説明

ガラス基板の欠陥検査方法、ガラス基板の欠陥検査装置、及びガラス基板の製造方法

【課題】従来よりもガラス基板の欠陥の検査感度を向上可能であり、かつ、欠陥を検査する時間を短縮できるガラス基板の欠陥検査方法及び欠陥検査装置、並びに、前記欠陥検査方法又は前記欠陥検査装置を用いたガラス基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本ガラス基板の欠陥検査方法の一形態は、第1主平面及びその対向面である第2主平面を有するガラス基板に、複数方向から光を順次照射し、前記ガラス基板の画像を順次撮像する順次撮像工程と、前記順次撮像工程で順次撮像した各ガラス基板の画像に基づいて、前記ガラス基板の前記第1主平面及び前記第2主平面の欠陥の有無を検査する欠陥検査工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の欠陥の有無等を検査するガラス基板の欠陥検査方法及びガラス基板の欠陥検査装置、並びに、前記欠陥検査方法又は前記欠陥検査装置を用いた検査工程を有するガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス基板は様々な用途に用いられている。例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等の外部記憶装置であるハードディスクドライブ(HDD)には、コンピュータ用ストレージ等として周知の磁気記録媒体が搭載されており、この磁気記録媒体用の基板としてガラス基板が用いられている。
【0003】
このようなガラス基板を製造する際に、ガラス基板の製造工程においてガラス基板の主平面に傷等の欠陥が形成される場合がある。傷等の欠陥が形成されたガラス基板が研磨工程において研磨装置に投入されると、研磨中にガラス基板が破損するおそれがある。又、ガラス基板の主平面に形成された傷が深く、研磨工程において傷を充分に除去できなかった場合、最終製品として完成したガラス基板製品の主平面に傷が残留する。主平面に傷が残留したガラス基板を磁気記録媒体等に用いると、磁気記録媒体等の性能を十分に発揮できないおそれがある。
【0004】
従って、ガラス基板の主平面に形成された傷等の欠陥は早期に発見する必要があり、ガラス基板の製造工程においてガラス基板の欠陥検査が行われている。このような欠陥検査は、例えば、目視で行われている。又、目視以外の方法として、ガラス基板に光を照射し、照射した光の反射光を撮像装置で撮像し、撮像した画像に基づいて欠陥の有無等を自動検査する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−276641号公報
【特許文献2】特開2009−288089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、目視による検査は人間が行うため、欠陥検査の精度にばらつきがあり、微細な欠陥を見逃す等の問題があった。又、従来から提案されている欠陥の自動検査では、欠陥の検査感度が不充分であり、検査に時間を要する問題もあった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、従来よりもガラス基板の欠陥の検査感度を向上可能であり、かつ、欠陥を検査する時間を短縮できるガラス基板の欠陥検査方法及びガラス基板の欠陥検査装置、並びに、前記欠陥検査方法又は前記欠陥検査装置を用いた検査工程を有するガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本ガラス基板の欠陥検査方法の一形態は、第1主平面及びその対向面である第2主平面を有するガラス基板に対し、複数方向から光を順次照射し、前記ガラス基板の画像を順次撮像する順次撮像工程と、前記順次撮像工程で順次撮像した各ガラス基板の画像に基づいて、前記ガラス基板の前記第1主平面及び前記第2主平面の欠陥の有無を検査する欠陥検査工程と、を有することを要件とする。
【0009】
本ガラス基板の欠陥検査方法の他の形態は、第1主平面及びその対向面である第2主平面を有し、前記第1主平面から前記第2主平面に貫通する円孔を中央部に有するガラス基板に、前記第1主平面又は前記第2主平面の何れか一方の主平面側から光を照射し、前記ガラス基板からの透過光を撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像したガラス基板の透過光画像に基づいて、前記ガラス基板の内周端及び外周端の欠陥の有無を検査する欠陥検査工程と、を有することを要件とする。
【0010】
本ガラス基板の欠陥検査装置は、第1主平面及びその対向面である第2主平面を有するガラス基板に対し、複数方向から光を順次照射する第1照明手段と、前記第1照明手段から前記ガラス基板に順次照射された光により得たガラス基板の画像を順次撮像する撮像手段と、前記撮像手段が順次撮像した各ガラス基板の画像に基づいて、前記ガラス基板の前記第1主平面及び前記第2主平面の欠陥の有無を検査する画像処理手段と、を有することを要件とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりも欠陥の検査感度を向上可能であり、かつ、欠陥を検査する時間を短縮できるガラス基板の欠陥検査方法及びガラス基板の欠陥検査装置、並びに、前記欠陥検査方法又は前記欠陥検査装置を用いた検査工程を有するガラス基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ガラス基板を例示する断面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る欠陥検査装置を例示する模式図である。
【図3】図2の欠陥検査装置の第2照明手段について説明するための平面図である。
【図4】図2の欠陥検査装置の第1照明手段について説明するための平面図である。
【図5】ガラス基板に対して斜め方向から光が入射する様子を例示する模式図である。
【図6】第1の実施の形態に係る欠陥検査方法を例示するフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態に係る画像処理について説明するための平面図であり、図7(A)は領域51及び欠陥検出領域52について、図7(B)及び図7(C)は欠陥検出領域52及びピクセル53について説明するための図である。
【図8】照明方向による欠陥の画像の相違について説明するための図である。
【図9】第1の実施の形態に係るガラス基板の製造工程を例示するフローチャートである。
【図10】図2の欠陥検査装置の第1照明手段の他の例について説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0014】
〈第1の実施の形態〉
[ガラス基板]
