説明

ケーブル保持具

【課題】組み付け作業性が良く、かつ汎用性が高いケーブル保持具を提供する。
【解決手段】1本弾性材からなる線材を曲成して、円筒コイル状のケーブル保持部分12aと、ケーブル保持部分から延出する弾性部分12bと、弾性部分の延出方向端部にて円環状に形成された固定部分12cとによりケーブル保持具12を形成する。ナックルに車輪速センサ7が固定され、車輪速センサから延出されたケーブル11のナックルアームを横切る部分をケーブル保持部分により外囲するように保持し、固定部分を固定ボルトでナックルアームに固定する。固定部分とケーブル保持部との間を弾性変形可能にしており、レイアウトの変更に対して弾性部分の形状変更により対応でき、車種毎に形状を決める必要が生じる金属ブラケットに対して、高い汎用性を有するケーブル保持具を提供し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル保持具に関し、特に、使用中に揺動運動するケーブルの中間部を保持するためのケーブル保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車の車輪の回転を検出する車輪速センサは車輪と一体の部材(例えば車軸を支持する部材)に固設され、車輪速センサから延出する信号線としてのケーブルの制御装置側が車体に固定されているものがある。車輪は走行中に車体に対してサスペンションの運動に伴って主に上下動し、また前輪は転動するため、上記ケーブルの中間部を例えばサスペンションの一部にケーブル保持具を介して固定するようにしている。
【0003】
また、車輪速センサは車輪の近傍に配置されるため、センサ本体を樹脂モールドしたものがある(例えば特許文献1)。また、別々に配線された2本の二芯ケーブルを集合位置で四極コネクタに接続し、二芯ケーブル同士が擦れ合うことを防止するようにしたものがある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−66056号公報
【特許文献2】特開平11−304829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のようにセンサ本体を樹脂モールドした場合にはセンサ本体部分が太くなり、それに対してケーブルは細いため、例えば板状の金属ブラケットによりケーブル保持具を形成した場合にはモールド前に金属ブラケットを取り付けることになる。また、ケーブル保護のためにラバー製等の柔らかい保持体を介装する等の必要があり、取り付け作業が煩雑化するという問題がある。
【0006】
上記特許文献2においても、二芯ケーブルの集合位置における擦れ合いは防止されるが、車輪速センサとの間では適所をブラケットやクリップにより車体に固定されており、上記同様の問題がある。また、金属ブラケットの場合には車種毎のレイアウトに応じた適切な形状とすることができる反面、重量増や、レイアウトに変更が生じた場合にはプレス型の修正から行わなければならず、汎用性に欠けるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決して、組み付け作業性が良く、かつ汎用性が高いケーブル保持具を提供するために、本発明に於いては、車両の可動部分(4)に固設されたセンサ本体(7a)から延出されたケーブル(11)の中間部を保持しかつ該車両の一部(1・13)に固定されるケーブル保持具(12)であって、前記ケーブルの中間部を保持するケーブル保持部分(12a)と、前記ケーブル保持部部から延出されかつ前記ケーブルの揺動運動に追従して弾性変形可能に形成された弾性部分(12b)と、前記弾性部分の前記ケーブル保持部分とは相反する側に一体に形成されかつ前記車両の一部に固定される固定部分(12c)とを有するものとした。
【0008】
これによれば、ケーブル保持部分と固定部分との間に弾性部分が設けられていることから、弾性部分の変形許容範囲内での自由なレイアウトによる取り付けが可能となり、車種毎に形状を決める必要が生じる金属ブラケットに対して、高い汎用性を有する。
【0009】
特に、前記ケーブル保持部分(12a)は、前記ケーブルの中間部を螺旋状に外囲するコイル状に形成されていると良い。これによれば、ケーブルを所定長さにわたって、その変形への追従を許容する状態で支持することができる。
【0010】
また、前記ケーブル(11)の中間部が湾曲して配線され、前記ケーブル保持部分(22e)は、前記コイル状の軸線を前記ケーブルの中間部の湾曲に沿うように湾曲させた形状に形成されていると良い。これによれば、ケーブル中間部がレイアウトに合わせて湾曲して配設される場合に、ケーブル保持部分がその湾曲に沿った形状となることにより、ケーブルの揺動運動によるケーブル保持部分における応力集中をが生じないようにすることができる。
