説明

エンジン排気エネルギー回収方法

【課題】エンジンの負荷、エンジン回転数に対してエンジン性能(燃料消費率)が最適となる最適掃気圧力になるようにパワータービン側へ抽出される排気ガス量を調整して、エンジンの最適運転状態を常に確保できる排気エネルギー回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】エンジンの負荷、エンジンの回転数、およびエンジンの掃気圧力を検出する工程S1と、前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるエンジンの最適掃気圧力を算出する工程S2と、前記検出したエンジンの掃気圧力と前記算出したエンジンの最適掃気圧力との差を求めた後に、該差に基づいて前記排気ガスバイパス制御弁の開度修正量を算出する工程S3と、前記算出された排気ガスバイパス制御弁の開度修正量から前記排気ガスバイパス制御弁の開度指令値を決定する工程S4と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用ディーゼル機関、陸上発電機用ディーゼル機関等のエンジン本体から排出される排気ガス(燃焼ガス)の排気エネルギーを動力として回収する排気エネルギー回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス(燃焼ガス)に含まれる排気エネルギーを動力として回収する排気エネルギー回収装置としては、例えば、特許文献に開示された過給機およびパワータービンが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−186916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジン本体から排出される排気ガス(燃焼ガス)を過給機のみならず、その一部をパワータービン等に導いて排気エネルギーを回収する装置を備えたディーゼル機関においては、排気ガスの一部の排気エネルギーが過給機の駆動に使用されないため、エンジンの運転状態によっては、過給機効率が低下し過給機からエンジン本体への掃気(給気)圧力が不足して、エンジンの燃焼効率が低下し、燃料消費率が増加する。
【0005】
ところが、近年においては、過給機の排気タービン部及びタービン部の回転駆動力によって駆動されるコンプレッサ部の翼の形状、翼を内包するハウジングとの隙間の減少、タービン部及びコンプレッサ部の駆動抵抗減少等の改善により過給機の性能が向上しており、エンジンからの排気ガスを従来以上にパワータービンに導いても、過給機はエンジン本体に十分な掃気圧力(給気圧力)を供給することが可能となった。
【0006】
その結果、上記特許文献に開示されたディーゼル機関が高負荷運転された状態で、バイパス弁を絞る(すなわち、パワータービンの出力を減少させる)と、パワータービンを駆動させるために利用されていた排気ガスが過給機の排気タービンに供給され、排気タービンの駆動力及び回転数が上昇し、排気タービンによって駆動されるコンプレッサの回転数も上昇する。
その結果、コンプレッサからディーゼル機関に供給される圧縮空気の圧力(掃気圧力:給気圧力)がエンジンの許容運転圧力を超えてしまうため、機関安全上の観点から掃気圧力が許容圧力以下になるように制御されているだけなので、エンジンが最適運転状態で運転されておらず熱効率改善にはつながらない。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、エンジンの負荷、エンジン回転数に対してエンジン性能(燃料消費率)が最適となる掃気圧力(給気圧力)の算出式又は、データベースが組み込まれた制御装置によって、最適掃気圧力になるようにパワータービン及び過給機を通らずにバイパスされる排気ガス量を調整して、エンジンの最適運転状態を常に確保できるようにするエンジン排気エネルギー回収方法を提供することを目的とする。
また、経年劣化によってシリンダ内の圧縮圧力が低下しても、前記エンジンの最適運転状態を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するもので、エンジンを駆動する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスによって排気タービン過給機を駆動することで外気をエンジン本体に圧送する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスの一部を抽気し、該抽気された排気ガスによってパワータービンを駆動することで電力を生成する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記抽気された排気ガスの流量を絞るガス入口制御弁によって前記パワータービンに流入する排気ガスの流量を調整する工程と、前記ガス入口制御弁の上流に設置され、前記抽気された排気ガスの一部を前記パワータービン下流側にバイパスするバイパス管と、該バイパス管に設置された排気ガスバイパス制御弁によって前記パワータービンを迂回する排気ガスの流量を調整する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収方法において、
エンジンの負荷、エンジンの回転数、およびエンジンの掃気圧力を検出する工程と、
前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるエンジンの最適掃気圧力を算出する工程と、
前記検出したエンジンの掃気圧力と前記算出したエンジンの最適掃気圧力との差を求めた後に、該差に基づいて前記排気ガスバイパス制御弁の開度修正量を算出する工程と、
前記算出された排気ガスバイパス制御弁の開度修正量から前記排気ガスバイパス制御弁の開度指令値を決定する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るエンジン排気エネルギー回収方法によれば、エンジン負荷と、エンジン回転数等の検出値からエンジンを最適な運転状態にするためのエンジンの最適掃気圧力を算出して、その算出した最適掃気圧力になるようにパワータービン手前に設けた上記排気ガスバイパス制御弁の制御によって排ガスバイパス量を制御し、常にエンジンを最適運転状態に維持して、燃料消費率を抑えることによりエンジンのランニングコスト低減及び、それに伴う環境改善等に良い効果をもたらす。
【0010】
また、本発明は、エンジンを駆動する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスによって排気タービン過給機を駆動することで外気をエンジン本体に圧送する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスの一部を抽気し、該抽気された排気ガスによってパワータービンを駆動することで電力を生成する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記抽気された排気ガスの流量を絞るガス入口制御弁によって前記パワータービンに流入する排気ガスの流量を調整する工程と、前記ガス入口制御弁の上流に設置され、前記抽気された排気ガスの一部を前記パワータービン下流側にバイパスするバイパス管と、該バイパス管に設置された排気ガスバイパス制御弁によって前記パワータービンを迂回する排気ガスの流量を調整する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収方法において、
エンジンの負荷、エンジンの回転数、およびエンジンの掃気圧力を検出する工程と、
