説明

シャワーヘッド、シャワーヘッドを含む成膜装置、ならびに強誘電体膜の製造方法

【課題】パーティクルなどを含むことなく良好な膜質を有する膜の形成に適したシャワーヘッドおよび成膜装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかるシャワーヘッド200は、強誘電体膜の成膜に用いられるシャワーヘッドにおいて、少なくとも前記強誘電体膜を構成する金属元素を含む第1ガスが流入される第1ガス室210と、少なくとも前記第1ガスと反応する第2ガス220が流入される第2ガス室と、前記第1ガス室と接続された第1ノズル216と、前記第2ガス室と接続された第2ノズル226と、を含み、前記第1ノズル216は、前記第1ガスを放出する第1放出口214を備え、前記第2ノズルは、前記第2ガスを放出する第2放出口224を備え、前記第1放出口は、前記第2放出口よりも突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーヘッド、シャワーヘッドを含む成膜装置、ならびに、強誘電体膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体メモリ装置(FeRAM)は、低電圧および高速動作が可能な不揮発性メモリであり、メモリセルが1トランジスタ/1キャパシタ(1T/1C)で構成できるため、DRAMなみの集積化が可能であることから、大容量不揮発性メモリとして期待されている。
【0003】
強誘電体メモリを構成する強誘電体膜の形成方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、およびレーザアブレーション法等の物理蒸着技術(PVD:Physical Vapor Deposition)や、化学溶液堆積法(CSD:Chemical Solution Deposition)や化学気相堆積法、およびMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などが挙げられる。中でも、近年開発されているプラグ導電層の上に強誘電体キャパシタが設けられたスタック構造の強誘電体メモリ装置を製造するには、MOCVD法が好適に用いられる。これは、MOCVD法によれば、下層に設けられたトランジスタなどの素子に影響を与えることのないよう、処理温度などが制限されたプロセス条件下で、結晶配向性が制御された層を堆積しやすいためである。
【0004】
特開2002―30445号公報および特開2001−262352号公報には、MOCVD装置で用いられるシャワーヘッド構造が開示されている。これらの公報に開示されているシャワーヘッド構造は、区画分離された複数のガス拡散室を有し、それぞれのガス拡散室からチャンバ(反応容器)内に原料ガス等が噴出される構造を有する。
【特許文献1】特開2002−30445号公報
【特許文献2】特開2001−262352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2002―30445号公報および特開2001−262352号公報に開示されているシャワーヘッドを有する成膜装置を用いて強誘電体膜を成膜する場合、金属源となるガスと、これらの金属源と反応(酸化もしくは還元)するための反応ガスとが、別々の噴出口からチャンバ内に噴出されることとなる。このとき、基板の加熱に伴い、基板面と対向するシャワーヘッド表面が加熱されてしまい、シャワーヘッド表面などにも膜が成膜されてしまうことがある。このことは、パーティクルの要因となり、強誘電体膜の膜質に影響を与えることとなる。
【0006】
本発明の目的は、パーティクルなどを含むことなく良好な膜質を有する膜の形成に適したシャワーヘッドおよび成膜装置を提供することにある。本発明の他の目的は、上記成膜装置を用いた強誘電体膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明にかかる第1のシャワーヘッドは、
強誘電体膜の成膜に用いられるシャワーヘッドにおいて、
少なくとも前記強誘電体膜を構成する金属元素を含む第1ガスが流入される第1ガス室と、
少なくとも前記第1ガスと反応する第2ガスが流入される第2ガス室と、
前記第1ガス室と接続された第1ノズルと、
