説明

スイッチングゲートドライバ

【課題】スイッチングゲートドライバにおいて、スイッチング時間を短くして、スイッチング損失を低減すること。
【解決手段】本発明は、IGBT素子のスイッチングゲートドライバであって、IGBT素子のゲート電流を制御するための抵抗部、及び、前記IGBT素子のコレクタ−エミッタ間の電圧に応じて、前記抵抗部の可変抵抗を制御するための制御信号を前記抵抗部に出力する電圧検針部を含むスイッチングゲートドライバを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ等を駆動するために備えられるスイッチングゲートドライバに関するものであって、より詳しくは、オン/オフ(On/Off)スイッチングストレスを低減するためのスイッチグゲートドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
インバータは、交流電圧を直流電圧に変換し、スイッチング素子がPWM(Pulse Width Modulation)信号に応じて、前記変換した直流電圧をスイッチングさせ交流電圧を生成し、生成した交流電圧を負荷に出力して駆動させるものであって、ユーザが所望する電圧及び周波数の交流電圧を負荷に供給して、負荷の駆動を精密に制御することができる装置である。
【0003】
インバータに備えられるスイッチング素子としては、一般に、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が多く用いられている。IGBTまたはMOSトランジスタを制御するための回路がスイッチングゲートドライバである。
【0004】
図1は、ゲートドライバの回路図である。産業で用いられるほとんどのIGBT素子を制御するためのゲートドライブは、図1に示されているような構造で構成されている。
【0005】
図1を参照すると、ゲートドライバは、IGBT素子をスイッチングするために、ゲート抵抗RG(on)、RG(off)、Rin、RGE、キャパシタC、及び、2つのスイッチング素子を含む。ゲートドライブは、IGBTの制御信号を入力され、IGBTの駆動に適した電圧レベルVG+、VG−に信号を変換して、ゲート抵抗RG(on)、RG(off)を介してIGBT素子のゲートに電荷を充放電する。IGBTのゲートに充電される電荷量に応じて、IGBT素子のゲート電圧Vgeが印加され、ゲート電圧VgeがIGBT素子の駆動電圧よりも大きくなると、IGBTは、ターンオン状態に変換される。
【0006】
IGBT素子のゲート電圧Vgeが駆動電圧以下になると、IGBT素子はターンオフ状態になる。このとき、IGBT素子のターンオン時間及びターンオフ時間は、ゲート抵抗RG(on)、RG(off)の大きさによって決められる。ゲート抵抗RG(on)、RG(off)を小さく設計すると、IGBT素子のスイッチング時、急激な電流の切り替えにより、IGBTターンオフ動作で、IGBT素子のコレクタとエミッタとの間に大きなスパイク(spike)電圧が発生し、IGBT素子のターンオン動作で、環流ダイオードの大きな逆回復電流が発生する。逆に、ゲート抵抗RG(on)、RG(off)を大きく設計すると、電流の切り替え時間が大きくなり、スイッチング損失が増加する。
【0007】
図2ないし図5は、図1に示されたゲートドライバの様々な実施例を示す回路図である。
【0008】
図2は、抵抗RG(on)、RG(off)を備えている場合を示したものであり、図3は、図2の抵抗RG(on)、RG(off)を一つで具現した場合である。図3は、IGBT素子のターンオン時の充電電流経路を示しており、図4は、IGBT素子ターンオフ時の放電電流経路を示している。
【0009】
前述のように、従来のゲートドライブは、IGBT素子の駆動電源を供給するMOSトランジスタまたはトーテムポール回路と、IGBTのゲート充放電電流を制限するゲート抵抗Rとから構成されている。ゲート抵抗Rは、図2のように、IGBT素子のターンオン時、IGBT素子のゲート充電電流を制限するゲート抵抗RG(on)と、IGBT素子ターンオフ時、IGBT素子のゲート放電電流を制限するゲート抵抗RG(off)とに分離して構成したり、又は、図3のように、IGBT素子のターンオン/ターンオフ動作を区別せずに1つのゲート抵抗で構成することができる。
【0010】
IGBT素子のゲート充放電電流は、図4のように、IGBT素子ターンオン時には、RG(on)を介して充電され、図5のように、IGBT素子のターンオフ時には、ゲート抵抗RG(off)を介して放電される。ゲート抵抗Rは、IGBT素子のターンオフ時発生するIGBTのスパイク電圧、ターンオン時発生する環流ダイオードの逆回復電流、及びスイッチング損失を考慮して、適正な値に定められる。
【0011】