前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるエンジンの最適掃気圧力を算出する工程と、
前記検出したエンジンの掃気圧力と前記算出したエンジンの最適掃気圧力との差を求めた後に、該差に基づいて前記排気ガスバイパス制御弁の開度修正量を算出する工程と、
前記算出された排気ガスバイパス制御弁の開度修正量から前記排気ガスバイパス制御弁の開度指令値を決定する工程と、
前記決定された排気ガスバイパス制御弁の開度指令値に基づき、排気ガスバイパス制御弁の開度を変更する工程と、を備え、
さらに前記変更された排気ガスバイパス制御弁の開度を検出する工程と、
前記決定された排気ガスバイパス制御弁の開度指令値と前記検出された排気ガスバイパス制御弁の開度との誤差を算出する工程と、
前記算出された誤差を前記排気ガスバイパス制御弁の開度指令値にフィードバックする工程と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
排ガスバイパス制御弁の開度を検出して、フィードバック制御を行うことで、経年劣化などによる指定値と実際の開度のずれを補正することができ、運転条件が最適運転条件からはずれるのを防止できる。
【0012】
本発明において好ましくは、さらに前記誤差を算出する工程において、前記決定された排気ガスバイパス制御弁の開度指令値と前記排気ガスバイパス制御弁の開度が一致した場合に、前記エンジンの掃気圧力が前記エンジンの燃料消費率が最も少なくなるエンジンの最適掃気圧力を維持する工程と、を備えるとよい。
【0013】
また、本発明は、エンジンを駆動する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスによって排気タービン過給機を駆動することで外気をエンジン本体に圧送する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスの一部を抽気し、該抽気された排気ガスによってパワータービンを駆動することで電力を生成する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記抽気された排気ガスの流量を絞るガス入口制御弁によって前記パワータービンに流入する前記抽気された排気ガスの流量を調整する工程と、前記ガス入口制御弁の上流に設置され、前記抽気された排気ガスの一部を前記パワータービン下流側にバイパスするバイパス管と、該バイパス管に設置された排気ガスバイパス制御弁によって前記パワータービンを迂回する排気ガスの流量を調整する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収方法において、
エンジンの負荷、エンジンの回転数、エンジンの掃気圧力、およびエンジンのシリンダ内圧力を検出する工程と、
前記検出したエンジンのシリンダ内圧力からシリンダ内圧縮圧力を算出する工程と、
前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるシリンダ内最適圧縮圧力を算出する工程と、
前記算出したシリンダ内圧縮圧力と前記算出したシリンダ内最適圧縮圧力との差を求めた後に、該差に基づいて排気弁閉タイミングの変更量を算出する工程と、
前記算出した排気弁閉タイミングの変更量から排気弁閉タイミングを決定する工程と、
前記決定した排気弁閉タイミングに基づき、排気弁閉タイミングを変更する工程と、を備え、
さらに 排気弁閉タイミングを変更した後のエンジンのシリンダ内圧縮圧力を検出する工程と、
前記検出した 排気弁閉タイミングを変更した後のエンジンのシリンダ内圧縮圧力と前記シリンダ内最適圧縮圧力との誤差を算出する工程と、
前記算出された誤差を前記排気弁閉タイミング指令値にフィードバックする工程と、
を備えたことを特徴とする。
これにより、エンジンは更にきめ細かい最適運転(燃料消費率が最も少ない)を維持でき、更なる燃料消費率の向上と環境負荷低減が可能となる。
【0014】
また、本発明は、エンジンを駆動する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスによって排気タービン過給機を駆動することで外気をエンジン本体に圧送する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスの一部を抽気し、該抽気された排気ガスによってパワータービンを駆動することで電力を生成する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記抽気された排気ガスの流量を絞るガス入口制御弁によって前記パワータービンに流入する前記抽気された排気ガスの流量を調整する工程と、前記ガス入口制御弁の上流に設置され、前記抽気された排気ガスの一部を前記パワータービン下流側にバイパスするバイパス管と、該バイパス管に設置された排気ガスバイパス制御弁によって前記パワータービンを迂回する排気ガスの流量を調整する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収方法において、
エンジンの負荷、エンジンの回転数、エンジンの掃気圧力、およびエンジンのシリンダ内圧力を検出する工程と、
前記検出したエンジンのシリンダ内圧力からシリンダ内最高圧力を算出する工程と、
前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるシリンダ内最適最高圧力を算出する工程と、
前記算出したシリンダ内最高圧力と前記算出したシリンダ内最適最高圧力との差を求めた後に、該差に基づいて燃料噴射タイミングの変更量を算出する工程と、
前記算出した燃料噴射タイミングの変更量から燃料噴射タイミングを決定する工程と、
前記決定した燃料噴射タイミングに基づき、燃料噴射タイミングを変更する工程と、を備え、
さらに燃料噴射タイミングを変更した後のエンジンのシリンダ内最高圧力を検出する工程と、
前記検出した燃料噴射タイミングを変更した後のエンジンのシリンダ内最高圧力と前記シリンダ内最適最高圧力との誤差を算出する工程と、
前記算出された誤差を前記燃料噴射タイミング指令値にフィードバックする工程と、 を備えたことを特徴とする。
これにより、エンジンは更にきめ細かい最適運転(燃料消費率が最も少ない)を維持でき、更なる燃料消費率の向上と環境負荷低減が可能となる。
【0015】
また、本発明は、エンジンを駆動する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスによって排気タービン過給機を駆動することで外気をエンジン本体に圧送する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスの一部を抽気し、該抽気された排気ガスによってパワータービンを駆動することで電力を生成する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記抽気された排気ガスの流量を絞るガス入口制御弁によって前記パワータービンに流入する前記抽気された排気ガスの流量を調整する工程と、前記ガス入口制御弁の上流に設置され、前記抽気された排気ガスの一部を前記パワータービン下流側にバイパスするバイパス管と、該バイパス管に設置された排気ガスバイパス制御弁によって前記パワータービンを迂回する排気ガスの流量を調整する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収方法において、
エンジンの負荷、エンジンの回転数、エンジンの掃気圧力、およびエンジンのシリンダ内圧力を検出する工程と、
前記検出したエンジンのシリンダ内圧力からシリンダ内圧縮圧力、およびシリンダ内最高圧力を算出する工程と、