前記第2ガス室と接続された第2ノズルと、を含み、
前記第1ノズルは、前記第1ガスを放出する第1放出口を備え、
前記第2ノズルは、前記第2ガスを放出する第2放出口を備え、
前記第1放出口は、前記第2放出口よりも突出している。
【0008】
本発明にかかる第1のシャワーヘッドによれば、第1放出口は、第2放出口と比して被処理体と近い位置に設けられている。そのため、第1放出口から供給される金属源を含む第1ガスを確実に被処理体の表面に供給することができる。金属源を含む第1ガスは、噴射面側に押し戻されたとき、輻射熱で加熱された噴射面近傍で分解され意図しない膜が噴射面に堆積してしまうことがある。しかし、本発明によれば、被処理体の表面に近い位置で第1ガスを供給できることとなり、噴射面に第1ガスを原料とした意図されない膜が堆積することを抑制することができる。その結果、パーティクルの発生源を減らすことができ、膜質が向上した強誘電体膜を形成することができる。
【0009】
(2)本発明にかかる第2のシャワーヘッドは、
成膜に用いられるシャワーヘッドにおいて、
第1ガスが流入される第1ガス室と、
第2ガスが流入される第2ガス室と、
前記第1ガス室に接続された第1ノズルと、
前記第2ガス室に接続された第2ノズルと、を含み、
前記第1ノズルは、前記第1ガスを放出する第1放出口を備え、
前記第2ノズルの内壁の少なくとも一部は、前記第1放出口に向かっている形状を有している。
【0010】
本発明にかかる第2のシャワーヘッドによれば、第2ノズルは、逆テーパ形状を有する。そのため、第2ガスは、逆テーパ形状をなす側面の傾斜に合わせて放射状に広がって供給されることとなる。このような第2ガスの流れは、第1ガスを被処理体の表面方向に向かわせることに寄与することとなる。たとえば、第1ガスの種類によっては、噴射面側に第1ガスが押し戻されたとき、輻射熱で加熱された噴射面近傍で分解され意図しない膜が噴射面に堆積してしまうことがある。しかし、本発明によれば、そのような問題を抑制することができる。その結果、パーティクルの発生が抑制され、膜質の良好な所与の膜を成膜することができる。また、本発明にかかるシャワーヘッドにおいて、「逆テーパ形状」とは、被処理体の設置方向に向かって、開口径が大きくなる形状のことをいう。
【0011】
なお、本発明にかかるシャワーヘッドは、さらに、下記の態様をとることができる。
【0012】
(3)本発明にかかるシャワーヘッドにおいて、
前記第2ノズルは、前記第2ガス室側に位置する第1部分と、該第2ガスが放出される側に位置する第2部分とを有し、該第2部分は逆テーパ形状であることができる。
【0013】
(4)本発明にかかるシャワーヘッドにおいて、
前記逆テーパ形状をなす側面は、曲面である、シャワーヘッド。
【0014】
(5)本発明にかかるシャワーヘッドにおいて、
前記第2ノズルは、前記第2ガスを放出する第2放出口を備え、
前記第1放出口の一部と前記第2放出口の一部とが接触している、シャワーヘッド。
【0015】
(6)本発明にかかるシャワーヘッドにおいて、
前記シャワーヘッドは、強誘電体膜の成膜に用いられ、
前記第1ガスは、少なくとも前記強誘電体膜を構成する金属元素を含み、
前記第2ガスは、少なくとも前記第1ガスと反応するガスを含む、シャワーヘッド。
【0016】
(7)本発明にかかる成膜装置は、
所定の膜を堆積させるための成膜装置において、
処理容器と、
前記処理容器内に設置された、上述の本発明にかかるシャワーヘッドを含む。
【0017】
本発明にかかる成膜装置によれば、噴射面への意図しない膜の堆積が抑制され、パーティクルの発生が低減された成膜装置を提供することができる。
【0018】
(8)本発明にかかる強誘電体膜の製造方法は、上述の本発明にかかる成膜装置を用いて形成される。本発明にかかる強誘電体膜の製造方法によれば、パーティクルの発生が抑制された成膜装置を用いて製造されるため、膜質が良好で、かつ、結晶配向性のよい強誘電体膜を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
1.成膜装置
1.1.第1の実施の形態