まず、欠陥検査の対象となるガラス基板90について説明する。図1は、ガラス基板を例示する断面図である。ガラス基板90は、磁気記録媒体(磁気ディスク)用のガラス基板であり、円盤の中央部に平面形状が円形の円孔95が形成された構造を有する。ガラス基板90の第1主平面91と第2主平面92とは互いに対向しており、第1主平面91及び第2主平面92との間に形成される内周端93及び外周端94には面取り加工が施されている。
【0015】
なお、図1では、ガラス基板90として磁気記録媒体用のガラス基板を例示しているため、円盤の中央部に円孔を有するように描かれているが、本実施の形態において欠陥検査の対象となるガラス基板は磁気記録媒体用ガラス基板には限定されない。すなわち、本実施の形態において欠陥検査の対象となるガラス基板は円盤形状に限定されず、例えば、平面形状が矩形状のガラス基板等であっても構わない。但し、以降の説明は、ガラス基板90が磁気記録媒体用のガラス基板である場合を例にして行う。
【0016】
[ガラス基板の欠陥検査装置]
次に、ガラス基板の欠陥検査装置10について説明する。図2は、第1の実施の形態に係る欠陥検査装置を例示する模式図である。図3は、図2の欠陥検査装置の第2照明手段について説明するための平面図である。図4は、図2の欠陥検査装置の第1照明手段について説明するための平面図である。図5は、ガラス基板に対して斜め方向から光が入射する様子を例示する模式図である。なお、図2〜図5において、後述する載置部60がガラス基板90を載置する面の一方向をX方向、それに垂直な方向をY方向、載置部60がガラス基板90を載置する面に垂直な方向(X方向及びY方向に垂直な方向)をZ方向とする(以降の図についても同様)。
【0017】
図2〜図4を参照するに、欠陥検査装置10は、大略すると、第2照明手段20と、第1照明手段30と、撮像手段40と、画像処理手段50と、載置部60とを有する。70は入力手段、80は出力手段を示している。
【0018】
欠陥検査装置10において、第2照明手段20は、ガラス基板90を下側から照明する機能を有し、図3に示すように、平面視において、ガラス基板90よりも十分に広い領域を照明可能とされている。なお、本実施の形態では、便宜上、ガラス基板90の撮像手段40側を上側、その反対側を下側と称することにする。
【0019】
第2照明手段20としては、例えば、可視光のほぼ全域において強度を有する白色のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)が複数個並設されたLEDアレイ等を用いることができる。第2照明手段20を構成する各LEDの個数は任意に設定して構わないが、ガラス基板90の全域を漏れなく照明できる程度に密に配置し、ガラス基板90の全域にわたって均質に照明可能とすることが好ましい。第2照明手段20とガラス基板90との間に、必要に応じて拡散板や偏向板等の光学部品を配置しても構わない。例えば、第2照明手段20とガラス基板90との間に拡散板を配置することにより均質な照明が可能となり、偏向板を配置することにより第1照明手段30が点灯した際の載置部60や第2照明手段20等からの反射を低減できる。
【0020】
なお、白色のLEDを用いる理由は、撮像手段40でカラー画像を撮像する場合に、特定色のLEDを用いると、その色がノイズ成分となるからである。例えば、撮像手段40で白黒画像を撮像する場合には、青色LED等の特定色のLEDを用いることができる。但し、第2照明手段20はLEDには限定されず、LEDに代えて、例えば、有機EL素子(Organic Electro-Luminescence素子)、ハロゲンランプ、キセノンランプ、冷陰極管等の蛍光灯等を用いても構わない。第2照明手段20を構成する各LED等は、ガラス基板90の主平面を略垂直方向から照射する。
【0021】
第1照明手段30は、ガラス基板90を上側から照明する機能を有し、図4に示すように、平面視において、照明部31〜34がガラス基板90を囲むように配置されている。照明部31〜34としては、第2照明手段20と同様に、例えば、可視光のほぼ全域において強度を有する白色のLEDが複数個並設されたLEDアレイ等を用いることができる。
【0022】
照明部31〜34を構成する各LEDの個数は任意に設定して構わないが、ガラス基板90の全域を漏れなく照明できる程度に密に配置し、ガラス基板90の全域にわたって均質に照明可能とすることが好ましい。照明部31〜34とガラス基板90との間に、必要に応じて拡散板等の光学部品を配置してもよい。又、照明部31〜34はLEDには限定されず、LEDに代えて、例えば、有機EL素子(Organic Electro-Luminescence素子)、ハロゲンランプ、キセノンランプ、冷陰極管等の蛍光灯等を用いてもよい。
【0023】
照明部31〜34を構成する各LEDは、ガラス基板90を斜め方向から照射する。言い換えれば、図5に示すように、照明部31〜34を構成する各LEDから照射される光は、XY平面上にあるガラス基板90に対して斜め方向から入射する。ガラス基板90に対して斜め方向から入射した光は、ガラス基板90内で反射を繰り返し、ガラス基板90から出射される。従って、ガラス基板90の第1主平面91や第2主平面92に傷や異物等の欠陥が存在しない場合には、傷や異物等の欠陥による光の散乱は発生しない。一方、ガラス基板90の第1主平面91や第2主平面92に傷や異物等の欠陥が存在する場合には、ガラス基板90への入射光が欠陥で散乱し、散乱光の一部が撮像手段40方向に向かうため欠陥の検査が可能となる。但し、鉛直方向(撮像手段40方向)に向かった散乱光のみを検出している訳ではなく、傷や異物等の欠陥で散乱して斜め方向に向かう光であっても、一定の輝度があれば撮像手段40でとらえる事ができる。なお、照明部31〜34は順次点灯し、全ての照明部を同時には点灯させない。
【0024】
なお、ガラス基板90へ入射する光の角度(XY平面となす角度)は、0〜60度程度とすることが好ましい。但し、0度とした場合(エッジライトと称する場合がある)には、ガラス基板90の外周端94に略垂直に光が入射されるため、ハレーションが発生するおそれがある。特に、入射光の減衰量の多い擦りガラス(不透明)に比べて、入射光の減衰量の少ない鏡面ガラス(透明)の場合にハレーションが発生し易いため、ガラス基板90へ入射する光の角度は、0度を超え、60度以下の範囲内で適切な入射角度を選定して、斜め方向から光を照射することが好ましい。
【0025】
撮像手段40は、X方向及びY方向に並設された複数の受光素子を備え(例えば、500万画素)、第2照明手段20からガラス基板90に照射された光の透過光の光量を取得し、画像を撮像する機能を有する。又、撮像手段40は、第1照明手段30からガラス基板90に照射された光の拡散反射光(欠陥での散乱光)の光量を取得し、画像を撮像する機能を有する。撮像手段40は、ガラス基板90の主平面に対して略垂直方向(ガラス基板90を介して第2照明手段20と対向する位置)に配置されている。
【0026】
