説明

シーク制御方法、シーク制御装置および媒体記憶装置

【課題】二自由度制御を行う現在オブザーバ制御によるシーク制御制御装置において、シーク制御からフォローイング制御への切り替え時の電流段差を防止する。
【解決手段】シーク制御からフォローイング制御への切り替え時に、電流段差解消軌道生成部(28)が、電流値u(n),u(n−1)の差分から段差分の電流値Udiffを計算し、この計算値を相殺する目標位置軌道r‘(n)(又は目標電流軌道)を、フォローイング用コントローラ(22)に供給する。このため、出力電流の電流段差が解消される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーク制御を行った後、フォローイング制御に切り替えるシーク制御方法、シーク制御装置及び媒体記憶装置に関し、特に、シーク制御からフォローイング制御に切り替え時に生じる電流の段差を防止するためのシーク制御方法、シーク制御装置及び媒体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を目標位置に位置制御する装置は、広く利用されている。例えば、磁気ディスク装置や光ディスク装置等の媒体記憶装置の位置決め制御の1つである、ヘッドを目標トラックへ移動させるシーク制御(これに続くフォローイング制御)に利用されている。
【0003】
このシーク制御では、コアース制御を行い、目標位置近傍でファイン制御に切り替えることにより、高速の目標位置への移動と高精度の位置決めの両立を実現する。このため、コアース制御(シーク制御ともいう)と、ファイン制御(フォローイング制御ともいう)とは、異なる制御特性を与えている。
【0004】
図21は、従来の位置制御系のブロック図である。コントローラ100は、プラント(対象物)110を制御する。コントローラ100は、プラント110の実位置と、目標位置Lseekとの位置誤差eを演算する位置誤差演算部112と、目標位置(又は移動距離)Lseekから、目標軌道r(n)を生成する目標軌道生成部102と、2つのコントローラ103,104と、整定判定部108と、位置誤差切り替え部109と、出力切り替え部106とを有する。
【0005】
この位置制御系では、シーク制御では、シーク用コントローラ103が、目標軌道生成部102からの目標軌道r(n)と、切り替え部109からの位置誤差eとから出力電流値を計算し、切り替え部106を介しプラント110を駆動する。
【0006】
一方、整定判定部108は、位置誤差eが、所定の整定判定条件(例えば、ゼロ)を満足するかを判定し、整定判定条件を満足したと判定すると、目標位置近傍に到達したと判断し、2つの切り替え部106,109を、フォローイング用コントローラ104に切り替える。
【0007】
これにより、フォローイング制御が開始し、フォローイング用コントローラ104が、切り替え部109からの位置誤差eから出力電流値を計算し、切り替え部106を介しプラント110を駆動する(例えば、特許文献1、2参照)。
【0008】
このように、シーク制御とフォローイング制御で、制御系の特性を異なら構成を採用している。例えば、シーク制御中は、400Hzの帯域フィルタの構成を、フォローイング制御中は、800Hzの帯域フィルタの構成を採用する。
【0009】
シーク制御中は、ディスク装置では、多数のトラックを高速で通過するため、観測位置に含まれるノイズが、フォローイング制御中に比し、多い。シーク制御をフォローイング制御と同じ制御帯域で制御を行うと、出力電流が、ノイズの影響に左右され易く、設計上の特性が得られないため、シーク制御中は、制御帯域を落とすことで、この影響を防止している。
【特許文献1】特開平03−233609号公報
【特許文献2】特開平05−143165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図22は、従来の問題点の説明図である。図22に示すように、位置誤差PES(e)が、所定の閾値Th(例えば、磁気ディスク装置では、目標位置のセンターから±0.5トラック)以下になると、前述の整定判定部により、シーク制御からフォローイング制御に切り替わる。
【0011】
この場合に、切り替え時に、同じ位置誤差PESをゼロにする制御をする電流を計算しても、シーク制御系とフォローイング制御系の制御帯域が相違するため、切り替え時に、出力電流が異なり、出力電流の段差が生じる。このような出力電流の段差は、瞬間的なステップ変化であるため、アクチュエータの動作が瞬間的に大きく変化し、小さな可聴音が生じる。
【0012】
近年のかかる装置、例えば、ディスク記憶装置の普及に伴い、記憶装置が、家電機器の分野に利用されている。例えば、携帯音楽プレーヤーや、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、録画装置等に、利用されている。
【0013】
このような機器に利用される場合には、装置に静音設計が要求され、即ち、できるだけ、動作音が小さいことが要求される。このため、従来、問題とならなかった電流段差による可聴音の発生の防止が要求されている。
【0014】
又、電流段差の発生は、フォローイング制御系が、この段差を解消しよう制御するため、残留振動の発生の原因となる。即ち、フォローイングの安定により、位置決め完了となるまでの時間が長くなる。
【0015】
従って、本発明の目的は、シーク制御からフォローイング制御への切り替え時に発生する電流段差を解消するための位置制御方法、位置制御装置及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0016】
又、本発明の他の目的は、シーク制御からフォローイング制御への切り替え時に発生する騒音の発生を防止するためのシーク制御方法、シーク制御装置及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0017】
更に、本発明の他の目的は、シーク制御からフォローイング制御への切り替え時に発生する電流段差を解消し、騒音の発生を防止するためのシーク制御方法、シーク制御装置及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0018】
更に、本発明の他の目的は、シーク制御からフォローイング制御への切り替え時に発生する電流段差を解消し、残留振動の発生を防止するためのシーク制御方法、シーク制御装置及び媒体記憶装置を提供することにある。
【0019】
更に、本発明の他の目的は、シーク制御系の特性に影響を与えずに、シーク制御からフォローイング制御への切り替え時に発生する電流段差を解消するためのシーク制御方法、シーク制御装置及び媒体記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的の達成のため、本発明のシーク制御方法は、前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算するステップと、前記位置誤差に従い、シーク制御を実行するステップと、前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行するステップとを有する。そして、前記フォローイング制御を実行するステップは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差に従う目標軌道を生成するステップと、前記目標軌道と前記位置誤差に従い、二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行するステップとを有する。
【0021】
又、本発明の媒体記憶装置は、記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、前記記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差に従い、シーク制御を実行し、前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行する制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差に従う目標軌道を生成し、前記目標軌道と前記位置誤差に従い、二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行する。
【0022】
又、本発明のシーク制御装置は、対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算するブロックと、前記位置誤差に従い、シーク制御を実行し、前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行する制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差に従う目標軌道を生成し、前記目標軌道と前記位置誤差に従い、二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行する。
【0023】
更に、本発明では、好ましくは、前記目標軌道を生成するステップは、前記二自由度現在オブザーバ制御により、前記切り替え後の前記フォローイング制御の制御電流を演算するステップと、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記演算された前記フォローイング制御の制御電流との差に従う目標軌道を生成するステップとを有する。
【0024】
更に、本発明では、好ましくは、前記シーク制御を実行するステップは、目標位置までの位置軌道に応じて、前記二自由度現在オブザーバ制御により、制御電流を演算するステップを有する。
【0025】
更に、本発明では、好ましくは、前記二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行するステップは、前記現在オブザーバの現サンプルの推定位置との推定位置誤差により、現サンプルの推定位置を補正するステップと、前記補正された推定位置と現サンプルの目標軌道との差を演算し、且つ前記差から前記アクチュエータの出力値を演算するステップと、前記補正された推定位置と、前記現サンプルの出力値とから次の出力値演算のための推定位置を演算するステップとを有する。
【0026】
更に、本発明では、好ましくは、前記アクチュエータの出力値を演算するステップは、1サンプル前の出力値と前記差とから前記サンプル時点から所定時間進んだ推定位置を演算するステップと、前記進んだ推定位置から前記アクチュエータへの出力値を演算するステップとを有し、前記次の推定位置を演算するステップは、前記補正された推定位置と、前記現サンプルの出力値と、前記1サンプル前の出力値とから次の出力値演算のための推定位置を演算するステップとを有する。
【0027】
更に、本発明では、好ましくは、前記目標軌道を生成するステップは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差を演算するステップを有する。
【0028】