次に、本発明にかかる成膜装置の実施の形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態にかかる成膜装置1000を模式的に示す図である。図2は、本実施の形態にかかる成膜装置1000に含まれるシャワーヘッド200を拡大して示す図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態にかかる成膜装置1000は、たとえば、断面の内部が空洞となっているアルミニウム製の処理容器100を有する。この処理容器100の内部には、成膜に必要なガスの供給機構であるシャワーヘッド200と、被処理体10(成膜される基体)を設置する支持台300が設けられている。処理容器100には、成膜に要するガスを導入するためのガス導入口110a、110bと、被処理体を処理容器100内に搬入搬出するための搬出入口120と、処理容器100内の減圧またはガスの排気をするための排気口130とが少なくとも設けられている。搬出入口120には、図示しないが、気密に開閉可能になされたゲートバルブが設けられていることができる。また、排気口130には、排気管および真空ポンプ(いずれも図示せず)などの、公知の排気機構が設けられている。また、この排気機構には、処理容器100内の圧力を調整するための弁が設けられていてもよい。
【0021】
支持台300は、図示しないが、たとえば、カンタル線等の抵抗加熱ヒータもしくはランプヒーターよりなる加熱手段を有することができる。そして、シャワーヘッド200との距離を調整することができるよう、上下方向の稼動を可能とする移動機構(図示せず)が設けられていることができる。
【0022】
次に、図2を参照しつつ、本実施の形態にかかる成膜装置1000に含まれるシャワーヘッド200の詳細について説明する。
【0023】
図2に示すように、このシャワーヘッド装置200は、上記処理容器100の天井板102の下面に接合されている。シャワーヘッド200は、たとえば、有底円筒体形状を有している。この天井板102への接合は、Oリング等のシール部材(図示せず)を介してなされており、処理容器100内の気密性を維持するようになっている。このシャワーヘッド200の全体は、例えばニッケルやニッケル合金、アルミニウム、或いはアルミニウム合金により形成されていることができる。
【0024】
シャワーヘッド200内には、第1ガスを拡散させるための第1ガス室210と、第2ガスを拡散させるための第2ガス室220とが分離区画して設けられている。本実施の形態にかかるシャワーヘッド200では、水平方向に沿って配置された区画板212を設けることによってこの上下に第1ガス室210および第2ガス室220とが分離区画して設けられている。
【0025】
第1ガス室210には、処理容器100に設けられた第1ガス導入口110aが接続して設けられている。第2ガス室220には、同様に処理容器100に設けられた第2ガス導入口110bが接続して設けられている。なお、第2ガス導入口110bは、第1ガス室210を貫通している。
【0026】
シャワーヘッド200をなす底板(以下「噴射面」ともいう。)222には、第1ガスおよび第2ガスを処理容器100内に供給するためのノズルが設けられている。具体的には、第1ガスを供給する第1ノズル216と、第2ガスを供給する第2ノズル226を有する。第1ノズル216は、第2ガス室220を貫通している。第1ノズル216および第2ノズル226は、噴射面222の面内において、マトリックス状にほぼ面内均一に複数配置されていることができる。また、第1ノズル216には、第1ガスが放出される方向の第1ノズル216の端部に第1放出口214がある。第2ノズル226には、第2ガスが放出される方向の第2ノズル226端部に第2放出口224がある。
【0027】
さらに、図2を参照しつつ、第1放出口214および第2放出口224の位置関係について、説明する。図2に示すように、本実施の形態では、第1放出口214は、噴射面222から突出した位置に設けられている。つまり、第1放出口214と第2放出口224とで、ガスが処理空間に放たれる位置が異なることとなる。これにより、第1ガスは第2ガスと比して、被処理体10の表面に近い位置で供給できることとなる。
【0028】
本実施の形態にかかる成膜装置は、強誘電体膜の製造に用いられ、第1ガスとしては金属源を含むガスを、第2ガスとしては金属源と反応(酸化または還元)するガスが用いられる。
