サスペンション装置取付構造
【課題】本発明は、部品点数を削減でき、かつ、作業工数を削減できるサスペンション装置取付構造を提供する。
【解決手段】第1のサスペンション装置取付構造20は、第1のサスペンション装置30と、車体13の骨格部14の一部であって車体前後方向Aに延びるサイドメンバ15a,15bと、サイドメンバ15a,15bに設けられる突出部60と、骨格部14の一部であって車幅方向Bに延びる第1のクロスメンバ16と、第1のクロスメンバ16に設けられて第1のサスペンション装置30のアッパアーム32と突出部60とに連結される凹部63と、アッパアーム32と突出部60と凹部63とを貫通してこれらを互いに連結するとともに、アッパアーム32を回動自由に支持するボルト52とを備える。
【解決手段】第1のサスペンション装置取付構造20は、第1のサスペンション装置30と、車体13の骨格部14の一部であって車体前後方向Aに延びるサイドメンバ15a,15bと、サイドメンバ15a,15bに設けられる突出部60と、骨格部14の一部であって車幅方向Bに延びる第1のクロスメンバ16と、第1のクロスメンバ16に設けられて第1のサスペンション装置30のアッパアーム32と突出部60とに連結される凹部63と、アッパアーム32と突出部60と凹部63とを貫通してこれらを互いに連結するとともに、アッパアーム32を回動自由に支持するボルト52とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のサスペンション装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられるダブルウィッシュボーン式サスペンション装置は、左右一対の車輪の各々を車体に支持するために設けられるとともに、各々、ナックルと、ナックルの上端を支持するアッパアームと、下端を支持するロアアームとを有している。
【0003】
これらアッパアームとロアアームとは、左右のダブルウィッシュボーン式サスペンション装置が連結されるクロスメンバに、車体上下方向に回動可能に連結されている。クロスメンバは、車体の左右の各々に配置されて前後方向に延びるサイドメンバに固定されている。
【0004】
このように、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置を車体に連結する場合、当該サスペンション装置をクロスメンバに連結し、クロスメンバがサイドメンバに固定されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、複数のアームを備えるマルチリンク式サスペンション装置や他のサスペンション装置を車体に連結する場合であっても、これら複数のアームをクロスメンバに連結するとともに、クロスメンバがサイドメンバに固定される(例えば、特許文献2,3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−298121号公報
【特許文献2】実開平2−117260号公報
【特許文献3】特開2008−30676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3では、アッパアームとロアアームなどのアームを各々回動可能にクロスメンバに連結するための構造と、この構造とは別途にクロスメンバをサイドメンバに固定する構造とが必要となる。この結果、サスペンション装置は、部品点数が増えるとともにこれらを連結固定するために作業工程数が増加する。
【0008】
本発明は、部品点数を削減でき、かつ、作業工数を削減できるサスペンション装置取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のサスペンション装置取付構造は、一端部が車輪側に支持されるアーム部材を備えて前記車輪を車体に支持するサスペンション装置を車体に取り付けるサスペンション装置取付構造であって、前記サスペンション装置と、前記車体の骨格部の一部であって車体前後方向に延びるサイドメンバと、前記サイドメンバに設けられて前記サイドメンバから突出する突出部と、前記車体の骨格部の一部であって車幅方向に延びるクロスメンバと、前記クロスメンバに設けられて前記アーム部材と前記突出部とに連結される連結部と、前記アーム部材と前記突出部と前記連結部とを貫通してこれらを互いに連結するとともに、前記アーム部材を回動自由に支持する連結部材とを備える。
【0010】
請求項2に記載のサスペンション装置取付構造は、請求項1に記載のサスペンション装置取付構造において、前記サスペンション装置は、ナックルと、前記ナックルの上端部に連結されるアッパアームと、前記ナックルの下端部に連結されるロアアームとを備える。前記アッパアームは、前記アーム部材である。前記連結部は、前記突出部を収容可能な形状である。前記連結部材は、前記突出部が前記連結部内に収容された状態で前記突出部と前記連結部と前記アッパアームとを貫通して互いに連結する。
【0011】
請求項3に記載のサスペンション装置取付構造は、請求項2に記載のサスペンション装置取付構造において、前記アッパアームは、二股に分かれる形状であって内側に前記突出部を収容可能である。前記連結部材は、前記アッパアームの内側に前記突出部を収容した状態で前記連結部と前記突出部と前記アッパアームとを貫通する。
【0012】
請求項4に記載のサスペンション装置取付構造は、請求項1〜3に記載のサスペンション装置取付構造において、前記連結部材は、ボルトである。
【発明の効果】
【0013】
本願では、アーム部材をクロスメンバに支持する連結部材が、クロスメンバとサイドメンバとを固定する固定用の部材として兼用される。このため、部品点数を削減することができる。さらに、アーム部材とクロスメンバとサイドメンバとを同時に連結固定できるので、作業工数が削減される。
【0014】
このように、本願発明では、部品点数を削減でき、かつ、作業工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る第1のサスペンション装置取付構造を備える自動車を示す斜視図。
【図2】図1に示された第1のクロスメンバと、各サイドメンバの一部と、各第1のサスペンション装置とを拡大して概略的に示す斜視図。
【図3】図2に示された第1のクロスメンバとサイドメンバとアッパアームとの連結を分解して示す斜視図。
【図4】図2に示されるF4−F4線に沿って示すクロスメンバとサイドメンバとアッパアームとが互いに連結された状態の断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る第2のサスペンション装置取付構造を備える自動車を示す斜視図。
【図6】図5に示された第2のサスペンション装置と後輪とを示す斜視図。
【図7】図5に示された第2のサスペンション装置と第2のクロスメンバとを車体上方から見る平面図。
【図8】図5に示された第2のサスペンション装置取付構造を概略的に示す斜視図。
【図9】図8に示された第2のサスペンション装置取付構造を分解した状態を概略的に示す斜視図。
【図10】図8に示されるF10−F10線に沿って示す、第2のサスペンション装置取付構造の一部の断面図。
【図11】一方の連結部を備えない第2のサスペンション装置取付構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施形態に係るサスペンション装置取付構造を、図1〜4を用いて説明する。図1は、本実施形態の第1のサスペンション装置取付構造20を備える自動車10を示す斜視図である。自動車10は、一対の前輪11(車体左側のみ図示)と、一対の後輪12(車体左側のみ図示)とを備えるとともに、車体13の骨格部14を構成するサイドメンバと、第1のクロスメンバ16とを備えている。第1のクロスメンバ16は、本発明で言うクロスメンバの一例である。
【0017】
サイドメンバは、車幅方向左右両端部に1つずつ配置されており、車体前後方向Aに延びている。車体左側に配置されるサイドメンバをサイドメンバ15aとする。車体右側に配置されるサイドメンバをサイドメンバ15bとする。
【0018】
第1のクロスメンバ16は、車体前部において、一方のサイドメンバ15aと他方のサイドメンバ15bとにわたって設けられており、車体幅方向Bに延びている。なお、サイドメンバ15a,15bと第1のクロスメンバ16とは、本実施形態では車体13の骨格部14の一部を構成している。骨格部14として他の構成要素を備えていてもよい。他の構成要素として、例えば、車幅方向に延びる他のクロスメンバを備えてもよい。
【0019】
車体前後方向Aと車幅方向Bについて説明する。車体13において前進方向前側を前部とし、前側と反対側を後部とし、車体前後方向Aとする。図示しない運転席、助手席は、前部に配置されている。前輪11は、前部に配置されている。後輪12は、後部に配置されている。車幅方向Bは、車体前後方向Aに直交する。車体上下方向は、車体前後方向Aと車幅方向Bが軸となる平面と直交する方向である。
【0020】
各前輪11の各々は、第1のサスペンション装置30によって車体13に支持されている。第1のサスペンション装置30は、本発明で言うサスペンション装置の一例である。本実施形態では、一例として、第1のサスペンション装置30を車体13に取り付ける取付構造として、本願発明のサスペンション装置取付構造の一例である、第1のサスペンション装置取付構造20が用いられている。
【0021】
図2は、第1のクロスメンバ16と、各サイドメンバ15a,15bの一部と、各第1のサスペンション装置30とを拡大して概略的に示す斜視図である。図2は、第1のサスペンション装置取付構造20を概略的に示している。図2に示すように、第1のサスペンション装置取付構造20は、第1のサスペンション装置30と、第1のクロスメンバ16と、サイドメンバとを備えている。
【0022】
なお、車体右側(図中では左側に位置する)の前輪11を車体13に支持する第1のサスペンション装置30と、車体左側(図中では右側に位置する)の前輪11を車体13に支持する第1のサスペンション装置30は、同じ構造であってよい。また、車体左側の前輪11を支持する第1のサスペンション装置30を車体13に取り付ける取付構造である第1のサスペンション装置取付構造20と、車体右側の前輪11を支持する第1のサスペンション装置30を車体13に取り付ける取付構造である第1のサスペンション装置取付構造20とは、同じ構造であってよい。
【0023】
このため、車体左側の前輪11を車体13へ支持する第1のサスペンション装置30を代表して説明するとともに、車体左側の前輪11を車体13へ支持する第1のサスペンション装置30を車体13へ取り付ける第1のサスペンション装置取付構造20を代表して説明する。
【0024】
図1,2に示すように、第1のサスペンション装置30は、一例として、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置であって、前輪11に連結されるナックル(図1に点線で示す)31と、アッパアーム32と、ロアアーム33と、ショックアブソーバASSY41とを備えている。
【0025】
アッパアーム32は、本発明で言うアーム部材の一例である。アッパアーム32は、第1,2のアッパアーム部34,35を備える二股形状(ウィッシュボーン形状)であって、二股部36(二股に分かれている部分)とは反対の端部37(第1,2のアーム部34,35の連結部)がナックル31の上端部150に連結されている。
【0026】
ロアアーム33は、第1のロアアーム部44と第2のロアアーム部38とを備える二股形状(ウィッシュボーン形状)であって、二股部(二股に分かれている部分)39と反対側の端部40がナックル31の下端部151に連結されている。
【0027】
なお、図示しないが、車体13は、運転者のステアリングホイール(図示せず)の操作などによって各前輪11の向きを変化するステアリングシステムを備えている。各前輪11には、運転者によるステアリングホイールの操作を伝達するステアリングタイロッド(図示せず)が連結されている。
【0028】
このため、アッパアーム32とロアアーム33とは、各前輪11が操舵に伴ってその姿勢を変位できるように、ナックル31に回動可能に連結されている。図2中では、ナックル31と前輪11とは、省略されている。