前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるシリンダ内最適圧縮圧力、およびシリンダ内最適最高圧力を算出する工程と、
前記算出したシリンダ内圧縮圧力と前記シリンダ内最適圧縮圧力との差を求めた後に、該差に基づいて前記排気ガスバイパス制御弁の開度修正量を算出する工程と、
前記算出された排気ガスバイパス制御弁の開度修正量から前記排気ガスバイパス制御弁の開度指令値を決定する工程と、
前記決定された排気ガスバイパス制御弁の開度指令値に基づき、排気ガスバイパス制御弁の開度を変更する工程と、を備え、
さらに排気ガスバイパス制御弁の開度を変更した後のエンジンのシリンダ内圧縮圧力を検出する工程と、
前記検出した排気ガスバイパス制御弁の開度を変更した後のエンジンのシリンダ内圧縮圧力と前記シリンダ内最適圧縮圧力との誤差を算出する工程と、
前記変更された排気ガスバイパス弁の開度が全閉か否かを判断し、全閉の場合には前記算出された誤差に基づいてエンジンの排気弁閉タイミングを決定する工程と、
前記シリンダ内最高圧力と前記シリンダ内最適最高圧力との差に基づいて、エンジンの燃料噴射タイミングを決定する工程と、
前記決定されたエンジンの排気弁閉タイミング、および前記決定されたエンジンの燃料噴射タイミングに基づき、エンジンの排気弁閉タイミング、および前記決定されたエンジンの燃料噴射タイミングを変更する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
経年劣化などにより排気ガスバイパス制御弁指令値と実際の弁開度とのずれが生じて掃気圧力が低下した場合、あるいは排気弁シート部が摩耗した場合、圧縮圧力が低下するためエンジン性能が低下する。シリンダ内の燃焼圧力を直接検知して、シリンダ内圧縮圧力Pcompが所定の値になるよう排気ガスバイパス制御弁を制御することで、エンジンの実運転条件が経年変化によって最適運転からずれるのを防止することができる。
これにより、エンジンは更にきめ細かい最適運転(燃料消費率が最も少ない)を維持でき、更なる燃料消費率の向上と環境負荷低減が可能となる。
【0017】
また、シリンダ内圧力〔圧縮圧力Pcompと、最高圧力(燃焼圧力)Pmax〕を直接検知して、検出した圧縮圧力Pcompと、最高圧力(燃焼圧力)Pmaxとがそれぞれ、エンジン運転状態がエンジン負荷に対するマップの最適運転状態の値になるよう排気ガスバイパス制御弁開度、燃料噴射タイミング、排気弁閉タイミングを制御することで、燃料の性状が変化してもエンジンの最適運転(燃料消費率が最も少ない運転)が維持できる。
【0018】
また、排気ガスバイパス制御弁の開度が全閉状態の場合においても、排気弁閉タイミングを制御することでシリンダ内圧縮圧力Pcompを最適圧縮圧力Pcomp0に制御できるので、パラメータ最適値への制御を確実に行うことができる。
【0019】
また、本発明において好ましくは、エンジンの排気弁閉タイミング、およびエンジンの燃料噴射タイミングを変更した後のシリンダ内圧縮圧力、およびシリンダ内最高圧力を検出する工程と、
前記算出されたシリンダ内最適最高圧力と前記エンジンの排気弁閉タイミング、およびエンジンの燃料噴射タイミングを変更した後のシリンダ内最高圧力とに誤差がある場合は、該誤差に基づいて、燃料弁噴射タイミング補正量を決定し、該燃料弁噴射タイミング補正量をフィードバックすることで燃料噴射タイミングを決定する工程と、
前記算出されたシリンダ内最適圧縮圧力とエンジンの排気弁閉タイミング、およびエンジンの燃料噴射タイミングを変更した後のシリンダ内圧縮圧力とに誤差がある場合は、該誤差に基づいて、排気弁閉タイミング補正量を決定し、該排気弁閉タイミング補正量をフィードバックすることで排気弁閉タイミングを決定する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る排気エネルギー回収方法によれば、エンジンの負荷検出手段、エンジンの回転数検出手段、掃気圧力検出手段等夫々からの検出値からエンジン性能(燃料消費率)が最適となる掃気圧力を決定し、排気ガスバイパス制御弁を制御して、エンジン性能を常に最適な状態に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】は本発明の第1実施形態に係る排気エネルギー回収装置を具備した概略構成図である。
【図2】は本発明の最適運転状態を決める制御用データベースの一例である。
【図3】は本発明の第1実施形態に係る制御構成図である。
【図4】は本発明の第1実施形態に係る制御フローチャートである。
【図5】は本発明の第2実施形態に係る制御構成図である。
【図6】は本発明の第2実施形態に係る制御フローチャートである。
【図7】は本発明の第3実施形態に係る制御構成図である。
【図8】は本発明の第3実施形態に係る制御フローチャートである。
【図9】は本発明の第4実施形態に係る制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るエンジン排気エネルギー回収装置の実施形態について説明する。
但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
図1に示すように、舶用ディーゼル機関1はディーゼルエンジン本体(例えば、低速2サイクルディーゼルエンジン)2と、ディーゼルエンジン本体2(以下「エンジン本体」と称す)の排気マニールド7と、エンジン本体2内で図示ない燃料噴射装置により噴射された燃料が燃焼するシリンダ6とを備えている(本実施形態の場合はシリンダが6個配置された6気筒エンジンを示す)。3は排気マニールド7から排出された排気ガスによって駆動される排気タービン部3aと、同排気タービン部3aと同軸的に結合して回転駆動され外気をエンジン本体2に掃気(給気)として圧力をかけて供給するコンプレッサ部3bとを備えた排気タービン過給機、L1は排気マニールド7と排気タービン部3aとを連結し、排気ガスが排気タービン部3aへ送通される第1排気管、18は外気をコンプレッサ部3bで圧縮した掃気(給気)を冷却して空気密度を上げるためのインタークーラ、K1はコンプレッサ部3bとインタークーラ18とを連結した第1給気管、K2はインタークーラ18とエンジン本体2の給気マニホールド8とを連結し、インタークーラ18で冷却された掃気(給気)をエンジン本体2の給気マニホールド8へ送通させる第2給気管。
【0024】
4は排気マニールド7から分流された排気ガスによって駆動され後述する発電機の駆動源であるパワータービン、9はパワータービン4及び排気タービン過給機3の排気タービン部3a夫々を駆動した排気ガスの熱により水を蒸気に熱交換させる熱交換器、L10は熱交換器9へ給水する給水管である。熱交換器9は給水管L10によって供給された水を蒸発管内(図示省略)に通水して、排気ガスの熱で水を蒸気に熱変換する装置である。
【0025】
L2は排気マニールド7とパワータービン4とを連結し、排気ガスをパワータービン4へ送通させる第2排気管、L3はパワータービン4と熱交換器9とを連結し、パワータービン4から排出された排気ガスを熱交換器9に送通させる第3排気管、L4は排気タービン過給機3の排気タービン部3aと第3排気管L3に連結して、排気タービン部3aからの排気ガスを熱交換器9に送通させる第4排気管、L5は上述のパワータービン4に共働して発電機の駆動源となる蒸気タービン5と熱交換器9とを連結し、熱交換器9で熱交換された蒸気を蒸気タービン5に送通させる第5排気管、L6は蒸気タービン5を駆動した蒸気をコンデンサ(復水器)(図示省略)に戻す第6排気管、L7は熱交換器9で水を蒸気に熱交換した排気ガスをファンネル(煙突)(図示省略)に送通して船外に放出させる第7排気管である。