【0029】
第1の実施の形態にかかる成膜装置によれば、シャワーヘッド200において、第1放出口214は、第2放出口224と比して被処理体10と近い距離に設けられている。そのため、第1放出口214から供給される金属源ガス(第1ガス)を確実に被処理体の表面に供給することができる。これにより、噴射面222に金属源ガスを原料とした膜が堆積することを抑制することができる。その結果、パーティクルの発生源を減らすことができ、膜質が向上した強誘電体膜を形成することができる。
【0030】
1.2.第2の実施の形態
次に、第2の実施の形態にかかる成膜装置について、図3を参照しつつ説明する。図3(A)は、第2の実施の形態にかかるシャワーヘッド230を説明する図であり、図2に対応した部分を示す。図3(B)は、図3(A)のa部を拡大して示す図である。なお、第2の実施の形態にかかる成膜装置は、第1の実施の形態と比して、噴射面222に設けられる第2放出口224の形状が異なる例である。成膜装置1000の構造については、共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0031】
図3(A)に示すように、第2の実施の形態にかかる成膜装置では、第2ノズル226の一部が、ガスの噴出方向(矢印)に逆テーパ形状を有している。これにより第1放出口214aの平面形状と比して、第2放出口224aの平面形状が大きい。また、図3(B)に示すように、第2ノズル226は、第2ガス室側の第1部分225aと、噴射面側の第2部分225bとを有する。本実施の形態では、この第2部分225bのみが、逆テーパ形状を有している。
【0032】
第2の実施の形態にかかる成膜装置によれば、シャワーヘッド230は、第2ノズル226が逆テーパ形状を有している。そのため、第2ガスは、逆テーパ形状に傾斜に合わせて放射状に広がって供給されることとなる。また、この傾斜の延長線上には、第1放出口214が設けられているため、第1ガスは、第2ガスの流れに乗って被処理体の表面方向に向かうこととなる。つまり、第2ガスは、第1ガスを被処理体の表面方向に向かわせることに寄与することとなる。その結果、第1の実施の形態と同様に、噴射面に意図しない膜が堆積することを抑制することができ、パーティクルの発生が抑制され、膜質の良好な所与の膜を成膜することができる。
【0033】
さらに、逆テーパ形状を有することで、噴射面222の表面積を増加させることができる。このことは、被処理体の加熱による輻射熱でシャワーヘッド230の噴射面222の温度が上昇することを抑制できる。その結果、意図しない膜の堆積をより抑制することができる。
【0034】
なお、第2の実施の形態では、第2ノズルの第2部分225bのみが、逆テーパ形状を有する場合を図示したが、これに限定されない。たとえば、第2ノズル226の全体が逆テーパ形状を有していてもよい。
【0035】
1.3.第3の実施の形態
次に、第3の実施の形態にかかる成膜装置について、図4を参照しつつ説明する。図4(A)は、第3の実施の形態にかかるシャワーヘッド260を説明する図であり、図2に対応した部分を示す。図4(B)は、図4(A)のa部を拡大して示す図である。なお、第3の実施の形態にかかる成膜装置は、第1の実施の形態と比して、噴射面222に設けられる第2放出口224の形状が異なる例である。成膜装置1000の構造については、共通するため、その詳細な説明は省略する。
【0036】
図4(A)に示すように、第3の実施の形態にかかる成膜装置では、まず、第1ノズル216の他方(第1ガス室210と接続している側)の端214bと、第2放出口224の他方の端224bの大きさが異なる。さらに、第2ノズル226のみをみたときに、放出口224aは、他方の端224bと比して大きい平面形状を有し、いわゆる逆テーパ形状を有する。
【0037】
図4(B)に示すように、また、第2ノズル226において、逆テーパ形状をなす側面228は、第2放出口224aの中心方向に突出した曲面を有している。つまり、側面228は、第2ガスの流れる方向に対して膨らんだ曲面を有することとなる。
【0038】
