説明

シールドセラミック溶射コーティング

本発明は、ガスシールドを使用して、延長されたスタンドオフで、セラミック材料等の高融点材料を溶射して、ガスシールドなしで短いスタンドオフを使用した場合と同じ性質を有する微細構造を生成する独特な方法を提供する。それは、複雑な形状を持つ構成部品のコーティングを促進するために、延長されたスタンドオフにおいてセラミックコーティングの微細構造を制御するのに特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、セラミック材料の溶射、特に、広げられたスタンドオフ(standoff)においてセラミック材料を溶射するのに有用な溶射の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
溶射溶着においては、粉末、ワイヤー又は棒状における材料は、その融点近く又はそれより少し上まで加熱され、溶融体又はほぼ溶融体の粒子は、被覆される表面、即ち基材上に衝突する前に、ガス流において高速に加速される。衝突で、粒子は薄い層状の平板の中に流動し、急速に凝固して冷却する。コーティングは多数の平板層で構成される。金属、セラミック、サーメット及び幾つかのポリマー等の材料は、溶射方法により溶着させることができる。プラズマ、爆発ガン、高速オキシ燃料、ワイヤーアーク及び火炎溶射を含む様々な溶射装置が使用できる。これらの内で、プラズマ溶射は、プラズマの流出液において生成される非常に高い温度のためにセラミックの溶着にとって最上のものの一つである。コーティングは、通常、特定の微細構造を生成する複数通過において材料を表面全体に均等に分布させるように、被覆される部品に合わせて溶射装置を移動させることによって生成される。これは、被覆される表面の温度及びコーティングにおける残留応力を制御するのに役立つ。溶射溶着方法及びコーティングは良く知られていて、多数の文献において詳細に記載されている。
【0003】
コーティングの微細構造及び性質を決定する最も重要なパラメータとしては、粒子の温度、それらの速度、それらが溶着中に周囲と反応した範囲、溶着速度、衝突角度並びに基材及び先に溶着したコーティングの温度が挙げられる。粒子は加熱され(ワイヤーアーク方法は除く)、溶射装置のガス状流出液により加速され、従って、達成される温度及び速度は、部分的に、流出液における滞留時間の関数である。滞留時間は、粒子の速度及び溶射装置の出口と基材との間の距離(スタンドオフと呼ぶ)によって決定される。溶射装置の流出液の温度及び速度は、装置から出るとかなり急速に減少する。従って、粒子が加熱及び加速されるのに十分な距離又は時間を可能にするが、流出液及び粒子の温度及び速度が顕著に低下する程には大きくない最適なオフセットが存在する。衝突角度は、コーティングの微細構造及び性質に最も大きな影響を有する。一般的に、最適角度は基材に対して90°、即ち直角である。角度が小さくなるにつれて、微細構造は更に乱れて密度が小さくなる。この劣化が起こる速度は、部分的に、衝突時の粒子の速度及び温度の関数である。溶着の角度に対して有効なスタンドオフ及び感度は、複雑な形状を伴う溶射構成部品の時に特に重要である。溶射は、本質的に照準プロセス(sight process)であり、溶射装置のサイズ及び被覆される部品の形状は、溶射装置がその部品にどこまで接近できて、なおかつ溶着の許容角度を維持できるかを制限することがある。従って、適切な微細構造を持つコーティングを生成するために十分な温度、速度及び衝突角度で粒子を溶着するように溶射装置を表面に十分に近づけることは可能ではないことがある。
【0004】
一番の関心事である溶着中における環境と粒子との反応は酸化である。溶射装置の流出液は、溶射装置を出た直後、周りを取り囲む周囲ガス、通常は、空気、との混合を開始する。殆どの金属、ポリマー材料並びに僅かな程度の炭化物及び窒化物等の反応性材料が溶着される場合、溶射流出液と混合される空気からの酸素は材料を酸化して、コーティングの微細構造の性質を著しく変化させる。スタンドオフが長ければ長い程、酸化の度合いが大きくなる。この酸化を回避するための2つの主要な方法が存在する。1つは、低圧の不活性ガス下の真空室においてコーティングを溶着させることである。この状況においては、不活性ガス、通常アルゴンは、空気ではなく流出液中に引き込まれ、酸化は起こらない。この方法は、プラズマ溶射溶着のために十分に開発されていて、非常に有効である。それは、低圧環境によってより長いスタンドオフという更なる利点を有する。しかし、その様なシステムの資本及び運転コストは非常に高く、生産速度は低い。その代替は、酸化を防ぐために流出液を取り巻く同軸不活性ガスシールド又はシュラウドを提供することである。
【0005】