尚、蒸気をコンデンサ(復水器)で凝結させ復水した水は給水管L10によって熱交換器9へ給水される。
【0026】
V1は第2排気管L2の途中に介装され、パワータービン4への排気ガス流量をコントロールするために、コントローラ(図示省略)により開度が調整されるガス入口制御弁、V2は第5排気管L5の途中に介装され、蒸気タービン5への蒸気流量を前述のコントローラにより開度が調整される蒸気流量調整弁、V3は第2排気管L2のガス入口制御弁V1上流側位置と、第3排気管L3とを連結する第1バイパス管L8の途中に介装された排気ガスバイパス制御弁、V4は第5排気管L5の流量調整弁V2上流側位置と、第6排気管L6とを連結する第2バイパス管L11の途中に介装された蒸気バイパス流量制御弁である。
【0027】
V5は第2排気管L2と第1バイパス管L8との結合部と、ガス入口制御弁V1の間で第2排気管L2に介装された緊急用の緊急制御弁で、何等かの事態でパワータービン4への排気ガス流入を停止したい時に作動させる。
【0028】
また、排気ガスバイパス制御弁V3と第3排気管L3との中途部にオリフィス19が介装されている。オリフィス19はエンジン本体2が高負荷運転(通常の航行運転)され、パワータービン4が全負荷運転状態にされているとき(即ち、排気ガスバイパス制御弁V3が全閉、ガス入口制御弁V1が全開とされているとき)に、ガス入口制御弁V1を流れる排気ガスと同量の排気ガスをガス入口制御弁V1が全閉の時(パワータービン4が停止状態)に排気ガスバイパス制御弁V3を流れるように調整されている。
【0029】
従って、エンジン本体2が高負荷運転されている状態でパワータービン4が停止状態であると、排気タービン過給機3側に供給される排気ガスの流量が増加し、掃気圧力が所定以上に増加するのを防止して、エンジンに悪影響を与えるのを防止するものである。
一方、上述の通り、オリフィス19はエンジン本体2が高負荷運転(通常の航行運転)され、パワータービン4が全負荷運転状態されている時に、パワータービン4を流れる排気ガスと同量の排気ガスが流れる(ガス入口制御弁V1を全閉している時)ように調整されていることは、ガス入口制御弁V1を全閉している時に、オリフィス19を流れる排気ガスが排気タービン過給機3側に供給される排気ガスの流量が減少するほど流れないので、排気タービン過給機3の掃気圧力が所定値以下になることをも防止し、エンジン本体2の最適運転が確保できる。
【0030】
パワータービン4の回転軸(図示省略)と、蒸気タービン5の回転軸(図示省略)とは減速機(図示省略)及びカップリング10を介して連結され、更に、蒸気タービン5の回転軸(図示省略)と発電機11の回転軸(図示省略)とは減速機(図示省略)及びカップリング12を介して連結されている。
また、発電機11は制御用抵抗器13を介して船内(本実施形態では機関室内)に別途設置された配電盤14と電気的に接続されており、発電機11が発電した電力を船内電源として利用することができるようになっている。
【0031】
次に、本発明の実施形態における燃料消費率が最適運転状態を決める制御用データベースであるマップについて、図2を参照して説明する。
図2の制御用データベースは舶用2サイクルエンジンで、あるエンジン回転数、負荷の時における関係を示している。従って、エンジン回転数、負荷それぞれに対して同様の関係のマップを持つこととなる。
横軸に圧縮圧力Pcompを示し、図2の右方向が大となる。縦軸に燃料噴射タイミングを示し、上方がタイミング遅角方向、下方が進角方向を示す。
圧縮圧力Pcompに代えて、掃気(給気)圧力(掃気圧力が大きいときに、圧縮圧力が大になる関係)、エンジン本体の排気弁閉タイミング(早閉じして圧縮圧力が大になる関係)として、制御因子を代えても同様の関係が得られる。
図中、間隔を有した複数の曲線は燃料消費率の等高線で、エンジンの回転数、負荷によって曲線の位置及び曲線の形状が異なる。図中燃料消費率の等高線は曲線の右下(曲線の中心方向)方向に移るに従い燃料消費率が良いことを示す。
【0032】
また、太い直線は筒内最高圧力Pmax上限値を示し、筒内最高圧力Pmax上限値の右側エリアはエンジン本体の許容圧力を超えるため使用できない範囲となる。
従って、エンジンの燃料消費率を最もよい最適運転状態に制御する目標位置(最適運転ポイント)は筒内最高圧力Pmax上限値の左側エリアで且つ、燃料消費率の等高線の筒内最高圧力Pmax上限値に近接した部分となる。
この目標位置に基づいて掃気圧力、排気弁閉タイミング、燃料噴射タイミングを制御して、エンジンの最適運転状態を維持する。
【0033】
また、負荷が低くなるにつれて、掃気圧力が低下し、それに伴い圧縮圧力が低下するため、燃料噴射タイミングを進角することができるようになる。このため、負荷が低いほど図2のマップにおいて最適運転ポイントは太い直線の筒内最高圧力Pmax上限値に沿って左下方向に移動する。
その際、燃料消費率の等高線も曲線の中心も太い直線の筒内最高圧力Pmax上限値に沿って左下方向に移動する。
【0034】
(第1実施形態)
本発明によるエンジンの最適運転(燃料消費率が最も少ない)制御方法の第1実施形態を図3及び図4に基づいて説明する。図3は本発明の第1実施形態に係る制御構成図で、図4は本発明の第1実施形態に係る制御フローチャートである。
図3において、エンジン負荷検出手段20からの信号と、エンジン回転数検出手段21からの信号と、エンジンの掃気(給気)圧力を検出する掃気圧力検出手段22からの信号が、制御装置であるコントローラ23に入力され排気ガスバイパス制御弁V3への排気ガスバイパス制御弁制御指令信号Aを出力する。
【0035】
図4のとおり、ステップS1において、コントローラ23にはエンジン本体1からエン
ジン負荷L、エンジン回転数Ne及び掃気圧力Psが夫々の検出手段によって検出され、
信号として入力される。ステップS2において、コントローラ23はエンジン負荷L及び
エンジン回転数Neを予めコントローラ23内に用意されたデータベースに照合し最適掃
気圧力Ps0を算出する(図2において横軸に掃気圧力を示したマップに基づいて算出)。
次に、ステップS3において、コントローラ23は掃気圧力PsとステップS2におい
て算出された最適掃気圧力Ps0との差ΔPsを求め、該差ΔPsに基づいて排気ガスバイパス制御弁V3の開度修正量ΔAを決定する。
【0036】
次に、ステップS4において、ステップS3にて決定した排気ガスバイパス制御弁V3の開度修正量ΔAと現在の開度指令値A’から排気ガスバイパス制御弁V3の新しい制御弁開度指令値Aを決定する。ステップS5において、排気ガスバイパス制御弁V3へ新しい制御弁開度指令値Aに制御する指令をコントローラ23によって出力する。その後ステップS5からステップS1に戻って繰返す。この動作を繰返すことにより掃気圧力Psが最適運転状態を維持するための状態になっているかをチェックし、最適運転状態(燃料消費率が最も少ない)を維持するための最適掃気圧力Ps0からずれている場合には修正する。
【0037】
第1実施形態によれば、制御装置23は検出されたエンジン負荷と、エンジン回転数等の検出値からエンジンの最適な運転状態にするためのエンジンの最適掃気圧力Ps0を算出して、その算出した掃気圧力になるようにパワータービン側に分流させる排気ガス量を上記排気ガスバイパス制御弁V3の制御によって、最適掃気圧力になるように制御して、常にエンジンを最適運転状態に維持して、燃料消費率を抑えることによりエンジンのランニングコスト低減及び、それに伴う環境負荷低減等に良い効果が得られる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明によるエンジン最適運転制御方法の第2実施形態を図5及び図6に基づいて説明する。なお、第1、第2実施形態は、シリンダ内圧力を計測せずに、掃気圧力(給気圧力)の検出値に基づく制御の場合であり、後述する実施形態3、4はシリンダ内圧力を測定して制御する場合である。