撮像手段40としては、例えばMOS(Metal Oxide Semiconductor Device)、CMOS(Complimentary Metal Oxide Semiconductor Device)、CCD(Charge Coupled Device)、CIS(Contact Image Sensor)等を用いることができる。カラー画像を対象とする場合には、RGBの各色に感度を有する3ラインタイプ等の撮像素子を用いれば良い。
【0027】
第2照明手段20を用いてガラス基板90に垂直方向から光を照射し、ガラス基板90に照射された光の透過光の光量を撮像手段40で取得して画像を撮像することにより、ガラス基板90の内周端93及び外周端94のチッピング等の欠陥を検査できる。なお、チッピングとは、ガラス基板90の欠けである。又、第1照明手段30の照明部31〜34を用いてガラス基板90に斜め方向から光を順次照射し、ガラス基板90に照射された光の拡散反射光(欠陥での散乱光)の光量を撮像手段40で取得して画像を順次撮像することにより、ガラス基板90の第1主平面91及び第2主平面92の欠陥を検査できる。この際、ガラス基板90の表裏を反転させることなくガラス基板90の第1主平面91及び第2主平面92の欠陥を一括で検査できるため、欠陥を検査する時間を短縮できる。
【0028】
画像処理手段50は、撮像手段40が撮像した画像に基づいて各種の演算処理を実行し、欠陥を検査する機能を有する。又、欠陥を検査する機能に加えて、画像処理手段50は、撮像手段40が撮像した画像に基づいて、ガラス基板90の同芯度、真円度、内径、外径等を計測する機能を有してもよい。
【0029】
画像処理手段50は、図示しないCPU、ROMやRAM等のメモリ等を有する。画像処理手段50の図示しないメモリには、欠陥を検査するためのプログラム等が記録されており、このプログラムが図示しないCPUにより実行されることで、画像処理手段50の各種機能が実現される。但し、欠陥を検査するためのプログラム等は、光記録媒体や磁気記録媒体等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されていても構わない。画像処理手段50の具体的な機能に関しては、後述するガラス基板の欠陥検査方法の中で説明する。
【0030】
載置部60は、ガラス基板90を載置する部材である。載置部60は、第2照明手段20から照射された光を透過する必要があるため、第2照明手段20の照射光に対して透明な部材を用いる必要がある。又、載置部60は、ガラス基板90に損傷を与えないために、ある程度柔軟な材料から構成することが好ましい。載置部60としては、例えば、アクリル板等を用いることができる。なお、ガラス基板90は載置部60上に載置するだけでよく、特に固定する必要はない。但し、第2照明手段20や第1照明手段30からの照射光に悪影響を及ぼさないものであれば、載置部60上にガラス基板90を固定するためのチャッキングを設け、ガラス基板90を固定してもよい。
【0031】
入力手段70は、例えば、欠陥検査装置10に対してガラス基板90の欠陥検査の開始を指示するスタートスイッチや、欠陥検査装置10に対してガラス基板90の欠陥検査の終了を指示するストップスイッチ等が設けられた部分である。但し、例えば、載置部60を往復動可能に構成されたトレイ上に設け、載置部60にガラス基板90を載置してトレイを押し込むとトレイが自動的に挿入されて所定位置で止まり自動的に欠陥検査が開始され、欠陥検査が終了すると自動的にトレイが排出されるようなシステムとしても構わない。出力手段80は、例えば、欠陥検査装置10が検査した欠陥に関する情報を表示するモニタや、欠陥検査装置10が検査した欠陥に関する情報を印刷するプリンタ、或いは、欠陥無(良品)であれば青、欠陥有(不良品)であれば赤を表示する表示管等である。
【0032】
なお、欠陥検査装置10の検査対象となるガラス基板90の表面は、擦りガラス状、又は鏡面状態であるが、欠陥検査装置10はガラス基板90の表面粗さによらず、何れの状態であっても検査可能である。又、欠陥検査装置10で欠陥検査可能なガラス基板90の厚さは、10mm程度以下である。但し、第2照明手段20や第1照明手段30の輝度を十分に確保できれば、10mm以上の厚さのガラス基板の欠陥検出も可能である。
【0033】
[ガラス基板の欠陥検査方法]
次に、欠陥検査装置10を用いてガラス基板90の欠陥検査を行う方法について説明する。図6は、第1の実施の形態に係る欠陥検査方法を例示するフローチャートである。まず、ステップS100では、ガラス基板90を載置部60上に載置し、入力手段70のスタートスイッチを押す。なお、前述のように、載置部60を往復動可能に構成されたトレイ上に設け、載置部60にガラス基板90を載置してトレイを押し込むと自動的に欠陥検査が開始されるようにしても構わない。
【0034】
入力手段70のスタートスイッチが押されると、まず、ステップS110〜S140で、ガラス基板90の欠陥の1つである内周端93及び外周端94のチッピング等の欠陥を検査する。具体的には、ステップS110では、第2照明手段20を点灯してガラス基板90に下側から光を照射し、ガラス基板90からの透過光を撮像手段40で撮像する。そして、第2照明手段20を消灯する。
【0035】
ステップS120では、画像処理手段50は、ステップS110で撮像した画像を処理する。具体的には、画像処理手段50は、ステップS110で撮像したガラス基板90の画像を複数の欠陥検出領域に分割して各欠陥検出領域の色平均値を算出し、各欠陥検出領域において、隣接する全欠陥検査領域との色平均値の差である欠陥度を算出する。そして、算出した欠陥度に基づいて、欠陥が存在する欠陥検出領域を認識する。この場合には、ガラス基板90の内周端93及び外周端94のチッピング等の欠陥を検査するので、内周端93及び外周端94近傍を複数の欠陥検出領域に分割して、欠陥が存在する欠陥検出領域を認識する。
【0036】
処理の一例を挙げると、図7(A)に示すように、画像処理手段50は、例えば、9個の欠陥検出領域52を含む領域51を選択する。図7(B)に示すように、各欠陥検出領域52は、例えば、9個のピクセル53(各ピクセル53は画像の最小単位)から構成されている。撮像手段40の解像度が500万画素である場合には、1ピクセル(各ピクセル53)は、約40μm程度に相当する。なお、領域51が9個以外の個数の欠陥検出領域52を含むようにしてもよく、又、各欠陥検出領域52が9個以外の個数のピクセル53を含むようにしてもよい。
【0037】
次に、画像処理手段50は、領域51に含まれる9個の欠陥検出領域52それぞれの色平均値を算出し、中央の欠陥検出領域52と、それに隣接する8個の欠陥検出領域52との色平均値の差である欠陥度をそれぞれ算出する。そして、算出した8個の欠陥度の最大値が所定の判定値以上であれば、その欠陥検出領域52内に欠陥が存在すると認識する。
【0038】