【0029】
ショックアブソーバASSY41は、コイルスプリング42とショックアブソーバ43とを備えている。ショックアブソーバASSY41の下端部はロアアーム33に連結固定されており、上端部は、車体13に固定されている。ショックアブソーバASSY41は、アッパアーム32の二股部36の内側を通っている。
【0030】
つぎに、第1のサスペンション装置取付構造20を説明する。第1のサスペンション装置取付構造20は、サイドメンバ15aと、第1のクロスメンバ16と、上記第1のサスペンション装置30と、ロアアーム33を第1のクロスメンバ16に回動可能に連結する軸部材51と、ボルト52とナット53とを備えている。
【0031】
図2に示すように、ロアアーム33の第1,2のロアアーム部44,38の端部は、軸部材51によって、矢印で示すように略車体上下方向に回動可能に第1のクロスメンバ16に連結されている。このため、ロアアーム33は、前輪11に入力される荷重に対して前輪11を車体上下方向に変位可能に支持できるようになる。
【0032】
図3は、第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15aとアッパアーム32との連結構造を分解して示す斜視図である。図2,3に示すように、サイドメンバ15aには、突出部60が設けられている。突出部60は、サイドメンバ15aにおいて、第1のサスペンション装置30の近傍に配置されており、サイドメンバ15aに対して車体下方に向かって突出している(サイドメンバ15bにおいても同様)。
【0033】
なお、本実施形態では、一例として、サイドメンバ15aは、筒状の部材で形成されており、突出部60がサイドメンバ15aに取り付けられて固定されている。しかしながら、サイドメンバ15aと突出部60とを1つの部材で一体に形成できる場合は、1つの部材で一体に形成されてもよい。サイドメンバ15bであっても同様である。
【0034】
第1のクロスメンバ16には、サイドメンバ15aとアッパアーム32とに連結される連結部61が設けられている。連結部61は、第1のクロスメンバ16に固定されるとともにサイドメンバ15aに向かって突出する基部62と、当該基部62に固定される凹部63とを備えている。
【0035】
凹部63は、車体前後方向Aに並んで配置される第1,2の凹部用アーム部64,65を有しており、車幅方向外側に向かって開口する形状である。凹部63は、一例として、U字状である。第1,2の凹部用アーム部64、65の車幅方向内側の部分は、互いに連結されている。凹部63は、本発明で言う連結部の一例である。
【0036】
第1,2の凹部用アーム部64,65の間に規定される範囲は、突出部60を収容できる大きさを有している。サイドメンバ15aと第1のクロスメンバ16とが車体13に組みつけられた状態では、突出部60は、凹部63の内側の範囲に収容される。
【0037】
図4は、図2に示されるF4−F4線に沿って示す第1のサスペンション装置取付構造20の断面図である。図4は、第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15aとアッパアーム32とが連結された状態を車幅方向外側から内側に向かって見た状態を示す側面図である。
【0038】
図4に示すように、突出部60は、凹部63の第1,2の凹部用アーム部64,65間に隙間なく嵌っている。このため、突出部60の車体前後方向Aに沿う前端66が第1の凹部用アーム部の車体前後方向Aに沿う後端67に当接し、突出部60の車体前後方向Aに沿う後端68が第2の凹部用アーム部65の車体前後方向Aに沿う前端69に当接し、それゆえ、突出部60は、凹部63内でその姿勢が変位することが抑制される。この結果、サイドメンバ15a,15bに対して第1のクロスメンバ16はその姿勢が車体前後方向に変異することが抑制されるように固定される。
【0039】
なお、突出部60が凹部63内に収容された状態において、支障をきたさない程度の隙間であれば突出部60と凹部63との間に隙間があってもよい。また、突出部60と凹部63との間にスペーサを入れることによって当該隙間を調整するようにしてもよい。
【0040】
アッパアーム32の第1,2のアッパアーム部34,35の各端部には、アッパアーム用ブッシュ70が設けられている。各アッパアーム用ブッシュ70は、例えばゴムなどの弾性体で形成されるゴム部71と、このゴム部71内に設けられる例えば金属製の筒部72とを備えている。第1,2のアッパアーム部34,35は、ゴム部71に連結されている。
【0041】
図4に示すように、第1,2の凹部用アーム部64,65において車幅方向外側に面する端部80,81の断面形状は、各々車体下方に向かって開口する形状である。具体的には、端部80,81は、略四角形状であって、車体下方に面する面のみ開口する形状である。
【0042】
アッパアーム32の第1,2のアッパアーム部34,35は、車体前後方向Aに互いに離間しており、第1,2のアッパアーム部34,35間の間隔は、第1のアッパアーム部34が第1の凹部用アーム部64内に収容可能であり、第2のアッパアーム部35が第2の凹部用アーム部65内に収容可能であるように設定されている。このため、第1,2のアッパアーム部34,35に設けられるアッパアーム用ブッシュ70は、第1,2の凹部用アーム部64,65の内部に収容可能な大きさに設定されている。
【0043】
第1,2の凹部用アーム部64,65の内部の大きさは、車体前後方向Aに各アッパアーム用ブッシュ70が隙間なく嵌まるように設定されている。具体的には、第1の凹部用アーム部64においては、アッパアーム用ブッシュ70の車体前後方向Aに沿って前端73(本実施形態では筒部72の前端)が第1の凹部用アーム部64の車体前後方向Aに沿って前側に位置する前側壁部100に当接し、アッパアーム用ブッシュ70の車体前後方向Aに沿って後端74(本実施形態では筒部72の後端)が第1の凹部用アーム部64の車体前後方向Aに沿って後側に位置する後側壁部101に当接する。
【0044】
第2の凹部用アーム部65においては、アッパアーム用ブッシュ70の車体前後方向Aに沿う前端102(本実施形態では筒部72の前端)が第2の凹部用アーム部65の車体前後方向Aに沿う前側壁部83に当接し、アッパアーム用ブッシュ70の車体前後方向Aに沿う後端103(本実施形態では、筒部72の後端)が第2の凹部用アーム部65の車体前後方向Aに沿う後側壁部84に当接する。
【0045】
このため、第1,2のアッパアーム部34,35は、第1,2の凹部用アーム部64,65内に収容された際に車体前後方向Aに姿勢が変位することが抑制される。なお、アッパアーム用ブッシュ70が第1,2の凹部用アーム部64,65内に収容された状態において、支障をきたさない程度の隙間であれば、アッパアーム用ブッシュ70と第1,2の凹部用アーム部64,65との間に隙間があってもよい。または、スペーサを用いてアッパアーム用ブッシュ70と第1,2の凹部用アーム部64,65との間の隙間を調整するようにしてもよい。
【0046】
図3に示すように、凹部63の第1,2の凹部用アーム部64,65には、車体前後方向Aに貫通する第1の貫通孔90が形成されている。突出部60には、車体前後方向Aに貫通する第2の貫通孔91が形成されている。突出部60が凹部63の内側空間内に収容された状態では、第1,2の貫通孔90,91は互いに連通する。また、第1,2のアッパアーム部34,35のアッパアーム用ブッシュ70が第1,2の凹部用アーム部64,65内に収容されると、第1の貫通孔90と筒部72内とが連通する。
【0047】
ボルト52は、図3,4に示すように、第1,2の貫通孔90,91と、アッパアーム用ブッシュ70内(本実施形態では筒部72内)を通り、ナット53に螺合する。このことによって、第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15aとアッパアーム32とは、一本のボルト52によって締め付けられて、互いに連結固定される。また、ボルト52は、アッパアーム32の回動軸としても機能する。第1,2の貫通孔90,91と筒部72内とは、ボルト52が嵌まる大きさである。ボルト52は、本発明で言う連結部材の一例である。
【0048】
このため、図2に示すように、アッパアーム32は、図中矢印で示すように、車体上下方向に回動可能であり、それゆえ、前輪11へ入力される荷重に対して前輪11の姿勢を車体上下方向に変位できるようになっている。
【0049】
なお、右側の前輪11を支持する第1のサスペンション装置30も上記構造と同様であってよく、かつ、右側の前輪11を支持する第1のサスペンション装置30を車体13に取り付ける取付構造も上記と同様であってよい。この場合では、車体右側に配置されるサイドメンバ15bと第1のクロスメンバ16と右側の第1のサスペンション装置30のアッパアーム32とがボルト52によって連結固定される。
【0050】
本実施形態の第1のサスペンション装置取付構造20では、第1のサスペンション装置30のアッパアーム32と第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15a,15bとを一本のボルト52によって互いに連結固定することによって、第1のサスペンション装置取付構造20の部品点数の削減および作業工数を削減できる。
【0051】
この点について具体的に説明する。従来のダブルウィッシュボーン式サスペンション装置では、アッパアームを回動可能にクロスメンバに連結し、クロスメンバをサイドメンバに固定することになる。この構造では、アッパアームをクロスメンバに回動可能に連結する軸部材と、クロスメンバをサイドメンバに固定する部材とが必要になる。
【0052】
この構造に対して、本願発明では、アッパアーム32と第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15a,15bとをボルト52で連結固定するとともに、当該ボルト52がアッパアーム32の回動軸としても機能する。このため、本願発明では、部品点数を削減できる。さらに、アッパアーム32と第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15a,15bとを同時に連結固定するので、作業工程を少なくすることができる。
【0053】
また、突出部60が凹部63内に車体前後方向Aに嵌まり込んでかつ凹部63によって車体前後方向Aの変位が規制される構造であることによって、突出部60と凹部63とが、サイドメンバ15a,15bと第1のクロスメンバ16との相対位置が車体前後方向に移動することを抑制するストッパとして機能する。このため、サイドメンバ15a,15bと第1のクロスメンバ16との相対位置の変位を抑制するためにボルトなどの別部材を用いることがないので、部品点数を抑制するとこができる。
【0054】
また、アッパアーム32が二股形状(ウィッシュボーン形状)である場合に、本実施形態のように、第1,2のアッパアーム部34,35が突出部60を挟みこむ構造であることによって、突出部60と凹部63とアッパアーム32とが、車体13とアッパアーム32との相対位置が車体前後方向Aに変位することを抑制するストッパとして機能するので、車体13とアッパアーム32との相対位置が車体前後方向Aにずれることを抑制するためのボルトなどの別部材を別途に必要としないので、部品点数を削減することができる。
【0055】
また、第1,2のアッパアーム部34,35が、凹部63の第1,2の凹部用アーム部64,65内に収容される構造であることによって、凹部63と突出部60とアッパアーム32とが占める大きさを小さくすることができる。
【0056】
さらに、第1,2のアッパアーム部34,35が、凹部63の第1,2の凹部用アーム部64,65内に収容される構造であることによって、ボルト52がナット53に最後まで螺合しても(図4に示すように、ナット53が凹部63に当接する位置まで螺合しても)、ボルト52とナット53とによる締め付け力がアッパアーム用ブッシュ70に作用しないので(作用してもその影響を小さく抑えられるので)、アッパアーム32がボルト52回りに回動しにくくなることが抑制される。
【0057】
また、連結部材としてボルトを利用することによって、部品のコストを低減できる。