【0011】
また、前記ケーブル保持部分(12a)は、前記ケーブルの中間部が近接する前記車両の部品に相対する位置に配設されていると良い。これによれば、ケーブルが近接する車両の部品に衝当するような事態となっても、ケーブル保持部分により保護することができる。
【0012】
また、前記ケーブル保持部分(12a)の少なくとも前記コイル状のオープンエンド側が拡径されていると良い。これによれば、ケーブル保持部分を螺旋状のコイル形状に形成した場合に、そのコイル端がオープンエンドとなったとしても、そのオープンエンド側が拡径されていることにより、ケーブルの揺動運動に対してコイル端を逃がすことができるため、ケーブルがオープンエンドのコイル端に衝当して傷付くことを防止し得る。
【0013】
また、前記固定部分(12c)は、前記ケーブルの延在方向の一方に延出された位置に設けられていると良い。これによれば、ケーブル保持部分に対して固定部分の位置関係が非対称位置となるため、誤組み付けを防止し得る。
【0014】
また、前記ケーブル保持部分(12a)は、弾性変形可能に形成されかつ前記ケーブルの中間部の外径よりも縮径されていると良い。これによれば、ケーブルの中間部をしまりばめ状態で保持することができ、ケーブルとケーブル保持部分との位置がずれることがなく、ケーブル中間部の保持位置の位置決めを行うことができる。
【0015】
前記ケーブル保持部分(12a)と前記弾性部分(12b)と前記固定部分(12c)とが、1本の線材を曲げ変形して連続的に形成されていると良い。これによれば、弾性材からなる1本の線材から、その両端側部分を曲げ変形して、例えばケーブルを外囲する円形状にしたケーブル保持部分と、固定用ボルトを挿通し得る円形にした固定部分とを形成し、ケーブル保持部分と固定部分との間は線状のままとした弾性部分として形成することができ、自由な形状のケーブル保持具を形成することができ、金属ブラケットのようにプレス型を必要とせず、ケーブル保持具を安価にかつ高い汎用性を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、ケーブル保持部分と固定部分との間の弾性部分の変形許容範囲内での自由なレイアウトによる取り付けが可能となり、レイアウトの変更に対して弾性部分の形状変更により対応でき、車種毎に形状を決める必要が生じる金属ブラケットに対して、高い汎用性を有するケーブル保持具を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用された自動車のフロントサスペンションの要部を示す斜視図である。
【図2】ケーブル保持具を示す要部斜視図である。
【図3】ケーブル保持具の第2の例を示す図である。
【図4】ケーブル保持具の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された自動車のフロントサスペンションの要部を示す斜視図である。なお、図1は、サスペンションの正確な構造を示すものではなく、リンクの一部を省略している。
【0019】
図1において、一端が車体のフレーム1の上部に回動自在に結合されたアッパアーム2の揺動端(他端)と、一端がフレーム1の下部に回動揺動自在に結合されたロアアーム3の揺動端(他端)とにより車両の可動部分としてのナックル4の上下端が支持されている。ナックル4により、図示されない車輪が結合されるハブ5が回転自在に支持されている。
【0020】
ナックル4の適所に、例えば車軸6の回転から車輪速を検出するための車輪速センサ7が固定されている。車輪速センサ7のセンサ本体7aは、図2に示されるように樹脂モールドにより長板状に形成されたブラケット8の長手方向一端側に埋没状態に一体化されている。これにより、センサ本体7aは雨水や埃等から保護される。ブラケット8の長手方向他端側にはボルト9が挿通され、そのボルト9によりナックル4に固定される。
【0021】
センサ本体7aからは信号線として被覆線からなるケーブル11が延出されており、ケーブル11の延出方向側はフレーム1に固定され、その先は図示されない制御ユニットに結合されている。車輪速センサ7は、上記したようにナックル4に固定されていることから、走行中のサスペンションの運動によりフレーム1との間で相対的に変位が生じる。それによりケーブル11のフレーム1への固定部と車輪速センサ7との間(中間部)に振動が生じることから、その振れを抑制するためにケーブル11の中間部の適所を車両の部品に固定するようにしている。
【0022】
ケーブル11の固定には、図2に示されるように、1本の弾性材からなる線材を連続的に曲成して形成したケーブル保持具12を用いる。ケーブル保持具12は、ケーブル11の中間部を螺旋状に外囲する円筒コイル状に形成されたケーブル保持部分12aと、ケーブル保持部分12aの軸線方向一端側から半径方向外側に延出された弾性部分12bと、弾性部分12bの延出方向端部にて1巻きの円環状に形成された固定部分12cとからなる。