更に、本発明では、好ましくは、前記目標軌道を生成するステップは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差を演算するステップと、前記差に従い、目標位置軌道を生成するステップとを有する。
【発明の効果】
【0029】
シーク制御からフォローイング制御への切り替え時に、電流段差解消軌道生成部、電流値u(n),u(n−1)の差分から段差分の電流値Udiffを計算し、この計算値を相殺する目標位置軌道r‘(n)(又は目標電流軌道)を、フォローイング制御に供給するので、電流段差が解消される。フォローイング制御は、二自由度制御系で構成され、目標位置軌道r‘(n)が二自由度位置制御系の目標位置として与えられるので、余分な外乱入力にはならず、制御系への影響がない。
【0030】
又、電流段差の解消構成を用いることで、より切り替え条件が緩和できる。このため,従来よりも目標位置からより遠い位置で、より速い速度で,フォローイング制御への切替が可能になる。そのため、シーク時間は、より短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、媒体記憶装置、位置制御系の第1の実施の形態、二自由度制御系、第2の実施の形態、第3の実施の形態、第4の実施の形態、第5の実施の形態、他の実施の形態の順で説明するが、本発明は、この実施の形態に限られない。
【0032】
(媒体記憶装置)
図1は、本発明の一実施の形態の媒体記憶装置の構成図、図2は、図1の磁気ディスクの位置信号の配置図、図3は、図1及び図2の磁気ディスクの位置信号の構成図、図4は、シーク制御の制御遷移図である。
【0033】
図1は、媒体記憶装置として、磁気ディスク装置を示す。図1に示すように、磁気記憶媒体である磁気ディスク4が、スピンドルモータ5の回転軸2に設けられている。スピンドルモータ5は、磁気ディスク4を回転する。アクチュエータ(VCM)1は、先端に磁気ヘッド3を備え、磁気ヘッド3を磁気ディスク4の半径方向に移動する。
【0034】
アクチュエータ1は、回転軸を中心に回転するボイスコイルモータ(VCM)で構成される。図では、磁気ディスク装置に、2枚の磁気ディスク4が搭載され、4つの磁気ヘッド3が、同一のアクチュエータ1で同時に駆動される。
【0035】
磁気ヘッド3は、リード素子と、ライト素子とからなる。磁気ヘッド3は、スライダに、磁気抵抗(MR)素子を含むリード素子を積層し、その上にライトコイルを含むライト素子を積層して、構成される。
【0036】
位置検出回路7は、磁気ヘッド3が読み取った位置信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。リード/ライト(R/W)回路10は、磁気ヘッド3の読み取り及び書込みを制御する。スピンドルモータ(SPM)駆動回路8は、スピンドルモータ5を駆動する。ボイスコイルモータ(VCM)駆動回路6は、ボイスコイルモータ(VCM)1に駆動電流を供給し、VCM1を駆動する。
【0037】
マイクロコントローラ(MCU)14は、位置検出回路7からのデジタル位置信号から現在位置を検出(復調)し、検出した現在位置と目標位置との誤差に従い、VCM駆動指令値を演算する。即ち、位置復調と図5以下で説明するシーク、フォローイングを含むサーボ制御を行う。リードオンリーメモリ(ROM)13は、MCU14の制御プログラム等を格納する。ランダムアクセスメモリ(RAM)12は、MCU14の処理のためのデータ等を格納する。
【0038】
ハードディスクコントローラ(HDC)11は、サーボ信号のセクタ番号を基準にして,1周内の位置を判断し,データを記録・再生する。バッファ用ランダムアクセスメモリ(RAM)15は、リードデータやライトデータを一時格納する。HDC11は、USB(Universal Serial Bus),ATAやSCSI(Small Computer System Interface) 等のインターフェイスIFで、ホストと通信する。バス9は、これらを接続する。
【0039】
図2に示すように、磁気ディスク4には、外周から内周に渡り、各トラックにサーボ信号(位置信号)16が、円周方向に等間隔に配置される。尚、各トラックは、複数のセクタで構成され、図2の実線は、サーボ信号16の記録位置を示す。図3に示すように、位置信号は,サーボマークServo Markと、トラック番号Gray Codeと、インデックスIndexと、オフセット情報(サーボバースト)PosA,PosB,PosC,PosDとからなる。尚、図3の点線は、トラックセンターを示す。
【0040】
図3の位置信号をヘッド3で読み取り、トラック番号Gray Codeとオフセット情報PosA,PosB,PosC,PosDを使い,磁気ヘッドの半径方向の位置を検出する。さらに、インデックス信号Indexを元にして,磁気ヘッドの円周方向の位置を把握する。
【0041】
例えば,インデックス信号を検出したときのセクタ番号を0番に設定し、サーボ信号を検出する毎に、カウントアップして、トラックの各セクタのセクタ番号を得る。このサーボ信号のセクタ番号は,データの記録再生を行うときの基準となる。尚、インデックス信号は、1周に1つである、又、インデックス信号の代わりに、セクタ番号を設けることもできる。
【0042】
図1のMCU14は、位置検出回路7を通じて、アクチュエータ1の位置を確認して,サーボ演算し、適切な電流をVCM1に供給する。即ち、図4に示すように、シーク制御は、コアース制御、整定制御及びフォローイング制御と遷移することで,目標位置まで移動させることができる。いずれも、ヘッドの現在位置を検出する必要がある。ここでは、整定制御をフォローイング制御に含めて説明する。
【0043】
このような,位置を確認するためには,前述の図2のように、磁気ディスク上にサーボ信号を事前に記録しておく。即ち、図3に示したように、サーボ信号の開始位置を示すサーボマーク,トラック番号を表すグレイコード,インデックス信号,オフセットを示すPosA〜PosDといった信号が記録されている。この信号を磁気ヘッドで読み出し、このサーボ信号を、位置検出回路7が、デジタル値に変換する。
【0044】
(位置制御系の第1の実施の形態)
図5は、本発明の位置制御系の第1の実施の形態のブロック図であり、図1のMCU14が実行する位置決め制御系のブロック図である。図6は、図5の段差解消目標軌道の説明図、図7は、図5乃至図6の電流段差解消動作の説明図である。
【0045】
図5に示すように、位置制御部20は、プラント(対象物)40(図1では、アクチュエータ1)を制御する。コントローラ20は、プラント40の実位置と、目標位置Lseekとの位置誤差eを演算する位置誤差演算部42と、目標位置(又は移動距離)Lseekから、目標軌道r(n)を生成する目標軌道生成部44と、2つのコントローラ22,24と、整定判定部26と、位置誤差切り替え部30と、出力切り替え部32とを有する。
【0046】
位置制御部20は、更に、シーク制御用コントローラ24の出力値を各サンプルで、ホールドするホールドブロック34と、ホールドブロック34からの電流値とフォローイング用コントローラ22の電流出力値u(n)との差に従い、電流段差解消軌道r‘(n)を生成する電流段差解消軌道生成部28とを設ける。
【0047】
図5に示すように、シーク制御では、シーク用コントローラ24が、目標軌道生成部44からの目標軌道r(n)と、切り替え部30からの位置誤差eとから出力電流値を計算し、切り替え部32を介し、プラント40(1,3)を駆動する。
【0048】
一方、整定判定部26は、位置誤差eが、所定の整定判定条件(例えば、ゼロ)を満足するかを判定する。整定判定部26は、整定判定条件を満足したと判定すると、目標位置近傍に到達したと判断し、2つの切り替え部30,32を、フォローイング用コントローラ22に切り替える。これにより、フォローイング制御が開始する。
【0049】
この切り替え後の現サンプルにおいて、フォローイング用コントローラ22が、切り替え部30からの位置誤差eから出力電流値を計算する。又、整定判定部26からの切り替え指示に応じて、電流段差解消軌道生成部28は、切り替え直前に、シーク用コントローラ24がアクチュエータ1に流した電流値u(n−1)をホールドし、フォローイング用コントローラ22が計算した出力値(電流値)u(n)を取得する。
【0050】
そして、電流段差解消軌道生成部28は、両電流値u(n),u(n−1)の差分から段差分の電流値Udiffを計算し、この計算値を相殺する目標位置軌道r‘(n)(又は目標電流軌道)を、フォローイング用コントローラ22に供給する。
【0051】
フォローイングコントロ−ラは、2自由度位置制御系で構成されており、計算した出力値をフィードバック制御値とし、供給された目標位置軌道r‘(n)(又は目標電流軌道)を、フィードフォワード値として、プラント40に出力する。
【0052】
この目標位置軌道r‘(n)(又は目標電流軌道)は、前述の計算値Udiffを初期値として、指定時刻後に、「0」に収束する軌道である。図6は、生成する目標位置軌道例を示し、計算したUdiffを初期値とする三角波を用いた例である。図6では、計算したUdiffを初期値として、10サンプル後に「0」となる直線で示される。
【0053】
図7に示すように、サンプルnの時点で、シーク制御系からフォローイング制御系に切り替えると、サンプルnでのフォローイング制御系が計算するアクチュエータ1への電流出力は、図の実線のように、段差Udiffが生じる。
【0054】
ここで、切り替え時に、電流段差解消軌道生成部28が、電流値u(n),u(n−1)の差分から段差分の電流値Udiffを計算し、この計算値を相殺する目標位置軌道r‘(n)(又は目標電流軌道)を、フォローイング用コントローラ22に供給する。
【0055】
このため、出力電流は、図の一点鎖線で示すように、電流段差が解消される。ここで、フォローイングコントローラ22は、二自由度制御系で構成され、目標位置軌道r‘(n)が二自由度位置制御系の目標位置として与えられている。二自由度系で設計し、目標位置として与えるため、制御系は安定動作する。又、応答も予測可能である。即ち、余分な外乱入力にはならず、制御系への影響がない。
【0056】
又、従来、このような電流段差が発生するために,シーク制御からフォローイング制御へ切り替えるときの条件としての位置および速度の制約が厳しかった。しかし、この電流段差の解消構成を用いることで、より切り替え条件が緩和できる。このため,従来よりも目標位置からより遠い位置で、より速い速度で,フォローイング制御への切替が可能になる。そのため、シーク時間は、より短縮できる。
【0057】
(二自由度制御系の説明)
図8は、図5のフォローイング用コントローラ22のブロック図であり、現在オブザーバを使用した二自由度位置制御系を示す。先ず、現在オブザーバを説明する。磁気ディスク装置のアクチュエータは、回転型である。しかし、次式(1)の形の直進型アクチュエータの状態方程式に変換して表現できる。尚、xは位置(m)、vは速度(m/s),uは電流(Ampere)、Blは力定数(N/m)、mは等価質量(kg)、uは出力、sはラプラス演算子である。
【0058】
【数1】