撮像手段40がカラーカメラである場合には、輝度(RGB)を平均化した値が色平均値であり、所定の欠陥検出領域52と、それに隣接する欠陥検出領域52との色平均値の差は色差として表すことができる。この色差が欠陥度となる。例えば、所定の欠陥検出領域52の輝度(RGB)をRGB各256階調で認識したときの値を(r1、g1、b1)とする。又、それに隣接する1つの欠陥検出領域52の輝度(RGB)を同様にRGB各256階調で認識したときの値を(r2、g2、b2)とする。このとき、色差=√(r1−r2)+(g1−g2)+(b1−b2)となり、色差(=欠陥度)を3次元空間上の距離として表すことができる。
【0039】
このようにして、領域51の中央の欠陥検出領域52と、それに隣接する8個の欠陥検出領域52との色差(=欠陥度)を3次元空間上の距離として表し、その最大値が所定の判定値以上であれば、その欠陥検出領域52内に欠陥が存在すると認識する。次に、図7(C)に示すように、領域51を1ピクセルシフトさせて同様の処理を繰り返す(図7(C)の例では、領域51を1ピクセル右にシフトさせている)。このような処理を、内周端93及び外周端94近傍の全欠陥検出領域52について行い、欠陥が存在すると認識した欠陥検出領域52を示す所定の判定結果フラグを立てる。
【0040】
なお、撮像手段40が白黒カメラである場合には、濃淡を平均化した平均濃淡値が色平均値であり、所定の欠陥検出領域52と、それに隣接する欠陥検出領域52との色平均値の差は濃淡差として表すことができる。この濃淡差が欠陥度となる。例えば、領域51の中央の欠陥検出領域52の平均濃淡値をAとする。又、それに隣接する8個の欠陥検出領域52の平均濃淡値を、それぞれB、C、D、E、F、G、H、Iとする。この場合、AとB〜Iとの濃淡差の最大値が所定の判定値以上であれば、その欠陥検出領域52内に欠陥が存在すると認識する。他の処理は、撮像手段40がカラーカメラである場合と同様である。
【0041】
このように、撮像した画像を多数の欠陥検出領域に分割し、分割した各欠陥検出領域の色平均値を算出し、各欠陥検出領域について隣接する全欠陥検査領域との色平均値の差である欠陥度を算出する。そして、算出した欠陥度の最大値が所定の判定値以上である場合に、その欠陥検出領域内に欠陥が存在すると認識する。これにより、画像全体の色合いにムラがあっても、精度のよい欠陥検出が可能となる。
【0042】
図6に戻り、ステップS130では、画像処理手段50は、判定結果フラグを含むステップS120で検査したデータを画像処理手段50の図示しないメモリに記憶する。判定結果フラグ以外では、例えば、欠陥の存在する座標や欠陥度等をメモリに記憶できる。
【0043】
ステップS140では、画像処理手段50は、ステップS120での判定結果を出力手段80に出力する(例えば、モニタに表示する)。以上で、ガラス基板90の内周端93及び外周端94のチッピング等の欠陥検査が終了する。
【0044】
なお、ステップS110〜S140におけるガラス基板90の内周端93及び外周端94のチッピング等の欠陥検査と共に、画像処理手段50は、撮像手段40が撮像した画像に基づいて、ガラス基板90の同芯度、真円度、内径、外径等を計測できる。
【0045】
次に、ステップS150〜S230で、ガラス基板90の第1主平面91及び第2主平面92の欠陥を検査する。具体的には、ステップS150では、第1照明手段30の照明部31〜34を順次点灯してガラス基板90に上側の複数方向から光を斜め照射し、ガラス基板90からの散乱光等の画像を撮像手段40で順次撮像する。そして、第1照明手段30の照明部31〜34を順次消灯する。すなわち、第1照明手段30の照明部31を点灯してガラス基板90に上側から光を斜め照射し、ガラス基板90からの散乱光等の画像を撮像手段40で撮像する。そして、照明部31を消灯し、照明部32を点灯してガラス基板90に上側の別方向から光を斜め照射し、ガラス基板90からの散乱光等の画像を撮像手段40で撮像する。照明部33及び34についても同様に順次点灯、撮像、消灯する。これにより、異なる4方向から順次光を照射して撮像した4枚の画像が得られる。
【0046】
なお、ステップS150よりも前に、検査対象物であるガラス基板90の状態(擦りガラス状態、又は鏡面状態)に応じて、照明部31〜34からガラス基板90へ入射する光の角度(XY平面となす角度)、照明部31〜34の出射光の強度、照明部31〜34の出射光の角度、照明部31〜34からガラス基板90までの距離、予め適切な値に調整しておく必要がある。これらにより、ハレーションの発生等を防止する。
【0047】
ステップS160では、画像処理手段50は、ステップS150で撮像した各画像(4枚)を処理する。画像処理手段50は、ステップS120と同様にして、各画像(4枚)を多数の欠陥検出領域に分割して欠陥を認識する。但し、ステップS120と異なり、ガラス基板90の内周端93及び外周端94のみではなく、ガラス基板90の全領域を欠陥検出領域に分割して欠陥の認識を行う。そして、欠陥が存在すると認識した欠陥検出領域を示す所定の判定結果フラグを立てる。
【0048】
ステップS170では、画像処理手段50は、ステップS130と同様にして、判定結果フラグを含むステップS160で検査したデータを画像処理手段50の図示しないメモリに記憶する。ステップS180では、画像処理手段50は、ステップS140と同様にして、ステップS160での判定結果を出力手段80に出力する(例えば、モニタに表示する)。
【0049】
以上でガラス基板90を上側の複数方向から斜め照射して得られた各画像についての欠陥検査が終了するが、本実施の形態では、更に、ステップS150で撮像した各画像(4枚)を合成し、合成した画像についても欠陥検査を行う。なお、ステップS150〜S180のみでもガラス基板90の欠陥検査は可能である。しかし、更に、ステップS150で撮像した各画像(4枚)を合成し、合成した画像についても欠陥検査を行うことにより、不感領域が生じることなく、1方向からの照射のみでは確認し難い欠陥を精度よく検出できる。すなわち、欠陥検出感度を向上できる。
【0050】
ステップS190では、画像処理手段50は、ステップS150で撮像した各画像(4枚)を合成して1枚の合成画像を生成する。ステップS200では、画像処理手段50は、ステップS190で合成した合成画像(1枚)を処理する。画像処理手段50は、ステップS160と同様にして、合成画像(1枚)を多数の欠陥検出領域に分割して欠陥を認識する。ステップS210では、画像処理手段50は、ステップS180と同様にして、ステップS200での判定結果を出力手段80に出力する(例えば、モニタに表示する)。
【0051】
ステップS220では、画像処理手段50は、総合判定を行う。総合判定の条件は適宜決定してよいが、ここでは、ステップS120での判定結果、ステップS160での判定結果、及びステップS200での判定結果の何れかで欠陥が認識された場合には総合判定は欠陥有(不良品)とする。
【0052】
