解装置60で生成した酸素をエンジン11に供給する酸素供給手段」は、配管60bと、前記酸素インジェクタとを備えて構成されている。
このようにして酸素が供給されるので、エンジン11の出力及び排熱エネルギー量が向上し、発電機13で生成する電力量と、反応器30で生成する水素量とを増加させることが可能となる。
【0029】
この他、配管60bに、酸素の流量を制御する流量制御弁や、酸素を一時的に貯蔵するバッファタンクを設ける構成としてもよい。
また、配管21bに水素インジェクタを取り付け、この水素インジェクタにより、分離器42で分離された水素を添加(噴射)する構成としてもよい。
【0030】
<過給器>
過給器21は、エンジン11から排出された排気ガスにより作動し、エンジン11に吸気される空気を圧縮しエンジン11に過給する装置である。このように、過給器21によって空気がエンジン11に過給、つまり、吸気される空気の流量が増加するので、エンジン11で生成するトルクが向上し、また、エンジン11の熱効率及び出力が向上するようになっている。
【0031】
次に、エンジン11の排気側を説明する。
エンジン11の排気ガス出口は、配管21c、過給器21、配管21dを介して、反応器30の排気ガス入口に接続されている。そして、エンジン11からの排気ガスは、過給器21を作動(回転)させた後、反応器30に導かれるようになっている。
【0032】
<反応器>
反応器30は、図2(a)に示すように、外形が円柱状を呈する複数本の反応セル31と、複数の反応セル31を収容した円筒状の第1ケーシング32と、を備えている。そして、MCH(メチルシクロヘキサン、水素含有燃料)が各反応セル31内を通流し、高温の排気ガスが反応セル31の外であって第1ケーシング32内を通流するようになっている。なお、図1では、反応セル31を1本のみ記載している。
【0033】
第1ケーシング32及び後記する第2ケーシング34は、熱伝導率が高くなるように金属製(例えば、SUS)で形成されている。なお、第1ケーシング32、第2ケーシング34の形状は、円筒状に限定されず、その他に例えば、四角形筒状、多角形筒状でもよい。
【0034】
<反応セル>
反応セル31は、図2(b)に示すように、積層された複数枚の反応シート33と、複数枚の反応シート33を収容した第2ケーシング34と、を備えている。
【0035】
各反応シート33は、図2(c)に示すように、ベースとなる金属箔35と、金属箔35の両面にそれぞれ形成された多孔質層36と、多孔質層36に担持された触媒37と、を備えている。つまり、各反応シート33は、触媒37が担持した多孔質層36、金属箔35、触媒37が担持した多孔質層36の順で積層した三層構造である。
なお、厚さ方向において隣り合う反応シート33、33間には、MCH、生成した水素及びトルエンが通流可能な隙間が形成されている。
【0036】
また、反応シート33はシート状であるから、その熱容量が小さく、熱が反応シート33を速やかに伝導し、触媒37がその触媒機能を良好に発揮する温度に速やかに昇温する。これにより、MCHを水素とトルエンとに分解する分解反応の効率は、高くなっている。
【0037】
さらに、各反応シート33には、複数の貫通孔33aが形成されている。これにより、排気ガスの熱が厚さ方向に良好に伝導し、また、MCH、生成した水素及びトルエンが、厚さ方向にも良好に通流するようになっている。
【0038】
金属箔35は、例えばアルミニウム箔で構成され、その厚さは50〜200μm程度とされる。
ただし、金属箔35を備えず、又は、金属箔35に代えて、ベースとなる多孔質層を備え、反応シート33全体を多孔質構造としてもよい。
【0039】
多孔質層36は、触媒37を担持するための層であって、MCH、生成した水素及びトルエンが通流可能な複数の細孔を有している。このような多孔質層36は、例えば、アルミナを主体とした酸化物で構成される。
【0040】
触媒37は、MCHを分解、つまり、脱水素反応させ、水素及びトルエンを生成させるための触媒である(式(1)参照)。このような触媒37は、例えば、白金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、オスミウム、クロム、コバルト、鉄等から選択された少なくとも1種で構成される。
【0041】
なお、反応器30を通流した排気ガスは、配管21eを通って外部に排出されるようになっている(図1参照)。
【0042】
<MCH供給系>
次に、図1を参照して、反応器30に、MCHを供給するMCH供給系について説明する。MCH供給系は、MCHを貯溜するタンク41を備えている。
【0043】
