説明

エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】 流動性、成形性、電気的特性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化促進剤、平均粒径が5μm以上、50μm以下である球状溶融シリカ及び平均粒径が0.5μm以上、5μm以下、比表面積が1m2/g以上、10m2/g以下であり、金属シリコン含有量が0.01重量%未満である球状溶融シリカを必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、並びにそれらを用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用のエポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置に関するものであり、特に流動性、硬化性、成形性、耐半田性に優れ、金属シリコン成分の少ない電気的特性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の半導体素子の封止方法として、エポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が低コスト、大量生産に適しており、採用されて久しく、信頼性の点でもエポキシ樹脂や硬化剤であるフェノール樹脂の改良により特性の向上が図られてきた。しかし、近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体の高集積化も年々進み、また、半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求は益々厳しいものとなってきている。このため、従来からのエポキシ樹脂組成物では解決出来ない問題点も出てきている。
その最大の問題点は、表面実装の採用により半導体装置が半田浸漬或いは半田リフロー工程で急激に200℃以上の高温にさらされ、吸湿した水分が爆発的に気化する際の応力により、半導体装置にクラックが発生したり、半導体素子、リードフレーム、インナーリード上の各種メッキされた各接合部分とエポキシ樹脂組成物の硬化物の界面で剥離が生じたりして、信頼性が著しく低下する現象である。
【0003】
半田処理による信頼性低下を改善するために、エポキシ樹脂組成物中の無機質充填材の充填量を増加させることで低吸湿化、高強度化、低熱膨張化を達成し耐半田性を向上させ、低溶融粘度の樹脂を使用して、成形時に低粘度で高流動性を維持させる手法がある(例えば、特許文献1参照。)。この手法を用いることにより耐半田クラック性が向上されるが、球状溶融シリカの充填割合の増加と共に、流動性が犠牲になりパッケージ内に空隙が生じやすくなる欠点があった。そこで平均粒径の異なる大粒径の球状溶融シリカと低粒径の球状溶融シリカを併用して流動性を維持する手法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。この低粒径の球状溶融シリカは通常金属シリコン成分から製造されたものが使用されているが、この製造方法により製造された球状溶融シリカは金属シリコン成分がエポキシ樹脂組成物に残留することがある。この残留した金属シリコンが半導体装置の電気的特性を低下させることが問題となっている。
【0004】
【特許文献1】特開昭64−65116号公報(2〜7頁)
【特許文献2】特開平8−20673号公報(2〜6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、流動性、硬化性、成形性、耐半田性に優れ、かつ金属シリコン成分の少ない電気的特性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)平均粒径が5μm以上、50μm以下である球状溶融シリカ及び(E)平均粒径が0.5μm以上、5μm以下、比表面積が1m2/g以上、10m2/g以下であり、金属シリコン含有量が0.01重量%未満である球状溶融シリカを必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[2] 前記(E)成分の球状溶融シリカが、シリカ質原料を熱溶融して作られたものである第[1]項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[3] 前記(E)成分の球状溶融シリカが、その表面に平均粒径が該球状溶融シリカの1/100以下である微粒シリカを付着させたものである第[1]又は[2]項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[4] 前記(D)成分と(E)成分との割合が、(D)/(E)=97/3[重量%]〜75/25[重量%]の範囲内である第[1]ないし[3]項のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[5] 前記(D)成分と(E)成分とを含む全無機充填材の含有割合が、全エポキシ樹脂組成物中の82重量%以上、92重量%以下である第[1]ないし[4]項のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[6] 第[1]ないし[5]項のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流動性、硬化性、成形性、耐半田性に優れ、かつ金属シリコン成分の少ない電気的特性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化促進剤、平均粒径が5μm以上、50μm以下である球状溶融シリカ及び平均粒径が0.5μm以上、5μm以下、比表面積が1m2/g以上、10m2/g以下であり、金属シリコン含有量が0.01重量%未満である球状溶融シリカを必須成分として含むことにより、流動性、成形性、耐半田クラック性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び導電性の金属シリコン成分が少ない電気的特性の低下が少ない半導体装置を得ることができるものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いるエポキシ樹脂(A)は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造は特に限定するものではないが、例えばスチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0010】