図5は第2実施形態に係る制御構成図で、図6は第2実施形態に係る制御フローチャートである。
図5において、第1実施形態と同一構成は同一符号を付す。第1実施形態と異なる構成は、排気ガスバイパス制御弁開度検出手段26から開度信号が入力され、さらに、エンジンコンローラ25へ燃料噴射タイミング信号、排気弁閉タイミング信号、作動油蓄圧圧力信号(電子制御エンジンにおける燃料ポンプ駆動油の作動油蓄圧圧力)、または、燃料油蓄圧圧力信号(コモンレール式燃料ポンプの燃料蓄圧圧力)が出力される点である。
【0039】
図6に示すフローチャートにおいて、まずステップS11で、コントローラ24には排気ガスバイパス制御弁開度検出手段26から排気ガスバイパス制御弁開度信号Bと、エンジン本体1からのエンジン負荷L、エンジン回転数Ne、及び掃気圧力Psが夫々の検出手段によって検出され、信号として入力される。
次にステップS12において、予めコントローラ24内に用意されたマップ(エンジン負荷L、エンジン回転数Neに対する、最適掃気圧力Ps0、燃料噴射タイミングθinj、排気弁閉タイミングθevc、作動油/燃料油蓄圧圧力マップ)に照らして、各パラメータの最適値を算出する。
すなわち、予めコントローラ24内に用意されたマップは、図2で示すように、エンジン負荷L、エンジン回転数Ne毎それぞれに、圧縮圧力Pcompと燃料噴射タイミングとの座標内に燃料消費率の等高線および筒内最高圧力Pmax上限値を示して、最適運転ポイントとしてP点が設定されるマップをいう。
そして、横軸の圧縮圧力Pcompに代えて、掃気圧力、排気弁閉タイミング、作動油蓄圧圧力(電子制御エンジンにおける燃料ポンプ駆動油の作動油蓄圧圧力)、または、燃料油蓄圧圧力(コモンレール式燃料ポンプの燃料蓄圧圧力)としてもよい。これらマップに基づいて、各パラメータの最適値が算出される。
【0040】
ステップS13において、コントローラ24は掃気圧力検出手段22で検出した掃気圧力PsとステップS12において算出された最適掃気圧力Ps0との差ΔPsを求め、該ΔPsに基づいて開度修正量ΔAを決定する。ステップS14において、ステップS13にて決定した排気ガスバイパス制御弁V3の開度修正量ΔAと現在の開度指令値A’から排気ガスバイパス制御弁V3の新しい制御弁開度Aを決定する。ステップS15において、排気ガスバイパス制御弁V3へ新しい制御弁開度Aに制御する指令をコントローラ24によって出力する。ステップS16において、新しく検出した排気ガスバイパス制御弁V3の検出値Bと、指令値Aとの誤差を算出する。ステップS17において誤差があればステップS14に戻り、誤差に基づいて修正量を算出し、修正を繰返す。
【0041】
検出した排気ガスバイパス制御弁V3の制御弁開度Bが指令値Aの指示通りになると、ステップS11に戻り、掃気圧力Psが最適掃気圧力Ps0を維持するように制御を繰返す。
一方、ステップS18においては、燃料噴射タイミングθinj、排気弁閉タイミングθevc、作動油/燃料油蓄圧圧力マップ夫々からエンジン最適運転維持のための値を信号としてエンジンコントローラ25へ送信して、エンジン本体2の制御を併せて実施する。
【0042】
すなわち、前記したように図2の横軸の圧縮圧力Pに代えて、掃気圧力、排気弁閉タイミング、作動油蓄圧圧力(電子制御エンジンにおける燃料ポンプ駆動油の作動油蓄圧圧力)、または、燃料油蓄圧圧力(コモンレール式燃料ポンプの燃料蓄圧圧力)としたマップによって、最も燃料消費率の少ない最適運転ポイントPが設定された位置に対する、座標縦軸の燃料噴射タイミング、座標横軸の排気弁閉タイミング、作動油蓄圧圧力、燃料油蓄圧圧力の最適値を算出して出力する。
【0043】
電子制御エンジンにおける燃料ポンプ駆動油の作動油蓄圧圧力や、コモンレール式燃料ポンプの燃料蓄圧圧力、さらに、排気弁の閉タイミングは燃料噴射圧力に直接影響を与える。従って、作動油蓄圧圧力や燃料噴射圧力を高く維持できるようにして、シリンダ内における燃料の微細化及び、燃料と空気の混合促進による最適燃焼状態を確保し、熱効率の向上による燃料消費率の低減、燃焼改善による排気ガスの浄化に伴う環境負荷の低減等に良い効果が得られる。
【0044】
また、図6のステップS14〜S17に示すように排ガスバイパス制御弁V3の開度を検出して、フィードバック制御を行うことで、経年劣化などによる指定値と実際の開度のずれを補正することができ、運転条件が最適運転条件からはずれるのを防止できる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明によるエンジン最適運転制御方法の第3実施形態を図7、図8に基づいて説明する。図7は制御構成図、図8は制御フローチャートを示す。
図7に示す制御構成において、前記第2実施形態と同一構成は同一符号を付す。第2実施形態と異なる構成は、シリンダ内圧力検出手段27によるシリンダ内圧力信号がコントローラ28に入力される点である。
【0046】
図8に示すフローチャートにおいて、まずステップS21において、コントローラ28には排気ガスバイパス制御弁V3から検出した排気ガスバイパス制御弁開度信号Bと、エンジン本体1からのエンジン負荷L、エンジン回転数Ne、掃気圧力Psに加え、シリンダ内圧力Pcylを夫々の検出手段によって検出され、信号として入力される。ステップS22において、検出したシリンダ内圧力Pcylのクランク角度履歴より、シリンダ内圧縮圧力(着火前圧力)Pcomp、シリンダ内最高圧力Pmaxを算出する。
次に、ステップS23において、予めコントローラ28内に用意されたマップ(エンジン負荷L、エンジン回転数Neに対する最適掃気圧力Ps0、最適圧縮圧力Pcomp0、最適最高圧力Pmax0のマップ)に照らして、パラメータ最適値を算出する。
ステップS24において、掃気圧力Psと、ステップS23において算出された最適掃気圧力Ps0との差ΔPsを求め、ΔPsに基づいて開度修正量ΔAを決定する。ステップS25において、ステップS24にて決定した排気ガスバイパス制御弁V3の開度修正量ΔAと現状の開度指令値A’から排気ガスバイパス制御弁V3の新しい制御弁開度Aを決定する。
【0047】
ステップS26において、ステップS25にて決定した、排気ガスバイパス制御弁V3への新しい制御弁開度指令値Aに制御する指令をコントローラ28によって出力する。ステップS27において、新しく検出した排気ガスバイパス制御弁V3の値と、指令値の誤差を算出する。ステップS28において、誤差の有無を判定し、誤差があればステップS30において、誤差に基づいて補正量を算出し、ステップS25に戻り、排気ガスバイパス制御弁V3の開度の補正を繰返す。
検出した排気ガスバイパス制御弁V3の制御弁開度Aが指令値の指示通りになると、その後ステップS21に戻り、掃気圧力Psが最適掃気圧力Ps0を維持するように制御を繰返す。
【0048】
一方、ステップS31において、ステップS23で算出したシリンダ内圧縮圧力Pcompと最適圧縮圧力Pcomp0との差ΔPcompに基づいて排気弁閉タイミングの変更量Δθevcを決定する。
同じく、ステップS32で排気弁閉タイミングの変更量Δθevcの決定と並行して、ステップS23で算出した最適最高圧力Pmax0とステップS22で算出したシリンダ内最高圧力Pmaxに基づいて燃料噴射タイミングの変更量Δθinjを決める。
【0049】
