説明

エピタキシャルウェーハの製造方法

【課題】 複雑な装置を必要とせずに、反応容器内への搬入時に起こるウェーハの反りに起因する裏面エッジ部とサセプタとの擦れから発生するパーティクル、及びシリコンウェーハ裏面エッジ部における傷の発生を低減することが可能なエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】原料ガスを反応容器20に流通させることにより反応容器20内に配置されたシリコンウェーハ21の表面にエピタキシャル層を成膜するエピタキシャルウェーハの製造方法において、シリコンウェーハ21の抵抗率に応じて、シリコンウェーハ21を反応容器20へ搬入する際のサセプタ24の温度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル成長装置のサセプタに載せられて回転しながらその主面にエピタキシャル層を形成するシリコンウェーハとエピタキシャル層からなるエピタキシャルウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャルウェーハの製造方法において、自動搬送機能の付いたエピタキシャル成長装置の搬送用ブレードにより、シリコンウェーハを反応容器内へ搬入する際に、高温雰囲気が形成された反応容器内に半導体を搬入すると、熱応力に起因して、シリコンウェーハに弾性変形、いわゆる反りが生じることが知られている。
【0003】
この反りが生じた状態でシリコンウェーハをサセプタ上に移載すると、サセプタ上で反りが回復する際にシリコンウェーハの裏面エッジ部とサセプタとが擦れて発塵し、異物が発生する。この異物がシリコンウェーハに付着することが製造工程上の大きな問題点となっている。
【0004】
このような問題点を解消するために、移載部材を介してシリコンウェーハを搬送部材からウェーハ支持台に移載する際、加熱されて反ったシリコンウェーハの反りの回復を確認した後、シリコンウェーハをウェーハ支持台に移載することを特徴とするシリコンウェーハの移載方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また上記問題点を解消するために、シリコンウェーハに生じる反り自体を防止する技術として、シリコンウェーハの表面と裏面との間における温度差が小さくなるよう加熱手段による加熱を制御する制御手段を備えた、エピタキシャル成長プロセスを実行するための半導体製造装置及びそのウェーハ取扱方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平10−294287号公報(請求項6)
【特許文献2】特開2000−269137号公報(請求項3、請求項6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載され発明では、シリコンウェーハの反りの回復は、反り時のシリコンウェーハ特定部位の形状と、非反り時の前記特定部位の形状をモニタ手段の画像を比較することにより確認され、両者の形状の同一を確認した後、ウェーハ移載部材からウェーハ支持台にシリコンウェーハを移載するといった制御部により行われる。そのため装置が複雑で、装置の改造には多大なコストが掛かり、また反ったシリコンウェーハが元の形状に回復するまで保持しなければならないため、製造工程上の時間的ロスを伴う。
【0007】
また上記特許文献2に記載された発明では、シリコンウェーハの反り自体を防止すべくシリコンウェーハの表面と裏面との間における温度差を小さくなるよう加熱手段による加熱を制御する。そのため上記特許文献1と同様に、装置が複雑となり、その改良には多大なコストが掛かる。またシリコンウェーハの外径が大きくなるにつれてその効果は低減し、シリコンウェーハの反りは顕著となるため、外径が大きなシリコンウェーハにおいては、上記問題点を解決するには至らなかった。
【0008】
本発明の目的は、従来技術に必要とされる複雑な装置を必要とせずに、反応容器内への搬入時に起こるシリコンウェーハの反りに起因する裏面エッジ部とサセプタとの擦れから発生するパーティクル、及びシリコンウェーハ裏面エッジ部における傷の発生を低減することが可能なエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、原料ガスを反応容器20に流通させることにより反応容器20内に配置されたシリコンウェーハ21の表面にエピタキシャル層を成膜するエピタキシャルウェーハの製造方法において、シリコンウェーハ21の抵抗率に応じて、シリコンウェーハ21を反応容器20へ搬入する際のサセプタ24の温度を調整することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法である。
【0010】