ステップS230では、画像処理手段50は、総合判定結果を出力手段80に出力する(例えば、モニタに『欠陥無(良品)』や『欠陥有(不良品)』と表示する)。そして、ステップS240では、入力手段70のストップスイッチを押して測定をリセットし、ガラス基板90を載置部60上から取り出す。なお、前述のように、欠陥検査が終了すると自動的にトレイが排出され、それと同時に測定がリセットされるようにしても構わない。
【0053】
なお、ステップS220で総合判定が欠陥有(不良品)である場合には、データロギングや再測定等を行ってもよい。以下に一例を挙げる。ステップS220で総合判定が欠陥有(不良品)である場合には、画像処理手段50は、その旨を出力手段80に出力し(例えば、モニタに『欠陥有(不良品)』と表示する)、測定データを磁気記録媒体や光記録媒体等を有する外部記憶装置に出力し記憶させる(データロギング)。
【0054】
再測定を行う場合には、再測定したい箇所を指定する。例えば、第1照明手段30の照明部31〜34の中の再測定したい箇所に対応する照明部を点灯してガラス基板90に上側から光を斜め照射し、ガラス基板90からの散乱光を撮像手段40で撮像する。そして、点灯した照明部を消灯する。そして、画像処理手段50は、ステップS160と同様にして、再測定のために撮像した画像を多数の欠陥検出領域に分割して欠陥を認識し、ステップS180と同様にして、判定結果を出力手段80に出力する(例えば、モニタに表示する)。なお、第2照明手段20で再測定したり、第1照明手段30の照明部31〜34を順次照射した合成画像で再測定したりしてもよい。
【0055】
以上で、ガラス基板90についての全ての欠陥検査が終了する。なお、外部光の影響が懸念される場合には、外部光を遮光可能なボックス等に欠陥検査装置10を入れて、ガラス基板90の欠陥検査をすることが好ましい。
【0056】
ここで、第1照明手段30の照明部31〜34を、平面視において、ガラス基板90を囲むように配置し、照明部31〜34を順次点灯させて画像を取得し、取得した画像を合成する効果について説明する。図8は、照明方向による欠陥の画像の相違について説明するための図である。図8(a)は、照明部31のみを点灯させて取得した欠陥100aの画像を模式的に示している。図8(b)は、照明部33のみを点灯させて取得した欠陥100bの画像を模式的に示している。図8(c)は、図8(a)の欠陥100aの画像と図8(b)の欠陥100bの画像とを合成した欠陥100cの画像を模式的に示している。
【0057】
図8(a)に示すように、照明部31のみを点灯させてガラス基板90に光を斜め照射すると、欠陥の照明部31とは反対側(紙面下側)のみが光るため、欠陥100aのような画像が取得される。つまり、欠陥の照明部31側(欠陥の紙面上側の破線部分)の明瞭な画像は取得できない。又、図8(b)に示すように、照明部33のみを点灯させてガラス基板90に光を斜め照射すると、欠陥の照明部33とは反対側(紙面上側)のみが光るため、欠陥100bのような画像が取得される。つまり、欠陥の照明部33側(欠陥の紙面下側の破線部分)の明瞭な画像は取得できない。
【0058】
そこで、図8(c)に示すように、図8(a)の欠陥100aの画像と図8(b)の欠陥100bの画像とを合成することにより、欠陥の照明部31側及び照明部33側の両方が光り明瞭となった欠陥100cの画像が得られ、欠陥がより検出し易くなり、欠陥検出感度が向上する。
【0059】
このように、照明部31と照明部33のように、互いに対向配置された照明部を設け、それらを順次点灯させて取得した画像を合成することにより、1方向からの照射のみでは確認し難い欠陥の画像を精度よく取得できる。言い換えれば、1方向からの照射のみでは検出できず流出されるような欠陥を確実に検出できる。
【0060】
なお、ここでは、照明部31と照明部33を例に説明を行ったが、照明部32と照明部34も互いに対向配置された照明部であるから、同様の効果を奏する。更に、照明部31〜34は、平面視において、ガラス基板90を囲むように配置されているため、照明部31〜34を順次点灯させて画像を取得し、取得した画像を合成することにより、不感領域が生じることなく、精度のよい欠陥検出が可能となる。
【0061】
[ガラス基板の製造方法]
次に、ガラス基板90の製造方法について説明する。図9は、第1の実施の形態に係るガラス基板の製造工程を例示するフローチャートである。まず、形状付与工程400では、例えば、フロート法、フュージョン法、又はプレス成形法等で成形された素板ガラス等を加工して図1に相当する形状の原ガラス基板(以降、便宜上、原ガラス基板99とする)を多数個作製する。なお、原ガラス基板99は、最終的にガラス基板90となる基板である。具体的には、例えば、素板ガラス等に円孔を形成し、円孔が中心部に位置するように円盤形状の原ガラス基板99を切り出す。そして、原ガラス基板99の内周端及び外周端に面取り加工を施す。
【0062】
次に、端面研磨工程410では、例えば、砥粒を含む研磨液、研磨用ブラシ、研磨パッド等を用いて、面取り加工された部分も含む内周端及び外周端を研磨し、鏡面とする。
【0063】
次に、ラップ工程420では、原ガラス基板99の第1主平面及び第2主平面をラッピングする。原基板99の第1主平面及び第2主平面をラッピングすることにより、原ガラス基板の平坦度と板厚を揃える。なお、ラップ工程420は、端面研磨工程410の前に実施してもよく、端面研磨工程410の前及び後の両方で実施してもよい。
【0064】
次に、研磨工程430では、例えば、砥粒を含む研磨液と研磨パッドを用いて、原ガラス基板99の第1主平面及び第2主平面を研磨する。研磨工程430では、1次研磨のみを行っても良く、1次研磨と2次研磨を行っても良く、2次研磨の後に3次研磨を行っても良い。
【0065】
研磨工程430において原ガラス基板99の第1主平面及び第2主平面は、例えば、研磨具として硬質ウレタン製の研磨パッドと酸化セリウム砥粒を含有する研磨液(平均粒子直径、以下、平均粒径と略す、約1.3μmの酸化セリウムを主成分した研磨液組成物など)を用いて、両面研磨装置により1次研磨できる。1次研磨工程において、両面研磨装置の上定盤と下定盤に装着した研磨パッドは、原ガラス基板99を研磨する前に、ダイヤモンド砥粒を含有するペレットからなるドレス治具を用いてドレス処理が施され、所定の研磨面に形成される。
【0066】
1次研磨の後に2次研磨を行う場合には、1次研磨後の原ガラス基板99の第1主平面及び第2主平面は、例えば、研磨具として軟質ウレタン製の研磨パッドと、1次研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも平均粒径が小さい酸化セリウム砥粒を含有する研磨液(平均粒径約0.5μmの酸化セリウムを主成分とする研磨液組成物など)を用いて、両面研磨装置により2次研磨できる。2次研磨の後、酸化セリウムを洗浄除去する。
【0067】