ステップS33において、ステップS31で決定した排気弁閉タイミングの変更量Δθevcに基づいて排気弁閉タイミングを決定、ステップS34において、燃料噴射タイミングθinjを決定する。ステップS35において、コントローラ28はエンジンコントローラ25に対して排気弁閉タイミングθevc及び燃料噴射タイミングθinjの修正指令を出す。ステップS36において、狙いの最適最高圧力Pmax0、最適圧縮圧力Pcomp0と、検出したシリンダ内最高圧力Pmax、シリンダ内圧縮圧力Pcompの誤差を算出する。ステップS37において、夫々に誤差があれば、誤差に基づいて修正量を算出して夫々ステップS33と、ステップS34にフィードバックして制御を繰返す。
これにより、エンジンは更にきめ細かい最適運転(燃料消費率が最も少ない)を維持でき、更なる燃料消費率の向上と環境負荷低減が可能となる。
【0050】
また、エンジンのシリンダ内で圧縮される圧縮圧力は掃気圧力と排気弁閉タイミングの2つの因子によって決まる。従って、掃気(給気)圧力を高めつつ排気弁閉タイミングを遅らせる関係を設定することにより、ピストン上昇時の圧縮仕事の低減になり燃費低減効果がえられ、更に、圧縮上死点でのシリンダ内燃焼ガス温度を低下させるため、燃料燃焼時のNOx(窒素酸化物)生成を抑制できるので環境負荷の低減が可能である。
【0051】
また、ステップS24〜S27に示すように掃気圧力が最適圧力となるように、掃気圧力の変化を逐次検出して排気ガスバイパス制御弁の開度を制御することで、排気タービン過給機側への排気ガス量を調整して、エンジン本体への掃気圧力を調整が可能となり、経年劣化などによる指令値と実際の開度とのずれを補正することができ、運転条件が最適運転条件からずれるのを防止することができる。
【0052】
また、エンジンを最適運転状態に維持するための条件の一つに、燃料の燃焼状況が影響する。燃料の燃焼状況はエンジン回転数、エンジンの掃気(給気)圧力、燃料の性状(セタン価、粘度、不純物の混合等)等に影響され燃料の着火時期、燃料の微細化状況等で燃焼速度が変わるので、ステップS31〜S37に示すように、シリンダ内圧力〔圧縮圧力Pcompと、最高圧力(燃焼圧力)Pmax〕を直接検知して、検出した圧縮圧力Pcompと、最高圧力(燃焼圧力)Pmaxとがそれぞれ、エンジン運転状態がエンジン負荷に対するマップの最適運転状態の値になるよう排気ガスバイパス制御弁開度及び燃料噴射タイミング、排気弁閉タイミングを制御することで、燃料の性状の変化や経年変化によるシリンダ内圧力の低下に対してもエンジンの最適運転(燃料消費率が最も少ない運転)が維持できる。
尚、圧縮圧力Pcompと、最高圧力Pmaxとをそれぞれ最適値に制御するのでなく、Pmax/Pcompの比をとり、エンジン負荷に対して与えられる最適マップ比となるように排気ガスバイパス制御弁を制御することも可能である。
【0053】
(第4実施形態)
次に、本発明によるエンジン最適運転制御方法の第4実施形態を図7、図9に基づいて説明する。図7は制御構成図であり、第3実施形態と同様である。図9は制御フローチャートを示す。
図9において、まず、ステップS41において、コントローラ29にはエンジン本体1からのエンジン負荷L、エンジン回転数Ne、掃気圧力Ps、シリンダ内圧力Pcylに加え、排気ガスバイパス制御弁V3の検出値を夫々の検出手段によって検出され、信号として入力される。ステップS42において、検出したシリンダ内圧力Pcylのクランク角度履歴より、シリンダ内圧縮圧力Pcomp、シリンダ内最高圧力Pmaxを算出する。
ステップS43において、予めコントローラ29内に用意されたマップ(エンジン負荷L、エンジン回転数Neに対する最適圧縮圧力Pcomp0、最適最高圧力Pmax0のマップ)に照らして、パラメータ最適値を算出する。
【0054】
ステップS44において、コントローラ29はシリンダ内圧縮圧力Pcompと最適圧縮圧力Pcomp0、との差ΔPcompに基づいて排気ガスバイパス制御弁V3の開度の変更量ΔAを決定する。ステップS45において、ステップS44にて決定した排気ガスバイパス制御弁V3の開度修正量ΔAと現在の開度指令値A’から排気ガスバイパス制御弁V3の新しい制御弁開度指令値Aを決定する。ステップS46において、ステップS45にて、排気ガスバイパス制御弁V3へ新しい制御弁開度Aに制御する指令をコントローラ29によって出力する。
【0055】
ステップS47において、最適圧縮圧力Pcomp0、と新しく検出したシリンダ内圧縮圧力Pcompとを比較して、その誤差を算出する。そして、ステップS48で、排気ガスバイパス制御弁V3の開度が0又は開かを判断する。排気ガスバイパス制御弁V3の開度A≠0 即ち開いている場合は、ステップS49において、誤差に基づいた排気ガスバイパス制御弁V3の開度補正量を算出する。その結果をステップS45に反映させて排気ガスバイパス制御弁V3の開度制御を実施する。一方、ステップS48において、開度A=0即ち閉じている場合は、ステップS50において、シリンダ内圧縮圧力Pcompの誤差に基づいて排気弁閉タイミング補正量Δθevcを算出する。ステップS51において、排気弁閉タイミングθevcを決定する。
【0056】
ステップS52において、ステップS43で算出したシリンダ内最高圧力Pmaxと最適最高圧力Pmax0の差に基づいて燃料噴射タイミングの変更量Δθinjを決定する。ステップS53において、燃料噴射タイミングθinjを決定する。ステップS54において、コントローラ29はエンジンコントローラ25へステップS51で決定した排気弁閉タイミングθevcと、ステップS53で決定した燃料噴射タイミングθinjの制御指令を出す。
【0057】
ステップS55において、目標の最適最高圧力Pmax0、最適圧縮圧力Pcomp0と、検出したシリンダ内最高圧力Pmax、シリンダ内圧縮圧力Pcompの差を算出する。
その結果シリンダ内最高圧力Pmaxが目標の最適最高圧力Pmax0との誤差がある場合は
ステップS56において、シリンダ内最高圧力Pmaxの誤差に基づいて燃料噴射タイミングの変更量Δθinjを算出し、ステップS53に戻って、上記Pmaxの誤差に基づいてあらためて燃料噴射タイミングθinjを決定し、エンジンコントローラ25へ信号を出力する。
一方、シリンダ内圧縮圧力Pcomp目標の最適圧縮圧力Pcomp0との誤差がある場合はステップS50に戻って、最適圧縮圧力Pcomp0との誤差に基づいて排気弁閉タイミングθevcの補正量を算出しなおす。
【0058】
経年劣化などにより排気ガスバイパス制御弁指令値と実際の弁開度とのずれが生じて掃気圧力が低下した場合、あるいは排気弁シート部が摩耗した場合、圧縮圧力が低下するためエンジン性能が低下する。ステップS44〜S48に示すように、シリンダ内の燃焼圧力を直接検知して、シリンダ内圧縮圧力Pcompが所定の値になるよう排気ガスバイパス制御弁を制御することで、エンジンの実運転条件が経年変化によって最適運転からずれるのを防止することができる。
これにより、エンジンは更にきめ細かい最適運転(燃料消費率が最も少ない)を維持でき、更なる燃料消費率の向上と環境負荷低減が可能となる。
【0059】
また、シリンダ内圧力〔圧縮圧力Pcompと、最高圧力(燃焼圧力)Pmax〕を直接検知して、検出した圧縮圧力Pcompと、最高圧力(燃焼圧力)Pmaxとがそれぞれ、エンジン運転状態がエンジン負荷に対するマップの最適運転状態の値になるよう排気ガスバイパス制御弁開度、燃料噴射タイミング、排気弁閉タイミングを制御することで、燃料の性状が変化してもエンジンの最適運転(燃料消費率が最も少ない運転)が維持できる。
【0060】
また、排気ガスバイパス制御弁V3の開度が全閉状態の場合においても、排気弁閉タイミングを制御することでシリンダ内圧縮圧力Pcompを最適圧縮圧力Pcomp0に制御できるので、パラメータ最適値への制御を確実に行うことができる。
