説明

クッション

【課題】取付位置精度を厳しく設定しなくても、第1の物体又は第2の物体の跳ね返りを抑制でき、第1の物体又は第2の物体を予め設定した位置で保持できるクッションを得る。
【解決手段】本クッション10では、筒状壁16に複数のスリット24が形成されており、第2の物体38からの荷重を天井部18が受けて筒状壁16が弾性変形するとスリット24が開口する。これにより、空気溜り20内の空気は圧縮されずにスリット24からクッション本体12の外部に流れ出る。このため、ドア部46を押し戻す反力の増加が抑制されるので、クッション10の装着位置の精度やクッション本体12自体の寸法精度を厳しく設定しなくてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のグローブボックスの扉やコンソールボックスの蓋を閉止する際に生じる衝撃を緩和して、更に車両走行時の車体の揺れに対しても、これらのグローブボックスに対する扉の閉止位置やコンソールボックスに対する蓋の閉止位置を一定に保ってガタ付きを防止又は抑制するためのクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたバンパーラバーは、車体パネルに取り付けられた固定部材を備えている。この固定部材には外周部材が装着されており、トランクリッドを閉止した際には外周部材の車体パネルとは反対側の端部にトランクリッドが当接する。外周部材は中空形状で且つトランクリッドの側の端部は中央側を除き閉止されている。このような構成の外周部にトランクリッドが当接して外周部を押圧すると、外周部材が常に安定して外側へ湾曲変形する。
【特許文献1】特開平7−145839号の公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ゴムやゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材で形成されたバンパーラバーは変形量が大きいほどその反発(弾性)が大きくなる。このため、バンパーラバーの取付位置が、予め設定されている位置よりもトランクリッドの側にずれていると、予め設定された閉止位置にトランクリッドが到達した際に、予め設定されている位置にバンパーラバーが設置されている場合よりも大きくバンパーラバーを押圧する。このような場合には、バンパーラバーからの大きな反発で、トランクリッドが跳ね返されたり、また、予め設定した閉止位置でトランクリッドを保持できなかったりする。
【0004】
本発明は上記事実を考慮して、取付位置精度を厳しく設定しなくても、第1の物体又は第2の物体の跳ね返りを抑制でき、第1の物体又は第2の物体を予め設定した位置で保持できるクッションを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明に係るクッションは、第1の物体に対し第2の物体が相対的に接近移動可能な構造に適用され、前記第1の物体と前記第2の物体とが接近したことで生じる衝撃を防止又は緩和するためのクッションであって、内側に空気溜りを有する中空形状に形成されて前記第1の物体に取り付けられ、前記第1の物体に前記第2の物体が接近することで前記第2の物体に当接し、前記第2の物体からの荷重で前記空気溜り内の空気が圧縮されるクッション本体と、前記クッション本体に設けられ、前記クッション本体の外部と前記空気溜りとの間を遮断すると共に、前記クッション本体の弾性変形に伴い開放されて前記クッション本体の外部と前記空気溜りとの間を連通させる弁と、を備えている。
【0006】
請求項1に記載の本発明に係るクッションによれば、第1の物体に第2の物体が相対的に接近すると、第2の物体がクッションを構成するクッション本体に当接してクッション本体に荷重を付与する。クッション本体は中空に形成されており、その内側は空気溜りとされている。空気溜り内の空気はクッション本体が第2の物体からの荷重を受けると圧縮される。このように空気が圧縮と第2の物体から荷重を受けることによるクッション本体の弾性により第1の物体に第2の物体が接近した際の衝撃が緩和される。
【0007】
さらに、第2の物体からの荷重を受けることでクッション本体が弾性変形するとクッション本体に設けられた弁が開放される。弁が開放されることで、それまで遮断されていたクッション本体の内部(すなわち、空気溜り内)とクッション本体の外部との間が連通する。この状態でクッション本体が第2の物体からの荷重を受けて更に弾性変形し、これにより、空気溜りの容積が小さくなると、空気溜り内の空気がクッション本体の外部に流出する。