ゲート抵抗Rにより決定されるIGBT素子のスパイク電圧と還流ダイオードの逆回復電流は、スイッチング損失に対して相補的な関係を有する。このとき、ゲート抵抗Rを非常に大きく設計すると、IGBTのゲート充放電時間が長くなり、IGBT素子のターンオフまたはターンオン時発生するIGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBTスパイク電圧と環流ダイオード逆回復電流は低減するが、スイッチング損失は増加する。
【0012】
ゲート抵抗Rを小さく設計すると、IGBT素子のゲート充放電時間が短くなり、スイッチング損失は減少するが、IGBTコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBTスパイク電圧と還流ダイオードの逆回復電流は増加する。ゲート抵抗Rは、設計された固定値を用いるため、IGBT素子のゲート充放電時間は一定である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述した問題点を解決するためのものであって、IGBT素子のゲート端に備えられる抵抗を可変抵抗としたスイッチングゲートドライブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、IGBT素子のスイッチングゲートドライバであって、IGBT素子のゲート電流を制御するための抵抗部、及び、前記IGBT素子のコレクタ−エミッタ間の電圧に応じて、前記抵抗部の可変抵抗を制御するための制御信号を前記抵抗部に出力する電圧検針部を含むスイッチングゲートドライバを提供する。
【0015】
また、前記抵抗部は、前記可変抵抗を備える可変抵抗部、及び、固定抵抗値を有する固定抵抗部を含む。
【0016】
また、前記可変抵抗部は、前記制御信号を入力され、可変抵抗の値を変更することができる。前記可変抵抗部は、複数のスイッチと、前記複数のスイッチに対応する抵抗とを備えており、前記複数のスイッチを開放(オープン)または短絡(クローズ)することにより可変にする抵抗値を提供する。
【0017】
前記固定抵抗部は、互いに並列に連結された第1の抵抗及び第2の抵抗を含み、前記可変抵抗部は、前記第1の抵抗と並列連結された第1のスイッチ及び前記第1のスイッチと直列連結された第3の抵抗、また、前記第2の抵抗と並列連結された第2のスイッチ及び前記第2のスイッチと直列連結された第4の抵抗を含む。
【0018】
前記電圧検針部は、基準電圧を設定する。
【0019】
前記電圧検針部は、前記IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧をモニタリングし、前記コレクタ−エミッタ電圧が前記基準電圧値より小さい場合、前記第1のスイッチを短絡して、前記IGBT素子のゲート入力電流を増加させる。
【0020】
前記電圧検針部は、前記IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧をモニタリングし、前記コレクタ−エミッタ電圧が前記基準電圧値より大きい場合、前記第2のスイッチを開放して、前記IGBT素子のゲート入力電流を減少させる。
【0021】
また、前記スイッチングゲートドライバは、ゲートドライバから信号を入力され、前記IGBT素子のゲート信号を提供するトーテムポール回路をさらに含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるゲートドライバは、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧Vceに応じてゲート抵抗を可変にして、IGBT素子のターンオフ時発生するIGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧のスパイク電圧を抑制するため、固定されたゲート抵抗Rで設計されたゲートドライブよりスイッチング時間を短くして、スイッチング損失を低減することができる。
【0023】
また、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧のIGBTスパイク電圧を抑制して、IGBTの電圧の定格容量を減らす。また、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBTスパイク電圧を抑制して、IGBTのスパイク電圧抑制のためのスナバ回路の設計を容易にする。さらに、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBT素子のターンオフ時のスイッチング損失を低減して、IGBT素子の放熱設計を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ゲートドライバの回路図である。
【図2】図1に示されたゲートドライバの一実施例を示す回路図である。
【図3】図1に示されたゲートドライバの一実施例を示す回路図である。
【図4】図1に示されたゲートドライバの一実施例を示す回路図である。