【0059】
サンプリング周期をT(s)、電流の最大値をImax(Ampere),トラック幅をLp(m/track)とおき、位置の単位をtrack、速度の単位をtrack/sample、電流の単位を、Imaxを「1」とする変換を行い、(1)式を、デジタルの状態方程式で表現すると、次式(2)を得る。
【0060】
【数2】

【0061】
一方、定常バイアスを推定するため、定常バイアスを一定とした次式(3)を仮定する。尚、sはラプラス演算子である。
【0062】
【数3】

【0063】
これをデジタル空間に変換すると、次式(4)を得る
【0064】
【数4】

【0065】
又、外乱モデルとして、次式(5)の2次式の特性を設定する。
【0066】
【数5】

【0067】
式(5)の外乱モデルのアナログの状態方程式は、次式(6)で表現される。
【0068】
【数6】

【0069】
この式(6)をデジタル空間に変換すると、次式(7)を得る。
【0070】
【数7】

【0071】
この式(2)、式(4)、式(7)をまとめて、拡大モデルを構成すると、次式(8)が得られる。ここでは、式(4)の定常バイアス、式(7)の2次式で表現された外乱を2つ含めている。
【0072】
【数8】

【0073】
式(8)のアクチュエータのモデルと1つ又は複数の外乱モデルを含む拡大モデルを、簡単化して、次式(9)で表す。
【0074】
【数9】

【0075】
式(9)は、式(8)の行列を、X(n+1),X(n)、A,B、Cで表して、簡単化したものである。式(9)から予測オブザーバは、次式(10)で表される。
【0076】
【数10】

【0077】
この式は、アナログ制御のオブザーバの式をそのままデジタルの式に直したものであり、Lは、状態推定ゲインであり、位置、速度、バイアス、外乱の4つ(式(8)に対応すると、外乱が2つのため、5つ)の状態推定ゲインからなる。又、Fは、フィードバックゲインであり、同様に、5つのフィードバックゲインからなる。
【0078】
この式では、観測位置y(n)が、現サンプルの電流出力u(n)に反映されない。即ち、予測オブザーバの形式であるため、応答が1サンプル遅延する。1サンプルの遅延を補うため、一般には、現在オブザーバが利用される。現在オブザーバは、次式(11)で表現される。但し、y(n)は、現サンプルでの観測位置である。
【0079】
【数11】

【0080】
このように、1サンプルで、1回の演算を行い、1回駆動電流を変化するための現在オブザーバを構成する。次に、この現在オブザーバを元に、2自由度制御系を構成する。
【0081】
式(11)に二自由度制御のフィードフォワードを付与すると、式(12)、式(13)、式(14)が得られる。
【0082】
【数12】

【0083】
【数13】

【0084】
【数14】

【0085】
即ち、式(11)に比し、式(13)に示すように、出力u(n)の計算に、フィードフォワード項である(C^T・r(n))を加えている。尚、式(12)のC,式(13)のC^T(Cの転置)は、下記式(15)、式(16)で示される。
【0086】
【数15】

【0087】
【数16】

【0088】
図8のブロック図で説明する。現サンプルnでの観測位置y(n)と,前サンプルで推定した現サンプルの予測位置C・Xb(n)との差分を、演算ブロック52で演算し,推定位置誤差er[n]を生成する。乗算ブロック54で、この推定位置誤差er[n]に,推定ゲインLをかけて、補正値を作る。
【0089】
加算ブロック56により、この補正値と,予測位置,予測速度などのXb[n]と加算する。これにより,式(12)の現サンプルでの推定位置・推定速度などXh(n)を生成する。通常の状態フィードバックならば,この推定状態Xh(n)の推定位置にゲインをかけ,推定速度にゲインをかけて,両者の和をとり,状態フィードバック電流を生成する。
【0090】
二自由度制御では、推定速度にゲインをかけた値を利用するのは同じであるが、推定位置Xh(n)と目標位置軌道r(n)との差分値を加算ブロック58で演算し、乗算ブロック60で、それにフィードバックゲインFをかけた値を、状態フィードバックに利用する。即ち、(13)式を演算する。
【0091】
一方、次のサンプル(n+1)の推定状態Xb(n+1)を、現サンプルの推定状態Xh(n)と出力値u(n)とから乗算ブロック62,64、加算ブロック66により、(14)式のように、計算する。
【0092】
ここで、演算ブロック70は、目標位置軌道r(n)に行列C^Tを乗算し、遅延ブロック68は、推定状態Xb(n+1)を1サンプル遅延する。又、A,B,C,C^T,L,Fは、位置x、速度v、バイアス値b、外乱値d1,d2に対する行列である。更に、A,B,Lは、状態推定ゲイン、Fは、フィードバックゲインである。
【0093】
この式(12)、式(13)、式(14)及び図8で示される現在オブザーバは、通常の現在オブザーバに、目標軌道r(n)に、式(16)のC^Tを乗じて、加算するだけで、二自由度制御を実現できる。
【0094】
ここで、二自由度制御を用いた制御系での前述の段差解消位置軌道r‘(n)を説明する。フォローイング切り替え時は、式(13)の目標軌道r(n)は、「0」であるから、電流段差Udiffは、下記式(17)で表される。
【0095】
【数17】

