説明

ケイ素含有化合物、該化合物を含有する組成物及び絶縁材料

【課題】 低誘電率でかつクラック耐性、耐熱性、化学的機械的研磨(CMP)耐性に優れる、特に2.4以下の低い比誘電率を有する高信頼性の絶縁膜などの絶縁材料を形成可能な組成物を提供する。
【解決手段】 一般式(1)により表される化合物などの特定のケイ素含有化合物、その加水分解物、または縮合物を含有することを特徴とする絶縁膜形成用組成物及びそれを用いて形成される絶縁膜などの絶縁材料。
nSiX(4-n) (1)
式中、nは1〜3の自然数を表す。Aは、置換基を有していても良い、炭素原子11個以上で形成されるカゴ型構造を含有する基であり、Xは加水分解性基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜などの絶縁材料の形成に有用なケイ素含有化合物、さらに詳しくは、半導体素子などにおける層間絶縁膜材料として、適当な均一な厚さを有する塗膜が形成可能な、しかもクラックが生じ難く、誘電率特性などに優れた絶縁膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などにおける層間絶縁膜として、気相成長(CVD)法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO2)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低誘電率の層間絶縁膜が開発されている。
【0003】
また、シロキサン上にアダマンチル基を導入することによって耐熱性と低誘電率を両立する方法が試みられている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−302791号公報
【0005】
しかしながら、半導体素子などのさらなる高集積化や多層化に伴い、より優れた導体間の電気絶縁性が要求されており、より低誘電率でかつクラック耐性、耐熱性、化学的機械的研磨(CMP)耐性に優れる層間絶縁膜材料が求められるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記したような従来の技術の問題点を解決して、2.4以下の低い比誘電率を有する高信頼性の絶縁膜を形成可能な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段より達成されることが見出された。
(1) 一般式(1)により表される化合物、加水分解物、または縮合物を含有することを特徴とする絶縁膜形成用組成物。
nSiX(4-n) (1)
【0008】
式中、nは1から3の自然数を表す。Aは、置換基を有していてもよい、炭素原子11個以上で形成されるカゴ型構造を含有する基であり、Xは加水分解性基を表す。
【0009】
(2) 一般式(1)において、Aにジアマンチル基を含有することを特徴とする(1)の絶縁膜形成用組成物。
(3)(1)または(2)の絶縁膜形成用組成物から形成された絶縁膜。
【0010】
(4) 一般式(2)で表される化合物を加水分解、縮合して得られるケイ素酸素架橋化合物。
【0011】
【化1】

【0012】
一般式(2)中、X1は、加水分解性基を表し、R1は、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、n1は1〜3の整数を表し、m1は2以上の整数を表す。L1は、2価の連結基を表し、Aは、炭素原子11個以上で形成されるかご型構造を含有する基を表す。
【0013】
(5) 一般式(2)において、Aがジアマンチル基を含有することを特徴とする上記(4)に記載のケイ素酸架橋化合物。
【0014】
(6) 一般式(3)で表される化合物。
【0015】
【化2】