2次研磨の後に3次研磨を行う場合には、2次研磨後の原ガラス基板99の第1主平面及び第2主平面は、例えば、研磨具として軟質ウレタン製の研磨パッドと、コロイダルシリカを含有する研磨液(一次粒子の平均粒径が20〜30nmのコロイダルシリカを主成分とする研磨液組成物など)を用いて、両面研磨装置により3次研磨できる。
【0068】
次に、洗浄工程440では、内周端及び外周端、並びに、第1主平面及び第2主平面が鏡面研磨された原ガラス基板99を精密洗浄して乾燥させる。原ガラス基板99は、例えば、アルカリ性洗剤によるスクラブ洗浄、アルカリ性洗剤溶液に浸漬した状態での超音波洗浄、純水に浸漬した状態での超音波洗浄、を順次行い、イソプロピルアルコール蒸気にて乾燥させることができる。以上により、図1に示すガラス基板90が完成する。
【0069】
なお、上記ガラス基板90の製造工程の各工程間において、原ガラス基板99の洗浄(工程間洗浄)や原ガラス基板99の表面のエッチング(工程間エッチング)を実施してもよい。更に、原ガラス基板99に高い機械的強度が求められる場合、原ガラス基板99の表層に強化層を形成する強化工程(例えば、化学強化工程)を研磨工程前、又は研磨工程後、あるいは研磨工程間で実施してもよい。又、原ガラス基板99は、アモルファスガラスでもよく、結晶化ガラスでもよく、表層に強化層を有する強化ガラス(例えば、化学強化ガラス)でもよい。

ところで、ガラス基板90の製造工程において、前述の欠陥検査装置10を用いて原ガラス基板99の欠陥検査を行うことが好ましい。例えば、洗浄工程440の後に欠陥検査を行うことにより、内周端及び外周端、並びに、第1主平面及び第2主平面に欠陥を有するガラス基板90が最終製品として出荷されることを防止できる。
【0070】
又、形状付与工程400と端面研磨工程410との間や、ラップ工程420と研磨工程430との間等の工程間で欠陥検査を行うことにより、内周端及び外周端にチッピング等の欠陥が形成された原基板99や、第1主平面及び第2主平面に傷等の欠陥が形成された原ガラス基板99が後工程に流出することを防止できる。その結果、欠陥を有する原ガラス基板99が後工程に流出しなくなるため、例えば、欠陥の存在に起因して研磨中の原基板99が破損し研磨装置を停止させることが防止可能となり、研磨装置の停止時間を短くすることにより研磨装置の稼動率を向上できる。又、後工程の研磨で除去できない深さ以上の傷やチッピング等の欠陥を有する原ガラス基板99を後工程に流出することを防止できる。
【0071】
このように、第1の実施の形態によれば、ガラス基板90よりも十分に広い領域を照明可能な第2照明手段20を用いてガラス基板90の主平面に略垂直方向から光を照射し、ガラス基板90を透過した光を撮像手段40で撮像する。そして、撮像手段40で撮像した画像に所定の画像処理を施す。その結果、ガラス基板90の内周端93及び外周端94のチッピング等の欠陥を検査できる。
【0072】
又、ガラス基板90の内周端93及び外周端94のチッピング等の欠陥を検査する際に、ガラス基板90の同芯度、真円度、内径、外径等を同時に計測できる。
【0073】
又、第1照明手段30の照明部31〜34を、平面視において、ガラス基板90を囲むように配置し、ガラス基板90に上側の複数方向から光を順次照射し、ガラス基板90の欠陥で乱反射した散乱光を撮像手段40で順次撮像する。そして、順次撮像した各画像に所定の画像処理を施して欠陥検査を行う。その結果、方向依存性のある欠陥を全て検出でき、不感領域が生じることなく、1方向からの照射のみでは確認し難い欠陥を精度よく検出できる。
【0074】
又、ガラス基板90の表裏を反転させることなくガラス基板90の第1主平面91及び第2主平面92の欠陥を一括で検査できるため、欠陥検査時間を短縮できる。
【0075】
又、撮像手段40で順次撮像した各画像を合成した1枚の合成画像を生成し、この合成画像に所定の画像処理を施して欠陥検査を行う。その結果、不感領域が生じることなく、1方向からの照射のみでは確認し難い欠陥を精度よく検出できる。さらに、合成画像を用いることにより欠陥検出感度を向上できる。
【0076】
又、画像処理において、撮像又は合成した画像を多数の欠陥検出領域に分割し、分割した各欠陥検出領域の色平均値を算出し、各欠陥検出領域について隣接する全欠陥検査領域との色平均値の差である欠陥度を算出する。そして、算出した欠陥度の最大値が所定の判定値以上である場合に、その欠陥検出領域内に欠陥が存在すると認識する。これにより、画像全体の色合いにムラがあっても、精度のよい欠陥検出が可能となる。
【0077】
又、第1の実施の形態に係る欠陥検査方法をガラス基板の製造工程で実行することにより、内周端93及び外周端94や第1主平面91及び第2主平面92に欠陥を有するガラス基板90が最終製品として出荷されることを防止できる等の効果を奏する。
【0078】
なお、発明者らの検討によれば、目視検査で正常と判定された8600枚の基板を欠陥検査装置10で再検査したところ、欠陥の存在する基板(不良基板)が14枚検出された。欠陥検査装置10による1枚のガラス基板90を検査する時間は3秒であった。このように、欠陥検査装置10により、短い検査時間で精度のよい欠陥検査ができることを確認した。
【0079】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、第1の実施の形態の第1照明手段30に代えて、第1照明手段35を用いる例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、第1の実施の形態で既に説明した内容と重複する部分についての説明は省略する。
【0080】
図10は、図2の欠陥検査装置の第1照明手段の他の例について説明するための平面図である。図10に示す第1照明手段35は、第1の実施の形態の第1照明手段30と同様に、ガラス基板90を上側から照明する機能を有し、平面視において、複数の発光素子がガラス基板90を同心円状に囲むように配置されている。第1照明手段35を構成する発光素子としては、第1照明手段30と同様に、例えば、可視光のほぼ全域において強度を有する白色のLED等を用いることができる。
【0081】
第1照明手段35を構成する発光素子の個数は任意に設定して構わないが、ガラス基板90の全域を漏れなく照明できる程度に密に配置し、ガラス基板90の全域にわたって均質に照明可能とすることが好ましい。第1照明手段35を構成する発光素子とガラス基板90との間に、必要に応じて拡散板等の光学部品を配置しても構わない。又、第1照明手段35を構成する発光素子はLEDには限定されず、LEDに代えて、例えば、有機EL素子(Organic Electro-Luminescence素子)、ハロゲンランプ、キセノンランプ、冷陰極管等の蛍光灯等を用いても構わない。
【0082】