本発明に用いるフェノール樹脂(B)は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0011】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の含有量としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比が0.8以上、1.3以下であることが好ましく、この範囲を外れると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のガラス転移温度の低下、耐湿信頼性の低下等が生じる可能性がある。
【0012】
本発明で用いられる硬化促進剤(C)としては、エポキシ基とフェノール性水酸基の反応を促進するものであれば特に限定しないが、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0013】
また本発明で用いられる硬化促進剤(C)として、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物を使用することもできる。ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィンなどが挙げられる。キノン化合物としては1,4−ベンゾキノン、メチル−1,4−ベンゾキノン、メトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノンなどが挙げられる。これらホスフィン化合物とキノン化合物との付加物のうち、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物が好ましい。ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては特に制限はないが、例えば、原料として用いられるホスフィン化合物とキノン化合物とを両者が溶解する有機溶媒中で付加反応させて単離すればよい。ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明に用いる平均粒径が5μm以上、50μm以下である球状溶融シリカ(D)は、通常半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。これらの球状溶融シリカ(D)は、単独でも混合して用いても差し支えない。平均粒径が下限値を下回ると十分な流動性が得られず、上限値を越えると成形時の充填性が悪くなり、空隙が多く生じるおそれがあるので好ましくない。
【0015】
本発明に用いる平均粒径が0.5μm以上、5μm以下、比表面積が1m2/g以上、10m2/g以下であり、金属シリコン含有量が0.01重量%未満である球状溶融シリカ(E)は、特に限定するものではないが、シリカ質原料を熱溶融したものなどを使用することができる。
従来使用されている平均粒径が0.5〜5μm前後のシリカは、(1)平均粒径5μm以上の球状溶融シリカを製造するときに生じるバグフィルター回収品、または(2)金属シリコンから製造された表面に微粒がほとんど存在しない真球状の球状溶融シリカである。しかし、(1)では比表面積が10m2/gを超えるものとなるためにチキソ性が非常に高く、添加すると流動性を著しく低下させる。また(2)では出発原料が金属シリコンであるために、導電体である金属シリコンが残留したり、大粒径の金属シリコン原料が混入することがある。この製造方法によると、熱溶融後も導電体である金属シリコンの残留物を含むこととなる。この金属シリコンを含んだ球状溶融シリカを半導体装置に用いた場合、電気的な特性が低下するために好ましいことではない。
ところが、本発明では、シリカ質原料を熱溶融するなどして作られた、平均粒径が0.5μm以上、5μm以下、比表面積が1m2/g以上、10m2/g以下であり、金属シリコン含有量が0.01重量%未満である球状溶融シリカ(E)を用いることで、良好な流動性・耐半田クラック性を有するエポキシ樹脂組成物を得ることができ、かつ金属シリコンの混入を防ぎ、電気的特性の低下を防ぐことができる。
また、本発明に用いる上記の球状溶融シリカ(E)は、平均粒径が該球状溶融シリカの1/100以下である微粒シリカを付着させたものであることがより好ましい。微粒シリカを該球状溶融シリカの表面に付着させる方法については特に限定するものではないが、例えば、熱溶融によりシリカを蒸発させ、その蒸発したシリカを該球状溶融シリカの表面で固化させる方法等を用いることができる。平均粒径が該球状溶融シリカの1/100以下である微粒シリカを付着させた球状溶融シリカ(E)を使用することにより、この1/100以下の平均粒径である微粒シリカがいわゆる「ころ」の役目を果たすことでエポキシ樹脂組成物の流動性を向上させることができる。また、微粒シリカを付着させたことにより、シリカ表面の帯電性を減少させ、シリカ同士の凝集を防ぐことができるので流動性を向上させることができる。また、この微粒シリカは比表面積が大きいことで表面のシラノール基密度が高く、樹脂やリードフレームとの濡れ性が向上する。この濡れ性の向上により、シリカと樹脂やリードフレームとの密着性が向上し耐半田クラック性を向上させることができる。