【0016】
一般式(3)中、X31〜X34はそれぞれ、加水分解性基を表し、R31〜R34はそれぞれ、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、n31〜n34は1〜3の整数を表し、m31+m32+m33+m34は、1〜4の整数を表す。L31〜L34はそれぞれアルキレン、ビニレン、アリーレン、−O−、−S−、−CO−、−NR'−(R'は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)又はこれらの基を組み合わせた2価の連結基を表す。
【0017】
(7) 一般式(3)中、L31〜L34が、エチレン又はビニレンであることを特徴とする上記(6)に記載の化合物。
【0018】
(8) 一般式(3)中、m31+m32+m33+m34が2であることを特徴とする上記(6)または(7)に記載の化合物。
【0019】
(9)上記(4)に記載の一般式(2)で表される化合物、その加水分解物及び/又は縮合物、及び、有機溶剤及び/又は水を含有することを特徴とする組成物。
【0020】
(10) 上記(6)に記載の一般式(3)で表される化合物、その加水分解物及び/又は縮合物、及び、有機溶剤及び/又は水を含有することを特徴とする組成物。
【0021】
(11) 上記(9)又は(10)に記載の組成物を用いて形成された絶縁材料。
(12) 上記(9)又は(10)に記載の組成物を用いて形成された絶縁膜。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、2.4以下の低比誘電率を有するとともに、吸湿等に原因する欠陥を有しない高信頼性の絶縁膜を形成可能な新規な絶縁膜形成用組成物が得られる。本発明は、特に、多層配線構造を有する半導体装置の応答速度の向上に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の絶縁膜形成用組成物は、上記したように、一般式(1)により表されるシラン化合物(以降、シラン化合物(1)という)を含むことを特徴とするものである。この組成物を使用すると、得られる絶縁膜に対して、2.4以下の非常に低い比誘電率や高い信頼性を付与することができる。
【0024】
一般式(1)において、Aは炭素原子11個以上で形成されるカゴ型構造を含有する基(カゴ型構造含有基)である。なお、カゴ型構造含有基は、カゴ型構造自体の一価の基であってもよい。
「カゴ構造」とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができなような構造である。
【0025】
例えば、アダマンタン構造はカゴ型構造と考えられる。対照的にノルボルナン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)などの単一架橋を有する環状構造は、単一架橋した環状化合物の環が容積を定めないことから、カゴ型構造とは考えられない。
【0026】
本発明のカゴ型構造は少なくとも11個以上の炭素原子で構成されることが特徴である。カゴ型構造は、好ましくは11〜30個、より好ましくは12〜20個、さらに好ましくは12〜14個の炭素原子で構成される。炭素原子数が11個以上であることで、充分な誘電率特性が得られる。
ここでいう炭素原子にはカゴ型構造に置換した連結基や置換基の炭素原子を含めない。例えば、1−メチルアダマンタンは10個の炭素原子で構成されるものとする。
【0027】
本発明のカゴ型構造を有する化合物は飽和の脂肪族炭化水素であることが好ましく、例えば、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ドデカヘドラン等が挙げられ、特に低誘電率、塗布溶剤への良好な溶解性さらには絶縁膜中のブツ発生抑制の点でジアマンタンが好ましい。
【0028】
本発明におけるカゴ型構造は1つ以上の置換基を有していても良く、置換基の例としては、−Si(Am)(X)(3-m)(mは0〜2の整数を表す。A及びXは式(1)におけるものと同義である。)、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニル等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリル等)等である。さらに好ましい置換基はフッ素原子、臭素原子、炭素数1〜5の直鎖、分岐、環状のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルキニル基、シリル基である。これらの置換基はさらに別の置換基で置換されていてもよい。
【0029】
本発明におけるカゴ型構造は2〜4価であることが好ましい。より好ましくは、2または3価であり、特に好ましくは2価である。
【0030】
Aとしてのカゴ型構造含有基とケイ素原子の結合は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り、そのカゴ型構造含有基の任意の位置で行うことができる。
好ましくは、カゴ型構造とケイ素原子とを連結する基を構成する原子数(置換基を含まない最短経路上に存在する原子数)が6以下であり、カゴ型構造とケイ素原子とが直結していることが特に好ましい。
【0031】
Xとしての加水分解性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シリルオキシ基などが挙げられる。Xとして好ましいのは、置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基など)である。
【0032】
n=2または3の場合、複数のRは互いに同じ基であってもよいし、異なっていてもよい。n=1または2の場合、複数のXは互いに同じ基であってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
式(1)で表される化合物として、下記式により表される化合物が好ましい。なお、下記式におけるXはアルコキシ基である。
【0034】
【化3】