【0058】
なお、本実施形態では、前輪11を支持する第1のサスペンション装置30を車体13に取り付ける取付構造を一例として説明した。しかしながら、これに限定されない。後輪12を支持するサスペンション装置を車体13に取り付ける取付構造に本願発明が用いられてもよい。
【0059】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係るサスペンション装置取付構造を、図5〜11を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、自動車10は、第1のサスペンション装置取付構造20に加えて、第2のサスペンション装置取付構造200を備える。第1のサスペンション装置取付構造20は、第1の実施形態と同じであってよい。
【0060】
図5は、本実施形態の自動車10を示す斜視図である。図5に示すように、車体13の後部には、第2のサスペンション装置取付構造200が設けられている。車体後部には、車幅方向Bに延びる第2のクロスメンバ210が設けられている。第2のクロスメンバ210は、一方のサイドメンバ15aと他方のサイドメンバ15bとにわたって設けられており、車体幅方向Bに延びている。第2のクロスメンバ210は、車体13の骨格部14の一部を構成している。第2のクロスメンバ210は、本発明で言うクロスメンバの一例である。なお、図中、サイドメンバ15bは、省略されている。
【0061】
各後輪12の各々は、第2のサスペンション装置220によって車体13に支持されている。第2のサスペンション装置220は、本発明で言うサスペンション装置の一例である。本実施液体では、一例として、第2のサスペンション装置220を車体13に取り付ける取付構造として、本発明のサスペンション装置取付構造の一例である、第2のサスペンション装置取付構造200が用いられている。
【0062】
第2のサスペンション装置取付構造200は、左右の後輪12を支持する第2のサスペンション装置220と、第2のクロスメンバ210と、サイドメンバ15a,15bと、取付用のボルト230,231,232とナットとを備えている。
【0063】
図5は、車体13の左側の後輪12を車体13へ支持する第2のサスペンション装置220と、第2のクロスメンバ210と、第2のクロスメンバ210が固定されるサイドメンバ15aとが示されている。
【0064】
車体13の右側の後輪12を車体13へ支持する第2のサスペンション装置220と、この第2のサスペンション装置220を車体13への取り付ける第2のサスペンション装置取付構造200は、車体13の左側の後輪12を車体13へ取り付ける第2のサスペンション装置取付構造200と同じであってよい。
【0065】
車体左側の後輪12を車体13へ支持する第2のサスペンション装置220を代表して説明するとともに、車体左側の後輪12を車体13へ支持する第2のサスペンション装置220を車体13へ取り付ける第2のサスペンション装置取付構造200を代表して説明する。
【0066】
図6は、第2のサスペンション装置220と後輪12とを示す斜視図である。図7は、第2のサスペンション装置220と第2のクロスメンバ210とを車体上方から見る平面図である。図8は、第2のサスペンション装置取付構造200を概略的に示す斜視図である。
【0067】
図6〜7に示すように、第2のサスペンション装置220は、一例として、マルチリンク式サスペンション装置である。第2のサスペンション装置220は、ハブ400を支持するトレーリングアーム221と、アッパアーム222と、ロアアーム223と、トーコントロールアーム224と、ショックアブソーバASSY226とを備える。ハブ400は、後輪12を支持するとともに後輪12とともに回転する。
【0068】
トレーリングアーム221は、車体前後方向Aに延びている。トレーリングアーム221の前端部221aには、サスペンションブッシュ225が設けられている。サスペンションブッシュ225は、筒状であって、軸心線が車幅方向Bに平行になるように配置されている。サスペンションブッシュ225は、図示しないボルトによって車体13の一部である例えばサイドメンバ15aに連結されている。このボルトは、車幅方向Bに平行であってサスペンションブッシュ225の内部を通っている。トレーリングアーム221は、このボルト回りに回動自由である。
【0069】
アッパアーム222は、本発明で言うアーム部材の一例である。アッパアーム222は、車幅方向Bに直線状に延びるアーム部222aと、アーム部222aの両端部222b,222cに設けられるアッパアーム用ブッシュ260とを備えている。アッパアーム用ブッシュ260は、例えばゴムなどの弾性体で形成されるゴム部261と、ゴム部261内に設けられる例えば金属製の筒部262とを備えている。筒部262の軸方向両端は、ゴム部261の両端よりも外側に突出している。
【0070】
アーム部222aは、アッパアーム用ブッシュ260のゴム部261に固定されている。それゆえ、アーム部222aと筒部262との間にゴム部261が介装される構造となる。アーム部222aと筒部262とは、ゴム部261が変形することによって、相対的に変位することができる。
【0071】
図6に示すように、トレーリングアーム221の後部の上部には、一端部222bに設けられるアッパアーム用ブッシュ260が連結される連結部227が設けられている。連結部227は、内側にアッパアーム用ブッシュ260を収容する凹形状である。連結部227の内部の大きさは、筒部262が車体前後方向Aに平行に配置されるとともに、筒部262の軸方向両端との間に隙間が形成されないように設定されている。筒部262は、軸方向に連結部227内に嵌まっており、それゆえ、軸方向両端が連結部227に当接している。
【0072】
アッパアーム用ブッシュ260は、連結部227に収容された状態で、連結部材の一例であるボルト230と図示しないナットとによって連結部227に締結される。ボルト230は、車体前後方向Aに延びており筒部262内を通っている。一端部222bは、ボルト230回りに回動自由である。ゴム部261が変形することによって、トレーリングアーム221とアッパアーム222とが、車体前後左右上下に、互いに相対的に変位することができる。
【0073】
ロアアーム223は、車幅方向Bに直線状に延びるアーム部223aと、アーム部223aの両端部223b,223cに設けられるロアアーム用ブッシュ270とを備えている。ロアアーム用ブッシュ270は、例えばゴムなどの弾性体で形成されるゴム部271と、ゴム部271内に設けられる例えば金属製の筒部272とを備えている。筒部272の軸方向両端は、ゴム部271の両端よりも外側に突出している。アーム部223aは、ゴム部271に固定されている。筒部272とアーム部223aとの間にゴム部271が介装される構造となる。
【0074】
トレーリングアーム221の後部の下部には、一端部223bに設けられるロアアーム用ブッシュ270が連結される連結部(図示せず)が設けられている。連結部は、車体前後方向Aに筒部272が変位しないように支持する構造であり、本実施形態では、連結部227と同様の構造である。筒部272は、連結部内に収容された状態において、車体前後方向Aに連結部内に嵌まる。
【0075】
一端部223bに設けられるロアアーム用ブッシュ270は、連結部にボルトとナットとによって締結されている。筒部272は車体前後方向Aに平行に配置され、ボルトは車体前後方向Aに延びており、筒部272内に通っている。このため、ロアアーム23は、ボルト回りに回動自由である。ゴム部271が変形することによって、トレーリングアーム221とロアアーム223とが、車体前後左右上下に、互いに相対的に変位することができる。
【0076】
トーコントロールアーム224は、車幅方向Bに直線状に延びるアーム部224aと、アーム部224aの両端部224b,224cに設けられるトーコントロールアーム用ブッシュ280とを備えている。トーコントロールアーム用ブッシュ280は、例えばゴムなどの弾性体で形成されるゴム部281と、ゴム部281内に設けられる例えば金属製の筒部282とを備えている。筒部282の軸方向両端は、ゴム部281の両端よりも外側に突出している。
【0077】
アーム部224aは、ゴム部281に固定されている。それゆえ、アーム部224aと筒部282との間にゴム部281が介装される構造となる。アーム部224aと筒部282とは、ゴム部281が変形することによって、相対的に変位することができる。
【0078】
トレーリングアーム221の下部においてロアアーム223の一端部223bが連結される連結部よりも前には、一端部224bに設けられるトーコントロールアーム用ブッシュ280が連結される連結部が設けられている。この連結部は、連結部227と同様の構造であってよい。連結部は、内側にトーコントロールアーム用ブッシュ280を収容する凹形状である。連結部の内部の大きさは、筒部282が車体前後方向Aに平行に配置されるとともに、筒部282の軸方向両端との間に隙間が形成されないように設定されている。筒部282は、軸方向に連結部内に嵌まっており、それゆえ、軸方向両端が連結部に当接している。
【0079】
トーコントロールアーム用ブッシュ280は、連結部に収容された状態で、図示しないボルトとナットとによって連結部に締結される。ボルトは、車体前後方向Aに延びており筒部282内を通っている。一端部224bは、ボルト回りに回動自由である。ゴム部281が変形することによって、トレーリングアーム221とトーコントロールアーム224とが、車体前後左右上下に、互いに相対的に変位することができる。
【0080】
ショックアブソーバASSY226は、コイルスプリング226aとショックアブソーバ226bとを備えている。ショックアブソーバASSY226の下端部はトレーリングアーム221の後部に固定されており、上端部は、車体13の例えば骨格部14に固定されている。
【0081】
図8に示すように、サイドメンバ15a,15bには、突出部240が設けられている。突出部240は、サイドメンバ15a,15bにおいて、第2のサスペンション装置220の近傍に配置されており、サイドメンバ15a,15bから車体下方に向かって突出している。突出部240は、サイドメンバ15a,15bに取り付けられてサイドメンバ15a,15bに一体に固定されている。しかしながら、サイドメンバ15a,15bと突出部240とを1つの部材で一体に形成できる場合は、1つの部材で一体に形成してもよい。
【0082】
第2のクロスメンバ210には、サイドメンバ15a,15bとアッパアーム222とに連結される連結部250,251と、ロアアーム223が連結される連結部300と、トーコントロールアーム224が連結される連結部310とが設けられている。
【0083】
第2のクロスメンバ210は、枠形状であって、車体前後方向Aに延びる一対の部分211を備えている。連結部250,251は、各部分211の上部に設けられており、車体前後方向Aに離間して配置されている。図中では、連結部250が前側に配置されている。連結部251は、連結部250より車体後側に配置されている。突出部240は、連結部250,251間に収容される。
【0084】
図10は、図8に示されるF10−F10線に沿って示す、第2のサスペンション装置取付構造200の一部の断面図である。図10は、連結部250,251とサイドメンバ15aとを車幅方向外側から内側に向かって見た状態を示す側面図である。
【0085】
図10に示すように、突出部240は、連結部250、251間に隙間なく嵌っている。突出部240の車体前後方向Aに沿う前端241は、平面であって、例えば車幅方向Bに平行な平面である。連結部250の車体前後方向Aに沿う後端250aは、前端241に面接触する平面である。前端241と後端250aとは、面接触している。
【0086】
突出部240の車体前後方向Aに沿う後端242は、平面であって、例えば車幅方向Bに平行な平面である。連結部251の車体前後方向Aに沿う前端251aは、後端242に面接触する平面である。後端242と前端251aとは、面接触している。
【0087】
突出部240が連結部250,251間に嵌まることによって、突出部240は、連結部250,251間で変位することが抑制される。この結果、サイドメンバ15a,15bに対して第2のクロスメンバ210の姿勢が車体前後方向Aに変位することが抑制される。