【0008】
このように空気溜りからクッション本体の外部に空気が流出することで、上述したような空気の圧縮が緩和又は解消されるので、クッション本体の弾性に基づいたクッション本体が第2の物体を跳ね返す力が増加しても、空気溜り内の空気の圧縮に基づいた第2の物体を跳ね返す力と、クッション本体の弾性に基づいたクッション本体が第2の物体を跳ね返す力との合力である全体的な反力(弾性)は大きくならない。
【0009】
このように、第2の物体を押し返す全体的な反力が増加しないか、又は、このような反力の増加が抑制されるので、例えば、本クッションの第1の物体への取付位置が第2の物体に近い向きに誤差が生じても、第1の物体と第2の物体とが接近した際の衝撃を緩和しつつも第1の物体又は第2の物体の跳ね返りを防止又は抑制できる。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係るクッションは、請求項1に記載の本発明において、前記クッション本体に前記第2の物体が当接した際の前記クッション本体と前記第2の物体との対向方向に対して交差する向きに前記クッション本体を貫通し、前記クッション本体が弾性変形していない状態では閉じられて前記空気溜りから前記クッション本体の外部への前記空気の流出を防止又は抑制すると共に、前記クッション本体の変形により開口して前記空気溜りから前記クッション本体の外部への前記空気の流出を許容するスリットを前記クッション本体に形成して、前記クッション本体における前記スリットが形成された部位を前記弁としている。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係るクッションによれば、クッション本体にはスリットが形成される。スリットは、クッション本体に第2の物体が当接した際のクッション本体と第2の物体との対向方向に対して交差する向きにクッション本体を貫通するように形成される。第2の物体の物体からの荷重をクッション本体が受けていない状態や、第2の物体の物体からの荷重をクッション本体が受けていてもクッション本体が大きく変形していない状態ではスリットが閉じられている。このため、空気溜り内の空気がスリットを通過してクッション本体の外部に流れ出ることが防止又は抑制される。これにより、上述したような第2の物体からの荷重により空気溜り内の空気が圧縮されることによる効果を得ることができる。
【0012】
さらに、第2の物体からの荷重でクッション本体が圧縮されるように変形すると(すなわち、クッション本体の第2の物体との接触部分が、第1の物体に接近するようにクッション本体が変形すると)、スリットが形成された部分でクッション本体が拉げてスリットが開口する。このようにスリットが開口することでクッション本体の内外(すなわち、空気溜りとクッション本体の外部)とが、開口したスリットを介して連通し、クッション本体の変形に伴って空気溜り内の空気がスリットを通過してクッション本体の外部に流れ出る。これにより、第2の物体を跳ね返すように作用する反力(弾性)の増加を防止又は抑制できる。このように、本発明に係るクッションでは、クッション本体とは別に弁を構成する部材が不要であるので、コストが安価になる。
【0013】
なお、上記のように、クッション本体が第2の物体からの荷重を受けておらず、クッション本体が弾性変形していない状態では、スリットが閉じられているが、このスリットが閉じられている状態とは、スリットを内周部が互いに接してスリットが全く開口していない状態に限定されるものではない。すなわち、本発明の観点からすれば、第2の物体からの荷重を受けてクッション本体が弾性変形した状態よりもクッション本体が弾性変形していない状態でスリットの開口面積が小さくなるようにスリットは形成されていればよく、このような構成の場合には、クッション本体が弾性変形していない状態でのスリットは閉じられた状態に含まれるものである。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係るクッションは、請求項2に記載の本発明において、前記クッション本体に前記第2の物体が当接した際の前記クッション本体と前記第2の物体との対向方向を軸方向とする軸周りに前記スリットを一定間隔毎に前記クッション本体に形成している。