【0035】
また、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0036】
【化4】

【0037】
一般式(2)中、X1は、加水分解性基を表し、R1は、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、n1は1〜3の整数を表し、m1は2以上の整数を表す。L1は、2価の連結基を表し、Aは、炭素原子11個以上で形成されるかご型構造を含有する基を表す。
1としての加水分解性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シリルオキシ基、水酸基などが挙げられる。X1として好ましいのは、置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基など)である。
【0038】
1は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。R1で表されるアルキル基の好ましい例としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基(例えば炭素数1〜20のアルキル基、好ましくはメチル基やエチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられ、R1で表されるアリール基の好ましい例としては、炭素数6〜20の置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、R1で表されるヘテロ環基の好ましい例としては、置換又は無置換のへテロ6員環(ピリジル、モルホリノ基、テトラヒドロピラニル等)、置換又は無置換のヘテロ5員環(フリル、チオフェン基、1,3−ジオキソラン−2−イル基等)等が挙げられる。
【0039】
n1=2または3の場合、複数のX1は互いに同じ基であっても、異なっていてもよい。n1=1の場合、複数のR1は互いに同じ基であっても、異なっていてもよい。
【0040】
1は2価の連結基を表す。連結基の例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR'−(R'は水素原子、アルキル基またはアリール基)、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基等が挙げられる。上記連結基のうち、好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基であり、特に好ましくはエチレン基、ビニレン基である。
【0041】
Aがジアマンタンのときm1は2〜4が好ましく、トリアマンタンのときm1は2〜6が好ましい。
【0042】
一般式(2)で表される化合物として、一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化5】

【0044】
一般式(3)中、X31〜X34はそれぞれ、加水分解性基を表し、R3〜R34はそれぞれ、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、n31〜n34は1〜3の整数を表し、m31+m32+m33+m34は、1〜4の整数を表す。L31〜L34はそれぞれアルキレン、ビニレン、アリーレン、−O−、−S−、−CO−、−NR'−(R'は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)又はこれらの基を組み合わせた2価の連結基を表す。
31〜X34で表される加水分解性基は、X1で表されるそれと同義であり、好ましい態様も同様である。
31〜R34で表されるアルキル基、アリール基又はヘテロ環基は、R1で表されるそれと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0045】
一般式(2)で表される化合物の具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0046】
【化6】

【0047】
【化7】


【0048】
一般式(1)で表される化合物(シラン化合物(1))の分子量は、一般的には250〜1000、好ましくは280〜700である。
一般式(2)で表される化合物(シラン化合物(2))の分子量は、一般的には400〜2000、好ましくは450〜1500である。
【0049】
シラン化合物(1)又は(2)は、シリコンの化学において広く知られた技法を使用して容易に調製することができ、例えば、対応する不飽和基を有する化合物に遷移金属錯体触媒の共存下で対応するシラン化合物を付加するヒドロシリル化反応あるいはハロゲン化されたカゴ型構造含有化合物とGrignard試薬との反応により容易に合成できる。
【0050】
本発明の絶縁膜形成用組成物は、これらのシラン化合物を単独で使用しても、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
また、シラン化合物(1)又は(2)とともに、絶縁膜形成用組成物に添加される、公知なシリコン化合物(例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなど)を併用してもよい。
【0052】
材料の膜特性を向上させるため、必要に応じて、添加してもよい他のシラン化合物の例として、下記一般式(A)で表される有機ケイ素化合物又はそれらをモノマーとするポリマーが挙げられる。
【0053】
【化8】

【0054】
一般式(A)中、Raはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Rbは、水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表す。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
qは0〜4の整数を表し、q又は4−qが2以上のとき、Ra又はRbはそれぞれ同一でも異なってもよい。また、該化合物同士は、Ra又はRbの置換基により互いに連結し、多量体を形成してもよい。
【0055】
qは0〜2が好ましく、Rbはアルキル基が好ましい。さらにqが0のときの好ましい化合物の例としては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)等が挙げられ、qが1又は2のときの好ましい化合物の例としては以下の化合物が挙げられる。
【0056】
【化9】