【0088】
なお、突出部240が連結部250,251間に収容された状態において、支障をきたさない程度の隙間であれば突出部240と連結部250,251との間に隙間があってもよい。また、突出部240と連結部250,251との間にスペーサを入れることによって当該隙間を調整するようにしてもよい。
【0089】
図9は、サイドメンバ15aと第2のクロスメンバ210と第2のサスペンション装置220とを分解した状態を概略的に示す斜視図である。なお、右側の後輪12を支持する第2のサスペンション装置220に係る構造と、左側の後輪12を支持する第2のサスペンション装置220に係る構造とは、同じである。このため、図9では、右側の後輪12を支持する第2のサスペンション装置220と、サイドメンバ15bとは省略されている。
【0090】
図9に示すように、連結部251の内部は、アッパアーム222の他端部222cに設けられるアッパアーム用ブッシュ260を収容可能な収容空間252が形成されている。収容空間252の大きさは、車体前後方向Aにアッパアーム用ブッシュ260が隙間なく嵌まるように設定されている。
【0091】
具体的には、図10に示すように、アッパアーム用ブッシュ260の車体前後方向Aに沿って前端263(本実施形態では筒部262の前端)が連結部251の車体前後方向Aに沿って前側に位置する前側壁部253に当接し、アッパアーム用ブッシュ260の車体前後方向Aに沿って後端264(本実施形態では筒部262の後端)が連結部251の車体前後方向Aに沿って後側に位置する後側壁部254に当接する。
【0092】
アッパアーム222は、アッパアーム用ブッシュ260が連結部251内に収容された際に車体前後方向Aに姿勢が変位することが抑制されるとともに、ゴム部261が変形することによって、車体13に対して相対的に変位することができる。連結部250は、連結部251と同じ構造である。
【0093】
なお、アッパアーム用ブッシュ260が連結部251内に収容された状態において、支障をきたさない程度の隙間であれば、アッパアーム用ブッシュ260と連結部251との間に隙間があってもよい。または、スペーサを用いてアッパアーム用ブッシュ260と連結部251との間の隙間を調整するようにしてもよい。
【0094】
連結部300は、各部分211の後部の下部に設けられている。連結部300は、内部にロアアーム用ブッシュ270を収容可能な構造である。具体的には、ロアアーム用ブッシュ270の車体前後方向Aに沿って前端273(本実施形態では筒部272の前端)が連結部300の車体前後方向Aに沿って前側に位置する前側壁部301に当接し、ロアアーム用ブッシュ270の車体前後方向Aに沿って後端274(本実施形態では筒部272の後端)が連結部300の車体前後方向Aに沿って後側に位置する後側壁部302に当接する。
【0095】
ロアアーム223は、ロアアーム用ブッシュ270が連結部300内に収容された際に車体前後方向Aに姿勢が変位することが抑制されるとともに、ゴム部271が変形することによって、車体13に対して相対的に変位することができる。
【0096】
連結部310は、各部分211の前部の下部に設けられている。連結部310は、内部にトーコントロールアーム用ブッシュ280を収容可能な構造である。具体的には、トーコントロールアーム用ブッシュ280の車体前後方向Aに沿って前端283(本実施形態では筒部282の前端)が連結部310の車体前後方向Aに沿って前側に位置する前側壁部311に当接し、トーコントロールアーム用ブッシュ280の車体前後方向Aに沿って後端284(本実施形態では筒部282の後端)が連結部310の車体前後方向Aに沿って後側に位置する後側壁部312に当接する。
【0097】
トーコントロールアーム224は、トーコントロールアーム用ブッシュ280が連結部310内に収容された際に車体前後方向Aに姿勢が変位することが抑制されるとともに、ゴム部281が変形することによって車体13に対して相対的に変位することができる。
【0098】
連結部250,251と、突出部240とには、ボルト230が通るとともにボルト230が隙間なく嵌まる孔320,321が形成されている。突出部240が連結部250,251間に嵌まった状態において、孔320,321は互いに連通し、車体前後方向Aに並ぶ。アッパアーム222の他端部222cに設けられるアッパアーム用ブッシュ260の筒部262の内側の孔323は、ボルト230が嵌まる大きさであって、かつ、アッパアーム用ブッシュ260が連結部251の内側に収容されたときに、孔320,321に連通する。
【0099】
ボルト230は、孔320,321と、アッパアーム用ブッシュ260内(本実施形態では筒部262内の孔323)を通り、ナット233に螺合する。ボルト230は、車体前後方向Aに平行である。このことによって、第2のクロスメンバ210とサイドメンバ15aとアッパアーム222とは、一本のボルト230によって締め付けられて、互いに連結される。また、ボルト230は、アッパアーム222の回動軸としても機能する。ボルト230は、本発明で言う連結部材の一例である。
【0100】
連結部300には、ボルト231が通るとともにボルト231が隙間なく嵌まる孔330が形成されている。孔330は、車体前後方向Aに開口している。ロアアーム223の他端部223cに形成されるロアアーム用ブッシュ270の筒部272の内側の孔331は、ボルト231が通るとともにボルト231が隙間なく嵌まる大きさを有している。
【0101】
ロアアーム用ブッシュ270が連結部300内に収容されると、孔330,331は、互いに連通するとともに車体前後方向Aに並ぶ。ボルト231は、孔330とロアアーム用ブッシュ270内(本実施形態では筒部272内の孔331)を通り、ナット234に螺合する。この構造によって、ロアアーム223は、車体13に連結される。ボルト231は、車体前後方向Aに平行である。ボルト231は、ロアアーム223の回動軸としても機能する。
【0102】
連結部310は、ボルト232が通るとともにボルト232が隙間なく嵌まる孔340が形成されている。孔340は、車体前後方向Aに開口している。トーコントロールアーム用ブッシュ280の筒部282内孔341は、ボルト232が通るとともに隙間なく嵌まる大きさを有している。
【0103】
トーコントロールアーム用ブッシュ280が連結部310内に収容されると、孔340,341は互いに連通するとともに車体前後方向Aに並ぶ。ボルト232は、孔340とトーコントロールアーム用ブッシュ280内(本実施形態では、筒部282内の孔341)を通り、ナット235に螺合する。この構造によって、トーコントロールアーム224は、車体13に連結される。ボルト232は、車体前後方向Aに平行である。ボルト232は、トーコントロールアーム224の回動軸としても機能する。
【0104】
右側の後輪12を支持する第2のサスペンション装置220を車体13に取り付ける取付構造も上記と同様である。
【0105】
このように、第2のサスペンション装置取付構造200が、第2のサスペンション装置220のアッパアーム222と第2のクロスメンバ210とサイドメンバ15a,15bとを一本のボルト230によって互いに連結固定することによって、第2のサスペンション装置取付構造200の部品点数の削減および作業工数を削減できる。
【0106】
また、突出部240が連結部250,251内に車体前後方向Aに嵌まり込んでかつ連結部250,251によって車体前後方向Aの変位が規制される構造であることによって、突出部240と連結部250,251とが、サイドメンバ15a,15bと第2のクロスメンバ210との相対位置が車体前後方向Aに移動することを抑制するストッパとして機能する。このため、サイドメンバ15a,15bと第2のクロスメンバ210との相対位置の変位を抑制するためにボルトなどの別部材を用いることがないので、部品点数を抑制するとこができる。
【0107】
アッパアーム222が、連結部251内に収容される構造であることによって、連結部251と突出部240とアッパアーム222とが占める大きさを小さくすることができる。
【0108】
さらに、アッパアーム222が、連結部251内に収容される構造であることによって、ボルト230がナット233に最後まで螺合しても、ボルト230とナット233とによる締め付け力がアッパアーム用ブッシュ260に作用しないので(作用してもその影響を小さく抑えられるので)、アッパアーム222がボルト230回りに回動しにくくなることが抑制される。
【0109】
また、連結部材としてボルト230を利用することによって、部品のコストを低減できる。
【0110】
なお、本実施形態では、アッパアーム222は、連結部251内に収容されている。しかしながら、アッパアーム222の位置が第2の実施形態で説明された位置よりも車体前方に配置される場合では、アッパアーム222は、連結部250内に収容されてもよい。
【0111】
また、本実施形態では、第2のクロスメンバ210に、連結部250が設けられて、連結部250,251間に突出部240が嵌まる構造であるが、例えばこれに限定されない。連結部250は、設けられなくてもよい。図11は、連結部250を備えない第2のサスペンション装置取付構造200を示す側面図である。なお、アッパアーム222が連結部250内に収容される場合では、連結部251が設けられてなくてもよい、
また、本実施形態では、自動車10は、第1のサスペンション装置取付構造20と、第2のサスペンション装置取付構造200とを備えている。しかしながら、これに限定されない。例えば、第1のサスペンション装置取付構造20を備えず、第2のサスペンション装置取付構造200のみを備えてもよい。
【0112】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本願発明は、例えば自動車のサスペンション装置の取付構造に用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
13…車体、14…骨格部、15a…サイドメンバ、15b…サイドメンバ、16…第1のクロスメンバ(クロスメンバ)、20…第1のサスペンション装置取付構造(サスペンション装置取付構造)、30…第1のサスペンション装置(サスペンション装置)、31…ナックル、32…アッパアーム(アーム部材)、33…ロアアーム、52…ボルト(連結部材)、60…突出部、63…凹部(連結部)、200…第2のサスペンション装置取付構造(サスペンション装置取付構造)、210…第2のクロスメンバ(クロスメンバ)、220…第2のサスペンション装置(サスペンション装置)、222…アッパアーム(アーム部材)、230…ボルト(連結部材)、240…突出部、250…連結部、251…連結部、A…車体前後方向、B…車幅方向。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のサスペンション装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられるダブルウィッシュボーン式サスペンション装置は、左右一対の車輪の各々を車体に支持するために設けられるとともに、各々、ナックルと、ナックルの上端を支持するアッパアームと、下端を支持するロアアームとを有している。
【0003】
これらアッパアームとロアアームとは、左右のダブルウィッシュボーン式サスペンション装置が連結されるクロスメンバに、車体上下方向に回動可能に連結されている。クロスメンバは、車体の左右の各々に配置されて前後方向に延びるサイドメンバに固定されている。
【0004】
このように、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置を車体に連結する場合、当該サスペンション装置をクロスメンバに連結し、クロスメンバがサイドメンバに固定されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、複数のアームを備えるマルチリンク式サスペンション装置や他のサスペンション装置を車体に連結する場合であっても、これら複数のアームをクロスメンバに連結するとともに、クロスメンバがサイドメンバに固定される(例えば、特許文献2,3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−298121号公報