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係るクッションによれば、スリットは第2の物体が当接した際のクッション本体と第2の物体との対向方向を軸方向とする軸周りに一定間隔毎に形成される。このため、第1の物体に本発明に係るクッションを取り付けるに際して上記の軸周り方向の第1の物体に対するクッションの取付位置を厳格に設定しなくても、スリットが開口して空気溜り内の空気を流出させるためのクッション本体の変形に要する第2の物体からの荷重の大きさのばらつきを小さくできる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係るクッションは、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の本発明において、前記クッション本体に設けられて、前記第2の物体からの荷重による前記クッション本体の弾性変形で、前記第2の物体との前記クッション本体の当接部分が一定ストローク移動することで前記クッション本体の前記当接部分に干渉して、前記クッション本体の弾性変形を抑制する干渉手段を備えている。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係るクッションによれば、クッション本体が第2の物体からの荷重を受けてクッション本体が弾性変形すると、クッション本体の第2の物体との当接部分が第2の物体からの荷重の向きに移動する。このクッション本体の第2の物体との当接部分が一定ストロークだけ上記の荷重の向きに移動すると、クッション本体に設けられた干渉手段にクッション本体の第2の物体との当接部分が干渉される。これにより、上記の荷重の向きへのクッション本体の第2の物体との当接部分の移動が規制される。
【0018】
この状態では、第2の物体からの荷重によるクッション本体の変形が、その形状(外観)を変化させて拉げるような変形から全体が荷重の向きに圧縮されるような変形に変わる。このような変形には拉げるような変形に比べて大きな荷重を要するので、このような変形に対応して第2の物体に付与される反力もまた大きくなり、第2の物体が第1の物体に接近することが防止又は効果的に抑制される。
【0019】
このように、干渉手段を設けることで第1の物体に対する第2の物体の接近終了位置を調整できるので、クッション本体に対する第2の物体からの荷重の向きに沿ったクッション本体の取付位置の精度を厳格に設定しなくても、第1の物体に対する第2の物体の接近終了位置のばらつきを更に効果的に抑制できる。
【0020】
請求項5に記載の本発明に係るクッションは、請求項4に記載の本発明において、前記干渉手段を前記空気溜り内に設けている。
【0021】
請求項5に記載の本発明に係るクッションによれば、干渉手段が空気溜り内(すなわち、クッション本体内)に設けられるので、第1の物体に対するクッション本体の装着前や後で、不用意に干渉手段がクッション本体から脱落することがない。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るクッションは、第1の物体に対する取付位置の位置精度を厳しく設定しなくても、第1の物体に対して第2の物体が相対的に接近した際に、第1の物体又は第2の物体の跳ね返りを抑制でき、第1の物体又は第2の物体を予め設定した位置で保持できる。
【0023】
請求項2に記載の本発明に係るクッションは、スリットが形成されたクッション本体自身が弁としての機能を有しているので、部品点数の増加を防止又は抑制でき、コストを安価にできる。
【0024】
請求項3に記載の本発明に係るクッションは、第1の物体に対する取付姿勢を厳格にしなくても充分な効果を得ることができる。
【0025】
請求項4に記載の本発明に係るクッションは、第1の物体に対する第2の物体の接近終了位置のばらつきを更に効果的に抑制できる。
【0026】
請求項5に記載の本発明に係るクッションは、クッション本体からの干渉手段の脱落を防止又は効果的に抑制でき、干渉手段を設けることによる効果を長期に亘り良好に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係るクッション10を一部破断した斜視図が示されており、図3にはクッション10の断面図が示されている。
【0028】