【0023】
この円筒コイル状のケーブル保持部分12aの内径をケーブル11の外径よりも小さくすると良い。これにより、ケーブル保持部分12aによりケーブル11を巻き締めるように保持することができ、弾性材からなる線材によりコイル状に形成していることと合わせて、ケーブル11を確実に保持することができる。
【0024】
また、弾性部分12bをケーブル保持部分12aの軸線に対して半径方向外向きに延出するように形成しているが、さらにケーブル保持部分12aにより保持されているケーブルの延在方向の一方に延出されるように形成されている。その延出方向端部にて固定部分12cが設けられていることにより、ケーブル保持部分12aに対して固定部分12cが非対称位置となるため、誤組み付けを防止し得る。
【0025】
また、固定部分12cに固定ボルト13を挿通し、その固定ボルト13により固定部分12cを車両の固定対象部位に固定する。なお、固定部分12cの円環状の形成における線材の曲げ方向は、固定対象部位の固定面を見て時計回りとなるように曲成すると良い。これにより、固定ボルト13をねじ込む方向と固定部分12cが巻き込まれるようになり、緩みが防止される。
【0026】
このように、1本の線材によりケーブル保持具12を形成することから、金属ブラケットを用いたものに対して容易に軽量化し得る。さらに、前記ケーブル保持部分12aを螺旋状に外囲するコイル状に形成したので、ケーブルを所定長さにわたって、その変形への追従を許容する状態で支持することができるとともに、弾性部分12bは比較的容易に形状の変更を行うことができ、車種違いにより、ケーブル11の延在方向と固定部分12cの固定面との関係に差違が生じても、弾性部分12bを曲げ加工することにより対応し得るため、汎用性が高く、かつ安価に製造し得る。
【0027】
図示例のケーブル11は、図1に示されるように、ナックル4と、それぞれ車両の一部としてのダンパユニット13及びフレーム1との3箇所で保持されるようになっている。ナックル4にはアッパアーム2側に延出されたナックルアーム4aが一体に形成されており、ケーブル11の車輪速センサ7の近傍部分を保持するケーブル保持具12の固定部分12cはナックルアーム4aに固定されている。ケーブル11のダンパユニット13を横切る部分を保持するのに用いられるケーブル保持具は上記ケーブル保持具12と同じであって良く、その固定部分12cはダンパユニット13に固定されている。
【0028】
一方、ケーブル11のフレーム1への固定部分では、第2の例として図3に示されるケーブル保持具22を用いると良い。この第2の例におけるケーブル保持具22においては、ケーブル保持部分22aと弾性部分22bと固定部分22cとは、それぞれ上記ケーブル保持部分12aと弾性部分12bと固定部分12cと同様に形成されていて良い。そして、ケーブル保持部分22aの弾性部分22bとは相反する側となるコイル形状のオープンエンド側には拡径率が増大するラッパ状の拡径部分22dが設けられている。
【0029】
上記ケーブル保持具12により保持されたケーブル11は、ケーブル保持部分12aから両側に延出されている部分は自由であり、その自由部分は走行中のサスペンションの変位の影響を受けることになる。しかしながら、上記ナックル4への固定部分では、車輪速センサ7とケーブル保持具12とは、一体のナックル4及びナックルアーム4aに固定されていることから、両固定箇所は一体に変位することになり、ケーブル11の両固定間の自由部分には大きな変位は生じない。また、ナックルアーム4aとダンパユニット13との両固定間でも、両部品が互いに追従するように変位し得るため相対変位は小さい。したがって、それらの固定箇所でのケーブル11の変位幅は小さい。したがって、上記図示例では、円筒コイル状のケーブル保持部分12aを有するケーブル保持具12を使用している。
【0030】
それに対して、フレーム1とダンパユニット13との両固定間での相対変位は大きい。そのような部位には、上記したケーブル保持具22を用いると良い。上記したように、ケーブル保持部分22aのダンパユニット13側に拡径部分22dが設けられており、フレーム1に固定状態のケーブル保持部分22aに保持されているケーブル11のダンパユニット13側が図3の矢Bに示されるように大きく揺動した場合に、ラッパ状の各位部分22dによりケーブル11の揺動を逃がすことができ、かつラッパ状の曲面により角が無く、ケーブル11に応力集中が生じない。また、線材を用いて螺旋のコイル状に巻いた場合には、ケーブル11が揺動してその線材の端部22fの角に衝当するとケーブル11が傷付く虞があるが、拡径部分22aを設けることにより線材の端部22fを逃がすようにすることができる。なお、このケーブル保持具22を他の2箇所に設けても良い。