【0057】
一般式(A)で表される化合物など他のシラン化合物を併用する場合、シラン化合物(1)及び/または(2)に対して、1〜200モル%の範囲で用いるのが好ましく、10〜100モル%の範囲で用いるのがより好ましい。
【0058】
上記シラン化合物(1)及び/または(2)、必要により他のシラン化合物を併用して、加水分解・縮合して、ケイ素酸素架橋化合物を得る。なお、ケイ素酸素架橋構造とは、縮合により自ずと形成されるシロキサン結合(−(Si−O)n−)からなる架橋構造を指す。
【0059】
シラン化合物を加水分解、縮合させる際に、シラン化合物(1)及び/または(2)、必要により他のシラン化合物を含むシラン化合物の総量1モル当たり0.5〜150モルの水を用いることが好ましく、1〜100モルの水を加えることが特に好ましい。添加する水の量は、膜の耐クラック性の点から0.5モル以上が好ましく、加水分解および縮合反応中のポリマーの析出やゲル化防止の点から150モル以下が好ましい。
【0060】
シラン化合物を加水分解、縮合させる際に、アルカリ触媒、酸触媒、又は金属キレート化合物を使用することが好ましい。
【0061】
アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム
、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、
【0062】
ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリメチルイミジン、1−アミノ−3−メチルブタン、ジメチルグリシン、3−アミノ−3−メチルアミンなどを挙げることができ、アンモニア、アミンあるいはアミン塩が好ましく、アンモニア、有機アミンあるいは有機アミン塩が特に好ましく、アンモニア、アルキルアミン、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドが最も好ましい。これらのアルカリ触媒は1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0063】
酸触媒としては、無機あるいは有機のプロトン酸が好ましい。無機プロトン酸としては、塩酸、硫酸、フッ酸、リン酸類(H3PO4、H3PO3、H427、H5310、メタリン酸、ヘキサフルオロリン酸など)、硼酸、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロ硼酸、ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸など、あるいはタングストリン酸、タングテンペルオキソ錯体などの固体酸等が挙げられる。
有機プロトン酸としては、カルボン酸類(シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メロット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、p−アミノ安息香酸、ギ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物、トリフルオロ酢酸、安息香酸、置換安息香酸など)、リン酸エステル類(例えばC数1〜30、リン酸メチルエステル、リン酸プロピルエステル、リン酸ドデシルエステル、リン酸フェニルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジドデシルエステルなど)、亜リン酸エステル類(例えばC数1〜30、亜リン酸メチルエステル、亜リン酸ドデシルエステル、亜リン酸ジエチルエステル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジドデシルエステルなど)、スルホン酸類(例えばC数1〜15、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ヘキサフルオロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸など)、カルボン酸類(シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、置換安息香酸など)、イミド類(例えばビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸、トリフルオロメタンスルホニルトリフルオロアセトアミドなど)、ホスホン酸類(例えばC数1〜30、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸、1,5−ナフタレンビスホスホン酸など)などの低分子化合物、あるいは、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート(特開2001−114834号)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(特開平6−93111号)、スルホン化ポリエーテルスルホン(特開平10−45913号)、スルホン化ポリスルホン(特開平9−245818号)などのプトロン酸部位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0064】
金属キレート化合物としては、例えば、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)
チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、
【0065】
モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、
【0066】
モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタンなどのチタンキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、
【0067】
トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトア
セテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、
【0068】
トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、
【0069】
テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物;などを挙げることができ、好ましくはチタンまたはアルミニウムのキレート化合物、特に好ましくはチタンのキレート化合物を挙げることができる。これらの金属キレート化合物は、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0070】
上記触媒及びキレート化合物の使用量は、総量として、シラン化合物の1モルに対して、通常0.00001〜10モル、好ましくは0.00005〜5モルである。触媒の使用量が上記範囲内であれば、反応中のポリマーの析出やゲル化の恐れが少ない。
【0071】
シラン化合物を加水分解及び縮合する温度は通常0〜100℃、好ましくは10〜90℃である。時間は通常5分〜200時間、好ましくは15分〜40時間である。