【0061】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、適宜必要に応じて変形実施及び変更実施することができる。
また上述した実施形態では排気タービン過給機3、パワータービン4、蒸気タービン5を夫々1台ずつ備えた排気エネルギー回収装置を一具体例として説明したが、本発明はこのようなものに限定されるものではなく、例えば排気タービン過給機3を2台、パワータービン4と、パワータービンの入力側に排気ガスの流入量を調整する可変ノズルを備えて回転数を制御するパワータービン等を適用することも可能である。
【0062】
また、本発明の実施形態によると、ガス入口制御弁V1、蒸気流量調整弁V2、排気ガスバイパス制御弁V3及び、蒸気バイパス流量制御弁V4きめ細かく調整することにより、パワータービン4及び蒸気タービン5の運転夫々を無段階に調整できるので、発電機11の発電量の調整幅が大きくなるため、船内での電力消費量が大きく変化しても、制御用抵抗器13の容量が小さく、小型化したものを採用できるのでコスト的にも有利である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明では、エンジンの排気エネルギーをパワータービン及び蒸気タービンを減速機とカップリングで直列に連結して、発電機を駆動して船内へ電力として供給したが、エアーアクチュエータの動力源として圧縮空気をエアタンクに蓄えることもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 舶用ディーゼル機関
2 ディーゼルエンジン本体(エンジン本体)
3 排気タービン過給機
3a タービン部
3b コンプレッサ部
4 パワータービン
5 蒸気タービン
7 排気マニホールド
8 給気マニホールド
9 熱交換器
11 発電機
13 制御用抵抗器
18 インタークーラ
L1 第1排気管
L2 第2排気管
L3 第3排気管
L5 第5排気管
K1 第1給気管
K2 第2給気管
V1 ガス入口制御弁
V2 蒸気流量調整弁
V3 排気ガスバイパス制御弁
V4 蒸気バイパス流量制御弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを駆動する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスによって排気タービン過給機を駆動することで外気をエンジン本体に圧送する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスの一部を抽気し、該抽気された排気ガスによってパワータービンを駆動することで電力を生成する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記抽気された排気ガスの流量を絞るガス入口制御弁によって前記パワータービンに流入する排気ガスの流量を調整する工程と、前記ガス入口制御弁の上流に設置され、前記抽気された排気ガスの一部を前記パワータービン下流側にバイパスするバイパス管と、該バイパス管に設置された排気ガスバイパス制御弁によって前記パワータービンを迂回する排気ガスの流量を調整する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収方法において、
エンジンの負荷、エンジンの回転数、およびエンジンの掃気圧力を検出する工程と、
前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるエンジンの最適掃気圧力を算出する工程と、
前記検出したエンジンの掃気圧力と前記算出したエンジンの最適掃気圧力との差を求めた後に、該差に基づいて前記排気ガスバイパス制御弁の開度修正量を算出する工程と、
前記算出された排気ガスバイパス制御弁の開度修正量から前記排気ガスバイパス制御弁の開度指令値を決定する工程と、
を備えたことを特徴とするエンジン排気エネルギー回収方法。
【請求項2】
エンジンを駆動する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスによって排気タービン過給機を駆動することで外気をエンジン本体に圧送する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスの一部を抽気し、該抽気された排気ガスによってパワータービンを駆動することで電力を生成する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記抽気された排気ガスの流量を絞るガス入口制御弁によって前記パワータービンに流入する排気ガスの流量を調整する工程と、前記ガス入口制御弁の上流に設置され、前記抽気された排気ガスの一部を前記パワータービン下流側にバイパスするバイパス管と、該バイパス管に設置された排気ガスバイパス制御弁によって前記パワータービンを迂回する排気ガスの流量を調整する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収方法において、
エンジンの負荷、エンジンの回転数、およびエンジンの掃気圧力を検出する工程と、
前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるエンジンの最適掃気圧力を算出する工程と、
前記検出したエンジンの掃気圧力と前記算出したエンジンの最適掃気圧力との差を求めた後に、該差に基づいて前記排気ガスバイパス制御弁の開度修正量を算出する工程と、
前記算出された排気ガスバイパス制御弁の開度修正量から前記排気ガスバイパス制御弁の開度指令値を決定する工程と、
前記決定された排気ガスバイパス制御弁の開度指令値に基づき、排気ガスバイパス制御弁の開度を変更する工程と、を備え、
さらに前記変更された排気ガスバイパス制御弁の開度を検出する工程と、
前記決定された排気ガスバイパス制御弁の開度指令値と前記検出された排気ガスバイパス制御弁の開度との誤差を算出する工程と、
前記算出された誤差を前記排気ガスバイパス制御弁の開度指令値にフィードバックする工程と、
を備えたことを特徴とするエンジン排気エネルギー回収方法。
【請求項3】
前記誤差を算出する工程において、前記決定された排気ガスバイパス制御弁の開度指令値と前記排気ガスバイパス制御弁の開度が一致した場合に、前記エンジンの掃気圧力が前記エンジンの燃料消費率が最も少なくなるエンジンの最適掃気圧力を維持する工程と、を備えたことを特徴とする請求項2に記載のエンジン排気エネルギー回収方法。
【請求項4】
エンジンを駆動する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスによって排気タービン過給機を駆動することで外気をエンジン本体に圧送する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスの一部を抽気し、該抽気された排気ガスによってパワータービンを駆動することで電力を生成する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記抽気された排気ガスの流量を絞るガス入口制御弁によって前記パワータービンに流入する前記抽気された排気ガスの流量を調整する工程と、前記ガス入口制御弁の上流に設置され、前記抽気された排気ガスの一部を前記パワータービン下流側にバイパスするバイパス管と、該バイパス管に設置された排気ガスバイパス制御弁によって前記パワータービンを迂回する排気ガスの流量を調整する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収方法において、