【図5】図1に示されたゲートドライバの一実施例を示す回路図である。
【図6】インバータシステムにおけるIGBTゲートドライバの構成図である。
【図7】IGBT素子とMOSFET素子の動作特性を示す波形図である。
【図8】本発明の実施例によるスイッチングゲートドライバのブロック図である。
【図9】図8に示されたスイッチングゲートドライバの回路図である。
【図10】電圧検針部に備えられた電圧検出回路の一実施例を示す回路図である。
【図11】図9に示された各信号の動作状態を示す波形図である。
【図12】図9に示されたスイッチングゲートドライバの動作を示す波形図である。
【図13】図9に示されたスイッチングゲートドライバの動作を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、本発明の技術的思想を容易に実施できる程度に詳細に説明するために、本発明の最も好ましい実施例について添付図面を参照しながら説明する。
【0026】
図6は、インバータシステムにおけるIGBTゲートドライバの構成図である。図7は、IGBT素子とMOSFET素子の動作特性を示す波形図である。図8は、本発明の実施例によるスイッチングゲートドライバのブロック図である。図9は、図8に示されたスイッチングゲートドライバの回路図である。図10は、電圧検針部に備えられた電圧検出回路の一実施例を示す回路図である。図11は、図9に示された各信号の動作状態を示す波形図である。図12及び図13は、図9に示されたスイッチングゲートドライバの動作を示す波形図である。
【0027】
図6及び図7は、インバータシステムにおいて、IGBT素子のゲートドライブのスイッチング特性を示す。図6及び図7に示されているように、IGBT素子T1を通じて負荷電流ILが流れているとき、IGBT素子T1がオフされると、IGBT素子T2の逆方向ダイオードD2を通じて負荷電流ILが流れるようになる。この時、負荷電流の変化速度(di/dt)とインバータの負荷電流ILの経路上の寄生インダクタンスによって、IGBT素子T1のコレクタ−エミッタの両端にIGBT素子のスパイク(Spike)電圧が発生する。
【0028】
IGBT素子T2の逆方向ダイオードD2を通じて負荷電流ILが流れているとき、IGBT素子T1がターンオンされると、IGBT素子T1を通じて負荷電流ILが流れるようになり、ダイオードの逆回復特性によってIGBT素子T2の逆方向ダイオードD2で還流ダイオードの逆回復電流が流れるようになる。素子D2の還流ダイオードの逆回復電流は、IGBT素子T1を通じて流れる負荷電流ILに重畳して現れる。
【0029】
本発明は、IGBT素子のターンオンまたはターンオフ動作時のIGBT素子のコレクタ−エミッタの電圧に応じてゲート抵抗Rを可変にすることにより、適切なIGBT素子のターンオン及びターンオフ時間を確保しながら、IGBT素子のスイッチング時に発生するIGBTのスパイク電圧及び還流ダイオードの逆回復電流を減少させるゲートドライブに関するものである。
【0030】
本発明は、インバータだけでなく、IGBT素子、MOSFET素子をはじめとする電力スイッチング素子が用いられる分野への適用が可能である。本発明は、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧Vceに応じてゲート抵抗を可変にして、IGBT素子ターンオフ時に発生するIGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBT素子のスパイク電圧を抑制し、IGBT素子ターンオン時に発生する環流ダイオードの逆回復電流を抑えることができる。また、同一のIGBTコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBT素子のスパイク電圧と還流ダイオードの逆回復電流を抑制する固定されたゲート抵抗Rで設計されたゲートドライブよりスイッチング時間が短く、スイッチング損失を低減することができる。
【0031】
また、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBT素子のスパイク電圧と還流ダイオードの逆回復電流を抑制するため、IGBTの電圧及び電流の定格容量を減少することができ、IGBT素子の動作の切り替え時のスパイク電圧を抑制するためのスナバ回路の設計が容易である。また、IGBT素子のターンオン・ターンオフスイッチング切り替え時間が、同一のIGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBT素子のスパイク電圧と還流ダイオードの逆回復電流を抑制する固定されたゲート抵抗Rで設計されたゲートドライブよりも減少し、スイッチング損失が少ない。
【0032】
図8に示されているように、本実施例によるゲートドライバは、トーテムポール回路20、IGBT駆動電源部30、電圧検針部40、及び抵抗部50を含む。