第3の実施の形態にかかる成膜装置によれば、シャワーヘッド260は、第2ノズル226が逆テーパ形状を有し、さらに、第2ノズル226の中心に向かって凸状態となった曲面を有している。そのため、第2ガスの流れをよりスムーズにすることができる。その結果、第2の実施の形態にかかる成膜装置と同様の作用を有し、パーティクルの発生が抑制され、膜質の良好な所与の膜を成膜することができる。また、第2の実施の形態にかかる成膜装置と比して、曲面になっていることでさらに表面積を増加させることができる。これにより、噴射面の温度上昇をさらに抑制することができ、意図しない膜の形成を抑制することができる。
【0039】
2.強誘電体膜の成膜方法
次に、上記1.の項で説明した成膜装置を用いた強誘電体膜の成膜方法について図5および図6を参照しつつ説明する。なお、この成膜方法の説明では、強誘電体膜の上下に電極が設けられた強誘電体キャパシタを形成する場合を例として説明する。図5および図6は、強誘電体キャパシタの製造工程を模式的に示す断面図である。
【0040】
図5に示すように、まず、基体10を準備する。基体10としては、たとえば半導体基板を用いることができる。ついで、基体10の上に、たとえば、スパッタリング法により第1電極20aを形成する。第1電極20aの材質は、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、およびイリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属からなることができ、好ましくは白金またはイリジウムからなり、より好ましくはイリジウムからなる。また、第1電極20aは、単層膜でもよいし、または積層した多層膜でもよい。
【0041】
その後、第1電極20aの上に、強誘電体膜30aを形成する。強誘電体膜30aの形成では、上記の成膜装置1000を用いて行う。このとき、第1ガスとして、有機金属材料をそれらが可溶な溶媒に溶かし、この溶液を気化して得られたガスを用いる。有機金属材料としては、たとえば、Tiソースとして、Ti(s−Am)(DMHD)((セカンダリアミルアルコキシド)(ジメチルヘプタンジオネート))や、Ti(iPrO)(DPM)((イソプロキシ)(ジピバロイルメタネート)チタン)をテトラヒドロフラン(THF)に所定の割合で溶解してなる溶液が使用される。また、Zrソースとしては、Zr(DMHD)((ジメチルヘプタンジオネート)ジルコニウム)やZr(DPM)((ジピバロイタルメタネート)ジルコニウム)をTHFに所定の割合で溶解してなる溶液が使用される。そして、Pbソースとしては、例えばPb(DPM)((ジピバロイタルメタネート)鉛)をTHFに所定の割合で溶解してなる溶液が使用される。これらの溶液を気化させて、キャリアガスと共に、処理容器100内に導入することができる。キャリアガスとしては、Nガス、Arガスなどの不活性ガスを用いることができる。
【0042】
また、第2ガスとしては、酸素ガスを用いることができる。また、支持台300の加熱機構を適宜調整することで、基板温度が500℃ないし650℃になるよう調整を行う。この温度は、結晶性の強誘電体層を形成することができる温度であり、材料としてPZTを用いた場合の温度である。
【0043】
ついで、強誘電体膜30aの上に第2電極40aを形成する。第2電極40aは、第1電極20aと同様の方法により形成することができる。この第1電極20a、強誘電体膜30aおよび第2電極40aからなる積層体101の上に、マスク層M1を形成する。マスク層M1としては、たとえば、レジスト層を用いることができる。
【0044】
次に、図6に示すように、積層体101において露出している部分を除去する。積層体101の除去は、公知のエッチング技術により行うことができる。また、パターニングの後に、必要に応じて、結晶回復のための熱処理を行ってもよい。以上の工程により、強誘電体キャパシタ50を製造することができる。
【0045】
本実施の形態にかかる強誘電体膜の製造方法によれば、結晶配向性が向上し、また、良質な強誘電体膜30を形成することができる。本実施の形態で用いた成膜装置1000は、パーティクルの発生が抑制されている。強誘電体キャパシタ50の特性を向上させるには、強誘電体膜30の結晶配向性が重要になるが、堆積中にパーティクルが混入すると、このパーティクルを核として結晶成長してしまうため、ランダムな配向を有する膜となってしまうことがある。しかしながら、本実施の形態にかかる強誘電体膜の製造方法によれば、そのような問題が抑制され、結晶配向性が向上した強誘電体膜を製造することができる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施の形態にかかる成膜装置を模式的に示す図。