請求項1に係る発明では、シリコンウェーハの抵抗率に応じて反応容器へ搬入する際のサセプタの温度を調整することにより、シリコンウェーハを反応容器内へ搬入後、リフトピンへの移載からサセプタへの移載までの一定時間内に、熱応力に起因するシリコンウェーハの反りを回復させることができるため、複雑な装置を必要とせずに、裏面エッジ部とサセプタとの擦れから発生するパーティクル、及びシリコンウェーハ裏面エッジ部における傷の発生を低減することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、シリコンウェーハ21の抵抗率が0.005〜0.020Ω・cmであるとき、シリコンウェーハ21を反応容器20へ搬入する際のサセプタ24の温度を775±25℃に調整するエピタキシャルウェーハの製造方法である。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、シリコンウェーハ21の抵抗率が8〜12mΩ・cmであるとき、シリコンウェーハ21を反応容器20へ搬入する際のサセプタ24の温度を825±25℃に調整するエピタキシャルウェーハの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原料ガスを反応容器に流通させることにより反応容器内に配置されたシリコンウェーハの表面にエピタキシャル層を成膜するエピタキシャルウェーハの製造方法において、シリコンウェーハの抵抗率に応じて、シリコンウェーハを反応容器へ搬入する際のサセプタの温度を調整することにより、複雑な装置を必要とせずに、反応容器内への搬入の際に起こるシリコンウェーハの反りに起因する裏面エッジ部とサセプタとの擦れを防止し、これにより発生するパーティクル、及びシリコンウェーハ裏面エッジ部の傷の発生を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
一般的なエピタキシャルウェーハの製造方法について、図1〜図3を用いて説明する。図1〜図3は、シリコンウェーハのエピタキシャル成長装置の反応容器内への搬入から、サセプタへの移載までの工程を模式的に示した図である。
【0016】
先ず図1に示すように、エピタキシャルウェーハの基板となる常温のシリコンウェーハ21を、搬送用ブレード22上に載せる。次に高温状態のエピタキシャル成長装置の反応容器20内へ、搬送用ブレード22とともにシリコンウェーハ21を搬入する。反応容器20内へ搬入されたシリコンウェーハ21は、図2に示すように、反応容器20内に設置されたリフトピン23により一時的に中継される。次いでリフトピン23により中継されたシリコンウェーハ21は、図3に示すように、サセプタ24上に移載される。サセプタ24上に移載されたシリコンウェーハ21は、後工程で、表面にエピタキシャル層が成膜される。
【0017】
従来からの問題点は、常温のシリコンウェーハ21を、高温状態のエピタキシャル成長装置の反応容器20内へ搬入した際に、シリコンウェーハ21が熱応力により弾性変形、いわゆる反りを生じることに起因するものである。図4は、反応容器20内のサセプタ24の温度が一定に設定された一般的なエピタキシャル成長装置において、シリコンウェーハ21を高温状態のエピタキシャル成長装置の反応容器20内へ搬入したときの、シリコンウェーハ21の表面及び裏面の温度上昇率を模式的に表した図である。ここで裏面とは、搬送用ブレード22又はリフトピン23により支持される側の面をいう。反応容器20内へ搬入されたシリコンウェーハ21に生じる反りは、図4に示すように、その表面及び裏面で温度上昇率が異なることに起因し、温度上昇の速い表面側が凸状態となる反りを生じる。この反りは、表面及び裏面の温度差による一時的なもので、均一になれば回復するものである。この反りの回復が、リフトピン23からサセプタ24上に移載された後に起こるとき、凸状態に反ったシリコンウェーハ21の裏面エッジ部が、サセプタ24表面と擦れることでパーティクルが発生する。この発生したパーティクルが、形成されるエピタキシャルウェーハ表面のLPD(Light Point Deffect)の原因となる。本発明において、LPDとは、レーザー光散乱式パーティクルカウンター(SP1:KLA−Tencor社製)を用いて検出される点欠陥のことである。
【0018】
本発明は、エピタキシャルウェーハの製造方法における製造工程の、図1から図3に示す、シリコンウェーハ21の反応容器20への搬入から、サセプタ24上への移載までの工程におけるシリコンウェーハ21の反りに起因する上記問題点を解消するものである。
【0019】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、反応容器へ搬入直後のシリコンウェーハの温度が、シリコンウェーハの有する抵抗率により異なることから、温度上昇率もシリコンウェーハの抵抗率により異なることが明らかとなった。即ち、反応容器内の温度が一定の場合、シリコンウェーハの有する抵抗率によりその温度上昇率が異なるため、シリコンウェーハに反りが生じてから回復するまでに要する時間も、シリコンウェーハの抵抗率により異なる。この反りが生じてから回復するまでの時間的な差に着目し、上記問題点を解決したのが上記特許文献1に記載された発明であるが、この発明では、シリコンウェーハの抵抗率と温度上昇率の関係が判明されていなかったため、上述のように、個々のシリコンウェーハについてモニター画像により反りの回復を検知するといった複雑な制御装置が必要であった。そのため、装置の改造には多大なコストを要し、又製造工程上の時間的なロスを伴うものであった。