第1照明手段35を構成する各発光素子は、ガラス基板90を斜め方向から照射するため、第1照明手段30と同様に、ガラス基板90の第1主平面91と第2主平面92に傷や異物等の欠陥が存在しない場合には、撮像手段40には欠陥起因である散乱光は入射しない。一方、ガラス基板90の第1主平面91と第2主平面92に傷や異物等の欠陥が存在する場合には、ガラス基板90への入射光が欠陥で乱反射されて散乱光の一部が撮像手段40方向に向かうため、欠陥の検査が可能となる。但し、鉛直方向(撮像手段40方向)に向かった散乱光のみを検出している訳ではなく、傷や異物等の欠陥で散乱して斜め方向に向かう光であっても、一定の輝度があれば撮像手段40でとらえる事ができる。なお、ガラス基板90へ入射する光の角度(XY平面となす角度)に関しては、第1照明手段30と同様である
第1照明手段35を用いて欠陥検査を実行する場合には、第1照明手段35を構成する各発光素子を順次点灯して画像を取得する必要がある。但し、第1照明手段35を構成する各発光素子は必ずしも1つずつ点灯させる必要はなく、隣接する数個の発光素子を発光素子対と考え、発光素子対を順次点灯させればよい(同じ発光素子対に属する発光素子は同時に点灯させる)。
【0083】
このように、第1の実施の形態の変形例1によれば、第1の実施の形態の第1照明手段30に代えて、複数の発光素子がガラス基板90を同心円状に囲むように配置されている第1照明手段35を用いても、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0084】
〈第1の実施の形態の変形例2〉
第1の実施の形態の変形例2では、ガラス基板に付着した研磨材(スラリー)の影響を除去し、欠陥検出の精度を一層向上させる例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例2において、第1の実施の形態で既に説明した内容と重複する部分についての説明は省略する。
【0085】
ガラス基板の製造工程の各工程間において、研削又は研磨されたガラス基板を工程間で検査する場合がある。工程間検査を実施する場合には、検査対象となるガラス基板90の第1主平面91や第2主平面92に研磨材(スラリー)が付着している場合がある。ガラス基板90の第1主平面91や第2主平面92に研磨材(スラリー)が付着していると、研磨材(スラリー)を傷等の欠陥と誤検出するおそれがあるため、研磨材(スラリー)の影響を除去しておくことが好ましい。研磨材(スラリー)の影響を除去する方法を以下に説明する。
【0086】
まず、図6のステップS110〜S140で、ガラス基板90の内周端93及び外周端94のチッピング等の欠陥を検査する際に、研磨材(スラリー)の有無を同時に検査する。研磨材(スラリー)は、特定色の材料を用いているため、カラーで撮像した画像と、予め画像処理手段50のメモリに記憶させた研磨材(スラリー)の色情報とを対比することにより、研磨材(スラリー)の有無を検査できる。この際、傷等の欠陥は特定色を有さないため、研磨材(スラリー)と傷等の欠陥とは区別できる。
【0087】
次に、ステップS160等において欠陥を認識する際に、研磨材(スラリー)の付着している座標を欠陥検査から除外することにより、研磨材(スラリー)を欠陥と誤検出することを防止できる。なお、ステップS160等でもカラーで撮像した画像を用いて欠陥検査を行うが、ガラス基板90に斜め方向から光を照射しているため、研磨材(スラリー)の色情報の検出精度が低い。従って、研磨材(スラリー)の有無の検査は、ガラス基板90の主平面に垂直方向から光を照射するステップS110〜S140で行うことが好ましい。
【0088】
このように、第1の実施の形態の変形例2によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏するが、更に、以下の効果を奏する。すなわち、第2照明手段20によりガラス基板90の下側から光を照明し、内周端93及び外周端94のチッピング等の欠陥を検査する際に、研磨材(スラリー)の有無を同時に検査する。そして、第1照明手段30によりガラス基板90に対して光を斜め方向から照射する際に、研磨材(スラリー)の付着している座標を欠陥検査から除外する。これにより、ガラス基板90に付着した研磨材(スラリー)の影響を除去し、ガラス基板90の欠陥検出の精度を一層向上させることができる。
【0089】
以上、好ましい実施の形態及びその変形例について詳説したが、上述した実施の形態及びその変形例に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及びその変形例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0090】
例えば、第1照明手段30を有さず、第2照明手段20からの透過光のみを撮像手段40で撮像し、画像処理手段50で画像処理して欠陥検査をする装置も実現可能である。前記実施の形態では、第2照明手段20からの透過光を用いてガラス基板90の内周端93及び外周端94の欠陥検査をする例を示したが、第2照明手段20からの透過光を用いてガラス基板90の第1主平面91及び第2主平面92の傷等の欠陥検査を実行することもできる。但し、第2照明手段20からの透過光は載置部60も透過するので、載置部60の傷を検出してしまうおそれがある。このような観点から、ガラス基板90の第1主平面91及び第2主平面92についてより精度高く欠陥検査が必要な場合には、欠陥検査装置10のような第2照明手段20及び第1照明手段30を有する欠陥検査装置を用いることが好ましい。なお、第1照明手段30はガラス基板90を斜め方向から照射するので、載置部60の傷を誤検出するおそれが極めて低い。
【0091】
又、第2照明手段は、平面視において、ガラス基板90を正六角形状や正八角形状に囲むように配置しても構わない。
【0092】
又、特定色の材料を用いた研磨材(スラリー)の有無を検出しない場合には、カラー情報の取得が不要なため、第2照明手段20及び第1照明手段30として青色光源を用い、撮像手段40として白黒カメラを用いることができる。なお、青色光源に代えて、赤等の他色の光源を用いてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 欠陥検査装置
20 第2照明手段
30、35 第1照明手段
31、32、33、34 照明部
40 撮像手段
50 画像処理手段
50A、50B 欠陥検出領域
60 載置部
70 入力手段
80 出力手段
90 ガラス基板
90A 画像
91 第1主平面
92 第2主平面
93 内周端
94 外周端
95 円孔
100a、100b、100c 欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主平面及びその対向面である第2主平面を有するガラス基板に対し、複数方向から光を順次照射し、前記ガラス基板の画像を順次撮像する順次撮像工程と、
前記順次撮像工程で順次撮像した各ガラス基板の画像に基づいて、前記ガラス基板の前記第1主平面及び前記第2主平面の欠陥の有無を検査する欠陥検査工程と、を有するガラス基板の欠陥検査方法。
【請求項2】
前記順次撮像工程で順次撮像した各ガラス基板の画像を合成して合成画像を生成する画像合成工程を更に有し、