最も有効な不活性ガスシールドは、ジャクソン(Jackson)(米国特許第3470347号明細書)により発明されたものである。この発明は、プラズマ溶射トーチの流出液を取り囲む乱流の不活性ガス、通常アルゴンの均一な流れを提供する。それは、溶着中の反応性材料の酸化を防ぐのに極めて有効である。その他の発明は、溶射流出液との相互反応がガスの層状層(laminar layer)を創り出すように、流出液に対して平行に配列された多孔性媒体を通して溶射ノズル又は溶射装置のアタッチメント内に、溶射流出液に不活性ガス流を導入することにより層状ガスシールドを提供する(M.S.Nowotarski、et al.、米国特許第5486383号明細書)。知られているガスシールドの全ては、溶着中の酸化量を抑制又は減少させるために使用され、従って、溶着材料が酸化され易い時にだけ使用される。
【0006】
セラミックコーティングは、幾つかの溶射、特にプラズマ溶射により有効に溶着することができ、一般的に、溶着中の酸化に耐えるものである。従って、それらは、ガスシールドを使用して溶着されない。セラミックコーティングは、多くの目的のために、主に耐腐食性、耐摩耗性、電気抵抗のために又は断熱層のために使用される。断熱層コーティング(TBC)は、ガスタービン燃焼室、ブレード(blade)、ベーン(vane)及びシール部分並びに幾つかの内燃機関の構成部品として使用される。
【0007】
コーティング及びコーティング方法のために選択される材料をベースとした多くの様々な断熱層コーティングが存在する。殆どのTBCは、金属基材構成部品に適用される金属結合コーティング及び、金属結合コーティング上に、金属合金に比べてその非常に低い熱伝導性のために、酸化ジルコニムを通常ベースとしたセラミック層を含む。コーティングのジルコニア層は、特定の要件により変動する。例えば、幾つかのタービンブレード及びベーンの場合の約0.25mm(10mil)から燃焼室の場合の2.5mm(100mil)以上まで変化する。更に、コーティングは、温冷側面境界条件によって200°F(111℃)以上基材温度を減少させることができる。ブレード及びベーンについては、TBCは、エアフォイル(air foil)及び通常取り付けプラットホーム又は末端壁を保護しなければならない。燃焼室については、TBCは、内側表面上に適用される。金属結合コーティングは、溶射方法(例えば、覆われた空気プラズマトーチ、真空室プラズマトーチ、爆発ガン又は高速オキシ燃料ガン)、ガス拡散(圧縮アルミ化等)及び電気メッキの進歩した方法を含む様々な方法によって適用することができる。ジルコニアセラミック層は、溶射及び電子ビーム物理蒸着(EB−PVD)を含む様々な方法を使用して適用できる。
【0008】
複雑な形状、例えば、タービンブレード又はベーン等への溶射コーティングの適用においては、コーティングの品質又は、時にはコーティングを適用することの可能性にさえ影響を及ぼす幾つかの問題が存在する。スタンドオフは、それが、その空隙率を含めたコーティングの微細構造に影響を及ぼすので、その様な問題の1つである。制御された空隙率は、TBCにおける酸化物層の熱衝撃及び熱疲労抵抗にとって必須のものである。隆起(ベーンのプラットホーム端部等)を含む部品の形状は、達成できる最小のスタンドオフを設定する。時に、これは、エアフォイル等のその他の領域に対するスタンドオフが、普通に好ましいとされるものよりも長いスタンドオフにあることを意味する。
【0009】
溶射におけるその他の問題は、コーティングの局部溶着速度、即ち、単位時間当たり、単位面積当たりで溶着されるコーティング材料の量である。それは、ある程度、トーチが部品全体にわたって移動する際の表面速度によって制御される。溶着速度は、コーティングにおける残留応力を制御するために薄い層においてコーティングを溶着させる様な方法において制御される。1つの特別な場合においては、溶着速度及び得られる層の厚さは、ジルコニアコーティングが、垂直に、厚み貫通するクラック又はセルにおいて意図的にクラックを起こす様に応力を制御するために使用される(Taylor、米国特許第5073433号明細書)。表面速度は、所望の層厚さ及び特定のクラック間隔を伴うコーティングを生成するために正確に制御されるプロセスパラメータの1つである。エアフォイル等の複雑な部品では、トーチ又は部品のロボット操作なしで、部品の周りで、同時に表面速度及びスタンドオフを制御することは通常不可能である。ロボット操作は、選択された表面速度が、ロボットの制御速度範囲内であれば、複雑な形状をコーティングするのに優れている。これは、表面速度が、コーティングのロボット適用のためには遅くなければならないことを通常意味し、必要とされる溶着パラメータを達成するのを困難にし、或いは不可能にすることもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