【0096】
式(13)を用いて、最終出力から電流段差を解消するためには、式(18)を満足する必要がある。
【0097】
【数18】

【0098】
従って、電流段差解消位置軌道r‘(n)は、下記式(19)で表される。
【0099】
【数19】

【0100】
このため、フォローイング制御に二自由度現在オブザーバを使用すると、段差解消位置軌道r‘(n)を簡単且つ高速の計算できる。そして、現在オブザーバでは、次の計算順序により、フォローイング開始時に、電流段差を生じさせない出力電流を計算できる。
【0101】
先ず、式(12)により、Xh(n)を計算する。次に、式(13)において、r(n)を「0」として、u(n)を計算する。この計算したu(n)と、ホールド回路34のシーク制御の最終電流値u(n−1)とから、式(17)により、段差電流値Udiffを計算する。更に、式(19)により、電流段差解消位置軌道r’(n)の初期値を計算する。
【0102】
そして、式(13)において、r(n)をr‘(n)として、出力電流u(n)を計算し、出力し、更に、式(14)により、Xb(n+1)を計算する。
【0103】
このように、二自由度現在オブザーバを用いると、切り替え時点から段差を解消した出力電流を出力できる。
【0104】
次に、他の電流段差解消軌道を説明する。図9は、二次関数軌道を示す。図9において、上段が加速度、中段が速度、下段が位置の時間に対する特性である。二次関数軌道は、矩形波を二回積分したものであり、図9の位置の軌道を使用できる。図6の三角波に比し、やや曲線状の特性を示す。
【0105】
図10は、台形軌道を示す。図10において、上段が加速度、中段が速度、下段が位置の時間に対する特性である。台形位置軌道は、図6の三角波に比し、より曲線状の位置特性を示す。
【0106】
図11は、正弦波軌道を示す。図11において、上段が加速度、中段が速度、下段が位置の時間に対する特性である。正弦波位置軌道は、図6の三角波に比し、より曲線状の位置特性を示す。
【0107】
図12は、SMART軌道を示す。図12において、上段が加速度、中段が速度、下段が位置の時間に対する特性である。SMART軌道は、前述の特許文献1で紹介されており、正弦波軌道を改良したものであり、図6の三角波に比し、より曲線状の位置特性を示す。
【0108】
図13は、SMART−Like軌道を示す。図13において、上段が加速度、中段が速度、下段が位置の時間に対する特性である。SMART−Like軌道は、前述の特許文献2で紹介されており、正弦波軌道を更に改良したものであり、図6の三角波に比し、より曲線状の位置特性を示す。
【0109】
このように、初期値をr’(n)とし、段差解消軌道の形状を、必要な特性に応じて、種々のものを採用できる。
【0110】
(位置制御系の第2の実施の形態)
図14は、本発明の位置制御系の第2の実施の形態のブロック図であり、図5及び図8で示したものと同一のものは、同一の記号で示してある。二自由度制御の利点の一つは、シーク制御とフォローイング制御とを、同一の構成で実現する点である。この実施の形態は、図5の基本構成において、シークコントローラ24とフォローイングコントローラ22とを、1つの現在オブザーバで構成したものである。
【0111】
図14において、コントローラ22,24は、1つの現在オブザーバで構成される。この現在オブザーバの構成は、図8で示した構成と同一である。現サンプルnでの観測位置y(n)と,前サンプルで推定した現サンプルの予測位置C・Xb(n)との差分を、演算ブロック52で演算し,推定位置誤差er[n]を生成する。
【0112】
乗算ブロック54は、この推定位置誤差er[n]に,推定ゲインLをかけて、補正値を作る。加算ブロック56は、この補正値と,予測位置,予測速度などのXb[n]とを加算する。これにより,式(12)の現サンプルでの推定位置・推定速度などXh(n)を生成する。
【0113】
二自由度制御では、推定位置Xh(n)と目標位置軌道r(n)との差分値を加算ブロック58で演算し、乗算ブロック60で、それにフィードバックゲインFをかけた値を、状態フィードバックに利用する。即ち、(13)式を演算する。
【0114】
一方、次のサンプル(n+1)の推定状態Xb(n+1)を、現サンプルの推定状態Xh(n)と出力値u(n)とから乗算ブロック62,64、加算ブロック66により、(14)式のように、計算する。ここで、演算ブロック70は、目標位置軌道r(n)に行列C^Tを乗算し、遅延ブロック68は、推定状態Xb(n+1)を1サンプル遅延する。
【0115】
この式(12)、式(13)、式(14)及び図14で示される現在オブザーバも、通常の現在オブザーバに、目標軌道r(n)に、式(16)のC^Tを乗じて、加算するだけで、二自由度制御を実現できる。
【0116】
又、目標位置(又は移動距離)Lseekから、目標軌道r(n)を生成する目標軌道生成部44と、切り替え前のサンプル時刻の電流値u(n−1)と切り替え後のサンプル時刻の電流出力値u(n)との差に従い、電流段差解消軌道r‘(n)を生成する電流段差解消軌道生成部28とを設ける。そして、シークからフォローイングへの切り替え指示に応じて、目標軌道生成部44の目標軌道r(n)から電流段差解消軌道生成部28の電流段差解消軌道r’(n)に切り替え、演算ブロック70に出力するスイッチ46を設ける。
【0117】
更に、1つの現在オブザーバの制御特性を、シークとフォローイングで異ならすための設定テーブル48を設ける。設定テーブル48には、シーク用の状態推定ゲインLs,フィードバックゲインFsと、フォローイング用の状態推定ゲインLf,フィードバックゲインFfとを格納する。
【0118】
そして、設定テーブル48は、シークからフォローイングへの切り替え指示に応じて、シーク時には、演算ブロック54,60に、シーク用の状態推定ゲインLs,フィードバックゲインFsを設定し、フォローイング時には、演算ブロック54,60に、フォローイング用の状態推定ゲインLf,フィードバックゲインFfを設定する。
【0119】
この構成の動作を説明すると、シーク制御では、目標軌道生成部44からの目標軌道r(n)が、スイッチ46を介し、演算ブロック70に入力され、設定テーブル48から演算ブロック54,60に、シーク用の状態推定ゲインLs,フィードバックゲインFsを設定される。
【0120】
そして、前述の図8で説明したように、式(12)、式(13)、式(14)を演算し、出力電流値u(n)を計算し、プラント40(1,3)を駆動する。
【0121】
一方、整定判定部26(図5参照)は、位置誤差eが、所定の整定判定条件(例えば、ゼロ)を満足したと判定すると、目標位置近傍に到達したと判断し、フォローイング制御に切り替える。即ち、設定テーブル48から演算ブロック54,60に、フォローイング用の状態推定ゲインLf,フィードバックゲインFfを設定する。
【0122】
そして、図8で説明したように、段差解消軌道生成部28は、式(19)の演算を行い、段差解消軌道r’(n)を生成し、スイッチ46を切り替える。そして、前述の図8で説明したように、式(12)、式(13)、式(14)を演算し、出力電流値u(n)を計算し、プラント40(1,3)を駆動する。
【0123】
このように、二自由度現在オブザーバをシークにも使用することにより、より簡単な構成で、シーク、フォローイング、段差解消制御を実現できる。
【0124】
又、シーク、フォローイングの切替時に,式(12)の推定状態Xb(n)中の推定位置を,その時点の位置誤差y(n)に置換することにより、より正確に段差を解消できる。すなわち,シーク、フォローイング切替直後のサンプルでの推定位置誤差が、「0」になるように設定する。
【0125】
次に、実際の2.5インチ磁気ディスク装置において実験を行った実施例を説明する。図15は、従来の電流段差の解消を行わない位置制御系での電流波形、位置の特性図、図16は、本発明による電流段差の解消を行う制御系での電流波形、位置の特性図である。
【0126】
図15、図16とも,上からシーク時間,電流波形,位置誤差波形を示す。ただし,位置誤差は±1の範囲で折り返すように表示している。図15では、シーク波形に、シーク、フォローイング切り替え時に、電流段差CSTが観察できるが、図16では、シーク波形に電流段差は観察できない。
【0127】
このように、従来は、図15でみられるような電流段差が発生するために,騒音の原因となっていた。又、シーク制御からフォロイング制御へ切り替えるときの条件の位置および速度の制約が厳しかった。しかし,本発明の電流段差の解消策を用いることで,騒音の発生を防止し、且つより条件が緩和でき,従来技術の位置より遠い位置で,より速い速度で、フォローイング制御への切替が可能になる。そのため,シーク時間も、図16で示したよりもさらに短縮が可能になる。
【0128】
(位置制御系の第3の実施の形態)
図17は、本発明の位置制御系の第3の実施の形態のブロック図であり、図5、図8及び図14で示したものと同一のものは、同一の記号で示してある。前述の式(13)乃至式(19)においては、電流段差Udiffから段差解消軌道r‘(n)を生成していたが、電流段差そのものを電流軌道として供給することもできる。即ち、式(14)を下記式(20)に変形し、電流で段差解消軌道を供給する。
【0129】
【数20】