【特許文献2】実開平2−117260号公報
【特許文献3】特開2008−30676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3では、アッパアームとロアアームなどのアームを各々回動可能にクロスメンバに連結するための構造と、この構造とは別途にクロスメンバをサイドメンバに固定する構造とが必要となる。この結果、サスペンション装置は、部品点数が増えるとともにこれらを連結固定するために作業工程数が増加する。
【0008】
本発明は、部品点数を削減でき、かつ、作業工数を削減できるサスペンション装置取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のサスペンション装置取付構造は、一端部が車輪側に支持されるアーム部材を備えて前記車輪を車体に支持するサスペンション装置を車体に取り付けるサスペンション装置取付構造であって、前記サスペンション装置と、前記車体の骨格部の一部であって車体前後方向に延びるサイドメンバと、前記サイドメンバに設けられて前記サイドメンバから突出する突出部と、前記車体の骨格部の一部であって車幅方向に延びるクロスメンバと、前記クロスメンバに設けられて前記アーム部材と前記突出部とに連結される連結部と、前記アーム部材と前記突出部と前記連結部とを貫通してこれらを互いに連結するとともに、前記アーム部材を回動自由に支持する連結部材とを備える。
【0010】
請求項2に記載のサスペンション装置取付構造は、請求項1に記載のサスペンション装置取付構造において、前記サスペンション装置は、ナックルと、前記ナックルの上端部に連結されるアッパアームと、前記ナックルの下端部に連結されるロアアームとを備える。前記アッパアームは、前記アーム部材である。前記連結部は、前記突出部を収容可能な形状である。前記連結部材は、前記突出部が前記連結部内に収容された状態で前記突出部と前記連結部と前記アッパアームとを貫通して互いに連結する。
【0011】
請求項3に記載のサスペンション装置取付構造は、請求項2に記載のサスペンション装置取付構造において、前記アッパアームは、二股に分かれる形状であって内側に前記突出部を収容可能である。前記連結部材は、前記アッパアームの内側に前記突出部を収容した状態で前記連結部と前記突出部と前記アッパアームとを貫通する。
【0012】
請求項4に記載のサスペンション装置取付構造は、請求項1〜3に記載のサスペンション装置取付構造において、前記連結部材は、ボルトである。
【発明の効果】
【0013】
本願では、アーム部材をクロスメンバに支持する連結部材が、クロスメンバとサイドメンバとを固定する固定用の部材として兼用される。このため、部品点数を削減することができる。さらに、アーム部材とクロスメンバとサイドメンバとを同時に連結固定できるので、作業工数が削減される。
【0014】
このように、本願発明では、部品点数を削減でき、かつ、作業工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る第1のサスペンション装置取付構造を備える自動車を示す斜視図。
【図2】図1に示された第1のクロスメンバと、各サイドメンバの一部と、各第1のサスペンション装置とを拡大して概略的に示す斜視図。
【図3】図2に示された第1のクロスメンバとサイドメンバとアッパアームとの連結を分解して示す斜視図。
【図4】図2に示されるF4−F4線に沿って示すクロスメンバとサイドメンバとアッパアームとが互いに連結された状態の断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る第2のサスペンション装置取付構造を備える自動車を示す斜視図。
【図6】図5に示された第2のサスペンション装置と後輪とを示す斜視図。
【図7】図5に示された第2のサスペンション装置と第2のクロスメンバとを車体上方から見る平面図。
【図8】図5に示された第2のサスペンション装置取付構造を概略的に示す斜視図。
【図9】図8に示された第2のサスペンション装置取付構造を分解した状態を概略的に示す斜視図。
【図10】図8に示されるF10−F10線に沿って示す、第2のサスペンション装置取付構造の一部の断面図。
【図11】一方の連結部を備えない第2のサスペンション装置取付構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施形態に係るサスペンション装置取付構造を、図1〜4を用いて説明する。図1は、本実施形態の第1のサスペンション装置取付構造20を備える自動車10を示す斜視図である。自動車10は、一対の前輪11(車体左側のみ図示)と、一対の後輪12(車体左側のみ図示)とを備えるとともに、車体13の骨格部14を構成するサイドメンバと、第1のクロスメンバ16とを備えている。第1のクロスメンバ16は、本発明で言うクロスメンバの一例である。
【0017】
サイドメンバは、車幅方向左右両端部に1つずつ配置されており、車体前後方向Aに延びている。車体左側に配置されるサイドメンバをサイドメンバ15aとする。車体右側に配置されるサイドメンバをサイドメンバ15bとする。
【0018】
第1のクロスメンバ16は、車体前部において、一方のサイドメンバ15aと他方のサイドメンバ15bとにわたって設けられており、車体幅方向Bに延びている。なお、サイドメンバ15a,15bと第1のクロスメンバ16とは、本実施形態では車体13の骨格部14の一部を構成している。骨格部14として他の構成要素を備えていてもよい。他の構成要素として、例えば、車幅方向に延びる他のクロスメンバを備えてもよい。
【0019】
車体前後方向Aと車幅方向Bについて説明する。車体13において前進方向前側を前部とし、前側と反対側を後部とし、車体前後方向Aとする。図示しない運転席、助手席は、前部に配置されている。前輪11は、前部に配置されている。後輪12は、後部に配置されている。車幅方向Bは、車体前後方向Aに直交する。車体上下方向は、車体前後方向Aと車幅方向Bが軸となる平面と直交する方向である。
【0020】
各前輪11の各々は、第1のサスペンション装置30によって車体13に支持されている。第1のサスペンション装置30は、本発明で言うサスペンション装置の一例である。本実施形態では、一例として、第1のサスペンション装置30を車体13に取り付ける取付構造として、本願発明のサスペンション装置取付構造の一例である、第1のサスペンション装置取付構造20が用いられている。
【0021】
図2は、第1のクロスメンバ16と、各サイドメンバ15a,15bの一部と、各第1のサスペンション装置30とを拡大して概略的に示す斜視図である。図2は、第1のサスペンション装置取付構造20を概略的に示している。図2に示すように、第1のサスペンション装置取付構造20は、第1のサスペンション装置30と、第1のクロスメンバ16と、サイドメンバとを備えている。
【0022】
なお、車体右側(図中では左側に位置する)の前輪11を車体13に支持する第1のサスペンション装置30と、車体左側(図中では右側に位置する)の前輪11を車体13に支持する第1のサスペンション装置30は、同じ構造であってよい。また、車体左側の前輪11を支持する第1のサスペンション装置30を車体13に取り付ける取付構造である第1のサスペンション装置取付構造20と、車体右側の前輪11を支持する第1のサスペンション装置30を車体13に取り付ける取付構造である第1のサスペンション装置取付構造20とは、同じ構造であってよい。
【0023】
このため、車体左側の前輪11を車体13へ支持する第1のサスペンション装置30を代表して説明するとともに、車体左側の前輪11を車体13へ支持する第1のサスペンション装置30を車体13へ取り付ける第1のサスペンション装置取付構造20を代表して説明する。
【0024】
図1,2に示すように、第1のサスペンション装置30は、一例として、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置であって、前輪11に連結されるナックル(図1に点線で示す)31と、アッパアーム32と、ロアアーム33と、ショックアブソーバASSY41とを備えている。
【0025】
アッパアーム32は、本発明で言うアーム部材の一例である。アッパアーム32は、第1,2のアッパアーム部34,35を備える二股形状(ウィッシュボーン形状)であって、二股部36(二股に分かれている部分)とは反対の端部37(第1,2のアーム部34,35の連結部)がナックル31の上端部150に連結されている。
【0026】
ロアアーム33は、第1のロアアーム部44と第2のロアアーム部38とを備える二股形状(ウィッシュボーン形状)であって、二股部(二股に分かれている部分)39と反対側の端部40がナックル31の下端部151に連結されている。
【0027】
なお、図示しないが、車体13は、運転者のステアリングホイール(図示せず)の操作などによって各前輪11の向きを変化するステアリングシステムを備えている。各前輪11には、運転者によるステアリングホイールの操作を伝達するステアリングタイロッド(図示せず)が連結されている。
【0028】
このため、アッパアーム32とロアアーム33とは、各前輪11が操舵に伴ってその姿勢を変位できるように、ナックル31に回動可能に連結されている。図2中では、ナックル31と前輪11とは、省略されている。
【0029】
ショックアブソーバASSY41は、コイルスプリング42とショックアブソーバ43とを備えている。ショックアブソーバASSY41の下端部はロアアーム33に連結固定されており、上端部は、車体13に固定されている。ショックアブソーバASSY41は、アッパアーム32の二股部36の内側を通っている。
【0030】
つぎに、第1のサスペンション装置取付構造20を説明する。第1のサスペンション装置取付構造20は、サイドメンバ15aと、第1のクロスメンバ16と、上記第1のサスペンション装置30と、ロアアーム33を第1のクロスメンバ16に回動可能に連結する軸部材51と、ボルト52とナット53とを備えている。
【0031】
図2に示すように、ロアアーム33の第1,2のロアアーム部44,38の端部は、軸部材51によって、矢印で示すように略車体上下方向に回動可能に第1のクロスメンバ16に連結されている。このため、ロアアーム33は、前輪11に入力される荷重に対して前輪11を車体上下方向に変位可能に支持できるようになる。
【0032】
図3は、第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15aとアッパアーム32との連結構造を分解して示す斜視図である。図2,3に示すように、サイドメンバ15aには、突出部60が設けられている。突出部60は、サイドメンバ15aにおいて、第1のサスペンション装置30の近傍に配置されており、サイドメンバ15aに対して車体下方に向かって突出している(サイドメンバ15bにおいても同様)。
【0033】
なお、本実施形態では、一例として、サイドメンバ15aは、筒状の部材で形成されており、突出部60がサイドメンバ15aに取り付けられて固定されている。しかしながら、サイドメンバ15aと突出部60とを1つの部材で一体に形成できる場合は、1つの部材で一体に形成されてもよい。サイドメンバ15bであっても同様である。
【0034】
第1のクロスメンバ16には、サイドメンバ15aとアッパアーム32とに連結される連結部61が設けられている。連結部61は、第1のクロスメンバ16に固定されるとともにサイドメンバ15aに向かって突出する基部62と、当該基部62に固定される凹部63とを備えている。
【0035】
凹部63は、車体前後方向Aに並んで配置される第1,2の凹部用アーム部64,65を有しており、車幅方向外側に向かって開口する形状である。凹部63は、一例として、U字状である。第1,2の凹部用アーム部64、65の車幅方向内側の部分は、互いに連結されている。凹部63は、本発明で言う連結部の一例である。
【0036】
第1,2の凹部用アーム部64,65の間に規定される範囲は、突出部60を収容できる大きさを有している。サイドメンバ15aと第1のクロスメンバ16とが車体13に組みつけられた状態では、突出部60は、凹部63の内側の範囲に収容される。