要約すれば、最先端技術の溶射方法は、1つには、必要とされるスタンドオフ及び表面速度の限定された範囲のために、所望の微細構造、残留応力及びその他の性質を有する幾つかの複雑な形状の上にセラミックコーティング、特に酸化物コーティングを溶着するためにはその能力が限られている。従って、セラミックコーティングの溶射溶着のための許容スタンドオフを延長する方法を有することは極めて有利である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、同じ微細構造を生成する、ガスシールドのない溶射のスタンドオフよりも少なくとも20%長い延長されたスタンドオフを使用して所望の微細構造を伴うセラミックコーティングを生成するために、ガスシールドを使用してセラミック材料を溶射する独特な方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
好ましくは、スタンドオフは、ガスシールドなしの溶射のスタンドオフよりも50%長くできる。それは、延長されたスタンドオフでのシールド溶射を使用して複雑な形状を伴う構成部品のセラミックコーティングの所望の微細構造を制御するのに特に有用である。要約すれば、基材の表面とシールド溶射装置の出口末端との間のスタンドオフの距離は、非シールド溶射装置のスタンドオフの距離よりも少なくとも20%長く、シールド装置は、非シールド装置のより小さなスタンドオフを使用して生成される微細構造コーティングと類似の又は同一の微細構造被覆層を生成する。
【0013】
当該技術分野において知られている不活性ガスシールドは、溶着中の金属等の反応性材料の酸化を抑制又は減少させるために使用される。酸化(又は多分、窒化)に対して敏感ではない材料を溶射する場合に、その様なシールドを使用することは当業者には無意味なものと考えられるであろう。しかし、その様なシールドを使用して得られる更なる利益が存在することが分かった。その様なシールドを使用すると、溶射流出液の温度が、溶射装置の近くで実質的に高く、装置からの距離と共に低下する温度の割合が実質的に低くなる、即ち、流出液の温度が長い距離の間高いままであることが見出された。更に、温度効果は、シールドガスの流量に敏感であり、驚くべきことに、流量の増加と共に連続的には増加しないが、最適流量が存在することが見出された。この効果は、当業者により予想されるものではない。このことは、実施例1において、アルゴンシールドガスを使用する特定のプラズマ溶射トーチに対して例示される。明らかに、最適流量及び特定の温度効果は、特定の溶射方法、トーチ又はガン操作パラメータ並びにシールドガスノズルの設計、ガス組成及び流量に依存する。所望の微細構造を生成するための最適なスタンドオフは、基材に接触している粒子の温度減少により制限された。これは、基材にかなり近いスタンドオフとなった。これは、溶射コーティングを簡単な形状に制限し、複雑な形状を持つ構成部品にとっては有効ではない。
【0014】
驚くべきことに、セラミック又は非反応性材料、例えば酸化物及び窒化物、炭化物の高溶融材料、並びにその他のセラミック及び非反応性材料を溶射する場合に、ガスシールドを使用することによって、スタンドオフが、コーティングの微細構造又はその他の性質の劣化なしに延長できることが見出された。高溶融材料は、2800°F(1538℃)を超える融点を有する材料である。或いは、より高い密度、高い溶着効率、高い溶着速度及び更に均一な微細構造を持つコーティングが、延長されたスタンドオフにおいて達成できる。これらのタイプのコーティングは、より大きな耐摩耗性、耐腐食性、より高い結合強度及びその他の望ましい性質を有することが期待される。これらの効果は、溶射流出液についてのシールドにより増加及び拡大された温度効果によるものと考えられる。この発見の効果は、酸化ジルコニムを使用する以下の実施例2において例示される。TBCに必要とされる微細構造は、シールドを伴わないよりもシールドを伴う実質的に長いスタンドオフにおいて得ることができることが示された。更に、一定のスタンドオフにおいて、微細構造は更に均一で、コーティングは密度を高め、溶着効率は、シールドを伴わないよりもシールドを伴った方が高かった。
【0015】
イットリア、部分的に安定化されたジルコニアが実施例において使用されたが、本発明は、その他のジルコニア化合物、その他の酸化物、窒化物、炭化物及びその他の耐火材料又は化合物或いはそれらの混合物に適用する。本発明は、組成、微細構造又はその両方において多層に連続的に等級化されたセラミックコーティングにも適用する。同様に、実施例におけるジルコニアコーティングは、ガスタービンの構成部品上のTBCとして使用されるために設計されたが、それらは、内燃機関の構成部品上で使用することができる。又、本発明は、その他の構成部品の上に溶射されるセラミックの使用及び、耐摩耗性、研削性、耐腐食性、電気及び電子機能を含むが、これらに限定されない、その他の目的の使用並びにそれらの光学的性質のための使用に適用する。更に、実施例は、特定のタイプのプラズマ溶射装置、この装置のための特定の操作パラメータ、特定のシールド設計及びそれらのシールド設計のための操作パラメータを使用するプラズマ溶射に関わるものであるが、本発明は、その他のタイプのプラズマ溶射装置、その他のタイプの溶射装置、その他のシールド設計及び溶射装置及びシールドのためのその他の操作パラメータに適用する。アルゴンはシールドガスとして特に有効であることが分かっているが、窒素及び空気を含むその他のガスも使用できる。