【0033】
トーテムポール回路20は、ゲートドライバ駆動チップ10から提供されるIGBT駆動信号を受けて可変抵抗部50に提供する。IGBT駆動電源30は、予定されたIGBT駆動電圧を提供し、IGBT検針電圧Vceの制限レベルを設定する。電圧検針部40は、IGBT素子60から提供されるIGBT検針電圧Vceを受けて、IGBTゲート抵抗可変信号を提供する。抵抗部50は、固定抵抗値を有する固定抵抗部52と、可変抵抗値を提供するための可変抵抗部51とを含む。
【0034】
図9は、図8に示された各ブロックを実際の回路で具現した場合であって、便宜のため同一の図面符号をつけた。ここでは、可変抵抗部51は、2つの抵抗と2つのスイッチとを備えており、電圧検針部40で提供される抵抗可変信号に応答して、備えられているスイッチをターンオンまたはターンオフさせる。ここで、電圧検針部40は、抵抗Rと、ダイオードDと、電圧検出回路41とを含み、多様に構成することができる。
【0035】
本実施例によるゲートドライバの動作は、IGBT素子のターンオン動作とターンオフ動作とに区分できる。
【0036】
図7は、IGBT素子のスイッチング時に発生するIGBTゲート電圧Vge、IGBTコレクタ電流(IC)及びIGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceの動作波形である。IGBT素子のターンオンの動作は、ゲート電圧によって、(1)阻止状態(0〜t1区間)、(2)ドレーン電流の上昇区間(t1〜t2区間)、(3)ターンオン区間(t2〜t3区間)、(4)抵抗特性領域(t3〜t4区間)に分けられ、IGBTコレクタ−エミッタ電圧の切り替えは、(3)ターンオン区間で発生する。IGBT素子のターンオフ動作は、IGBT素子のターンオンの動作の逆の順序で行われる。
【0037】
本発明のゲートドライバの主な動作は、上記(3)ターンオン区間で発生するIGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceの切り替えで発生する。IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧Vceは、図9の検針用ダイオードDと検針用抵抗Rとを介して入力電圧vce1となって電圧検針部40に入力される。このとき、検針用ダイオードDにより電圧検針部40に入力される入力電圧vce1の大きさは、IGBT駆動電源VG(+)の大きさに制限され、IGBTコレクタ−エミッタ電圧VceをVG(+)の大きさまで制限された電圧である入力電圧vce1を電圧検出回路41では継続的に入力される。
【0038】
図10は、電圧検針部に備えられた電圧検出回路の一実施例を示す回路図である。電圧検出回路41はレベル検出器で構成することができる。電圧検出回路41は、入力電圧Vce1を入力信号として入力され、制御信号RC1、RC2を出力信号OUTに提供する。電圧検出回路41は、IGBTのコレクタ−エミッタ電圧Vceが一定の電圧レベル以上または以下に変化する時に制御信号RC1、RC2を提供する役割を果たす。電圧検出回路41は、トランジスタ、演算増幅器、比較器などの様々な回路で具現することができる。ここでは、電圧検出回路41は、前述したように、検針用ダイオードDと検針用抵抗Rとを介して入ってきた電圧が、設定されたレベル以上または以下に変化するとき、ハイまたはローレベルの制御信号RC1、RC2を発生する。
【0039】
図11は、図10に示された各信号の動作状態を示す波形図である。
【0040】
図11は、IGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceと電圧検針部40に備えられている電圧検出回路41の入力信号Vce1の波形及び制御信号RC1、RC2の波形を示している。
【0041】
続いて、IGBT素子のターンオン動作時の電圧検針部40は、IGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceが電圧検針部40内に設定されている、予定された切り替え基準電圧以下になるとき、抵抗部50の可変抵抗部51に備えられた抵抗R1、R2が動作するようにスイッチSW1、SW2を連結して、IGBT素子のゲート充電電流を増加させる。
【0042】
IGBTゲート充電電流が増加すると、IGBTの電流の切り替え速度が増加するようになり、環流ダイオードの逆回復電流を抑制するために設計された制御信号RC1、RC2を調節して、電流の切り替えを速くする。IGBTゲート抵抗可変によるIGBTゲート充電電流の増加は、IGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceの切り替え中に発生するため、IGBTのスイッチング時のIGBT電流とIGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceの積によって算定されるIGBTのスイッチング損失は、同一の還流ダイオードの逆回復電流を抑制する固定されたゲート抵抗Rで設計されたゲートドライブよりも減少する。したがって、IGBT素子のターンオン時、還流ダイオードの逆回復電流を抑制するため、IGBTの電流の定格容量を低減することができる。