【0037】
図4は、図2に示されるF4−F4線に沿って示す第1のサスペンション装置取付構造20の断面図である。図4は、第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15aとアッパアーム32とが連結された状態を車幅方向外側から内側に向かって見た状態を示す側面図である。
【0038】
図4に示すように、突出部60は、凹部63の第1,2の凹部用アーム部64,65間に隙間なく嵌っている。このため、突出部60の車体前後方向Aに沿う前端66が第1の凹部用アーム部の車体前後方向Aに沿う後端67に当接し、突出部60の車体前後方向Aに沿う後端68が第2の凹部用アーム部65の車体前後方向Aに沿う前端69に当接し、それゆえ、突出部60は、凹部63内でその姿勢が変位することが抑制される。この結果、サイドメンバ15a,15bに対して第1のクロスメンバ16はその姿勢が車体前後方向に変異することが抑制されるように固定される。
【0039】
なお、突出部60が凹部63内に収容された状態において、支障をきたさない程度の隙間であれば突出部60と凹部63との間に隙間があってもよい。また、突出部60と凹部63との間にスペーサを入れることによって当該隙間を調整するようにしてもよい。
【0040】
アッパアーム32の第1,2のアッパアーム部34,35の各端部には、アッパアーム用ブッシュ70が設けられている。各アッパアーム用ブッシュ70は、例えばゴムなどの弾性体で形成されるゴム部71と、このゴム部71内に設けられる例えば金属製の筒部72とを備えている。第1,2のアッパアーム部34,35は、ゴム部71に連結されている。
【0041】
図4に示すように、第1,2の凹部用アーム部64,65において車幅方向外側に面する端部80,81の断面形状は、各々車体下方に向かって開口する形状である。具体的には、端部80,81は、略四角形状であって、車体下方に面する面のみ開口する形状である。
【0042】
アッパアーム32の第1,2のアッパアーム部34,35は、車体前後方向Aに互いに離間しており、第1,2のアッパアーム部34,35間の間隔は、第1のアッパアーム部34が第1の凹部用アーム部64内に収容可能であり、第2のアッパアーム部35が第2の凹部用アーム部65内に収容可能であるように設定されている。このため、第1,2のアッパアーム部34,35に設けられるアッパアーム用ブッシュ70は、第1,2の凹部用アーム部64,65の内部に収容可能な大きさに設定されている。
【0043】
第1,2の凹部用アーム部64,65の内部の大きさは、車体前後方向Aに各アッパアーム用ブッシュ70が隙間なく嵌まるように設定されている。具体的には、第1の凹部用アーム部64においては、アッパアーム用ブッシュ70の車体前後方向Aに沿って前端73(本実施形態では筒部72の前端)が第1の凹部用アーム部64の車体前後方向Aに沿って前側に位置する前側壁部100に当接し、アッパアーム用ブッシュ70の車体前後方向Aに沿って後端74(本実施形態では筒部72の後端)が第1の凹部用アーム部64の車体前後方向Aに沿って後側に位置する後側壁部101に当接する。
【0044】
第2の凹部用アーム部65においては、アッパアーム用ブッシュ70の車体前後方向Aに沿う前端102(本実施形態では筒部72の前端)が第2の凹部用アーム部65の車体前後方向Aに沿う前側壁部83に当接し、アッパアーム用ブッシュ70の車体前後方向Aに沿う後端103(本実施形態では、筒部72の後端)が第2の凹部用アーム部65の車体前後方向Aに沿う後側壁部84に当接する。
【0045】
このため、第1,2のアッパアーム部34,35は、第1,2の凹部用アーム部64,65内に収容された際に車体前後方向Aに姿勢が変位することが抑制される。なお、アッパアーム用ブッシュ70が第1,2の凹部用アーム部64,65内に収容された状態において、支障をきたさない程度の隙間であれば、アッパアーム用ブッシュ70と第1,2の凹部用アーム部64,65との間に隙間があってもよい。または、スペーサを用いてアッパアーム用ブッシュ70と第1,2の凹部用アーム部64,65との間の隙間を調整するようにしてもよい。
【0046】
図3に示すように、凹部63の第1,2の凹部用アーム部64,65には、車体前後方向Aに貫通する第1の貫通孔90が形成されている。突出部60には、車体前後方向Aに貫通する第2の貫通孔91が形成されている。突出部60が凹部63の内側空間内に収容された状態では、第1,2の貫通孔90,91は互いに連通する。また、第1,2のアッパアーム部34,35のアッパアーム用ブッシュ70が第1,2の凹部用アーム部64,65内に収容されると、第1の貫通孔90と筒部72内とが連通する。
【0047】
ボルト52は、図3,4に示すように、第1,2の貫通孔90,91と、アッパアーム用ブッシュ70内(本実施形態では筒部72内)を通り、ナット53に螺合する。このことによって、第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15aとアッパアーム32とは、一本のボルト52によって締め付けられて、互いに連結固定される。また、ボルト52は、アッパアーム32の回動軸としても機能する。第1,2の貫通孔90,91と筒部72内とは、ボルト52が嵌まる大きさである。ボルト52は、本発明で言う連結部材の一例である。
【0048】
このため、図2に示すように、アッパアーム32は、図中矢印で示すように、車体上下方向に回動可能であり、それゆえ、前輪11へ入力される荷重に対して前輪11の姿勢を車体上下方向に変位できるようになっている。
【0049】
なお、右側の前輪11を支持する第1のサスペンション装置30も上記構造と同様であってよく、かつ、右側の前輪11を支持する第1のサスペンション装置30を車体13に取り付ける取付構造も上記と同様であってよい。この場合では、車体右側に配置されるサイドメンバ15bと第1のクロスメンバ16と右側の第1のサスペンション装置30のアッパアーム32とがボルト52によって連結固定される。
【0050】
本実施形態の第1のサスペンション装置取付構造20では、第1のサスペンション装置30のアッパアーム32と第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15a,15bとを一本のボルト52によって互いに連結固定することによって、第1のサスペンション装置取付構造20の部品点数の削減および作業工数を削減できる。
【0051】
この点について具体的に説明する。従来のダブルウィッシュボーン式サスペンション装置では、アッパアームを回動可能にクロスメンバに連結し、クロスメンバをサイドメンバに固定することになる。この構造では、アッパアームをクロスメンバに回動可能に連結する軸部材と、クロスメンバをサイドメンバに固定する部材とが必要になる。
【0052】
この構造に対して、本願発明では、アッパアーム32と第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15a,15bとをボルト52で連結固定するとともに、当該ボルト52がアッパアーム32の回動軸としても機能する。このため、本願発明では、部品点数を削減できる。さらに、アッパアーム32と第1のクロスメンバ16とサイドメンバ15a,15bとを同時に連結固定するので、作業工程を少なくすることができる。
【0053】
また、突出部60が凹部63内に車体前後方向Aに嵌まり込んでかつ凹部63によって車体前後方向Aの変位が規制される構造であることによって、突出部60と凹部63とが、サイドメンバ15a,15bと第1のクロスメンバ16との相対位置が車体前後方向に移動することを抑制するストッパとして機能する。このため、サイドメンバ15a,15bと第1のクロスメンバ16との相対位置の変位を抑制するためにボルトなどの別部材を用いることがないので、部品点数を抑制するとこができる。
【0054】
また、アッパアーム32が二股形状(ウィッシュボーン形状)である場合に、本実施形態のように、第1,2のアッパアーム部34,35が突出部60を挟みこむ構造であることによって、突出部60と凹部63とアッパアーム32とが、車体13とアッパアーム32との相対位置が車体前後方向Aに変位することを抑制するストッパとして機能するので、車体13とアッパアーム32との相対位置が車体前後方向Aにずれることを抑制するためのボルトなどの別部材を別途に必要としないので、部品点数を削減することができる。
【0055】
また、第1,2のアッパアーム部34,35が、凹部63の第1,2の凹部用アーム部64,65内に収容される構造であることによって、凹部63と突出部60とアッパアーム32とが占める大きさを小さくすることができる。
【0056】
さらに、第1,2のアッパアーム部34,35が、凹部63の第1,2の凹部用アーム部64,65内に収容される構造であることによって、ボルト52がナット53に最後まで螺合しても(図4に示すように、ナット53が凹部63に当接する位置まで螺合しても)、ボルト52とナット53とによる締め付け力がアッパアーム用ブッシュ70に作用しないので(作用してもその影響を小さく抑えられるので)、アッパアーム32がボルト52回りに回動しにくくなることが抑制される。
【0057】
また、連結部材としてボルトを利用することによって、部品のコストを低減できる。
【0058】
なお、本実施形態では、前輪11を支持する第1のサスペンション装置30を車体13に取り付ける取付構造を一例として説明した。しかしながら、これに限定されない。後輪12を支持するサスペンション装置を車体13に取り付ける取付構造に本願発明が用いられてもよい。
【0059】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係るサスペンション装置取付構造を、図5〜11を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、自動車10は、第1のサスペンション装置取付構造20に加えて、第2のサスペンション装置取付構造200を備える。第1のサスペンション装置取付構造20は、第1の実施形態と同じであってよい。
【0060】
図5は、本実施形態の自動車10を示す斜視図である。図5に示すように、車体13の後部には、第2のサスペンション装置取付構造200が設けられている。車体後部には、車幅方向Bに延びる第2のクロスメンバ210が設けられている。第2のクロスメンバ210は、一方のサイドメンバ15aと他方のサイドメンバ15bとにわたって設けられており、車体幅方向Bに延びている。第2のクロスメンバ210は、車体13の骨格部14の一部を構成している。第2のクロスメンバ210は、本発明で言うクロスメンバの一例である。なお、図中、サイドメンバ15bは、省略されている。
【0061】
各後輪12の各々は、第2のサスペンション装置220によって車体13に支持されている。第2のサスペンション装置220は、本発明で言うサスペンション装置の一例である。本実施液体では、一例として、第2のサスペンション装置220を車体13に取り付ける取付構造として、本発明のサスペンション装置取付構造の一例である、第2のサスペンション装置取付構造200が用いられている。
【0062】
第2のサスペンション装置取付構造200は、左右の後輪12を支持する第2のサスペンション装置220と、第2のクロスメンバ210と、サイドメンバ15a,15bと、取付用のボルト230,231,232とナットとを備えている。
【0063】
図5は、車体13の左側の後輪12を車体13へ支持する第2のサスペンション装置220と、第2のクロスメンバ210と、第2のクロスメンバ210が固定されるサイドメンバ15aとが示されている。
【0064】
車体13の右側の後輪12を車体13へ支持する第2のサスペンション装置220と、この第2のサスペンション装置220を車体13への取り付ける第2のサスペンション装置取付構造200は、車体13の左側の後輪12を車体13へ取り付ける第2のサスペンション装置取付構造200と同じであってよい。
【0065】
車体左側の後輪12を車体13へ支持する第2のサスペンション装置220を代表して説明するとともに、車体左側の後輪12を車体13へ支持する第2のサスペンション装置220を車体13へ取り付ける第2のサスペンション装置取付構造200を代表して説明する。