該球状溶融シリカ表面に対する微粒子シリカの被覆面積としては、特に限定するものではないが、20%以上、60%以下が好ましい。上記下限値を下回ると、「ころ」の役目を果たす微粒シリカが少ないため、十分な流動性が得られない恐れがある。また、上記上限値を超えると、チキソ性が上昇することにより十分な流動性が得られない恐れがある。
上記球状溶融シリカ(E)の平均粒径が、下限値を下回ると、粒子同士の凝集を抑えることが難しく、上限値を越えると大きすぎるために流動性向上の役目を果たさない恐れがあるので好ましくない。本発明に用いる球状溶融シリカ(D)及び球状溶融シリカ(E)の平均粒径は、レーザー式粒度分布計((株)島津製作所製、SALD−7000)等を用いて測定することができるものである。
【0016】
本発明で用いる球状溶融シリカ(E)の含有量は、特に限定するものではないが、球状溶融シリカ(D)と球状溶融シリカ(E)との割合が、(D)/(E)=97/3[重量%]〜75/25[重量%]の範囲内であることが好ましい。球状溶融シリカ(E)の割合が下限値を下回ると最密充填理論の観点から流動性が低下する恐れがあるため好ましくなく、上限値を上回るとチキソ性増加のため流動性が低下する恐れがあるため好ましくない。球状溶融シリカ(D)と球状溶融シリカ(E)と、更にその他の無機充填材とを合せた合計の含有割合は、全エポキシ樹脂組成物中に82重量%以上、92重量%以下であることが好ましい。下限値を下回ると吸湿率の上昇に伴い耐半田性が低下し、上限値を越えるとパッケージ未充填が起こる可能性が高く、金線変形及びパッドシフト等の問題が生じる恐れがあるので好ましくない。
【0017】
本発明に用いる球状溶融シリカ(D)及び球状溶融シリカ(E)と併用できる無機充填材としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物の充填材として使用されているものを用いることができる。例えば、溶融破砕シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、チタンホワイト、窒化珪素等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でも混合して用いても差し支えない。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じてカップリング剤を使用してもよい。カップリング剤とは、通常無機物質の表面処理に用いられているカップリング剤を指す。例えばアミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等が挙げられるが、最も好適に使用されるものとしてはシランカップリング剤であり、より好ましく使用されるものとしてはアミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、ウレイドシランが挙げられ、これらを例示すると、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。また、カップリング剤は、予め水或いは必要に応じて酸又はアルカリを添加して、加水分解処理して用いてもよい。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分を必須とし、必要に応じてその他の無機充填材やカップリング剤を添加するが、更にこれ以外に、カーボンブラック等の着色剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤及び、ゴム等の低応力添加剤、臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン等の難燃剤等の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分の他、必要に応じて添加する添加物を、ミキサー等を用いて十分に均一に混合した後、更に熱ロール又はニーダー等で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
なお、実施例及び比較例で用いた無機充填材の内容について以下に示す。
尚、無機充填材4〜6は、電子顕微鏡により球状溶融シリカ表面に微粒のシリカが付着していることが確認されたシリカである。
無機充填材1(球状溶融シリカ、平均粒径:28.4μm、比表面積:1.5m2/g、SiO2:99.9重量%、金属シリコン:0.00%)
無機充填材2(球状溶融シリカ、平均粒径:55.3μm、比表面積:0.6m2/g、SiO2:99.9重量%、金属シリコン:0.00%)
無機充填材3(破砕シリカ、平均粒径:30.5μm、比表面積:1.8m2/g、SiO2:99.9重量%、金属シリコン:0.00%)
無機充填材4(シリカ質原料を熱溶融して作られた球状溶融シリカ、平均粒径:1.0μm、比表面積:8.5m2/g、表面微粒シリカの平均粒径:10nm、微粒子シリカの表面被覆率40%、SiO2:99.9重量%、金属シリコン:0.00%)
無機充填材5(シリカ質原料を熱溶融して作られた球状溶融シリカ、平均粒径:2.0μm、比表面積:7.0m2/g、表面微粒シリカの平均粒径:10nm、微粒子シリカの表面被覆率40%、SiO2:99.9重量%、金属シリコン:0.00%)
無機充填材6(シリカ質原料を熱溶融して作られた球状溶融シリカ、平均粒径:4.5μm、比表面積:6.0m2/g、表面微粒シリカの平均粒径:10nm、微粒子シリカの表面被覆率40%、SiO2:99.9重量%、金属シリコン:0.00%)
無機充填材7(平均粒径21μmの球状溶融シリカを製造する際にできたバグフィルター回収品である球状溶融シリカ、平均粒径:1.7μm、比表面積:31.3m2/g、SiO2:99.9重量%、金属シリコン:0.00%)
無機充填材8(金属シリコンから合成された球状溶融シリカ、平均粒径:1.5μm、比表面積4.0m2/g、SiO2:99.8重量%、金属シリコン:0.1%)