【0130】
図17において、コントローラ22,24は、1つの現在オブザーバで構成される。この現在オブザーバの構成は、図8で示した構成と同一である。現サンプルnでの観測位置y(n)と,前サンプルで推定した現サンプルの予測位置C・Xb(n)との差分を、演算ブロック52で演算し,推定位置誤差er[n]を生成する。
【0131】
乗算ブロック54は、この推定位置誤差er[n]に,推定ゲインLをかけて、補正値を作る。加算ブロック56は、この補正値と,予測位置,予測速度などのXb[n]とを加算する。これにより,式(12)の現サンプルでの推定位置・推定速度などXh(n)を生成する。
【0132】
二自由度制御では、推定位置Xh(n)と目標位置軌道r(n)との差分値を加算ブロック58で演算し、乗算ブロック60で、それにフィードバックゲインFをかけた値を、状態フィードバックに利用する。即ち、(13)式を演算する。
【0133】
一方、次のサンプル(n+1)の推定状態Xb(n+1)を、現サンプルの推定状態Xh(n)と出力値u(n)とから乗算ブロック62,64、加算ブロック66により、(14)式のように、計算する。ここで、演算ブロック70は、目標位置軌道r(n)に行列C^Tを乗算し、遅延ブロック68は、推定状態Xb(n+1)を1サンプル遅延する。
【0134】
この式(12)、式(13)、式(14)及び図17で示される現在オブザーバも、通常の現在オブザーバに、目標軌道r(n)に、式(16)のC^Tを乗じて、加算するだけで、二自由度制御を実現できる。
【0135】
又、目標位置(又は移動距離)Lseekから、目標軌道r(n)を生成する目標軌道生成部44と、切り替え前のサンプル時刻の電流値u(n−1)と切り替え後のサンプル時刻の電流出力値u(n)との差に従い、段差電流値を計算し、これを初期値として、段差解消電流軌道Uff(n)を生成する電流段差解消軌道生成部28−1とを設ける。
【0136】
そして、シークからフォローイングへの切り替え指示に応じて、目標軌道生成部44の目標軌道r(n)の入力をカットするスイッチ46と、切り替え指示に応じて、電流段差解消軌道生成部28−1の電流段差解消電流軌道Uff(n)に切り替え、加算ブロック74に出力するスイッチ72を設ける。
【0137】
更に、1つの現在オブザーバの制御特性を、シークとフォローイングで異ならすための設定テーブル48を設ける。設定テーブル48には、シーク用の状態推定ゲインLs,フィードバックゲインFsと、フォローイング用の状態推定ゲインLf,フィードバックゲインFfとを格納する。
【0138】
そして、設定テーブル48は、シークからフォローイングへの切り替え指示に応じて、シーク時には、演算ブロック54,60に、シーク用の状態推定ゲインLs,フィードバックゲインFsを設定し、フォローイング時には、演算ブロック54,60に、フォローイング用の状態推定ゲインLf,フィードバックゲインFfを設定する。
【0139】
この構成の動作を説明すると、シーク制御では、目標軌道生成部44からの目標軌道r(n)が、スイッチ46を介し、演算ブロック70に入力され、設定テーブル48から演算ブロック54,60に、シーク用の状態推定ゲインLs,フィードバックゲインFsを設定される。
【0140】
そして、前述の図8で説明したように、式(12)、式(13)、式(14)を演算し、出力電流値u(n)を計算し、プラント40(1,3)を駆動する。
【0141】
一方、整定判定部26(図5参照)は、位置誤差eが、所定の整定判定条件(例えば、ゼロ)を満足したと判定すると、目標位置近傍に到達したと判断し、フォローイング制御に切り替える。即ち、設定テーブル48から演算ブロック54,60に、フォローイング用の状態推定ゲインLf,フィードバックゲインFfを設定する。
【0142】
そして、図8で説明したように、段差解消軌道生成部28は、式(17)の演算を行い、段差解消電流軌道Uff(n)を生成し、スイッチ46、72を切り替える。図18は、電流軌道Uff(n)の説明図である。式(17)の演算結果を初期値とし、例えば、10サンプルで「0」となる、電流軌道Uff(n)を生成する。ここでは、三角波を使用しているが、前述の位置軌道と同様に、2次関数軌道等を利用できる。
【0143】
更に、前述の図8、図14で説明したように、式(12)、式(20)、式(14)を演算し、出力電流値u(n)を計算し、プラント40(1,3)を駆動する。
【0144】
このように、位置軌道の代わりに、電流軌道を与える構成でも実現できる。又、二自由度現在オブザーバをシークにも使用することにより、より簡単な構成で、シーク、フォローイング、段差解消制御を実現できる。
【0145】
(位置制御系の第4の実施の形態)
図19は、本発明の位置制御系の第4の実施の形態のブロック図であり、現在オブザーバのみ示してある。この実施の形態は、サンプルサーボ制御では、サンプル時刻から出力されるまで、計算時間やアナログドライバ回路の遅延により、遅延する。いわゆる出力遅延が生じる。
【0146】
この実施の形態は、出力遅延を考慮した現在オブザーバの構成を示す。従って、この二自由度制御現在オブザーバは、図5及び図8のフォローイングコントローラのみ、又は、図14、図17のシーク、フォローイング共用の構成の両方に適用できる。
【0147】
先ず、サンプル時刻nからTdだけ遅延した(進んだ)時間での状態変数Xは、式(9)と同様に、求めると、次の式(21)で表現できる。
【0148】
【数21】

【0149】
式(21)を、式(2)と同様に、アクチュエータのモデルで表すと、式(22)で表現できる。尚、式(22)において、Tdは、時間単位のため、サンプル数nに変換するため、サンプリング周期Tで、Tdを割り、サンプル数単位に変換している。
【0150】
【数22】

【0151】
又、定常バイアスbは、常に一定であるため、次式(23)で表される。
【0152】
【数23】

【0153】
他の外乱モデルも、式(5)に従い、式(6)、式(7)と同様に変換できる。変換は、z変換を用いる。前述の現在オブザーバの式(10)と、上記式を合わせれば、次式(24)を構成できる。
【0154】
【数24】

【0155】
式(24)において、Xh(n)は、現サンプルnでの推定状態、Xh(n+Td/T)は、現サンプルnからTdだけ進んだ時の推定状態である。
【0156】
式(24)は、現サンプルnでの推定状態Xh(n)を求め、次に、遅延を考慮した時間Tdだけ進んだ状態Xh(n+Td/T)を、現サンプルnでの推定状態Xh(n)と前サンプルの出力値u(n−1)から計算する。
【0157】
ここで、一般に、次のサンプルの状態を推定するには、式(11)のように、現サンプルの出力u(n)を使用するが、この例では、シングルレート制御、即ち、1サンプルで、1回出力するから、サンプル時点では、u(n)が計算されていない。このため、既に計算された前サンプルの出力u(n−1)を使用して、時間Tdだけ進んだ状態Xh(n+Td/T)を計算する。そして、計算された時間Tdだけ進んだ状態Xh(n+Td/T)から、現サンプルnでの出力u(n)を計算する。
【0158】
次のサンプルの推定状態Xb(n+1)は、式(24)では、式(10)と異なり、u(n)とu(n−1)とを使用する。ここで、式(24)の推定状態Xb(n+1)の位置x(n+1),速度v(n+1)は、下記式(25)で表される。
【0159】
【数25】

【0160】
この式(25)のu(n)の係数が、式(24)のB1であり、u(n−1)の係数が、式(24)のB2である。
【0161】
式(24)に二自由度制御のフィードフォワードを付与すると、式(26)が得られる。即ち、式(24)に比し、Xh(n+Td/T)の計算に、フィードフォワード項である(C^T・r(n))を加えている。
【0162】
【数26】