これらの図に示されるように、クッション10はクッション本体12を備えている。本実施の形態においてクッション本体12は全体的にゴム材又はゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材により形成されている。
【0029】
クッション本体12は略円板状の底部14を備えている。底部14の外周部からは底部14の厚さ方向一方の側へ向けて高荷重受部としての筒状壁16が立設されている。図3に示されるように、筒状壁16は底部14から離間する方向へ向けて内径寸法及び外径寸法が小さくなるような断面略円錐台形状に形成されている。また、筒状壁16はその肉厚が底部14から離間する方向へ向けて漸次薄くなっている。
【0030】
筒状壁16の底部14とは反対側の端部には低荷重受部としての天井部18が形成されている。天井部18は底部14に対して略平行な円板状に形成されている。この天井部18と上記の底部14及び筒状壁16にて囲まれた空間、すなわち、クッション本体12の内部は空気溜り20とされている。また、天井部18は半径方向内方側へ向けて肉厚が漸次薄くなるように形成されている。したがって、天井部18は外周部の肉厚が最も厚いが、この天井部18の外周部の肉厚は、筒状壁16の底部14とは反対側の端部での肉厚以下となっている。
【0031】
筒状壁16及び天井部18の肉厚を上記のように設定したことで、概ね底部14の厚さ方向に沿って筒状壁16の底部14とは反対側から天井部18に荷重が作用すると、この荷重が一定の大きさまでは、天井部18の中央側が底部14の側へ撓むように弾性変形するが、筒状壁16は荷重に抗してその形状を概ね維持できる。
【0032】
また、図3に示されるように、天井部18の半径方向中央側には通気孔22が形成されており、この通気孔22を介して天井部18の厚さ方向に空気溜り20の内部(すなわち、クッション本体12の内部)とクッション本体12の外部とが連通している。
【0033】
一方、上記の筒状壁16には複数のスリット24が形成されている。スリット24は筒状壁16における底部14の側から天井部18の側への向きに長手方向とされ、底部14及び天井部18の中心をとおるクッション本体12の軸線を中心に半径方向に沿って筒状壁16を貫通するように形成されている。これらの0026はクッション本体12に荷重が作用していない状態では、筒状壁16の周方向に互いに対向するスリット24の内周面が互いに接している。
【0034】
この状態では、スリット24が閉じられており、上記のクッション本体12の軸線を中心とする半径方向には、空気溜り20の内部とクッション本体12の外部とが遮断される。これに対して、スリット24は、筒状壁16の周方向に互いに対向するスリット24の内周面が互いに離間することで開放される。このスリット24の開放状態では、空気溜り20の内部とクッション本体12の外部とがスリット24を介して連通する。
【0035】
また、これらのスリット24は、上記のクッション本体12の軸線を中心とする軸周り方向に一定間隔毎に形成されていると共に、筒状壁16における底部14から天井部18への向きの各スリット24の長さは概ね等しく設定されている。
【0036】
一方、本クッション10は取付基部30を備えている。取付基部30は平板部32を備えている。平板部32は外径寸法が底部14の近傍における筒状壁16の内径寸法よりも小さな円板状に形成されており、空気溜り20内の底部14上に配置されている。底部14の略中央からは軸部34が底部14の側へ向けて突出形成されている。平板部32からの軸部34の突出寸法は、底部14の厚さ寸法と、本クッション10が装着される第1の物体36の厚さ寸法の和と同程度又はそれ以上に設定されている。
【0037】
ここで言う第1の物体36は、図8に示されるように、本クッション10が車両40のグローブボックス42に対応して車両40のインスツルメントパネル44に設けられて、グローブボックス42のドア部46にクッション10が当接する構成であるのならば、インスツルメントパネル44が第1の物体36に対応し、グローブボックス42のドア部46が図3に示される第2の物体38に相当する構成になる。
【0038】
また、図8に示されるように、インスツルメントパネル44に形成された小物入れ52に対応して小物入れ52の開口部の側方でインスツルメントパネル44に設けられて、小物入れ52を閉止するためのドア部54にクッション10が当接する構成であるのならば、インスツルメントパネル44における小物入れ52の側方部分が第1の物体36に対応し、ドア部54が図3に示される第2の物体38に相当する構成になる。