タンク41は、水素生成の原料となるMCHを一時的に蓄えるタンクである。なお、MCHは、例えば、タンクローリー等によって、タンク41に運搬される。
そして、タンク41のMCHは、配管41aを通って、各反応セル31内に供給されるようになっている。配管41aには、MCHを圧送するポンプ、MCHの流量を制御する流量制御弁が設けられている。
【0044】
<水素・トルエン導出系>
次に、反応器30で生成した水素及びトルエンを導出する水素・トルエン導出系を説明する。水素・トルエン導出系は、分離器42と、タンク43と、を備えている。
【0045】
各反応セル31で生成した水素(気体)及びトルエン(気体)は、混在したまま、配管42aを通って、分離器42に導出されるようになっている。
【0046】
分離器42は、水素とトルエンとを分離する装置である。
本実施形態に係る分離器42は、水素及びトルエンが混在したものを空冷式で冷却することで、トルエン(沸点:110℃)のみを液化させ、水素とトルエンとを分離するようになっている。よって、例えば、分離器42の外周面には、空冷式による冷却を促進するための放熱フィン(図示しない)が設けられている。
なお、分離方式はこれに限定されず、その他に例えば、圧力スイング吸着装置、水素を選択的に透過する水素透過膜(Pd膜等)によって水素を分離する方式でもよい。
【0047】
そして、分離器42で分離された水素は、配管42bを通って、圧縮機14ないしはエンジン11(配管は図示しない)に供給されるようになっている。なお、配管42bに水素を圧送するポンプが設けられた構成でもよい。
【0048】
一方、分離器42で分離されたトルエンは、分離器42の底部から延びる配管42cを自重により通流し、タンク43で貯溜されるようになっている。なお、配管42cにトルエンを圧送するポンプ(図示しない)が設けられた構成でもよい。
【0049】
タンク43のトルエンは、配管43aを通った後、コントローラ70に制御される燃料インジェクタ(図示しない)によって、配管21b(吸気ポート)内に噴射されるようになっている。なお、配管43aには、トルエンを圧送するポンプ(図示しない)が設けられている。
【0050】
<電力分配装置>
電力分配装置51は、外部からの要求電力量に対応して、コントローラ70からの指令に従って、発電機13で生成した電力を、電気分解装置60と外部の電力系統網52とに分配する装置であり、各種電子回路を備えて構成される。
【0051】
例えば、コントローラ70に入力された要求電力量が大きくなると、電力分配装置51は、電力系統網52への電力の分配量が多くなるように制御される。また、コントローラ70に入力された要求水素量が、0である、又は、反応器30で生成可能な程度である場合、電力分配装置51は、電力系統網52のみに電力を供給するように制御される。
【0052】
さらに、前記した水素を一時的に貯蔵するバッファタンクを備える場合、例えば、圧力センサを介してバッファタンク内の水素の圧力を検出し、検出された圧力に基づいて貯蔵されている水素量を算出し、バッファタンクが満タンであるとき、電力分配装置51は、電力系統網52のみに電力を供給するように構成してもよい。
【0053】
<電気分解装置>
電気分解装置60は、コントローラ70からの指令に従って作動し、電力分配装置51(発電機13)からの電力を利用して、水を電気分解し(式(2)参照)、水素及び酸素を生成する装置である。したがって、電気分解装置60は、正極及び負極、電気分解する水を一時的に貯溜する容器、陽極及び負極に印加する電圧を制御する電圧コントローラ等を備えている。また、電気分解される水は、例えば、水道水等から適宜に給水されるようになっている。
【0054】
2HO→2H+O …(2)
【0055】
そして、生成した水素は、配管60aを通って、圧縮機14に供給されるか、圧縮機14と水素自動車をつなぐ配管やそのほかの機器(例えば圧縮機14の下流に接続された別の圧縮機)に供給される。一方、生成した酸素は、配管60bを通って、配管21b(エンジン11)に供給されるようになっている。
【0056】
<コントローラ>
コントローラ70は、水素ステーション1を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機能を発揮し、各種機器を制御するようになっている。
コントローラ70は、エンジン11、発電機13、圧縮機14、電力分配装置51、電気分解装置60と電気的に接続されており、各機器に具備されたセンサと信号入力装置と配線にて接続されていることが好ましい。また、水素ステーション1内のその他の機器(圧縮機、充填機、水素タンク、照明機器など)とも同様に接続されている。