【0043】
IGBT電流の切替速度は、同一の還流ダイオードの逆回復電流を抑制する固定されたゲート抵抗Rで設計されたゲートドライブより速いため、デッドタイム(Dead Time)を小さく設計することができる。
【0044】
図12に示されているように、IGBT素子のターンオフ動作時、電圧検針部40は、IGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceが電圧検針部40内に設定された切り替え基準電圧以上になるとき、抵抗部50の可変抵抗部51のスイッチSW1、SW2を開放(オープン)させ、IGBT素子のゲート放電電流を減少させる。IGBT素子のゲート放電電流が減少すると、IGBT電流の切替速度が減少し、よって、IGBTターンオフ時、IGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceに現れるIGBTのスパイク電圧は減少するようになる。
【0045】
可変抵抗部51によるIGBT放電電流の減少は、IGBTコレクタ−エミッタ電圧の切り替え中に発生するため、IGBTのスイッチング時、IGBT電流とIGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceの積によって算定されるIGBT素子のスイッチング損失は、同一のIGBTコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBTスパイク電圧を抑制する固定されたゲート抵抗Rで設計されたゲートドライブよりも減少する。したがって、IGBT素子のターンオフ時、IGBTコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBTスパイク電圧を抑制するため、IGBTの電圧の定格容量を減少することができる。
【0046】
また、IGBTの電流の切替速度は、同一のIGBTコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBTスパイク電圧を抑制する固定されたゲート抵抗Rで設計されたゲートドライブよりも速いため、デッドタイムを小さく設計することができる。
【0047】
本実施例によるゲートドライバは、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧Vceに応じてゲート抵抗Rを可変にして、IGBT素子のターンオフ時発生するIGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧Vceのスパイク電圧を抑制して、同一のIGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBTスパイク電圧を抑制する固定されたゲート抵抗Rで設計されたゲートドライブよりもスイッチング時間を短くして、スイッチング損失を低減する。
【0048】
また、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBTスパイク電圧を抑制し、IGBTの電圧の定格容量を減らす。また、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBTスパイク電圧を抑制し、IGBTのスパイク電圧抑制のためのスナバ回路の設計を容易にする。さらに、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧VceのIGBT素子のターンオフ時のスイッチング損失を低減して、IGBT素子の放熱設計を容易にする。
【0049】
また、還流ダイオードの逆回復電流を抑制し、IGBTの電流の定格容量を減らす。また、IGBT素子のターンオン時のスイッチング損失を低減して、IGBT素子の放熱設計を容易にする。IGBT素子が高電圧をドライブする場合、IGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceを制限された電圧範囲内で検出する。その上、変圧器やアイソレーション増幅器(Isolation Amplifier)などのような高価部品を用いることなく、ダイオードを用いて相対的に低コストで実現することができる。
【0050】
また、スイッチの切り替え時間を短くするため、IGBT素子のデッドタイム(Dead Time)を減らすことができる。IGBT素子が高電圧をドライブする場合にも、電圧検針部にダイオードを用いてIGBTコレクタ−エミッタ電圧VceをIGBT素子駆動電源VG(+)の電圧範囲内で検針するため、回路設計が容易である。