【0066】
図6は、第2のサスペンション装置220と後輪12とを示す斜視図である。図7は、第2のサスペンション装置220と第2のクロスメンバ210とを車体上方から見る平面図である。図8は、第2のサスペンション装置取付構造200を概略的に示す斜視図である。
【0067】
図6〜7に示すように、第2のサスペンション装置220は、一例として、マルチリンク式サスペンション装置である。第2のサスペンション装置220は、ハブ400を支持するトレーリングアーム221と、アッパアーム222と、ロアアーム223と、トーコントロールアーム224と、ショックアブソーバASSY226とを備える。ハブ400は、後輪12を支持するとともに後輪12とともに回転する。
【0068】
トレーリングアーム221は、車体前後方向Aに延びている。トレーリングアーム221の前端部221aには、サスペンションブッシュ225が設けられている。サスペンションブッシュ225は、筒状であって、軸心線が車幅方向Bに平行になるように配置されている。サスペンションブッシュ225は、図示しないボルトによって車体13の一部である例えばサイドメンバ15aに連結されている。このボルトは、車幅方向Bに平行であってサスペンションブッシュ225の内部を通っている。トレーリングアーム221は、このボルト回りに回動自由である。
【0069】
アッパアーム222は、本発明で言うアーム部材の一例である。アッパアーム222は、車幅方向Bに直線状に延びるアーム部222aと、アーム部222aの両端部222b,222cに設けられるアッパアーム用ブッシュ260とを備えている。アッパアーム用ブッシュ260は、例えばゴムなどの弾性体で形成されるゴム部261と、ゴム部261内に設けられる例えば金属製の筒部262とを備えている。筒部262の軸方向両端は、ゴム部261の両端よりも外側に突出している。
【0070】
アーム部222aは、アッパアーム用ブッシュ260のゴム部261に固定されている。それゆえ、アーム部222aと筒部262との間にゴム部261が介装される構造となる。アーム部222aと筒部262とは、ゴム部261が変形することによって、相対的に変位することができる。
【0071】
図6に示すように、トレーリングアーム221の後部の上部には、一端部222bに設けられるアッパアーム用ブッシュ260が連結される連結部227が設けられている。連結部227は、内側にアッパアーム用ブッシュ260を収容する凹形状である。連結部227の内部の大きさは、筒部262が車体前後方向Aに平行に配置されるとともに、筒部262の軸方向両端との間に隙間が形成されないように設定されている。筒部262は、軸方向に連結部227内に嵌まっており、それゆえ、軸方向両端が連結部227に当接している。
【0072】
アッパアーム用ブッシュ260は、連結部227に収容された状態で、連結部材の一例であるボルト230と図示しないナットとによって連結部227に締結される。ボルト230は、車体前後方向Aに延びており筒部262内を通っている。一端部222bは、ボルト230回りに回動自由である。ゴム部261が変形することによって、トレーリングアーム221とアッパアーム222とが、車体前後左右上下に、互いに相対的に変位することができる。
【0073】
ロアアーム223は、車幅方向Bに直線状に延びるアーム部223aと、アーム部223aの両端部223b,223cに設けられるロアアーム用ブッシュ270とを備えている。ロアアーム用ブッシュ270は、例えばゴムなどの弾性体で形成されるゴム部271と、ゴム部271内に設けられる例えば金属製の筒部272とを備えている。筒部272の軸方向両端は、ゴム部271の両端よりも外側に突出している。アーム部223aは、ゴム部271に固定されている。筒部272とアーム部223aとの間にゴム部271が介装される構造となる。
【0074】
トレーリングアーム221の後部の下部には、一端部223bに設けられるロアアーム用ブッシュ270が連結される連結部(図示せず)が設けられている。連結部は、車体前後方向Aに筒部272が変位しないように支持する構造であり、本実施形態では、連結部227と同様の構造である。筒部272は、連結部内に収容された状態において、車体前後方向Aに連結部内に嵌まる。
【0075】
一端部223bに設けられるロアアーム用ブッシュ270は、連結部にボルトとナットとによって締結されている。筒部272は車体前後方向Aに平行に配置され、ボルトは車体前後方向Aに延びており、筒部272内に通っている。このため、ロアアーム23は、ボルト回りに回動自由である。ゴム部271が変形することによって、トレーリングアーム221とロアアーム223とが、車体前後左右上下に、互いに相対的に変位することができる。
【0076】
トーコントロールアーム224は、車幅方向Bに直線状に延びるアーム部224aと、アーム部224aの両端部224b,224cに設けられるトーコントロールアーム用ブッシュ280とを備えている。トーコントロールアーム用ブッシュ280は、例えばゴムなどの弾性体で形成されるゴム部281と、ゴム部281内に設けられる例えば金属製の筒部282とを備えている。筒部282の軸方向両端は、ゴム部281の両端よりも外側に突出している。
【0077】
アーム部224aは、ゴム部281に固定されている。それゆえ、アーム部224aと筒部282との間にゴム部281が介装される構造となる。アーム部224aと筒部282とは、ゴム部281が変形することによって、相対的に変位することができる。
【0078】
トレーリングアーム221の下部においてロアアーム223の一端部223bが連結される連結部よりも前には、一端部224bに設けられるトーコントロールアーム用ブッシュ280が連結される連結部が設けられている。この連結部は、連結部227と同様の構造であってよい。連結部は、内側にトーコントロールアーム用ブッシュ280を収容する凹形状である。連結部の内部の大きさは、筒部282が車体前後方向Aに平行に配置されるとともに、筒部282の軸方向両端との間に隙間が形成されないように設定されている。筒部282は、軸方向に連結部内に嵌まっており、それゆえ、軸方向両端が連結部に当接している。
【0079】
トーコントロールアーム用ブッシュ280は、連結部に収容された状態で、図示しないボルトとナットとによって連結部に締結される。ボルトは、車体前後方向Aに延びており筒部282内を通っている。一端部224bは、ボルト回りに回動自由である。ゴム部281が変形することによって、トレーリングアーム221とトーコントロールアーム224とが、車体前後左右上下に、互いに相対的に変位することができる。
【0080】
ショックアブソーバASSY226は、コイルスプリング226aとショックアブソーバ226bとを備えている。ショックアブソーバASSY226の下端部はトレーリングアーム221の後部に固定されており、上端部は、車体13の例えば骨格部14に固定されている。
【0081】
図8に示すように、サイドメンバ15a,15bには、突出部240が設けられている。突出部240は、サイドメンバ15a,15bにおいて、第2のサスペンション装置220の近傍に配置されており、サイドメンバ15a,15bから車体下方に向かって突出している。突出部240は、サイドメンバ15a,15bに取り付けられてサイドメンバ15a,15bに一体に固定されている。しかしながら、サイドメンバ15a,15bと突出部240とを1つの部材で一体に形成できる場合は、1つの部材で一体に形成してもよい。
【0082】
第2のクロスメンバ210には、サイドメンバ15a,15bとアッパアーム222とに連結される連結部250,251と、ロアアーム223が連結される連結部300と、トーコントロールアーム224が連結される連結部310とが設けられている。
【0083】
第2のクロスメンバ210は、枠形状であって、車体前後方向Aに延びる一対の部分211を備えている。連結部250,251は、各部分211の上部に設けられており、車体前後方向Aに離間して配置されている。図中では、連結部250が前側に配置されている。連結部251は、連結部250より車体後側に配置されている。突出部240は、連結部250,251間に収容される。
【0084】
図10は、図8に示されるF10−F10線に沿って示す、第2のサスペンション装置取付構造200の一部の断面図である。図10は、連結部250,251とサイドメンバ15aとを車幅方向外側から内側に向かって見た状態を示す側面図である。
【0085】
図10に示すように、突出部240は、連結部250、251間に隙間なく嵌っている。突出部240の車体前後方向Aに沿う前端241は、平面であって、例えば車幅方向Bに平行な平面である。連結部250の車体前後方向Aに沿う後端250aは、前端241に面接触する平面である。前端241と後端250aとは、面接触している。
【0086】
突出部240の車体前後方向Aに沿う後端242は、平面であって、例えば車幅方向Bに平行な平面である。連結部251の車体前後方向Aに沿う前端251aは、後端242に面接触する平面である。後端242と前端251aとは、面接触している。
【0087】
突出部240が連結部250,251間に嵌まることによって、突出部240は、連結部250,251間で変位することが抑制される。この結果、サイドメンバ15a,15bに対して第2のクロスメンバ210の姿勢が車体前後方向Aに変位することが抑制される。
【0088】
なお、突出部240が連結部250,251間に収容された状態において、支障をきたさない程度の隙間であれば突出部240と連結部250,251との間に隙間があってもよい。また、突出部240と連結部250,251との間にスペーサを入れることによって当該隙間を調整するようにしてもよい。
【0089】
図9は、サイドメンバ15aと第2のクロスメンバ210と第2のサスペンション装置220とを分解した状態を概略的に示す斜視図である。なお、右側の後輪12を支持する第2のサスペンション装置220に係る構造と、左側の後輪12を支持する第2のサスペンション装置220に係る構造とは、同じである。このため、図9では、右側の後輪12を支持する第2のサスペンション装置220と、サイドメンバ15bとは省略されている。
【0090】
図9に示すように、連結部251の内部は、アッパアーム222の他端部222cに設けられるアッパアーム用ブッシュ260を収容可能な収容空間252が形成されている。収容空間252の大きさは、車体前後方向Aにアッパアーム用ブッシュ260が隙間なく嵌まるように設定されている。
【0091】
具体的には、図10に示すように、アッパアーム用ブッシュ260の車体前後方向Aに沿って前端263(本実施形態では筒部262の前端)が連結部251の車体前後方向Aに沿って前側に位置する前側壁部253に当接し、アッパアーム用ブッシュ260の車体前後方向Aに沿って後端264(本実施形態では筒部262の後端)が連結部251の車体前後方向Aに沿って後側に位置する後側壁部254に当接する。
【0092】
アッパアーム222は、アッパアーム用ブッシュ260が連結部251内に収容された際に車体前後方向Aに姿勢が変位することが抑制されるとともに、ゴム部261が変形することによって、車体13に対して相対的に変位することができる。連結部250は、連結部251と同じ構造である。
【0093】
なお、アッパアーム用ブッシュ260が連結部251内に収容された状態において、支障をきたさない程度の隙間であれば、アッパアーム用ブッシュ260と連結部251との間に隙間があってもよい。または、スペーサを用いてアッパアーム用ブッシュ260と連結部251との間の隙間を調整するようにしてもよい。
【0094】
連結部300は、各部分211の後部の下部に設けられている。連結部300は、内部にロアアーム用ブッシュ270を収容可能な構造である。具体的には、ロアアーム用ブッシュ270の車体前後方向Aに沿って前端273(本実施形態では筒部272の前端)が連結部300の車体前後方向Aに沿って前側に位置する前側壁部301に当接し、ロアアーム用ブッシュ270の車体前後方向Aに沿って後端274(本実施形態では筒部272の後端)が連結部300の車体前後方向Aに沿って後側に位置する後側壁部302に当接する。