【0072】
加水分解、縮合に用いる溶媒は、溶質であるシラン化合物を溶解するものであれば特に制限はないが、好ましくはケトン類(シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等)、カーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピ
ル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、γ-ブチロラクトン、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン極性物質(ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン、メシチレン等)、塩素系溶媒(メチレンジクロリド、エチレンジクロリド等)、ジイソプロピルベンゼン、水等を用いることができる。
【0073】
上記の中でも、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、エチレンカーボネートなどのカーボネート類、シクロヘキサノンなどのケトン類、非プロトン性極性物質、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、非極性溶媒、水が好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記の中でも、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンを挙げることができる。
【0075】
〔組成物〕
本発明の組成物は、通常、シラン化合物自体、上記で調製された該シラン化合物の加水分解物及び縮合物の少なくともいずれかを、必要により、加水分解、縮合に用いる溶媒として例示したような有機溶剤、水などの溶媒に溶解して調製される。この組成物調製時の溶媒は、加水分解、縮合に用いる溶媒として同じでも異なっていてもよい。
【0076】
本発明の組成物の全固形分濃度は、好ましくは、2〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。組成物の全固形分濃度が2〜30質量%であると、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、また組成物の保存安定性もより優れるものである。
【0077】
本発明の組成物を塗布、乾燥、好ましくは加熱することにより、良好な絶縁材料を形成することができる。特に、良好な絶縁膜を提供することができる。
【0078】
本発明の組成物を、シリコンウエハ、SiO2 ウエハ、SiNウエハなどの基材に塗布する際には、スピンコート、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗装手段が用いられる。
【0079】
この際の膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜1.5μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜3μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは80〜600℃程度の温度で、通常、5〜240分程度加熱することにより、ガラス質または巨大高分子、またはその混合物の絶縁膜を形成することができる。この際の加熱方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することが出来、加熱雰囲気としては、大気下、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空下、酸素濃度をコントロールした減圧下などで行うことができる。
【0080】
より具体的には、本発明の組成物を、例えばスピンコート法により、基板(通常は金属
配線を有する基板)上に塗布し、300℃以下の温度で第一の熱処理を行うことにより溶媒を乾燥させるとともに、組成物に含まれるシロキサンを架橋させ、次いで300℃より高く450℃以下の温度(好ましくは330〜400℃)で、一般的には1分〜10時間、第二の熱処理(アニール)を行うことにより低誘電率の絶縁膜を形成できる。
【0081】
本発明の組成物に、熱分解性化合物などの空孔形成剤をくわえてもよい。空孔形成剤としては、例えば、特表2002−530505号に記載されている気孔発生体が挙げられる。
【0082】
本発明の組成物により形成した絶縁膜の上には、シリコン酸化膜等の別の絶縁膜を、例えば気相成長法等により、形成してもよい。これは、本発明により形成した絶縁膜を外気と遮断し、膜中に残留している水素やフッ素の減少を抑制するのに効果があるからである。また、この別の絶縁膜は、その後の工程での処理(例えばCMPによる平坦化等の処理)で本発明による絶縁膜が損傷を被るのを防止するのにも有効である。
【実施例】
【0083】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。なお、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0084】
〔合成例1: ジアマンチルトリエトキシシランの合成〕
マグネシウム1.5g(62ミリモル)とテトラエトキシシラン(TEOS)45ml(200ミリモル)とジブチルエーテル30mlの溶液に、触媒量のヨウ素を加え、60℃に加温した。そこにジブチルエーテル50mlに溶解させた11.0g(41ミリモル)の4−ブロモジアマンタンを滴下した後、得られた溶液をろ過した。ろ液をロータリーエバポレータにかけてジブチルエーテルとTEOSを除去した後、残ったろ液をベンゼンに溶解し、さらに凍結乾燥し、目的とするジアマンチルトリエトキシシラン10.5g(30ミリモル)が得られた。
【0085】
〔実施例1: 絶縁膜の作製及び誘電率の測定〕
攪拌機、温度計及び滴下漏斗を装備したフラスコ中で前記調製例1で調製した20ミリモルのジアマンチルトリエトキシシランをシクロヘキサノンに溶解して20質量%の溶液を調製した。60ミリモルの硝酸水溶液(濃度200ppm)をフラスコに滴下し、反応系内を60℃に加熱して2時間にわたって攪拌した。フラスコ内の溶液を室温まで冷却した後、攪拌を停止し、減圧濃縮して水を除き、さらにろ過を行った。
【0086】
上記のようにして調製したジアマンチルトリエトキシシランを含む塗布溶液をシリコン基板上に膜厚4000Aでスピンコートし、ホットプレート上で150℃で1分間にわたって乾燥を行い、溶剤を除去した。次いで、乾燥後のシリコン基板をクリーンオーブンに移し、酸素濃度10ppm以下の窒素中で400℃で30分間にわたって熱処理を行った。目的とする絶縁膜が得られた。
【0087】
温度24℃湿度50%の条件で24時間放置した後、フォーディメンジョンズ社製水銀プローブとヒューレットパッカード社製HP4285A LCRメーターを用い1MHzで比誘電率を測定したところ、2.3であった。
【0088】
〔比較例1: 絶縁膜の作製及び誘電率の測定〕
比較のため、アダマンチルトリエトキシシランを用いて実施例1と同様の条件で試験を行ったところ比誘電率は2.5であった。
【0089】
〔合成例2:化合物2−1の合成〕
【0090】
【化10】