【実施例1】
【0016】
一連の実験は、ガスシールドを伴って、モデル1108プラクスエアプラズマトーチ(Praxair plasma torch)で行われた。シールドは、プラズマ溶射トーチのノズルを取り囲み、その面内にある、約1.0インチの内側直径及び1.4インチの外側直径を持つ平らな多孔性金属円盤を含んでいた。シールドは、プラズマ流出液を伴って同軸に円盤を通過するガス流動を更に導くために、多孔性金属円盤に対して直角に突出する、0.75インチの長さの中空円筒又は壁を有していた。高温ガス流出液の下流の温度は、熱電対で記録された。リングの中心から異なる半径距離にある12対のタイプK熱電対を保持した金属製リング状冶具が作られた。リングは、トーチ流出液の中心線上にその中心が来るように並べられ、データ収集中は、トーチから下流に向けて異なる距離へ移動された。温度は、トーチ本体に関して半径及び下流距離の関数としてプロットされた。データは、1〜6インチ下流から集められた。トーチ面から1インチよりも近い測定は、温度が、使用された熱電対に対して高過ぎたために不可能であった。シールドトーチでは、トーチから更に遠くに熱電対を保持する必要があった。例えば、MCrAlYコーティングに対して使用されたトーチ操作パラメータでは1.5インチ、そしてジルコニアコーティングに対して使用されたトーチ条件に対しては3.0インチ(両方とも、3000cfhのアルゴンシールドガス流量を使用した)であった。
【0017】
任意の固定された下流の距離における半径方向の温度分布はガウス分布であったことが分かった。高温ガスの温度は、流出液の中心線に沿って当然に最も高く、ガウス曲線のピークに相当した。中心線温度は、幾つかの操作条件下で、トーチからの下流の距離の関数として測定され且つプロットされ、ガスシールドをトーチに付加することの効果に関して幾つかの知見が得られた。シールドガス流は、トーチからの短い距離において温度を大いに増加させ、非シールドトーチよりも、更に長いスタンドオフ距離に対して高温を維持した。中心線の温度データは、スタンドオフ距離の双曲線関数、
T=[m/SO]+b
に適合することが分かった(式中、「SO」は、トーチ流出液の出口面からの距離であり、「m」及び「b」は定数である)。m及びbの値は、勿論、それぞれの異なるトーチ操作条件(例えば、トーチ電流、トーチガス流及びガス混合物等)及びそれぞれの異なるシールドガス条件(例えば、流量及びガスの種類)によって異なった。
【0018】
実施例としては、トーチを、添加された40cfhの水素を伴う180cfhのアルゴントーチガスで、150ampで操作し、1〜4インチにおける中心線温度が、以下に示される通り、様々なアルゴン及び空気シールドガス流で測定された。
プラズマトーチ中心線流出液温度に対する室温同軸ガスシールドの効果
条件:
PST Model 1108プラズマトーチ。
150amp、180cfhのアルゴン+40cfhの水素トーチガス。
多孔性金属シールドガス環。
【表1】

【0019】
これらの近接スタンドオフ距離においては、ガス温度は、タイプK熱電対の測定限界を超えていた。
【0020】
1インチのスタンドオフ距離での中心線温度は、シールド流ゼロよりも、乱流の500cfhの同軸アルゴンシールド流で5,000°F高いことが分かった。この場合、温度は、タイプK熱電対が直接読み取ることのできる温度よりも更に高かったので、シールド流に対して双曲線適合式を使用することによって1インチの位置に対して外挿された。全ての場合において、利用できるデータに対する適合は極めて良好で、外挿は妥当であると判断した。2インチの下流では、シールドトーチガス流出液は、シールドなしよりも、中心線において3,000°F高く、4インチでは大体1,000°F高かった。その他の知見は、500cfhのアルゴンシールド流が、3000cfhのシールド流よりも高い中心線温度になったということであった。従って、所望の温度効果に対しては最適シールド流が存在する。又、アルゴンは、同じ流量におけるシールドガスとして、空気よりも更に一層有効であったことが分かった。
【0021】
シールド流出液で得られた高い下流温度は、プラズマトーチにより溶融された粒子の冷却速度を減少させるのに作用し、従って、シールドなしよりも、長いスタンドオフにおいてより密度の高いコーティングを溶着可能にする。セラミック材料の溶射時のシールド効果は、少なくとも2倍、即ち、溶射装置のノズルからの長い距離に対して溶射ガス温度を維持してセラミック溶射粒子を溶融するためにより多くの熱及び時間を用意すること及びセラミック粒子を加速するためのより多くの距離又は時間のためにガス流においてより多くの運動エネルギーを提供することであり、両方の効果は、基材のスタンドオフの距離に対して長いトーチでの良好なコーティングに寄与する。長いスタンドオフの1つの更なる利点は、コーティングが、長いスタンドオフで幅広い溶射パターンによって薄い層に広げられるので、通常低い残留応力である。