【0095】
ロアアーム223は、ロアアーム用ブッシュ270が連結部300内に収容された際に車体前後方向Aに姿勢が変位することが抑制されるとともに、ゴム部271が変形することによって、車体13に対して相対的に変位することができる。
【0096】
連結部310は、各部分211の前部の下部に設けられている。連結部310は、内部にトーコントロールアーム用ブッシュ280を収容可能な構造である。具体的には、トーコントロールアーム用ブッシュ280の車体前後方向Aに沿って前端283(本実施形態では筒部282の前端)が連結部310の車体前後方向Aに沿って前側に位置する前側壁部311に当接し、トーコントロールアーム用ブッシュ280の車体前後方向Aに沿って後端284(本実施形態では筒部282の後端)が連結部310の車体前後方向Aに沿って後側に位置する後側壁部312に当接する。
【0097】
トーコントロールアーム224は、トーコントロールアーム用ブッシュ280が連結部310内に収容された際に車体前後方向Aに姿勢が変位することが抑制されるとともに、ゴム部281が変形することによって車体13に対して相対的に変位することができる。
【0098】
連結部250,251と、突出部240とには、ボルト230が通るとともにボルト230が隙間なく嵌まる孔320,321が形成されている。突出部240が連結部250,251間に嵌まった状態において、孔320,321は互いに連通し、車体前後方向Aに並ぶ。アッパアーム222の他端部222cに設けられるアッパアーム用ブッシュ260の筒部262の内側の孔323は、ボルト230が嵌まる大きさであって、かつ、アッパアーム用ブッシュ260が連結部251の内側に収容されたときに、孔320,321に連通する。
【0099】
ボルト230は、孔320,321と、アッパアーム用ブッシュ260内(本実施形態では筒部262内の孔323)を通り、ナット233に螺合する。ボルト230は、車体前後方向Aに平行である。このことによって、第2のクロスメンバ210とサイドメンバ15aとアッパアーム222とは、一本のボルト230によって締め付けられて、互いに連結される。また、ボルト230は、アッパアーム222の回動軸としても機能する。ボルト230は、本発明で言う連結部材の一例である。
【0100】
連結部300には、ボルト231が通るとともにボルト231が隙間なく嵌まる孔330が形成されている。孔330は、車体前後方向Aに開口している。ロアアーム223の他端部223cに形成されるロアアーム用ブッシュ270の筒部272の内側の孔331は、ボルト231が通るとともにボルト231が隙間なく嵌まる大きさを有している。
【0101】
ロアアーム用ブッシュ270が連結部300内に収容されると、孔330,331は、互いに連通するとともに車体前後方向Aに並ぶ。ボルト231は、孔330とロアアーム用ブッシュ270内(本実施形態では筒部272内の孔331)を通り、ナット234に螺合する。この構造によって、ロアアーム223は、車体13に連結される。ボルト231は、車体前後方向Aに平行である。ボルト231は、ロアアーム223の回動軸としても機能する。
【0102】
連結部310は、ボルト232が通るとともにボルト232が隙間なく嵌まる孔340が形成されている。孔340は、車体前後方向Aに開口している。トーコントロールアーム用ブッシュ280の筒部282内孔341は、ボルト232が通るとともに隙間なく嵌まる大きさを有している。
【0103】
トーコントロールアーム用ブッシュ280が連結部310内に収容されると、孔340,341は互いに連通するとともに車体前後方向Aに並ぶ。ボルト232は、孔340とトーコントロールアーム用ブッシュ280内(本実施形態では、筒部282内の孔341)を通り、ナット235に螺合する。この構造によって、トーコントロールアーム224は、車体13に連結される。ボルト232は、車体前後方向Aに平行である。ボルト232は、トーコントロールアーム224の回動軸としても機能する。
【0104】
右側の後輪12を支持する第2のサスペンション装置220を車体13に取り付ける取付構造も上記と同様である。
【0105】
このように、第2のサスペンション装置取付構造200が、第2のサスペンション装置220のアッパアーム222と第2のクロスメンバ210とサイドメンバ15a,15bとを一本のボルト230によって互いに連結固定することによって、第2のサスペンション装置取付構造200の部品点数の削減および作業工数を削減できる。
【0106】
また、突出部240が連結部250,251内に車体前後方向Aに嵌まり込んでかつ連結部250,251によって車体前後方向Aの変位が規制される構造であることによって、突出部240と連結部250,251とが、サイドメンバ15a,15bと第2のクロスメンバ210との相対位置が車体前後方向Aに移動することを抑制するストッパとして機能する。このため、サイドメンバ15a,15bと第2のクロスメンバ210との相対位置の変位を抑制するためにボルトなどの別部材を用いることがないので、部品点数を抑制するとこができる。
【0107】
アッパアーム222が、連結部251内に収容される構造であることによって、連結部251と突出部240とアッパアーム222とが占める大きさを小さくすることができる。
【0108】
さらに、アッパアーム222が、連結部251内に収容される構造であることによって、ボルト230がナット233に最後まで螺合しても、ボルト230とナット233とによる締め付け力がアッパアーム用ブッシュ260に作用しないので(作用してもその影響を小さく抑えられるので)、アッパアーム222がボルト230回りに回動しにくくなることが抑制される。
【0109】
また、連結部材としてボルト230を利用することによって、部品のコストを低減できる。
【0110】
なお、本実施形態では、アッパアーム222は、連結部251内に収容されている。しかしながら、アッパアーム222の位置が第2の実施形態で説明された位置よりも車体前方に配置される場合では、アッパアーム222は、連結部250内に収容されてもよい。
【0111】
また、本実施形態では、第2のクロスメンバ210に、連結部250が設けられて、連結部250,251間に突出部240が嵌まる構造であるが、例えばこれに限定されない。連結部250は、設けられなくてもよい。図11は、連結部250を備えない第2のサスペンション装置取付構造200を示す側面図である。なお、アッパアーム222が連結部250内に収容される場合では、連結部251が設けられてなくてもよい、
また、本実施形態では、自動車10は、第1のサスペンション装置取付構造20と、第2のサスペンション装置取付構造200とを備えている。しかしながら、これに限定されない。例えば、第1のサスペンション装置取付構造20を備えず、第2のサスペンション装置取付構造200のみを備えてもよい。
【0112】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本願発明は、例えば自動車のサスペンション装置の取付構造に用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
13…車体、14…骨格部、15a…サイドメンバ、15b…サイドメンバ、16…第1のクロスメンバ(クロスメンバ)、20…第1のサスペンション装置取付構造(サスペンション装置取付構造)、30…第1のサスペンション装置(サスペンション装置)、31…ナックル、32…アッパアーム(アーム部材)、33…ロアアーム、52…ボルト(連結部材)、60…突出部、63…凹部(連結部)、200…第2のサスペンション装置取付構造(サスペンション装置取付構造)、210…第2のクロスメンバ(クロスメンバ)、220…第2のサスペンション装置(サスペンション装置)、222…アッパアーム(アーム部材)、230…ボルト(連結部材)、240…突出部、250…連結部、251…連結部、A…車体前後方向、B…車幅方向。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が車輪側に支持されるアーム部材を備えて前記車輪を車体に支持するサスペンション装置を車体に取り付けるサスペンション装置取付構造であって、
前記サスペンション装置と、
前記車体の骨格部の一部であって車体前後方向に延びるサイドメンバと、
前記サイドメンバに設けられて前記サイドメンバから突出する突出部と、
前記車体の骨格部の一部であって車幅方向に延びるクロスメンバと、
前記クロスメンバに設けられて前記アーム部材と前記突出部とに連結される連結部と、
前記アーム部材と前記突出部と前記連結部とを貫通してこれらを互いに連結するとともに、前記アーム部材を回動自由に支持する連結部材と
を具備することを特徴とするサスペンション装置取付構造。
【請求項2】
前記サスペンション装置は、ナックルと、前記ナックルの上端部に連結されるアッパアームと、前記ナックルの下端部に連結されるロアアームとを具備し、
前記アッパアームは、前記アーム部材であり、
前記連結部は、前記突出部を収容可能な形状であり、
前記連結部材は、前記突出部が前記連結部内に収容された状態で前記突出部と前記連結部と前記アッパアームとを貫通して互いに連結する
ことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置取付構造。
【請求項3】
前記アッパアームは、二股に分かれる形状であって内側に前記突出部を収容可能であり、
前記連結部材は、前記アッパアームの内側に前記突出部を収容した状態で前記連結部と前記突出部と前記アッパアームとを貫通する
ことを特徴とする請求項2に記載のサスペンション装置取付構造。
【請求項4】
前記連結部材は、ボルトである
ことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のサスペンション装置取付構造。
【請求項1】
一端部が車輪側に支持されるアーム部材を備えて前記車輪を車体に支持するサスペンション装置を車体に取り付けるサスペンション装置取付構造であって、
前記サスペンション装置と、
前記車体の骨格部の一部であって車体前後方向に延びるサイドメンバと、
前記サイドメンバに設けられて前記サイドメンバから突出する突出部と、
前記車体の骨格部の一部であって車幅方向に延びるクロスメンバと、
前記クロスメンバに設けられて前記アーム部材と前記突出部とに連結される連結部と、
前記アーム部材と前記突出部と前記連結部とを貫通してこれらを互いに連結するとともに、前記アーム部材を回動自由に支持する連結部材と
を具備することを特徴とするサスペンション装置取付構造。
【請求項2】
前記サスペンション装置は、ナックルと、前記ナックルの上端部に連結されるアッパアームと、前記ナックルの下端部に連結されるロアアームとを具備し、
前記アッパアームは、前記アーム部材であり、
前記連結部は、前記突出部を収容可能な形状であり、
前記連結部材は、前記突出部が前記連結部内に収容された状態で前記突出部と前記連結部と前記アッパアームとを貫通して互いに連結する
ことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置取付構造。
【請求項3】
前記アッパアームは、二股に分かれる形状であって内側に前記突出部を収容可能であり、
前記連結部材は、前記アッパアームの内側に前記突出部を収容した状態で前記連結部と前記突出部と前記アッパアームとを貫通する
ことを特徴とする請求項2に記載のサスペンション装置取付構造。
【請求項4】
前記連結部材は、ボルトである
ことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のサスペンション装置取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−25910(P2011−25910A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63197(P2010−63197)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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