【図2】図1に含まれるシャワーヘッドを拡大して示す図。
【図3】第2の実施の形態にかかる成膜装置のシャワーヘッドを説明する図。
【図4】第3の実施の形態にかかる成膜装置のシャワーヘッドを説明する図。
【図5】本実施の形態にかかる強誘電体キャパシタの製造工程を説明する断面図。
【図6】本実施の形態にかかる強誘電体キャパシタの製造工程を説明する断面図。
【符号の説明】
【0048】
10…被処理体(基体)、 20…第1電極、 30…強誘電体膜、 40…第2電極、 50…強誘電体キャパシタ、 100…処理容器、 110a…第1ガス導入口、 110b…第2ガス導入口、 101…積層体、 102…天井板、 120…搬出入口、 130…排気口、 200、230、260…シャワーヘッド、 210…第1ガス室、 212…区画板、214、216…放出口 216…第1ノズル、 220…第2ガス室、 222…噴射面(底板)、 226…第ノズル、 228…側面、 300…支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体膜の成膜に用いられるシャワーヘッドにおいて、
少なくとも前記強誘電体膜を構成する金属元素を含む第1ガスが流入される第1ガス室と、
少なくとも前記第1ガスと反応する第2ガスが流入される第2ガス室と、
前記第1ガス室と接続された第1ノズルと、
前記第2ガス室と接続された第2ノズルと、を含み、
前記第1ノズルは、前記第1ガスを放出する第1放出口を備え、
前記第2ノズルは、前記第2ガスを放出する第2放出口を備え、
前記第1放出口は、前記第2放出口よりも突出している、シャワーヘッド。
【請求項2】
成膜に用いられるシャワーヘッドにおいて、
第1ガスが流入される第1ガス室と、
第2ガスが流入される第2ガス室と、
前記第1ガス室に接続された第1ノズルと、
前記第2ガス室に接続された第2ノズルと、を含み、
前記第1ノズルは、前記第1ガスを放出する第1放出口を備え、
前記第2ノズルの内壁の少なくとも一部は、前記第1放出口に向かっている形状を有している、シャワーヘッド。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2ノズルは、前記第2ガス室側に位置する第1部分と、該第2ガスが放出される側に位置する第2部分とを有し、該第2部分は逆テーパ形状である、シャワーヘッド。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記逆テーパ形状をなす側面は、曲面である、シャワーヘッド。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかにおいて、
前記第2ノズルは、前記第2ガスを放出する第2放出口を備え、
前記第1放出口の一部と前記第2放出口の一部とが接触している、シャワーヘッド。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかにおいて、
前記シャワーヘッドは、強誘電体膜の成膜に用いられ、
前記第1ガスは、少なくとも前記強誘電体膜を構成する金属元素を含み、
前記第2ガスは、少なくとも前記第1ガスと反応するガスを含む、シャワーヘッド。
【請求項7】
所定の膜を堆積させるための成膜装置において、
処理容器と、
前記処理容器内に設置された、請求項1ないし6のいずれかに記載のシャワーヘッドを含む、成膜装置。
【請求項8】
請求項7に記載の成膜装置を用いて形成される、強誘電体膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−180136(P2007−180136A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374502(P2005−374502)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】