前記欠陥検査工程では、前記順次撮像した各ガラス基板の画像及び前記合成画像に基づいて、前記ガラス基板の前記第1主平面及び前記第2主平面の欠陥の有無を検査する請求項1記載のガラス基板の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記順次撮像工程は、前記第1主平面又は前記第2主平面の何れか一方の主平面側から、前記ガラス基板の内部を光が透過するように、複数方向から光を順次照射する請求項1又は2記載のガラス基板の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記複数方向は、平面視において、少なくとも一対以上が前記ガラス基板を介して対向する請求項1乃至3の何れか一項記載のガラス基板の欠陥検査方法。
【請求項5】
前記ガラス基板は、前記第1主平面から前記第2主平面に貫通する円孔を中央部に有し、
前記検査方法は、
前記第1主平面又は前記第2主平面の何れか一方の主平面側から光を照射し、前記ガラス基板からの透過光を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像したガラス基板の透過光画像に基づいて、前記ガラス基板の内周端及び外周端の欠陥の有無を検査する欠陥検査工程と、を更に有する請求項1乃至4の何れか一項記載のガラス基板の欠陥検査方法。
【請求項6】
前記ガラス基板は中央部に円孔を有する円盤形状であり、
前記欠陥検査工程は、撮像した前記ガラス基板の透過光画像に基づいて、前記ガラス基板の同芯度、真円度、内径、外径のうち少なくとも1つを計測する請求項5記載のガラス基板の欠陥検査方法。
【請求項7】
前記欠陥検査工程は、前記順次撮像した各ガラス基板の画像、前記合成画像又は前記ガラス基板の透過光画像を複数の欠陥検出領域に分割する分割工程と、
分割した各欠陥検出領域の色平均値を算出する色平均値算出工程と、
前記各欠陥検出領域において、隣接する全欠陥検査領域との色平均値の差である欠陥度を算出する欠陥度算出工程と、
算出した前記欠陥度の最大値が判定値以上である場合に、その欠陥検出領域内に欠陥が存在すると認識する欠陥認識工程と、を含む請求項1乃至5の何れか一項記載のガラス基板の欠陥検査方法。
【請求項8】
第1主平面及びその対向面である第2主平面を有し、前記第1主平面から前記第2主平面に貫通する円孔を中央部に有するガラス基板に、前記第1主平面又は前記第2主平面の何れか一方の主平面側から光を照射し、前記ガラス基板からの透過光を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像したガラス基板の透過光画像に基づいて、前記ガラス基板の内周端及び外周端の欠陥の有無を検査する欠陥検査工程と、を有するガラス基板の欠陥検査方法。
【請求項9】
前記ガラス基板は中央部に円孔を有する円盤形状であり、
前記欠陥検査工程では、撮像したガラス基板の透過光画像に基づいて、前記ガラス基板の同芯度、真円度、内径、外径のうちの少なくとも1つを計測する請求項8記載のガラス基板の欠陥検査方法。
【請求項10】
前記欠陥検査工程は、前記ガラス基板の透過光画像を複数の欠陥検出領域に分割する分割工程と、
各欠陥検出領域の色平均値を算出する色平均値算出工程と、
前記各欠陥検出領域において、隣接する全欠陥検査領域との色平均値の差である欠陥度を算出する欠陥度算出工程と、
算出した前記欠陥度の最大値が判定値以上である場合に、その欠陥検出領域内に欠陥が存在すると認識する欠陥認識工程と、を含む請求項8又は9記載のガラス基板の欠陥検査方法。
【請求項11】
第1主平面及びその対向面である第2主平面を有するガラス基板に対し、複数方向から光を順次照射する第1照明手段と、前記第1照明手段から前記ガラス基板に順次照射された光により得たガラス基板の画像を順次撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が順次撮像した各ガラス基板の画像に基づいて、前記ガラス基板の前記第1主平面及び前記第2主平面の欠陥の有無を検査する画像処理手段と、を有するガラス基板の欠陥検査装置。
【請求項12】
前記画像処理手段は、前記撮像手段が順次撮像した各ガラス基板の画像を合成して合成画像を生成し、前記順次撮像した各ガラス基板の画像及び前記合成画像に基づいて、前記ガラス基板の前記第1主平面及び前記第2主平面の欠陥の有無を検査する請求項11記載のガラス基板の欠陥検査装置。
【請求項13】
前記第1照明手段は複数の照明部を備え、
前記照明部の少なくとも一部は、平面視において、前記ガラス基板を介して対向配置されている請求項11又は12記載のガラス基板の欠陥検査装置。
【請求項14】
前記ガラス基板は、前記第1主平面から前記第2主平面に貫通する円孔を中央部に有し、
前記欠陥検査装置は、
前記第1主平面及び前記第2主平面の何れか一方の主平面側から光を照射する第2照明手段を更に有し、
前記撮像手段は、前記第2照明手段から前記ガラス基板に照射された光の透過光を撮像し、
前記画像処理手段は、前記撮像手段が撮像した前記ガラス基板の透過光画像に基づいて、前記ガラス基板の内周端及び外周端の欠陥の有無を検査する請求項11乃至13の何れか一項記載のガラス基板の欠陥検査装置。
【請求項15】
前記ガラス基板は中央部に円孔を有する円盤形状であり、
前記画像処理手段は、前記ガラス基板の透過光画像に基づいて、前記ガラス基板の同芯度、真円度、内径、外径のうちの少なくとも1つを計測する請求項14記載のガラス基板の欠陥検査装置。
【請求項16】
前記画像処理手段は、前記順次撮像した各ガラス基板の画像、前記合成画像又は前記ガラス基板の透過光画像を複数の欠陥検出領域に分割し、各欠陥検出領域の色平均値を算出し、前記各欠陥検出領域について隣接する全欠陥検査領域との色平均値の差である欠陥度を算出し、算出した前記欠陥度の最大値が判定値以上である場合にその欠陥検出領域内に欠陥が存在すると認識する請求項11乃至14の何れか一項記載のガラス基板の欠陥検査装置。
【請求項17】
請求項1乃至10の何れか一項記載の欠陥検査方法でガラス基板の欠陥を検査する工程を有するガラス基板の製造方法。
【請求項18】
請求項11乃至16の何れか一項記載の欠陥検査装置でガラス基板を欠陥検査する工程を有するガラス基板の製造方法。
【請求項19】
前記ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板である請求項17又は18記載のガラス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−141192(P2012−141192A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293250(P2010−293250)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】