【0091】
窒素気流中で、M−1(4.7g)と白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(アルドリッチ社製)20μlをトルエン25mlに溶解し、80℃に加熱した。そこへ、トリエトキシシラン(8.3g)を発熱に注意しながら徐々に滴下した。滴下終了後、さらに同温度で1時間反応させた後、反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、7.4gの2−1(白色結晶)を得た。
【0092】
〔合成例3:化合物2−3の合成〕
合成例2において、トリエトキシシランの替わりにジエトキシメチルシラン6.7gを用いたほかは同様の方法にて、6.5gの2−3(白色結晶)を得た。
【0093】
〔合成例4:化合物2−7の合成〕
【0094】
【化11】

【0095】
(M−2)の合成:窒素気流下、M−1(11g)をトルエン50ml中に懸濁し、氷水で冷却した。混合物に1Mジイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液100mlを添加した。添加後、氷水をはずした。反応液は30℃まであがり、均一な溶液になったあと、白い沈殿物が生じた。室温で3時間撹拌したあと、反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液200mlにゆっくり加えた。混合物をセライトでろ過し、ろ液を酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、8.9gのM−2(白色結晶)を得た。
【0096】
2−7の合成:窒素気流中で、M−2(2.0g)と白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(アルドリッチ社製)20μlをトルエン10mlに溶解し、80℃に加熱した。そこへ、トリエトキシシラン(3.3g)を発熱に注意しながら徐々に滴下した。滴下終了後、さらに同温度で1時間反応させた後、反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、3.8gの2−7(白色結晶)を得た。
【0097】
〔合成例5:化合物2−9の合成〕
合成例4において、トリエトキシシランの替わりにジエトキシメチルシラン(2.7g)を用いたほかは同様の方法にて、3.5gの2−9(白色結晶)を得た。
【0098】
〔実施例2:塗布液の作製〕
合成例2で調製した化合物2−1(4.4g)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)17.6gに溶解した溶液中に、70%硝酸7mgを溶解させた水0.6mlを滴下し、反応液を室温で5時間撹拌した。その後、撹拌を停止し、減圧濃縮して低沸点物質、水を除き、さらにろ過を行った。この溶液に、PGMEを11g添加し、塗布液を調製した。
【0099】
〔実施例3:塗布液の作製〕
合成例3で調製した化合物2−3(4g)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)16gに溶解した溶液中に、70%硝酸7mgを溶解させた水0.6mlを滴下し、反応液を室温で5時間撹拌した。その後、撹拌を停止し、減圧濃縮して低沸点物質、水を除き、さらにろ過を行った。この溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を11g添加し、塗布液を調製した。
【0100】
〔実施例4:塗布液の作製〕
合成例4で調製した化合物2−7(4.5g)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)18gに溶解した溶液中に、70%硝酸7mgを溶解させた水0.6mlを滴下し、反応液を室温で5時間撹拌した。その後、撹拌を停止し、減圧濃縮して低沸点物質、水を除き、さらにろ過を行った。この溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を11g添加し、塗布液を調製した。
【0101】
〔実施例5:塗布液の作製〕
合成例5で調製した化合物2−9(4g)をプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGP)16gに溶解した溶液中に、70%硝酸7mgを溶解させた水0.6mlを滴下し、反応液を室温で5時間撹拌した。その後、撹拌を停止し、減圧濃縮して低沸点物質、水を除き、さらにろ過を行った。この溶液に、PGMEを11g添加し、塗布液を調製した。
【0102】
〔実施例6:塗布液の作製〕
化合物2−3(3g)とTEOS(1g)をPGME16gに溶解した溶液中に、70%硝酸9.7mgを溶解させた水0.77mlを滴下し、反応液を室温で5時間撹拌した。その後、撹拌を停止し、減圧濃縮して低沸点物質、水を除き、さらにろ過を行った。この溶液に、PGPを8g添加し、塗布液を調製した。
【0103】
〔絶縁膜の作製と誘電率の測定〕
上記のようにして調製した塗布溶液をシリコン基板上に膜厚4000Aになるようにスピンコートし、ホットプレート上で150℃1分間にわたって乾燥を行い、溶剤を除去した。次いで,乾燥後のシリコン基板をクリーンオーブンに移し、酸素濃度10ppm以下の窒素中で400℃で30分間にわたって熱処理を行った。目的とする絶縁膜が得られた。
【0104】
温度24℃湿度50%の条件で24時間放置した後、フォーディメンジョンズ社製水銀プローブとヒューレットパッカード社製HP4285A LCRメーターを用い1MHzで比誘電率を測定した。
比誘電率の測定結果を、先の実施例1及び比較例1の結果とともに、表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
本発明に従った実施例の絶縁膜は、誘電率が小さいことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)により表される化合物、加水分解物、または縮合物を含有することを特徴とする絶縁膜形成用組成物。
nSiX(4-n) (1)
式中、nは1〜3の自然数を表す。Aは、置換基を有していてもよい、炭素原子11個以上で形成されるカゴ型構造を含有する基であり、Xは加水分解性基を表す。
【請求項2】
一般式(1)において、Aがジアマンチル基を含有することを特徴とする請求項1の絶縁膜形成用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の絶縁膜形成用組成物から形成された絶縁膜。
【請求項4】
一般式(2)で表される化合物を加水分解、縮合して得られるケイ素酸素架橋化合物。
【化2】