【0020】
そこで本発明は、シリコンウェーハの温度上昇率がシリコンウェーハの抵抗率に依拠する点に着目し、サセプタの温度をシリコンウェーハの抵抗率に応じて調整することにより、一定時間の範囲内に、シリコンウェーハに生じた反りを回復させて上記問題点を解決するものである。
【0021】
図5は、サセプタの温度が750℃である反応容器内へ、シリコンウェーハを搬入してから5秒後のシリコンウェーハの温度を測定した値を示す図であり、シリコンウェーハの抵抗率とエピタキシャル成長装置へ搬入直後のシリコンウェーハの表面温度との関係を示す。ボロン濃度の少ない抵抗率が0.005〜0.020Ω・cmである低い抵抗率のP+又はP++基板と、抵抗率が8〜12Ω・cmである高い抵抗率のP-基板とでは、図5に示すように、反応容器内へ投入直後のシリコンウェーハの表面温度に差が生じる。このシリコンウェーハの表面温度とシリコンウェーハの有する抵抗率との関係は、yをシリコンウェーハの表面温度、xをシリコンウェーハの有する抵抗率とした場合、次式(1)で表される。R2は算出された相関係数であって、シリコンウェーハの表面温度とシリコンウェーハの有する抵抗率とは、対数的な高い相関がみられる。
【0022】
y=−14.755Ln(x)+607.04 (1)
2=0.9954
このことから、シリコンウェーハの抵抗率の違いにより温度上昇率も異なり、同一温度に設定された反応容器内にシリコンウェーハを搬入した場合、シリコンウェーハの有する抵抗率の違いにより、反りが生じてから回復するまでの時間も異なる。
【0023】
本発明では、サセプタ温度をシリコンウェーハの抵抗率に応じて調整することにより、抵抗率が異なるシリコンウェーハであっても、一定時間の範囲内にシリコンウェーハに生じた反りを回復させる。これにより、シリコンウェーハの反応容器内への搬入からサセプタへの移載までの時間や、シリコンウェーハのリフトピンへの移載からサセプタへの移載までの時間が固定されているような一般的なエピタキシャル製造装置においても、従来技術のような複雑な装置又はその改造を必要とせずに、上記問題点を解消することができる。
【0024】
シリコンウェーハの反り量は半径の2乗に影響される。そのため、シリコンウェーハの厚さの影響を加味しても、外径が300mmのシリコンウェーハの方が200mmのものに比べ、温度による反り量が大きくなり搬送用ブレード又はサセプタに触れやすくなることから、本発明は、好ましくは外径が300mm以上、更には450mm以上のシリコンウェーハに効果的に用いることができる。
【0025】
シリコンウェーハの抵抗率が0.005〜0.020Ω・cmである場合、即ちP+又はP++基板の場合は、サセプタの温度を775±25℃に調整することが好ましい。サセプタの温度が下限値未満では、シリコンウェーハを反応容器内へ搬入した後、リフトピンへの移載からサセプタへの移載までの間にシリコンウェーハの表面及び裏面の温度が均一にならず、この間に反りが回復しないため、本発明の効果が得られ難いからである。また上限値を越えると、搬送用ブレード上でシリコンウェーハの反りが回復してしまい、搬送用ブレードと、シリコンウェーハの裏面エッジ部との擦れからパーティクルが生じ易いからである。このうち、775±10℃が特に好ましい。
【0026】
シリコンウェーハの抵抗率が8〜12Ω・cmである場合、即ちP-基板の場合は、サセプタの温度を825±25℃に調整することが好ましい。サセプタの温度が下限値未満では、シリコンウェーハを反応容器内へ搬入した後、リフトピンへの移載からサセプタへの移載までの間にシリコンウェーハの表面及び裏面の温度が均一にならず、この間に反りが回復しないため、本発明の効果が得られ難いからである。また上限値を越えると、搬送用ブレード上でシリコンウェーハの反りが回復してしまい、搬送用ブレードと、シリコンウェーハの裏面エッジ部との擦れからパーティクルが生じたり、シリコンウェーハに傷を与えたり、或いはシリコンウェーハをサセプタ上へ載置する際に位置がずれたりといった不具合が生じ易いからである。このうち、825±10℃が特に好ましい。
【実施例】
【0027】
次に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0028】
<実施例1>
シリコンウェーハとして、抵抗率が0.005〜0.020Ω・cmであるP+又はP++基板を使用してエピタキシャルウェーハを製造した。使用したシリコンウェーハの外径は300mm、厚さは770〜830μmで結晶軸(100)であった。
【0029】
具体的には、図1に示すように、先ず自動搬送機能の付いたランプ加熱方式の横型枚葉式エピタキシャル成長装置(AMAT社製)の搬送用ブレード22上に、エピタキシャルウェーハの基板となる常温のシリコンウェーハ21を載せ、サセプタ24の温度が750℃に設定された高温状態の反応容器20内へ搬入した。次に、図2に示すように、反応容器20内に搬入されたシリコンウェーハ21は、反応容器20内に設置されたリフトピン23により一時的に中継され、次いでリフトピン23により中継されたシリコンウェーハ21は、図3に示すように、サセプタ24上に移載された。なお使用したエピタキシャル成長装置では、上記シリコンウェーハ21の反応容器20内への搬入からサセプタ24上への移載までの時間が30〜40秒の一定範囲又は典型的には35秒に固定される。またシリコンウェーハ21のリフトピン23への移載からサセプタ24への移載までの時間が20〜30秒の一定範囲又は典型的には25秒に固定される。