【0163】
この場合に、従来の二自由度制御の式(13)に従うと、出力u(n)の計算式に、直接フィードフォワード項を加える。しかしながら、このようにすると、サンプル時点が異なるXh(n+Td/T)から(C^T・r(n))を引くことになり、計算順序が複雑となり、高速に演算することが難しい。又、状態推定順序が変化し、系全体の安定性を維持するのが困難となるおそれがある。
【0164】
このため、サンプル時点が同じであるXh(n)に対し、フィードフォワード項である(C^T・r(n))を加えて、進んだ状態Xh(n+Td/T)を計算する。
【0165】
更に、式(26)の第2式を、第3式に代入して、式(26)を簡単化し、次式(27)を得る。
【0166】
【数27】

【0167】
図19は、式(27)をブロック化した構成図であり、図8、図14、図17で示したものと同一のものは、同一の記号で示してある。図19に示すように、現サンプルnでの観測位置(位置誤差)y(n)を取り込み,前サンプルで推定した現サンプルの予測位置C・Xb(n)と観測位置y(n)の差分を、演算ブロック52で演算し,推定位置誤差er[n]を生成する。乗算ブロック54は、この推定位置誤差er[n]に,推定ゲインLをかけて、補正値を作る。
【0168】
加算ブロック56は、この補正値と,予測位置,予測速度などの現サンプルでの推定状態Xb[n]とを加算する。これにより,式(27)の現サンプルでの推定位置・推定速度など推定状態Xh(n)を生成する。
【0169】
そして二自由度制御では、推定状態(位置)Xh(n)と目標位置軌道r(n)との差分値を加算ブロック58で演算し、乗算ブロック76は、それに係数行列−F・Adをかけた値を演算する。一方、遅延ブロック82で遅延された1サンプル前の出力u(n−1)に、乗算ブロック78で、係数行列−F・Bdを乗じる。そして、加算ブロック80は、この結果と、乗算ブロック76の結果を加算し、式(27)の2番目の式の出力値u(n)を得る。
【0170】
一方、次のサンプル(n+1)の推定状態Xb(n+1)を、現サンプルの推定状態Xh(n)と、出力値u(n)と、遅延ブロック34で遅延された前サンプルの出力値u(n−1)から乗算ブロック62,64−1,64−2、加算ブロック66により、(27)式の3番目の式のように、計算する。
【0171】
尚、遅延ブロック68は、次のサンプル(n+1)の推定状態Xb(n+1)を遅延し、乗算ブロック50は、遅延ブロック68の出力に、Cを乗じて、現サンプルの推定位置x(n)を計算する。
【0172】
このように、オーバーラン防止のための二自由度制御系において、二自由度制御の出力の遅延(演算遅延及び駆動アンプ、D/Aコンバータ等のハード遅延)を考慮して、サンプル時点から遅延分進んだTdの推定状態を演算し、この推定状態から出力を演算するため、サンプル時点から、計算中に状態変化があっても、出力遅延の影響を防止し、精度の高い位置制御が可能となり、オーバーランを防止できる。
【0173】
又、同一のサンプル時刻で、二自由度制御項を計算しているため、計算順序が複雑となることを防止でき、高速に演算できる。更に、状態推定順序が守ることができ、系全体の安定性を維持することができる。
【0174】
(位置制御系の第5の実施の形態)
図20は、本発明の二自由度位置制御系の第5の実施の形態のブロック図である。マルチレート制御は、1サンプルで、2回又は3回、電流を変化させるものである。2回変化するものを2倍のマルチレート構成、3回変化するものを3倍のマルチレート構成という。
【0175】
このマルチレート制御には、状態推定をシングルレートで行うシングルレート状態推定と、状態推定をマルチレートで行うマルチレート状態推定とがある。いずれも、1サンプルで、電流を、u(n),u(n+0.5)と2回演算し、変化する。
【0176】
先ず、シングルレート状態推定でのマルチレート制御を説明する。マルチレート制御では、1サンプルで、電流出力値をu(n),u(n+0.5)と出力する。そのため、基本的には、式(26)を2回演算する。即ち、下記式(28)、式(29)を実行する。
【0177】
【数28】

【0178】
【数29】

【0179】
即ち、先ず、出力u(n)と、次の状態Xb(n+0.5)を演算するため、式(28)を演算する。この式(28)は、基本的に、式(26)と同一であるが、1サンプル中に2回電流が変化するため、Xh(n+Td/T)とXb(n+0.5)の演算には、u(n−1)と、u(n−0.5)とを使用する。
【0180】
そして、式(29)のように、(n+0.5)サンプルでの推定状態Xh(n+0.5)を、式(28)の推定状態Xb(n+0.5)とした上で、目標軌道r(n+0.5)を用いて、式(28)と同様に、出力u(n+0.5)と、次の状態Xb(n+1)を演算する。
【0181】
ここで、式(28)、式(29)中の係数B1,B2,B3は、遅延を加味したTdが、T/2(=n+0.5)との比較により変わり、Td<T/2の場合には、次式(30)で決まる。
【0182】
【数30】

【0183】
一方、T/2<Td<Tの場合は、次式(31)で決まる。
【0184】
【数31】

【0185】
即ち、この式(30)、(31)のu(n)の係数が、式(28)、式(29)のB1であり、u(n−0.5)の係数が、B2であり、u(n−1)の係数が、B3である。従って、Td<T/2の場合には、係数B3は、「0」、T/2<Tdの場合は、B1は、「0」となる。
【0186】
次に、マルチレート状態推定でのマルチレート制御を説明する。同様に、マルチレート制御では、1サンプルで、電流出力値をu(n),u(n+0.5)と出力する。そのため、マルチレート状態推定でも、基本的には、式(24)を2回演算する。即ち、下記式(32)、式(33)を実行する。
【0187】
【数32】

【0188】
【数33】

【0189】
先ず、出力u(n)と、次の状態Xb(n+0.5)を演算するため、式(32)を演算する。この式(32)は、基本的に、式(26)と同一であるが、1サンプル中に2回電流が変化するため、Xh(n+Td/T)とXb(n+0.5)の演算には、u(n−1)と、u(n−0.5)とを使用する。又、推定位置誤差e(n)を、(y(n)−C・Xb(n))で、別に演算する。
【0190】
そして、式(33)のように、(n+0.5)サンプルでの推定状態Xh(n+0.5)を、式(32)の推定状態Xb(n+0.5)に、式(32)のe(n)にL2を乗じた値で補正する。更に、目標軌道r(n+0.5)を用いて、式(33)と同様に、出力u(n+0.5)と、次の状態Xb(n+1)を演算する。
【0191】
ここで、式(32)、式(33)中の係数B1,B2,B3は、遅延を加味したTdが、T/2(=n+0.5)との比較により変わり、Td<T/2の場合には、式(30)、2/T<Tdの場合は、式(31)で決まる。
【0192】
式(28)、式(29)のシングルレート状態推定と比較すると、式(33)のように、(n+0.5)サンプルでの推定状態Xh(n+0.5)を、式(32)の推定状態Xb(n+0.5)に、式(32)のe(n)にL2を乗じた値で補正している点が相違する
このように、1回目と同様に、2回目の推定状態を、サンプル時刻に観測した位置誤差で補正することが、マルチレート状態推定である。
【0193】
式(32)、式(33)のXh(n+Td/T)とXh(n+0.5+Td/T)を、式(32)、式(33)の他の式に代入すると、式(32)、式(33)は、次式(34)に変形できる。
【0194】
【数34】