【実施例2】
【0022】
酸化ジルコニウムコーティングが、実施例1と同様に、但し0.56インチの長さ延長で、周囲温度のアルゴンガスシールドを使用し及び使用せずに生成された。両方ともスタンドオフは0.75インチであった。500cfhのアルゴン流を伴うガスシールドで生成された酸化ジルコニウムコーティングは、シールドなしのものよりも高い密度を有し、92.3%対91.8%であった。溶着効率は35から38%に増加し、溶着速度は220から240ミル/平方インチ/分に増加した。これは、高い細分化クラック密度、熱衝撃に対する望ましい効果及び熱疲労抵抗性をもたらした。シールドの使用は、又、同じスタンドオフにおいてガスシールドなしで生成されたものよりも更に均一な微細構造を持つコーティングを生成した。また、この効果は、ガスのシュラウドがない場合よりもガスのシュラウドを伴うより長いスタンドオフで、同じ微細構造及び密度の生成を可能にする。又、500cfhのアルゴンのシールドガス流は、1000cfhの流量よりも良好な結果を生み出した。以前は、ガスのシュラウドが、溶着中の反応性金属の酸化を防ぐためにのみ使用されたので、これらは全て驚くべき結果であった。
【0023】
ガスシールドなしで生成された、細分化クラックを伴う酸化ジルコニウムコーティングに対する正常なスタンドオフは約1.0インチである。そのスタンドオフが、コーティング密度又は細分化クラック密度を含めた微細構造を変更することなしに、上述のガスシールドを使用して、少なくとも約1.5インチまで増加できることが分かった。このおよそ50%のスタンドオフの増加は、以前に可能であったよりも更に複雑な形状を持つガスタービンブレード及びベーン等の構成部品を被覆することを可能にする。
【0024】
開示された方法のその他の変形は、以下に請求されるこの発明の意図された範囲内にある。先に述べた通り、本発明の詳細な実施形態は、本明細書において開示される。しかし、開示された実施形態は、様々な形態において具体化することのできる本発明の単なる例に過ぎない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の溶射方法であって、前記材料を、溶射装置の流出液を実質的に取り囲んでいるシールドガス流を有する同軸ガスシールドを伴う溶射装置から溶射して、基材の表面の少なくとも1部分に所望の微細構造コーティングを生成させ、基材の表面とシールド溶射装置の出口末端との間のスタンドオフの距離が、非シールド溶射装置のスタンドオフの距離よりも少なくとも20%長く、前記シールドガス流の溶射が、非シールド溶射装置の小さなスタンドオフを使用して生成される微細構造コーティングに類似の微細構造コーティングを生成する方法。
【請求項2】
材料が、セラミック、酸化物であるセラミック或いはジルコニア又はジルコニアを含む化合物である酸化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スタンドオフの距離が少なくとも50%長い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
同軸シールドガス流が、溶射装置の流出液を実質的に取り囲んでいる本質的に乱流のガス流である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティングが、セラミック材料の層を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
同軸ガスシールドにおいて使用される前記ガスが、アルゴン、窒素、空気及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
コーティング層を有する被覆物品であって、コーティング層が請求項1の方法により生成される物品。
【請求項9】
コーティングがセラミック材料である、請求項8に記載の被覆物品。
【請求項10】
ガスタービンエンジン又は内燃機関の構成部品である、請求項8に記載の被覆物品。

【公表番号】特表2007−500792(P2007−500792A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522015(P2006−522015)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/024261
【国際公開番号】WO2005/056864
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(500092413)プラックセアー エス.ティ.テクノロジー、 インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】