【0030】
次に、図3の状態で、サセプタ24の温度を1150℃まで昇温させ、32rpmの速度でサセプタ24を回転させながら、反応容器20内へSiHClガスを流し込み、厚さ2μmのエピタキシャル膜をシリコンウェーハ21上に成長させ、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0031】
<実施例2>
サセプタ24の温度を775℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例1と同様に、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0032】
<実施例3>
サセプタ24の温度を800℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例1と同様にエピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0033】
<比較例1>
サセプタ24の温度を700℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例1と同様に、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0034】
<比較例2>
サセプタ24の温度を825℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例1と同様に、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0035】
<比較例3>
サセプタ24の温度を850℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例1と同様に、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0036】
<比較試験及び評価1>
実施例1〜3及び比較例1〜3で製造したエピタキシャルウェーハについて、レーザー光散乱式パーティクルカウンター(SP1:KLA−Tencor社製)を用いてエピタキシャルウェーハ表面のLPD個数を測定した。その結果を以下の表1に示す。なおLPD個数の測定は、製造したエピタキシャルウェーハ1枚につき、レーザー光散乱式パーティクルカウンターのLPDサイズを0.09μm以上と1μm以上に設定して、測定を行った。また表1に示したLPD個数の測定値は、実施例1〜3及び比較例1〜3で製造したエピタキシャルウェーハ枚数の1枚当たりの平均値である。
【0037】
【表1】

表1から明らかなように、抵抗率が0.005〜0.020Ω・cmであるP+又はP++基板をシリコンウェーハとして製造したエピタキシャルウェーハの場合、シリコンウェーハを反応容器内へ搬入する際のサセプタの温度を775±25℃の範囲に設定した実施例1〜3では、シリコンウェーハを反応容器内へ搬入後、リフトピンへの移載からサセプタへの移載までの間にシリコンウェーハに生じた反りが回復したため、比較例1〜3に比べ、検出されたLPD個数が少なかった。一方、サセプタの温度を700℃に設定した比較例1では、サセプタへの移載までにシリコンウェーハに生じた反りが回復せず、シリコンウェーハの裏面エッジ部とサセプタとの擦れからパーティクルが発生した。そのため製造されたエピタキシャルウェーハには、実施例1〜3よりもLPDが多く検出された。またサセプタの温度を825℃又は850℃に設定した比較例2,3では、搬送用ブレード上でシリコンウェーハに生じた反りが回復し、シリコンウェーハの裏面エッジ部と搬送用ブレードとの擦れからパーティクルが発生したため、実施例1〜3よりもLPDが多く検出された。このことから、抵抗率が0.005〜0.020Ω・cmであるP+又はP++基板をシリコンウェーハとして使用した場合、反応容器へ搬入する際のサセプタの温度は、775±25℃の範囲に設定することが好適であることが確認された。
【0038】
<実施例4>
シリコンウェーハとして、抵抗率が8〜12Ω・cmであるP-基板を使用してエピタキシャルウェーハを製造した。使用したシリコンウェーハの外径は300mm、厚さは825μmで結晶軸(100)であった。
【0039】
サセプタ24の温度を800℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例1と同様に、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0040】
<実施例5>
サセプタ24の温度を825℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例4と同様に、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0041】