【0039】
さらに、図9に示されるように、例えば、車両40の運転席と助手席との間等に設けられたコンソールボックス60のコンソールボックス本体62にクッション10が設けられて、コンソールボックス本体62を閉止するための蓋部64にクッション10が当接する構成であるならば、コンソールボックス本体62が第1の物体36に対応し、蓋部64が図3に示される第2の物体38に相当する構成になる。
【0040】
なお、上記の例では、ドア部46やドア部54、蓋部64とは異なり、インスツルメントパネル44やコンソールボックス本体62等の基本的に移動しない方を第1の物体36としてクッション10を設けた構成であったが、グローブボックス42や小物入れ52、コンソールボックス60を閉止するに際して実際に移動(回動)するドア部46やドア部54、蓋部64等を第1の物体36とし、これらの対応するインスツルメントパネル44やコンソールボックス本体62等を第2の物体38としてクッション10を設ける構成としてもよい。
【0041】
また、軸部34の外径寸法は、底部14に形成された透孔66及び第1の物体36に形成された透孔68の内径寸法以下とされている。このため、平板部32が底部14に接した状態では軸部34が透孔66を通過して更に透孔68に入り込み、透孔68を通過するか又は透孔68の底部14とは反対側の端部近傍に軸部34の平板部32とは反対側の端部が到達するようになっている。
【0042】
また、図3に示されるように、軸部34の平板部32とは反対側には抜け止め部72が軸部34に一体的に形成されている。抜け止め部72は軸部34とは反対側へ向けて漸次外径寸法が大きくなる略円錐台形状に形成されており、軸部34とは反対側の抜け止め部72の端部では外径寸法が透孔68の内径寸法よりも大きい。このため、軸部34が透孔68を通過すると、抜け止め部72の外周面が透孔68の外側で第1の物体36のクッション本体12とは反対側の面に対向する。
【0043】
したがって、軸部34が第1の物体36のクッション本体12側へ移動しようとすると、抜け止め部72の外周面が第1の物体36のクッション本体12とは反対側の面に干渉される。これにより、軸部34が不用意に第1の物体36のクッション本体12側へ移動することを防止できる。
【0044】
この抜け止め部72の軸部34とは反対側の端面からは連続してテーパ部74が形成されている。テーパ部74は抜け止め部72とは反対側へ向けて漸次外径寸法が小さくなる略円錐台形状に形成されており、その先端(すなわち、テーパ部74の抜け止め部72とは反対側の端部)では外径寸法が上記の透孔66や透孔68の内径寸法よりも短い。このため、第1の物体36のクッション本体12側からテーパ部74を透孔68に入り込ませると、透孔68のクッション本体12側の縁部がテーパ部74の外周面に干渉する。
【0045】
この状態で、更にテーパ部74を第1の物体36のクッション本体12とは反対側へ移動させると、テーパ部74からの反力でテーパ部74が弾性的に縮径される。これにより、テーパ部74が透孔68を通過し、更に、抜け止め部72が透孔68を通過すると、テーパ部74及び抜け止め部72は自らの弾性で復元する。このように、テーパ部74及び抜け止め部72が自らの弾性で復元することにより上記のような第1の物体36のクッション本体12側への軸部34の不用意な移動が防止され、これにより、本クッション10が第1の物体36に装着される。
【0046】
また、図7に示されるように、クッション本体12の空気溜り20内には干渉手段としての干渉プレート82が任意に設けられる。干渉プレート82は、例えば、平板部32と同様の円板形状に形成されており、空気溜り20内に干渉プレート82が設けられる際には干渉プレート82が平板部32の軸部34とは反対側で平板部32上に配置される。
【0047】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、図8に示されるグローブボックス42に本クッション10を適用したものとして、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0048】