【0031】
また、ケーブル保持具22に保持されたケーブル11のフレーム1側が図3の矢印Cに示されるように揺動することが考えられるが、フレーム1へ固定した2箇所間の自由部分の振動のためその変位は小さく、特に拡径形状にしなくても対応できる。
【0032】
また、第3の例を図4に示す。この第3の例では、レイアウトの関係からケーブル11が曲線状になる箇所で保持する場合に対応するのに適し、ケーブル保持部分22eをケーブル11のレイアウト上の曲率に合わせて予め図の曲線Dに沿う形状に湾曲させて形成している。これにより、ケーブル11の応力集中を無くすことができ、ケーブル11の負荷が軽減される。
【0033】
また、ケーブル11の中間部が例えばダンパユニット13を横切る部分では、ケーブル11が近接する車両の部品としてのダンパユニット13に相対する位置にケーブル保持部分12aが配設されている。これにより、ダンパユニット13にケーブル11が直接衝当することが防止され、ケーブル11のダンパユニット13に近接する部分をケーブル保持部分12aにより保持すると共に保護することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかるケーブル保持具は、ケーブルの揺動に対応し得ると共に自由なレイアウトによる取り付けが可能であり、固定部分と可動部分との間に配線されるケーブルを保持するケーブル保持具として有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 フレーム(車両の一部)
4 ナックル(可動部分)
7a センサ本体
11 ケーブル
12 ケーブル保持具
12a ケーブル保持部分
12b 弾性部分
12c 固定部分
13 ダンパユニット(車両の一部)
22e ケーブル保持部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の可動部分に固設されたセンサ本体から延出されたケーブルの中間部を保持しかつ該車両の一部に固定されるケーブル保持具であって、
前記ケーブルの中間部を保持するケーブル保持部分と、前記ケーブル保持部部から延出されかつ前記ケーブルの揺動運動に追従して弾性変形可能に形成された弾性部分と、前記弾性部分の前記ケーブル保持部分とは相反する側に一体に形成されかつ前記車両の一部に固定される固定部分とを有することを特徴とするケーブル保持具。
【請求項2】
前記ケーブル保持部分は、前記ケーブルの中間部を螺旋状に外囲するコイル状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル保持具。
【請求項3】
前記ケーブルの中間部が湾曲して配線され、
前記ケーブル保持部分は、前記コイル状の軸線を前記ケーブルの中間部の湾曲に沿うように湾曲させた形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のケーブル保持具。
【請求項4】
前記ケーブル保持部分は、前記ケーブルの中間部が近接する前記車両の部品に相対する位置に配設されていることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載のケーブル保持具。
【請求項5】
前記ケーブル保持部分の少なくとも前記コイル状のオープンエンド側が拡径されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載のケーブル保持具。
【請求項6】
前記固定部分は、前記ケーブルの延在方向の一方に延出された位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のケーブル保持具。
【請求項7】
前記ケーブル保持部分は、弾性変形可能に形成されかつ前記ケーブルの中間部の外径よりも縮径されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のケーブル保持具。
【請求項8】
前記ケーブル保持部分と前記弾性部分と前記固定部分とが、1本の線材を曲げ変形して連続的に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のケーブル保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−95392(P2012−95392A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238796(P2010−238796)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】