また、コントローラ70には、外部から操作パネル(図示しない)等を介して、要求電力量及び要求水素量が入力されるようになっている。
【0057】
≪水素ステーションの作用・効果≫
このような水素ステーション1によれば、次の作用・効果を得る。
エンジン11からの排気ガスの熱を利用して、MCHを脱水素反応させ水素を生成する反応器30と、エンジン11に連動する発電機13からの電力を利用して、電気分解することで水素を生成する電気分解装置60とによって、多量の水素を製造できる。
すなわち、エンジン11(発電機13)から出力される排気ガスと電力とをそれぞれ利用して、水素を生成するので、エンジン11および反応器30を小型化し、水素ステーション1を小規模にできる。
【0058】
これに対して、電気分解装置60を備えない場合、反応器30で全水素を生成することになるから、反応器30及びこれに排気ガスを供給するエンジン11を大型化する必要があり、その結果、水素ステーションが大規模になってしまう。
【0059】
≪変形例≫
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば次のように変更できる。
【0060】
前記した実施形態では、作動に伴って電力及び高温の排気ガスを生成する発電手段が、エンジン11と発電機13とを備えて構成された場合を例示したが、その他に例えば、固体高分子型燃料電池や、固体酸化物型燃料電池である構成でもよい。また、エンジン11に代えてタービンを備える構成でもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 水素ステーション(エネルギー生成システム)
11 エンジン(発電手段)
13 発電機(発電手段)
30 反応器(水素生成手段)
51 電力分配装置(電力分配手段)
52 電力系統網
60 電気分解装置(電気分解手段)
60b 配管(酸素供給手段)
70 コントローラ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力及び水素を生成するエネルギー生成システムであって、
作動に伴って電力及び高温の排気ガスを生成する発電手段と、
前記発電手段からの高温の排気ガスの熱を利用して、水素貯蔵媒体を脱水素反応させることで水素を生成する水素生成手段と、
前記発電手段からの電力によって水を電気分解し、水素及び酸素を生成する電気分解手段と、
を備える
ことを特徴とするエネルギー生成システム。
【請求項2】
前記発電手段は、燃焼用燃料を燃焼し動力及び排気ガスを生成するエンジンと、前記エンジンで発生した動力により作動し電力を生成する発電機と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー生成システム。
【請求項3】
前記水素生成手段は、水素貯蔵体を脱水素反応させることで、水素と、高オクタン価燃料と、を生成する
ことを特徴とする請求項2に記載のエネルギー生成システム。
【請求項4】
前記エンジンで燃焼される燃焼用燃料は、ガソリン、軽油、灯油、重油、バイオ燃料、アルコール、都市ガス、天然ガス、LPG、前記水素生成手段で生成された前記高オクタン価燃料から選択された少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項3に記載のエネルギー生成システム。
【請求項5】
前記エンジンは、圧縮比13以上で作動する
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のエネルギー生成システム。
【請求項6】
前記電気分解手段で生成した酸素を前記エンジンに供給する酸素供給手段を備える
ことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のエネルギー生成システム。
【請求項7】
要求電力量及び要求水素量に基づいて、前記発電手段で生成した電力を、前記電気分解手段と電力系統網とに分配する電力分配手段を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエネルギー生成システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−247235(P2011−247235A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124006(P2010−124006)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】