無機充填材9(金属シリコンから合成された球状溶融シリカ、平均粒径:0.15μm、比表面積32.3m2/g、SiO2:99.8重量%、金属シリコン:0.1%)
【0022】
実施例1、
エポキシ樹脂1(ビフェニル型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製、YX−4000、エポキシ当量190g/eq、融点105℃) 57重量部
フェノール樹脂1(フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、三井化学(株)製、XLC−LL、水酸基当量165g/eq、軟化点79℃) 49重量部
硬化促進剤1(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7) 3重量部
無機充填材1 780重量部
無機充填材5 100重量部
カップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン) 3重量部
カーボンブラック 3重量部
カルナバワックス 5重量部
を混合し、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0023】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、金型温度175℃、圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。単位はcmで、100cm以上を流動性良好とした。
【0024】
金線変形:低圧トランスファー成形機を用いて、成形温度175℃、圧力9.3MPa、硬化時間120秒で、160pQFPを成形した。パッケージ成形した160pQFPパッケージを軟X線透視装置で観察し、金線の変形率を(流れ量)/(金線長)の比率で表した。単位は%で、変形率5%以下を金線変形が少なく良好であるとした。
【0025】
耐半田性:低圧トランスファー成形機を用いて、成形温度175℃、圧力8.3MPa、硬化時間120秒で、80pQFP(Cuフレーム、チップサイズ6.0mm×6.0mm)を成形し、アフターベークとして175℃、8時間加熱処理した後、85℃、相対湿度85%で120時間の加湿処理を行った後、260℃のIRリフロー処理をした。パッケージ内部の剥離とクラックを超音波探傷機で確認した。10個のパッケージ中の不良パッケージ数を示す。2個以下の不良を耐半田性良好とした。
【0026】
通電特性:模擬素子を30μm径の金線で配線・ワイヤーピッチ間60μmの16ピンSOPを、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間2分でトランスファー成形し、175℃、8時間で後硬化した。20個の16ピンSOPの通電測定を行い、不良となった個数を記録し、0個を良好とした。
【0027】
実施例2〜10、比較例1〜5
表1、2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1、2に示す。
実施例1以外で用いた原材料を以下に示す。
エポキシ樹脂2(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製、NC3000P、軟化点58℃、エポキシ当量273)
フェノール樹脂2(ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、明和化成(株)製、MEH−7851SS、軟化点107℃、水酸基当量204)
硬化促進剤2(トリフェニルホスフィン−1,4−ベンゾキノン)
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、流動性、成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができるため、より高いレベルの耐半田性が要求される半導体装置に好適であるとともに、導電性の金属シリコン含有量が少ないために電気的特性に優れた半導体装置を得ることができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)平均粒径が5μm以上、50μm以下である球状溶融シリカ及び(E)平均粒径が0.5μm以上、5μm以下、比表面積が1m2/g以上、10m2/g以下であり、金属シリコン含有量が0.01重量%未満である球状溶融シリカを必須成分とすることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(E)成分の球状溶融シリカが、シリカ質原料を熱溶融して作られたものである請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(E)成分の球状溶融シリカが、その表面に平均粒径が該球状溶融シリカの1/100以下である微粒シリカを付着させたものである請求項1又は2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)成分と(E)成分との割合が、(D)/(E)=97/3[重量%]〜75/25[重量%]の範囲内である請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)成分と(E)成分とを含む全無機充填材の含有割合が、全エポキシ樹脂組成物中の82重量%以上、92重量%以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2006−143784(P2006−143784A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332199(P2004−332199)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】