【0051】
また、本発明は、次のように多様に適用することができる。
【0052】
例えば、本発明で用いられたIGBTの電圧検針ポイントをIGBT素子のコレクタ−エミッタからIGBT素子のゲート−エミッタに変えて適用することができる。このように構成しても、上述の実施例と同様の効果を奏することができ、電圧検針範囲をIGBTの(1)阻止状態、(2)ドレーン電流の上昇区間、(3)ターンオン区間、(4)抵抗特性領域に拡大することができる。
【0053】
また、IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧Vceの電圧を分圧して、IGBT駆動電源VG(+)の電圧以内にVce検出部に入力を受けて、Vce検出回路内のゲート抵抗Rの切り替えレベルをIGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceの全電圧範囲に拡大することができる。
【0054】
また、コレクタ−エミッタ電圧Vceの検出回路内のゲート抵抗Rの切り替え動作回路を微分器で構成すると、IGBTコレクタ−エミッタ電圧Vceの傾きに応じて、ゲート抵抗Rの切り替え動作を具現することができる。
【0055】
以上では、代表的な実施例により本発明について詳細に説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、上述した実施例に対して本発明の範囲から外れない範囲内で様々な変形が可能であることを理解することができる。したがって、本発明の権利範囲は説明した実施例に限定されず、後述する特許請求の範囲ばかりでなく、この特許請求の範囲と均等なものによって定めなければならない。
【符号の説明】
【0056】
10 ゲートドライバ
20 トーテムポール回路
30 IGBT駆動電源部
40 電圧検針部
52 抵抗部
60 IGBT素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGBT素子のスイッチングゲートドライバであって、
IGBT素子のゲート電流を制御するための抵抗部、及び
前記IGBT素子のコレクタ−エミッタ間の電圧に応じて、前記抵抗部の可変抵抗を制御するための制御信号を前記抵抗部に出力する電圧検針部を含むことを特徴とするスイッチングゲートドライバ。
【請求項2】
前記抵抗部は、
可変抵抗を備える可変抵抗部、及び
固定抵抗を備える固定抵抗部を含むことを特徴とする請求項1に記載のスイッチングゲートドライバ。
【請求項3】
前記可変抵抗部は、
複数のスイッチと、前記複数のスイッチに対応する抵抗とを備えており、前記複数のスイッチを開放または短絡することにより可変にする抵抗値を提供することを特徴とする請求項2に記載のスイッチングゲートドライバ。
【請求項4】
前記固定抵抗部は、互いに並列に連結された第1の抵抗及び第2の抵抗を含み、
前記可変抵抗部は、前記第1の抵抗と並列連結された第1のスイッチ及び前記第1のスイッチと直列連結された第3の抵抗、また、前記第2の抵抗と並列連結された第2のスイッチ及び前記第2のスイッチと直列連結された第4の抵抗を含むことを特徴とする請求項2に記載のスイッチングゲートドライバ。
【請求項5】
前記電圧検針部は、前記IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧をモニターし、
前記コレクタ−エミッタ電圧が前記基準電圧値よりも小さい場合、前記第1のスイッチを短絡して、前記IGBT素子のゲート入力電流を増加させることを特徴とする請求項4に記載のスイッチングゲートドライバ。
【請求項6】
前記電圧検針部は、前記IGBT素子のコレクタ−エミッタ電圧をモニタリングし、
前記コレクタ−エミッタ電圧が前記基準電圧値より大きい場合、前記第2のスイッチを開放して、前記IGBT素子のゲート入力電流を減少させることを特徴とする請求項4に記載のスイッチングゲートドライバ。
【請求項7】
前記IGBT素子のゲート信号を提供するトーテムポール回路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のスイッチングゲートドライバ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−239383(P2011−239383A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98156(P2011−98156)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(593121379)エルエス産電株式会社 (221)
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO., LTD
【Fターム(参考)】