グローブボックス42が車両40の後方側へ回動されてグローブボックス42が開放された状態から、グローブボックス42を車両40の前方側へ回動させてグローブボックス42を閉止すると、グローブボックス42を収納するためにインスツルメントパネル44に形成された開口の周囲でインスツルメントパネル44とグローブボックス42のドア部46とが対向する。この状態で更にグローブボックス42を車両40の前方側へ回動させると、図1及び図3に示されるように、天井部18の外面(すなわち、天井部18の底部14とは反対側の面)にドア部46(第2の物体38)が当接する。これにより、天井部18に形成されている通気孔22はドア部46に閉止され、空気溜り20内の空気が通気孔22を通過してクッション本体12の外部へ流れ出ることが防止又は規制される。
【0049】
この状態で、更にグローブボックス42が車両40の前方側へ回動すると、ドア部46が天井部18を底部14の側へ押圧する。上記のように、天井部18は外周側よりも中央側で肉厚が薄いので、天井部18の中央側は外力の付与により弾性変形しやすい。このため、図4に示されるように、ドア部46により天井部18が押圧されると、先ず、筒状壁16はドア部46からの荷重に抗するが、天井部18の中央側は底部14の側へ弾性変形する。
【0050】
このように天井部18が弾性変形することで空気溜り20の容積が小さくなると、空気溜り20の容積の減少分に応じて空気溜り20内の空気が圧縮される。この空気溜り20内の空気の圧縮は天井部18を介してドア部46を押し戻すように作用する。また、上記のように、ドア部46からの荷重で変形した天井部18も、その弾性がドア部46を押し戻すように作用する。これにより、車両40の前方側へのグローブボックス42の回動速度を低減させる。
【0051】
次いで、この状態から更にドア部46が天井部18を底部14の側へ押圧し、ドア部46からの荷重は筒状壁16を弾性変形させようとする。ここで、筒状壁16は天井部18の側へ向けて漸次肉厚が薄いので、筒状壁16は天井部18側ほど変形しやすい。しかも、筒状壁16は天井部18の側へ向けて外径寸法及び内径寸法が小さくなる略円錐台形状で、その軸線方向中間部にはスリット24が形成されている。このため、筒状壁16の天井部18側の端部が底部14への向きの荷重を受けると、筒状壁16は天井部18側が半径方向内方側へ倒れるように、すなわち、筒状壁16の天井部18側の端部が底部14側の端部へ接近しつつ拉げるように変形しようとする。
【0052】
さらに、このように筒状壁16が変形しようとすると、筒状壁16はスリット24が形成されている部分やその近傍にて屈曲し、図2及び図5に示されるように、筒状壁16は拉げるように筒状壁16が弾性変形する。筒状壁16や天井部18は弾性変形することでドア部46を押し戻そうとする力は漸次増加する。しかしながら、上記のように筒状壁16が弾性変形すると、筒状壁16の周方向に沿って互いに対向するスリット24の内周面が互いに離間する。
【0053】
これにより、スリット24が開口すると、スリット24を介して空気溜り20内とクッション本体12の外部とが連通する。このため、上記のようにドア部46からの荷重で筒状壁16が弾性変形して空気溜り20の容積が小さくなると、空気溜り20内の空気はスリット24を通過してクッション本体12の外部へ放出される。したがって、この状態では、上記のように、筒状壁16及び天井部18の弾性に基づいたドア部46を押し戻す力は増大するものの、空気溜り20内の空気の圧縮に基づいたドア部46を押し戻す力はなくなる。
【0054】
ドア部46を押し戻す反発力は、筒状壁16及び天井部18の弾性に基づく力と空気溜り20内の空気の圧縮に基づく力の合力であるので、空気溜り20内の空気の圧縮に基づく力がなくなることで、筒状壁16及び天井部18の弾性に基づく力の増加分が相殺される。このため、スリット24が筒状壁16に形成されていないが故に空気溜り20内の空気の圧縮に基づく力が増加し続ける構成に比べて、上記の合力の増加を低減又は防止できる。このため、クッション10が過剰に大きな力でドア部46を押し戻すことがない。
【0055】
このように、本クッション10では、筒状壁16を弾性変形させるだけの荷重がドア部46から付与された状態でも、ドア部46を押し戻そうとする力の増加を防止又は低減できるので、例えば、インスツルメントパネル44におけるクッション10の装着位置の精度やクッション本体12自体の寸法精度が低く、予め定められていた位置よりも天井部18がインスツルメントパネル44から離間するような状態でクッション10が取り付けられた場合でも、グローブボックス42がインスツルメントパネル44に設けられたラッチ等のロック手段にロックされるまで容易に回動させることができる。