エンジンの負荷、エンジンの回転数、エンジンの掃気圧力、およびエンジンのシリンダ内圧力を検出する工程と、
前記検出したエンジンのシリンダ内圧力からシリンダ内圧縮圧力を算出する工程と、
前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるシリンダ内最適圧縮圧力を算出する工程と、
前記算出したシリンダ内圧縮圧力と前記算出したシリンダ内最適圧縮圧力との差を求めた後に、該差に基づいて排気弁閉タイミングの変更量を算出する工程と、
前記算出した排気弁閉タイミングの変更量から排気弁閉タイミングを決定する工程と、
前記決定した排気弁閉タイミングに基づき、排気弁閉タイミングを変更する工程と、を備え、
さらに 排気弁閉タイミングを変更した後のエンジンのシリンダ内圧縮圧力を検出する工程と、
前記検出した 排気弁閉タイミングを変更した後のエンジンのシリンダ内圧縮圧力と前記シリンダ内最適圧縮圧力との誤差を算出する工程と、
前記算出された誤差を前記排気弁閉タイミング指令値にフィードバックする工程と、
を備えたことを特徴とするエンジン排気エネルギー回収方法。
【請求項5】
エンジンを駆動する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスによって排気タービン過給機を駆動することで外気をエンジン本体に圧送する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスの一部を抽気し、該抽気された排気ガスによってパワータービンを駆動することで電力を生成する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記抽気された排気ガスの流量を絞るガス入口制御弁によって前記パワータービンに流入する前記抽気された排気ガスの流量を調整する工程と、前記ガス入口制御弁の上流に設置され、前記抽気された排気ガスの一部を前記パワータービン下流側にバイパスするバイパス管と、該バイパス管に設置された排気ガスバイパス制御弁によって前記パワータービンを迂回する排気ガスの流量を調整する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収方法において、
エンジンの負荷、エンジンの回転数、エンジンの掃気圧力、およびエンジンのシリンダ内圧力を検出する工程と、
前記検出したエンジンのシリンダ内圧力からシリンダ内最高圧力を算出する工程と、
前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるシリンダ内最適最高圧力を算出する工程と、
前記算出したシリンダ内最高圧力と前記算出したシリンダ内最適最高圧力との差を求めた後に、該差に基づいて燃料噴射タイミングの変更量を算出する工程と、
前記算出した燃料噴射タイミングの変更量から燃料噴射タイミングを決定する工程と、
前記決定した燃料噴射タイミングに基づき、燃料噴射タイミングを変更する工程と、を備え、
さらに燃料噴射タイミングを変更した後のエンジンのシリンダ内最高圧力を検出する工程と、
前記検出した燃料噴射タイミングを変更した後のエンジンのシリンダ内最高圧力と前記シリンダ内最適最高圧力との誤差を算出する工程と、
前記算出された誤差を前記燃料噴射タイミング指令値にフィードバックする工程と、
を備えたことを特徴とするエンジン排気エネルギー回収方法。
【請求項6】
エンジンを駆動する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスによって排気タービン過給機を駆動することで外気をエンジン本体に圧送する工程と、前記エンジンから排出される排気ガスの一部を抽気し、該抽気された排気ガスによってパワータービンを駆動することで電力を生成する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収装置の運転方法であって、
前記抽気された排気ガスの流量を絞るガス入口制御弁によって前記パワータービンに流入する前記抽気された排気ガスの流量を調整する工程と、前記ガス入口制御弁の上流に設置され、前記抽気された排気ガスの一部を前記パワータービン下流側にバイパスするバイパス管と、該バイパス管に設置された排気ガスバイパス制御弁によって前記パワータービンを迂回する排気ガスの流量を調整する工程と、を備えたエンジン排気エネルギー回収方法において、
エンジンの負荷、エンジンの回転数、エンジンの掃気圧力、およびエンジンのシリンダ内圧力を検出する工程と、
前記検出したエンジンのシリンダ内圧力からシリンダ内圧縮圧力、およびシリンダ内最高圧力を算出する工程と、
前記検出したエンジンの負荷、およびエンジンの回転数からエンジンの燃料消費率が最も少なくなるシリンダ内最適圧縮圧力、およびシリンダ内最適最高圧力を算出する工程と、
前記算出したシリンダ内圧縮圧力と前記シリンダ内最適圧縮圧力との差を求めた後に、該差に基づいて前記排気ガスバイパス制御弁の開度修正量を算出する工程と、
前記算出された排気ガスバイパス制御弁の開度修正量から前記排気ガスバイパス制御弁の開度指令値を決定する工程と、
前記決定された排気ガスバイパス制御弁の開度指令値に基づき、排気ガスバイパス制御弁の開度を変更する工程と、を備え、
さらに排気ガスバイパス制御弁の開度を変更した後のエンジンのシリンダ内圧縮圧力を検出する工程と、
前記検出した排気ガスバイパス制御弁の開度を変更した後のエンジンのシリンダ内圧縮圧力と前記シリンダ内最適圧縮圧力との誤差を算出する工程と、
前記変更された排気ガスバイパス弁の開度が全閉か否かを判断し、全閉の場合には前記算出された誤差に基づいてエンジンの排気弁閉タイミングを決定する工程と、
前記シリンダ内最高圧力と前記シリンダ内最適最高圧力との差に基づいて、エンジンの燃料噴射タイミングを決定する工程と、
前記決定されたエンジンの排気弁閉タイミング、および前記決定されたエンジンの燃料噴射タイミングに基づき、エンジンの排気弁閉タイミング、および前記決定されたエンジンの燃料噴射タイミングを変更する工程と、
を備えたことを特徴とするエンジン排気エネルギー回収方法。
【請求項7】
エンジンの排気弁閉タイミング、およびエンジンの燃料噴射タイミングを変更した後のシリンダ内圧縮圧力、およびシリンダ内最高圧力を検出する工程と、
前記算出されたシリンダ内最適最高圧力と前記エンジンの排気弁閉タイミング、およびエンジンの燃料噴射タイミングを変更した後のシリンダ内最高圧力とに誤差がある場合は、該誤差に基づいて、燃料弁噴射タイミング補正量を決定し、該燃料弁噴射タイミング補正量をフィードバックすることで燃料噴射タイミングを決定する工程と、
前記算出されたシリンダ内最適圧縮圧力とエンジンの排気弁閉タイミング、およびエンジンの燃料噴射タイミングを変更した後のシリンダ内圧縮圧力とに誤差がある場合は、該誤差に基づいて、排気弁閉タイミング補正量を決定し、該排気弁閉タイミング補正量をフィードバックすることで排気弁閉タイミングを決定する工程と、
を備えたことを特徴とする請求項6に記載のエンジン排気エネルギー回収方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83271(P2013−83271A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−19676(P2013−19676)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2009−150571(P2009−150571)の分割
【原出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】