一般式(2)中、X1は、加水分解性基を表し、R1は、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、n1は1〜3の整数を表し、m1は2以上の整数を表す。L1は、2価の連結基を表し、Aは、炭素原子11個以上で形成されるかご型構造を含有する基を表す。
【請求項5】
一般式(2)において、Aがジアマンチル基を含有することを特徴とする請求項4に記載のケイ素酸架橋化合物。
【請求項6】
一般式(3)で表される化合物。
【化3】

一般式(3)中、X31〜X34はそれぞれ、加水分解性基を表し、R31〜R34はそれぞれ、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、n31〜n34は1〜3の整数を表し、m31+m32+m33+m34は、1〜4の整数を表す。L31〜L34はそれぞれアルキレン、ビニレン、アリーレン、−O−、−S−、−CO−、−NR'−(R'は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)又はこれらの基を組み合わせた2価の連結基を表す。
【請求項7】
一般式(3)中、L31〜L34が、エチレン又はビニレンであることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
一般式(3)中、m31+m32+m33+m34が2であることを特徴とする請求項6または
7に記載の化合物。
【請求項9】
請求項4に記載の一般式(2)で表される化合物、その加水分解物及び/又は縮合物、及び、有機溶剤及び/又は水を含有することを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項6に記載の一般式(3)で表される化合物、その加水分解物及び/又は縮合物、及び、有機溶剤及び/又は水を含有することを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の組成物を用いて形成された絶縁材料。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の組成物を用いて形成された絶縁膜。

【公開番号】特開2006−16596(P2006−16596A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75136(P2005−75136)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】