【0195】
式(34)は、式(32)のXh(n+Td/T)を式(32)のu(n)の計算にまとめ、式(33)のXh(n+0.5+Td/T)を、式(33)のu(n+0.5)に纏め、結合したものである。式が少なくなれば、当然、計算時間も短くなり、応答が速くなる。
【0196】
尚、式(34)のL2を「0」とすると、式(28)、式(29)で説明したシングルレート状態推定式を示し、L2が「0」でないと、マルチレート状態推定式を示す。
【0197】
図20は、式(34)をブロック化したブロック図である。図20の構成は、基本的に、図19の構成を2つ直列に連結したものである。図30に示すように、現サンプルnでの観測位置(位置誤差)y(n)を取り込み,前サンプルで推定した現サンプルの予測位置C・Xb(n)と観測位置y(n)の差分を、演算ブロック52−1で演算し,推定位置誤差er[n]を生成する。乗算ブロック54−1は、この推定位置誤差er[n]に,推定ゲインL1をかけて、補正値を作る。
【0198】
加算ブロック56−1は、この補正値と,予測位置,予測速度などの現サンプルでの推定状態Xb[n]とを加算する。これにより,式(34)の現サンプルでの推定位置・推定速度など推定状態Xh(n)を生成する。
【0199】
そして二自由度制御では、推定状態(位置)Xh(n)と目標位置軌道r(n)との差分値を加算ブロック58−1で演算し、乗算ブロック76−1で、それに係数行列−F・Adをかけた値を演算する。一方、出力u(n−1)に、乗算ブロック78−2で、係数行列−F・Bd2を乗じて、出力u(n−0.5)に、乗算ブロック78−1で、係数行列−F・Bd1を乗じる。3つの乗算ブロック76−1,78−1,78−2の出力を加算ブロック80−1が加算し、式(34)の3番目の式の出力値u(n)を得る。
【0200】
一方、次の(n+0.5)の推定状態Xb(n+0.5)を、現サンプルの推定状態Xh(n)に乗算ブロック62−1で係数行列Aを乗じた値と、乗算ブロック64−1で、出力値u(n)に係数行列B1を乗じた値と、乗算ブロック64−3で、出力値u(n−0.5)に係数行列B2を乗じた値と、遅延ブロック82−1で遅延された前サンプルの出力値u(n−1)に乗算ブロック64−2で係数行列B3を乗じた値とを、加算ブロック66−1が加算して、(34)式の4番目の式のように、計算する。
【0201】
次に、演算ブロック52で演算した推定位置誤差er[n]に、乗算ブロック54−2で、推定ゲインL2をかけて、補正値を作る。加算ブロック56−2は、この補正値と,予測位置,予測速度などの現サンプルでの推定状態Xb[n+0.5]とを加算する。これにより,式(34)の現サンプルでの推定位置・推定速度など推定状態Xh(n+0.5)を生成する。
【0202】
そして、マルチレート制御では、推定状態(位置)Xh(n+0.5)と目標位置軌道r(n+0.5)との差分値を加算ブロック58−2が演算し、乗算ブロック76−2は、それに係数行列−F・Adをかけた値を演算する。
【0203】
一方、出力u(n−0.5)に、乗算ブロック78−4は、係数行列−F・Bd2を乗じて、出力u(n)に、乗算ブロック78−3は、係数行列−F・Bd1を乗じる。3つの乗算ブロック76−2,78−3,78−4の出力を加算ブロック80−2が加算し、式(34)の6番目の式の出力値u(n+0.5)を得る。
【0204】
一方、次の(n+1)の推定状態Xb(n+1)を、現サンプルの推定状態Xh(n+0.5)に乗算ブロック62−2で係数行列Aを乗じた値と、乗算ブロック64−4で、出力値u(n+0.5)に係数行列B1を乗じた値と、乗算ブロック64−6で、出力値u(n)に係数行列B2を乗じた値と、遅延ブロック82−2で遅延された前サンプルの出力値u(n−0.5)に乗算ブロック64−5で係数行列B3を乗じた値とを、加算ブロック66−2により加算して、(34)式の7番目の式のように、計算する。
【0205】
尚、遅延ブロック68は、次のサンプル(n+1)の推定状態Xb(n+1)を遅延し、乗算ブロック20−1は、遅延ブロック50の出力に、Cを乗じて、現サンプルの推定位置x(n)を計算する。
【0206】
このように、同一のサンプル時刻で、二自由度制御項を計算しているため、このマルチレート制御では、特に、計算順序が複雑となることを防止でき、高速に演算できる。更に、状態推定順序が守ることができ、系全体の安定性を維持することができる。
【0207】
尚、図20のブロックにおいて、乗算ブロック54−2のL2を「0」に設定すると、シングルレート状態推定の構成となり、図20の構成は、シングルレート、マルチレート状態推定にいずれにも使用できる。
【0208】
この場合には、図5で説明した目標軌道生成部44は、目標軌道rを、0.5サンプル時刻毎に生成する。即ち、r(n),r(n+0.5)を生成する。同様に、前述の電流段差解消軌道生成部28も、電流段差解消軌道r‘を、0.5サンプル時刻毎に生成する。即ち、r’(n),r‘(n+0.5)を生成する。
【0209】
(他の実施の形態)
前述の実施の形態では、位置制御を、磁気ディスク装置のヘッド位置決め装置の適用の例で説明したが、光ディスク装置等の他のディスク装置にも適用できる。又、外乱モデルを考慮しているが、外乱モデルを考慮しない場合にも、採用できる。
【0210】
以上、本発明を、実施の形態で説明したが、本発明は、その趣旨の範囲内で種々の変形が可能であり、これを本発明の範囲から排除するものではない。
【0211】
(付記1)対象物を目標位置に、アクチュエータによりシーク制御するシーク制御方法において、前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算するステップと、前記位置誤差に従い、シーク制御を実行するステップと、前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行するステップとを有し、前記フォローイング制御を実行するステップは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差に従う目標軌道を生成するステップと、前記目標軌道と前記位置誤差に従い、二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行するステップとを有することを特徴とするシーク制御方法。
【0212】
(付記2)前記目標軌道を生成するステップは、前記二自由度現在オブザーバ制御により、前記切り替え後の前記フォローイング制御の制御電流を演算するステップと、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記演算された前記フォローイング制御の制御電流との差に従う目標軌道を生成するステップとを有することを特徴とする付記1のシーク制御方法。
【0213】
(付記3)前記シーク制御を実行するステップは、目標位置までの位置軌道に応じて、前記二自由度現在オブザーバ制御により、制御電流を演算するステップを有することを特徴とする付記1のシーク制御方法。
【0214】
(付記4)前記二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行するステップは、前記現在オブザーバの現サンプルの推定位置との推定位置誤差により、現サンプルの推定位置を補正するステップと、前記補正された推定位置と現サンプルの目標軌道との差を演算し、且つ前記差から前記アクチュエータの出力値を演算するステップと、前記補正された推定位置と、前記現サンプルの出力値とから次の出力値演算のための推定位置を演算するステップとを有することを特徴とする付記1のシーク制御方法。
【0215】
(付記5)前記目標軌道を生成するステップは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差を演算するステップを有することを特徴とする付記1のシーク制御方法。
【0216】
(付記6)前記目標軌道を生成するステップは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差を演算するステップと、前記差に従い、目標位置軌道を生成するステップとを有することを特徴とする付記1のシーク制御方法。
【0217】
(付記7)記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、前記記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差に従い、シーク制御を実行し、前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行する制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差に従う目標軌道を生成し、前記目標軌道と前記位置誤差に従い、二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行することを特徴とする媒体記憶装置。
【0218】
(付記8)前記制御ユニットは、前記二自由度現在オブザーバ制御により、前記切り替え後の前記フォローイング制御の制御電流を演算し、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記演算された前記フォローイング制御の制御電流との差に従う目標軌道を生成することを特徴とする付記7の媒体記憶装置。
【0219】
(付記9)前記制御ユニットは、目標位置までの位置軌道に応じて、前記二自由度現在オブザーバ制御により、制御電流を演算して、シーク制御することを特徴とする付記7の媒体記憶装置。
【0220】
(付記10)前記制御ユニットは、前記現在オブザーバの現サンプルの推定位置との推定位置誤差により、現サンプルの推定位置を補正し、前記補正された推定位置と現サンプルの目標軌道との差を演算し、且つ前記差から前記アクチュエータの出力値を演算し、前記補正された推定位置と、前記現サンプルの出力値とから次の出力値演算のための推定位置を演算することを特徴とする付記7の媒体記憶装置。
【0221】
(付記11)前記制御ユニットは、1サンプル前の出力値と前記差とから前記サンプル時点から所定時間進んだ推定位置を演算し、前記進んだ推定位置から前記アクチュエータへの出力値を演算し、前記補正された推定位置と、前記現サンプルの出力値と、前記1サンプル前の出力値とから次の出力値演算のための推定位置を演算することを特徴とする付記10の媒体記憶装置。
【0222】
(付記12)前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差を演算することを特徴とする付記7の媒体記憶装置。
【0223】
(付記13)前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差を演算し、前記差に従い、目標位置軌道を生成することを特徴とする付記7の媒体記憶装置。
【0224】