【0056】
また、これとは逆に予め定められていた位置よりも天井部18がインスツルメントパネル44の側に位置するようにクッション10が取り付けられた場合には、上記のロック手段でグローブボックス42がロックされた状態でもドア部46を押し戻そうとする力をドア部46に作用させることができるので、グローブボックス42がロックされた状態においてドア部46、すなわち、グローブボックス42のがたつきの発生を防止又は効果的に抑制できる。
【0057】
次いで、この状態から更にグローブボックス42が回動すると、筒状壁16が更に拉げるように弾性変形し、図6に示されるように、筒状壁16の軸線方向中間部よりも天井部18の側での内周部と底部14の側での内周部とが接する。この状態では、筒状壁16はこれまでに説明した筒状壁16の拉げるような弾性変形はできなくなり、代わって、筒状壁16自身がドア部46からの荷重で圧縮されるように変形する。このような変形には上記のような拉げる態様の弾性変形よりも大きな荷重を要するので、それ以上のドア部46の回動を規制する。これにより、ドア部46がインスツルメントパネル44に衝突することを防止又は効果的に抑制できる。
【0058】
一方、空気溜り20内に干渉プレート82を設けると、図7に示されるように、干渉プレート82の天井部18側の面に天井部18が接するまで筒状壁16が弾性変形した状態で、筒状壁16は、それ以上拉げるような弾性変形はできなくなり、代わって、筒状壁16自身がドア部46からの荷重で圧縮されるように変形するようになる。干渉プレート82を設けていない場合には、底部14に天井部18が接するまで筒状壁16が弾性変形すると、筒状壁16は、それ以上拉げるような弾性変形はできなくなるので、空気溜り20内に干渉プレート82を設けることで、筒状壁16が拉げるような筒状壁16の弾性変形を終了させるタイミングを早くすることができる。
【0059】
このため、例えば、インスツルメントパネル44におけるクッション10の装着位置の精度やクッション本体12自体の寸法精度が低く、天井部18がインスツルメントパネル44の側に位置するようにクッション10が取り付けられた場合には、空気溜り20内に干渉プレート82を設けることで、予め設定された位置にクッション10が装着された場合と同様のタイミングで筒状壁16が拉げるような筒状壁16の弾性変形を終了させることができる。
【0060】
また、例えば、図8に示される小物入れ52や図9に示されるコンソールボックス60等、クッション10が装着される部位が変わると、筒状壁16が拉げるような筒状壁16の弾性変形を終了させるタイミングが変わることがある。しかしながら、上記のように、空気溜り20内に干渉プレート82を設けることでそのタイミングを変えることができるので、クッション10の装着位置が変わったとしても、同じクッション本体12や取付基部30を適用できる。
【0061】
しかも、干渉プレート82は、空気溜り20内(クッション本体12内)に設けられているので、インスツルメントパネル44へのクッション10の装着前やインスツルメントパネル44へのクッション10の装着後にクッション本体12から干渉プレート82が脱落することがない。このため、干渉プレート82を設けることで調整された筒状壁16の弾性変形のタイミングを長期に亘り良好に維持できる。
【0062】
さらに、上記のように、本クッション10では、筒状壁16の軸線周りに同じ長さのスリット24を一定間隔毎に形成している。このため、ドア部46からの荷重で筒状壁16はその周方向に沿って略均一に弾性変形が生じる。これにより、クッション10の性能(効果)を安定させることができる。しかも、同じ長さのスリット24を一定間隔毎に形成しているので、筒状壁16の軸線周りのクッション10の装着位置を厳しく設定しなくてもよく、この意味でも、クッション10の性能(効果)を安定させることができる。
【0063】
また、請求項1に記載の本発明の観点からすれば、スリット24とは異なる弁を筒状壁16に設けてこれまでに説明した作用と同様の作用を生じさせてもよいが、本実施の形態では、特別な弁を設けなくても筒状壁16にスリット24を形成するだけでよいので、コストが安価である。
【0064】