<実施例6>
サセプタ24の温度を850℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例4と同様に、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0042】
<比較例4>
サセプタ24の温度を700℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例4と同様に、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0043】
<比較例5>
サセプタ24の温度を750℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例4と同様に、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0044】
<比較例6>
サセプタ24の温度を775℃に設定して、シリコンウェーハ21を反応容器20内へ搬入したこと以外は、実施例4と同様に、エピタキシャルウェーハを25枚製造した。
【0045】
<比較試験及び評価2>
実施例3〜6及び比較例3〜6で製造したエピタキシャルウェーハについて、レーザー光散乱式パーティクルカウンター(SP1:KLA−Tencor社製)を用いてエピタキシャルウェーハ表面のLPD個数を測定した。その結果を以下の表2に示す。なおLPD個数の測定は、レーザー光散乱式パーティクルカウンターのLPDサイズを0.09μm以上と1μm以上に設定して、測定を行った。また表2に示したLPD個数の測定値は、実施例3〜6及び比較例3〜6で製造したエピタキシャルウェーハ枚数の1枚当たりの平均値である。
【0046】
【表2】

表2から明らかなように、抵抗率が8〜12Ω・cmであるP-基板をシリコンウェーハとして製造したエピタキシャルウェーハの場合、シリコンウェーハを反応容器へ搬入する際のサセプタの温度を825±25℃の範囲に設定した実施例3〜6では、シリコンウェーハを反応容器内へ搬入後、リフトピンへの移載からサセプタへの移載までの間にシリコンウェーハに生じた反りが回復したため、比較例4〜6に比べ、検出されたLPD個数が少なかった。一方、サセプタを800℃未満に設定した比較例4〜6では、サセプタへの移載までに、シリコンウェーハに生じた反りが回復せず、シリコンウェーハの裏面エッジ部とサセプタとの擦れからパーティクルが発生した。そのため製造されたエピタキシャルウェーハには、実施例4〜6よりもLPDが多く検出された。このことから、抵抗率が8〜12Ω・cmであるP-基板をシリコンウェーハとして使用した場合、反応容器へ搬入する際のサセプタの温度は、825±25℃の範囲に設定することが好適であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】エピタキシャルウェーハの製造方法における一工程を表した模式図。
【図2】エピタキシャルウェーハの製造方法における一工程を表した模式図。
【図3】エピタキシャルウェーハの製造方法における一工程を表した模式図。
【図4】一般的なエピタキシャル成長装置へ搬入したシリコンウェーハの表面及び裏面の温度上昇率を表した模式図。
【図5】シリコンウェーハの抵抗率とエピタキシャル成長装置へ搬入直後のシリコンウェーハの表面温度との関係を示す図。
【符号の説明】
【0048】
20 反応容器
21 シリコンウェーハ
24 サセプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを反応容器(20)に流通させることにより前記反応容器(20)内に配置されたシリコンウェーハ(21)の表面にエピタキシャル層を成膜するエピタキシャルウェーハの製造方法において、
前記シリコンウェーハ(21)の抵抗率に応じて、前記シリコンウェーハ(21)を反応容器(20)へ搬入する際のサセプタ(24)の温度を調整することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
シリコンウェーハ(21)の抵抗率が0.005〜0.020Ω・cmであるとき、前記シリコンウェーハ(21)を反応容器(20)へ搬入する際のサセプタ(24)の温度を775±25℃の範囲に調整する請求項1記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
シリコンウェーハ(21)の抵抗率が8〜12Ω・cmのとき、前記シリコンウェーハ(21)を反応容器(20)へ搬入する際のサセプタ(24)の温度を825±25℃の範囲に調整する請求項1記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−200074(P2009−200074A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36880(P2008−36880)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】