(付記14)対象物を目標位置に、アクチュエータによりシーク制御するシーク制御装置において、前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算するブロックと、前記位置誤差に従い、シーク制御を実行し、前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行する制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差に従う目標軌道を生成し、前記目標軌道と前記位置誤差に従い、二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行することを特徴とするシーク制御装置。
【0225】
(付記15)前記制御ユニットは、前記二自由度現在オブザーバ制御により、前記切り替え後の前記フォローイング制御の制御電流を演算し、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記演算された前記フォローイング制御の制御電流との差に従う目標軌道を生成することを特徴とする付記14のシーク制御装置。
【0226】
(付記16)前記制御ユニットは、目標位置までの位置軌道に応じて、前記二自由度現在オブザーバ制御により、制御電流を演算して、シーク制御することを特徴とする付記14のシーク制御装置。
【0227】
(付記17)前記制御ユニットは、前記現在オブザーバの現サンプルの推定位置との推定位置誤差により、現サンプルの推定位置を補正し、前記補正された推定位置と現サンプルの目標軌道との差を演算し、且つ前記差から前記アクチュエータの出力値を演算し、前記補正された推定位置と、前記現サンプルの出力値とから次の出力値演算のための推定位置を演算することを特徴とする付記14のシーク制御装置。
【0228】
(付記18)前記制御ユニットは、1サンプル前の出力値と前記差とから前記サンプル時点から所定時間進んだ推定位置を演算し、前記進んだ推定位置から前記アクチュエータへの出力値を演算し、前記補正された推定位置と、前記現サンプルの出力値と、前記1サンプル前の出力値とから次の出力値演算のための推定位置を演算することを特徴とする付記17のシーク制御装置。
【0229】
(付記19)前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差を演算することを特徴とする付記14のシーク制御装置。
【0230】
(付記20)前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差を演算し、前記差に従い、目標位置軌道を生成することを特徴とする付記14のシーク制御装置。
【産業上の利用可能性】
【0231】
シークからフォローイングへの切り替え時に、電流値u(n),u(n−1)の差分から段差分の電流値Udiffを計算し、この計算値を相殺する目標位置軌道(又は目標電流軌道)を、フォローイング制御に供給するため、出力電流の電流段差が解消される。又、フォローイング制御は、二自由度制御系で構成され、目標位置軌道が二自由度位置制御系の目標位置として与えられるため、余分な外乱入力にはならず、制御系への影響がない。更に、電流段差の解消構成を用いることで、より切り替え条件が緩和でき,従来よりも目標位置からより遠い位置で、より速い速度で,フォローイング制御への切替が可能になる。そのため、シーク時間は、より短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0232】
【図1】本発明の一実施形態を示す媒体記憶装置の構成図である。
【図2】図1のディスクの位置信号の説明図である。
【図3】図2の位置信号の詳細説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態のシーク制御の遷移図である。
【図5】本発明の位置制御系の第1の実施の形態のブロック図である。
【図6】図5の段差解消軌道の説明図である。
【図7】図5の電流段差解消動作の説明図である。
【図8】図5のフォローイングコントローラのブロック図である。
【図9】本発明の他の段差解消軌道の説明図である。
【図10】本発明の更に他の段差解消軌道の説明図である。
【図11】本発明の更に他の段差解消軌道の説明図である。
【図12】本発明の更に他の段差解消軌道の説明図である。
【図13】本発明の更に他の段差解消軌道の説明図である。
【図14】本発明の位置制御系の第2の実施の形態の現在オブザーバのブロック図である。
【図15】本発明の比較例の説明図である。
【図16】本発明の実施例の特性図である。
【図17】本発明の位置制御系の第3の実施の形態の現在オブザーバのブロック図である。
【図18】本発明の位置制御系の第3の実施の形態の電流軌道の説明図である。
【図19】本発明の位置制御系の第4の実施の形態の現在オブザーバのブロック図である。
【図20】本発明の位置制御系の第5の実施の形態の現在オブザーバのブロック図である。
【図21】従来のシーク制御装置のブロック図である。
【図22】従来の切り替え時の電流段差の説明図である。
【符号の説明】
【0233】
1 アクチュエータ
2 スピンドルモータの回転軸
3 ヘッド
4 ディスク
5 スピンドルモータ
6 アクチュエータのVCM駆動回路
7 位置復調回路
8 スピンドルモータの駆動回路
9 バス
10 データの記録再生回路
11 ハードディスクコントローラ
12 MCUのRAM
13 MCUのROM
14 マイクロコントローラユニット
15 ハードディスクコントローラのRAM
16 位置信号
20 位置制御装置
22 フォローイングコントローラ
24 シークコントローラ
26 整定判定部
28 電流段差解消軌道生成部
40 プラント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を目標位置に、アクチュエータによりシーク制御するシーク制御方法において、
前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算するステップと、
前記位置誤差に従い、シーク制御を実行するステップと、
前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行するステップとを有し、
前記フォローイング制御を実行するステップは、
前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差に従う目標軌道を生成するステップと、
前記目標軌道と前記位置誤差に従い、二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行するステップとを有する
ことを特徴とするシーク制御方法。
【請求項2】
前記目標軌道を生成するステップは、
前記二自由度現在オブザーバ制御により、前記切り替え後の前記フォローイング制御の制御電流を演算するステップと、
前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記演算された前記フォローイング制御の制御電流との差に従う目標軌道を生成するステップとを有する
ことを特徴とする請求項1のシーク制御方法。
【請求項3】
前記シーク制御を実行するステップは、目標位置までの位置軌道に応じて、前記二自由度現在オブザーバ制御により、制御電流を演算するステップを有する
ことを特徴とする請求項1のシーク制御方法。
【請求項4】
記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、
前記記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、
前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差に従い、シーク制御を実行し、前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行する制御ユニットとを有し、
前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差に従う目標軌道を生成し、前記目標軌道と前記位置誤差に従い、二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行する
ことを特徴とする媒体記憶装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記二自由度現在オブザーバ制御により、前記切り替え後の前記フォローイング制御の制御電流を演算し、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記演算された前記フォローイング制御の制御電流との差に従う目標軌道を生成する
ことを特徴とする請求項4の媒体記憶装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、目標位置までの位置軌道に応じて、前記二自由度現在オブザーバ制御により、制御電流を演算して、シーク制御する
ことを特徴とする請求項4の媒体記憶装置。
【請求項7】
対象物を目標位置に、アクチュエータによりシーク制御するシーク制御装置において、
前記対象物の目標位置と前記対象物の現在位置とから位置誤差を演算するブロックと、
前記位置誤差に従い、シーク制御を実行し、前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行する制御ユニットとを有し、
前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差に従う目標軌道を生成し、前記目標軌道と前記位置誤差に従い、二自由度現在オブザーバ制御によりフォローイング制御を実行する
ことを特徴とするシーク制御装置。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記二自由度現在オブザーバ制御により、前記切り替え後の前記フォローイング制御の制御電流を演算し、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記演算された前記フォローイング制御の制御電流との差に従う目標軌道を生成する
ことを特徴とする請求項7のシーク制御装置。
【請求項9】
前記制御ユニットは、目標位置までの位置軌道に応じて、前記二自由度現在オブザーバ制御により、制御電流を演算して、シーク制御する
ことを特徴とする請求項7のシーク制御装置。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記切り替え前のシーク制御の制御電流と前記切り替え後の前記フォローイング制御での制御電流との差を演算し、前記差に従い、目標位置軌道を生成する
ことを特徴とする請求項7のシーク制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−84103(P2008−84103A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264679(P2006−264679)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】