なお、本実施の形態では、筒状壁16におけるスリット24の貫通方向が、筒状壁16の軸線を中心とした半径方向であったが、スリット24の態様がこれに限定されるものではない。すなわち、スリット24は筒状壁16が弾性変形することで開口すればよいのであるから、筒状壁16におけるスリット24の貫通方向が、筒状壁16の軸線を中心とした半径方向に対して筒状壁16の外周面における接線方向に傾斜していてもよいし、筒状壁16の軸線方向に傾斜していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態に係るクッションを一部破断した斜視図である。
【図2】クッション本体が弾性変形してスリットが開口した状態を示すクッションの斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るクッションの断面図である。
【図4】スリットが開放されない程度にクッション本体が弾性変形した状態を示す図3に対応した断面図である。
【図5】クッション本体が弾性変形してスリットが開口した状態を示す図3に対応した断面図である。
【図6】それ以上拉げるような弾性変形が不能な状態まで変形した状態を示す図3に対応した断面図である。
【図7】干渉手段を設けた構成を示す図6に対応した断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るクッションの適用例を示す車両室内の斜視図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るクッションの適用例を示すコンソールボックスの斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
10 クッション
12 クッション本体(弁)
24 スリット
36 第1の物体
38 第2の物体
82 干渉プレート(干渉手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物体に対し第2の物体が相対的に接近移動可能な構造に適用され、前記第1の物体と前記第2の物体とが接近したことで生じる衝撃を防止又は緩和するためのクッションであって、
内側に空気溜りを有する中空形状に形成されて前記第1の物体に取り付けられ、前記第1の物体に前記第2の物体が接近することで前記第2の物体に当接し、前記第2の物体からの荷重で前記空気溜り内の空気が圧縮されるクッション本体と、
前記クッション本体に設けられ、前記クッション本体の外部と前記空気溜りとの間を遮断すると共に、前記クッション本体の弾性変形に伴い開放されて前記クッション本体の外部と前記空気溜りとの間を連通させる弁と、
を備えるクッション。
【請求項2】
前記クッション本体に前記第2の物体が当接した際の前記クッション本体と前記第2の物体との対向方向に対して交差する向きに前記クッション本体を貫通し、前記クッション本体が弾性変形していない状態では閉じられて前記空気溜りから前記クッション本体の外部への前記空気の流出を防止又は抑制すると共に、前記クッション本体の変形により開口して前記空気溜りから前記クッション本体の外部への前記空気の流出を許容するスリットを前記クッション本体に形成して、前記クッション本体における前記スリットが形成された部位を前記弁とした請求項1に記載のクッション。
【請求項3】
前記クッション本体に前記第2の物体が当接した際の前記クッション本体と前記第2の物体との対向方向を軸方向とする軸周りに前記スリットを一定間隔毎に前記クッション本体に形成した請求項2に記載のクッション。
【請求項4】
前記クッション本体に設けられて、前記第2の物体からの荷重による前記クッション本体の弾性変形で、前記第2の物体との前記クッション本体の当接部分が一定ストローク移動することで前記クッション本体の前記当接部分に干渉して、前記クッション本体の弾性変形を抑制する干渉手段を備える請求項1から請求項3の何れか1項に記載のクッション。
【請求項5】
前記干渉手段を前記空気溜り内に設けた請求項4に記載のクッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−112542(P2010−112542A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288068(P2008−288068)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】